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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181192
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20231214BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20231214BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B17/58 C
F16L5/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172283
(22)【出願日】2023-10-03
(62)【分割の表示】P 2019157366の分割
【原出願日】2019-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】茂木 一哉
(72)【発明者】
【氏名】川西 康之
(57)【要約】
【課題】片側閉塞管部における共鳴現象による不快感を抑制することが可能なグロメットを提供する。
【解決手段】内径が漸次縮小する錐台状の錐台部12と、錐台部12の小径側に設けられて両端が開口し、索状体を挿通可能な貫通状管部14と、錐台部12の大径側に設けられて貫通孔の内周縁が係合するパネル係合部18と、錐台部12に設けられて一方端部が閉塞した片側閉塞管部20とを備えるようにし、ダッシュパネルに形成された貫通孔にパネル係合部18を係合することで取り付け可能に構成する。そして、この片側閉塞管部20の閉塞部22から開口端までの管長Lを、当該片側閉塞管部20による共鳴周波数が2,000Hz以下または4,000Hz以上となる長さに形成した。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルに形成された貫通孔に取り付けられるグロメットであって、
内径が漸次縮小する錐台状の錐台部と、
前記錐台部の小径側に設けられて両端が開口し、索状体を挿通可能な貫通状管部と、
前記錐台部の大径側に設けられて前記貫通孔の内周縁が係合するパネル係合部と、
前記錐台部に設けられ、一方端部が閉塞した片側閉塞管部とを備え、
前記片側閉塞管部は、前記錐台部に繋がる基管部と、閉塞部により突出端側が閉塞された閉塞管部と、当該基管部および閉塞管部を繋ぐ接続管部とを備え、
前記接続管部が前記基管部の外側に繋がるように位置する第1の状態と、前記接続管部が当該第1の状態から反転するようにして前記基管部の内側に位置する第2の状態とに変形することで、前記片側閉塞管部の管長を伸縮可能になっており、
短縮状態での前記閉塞部から開口端までの管長を、当該片側閉塞管部による共鳴周波数が2,000Hz以下または4,000Hz以上となる長さに形成した
ことを特徴とするグロメット。
【請求項2】
パネルに形成された貫通孔に取り付けられるグロメットであって、
内径が漸次縮小する錐台状の錐台部と、
前記錐台部の小径側に設けられて両端が開口し、索状体を挿通可能な貫通状管部と、
前記錐台部の大径側に設けられて前記貫通孔の内周縁が係合するパネル係合部と、
前記錐台部に設けられ、一方端部が閉塞した片側閉塞管部とを備え、
前記片側閉塞管部は、閉塞部により閉塞された閉塞端および開口端の両端側で管長を伸縮可能に形成されており、短縮状態での前記閉塞部から開口端までの管長を、当該片側閉塞管部による共鳴周波数が2,000Hz以下または4,000Hz以上となる長さに形成した
ことを特徴とするグロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パネルを貫通させるワイヤハーネスを保護するグロメットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両や船舶、或いは航空機といった各種の乗物は、鋼材等により形成されたパネルにより複数の空間に仕切られ、当該パネルに形成した貫通孔を通したワイヤハーネスにより異なる空間に配置した機材を接続するようになっている。このようなパネルの貫通孔を介したワイヤハーネスの配線に際しては、当該貫通孔にグロメットを設けてパネルとの接触によるワイヤハーネスの損傷を防止すると共に、貫通孔からの音や水、埃等の侵入を防止するようになっている。例えば、自動車等の車両では、車室内とエンジンルームとがダッシュパネル等の車体パネルにより隔てられており、当該ダッシュパネルに形成した貫通孔に取り付けたグロメットの筒状部にワイヤハーネスを挿通することで、エンジンルームに設置した電力供給源としてバッテリーと車室側に配置した各種電気機器とを繋いで電源供給するようにしている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このグロメットには、前述したワイヤハーネスを挿通する貫通状の主たる筒状部(貫通状管部)の他に、車室側への装備追加などの必要に応じてワイヤハーネスや配管などを別途挿通可能にした補助筒状部(片側閉塞管部)を設け、拡張性を高めるようにしたものがある。このような補助筒状部は、一方端を閉塞した状態で形成されて、当該補助管状部の不使用時には車体パネルの内外を隔てるようにして車外側の音等が車内側に進入するのを防止すると共に、装備追加などの必要に応じて閉塞端を切断して、必要なワイヤハーネスや配管が補助管状部に挿通される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-159890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、補助筒状部を有するグロメットは、その補助管状部により拡張性を高めることができるものの、補助管状部の不使用時には、例えば動力源であるエンジンやモータ等の駆動音や走行時のロードノイズなどが開口端から補助管状部の内部に入射し、補助管状部における共鳴現象により生じた音が車室側へ透過することで、乗員に不快感を与えたり室内の静粛性を損なう要因となる。このような共鳴現象は、例えば特許文献1に開示されるような消音器を補助筒状部の開口端に取り付けることで防止することが可能にはなるものの、消音器を別途用意して取り付ける必要があるため作業が繁雑になり、また走行時の振動などによって消音器が脱落することが懸念される。
【0006】
すなわち本発明は、共鳴現象による不快感を抑制可能な片側閉塞管部を有するグロメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、第1の手段は、
パネルに形成された貫通孔に取り付けられるグロメットであって、
内径が漸次縮小する錐台状の錐台部と、
前記錐台部の小径側に設けられて両端が開口し、索状体を挿通可能な貫通状管部と、
前記錐台部の大径側に設けられて前記貫通孔の内周縁が係合するパネル係合部と、
前記錐台部に設けられ、一方端部が閉塞した片側閉塞管部とを備え、
前記片側閉塞管部の閉塞部から開口端までの管長を、当該片側閉塞管部による共鳴周波数が2,000Hz以下または4,000Hz以上となる長さに形成したことを要旨とする。
このように、片側閉塞管部の閉塞部から開口端までの管長を20mm以下または45~60mmとなるように形成することで、当該片側閉塞管部にける共鳴周波数を2,000Hz以下または4,000Hz以上とすることができる。これにより、片側閉塞管部における共鳴現象で発生した音を聞き取り難くすることができるから、消音器のような別部品を用いることなく人員に与える不快感を低減することができる。また消音器を用いる必要がないから、グロメットのパネルに対する装着作業を良好にし得ると共に、装備追加時などの片側閉塞管部の使用時に発生する不要物を削減し得る。
【0008】
第2の手段は、
前記片側閉塞管部は管長を伸縮可能に形成され、短縮状態での管長を当該片側閉塞管部による共鳴周波数が2,000Hz以下または4,000Hz以上となる長さなるようにしたことを要旨とする。
このように、片側閉塞管部を伸縮可能であるから、不使用時には片側閉塞管部を短縮状態にすることにより共鳴現象で発生する音を聞き取り難くすることができると共に、使用時には片側閉塞管部を伸張状態にすることで当該片側閉塞管部に挿通するワイヤハーネスや配管などの保持性を高めることができる。
【0009】
第3の手段は、
前記片側閉塞管部は、前記錐台部に繋がる基管部と、前記閉塞部により突出端側が閉塞された閉塞管部と、当該基管部および閉塞管部を繋ぐ接続管部とを備え、
前記接続管部が前記基管部の外側に繋がるように位置する第1の状態と、前記接続管部が当該第1の状態から反転するようにして前記基管部の内側に位置する第2の状態とに変形することで、前記片側閉塞管部の管長を伸縮可能になっていることを要旨とする。
このように、閉塞管部を基管部に対して押し込んだり引き出すようにすることで片側閉塞管部の管長を簡単に変更することができる。
【0010】
第4の手段は、
前記片側閉塞管部は、前記閉塞部により閉塞された閉塞端および開口端の両端側で管長を伸縮可能に形成したことを要旨とする。
このように、閉塞端および開口端の両端側で管長を伸縮可能にすることで、不使用時には片側閉塞管部を短縮状態にすることにより共鳴現象で発生する音を聞き取り難くすることができると共に、使用時には片側閉塞管部を伸張状態にすることで当該片側閉塞管部に挿通するワイヤハーネスや配管などの保持性を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るによれば、不使用時の片側閉塞管部における共鳴現象による不快感を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るグロメットを取り付けた車両の概略図である。
図2】第1の実施例に係るグロメットの概略斜視図である。
図3】第1の実施例に係るグロメットの縦断面図である。
図4】等クラウド曲線を示すグラフ図である。
図5】第2の実施例に係るグロメットの要部を拡大した縦断面図であって、(a)は、片側閉塞管部を基準状態にした状態を示し、(b)は、片側閉塞管部を短縮状態にした状態を示す。
図6】第3の実施例に係るグロメットの要部を拡大した縦断面図であって、(a)は、片側閉塞管部を基準状態にした状態を示し、(b)は、片側閉塞管部の両端を短縮状態にした状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明にグロメットにつき、添付図面を参照して以下に説明する。本実施形態では、自動車等の車両のダッシュパネルに設けられた貫通孔に取り付けられるグロメットを例示して説明する。
【0014】
(第1の実施例)
このグロメット10は、図1に示すように、自動車MTの車室HRの前方に設けられたエンジンルームERと車室HR内とを隔てるダッシュパネル50に設けた貫通孔50aを通して配線するワイヤハーネスWHを保護するものであって、EPDMゴム等の弾性変形可能な弾性体により構成されている。このグロメット10は、図2または図3に示すように、内径が漸次縮小する錐台状の錐台部12と、当該錐台部12の小径側の端部から錐台部12の軸方向に突き出すように設けられた貫通状管部14とを備えている。この貫通状管部14は、突出端が開口すると共に、錐台部12に連なる基端側で錐台部12の内側に繋がるよう開口した両端が開口する筒状に形成されており、当該錐台部12と貫通状管部14により漏斗状をなしている。これにより、エンジンルームER側から錐台部12の内側を通したワイヤハーネスWHを貫通状管部14に挿通して車室HR側に配線し得るようになっている。
【0015】
また、このグロメット10は、錐台部12の大径側の端部にダッシュパネル50の貫通孔50aより大径に形成された円環状の大径部16が設けられており、当該錐台部12の大径側の端部と大径部16との間に、ダッシュパネル50の貫通孔50aの内周縁が係合可能な溝状のパネル係合部18が設けられている。ここで、錐台部12の大径側の端部の外周縁は、ダッシュパネル50の貫通孔50aより大径になるよう形成されると共に、パネル係合部18は貫通孔50aと同程度の径で形成されている。すなわち、ダッシュパネル50の一方側(例えばエンジンルームER側)から錐台部12の小径側(貫通状管部14)を貫通孔50aに差し込んだ際に、当該錐台部12が弾性変形することで貫通孔50aの内周縁がパネル係合部18に係合することによりダッシュパネル50にグロメット10が取り付けられる。このように、ダッシュパネル50の貫通孔50aに対して装着したグロメット10にワイヤハーネスWHを挿通することで、ダッシュパネル50の貫通孔50aのエッジからワイヤハーネスWHを保護すると共に、当該貫通孔50aを介して車室内に水や埃等が浸入することを防止している。
【0016】
また、このグロメット10の錐台部12には、一方端部が閉塞した片側閉塞管20が当該錐台部12の軸方向に延在するよう設けられている。この片側閉塞管20は、錐台部12の外面側(小径側)に繋がるように該錐台部12の軸方向に延在すると共に突出端側が閉塞部22により閉塞された閉塞管部24と、錐台部12の内面側に繋がるように該錐台部12の軸方向に延在すると共に両端部が開口する開管部26とを備えている。すなわち片側閉塞管20は、閉塞管部24および開管部26が連通すると共に閉塞部22により一端が閉塞された閉管をなすように形成されている。また、閉塞管部24には、径方向外方に円環状に突出するフランジ部28が当該閉塞管部24の突出端部と、当該突出端より基端側に離間した位置に夫々設けられている。そして、閉塞管部24の閉塞部22は、両フランジ部28の間よりも閉塞管部24の突出端側に位置するよう設けられており、当該両フランジ部28の間の隙間28aで片側閉塞管20を切断することにより、閉塞部22を取り除いてワイヤハーネスWHやその他の配管を片側閉塞管20に挿通し得るようになっている。
【0017】
この片側閉塞管20は、一端部が閉塞部22で塞がれた閉管となっており、開口端(開管部26の端部)から音が入射することで共鳴現象が起きる。ここで、人が聴き取れる音(可聴領域)は、一般に20Hzから20,000Hzの範囲の周波数であり、人の聴覚は物理的な音圧が同じでも周波数により知覚する音の大きさの感覚(ラウドネス)が異なることが知られている。そして、人が等しい音の大きさと感じる周波数と音圧との関係を表した等ラウドネス曲線が、国際規格ISO 226:2003において規格化されている(図4参照)。すなわち、この等ラウドネス曲線により、可聴領域の中でも特に2,000Hz~4,000Hzの範囲の周波数の音は特に人の耳が聞きとりやすいことが示されている。言い換えると、2,000Hz~4,000Hzの範囲の周波数の音は、僅かな音圧の音であっても人に知覚されやすく、静粛性を損なって人に不快感を与える要因となることが分かる。
【0018】
そこで、本発明に係るグロメット10における片側閉塞管20の管長L(閉塞部22の管内面側から開管部26の開口端までの長さ)は、当該片側閉塞管20に入射した音による共鳴周波数f(Hz)が、F<2,000HzまたはF>4,000Hzとなるように設定されている。ここで、一端が閉じた閉管の共鳴周波数f(Hz)は、音速:V(m/s)、管長:L(m)、共鳴の次数:nとした場合に、式(1):f=(2n-1)V/4Lにより求めることができる。ここで、本発明のグロメット10が用いられる車両が使用される標準的な環境(標準大気(1気圧、15℃)、音速V=340m/s)における管長Lと共鳴周波数の関係を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
すなわち、グロメット10の片側閉塞管20は、管長LがL≦20mm、45mm≦L≦60mmの範囲の長さとなるよう形成することで、当該片側閉塞管20の不使用時での標準大気中における片側閉塞管20による共鳴周波数を2,000Hz以下または4,000Hz以上にすることができる。具体的に本実施形態では、管長Lを60mmにしてある。これにより、片側閉塞管20における共鳴現象で発生した音を聞き取られ難くすることができ、結果的に乗員へ与える不快感を抑制し得ると共に、車室HR内の静粛性を高めることができる。すなわち、グロメット10に消音器のような別部品を取り付けることなく乗員に与える不快感を抑制することができる。また消音器を用いる必要がないから、グロメット10のパネルに対する装着作業を良好にし得ると共に、装備追加時などの片側閉塞管20の使用時に発生する不要物を削減し得る。更に、片側閉塞管20に消音器を取り付ける必要がないから、走行時の振動などの外部要因による消音器の脱落といった不具合が発生することがなく、良好な静粛性を保つことができる。
【0021】
(第2の実施例)
次に、第2の実施例に係るグロメットについて説明する。第2の実施例に係るグロメットの基本構成は、前述した第1の実施例に係るグロメット10の構成と基本的に共通しており、片側閉塞管20の構成において異なっている。そこで以下の説明では、第1の実施例に係るグロメット10と異なる構成について説明し、共通の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0022】
第2の実施例に係るグロメット10の片側閉塞管部30は、錐台部12の外面側(小径側)に繋がるように該錐台部12の軸方向に延在する両端が開口した基管部32と、閉塞部22により突出端側が閉塞された閉塞管部34と、当該基管部32および閉塞管部34を繋ぐ接続管部36とを備えており、錐台部12の外面側で基管部32、閉塞管部34および接続管部36が相互に連通した一連の筒をなすよう形成されている。すなわち、接続管部36は、基管部32の開口端(突出端)と、閉塞管部34の開口端とを繋ぐように設けられている。なお、基管部32、閉塞管部34および接続管部36は、軸線が一致するように形成されている。また、錐台部12の内面側には、第1の実施例と同様に、両端部が開口する開管部26が設けられており、当該開管部26が基管部32に連通して閉塞部22により一端が閉塞された閉管をなすように形成されている。
【0023】
ここで、接続管部36は、その外径が基管部32の内径より小さくなるよう形成されると共に、閉塞管部34は、その外径が接続管部36の内径より小さくなるよう形成されている。すなわち、接続管部36が基管部32の外側で繋がるように位置する基準状態(第1の状態、図5(a)参照)において、閉塞管部34をその突出端側(閉塞端側)から基端側に向けて押し込むことで、接続管部36が反転して基管部32の内側に位置すると共に当該反転した接続管部36の内側に閉塞管部34が位置する短縮状態(第2の状態、図5(b)参照)に変形し得ると共に、この第2の状態で閉塞管部34をその基端側から突出端側(閉塞端側)に向けて引き出すことで、接続管部36が基管部32の外側で繋がる基準状態に変形し得るようになっている。このように、第2の実施例に係るグロメット10の片側閉塞管20は、その管長Lを伸縮可能になっている。また、閉塞管部34の突出端側に設けられたフランジ部28は、短縮状態で基管部32および接続管部36の外側に位置しており、当該フランジ部28を摘まんで閉塞管部34を容易に引き出し得るようにしてある。
【0024】
そして、第2の実施例に係るグロメット10の片側閉塞管20は、短縮状態においてその管長LがL≦20mm、45mm≦L≦60mmの範囲の長さとなるよう形成されており、具体的に本実施形態では、短縮状態の管長Lを50mmになるよう形成してある。このような片側閉塞管20の管長Lにすることで、当該片側閉塞管20の不使用時での標準大気中における片側閉塞管20による共鳴周波数を2,000Hz以下または4,000Hz以上にすることができる。これにより、不使用時には片側閉塞管20を短縮状態にすることで、片側閉塞管20における共鳴現象で発生した音を聞き取られ難くすることができるから、結果的に乗員へ与える不快感を抑制し得ると共に、室内の静粛性を高めることができ、第1の実施例に係るグロメット10と同様のその他の作用効果を期待できる。そして、装備追加時などにおいて片側閉塞管20にワイヤハーネスWHや配管などを挿通する使用時には片側閉塞管20を基準状態(伸張状態)にすることで、片側閉塞管20の管長を十分に確保することができ、当該片側閉塞管20に挿通するワイヤハーネスWHや配管などの保持性を高めることができる。また、閉塞管部34を基管部32に対して押し込んだり引き出すようにすることで片側閉塞管20の管長を簡単に変更することができ、作業性を良好にすることができる。
【0025】
(第3の実施例)
次に、第3の実施例に係るグロメット10について説明する。第3の実施例に係るグロメット10の基本構成は、前述した第2の実施例に係るグロメットの構成と基本的に共通しており、片側閉塞管の構成において異なっている。そこで以下の説明では、第2の実施例に係るグロメット10と異なる構成について説明し、共通の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0026】
第3の実施例に係るグロメット10の片側閉塞管40は、閉塞部22で閉塞された閉塞端側および開口端側の双方で管長Lを変更可能に構成されている。具体的に、このグロメット10の片側閉塞管40は、錐台部12の外面側に、前述した第2の実施例と同様に基管部32と閉塞管部34と接続管部36(以下、第3の実施例では第1の接続管部という)とを備えている。また、以下の説明では、第1の接続管部36が基管部32の外側で繋がるように位置する基準状態を第1の基準状態とし、第1の接続管部36が反転して基管部32の内側に位置すると共に当該反転した第1の接続管部36の内側に閉塞管部34が位置する短縮状態を第1の短縮状態とする。
【0027】
そして、錐台部12の内面側には、当該錐台部12に繋がる第1の開管部42と、当該第1の開管部42の突出端に設けられて錐台部12の軸方向に延在する第2の接続管部44と、当該第2の接続管部44の突出端に設けられて錐台部12の軸方向に延在する第2の開管部46とが設けられている。この第1の開管部42、第2の接続管部44および第2の開管部46の夫々は、その軸線が一致すると共に両端部が開口して相互に連通した一連の筒をなすよう形成されると共に、当該第1の開管部42が基管部32に連通して閉塞部22により片側閉塞管40の一端が閉塞された閉管をなすように形成されている。
【0028】
ここで、第2の接続管部44は、その外径が第1の開管部42の内径より小さくなるよう形成されると共に、第2の開管部46は、その外径が第2の接続管部44の内径より小さくなるよう形成されている。すなわち、第2の接続管部44が第1の開管部42の外側で繋がるように位置する第2の基準状態(第3の状態、図6(a)参照)において、第2の開管部46をその突出端側(開口端側)から基端側に向けて押し込むことで、第2の接続管部44が反転して第1の開管部42の内側に位置すると共に当該反転した第2の接続管部44の内側に第2の開管部46が位置する第2の短縮状態(第4の状態、図6(b)参照)に変形し得ると共に、この第2の状態で第2の開管部46をその基端側から突出端側に向けて引き出すことで、第2の接続管部44が第1の開管部42の外側で繋がる第2の基準状態に変形し得るようになっている。このように、第3の実施例に係るグロメット10の片側閉塞管40は、その両端(閉塞端および開口端)で管長Lを伸縮可能になっている。また、第2の開管部46の突出端側には、径方向外方に円環状に突出するフランジ部48が設けられており、このフランジ部48が第2の短縮状態で第1の開管部42および第2の接続管部44の外側に位置して、当該フランジ部48を摘まんで第2の開管部46を容易に引き出し得るようにしてある。
【0029】
そして、第3の実施例に係るグロメット10の片側閉塞管40は、少なくとも第1の短縮状態および第2の短縮状態の何れかの状態においてその管長LがL≦20mm、45mm≦L≦60mmの範囲の長さとなるよう形成されている。具体的に本実施形態では、第1の短縮状態かつ第2の短縮状態での管長Lを50mmになるよう形成してある。このような片側閉塞管40の管長Lにすることで、当該片側閉塞管40の不使用時での標準大気中における片側閉塞管40による共鳴周波数を2,000Hz以下または4,000Hz以上にすることができる。これにより、不使用時には片側閉塞管40を短縮状態にすることで、片側閉塞管40における共鳴現象で発生した音を聞き取られ難くすることができるから、結果的に乗員へ与える不快感を抑制し得ると共に、室内の静粛性を高めることができ、第1の実施例に係るグロメット10と同様のその他の作用効果を期待できる。そして、装備追加時などにおいて片側閉塞管40にワイヤハーネスWHや配管などを挿通する使用時には片側閉塞管40を第1の基準状態および第2の基準状態(伸張状態)にすることで、片側閉塞管40の管長を十分に確保することができ、当該片側閉塞管40に挿通するワイヤハーネスWHや配管などの保持性を高めることができる。また、閉塞管部34を基管部32に対して、或いは第2の開管部46を第1の開管部42に対して、押し込んだり引き出すようにすることで片側閉塞管40の管長を簡単に変更することができ、作業性を良好にすることができる。
【0030】
また、片側閉塞管40における閉塞端側および開口端側の双方で管長を変更し得るようにし、片側の端部側を操作して短縮状態(第1の短縮状態または第2の短縮状態)にすることで片側閉塞管40による共鳴周波数が2,000Hz以下または4,000Hz以上となるようにした場合には、両端側を操作して短縮状態(第1の短縮状態かつ第2の短縮状態)にする場合よりもグロメット10の取付作業性をより一層高めることができる。また、片側閉塞管40の両端を操作して短縮状態(第1の短縮状態かつ第2の短縮状態)にする構成では、不使用時の片側閉塞管40をよりコンパクトにすることができ、片側閉塞管40が他の構成部材に干渉するのを防止できる。
【0031】
(変更例)
前述した実施例の構成に限定されず、例えば以下のように変更することができる。
(1) グロメットに片側閉塞管を1箇所備えた構成を例示したが、これに限らず、複数の片側閉塞管を備えるようにすることもできる。また、グロメットが備える複数の片側閉塞管部は同一の構成である必要はなく、第1の実施例に係る片側閉塞管部20と第2の実施例に係る片側閉塞管部30のように異なる構成の片側閉塞管部を設けるようにしてもよい。
(2) 片側閉塞管の管長を伸縮可能にする構成としては、第2の実施例や第3の実施例に示した構成に限らず、片側閉塞管を蛇腹形状の形成するようにしてもよく、管状体の長さを可変する従来公知の各種構成を採用できる。
(3) 第2の実施例では片側閉塞管30の閉塞端で管長を伸縮可能に構成し、第3の実施例では片側閉塞管40の閉塞端および開口端の双方で管長を伸縮可能に構成したが、片側閉塞管の開口端でのみ管長を伸縮可能に構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 グロメット,12 錐台部,14 貫通状管部,18 パネル係合部
20,30,40 片側閉塞管部,22 閉塞部,32 基管部,34 閉塞管部,
36 接続管部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-10-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルに形成された貫通孔に取り付けられるグロメットであって、
一方端部が閉塞し、管長を伸縮可能に形成された片側閉塞管部を備え、
前記片側閉塞管部は、基管部と、閉塞部により突出端側が閉塞された閉塞管部と、当該基管部および閉塞管部を繋ぐ接続管部とを備え、
前記接続管部が前記基管部の外側に繋がるように位置する第1の状態と、前記接続管部が当該第1の状態から反転するようにして前記基管部の内側に位置する第2の状態とに変形することで、前記片側閉塞管部の管長を伸縮可能になっていることを特徴とするグロメット。
【請求項2】
パネルに形成された貫通孔に取り付けられるグロメットであって、
一方端部が閉塞し、管長を伸縮可能に形成された片側閉塞管部を備え、
前記片側閉塞管部は蛇腹形状を備えることを特徴とするグロメット。
【請求項3】
パネルに形成された貫通孔に取り付けられるグロメットであって、
一方端部が閉塞し、管長を伸縮可能に形成された片側閉塞管部を備え、
前記片側閉塞管部は、閉塞部により閉塞された閉塞端および開口端の両端側で管長を伸縮可能に形成したことを特徴とするグロメット。
【請求項4】
パネルに形成された貫通孔に取り付けられるグロメットであって、
内径が漸次縮小する錐台状の錐台部と、
前記錐台部に設けられ、一方端部が閉塞した片側閉塞管部と、を備え、
前記錐台部の大径側が音源に対して開口していることを特徴とするグロメット。