(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181230
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】半導体装置の作製方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20231214BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20231214BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20231214BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20231214BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20231214BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20231214BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20231214BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20231214BHJP
H01L 29/423 20060101ALI20231214BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20231214BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20231214BHJP
H10K 71/00 20230101ALI20231214BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20231214BHJP
【FI】
H01L29/78 617V
H01L29/78 618B
H01L21/316 X
H01L21/318 C
H01L21/28 301B
H01L27/04 C
H01L27/06 102A
H01L29/50 M
H01L29/58 G
G02F1/1368
H05B33/14 Z
H10K71/00
H10K59/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023176498
(22)【出願日】2023-10-12
(62)【分割の表示】P 2021203013の分割
【原出願日】2014-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2013008628
(32)【優先日】2013-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2013053192
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】肥塚 純一
(72)【発明者】
【氏名】島 行徳
(72)【発明者】
【氏名】平石 鈴之介
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 健一
(57)【要約】
【課題】酸化物半導体膜を用いた半導体装置において、酸化物半導体膜の欠陥を低減する
。また、酸化物半導体膜を用いた半導体装置において、電気特性を向上させる。また、酸
化物半導体膜を用いた半導体装置において、信頼性を向上させる。
【解決手段】基板上にゲート電極及びゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上に、酸化物
半導体膜を形成し、酸化物半導体膜に接する一対の電極を形成し、酸化物半導体膜、及び
前記一対の電極上に、280℃以上400℃以下の成膜条件を用いたプラズマCVD法に
より第1の酸化物絶縁膜を形成し、第1の酸化物絶縁膜上に第2の酸化物絶縁膜を形成し
、150℃以上400℃以下、好ましくは300℃以上400℃以下、好ましくは320
℃以上370℃以下で加熱処理を行う半導体装置の作製方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にゲート電極及びゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上に、酸化物半導体膜を形成し、
前記酸化物半導体膜に接する一対の電極を形成し、
前記酸化物半導体膜、及び前記一対の電極上に、280℃以上400℃以下の成膜条件を用いたプラズマCVD法により第1の酸化物絶縁膜を形成し、
前記第1の酸化物絶縁膜上に第2の酸化物絶縁膜を形成し、150℃以上400℃以下で加熱処理を行う半導体装置の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物、方法、または製造方法に関する。または、本発明は、プロセス、マシン
、マニュファクチャ、または組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。特に、
本発明は、例えば、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、それらの駆動方法、ま
たはそれらの製造方法に関する。特に、本発明は、例えば、酸化物半導体を有する半導体
装置、表示装置、または発光装置に関する。特に、本発明は、例えば、トランジスタを有
する半導体装置及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や発光表示装置に代表されるフラットパネルディスプレイの多くに用いら
れているトランジスタは、ガラス基板上に形成されたアモルファスシリコン、単結晶シリ
コンまたは多結晶シリコンなどのシリコン半導体によって構成されている。また、該シリ
コン半導体を用いたトランジスタは、集積回路(IC)などにも利用されている。
【0003】
近年、シリコン半導体に代わって、半導体特性を示す金属酸化物をトランジスタに用い
る技術が注目されている。なお、本明細書中では、半導体特性を示す金属酸化物を酸化物
半導体とよぶことにする。
【0004】
例えば、酸化物半導体として、酸化亜鉛、またはIn-Ga-Zn系酸化物を用いたト
ランジスタを作製し、該トランジスタを表示装置の画素のスイッチング素子などに用いる
技術が開示されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-123861号公報
【特許文献2】特開2007-96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸化物半導体膜を用いたトランジスタにおいて、酸化物半導体膜に含まれる欠損量が多
いことは、トランジスタの電気特性の不良に繋がると共に、経時変化やストレス試験(例
えば、BT(Bias-Temperature)ストレス試験)において、トランジス
タの電気特性、代表的にはしきい値電圧の変動量が増大することの原因となる。
【0007】
また、欠損に限らず、酸化物半導体膜に含まれる不純物、代表的には絶縁膜の構成元素
であるシリコンや炭素等の不純物が多いと、トランジスタの電気特性の不要の原因となる
。
【0008】
そこで、本発明の一態様は、酸化物半導体膜を用いた半導体装置などにおいて、酸化物
半導体膜の欠陥を低減することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、酸化物半
導体膜を用いた半導体装置などにおいて、酸化物半導体膜の不純物濃度を低減することを
課題の一とする。または、本発明の一態様は、酸化物半導体膜を用いた半導体装置などに
おいて、電気特性を向上させることを課題の一とする。または、本発明の一態様は、酸化
物半導体膜を用いた半導体装置などにおいて、信頼性を向上させることを課題の一とする
。または、本発明の一態様は、オフ電流の低い半導体装置などを提供することを課題とす
る。または、本発明の一態様は、消費電力の低い半導体装置などを提供することを課題と
する。または、本発明の一態様は、目の疲労を軽減することが可能な表示装置などを提供
することを課題とする。または、本発明の一態様は、透明な半導体膜を用いた半導体装置
などを提供することを課題とする。または、本発明の一態様は、新規な半導体装置などを
提供することを課題とする。または、本発明の一態様は、優れた特性を有する半導体装置
などを提供することを課題とする。なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げ
るものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないも
のとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明
らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出
することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、基板上にゲート電極及びゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上に
、酸化物半導体膜を形成した後、加熱処理工程を行わずに酸化物半導体膜に接する一対の
電極を形成し、酸化物半導体膜、及び前記一対の電極上に、280℃以上400℃以下の
成膜条件を用いたプラズマCVD法により第1の酸化物絶縁膜を形成し、第1の酸化物絶
縁膜上に第2の酸化物絶縁膜を形成し、150℃以上400℃以下、好ましくは300℃
以上400℃以下、より好ましくは320℃以上370℃以下で加熱処理を行う半導体装
置の作製方法である。
【0010】
なお、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を100Pa以上250Pa
以下とし、処理室内に設けられる電極に高周波電力を供給することにより、第1の酸化物
絶縁膜を形成することができる。
【0011】
また、真空排気された処理室内に載置された基板を180℃以上280℃以下に保持し
、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を100Pa以上250Pa以下と
し、処理室内に設けられる電極に0.17W/cm2以上0.5W/cm2以下の高周波
電力を供給することにより、第2の酸化物絶縁膜を形成することができる。
【0012】
また、第1の酸化物絶縁膜及び第2の酸化物絶縁膜として、シリコンを含む堆積性気体
及び酸化性気体を原料ガスに用いて、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成す
る。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様により、酸化物半導体膜を用いた半導体装置において、酸化物半導体膜
の欠陥を低減することができる。または、本発明の一態様は、酸化物半導体膜を用いた半
導体装置などにおいて、酸化物半導体膜の不純物を低減することができる。または、本発
明の一態様により、酸化物半導体膜を用いた半導体装置において、電気特性を向上させる
ことができる。または、本発明の一態様により、酸化物半導体膜を用いた半導体装置にお
いて、信頼性を向上させることができる。または、本発明の一態様により、オフ電流の低
い半導体装置などを提供することができる。または、本発明の一態様により、消費電力の
低い半導体装置などを提供することができる。または、本発明の一態様により、目の疲労
を軽減することが可能な表示装置などを提供することができる。または、本発明の一態様
により、透明な半導体膜を用いた半導体装置などを提供することができる。または、本発
明の一態様により、新規な半導体装置などを提供することができる。または、本発明の一
態様により、優れた特性を有する半導体装置などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】トランジスタの一形態を説明する上面図及び断面図である。
【
図2】トランジスタの作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図3】トランジスタの一形態を説明する断面図である。
【
図4】トランジスタの一形態を説明する断面図である。
【
図5】トランジスタの一形態を説明する断面図である。
【
図6】トランジスタの一形態を説明する上面図及び断面図である。
【
図7】トランジスタのバンド構造を説明する図である。
【
図8】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図9】トランジスタの一形態を説明する上面図及び断面図である。
【
図10】トランジスタの作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図11】トランジスタの一形態を説明する断面図である。
【
図12】トランジスタの一形態を説明する断面図である。
【
図13】トランジスタの一形態を説明する上面図及び断面図である。
【
図14】トランジスタの一形態を説明する上面図及び断面図である。
【
図15】半導体装置の一形態を説明するブロック図及び回路図である。
【
図16】半導体装置の一形態を説明する上面図である。
【
図17】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図18】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図19】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図20】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図21】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図22】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図23】半導体装置の一形態を説明する上面図である。
【
図24】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図25】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図26】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図27】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図28】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図29】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図30】酸化物半導体の極微電子線回折パターンを示す図である。
【
図31】酸化物半導体の極微電子線回折パターンを示す図である。
【
図32】実施の形態に係るタッチセンサを説明する図である。
【
図33】実施の形態に係るタッチパネル及び電子機器の構成例を説明する図である。
【
図34】実施の形態に係るタッチセンサを備える画素を説明する図である。
【
図35】実施の形態に係るタッチセンサ及び画素の動作を説明する図である。
【
図36】液晶表示装置の構成例を示すブロック図である。
【
図37】液晶表示装置の駆動方法の一例を説明するタイミングチャートである。
【
図38】本発明の一態様である半導体装置を用いた電子機器を説明する図である。
【
図39】本発明の一態様である半導体装置を用いた電子機器を説明する図である。
【
図40】トランジスタのVg-Id特性を示す図である。
【
図41】BTストレス試験及び光BTストレス試験後のトランジスタのしきい値電圧及びシフト値の変動量を示す図である。
【
図42】しきい値電圧及びシフト値の定義を説明する図である。
【
図47】H
2O脱離過程に関する計算のモデル図である。
【
図48】H
2O脱離過程に関する計算のモデル図である。
【
図49】H
2O脱離過程に関するエネルギー図と模式図である。
【
図53】トランジスタのVg-Id特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明
は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及
び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は
、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。また
、以下に説明する実施の形態及び実施例において、同一部分または同様の機能を有する部
分には、同一の符号または同一のハッチパターンを異なる図面間で共通して用い、その繰
り返しの説明は省略する。
【0016】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、膜の厚さ、または領域は、
明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されな
い。
【0017】
また、本明細書にて用いる第1、第2、第3などの用語は、構成要素の混同を避けるた
めに付したものであり、数的に限定するものではない。そのため、例えば、「第1の」を
「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。
【0018】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、回路動作において電流の方向が変化する場
合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレ
イン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0019】
また、電圧とは2点間における電位差のことをいい、電位とはある一点における静電場
の中にある単位電荷が持つ静電エネルギー(電気的な位置エネルギー)のことをいう。た
だし、一般的に、ある一点における電位と基準となる電位(例えば接地電位)との電位差
のことを、単に電位もしくは電圧と呼び、電位と電圧が同義語として用いられることが多
い。このため、本明細書では特に指定する場合を除き、電位を電圧と読み替えてもよいし
、電圧を電位と読み替えてもよいこととする。
【0020】
本明細書において、フォトリソグラフィ工程を行った後にエッチング工程を行う場合は
、フォトリソグラフィ工程で形成したマスクは除去するものとする。
【0021】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置及びその作製方法について図面を
参照して説明する。
【0022】
酸化物半導体膜を用いたトランジスタにおいて、トランジスタの電気特性の不良に繋が
る欠陥の一例として酸素欠損がある。例えば、膜中に酸素欠損が含まれている酸化物半導
体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナス方向に変動しやすく、ノーマリー
オン特性となりやすい。これは、酸化物半導体膜に含まれる酸素欠損に起因して電荷が生
じ、低抵抗化するためである。トランジスタがノーマリーオン特性を有すると、動作時に
動作不良が発生しやすくなる、または非動作時の消費電力が高くなるなどの、様々な問題
が生じる。また、経時変化やストレス試験により、トランジスタの電気特性、代表的には
しきい値電圧の変動量が増大するという問題がある。
【0023】
酸素欠損の発生原因の一つとして、トランジスタの作製工程に生じるダメージがある。
例えば、酸化物半導体膜上にプラズマCVD法またはスパッタリング法により絶縁膜、導
電膜などを形成する際、その形成条件によっては、当該酸化物半導体膜にダメージが入る
ことがある。
【0024】
また、酸素欠損の発生原因の一つとして、加熱処理による酸化物半導体膜からの酸素脱
離がある。例えば、酸化物半導体膜に含まれる水素、水等の不純物を除去するために加熱
処理をする場合があるが、酸化物半導体膜が露出された状態で加熱処理をすると、酸化物
半導体膜から酸素が脱離し、酸素欠損が形成される。
【0025】
また、酸素欠損に限らず、絶縁膜の構成元素であるシリコンや炭素等の不純物も、トラ
ンジスタの電気特性の不良の原因となる。このため、該不純物が、酸化物半導体膜に混入
することにより、当該酸化物半導体膜が低抵抗化してしまい、経時変化やストレス試験に
より、トランジスタの電気特性、代表的にはしきい値電圧の変動量が増大するという問題
がある。
【0026】
そこで、本実施の形態では、酸化物半導体膜を有するトランジスタを備える半導体装置
において、チャネル領域を有する酸化物半導体膜への酸素欠損、及び酸化物半導体膜の不
純物濃度を低減することを課題の一とする。
【0027】
一方で、市場で販売されている表示装置は、画面サイズが対角60インチ以上と大型化
する傾向にあり、さらには、対角120インチ以上の画面サイズも視野に入れた開発が行
われている。このため、表示装置に用いられるガラス基板においては、第8世代以上の大
面積化が進んでいる。しかしながら、大面積基板を用いる場合、高温処理、例えば450
℃以上の加熱処理をするため加熱装置が大型で高価となってしまい、生産コストが増大し
てしまう。また、高温処理を行うと、基板の反りやシュリンクが生じてしまい、歩留まり
が低減してしまう。
【0028】
そこで、本実施の形態では、少ない加熱処理工程数、及び大面積基板を用いても可能な
温度の加熱処理を用いて、半導体装置を作製することを課題の一とする。
【0029】
図1(A)乃至
図1(C)に、半導体装置が有するトランジスタ50の上面図及び断面
図を示す。
図1に示すトランジスタ50は、チャネルエッチ型のトランジスタである。図
1(A)はトランジスタ50の上面図であり、
図1(B)は、
図1(A)の一点鎖線A-
B間の断面図であり、
図1(C)は、
図1(A)の一点鎖線C-D間の断面図である。な
お、
図1(A)では、明瞭化のため、基板11、トランジスタ50の構成要素の一部(例
えば、ゲート絶縁膜17)、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜24、窒化物絶縁膜25な
どを省略している。
【0030】
図1(B)及び
図1(C)に示すトランジスタ50は、基板11上に設けられるゲート
電極15を有する。また、基板11及びゲート電極15上に形成されるゲート絶縁膜17
と、ゲート絶縁膜17を介して、ゲート電極15と重なる酸化物半導体膜18と、酸化物
半導体膜18に接する一対の電極21、22とを有する。また、ゲート絶縁膜17、酸化
物半導体膜18、及び一対の電極21、22上には、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜2
4、及び窒化物絶縁膜25で構成される保護膜26が形成される。
【0031】
本実施の形態に示すトランジスタ50において、酸化物半導体膜18を有する。また、
酸化物半導体膜18の一部がチャネル領域として機能する。また、酸化物半導体膜18に
接するように、酸化物絶縁膜23が形成されており、酸化物絶縁膜23に接するように酸
化物絶縁膜24が形成されている。
【0032】
酸化物半導体膜18は、代表的には、In-Ga酸化物膜、In-Zn酸化物膜、In
-M-Zn酸化物膜(MはAl、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、またはHf
)がある。
【0033】
なお、酸化物半導体膜18がIn-M-Zn酸化物膜であるとき、InおよびMの和を
100atomic%としたとき、InとMの原子数比率は、好ましくは、Inが25a
tomic%以上、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34atom
ic%以上、Mが66atomic%未満とする。
【0034】
酸化物半導体膜18は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上
、より好ましくは3eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導
体を用いることで、トランジスタ50のオフ電流を低減することができる。
【0035】
酸化物半導体膜18の厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上10
0nm以下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下とする。
【0036】
酸化物半導体膜18がIn-M-Zn酸化物膜(MはAl、Ti、Ga、Y、Zr、L
a、Ce、NdまたはHf)の場合、In-M-Zn酸化物を成膜するために用いるスパ
ッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧Mを満たすことが好ま
しい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Z
n=1:1:1、In:M:Zn=3:1:2が好ましい。なお、成膜される酸化物半導
体膜18の原子数比はそれぞれ、誤差として上記のスパッタリングターゲットに含まれる
金属元素の原子数比のプラスマイナス20%の変動を含む。
【0037】
酸化物半導体膜18としては、キャリア密度の低い酸化物半導体膜を用いる。例えば、
酸化物半導体膜18は、キャリア密度が1×1017個/cm3以下、好ましくは1×1
015個/cm3以下、さらに好ましくは1×1013個/cm3以下、より好ましくは
1×1011個/cm3以下の酸化物半導体膜を用いる。
【0038】
なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性及び電気特性(電界効
果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とす
るトランジスタの半導体特性を得るために、酸化物半導体膜18のキャリア密度や不純物
濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとするこ
とが好ましい。
【0039】
なお、酸化物半導体膜18として、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導
体膜を用いることで、さらに優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができ
好ましい。ここでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)こと
を高純度真性または実質的に高純度真性とよぶ。高純度真性または実質的に高純度真性で
ある酸化物半導体は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができ
る場合がある。従って、当該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは
、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少
ない場合がある。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、
欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。また、高純度真性ま
たは実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、オフ電流が著しく小さく、チャネル幅
が1×106μmでチャネル長Lが10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電
極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラ
メータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10-13A以下という特性を得ること
ができる。従って、当該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電
気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる場合がある。なお、酸化物半導
体膜のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固
定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体膜
にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。不純
物としては、水素、窒素、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属等がある。
【0040】
酸化物半導体膜に含まれる水素は金属原子と結合する酸素と反応して水になると共に、
酸素が脱離した格子(または酸素が脱離した部分)に酸素欠損が形成される。当該酸素欠
損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部
が金属原子と結合する酸素と結合することで、キャリアである電子を生成する場合がある
。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性
となりやすい。
【0041】
このため、酸化物半導体膜18は水素ができる限り低減されていることが好ましい。具
体的には、酸化物半導体膜18において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secon
dary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、
5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3
以下、5×1018atoms/cm3以下、好ましくは1×1018atoms/cm
3以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1
016atoms/cm3以下とする。
【0042】
酸化物半導体膜18において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると
、酸化物半導体膜18において酸素欠損が増加し、n型化してしまう。このため、酸化物
半導体膜18におけるシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法により得られる濃度
)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm
3以下とする。
【0043】
また、酸化物半導体膜18において、二次イオン質量分析法により得られるアルカリ金
属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは
2×1016atoms/cm3以下にする。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、酸
化物半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増大
してしまうことがある。このため、酸化物半導体膜18のアルカリ金属またはアルカリ土
類金属の濃度を低減することが好ましい。
【0044】
また、酸化物半導体膜18に窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、キャ
リア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を用い
たトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、当該酸化物半導体膜におい
て、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、二次イオン質量分析法に
より得られる窒素濃度は、5×1018atoms/cm3以下にすることが好ましい。
【0045】
また、酸化物半導体膜18は、例えば非単結晶構造でもよい。非単結晶構造は、例えば
、後述するCAAC-OS(C Axis Aligned Crystalline
Oxide Semiconductor)、多結晶構造、後述する微結晶構造、または
非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CA
AC-OSは最も欠陥準位密度が低い。
【0046】
酸化物半導体膜18は、例えば非晶質構造でもよい。非晶質構造の酸化物半導体膜は、
例えば、原子配列が無秩序であり、結晶成分を有さない。または、非晶質構造の酸化物膜
は、例えば、完全な非晶質構造であり、結晶部を有さない。
【0047】
なお、酸化物半導体膜18が、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領
域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の領域の二種以上を有する混合膜であってもよい
。混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAA
C-OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上の領域を有する場合がある。また
、混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAA
C-OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上の領域の積層構造を有する場合が
ある。
【0048】
また、本実施の形態に示すトランジスタ50において、酸化物半導体膜18に接するよ
うに、酸化物絶縁膜23が形成されており、酸化物絶縁膜23に接する酸化物絶縁膜24
が形成されている。
【0049】
酸化物絶縁膜23は、酸素を透過する酸化物絶縁膜である。なお、酸化物絶縁膜23は
、後に形成する酸化物絶縁膜24を形成する際の、酸化物半導体膜18へのダメージ緩和
膜としても機能する。
【0050】
酸化物絶縁膜23としては、厚さが5nm以上150nm以下、好ましくは5nm以上
50nm以下の酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等を用いることができる。なお、本
明細書中において、酸化窒化シリコン膜とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量
が多い膜を指し、窒化酸化シリコン膜とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が
多い膜を指す。
【0051】
また、酸化物絶縁膜23は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定
により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン
密度が3×1017spins/cm3以下であることが好ましい。これは、酸化物絶縁
膜23に含まれる欠陥密度が多いと、当該欠陥に酸素が結合してしまい、酸化物絶縁膜2
3における酸素の透過量が減少してしまうためである。
【0052】
また、酸化物絶縁膜23と酸化物半導体膜18との界面における欠陥量が少ないことが
好ましく、代表的には、ESR測定により、酸化物半導体膜18の欠陥に由来するg=1
.93に現れる信号のスピン密度が1×1017spins/cm3以下、さらには検出
下限以下であることが好ましい。
【0053】
なお、酸化物絶縁膜23においては、外部から酸化物絶縁膜23に入った酸素が全て酸
化物絶縁膜23の外部に移動せず、酸化物絶縁膜23にとどまる酸素もある。また、酸化
物絶縁膜23に酸素が入ると共に、酸化物絶縁膜23に含まれる酸素が酸化物絶縁膜23
の外部へ移動することで、酸化物絶縁膜23において酸素の移動が生じる場合もある。
【0054】
酸化物絶縁膜23として酸素を透過する酸化物絶縁膜を形成すると、酸化物絶縁膜23
上に設けられる、酸化物絶縁膜24から脱離する酸素を、酸化物絶縁膜23を介して酸化
物半導体膜18に移動させることができる。
【0055】
酸化物絶縁膜23に接するように酸化物絶縁膜24が形成されている。酸化物絶縁膜2
4は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いて形成す
る。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、加熱により酸
素の一部が脱離する。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜
は、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms
/cm3以上、好ましくは3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物絶縁膜
である。
【0056】
酸化物絶縁膜24としては、厚さが30nm以上500nm以下、好ましくは50nm
以上400nm以下の、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等を用いることができる。
【0057】
また、酸化物絶縁膜24は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定
により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン
密度が1.5×1018spins/cm3未満、更には1×1018spins/cm
3以下であることが好ましい。なお、酸化物絶縁膜24は、酸化物絶縁膜23と比較して
酸化物半導体膜18から離れているため、酸化物絶縁膜23より、欠陥密度が多くともよ
い。
【0058】
以下に、トランジスタ50の他の構成の詳細について説明する。
【0059】
基板11の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の
耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サフ
ァイア基板等を、基板11として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンなどの単
結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SO
I基板等を適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを
、基板11として用いてもよい。なお、基板11として、ガラス基板を用いる場合、第6
世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8
世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×2800mm)、第1
0世代(2950mm×3400mm)等の大面積基板を用いることで、大型の表示装置
を作製することができる。
【0060】
また、基板11として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタ50を
形成してもよい。または、基板11とトランジスタ50の間に剥離層を設けてもよい。剥
離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板11より分離し、他
の基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタ50は耐熱性の劣る基
板や可撓性の基板にも転載できる。
【0061】
ゲート電極15は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タン
グステンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した
金属元素を組み合わせた合金等を用いて形成することができる。また、マンガン、ジルコ
ニウムのいずれか一または複数から選択された金属元素を用いてもよい。また、ゲート電
極15は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むア
ルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン
膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構
造、窒化タンタル膜または窒化タングステン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、
チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成
する三層構造等がある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリ
ブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素の一または複数を組み合わせ
た合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0062】
また、ゲート電極15は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸
化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化
物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを添加
したインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、
上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0063】
また、ゲート電極15とゲート絶縁膜17との間に、In-Ga-Zn系酸化窒化物膜
、In-Sn系酸化窒化物膜、In-Ga系酸化窒化物膜、In-Zn系酸化窒化物膜、
Sn系酸化窒化物膜、In系酸化窒化物膜、金属窒化膜(InN、ZnN等)等を設けて
もよい。これらの膜は5eV以上、好ましくは5.5eV以上の仕事関数を有し、酸化物
半導体の電子親和力よりも大きい値であるため、酸化物半導体を用いたトランジスタのし
きい値電圧をプラスにシフトすることができ、所謂ノーマリーオフ特性のスイッチング素
子を実現できる。例えば、In-Ga-Zn系酸化窒化物膜を用いる場合、少なくとも酸
化物半導体膜18より高い窒素濃度、具体的には7原子%以上のIn-Ga-Zn系酸化
窒化物膜を用いる。
【0064】
ゲート絶縁膜17は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒
化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa-Zn系金属
酸化物などを用いればよく、積層または単層で設ける。
【0065】
また、ゲート絶縁膜17として、ハフニウムシリケート(HfSiOx)、窒素が添加
されたハフニウムシリケート(HfSixOyNz)、窒素が添加されたハフニウムアル
ミネート(HfAlxOyNz)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh-
k材料を用いることでトランジスタのゲートリークを低減できる。
【0066】
ゲート絶縁膜17の厚さは、5nm以上400nm以下、より好ましくは10nm以上
300nm以下、より好ましくは50nm以上250nm以下とするとよい。
【0067】
一対の電極21、22は、導電材料として、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル
、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンか
らなる単体金属、またはこれを主成分とする合金を単層構造または積層構造として用いる
。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積
層する二層構造、タングステン膜上にチタン膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-
アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜または窒化チタン膜と、その
チタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその
上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデ
ン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜
を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等が
ある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい
。
【0068】
さらに、酸化物絶縁膜24上に、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等
のブロッキング効果を有する窒化物絶縁膜25を設けることで、酸化物半導体膜18から
の酸素の外部への拡散と、外部から酸化物半導体膜18への水素、水等の侵入を防ぐこと
ができる。窒化物絶縁膜としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム
、窒化酸化アルミニウム等がある。なお、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類
金属等のブロッキング効果を有する窒化物絶縁膜の代わりに、酸素、水素、水等のブロッ
キング効果を有する酸化物絶縁膜を設けてもよい。酸素、水素、水等のブロッキング効果
を有する酸化物絶縁膜としては、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウ
ム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸
化窒化ハフニウム等がある。
【0069】
次に、
図1に示すトランジスタ50の作製方法について、
図2を用いて説明する。
【0070】
図2(A)に示すように、基板11上にゲート電極15を形成し、ゲート電極15上に
ゲート絶縁膜17を形成する。
【0071】
ここでは、基板11としてガラス基板を用いる。
【0072】
ゲート電極15の形成方法を以下に示す。はじめに、スパッタリング法、CVD法、蒸
着法等により導電膜を形成し、導電膜上にフォトリソグラフィ工程によりマスクを形成す
る。次に、該マスクを用いて導電膜の一部をエッチングして、ゲート電極15を形成する
。この後、マスクを除去する。
【0073】
なお、ゲート電極15は、上記形成方法の代わりに、電解メッキ法、印刷法、インクジ
ェット法等で形成してもよい。
【0074】
ここでは、厚さ100nmのタングステン膜をスパッタリング法により形成する。次に
、フォトリソグラフィ工程によりマスクを形成し、当該マスクを用いてタングステン膜を
ドライエッチングして、ゲート電極15を形成する。
【0075】
ゲート絶縁膜17は、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で形成する。
【0076】
ゲート絶縁膜17として酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、または窒化酸化シリコ
ン膜を形成する場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用
いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、
トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素
、二酸化窒素等がある。
【0077】
また、ゲート絶縁膜17として酸化ガリウム膜を形成する場合、MOCVD(Meta
l Organic Chemical Vapor Deposition)法を用い
て形成することができる。
【0078】
次に、
図2(B)に示すように、ゲート絶縁膜17上に酸化物半導体膜18を形成する
。
【0079】
酸化物半導体膜18の形成方法について、以下に説明する。ゲート絶縁膜17上に、酸
化物半導体膜18となる酸化物半導体膜を形成する。次に、酸化物半導体膜上にフォトリ
ソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該マスクを用いて酸化物半導体膜の一部をエ
ッチングすることで、
図2(B)に示すような、素子分離された酸化物半導体膜18を形
成する。この後、マスクを除去する。
【0080】
後に酸化物半導体膜18となる酸化物半導体膜は、スパッタリング法、塗布法、パルス
レーザー蒸着法、レーザーアブレーション法等を用いて形成することができる。
【0081】
スパッタリング法で酸化物半導体膜を形成する場合、プラズマを発生させるための電源
装置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる。
【0082】
スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素ガス、希ガス及び酸素の
混合ガスを適宜用いる。なお、希ガス及び酸素の混合ガスの場合、希ガスに対して酸素の
ガス比を高めることが好ましい。
【0083】
また、ターゲットは、形成する酸化物半導体膜の組成にあわせて、適宜選択すればよい
。
【0084】
高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜を得るためには、チャンバ
ー内を高真空排気するのみならずスパッタガスの高純度化も必要である。スパッタガスと
して用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が-40℃以下、好ましくは-80℃以下、
より好ましくは-100℃以下、より好ましくは-120℃以下にまで高純度化したガス
を用いることで酸化物半導体膜に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができ
る。
【0085】
ここでは、In-Ga-Zn酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1)を用
いたスパッタリング法により、酸化物半導体膜として厚さ35nmのIn-Ga-Zn酸
化物膜を形成する。次に、酸化物半導体膜上にマスクを形成し、酸化物半導体膜の一部を
選択的にエッチングすることで、酸化物半導体膜18を形成する。
【0086】
次に、
図2(C)に示すように、酸化物半導体膜18を形成した後加熱処理を行わずに
、一対の電極21、22を形成する。
【0087】
一対の電極21、22の形成方法を以下に示す。はじめに、スパッタリング法、CVD
法、蒸着法等で導電膜を形成する。次に、該導電膜上にフォトリソグラフィ工程によりマ
スクを形成する。次に、該マスクを用いて導電膜をエッチングして、一対の電極21、2
2を形成する。この後、マスクを除去する。
【0088】
ここでは、厚さ50nmのタングステン膜、厚さ400nmのアルミニウム膜、及び厚
さ100nmのチタン膜を順にスパッタリング法により積層する。次に、チタン膜上にフ
ォトリソグラフィ工程によりマスクを形成し、当該マスクを用いてタングステン膜、アル
ミニウム膜、及びチタン膜をドライエッチングして、一対の電極21、22を形成する。
【0089】
次に、
図2(D)に示すように、酸化物半導体膜18及び一対の電極21、22上に、
酸化物絶縁膜23を形成する。次に、酸化物絶縁膜23上に酸化物絶縁膜24を形成する
。
【0090】
なお、酸化物絶縁膜23を形成した後、大気に曝すことなく、連続的に酸化物絶縁膜2
4を形成することが好ましい。酸化物絶縁膜23を形成した後、大気開放せず、原料ガス
の流量、圧力、高周波電力及び基板温度の一以上を調整して、酸化物絶縁膜24を連続的
に形成することで、酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜24における界面の大気成分由来
の不純物濃度を低減することができると共に、酸化物絶縁膜24に含まれる酸素を酸化物
半導体膜18に移動させることが可能であり、酸化物半導体膜18の酸素欠損量を低減す
ることができる。
【0091】
酸化物絶縁膜23としては、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置され
た基板を280℃以上400℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内にお
ける圧力を20Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは100Pa以上250Pa以
下とし、処理室内に設けられる電極に高周波電力を供給する条件により、酸化物絶縁膜2
3として酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成することができる。
【0092】
酸化物絶縁膜23の原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用
いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、
トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素
、二酸化窒素等がある。
【0093】
上記条件を用いることで、酸化物絶縁膜23として酸素を透過する酸化物絶縁膜を形成
することができる。また、酸化物膜19及び酸化物絶縁膜23を設けることで、後に形成
する酸化物絶縁膜24の形成工程において、酸化物半導体膜18へのダメージ低減が可能
である。
【0094】
なお、酸化物絶縁膜23は、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置され
た基板を280℃以上400℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内にお
ける圧力を100Pa以上250Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に高周波電力
を供給する条件により、酸化物絶縁膜23として、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコ
ン膜を形成することができる。
【0095】
当該成膜条件において、基板温度を上記温度とすることで、シリコン及び酸素の結合力
が強くなる。この結果、酸化物絶縁膜23として、酸素が透過し、緻密であり、且つ硬い
酸化物絶縁膜、代表的には、25℃において0.5重量%のフッ酸に対するエッチング速
度が10nm/分以下、好ましくは8nm/分以下である酸化シリコン膜または酸化窒化
シリコン膜を形成することができる。
【0096】
また、加熱をしながら酸化物絶縁膜23を形成するため、当該工程において酸化物半導
体膜18に含まれる水素、水等を脱離させることができる。酸化物半導体膜18に含まれ
る水素は、プラズマ中で発生した酸素ラジカルと結合し、水となる。酸化物絶縁膜23の
成膜工程において基板が加熱されているため、酸素及び水素の結合により生成された水は
、酸化物半導体膜から脱離する。即ち、プラズマCVD法によって酸化物絶縁膜23を形
成することで、酸化物半導体膜に含まれる水及び水素の含有量を低減することができる。
【0097】
また、酸化物絶縁膜23を形成する工程において加熱するため、酸化物半導体膜18が
露出された状態での加熱時間が少なく、加熱処理による酸化物半導体膜からの酸素の脱離
量を低減することができる。即ち、酸化物半導体膜中に含まれる酸素欠損量を低減するこ
とができる。
【0098】
さらには、処理室の圧力を100Pa以上250Pa以下とすることで、酸化物絶縁膜
23に含まれる水の含有量が少なくなるため、トランジスタ50の電気特性のばらつきを
低減すると共に、しきい値電圧の変動を抑制することができる。
【0099】
また、処理室の圧力を100Pa以上250Pa以下とすることで、酸化物絶縁膜23
を成膜する際に、酸化物半導体膜18へのダメージを低減することが可能であり、酸化物
半導体膜18に含まれる酸素欠損量を低減することができる。特に、酸化物絶縁膜23ま
たは後に形成される酸化物絶縁膜24の成膜温度を高くする、代表的には220℃より高
い温度とすることで、酸化物半導体膜18に含まれる酸素の一部が脱離し、酸素欠損が形
成されやすい。また、トランジスタの信頼性を高めるため、後に形成する酸化物絶縁膜2
4の欠陥量を低減するための成膜条件を用いると、酸素脱離量が低減しやすい。これらの
結果、酸化物半導体膜18の酸素欠損を低減することが困難な場合がある。しかしながら
、処理室の圧力を100Pa以上250Pa以下とし、酸化物絶縁膜23の成膜時におけ
る酸化物半導体膜18へのダメージを低減することで、酸化物絶縁膜24からの少ない酸
素脱離量でも酸化物半導体膜18中の酸素欠損を低減することが可能である。
【0100】
なお、シリコンを含む堆積性気体に対する酸化性気体量を100倍以上とすることで、
酸化物絶縁膜23に含まれる水素含有量を低減することが可能である。この結果、酸化物
半導体膜18に混入する水素量を低減できるため、トランジスタのしきい値電圧のマイナ
スシフトを抑制することができる。
【0101】
ここでは、酸化物絶縁膜23として、流量30sccmのシラン及び流量4000sc
cmの一酸化二窒素を原料ガスとし、処理室の圧力を200Pa、基板温度を220℃と
し、27.12MHzの高周波電源を用いて150Wの高周波電力を平行平板電極に供給
したプラズマCVD法により、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。当該条件
により、酸素が透過する酸化窒化シリコン膜を形成することができる。
【0102】
酸化物絶縁膜24としては、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置され
た基板を180℃以上280℃以下、さらに好ましくは200℃以上240℃以下に保持
し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を100Pa以上250Pa以下
、さらに好ましくは100Pa以上200Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に0
.17W/cm2以上0.5W/cm2以下、さらに好ましくは0.25W/cm2以上
0.35W/cm2以下の高周波電力を供給する条件により、酸化シリコン膜または酸化
窒化シリコン膜を形成する。
【0103】
酸化物絶縁膜24の原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用
いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、
トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素
、二酸化窒素等がある。
【0104】
酸化物絶縁膜24の成膜条件として、上記圧力の処理室において上記パワー密度の高周
波電力を供給することで、プラズマ中で原料ガスの分解効率が高まり、酸素ラジカルが増
加し、原料ガスの酸化が進むため、酸化物絶縁膜24中における酸素含有量が化学量論的
組成よりも多くなる。一方、基板温度が、上記温度で形成された膜では、シリコンと酸素
の結合力が弱いため、後の工程の加熱処理により膜中の酸素の一部が脱離する。この結果
、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離す
る酸化物絶縁膜を形成することができる。また、酸化物半導体膜18上に酸化物絶縁膜2
3が設けられている。このため、酸化物絶縁膜24の形成工程において、酸化物絶縁膜2
3が酸化物半導体膜18の保護膜となる。この結果、酸化物半導体膜18へのダメージを
低減しつつ、パワー密度の高い高周波電力を用いて酸化物絶縁膜24を形成することがで
きる。
【0105】
なお、酸化物絶縁膜24の成膜条件において、酸化性気体に対するシリコンを含む堆積
性気体の流量を増加することで、酸化物絶縁膜24の欠陥量を低減することが可能である
。代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.0
01に現れる信号のスピン密度が6×1017spins/cm3未満、好ましくは3×
1017spins/cm3以下、好ましくは1.5×1017spins/cm3以下
である欠陥量の少ない酸化物絶縁膜を形成することができる。この結果トランジスタの信
頼性を高めることができる。
【0106】
ここでは、酸化物絶縁膜24として、流量200sccmのシラン及び流量4000s
ccmの一酸化二窒素を原料ガスとし、処理室の圧力を200Pa、基板温度を220℃
とし、27.12MHzの高周波電源を用いて1500Wの高周波電力を平行平板電極に
供給したプラズマCVD法により、厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。な
お、プラズマCVD装置は電極面積が6000cm2である平行平板型のプラズマCVD
装置であり、供給した電力を単位面積あたりの電力(電力密度)に換算すると0.25W
/cm2である。
【0107】
次に、加熱処理を行う。該加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上400℃以下
、好ましくは300℃以上400℃以下、好ましくは320℃以上370℃以下とする。
【0108】
該加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いること
で、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため加熱
処理時間を短縮することができる。
【0109】
加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1p
pm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウム等)
の雰囲気下で行えばよい。なお、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水素、水
等が含まれないことが好ましい。
【0110】
当該加熱処理により、酸化物絶縁膜24に含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜18に
移動させ、酸化物半導体膜18に含まれる酸素欠損量をさらに低減することができる。
【0111】
また、酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜24に水、水素等が含まる場合、水、水素等
をブロッキングする機能を有する窒化物絶縁膜25を後に形成し、加熱処理を行うと、酸
化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜24に含まれる水、水素等が、酸化物半導体膜18に移
動し、酸化物半導体膜18に欠陥が生じてしまう。しかしながら、当該加熱により、酸化
物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜24に含まれる水、水素等を脱離させることが可能であり
、トランジスタ50の電気特性のばらつきを低減すると共に、しきい値電圧の変動を抑制
することができる。
【0112】
なお、加熱しながら酸化物絶縁膜24を、酸化物絶縁膜23上に形成することで、酸化
物半導体膜18に酸素を移動させ、酸化物半導体膜18に含まれる酸素欠損を補填するこ
とが可能であるため、当該加熱処理を行わなくともよい。
【0113】
ここでは、窒素及び酸素雰囲気で、350℃、1時間の加熱処理を行う。
【0114】
また、一対の電極21、22を形成する際、導電膜のエッチングによって、酸化物半導
体膜18はダメージを受け、酸化物半導体膜18のバックチャネル(酸化物半導体膜18
において、ゲート電極15と対向する面と反対側の面)側に酸素欠損が生じる。しかし、
酸化物絶縁膜24に化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を
適用することで、加熱処理によって当該バックチャネル側に生じた酸素欠損を修復するこ
とができる。これにより、酸化物半導体膜18に含まれる欠陥を低減することができるた
め、トランジスタ50の信頼性を向上させることができる。
【0115】
次に、スパッタリング法、CVD法等により、窒化物絶縁膜25を形成する。
【0116】
なお、窒化物絶縁膜25をプラズマCVD法で形成する場合、プラズマCVD装置の真
空排気された処理室内に載置された基板を300℃以上400℃以下、さらに好ましくは
320℃以上370℃以下とすることで、緻密な窒化物絶縁膜を形成できるため好ましい
。
【0117】
窒化物絶縁膜25としてプラズマCVD法により窒化シリコン膜を形成する場合、シリ
コンを含む堆積性気体、窒素、及びアンモニアを原料ガスとして用いことが好ましい。原
料ガスとして、窒素と比較して少量のアンモニアを用いることで、プラズマ中でアンモニ
アが解離し、活性種が発生する。当該活性種が、シリコンを含む堆積性気体に含まれるシ
リコン及び水素の結合、及び窒素の三重結合を切断する。この結果、シリコン及び窒素の
結合が促進され、シリコン及び水素の結合が少なく、欠陥が少なく、緻密な窒化シリコン
膜を形成することができる。一方、原料ガスにおいて、窒素に対するアンモニアの量が多
いと、シリコンを含む堆積性気体及び窒素それぞれの分解が進まず、シリコン及び水素結
合が残存してしまい、欠陥が増大した、且つ粗な窒化シリコン膜が形成されてしまう。こ
れらのため、原料ガスにおいて、アンモニアに対する窒素の流量比を5以上50以下、好
ましくは10以上50以下とすることが好ましい。
【0118】
ここでは、プラズマCVD装置の処理室に、流量50sccmのシラン、流量5000
sccmの窒素、及び流量100sccmのアンモニアを原料ガスとし、処理室の圧力を
100Pa、基板温度を350℃とし、27.12MHzの高周波電源を用いて1000
Wの高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマCVD法により、厚さ50nmの窒化
シリコン膜を形成する。なお、プラズマCVD装置は電極面積が6000cm2である平
行平板型のプラズマCVD装置であり、供給した電力を単位面積あたりの電力(電力密度
)に換算すると1.7×10-1W/cm2である。
【0119】
以上の工程により、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜24、及び窒化物絶縁膜25で構
成される保護膜26を形成することができる。
【0120】
次に、加熱処理を行ってもよい。該加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上40
0℃以下、好ましくは300℃以上400℃以下、好ましくは320℃以上370℃以下
とする。
【0121】
以上の工程により、トランジスタ50を作製することができる。
【0122】
本実施の形態では、280℃以上400℃以下に加熱をしながら、プラズマCVD法を
用いて酸化物絶縁膜を形成するため、酸化物半導体膜18に含まれる水素、水等を脱離さ
せることができる。また、当該工程においては、酸化物半導体膜が露出された状態での加
熱時間が少なく、加熱処理による酸化物半導体の温度が400℃以下としても、高温で加
熱処理したトランジスタと、しきい値電圧の変動量が同等であるトランジスタを作製する
ことができる。この結果、半導体装置のコスト削減が可能である。
【0123】
また、チャネル領域として機能する酸化物半導体膜に重畳して、化学量論的組成を満た
す酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を形成することで、当該酸化物絶縁膜の酸素
を酸化物半導体膜に移動させることができる。この結果、酸化物半導体膜に含まれる酸素
欠損の含有量を低減することができる。
【0124】
特に、チャネル領域として機能する酸化物半導体膜と、化学量論的組成を満たす酸素よ
りも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜との間に酸素を透過する酸化物絶縁膜を形成すること
で、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を形成する際に、
当該酸化物半導体膜にダメージが入ることを抑制できる。この結果、酸化物半導体膜に含
まれる酸素欠損量を低減することができる。
【0125】
上記より、酸化物半導体膜を用いた半導体装置において、欠陥量が低減された半導体装
置を得ることができる。また、酸化物半導体膜を用いた半導体装置において電気特性が向
上した半導体装置を得ることができる。
【0126】
<酸化物半導体膜に含まれる水素と過剰酸素の反応について>
ここでは、酸化物絶縁膜をプラズマCVD法で形成する際に生じる酸素ラジカルと、酸
化物半導体膜に含まれる水素の反応について、以下に説明する。
【0127】
はじめに、酸素ラジカルを生成させるための原料ガスについて説明する。
【0128】
酸素ラジカルを生成することが可能な雰囲気の代表例としては、一酸化二窒素雰囲気及
び酸素雰囲気がある。
【0129】
一酸化二窒素雰囲気で発生させたプラズマ中において、酸素ラジカルが生成される反応
の反応エンタルピーを計算した。計算は、Gaussian 09で行った。計算方法は
、Moller-Plessetの二次摂動(MP2)を用い、基底関数には電子相関用
のcc-pVDZを用いた。計算結果を数式1に示す。
【0130】
【0131】
また、酸素雰囲気で発生させたプラズマ中において、酸素ラジカルが生成される反応の
反応エンタルピーを計算した。計算は、Gaussian 09で行った。計算方法は、
Moller-Plessetの二次摂動(MP2)を用い、基底関数には電子相関用の
cc-pVDZを用いた。計算結果を数式2に示す。
【0132】
【0133】
数式1及び数式2に示す計算結果から、酸素雰囲気より、一酸化二窒素雰囲気で発生さ
せたプラズマ中において、酸素ラジカルが生成しやすいことが分かる。
【0134】
次に、酸化物半導体膜としてInGaZnO4を用いて、酸化物半導体膜の表面に位置
するGa原子又は酸素原子と結合する過剰酸素(以下、exOと示す。)によるH2O脱
離過程を調べた。
【0135】
ここでは、InGaZnO
4の結晶の基本単位格子をa軸及びb軸に2倍ずつにした構
造に対して、(Ga,Zn)O層が最表面であり、且つ(Ga,Zn)O層、InO
2層
、及び(Ga,Zn)O層の3層を有する構造となるように、結晶構造を(001)面で
切り出し、c軸方向に真空領域を設けた表面モデル(原子数:112個)を用いて、H
2
O脱離過程に関する計算を行った。計算に用いたモデルを
図47(A)に示す。
図47(
A)において、InGaZnO
4の表面に結合した過剰酸素をexOと示す。また、ex
Oと離れた位置に2つHを配置した。なお、
図47(B)に示すように、InGaZnO
4表面におけるexOは、Ga-exO-Oを形成する時、エネルギー的に安定である。
このため、
図47(A)に示す構造を反応経路の初期構造とした。また、計算条件を表1
に示す。
【0136】
【0137】
図48に、ステップ(0)からステップ(8)におけるInGaZnO
4の構造を示す
。なお、2個のH原子をexOに近づく順にそれぞれ、H1、H2と表記する。
【0138】
ステップ(0)からステップ(1)において、H1がexO付近に拡散する。
【0139】
ステップ(1)からステップ(2)において、H1が、exOと結合しているO(O1
)と結合する。
【0140】
ステップ(2)からステップ(3)において、H1がO1の外側へ移動する。
【0141】
ステップ(3)からステップ(4)において、H1がexOと結合して、Ga-exO
-H1を形成する。
【0142】
ステップ(4)からステップ(5)において、H2がO1に結合する。
【0143】
ステップ(5)からステップ(6)において、H2がO1の外側へ移動する。
【0144】
ステップ(6)からステップ(7)において、H2がexOと結合する。
【0145】
ステップ(7)からステップ(8)において、H1、exO、及びH2で構成されるH
2Oが脱離する。
【0146】
次に、ステップ(0)の構造を反応経路のエネルギーの基準(0.00eV)とし、ス
テップ(1)からステップ(8)におけるエネルギー変化を計算したエネルギー図と、各
ステップにおけるGa、O、及びHの反応模式図を
図49に示す。
【0147】
図49より、InGaZnO
4表面にexOが結合する場合、該exOとInGaZn
O
4中のHとによるH
2Oの生成反応と、該H
2O脱離反応により、エネルギーが大きく
低下する。即ち、該反応は、発熱反応であることが分かる。
【0148】
このことから、プラズマ中に含まれる酸素ラジカルがIn-Ga-Zn酸化物表面に結
合し、exOとして存在する場合、In-Ga-Zn酸化物中に酸素欠損を形成せず、I
n-Ga-Zn酸化物中のHとexOが反応し、H2Oが生成されることが可能である。
また、該H2Oが脱離することが可能である。この結果、酸化物半導体膜に含まれる水素
濃度が低減される。
【0149】
<変形例1、下地絶縁膜について>
本実施の形態に示すトランジスタ50において、必要に応じて、基板11及びゲート電
極15の間に下地絶縁膜を設けることができる。下地絶縁膜の材料としては、酸化シリコ
ン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化ハフニウ
ム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム等がある。なお、下地
絶縁膜の材料として、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム
、酸化アルミニウム等を用いることで、基板11から不純物、代表的にはアルカリ金属、
水、水素等の酸化物半導体膜18への拡散を抑制することができる。
【0150】
下地絶縁膜は、スパッタリング法、CVD法等により形成することができる。
【0151】
<変形例2、ゲート絶縁膜について>
本実施の形態に示すトランジスタ50において、必要に応じて、ゲート絶縁膜17を積
層構造とすることができる。ここでは、ゲート絶縁膜17の構成について、
図3を用いて
説明する。
【0152】
図3(A)に示すように、ゲート絶縁膜17は、窒化物絶縁膜17a及び酸化物絶縁膜
17bが、ゲート電極15側から順に積層される積層構造とすることができる。ゲート電
極15側に窒化物絶縁膜17aを設けることで、ゲート電極15からの不純物、代表的に
は、水素、窒素、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属等が酸化物半導体膜18に移動
することを防ぐことができる。
【0153】
また、酸化物半導体膜18側に酸化物絶縁膜17bを設けることで、ゲート絶縁膜17
及び酸化物半導体膜18界面における欠陥準位密度を低減することが可能である。この結
果、電気特性の劣化の少ないトランジスタを得ることができる。なお、酸化物絶縁膜17
bとして、酸化物絶縁膜24と同様に、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を
含む酸化物絶縁膜を用いて形成すると、ゲート絶縁膜17及び酸化物半導体膜18界面に
おける欠陥準位密度をさらに低減することが可能であるため、さらに好ましい。
【0154】
図3(B)に示すように、ゲート絶縁膜17は、欠陥の少ない窒化物絶縁膜17cと、
水素ブロッキング性の高い窒化物絶縁膜17dと、酸化物絶縁膜17bとが、ゲート電極
15側から順に積層される積層構造とすることができる。ゲート絶縁膜17として、欠陥
の少ない窒化物絶縁膜17cを設けることで、ゲート絶縁膜17の絶縁耐圧を向上させる
ことができる。また、水素ブロッキング性の高い窒化物絶縁膜17dを設けることで、ゲ
ート電極15及び窒化物絶縁膜17cからの水素が酸化物半導体膜18に移動することを
防ぐことができる。
【0155】
図3(B)に示す窒化物絶縁膜17c、17dの作製方法の一例を以下に示す。はじめ
に、シラン、窒素、及びアンモニアの混合ガスを原料ガスとして用いたプラズマCVD法
により、欠陥の少ない窒化シリコン膜を窒化物絶縁膜17cとして形成する。次に、原料
ガスを、シラン及び窒素の混合ガスに切り替えて、水素濃度が少なく、且つ水素をブロッ
キングすることが可能な窒化シリコン膜を窒化物絶縁膜17dとして成膜する。このよう
な形成方法により、欠陥が少なく、且つ水素のブロッキング性を有する窒化物絶縁膜が積
層されたゲート絶縁膜17を形成することができる。
【0156】
図3(C)に示すように、ゲート絶縁膜17は、不純物のブロッキング性が高い窒化物
絶縁膜17eと、欠陥の少ない窒化物絶縁膜17cと、水素ブロッキング性の高い窒化物
絶縁膜17dと、酸化物絶縁膜17bとが、ゲート電極15側から順に積層される積層構
造とすることができる。ゲート絶縁膜17として、不純物のブロッキング性が高い窒化物
絶縁膜17eを設けることで、ゲート電極15からの不純物、代表的には、水素、窒素、
アルカリ金属、またはアルカリ土類金属等が酸化物半導体膜18に移動することを防ぐこ
とができる。
【0157】
図3(C)に示す窒化物絶縁膜17e、17c、17dの作製方法の一例を以下に示す
。はじめに、シラン、窒素、及びアンモニアの混合ガスを原料ガスとして用いたプラズマ
CVD法により、不純物のブロッキング性が高い窒化シリコン膜を窒化物絶縁膜17eと
して形成する。次に、アンモニアの流量を増加させることで、欠陥の少ない窒化シリコン
膜を窒化物絶縁膜17cとして形成する。次に、原料ガスを、シラン及び窒素の混合ガス
に切り替えて、水素濃度が少なく、且つ水素をブロッキングすることが可能な窒化シリコ
ン膜を窒化物絶縁膜17dとして成膜する。このような形成方法により、欠陥が少なく、
且つ不純物のブロッキング性を有する窒化物絶縁膜が積層されたゲート絶縁膜17を形成
することができる。
【0158】
<変形例3、一対の電極について>
本実施の形態に示すトランジスタ50に設けられる一対の電極21、22として、タン
グステン、チタン、アルミニウム、銅、モリブデン、クロム、またはタンタル単体若しく
は合金等の酸素と結合しやすい導電材料を用いることが好ましい。この結果、酸化物半導
体膜18に含まれる酸素と一対の電極21、22に含まれる導電材料とが結合し、酸化物
半導体膜18において、酸素欠損領域が形成される。また、酸化物半導体膜18に一対の
電極21、22を形成する導電材料の構成元素の一部が混入する場合もある。これらの結
果、
図4に示すように、酸化物半導体膜18において、一対の電極21,22と接する領
域近傍に、低抵抗領域20a、20bが形成される。低抵抗領域20a、20bは、一対
の電極21、22に接し、且つゲート絶縁膜17と、一対の電極21、22の間に形成さ
れる。低抵抗領域20a、20bは、導電性が高いため、酸化物半導体膜18と一対の電
極21、22との接触抵抗を低減することが可能であり、トランジスタのオン電流を増大
させることが可能である。
【0159】
また、一対の電極21、22を、上記酸素と結合しやすい導電材料と、窒化チタン、窒
化タンタル、ルテニウム等の酸素と結合しにくい導電材料との積層構造としてもよい。こ
のような積層構造とすることで、一対の電極21、22と酸化物絶縁膜23との界面にお
いて、一対の電極21、22の酸化を防ぐことが可能であり、一対の電極21、22の高
抵抗化を抑制することが可能である。
【0160】
<変形例4、酸化物半導体膜について>
本実施の形態に示すトランジスタ50の作製方法において、酸化物半導体膜18の側面
に、酸化物半導体膜18の反応により生じる化合物を設けることができる。ここでは、図
1(B)のトランジスタ50の酸化物半導体膜18近傍の拡大図である
図5を用いて説明
する。
【0161】
例えば、
図5(A)に示すように、酸化物半導体膜18のバックチャネル側に、酸化物
半導体膜18の反応により生じる化合物18cを設けることができる。化合物18cは、
一対の電極21、22を形成した後、TMAH(Tetramethylammoniu
m Hydroxide)溶液などのアルカリ性の溶液、リン酸、硝酸、フッ化水素酸、
塩酸、硫酸、酢酸、シュウ酸などの酸性の溶液に酸化物半導体膜18を曝すことで、形成
することができる。
【0162】
なお、当該工程において、酸化物半導体膜18の一部は、エッチングされると共に、上
記アルカリ性の溶液、酸性の溶液と反応し、反応物が残存する。酸化物半導体膜18が、
In-Ga酸化物、In-M-Zn酸化物(MはAl、Ti、Ga、Y、Zr、La、C
e、NdまたはHf)で形成されている場合、当該工程においては、酸化物半導体膜18
に含まれるIn(酸化インジウム)が優先的に除去されるため、Inと比較してGaまた
はMの割合が酸化物半導体膜18より多い化合物18cが形成される。
【0163】
Inと比較してGaまたはMの割合が多い化合物18cは、MであるAl、Ti、Ga
、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHfをInより高い原子数比で有する。このため、
外部からの不純物を遮蔽することが可能であるため、外部から酸化物半導体膜18へ移動
する不純物量を低減することが可能である。この結果、しきい値電圧の変動の少ないトラ
ンジスタを作製することができる。
【0164】
また、当該処理によって、一対の電極21、22の間のエッチング残渣を除去すること
が可能である。この結果、一対の電極21、22の間に流れるリーク電流の発生を抑制す
ることができる。
【0165】
また、
図5(B)に示すように、酸化物半導体膜18の側面に化合物18dを設けるこ
とができる。化合物18dは、酸化物半導体膜18を形成する際に、TMAH溶液などの
アルカリ性の溶液、リン酸、硝酸、フッ化水素酸、塩酸、硫酸、酢酸、シュウ酸などの酸
性の溶液を用いたウエットエッチング処理をすることで形成することができる。または、
エッチングガスとして三塩化ホウ素ガス及び塩素ガスを用いたドライエッチング処理をす
ることで、化合物18dを形成することができる。または、酸化物半導体膜18を形成し
た後、上記溶液に酸化物半導体膜18を曝すことで、化合物18dを形成することができ
る。
【0166】
化合物18dは、化合物18cと同様に、Inと比較してGaまたはMの割合が多い。
このため、化合物18dは、外部からの不純物を遮蔽することが可能であるため、外部か
ら酸化物半導体膜18へ移動する不純物量を低減することが可能である。この結果、しき
い値電圧の変動の少ないトランジスタを作製することができる。
【0167】
<変形例5、酸化物半導体膜について>
本実施の形態に示すトランジスタ50の作製方法において、一対の電極21、22を形
成した後、酸化物半導体膜18を酸素雰囲気で発生させたプラズマに曝し、酸化物半導体
膜18に酸素を供給することができる。酸化雰囲気としては、酸素、オゾン、一酸化二窒
素、二酸化窒素等の雰囲気がある。さらに、当該プラズマ処理において、基板11側にバ
イアスを印加しない状態で発生したプラズマに酸化物半導体膜18を曝すことが好ましい
。この結果、酸化物半導体膜18にダメージを与えず、且つ酸素を供給することが可能で
あり、酸化物半導体膜18に含まれる酸素欠損量を低減することができる。また、エッチ
ング処理により酸化物半導体膜18の表面に残存する不純物、例えば、フッ素、塩素等の
ハロゲン等を除去することができる。また、当該プラズマ処理を300℃以上で加熱しな
がら行うことが好ましい。プラズマ中の酸素と酸化物半導体膜18に含まれる水素が結合
し、水となる。基板が加熱されているため、当該水は酸化物半導体膜18から脱離する。
この結果、酸化物半導体膜18に含まれる水素及び水の含有量を低減することができる。
【0168】
なお、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態及び実施例に示す構成
及び方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0169】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1と比較して、酸化物半導体膜の欠陥量をさらに低減す
ることが可能なトランジスタを有する半導体装置について図面を参照して説明する。本実
施の形態で説明するトランジスタは、実施の形態1と比較して、酸化物半導体膜、及び酸
化物半導体膜に接する酸化物を有する多層膜を有する点が異なる。
【0170】
図6に、半導体装置が有するトランジスタ60の上面図及び断面図を示す。
図6(A)
はトランジスタ60の上面図であり、
図6(B)は、
図6(A)の一点鎖線A-B間の断
面図である。なお、
図6(A)では、明瞭化のため、基板11、トランジスタ60の構成
要素の一部(例えば、ゲート絶縁膜17)、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜24、窒化
物絶縁膜25などを省略している。
【0171】
図6(A)乃至
図6(B)に示すトランジスタ60は、基板11上に設けられるゲート
電極15を有する。また、ゲート絶縁膜17を介して、ゲート電極15と重なる多層膜2
0と、多層膜20に接する一対の電極21、22とを有する。また、ゲート絶縁膜17、
多層膜20、及び一対の電極21、22上には、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜24、
及び窒化物絶縁膜25で構成される保護膜26が形成される。
【0172】
本実施の形態に示すトランジスタ60において、多層膜20は、酸化物半導体膜18及
び酸化物膜19を有する。即ち、多層膜20は2層構造である。また、酸化物半導体膜1
8の一部がチャネル領域として機能する。また、多層膜20に接するように、酸化物絶縁
膜23が形成されており、酸化物絶縁膜23に接するように酸化物絶縁膜24が形成され
ている。即ち、酸化物半導体膜18と酸化物絶縁膜23との間に、酸化物膜19が設けら
れている。
【0173】
酸化物膜19は、酸化物半導体膜18を構成する元素の一種以上から構成される酸化物
膜である。なお、酸化物膜19は、酸化物半導体膜18を構成する元素の一種以上から構
成されるため、酸化物半導体膜18と酸化物膜19との界面において、界面散乱が起こり
にくい。従って、該界面においてはキャリアの動きが阻害されないため、トランジスタの
電界効果移動度が高くなる。
【0174】
酸化物膜19は、代表的には、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物、In-M-Zn
酸化物(MはAl、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHf)であり、且つ
酸化物半導体膜18よりも伝導帯の下端のエネルギーが真空準位に近く、代表的には、酸
化物膜19の伝導帯の下端のエネルギーと、酸化物半導体膜18の伝導帯の下端のエネル
ギーとの差が、0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上、または0.15
eV以上、且つ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、または0.4eV以下である
。即ち、酸化物膜19の電子親和力と、酸化物半導体膜18の電子親和力との差が、0.
05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上、または0.15eV以上、且つ2e
V以下、1eV以下、0.5eV以下、または0.4eV以下である。
【0175】
酸化物膜19として、Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHfをI
nより高い原子数比で有することで、以下の効果を有する場合がある(1)酸化物膜19
のエネルギーギャップを大きくする(2)酸化物膜19の電子親和力を小さくする(3)
外部からの不純物を遮蔽する(4)酸化物半導体膜18と比較して、絶縁性が高くなる(
5)Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHfは酸素との結合力が強い
金属元素であるため、Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHfをIn
より高い原子数比で有することで、酸素欠損が生じにくくなる。
【0176】
酸化物膜19がIn-M-Zn酸化物膜であるとき、InおよびMの和を100ato
mic%としたとき、InとMの原子数比率は、好ましくは、Inが50atomic%
未満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくは、Inが25atomic%未満
、Mが75atomic%以上とする。
【0177】
また、酸化物半導体膜18、及び酸化物膜19がIn-M-Zn酸化物膜(MはAl、
Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHf)の場合、酸化物半導体膜18と比
較して、酸化物膜19に含まれるM(Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、
またはHf)の原子数比が大きく、代表的には、酸化物半導体膜18に含まれる上記原子
と比較して、1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上高い原子数
比である。
【0178】
また、酸化物半導体膜18、及び酸化物膜19がIn-M-Zn酸化物膜(MはAl、
Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHf)の場合、酸化物膜19をIn:M
:Zn=x1:y1:z1[原子数比]、酸化物半導体膜18をIn:M:Zn=x2:
y2:z2[原子数比]とすると、y1/x1がy2/x2よりも大きく、好ましくは、
y1/x1がy2/x2よりも1.5倍以上である。さらに好ましくは、y1/x1がy
2/x2よりも2倍以上大きく、より好ましくは、y1/x1がy2/x2よりも3倍以
上大きい。このとき、酸化物半導体膜において、y2がx2以上であると、当該酸化物半
導体膜を用いたトランジスタに安定した電気特性を付与できるため好ましい。ただし、y
2がx2の3倍以上になると、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタの電界効果移動
度が低下してしまうため、y2はx2の3倍未満であると好ましい。
【0179】
酸化物半導体膜18がIn-M-Zn酸化物膜(MはAl、Ti、Ga、Y、Zr、L
a、Ce、NdまたはHf)の場合、In-M-Zn酸化物膜を成膜するために用いるス
パッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧Mを満たすことが好
ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:
Zn=1:1:1、In:M:Zn=3:1:2が好ましい。
【0180】
酸化物膜19がIn-M-Zn酸化物膜(MはAl、Ti、Ga、Y、Zr、La、C
e、NdまたはHf)の場合、In-M-Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリ
ングターゲットの金属元素の原子数比は、M>In、Zn>0.5×M、更にはZn>M
を満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比と
して、In:Ga:Zn=1:3:2、In:Ga:Zn=1:3:4、In:Ga:Z
n=1:3:5、In:Ga:Zn=1:3:6、In:Ga:Zn=1:3:7、In
:Ga:Zn=1:3:8、In:Ga:Zn=1:3:9、In:Ga:Zn=1:3
:10、In:Ga:Zn=1:6:4、In:Ga:Zn=1:6:5、In:Ga:
Zn=1:6:6、In:Ga:Zn=1:6:7、In:Ga:Zn=1:6:8、I
n:Ga:Zn=1:6:9、In:Ga:Zn=1:6:10が好ましい。
【0181】
なお、酸化物半導体膜18、及び酸化物膜19の原子数比はそれぞれ、誤差として上記
の原子数比のプラスマイナス20%の変動を含む。
【0182】
酸化物膜19は、後に形成する酸化物絶縁膜24を形成する際の、酸化物半導体膜18
へのダメージ緩和膜としても機能する。
【0183】
酸化物膜19の厚さは、3nm以上100nm以下、好ましくは3nm以上50nm以
下とする。
【0184】
また、酸化物膜19は、酸化物半導体膜18と同様に、例えば非単結晶構造でもよい。
非単結晶構造は、例えば、後述するCAAC-OS(C Axis Aligned C
rystalline Oxide Semiconductor)、多結晶構造、後述
する微結晶構造、または非晶質構造を含む。
【0185】
酸化物膜19は、例えば非晶質構造でもよい。非晶質構造の酸化物半導体膜は、例えば
、原子配列が無秩序であり、結晶成分を有さない。または、非晶質構造の酸化物膜は、例
えば、完全な非晶質構造であり、結晶部を有さない。
【0186】
なお、酸化物半導体膜18及び酸化物膜19によって、非晶質構造の領域、微結晶構造
の領域、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の二種以上を有する混合
膜を構成してもよい。混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶
構造の領域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上の領域を有す
る場合がある。また、混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶
構造の領域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上の領域の積層
構造を有する場合がある。
【0187】
ここでは、酸化物半導体膜18及び酸化物絶縁膜23の間に、酸化物膜19が設けられ
ている。このため、酸化物膜19と酸化物絶縁膜23の間において、不純物及び欠陥によ
りトラップ準位が形成されても、当該トラップ準位と酸化物半導体膜18との間には隔た
りがある。この結果、酸化物半導体膜18を流れる電子がトラップ準位に捕獲されにくく
、トランジスタのオン電流を増大させることが可能であると共に、電界効果移動度を高め
ることができる。また、トラップ準位に電子が捕獲されると、該電子がマイナスの固定電
荷となってしまう。この結果、トランジスタのしきい値電圧が変動してしまう。しかしな
がら、酸化物半導体膜18とトラップ準位との間に隔たりがあるため、トラップ準位にお
ける電子の捕獲を低減することが可能であり、しきい値電圧の変動を低減することができ
る。
【0188】
また、酸化物膜19は、外部からの不純物を遮蔽することが可能であるため、外部から
酸化物半導体膜18へ移動する不純物量を低減することが可能である。また、酸化物膜1
9は、酸素欠損を形成しにくい。これらのため、酸化物半導体膜18における不純物濃度
及び酸素欠損量を低減することが可能である。
【0189】
なお、酸化物半導体膜18及び酸化物膜19は、各膜を単に積層するのではなく連続接
合(ここでは特に伝導帯の下端のエネルギーが各膜の間で連続的に変化する構造)が形成
されるように作製する。すなわち、各膜の界面にトラップ中心や再結合中心のような欠陥
準位を形成するような不純物が存在しないような積層構造とする。仮に、積層された酸化
物半導体膜18及び酸化物膜19の間に不純物が混在していると、エネルギーバンドの連
続性が失われ、界面でキャリアがトラップされ、あるいは再結合して、消滅してしまう。
【0190】
連続接合を形成するためには、ロードロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装
置(スパッタリング装置)を用いて各膜を大気に触れさせることなく連続して積層するこ
とが必要となる。スパッタリング装置における各チャンバーは、酸化物半導体膜にとって
不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプのような吸着式の真空排気ポン
プを用いて高真空排気(5×10-7Pa乃至1×10-4Pa程度まで)することが好
ましい。または、ターボ分子ポンプとコールドトラップを組み合わせて排気系からチャン
バー内に気体、特に炭素または水素を含む気体が逆流しないようにしておくことが好まし
い。
【0191】
図6(C)及び
図6(D)に示すトランジスタ65のように、ゲート絶縁膜17を介し
て、ゲート電極15と重なる多層膜34と、多層膜34に接する一対の電極21、22と
を有してもよい。
【0192】
多層膜34は、酸化物膜31、酸化物半導体膜18、及び酸化物膜19を有する。即ち
、多層膜34は3層構造である。また、酸化物半導体膜18がチャネル領域として機能す
る。
【0193】
また、ゲート絶縁膜17及び酸化物膜31が接する。即ち、ゲート絶縁膜17と酸化物
半導体膜18との間に、酸化物膜31が設けられている。
【0194】
また、多層膜34及び酸化物絶縁膜23が接する。また、酸化物絶縁膜23及び酸化物
絶縁膜24が接する。即ち、酸化物半導体膜18と酸化物絶縁膜23との間に、酸化物膜
19が設けられている。
【0195】
酸化物膜31は、実施の形態1に示す酸化物膜19と同様の材料及び形成方法を適宜用
いることができる。
【0196】
酸化物膜31は、酸化物半導体膜18より膜厚が小さいと好ましい。酸化物膜31の厚
さを1nm以上5nm以下、好ましくは1nm以上3nm以下とすることで、トランジス
タのしきい値電圧の変動量を低減することが可能である。
【0197】
また、酸化物膜19がIn-M-Zn酸化物であるとき、InおよびMの和を100a
tomic%としたとき、InとMの原子数比率は、好ましくは、Inが50atomi
c%未満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくは、Inが25atomic%
未満、Mが75atomic%以上とする。
【0198】
本実施の形態に示すトランジスタは、酸化物半導体膜18及び酸化物絶縁膜23の間に
、酸化物膜19が設けられている。このため、酸化物膜19と酸化物絶縁膜23の間にお
いて、不純物及び欠陥によりトラップ準位が形成されても、当該トラップ準位と酸化物半
導体膜18との間には隔たりがある。この結果、酸化物半導体膜18を流れる電子がトラ
ップ準位に捕獲されにくく、トランジスタのオン電流を増大させることが可能であると共
に、電界効果移動度を高めることができる。また、トラップ準位に電子が捕獲されると、
該電子がマイナスの固定電荷となってしまう。この結果、トランジスタのしきい値電圧が
変動してしまう。しかしながら、酸化物半導体膜18とトラップ準位との間に隔たりがあ
るため、トラップ準位における電子の捕獲を低減することが可能であり、しきい値電圧の
変動を低減することができる。
【0199】
また、酸化物膜19は、外部からの不純物を遮蔽することが可能であるため、外部から
酸化物半導体膜18へ移動する不純物量を低減することが可能である。また、酸化物膜1
9は、酸素欠損を形成しにくい。これらのため、酸化物半導体膜18における不純物濃度
及び酸素欠損量を低減することが可能である。
【0200】
また、ゲート絶縁膜17と酸化物半導体膜18との間に、酸化物膜31が設けられてお
り、酸化物半導体膜18と酸化物絶縁膜23との間に、酸化物膜19が設けられているた
め、酸化物膜31と酸化物半導体膜18との界面近傍におけるシリコンや炭素の濃度、酸
化物半導体膜18におけるシリコンや炭素の濃度、または酸化物膜19と酸化物半導体膜
18との界面近傍におけるシリコンや炭素の濃度を低減することができる。これらの結果
、多層膜34において、一定光電流測定法で導出される吸収係数は、1×10-3/cm
未満、好ましくは1×10-4/cm未満となり、局在準位が極めて少ない。
【0201】
このような構造を有するトランジスタ65は、酸化物半導体膜32を含む多層膜34に
おいて欠陥が極めて少ないため、トランジスタの電気特性を向上させることが可能であり
、代表的には、オン電流の増大及び電界効果移動度の向上が可能である。また、ストレス
試験の一例であるBTストレス試験及び光BTストレス試験におけるしきい値電圧の変動
量が少なく、信頼性が高い。
【0202】
<トランジスタのバンド構造>
次に、
図6(B)に示すトランジスタ60に設けられる多層膜20のバンド構造につい
て、
図7を用いて説明する。
【0203】
ここでは、例として、酸化物半導体膜18としてエネルギーギャップが3.15eVで
あるIn-Ga-Zn酸化物を用い、酸化物膜19としてエネルギーギャップが3.5e
VであるIn-Ga-Zn酸化物を用いる。エネルギーギャップは、分光エリプソメータ
(HORIBA JOBIN YVON社 UT-300)を用いて測定することができ
る。
【0204】
酸化物半導体膜18及び酸化物膜19の真空準位と価電子帯上端のエネルギー差(イオ
ン化ポテンシャルともいう。)は、それぞれ8eV及び8.2eVである。なお、真空準
位と価電子帯上端のエネルギー差は、紫外線光電子分光分析(UPS:Ultravio
let Photoelectron Spectroscopy)装置(PHI社 V
ersaProbe)を用いて測定できる。
【0205】
したがって、酸化物半導体膜18及び酸化物膜19の真空準位と伝導帯下端のエネルギ
ー差(電子親和力ともいう。)は、それぞれ4.85eV及び4.7eVである。
【0206】
図7(A)は、多層膜20のバンド構造の一部を模式的に示している。ここでは、多層
膜20に酸化シリコン膜を接して設けた場合について説明する。なお、
図7(A)に表す
EcI1は酸化シリコン膜の伝導帯下端のエネルギーを示し、EcS1は酸化物半導体膜
18の伝導帯下端のエネルギーを示し、EcS2は酸化物膜19の伝導帯下端のエネルギ
ーを示し、EcI2は酸化シリコン膜の伝導帯下端のエネルギーを示す。また、EcI1
は、
図1(B)において、ゲート絶縁膜17に相当し、EcI2は、
図1(B)において
、酸化物絶縁膜23に相当する。
【0207】
図7(A)に示すように、酸化物半導体膜18及び酸化物膜19において、伝導帯下端
のエネルギーは障壁が無くなだらかに変化する。換言すると、連続的に変化するともいう
ことができる。これは、多層膜20は、酸化物半導体膜18と共通の元素を含み、酸化物
半導体膜18及び酸化物膜19の間で、酸素が相互に移動することで混合層が形成される
ためであるということができる。
【0208】
図7(A)より、多層膜20の酸化物半導体膜18がウェル(井戸)となり、多層膜2
0を用いたトランジスタにおいて、チャネル領域が酸化物半導体膜18に形成されること
がわかる。なお、多層膜20は、伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化しているため、
酸化物半導体膜18と酸化物膜19とが連続接合している、ともいえる。
【0209】
なお、
図7(A)に示すように、酸化物膜19と、酸化物絶縁膜23との界面近傍には
、不純物や欠陥に起因したトラップ準位が形成され得るものの、酸化物膜19が設けられ
ることにより、酸化物半導体膜18と該トラップ準位とを遠ざけることができる。ただし
、EcS1とEcS2とのエネルギー差が小さい場合、酸化物半導体膜18の電子が該エ
ネルギー差を越えてトラップ準位に達することがある。トラップ準位に電子が捕獲される
ことで、絶縁膜界面にマイナスの電荷が生じ、トランジスタのしきい値電圧はプラス方向
にシフトしてしまう。したがって、EcS1とEcS2とのエネルギー差を、0.1eV
以上、好ましくは0.15eV以上とすると、トランジスタのしきい値電圧の変動が低減
され、安定した電気特性となるため好適である。
【0210】
また、
図7(B)は、多層膜20のバンド構造の一部を模式的に示し、
図7(A)に示
すバンド構造の変形例である。ここでは、多層膜20に酸化シリコン膜を接して設けた場
合について説明する。なお、
図7(B)に表すEcI1は酸化シリコン膜の伝導帯下端の
エネルギーを示し、EcS1は酸化物半導体膜18の伝導帯下端のエネルギーを示し、E
cI2は酸化シリコン膜の伝導帯下端のエネルギーを示す。また、EcI1は、
図1(B
)において、ゲート絶縁膜17に相当し、EcI2は、
図1(B)において、酸化物絶縁
膜23に相当する。
【0211】
図6(B)に示すトランジスタにおいて、一対の電極21、22の形成時に多層膜20
の上方、すなわち酸化物膜19がエッチングされる場合がある。一方、酸化物半導体膜1
8の上面は、酸化物膜19の成膜時に酸化物半導体膜18と酸化物膜19の混合層が形成
される場合がある。
【0212】
例えば、酸化物半導体膜18が、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]のIn-
Ga-Zn酸化物、またはIn:Ga:Zn=3:1:2[原子数比]のIn-Ga-Z
n酸化物をスパッタリングターゲットに用いて成膜された酸化物半導体膜であり、酸化物
膜19が、In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物、また
はIn:Ga:Zn=1:6:4[原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物をスパッタリン
グターゲットに用いて成膜された酸化物膜である場合、酸化物半導体膜18よりも酸化物
膜19のGaの含有量が多いため、酸化物半導体膜18の上面には、GaOx層または酸
化物半導体膜18よりもGaを多く含む混合層が形成されうる。
【0213】
したがって、酸化物膜19がエッチングされた場合においても、EcS1のEcI2側
の伝導帯下端のエネルギーが高くなり、
図7(B)に示すバンド構造のようになる場合が
ある。
【0214】
図7(B)に示すバンド構造のようになる場合、チャネル領域の断面観察時において、
多層膜20は、酸化物半導体膜18のみと見かけ上観察される場合がある。しかしながら
、実質的には、酸化物半導体膜18上には、酸化物半導体膜18よりもGaを多く含む混
合層が形成されているため、該混合層を1.5層として、捉えることができる。なお、該
混合層は、例えば、EDX分析等によって、多層膜20に含有する元素を測定した場合、
酸化物半導体膜18の上方の組成を分析することで確認することができる。例えば、酸化
物半導体膜18の上方の組成が、酸化物半導体膜18中の組成よりもGaの含有量が多い
構成となることで確認することができる。
【0215】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2と比較して、酸化物半導体膜の欠陥
量をさらに低減しつつ、トランジスタのオン電流を高めることが可能なトランジスタを有
する半導体装置について図面を参照して説明する。本実施の形態で説明するトランジスタ
は、実施の形態1と比較して、一対の電極21、22と、酸化物絶縁膜23の間に、酸化
物膜を有する点が異なる。なお、本実施の形態では実施の形態1を用いて説明するが、適
宜実施の形態2に適用可能である。
【0216】
図9に、半導体装置が有するトランジスタ70の上面図及び断面図を示す。トランジス
タ70の上面図を
図9(A)に示す。
図9(A)において、一点鎖線A-B間の断面図を
図9(B)に示し、一点鎖線C-D間の断面図を
図9(C)に示す。なお、
図9(A)で
は、明瞭化のため、基板11、トランジスタ70の構成要素の一部(例えば、ゲート絶縁
膜17)、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜24、窒化物絶縁膜25などを省略している
。
【0217】
トランジスタ70は、トランジスタ50と比較して、一対の電極21、22が酸化物半
導体膜18a及び酸化物膜19aで囲われている点で異なる。具体的には、トランジスタ
70は、ゲート絶縁膜17上に設けられた酸化物半導体膜18aと、酸化物半導体膜18
a上に設けられた一対の電極21、22と、酸化物半導体膜18a及び一対の電極21、
22上に設けられた酸化物膜19aとを有する。
【0218】
トランジスタ70は、一対の電極21、22が酸化物半導体膜18aと接していること
から、トランジスタ60と比較して、酸化物半導体膜18aと一対の電極21、22との
接触抵抗が低く、トランジスタ60よりもオン電流が向上したトランジスタである。
【0219】
また、トランジスタ70は、一対の電極21、22が酸化物半導体膜18aと接してい
ることから、酸化物半導体膜18aと一対の電極21、22との接触抵抗を増大させずに
、酸化物膜19aを厚くすることができる。このようにすることで、保護膜26を形成す
る際のプラズマダメージまたは保護膜26の構成元素の混入などで生じるトラップ準位が
、酸化物半導体膜18aと酸化物膜19aとの界面近傍に形成されることを抑制できる。
つまり、トランジスタ70はオン電流の向上、及びしきい値電圧の変動量の低減を両立す
ることができる。
【0220】
トランジスタ70の作製方法を
図10を用いて説明する。まず、
図2(A)と同様にし
て、基板11上にゲート電極及びゲート絶縁膜17を形成する。
【0221】
次に、後に酸化物半導体膜18aとなる酸化物半導体膜28を形成し、その後、一対の
電極21、22を形成する。次に、後に酸化物膜19aとなる酸化物膜29を形成する(
図10(A)を参照。)。
【0222】
酸化物半導体膜28は、実施の形態1に示す酸化物半導体膜18と同様の材料及び形成
方法を適宜用いることができる。また、一対の電極21、22は、
図2(B)と同様に形
成することができる。なお、一対の電極21、22は、酸化物半導体膜28上に形成され
る。また、酸化物膜29は実施の形態1に示す酸化物膜19と同様の材料及び形成方法を
適宜用いることができる。
【0223】
次に、酸化物半導体膜28、及び酸化物膜29のそれぞれ一部をエッチングして、酸化
物半導体膜18a及び酸化物膜19aを有する多層膜20を形成する(
図10(B)を参
照。)。なお、当該エッチングは、酸化物膜29となる酸化物膜上にフォトリソグラフィ
工程によりマスクを形成した後、該マスクを用いてエッチングを行うことで実施できる。
また、酸化物半導体膜28、及び酸化物膜29を同時にエッチングするため、酸化物半導
体膜18a及び酸化物膜19aの端部が略一致している。
【0224】
次に、ゲート絶縁膜17、多層膜20及び一対の電極21、22を覆うようにして、保
護膜26を形成する(
図10(C)を参照。)。保護膜26は、実施の形態1と同様にし
て形成することができる。また、トランジスタ70の作製方法において、実施の形態1を
適宜参照して加熱処理を行うことができる。
【0225】
また、一対の電極21、22を形成するエッチングによって、酸化物半導体膜18aに
酸素欠損などの欠陥が生じ、キャリア密度が増大する場合があるため、酸化物膜29を形
成する前に、当該酸化物半導体膜18aを酸素雰囲気で発生させたプラズマに曝し、当該
酸化物半導体膜18aに酸素を供給することが好ましい。このようにすることで、トラン
ジスタ70において、酸化物半導体膜18aと酸化物膜19aとの界面近傍にトラップ準
位が形成されることを抑制でき、しきい値電圧の変動量を低減することができる。または
、トランジスタ70において、多層膜20のうち、酸化物半導体膜18aの側面近傍を流
れるリーク電流を低減することができ、オフ電流の増大を抑制することができる。
【0226】
また、一対の電極21、22を形成するエッチングによって、多層膜20はダメージを
受け、多層膜20のバックチャネル側に酸素欠損が生じるが、酸化物絶縁膜24に含まれ
る酸素の一部を酸化物半導体膜18aに移動させ、酸化物半導体膜18aに含まれる酸素
欠損を補填することが可能である。これにより、トランジスタ70の信頼性を向上させる
ことができる。
【0227】
<変形例1>
本実施の形態に示すトランジスタ70において、多層膜20及び一対の電極21、22
の積層構造は適宜変更することができる。例えば、変形例として
図11に示すようなトラ
ンジスタとすることができる。
【0228】
図11に示すトランジスタは、トランジスタ60と比較して、酸化物半導体膜18b及
び酸化物膜19bを異なる工程で形成する点が異なる。即ち、酸化物半導体膜18bの端
部は、一対の電極21、22に覆われており、酸化物膜19bと接しない点が異なる。
【0229】
図11に示すトランジスタは、トランジスタ50と比較して、一対の電極21、22及
び酸化物半導体膜18bが直接接しているため、多層膜20と一対の電極21、22との
接触抵抗が低く、トランジスタ50よりもオン電流が向上したトランジスタである。
【0230】
また、
図11に示すトランジスタは、一対の電極21、22が酸化物半導体膜18bと
直接接していることから、多層膜20と一対の電極21、22との接触抵抗を増大させず
に、酸化物膜19bを厚くすることができる。このようにすることで、保護膜26を形成
する際のプラズマダメージまたは保護膜26の構成元素が混入するなどで生じるトラップ
準位が、酸化物半導体膜18bと酸化物膜19bとの界面近傍の形成されることを抑制で
きる。つまり、オン電流の向上としきい値電圧の変動の低減を両立することができる。
【0231】
なお、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態及び実施例に示す構成
及び方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0232】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態3と異なる構造のトランジスタについ
て、
図12を用いて説明する。本実施の形態に示すトランジスタ80は、酸化物半導体膜
を介して対向する複数のゲート電極を有することを特徴とする。
【0233】
図12に示すトランジスタ80は、基板11上に設けられるゲート電極15を有する。
また、基板11及びゲート電極15上に形成されるゲート絶縁膜17と、ゲート絶縁膜1
7を介して、ゲート電極15と重なる酸化物半導体膜18と、酸化物半導体膜18に接す
る一対の電極21、22と、を有する。また、ゲート絶縁膜17、酸化物半導体膜18、
及び一対の電極21、22上には、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜24、及び窒化物絶
縁膜25で構成される保護膜26が形成される。また、保護膜26を介して酸化物半導体
膜18と重畳するゲート電極61を有する。
【0234】
ゲート電極61は、ゲート電極15と同様に形成することができる。
【0235】
本実施の形態に示すトランジスタ80は、酸化物半導体膜18を介して対向するゲート
電極15及びゲート電極61を有する。ゲート電極15とゲート電極61に異なる電位を
印加することで、トランジスタ80のしきい値電圧を制御することができる。
【0236】
また、酸素欠損量が低減された酸化物半導体膜18を有することで、トランジスタの電
気特性を向上させることが可能である。また、しきい値電圧の変動量が少なく、信頼性の
高いトランジスタとなる。
【0237】
また、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態及び実施例に示す構成
及び方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0238】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態4と異なる構造のトランジスタについ
て、
図13を用いて説明する。
【0239】
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態4と比較して、酸化物半導体膜の欠陥
量をさらに低減することが可能なトランジスタを有する半導体装置について図面を参照し
て説明する。本実施の形態で説明するトランジスタは、実施の形態1乃至実施の形態4と
比較して、酸化物半導体膜18のバックチャネル側が保護膜で覆われており、一対の電極
を形成するためのエッチング処理で生じるプラズマに曝されていない点が異なる。
【0240】
図13に、半導体装置が有するトランジスタ90の上面図及び断面図を示す。
図13(
A)はトランジスタ90の上面図であり、
図13(B)は、
図13(A)の一点鎖線A-
B間の断面図であり、
図13(C)は、
図13(A)の一点鎖線C-D間の断面図である
。なお、
図13(A)では、明瞭化のため、基板11、トランジスタ90の構成要素の一
部(例えば、ゲート絶縁膜17)、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜24、窒化物絶縁膜
25などを省略している。
【0241】
図13に示すトランジスタ90は、基板11上に設けられるゲート電極15を有する。
また、基板11及びゲート電極15上に形成されるゲート絶縁膜17と、ゲート絶縁膜1
7を介して、ゲート電極15と重なる酸化物半導体膜18を有する。また、ゲート絶縁膜
17及び酸化物半導体膜18上に、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜24、及び窒化物絶
縁膜25で構成される保護膜26と、保護膜26上に形成され、保護膜26の開口におい
て酸化物半導体膜18に接続する一対の電極21b、22bとを有する。
【0242】
次に、トランジスタ90の作製方法を説明する。
【0243】
実施の形態1と同様に、基板11上にゲート電極15を形成し、基板11及びゲート電
極15上にゲート絶縁膜17を形成する。次に、ゲート絶縁膜17上に酸化物半導体膜1
8を形成する。
【0244】
次に、実施の形態1と同様に、ゲート絶縁膜17及び酸化物半導体膜18上に、280
℃以上400℃以下で加熱しながら酸化物絶縁膜23を形成した後、酸化物絶縁膜24、
及び窒化物絶縁膜25を形成する。なお、酸化物絶縁膜24を形成した後、加熱処理を行
い、酸化物絶縁膜24に含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜18に供給する。
【0245】
次に、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜24、及び窒化物絶縁膜25のそれぞれ一部を
エッチングして、酸化物半導体膜18の一部を露出する開口部を形成する。この後、酸化
物半導体膜18に接する一対の電極21b、22bを、実施の形態1と同様に形成する。
【0246】
本実施の形態においては、一対の電極21b、22bをエッチングする際、酸化物半導
体膜18が保護膜26に覆われているため、一対の電極21b、22bを形成するエッチ
ングによって、酸化物半導体膜18、特に酸化物半導体膜18のバックチャネル領域はダ
メージを受けない。さらに、酸化物絶縁膜24は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多
くの酸素を含む酸化物絶縁膜で形成される。このため、酸化物絶縁膜24に含まれる酸素
の一部を酸化物半導体膜18に移動させ、酸化物半導体膜18に含まれる酸素欠損を補填
することが可能である。これらの結果、酸化物半導体膜18に含まれる酸素欠損量を低減
することができる。
【0247】
以上の工程により、酸化物半導体膜18に含まれる欠陥を低減することが可能であり、
トランジスタ90の信頼性を向上させることができる。
【0248】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態5と異なる構造のトランジスタについ
て、
図14を用いて説明する。
【0249】
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態4と比較して、酸化物半導体膜の欠陥
量をさらに低減することが可能なトランジスタを有する半導体装置について図面を参照し
て説明する。本実施の形態で説明するトランジスタは、実施の形態5と同様に、酸化物半
導体膜18のバックチャネル側が保護膜で覆われており、一対の電極を形成するためのエ
ッチング処理で生じるプラズマに曝されていない点が、実施の形態1乃至実施の形態4と
異なる。
【0250】
図14に、半導体装置が有するトランジスタ100の上面図及び断面図を示す。
図14
に示すトランジスタ100は、チャネル保護型のトランジスタである。
図14(A)はト
ランジスタ100の上面図であり、
図14(B)は、
図14(A)の一点鎖線A-B間の
断面図であり、
図14(C)は、
図14(A)の一点鎖線C-D間の断面図である。なお
、
図14(A)では、明瞭化のため、基板11、トランジスタ100の構成要素の一部(
例えば、ゲート絶縁膜17など)を省略している。
【0251】
図14に示すトランジスタ100は、基板11上に設けられるゲート電極15を有する
。また、基板11及びゲート電極15上に形成されるゲート絶縁膜17と、ゲート絶縁膜
17を介して、ゲート電極15と重なる酸化物半導体膜18とを有する。また、ゲート絶
縁膜17及び酸化物半導体膜18上に、酸化物絶縁膜23a、酸化物絶縁膜24a、及び
窒化物絶縁膜25aで構成される保護膜26aと、ゲート絶縁膜17、酸化物半導体膜1
8、及び保護膜26a上に形成される一対の電極21c、22cとを有する。
【0252】
次に、トランジスタ100の作製方法を説明する。
【0253】
実施の形態1と同様に、基板11上にゲート電極15を形成し、基板11及びゲート電
極15上にゲート絶縁膜17を形成する。次に、ゲート絶縁膜17上に酸化物半導体膜1
8を形成する。
【0254】
次に、実施の形態1と同様に、ゲート絶縁膜17及び酸化物半導体膜18上に、280
℃以上400℃以下で加熱しながら酸化物絶縁膜23を形成した後、酸化物絶縁膜24、
及び窒化物絶縁膜25を形成する。なお、酸化物絶縁膜24を形成した後、加熱処理を行
い、酸化物絶縁膜24に含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜18に供給する。
【0255】
次に、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜24、及び窒化物絶縁膜25のそれぞれ一部を
エッチングして、酸化物絶縁膜23a、酸化物絶縁膜24a、及び窒化物絶縁膜25aで
形成される保護膜26aを形成する。
【0256】
次に、酸化物半導体膜18に接する一対の電極21c、22cを、実施の形態1と同様
に形成する。
【0257】
本実施の形態においては、一対の電極21c、22cをエッチングする際、酸化物半導
体膜18が保護膜26aに覆われているため、一対の電極21c、22cを形成するエッ
チングによって、酸化物半導体膜18はダメージを受けない。さらに、酸化物絶縁膜24
aは、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜で形成される。
このため、酸化物絶縁膜24aに含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜18に移動させ、
酸化物半導体膜18に含まれる酸素欠損を補填することが可能である。これらの結果、酸
化物半導体膜18に含まれる酸素欠損量を低減することができる。
【0258】
なお、
図14においては、保護膜26aとして、窒化物絶縁膜25aが形成されるが、
酸化物絶縁膜23a及び酸化物絶縁膜24aの積層構造であってもよい。この場合、一対
の電極21c、22cを形成した後、窒化物絶縁膜25aを形成することが好ましい。こ
の結果、外部から酸化物半導体膜18への水素、水等の侵入を防ぐことができる。
【0259】
以上の工程により、酸化物半導体膜18に含まれる欠陥を低減することが可能であり、
トランジスタ100の信頼性を向上させることができる。
【0260】
(実施の形態7)
上記実施の形態で開示された金属膜、酸化物半導体膜、無機絶縁膜など様々な膜はスパ
ッタ法やプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法に
より形成することができるが、他の方法、例えば、熱CVD法により形成してもよい。熱
CVD法の例としてMOCVD(Metal Organic Chemical Va
por Deposition)法やALD(Atomic Layer Deposi
tion)法を使っても良い。
【0261】
熱CVD法は、プラズマを使わない成膜方法のため、プラズマダメージにより欠陥が生
成されることが無いという利点を有する。
【0262】
熱CVD法は、原料ガスと酸化剤を同時にチャンバー内に送り、チャンバー内を大気圧
または減圧下とし、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を
行ってもよい。
【0263】
また、ALD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、反応のための原料ガスが
順次にチャンバーに導入され、そのガス導入の順序を繰り返すことで成膜を行ってもよい
。例えば、それぞれのスイッチングバルブ(高速バルブとも呼ぶ)を切り替えて2種類以
上の原料ガスを順番にチャンバーに供給し、複数種の原料ガスが混ざらないように第1の
原料ガスと同時またはその後に不活性ガス(アルゴン、或いは窒素など)などを導入し、
第2の原料ガスを導入する。なお、同時に不活性ガスを導入する場合には、不活性ガスは
キャリアガスとなり、また、第2の原料ガスの導入時にも同時に不活性ガスを導入しても
よい。また、不活性ガスを導入する代わりに真空排気によって第1の原料ガスを排出した
後、第2の原料ガスを導入してもよい。第1の原料ガスが基板の表面に吸着して第1の層
を成膜し、後から導入される第2の原料ガスと反応して、第2の層が第1の層上に積層さ
れて薄膜が形成される。このガス導入順序を制御しつつ所望の厚さになるまで複数回繰り
返すことで、段差被覆性に優れた薄膜を形成することができる。薄膜の厚さは、ガス導入
順序を繰り返す回数によって調節することができるため、精密な膜厚調節が可能であり、
微細なFETを作製する場合に適している。
【0264】
MOCVD法やALD法などの熱CVD法は、これまでに記載した実施形態に開示され
た金属膜、酸化物半導体膜、無機絶縁膜など様々な膜を形成することができ、例えば、I
nGaZnO膜を成膜する場合には、トリメチルインジウム、トリメチルガリウム、及び
ジメチル亜鉛を用いる。なお、トリメチルインジウムの化学式は、In(CH3)3であ
る。また、トリメチルガリウムの化学式は、Ga(CH3)3である。また、ジメチル亜
鉛の化学式は、Zn(CH3)2である。また、これらの組み合わせに限定されず、トリ
メチルガリウムに代えてトリエチルガリウム(化学式Ga(C2H5)3)を用いること
もでき、ジメチル亜鉛に代えてジエチル亜鉛(化学式Zn(C2H5)2)を用いること
もできる。
【0265】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化ハフニウム膜を形成する場合には、溶媒
とハフニウム前駆体化合物を含む液体(ハフニウムアルコキシド溶液、代表的にはテトラ
キスジメチルアミドハフニウム(TDMAH))を気化させた原料ガスと、酸化剤として
オゾン(O3)の2種類のガスを用いる。なお、テトラキスジメチルアミドハフニウムの
化学式はHf[N(CH3)2]4である。また、他の材料液としては、テトラキス(エ
チルメチルアミド)ハフニウムなどがある。
【0266】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化アルミニウム膜を形成する場合には、溶
媒とアルミニウム前駆体化合物を含む液体(トリメチルアルミニウム(TMA)など)を
気化させた原料ガスと、酸化剤としてH2Oの2種類のガスを用いる。なお、トリメチル
アルミニウムの化学式はAl(CH3)3である。また、他の材料液としては、トリス(
ジメチルアミド)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アルミニウムトリス(2
,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)などがある。
【0267】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化シリコン膜を形成する場合には、ヘキサ
クロロジシランを被成膜面に吸着させ、吸着物に含まれる塩素を除去し、酸化性ガス(O
2、一酸化二窒素)のラジカルを供給して吸着物と反応させる。
【0268】
例えば、ALDを利用する成膜装置によりタングステン膜を成膜する場合には、WF6
ガスとB2H6ガスを順次繰り返し導入して初期タングステン膜を形成し、その後、WF
6ガスとH2ガスを同時に導入してタングステン膜を形成する。なお、B2H6ガスに代
えてSiH4ガスを用いてもよい。
【0269】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばIn-Ga-Zn-
O膜を成膜する場合には、In(CH3)3ガスとO3ガスを順次繰り返し導入してIn
-O層を形成し、その後、Ga(CH3)3ガスとO3ガスを同時に導入してGaO層を
形成し、更にその後Zn(CH3)2とO3ガスを同時に導入してZnO層を形成する。
なお、これらの層の順番はこの例に限らない。また、これらのガスを混ぜてIn-Ga-
O層やIn-Zn-O層、Ga-Zn-O層などの混合化合物層を形成しても良い。なお
、O3ガスに変えてAr等の不活性ガスでバブリングして得られたH2Oガスを用いても
良いが、Hを含まないO3ガスを用いる方が好ましい。また、In(CH3)3ガスにか
えて、In(C2H5)3ガスを用いても良い。また、Ga(CH3)3ガスにかえて、
Ga(C2H5)3ガスを用いても良い。また、In(CH3)3ガスにかえて、In(
C2H5)3ガスを用いても良い。また、Zn(CH3)2ガスを用いても良い。
【0270】
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置について、図面を用いて説明する
。なお、本実施の形態では、表示装置を例にして本発明の一態様である半導体装置を説明
する。
【0271】
図15(A)に、半導体装置の一例を示す。
図15(A)に示す半導体装置は、画素部
101と、走査線駆動回路104と、信号線駆動回路106と、各々が平行または略平行
に配設され、且つ走査線駆動回路104によって電位が制御されるm本の走査線107と
、各々が平行または略平行に配設され、且つ信号線駆動回路106によって電位が制御さ
れるn本の信号線109と、を有する。さらに、画素部101はマトリクス状に配設され
た複数の画素301を有する。また、走査線107に沿って、各々が平行または略平行に
配設された容量線115を有する。なお、容量線115は、信号線109に沿って、各々
が平行または略平行に配設されていてもよい。また、走査線駆動回路104及び信号線駆
動回路106をまとめて駆動回路部という場合がある。
【0272】
各走査線107は、画素部101においてm行n列に配設された画素301のうち、い
ずれかの行に配設されたn個の画素301と電気的に接続される。また、各信号線109
は、m行n列に配設された画素301のうち、いずれかの列に配設されたm個の画素30
1に電気的と接続される。m、nは、ともに1以上の整数である。また、各容量線115
は、m行n列に配設された画素301のうち、いずれかの行に配設されたn個の画素30
1と電気的に接続される。なお、容量線115が、信号線109に沿って、各々が平行ま
たは略平行に配設されている場合は、m行n列に配設された画素301のうち、いずれか
の列に配設されたm個の画素301に電気的と接続される。
【0273】
図15(B)及び
図15(C)は、
図15(A)に示す表示装置の画素301に用いる
ことができる回路構成を示している。
【0274】
図15(B)に示す画素301は、液晶素子132と、トランジスタ131_1と、容
量素子133_1と、を有する。
【0275】
液晶素子132の一対の電極の一方の電位は、画素301の仕様に応じて適宜設定され
る。液晶素子132は、書き込まれるデータにより配向状態が設定される。なお、複数の
画素301のそれぞれが有する液晶素子132の一対の電極の一方に共通の電位(コモン
電位)を与えてもよい。また、各行の画素301毎の液晶素子132の一対の電極の一方
に異なる電位を与えてもよい。
【0276】
例えば、液晶素子132を備える表示装置の駆動方法としては、TNモード、STNモ
ード、VAモード、ASM(Axially Symmetric Aligned M
icro-cell)モード、OCB(Optically Compensated
Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liqu
id Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Li
quid Crystal)モード、MVAモード、PVA(Patterned Ve
rtical Alignment)モード、IPSモード、FFSモード、またはTB
A(Transverse Bend Alignment)モードなどを用いてもよい
。また、表示装置の駆動方法としては、上述した駆動方法の他、ECB(Electri
cally Controlled Birefringence)モード、PDLC(
Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード、PNL
C(Polymer Network Liquid Crystal)モード、ゲスト
ホストモードなどがある。ただし、これに限定されず、液晶素子及びその駆動方式として
様々なものを用いることができる。
【0277】
また、ブルー相(Blue Phase)を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物
により液晶素子を構成してもよい。ブルー相を示す液晶は、応答速度が1msec以下と
短く、光学的等方性であるため、配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。
【0278】
m行n列目の画素301において、トランジスタ131_1のソース電極及びドレイン
電極の一方は、信号線DL_nに電気的に接続され、他方は液晶素子132の一対の電極
の他方に電気的に接続される。また、トランジスタ131_1のゲート電極は、走査線G
L_mに電気的に接続される。トランジスタ131_1は、オン状態またはオフ状態にな
ることにより、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
【0279】
容量素子133_1の一対の電極の一方は、電位が供給される配線(以下、容量線CL
)に電気的に接続され、他方は、液晶素子132の一対の電極の他方に電気的に接続され
る。なお、容量線CLの電位の値は、画素301の仕様に応じて適宜設定される。容量素
子133_1は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0280】
例えば、
図15(B)の画素301を有する表示装置では、走査線駆動回路104によ
り各行の画素301を順次選択し、トランジスタ131_1をオン状態にしてデータ信号
のデータを書き込む。
【0281】
データが書き込まれた画素301は、トランジスタ131_1がオフ状態になることで
保持状態になる。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0282】
また、
図15(C)に示す画素301は、トランジスタ131_2と、容量素子133
_2と、トランジスタ134と、発光素子135と、を有する。
【0283】
トランジスタ131_2のソース電極及びドレイン電極の一方は、データ信号が与えら
れる配線(以下、信号線DL_nという)に電気的に接続される。さらに、トランジスタ
131_2のゲート電極は、ゲート信号が与えられる配線(以下、走査線GL_mという
)に電気的に接続される。
【0284】
トランジスタ131_2は、オン状態またはオフ状態になることにより、データ信号の
データの書き込みを制御する機能を有する。
【0285】
容量素子133_2の一対の電極の一方は、電位が与えられる配線(以下、電位供給線
VL_aという)に電気的に接続され、他方は、トランジスタ131_2のソース電極及
びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
【0286】
容量素子133_2は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する
。
【0287】
トランジスタ134のソース電極及びドレイン電極の一方は、電位供給線VL_aに電
気的に接続される。さらに、トランジスタ134のゲート電極は、トランジスタ131_
2のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
【0288】
発光素子135のアノード及びカソードの一方は、電位供給線VL_bに電気的に接続
され、他方は、トランジスタ134のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続
される。
【0289】
発光素子135としては、例えば有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子とも
いう)などを用いることができる。ただし、発光素子135としては、これに限定されず
、無機材料からなる無機EL素子を用いても良い。
【0290】
なお、電位供給線VL_a及び電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与
えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。
【0291】
図15(C)の画素301を有する表示装置では、走査線駆動回路104により各行の
画素301を順次選択し、トランジスタ131_2をオン状態にしてデータ信号のデータ
を書き込む。
【0292】
データが書き込まれた画素301は、トランジスタ131_2がオフ状態になることで
保持状態になる。さらに、書き込まれたデータ信号の電位に応じてトランジスタ134の
ソース電極とドレイン電極の間に流れる電流量が制御され、発光素子135は、流れる電
流量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0293】
なお、本明細書等において、表示素子、表示素子を有する装置である表示装置、発光素
子、及び発光素子を有する装置である発光装置は、様々な形態を用いること、または様々
な素子を有することが出来る。表示素子、表示装置、発光素子または発光装置の一例とし
ては、EL(エレクトロルミネッセンス)素子(有機物及び無機物を含むEL素子、有機
EL素子、無機EL素子)、LED(白色LED、赤色LED、緑色LED、青色LED
など)、トランジスタ(電流に応じて発光するトランジスタ)、電子放出素子、液晶素子
、電子インク、電気泳動素子、グレーティングライトバルブ(GLV)、プラズマディス
プレイ(PDP)、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)、デジタ
ルマイクロミラーデバイス(DMD)、DMS(デジタル・マイクロ・シャッター)、M
IRASOL(商標登録)、IMOD(インターフェアレンス・モジュレーション)素子
、圧電セラミックディスプレイ、カーボンナノチューブ、など、電気磁気的作用により、
コントラスト、輝度、反射率、透過率などが変化する表示媒体を有するものがある。EL
素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素子を用
いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FED)またはS
ED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface-conduction Ele
ctron-emitter Display)などがある。液晶素子を用いた表示装置
の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレ
イ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ)など
がある。電子インクまたは電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペーパな
どがある。
【0294】
EL素子の一例としては、陽極と、陰極と、陽極と陰極との間に挟まれたEL層と、を
有する素子などがある。EL層の一例としては、1重項励起子からの発光(蛍光)を利用
するもの、3重項励起子からの発光(燐光)を利用するもの、1重項励起子からの発光(
蛍光)を利用するものと3重項励起子からの発光(燐光)を利用するものとを含むもの、
有機物によって形成されたもの、無機物によって形成されたもの、有機物によって形成さ
れたものと無機物によって形成されたものとを含むもの、高分子の材料の材料を含むもの
、低分子の材料の材料を含むもの、または高分子の材料と低分子の材料とを含むもの、な
どがある。ただし、これに限定されず、EL素子として様々なものを用いることができる
。
【0295】
液晶素子の一例としては、液晶の光学的変調作用によって光の透過または非透過を制御
する素子がある。その素子は一対の電極と液晶層により構造されることが可能である。な
お、液晶の光学的変調作用は、液晶にかかる電界(横方向の電界、縦方向の電界または斜
め方向の電界を含む)によって制御される。なお、具体的には、液晶素子の一例としては
、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶、ディスコチック液晶、サー
モトロピック液晶、リオトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶(
PDLC)、強誘電液晶、反強誘電液晶、主鎖型液晶、側鎖型高分子液晶、バナナ型液晶
などを挙げることができる。
【0296】
次いで、画素301に液晶素子を用いた液晶表示装置の具体的な例について説明する。
ここでは、
図15(B)に示す画素301の上面図を
図16に示す。なお、
図16におい
ては、対向電極及び液晶素子を省略する。
【0297】
図16において、走査線として機能する導電膜304cは、信号線に略直交する方向(
図中左右方向)に延伸して設けられている。信号線として機能する導電膜310dは、走
査線に略直交する方向(図中上下方向)に延伸して設けられている。容量線として機能す
る導電膜310fは、信号線と平行方向に延伸して設けられている。なお、走査線として
機能する導電膜304cは、走査線駆動回路104(
図15(A)を参照。)と電気的に
接続されており、信号線として機能する導電膜310d及び容量線として機能する導電膜
310fは、信号線駆動回路106(
図15(A)を参照。)に電気的に接続されている
。
【0298】
トランジスタ103は、走査線及び信号線が交差する領域に設けられている。トランジ
スタ103は、ゲート電極として機能する導電膜304c、ゲート絶縁膜(
図16に図示
せず。)、ゲート絶縁膜上に形成されたチャネル領域が形成される酸化物半導体膜308
b、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜310d、310eにより構成さ
れる。なお、導電膜304cは、走査線としても機能し、酸化物半導体膜308bと重畳
する領域がトランジスタ103のゲート電極として機能する。また、導電膜310dは、
信号線としても機能し、酸化物半導体膜308bと重畳する領域がトランジスタ103の
ソース電極またはドレイン電極として機能する。また、
図16において、走査線は、上面
形状において端部が酸化物半導体膜308bの端部より外側に位置する。このため、走査
線はバックライトなどの光源からの光を遮る遮光膜として機能する。この結果、トランジ
スタに含まれる酸化物半導体膜308bに光が照射されず、トランジスタの電気特性の変
動を抑制することができる。
【0299】
また、導電膜310eは、開口部362cにおいて、画素電極として機能する透光性を
有する導電膜316bと電気的に接続されている。
【0300】
容量素子105は、開口部362において容量線として機能する導電膜310fと接続
されている。また、容量素子105は、ゲート絶縁膜上に形成される透光性を有する導電
膜308cと、トランジスタ103上に設けられる窒化物絶縁膜で形成される誘電体膜と
、画素電極として機能する透光性を有する導電膜316bで構成されている。即ち、容量
素子105は透光性を有する。
【0301】
このように容量素子105は透光性を有するため、画素301内に容量素子105を大
きく(大面積に)形成することができる。従って、開口率を高めつつ、50%以上、好ま
しくは55%以上、好ましくは60%以上とすることが可能であると共に、電荷容量を増
大させた半導体装置を得ることができる。例えば、解像度の高い半導体装置、例えば液晶
表示装置においては、画素の面積が小さくなり、容量素子の面積も小さくなる。このため
、解像度の高い半導体装置において、容量素子に蓄積される電荷容量が小さくなる。しか
しながら、本実施の形態に示す容量素子105は透光性を有するため、当該容量素子を画
素に設けることで、各画素において十分な電荷容量を得つつ、開口率を高めることができ
る。代表的には、画素密度が200ppi以上、さらには300ppi以上である高解像
度の半導体装置に好適に用いることができる。
【0302】
また、
図16に示す画素301は、信号線として機能する導電膜310dと平行な辺と
比較して走査線として機能する導電膜304cと平行な辺の方が長い形状であり、且つ容
量線として機能する導電膜310fが、信号線として機能する導電膜310dと平行な方
向に延伸して設けられている。この結果、画素301に占める導電膜310fの面積を低
減することが可能であるため、開口率を高めることができる。また、容量線として機能す
る導電膜310fが接続電極を用いず、直接透光性を有する導電膜308cと接するため
、さらに開口率を高めることができる。
【0303】
また、本発明の一態様は、高解像度の表示装置においても、開口率を高めることができ
るため、バックライトなどの光源の光を効率よく利用することができ、表示装置の消費電
力を低減することができる。
【0304】
次いで、
図16の一点鎖線C-D間における断面図を
図17に示す。なお、
図17にお
いて、走査線駆動回路104及び信号線駆動回路106を含む駆動回路部(上面図を省略
する。)の断面図をA-Bに示す。本実施の形態においては、縦電界方式の液晶表示装置
について説明する。
【0305】
本実施の形態に示す液晶表示装置は、一対の基板(基板302と基板342)間に液晶
素子322が挟持されている。
【0306】
液晶素子322は、基板302の上方の透光性を有する導電膜316bと、配向性を制
御する膜(以下、配向膜318、352という)と、液晶層320と、導電膜350と、
を有する。なお、透光性を有する導電膜316bは、液晶素子322の一方の電極として
機能し、導電膜350は、液晶素子322の他方の電極として機能する。
【0307】
このように、液晶表示装置とは、液晶素子を有する装置のことをいう。なお、液晶表示
装置は、複数の画素を駆動させる駆動回路等を含む。また、液晶表示装置は、別の基板上
に配置された制御回路、電源回路、信号生成回路及びバックライトモジュール等を含み、
液晶モジュールとよぶこともある。
【0308】
駆動回路部において、ゲート電極として機能する導電膜304a、ゲート絶縁膜として
機能する絶縁膜305及び絶縁膜306、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜30
8a、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜310a、310bによりトラ
ンジスタ102を構成する。酸化物半導体膜308aは、ゲート絶縁膜上に設けられる。
【0309】
画素部において、ゲート電極として機能する導電膜304c、ゲート絶縁膜として機能
する絶縁膜305及び絶縁膜306、ゲート絶縁膜上に形成されたチャネル領域が形成さ
れる酸化物半導体膜308b、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜310
d、310eによりトランジスタ103を構成する。酸化物半導体膜308bは、ゲート
絶縁膜上に設けられる。また、導電膜310d、310e上には、絶縁膜312、絶縁膜
314が保護膜として設けられている。
【0310】
また、画素電極として機能する透光性を有する導電膜316bが、絶縁膜312及び絶
縁膜314に設けられた開口部において、導電膜310eと接続する。
【0311】
また、一方の電極として機能する透光性を有する導電膜308c、誘電体膜として機能
する絶縁膜314、他方の電極として機能する透光性を有する導電膜316bにより容量
素子105を構成する。透光性を有する導電膜308cは、ゲート絶縁膜上に設けられる
。
【0312】
また、駆動回路部において、導電膜304a、304cと同時に形成された導電膜30
4bと、導電膜310a、310b、310d、310eと同時に形成された導電膜31
0cとは、透光性を有する導電膜316bと同時に形成された透光性を有する導電膜31
6aで接続される。
【0313】
導電膜304b及び透光性を有する導電膜316aは、絶縁膜306及び絶縁膜312
に設けられた開口部において接続する。また、導電膜310cと透光性を有する導電膜3
16aは、絶縁膜312及び絶縁膜314に設けられた開口部において接続する。
【0314】
ここで、
図17に示す表示装置の構成要素について、以下に説明する。
【0315】
基板302上には、導電膜304a、304b、304cが形成されている。導電膜3
04aは、駆動回路部のトランジスタのゲート電極としての機能を有する。また、導電膜
304cは、画素部101に形成され、画素部のトランジスタのゲート電極として機能す
る。また、導電膜304bは、走査線駆動回路104に形成され、導電膜310cと接続
する。
【0316】
基板302は、実施の形態1に示す基板11の材料を適宜用いることができる。
【0317】
導電膜304a、304b、304cとしては、実施の形態1に示すゲート電極15の
材料及び作製方法を適宜用いることができる。
【0318】
基板302、及び導電膜304a、304c、304b上には、絶縁膜305、絶縁膜
306が形成されている。絶縁膜305、絶縁膜306は、駆動回路部のトランジスタの
ゲート絶縁膜、及び画素部101のトランジスタのゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0319】
絶縁膜305としては、実施の形態1に示すゲート絶縁膜17で説明した窒化物絶縁膜
を用いて形成することが好ましい。絶縁膜306としては、実施の形態1に示すゲート絶
縁膜17で説明した酸化物絶縁膜を用いて形成することが好ましい。
【0320】
絶縁膜306上には、酸化物半導体膜308a、308b、透光性を有する導電膜30
8cが形成されている。酸化物半導体膜308aは、導電膜304aと重畳する位置に形
成され、駆動回路部のトランジスタのチャネル領域として機能する。また、酸化物半導体
膜308bは、導電膜304cと重畳する位置に形成され、画素部のトランジスタのチャ
ネル領域として機能する。透光性を有する導電膜308cは、容量素子105の一方の電
極として機能する。
【0321】
酸化物半導体膜308a、308b、及び透光性を有する導電膜308cは、実施の形
態1に示す酸化物半導体膜18の材料及び作製方法を適宜用いることができる。
【0322】
透光性を有する導電膜308cは、酸化物半導体膜308a、308bと同様に、酸化
物半導体膜であり、且つ不純物が含まれていることを特徴とする。不純物としては、水素
がある。なお、水素の代わりに不純物として、ホウ素、リン、スズ、アンチモン、希ガス
元素、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が含まれていてもよい。
【0323】
酸化物半導体膜308a、308b、及び透光性を有する導電膜308cは共に、ゲー
ト絶縁膜上に形成されるが、不純物濃度が異なる。具体的には、酸化物半導体膜308a
、308bと比較して、透光性を有する導電膜308cの不純物濃度が高い。例えば、酸
化物半導体膜308a、308bに含まれる水素濃度は、5×1019atoms/cm
3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3未満、より好ましくは1×1018
atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下、さらに
好ましくは1×1016atoms/cm3以下であり、透光性を有する導電膜308c
に含まれる水素濃度は、8×1019atoms/cm3以上、好ましくは1×1020
atoms/cm3以上、より好ましくは5×1020atoms/cm3以上である。
また、酸化物半導体膜308a、308bと比較して、透光性を有する導電膜308cに
含まれる水素濃度は2倍、好ましくは10倍以上である。
【0324】
また、透光性を有する導電膜308cは、酸化物半導体膜308a、308bより抵抗
率が低い。透光性を有する導電膜308cの抵抗率が、酸化物半導体膜308a、308
bの抵抗率の1×10-8倍以上1×10-1倍以下であることが好ましく、代表的には
1×10-3Ωcm以上1×104Ωcm未満、さらに好ましくは、抵抗率が1×10-
3Ωcm以上1×10-1Ωcm未満であるとよい。
【0325】
酸化物半導体膜308a、308bは、絶縁膜306及び絶縁膜312等の、酸化物半
導体膜との界面特性を向上させることが可能な材料で形成される膜と接しているため、酸
化物半導体膜308a、308bは、半導体として機能し、酸化物半導体膜308a、3
08bを有するトランジスタは、優れた電気特性を有する。
【0326】
一方、透光性を有する導電膜308cは、開口部362(
図6(A)参照。)において
絶縁膜314と接する。絶縁膜314は、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金属
、アルカリ土類金属等が、酸化物半導体膜へ拡散するのを防ぐ材料で形成される膜であり
、更には水素を含む。このため、絶縁膜314の水素が酸化物半導体膜308a、308
bと同時に形成された酸化物半導体膜に拡散すると、該酸化物半導体膜において水素は酸
素と結合し、キャリアである電子が生成される。また、絶縁膜314をプラズマCVD法
またはスパッタリング法で成膜すると、酸化物半導体膜がプラズマに曝され、酸素欠損が
生成される。当該酸素欠損に絶縁膜314に含まれる水素が入ることで、キャリアである
電子が生成される。これらの結果、酸化物半導体膜は、導電性が高くなり導体として機能
する。即ち、導電性の高い酸化物半導体膜ともいえる。ここでは、酸化物半導体膜308
a、308bと同様の材料を主成分とし、且つ水素濃度が酸化物半導体膜308a、30
8bより高いことにより、導電性が高められた金属酸化物を、透光性を有する導電膜30
8cとよぶ。
【0327】
ただし、本発明の実施形態の一態様は、これに限定されず、透光性を有する導電膜30
8cは、場合によっては、絶縁膜314と接していないことも可能である。
【0328】
また、本発明の実施形態の一態様は、これに限定されず、透光性を有する導電膜308
cは、場合によっては、酸化物半導体膜308a、308bと別々の工程で形成されても
よい。その場合には、透光性を有する導電膜308cは、酸化物半導体膜308a、30
8bと、異なる材質を有していても良い。例えば、透光性を有する導電膜308cは、イ
ンジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、またはインジウム亜鉛酸化物等を用いて形
成してもよい。
【0329】
本実施の形態に示す半導体装置は、トランジスタの酸化物半導体膜と同時に、容量素子
の一方となる電極を形成する。また、画素電極として機能する透光性を有する導電膜を容
量素子の他方の電極として用いる。これらのため、容量素子を形成するために、新たに導
電膜を形成する工程が不要であり、半導体装置の作製工程を削減できる。また、容量素子
は、一対の電極が透光性を有する導電膜で形成されているため、透光性を有する。この結
果、容量素子の占有面積を大きくしつつ、画素の開口率を高めることができる。
【0330】
導電膜310a、310b、310c、310d、310eは、実施の形態1に示す一
対の電極21、22の材料及び作製方法を適宜用いることができる。
【0331】
絶縁膜306、酸化物半導体膜308a、308b、透光性を有する導電膜308c、
及び導電膜310a、310b、310c、310d、310e上には、絶縁膜312、
絶縁膜314が形成されている。絶縁膜312は、絶縁膜306と同様に、酸化物半導体
膜との界面特性を向上させることが可能な材料を用いることが好ましく、少なくとも実施
の形態1に示す酸化物絶縁膜24と同様の材料及び作製方法を適宜用いることができる。
また、実施の形態1に示すように、酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜を積層して形成し
てもよい。
【0332】
絶縁膜314は、絶縁膜305と同様に、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金
属、アルカリ土類金属等が、酸化物半導体膜へ拡散するのを防ぐ材料を用いることが好ま
しく、実施の形態1に示す窒化物絶縁膜25の材料及び作製方法を適宜用いることができ
る。
【0333】
また、絶縁膜314上には透光性を有する導電膜316a、316bが形成されている
。透光性を有する導電膜316aは、開口部364a(
図20(C)参照。)において導
電膜304bと電気的に接続され、開口部364b(
図20(C)参照。)において導電
膜310cと電気的に接続される。即ち、導電膜304b及び導電膜310cを接続する
接続電極として機能する。透光性を有する導電膜316bは、開口部364c(
図20(
C)参照。)において導電膜310eと電気的に接続され、画素の画素電極としての機能
を有する。また、透光性を有する導電膜316bは、容量素子の一対の電極の一方として
機能することができる。
【0334】
導電膜304b及び導電膜310cが直接接するような接続構造とするには、導電膜3
10cを形成する前に、絶縁膜305、絶縁膜306に開口部を形成するためにパターニ
ングを行い、マスクを形成する必要があるが、
図17の接続構造には、当該フォトマスク
が不要である。しかしながら、
図17のように、透光性を有する導電膜316aにより、
導電膜304b及び導電膜310cを接続することで、導電膜304b及び導電膜310
cが直接接する接続部を作製する必要が無くなり、フォトマスクを1枚少なくすることが
できる。即ち、半導体装置の作製工程を削減することが可能である。
【0335】
透光性を有する導電膜316a、316bとしては、酸化タングステンを含むインジウ
ム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム
酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、ITO、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケ
イ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いることができ
る。
【0336】
また、基板342上には、有色性を有する膜(以下、有色膜346という。)が形成さ
れている。有色膜346は、カラーフィルタとしての機能を有する。また、有色膜346
に隣接する遮光膜344が基板342上に形成される。遮光膜344は、ブラックマトリ
クスとして機能する。また、有色膜346は、必ずしも設ける必要はなく、例えば、表示
装置が白黒の場合等によって、有色膜346を設けない構成としてもよい。
【0337】
有色膜346としては、特定の波長帯域の光を透過する有色膜であればよく、例えば、
赤色の波長帯域の光を透過する赤色(R)のカラーフィルタ、緑色の波長帯域の光を透過
する緑色(G)のカラーフィルタ、青色の波長帯域の光を透過する青色(B)のカラーフ
ィルタなどを用いることができる。
【0338】
遮光膜344としては、特定の波長帯域の光を遮光する機能を有していればよく、金属
膜または黒色顔料等を含んだ有機絶縁膜などを用いることができる。
【0339】
また、有色膜346上には、絶縁膜348が形成されている。絶縁膜348は、平坦化
層としての機能、または有色膜346が含有しうる不純物を液晶素子側へ拡散するのを抑
制する機能を有する。
【0340】
また、絶縁膜348上には、導電膜350が形成されている。導電膜350は、画素部
の液晶素子が有する一対の電極の他方としての機能を有する。なお、透光性を有する導電
膜316a、316b、及び導電膜350上には、配向膜としての機能を有する絶縁膜を
別途形成してもよい。
【0341】
また、透光性を有する導電膜316a、316bと導電膜350との間には、液晶層3
20が形成されている。また液晶層320は、シール材(図示しない)を用いて、基板3
02と基板342の間に封止されている。なお、シール材は、外部からの水分等の入り込
みを抑制するために、無機材料と接触する構成が好ましい。
【0342】
また、透光性を有する導電膜316a、316bと導電膜350との間に液晶層320
の厚さ(セルギャップともいう)を維持するスペーサを設けてもよい。
【0343】
図17に示す半導体装置に示す基板302上に設けられた素子部の作製方法について、
図18乃至
図21を用いて説明する。
【0344】
まず、基板302を準備する。ここでは、基板302としてガラス基板を用いる。
【0345】
次に、基板302上に導電膜を形成し、該導電膜を所望の領域に加工することで、導電
膜304a、304b、304cを形成する。なお、導電膜304a、304b、304
cの形成は、所望の領域に第1のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆
われていない領域をエッチングすることで形成することができる(
図18(A)参照)。
【0346】
また、導電膜304a、304b、304cとしては、代表的には、蒸着法、CVD法
、スパッタリング法、スピンコート法等を用いて形成することができる。
【0347】
次に、基板302、及び導電膜304a、304b、304c上に、絶縁膜305を形
成し、絶縁膜305上に絶縁膜306を形成する(
図18(A)参照)。
【0348】
絶縁膜305及び絶縁膜306は、スパッタリング法、CVD法等により形成すること
ができる。なお、絶縁膜305及び絶縁膜306は、真空中で連続して形成すると不純物
の混入が抑制され好ましい。
【0349】
次に、絶縁膜306上に酸化物半導体膜307を形成する(
図18(B)参照)。
【0350】
酸化物半導体膜307は、スパッタリング法、塗布法、パルスレーザー蒸着法、レーザ
ーアブレーション法などを用いて形成することができる。
【0351】
次に、酸化物半導体膜307を所望の領域に加工することで、島状の酸化物半導体膜3
08a、308b、308dを形成する。なお、酸化物半導体膜308a、308b、3
08dの形成は、所望の領域に第2のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスク
に覆われていない領域をエッチングすることで形成することができる。エッチングとして
は、ドライエッチング、ウエットエッチング、または双方を組み合わせたエッチングを用
いることができる(
図18(C)参照)。
【0352】
次に、絶縁膜306、及び酸化物半導体膜308a、308b、308d上に導電膜3
09を形成する(
図19(A)参照)。
【0353】
導電膜309としては、例えば、スパッタリング法を用いて形成することができる。
【0354】
次に、導電膜309を所望の領域に加工することで、導電膜310a、310b、31
0c、310d、310eを形成する。なお、導電膜310a、310b、310c、3
10d、310eの形成は、所望の領域に第3のパターニングによるマスクの形成を行い
、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで、形成することができる(
図1
9(B)参照)。
【0355】
次に、絶縁膜306、酸化物半導体膜308a、308b、308d、及び導電膜31
0a、310b、310c、310d、310e上を覆うように、絶縁膜311を形成す
る(
図19(C)参照)。
【0356】
絶縁膜311としては、実施の形態1に示す酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜24と
同様の条件を用いて積層して形成することができる。実施の形態1に示すように、酸化物
絶縁膜23を加熱しながら形成することで、酸化物半導体膜308a、308b、308
dに含まれる水素、水等を脱離させ、高純度化された酸化物半導体膜を形成することがで
きる。
【0357】
次に、絶縁膜311を所望の領域に加工することで、絶縁膜312、及び開口部362
を形成する。なお、絶縁膜311、及び開口部362の形成は、所望の領域に第4のパタ
ーニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングするこ
とで、形成することができる(
図20(A)参照)。
【0358】
なお、開口部362は、酸化物半導体膜308dの表面が露出するように形成する。開
口部362の形成方法としては、例えば、ドライエッチング法を用いることができる。た
だし、開口部362の形成方法としては、これに限定されず、ウエットエッチング法、ま
たはドライエッチング法とウエットエッチング法を組み合わせた形成方法としてもよい。
【0359】
こののち、実施の形態1と同様に、加熱処理を行って、絶縁膜311に含まれる酸素の
一部を酸化物半導体膜308a、308bに酸素を移動させ、酸化物半導体膜308a、
308bに含まれる酸素欠損を補填することが可能である。この結果、酸化物半導体膜3
08a、308bに含まれる酸素欠損量を低減することができる。
【0360】
次に、絶縁膜312及び酸化物半導体膜308d上に絶縁膜313を形成する(
図20
(B)参照)。
【0361】
絶縁膜313としては、外部からの不純物、例えば、酸素、水素、水、アルカリ金属、
アルカリ土類金属等が、酸化物半導体膜へ拡散するのを防ぐ材料を用いることが好ましく
、更には水素を含むことが好ましく、代表的には窒素を含む無機絶縁材料、例えば窒化物
絶縁膜を用いることができる。絶縁膜313としては、例えば、CVD法を用いて形成す
ることができる。
【0362】
絶縁膜314は、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等
が、酸化物半導体膜へ拡散するのを防ぐ材料で形成される膜であり、更には水素を含む。
このため、絶縁膜314の水素が酸化物半導体膜308dに拡散すると、該酸化物半導体
膜308dにおいて水素は酸素と結合し、キャリアである電子が生成される。この結果、
酸化物半導体膜308dは、導電性が高くなり、透光性を有する導電膜308cとなる。
【0363】
また、上記窒化シリコン膜は、ブロック性を高めるために、高温で成膜されることが好
ましく、例えば基板温度100℃以上400℃以下、より好ましくは300℃以上400
℃以下の温度で加熱して成膜することが好ましい。また高温で成膜する場合は、酸化物半
導体膜308a、308bとして用いる酸化物半導体から酸素が脱離し、キャリア濃度が
上昇する現象が発生することがあるため、このような現象が発生しない温度とする。
【0364】
次に、絶縁膜313を所望の領域に加工することで、絶縁膜314、及び開口部364
a、364b、364cを形成する。なお、絶縁膜314、及び開口部364a、364
b、364cは、所望の領域に第5のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスク
に覆われていない領域をエッチングすることで形成することができる(
図20(C)参照
)。
【0365】
また、開口部364aは、導電膜304bの表面が露出するように形成する。また、開
口部364bは、導電膜310cが露出するように形成する。また、開口部364cは、
導電膜310eが露出するように形成する。
【0366】
なお、開口部364a、364b、364cの形成方法としては、例えば、ドライエッ
チング法を用いることができる。ただし、開口部364a、364b、364cの形成方
法としては、これに限定されず、ウエットエッチング法、またはドライエッチング法とウ
エットエッチング法を組み合わせた形成方法としてもよい。
【0367】
次に、開口部364a、364b、364cを覆うように絶縁膜314上に導電膜31
5を形成する(
図21(A)参照)。
【0368】
導電膜315としては、例えば、スパッタリング法を用いて形成することができる。
【0369】
次に、導電膜315を所望の領域に加工することで、透光性を有する導電膜316a、
316bを形成する。なお、透光性を有する導電膜316a、316bの形成は、所望の
領域に第6のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域を
エッチングすることで形成することができる(
図21(B)参照)。
【0370】
以上の工程で基板302上に、トランジスタを有する画素部及び駆動回路部を形成する
ことができる。なお、本実施の形態に示す作製工程においては、第1乃至第6のパターニ
ング、すなわち6枚のマスクでトランジスタ、及び容量素子を同時に形成することができ
る。
【0371】
なお、本実施の形態では、絶縁膜314に含まれる水素を酸化物半導体膜308dに拡
散させて、酸化物半導体膜308dの導電性を高めたが、酸化物半導体膜308a、30
8bをマスクで覆い、酸化物半導体膜308dに不純物、代表的には、水素、ホウ素、リ
ン、スズ、アンチモン、希ガス元素、アルカリ金属、アルカリ土類金属等を添加して、酸
化物半導体膜308dの導電性を高めてもよい。酸化物半導体膜308dに水素、ホウ素
、リン、スズ、アンチモン、希ガス元素等を添加する方法としては、イオンドーピング法
、イオン注入法等がある。一方、酸化物半導体膜308dにアルカリ金属、アルカリ土類
金属等を添加する方法としては、該不純物を含む溶液を酸化物半導体膜308dに曝す方
法がある。
【0372】
次に、基板302に対向して設けられる基板342上に形成される構造について、以下
説明を行う。
【0373】
まず、基板342を準備する。基板342としては、基板302に示す材料を援用する
ことができる。次に、基板342上に遮光膜344、有色膜346を形成する(
図22(
A)参照)。
【0374】
遮光膜344及び有色膜346は、様々な材料を用いて、印刷法、インクジェット法、
フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング方法などでそれぞれ所望の位置に形成する。
【0375】
次に、遮光膜344、及び有色膜346上に絶縁膜348を形成する(
図22(B)参
照)。
【0376】
絶縁膜348としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド等の有機絶
縁膜を用いることができる。絶縁膜348を形成することによって、例えば、有色膜34
6中に含まれる不純物等を液晶層320側に拡散することを抑制することができる。ただ
し、絶縁膜348は、必ずしも設ける必要はなく、絶縁膜348を形成しない構造として
もよい。
【0377】
次に、絶縁膜348上に導電膜350を形成する(
図22(C)参照)。導電膜350
としては、導電膜315に示す材料を援用することができる。
【0378】
以上の工程で基板342上に形成される構造を形成することができる。
【0379】
次に、基板302と基板342上、より詳しくは基板302上に形成された絶縁膜31
4、透光性を有する導電膜316a、316bと、基板342上に形成された導電膜35
0上に、それぞれ配向膜318と配向膜352を形成する。配向膜318、配向膜352
は、ラビング法、光配向法等を用いて形成することができる。その後、基板302と、基
板342との間に液晶層320を形成する。液晶層320の形成方法としては、ディスペ
ンサ法(滴下法)や、基板302と基板342とを貼り合わせてから毛細管現象を用いて
液晶を注入する注入法を用いることができる。
【0380】
以上の工程で、
図17に示す表示装置を作製することができる。
【0381】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができ
る。
【0382】
<変形例1>
画素301に液晶素子を用いた液晶表示装置の変形例について説明する。ここでは、図
15(B)に示す画素301の上面図を
図23に示す。なお、
図23においては、対向電
極及び液晶素子を省略する。なお、実施の形態8と同様の構成については、説明を省略す
る。
【0383】
<半導体装置の構成>
図23において、開口部372cの内側に開口部374cが設けられる点が
図16に示
す画素301と異なる。また、開口部364の代わりに開口部372が設けられる点が図
17に示す画素と異なる。導電膜310eは、開口部372c及び開口部374cにおい
て、画素電極として機能する透光性を有する導電膜316bと電気的に接続されている。
【0384】
次に、
図23の一点鎖線C-D間における断面図を
図24に示す。なお、
図24におい
て、駆動回路部(上面図を省略する。)の断面図をA-Bに示す。
【0385】
図24に示すように、導電膜304a上には、絶縁膜306及び絶縁膜312に設けら
れた開口部372a(
図25(A)参照。)と、絶縁膜314に設けられた開口部374
a(
図25(C)参照。)とを有する。開口部374a(
図25(C)参照。)は、開口
部372a(
図25(A)参照。)の内側に位置する。開口部374a(
図25(C)参
照。)において、導電膜304aと透光性を有する導電膜316aが接続される。
【0386】
また、導電膜310c上には、絶縁膜312に設けられた開口部372b(
図25(A
)参照。)と、絶縁膜314に設けられた開口部374b(
図25(C)参照。)とを有
する。開口部374b(
図25(C)参照。)は、開口部372b(
図25(A)参照。
)の内側に位置する。開口部374b(
図25(C)参照。)において、導電膜310c
と透光性を有する導電膜316aが接続される。
【0387】
また、導電膜310e上には、絶縁膜312に設けられた開口部372c(
図25(A
)参照。)と、絶縁膜314に設けられた開口部374c(
図25(C)参照。)とを有
する。開口部374c(
図25(C)参照。)は、開口部372c(
図25(A)参照。
)の内側に位置する。開口部374c(
図25(C)参照。)において、導電膜310e
と透光性を有する導電膜316bが接続される。
【0388】
また、透光性を有する導電膜308c上には、絶縁膜312に設けられた開口部372
(
図25(A)参照。)を有する。開口部372において、透光性を有する導電膜308
cは絶縁膜314と接する。
【0389】
導電膜304b及び透光性を有する導電膜316aの接続部、導電膜310c及び透光
性を有する導電膜316aの接続部、導電膜310e及び透光性を有する導電膜316b
の接続部はそれぞれ、絶縁膜305または/及び絶縁膜314で覆われている。絶縁膜3
05及び絶縁膜314は、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金属、アルカリ土類
金属等が、酸化物半導体膜へ拡散するのを防ぐ材料で形成される絶縁膜で形成される。ま
た、開口部372a、372b、372c、372(
図25(A)参照。)の側面が絶縁
膜305または/及び絶縁膜314で覆われている。絶縁膜305及び絶縁膜314の内
側には酸化物半導体膜が設けられているため、外部からの不純物、例えば水、アルカリ金
属、アルカリ土類金属等が、導電膜304b、導電膜310c、310e、及び透光性を
有する導電膜308c、316a、316bの接続部から、トランジスタに含まれる酸化
物半導体膜へ拡散することを防ぐことができる。このため、トランジスタの電気特性の変
動を防ぐことが可能であり、半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0390】
図24に示す半導体装置に示す基板302上に設けられた素子部の作製方法について、
図19、
図25、及び
図26を用いて説明する。
【0391】
実施の形態8と同様に、
図18及び
図19の工程を経て、基板302上に、ゲート電極
として機能する導電膜304a、304b、304c、ゲート絶縁膜として機能する絶縁
膜305及び絶縁膜306、酸化物半導体膜308a、308b、308d、導電膜31
0a、310b、310c、310d、310e、絶縁膜311を形成する。なお、当該
工程において、第1のパターニング乃至第3のパターニングを行い、それぞれ導電膜30
4a、304b、304c、酸化物半導体膜308a、308b、308d、導電膜31
0a、310b、310c、310d、310eを形成している。
【0392】
この後、実施の形態8と同様に、加熱処理を行って、絶縁膜311に含まれる酸素の一
部を酸化物半導体膜308a、308bに酸素を移動させ、酸化物半導体膜308a、3
08bに含まれる酸化物半導体膜中の酸素欠損を補填することが可能である。この結果、
酸化物半導体膜308a、308bに含まれる酸素欠損量を低減することができる。
【0393】
次に、
図25(A)に示すように、絶縁膜311を所望の領域に加工することで、絶縁
膜312、及び開口部372、372b、372cを形成する。さらに、ゲート絶縁膜の
一部である絶縁膜306を所望の領域に加工することで、開口部372aを形成する。な
お、絶縁膜305、絶縁膜312、及び開口部372、372a、372b、372cの
形成は、所望の領域に第4のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われ
ていない領域をエッチングすることで、形成することができる。開口部372、372a
、372b、372cの形成方法としては、適宜実施の形態8に示す開口部362の形成
方法を用いることができる。
【0394】
当該エッチング工程において、少なくとも開口部372aを形成することで、後に行わ
れる第5のパターニングで形成されたマスクを用いたエッチング工程の際に、エッチング
量を削減することが可能である。
【0395】
次に、絶縁膜305、導電膜310c、310e、絶縁膜312、及び酸化物半導体膜
308d上に絶縁膜313を形成する(
図25(B)参照)。
【0396】
次に、実施の形態8と同様に、絶縁膜313を所望の領域に加工することで、絶縁膜3
14、及び開口部374a、374b、374cを形成する。なお、絶縁膜314、及び
開口部374a、374b、374cは、所望の領域に第5のパターニングによるマスク
の形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで形成することがで
きる(
図25(C)参照)。
【0397】
次に、実施の形態8と同様に、開口部374a、374b、374cを覆うように絶縁
膜314上に導電膜315を形成する(
図26(A)参照)。
【0398】
次に、導電膜315を所望の領域に加工することで、透光性を有する導電膜316a、
316bを形成する。なお、透光性を有する導電膜316a、316bの形成は、所望の
領域に第6のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域を
エッチングすることで形成することができる(
図26(B)参照)。
【0399】
以上の工程で基板302上に、トランジスタを有する画素部及び駆動回路部を形成する
ことができる。なお、本実施の形態に示す作製工程においては、第1乃至第6のパターニ
ング、すなわち6枚のマスクでトランジスタ、及び容量素子を同時に形成することができ
る。
【0400】
図25(A)において、開口部372aを形成しない工程の場合、
図25(C)に示す
エッチング工程において、絶縁膜305、絶縁膜306、絶縁膜312、及び絶縁膜31
4をエッチングしなければならず、他の開口部と比べてエッチング量が増えてしまう。こ
のため、当該エッチング工程においてばらつきが生じてしまい、一部の領域においては、
開口部374aが形成されず、後に形成される透光性を有する導電膜316aと導電膜3
04bのコンタクト不良が生じてしまう。しかしながら、本実施の形態においては、2回
のエッチング工程により開口部372a及び開口部374aを形成するため、当該開口部
の形成工程においてエッチング不良が生じにくい。この結果、半導体装置の歩留まりを向
上させることが可能である。なお、ここでは、開口部372aを用いて説明したが、開口
部374b及び開口部374cにおいても同様の効果を有する。
【0401】
<変形例2>
画素301に液晶素子を用いた液晶表示装置の変形例について説明する。
図17及び図
24に示す液晶表示装置において、透光性を有する導電膜308は、絶縁膜314と接し
ているが、絶縁膜305と接する構造とすることができる。この場合、
図20に示すよう
な開口部362を設ける必要が無いため、透光性を有する導電膜316a、316b表面
の段差を低減することが可能である。このため、液晶層320に含まれる液晶材料の配向
乱れを低減することが可能である。また、コントラストの高い半導体装置を作製すること
ができる。
【0402】
このような構造は、
図18(B)において、酸化物半導体膜307を形成する前に、絶
縁膜306を選択的にエッチングして、絶縁膜305の一部を露出させればよい。
【0403】
<変形例3>
ここでは、実施の形態1に示す半導体装置の変形例について、
図27乃至
図29を用い
て説明する。
図27において、A-Bに駆動回路部の断面図を示し、C-Dに画素部の断
面図を示す。
【0404】
図27に示す半導体装置は、実施の形態1に示す半導体装置と比較して、チャネル保護
型のトランジスタを用いている点が異なる。
【0405】
駆動回路部において、ゲート電極として機能する導電膜304a、ゲート絶縁膜として
機能する絶縁膜305及び絶縁膜306、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜30
8a、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜310a、310bによりトラ
ンジスタ102を構成する。酸化物半導体膜308aと導電膜310a、310bの間に
、チャネル保護膜として機能する絶縁膜312が設けられる。また、導電膜310a、3
10b、310c上には、絶縁膜314が保護膜として設けられている。
【0406】
画素部において、ゲート電極として機能する導電膜304c、ゲート絶縁膜として機能
する絶縁膜305及び絶縁膜306、ゲート絶縁膜上に形成されたチャネル領域が形成さ
れる酸化物半導体膜308b、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜310
d、310eによりトランジスタ103を構成する。酸化物半導体膜308bと導電膜3
10d、310eの間に、チャネル保護膜として機能する絶縁膜312が設けられる。ま
た、導電膜310d、310e、透光性を有する導電膜308c上には、絶縁膜314が
保護膜として設けられている。
【0407】
また、画素電極として機能する透光性を有する導電膜316bが、絶縁膜314に設け
られた開口部において、導電膜310eと接続する。
【0408】
また、一方の電極として機能する透光性を有する導電膜308c、誘電体膜として機能
する絶縁膜314、他方の電極として機能する透光性を有する導電膜316bにより容量
素子105を構成する。
【0409】
また、駆動回路部において、導電膜304a、304cと同時に形成された導電膜30
4bと、導電膜310a、310b、310d、310eと同時に形成された導電膜31
0cとは、透光性を有する導電膜316bと同時に形成された透光性を有する導電膜31
6aで接続される。
【0410】
本変形例においては、導電膜310a、310b、310d、310eをエッチングす
る際、酸化物半導体膜308a、308bが絶縁膜312に覆われているため、導電膜3
10a、310b、310d、310eを形成するエッチングによって、酸化物半導体膜
308a、308bはダメージを受けない。さらに、絶縁膜312は、化学量論的組成を
満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜で形成される。このため、絶縁膜312
に含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜308a、308bに移動させ、酸化物半導体膜
308a、308bに含まれる酸素欠損量を低減することができる。
【0411】
図27に示す半導体装置に示す基板302上に設けられた素子部の作製方法について、
図19、
図28、及び
図29を用いて説明する。
【0412】
実施の形態8と同様に、
図18の工程を経て、基板302上に、ゲート電極として機能
する導電膜304a、304b、304c、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜305及
び絶縁膜306、酸化物半導体膜308a、308b、308dを形成する。なお、当該
工程において、第1のパターニング及び第2のパターニングを行い、それぞれ導電膜30
4a、304b、304c、酸化物半導体膜308a、308b、308dを形成してい
る。
【0413】
次に、
図28(A)に示すように、実施の形態8と同様に絶縁膜311を形成する。
【0414】
この後、実施の形態8と同様に、加熱処理を行って、絶縁膜311に含まれる酸素の一
部を酸化物半導体膜308a、308bに酸素を移動させ、酸化物半導体膜308a、3
08bに含まれる酸化物半導体膜中の酸素欠損を補填することが可能である。この結果、
酸化物半導体膜308a、308bに含まれる酸素欠損量を低減することができる。
【0415】
次に、
図28(B)に示すように、絶縁膜311を所望の領域に加工することで、酸化
物半導体膜308a、308b上に絶縁膜312を形成する。当該工程において、絶縁膜
312と同様の材料で絶縁膜306が形成される場合、絶縁膜306の一部がエッチング
され、酸化物半導体膜308a、308bに覆われている領域のみ残存する。なお、絶縁
膜306及び絶縁膜312の形成は、所望の領域に第3のパターニングによるマスクの形
成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで、形成することができ
る。
【0416】
次に、絶縁膜305、絶縁膜306、酸化物半導体膜308a、308b上に導電膜を
形成した後、実施の形態8と同様の工程を経て導電膜310a、310b、310c、3
10d、310eを形成する(
図28(C)参照。)。なお、導電膜310a、310b
、310c、310d、310eの形成は、所望の領域に第4のパターニングによるマス
クの形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで、形成すること
ができる。
【0417】
次に、絶縁膜305、絶縁膜312、酸化物半導体膜308d、導電膜310a、31
0b、310c、310d、310e上に絶縁膜313を形成する(
図29(A)参照)
。
【0418】
次に、実施の形態8と同様に、絶縁膜313を所望の領域に加工することで、絶縁膜3
14、及び開口部384a、384b、384cを形成する。なお、絶縁膜314、及び
開口部384a、384b、384cは、所望の領域に第5のパターニングによるマスク
の形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで形成することがで
きる(
図29(B)参照)。
【0419】
次に、実施の形態8と同様に、開口部384a、384b、384cを覆うように絶縁
膜314上に導電膜を形成した後、導電膜を所望の領域に加工することで、透光性を有す
る導電膜316a、316bを形成する(
図29(C)参照)。なお、透光性を有する導
電膜316a、316bの形成は、所望の領域に第6のパターニングによるマスクの形成
を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで形成することができる。
【0420】
以上の工程で基板302上に、トランジスタを有する画素部及び駆動回路部を形成する
ことができる。なお、本実施の形態に示す作製工程においては、第1乃至第6のパターニ
ング、すなわち6枚のマスクでトランジスタ、及び容量素子を同時に形成することができ
る。
【0421】
<変形例4>
本実施の形態及び変形例では、容量素子105を構成する一対の電極として、透光性を
有する導電膜308c及び透光性を有する導電膜316bを用いているが、この代わりに
、
図8に示すように、絶縁膜312及び絶縁膜314の間に、透光性を有する導電膜31
7を形成し、絶縁膜314上に透光性を有する導電膜316cを形成し、透光性を有する
導電膜317及び透光性を有する導電膜316cを、容量素子105を形成する一対の電
極として用いることができる。
【0422】
さらには、絶縁膜312上に、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド等の有機絶縁
膜を設けてもよい。アクリル系樹脂等の有機絶縁膜は平坦性が高いため、透光性を有する
導電膜316a表面の段差を低減することが可能である。このため、液晶層320に含ま
れる液晶材料の配向乱れを低減することが可能である。また、コントラストの高い半導体
装置を作製することができる。
【0423】
<変形例5>
本実施の形態及び変形例では、容量素子を構成する一対の電極として、透光性を有する
導電膜308c及び透光性を有する導電膜316bを用いているが、導電膜304a、3
04b、304cと同時に形成される導電膜、導電膜310a、310b、310c、3
10d、310eと同時に形成される導電膜、透光性を有する導電膜308c及び透光性
を有する導電膜316bの2以上を適宜選択することが可能である。
【0424】
(実施の形態9)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置に含まれているトランジスタ
において、酸化物半導体膜18、多層膜20及び多層膜34に適用可能な一態様について
説明する。なお、ここでは、多層膜に含まれる酸化物半導体膜を一例に用いて説明するが
、酸化物膜も同様の構造とすることができる。
【0425】
酸化物半導体膜は、単結晶構造の酸化物半導体(以下、単結晶酸化物半導体という。)
、多結晶構造の酸化物半導体(以下、多結晶酸化物半導体という。)、微結晶構造の酸化
物半導体(以下、微結晶酸化物半導体という。)、及び非晶質構造の酸化物半導体(以下
、非晶質酸化物半導体という。)の一以上で構成されてもよい。また、酸化物半導体膜は
、CAAC-OSで構成されていてもよい。また、酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導
体及び結晶粒を有する酸化物半導体で構成されていてもよい。以下に、単結晶酸化物半導
体、CAAC-OS、多結晶酸化物半導体、微結晶酸化物半導体、非晶質酸化物半導体に
ついて説明する。
【0426】
<単結晶酸化物半導体>
単結晶酸化物半導体は、例えば、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損が
少ない)ため、キャリア密度を低くすることができる。従って、単結晶酸化物半導体をチ
ャネル領域に用いたトランジスタは、ノーマリーオンの電気特性になることが少ない場合
がある。また、単結晶酸化物半導体は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低
くなる場合がある。従って、単結晶酸化物半導体をチャネル領域に用いたトランジスタは
、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる場合がある。
【0427】
<CAAC-OS>
CAAC-OS膜は、複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つであり、ほとんどの
結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。従って、CAAC-
OS膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満又は3nm未満の立方体内
に収まる大きさの場合も含まれる。CAAC-OS膜は、微結晶酸化物半導体膜よりも欠
陥準位密度が低いという特徴がある。以下、CAAC-OS膜について詳細な説明を行う
。
【0428】
CAAC-OSは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission
Electron Microscope)による観察像で、結晶部を確認することがで
きる場合がある。CAAC-OSに含まれる結晶部は、例えば、TEMによる観察像で、
一辺100nmの立方体内に収まる大きさであることが多い。また、CAAC-OSは、
TEMによる観察像で、結晶部と結晶部との境界を明確に確認できない場合がある。また
、CAAC-OSは、TEMによる観察像で、粒界(グレインバウンダリーともいう。)
を明確に確認できない場合がある。CAAC-OSは、例えば、明確な粒界を有さないた
め、不純物が偏析することが少ない。また、CAAC-OSは、例えば、明確な粒界を有
さないため、欠陥準位密度が高くなることが少ない。また、CAAC-OSは、例えば、
明確な粒界を有さないため、電子移動度の低下が小さい。
【0429】
CAAC-OSは、例えば、複数の結晶部を有し、当該複数の結晶部においてc軸が被
形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃っている場合がある。
そのため、CAAC-OSは、例えば、X線回折(XRD:X-Ray Diffrac
tion)装置を用い、out-of-plane法による分析を行うと、配向を示す2
θが31°近傍のピークが現れる場合がある。また、CAAC-OSは、例えば、電子線
回折パターンで、スポット(輝点)が観測される場合がある。なお、特に、ビーム径が1
0nmφ以下、または5nmφ以下の電子線を用いて得られる電子線回折パターンを、極
微電子線回折パターンと呼ぶ。また、CAAC-OSは、例えば、異なる結晶部間で、そ
れぞれa軸及びb軸の向きが揃っていない場合がある。CAAC-OSは、例えば、c軸
配向し、a軸または/及びb軸はマクロに揃っていない場合がある。
【0430】
図30は、CAAC-OSを有する試料の極微電子線回折パターンの一例である。ここ
では、試料を、CAAC-OSの被形成面に垂直な方向に切断し、厚さが40nm程度と
なるように薄片化する。また、ここでは、ビーム径が1nmφの電子線を、試料の切断面
に垂直な方向から入射させる。
図30より、CAAC-OSの極微電子線回折パターンは
、スポットが観測されることがわかる。
【0431】
CAAC-OSに含まれる結晶部は、例えば、c軸がCAAC-OSの被形成面の法線
ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向になるように揃い、かつab面に垂直な
方向から見て金属原子が三角形状または六角形状に配列し、c軸に垂直な方向から見て金
属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間
で、それぞれa軸及びb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と
記載する場合、80°以上100°以下、好ましくは85°以上95°以下の範囲も含ま
れることとする。また、単に平行と記載する場合、-10°以上10°以下、好ましくは
-5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0432】
CAAC-OSに含まれる結晶部のc軸は、CAAC-OSの被形成面の法線ベクトル
または表面の法線ベクトルに平行な方向になるように揃うため、CAAC-OSの形状(
被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがあ
る。また、結晶部は、成膜したとき、または成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行った
ときに形成される。従って、結晶部のc軸は、CAAC-OSが形成されたときの被形成
面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向になるように揃う。
【0433】
CAAC-OSは、例えば、不純物濃度を低減することで形成することができる場合が
ある。ここで、不純物は、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体の主
成分以外の元素である。特に、シリコンなどの元素は、酸化物半導体を構成する金属元素
よりも酸素との結合力が強い。従って、当該元素が酸化物半導体から酸素を奪う場合、酸
化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させることがある。また、鉄やニッケルなど
の重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸
化物半導体の原子配列を乱し、酸化物半導体の結晶性を低下させることがある。従って、
CAAC-OSは、不純物濃度の低い酸化物半導体である。また、酸化物半導体に含まれ
る不純物は、キャリア発生源となる場合がある。
【0434】
なお、CAAC-OSにおいて、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAA
C-OSの形成過程において、酸化物半導体の表面側から結晶成長させる場合、被形成面
の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC
-OSに不純物が混入することにより、当該不純物混入領域において結晶部の結晶性が低
下することがある。
【0435】
また、CAAC-OSは、例えば、欠陥準位密度を低減することで形成することができ
る。酸化物半導体において、例えば、酸素欠損があると欠陥準位密度が増加する。酸素欠
損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによってキャリア発生源とな
ることがある。CAAC-OSを形成するためには、例えば、酸化物半導体に酸素欠損を
生じさせないことが重要となる。従って、CAAC-OSは、欠陥準位密度の低い酸化物
半導体である。または、CAAC-OSは、酸素欠損の少ない酸化物半導体である。
【0436】
CAAC-OSにおいて、一定光電流測定法(CPM:Constant Photo
current Method)で導出される吸収係数は、1×10-3/cm未満、好
ましくは1×10-4/cm未満、さらに好ましくは5×10-5/cm未満となる。吸
収係数は、酸素欠損及び不純物の混入に由来する局在準位に応じたエネルギー(波長によ
り換算)と正の相関があるため、CAAC-OSにおける欠陥準位が極めて少ない。
【0437】
なお、CPM測定によって得られた吸収係数のカーブからバンドの裾に起因するアーバ
ックテールと呼ばれる吸収係数分を除くことにより、欠陥準位よる吸収係数を以下の式か
ら算出することができる。なお、アーバックテールとは、CPM測定によって得られた吸
収係数のカーブにおいて一定の傾きを有する領域をいい、当該傾きをアーバックエネルギ
ーという。
【0438】
【0439】
ここで、α(E)は、各エネルギーにおける吸収係数を表し、αuは、アーバックテー
ルによる吸収係数を表す。
【0440】
また、高純度真性または実質的に高純度真性であるCAAC-OSを用いたトランジス
タは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。
【0441】
<CAAC-OSの作製方法>
CAAC-OSに含まれる結晶部のc軸は、CAAC-OSの被形成面の法線ベクトル
または表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC-OSの形状(被形成面の
断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、
結晶部のc軸の方向は、CAAC-OSが形成されたときの被形成面の法線ベクトルまた
は表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜
後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0442】
CAAC-OSの形成方法としては、三つ挙げられる。
【0443】
第1の方法は、成膜温度を100℃以上450℃以下として酸化物半導体膜を成膜する
ことで、酸化物半導体膜に含まれる結晶部のc軸が、被形成面の法線ベクトルまたは表面
の法線ベクトルに平行な方向に揃った結晶部を形成する方法である。なお、本明細書にお
いては、成膜温度を100℃以上400℃以下とすることが好ましい。
【0444】
第2の方法は、酸化物半導体膜を薄い厚さで成膜した後、200℃以上700℃以下の
加熱処理を行うことで、酸化物半導体膜に含まれる結晶部のc軸が、被形成面の法線ベク
トルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃った結晶部を形成する方法である。なお
、本明細書においては、加熱温度を200℃以上400℃以下とすることが好ましい。
【0445】
第3の方法は、一層目の酸化物半導体膜を薄い厚さで成膜した後、200℃以上700
℃以下の加熱処理を行い、さらに二層目の酸化物半導体膜の成膜を行うことで、酸化物半
導体膜に含まれる結晶部のc軸が、被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに
平行な方向に揃った結晶部を形成する方法である。なお、本明細書においては、加熱温度
を200℃以上400℃以下とすることが好ましい。
【0446】
ここで、第1の方法を用いて、CAAC-OSを形成する方法について説明する。
【0447】
<ターゲット、及びターゲットの作製方法>
また、CAAC-OSは、例えば多結晶である酸化物半導体スパッタリング用ターゲッ
トを用い、スパッタリング法によって成膜する。当該スパッタリング用ターゲットにイオ
ンが衝突すると、スパッタリング用ターゲットに含まれる結晶領域がa-b面から劈開し
、a-b面に平行な面を有する平板状またはペレット状のスパッタリング粒子として剥離
することがある。この場合、当該平板状またはペレット状のスパッタリング粒子が、結晶
状態を維持したまま被形成面に到達することで、CAAC-OSを成膜することができる
。
【0448】
また、CAAC-OSを成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
【0449】
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制で
きる。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素及び窒素など)を
低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が
-80℃以下、好ましくは-100℃以下である成膜ガスを用いる。
【0450】
また、成膜時の被形成面の加熱温度(例えば基板加熱温度)を高めることで、被形成面
に到達後にスパッタリング粒子のマイグレーションが起こる。具体的には、被形成面の温
度を100℃以上740℃以下、好ましくは200℃以上500℃以下として成膜する。
成膜時の被形成面の温度を高めることで、平板状のスパッタリング粒子が被形成面に到達
した場合、当該被形成面上でマイグレーションが起こり、スパッタリング粒子の平らな面
が被形成面に付着する。なお、酸化物の種類によっても異なるが、スパッタリング粒子は
、a-b面と平行な面の直径(円相当径)が1nm以上30nm以下、または1nm以上
10nm以下程度となる。なお、平板状のスパッタリング粒子は、六角形の面がa-b面
と平行な面である六角柱状であってもよい。その場合、六角形の面と垂直な方向がc軸方
向である。
【0451】
なお、スパッタリング用ターゲットを酸素の陽イオンを用いてスパッタリングすること
で、成膜時のプラズマダメージを軽減することができる。したがって、イオンがスパッタ
リング用ターゲットの表面に衝突した際に、スパッタリング用ターゲットの結晶性が低下
すること、または非晶質化することを抑制できる。
【0452】
また、スパッタリング用ターゲットを酸素またはアルゴンの陽イオンを用いてスパッタ
リングすることで、平板状のスパッタリング粒子が六角柱状の場合、六角形状の面におけ
る角部に正の電荷を帯電させることができる。六角形状の面の角部に正の電荷を有するこ
とで、一つのスパッタリング粒子において正の電荷同士が反発し合い、平板状の形状を維
持することができる。
【0453】
平板状のスパッタリング粒子の面における角部が、正の電荷を有するためには、直流(
DC)電源を用いることが好ましい。なお、高周波(RF)電源、交流(AC)電源を用
いることもできる。ただし、RF電源は、大面積の基板へ成膜可能なスパッタリング装置
への適用が困難である。また、以下に示す観点からAC電源よりもDC電源が好ましいと
考えられる。
【0454】
AC電源を用いた場合、隣接するターゲットが互いにカソード電位とアノード電位を繰
り返す。平板状のスパッタリング粒子が、正に帯電している場合、互いに反発し合うこと
により、平板状の形状を維持することができる。ただし、AC電源を用いた場合、瞬間的
に電界がかからない時間が生じるため、平板状のスパッタリング粒子に帯電していた電荷
が消失して、スパッタリング粒子の構造が崩れてしまうことがある。したがって、AC電
源を用いるよりも、DC電源を用いる方が好ましいことがわかる。
【0455】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメー
ジを軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100
体積%とする。
【0456】
スパッタリング用ターゲットの一例として、In-Ga-Zn系化合物ターゲットにつ
いて以下に示す。
【0457】
InOX粉末、GaOY粉末、及びZnOZ粉末を所定のmol数で混合し、加圧処理
後、1000℃以上1500℃以下の温度で加熱処理をすることで多結晶であるIn-G
a-Zn系化合物ターゲットとする。なお、当該加圧処理は、冷却(または放冷)しなが
ら行ってもよいし、加熱しながら行ってもよい。なお、X、Y及びZは任意の正数である
。ここで、所定のmol数比は、例えば、InOX粉末、GaOY粉末及びZnOZ粉末
が、2:2:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3、3:1:2、1:
3:2、1:6:4、または1:9:6である。なお、粉末の種類、及びその混合するm
ol数比は、作製するスパッタリング用ターゲットによって適宜変更すればよい。
【0458】
以上のような方法でスパッタリング用ターゲットを使用することで、厚さが均一であり
、結晶の配向の揃った酸化物半導体膜を成膜することができる。
【0459】
<多結晶酸化物半導体>
多結晶を有する酸化物半導体を、多結晶酸化物半導体とよぶ。多結晶酸化物半導体は複
数の結晶粒を含む。
【0460】
多結晶酸化物半導体は、例えば、TEMによる観察像で、結晶粒を確認することができ
る場合がある。多結晶酸化物半導体に含まれる結晶粒は、例えば、TEMによる観察像で
、2nm以上300nm以下、3nm以上100nm以下または5nm以上50nm以下
の粒径であることが多い。また、多結晶酸化物半導体は、例えば、TEMによる観察像で
、結晶粒と結晶粒との境界を確認できる場合がある。また、多結晶酸化物半導体は、例え
ば、TEMによる観察像で、粒界を確認できる場合がある。
【0461】
多結晶酸化物半導体は、例えば、複数の結晶粒を有し、当該複数の結晶粒において方位
が異なっている場合がある。また、多結晶酸化物半導体は、例えば、XRD装置を用い、
out-of-plane法による分析を行うと、配向を示す2θが31°近傍のピーク
、または複数種の配向を示すピークが現れる場合がある。また、多結晶酸化物半導体は、
例えば、電子線回折パターンで、スポットが観測される場合がある。
【0462】
多結晶酸化物半導体は、例えば、高い結晶性を有するため、高い電子移動度を有する場
合がある。従って、多結晶酸化物半導体をチャネル領域に用いたトランジスタは、高い電
界効果移動度を有する。ただし、多結晶酸化物半導体は、粒界に不純物が偏析する場合が
ある。また、多結晶酸化物半導体の粒界は欠陥準位となる。多結晶酸化物半導体は、粒界
がキャリア発生源、トラップ準位となる場合があるため、多結晶酸化物半導体をチャネル
領域に用いたトランジスタは、CAAC-OSをチャネル領域に用いたトランジスタと比
べて、電気特性の変動が大きく、信頼性の低いトランジスタとなる場合がある。
【0463】
多結晶酸化物半導体は、高温での加熱処理、またはレーザ光処理によって形成すること
ができる。
【0464】
<微結晶酸化物半導体>
微結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像では、明確に結晶部を確認することがで
きない場合がある。微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、1nm以上100nm以
下、または1nm以上10nm以下の大きさであることが多い。特に、1nm以上10n
m以下、または1nm以上3nm以下の微結晶であるナノ結晶(nc:nanocrys
tal)を有する酸化物半導体膜を、nc-OS(nanocrystalline O
xide Semiconductor)膜と呼ぶ。また、nc-OS膜は、例えば、T
EMによる観察像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。
【0465】
nc-OS膜は、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以
上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OS膜は、異な
る結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。
従って、nc-OS膜は、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体膜と区別が付かない
場合がある。例えば、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きい径のX線を用いるXRD
装置を用いて構造解析を行うと、out-of-plane法による解析では、結晶面を
示すピークが検出されない。また、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きいプローブ径
(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子線回折(制限視野電子線回折ともいう。)
を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc-OS膜に対
し、結晶部の大きさと近いか結晶部より小さいプローブ径(例えば1nm以上30nm以
下)の電子線を用いる電子線回折(ナノビーム電子線回折ともいう。)を行うと、スポッ
トが観測される。また、nc-OS膜に対しナノビーム電子線回折を行うと、円を描くよ
うに(リング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。また、nc-OS膜に対し
ナノビーム電子線回折を行うと、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合が
ある。
【0466】
図31は、nc-OS膜を有する試料に対し、測定箇所を変えてナノビーム電子線回折
を行った例である。ここでは、試料を、nc-OS膜の被形成面に垂直な方向に切断し、
厚さが10nm以下となるように薄片化する。また、ここでは、プローブ径が1nmの電
子線を、試料の切断面に垂直な方向から入射させる。
図31より、nc-OS膜を有する
試料に対しナノビーム電子線回折を行うと、結晶面を示す回折パターンが得られるが、特
定方向の結晶面への配向性は見られないことがわかった。
【0467】
nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも規則性の高い酸化物半導体膜である。そ
のため、nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし
、nc-OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc-
OS膜は、CAAC-OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0468】
従って、nc-OS膜は、CAAC-OS膜と比べて、キャリア密度が高くなる場合が
ある。キャリア密度が高い酸化物半導体膜は、電子移動度が高くなる場合がある。従って
、nc-OS膜を用いたトランジスタは、高い電界効果移動度を有する場合がある。また
、nc-OS膜は、CAAC-OS膜と比べて、欠陥準位密度が高いため、キャリアトラ
ップが多くなる場合がある。従って、nc-OS膜を用いたトランジスタは、CAAC-
OS膜を用いたトランジスタと比べて、電気特性の変動が大きく、信頼性の低いトランジ
スタとなる。ただし、nc-OS膜は、比較的不純物が多く含まれていても形成すること
ができるため、CAAC-OS膜よりも形成が容易となり、用途によっては好適に用いる
ことができる場合がある。そのため、nc-OS膜を用いたトランジスタを有する半導体
装置は、生産性高く作製することができる場合がある。
【0469】
<微結晶酸化物半導体膜の作製方法>
次に、微結晶酸化物半導体膜の成膜方法について以下に説明する。微結晶酸化物半導体
膜は、室温以上75℃以下、好ましくは室温以上50℃以下であって、酸素を含む雰囲気
下にて、スパッタリング法によって成膜される。成膜雰囲気を酸素を含む雰囲気とするこ
とで、微結晶酸化物半導体膜中における酸素欠損を低減し、微結晶領域を含む膜とするこ
とができる。
【0470】
微結晶酸化物半導体膜において、酸素欠損を低減することで、物性の安定した膜とする
ことができる。特に、微結晶酸化物半導体膜を適用して半導体装置を作製する場合、微結
晶酸化物半導体膜における酸素欠損はドナーとなり、微結晶酸化物半導体膜中にキャリア
である電子を生成してしまい、半導体装置の電気的特性の変動要因となる。よって、酸素
欠損を低減された微結晶酸化物半導体膜を用いて半導体装置を作製することで、信頼性の
高い半導体装置とすることができる。
【0471】
なお、微結晶酸化物半導体膜において、成膜雰囲気の酸素分圧を高めると、酸素欠損が
より低減されうるため好ましい。より具体的には、成膜雰囲気における酸素分圧を33%
以上とすることが好ましい。
【0472】
なお、スパッタリング法により微結晶酸化物半導体膜を形成する際に用いるターゲット
は、CAAC-OSと同様のターゲット及びその作製方法を用いることができる。
【0473】
また、nc-OSは、比較的不純物が多く含まれていても形成することができるため、
CAAC-OSよりも形成が容易となり、用途によっては好適に用いることができる場合
がある。例えば、AC電源を用いたスパッタリング法などの成膜方法によってnc-OS
を形成してもよい。AC電源を用いたスパッタリング法は、大型基板へ均一性高く成膜す
ることが可能であるため、nc-OSをチャネル領域に用いたトランジスタを有する半導
体装置は生産性高く作製することができる。
【0474】
<非晶質酸化物半導体>
非晶質酸化物半導体は、例えば、原子配列が無秩序であり、結晶部を有さない。または
、非晶質酸化物半導体は、例えば、石英のような無定形状態を有し、原子配列に規則性が
見られない。
【0475】
非晶質酸化物半導体は、例えば、TEMによる観察像で、結晶部を確認することができ
ない場合がある。
【0476】
非晶質酸化物半導体は、XRD装置を用い、out-of-plane法による分析を
行うと、配向を示すピークが検出されない場合がある。また、非晶質酸化物半導体は、例
えば、電子線回折パターンでハローパターンが観測される場合がある。また、非晶質酸化
物半導体は、例えば、極微電子線回折パターンでスポットを観測することができず、ハロ
ーパターンが観測される場合がある。
【0477】
非晶質酸化物半導体は、例えば、水素などの不純物を高い濃度で含ませることにより形
成することができる場合がある。従って、非晶質酸化物半導体は、例えば、不純物を高い
濃度で含む酸化物半導体である。
【0478】
酸化物半導体に不純物が高い濃度で含まれると、酸化物半導体に酸素欠損などの欠陥準
位を形成する場合がある。従って、不純物濃度の高い非晶質酸化物半導体は、欠陥準位密
度が高い。また、非晶質酸化物半導体は、結晶性が低いためCAAC-OSやnc-OS
と比べて欠陥準位密度が高い。
【0479】
従って、非晶質酸化物半導体は、nc-OSと比べて、さらにキャリア密度が高くなる
場合がある。そのため、非晶質酸化物半導体をチャネル領域に用いたトランジスタは、ノ
ーマリーオンの電気特性になる場合がある。従って、ノーマリーオンの電気特性が求めら
れるトランジスタに好適に用いることができる場合がある。非晶質酸化物半導体は、欠陥
準位密度が高いため、トラップ準位密度も高くなる場合がある。従って、非晶質酸化物半
導体をチャネル領域に用いたトランジスタは、CAAC-OSやnc-OSをチャネル領
域に用いたトランジスタと比べて、電気特性の変動が大きく、信頼性の低いトランジスタ
となる場合がある。ただし、非晶質酸化物半導体は、比較的不純物が多く含まれてしまう
成膜方法によっても形成することができるため、形成が容易となり、用途によっては好適
に用いることができる場合がある。例えば、スピンコート法、ゾル-ゲル法、浸漬法、ス
プレー法、スクリーン印刷法、コンタクトプリント法、インクジェット印刷法、ロールコ
ート法、ミストCVD法などの成膜方法によって非晶質酸化物半導体を形成してもよい。
従って、非晶質酸化物半導体をチャネル領域に用いたトランジスタを有する半導体装置は
生産性高く作製することができる。
【0480】
なお、酸化物半導体は、例えば、欠陥が少ないと密度が高くなる。また、酸化物半導体
は、例えば、水素などの結晶性が高いと密度が高くなる。また、酸化物半導体は、例えば
、水素などの不純物濃度が低いと密度が高くなる。例えば、単結晶酸化物半導体は、CA
AC-OSよりも密度が高い場合がある。また、例えば、CAAC-OSは、微結晶酸化
物半導体よりも密度が高い場合がある。また、例えば、多結晶酸化物半導体は、微結晶酸
化物半導体よりも密度が高い場合がある。また、例えば、微結晶酸化物半導体は、非晶質
酸化物半導体よりも密度が高い場合がある。
【0481】
(実施の形態10)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を適用することのできる、ヒューマン
インターフェースについて説明する。特に、被検知体の近接または接触を検知可能なセン
サ(以降、タッチセンサと呼ぶ)の構成例について説明する。
【0482】
タッチセンサとしては、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性方式、赤外線方式、光学
方式など、様々な方式を用いることができる。
【0483】
静電容量方式のタッチセンサとしては、代表的には表面型静電容量方式、投影型静電容
量方式などがある。また、投影型静電容量方式としては、主に駆動方法の違いから、自己
容量方式、相互容量方式などがある。ここで、相互容量方式を用いると、同時に多点を検
出すること(多点検出(マルチタッチ)ともいう)が可能となるため好ましい。
【0484】
ここではタッチセンサについて詳細に説明するが、このほかに、カメラ(赤外線カメラ
を含む)等により、被検知体(例えば指や手など)の動作(ジェスチャ)や、使用者の視
点動作などを検知することのできるセンサを、ヒューマンインターフェースとして用いる
こともできる。
【0485】
<センサの検知方法の例>
図32(A)、(B)は、相互容量方式のタッチセンサの構成を示す模式図と、入出力
波形の模式図である。タッチセンサは一対の電極を備え、これらの間に容量が形成されて
いる。一対の電極のうち一方の電極に入力電圧が入力される。また、他方の電極に流れる
電流(または、他方の電極の電位)を検出する検出回路を備える。
【0486】
例えば
図32(A)に示すように、入力電圧の波形として矩形波を用いた場合、出力電
流波形として鋭いピークを有する波形が検出される。
【0487】
また
図32(B)に示すように、伝導性を有する被検知体が容量に近接または接触した
場合、電極間の容量値が減少するため、これに応じて出力の電流値が減少する。
【0488】
このように、入力電圧に対する出力電流(または電位)の変化を用いて、容量の変化を
検出することにより、被検知体の近接、または接触を検知することができる。
【0489】
<タッチセンサの構成例>
図32(C)は、マトリクス状に配置された複数の容量を備えるタッチセンサの構成例
を示す。
【0490】
タッチセンサは、X方向(紙面横方向)に延在する複数の配線と、これら複数の配線と
交差し、Y方向(紙面縦方向)に延在する複数の配線とを有する。交差する2つの配線間
には容量が形成される。
【0491】
また、X方向に延在する配線には、入力電圧または共通電位(接地電位、基準電位を含
む)のいずれか一方が入力される。また、Y方向に延在する配線には、検出回路(例えば
、ソースメータ、センスアンプなど)が電気的に接続され、当該配線に流れる電流(また
は電位)を検出することができる。
【0492】
タッチセンサは、X方向に延在する複数の配線に対して順に入力電圧が入力されるよう
に走査し、Y方向に延在する配線に流れる電流(または電位)の変化を検出することで、
被検知体の2次元的なセンシングが可能となる。
【0493】
<タッチパネルの構成例>
以下では、複数の画素を有する表示部とタッチセンサを備えるタッチパネルの構成例と
、該タッチパネルを電子機器に組み込む場合の例について説明する。
【0494】
図33(A)は、タッチパネルを備える電子機器の断面概略図である。
【0495】
電子機器3530は、筐体3531と、該筐体3531内に少なくともタッチパネル3
532、バッテリー3533、制御部3534を有する。またタッチパネル3532は制
御部3534と配線3535を介して電気的に接続される。制御部3534により表示部
への画像の表示やタッチセンサのセンシングの動作が制御される。またバッテリー353
3は制御部3534と配線3536を介して電気的に接続され、制御部3534に電力を
供給することができる。
【0496】
タッチパネル3532はその表示面側が筐体3531よりも外側に露出するように設け
られる。タッチパネル3532の露出した面に画像を表示すると共に、接触または近接す
る被検知体を検知することができる。
【0497】
図33(B)乃至(E)に、タッチパネルの構成例を示す。
【0498】
図33(B)に示すタッチパネル3532は、第1の基板3541と第2の基板354
3の間に表示部3542を備える表示パネル3540と、タッチセンサ3544を備える
第3の基板3545と、保護基板3546と、を備える。
【0499】
表示パネル3540としては、液晶素子、有機EL(Electro Lumines
cence)素子が適用された表示装置や、電子ペーパ等、様々な表示装置を適用できる
。なおタッチパネル3532は、表示パネル3540の構成に応じて、バックライトや偏
光板等を別途備えていてもよい。
【0500】
保護基板3546の一方の面に被検知体が接触または近接するため、少なくともその表
面は、機械的強度が高められていることが好ましい。例えばイオン交換法や風冷強化法等
により物理的、または化学的な処理が施され、その表面に圧縮応力を加えた強化ガラスを
保護基板3546に用いることができる。または、表面がコーティングされたプラスチッ
ク等の可撓性基板を用いることもできる。なお、保護基板3546上に保護フィルムや光
学フィルムを設けてもよい。
【0501】
タッチセンサ3544は、第3の基板3545の少なくとも一方の面に設けられる。ま
たは、タッチセンサ3544を構成する一対の電極を第3の基板3545の両面に形成し
てもよい。また、タッチパネルの薄型化のため、第3の基板3545として可撓性のフィ
ルムを用いてもよい。また、タッチセンサ3544は、一対の基板(フィルムを含む)に
挟持された構成としてもよい。
【0502】
図33(B)では、保護基板3546とタッチセンサ3544を備える第3の基板とが
接着層3547で接着されている構成を示しているが、必ずしもこれらは接着されていな
くてもよい。また、第3の基板3545と表示パネル3540とを接着層により接着する
構成としてもよい。
【0503】
図33(B)に示すタッチパネル3532は、表示パネルと、タッチセンサを備える基
板とが独立して設けられている。このような構成を有するタッチパネルを外付け型のタッ
チパネルとも呼べる。このような構成とすることにより、表示パネルとタッチセンサを備
える基板とをそれぞれ別途作製し、これらを重ねることで表示パネルにタッチセンサの機
能を付加することができるため、特別な作製工程を経ることなく容易にタッチパネルを作
製することができる。
【0504】
図33(C)に示すタッチパネル3532は、タッチセンサ3544が第2の基板35
43の保護基板3546側の面に設けられている。このような構成を有するタッチパネル
をオンセル型のタッチパネルとも呼べる。このような構成とすることにより、必要な基板
の枚数を低減できるため、タッチパネルの薄型化及び軽量化を実現できる。
【0505】
図33(D)に示すタッチパネル3532は、タッチセンサ3544が保護基板354
6の一方の面に設けられている。このような構成とすることにより、表示パネルとタッチ
センサをそれぞれ別途作製することができるため、容易にタッチパネルを作製することが
できる。さらに、必要な基板の枚数を低減できるため、タッチパネルの薄型化及び軽量化
を実現できる。
【0506】
図33(E)に示すタッチパネル3532は、タッチセンサ3544が表示パネル35
40の一対の基板の内側に設けられている。このような構成を有するタッチパネルをイン
セル型のタッチパネルとも呼べる。このような構成とすることにより、必要な基板の枚数
を低減できるため、タッチパネルの薄型化及び軽量化を実現できる。このようなタッチパ
ネルは、例えば、表示部3542が備えるトランジスタや配線、電極などにより第1の基
板3541上または第2の基板3543上にタッチセンサとして機能する回路を作り込む
ことにより実現できる。また、光学式のタッチセンサを用いる場合には、光電変換素子を
備える構成としてもよい。
【0507】
<インセル型のタッチパネルの構成例>
以下では、複数の画素を有する表示部にタッチセンサを組み込んだタッチパネルの構成
例について説明する。ここでは、画素に設けられる表示素子として、液晶素子を適用した
例を示す。
【0508】
図34(A)は、本構成例で例示するタッチパネルの表示部に設けられる画素回路の一
部における等価回路図である。
【0509】
一つの画素は少なくともトランジスタ3503と液晶素子3504を有する。またトラ
ンジスタ3503のゲートに配線3501が、ソースまたはドレインの一方には配線35
02が、それぞれ電気的に接続されている。
【0510】
画素回路は、X方向に延在する複数の配線(例えば、配線3510_1、配線3510
_2)と、Y方向に延在する複数の配線(例えば、配線3511)を有し、これらは互い
に交差して設けられ、その間に容量が形成される。
【0511】
また、画素回路に設けられる画素のうち、一部の隣接する複数の画素は、それぞれに設
けられる液晶素子の一方の電極が電気的に接続され、一つのブロックを形成する。当該ブ
ロックは、島状のブロック(例えば、ブロック3515_1、ブロック3515_2)と
、Y方向に延在するライン状のブロック(例えば、ブロック3516)の、2種類に分類
される。なお、
図34では、画素回路の一部のみを示しているが、実際にはこれら2種類
のブロックがX方向及びY方向に繰り返し配置される。
【0512】
X方向に延在する配線3510_1(または3510_2)は、島状のブロック351
5_1(またはブロック3515_2)と電気的に接続される。なお、図示しないが、X
方向に延在する配線3510_1は、ライン状のブロックを介してX方向に沿って不連続
に配置される複数の島状のブロック3515_1を電気的に接続する。また、Y方向に延
在する配線3511は、ライン状のブロック3516と電気的に接続される。
【0513】
図34(B)は、X方向に延在する複数の配線3510と、Y方向に延在する複数の配
線3511の接続構成を示した等価回路図である。X方向に延在する配線3510の各々
には、入力電圧または共通電位を入力することができる。また、Y方向に延在する配線3
511の各々には接地電位を入力する、または配線3511と検出回路と電気的に接続す
ることができる。
【0514】
<タッチパネルの動作例>
以下、
図35を用いて、上述したタッチパネルの動作について説明する。
【0515】
図35(A)に示すように1フレーム期間を、書き込み期間と検知期間とに分ける。書
き込み期間は画素への画像データの書き込みを行う期間であり、配線3510(ゲート線
ともいう)が順次選択される。一方、検知期間は、タッチセンサによるセンシングを行う
期間であり、X方向に延在する配線3510が順次選択され、入力電圧が入力される。
【0516】
図35(B)は、書き込み期間における等価回路図である。書き込み期間では、X方向
に延在する配線3510と、Y方向に延在する配線3511の両方に、共通電位が入力さ
れる。
【0517】
図35(C)は、検知期間のある時点における等価回路図である。検知期間では、Y方
向に延在する配線3511の各々は、検出回路と電気的に接続する。また、X方向に延在
する配線3510のうち、選択されたものには入力電圧が入力され、それ以外のものには
共通電位が入力される。
【0518】
このように、画像の書き込み期間とタッチセンサによるセンシングを行う期間とを、独
立して設けることが好ましい。これにより、画素の書き込み時のノイズに起因するタッチ
センサの感度の低下を抑制することができる。
【0519】
(実施の形態11)
本実施の形態では、表示装置の消費電力を低減するための駆動方法について説明する。
本実施の形態の駆動方法により、画素に酸化物半導体トランジスタを適用した表示装置の
更なる低消費電力化を図ることができる。以下、
図36及び
図37を用いて、表示装置の
一例である液晶表示装置の低消費電力化について説明する。
【0520】
図36は、本実施の形態の液晶表示装置の構成例を示すブロック図である。
図36に示
すように、液晶表示装置500は、表示モジュールとして液晶パネル501を有し、更に
、制御回路510及びカウンタ回路を有する。
【0521】
液晶表示装置500には、デジタルデータである画像信号(Video)、及び液晶パ
ネル501の画面の書き換えを制御するための同期信号(SYNC)が入力される。同期
信号としては、例えば水平同期信号(Hsync)、垂直同期信号(Vsync)、及び
基準クロック信号(CLK)等がある。
【0522】
液晶パネル501は、表示部530、走査線駆動回路540、及びデータ線駆動回路5
50を有する。表示部530は、複数の画素531を有する。同じ行の画素531は、共
通の走査線541により走査線駆動回路540に接続され、同じ列の画素531は共通の
データ線551によりデータ線駆動回路550に接続されている。
【0523】
液晶パネル501には、コモン電圧(Vcom)、並びに電源電圧として高電源電圧(
VDD)及び低電源電圧(VSS)が供給される。コモン電圧(Vcom)は、表示部5
30の各画素531に供給される。
【0524】
データ線駆動回路550は、入力された画像信号を処理し、データ信号を生成し、デー
タ線551にデータ信号を出力する。走査線駆動回路540は、データ信号が書き込まれ
る画素531を選択する走査信号を走査線541に出力する。
【0525】
画素531は、走査信号により、データ線551との電気的接続が制御されるスイッチ
ング素子を有する。スイッチング素子がオンとなると、データ線551から画素531に
データ信号が書き込まれる。
【0526】
Vcomが印加される電極が共通電極に相当する。
【0527】
制御回路510は、液晶表示装置500全体を制御する回路であり、液晶表示装置50
0を構成する回路の制御信号を生成する回路を備える。
【0528】
制御回路510は、同期信号(SYNC)から、走査線駆動回路540及びデータ線駆
動回路550の制御信号を生成する制御信号生成回路を有する。走査線駆動回路540の
制御信号として、スタートパルス(GSP)、クロック信号(GCLK)等があり、デー
タ線駆動回路550の制御信号として、スタートパルス(SSP)、クロック信号(SC
LK)等がある。例えば、制御回路510は、クロック信号(GCLK、SCLK)とし
て、周期が同じで位相がシフトされた複数のクロック信号を生成する。
【0529】
また、制御回路510は、液晶表示装置500外部から入力される画像信号(Vide
o)のデータ線駆動回路550への出力を制御する。
【0530】
データ線駆動回路550は、デジタル/アナログ変換回路(以下、D-A変換回路55
2と呼ぶ。)を有する。D-A変換回路552は、画像信号をアナログ変換し、データ信
号を生成する。
【0531】
なお、液晶表示装置500に入力される画像信号がアナログ信号である場合は、制御回
路510でデジタル信号に変換し、液晶パネル501へ出力する。
【0532】
画像信号は、フレーム毎の画像データでなる。制御回路510は、画像信号を画像処理
し、その処理で得られた情報を元に、データ線駆動回路550への画像信号の出力を制御
する機能を有する。そのため、制御回路510は、フレーム毎の画像データから動きを検
出する動き検出部511を備える。動き検出部511おいて、動きが無いと判定されると
、制御回路510はデータ線駆動回路550への画像信号の出力を停止し、また動きが有
ると判定すると画像信号の出力を再開する。
【0533】
動き検出部511で行う動き検出のための画像処理としては、特段の制約は無い。例え
ば、動き検出方法としては、例えば、連続する2つフレーム間の画像データから差分デー
タを得る方法がある。得られた差分データから動きの有無を判断することができる。また
、動きベクトルを検出する方法等もある。
【0534】
また、液晶表示装置500は、入力された画像信号を補正する画像信号補正回路を設け
ることができる。例えば、画像信号の階調に対応する電圧よりも高い電圧が画素531に
書き込まれるように、画像信号を補正する。このような補正を行うことで液晶素子の応答
時間を短くすることができる。このように画像信号を補正処理して制御回路510を駆動
する方法は、オーバードライブ駆動と呼ばれている。また、画像信号のフレーム周波数の
整数倍で液晶表示装置500を駆動する倍速駆動を行う場合には、制御回路510で2つ
のフレーム間を補間する画像データを作成する、或いは2つのフレーム間で黒表示を行う
ための画像データを生成すればよい。
【0535】
以下、
図37に示すタイミングチャートを用いて、動画像のように動きのある画像と、
静止画のように動きの無い画像を表示するための液晶表示装置500の動作を説明する。
図37には、垂直同期信号(Vsync)、及びデータ線駆動回路550からデータ線5
51に出力されるデータ信号(Vdata)の信号波形を示す。
【0536】
図37は、3mフレーム期間の液晶表示装置500のタイミングチャートである。ここ
では、はじめのkフレーム期間及び終わりのjフレーム期間の画像データには動きがあり
、その他のフレーム期間の画像データには動きが無いとする。なお、k、jはそれぞれ1
以上m-2以下の整数である。
【0537】
最初のkフレーム期間は、動き検出部511において、各フレームの画像データに動き
があると判定される。制御回路510では、動き検出部511の判定結果に基づき、デー
タ信号(Vdata)をデータ線551に出力する。
【0538】
そして、動き検出部511では、動き検出のための画像処理を行い、第k+1フレーム
の画像データに動きが無いと判定すると、制御回路510では、動き検出部511の判定
結果に基づき、第k+1フレーム期間に、データ線駆動回路550への画像信号(Vid
eo)の出力を停止する。よって、データ線駆動回路550からデータ線551へのデー
タ信号(Vdata)の出力が停止される。さらに、表示部530の書換えを停止するた
め、走査線駆動回路540及びデータ線駆動回路550への制御信号(スタートパルス信
号、クロック信号等)の供給を停止する。そして、制御回路510では、動き検出部51
1で、画像データに動きがあるとの判定結果が得られるまで、データ線駆動回路550へ
の画像信号の出力、走査線駆動回路540及びデータ線駆動回路550への制御信号の出
力を停止し、表示部530の書換えを停止する。
【0539】
なお、本明細書において、液晶パネルに信号を「供給しない」とは、当該信号を供給す
る配線へ回路を動作させるための所定の電圧とは異なる電圧を印加すること、または当該
配線を電気的に浮遊状態にすることを指すこととする。
【0540】
表示部530の書換えを停止すると、液晶素子に同じ方向の電界が印加され続けること
になり、液晶素子の液晶が劣化するおそれがある。このような問題が顕在化する場合は、
動き検出部511の判定結果に関わらず、所定のタイミングで、制御回路510から走査
線駆動回路540及びデータ線駆動回路550へ信号を供給し、極性を反転させたデータ
信号をデータ線551に書き込み、液晶素子に印加される電界の向きを反転させるとよい
。
【0541】
なお、データ線551に入力されるデータ信号の極性はVcomを基準に決定される。
その極性は、データ信号の電圧がVcomより高い場合は正の極性であり、低い場合は負
の極性である。
【0542】
具体的には、
図37に示すように、第m+1フレーム期間になると、制御回路510は
、走査線駆動回路540及びデータ線駆動回路550へ制御信号を出力し、データ線駆動
回路550へ画像信号Videoを出力する。データ線駆動回路550は、第kフレーム
期間においてデータ線551に出力されたデータ信号(Vdata)に対して極性が反転
したデータ信号(Vdata)をデータ線551に出力する。よって、画像データに動き
が検出されない期間である第m+1フレーム期間、及び第2m+1フレーム期間に、極性
が反転されたデータ信号(Vdata)がデータ線551に書き込まれる。画像データに
変化が無い期間は、表示部530の書換えが間欠的に行われるため、書換えによる電力消
費を削減しつつ、液晶素子の劣化を防止することができる。
【0543】
そして、動き検出部511において、第2m+1フレーム以降の画像データに動きがあ
ると判定すると、制御回路510は、走査線駆動回路540及びデータ線駆動回路550
を制御し、表示部530の書換えを行う。
【0544】
以上述べたように、
図37の駆動方法によると、画像データ(Video)の動きの有
無に関わらず、データ信号(Vdata)は、mフレーム期間毎に極性が反転される。他
方、表示部530の書換えについては、動きを含む画像の表示期間は、1フレーム毎に表
示部530が書き換えられ、動きがない画像の表示期間は、mフレーム毎に表示部530
が書き換えられることになる。その結果、表示部の書換えに伴う電力消費を削減すること
ができる。よって、駆動周波数及び画素数の増加による電力消費の増加の抑えることがで
きる。
【0545】
上述したように、液晶表示装置500では、動画を表示するモードと、静止画を表示す
るモードで、液晶表示装置の駆動方法を異ならせることで、液晶の劣化を抑制して表示品
位を維持しつつ、省電力な液晶表示装置を提供することが可能になる。
【0546】
また、静止画を表示する場合、1フレーム毎に画素を書換えると、人の目は画素の書換
えをちらつきとして感じることがあり、それが疲れ目の原因となる。本実施の形態の液晶
表示装置は、静止画の表示期間では画素の書換え頻度が少ないので、疲れ目の軽減に有効
である。
【0547】
従って、酸化物半導体トランジスタでバックプレーンを形成した液晶パネルを用いるこ
とで、携帯用電子機器に非常に適した、高精細、低消費電力の中小型液晶表示装置を提供
することが可能である。
【0548】
なお、液晶の劣化を防ぐため、データ信号の極性反転の間隔(ここでは、mフレーム期
間)は2秒以下とし、好ましくは1秒以下とするとよい。
【0549】
また、画像データの動き検出を制御回路510の動き検出部511で行ったが、動き検
出は動き検出部511のみで行う必要は無い。動きの有無のデータを液晶表示装置500
の外部から制御回路510へ入力するようにしてもよい。
【0550】
また、画像データに動きが無いと判定する条件は連続する2つのフレーム間の画像デー
タによるものではなく、判定に必要なフレーム数は、液晶表示装置500の使用形態によ
り、適宜決定することができる。例えば、連続するmフレームの画像データに動きが無い
場合に、表示部530の書換えを停止させてもよい。
【0551】
なお、本実施の形態では、表示装置として、液晶表示装置を用いて説明したが、本実施
の形態の駆動方法を他の表示装置、例えば発光表示装置等に用いることができる。
【0552】
なお、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態及び実施例に示す構成
及び方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0553】
(実施の形態12)
本発明の一態様である半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む。)に適用す
ることができる。電子機器としては、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受
信機ともいう。)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメ
ラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装
置、遊技機(パチンコ機、スロットマシン等)、ゲーム筐体が挙げられる。これらの電子
機器の一例を
図38に示す。
【0554】
図38(A)は、表示部を有するテーブル9000を示している。テーブル9000は
、筐体9001に表示部9003が組み込まれており、表示部9003により映像を表示
することが可能である。なお、4本の脚部9002により筐体9001を支持した構成を
示している。また、電力供給のための電源コード9005を筐体9001に有している。
【0555】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9003に用いることが可能で
ある。それゆえ、表示部9003の表示品位を高くすることができる。
【0556】
表示部9003は、タッチ入力機能を有しており、テーブル9000の表示部9003
に表示された表示ボタン9004を指などで触れることで、画面操作や、情報を入力する
ことができ、また他の家電製品との通信を可能とする、または制御を可能とすることで、
画面操作により他の家電製品をコントロールする制御装置としてもよい。例えば、イメー
ジセンサ機能を有する半導体装置を用いれば、表示部9003にタッチ入力機能を持たせ
ることができる。
【0557】
また、筐体9001に設けられたヒンジによって、表示部9003の画面を床に対して
垂直に立てることもでき、テレビジョン装置としても利用できる。狭い部屋においては、
大きな画面のテレビジョン装置は設置すると自由な空間が狭くなってしまうが、テーブル
に表示部が内蔵されていれば、部屋の空間を有効に利用することができる。
【0558】
図38(B)は、テレビジョン装置9100を示している。テレビジョン装置9100
は、筐体9101に表示部9103が組み込まれており、表示部9103により映像を表
示することが可能である。なお、ここではスタンド9105により筐体9101を支持し
た構成を示している。
【0559】
テレビジョン装置9100の操作は、筐体9101が備える操作スイッチや、別体のリ
モコン操作機9110により行うことができる。リモコン操作機9110が備える操作キ
ー9109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部9103に表示さ
れる映像を操作することができる。また、リモコン操作機9110に、当該リモコン操作
機9110から出力する情報を表示する表示部9107を設ける構成としてもよい。
【0560】
図38(B)に示すテレビジョン装置9100は、受信機やモデムなどを備えている。
テレビジョン装置9100は、受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、
さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一
方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など
)の情報通信を行うことも可能である。
【0561】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9103、9107に用いるこ
とが可能である。それゆえ、テレビジョン装置の表示品位を向上させることができる。
【0562】
図38(C)はコンピュータ9200であり、本体9201、筐体9202、表示部9
203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングデバイス920
6などを含む。
【0563】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9203に用いることが可能で
ある。それゆえ、コンピュータ9200の表示品位を向上させることができる。
【0564】
表示部9203は、タッチ入力機能を有しており、コンピュータ9200の表示部92
03に表示された表示ボタンを指などで触れることで、画面操作や、情報を入力すること
ができ、また他の家電製品との通信を可能とする、または制御を可能とすることで、画面
操作により他の家電製品をコントロールする制御装置としてもよい。
【0565】
図39(A)及び
図39(B)は2つ折り可能なタブレット型端末である。
図39(A
)は、開いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a、表示
部9631b、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省電力モ
ード切り替えスイッチ9036、留め具9033、操作スイッチ9038、を有する。
【0566】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9631a、表示部9631b
に用いることが可能である。それゆえ、タブレット端末の表示品位を向上させることがで
きる。
【0567】
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示さ
れた操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部96
31aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領
域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部96
31aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9
631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表
示画面として用いることができる。
【0568】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一
部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボー
ド表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれること
で表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
【0569】
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時に
タッチ入力することもできる。
【0570】
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示または横表示などの表示の向き
を切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替え
スイッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外
光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光セ
ンサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置
を内蔵させてもよい。
【0571】
また、
図39(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示
しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表
示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネ
ルとしてもよい。
【0572】
図39(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9
633、充放電制御回路9634を有する。なお、
図39(B)では充放電制御回路96
34の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する構成につい
て示している。
【0573】
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態
にすることができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、
耐久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
【0574】
また、この他にも
図39(A)及び
図39(B)に示したタブレット型端末は、様々な
情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付または時刻
などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作または編集するタ
ッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有
することができる。
【0575】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル
、表示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は
、筐体9630の片面または両面に設けることができ、バッテリー9635の充電を効率
的に行う構成とすることができるため好適である。なおバッテリー9635としては、リ
チウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0576】
また、
図39(B)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について
図39(
C)にブロック図を示し説明する。
図39(C)には、太陽電池9633、バッテリー9
635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3
、表示部9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ963
6、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、
図39(B)に示す充放電制御
回路9634に対応する箇所となる。
【0577】
まず、外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明す
る。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようD
CDCコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作
に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバー
タ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表
示部9631での表示を行わない際には、スイッチSW1をオフにし、スイッチSW2を
オンにしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
【0578】
なお、太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず
、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段による
バッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を
送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う
構成としてもよい。
【0579】
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて
用いることができる。
【実施例0580】
本実施例では、トランジスタのVg-Id特性、及び光BTストレス試験の測定結果に
ついて説明する。
【0581】
はじめに、試料1に含まれるトランジスタの作製工程について説明する。本実施例では
図2を参照して説明する。
【0582】
まず、
図2(A)に示すように、基板11としてガラス基板を用い、基板11上にゲー
ト電極15を形成した。
【0583】
スパッタリング法で厚さ100nmのタングステン膜を形成し、フォトリソグラフィ工
程により該タングステン膜上にマスクを形成し、該マスクを用いて該タングステン膜の一
部をエッチングし、ゲート電極15を形成した。
【0584】
次に、ゲート電極15上にゲート絶縁膜17(
図40のGIに相当)を形成した。
【0585】
ゲート絶縁膜17として、厚さ50nmの第1の窒化シリコン膜、厚さ200nmの酸
化窒化シリコン膜を積層して形成した。
【0586】
窒化シリコン膜は、流量50sccmのシラン及び流量5000sccmの窒素を原料
ガスとしてプラズマCVD装置の処理室に供給し、処理室内の圧力を60Paに制御し、
27.12MHzの高周波電源を用いて150Wの電力を供給して、形成した。
【0587】
次に、流量20sccmのシラン、流量3000sccmの一酸化二窒素を原料ガスと
してプラズマCVD装置の処理室に供給し、処理室内の圧力を40Paに制御し、27.
12MHzの高周波電源を用いて100Wの電力を供給して、酸化窒化シリコン膜を形成
した。
【0588】
なお、窒化シリコン膜及び酸化窒化シリコン膜の成膜工程において、基板温度を350
℃とした。
【0589】
次に、ゲート絶縁膜17を介してゲート電極15に重なる酸化物半導体膜18を形成し
た。
【0590】
ここでは、ゲート絶縁膜17上に厚さ35nmの酸化物半導体膜をスパッタリング法で
形成した。次に、フォトリソグラフィ工程により酸化物半導体膜上にマスクを形成し、該
マスクを用いて酸化物半導体膜の一部をエッチングし、酸化物半導体膜18(
図40のS
1に相当)を形成した。
【0591】
酸化物半導体膜(S1)は、スパッタリングターゲットをIn:Ga:Zn=1:1:
1(原子数比)のターゲットとし、流量100sccmのアルゴン及び流量100scc
mの酸素をスパッタリングガスとしてスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内
の圧力を0.6Paに制御し、5kWの直流電力を供給して形成した。なお、酸化物半導
体膜を形成する際の基板温度を170℃とした。
【0592】
ここまでの工程で得られた構成は
図2(B)を参照できる。
【0593】
次に、ゲート絶縁膜17の一部をエッチングしてゲート電極を露出した後(図示しない
。)、
図2(C)に示すように、酸化物半導体膜18に接する一対の電極21、22を形
成した。
【0594】
ここでは、ゲート絶縁膜17及び酸化物半導体膜18上に導電膜を形成した。該導電膜
として、厚さ50nmのタングステン膜上に厚さ400nmのアルミニウム膜を形成し、
該アルミニウム膜上に厚さ100nmのチタン膜を形成した。次に、フォトリソグラフィ
工程により該導電膜上にマスクを形成し、該マスクを用いて該導電膜の一部をウエットエ
ッチングし、一対の電極21、22を形成した。
【0595】
次に、減圧された処理室に基板を移動し、350℃で加熱した後、処理室に設けられる
上部電極に27.12MHzの高周波電源を用いて150Wの高周波電力を供給して、一
酸化二窒素雰囲気で発生させた酸素プラズマに酸化物半導体膜18を曝した。
【0596】
次に、酸化物半導体膜18及び一対の電極21、22上に保護膜26を形成した(
図2
(D)参照)。ここでは、保護膜26として、酸化物絶縁膜23(
図40のP1に相当)
、酸化物絶縁膜24(
図40のP2に相当)を形成した。
【0597】
まず、上記プラズマ処理の後、大気に曝すことなく、連続的に酸化物絶縁膜23及び酸
化物絶縁膜24を形成した。酸化物絶縁膜23として厚さ10nmの酸化窒化シリコン膜
を形成し、酸化物絶縁膜24として厚さ390nmの酸化窒化シリコン膜を形成した。
【0598】
酸化物絶縁膜23は、流量20sccmのシラン及び流量3000sccmの一酸化二
窒素を原料ガスとし、処理室の圧力を200Pa、基板温度を350℃とし、100Wの
高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマCVD法により形成した。
【0599】
酸化物絶縁膜24は、流量160sccmのシラン及び流量4000sccmの一酸化
二窒素を原料ガスとし、処理室の圧力を200Pa、基板温度を220℃とし、1500
Wの高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマCVD法により形成した。当該条件に
より、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱
離する酸化窒化シリコン膜を形成することができる。
【0600】
次に、加熱処理を行い、酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜24から水、窒素、水素等
を脱離させると共に、酸化物絶縁膜24に含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜18へ供
給した。ここでは、窒素及び酸素雰囲気で、350℃、1時間の加熱処理を行った。
【0601】
次に、図示しないが、保護膜26の一部をエッチングして、一対の電極21、22の一
部を露出する開口部を形成した。
【0602】
次に、保護膜26上に平坦化膜を形成した(図示しない)。ここでは、組成物を保護膜
26上に塗布した後、露光及び現像を行って、一対の電極の一部を露出する開口部を有す
る平坦化膜を形成した。なお、平坦化膜として厚さ1.5μmのアクリル樹脂を形成した
。こののち、加熱処理を行った。当該加熱処理は、温度を250℃とし、窒素を含む雰囲
気で1時間行った。
【0603】
次に、一対の電極の一部に接続する導電膜を形成した(図示しない)。ここでは、スパ
ッタリング法により厚さ100nmの酸化シリコンを含むITOを形成した。この後、窒
素雰囲気で、250℃、1時間の加熱処理を行った。
【0604】
以上の工程により、トランジスタを有する試料1を作製した。
【0605】
また、試料1のトランジスタにおいて、ゲート絶縁膜17として、厚さ50nmの第1
の窒化シリコン膜、厚さ300nmの第2の窒化シリコン膜、厚さ50nmの第3の窒化
シリコン膜、及び厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜を積層して形成した。また、酸化物
半導体膜18の代わりに、厚さ35nmの酸化物半導体膜(
図40のS1に相当)及び厚
さ10nmの酸化物膜(
図40のS2に相当)が積層された多層膜を形成した。また、一
対の電極を形成した後、85%のリン酸を100倍に希釈したリン酸水溶液で多層膜の表
面の洗浄処理を行った。また、保護膜26として、厚さ10nmの酸化物絶縁膜23、厚
さ400nmの酸化物絶縁膜24、及び厚さ100nmの窒化シリコン膜で形成される窒
化物絶縁膜25(
図40のP3に相当)を積層して形成した。このような構造の試料を試
料2とする。
【0606】
試料2において、ゲート絶縁膜17を構成する第1の窒化シリコン膜乃至第3の窒化シ
リコン膜の成膜条件を以下に示す。
【0607】
第1の窒化シリコン膜は、流量200sccmのシラン、流量2000sccmの窒素
、及び流量100sccmのアンモニアを原料ガスとしてプラズマCVD装置の処理室に
供給し、処理室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて
2000Wの電力を供給して形成した。
【0608】
次に、第1の窒化シリコン膜の原料ガスの条件において、アンモニアの流量を2000
sccmに変更して、第2の窒化シリコン膜を形成した。
【0609】
次に、流量200sccmのシラン及び流量5000sccmの窒素を原料ガスとして
プラズマCVD装置の処理室に供給し、処理室内の圧力を100Paに制御し、27.1
2MHzの高周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、第3の窒化シリコン膜を形
成した。
【0610】
試料2において、酸化物半導体膜18に接する酸化物膜(S2)の成膜条件を以下に示
す。酸化物膜(S2)は、スパッタリングターゲットをIn:Ga:Zn=1:3:2(
原子数比)のターゲットとし、スパッタリングガスとして180sccmのArと20s
ccmの酸素をスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0.6Paに
制御し、5kWの直流電力を供給して形成した。なお、酸化物膜を形成する際の基板温度
を170℃とした。
【0611】
試料2において、窒化物絶縁膜25(
図40のP3に相当)の成膜条件を以下に示す。
窒化物絶縁膜25は、流量50sccmのシラン、流量5000sccmの窒素、及び流
量100sccmのアンモニアを原料ガスとし、処理室の圧力を100Pa、基板温度を
350℃とし、1000Wの高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマCVD法によ
り形成した。
【0612】
また、試料1のトランジスタにおいて、ゲート絶縁膜17として、試料2と同様の構造
及び条件を用いて形成した。また、酸化物半導体膜18を形成した後、450℃で加熱処
理をした。また、試料2と同様に、一対の電極を形成した後、85%のリン酸を100倍
に希釈したリン酸水溶液で酸化物半導体膜18の表面に洗浄処理を行った。また、酸化物
絶縁膜23の膜厚を50nmとした。また、酸化物絶縁膜23(
図40のP1に相当)の
成膜条件において、成膜温度を220℃とした。また、保護膜として、試料2と同様に、
酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜24、及び窒化物絶縁膜25(
図40のP3に相当)を
積層して形成した。このような構造の試料を比較試料1とする。
【0613】
また、比較試料1において、酸化物半導体膜18を形成した後の加熱処理温度を350
℃とした試料を比較試料2とする。
【0614】
また、比較試料1において、酸化物半導体膜18の代わりに、試料2と同様の構造及び
条件を用いて、酸化物半導体膜18及び酸化物膜の多層膜を設けた試料を比較試料3とす
る。
【0615】
なお、各試料に含まれるトランジスタは、チャネル長(L)が6μm、チャネル幅(W
)が50μmである。
【0616】
<Vg-Id特性>
次に、試料1及び試料2、並びに比較試料1及び比較試料2に含まれるトランジスタの
初期特性としてVg-Id特性を測定した。ここでは、基板温度を25℃とし、ソース-
ドレイン間の電位差(以下、ドレイン電圧という。)を1V、10Vとし、ソース-ゲー
ト電極間の電位差(以下、ゲート電圧という。)を-15V~+15Vまで変化させたと
きのソース-ドレイン間に流れる電流(以下、ドレイン電流という。)の変化特性、すな
わちVg-Id特性を測定した。
【0617】
図40に、それぞれの試料に含まれるトランジスタのVg-Id特性を示す。
図40に
示す各グラフにおいて、横軸はゲート電圧Vg、縦縦軸はドレイン電流Idを表し、右縦
軸は電界効果移動度を表す。なお、横軸は-15Vから15Vとして示した。また、実線
はそれぞれ、ドレイン電圧Vdが1V、10VのときのVg-Id特性であり、破線はド
レイン電圧Vdを10Vとしたときのゲート電圧に対する電界効果移動度を表す。なお、
当該電界効果移動度は各試料の飽和領域での結果である。
【0618】
また、各試料において、基板内に同じ構造のトランジスタを20個作製した。
【0619】
図40より、試料1及び試料2、並びに比較試料1及び比較試料2それぞれにおいて、
良好なスイッチング特性が得られていることが分かる。
【0620】
次に、試料1及び試料2、並びに比較試料1及び比較試料2のBTストレス試験及び光
BTストレス試験を行った。BTストレス試験は加速試験の一種であり、長期間の使用に
よって起こるトランジスタの特性変化(即ち、経時変化)を短時間で評価することができ
る。BTストレス試験前後におけるトランジスタの特性の変動量を調べることは、信頼性
を調べるための重要な指標となる。
【0621】
<ゲートBTストレス試験及び光ゲートBTストレス試験>
はじめに、ゲートBTストレス試験及び光ゲートBTストレス試験を行った。
【0622】
ここで、ゲートBTストレス試験の測定方法について説明する。はじめに、上記のよう
にトランジスタの初期特性におけるVg-Id特性を測定する。
【0623】
次に、基板温度を任意の温度(以下、ストレス温度という。)を一定に維持し、トラン
ジスタのソース及びドレインとして機能する一対の電極を同電位とし、ソース電極及びド
レイン電極として機能する一対の電極とは異なる電位をゲート電極に一定時間(以下、ス
トレス時間という。)印加する。次に、基板温度を適宜設定し、トランジスタの電気特性
を測定する。この結果、ゲートBTストレス試験前後の電気特性における閾値電圧及びシ
フト値の差を、変動量として得ることができる。
【0624】
なお、ゲート電極に負の電圧を印加するストレス試験をマイナスゲートBTストレス試
験(Dark -GBT)といい、正の電圧を印加するストレス試験をプラスゲートBT
ストレス試験(Dark +GBT)という。また、光を照射しつつゲート電極に負の電
圧を印加するストレス試験を光マイナスゲートBTストレス試験(Photo -GBT
)といい、正の電圧を印加するストレス試験を光プラスゲートBTストレス試験(Pho
to +GBT)という。
【0625】
ここでは、ゲートBTストレス条件として、ストレス温度を60℃、ストレス時間を3
600秒とし、ゲート電極に-30Vまたは+30V、ソース電極及びドレイン電極に0
V印加した。このときの、ゲート絶縁膜に印加する電界強度を0.66MV/cmとした
。
【0626】
また、上記BTストレス試験と同様の条件を用い、10000lxの白色LED光をト
ランジスタに照射して、光ゲートBTストレス試験を行った。なお、BTストレス試験後
のトランジスタのVg-Id特性の測定温度を60℃とした。
【0627】
試料1及び試料2、並びに比較試料1及び比較試料2に含まれるトランジスタの初期特
性のしきい値電圧とBTストレス試験後のしきい値電圧の差(即ち、しきい値電圧の変動
量(ΔVth))、シフト値の差(即ち、シフト値の変動量(ΔShift))を
図41
(A)に示す。
図41(A)において、プラスゲートBTストレス試験(Dark +G
BT)、マイナスゲートBTストレス試験(Dark -GBT)、光プラスゲートBT
ストレス試験(Photo +GBT)、光マイナスゲートBTストレス試験(Phot
o -GBT)それぞれの変動量を示す。
【0628】
次に、ストレス温度を変えて、ストレス試験を行った。ここでは、上記ゲートBTスト
レス試験の条件において、ストレス温度を125℃として、ゲートBTストレス試験を行
った。なお、ゲートBTストレス試験後のトランジスタのVg-Id特性の測定温度を4
0℃とした。
【0629】
試料1及び試料2、並びに比較試料1及び比較試料2に含まれるしきい値電圧の変動量
(ΔVth)、シフト値の変動量(ΔShift)を
図41(B)に示す。
図41(B)
において、プラスゲートBTストレス試験(Dark +GBT)、マイナスゲートBT
ストレス試験(Dark -GBT)それぞれの変動量を示す。
【0630】
ここで、本明細書におけるしきい値電圧及びシフト値について
図42を用いて説明する
。
【0631】
本明細書中において、しきい値電圧(Vth)は、ゲート電圧(Vg[V])を横軸、
ドレイン電流の平方根(Id
1/2[A])を縦軸としてプロットした曲線612におい
て、最大傾きであるId
1/2の接線614を外挿したときの、接線614とVg軸(即
ち、Id
1/2が0A)との交点のゲート電圧で定義する(
図42(A)参照)。なお、
本明細書中においては、ドレイン電圧Vdを10Vとして、しきい値電圧を算出する。ま
た、本明細書において、しきい値電圧(Vth)は、各試料に含まれる20個のトランジ
スタそれぞれのVthの平均値である。
【0632】
また、本明細書中において、シフト値(Shift)は、ゲート電圧(Vg[V])を
横軸、ドレイン電流(Id[A])の対数を縦軸にプロットした曲線616において、最
大傾きであるIdの接線618を外挿したときの直線Id=1.0×10
-12[A]と
の交点のゲート電圧で定義する(
図42(B)参照)。なお、本明細書中においては、ド
レイン電圧Vdを10Vとして、シフト値を算出する。また、本明細書において、シフト
値は、各試料に含まれる20個のトランジスタそれぞれのシフト値の平均値である。
【0633】
図41(A)より、ストレス温度が60℃の場合、比較試料1及び比較試料2と比較し
て、試料1及び試料2は、プラスゲートBTストレス試験(Dark +GBT)及びマ
イナスゲートBTストレス試験(Dark -GBT)変動量が少ないことがわかる。
【0634】
図41(B)より、ストレス温度が120℃の場合、比較試料1及び比較試料2と比較
して、試料1及び試料2は、プラスゲートBTストレス試験(Dark +GBT)及び
マイナスゲートBTストレス試験(Dark -GBT)変動量が少ないことがわかる。
【0635】
以上のことから、酸化物半導体膜または多層膜を形成した後、特段加熱処理を行わなく
とも、酸化物半導体膜または多層膜上に形成する酸化物絶縁膜の成膜温度を280℃以上
400℃以下とすることで、酸化物半導体膜または多層膜から不純物を脱離させることが
可能であり、トランジスタ特性の変動量を低減できることが分かる。
【0636】
また、試料1及び試料2、並びに比較試料1及び比較試料3において、プラスゲートB
Tストレス試験(Dark +GBT)を行った。ここでは、ストレス温度を、60℃ま
たは125℃とし、それぞれにおいてストレス時間を100秒、500秒、1500秒、
2000秒、3600秒として、しきい値電圧の変動量を測定した。
図43は各ストレス
時間におけるしきい値電圧の変動量と、各変動量から得た近似曲線を示す。横軸はストレ
ス時間を示し、縦軸はしきい値電圧の変動量(ΔVth)を示す。また、
図43(A)は
、ストレス温度が60℃のときの測定結果であり、
図43(B)はストレス温度が125
℃のときの測定結果である。
【0637】
図43(A)より、比較試料1と比較して試料1及び試料2のしきい値電圧の変動量が
小さいことが分かる。このことから、酸化物半導体膜または多層膜を形成した後、特段加
熱処理を行わなくとも、酸化物半導体膜または多層膜上に形成する酸化物絶縁膜の成膜温
度を280℃以上400℃以下とすることで、トランジスタ特性の変動量を低減できるこ
とが分かった。
【0638】
また、
図43(A)及び
図43(B)より、試料1及び試料2のトランジスタ特性の変
動量は、比較試料3と比較すると大きいが、比較試料3と同等の変動量であることがわか
る。