(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181227
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】隙間からの浸水防止方法
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20231214BHJP
E06B 7/23 20060101ALI20231214BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20231214BHJP
C09K 3/12 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/23 A
C09K3/10 E
C09K3/12
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023175584
(22)【出願日】2023-09-20
(62)【分割の表示】P 2019144322の分割
【原出願日】2019-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】591287233
【氏名又は名称】ベストプロダクツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】栗野 真行
(72)【発明者】
【氏名】井原 徳久
(57)【要約】
【課題】大雨やゲリラ豪雨などによりシャッターやドアの隙間から住居、店舗、工場に水が浸入するのを簡単な方法で防止する手段を提供すること。
【解決手段】透水性を有する袋に、吸水性ポリマーを構成成分とするシート状の吸水体が封入された浸水防止シート材をドアやシャッターなどの隙間に差し込んだ後、吸水させて前記シート材を膨張させる、特に、隙間の前後を隙間以上の厚さまで膨張させることにより隙間を塞ぐことを特徴とする隙間からの浸水防止方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透水性を有する袋に、吸水性ポリマーを構成成分とするシート状の吸水体が封入された浸水防止シート材をドアやシャッターなどの隙間に差し込んだ後、吸水させて前記シート材を膨張させることにより隙間を塞ぐことを特徴とする隙間からの浸水防止方法。
【請求項2】
隙間の前後を隙間以上の厚さまで膨張させることを特徴とする請求項1記載の隙間からの浸水防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッターやドアなどの隙間からの浸水被害を防止する浸水防止シート材に関する。より詳しくは、水の浸入が予想される隙間に浸水防止シート材を差し込んだ後、吸水させて膨張させることによりシャッターやドアの隙間を塞ぐ機能を有する浸水防止シート材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、これまでに記録したことのないような大雨やゲリラ豪雨が多発し、それによって住居、店舗、工場などが浸水被害を受けるケースが増えてきている。このようなことから、水が浸入しやすい箇所に「土のう」を積んで浸水を予防することが行われている。また、最近では、軽くて嵩張らないので備蓄可能で、水を吸わせるだけで「土のう」並みの機能を有する「水のう」も「土のう」のかわりに多く用いられるようになっている。一方で、シャッターやドアの隙間からの浸水を防止する方法として、例えば、開口部である玄関やシャッターに防水シートを貼る方法(特許文献1)や、開口部の両側壁に設けたガイドレールのガイド溝に防水板を挿入して積層して防水する方法(特許文献2)、更にはガイド溝を備えたガイドレールと、ガイド溝に沿って着脱可能に取り付けた防水板に加えて、ガイドレール及び防水板の間の隙間を覆って取り付けた防水シートからなる防水装置(特許文献3)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-151854号公報
【特許文献2】特開2011-256642号公報
【特許文献3】特開2017-2637号公報
【特許文献4】特開平7-165939号公報
【特許文献5】特開昭57-0044029号公報
【特許文献6】特開平10-331112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、「土のう」は重くて嵩張るため、常備することはあまりなく、自治体の「土のうステーション」などで受け取って、持ち帰って利用するのが一般的であり、運搬手段のないものにとっては利用しにくいものであった。「水のう」の場合は、運搬の問題はないものの、「土のう」や「水のう」が、浸水させたくない個所を取り囲むように堰を設ける使用方法であるため、玄関付近の浸水を防止するだけでも相当数の「土のう」や「水のう」が必要になるという問題があった。
【0005】
また、特許文献1の防水シートを用いる方法では、備蓄収納可能であり、建造物表面へ張り付けるだけで簡単に設置できるという利点があるが、一旦設置した後は、設置した個所のドアやシャッターの開閉ができないという問題があった。更に、特許文献2、3の方法の場合、玄関やシャッターの該当する箇所に防水板を装着するためのガイド溝をあらかじめ設置しておく必要があるので急な事態に対応することはできないという問題や、費用がかかるという問題があった。一方で、吸水性ポリマーが吸水して膨張することを利用した止水シート(特許文献4)やシール材(特許文献5)、水漏れ防止材(特許文献6)等の提案はあるが、隙間からの浸水を防止するという用途への提案は未だされていなかった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的は、備蓄可能であって、工事等の事前準備が必要なく、容易に隙間からの浸水を防止することができる安価な浸水防止シート材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した問題点について鋭意検討した結果、吸水性ポリマーを構成成分とするシート状の吸水体を、透水性を有する袋に封入したものを、隙間に差し込んで吸水させると、吸水体が膨張して隙間を塞ぐのみならず、水圧がかかっても隙間から外れることなく水の侵入を防止できることを見いだし本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は
(1)透水性を有する袋に、吸水性ポリマーを構成成分とするシート状の吸水体が封入された浸水防止シート材であって、該浸水防止シート材は、使用前には隙間に差し込める厚さを有していて、吸水させると膨張して隙間を塞いで隙間からの浸水を防止する機能を有することを特徴とする浸水防止シート材;
(2)前記浸水防止シート材の厚さが5mm以下であることを特徴とする(1)記載の浸水防止シート材;
(3)前記吸水体が、吸水性ポリマーを20wt%以上含有していることを特徴とする(1)又は(2)に記載の浸水防止シート材;
(4)前記透水性を有する袋が不織布で形成されたものであることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の浸水防止シート材;
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の浸水防止シート材は、透水性の袋に吸水体を封入したシート状の形状となっているので、軽量で嵩張らず、複数枚を備蓄しておくことが容易で、必要な時にすぐに使用できるという利点を有している。また、本発明の浸水防止シート材は、薄いシート状であるから、相当狭い隙間であっても簡単に差し込むことができるので、狭い隙間からの水の侵入を防止することができる。逆に、本発明の浸水防止シート材は、吸水させると元の何倍、何十倍もの厚さにまで膨張するので、数センチメートルに達する大きな隙間であっても狭い隙間の場合と同様に水の侵入を防止することができるという効果を有する。
【0010】
更に、「土のう」、「水のう」の場合、水圧が強くなると崩れたり、流されたりする恐れがあるが、本発明の浸水防止シート材は、吸水させると隙間の前後が隙間以上の厚さまで膨張するので相当な水圧がかかっても外れることがなく、浸水を防止することができるという効果を有している。更にまた、本発明の浸水防止シート材は、予期しない個所から浸水が始まった後からでも応急措置で隙間を塞いで、それ以上の水の侵入を防止することができるという利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の浸水防止シート材(10)の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の浸水防止シート材(10)の構造を説明する
図1のX-X’線模式断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の浸水防止シート材(10)を、土間(20)とシャッター(30)の隙間に差し込んだ状態を説明する模式断面図である。
【
図4】
図4は、
図3の浸水防止シート材(10)が吸水して膨張した浸水防止シート材(10’)となって、隙間を塞いで水に浸入を防止する状態を説明する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の浸水防止シート材(10)は、透水性を有する袋(1)に、吸水性ポリマーを構成成分とするシート状の吸水体(2)が封入された構造となっている。なお、封入というのは、袋(1)内に吸水体(2)が入っており、かつ、袋(1)には開口部が存在しないという意味である。さて、透水性を有する袋(1)は、封入されている吸水体(2)(吸水して膨張した場合も含む。)が袋外に流出するのを防ぎ、袋外の水は透過させて吸水体(2)を吸水させるという機能を有するものである。したがって、透水性を有する袋(1)は、水は透過させるが、吸水体(2)の構成成分は透過させない機能を有するフィルムやシートで形成する必要があり、例えば、有孔フィルムや不織布、織布などを用いて形成することができる。これらのなかでも、十分な強度を有し、透水性に優れていて孔径が比較的小さい不織布を使用するのが好ましく、特に、袋を形成するための熱シールが可能な不織布を使用するのが好ましい。また、袋の形状としては、4方シールをした単なる「平袋」とするのが一般的であるが、厚さ方向に膨張しやすい「マチ付き袋」とすることももちろん可能である。
【0013】
袋(1)に封入するシート状の吸水体(2)は、シート状であること、そして吸水性ポリマーを構成成分とすることを必須要件とするものである。そして、本発明の浸水防止シート材(10)は、袋に封入した吸水体(2)が吸水して膨張することを利用して、隙間からの浸水を防止するものである。したがって、シート状の吸水体(2)は、吸水させると隙間を塞ぐのに十分な体積になるまで膨張する必要があり、そのため自重の100倍以上の水を吸水することができる吸水性ポリマーを構成成分とすることが必須である。吸水体(2)中の吸水性ポリマーの含有量は設計内容によっても異なるが、20wt%以上、できれば50wt%以上にするのが好ましい。また、吸水体(2)をシート状とするのは、シャッターやドアの隙間に差し込むことができるように吸水体(2)が封入された浸水防止シート材(10)もシート状とする必要があるためであり、また、吸水体(2)が袋内で均一に膨張して隙間の塞ぎ残しを防止するためである。
【0014】
吸水性ポリマーとしては、自重の100倍以上の水を吸水することができるものであれば特に制限はないが、例えば、アクリル酸とビニルアルコールとの共重合体、デンプンとアクリロニトリルとのグラフト共重合体のアルカリ加水分解物やアクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物などが挙げられる。本発明においては、これらのなかでも工業的に大量に生産されているアクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物を使用するのが好ましい。また、吸水体(2)には、吸水性ポリマーに加えて、パルプや植物繊維などの他の吸水性材料や、各種バインダー、シート化するための支持体としてのティッシュペーパーなどを構成成分とすることができる。
【0015】
本発明の浸水防止シート材(10)の形状は、シート状であって、隙間に差し込むことができる薄さとする必要がある。具体的な厚さは、設計内容に応じて、適宜選択できるが狭い隙間にも適応させる意味では5mm以下とするのが好ましい。なお、本発明の浸水防止シート材(10)の厚さの大部分がシート状の吸水体(2)の厚さであることから、吸水体(2)中の吸水性ポリマーの含有率を大きくして、吸水体(2)の厚さをできるだけ薄くするのが好ましい。また、縦横の寸法は、例えば、縦が400~1000mm、横が150~500mmの長方形とするのが一般的である。そして、シャッターのように隙間が間口全体にわたって存在する場合には、浸水防止シート材(10)同士の重ね合わせ箇所が少なく、少ない個数で済むように横幅が狭く、縦に長い形状とするのが合理的であり、浸水防止用途以外に「水のう」としても使用可能とするには、縦横ともに400mm以上とすることが必要である。
【0016】
さて、本発明の浸水防止シート材(10)は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、シート状の吸水体(2)は、例えば、まず、ティッシュペーパー上に吸水性ポリマーとパルプを載置し、次いで上部をティッシュペーパーで被覆した後、プレスして吸水シートを作成する。そして、そのまま切断してシート状の吸水体(2)とすることもできるが、吸水能がさらに必要な場合は、吸水性ポリマーの載置量をふやすか、あるいは必要に応じて吸水シートを複数枚重ねてシート状の吸水体(2)とすることもできる。
ついで、透水性を有する不織布上にシート状の吸水体(2)を供給して載置し、更に、上部からの透水性の不織布を供給して、シート状の吸水体(2)を上下の不織布で挟み込み、不織布の両サイドと前後を熱シールして、不織布で形成された袋(1)の内部に吸水体(2)が封入された本発明の浸水防止シート材(10)を製造することができる。
【実施例0017】
[製造例]
ティッシュペーパー上に、粉砕木材パルプを50g/m2、と吸水性ポリマー(アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物(吸水能:自重の200倍を吸水可能(水道水))140g/m2を積繊し、次いで上部をティッシュペーパーで被覆した後、上面がエンボス模様であるプレス盤を用いてプレスして吸水シートを製造した。