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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181193
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】情報処理装置、及び、情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   A63H 1/00 20190101AFI20231214BHJP
   G06F 3/16 20060101ALN20231214BHJP
【FI】
A63H1/00 Z
G06F3/16 650
G06F3/16 690
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172406
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2020502053の分割
【原出願日】2018-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2018032416
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 紀明
(57)【要約】
【課題】ユーザとのコミュニケーションをより自然かつ効果的に実現する。
【解決手段】移動体の動作を制御する動作制御部を備え、前記移動体は車輪を有し、前記動作制御部は、前記移動体を、前記移動体の垂直方向に対して前方方向に傾いた前傾姿勢を維持した状態で、前後運動、旋回運動、及び、回転運動を含む移動動作をさせ、前記移動体の重心が、前記前傾姿勢時に前記移動体の前記車輪の回転軸の鉛直上に位置するように前記移動動作を制御し、前記移動体は、距離センサ の情報を用いて、障害物及び段差を検出し、前記前傾姿勢を維持した状態で、前記検出した障害物 及び段差を回避した前記移動動作を行う、情報処理装置を提供する。
【選択図】図13B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の動作を制御する動作制御部を備え、
前記移動体は車輪を有し、
前記動作制御部は、
前記移動体を、前記移動体の垂直方向に対して前方方向に傾いた前傾姿勢を維持した状態で、前後運動、旋回運動、及び、回転運動を含む移動動作をさせ、
前記移動体の重心が、前記前傾姿勢時に前記移動体の前記車輪の回転軸の鉛直上に位置するように前記移動動作を制御し、
前記移動体は、距離センサの情報を用いて、障害物及び段差を検出し、前記前傾姿勢を維持した状態で、前記検出した障害物及び段差を回避した前記移動動作を行う、
情報処理装置。
【請求項2】
前記移動体の背面側には、前記前傾姿勢時にバランスを保つための重量部品が配置されている、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記動作制御部は、ユーザと前記移動体とのコミュニケーションを誘因する誘因動作を前記移動体に能動的に実行させ、
前記誘因動作および前記コミュニケーションは、少なくとも物理空間における前記移動体の挙動を含む、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記誘因動作は、前記ユーザに所定行動を行わせるための動作を含む、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記誘因動作は、前記ユーザに前記移動体との共同行動を行わせるための動作を含む、
請求項3又は4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記共同行動は、前記ユーザと前記移動体とによるゲームを含む、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記ゲームは、前記ユーザおよび前記移動体の物理的動作を要する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記誘因動作は、前記ユーザに物品の位置を示す動作を含む、
請求項3~7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記動作制御部は、前記ユーザが前記物品を探していることが推定された場合、前記物品の位置を示す動作を前記移動体に実行させる、
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記誘因動作は、前記移動体と他の装置との間のコミュニケーションを含む、
請求項3~9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記誘因動作は、前記ユーザを睡眠に誘導させるための動作を含む、
請求項3~10のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記動作制御部は、前記ユーザの睡眠が開始されたことに基づいて、前記移動体に照明装置を消灯させる、
請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
プロセッサが、車輪を有する移動体の動作を制御すること、
を含み、
前記制御することは、
前記移動体を、前記移動体の垂直方向に対して前方方向に傾いた前傾姿勢を維持した状態で、前後運動、旋回運動、及び、回転運動を含む移動動作をさせることと、
前記移動体の重心が、前記前傾姿勢時に前記移動体の前記車輪の回転軸の鉛直上に位置するように前記移動動作を制御することと、
を含み、
前記移動体は、距離センサの情報を用いて、障害物及び段差を検出し、前記前傾姿勢を維持した状態で、前記検出した障害物及び段差を回避した前記移動動作を行う、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、及び、情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザのアクションに対する応答を行う種々の装置が普及している。上記のような装置には、ユーザからの問い合わせに対する回答を提示するエージェントなどが含まれる。例えば、特許文献1には、出力情報に対するユーザの注意力の期待値を算出し、当該期待値に基づいて情報出力を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-132878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年のエージェントにおいては、単なる情報提示に加え、ユーザとのコミュニケーションをより重視する傾向が認められる。しかし、特許文献1に記載されるような、ユーザのアクションに対して応答を行う装置では、十分なコミュニケーションが発生しているとは言い難い。
【0005】
そこで、本開示では、ユーザとのコミュニケーションをより自然かつ効果的に実現することが可能な、新規かつ改良された情報処理装置、及び、情報処理方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、移動体の動作を制御する動作制御部を備え、前記移動体は車輪を有し、前記動作制御部は、前記移動体を、前記移動体の垂直方向に対して前方方向に傾いた前傾姿勢を維持した状態で、前後運動、旋回運動、及び、回転運動を含む移動動作をさせ、前記移動体の重心が、前記前傾姿勢時に前記移動体の前記車輪の回転軸の鉛直上に位置するように前記移動動作を制御し、前記移動体は、距離センサ の情報を用いて、障害物及び段差を検出し、前記前傾姿勢を維持した状態で、前記検出した障害物 及び段差を回避した前記移動動作を行う、情報処理装置が提供される。
【0007】
また、本開示によれば、プロセッサが、車輪を有する移動体の動作を制御することを含み、前記制御することは、前記移動体を、前記移動体の垂直方向に対して前方方向に傾いた前傾姿勢を維持した状態で、前後運動、旋回運動、及び、回転運動を含む移動動作をさせることと、前記移動体の重心が、前記前傾姿勢時に前記移動体の前記車輪の回転軸の鉛直上に位置するように前記移動動作を制御することと、を含み、前記移動体は、距離センサの情報を用いて、障害物及び段差を検出し、前記前傾姿勢を維持した状態で、前記検出した障害物及び段差を回避した前記移動動作を行う、情報処理方法が提供される。
【0008】
また、本開示によれば、コンピュータを、自律移動体の動作を制御する動作制御部、を備え、前記動作制御部は、前記自律移動体を前傾姿勢を維持した状態で移動動作させ、前記移動動作は、前後運動、旋回、または回転運動のうち少なくともいずれかを含む、情報処理装置、として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本開示によれば、ユーザとのコミュニケーションをより自然かつ効果的に実現することが可能となる。
【0010】
なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、または本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係る自律移動体の正面図および背面図である。
図2】同実施形態に係る自律移動体の斜視図である。
図3】同実施形態に係る自律移動体の側面図である。
図4】同実施形態に係る自律移動体の上面図である。
図5】同実施形態に係る自律移動体の底面図である。
図6】同実施形態に係る自律移動体の内部構造について説明するための概略図である。
図7】同実施形態に係る基板の構成を示す図である。
図8】同実施形態に係る基板の一断面図である。
図9】同実施形態に係る車輪の周辺構造を示す図である。
図10】同実施形態に係る車輪の周辺構造を示す図である。
図11】同実施形態に係る自律移動体の前傾走行について説明するための図である。
図12】同実施形態に係る自律移動体の前傾走行について説明するための図である。
図13A】実施形態に係る自律移動体10の前傾動作が奏する効果について説明するための図である。
図13B】実施形態に係る自律移動体10の前傾動作が奏する効果について説明するための図である。
図14】同実施形態に係る情報処理システムの構成例を示すブロック図である。
図15】同実施形態に係る自律移動体の機能構成例を示すブロック図である。
図16】同実施形態に係る情報処理サーバの機能構成例を示すブロック図である。
図17】同実施形態に係るユーザに所定行動を行わせるための誘因動作の一例を示す図である。
図18】同実施形態に係るユーザに所定行動を行わせるための誘因動作の一例を示す図である。
図19】同実施形態に係るユーザに所定行動を行わせるための誘因動作の一例を示す図である。
図20】同実施形態に係るユーザに所定行動を行わせるための誘因動作の一例を示す図である。
図21】同実施形態に係るユーザと自律移動体との共同行動を誘因する誘因行動の一例を示す図である。
図22】同実施形態に係るユーザと自律移動体との共同行動を誘因する誘因行動の一例を示す図である。
図23】同実施形態に係るユーザと自律移動体との共同行動を誘因する誘因行動の一例を示す図である。
図24】同実施形態に係るユーザと自律移動体との共同行動を誘因する誘因行動の一例を示す図である。
図25】同実施形態に係る物品位置の提示に係る誘因動作について説明するための図である。
図26】同実施形態に係るユーザを睡眠に誘導させるための誘因動作について説明するための図である。
図27】同実施形態に係る自律移動体と他の装置とのコミュニケーションについて説明するための図である。
図28】同実施形態に係る自律移動体と他の装置とのコミュニケーションについて説明するための図である。
図29】同実施形態に係る情報処理サーバによる自律移動体10の制御の流れを示すフローチャートである。
図30】同実施形態に係る認識処理から動作制御までの流れの一例を示すフローチャートである。
図31】本開示の一実施形態に係るハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.実施形態
1.1.概要
1.2.自律移動体10の構成例
1.3.システム構成例
1.4.自律移動体10の機能構成例
1.5.情報処理サーバ20の機能構成例
1.6.誘因動作の詳細
1.7.自律移動体10の成長例
1.8.制御の流れ
2.ハードウェア構成例
3.まとめ
【0014】
<1.実施形態>
<<1.1.概要>>
まず、本開示の一実施形態の概要について述べる。上述したように、近年では、ユーザのアクションに対する応答動作を行う種々のエージェント装置が普及している。エージェント装置は、例えば、ユーザからの問い合わせに対し、種々の情報提示を行うことが可能である。上記の情報提示には、例えば、ユーザに対する推薦情報、スケジュール、ニュースなどの提示が含まれる。
【0015】
しかし、多くの場合、エージェント装置は、ユーザが入力する指示コマンドに応じて上記のような動作を実行する。上記の指示コマンドには、例えば、音声によるキーワード入力、機能実行のためのボタン押下などが挙げられる。このため、上記のようなエージェント装置による情報提示は受動的な動作であり、ユーザとのコミュニケーションを活発化させるものとは言い難い。
【0016】
また、エージェント装置には、音声などを用いてユーザとの連続的な対話を行うものもあるが、多くの場合は、ユーザの指示コマンドに対する受動的な動作を繰り返し実行しているだけに留まり、真のコミュニケーションを実現しているとは言い難い。
【0017】
本開示に係る技術思想は上記の点に着目して発想されたものであり、ユーザとのコミュニケーションをより自然かつ効果的に実現することを可能とする。このために、本実施形態に係る自律移動体10は、ユーザとのコミュニケーションを誘因する種々の動作(以下、誘因動作、とも称する)を能動的に実行することを特徴の一つとする。
【0018】
例えば、本実施形態に係る自律移動体10は、環境認識に基づいて、ユーザに対し能動的な情報提示を行うことが可能である。また、例えば、自律移動体10は、ユーザの所定行動を促す種々の誘因動作を能動的に実行する。この点において、本実施形態に係る自律移動体10は、指示コマンドに基づいて受動的な動作を行う装置とは明確に相違する。
【0019】
また、本実施形態に係る自律移動体10による誘因動作は、物理空間に対する能動的かつ積極的な干渉であるといえる。本実施形態に係る自律移動体10は、物理空間において移動を行い、ユーザや生物、物品などに対して種々の物理的動作を実行することが可能である。本実施形態に係る自律移動体10が有する上記の特徴によれば、ユーザは視覚、聴覚、また触覚を通じて自律移動体10の動作を包括的に認知することができ、単に音声を用いてユーザとの対話を行う場合などと比べ、高度なコミュニケーションを実現することができる。
【0020】
以下、上記の特徴を実現する本実施形態に係る自律移動体10、および自律移動体10を制御する情報処理サーバ20の機能について詳細に説明する。
【0021】
<<1.2.自律移動体10の構成例>>
次に、本開示の一実施形態に係る自律移動体10の構成例について説明する。本実施形態に係る自律移動体10は、環境認識に基づく自律動作を行う種々の装置であり得る。以下においては、本実施形態に係る自律移動体10が車輪による自律走行を行う長楕円体のロボットである場合を例に説明する。本実施形態に係る自律移動体10は、例えば、ユーザが片手で容易に持ち上げられる程度の大きさおよび重量を有する小型ロボットであってもよい。
【0022】
まず、図1~5を参照して、本実施形態に係る自律移動体10の外装について一例を述べる。図1は、本実施形態に係る自律移動体10の正面図および背面図である。また、図2は、本実施形態に係る自律移動体10の斜視図である。また、図3は、本実施形態に係る自律移動体10の側面図である。また、図4および図5は、それぞれ本実施形態に係る自律移動体10の上面図および底面図である。
【0023】
図1図4に示すように、本実施形態に係る自律移動体10は、本体上部に右眼および左眼に相当する2つの眼部510を備える。眼部510は、例えば、LEDなどにより実現され、視線や瞬きなどを表現することができる。なお、眼部510は、上記の例に限定されず、例えば、単一または独立した2つのOLED(Organic Light Emitting Diode)などにより実現されてもよい。
【0024】
また、本実施形態に係る自律移動体10は、眼部510の上方に2つのカメラ515を備える。カメラ515は、ユーザや周囲環境を撮像する機能を有する。また、自律移動体10は、カメラ515により撮像された画像に基づいて、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を実現することができる。
【0025】
なお、本実施形態に係る眼部510およびカメラ515は、外装表面の内部に配置される基板505上に配置される。また、本実施形態に自律移動体10の外装表面は、基本的に不透明な素材を用いて形成されるが、眼部510およびカメラ515が配置される基板505に対応する部位については、透明、あるいは半透明素材を用いた頭部カバー550が設けられる。これにより、ユーザは、自律移動体10の眼部510を認識することができ、また自律移動体10は外界を撮像することができる。
【0026】
また、図1図2、および図5に示すように、本実施形態に係る自律移動体10は、正面下部にToFセンサ520を備える。ToFセンサ520は、前方に存在する物体との距離を検出する機能を有する。ToFセンサ520によれば、種々の物体との距離を精度高く検出することができ、また段差などを検出することで、落下や転倒を防止することができる。
【0027】
また、図1図3などに示すように、本実施形態に係る自律移動体10は、背面に外部装置の接続端子555および電源スイッチ560を備えてもよい。自律移動体10は、接続端子555を介して外部装置と接続し情報通信を行うことができる。
【0028】
また、図5に示すように、本実施形態に係る自律移動体10は、底面に2つの車輪570を備える。本実施形態に係る車輪570は、それぞれ異なるモータ565により駆動される。これにより自律移動体10は、前進、後退、旋回、回転などの移動動作を実現することができる。また、本実施形態に係る車輪570は、本体内部への格納、および外部への突出が可能なように備えられる。本実施形態に係る自律移動体10は、例えば、2つの車輪570を勢いよく外部へと突出させることでジャンプ動作を行うことも可能である。なお、図5には、車輪570が本体内部へ格納された状態が示されている。
【0029】
以上、本実施形態に係る自律移動体10の外装について説明した。続いて、本実施形態に係る自律移動体10の内部構造について説明する。図6は、本実施形態に係る自律移動体10の内部構造について説明するための概略図である。
【0030】
図6の左側に示すように、本実施形態に係る自律移動体10は、電子基板上に配置される慣性センサ525および通信装置530を備える。慣性センサ525は、自律移動体10の加速度や角速度を検出する。また、通信装置530は、外部との無線通信を実現するための構成であり、例えば、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)アンテナなどを含む。
【0031】
また、自律移動体10は、例えば、本体側面の内部にスピーカ535を備える。自律移動体10は、スピーカ535により、音声を含む種々の音情報を出力することができる。
【0032】
また、図6の右側に示すように、本実施形態に係る自律移動体10は、本体上部の内側に複数のマイクロフォン540を備える。マイクロフォン540は、ユーザの発話や、周囲の環境音を収集する。また、自律移動体10は、複数のマイクロフォン540を備えることで、周囲で発生する音を感度高く収集すると共に、音源の定位を実現することができる。
【0033】
また、自律移動体10は、図6に示すように、複数のモータ565を備える。自律移動体10には、例えば、眼部510およびカメラ515が配置される基板を垂直方向および水平方向に駆動するために2つのモータ565、左右の車輪570を駆動するために2つのモータ565、および自律移動体10の前傾姿勢を実現するための1つのモータ565を備えてもよい。本実施形態に係る自律移動体10は、上記複数のモータ565により豊かな動作を表現することができる。
【0034】
次に、本実施形態に係る眼部510およびカメラ515が配置される基板505の構成、および眼部510の構成について詳細に説明する。図7は、本実施形態に係る基板505の構成を示す図である。また、図8は、本実施形態に係る基板505の一断面図である。図7を参照すると、本実施形態に係る基板505は、2つのモータ565に接続される。上述したように、2つのモータ565は、眼部510およびカメラ515が配置される基板505を垂直方向および水平方向に駆動することができる。これによれば、自律移動体10の眼部510を垂直方向および水平方向に柔軟に動かすことができ、状況や動作に応じた豊かな眼球動作を表現することが可能となる。
【0035】
また、図7および図8に示すように、眼部510は、虹彩に対応する中央部512と、いわゆる白目に対応する周縁部514から構成される。中央部512は、青、赤、緑などを含む任意の色を、周縁部514は白色をそれぞれ表現する。このように、本実施形態に係る自律移動体10は、眼部510の構成を2つに分離することで、より実際の生物に近い自然な眼球表情を表現することができる。
【0036】
次に、図9および図10を参照して、本実施形態に係る車輪570の構造について詳細に説明する。図9および図10は、本実施形態に係る車輪570の周辺構造を示す図である。図9に示すように、本実施形態に係る2つの車輪570は、それぞれ独立したモータ565により駆動される。係る構成によれば、単純な前進や後退に加え、旋回やその場での回転などの移動動作を細やかに表現することが可能である。
【0037】
また、上述したように、本実施形態に係る車輪570は、本体内部への格納と外部への突出が可能なように備えられる。また、本実施形態に係る車輪570と同軸に、ダンパー575が設けられることで、車軸や本体への衝撃や振動の伝達を効果的に低減することが可能である。
【0038】
また、図10に示すように、本実施形態に係る車輪570には、補助ばね580が設けられてもよい。本実施形態に係る車輪の駆動は、自律移動体10が有する駆動部の中で最もトルクを要するが、補助ばね580を設けることで、駆動部のそれぞれに異なるモータ565を用いることなく、すべてのモータ565を共通化することが可能である。
【0039】
次に、本実施形態に係る自律移動体10の走行時における特徴について説明する。図11は、本実施形態に係る自律移動体10の前傾走行について説明するための図である。本実施形態に係る自律移動体10は、前傾姿勢を保ちながら、前後運動、旋回運動、回転運動などの移動動作を行うことを特徴の一つとする。図11には、走行時における自律移動体10を側面から見た様子が示されている。
【0040】
図11に示すように、本実施形態に係る自律移動体10は、垂直方向に角度θだけ前方向に傾いて移動動作を行うことを特徴の一つとする。角度θは、例えば、10°であり得る。
【0041】
この際、後述する情報処理サーバ20の動作制御部230は、図12に示すように、自律移動体10の重心CoGが車輪570の回転軸CoWの鉛直上に位置するように自律移動体10の移動動作を制御する。また、本実施形態に係る自律移動体10の背面側には、前傾姿勢時にバランスを保つために重量部品hpが配置される。本実施形態に係る重量部品hpは、自律移動体10が備える他の構成部品と比較し、より重要のある部品であってよく、例えば、モータ565やバッテリーなどであり得る。上記の部品配置によれば、頭部が前方に傾いてもバランスを維持した状態でジャイロ制御が容易となり、自律移動体10の意図しない転倒を防止し安定した前傾走行を実現することができる。
【0042】
続いて、本実施形態に係る自律移動体10による前傾姿勢を維持した移動動作についてより詳細に説明する。図13Aおよび図13Bは、本実施形態に係る自律移動体10の前傾動作が奏する効果について説明するための図である。
【0043】
ここで、図13Aには、自律移動体が前傾姿勢を取らない場合の回転動作の一例が示されている。図13Aに示すように、自律移動体10が前傾姿勢を取らず長楕円体を直立させたまま回転や前後運動などの移動動作を行う場合、長楕円体のボディに方向性が感じられず、自律移動体が人工的物体である印象を拭い去ることが困難である。
【0044】
一方、本実施形態に係る自律移動体10は、図13Bに示すように、前傾姿勢を維持した状態で回転などの移動動作を行うことを特徴の一つとする。係る特徴によれば、自律移動体10の前方上部が頭部を、後方下部が腰を想起させることで、単純な長楕円体にも方向性が生じることとなる。
【0045】
このように、本実施形態に係る自律移動体10の前傾動作によれば、ヒトが有する身体部位に相当する構造を比較的単純な外装で表現することができ、単純形態を擬人化することで、単なる人工物を超えた生命体としての印象をユーザに与えることが可能となる。以上説明したように、本実施形態に係る前傾動作は、長楕円体などの比較的単純な外装を有するロボットの表情を豊かに表現することを可能とし、また実際の生物のような複雑な動作を想起させることが可能な非常に有効な手段といえる。
【0046】
以上、本開示の一実施形態に係る自律移動体10の構成例について詳細に説明した。なお、図1~13Bを用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本開示の一実施形態に係る自律移動体10の構成は係る例に限定されない。本実施形態に係る自律移動体10の形状および内部構造は任意に設計可能である。本実施形態に係る自律移動体10は、例えば、歩行型、飛行型、遊泳型のロボットなどとして実現することも可能である。
【0047】
<<1.3.システム構成例>>
次に、本開示の一実施形態に係る情報処理システムの構成例について述べる。図14は、本実施形態に係る情報処理システムの構成例を示すブロック図である。図14を参照すると、本実施形態に係る情報処理システムは、自律移動体10、情報処理サーバ20、および被操作装置30を備える。また、各構成は、ネットワーク40を介して接続される。
【0048】
(自律移動体10)
本実施形態に係る自律移動体10は、情報処理サーバ20による制御に基づく自律動作を行う情報処理装置である。上述したように、本実施形態に係る自律移動体10は、走行型、歩行型、飛行型、遊泳型などの種々のロボットであり得る。
【0049】
(情報処理サーバ20)
本実施形態に係る情報処理サーバ20は、自律移動体10の動作を制御する情報処理装置である。本実施形態に係る情報処理サーバ20は、自律移動体10に、ユーザとのコミュニケーションを誘因する種々の誘因動作を実行させる機能を有する。なお、上記の誘因動作およびコミュニケーションは、物理空間における自律移動体10の挙動を含むこと、を特徴の一つとする。
【0050】
(被操作装置30)
本実施形態に係る被操作装置30は、情報処理サーバ20および自律移動体10により操作される種々の装置である。本実施形態に係る自律移動体10は、情報処理サーバ20による制御に基づいて、種々の被操作装置30を操作することが可能である。本実施形態に係る被操作装置30は、例えば、照明装置、ゲーム機器、テレビジョン装置などの家電機器であってもよい。
【0051】
(ネットワーク40)
ネットワーク40は、情報処理システムが備える各構成を接続する機能を有する。ネットワーク40は、インターネット、電話回線網、衛星通信網などの公衆回線網や、Ethernet(登録商標)を含む各種のLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などを含んでもよい。また、ネットワーク40は、IP-VPN(Internet Protocol-Virtual Private Network)などの専用回線網を含んでもよい。また、ネットワーク40は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)など無線通信網を含んでもよい。
【0052】
以上、本開示の一実施形態に係るシステム構成例について説明した。なお、図14を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本開示の一実施形態に係る情報処理システムの構成は係る例に限定されない。例えば、情報処理サーバ20が有する制御機能は、自律移動体10の機能として実装されてもよい。本開示の一実施形態に係るシステム構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形され得る。
【0053】
<<1.4.自律移動体10の機能構成例>>
次に、本開示の一実施形態に係る自律移動体10の機能構成例について述べる。図15は、本実施形態に係る自律移動体10の機能構成例を示すブロック図である。図15を参照すると、本実施形態に係る自律移動体10は、センサ部110、入力部120、光源130、音声出力部140、駆動部150、制御部160、および通信部170を備える。
【0054】
(センサ部110)
本実施形態に係るセンサ部110は、ユーザや周囲に係る種々のセンサ情報を収集する機能を有する。このために、本実施形態に係るセンサ部110は、例えば、上述したカメラ515、ToFセンサ520、マイクロフォン540、慣性センサ525などを備える。また、センサ部110は、上記の他、例えば、地磁気センサ、タッチセンサ、赤外線センサなどを含む種々の光センサ、温度センサ、湿度センサなどの様々なセンサを備えてよい。
【0055】
(入力部120)
本実施形態に係る入力部120は、ユーザによる物理的な入力操作を検出する機能を有する。本実施形態に係る入力部120は、例えば、電源スイッチ560などのボタンを備える。
【0056】
(光源130)
本実施形態に係る光源130は、自律移動体10の眼球動作を表現する。このために、本実施形態に係る光源130は、2つの眼部510を備える。
【0057】
(音声出力部140)
本実施形態に係る音声出力部140は、音声を含む種々の音を出力する機能を有する。このために、本実施形態に係る音声出力部140は、スピーカ535やアンプなどを備える。
【0058】
(駆動部150)
本実施形態に係る駆動部150は、自律移動体10の身体動作を表現する。このために、本実施形態に係る駆動部150は、2つの車輪570や複数のモータ565を備える。
【0059】
(制御部160)
本実施形態に係る制御部160は、自律移動体10が備える各構成を制御する機能を有する。制御部160は、例えば、各構成の起動や停止を制御する。また、制御部160は、情報処理サーバ20により生成される制御信号を光源130や音声出力部140、駆動部150に入力する。また、本実施形態に係る制御部160は、後述する情報処理サーバ20の動作制御部230と同等の機能を有してもよい。
【0060】
(通信部170)
本実施形態に係る通信部170は、情報処理サーバ20、被操作装置30、またその他の外部装置との情報通信を行う。このために、本実施形態に係る通信部170は、接続端子555や通信装置530を備える。
【0061】
以上、本開示の一実施形態に係る自律移動体10の機能構成例について説明した。なお、図15を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本開示の一実施形態に係る自律移動体10の機能構成は係る例に限定されない。例えば、本実施形態に係る自律移動体10は、図15に示す構成のすべてを必ずしも備えなくてもよい。本実施形態に係る自律移動体10の機能構成は、自律移動体10の形状などに応じて柔軟に変形可能である。
【0062】
<<1.5.情報処理サーバ20の機能構成例>>
次に、本開示の一実施形態に係る情報処理サーバ20の機能構成例について説明する。図16は、本実施形態に係る情報処理サーバ20の機能構成例を示すブロック図である。図16を参照すると、本実施形態に係る情報処理サーバ20は、認識部210、行動計画部220、動作制御部230、および通信部240を備える。
【0063】
(認識部210)
認識部210は、自律移動体10が収集したセンサ情報に基づいて、ユーザや周囲環境、また自律移動体10の状態に係る種々の認識を行う機能を有する。一例としては、認識部210は、ユーザ識別、表情や視線の認識、物体認識、色認識、形認識、マーカー認識、障害物認識、段差認識、明るさ認識などを行ってよい。
【0064】
また、認識部210は、ユーザの声に係る感情認識、単語理解、音源定位などを行う。また、認識部210は、周囲の温度、動物体の存在、自律移動体10の姿勢などを認識することができる。
【0065】
さらには、認識部210は、認識した上記の情報に基づいて、自律移動体10が置かれた周囲環境や状況を推定し、理解する機能を有する。この際、認識部210は、事前に記憶される環境知識を用いて総合的に状況推定を行ってもよい。
【0066】
(行動計画部220)
行動計画部220は、認識部210が推定した状況と学習知識に基づいて、自律移動体10が行う行動を計画する機能を有する。行動計画部220は、例えば、ディープラーニングなどの機械学習アルゴリズムを用いて行動計画を実行する。
【0067】
(動作制御部230)
本実施形態に係る動作制御部230は、行動計画部220による行動計画に基づいて、自律移動体10の動作制御を行う。動作制御部230は、例えば、長楕円体の外形を有する自律移動体10を前傾姿勢を維持したまま移動動作させてよい。上述したように、上記の移動動作には、前後運動、旋回運動、回転運動などが含まれる。また、本実施形態に係る動作制御部230は、ユーザと自律移動体10とのコミュニケーションを誘因する誘因動作を自律移動体10に能動的に実行させること、を特徴の一つとする。上述したように、本実施形態に係る誘因動作およびコミュニケーションは、物理空間における自律移動体10の物理的な挙動を含んでよい。本実施形態に係る動作制御部230により実現される誘因動作の詳細については別途後述する。
【0068】
(通信部240)
本実施形態に係る通信部240は、自律移動体10や被操作対象との情報通信を行う。例えば、通信部240は、自律移動体10からセンサ情報を受信し、動作に係る制御信号を自律移動体10に送信する。
【0069】
以上、本開示の一実施形態に係る情報処理サーバ20の機能構成例について説明した。なお、図16を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本開示の一実施形態に係る情報処理サーバ20の機能構成は係る例に限定されない。例えば、情報処理サーバ20が有する各種の機能は複数の装置により分散されて実現されてもよい。また、情報処理サーバ20が有する機能は、自律移動体10の機能として実現されてもよい。本実施形態に係る情報処理サーバ20の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形され得る。
【0070】
<<1.6.誘因動作の詳細>>
次に、本実施形態に係る動作制御部230により実現される自律移動体10の誘因動作について具体例を挙げながら説明する。上述したように、本実施形態に係る自律移動体10は、動作制御部230による制御に基づいて種々の誘因動作を能動的に実行することができる。また、本実施形態に係る自律移動体10は、物理的な挙動を伴う誘因動作を行うことで、より印象的にユーザに働きかけ、コミュニケーションを活性化させることが可能である。
【0071】
本実施形態に係る誘因動作は、例えば、ユーザに所定行動を行わせるための動作であってもよい。図17図20は、ユーザに所定行動を行わせるための誘因動作の一例を示す図である。
【0072】
図17には、自律移動体10がユーザの起床を促す誘因動作を行う場合の一例が示されている。本実施形態に係る動作制御部230は、例えば、日々のユーザの起床習慣や、ユーザの当日のスケジュールに基づいて、自律移動体10にユーザU1の起床を促す誘因動作を実行させることができる。
【0073】
この際、動作制御部230は、「朝、起きろ!」などの音声発話SO1やアラーム音またはBGMを自律移動体10に出力させる。このように、本実施形態に係る誘因動作は、音声によるコミュニケーションの誘因を含む。この際、本実施形態に係る動作制御部230は、敢えて自律移動体10に出力させる音声の単語数を限定したり(片言としたり)、順不同とすることで、愛らしさや憎めなさなどを表現してもよい。なお、自律移動体10の音声に係る流暢さについては、学習に伴い向上してもよいし、初めから流暢に話すように設計されてもよい。また、ユーザによる設定に基づいて変更されてもよい。
【0074】
また、この際、動作制御部230は、ユーザU1が音声発話SO1やアラーム音などを止めようとした場合、当該停止動作を阻害するように、ユーザU1から逃げ回る誘因動作を自律移動体10に実行させてもよい。このように、本実施形態に係る動作制御部230および自律移動体10によれば、設定された時間に単にアラーム音を受動的に出力する場合とは異なり、物理的動作を伴うより深みのある連続的なコミュニケーションを実現することが可能である。
【0075】
また、図18には、自律移動体10がユーザU1に暴食の停止を促す誘因動作を行う場合の一例が示されている。このように、本実施形態に係る所定行動を行わせる誘因動作には、所定行動を停止させる動作が含まれてよい。図18に示す一例の場合、動作制御部230は、「食べ過ぎ、太る、ダメ」などの音声発話SO2を出力させるとともに、テーブル上を駆け回る誘因動作を自律移動体10に実行させている。
【0076】
このように、本実施形態に係る動作制御部230および自律移動体10によれば、画像認識などに基づく健康状態などに対する警告を単に音声により受動的に行う場合と比べ、物理的動作を伴う警告を行うことで、ユーザにより深い印象を与え、警告効果を高めることができる。また、図示するような誘因動作によれば、当該誘因動作に煩わしさを覚えたユーザが、誘因動作を停止させようとする、自律移動体10に対して文句を言う、などのさらなるコミュニケーションを招く効果も期待される。
【0077】
また、図19には、自律移動体10がユーザU1にセールの情報を提供し、当該セールへユーザを誘導する誘因動作を行う場合の一例が示されている。このように、本実施形態に係る情報処理サーバ20は、ネットワーク上から収集した店舗情報やイベント情報、またユーザの嗜好等に基づいて、種々の情報提示を自律移動体10に実行させることができる。
【0078】
図19に示す一例の場合、動作制御部230は、「セール、お得、行こう」という音声発話SO3を自律移動体10に出力させるとともに、ユーザU1が所持する被操作装置30にセール情報を表示させる。この際、被操作装置30に表示されるセール情報の制御は、動作制御部230が直接行ってもよいし、自律移動体10の制御部160が通信部170を介して実行してもよい。
【0079】
また、図19に示す一例の場合では、動作制御部230は、音声発話SO3を自律移動体10に出力させるとともに、自律移動体10にジャンプを含む誘因動作を実行させている。上述したように、本実施形態に係る自律移動体10は、車輪570を勢いよく外部へ突出させることでジャンプ動作を実現することが可能である。
【0080】
このように、本実施形態に係る動作制御部230および自律移動体10によれば、推薦情報を単に音声や視覚情報を用いて提供する場合と比べ、物理的動作を伴う推薦を行うことで、ユーザにより深い印象を与え、情報提供の効果を高めることができる。
【0081】
また、本実施形態に係る動作制御部230は、この際、自律移動体10に、「連れてけ、一緒行く」、などの音声発話を出力させてもよい。本実施形態に係る自律移動体10は、ユーザが片手で容易に持ち上げられる大きさおよび重量を有し、例えば、車両に設けられるペットボトルホルダなどに収納可能な大きさで形成され得る。このため、ユーザは、自律移動体10を気軽に外部へ持ち出すことが可能である。さらには、例えば、車両での移動中においては、動作制御部230は、自律移動体10に目的地までのナビゲーションを実行させるなどして、ユーザの利便性を高めることができる。
【0082】
また、図20には、自律移動体10がユーザU1に話の継続を促す誘因動作を行う場合の一例が示されている。図20に示す一例の場合、動作制御部230は、自律移動体10の駆動部150を制御し、前傾動作と後傾動作を繰り返させることで、頷き(相槌)を表現させている。また、動作制御部230は、この際、ユーザU1によるユーザ発話UO1に含まれる単語を用いた音声発話SO4を自律移動体10に出力させることで、ユーザU1の発話を聴いていることをアピールさせてもよい。
【0083】
なお、情報処理サーバ20は、ユーザU1が落ち込んでいることを認識した場合に、上記のような誘因動作を自律移動体10に実行させてもよい。動作制御部230は、例えば、自律移動体10をユーザU1に接近させるとともに、「なにか、あった?」や「話、聞くよ」などの音声発話を自律移動体10に出力させることで、ユーザU1に話のきっかけを与えることができる。
【0084】
このように、本実施形態に係る動作制御部230および自律移動体10によれば、単純にユーザの発話に応答を示す場合と比べ、より身近かつ親身な話し相手としてユーザに接することができ、より深く、また継続的なコミュニケーションを実現することが可能である。
【0085】
また、本実施形態に係る誘因動作は、ユーザに自律移動体10との共同行動を行わせるための動作を含んでよい。上記の共同行動は、例えば、ユーザと自律移動体10とによるゲームを含む。すなわち、本実施形態に係る動作制御部230は、ユーザをゲームに誘う誘因行動を自律移動体10に実行させることができる。
【0086】
図21図24は、本実施形態に係るユーザと自律移動体10との共同行動を誘因する誘因行動の一例を示す図である。図21には、自律移動体10がユーザU2と連想ゲームを行う場合の一例が示されている。このように、自律移動体10が誘因動作の対象とするゲームには、言語を用いたゲームが含まれてよい。なお、言語を用いたゲームの一例としては、図21に示す連想ゲームのほか、日本語圏における「しりとり」(英語圏における“Word Chain”に該当)や、ユーザのジェスチャが示すフレーズを自律移動体10が解答する言葉当て遊び(Charades)などが挙げられる。
【0087】
この際、動作制御部230は、音声発話を用いた明示的なゲームの誘いを自律移動体10に行わせてもよいが、ユーザの発話に基づいて、突如ゲームを一方的に開始させることとで、ユーザのゲームへの参加を誘導してもよい。図21に示す一例の場合、動作制御部230は、ユーザU2が発した、「黄色い花が咲いてた」、というユーザ発話UO2に基づいて、当該発話に含まれる「黄色」を用いた連想ゲームの開始に係る音声発話SO5を自律移動体10に出力させている。
【0088】
また、図22には、自律移動体10がユーザU2と「だるまさんが転んだ」(“Red light/Green Light”または“Statues”などに該当)を行う場合の一例が示されている。このように、自律移動体10が誘因動作の対象とするゲームには、ユーザおよび自律移動体10の物理的動作を要するゲームが含まれる。
【0089】
上述したように、本実施形態に係る自律移動体10は、2つの車輪570を有することで、前進や振り向きなど行うことができ、「だるまさんが転んだ」などのゲームをユーザとともに行うことが可能である。なお、情報処理サーバ20の認識部210は、自律移動体10が撮像した画像に含まれるユーザの顔を検出することで、ユーザの振り向き行為を認識することが可能である。また、認識部210は、ユーザ発話UO3およびUO4などからユーザの振り向き行為を認識してもよい。この際、行動計画部220は、振り向き行為が認識されたことに基づいて、その場で停止する行動や敢えて前方に転ぶ行動などを計画し、動作制御部230が当該計画に基づいて自律移動体10の駆動部150を制御する。なお、本実施形態に係る自律移動体10は、振り子などを内蔵することで、自力で転倒状態からの復帰が可能である。
【0090】
なお、動作制御部230は、連想ゲームの場合と同様に、突如ゲームを一方的に開始させることで、ユーザのゲームへの参加を誘導してもよい。この際、情報処理サーバ20は、ユーザの視線が自律移動体10に向いている際には自律移動体10の動作を停止させ、ユーザの視線が外れた際にユーザへの接近動作を行わせる制御を繰り返すことで、ユーザをゲームに誘因することが可能である。
【0091】
また、図23には、自律移動体10がユーザU2と「かくれんぼ」(“Hide and seek”に該当)を行う場合の一例が示されている。図23に示す一例の場合、動作制御部230は、ユーザU2を探していることを示す音声発話SO6とともに、不気味なBGMを自律移動体10に出力させている。係る制御によれば、ユーザU2に徐々に接近してくる自律移動体10の臨場感を効果的に表現し、より深いコミュニケーションを実現することができる。
【0092】
なお、情報処理サーバ20は、例えば、事前に生成したSLAM地図や、ユーザU2が逃げる際に収集した音情報や周囲で発生した物音に係る音源定位を行うことで、自律移動体10にユーザU2を捜索させることが可能である。
【0093】
また、図24には、自律移動体10がユーザU2とコンピュータゲームを行う場合の一例が示されている。このように、本実施形態に係る自律移動体10が誘因動作の対象とするゲームには、コンピュータゲームが含まれてよい。
【0094】
この際、例えば、動作制御部230は、自律移動体10に、ゲーム機器である被操作装置30を勝手に起動させる動作を実行させてもよい。このように、動作制御部230は、ユーザの意図しない、または意図に沿わない動作、すなわち悪戯のような動作を自律移動体10に実行させることができる。上記の悪戯には、例えば図示するような被操作装置30の操作が含まれる。
【0095】
ここで、ユーザU2がコンピュータゲームに参加した場合、動作制御部230は、自律移動体10に、ユーザU2が対戦するゲーム中のキャラクターの立場に立った動作を実行させてもよい。例えば、動作制御部230は、当該キャラクターの動作を自律移動体10が実際に制御しているような振る舞いを自律移動体10に行わせてもよい。上記の制御によれば、ユーザU2に、自律移動体10とコンピュータゲームで対戦している感覚を強く想起させ、自律移動体10をただのロボットを超えたより身近な存在として認知させることができる。
【0096】
また、例えば、動作制御部230は、上記のキャラクターが不利な状況に陥った際には、ユーザU2を妨害するような動作(体当たり、走り回る、震えるなど)を自律移動体10に実行させたり、当該動作に対応する音声発話SO7を出力させてもよい。上記動作制御によれば、コンピュータゲームを介して、ユーザとのより濃密なコミュニケーションを実現することが可能である。
【0097】
以上説明したように、本実施形態に係る動作制御部230は、自律移動体10に、種々のゲームに係る誘因動作を能動的に実行させることで、自律移動体10とユーザとの間における相互的なコミュニケーションを活性化させることが可能である。
【0098】
引き続き、本実施形態に係る誘因動作の具体例について説明を続ける。図25は、本実施形態に係る物品位置の提示に係る誘因動作について説明するための図である。図25には、本実施形態に係る自律移動体10が、ユーザが探しているスマートフォンの位置を示す誘因動作を行う場合の例が示されている。この際、動作制御部230は、例えば、音声発話SO8によりスマートフォンの場所を示すほか、スマートフォンに軽く体当たりをする、スマートフォンの周囲において前後運動を行う、ジャンプする、などの誘因動作を自律移動体10に実行させてもよい。
【0099】
このように、本実施形態に係る動作制御部230は、例えば、ユーザ発話UO5からユーザが所定の物品を探していることが推定された場合、当該物品の位置を示す動作を自律移動体10に実行させることができる。この際、動作制御部230は、自律移動体10に、実際に物品が位置する場所の近くで誘因動作を行わせることで、ユーザに効果的な情報提示を行うことができる。なお、認識部210は、例えば、予め登録された画像情報に基づいて物品の位置を検出してもよいし、物品に付加されたタグなどに基づいて位置を検出してもよい。
【0100】
また、図26は、本実施形態に係るユーザを睡眠に誘導させるための誘因動作について説明するための図である。図26には、自律移動体10がユーザU2を寝かしつけるための読み聞かせを行う場合の一例が示されている。自律移動体10は、例えば、予めデータとして登録されたストーリーや、通信を介して取得された種々のストーリーを朗読することができる。この際、動作制御部230は、普段は自律移動体10の用いる言語(例えば、単語数や語彙)に制限を設けている場合であっても、朗読を行わせる場合には当該制限を解除してよい。
【0101】
また、動作制御部230は、自律移動体10に、ストーリー中におけるキャラクターの声を表現豊かに再現させたり、効果音やBGMなどを併せて出力させてもよい。また、動作制御部230は、台詞や場面に応じた動作を自律移動体10に行わせてもよい。
【0102】
また、動作制御部230は、複数の自律移動体10を制御して、ストーリーの読み聞かせや再現を行うことができる。図26に示す一例の場合、動作制御部230は、ストーリー中における2人のキャラクターを、2台の自律移動体10aおよび10bにそれぞれ演じさせている。このように、本実施形態に係る動作制御部230によれば、音声による単純なストーリーの朗読に留まらず、物理的動作を含む表現豊かなショーをユーザに提供することが可能となる。
【0103】
また、本実施形態に係る動作制御部230は、ユーザの睡眠が開始されたことに基づいて、照明装置である被操作装置30を消灯させる制御を自律移動体10に実行させてもよい。このように、本実施形態に係る情報処理サーバ20および自律移動体10は、ユーザや周囲環境に係る状況の変化に応じた柔軟な動作を実現することが可能である。
【0104】
また、本実施形態に係る誘因動作は、自律移動体10と他の装置とのコミュニケーションであってもよい。図27および図28は、本実施形態に係る自律移動体10と他の装置とのコミュニケーションについて説明するための図である。
【0105】
図27には、自律移動体10が、犬型の自律移動体である他の装置50とユーザとの間の通訳を行う場合の一例が示されている。本例において、動作制御部230は、音声発話SO11を用いて他の装置50の内部状態に係る情報をユーザに提示している。ここで、犬型の自律移動体である他の装置50は、言語によるコミュニケーション手段を有しない装置であってよい。
【0106】
このように、本実施形態に係る動作制御部230は、他の装置50の内部状態に係る情報を自律移動体10を介してユーザに示すことができる。本実施形態に係る動作制御部230が有する上記の機能によれば、ユーザに対する言語を用いた直接的な伝達手段を有しない他の装置50に係る種々の情報をユーザに通知することが可能となり、また、当該通知を介してユーザと自律移動体10、また他の装置50の間のコミュニケーションを活性化することが可能となる。
【0107】
また、図28には、複数の自律移動体10aおよび10bと、プロジェクション機能を有するエージェント装置である他の装置50との間におけるコミュニケーションの例が示されている。動作制御部230は、例えば、自律移動体10aおよび10b、他の装置50との間でロボット同士によるコミュニケーションが行われているように、自律移動体10aおよび10b、また他の装置50を制御することができる。
【0108】
図28に示す一例の場合、動作制御部230は、自律移動体10を介して他の装置50に視覚情報VI1を投影させている。また、動作制御部230は、自律移動体10aに音声発話12を出力させ、自律移動体10に笑い声を出力させるとともに、本体を揺らす動作を実行させている。
【0109】
この際、動作制御部230は、ユーザが理解できない擬似言語を用いて装置間のコミュニケーションを実行させてもよい。係る制御によれば、装置間において謎の会話が行われている状況をユーザに想起させることで、ユーザの興味を強く惹きつけることができる。また係る制御によれば、例えば、他の装置50が、エージェント機能を有しない表示装置などである場合であっても、当該表示装置に人格が存在するような感覚をユーザに想起させ、当該表示装置に対するユーザの愛着を向上させる効果が期待される。
【0110】
なお、上記で本実施形態に係る動作制御部230が自律移動体10に本体を揺らす動作を行わせる例を示したが、本実施形態に係る動作制御部230は、ジャイロ制御を敢えて不安定にすることで自律移動体10を振動させることが可能である。当該制御によれば、別途の圧電素子などを備えずとも、震え、笑い、恐怖などの感情を表現することが可能である。
【0111】
<<1.7.自律移動体10の成長例>>
以上、本実施形態に係る自律移動体10が行う誘因動作の具体例について説明した。上記のような誘因動作は、初めからすべてが実行されなくともよく、例えば、自律移動体10の学習状況に応じて、行える挙動が徐々に増えるよう設計されてもよい。以下、本実施形態に係る自律移動体10の学習状況に応じた動作の変化、すなわち自律移動体10の成長について一例を示す。なお、以下においては、本実施形態に係る自律移動体10の学習状況がレベル0~200で定義される場合を例に述べる。また、以下においては、処理の主体が情報処理サーバ20である場合でも、自律移動体10を主語として説明する。
【0112】
(レベル0~4)
自律移動体10は、ユーザを含む人の発話を聞き取ることができる。また、自律移動体10は、言葉を用いず、感情を擬音語などにより表現する。自律移動体10は、段差を感知し転落を回避することができるが、物にはぶつかりやすく、転倒しやすい。また、転倒した場合、自律移動体10は、自力で立位状態に復帰できない。自律移動体10は、バッテリーが尽きるまで行動を続け、情緒は不安定である。自律移動体10は、震えることや怒ることが多く、瞬きを多く行ったり、目の色が頻繁に変わったりする。
【0113】
(レベル5~9)
自律移動体10は、聞き取ったユーザの言葉をオウム返ししながら、所定の条件(例えば、検出回数)を満たした場合、当該言葉を覚え、復唱するようになる。また、自律移動体10は、物にぶつからないように移動することができるようになり、転倒した場合は助けを求めることを覚える。また、自律移動体10は、バッテリーが減ると、空腹であることを表現する。
【0114】
(レベル10~19)
自律移動体10は、ユーザにより繰り返し呼ばれることで、自身の名前を理解する。自律移動体10は、ユーザの顔や形を認識し、所定の条件(例えば、認識回数)を満たした場合、ユーザの名前を覚える。また、自律移動体10は、認識した人間や物に対し信頼度の順位付けを行う。この際、ユーザのほか、ペットなどの動物や、おもちゃ、装置などが上位に加わることもある。また、自律移動体10は、充電スタンドを見つけると、自ら充電スタンドに戻り、給電することを覚える。
【0115】
(レベル20~29)
自律移動体10は、覚えた固有名詞に対し、知っている単語を組み合せ、短い文章を発することが可能となる(例えば、「カズオ、元気」)。また、自律移動体10は、人を認識すると、近づこうとする。また、自律移動体10は、素早く走行できるようになってもよい。
【0116】
(レベル30~49)
自律移動体10の語彙に、疑問、否定、肯定などの表現が加わる(例えば、「カズオ、元気か?」)。また、自律移動体10は質問を積極的に行うようになる。例えば、「カズオ、昼飯、何食べた?」、「カレー」、「カレー、うまいか?」、というようにユーザとの会話が続くようになる。また、自律移動体10は、「おいで」などとユーザに呼ばれると近づき、「しーっ」と言われると静かに黙るようになる。
【0117】
(レベル50~69)
自律移動体10は、人や物の動きを真似しようとする(例えば、ダンスなど)。また自律移動体10は、聞き取った特殊音(サイレン、アラーム、エンジン音など)を真似しようとする。この際、自律移動体10は、データとして登録されている類似音を再生してもよい。また、自律移動体10は、一日という時間のサイクルを覚え、一日の予定を把握し、ユーザに通知できるようになる(例えば、「カズオ、起きろ」、「カズオ、お帰り」など)。
【0118】
(レベル70~89)
自律移動体10は、登録された装置の操作(例えば、ON/OFFなど)を制御できるようになる。また、自律移動体10は、ユーザの依頼に基づいて、上記の制御を行うこともできる。自律移動体10は、登録された音楽を状況に応じて出力することができる。自律移動体10は、一週間という時間のサイクルを覚え、週の予定を把握し、ユーザに通知できるようになる(例えば、「カズオ、燃えるゴミ、出したか?」など)。
【0119】
(レベル90~109)
自律移動体10は、感情を表現する動きを覚える。上記の表現には、喜怒哀楽に係る動作、例えば、大笑い、大泣きなどが含まれる。自律移動体10は、一か月という時間のサイクルを覚え、月の予定を把握し、ユーザに通知できるようになる(例えば、「カズオ、今日、給料日!」)。
【0120】
(レベル110~139)
自律移動体10は、ユーザが笑っていると一緒に笑い、泣いていると側に近寄り心配するようになる。自律移動体10は、相槌などを覚え、聞き役に徹するなど、様々な会話モードを取得する。また、自律移動体10は、一年という時間のサイクルを覚え、年の予定を把握し、ユーザに通知できるようになる。
【0121】
(レベル140~169)
自律移動体10は転倒状態からの自力による復帰や、走行中のジャンプを覚える。また、自律移動体10は、「だるまさんが転んだ」や、「かくれんぼ」によりユーザと遊ぶことができる。
【0122】
(レベル170~199)
自律移動体10は、登録された装置をユーザの意図に依らず操作する悪戯を行うようになる。また、自律移動体10は、ユーザに叱られると拗ねるようになる(思春期)。自律移動体10は、登録された物品の位置を把握し、ユーザに通知できるようになる。
【0123】
(レベル200~)
自律移動体10は、ストーリーの読み聞かせを行えるようになる。また、ネットワークを介した商品購入等における決済機能を備える。
【0124】
以上、本実施形態に係る自律移動体10の成長について一例を示した。なお、上記はあくまで一例であり、自律移動体10の動作はユーザによる設定などによっても適宜調整可能である。
【0125】
<<1.8.制御の流れ>>
次に、本実施形態に係る情報処理サーバ20による自律移動体10の制御の流れについて詳細に説明する。図29は、本実施形態に係る情報処理サーバ20による自律移動体10の制御の流れを示すフローチャートである。
【0126】
図29を参照すると、通信部240が、自律移動体10からセンサ情報を受信する(S1101)。
【0127】
次に、認識部210がステップS1101において受信されたセンサ情報に基づいて種々の認識処理を実行し(S1102)、状況の推定を行う(S1103)。
【0128】
次に、行動計画部220が、ステップS1103において推定された状況に基づく行動計画を行う(S1104)。
【0129】
次に、動作制御部230が、ステップS1104において決定された行動計画に基づいて、自律移動体10の動作制御を行う(S1105)。
【0130】
以上、本実施形態に係る情報処理サーバ20による自律移動体10の制御について、おおまかな流れを述べた。なお、上記ステップS1102における認識処理からステップS1105における動作制御は、繰り返しかつ並行的に実行されてよい。図30は、本実施形態に係る認識処理から動作制御までの流れの一例を示すフローチャートである。
【0131】
図30を参照すると、例えば、認識部210が自律移動体10が撮像した画像などに基づいてユーザの識別を行う(S1201)。
【0132】
また、認識部210は、自律移動体10が収集したユーザの発話に係る音声認識および意図解釈を行い、ユーザの発話意図を理解する(S1202)。
【0133】
次に、行動計画部220がユーザへの接近を計画し、動作制御部230は当該計画に基づいて自律移動体10の駆動部150を制御し、自律移動体10をユーザに接近させる(S1203)。
【0134】
ここで、ステップS1202において理解されたユーザの発話意図が自律移動体10に対する依頼などである場合(S1204:YES)、動作制御部230は、行動計画部220が決定した行動計画に基づいて、依頼に対する応答行動を行う(S1205)。上記の応答行動には、例えば、ユーザからの問い合わせに対する回答の提示や、被操作装置30の制御などが含まれる。
【0135】
一方、ステップS1202において理解されたユーザの発話意図が自律移動体10に対する依頼ではない場合(S1204:NO)、動作制御部230は、行動計画部220が決定した行動計画に基づいて、状況に応じた種々の誘因動作を自律移動体10に実行させる(S1206)。
【0136】
<2.ハードウェア構成例>
次に、本開示の一実施形態に係る情報処理サーバ20のハードウェア構成例について説明する。図31は、本開示の一実施形態に係る情報処理サーバ20のハードウェア構成例を示すブロック図である。図31を参照すると、情報処理サーバ20は、例えば、プロセッサ871と、ROM872と、RAM873と、ホストバス874と、ブリッジ875と、外部バス876と、インターフェース877と、入力装置878と、出力装置879と、ストレージ880と、ドライブ881と、接続ポート882と、通信装置883と、を有する。なお、ここで示すハードウェア構成は一例であり、構成要素の一部が省略されてもよい。また、ここで示される構成要素以外の構成要素をさらに含んでもよい。
【0137】
(プロセッサ871)
プロセッサ871は、例えば、演算処理装置又は制御装置として機能し、ROM872、RAM873、ストレージ880、又はリムーバブル記録媒体901に記録された各種プログラムに基づいて各構成要素の動作全般又はその一部を制御する。
【0138】
(ROM872、RAM873)
ROM872は、プロセッサ871に読み込まれるプログラムや演算に用いるデータ等を格納する手段である。RAM873には、例えば、プロセッサ871に読み込まれるプログラムや、そのプログラムを実行する際に適宜変化する各種パラメータ等が一時的又は永続的に格納される。
【0139】
(ホストバス874、ブリッジ875、外部バス876、インターフェース877)
プロセッサ871、ROM872、RAM873は、例えば、高速なデータ伝送が可能なホストバス874を介して相互に接続される。一方、ホストバス874は、例えば、ブリッジ875を介して比較的データ伝送速度が低速な外部バス876に接続される。また、外部バス876は、インターフェース877を介して種々の構成要素と接続される。
【0140】
(入力装置878)
入力装置878には、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ、及びレバー等が用いられる。さらに、入力装置878としては、赤外線やその他の電波を利用して制御信号を送信することが可能なリモートコントローラ(以下、リモコンと称する)が用いられることもある。また、入力装置878には、マイクロフォンなどの音声入力装置が含まれる。
【0141】
(出力装置879)
出力装置879は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)、LCD、又は有機EL等のディスプレイ装置、スピーカ、ヘッドホン等のオーディオ出力装置、プリンタ、携帯電話、又はファクシミリ等、取得した情報を利用者に対して視覚的又は聴覚的に通知することが可能な装置である。また、本開示に係る出力装置879は、触覚刺激を出力することが可能な種々の振動デバイスを含む。
【0142】
(ストレージ880)
ストレージ880は、各種のデータを格納するための装置である。ストレージ880としては、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、又は光磁気記憶デバイス等が用いられる。
【0143】
(ドライブ881)
ドライブ881は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体901に記録された情報を読み出し、又はリムーバブル記録媒体901に情報を書き込む装置である。
【0144】
(リムーバブル記録媒体901)
リムーバブル記録媒体901は、例えば、DVDメディア、Blu-ray(登録商標)メディア、HD DVDメディア、各種の半導体記憶メディア等である。もちろん、リムーバブル記録媒体901は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード、又は電子機器等であってもよい。
【0145】
(接続ポート882)
接続ポート882は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)、RS-232Cポート、又は光オーディオ端子等のような外部接続機器902を接続するためのポートである。
【0146】
(外部接続機器902)
外部接続機器902は、例えば、プリンタ、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、又はICレコーダ等である。
【0147】
(通信装置883)
通信装置883は、ネットワークに接続するための通信デバイスであり、例えば、有線又は無線LAN、Bluetooth(登録商標)、又はWUSB(Wireless USB)用の通信カード、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、又は各種通信用のモデム等である。
【0148】
<3.まとめ>
以上説明したように、本開示の一実施形態に係る情報処理サーバ20は、自律移動体10の動作を制御する動作制御部230を備える。また、本開示の一実施形態に係る動作制御部230は、ユーザと自律移動体10とのコミュニケーションを誘引する誘因動作を自律移動体に能動的に実行させることを特徴の一つとする。また、上記の誘因動作およびコミュニケーションは、少なくとも物理空間における自律移動体10の挙動を含む。係る構成によれば、ユーザとのコミュニケーションをより自然かつ効果的に実現することが可能となる。
【0149】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0150】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0151】
また、本明細書の情報処理サーバ20の処理に係る各ステップは、必ずしもフローチャートに記載された順序に沿って時系列に処理される必要はない。例えば、情報処理サーバ20の処理に係る各ステップは、フローチャートに記載された順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
【0152】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
自律移動体の動作を制御する動作制御部、
を備え、
前記動作制御部は、前記自律移動体を前傾姿勢を維持した状態で移動動作させ、
前記移動動作は、前後運動、旋回運動、または回転運動のうち少なくともいずれかを含む、
情報処理装置。
(2)
前記動作制御部は、前記自律移動体の重心が、前記前傾姿勢時に前記自律移動体が備える車輪の回転軸の鉛直上に位置するように前記移動動作を制御し、
前記自律移動体の背面側には、前記前傾姿勢時にバランスを保つための重量部品が配置される、
前記(1)に記載の情報処理装置。
(3)
前記動作制御部は、ユーザと前記自律移動体とのコミュニケーションを誘因する誘因動作を前記自律移動体に能動的に実行させ、
前記誘因動作および前記コミュニケーションは、少なくとも物理空間における前記自律移動体の挙動を含む、
前記(1)または(2)に記載の情報処理装置。
(4)
前記誘因動作は、前記ユーザに所定行動を行わせるための動作を含む、
前記(3)に記載の情報処理装置。
(5)
前記誘因動作は、前記ユーザに前記自律移動体との共同行動を行わせるための動作を含む、
前記(3)または(4)に記載の情報処理装置。
(6)
前記共同行動は、前記ユーザと前記自律移動体とによるゲームを含む、
前記(5)に記載の情報処理装置。
(7)
前記ゲームは、前記ユーザおよび前記自律移動体の物理的動作を要する、
前記(6)に記載の情報処理装置。
(8)
前記ゲームは、言語を用いる、
前記(6)または(7)に記載の情報処理装置。
(9)
前記ゲームは、コンピュータゲームを含む、
前記(6)~(8)のいずれかに記載の情報処理装置。
(10)
前記動作制御部は、前記ユーザの言動に基づいて、前記ゲームに係る誘因動作を前記自律移動体に実行させる、
前記(6)~(9)のいずれかに記載の情報処理装置。
(11)
前記誘因動作は、前記ユーザに物品の位置を示す動作を含む、
前記(3)~(10)のいずれかに記載の情報処理装置。
(12)
前記動作制御部は、前記ユーザが前記物品を探していることが推定された場合、前記物品の位置を示す動作を前記自律移動体に実行させる、
前記(11)に記載の情報処理装置。
(13)
前記誘因動作は、前記ユーザの意図しない、または意図に沿わない動作を含む、
前記(3)~(12)のいずれかに記載の情報処理装置。
(14)
前記誘因動作は、前記ユーザの意図に依らない、装置の操作を含む、
前記(3)~(13)のいずれかに記載の情報処理装置。
(15)
前記誘因動作は、前記ユーザによる発話の開始または継続を促す動作を含む、
前記(3)~(14)のいずれかに記載の情報処理装置。
(16)
前記誘因動作は、前記自律移動体と他の装置との間のコミュニケーションを含む、
前記(3)~(15)のいずれかに記載の情報処理装置。
(17)
前記誘因動作は、前記ユーザを睡眠に誘導させるための動作を含む、
前記(3)~(16)のいずれかに記載の情報処理装置。
(18)
前記動作制御部は、前記ユーザの睡眠が開始されたことに基づいて、前記自律移動体に照明装置を消灯させる、
前記(17)に記載の情報処理装置。
(19)
前記誘因動作は、音声による前記コミュニケーションの誘因を含む、
前記(3)~(18)のいずれかに記載の情報処理装置。
(20)
前記自律移動体である、
前記(1)~(19)のいずれかに記載の情報処理装置。
(21)
プロセッサが、自律移動体の動作を制御すること、
を含み、
前記制御することは、前記自律移動体を前傾姿勢を維持した状態で移動動作させ、
前記移動動作は、前後運動、旋回運動、または回転運動のうち少なくともいずれかを含む、
情報処理方法。
(22)
コンピュータを、
自律移動体の動作を制御する動作制御部、
を備え、
前記動作制御部は、前記自律移動体を前傾姿勢を維持した状態で移動動作させ、
前記移動動作は、前後運動、旋回運動、または回転運動のうち少なくともいずれかを含む、
情報処理装置、
として機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0153】
10 自律移動体
110 センサ部
120 入力部
130 光源
140 音声出力部
150 駆動部
160 制御部
170 通信部
20 情報処理サーバ
210 認識部
220 行動計画部
230 動作制御部
240 通信部
30 被操作装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31