(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181198
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】解体用機械
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20231214BHJP
B25D 17/11 20060101ALI20231214BHJP
G10K 11/16 20060101ALN20231214BHJP
【FI】
E04G23/08 C
B25D17/11
G10K11/16 110
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172757
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2019228467の分割
【原出願日】2019-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】池上 雅之
(57)【要約】
【課題】解体作業において発生する騒音を安定して低減することができる解体用機械を提供する。
【解決手段】ジャイアントブレーカは、ベースマシンとブレーカアタッチメント20とを備えている。ブレーカアタッチメント20は、泡放出部26と、発泡筒30と、固定部材とを備える。泡放出部26は、ノミ25の周囲を泡で覆うために、ノミ25の周囲に泡を供給する。発泡筒30は、ノミ25に供給する泡を、溶液を用いて発生させる。固定部材は、ブレーカアタッチメント20のサイドブラケット22の面に対して直交する方向に、発泡筒30を取り付ける。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーカアタッチメントのノミの周囲に泡を供給する泡放出部と、
前記ノミに供給する泡を、溶液を用いて発生させる筒形状の発泡筒と、
前記発泡筒の中心軸上に中心軸を有し前記発泡筒と一体化された混合室形成部材とを備え、
前記混合室形成部材において、前記中心軸の上流側に、気泡溶液が供給される溶液供給口が設けられるとともに、前記中心軸の下流側には、前記発泡筒へと前記泡を排出する吐出口が設けられ、
前記発泡筒の吐出口は、前記中心軸の下流側に設けられていることを特徴とする記載の解体用機械。
【請求項2】
前記混合室形成部材の下流側には、空気供給ホースを介して圧縮空気が供給されることを特徴とする請求項1に記載の解体用機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物等を解体する際に用いられる解体用機械に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート等で構成された建築物を解体する場合、アームの先端にノミ(チゼルともいう)を取り付けたジャイアントブレーカ等の解体用機械を用いることがある。この解体用機械を用いて解体作業を行なう場合には、作業中に大きな騒音が発生する。そこで、騒音を低減することができる構成の解体用機械が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載のジャイアントブレーカは、アームの先端に設けたノミの上方に、騒音を低減するための泡を供給する供給部を備える。そして、ノミを用いて解体する際には、泡でノミを覆って騒音を低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ノミを覆う泡にムラがある場合、騒音を安定して低減することは難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する解体用機械は、ブレーカアタッチメントのノミの周囲に泡を供給する泡放出部と、前記ノミに供給する泡を、溶液を用いて発生させる筒形状の発泡筒と、前記発泡筒の中心軸上に中心軸を有し前記発泡筒と一体化された混合室形成部材とを備え、前記混合室形成部材において、前記中心軸の上流側に、気泡溶液が供給される溶液供給口が設けられるとともに、前記中心軸の下流側には、前記発泡筒へと前記泡を排出する吐出口が設けられ、前記発泡筒の吐出口は、前記中心軸の下流側に設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、解体作業において発生する騒音を安定して低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態における解体用機械を説明する全体斜視図。
【
図2】実施形態における解体用機械のアームの先端に設けたブレーカアタッチメントの側面図。
【
図3】実施形態におけるアタッチメントのノミ側から見た斜視図。
【
図4】実施形態におけるアタッチメントの後方側から見た要部の側面図。
【
図5】実施形態におけるアタッチメントの要部の発泡筒及び配管の関係を示す概略構成図。
【
図6】実施形態においてアームを延ばしてノミを傾斜させて配置した場合の解体用機械の解体動作を説明する説明図。
【
図7】実施形態においてアームを縮めてノミを垂直に配置した場合の解体用機械の解体動作を説明する説明図。
【
図8】実施形態において途中まで泡で覆った状態のノミの先端の説明図。
【
図9】実施形態において全体を泡で覆った状態のノミの先端の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図9を用いて、解体用機械を具体化した一実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態の解体用機械としてのジャイアントブレーカ(打撃式破砕装置)10は、ベースマシン11とブレーカアタッチメント20とを備えている。具体的には、ベースマシン11は、クローラ12を含む下部走行体と、操作室13及びブーム14を含む上部旋回体とを備えている。ブーム14の先端部には、ブーム14の先端部を中心として鉛直面において回動するアーム15が取り付けられている。そして、アーム15の先端部には、ブレーカアタッチメント20が取り付けられている。なお、ブレーカアタッチメント20の後方側には、操作室13が位置する。
【0009】
図2に示すように、ブレーカアタッチメント20は、前方側に位置する油圧駆動部21と、ノミ25と、これらを保持するブラケットとを有している。ノミ25は、先端が略円錐形状に尖った棒状の部材である。油圧駆動部21は、四角筒形状を有しており、油圧によって、ノミ25の延在方向(軸方向)に往復移動させる駆動機構を備える。ノミ25の先端は、油圧駆動部21から突出されている。
【0010】
油圧駆動部21は、ブラケットのサイドブラケット22を介してアーム15の先端に取り付けられる。サイドブラケット22は、略三角形状の板状部材であって、油圧駆動部21の対向する側面を挟み込むようにして油圧駆動部21を固定して支持する。2つのサイドブラケット22は、ほぼ中央部に形成された連結部23を介して連結される。連結部23は、2つのサイドブラケット22のほぼ中央を連結し、2つのサイドブラケット22の距離をアーム15の先端に取付可能な間隔に保つ。
【0011】
図3に示すように、2つのサイドブラケット22の後方側を覆うように、ブレーカアタッチメント20には、ブラケットカバー24が設けられる。更に、ブラケットカバー24には、孔24hが設けられる。
【0012】
図2及び
図3に示すように、油圧駆動部21の下面には、リング形状の泡放出部26が設けられる。この泡放出部26は、中央の貫通孔にノミ25の上端部が遊嵌されるように設けられる。
【0013】
図2に示すように、泡放出部26の内部には、泡経路26sが設けられる。この泡経路26sは、貫通孔の周囲において複数の開口部が設けられている。この開口部から、泡放出部26とノミ25との間の空間に、泡が放出される。泡放出部26の泡経路26sは、後方側に設けられたL字管27に連通する。L字管27は、金属製の直方体形状のカバー28で覆われている。L字管27の他端部は、後述する泡供給ホース37に接続される。
【0014】
図4に示すように、サイドブラケット22を連結する連結部23には、円筒形状の発泡筒30とこれに一体化された混合室形成部材31とが、連結部23の長手方向に沿うように、結束バンド等の固定部材で固定される。
【0015】
発泡筒30及び混合室形成部材31は、連結部23に固定されているため、ブレーカアタッチメント20のサイドブラケット22の面に対して、ほぼ直交する方向に延在するように、ブレーカアタッチメント20に取り付けられる。ここで、サイドブラケット22の面とは、板状部材のサイドブラケットに含まれる面であり、鉛直面に限られず、鉛直面に対して多少(例えば15度程度)傾斜した面も含む。また、サイドブラケット22の面に対して、ほぼ直交する方向とは、泡の発生や流出がほぼ同じと見なせるように、混合室形成部材31への溶液の流れや発泡筒30からの泡の流れの条件(速度や角度)が大きく変わらない範囲の方向を意味する。
【0016】
図5に示すように、発泡筒30の上流側に配置された混合室形成部材31には、溶液供給口31aが、発泡筒30及び混合室形成部材31の中心軸C1方向の上流側に設けられる。
【0017】
溶液供給口31aには、L字管32を介して溶液供給ホース33が設けられる。この溶液供給ホース33は、気泡溶液が貯蔵されている溶液タンク(図示せず)に接続される。
本実施形態では、気泡溶液として、主に陰イオン界面活性剤を基剤とし、発泡により気泡を発生することができる起泡剤を用いる。ここで、陰イオン界面活性剤としては、例えば、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホン脂肪酸メチルエステル塩やアルカンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩やアルキルエーテル硫酸エステル塩等の硫酸塩、脂肪酸塩やアルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩を用いることができる。
【0018】
一方、混合室形成部材31の下流側には、空気供給ホース34が接続され、コンプレッサにより、圧縮空気が供給される。この空気供給ホース34の接続部31bの近傍には、圧抜き弁35が設けられる。圧抜き弁35は、空気供給ホース34内の空気が所定圧力以上の場合に開放されて、空気供給ホース34内の圧力を外部に逃がす。
【0019】
発泡筒30は、内部で気泡を発生させる部材であって、円管内に、多孔質材料であるスチールウールを充填して構成される。
発泡筒30の吐出口30aは、発泡筒30の中心軸C1方向の下流側に設けられる。本実施形態では、発泡筒30の吐出口30a、混合室形成部材31及び溶液供給口31aは、中心軸C1の一直線上に配置される。
そして、吐出口30aには、L字管36を介して泡供給ホース37が接続される。
【0020】
図2~
図4に示すように、泡供給ホース37は、ブラケットカバー24の孔24hを介して、カバー28内のL字管27に接続される。サイドブラケット22から露出している泡供給ホース37の外周は、クッション部材38で覆われる。
【0021】
次に、
図6~
図9を用いて、上述したジャイアントブレーカ10の解体作業について説明する。
ジャイアントブレーカ10を解体対象物の近傍に配置し、ノミ25の先端が、鉄筋コンクリート等の解体対象物の上方となるように配置する。
【0022】
この場合、
図6に示すように、ジャイアントブレーカ10から解体対象物が遠い場合には、ブーム14とアーム15とを伸ばすように操作する。また、解体対象物50の解体面が傾いている場合には、ノミ25が解体面にほぼ垂直に配置されるように、ブーム14やアーム15を操作する。
【0023】
また、
図7に示すように、ジャイアントブレーカ10から解体対象物50が近い場合には、ブーム14とアーム15を縮めるように操作する。更に、解体対象物50の解体面が水平面の場合には、この水平面にノミ25がほぼ垂直に配置されるように、ブーム14やアーム15を操作する。
【0024】
そして、気泡溶液タンクから溶液供給ホース33及び混合室形成部材31を介して、発泡筒30に溶液を供給する。更に、コンプレッサを稼働させて、空気供給ホース34を介して混合室形成部材31に圧縮空気を供給する。これにより、発泡筒30には、混合室形成部材31において混合された溶液及び圧縮空気が供給され、発泡筒30において泡状体が発生する。そして、発泡筒30において発生した泡は、泡供給ホース37及びL字管27を介して泡放出部26に供給され、泡放出部26の泡経路26sを介してノミ25の外周に供給される。
【0025】
この場合、
図8に示すように、供給された泡は、ノミ25の上端部から、ノミ25の外周面に沿って下端部に流れ落ちて、泡状体fa1を形成し、ノミ25を上部から覆う。
その後、
図9に示すように、泡が連続的に供給されると、泡状体fa1によってノミ25の外周全体が覆われる。本実施形態では、ノミ25の表面から約40mmの泡厚でノミ25の表面を覆うように、泡が放出される。この状態で、油圧による駆動装置が駆動されると、油圧駆動部21に支持されたノミ25が所定速度で上下方向に往復運動することにより、解体対象物50の表面を破砕する。
【0026】
(作用)
発泡筒30が、ブレーカアタッチメント20の連結部23の長手方向に沿うように取り付けられる。そして、発泡筒30、吐出口30a、混合室形成部材31、溶液供給口31aが中心軸C1上に設けられる。これにより、サイドブラケット22の面に対して直交する方向に発泡筒30を配置することができる。
【0027】
従って、
図6及び
図7に示すように、ブレーカアタッチメント20が傾いても、発泡筒30、吐出口30a、混合室形成部材31及び溶液供給口31aを、地面に対する所定角度に保つことができる。
【0028】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、サイドブラケット22の面に対して、ほぼ直交する方向に延在するように発泡筒30を取り付けた。これにより、発泡筒30は、ジャイアントブレーカ10のブーム14、アーム15、ブレーカアタッチメント20を動かしても、地面に対する位置関係や角度が変わらないので、発泡筒30における泡の発生条件や発泡筒30からの泡の流出条件をほぼ常に同じにすることができ、安定して泡を発生することができる。従って、ノミ25の外周に泡状体fa1をムラなく纏わり付かせることができるので、騒音を安定して低減することができる。
【0029】
(2)本実施形態では、発泡筒30、吐出口30a、混合室形成部材31及び溶液供給口31aを、発泡筒30の中心軸C1上に配置した。これにより、ブーム14、アーム15及びブレーカアタッチメント20の傾きに係らず、発泡筒30への液体の供給についても、ほぼ常に同じ条件で行なうことができるので、泡を安定して発生させて泡放出部26に供給することができる。
(3)本実施形態では、連結部23に発泡筒30を、連結部23に沿うように取り付けたので、発泡筒30を、サイドブラケット22の面に対して、ほぼ直交する方向に延在するように、効率的に配置することができる。
【0030】
(4)本実施形態では、発泡筒30及び混合室形成部材31を、2つのサイドブラケット22の間に配置するので、サイドブラケット22により保護することができる。更に、本実施形態では、発泡筒30の吐出口30aと泡供給ホース37とを、L字管36を介して接続する。これにより、2つのサイドブラケット22の間の狭い空間に配置した発泡筒30に、泡供給ホース37を直角に引き出しても、泡が流れる流路を潰すことなく、泡放出部26に泡をスムーズに供給することができる。
【0031】
(5)本実施形態では、発泡筒30の上流に設けた接続部31bの近傍の空気供給ホース34に、圧抜き弁35を設けるので、空気供給ホース34内の空気が所定圧力より高くなることを抑制することができる。
【0032】
(6)本実施形態では、泡放出部26に設けたL字管27を、金属製の直方体形状のカバー28で覆う。また、泡供給ホース37のサイドブラケット22から露出している部分を、クッション部材38で覆う。これにより、ブレーカアタッチメント20のブラケットから露出している泡供給部分を保護するので、解体対象物50が飛散して衝突しても損傷を低減することができる。
【0033】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態においては、発泡筒30は、円管内にスチールウールを充填して構成した。発泡筒30の構成は、これに限定されない。例えば、発泡筒を、スポンジやビーズ等を充填した構成にしてもよいし、断面が四角形状の管で構成してもよい。
【0034】
・上記実施形態においては、発泡筒30を、ブレーカアタッチメント20の連結部23に固定した。発泡筒30を、サイドブラケット22の面に対して直交する方向に取り付ける位置は、連結部23に限られない。例えば、ブーム14やアーム15に固定してもよい。
【0035】
・上記実施形態においては、2つのサイドブラケット22、連結部23及びブラケットカバー24を備えたブラケットを有するブレーカアタッチメント20を用いた。ブレーカアタッチメントの構成や形状は、これに限定されない。例えば、ブラケットカバーが設けられていないブレーカアタッチメントを用いてもよい。
【0036】
・上記実施形態においては、ブレーカアタッチメント20は、先端が略円錐形状に尖ったノミ25を備える。ブレーカアタッチメント20に設けられるノミは、先端が略円錐形状に尖った形状に限られず、例えば、略ヘラ形状のノミ等、解体に用いられるものであれば、他の形状であってもよい。
【0037】
・上記実施形態においては、破砕具として、打撃して破砕を行なうブレーカを用いた。他の破砕具(解体具)を備えた解体用機械(建設機械)においても、騒音発生源を、泡状体fa1で覆った状態で解体作業を行なうようにしてもよい。
【0038】
・上記実施形態においては、解体対象物50として鉄筋コンクリートを用いた。解体対象物50は、鉄筋コンクリートに限られず、例えば鉄骨構造物等、他の材質であってもよい。
【0039】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記溶液の供給口と、前記泡を排出する吐出口とが、前記発泡筒の長手方向で対向する位置に配置され、
前記発泡筒の上流側に、前記溶液に供給される空気の供給口が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の解体用機械。
【符号の説明】
【0040】
C1…中心軸、fa1…泡状体、10…ジャイアントブレーカ、11…ベースマシン、12…クローラ、13…操作室、14…ブーム、15…アーム、20…ブレーカアタッチメント、21…油圧駆動部、22…サイドブラケット、23…連結部、24…ブラケットカバー、24h…孔、25…ノミ、26…泡放出部、26s…泡経路、27,32,36…L字管、28…カバー、30…発泡筒、30a…吐出口、31…混合室形成部材、31a…溶液供給口、31b…接続部、33…溶液供給ホース、34…空気供給ホース、35…圧抜き弁、37…泡供給ホース、38…クッション部材、50…解体対象物。