(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181206
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】制御方法、制御装置、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/44 20060101AFI20231214BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20231214BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231214BHJP
H01M 10/42 20060101ALN20231214BHJP
【FI】
H01M10/44 P
H02J7/04 G
H02J7/00 A
H01M10/42 P
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023173192
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2019180609の分割
【原出願日】2019-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】井上 直樹
(72)【発明者】
【氏名】西川 平祐
(72)【発明者】
【氏名】人見 周二
(57)【要約】
【課題】蓄電素子の一時的な(一過性の)電池電圧の低下現象を生じさせないための制御方法、制御装置、及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】蓄電素子3の放電の制御方法は、Si系の負極を有する蓄電素子3に一過性の電圧の低下が生じる領域における負極電位より負極電位が貴になるように放電する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si系の負極を有する蓄電素子に一過性の電圧の低下が生じる領域における負極電位より負極電位が貴になるように放電する制御方法。
【請求項2】
前記負極電位が0.5Vvs.Li/Li+以上になるように放電する、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記負極電位が0.5Vvs.Li/Li+以上0.6Vvs.Li/Li+以下になるように放電する、請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
Si系負極を有する蓄電素子を複数直列に接続した蓄電素子モジュールを複数並列に接続してなる蓄電装置における前記蓄電素子モジュール毎に、前記領域における負極電位より負極電位が貴になるように放電する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項5】
所定の条件を満たす場合に、前記領域における負極電位より負極電位が貴になるように電圧を制御した状態で放電する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項6】
Si系負極を有する蓄電素子の一過性の電圧の低下が生じる領域における負極電位より負極電位が貴になるように放電する制御部を備える制御装置。
【請求項7】
Si系負極を有する蓄電素子の一過性の電圧の低下が生じる領域における負極電位より負極電位が貴になるように放電する
処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子の劣化を抑制する制御方法、制御装置、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギーを蓄積し、必要な時にエネルギーを供給できる蓄電素子が利用されている。蓄電素子は、携帯機器、電源装置、自動車や鉄道を含む輸送機器、航空・宇宙・建設用を含む産業用機器等に適用されている。必要な時に必要なだけ蓄積しておいたエネルギーを利用できるよう、蓄電素子の蓄電容量を常時把握することは重要である。蓄電素子は時間、及び使用頻度に応じて主に化学的に劣化することが知られている。そのため、活用できるエネルギーが時間、及び使用頻度に応じて減少する。必要な時に必要なだけエネルギーを利用するために、蓄電素子の劣化状態を把握することは重要である。これまでに、蓄電素子の劣化を推定するための技術が開発されている。
【0003】
蓄電素子としてのリチウムイオン二次電池(以下、電池という)において、負極活物質としてSiOを用いたものが知られている。負極活物質としてSiOを用いた場合、負極の容量が大きくなるため、電池の容量を大きくすることができる。
【0004】
SiOのリチウムイオン導電性は、ドープされたリチウム量が大きい程高くなり、負極内で局所的に充放電に伴うリチウムドープ量が偏り易いという問題点がある。リチウムドープ量が偏った状態で充放電が繰り返されると、ドープ量が大きい部分の体積変化が大きくなり、その部分が集電体から剥離して電池容量が低下する。
特許文献1においては、リチウム基準極に対する負極の電位Vの変化dVに対する放電容量Qの変化量dQの割合であるdQ/dVと、電位Vとの関係を示すV-dQ/dVを生成し、V-dQ/dV上の2つのピークの強度比を算出し、強度比に基づいて負極の状態を検出する方法が開示されている。
特許文献2には、負極活物質としてリチウムを含有するケイ素の酸化物を用いた非水電解質を放電させる場合に、リチウム基準極に対する負極電圧が0.6Vを超えない範囲で放電するように制御する放電制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5682955号公報
【特許文献2】特許第4088993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、本願発明者等は、Si系の負極を含む電池において、所定のSOC(充電状態)範囲で充放電を繰り返した場合、一時的な電池容量の低下に起因する電池電圧の低下が生じることを見出した。
本願発明者等は、一時的な電池容量の低下の原因を調べた結果、Si系の負極を含む蓄電素子に一過性の電池電圧の低下を引き起こす、結晶性のLi15Si4相が生成することが要因であることを発見した。所定のSOC範囲で充放電を繰り返し、放電が浅い場合、負極にLiが残っている部分と残っていない部分とが存在しており、この状態で充電を行なうとLiが残っている部分に先に充電され、充電深度が深くなり結晶性のLi15Si4が生成される。Si系の負極において、充放電はアモルファス相で進行すると考えられているが、結晶性のLi15Si4相においては充放電(Liイオンの出入り)過程に寄与しない。従って、結晶性のLi15Si4相が生成することによって、電池容量が低下する。電池容量低下を防ぐには結晶性のLi15Si4相が生成しないように制御する、或いは、生成した結晶性のLi15Si4相を消滅させる処理を行って電池容量を回復させる必要がある。つまり、結晶性のLi15Si4相の生成により生じた電池容量の低下は、回復処理により電池容量を戻すことができ、一過性の電池電圧低下を解消することができる。
特許文献1及び2においては、一過性の電池電圧低下を解消することは課題としていない。
【0007】
本発明の目的は、蓄電素子の一時的な(一過性の)電池電圧の低下現象を生じさせないための制御方法、制御装置、及びコンピュータプログラムを提供することにある。或いは、蓄電素子の一時的な(一過性の)電池電圧の低下を解消する制御方法、制御装置、及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る制御方法は、Si系の負極を有する蓄電素子に一過性の電池電圧の低下が生じる領域における負極電位より負極電位が貴(高く)になるように放電する。
【0009】
本発明の一態様に係る制御装置は、Si系負極を有する蓄電素子の一過性の電池電圧の低下が生じる領域における負極電位より負極電位が貴(高く)になるように放電する制御部を備える。
【0010】
本発明の一態様に係るコンピュータプログラムは、Si系負極を有する蓄電素子の一過性の電池電圧の低下が生じる領域における領域の負極電位より負極電位が貴(高く)になるように放電する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、蓄電素子の一時的な電圧の低下現象を生じさせないようにすることができる。また、蓄電素子の一時的な電圧の低下が生じた場合に、該電圧低下を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】正極にNCM111を、負極にSiOとGrとを含む電池の充放電のサイクル数と容量維持率との関係を示すグラフである。
【
図2】SOCの下限値が25%である場合(
図1における曲線dのSOC範囲)につき、放電容量と電池電圧との関係を求めた結果を示すグラフである。
【
図3】
図1におけるa~fのそれぞれのSOC範囲(SOC10~100%、SOC15~100%、SOC20~100%、SOC25~100%、SOC40~100%、SOC60~100%の範囲)で充放電を繰り返し、100サイクル後の満充電状態から放電した場合のDOD(放電深度)-OCV曲線である。
【
図4】
図3の100サイクル充放電を繰り返した各電池につき、完全放電を行い、100サイクル充放電を繰り返した後のSOC-OCV曲線及びDOD-OCV曲線である。
【
図5】SOCの下限値が夫々10%及び25%である場合(
図1における前記aとdのSOC範囲)につき充放電を50サイクル繰り返した後の負極のDOD-OCPを求めた結果を示すグラフである。
【
図6】比容量と負極電位との関係を示すグラフである。
【
図7】実施形態1に係る充放電システム及びサーバの構成を示すブロック図である。
【
図10】実施形態1の制御装置としてのBMUにおけるリセット放電の処理手順を示すフローチャートである。
【
図11】変形例1のBMUにおけるリセット放電の処理手順を示すフローチャートである。
【
図12】変形例2の充放電システムの構成を示すブロック図である。
【
図13】変形例2のBMUにおけるリセット放電の処理手順を示すフローチャートである。
【
図14】変形例3の充放電システム及びサーバの構成を示すブロック図である。
【
図15】変形例3のリセット放電及び充電の処理手順を示すフローチャートである。
【
図16】蓄電素子リフレッシュシステムの構成の一例を示す模式図である。
【
図17】実施形態2の制御装置としてのBMUにおける放電の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態の概要)
実施形態に係る制御方法は、Si系の負極を有する蓄電素子に一過性の電池電圧の低下が生じる領域における負極電位より負極電位が貴になるように放電する。
また、所定の条件を満たす場合に、前記領域における負極電位より負極電位が貴になるように電圧を制御した状態で放電する。以下、この放電をリセット放電という。
【0014】
ここで、Si系の負極とは、Si、Siの化合物を活物質として含む負極をいう。化合物としては、酸化物、窒化物、合金等が挙げられる。
所定の条件を満たす場合としては、所定の時間が経過した場合、SOH(State Of Health)が閾値以下になった場合等が挙げられる。所定の時間は、例えばレート及び下限SOC別に、経時的な容量維持率の変化を示す曲線を求め、容量維持率が閾値以下になり、リセット放電を行う必要がある場合の経過時間として設定する。
【0015】
上記構成によれば、蓄電素子に一過性の電圧の低下を引き起こす、負極における結晶性のLi15Si4相が生じないように放電することで、一過性の電圧の低下を抑制できる。また、所定の条件を満たす場合にリセット放電を行うことで、Li15Si4相が消失するので、一過性の電圧の低下が解消する。以上より、蓄電素子の容量の低下を抑制できる。出力の低下が抑制され、SOCの検知の精度も良好である。
【0016】
上述の制御方法において、前記負極電位が0.5Vvs.Li/Li+以上になるように放電してもよい。
【0017】
上記構成によれば、結晶性のLi15Si4相の生成が良好に抑制され、又は良好に消失する。
【0018】
上述の制御方法において、前記負極電位が0.5Vvs.Li/Li+以上0.6Vvs.Li/Li+以下になるように放電してもよい。
【0019】
上記構成によれば、結晶性のLi15Si4相生成が良好に抑制され、又は良好に消失するとともに、Si系活物質の劣化が抑制される。
【0020】
上述の制御方法において、Si系負極を有する蓄電素子を複数直列に接続した蓄電素子モジュールを複数並列に接続してなる蓄電装置における前記蓄電素子モジュール毎に、前記領域における負極電位より負極電位が貴になるように放電してもよい。
【0021】
上記構成によれば、一過性の電圧の低下が生じた蓄電素子モジュールのみ、放電を行って、電圧の低下を抑制し、又は解消できる。
【0022】
実施形態に係る制御装置は、Si系負極を有する蓄電素子の一過性の電圧の低下が生じる領域における負極電位より負極電位が貴になるように放電する制御部を備える。
【0023】
上記構成によれば、上記放電により蓄電素子に一過性の電圧の低下を引き起こす、負極における結晶性のLi15Si4相の生成が抑制されるので、一過性の電圧の低下を抑制できる。また、所定の条件を満たす場合にリセット放電を行うことで、Li15Si4相が消失するので、一過性の電圧の低下を解消でき、蓄電素子の容量の低下を抑制できる。出力の低下が抑制され、SOCの検知の精度も良好である。
【0024】
実施形態に係るコンピュータプログラムは、Si系負極を有する蓄電素子の一過性の電圧の低下が生じる領域における領域の負極電位の絶対値より負極電位の絶対値が大きくなるように放電する処理をコンピュータに実行させる。
【0025】
上記構成によれば、一過性の電圧の低下を抑制又は解消することができ、蓄電素子の容量の低下を抑制できる。出力の低下が抑制され、SOCの検知の精度も良好である。
【0026】
以下、具体的に放電の制御方法について説明する。以下、蓄電素子としてリチウムイオン二次電池(電池)を用いる場合につき説明する。
図1は、正極にNCM111を、負極にSiOとGrとを含む電池の充放電サイクル数と容量維持率との関係を示すグラフである。
図1において、横軸はサイクル数、縦軸は容量維持率(%)である。NCMはLi
x(Ni
sCo
uMn
t)O
2(0≦s<1、0≦t<1、0≦u<1、s+t+u=1、0<x≦1.1、s,uは同時に0でない)で表される活物質であり、NCM111の場合、s=t=uである。
図1は、a:SOC10~100%、b:SOC15~100%、c:SOC20~100%、d:SOC25~100%、e:SOC40~100%、f:SOC60~100%の夫々のSOC範囲で充放電を繰り返した場合のサイクル数と、容量維持率との関係を示す。
【0027】
充放電サイクル条件は以下の通りである。
試験温度:25℃
充電:1CmAで、4.2VまでCC(定電流)充電、その後CV(定電圧)充電で、電流が0.05CmAになった時点で充電停止
放電:1CmAで、CC放電、各SOCに相当する電圧で放電停止
図1より、前記d及びeのSOC範囲の曲線の場合、容量維持率の低下が大きいことが分かる。即ちSOC20%以下になるまで放電を行う場合と比較して、SOCの下限が25~40%である場合、容量維持率の低下が大きい。
本発明者等は50サイクルの時点で、負極電位が0.5Vvs.Li/Li
+以上になるように放電することにより、前記a~f全ての曲線の場合で、容量維持率が向上することを見出した。
図1に示すように、50サイクル目で上述の放電を行うことにより、容量維持率は向上する。容量維持率低下が解消した後、充放電を繰り返すことで、d及びeの曲線の容量維持率は再度低下する。従って、所定のタイミングで、深い放電(リセット放電)を繰り返してもよい。
【0028】
図2は、SOCの下限値が25%である前記dの場合につき、放電容量と電池電圧との関係を求めた結果を示すグラフである。
図2において、横軸は放電容量(mAh)、縦軸は電池電圧(V)である。放電曲線hは、容量確認時(SOC100%から0%まで放電を行った時)の放電容量と電池電圧との関係を示す。放電曲線i、j、k、l、mは、SOC25~100%の範囲で充放電を1回、10回、20回、30回、40回繰り返した時の放電容量と電池電圧との関係を示す。放電曲線nは、SOC25~100%の範囲で充放電を50回繰り返した後SOC0%まで放電を行った時の放電容量と電池電圧との関係を示す。
図2より、サイクル数が増加するのに従い、電圧3.2~3.5Vの範囲で放電容量が大きく低下することが分かる。
【0029】
図3は、
図1におけるa~fのそれぞれのSOC範囲(SOC10~100%、SOC15~100%、SOC20~100%、SOC25~100%、SOC40~100%、SOC60~100%の範囲)で充放電を繰り返し、100サイクル後の満充電状態から放電した場合のDOD-OCV曲線を示す。
図3において、横軸はDOD(%)、縦軸は電池電圧(V)である。
図3より、SOCの下限値が夫々25%及び40%である、前記d及びeの曲線の場合、電圧3.1~3.7V、特に電圧3.2~3.5Vの範囲で、他のSOC範囲で充放電を繰り返した場合と比較して、同一DODに対する電圧が低くなっていることが分かる。
【0030】
図4は、
図3の100サイクル充放電を繰り返した各電池につき、完全放電を行い、さらに100サイクル充放電を繰り返した後のSOC-OCV曲線及びDOD-OCV曲線である。
図4において、上側がSOC-OCV曲線であり、下側がDOD-OCV曲線である。
図4において、横軸はSOC(DOD)(%)、縦軸は電池電圧(V)である。
図4より、前記d及びeの曲線の場合、上述のリセット放電を行うことにより、SOC-OCV曲線及びDOD-OCV曲線のいずれにおいても、他のSOC範囲の曲線と重なり、容量低下の現象が解消されたことが分かる。
【0031】
図5は、SOCの下限値が夫々10%及び25%である、前記aとdの場合につき充放電を50サイクル繰り返した後の負極のDOD-OCPを求めた結果を示すグラフである。
図5において、横軸はDOD(%)、縦軸はOCP(Vvs.Li/Li
+)である。
図5より、DOD50%以上の領域で、前記dのDOD-OCP曲線の場合、前記aのDOD-OCP曲線と比較して同一DODに対する負極電位が大きく、上に凸状をなしている。同一DODで負極電位が高くなった場合、電池電圧は低下する。
【0032】
図6は、比容量と負極電位との関係を示すグラフである。
図6において、横軸は比容量(mAh/g)、縦軸は負極電位(Vvs.Li/Li
+)である。
Si系負極において、0.05Vvs.Li/Li
+以下の電位になるような深い充電を行った場合、結晶性のLi
15Si
4相が形成される。この相が生じた状態で放電を行うと、結晶相とアモルファス相の2相の共存反応に起因し、
図5にも示される電位平坦部が略0.4Vvs.Li/Li
+の範囲に表れる。電位平坦部が表れた場合、負極の放電電位が高くなるので、電池の放電電圧は低くなる。
【0033】
Si系負極を有する電池においては、所定のSOC範囲で充放電を繰り返した場合、一時的な電池容量の低下に起因する電池電圧の低下が生じる。一過性の電圧低下が生じるSOC範囲は、Si系化合物の含有量によって異なる。SiO20%/Gr80%の比率では、SOCの下限値が約25%以上になると上記現象が生じる。SiOの含有量が少ない場合、下限SOCがより低い条件で上記現象が生じ、より低電圧領域にて電圧変化が生じる。
負極電位が0.5Vvs.Li/Li
+以上になるまで放電しない場合、徐々に結晶性のLi
15Si
4相の蓄積量が増加するため、サイクル数の増加に伴い、放電電圧が徐々に低下する。一度負極電位が0.5Vvs.Li/Li
+ 以上になるように放電した場合、Li
15Si
4相が完全に消失するため、
図4に示すように、DOD-OCV曲線は元の状態にリセットされる。
詳細な理由は明らかではないが、深い放電を行なうと、合剤内のリチウムドープ量の偏りが解消され、その後の充電時に結晶性のLi
15Si
4 が形成されにくくなるためと考えられる。
【0034】
リセット放電は、容量維持率等のSOHが閾値以下になった場合に行う。又は、実験により、SOHが閾値以下になる時間を、充電レート、充放電の範囲(SOCの範囲)毎に求めておき、該時間が経過する都度行う。
リセット放電は、
図5に示すように、負極電位が0.5Vvs.Li/Li
+以上になった場合、前記a及びdの曲線の同一電位におけるDODの差分が小さくなるので、負極電位が0.5Vvs.Li/Li
+以上になるように行うのが好ましい。
リセット放電は、負極電位が0.5Vvs.Li/Li
+以上0.6Vvs.Li/Li
+以下になるように行うのがより好ましい。0.6Vvs.Li/Li
+を超える深い放電を行った場合、Si系の負極の劣化が進行する。
リセット放電は、電池電圧としては、負極電位の0.5Vvs.Li/Li
+に対応する電圧以下になるように行うのが好ましい。
リセット放電は、(負極電位の0.6Vvs.Li/Li
+に対応する電圧)以上(負極電位の0.5Vvs.Li/Li
+に対応する電圧)以下になるように行うのがより好ましい。
【0035】
(実施形態1)
以下、蓄電素子がリチウムイオン二次電池である場合を説明する。
図7は、実施形態1に係る充放電システム1及びサーバ9の構成を示すブロック図である。
充放電システム1は、電池モジュール3と、BMU(Battery Management Unit)4と、電圧センサ5と、電流センサ6と、制御装置7とを備える。
【0036】
電池モジュール3は、複数の蓄電素子としてのリチウムイオン二次電池(以下、セルという)2が直列に接続されている。制御装置7は、充放電システム1全体を制御する。
サーバ9は、通信部92、及び制御部91を備える。
制御装置7は、制御部71、表示部72、及び通信部73を備える。
制御装置7の制御部71は、通信部73、ネットワーク10、及び通信部92を介し、制御部91と接続されている。
負荷17は、端子11,12を介し電池モジュール3に接続されている。充電する場合は、
図14に示すように、電池モジュール3に充電器8が接続される。
【0037】
制御部71、91は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等により構成され、制御装置7、及びサーバ9の動作を制御する。
通信部73、及び92は、ネットワークを介して他の装置との間で通信を行う機能を有し、所要の情報の送受信を行うことができる。
制御装置7の表示部72は、液晶パネル又は有機EL(Electro Luminescence)表示パネル等で構成することができる。制御部71は、表示部72に所要の情報を表示するための制御を行う。
【0038】
本実施形態においては、BMU4、制御装置7、及びサーバ9のいずれかが、本発明の制御装置として機能する。なお、サーバ9が制御装置として機能しない場合、充放電システム1がサーバ9に接続されていなくてもよい。
図7においては、電池モジュール3を一組備える場合を示しているが、電池モジュール3は、複数組、直列に接続してもよい。
BMU4は、電池ECUであってもよい。
【0039】
電圧センサ5は、電池モジュール3に並列に接続されており、電池モジュール3の全体の電圧に応じた検出結果を出力する。電圧センサ5は、各セル2の後述する正極の端子23,負極の端子26に接続されており、各セル2の端子23,26間の電圧V1 を測定し、各セル2のV1 の合計値である電池モジュール3の後述する負極のリード33,正極のリード34間の電圧Vを検出する。
電流センサ6は、電池モジュール3に直列に接続されており、電池モジュール3の電流に応じた検出結果を出力する。
【0040】
図8は、電池モジュール3の斜視図である。
電池モジュール3は、直方体状のケース31と、ケース31に収容された複数の前記セル2とを備える。
【0041】
セル2は、直方体状のケース本体21と、蓋板22と、蓋板22に設けられた、端子23,26と、破裂弁24と、電極体25とを備える。電極体25は正極板、セパレータ、及び負極板を積層してなり、ケース本体21に収容されている。
電極体25は、正極板と負極板とをセパレータを介して扁平状に巻回して得られるものであってもよい。
【0042】
正極板は、アルミニウムやアルミニウム合金等からなる板状(シート状)又は長尺帯状の金属箔である正極基材箔上に活物質層が形成されたものである。負極板は、銅及び銅合金等からなる板状(シート状)又は長尺帯状の金属箔である負極基材箔上に活物質層が形成されたものである。セパレータは、合成樹脂からなる微多孔性のシートである。
【0043】
正極の活物質層に用いられる正極活物質は、例えばLix(NisMntCouMv)O2(MはLi,Ni,Mn,Co以外の金属元素、0≦s<1、0≦t<1、0≦u<1、s+t+u+v=1、0<x≦1.1、s,uは同時に0でない)で表される層状酸化物である。正極活物質は層状岩塩型の結晶構造を有する。前記aは0.5≦a≦1を満たすものであってもよい。この場合、遷移金属サイトにNiを多く含有する。
正極活物質は、v=0であり、Lix(NisCouMnt)O2(s+t+u=1)で表されるNCMであるのが好ましい。NCMとしては、上述のNCM11でもよく、Ni含有量が高いNCM523(s:t:u=5:2:3)、NCM622(s:t:u=6:2:2)、NCM811(s:t:u=8:1:1)等でもよい。
正極活物質は、MがAl、t=0であり、Lix(NisCouAlv)O2で表されるNCAであってもよい(s+u+v=1)。
なお、NCM又はNCAにおいて、Li、Ni以外の金属が夫々2種類の金属からなる場合に限定されず、3種類以上の金属からなるものでもよい。例えば、少量のTi、Nb、B、W、Zr、Ti、Mgなどが含まれてもよい。
【0044】
正極活物質としては、例えばLiMeO2-Li2MnO3固溶体、Li2O-LiMeO2固溶体、Li3NbO4-LiMeO2固溶体、Li4WO5-LiMeO2固溶体、Li4TeO5-LiMeO2固溶体、Li3SbO4-LiFeO2固溶体、Li2RuO3-LiMeO2固溶体、Li2RuO3-Li2MeO3固溶体等のLi過剰型活物質であってもよい。
正極活物質は上述の場合に限定されない。
【0045】
負極活物質層に用いられる負極活物質は、Si系の活物質である。Si系としては、Si、Siの化合物が挙げられる。化合物としては、酸化物、窒化物、合金等が挙げられる。負極活物質は、炭素材料を含むことができる。炭素材料としては、黒鉛及び非晶質炭素が挙げられる。非晶質炭素としては、難黒鉛化炭素(アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等)、易黒鉛化炭素等が挙げられる。炭素材料としては黒鉛が好ましい。Si系の活物質の活物質の総質量に対する割合は5~20質量%であるのが好ましい。
【0046】
電池モジュール3の隣り合うセル2の隣り合う端子23,26がバスバー32により電気的に接続されることで、複数のセル2が直列に接続されている。
電池モジュール3の両端のセル2の、端子23,26には、電力を取り出すためのリード34,33が設けられている。
【0047】
図9は、BMU4の構成を示すブロック図である。BMU4は、制御部41と、記憶部42と、計時部46と、入力部47と、通信部48とを備える。これらの各部は、バスを介して互いに通信可能に接続されている。
【0048】
制御部41は制御部71と同様の構成を有する。
制御部41は、後述する放電プログラム43を読み出して実行することにより、リセット放電の処理を実行する処理部として機能する。
計時部46は、リセット放電を行うタイミングを計時する。
入力部47は、電圧センサ5及び電流センサ6からの検出結果の入力を受け付ける。
【0049】
記憶部42は、例えばハードディスクドライブ(HDD)等により構成され、各種のプログラム及びデータを記憶する。記憶部42には、放電プログラム43が格納されている。放電プログラム43は、例えばCD-ROMやDVD-ROM、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体50に格納された状態で提供され、BMU4にインストールすることにより記憶部42に格納される。また、通信網に接続されている図示しない外部コンピュータから放電プログラム43を取得し、記憶部42に記憶させることにしてもよい。
【0050】
記憶部42には充放電の履歴データ44も記憶されている。充放電の履歴とは、電池モジュール3の運転履歴であり、電池モジュール3が充電又は放電を行った期間(使用期間)を示す情報、使用期間において電池モジュール3が行った充電又は放電に関する情報等を含む情報である。電池モジュール3の使用期間を示す情報とは、充電又は放電の開始及び終了の時点を示す情報、電池モジュール3が使用された累積使用期間等を含む情報である。電池モジュール3が行った充電又は放電に関する情報とは、電池モジュール3が行った充電時又は放電時の電圧、レート等を示す情報である。
記憶部42には、レート及び下限SOC別に、予め実験により求めたリセット放電時間を設定したリセット放電時間テーブル(以下、テーブルという)45も記憶している。レート及び下限SOC別に、経時的な容量維持率の変化を示す曲線を求め、容量維持率が閾値以下になりリセット放電を行う必要がある場合の、リセット放電時間をテーブル45に記憶している。
なお、SOHとして容量維持率を用いているが、この場合に限定されない。
【0051】
図10は、実施形態1の制御装置としてのBMU4におけるリセット放電の処理手順を示すフローチャートである。
制御部41は、計時部46を用い、リセット放電時間が経過したか否かを判定する(S1)。制御部41はリセット放電時間が経過していないと判定した場合(S1:NO)、処理を終了する。
制御部41はリセット放電時間が経過したと判定した場合(S1:YES)、放電を開始する(S2)。
【0052】
制御部41は放電を終了するか否かを判定する(S3)。制御部41は負極電位が0.5Vvs.Li/Li+以上になったか否かを判定する。制御部41は電池電圧が、負極電位の0.5Vvs.Li/Li+に対応する電圧以下になったか否かを判定してもよい。制御部41は負極電位が0.5Vvs.Li/Li+以上になったと判定した場合、電池電圧が負極電位の0.5Vvs.Li/Li+に対応する電圧以下になったと判定した場合、放電を終了すると判定し(S3:YES)、処理を終了する。制御部41は負極電位が0.5Vvs.Li/Li+以上0.6Vvs.Li/Li+以下の範囲内で、又は電池電圧が(負極電位の0.6Vvs.Li/Li+に対応する電圧)以上(負極電位の0.5Vvs.Li/Li+に対応する電圧)以下である範囲内で放電を終了するのが好ましい。制御部41は放電を終了しない場合(S3:NO)、判定の処理を繰り返す。
以上のリセット放電の処理をリセット放電時間が経過する都度、行う。
【0053】
本実施形態によれば、上述したように、電池モジュール3に一過性の電圧の低下を引き起こす、負極における結晶性のLi15Si4相が消失するので、一過性の電圧の低下が解消する。従って、電池モジュール3の容量の低下を抑制できる。電池モジュール3の出力の低下が抑制され、SOCの検知の精度も良好である。
なお、BMU4の制御部41がリセット放電を行う場合につき説明したが、リセット放電は制御部71又は制御部91が行うことにしてもよい。
【0054】
(変形例1)
図11は、変形例1のBMU4におけるリセット放電の処理手順を示すフローチャートである。変形例1においては、電池モジュール3のSOHを算出し、リセット放電をするか否かを判定する。
まず、制御部41は、SOHとして、例えば容量維持率を算出する(S11)。
制御部41は、SOHが閾値a(%)以下であるか否かを判定する(S12)。制御部41はSOHが閾値a以下でないと判定した場合(S12:NO)、処理を終了する。
制御部41はSOHが閾値a以下であると判定した場合(S12:YES)、放電を開始する(S13)。
【0055】
制御部41は放電を終了するか否かを判定する(S14)。放電を終了するか否かの判定は
図10のフローチャートの処理と同様にして行う。
制御部41は放電を終了しない場合(S14:NO)、判定の処理を繰り返す。制御部41は放電を終了する場合(S14:YES)、処理を終了する。
変形例1においては、SOHが閾値a以下であると判定する都度、リセット放電を行って、電圧低下を解消することができる。
【0056】
(変形例2)
図12は変形例2の充放電システム(蓄電装置)1の構成を示すブロック図である。変形例2の充放電システム1においては、電池モジュール35、36、37が並列に接続されている。
電池モジュール3は夫々CMU(Cell Monitoring Unit)14を備える。CMU14は電池モジュール3の各セル2の電圧を検出する電圧センサを備える。BMU4は、各CMU14が検出したセル2の電圧を取得する。各電池モジュール35、36、37にはスイッチ(不図示)が接続され、スイッチのオン/オフにより電池モジュール35、36、37毎に、BMU4が充放電を制御できる。
【0057】
図13は、変形例2のBMU4におけるリセット放電の処理手順を示すフローチャートである。
まず、制御部41は、各電池モジュールにつき、SOHとして、例えば容量維持率を算出する(S21)。
制御部41は、SOHが閾値a(%)以下である電池モジュールがあるか否かを判定する(S22)。制御部41はSOHが閾値a以下である電池モジュールがないと判定した場合(S22:NO)、処理を終了する。
制御部41はSOHが閾値a以下である電池モジュールがあると判定した場合(S22:YES)、制御部41はその電池モジュールの放電を開始する(S23)。
制御部41は放電を終了するか否かを判定する(S24)。放電を終了するか否かの判定は
図10のフローチャートの処理と同様にして行う。
制御部41は放電を終了しない場合(S24:NO)、判定の処理を繰り返す。制御部41は放電を終了する場合(S24:YES)、処理を終了する。
【0058】
(変形例3)
変形例3においては、充電器8の制御部81がリセット放電を行う。
図14は、変形例3の充放電システム1及びサーバ9の構成を示すブロック図である。
図14中、
図7と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
充電器8は、端子15,16を介して電池モジュール3に接続されている。
充電器8は、制御部81と、電源部82と、電力供給部83と、通信部84と、記憶部85と、操作部87とを備える。
制御部81は制御部71と同様の構成を有する。
電力供給部83は、制御部81によって制御される電流量(充電電流)を電池モジュール3に供給する電流供給端子を有する。充電器8の電源部82は外部電源に接続されており、制御部81が指示した電流量の電力を電力供給部83を介し、電池モジュール3に対して供給する。電源部82は二次電池を備えてもよい。
記憶部85には、リセット放電を行った上で充電を行うためのプログラム86が格納されている。プログラム86は、例えばCD-ROMやDVD-ROM、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体52に格納された状態で提供され、充電器8にインストールすることにより記憶部85に格納される。また、通信網に接続されている図示しない外部コンピュータからプログラム86を取得し、記憶部85に記憶させることにしてもよい。
制御部81はプログラム86を読み出して、リセット放電を行った後、充電する処理を実行する
【0059】
図15は、変形例3のリセット放電及び充電の処理手順を示すフローチャートである。
制御部81は、BMU4から電池モジュール3の充放電の履歴を取得する(S31)。 制御部81は、リセット放電時間が経過したか否かを判定する(S32)。制御部41はリセット放電時間が経過していないと判定した場合(S32:NO)、処理をS35へ進める。
制御部41はリセット放電時間が経過したと判定した場合(S32:YES)、放電を開始する(S33)。
制御部81は放電を終了するか否かを判定する(S34)。放電を終了するか否かの判定は
図10のフローチャートの処理と同様にして行う。
制御部81は放電を終了しない場合(S34:NO)、判定の処理を繰り返す。
【0060】
制御部41は放電を終了する場合(S34:YES)、充電を開始する(S35)。
制御部81は充電を終了するか否かを判定する(S36)。制御部81は操作部87により作業者の充電停止の入力を受け付けたか否かを判定し、充電を終了するか否かを判定する。代替的に、例えばSOCが100%になったか否かに基づき、充電を終了するか否かを制御部81は判定する。制御部81は充電を終了しないと判定した場合(S36:NO)、判定の処理を繰り返す。
制御部81は充電を終了すると判定した場合(S36:YES)、処理を終了する。
【0061】
変形例3によれば、充電器8により電池モジュールをリセット放電をした上で充電するので、電池モジュール3は電池容量を良好に維持する。
【0062】
図16は、蓄電素子リフレッシュシステムの構成の一例を示す模式図である。
蓄電素子リフレッシュシステムはサーバ9を備え、蓄電素子に対してリセット放電を行い、蓄電素子をリフレッシュする。サーバ9は、
図7のサーバ9と同様の構成を有する。
蓄電素子は、物流・運送サービス100に供される電動の移動体としてのバス、トラック、タクシー、ドローン、船舶、バイク等に搭載される。蓄電素子は、蓄電素子交換・充電サービス200に供される電動の移動体としてのバイク、自動車、自転車、ドローン、スマートフォン等のモバイル機器等に搭載される。蓄電素子は、シェアリングサービス300に供される電動の移動体としてのバイク、自動車、自転車等に搭載される。蓄電素子は、据置蓄電素子運用監視サービス400の対象となる発電設備、電力需要設備内で使用されている。
【0063】
物流・運送サービス100、蓄電素子交換・充電サービス200、シェアリングサービス300、及び据置蓄電素子運用監視サービス400は、制御装置13を備える。制御装置13は、制御部131及び通信部132を備える。制御装置13の制御部131は、通信部132、ネットワーク10、及び通信部92を介し、サーバ9の制御部91と接続されている。
上述の移動体、発電設備、電力需要設備は上述の充放電システム1を備え、蓄電素子のリセット放電を行う場合に、制御装置7又はBMU4が制御装置13に接続される。蓄電素子は電池モジュール3である。制御装置13を介さず、制御装置7をネットワーク10を介してサーバ9に接続してもよい。
【0064】
物流・運送サービス100は、移動体を用いて物流・運送サービスを行う。移動体の蓄電素子は、リセット放電時間が経過した場合、又はSOHが閾値以下になった場合、BMU4により上述の
図10又は
図11のフローチャートに従ってリセット放電を実施する。リセット放電は、制御装置7、制御装置13、又はサーバ9により実施してもよい。これにより、容量が上昇し、蓄電素子はリフレッシュされる。SOCの検出の誤差も小さくなる。移動体に充電器8を接続し、
図15のフローチャートに従って、蓄電素子にリセット放電を行った上で、充電を行ってもよい。
【0065】
蓄電素子交換・充電サービス200は、ユーザが移動体又はモバイル機器をサービス拠点に持ち込んだ場合に、蓄電素子を新しい蓄電素子と交換する。古い蓄電素子は、リセット放電時間が経過している場合、又はSOHが閾値以下になっている場合、BMU4、制御装置7、制御装置13、又はサーバ9により、上述のようにしてリセット放電を実施し、蓄電素子をリフレッシュする。
【0066】
ユーザが持ち込んだ移動体又はモバイル機器を充電する場合、蓄電素子に充電器8を接続し、
図15のフローチャートに従って、蓄電素子にリセット放電を行った上で、充電を行う。
【0067】
シェアリングサービス300においては、シェアリングする移動体の蓄電素子に対し、リセット放電時間が経過した場合、又はSOHが閾値以下になった場合、リセット放電が実施された上で充電される。
【0068】
据置蓄電素子運用監視サービス400においては、発電設備又は電力需要設備の蓄電素子に対し、リセット放電時間が経過した場合、又はSOHが閾値以下になった場合、リセット放電が実施された上で充電される。
本発明の放電の制御方法は、以上の物流・運送サービス100、蓄電素子交換・充電サービス200、シェアリングサービス300、及び据置蓄電素子運用監視サービス400以外のMaaS事業にも適用可能である。
【0069】
(実施形態2)
図17は、実施形態2の制御装置としてのBMU4における放電の処理手順を示すフローチャートである。実施形態2においては、制御部41は、放電を行う場合、常に、一時的な電池電圧の低下が生じない深さまで放電を行う。
制御部41は、まず、放電中であるか否かを判定する(S41)。制御部41は例えば電池電圧が減少しているか否かを判定する、又は電流が負であるか否かを判定する等により、放電中であるか否かを判定する。制御部41は放電中でない場合(S41:NO)、処理を終了する。
【0070】
制御部41は放電中である場合(S41:YES)、放電を終了するか否かを判定する(S42)。制御部41は負極電位が0.5Vvs.Li/Li+以上になったか否かを判定する。制御部41は、電池電圧が、負極電位の0.5Vvs.Li/Li+に対応する電圧以下になったか否かを判定してもよい。制御部41は負極電位が0.5Vvs.Li/Li+以上になった場合、又は電池電圧が負極電位の0.5Vvs.Li/Li+に対応する電圧以下になった場合、放電を終了すると判定し(S42:YES)、処理を終了する。制御部41は負極電位が0.5Vvs.Li/Li+以上0.6Vvs.Li/Li+以下の範囲内で、又は電池電圧が(負極電位の0.6Vvs.Li/Li+に対応する電圧)以上(負極電位の0.5Vvs.Li/Li+に対応する電圧)以下の範囲内で、放電を終了するのが好ましい。制御部41は放電を終了しない場合(S42:NO)、判定の処理を繰り返す。
以上の処理を所定のタイミングで行う。
以上の処理は、制御部71、制御部81、又は制御部91により行うことにしてもよい。
【0071】
本実施形態によれば、電池モジュール3に一過性の電圧の低下を引き起こす、負極における結晶性のLi15Si4相が生じない領域まで放電することで、一過性の電圧の低下を良好に抑制することができる。
実施形態1の物流・運送サービス100の電動の移動体、蓄電素子交換・充電サービス200の電動の移動体及びモバイル機器等、シェアリングサービス300の電動の移動体、据置蓄電素子運用監視サービス400の発電設備、電力需要設備に用いられる蓄電素子においても、前記領域まで放電し、一過性の電圧の低下を抑制することができる。
【0072】
前記実施の形態は、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0073】
例えば、本発明に係る制御方法は、移動体、モバイル機器、発電設備、電力需要設備の充放電システムに適用することに限定されず、鉄道用回生電力貯蔵装置等の他の充放電システムにも適用できる。
蓄電素子はリチウムイオン二次電池には限定されない。蓄電素子は、Si系の負極を有する他の二次電池であってもよいし、一次電池であってもよいし、キャパシタ等の電気化学セルであってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 充放電システム
2 電池(蓄電素子)
3 電池モジュール(蓄電素子)
4 BMU
41、71、81、91、131 制御部
42、85 記憶部
43 放電プログラム
44 履歴データ
45 リセット放電時間テーブル
46 計時部
47 入力部
48、73、84、92、132 通信部
7 制御装置
72 表示部
8 充電器
86 プログラム
9 サーバ
10 ネットワーク