(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181236
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A45D 29/00 20060101AFI20231214BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231214BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A45D29/00
B41J2/01 401
B41J2/01 109
B41J2/165 207
B41J2/165 303
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023177261
(22)【出願日】2023-10-13
(62)【分割の表示】P 2019145904の分割
【原出願日】2019-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2018188816
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知幸
(57)【要約】
【課題】印刷ヘッドが爪や指と干渉した場合にも、良好な印刷環境を提供することのできるネイルプリント装置、ネイルプリント方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】爪表面に印刷を行う印刷ヘッド41と、各部を制御するプロセッサ31と、を備え、プロセッサ31は、印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たしているか否かを判断し、印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たしていると判断する場合には印刷動作を続行させ、印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさないと判断する場合には印刷ヘッド41が爪Tと干渉したことによるエラー状態が生じたものと判断し印刷動作とは異なるエラー対応処理を行わせる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪表面に印刷を行う印刷ヘッドと、
各部を制御するプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、前記印刷ヘッドによる印刷動作が設定された条件を満たしているか否かを判断し、前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たしていると判断する場合には前記印刷動作を続行させ、前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たさないと判断する場合には前記印刷ヘッドが前記爪と干渉したことによるエラー状態が生じたものと判断し前記印刷動作とは異なるエラー対応処理を行わせるネイルプリント装置。
【請求項2】
前記印刷ヘッドの移動速度を検出する速度検出部をさらに備え、
前記プロセッサは、前記速度検出部が検出した前記印刷ヘッドの速度が設定された閾値以下となったことをもって、前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たさないと判断する請求項1に記載のネイルプリント装置。
【請求項3】
前記印刷ヘッドの位置を検出する位置検出部をさらに備え、
前記プロセッサは、前記位置検出部が検出した前記印刷ヘッドの位置が所定時間内で変化がないことをもって、前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たさないと判断する請求項1に記載のネイルプリント装置。
【請求項4】
前記爪表面を撮影して前記爪表面の画像を取得する撮像装置をさらに備え、
前記プロセッサは、前記撮像装置により取得された画像に異常があることもって、前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たさないと判断する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のネイルプリント装置。
【請求項5】
前記印刷ヘッドを移動させる駆動モータをさらに備え、
前記プロセッサは、前記印刷ヘッドを少なくとも前記爪表面の上方を最初に移動させる際、第1移動速度で前記印刷ヘッドを移動するよう前記駆動モータを制御した後、前記設定された条件を満たしていると判断した場合、前記印刷ヘッドを前記第1移動速度より速い第2移動速度で移動するように前記駆動モータを制御する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のネイルプリント装置。
【請求項6】
前記印刷ヘッドは、複数回走査することによって前記爪表面に印刷を行うものであり、
前記プロセッサは、少なくとも1回目の走査の際に、前記第1移動速度で前記印刷ヘッドを移動させるように前記駆動モータを制御する請求項5に記載のネイルプリント装置。
【請求項7】
前記印刷ヘッドが複数回走査することによって前記爪表面に印刷を行う場合に、前記プロセッサは、前記印刷ヘッドの前記第2移動速度が徐々に速くなるように前記駆動モータを制御する請求項5に記載のネイルプリント装置。
【請求項8】
前記印刷ヘッドが複数回走査することによって前記爪表面に印刷を行う場合に、前記プロセッサは、前記印刷ヘッドの前記第2移動速度を一定速度になるように前記駆動モータを制御する請求項5に記載のネイルプリント装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記爪表面と前記印刷ヘッドとが所定値以上近接する範囲を走査する際に、前記第1移動速度で前記印刷ヘッドを移動させるように前記駆動モータを制御する請求項5から請求項8のいずれか一項に記載のネイルプリント装置。
【請求項10】
前記印刷ヘッドのインク吐出面をクリーニングするクリーニング部をさらに備え、
前記プロセッサは、前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たさないと判断する場合に、前記エラー対応処理として前記クリーニング部による前記印刷ヘッドのクリーニング処理を行わせる請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のネイルプリント装置。
【請求項11】
前記クリーニング処理として、程度の異なる複数種類が用意されており、
前記プロセッサは、前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たさないと判断したときの前記印刷ヘッドの状態に応じて前記クリーニング処理の種類を選択する請求項10に記載のネイルプリント装置。
【請求項12】
前記クリーニング部は、スピット処理を行うスピット部と、前記インク吐出面をワイプするワイプ処理を行うワイプ部とを含んでおり、
前記クリーニング処理は、前記スピット処理、前記ワイプ処理又はこれらの組合せである請求項10又は請求項11に記載のネイルプリント装置。
【請求項13】
ネイルプリント装置のネイルプリント方法であり、
前記ネイルプリント装置は、爪表面に印刷を行う印刷ヘッドを備え、
前記印刷ヘッドによる印刷動作が設定された条件を満たしているか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程において前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たしていると判断する場合には前記印刷動作を続行させ、前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たさないと判断する場合には前記印刷ヘッドが前記爪と干渉したことによるエラー状態が生じたものと判断し前記印刷動作とは異なるエラー対応処理を行わせる処理選択工程と、
を含んでいるネイルプリント方法。
【請求項14】
爪表面に印刷を行う印刷ヘッドを備えるネイルプリント装置のコンピュータに、
前記印刷ヘッドによる印刷動作が設定された条件を満たしているか否かを判断する判断機能と、
前記判断機能によって前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たしていると判断する場合には前記印刷動作を続行させ、前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たさないと判断する場合には前記印刷ヘッドが前記爪と干渉したことによるエラー状態が生じたものと判断し前記印刷動作とは異なるエラー対応処理を行わせる処理選択機能と、
を実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネイルプリント装置、ネイルプリント方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、指の爪等にネイルデザインの印刷を行う印刷装置(ネイルプリント装置)が知られている。
例えばインクジェット方式で印刷を行う場合、印刷ヘッドが爪の上方を移動しながらインクを吐出させることで印刷を行う。
この場合、印刷ヘッドと爪との距離が離れ過ぎているとインクが正しい位置に着弾できず、高精細な印刷を行うことができない。
このため、このようなプリント装置では、印刷時における印刷ヘッドと爪の表面との距離が数mm程度となる位置に印刷対象である爪(及びその爪に対応する指)をセット(固定)した状態で印刷が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、常に爪の位置が適切な位置にセットされるとは限らない。
前述のように、印刷ヘッドと爪との距離は数mm程度と近接しているため、指が多少浮いてしまうだけで印刷時に印刷ヘッドが爪や指に衝突してしまい、怪我や装置の故障等の原因となるおそれがある。
【0005】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、印刷ヘッドが爪や指と干渉した場合にも、良好な印刷環境を提供することのできるネイルプリント装置、ネイルプリント方法及びプログラムを提供することを利点とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明のネイルプリント装置は、
爪表面に印刷を行う印刷ヘッドと、
各部を制御するプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、前記印刷ヘッドによる印刷動作が設定された条件を満たしているか否かを判断し、前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たしていると判断する場合には前記印刷動作を続行させ、前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たさないと判断する場合には前記印刷ヘッドが前記爪と干渉したことによるエラー状態が生じたものと判断し前記印刷動作とは異なるエラー対応処理を行わせることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、印刷ヘッドが爪や指と干渉した場合にも、良好な印刷環境を提供することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態におけるネイルプリント装置及び端末装置の概略構成を示す図である。
【
図2】本実施形態におけるネイルプリント装置及び端末装置の制御構成を示した要部ブロック図である。
【
図3】ネイルプリント装置の仕切り板上の各部の配置を模式的に示した平面図である。
【
図4】指載置部に載置された印刷指及び爪と印刷ヘッドとの位置関係を示す模式図である。
【
図5】指載置部に載置された印刷指及び爪と印刷ヘッドとの位置関係を示す模式図である。
【
図6】本実施形態におけるエンコーダの構成を示す模式図である。
【
図7】本実施形態におけるフィードバック制御の概要を表すブロック線図である。
【
図8】(a)は、1走査目の印刷を示す爪の平面図であり、(b)は、2走査目の印刷を示す爪の平面図であり、(c)は、3走査目の印刷を示す爪の平面図である。
【
図9】本実施形態に係るネイルプリント処理を示すフローチャートである。
【
図10】(a)及び(b)は、クリーニング処理の具体的な内容の一例を示すフローチャートである。
【
図11】印刷ヘッドを駆動させたときの速度特性を示すグラフである。
【
図12】指載置部に載置された印刷指及び爪と撮影部との位置関係を示す模式図である。
【
図13】(a)は、走査前の状態を示す爪の平面図であり、(b)は、1走査目終了時の異常状態を示す爪の平面図であり、(c)は、1走査目終了時の正常状態を示す爪の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から
図10(a)及び
図10(b)を参照しつつ、本発明に係るネイルプリント装置、ネイルプリント方法及びプログラムの一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の実施形態では、ネイルプリント装置が手の指の爪を印刷対象としてこれに印刷するネイルプリント装置を例に説明するが、本発明におけるネイルプリント装置の印刷対象は手の指の爪に限るものではなく、例えば足の指の爪等を印刷対象としてもよい。
【0010】
図1は、本実施形態におけるネイルプリント装置の外観を示す斜視図である。本実施形態では、ネイルプリント装置1が端末装置7と連携して印刷システムを構成し、爪Tに印刷を行う場合を例示する。
端末装置7は、例えばスマートフォン等の携帯端末装置である。なお、端末装置7はスマートフォンに限定されない。例えばタブレット型のパーソナルコンピュータ(以下において「PC」とする。)やノート型のPC、据置型のPC、ゲーム用の端末装置等であってもよい。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の端末装置7は、操作部71、表示部72、通信部74、制御装置80等を備えている。
【0011】
操作部71は、ユーザの操作に応じて各種の入力・設定等を行うことができるようになっており、操作部71が操作されると、当該操作に対応する入力信号が制御部81に送信される。なお、本実施形態では表示部72の表面にタッチパネルが一体的に設けられており、ユーザはタッチパネルへのタッチ操作によっても各種の入力・設定等の操作を行うことができるようになっている。
表示部72に構成されているタッチパネルは、後述する表示制御部812の制御にしたがって各種の表示画面を表示させる。
なお、各種の入力・設定等の操作を行う操作部71はタッチパネルである場合に限定されない。例えば各種の操作ボタンやキーボード、ポインティングデバイス等が操作部71として設けられていてもよい。
【0012】
本実施形態では、ユーザが操作部71を操作することで、端末装置7からネイルプリント装置1に対して印刷開始等の各種指示が出力されるようになっており、端末装置7はネイルプリント装置1の操作部としても機能する。
また、ユーザが操作部71を操作することで、爪Tに印刷するネイルデザインを選択すること等ができるようになっている。
【0013】
表示部72は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のフラットディスプレイ等で構成されている。
なお、表示部72の表面に各種の入力を行うためのタッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合には、タッチパネルが操作部71として機能する。
【0014】
本実施形態では、ユーザが操作部71から入力・選択したネイルデザインや、各種の案内画面、警告表示画面等が表示部72に表示可能となっている。
また、本実施形態において表示部72は、ネイルプリント装置1の各部の動作状態をユーザに報知する報知手段としても機能する。
例えば、報知手段としての表示部72は、ネイルプリント装置1の移動体である印刷ヘッド41の位置が所定時間内で変化がない場合等、「印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさない」状態となったときに、その旨を表示画面に表示させてユーザに報知する。
【0015】
通信部74は、ネイルプリント装置1に対して印刷用データを送信することが可能となっている。また、ネイルプリント装置1から爪画像や後述する爪情報等が送信されたときには、通信部74はこれを受信する。通信部74は、ネイルプリント装置1の通信部14との間で通信可能な無線通信モジュール等を備えている。
ネイルプリント装置1と端末装置7との間での通信は、インターネット等のネットワーク回線を使うものであってもよいし、例えばBluetooth(登録商標)やWi-Fi等の近距離無線通信規格に基づく無線通信を行うものであってもよい。ネットワークを介して通信を行う場合、通信に用いるネットワークはどのような回線を利用するものでもよい。また、ネイルプリント装置1と端末装置7との間の通信は無線に限定されず、有線接続により両者間で各種データの送受信が可能な構成としてもよい。
なお、通信部74は、ネイルプリント装置1との間で通信を行うことのできるものであればよく、ネイルプリント装置1の通信部14の通信規格と合致するものが適用される。
【0016】
図2に示すように、本実施形態の端末装置7の制御装置80は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ81と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等で構成される記憶部82とを備えるコンピュータである。
記憶部82を構成するROMとしては、例えばNAND FLASHメモリ等の不揮発性記憶素子のフラッシュメモリを適用することができる。また、RAMとしては例えばDDR等のメモリチップを適用することができる。
【0017】
記憶部82には、端末装置7の各部を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的には、本実施形態のROM等には、端末装置7の各部を統括制御するための動作プログラム821aの他、ネイルプリント装置1を用いたネイルプリントを行うためのネイルプリントアプリケーションプログラム821b(以下「ネイルプリントAP」とする。)等の各種プログラムが格納されており、制御装置80がこれらのプログラムを例えばRAMの作業領域に展開して実行することによって、端末装置7が制御されるようになっている。すなわち、制御装置80のプロセッサ(CPU)81がこれらのプログラムを例えばRAMの作業領域に展開して実行することによって、端末装置7が制御されるようになっている。
また、本実施形態の記憶部82には、ネイルデザインのデータを格納するデザイン記憶領域822、ネイルプリント装置1から爪Tの画像(爪画像)や爪Tの位置・範囲の情報(爪情報)等が送られた場合にこれらを格納する爪情報記憶領域823等が設けられている。
なお、デザイン記憶領域822に格納されるネイルデザインは、予め用意された既存のデザインであってもよいし、ユーザが自ら作成したデザインであってもよい。
【0018】
端末装置7のプロセッサ81は、機能的に見た場合、通信制御部811、表示制御部812、印刷データ生成部813等として機能する。これら通信制御部811、表示制御部812、印刷データ生成部813等としての機能は、プロセッサ81と記憶部82のROMに記憶されたプログラムとの協働によって実現される。つまり、CPU等のプロセッサ81が記憶部82のROM(本実施形態では、プログラム記憶領域821)に記憶された上述の機能に対応するプログラムを、例えば記憶部82のRAMの作業領域に展開して実行することによって実現される。なお、端末装置7のプロセッサ81が備える機能はこれに限定されず、その他各種の機能を備えていてもよい。
【0019】
プロセッサ81の通信制御部811としての機能は、通信部74の動作を制御するものである。本実施形態では、ネイルプリント装置1との間での通信を制御し、ネイルプリント装置1に対して印刷用データ等を送信する。なお、ネイルプリント装置1側から爪画像や爪情報のデータ等が送信された場合には、通信制御部811は通信部74を制御して、これを受信させる。
【0020】
プロセッサ81の表示制御部812としての機能は、表示部72を制御して表示部72に各種の表示画面を表示させるものである。
本実施形態では、表示制御部812は、例えばユーザに爪Tに印刷したいネイルデザインを選択するよう促すデザイン選択画面を表示部72に表示させる。デザイン選択画面を表示させる場合、表示制御部812はデザイン記憶領域822に記憶されているネイルデザインを順次又は一覧に表示部72に表示させることが好ましい。
さらに、表示制御部812は、爪Tの画像に、ユーザが選択したネイルデザインを重畳した画像を表示部72に表示させて、実際の印刷開始前に仕上がりイメージをユーザが確認できるようにし、気に入らない場合にはネイルデザインを選び直すことができるようにしてもよい。
【0021】
また、本実施形態では、ネイルプリント装置1の移動体である印刷ヘッド41の位置が所定時間内で変化がない場合等、「印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさない」状態となったときに、表示制御部812は、その旨を表示画面に表示させてユーザに報知する。
このとき表示制御部812は、例えば、「印刷を停止します。」「指の位置を確認してください。」「指を正しい位置に置き直してください。」等のメッセージや指示を表示部72の表示画面に表示させてもよい。
その他、表示制御部812は、ユーザに対するメッセージや各種指示等を表示部72に表示させてもよい。
【0022】
プロセッサ81の印刷データ生成部813としての機能は、ネイルプリント装置1の爪情報検出部313による検出結果から印刷部40による印刷領域を設定し、印刷用データを生成するものである。
本実施形態では、ネイルプリント装置1の撮影部50において、印刷対象である爪Tが撮影され、当該爪画像について爪情報検出部313によって爪Tの輪郭等の爪情報が検出される。爪情報検出部313による検出結果は、通信部14,74を介して端末装置7に送られるようになっており、印刷データ生成部813は、この検出結果に基づいて印刷部40による印刷領域(爪領域)を設定し、印刷用データを生成する。
【0023】
具体的には、印刷データ生成部813は、この爪領域の形状(爪Tの輪郭形状)に合わせて印刷対象であるユーザによって選択されたネイルデザインの画像データを切り抜き、適宜拡大縮小等を行い、印刷用データを生成する。
なお、爪情報検出部313において当該複数の画像から爪Tの曲率等を求めた場合には、印刷データ生成部813は、この爪Tの曲率等に基づいて、印刷用データに曲面補正を行ってもよい。曲面補正を行った場合には、より爪Tの形状に合った印刷用データを生成することができる。
印刷データ生成部813により生成された印刷用データは、通信部14,74を介してネイルプリント装置1に送信される。
【0024】
本実施形態において、ネイルプリント装置1は、
図1に示すように、ほぼ箱形に形成された筐体11を有している。
筐体11の上面(天板)には操作部12が設置されている。
操作部12は、ユーザが各種入力を行う操作部である。
操作部12には、例えば、ネイルプリント装置1の電源をONする電源スイッチ釦、動作を停止させる停止スイッチ釦、印刷開始を指示する印刷開始釦等、各種の入力を行うための操作釦が配置されている。
操作部12が操作されると操作信号が制御装置30に出力され、制御装置30が操作信号に従った制御を行い、ネイルプリント装置1の各部を動作させる。
なお、操作部12に代えて、端末装置7の操作部71から入力された操作信号に従ってネイルプリント装置1の各部が動作するようにしてもよい。
【0025】
また、筐体11の上面(天板)には、報知用ランプ13が設けられている。
本実施形態において、報知用ランプ13は、各部の動作状態をユーザに報知する報知手段である。
報知用ランプ13は、例えば緑色のランプと赤色のランプとで構成されており、印刷準備が完了している段階では緑色のランプが点灯し、正常に印刷動作が行われている間は緑色のランプが点滅し、何らかの異常が生じると赤色のランプが点灯又は点滅するようになっており、その点灯状態によって、各部の動作状態をユーザに知らせることができるようになっている。
特に本実施形態では、報知用ランプ13は、検出部である印刷部40のエンコーダ401が検出した移動体である印刷ヘッド41の位置に所定時間内で変化がない場合やエンコーダ401の検出結果に基づいて印刷ヘッド41の速度が所定閾値以下となった場合等、「印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさない」状態となったときに、赤色のランプが点灯又は点滅することで、異常の発生を報知する報知手段として機能する。
【0026】
また、ネイルプリント装置1は通信部14(
図2参照)を備えている。通信部14は、端末装置7との間で情報の送受信が可能に構成されたものである。
ネイルプリント装置1と端末装置7との間での通信は、例えば無線LAN等により行われる。なお、ネイルプリント装置1と端末装置7との間での通信はこれに限定されず、いかなる方式によるものでもよい。通信部14は端末装置7の通信方式に対応するアンテナチップ等を備えている。
通信部14は、後述する制御装置30の通信制御部311(
図2参照)に接続され、該通信制御部311によって制御される。
【0027】
さらに、筐体11の前面側(
図1において手前側)には、ネイルプリント装置1による印刷時に指を挿入する開口部である指挿入口15が形成されている。
指挿入口15の内部は、印刷時に挿入された印刷指U1等の指を受け入れる空間である指受入部20となっている。ここで印刷指U1とは、印刷部40による印刷対象となる爪Tに対応する指である。
指挿入口15内は、仕切り板16によって上下に仕切られている。
【0028】
図3は、仕切り板の上側面を上方から見た模式的な平面図である。
図3に示すように、仕切り板16の上側であって装置のX方向(
図1及び
図3等におけるX方向、ネイルプリント装置1の左右方向)のほぼ中央部には、印刷指U1を載置する指載置部2が設けられている。
【0029】
図4及び
図5は、印刷指U1が指受入部20内に挿入されて指載置部2に載置されている状態を側面から見た要部断面図である。
指載置部2の下側、すなわち、仕切り板16の上は、載置された指の腹を受ける指支持部21となっている。
指支持部21は、印刷指U1を下側から押し上げ支持するものであり、例えば柔軟性を有する樹脂等で形成されている。なお、指支持部21は、印刷指U1を下側から支持し得るものであればよく、その構成は特に限定されない。例えば、ばね等の弾性部材によって下方から付勢されていてもよい。また、例えば、指支持部21は、内圧を変化させることにより膨縮可能に構成されており、膨張状態において印刷指U1を押し上げ、その位置を固定する構成としてもよい。
【0030】
指載置部2の天面奥側は上側に開口する窓部23となっている。窓部23からは指載置部2内に挿入された印刷指U1の爪Tが露出するようになっている。
また、指載置部2の天面手前側は印刷指U1の上方向の位置を規制する指押え24となっている。
さらに、指載置部2の内部であって印刷指挿入方向の奥側には、印刷指U1の爪Tを載置する爪載置部25が設けられている。なお、爪載置部25は爪Tの先を位置することができるものであればよく、その形状や配置等は図示例に限定されない。
印刷指U1及びその爪Tは、
図4に示すように、爪Tの先を爪載置部25に載置した状態で下側から指支持部21によって支持され、印刷指U1の上側が指押え24によって押さえられることで所定の位置に位置決めされる。
【0031】
また、
図3に示すように、仕切り板16の上側であって指載置部2の側部には、非印刷時において印刷ヘッド41下面のインク吐出面411(
図4~
図6参照、後述)を覆うキャップ機構6(
図3参照)が設けられている。印刷ヘッド41のインク吐出面411をキャップ機構6によってキャッピングすることで、インク吐出面411(及びノズル)を乾燥等から保護し、印刷に適した状態を維持することができる。
本実施形態では、装置におけるX方向右側にキャップ機構6が設けられている場合を例示している。なお、キャップ機構6は、ヘッド移動機構49により印刷ヘッド41が移動可能な範囲内に配置されればよく、例えば装置におけるX方向左側に配置されていてもよい。
【0032】
また、仕切り板16の上側における指載置部2の側部であってキャップ機構6の逆側には、印刷ヘッド41のインク吐出面411をクリーニングするクリーニング部9が設けられている。
本実施形態では、装置におけるX方向左側にクリーニング部9が設けられている場合を例示している。なお、クリーニング部9は、ヘッド移動機構49により印刷ヘッド41が移動可能な範囲内に配置されればよく、例えば装置におけるX方向右側であってもよい。
【0033】
本実施形態において、クリーニング部9は、スピット処理を行うスピット部91と、インク吐出面411をワイプするワイプ処理を行うワイプ部92とを含んでいる。本実施形態のクリーニング部9で行われるクリーニング処理は、スピット処理、ワイプ処理又はこれらの組合せである。クリーニング処理として具体的にどのような内容の処理を行うかは適宜制御装置30のプロセッサ31が選択する。なお、この点については後述する。
なお、クリーニング部9に含まれるものは、スピット部91とワイプ部92に限定されない。インク吐出面411をクリーニングする他の構成部が設けられていてもよい。
【0034】
図3に示すように、本実施形態において、スピット部91とワイプ部92とは、装置の奥行方向(
図3におけるY方向)に並んで設けられている。なお、スピット部91及びワイプ部92の具体的な配置は図示例に限定されず、例えば、スピット部91とワイプ部92とのY方向における位置が逆であってもよいし、スピット部91とワイプ部92とがY方向ではなくX方向にずれて配置されていてもよいし、X方向、Y方向の両方にずれて配置されていてもよい。
【0035】
スピット部91は、印刷ヘッド41のインク吐出面411に形成されているノズルの吐出口(図示せず)からインクを強制的に吐出させて、ノズル内等のインク流路内のエアや不純物、粘度の上がったインク等をインクとともに外部に排出させる、いわゆるスピット処理の際に、インク吐出面411から強制的に吐出されるインクを受けるものである。
スピット処理を行うことにより、印刷ヘッド41のノズル内で生じた目詰まり等が解消され、良好な吐出状態に回復させることができる。
【0036】
ワイプ部92は、印刷ヘッド41のインク吐出面411をワイプすることでクリーニングするものであり、複数のワイプ部材921(
図3参照)が立設されたものである。本実施形態では、4つのワイプ部材921が千鳥状に位置をずらして配置されている。なお、ワイプ部材921の配置や大きさ、設ける数等は図示例に限定されない。
ワイプ部材921は、インク吐出面411に付着したインク等を拭き取るクリーニングブレードであり、例えばゴム等の弾性体によって形成されている。ワイプ部材921はインクに繰り返し触れても腐食等が発生しにくい耐腐食性の材料で形成されることが好ましい。
なお、ワイプ部材921又はワイプ部92全体は、取り外して交換が可能な部品としてもよい。
【0037】
ワイプ部材921は、ワイプ部92を通過する際の印刷ヘッド41の移動方向がY方向である場合、これと直交するX方向に扁平な板状部材であり、印刷ヘッド41がワイプ部92の上方を通る際に、その先端(上端)がインク吐出面411と接触する位置及び高さに形成されている。
そして、ワイプ部材921は、印刷ヘッド41の移動に応じて柔軟に撓み、先端部分をインク吐出面411に摺接させることによって、インク吐出面411(インク吐出面411に設けられているノズルの吐出口)に付着したインク等を除去できるようになっている。
【0038】
なお、印刷ヘッド41のインク吐出面411をワイプすると、ワイプ部材921の先端部等にはインクが付着する。
このため、本実施形態のクリーニング部9には、
図3に示すように、ワイプ部材921に付着したインクを除去するスクレイプ部93が設けられている。
スクレイプ部93は、ワイプ部材921に対向する側の面に、ワイプ部材921に摺接してその先端部等に付着したインクを掻き落とすスクレイプ部材931を備えている。なお、スクレイプ部材931の材料、形状等は特に限定されず、ワイプ部材921に付着したインクを除去できるものであればよい。
【0039】
また、筐体11の内部には、印刷指U1の爪T(爪Tの表面)に印刷を施す印刷部40と、爪Tを含む印刷指U1の画像を取得する撮影部50等が設けられている。
撮影部50(
図2参照)は、撮像装置51と、照明装置52とを備えている。
撮影部50は、指載置部2に載置された印刷指U1の爪Tを照明装置52によって照明する。そして、撮像装置51によってその印刷指U1を撮影して、印刷指U1の爪Tの画像である爪画像(爪画像を含む指の画像)を得るものである。
撮影部50は、指載置部2に載置された印刷指U1を撮影可能な位置に設けられていればよく、具体的な配置は特に限定されない。本実施形態では、撮像装置51及び照明装置52は、筐体11の天面内側であって指載置部2に載置された印刷指U1の爪T(爪Tの表面)と対向可能な位置に固定配置されている。
なお、撮影部50は、印刷ヘッド41を移動させるヘッド移動機構49によってXY方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0040】
撮像装置51は、例えば、200万画素程度以上の画素を有する固体撮像素子とレンズ等を備えて構成された小型カメラである。また、照明装置52は、例えば白色LED等の照明灯である。
撮影部50は、撮像装置51により爪Tを撮影して爪画像(印刷指U1を含む爪Tの画像)を取得する。撮影部50によって取得された爪画像は、通信部を介して端末装置7に送られる。
この撮影部50は、後述する制御装置30の撮影制御部312(
図2参照)に接続され、該撮影制御部312によって制御されるようになっている。
なお、撮影部50によって撮影された画像の画像データは、後述する記憶部32に記憶されてもよい。
【0041】
印刷部40は、爪Tの上(すなわち、爪表面の上方)を移動しながら爪表面に印刷を行う移動体である印刷ヘッド41と、印刷ヘッド41をX方向(
図1等におけるX方向、ネイルプリント装置1の左右方向)、Y方向(
図1等におけるY方向、ネイルプリント装置1の前後方向)に移動させるためのヘッド移動機構49(
図2参照)等を備えている。
印刷ヘッド41は、印刷ヘッド41をX方向に移動させるためのX方向移動ステージ、印刷ヘッド41をY方向に移動させるためのY方向移動ステージに支持されており、ヘッド移動機構49は、印刷ヘッド41をX方向及びY方向に適宜移動させるための駆動モータとしてのX方向移動モータ46とY方向移動モータ48等で構成されている。
【0042】
駆動モータ(X方向移動モータ46とY方向移動モータ48)は、例えばブラシ付きのDCモータ等である。なお、駆動モータはこれに限定されず、他の構成のものも適用可能である。
本実施形態において、駆動モータとしてのX方向移動モータ46とY方向移動モータ48は、移動体としての印刷ヘッド41の移動速度を複数段階に切り替え可能に構成されている。
なお、印刷ヘッド41は図示しないキャリッジに搭載された状態でX方向移動ステージおよびY方向移動ステージに支持されて爪表面の上方を移動するものであり、「移動体」としたときには、印刷ヘッド41とキャリッジ等、爪表面の上方を移動するものを広く含むものとしてもよい。
【0043】
本実施形態の印刷ヘッド41は、爪表面に対向する面がインクを吐出させる複数のノズルの吐出口(図示せず)を備えたインク吐出面411となっており、インクを微滴化し、インク吐出面411から印刷対象(爪T)の被印刷面である爪表面に対して直接にインクを吹き付けて印刷を行うインクジェット方式のインクジェットヘッドである。印刷ヘッド41は、例えば、イエロー(Y;YELLOW)、マゼンタ(M;MAGENTA)、シアン(C;CYAN)のインクを吐出可能となっている。
なお、印刷ヘッド41のインク吐出面411から吐出されるインクは微細な液滴であるため、印刷ヘッド41と爪Tの表面との距離が離れ過ぎているとインクが正しい位置に着弾できず、高精細な印刷を行うことができない。このため、印刷ヘッド41による印刷は、爪表面に対向するインク吐出面411が爪表面の上方数mm程度に位置した状態で行われることが好ましい。
【0044】
さらに、本実施形態の印刷部40には、移動体としての印刷ヘッド41の位置を検出する検出部として、エンコーダ401(
図2参照)が設けられている。
図6は、本実施形態におけるエンコーダの構成を示す模式図である。なお、
図6では、印刷ヘッド41のX方向における位置を検出するためのX方向のエンコーダ401の例を図示している。
なお、
図6のSPの記号が重畳している線分は、後述するエンコーダ401のスリット間距離と印刷ヘッド41がその距離を通過するのに掛かった時間とから速度を計測することをわかりやすく説明するために、エンコーダのスリット間距離を簡易的に拡大表現した図面である。また、その下に記載されているDPの記号が重畳している線分は、後述する駆動モータのフィードバック制御間隔を説明するのに用いる図面である。
【0045】
エンコーダ401は、例えば、対向する発光部と受光部(いずれも図示せず)を有し、発光部からの光を物体が遮るのを受光部で検出することによって、物体の位置等を判定するフォトインタラプタ等で構成されるセンサである。
本実施形態において移動体である印刷ヘッド41等には、
図6に示すように、複数のスリットが等間隔で形成されたスリット板401aが取り付けられている。スリットは、印刷等によって光を透過する透過部と光を透過させない非透過部とがスリット板401aの延在方向に交互に形成されたものである。
エンコーダ401は、このスリット板401aのスリットを読み取り、検出結果を印刷制御部314として機能するプロセッサ31(後述)に出力する。プロセッサ31(印刷制御部314)は、エンコーダ401による検出結果に基づいて移動体である印刷ヘッド41等の移動量(移動距離)を検出する。
【0046】
すなわち、エンコーダ401は、スリット板401aに形成されたスリット(透過部・非透過部)の通過回数をカウントする。このカウント結果からプロセッサ31(印刷制御部314)は、印刷ヘッド41が現在どの位置にいるかを把握することができる。このように、本実施形態のエンコーダ401は、位置検出部として機能する。
また、スリット幅は均一(ほぼ均一)であることから、直前にスリット(透過部又は非透過部)を通過したタイミングから今回通過したタイミングまでの時間(すなわち、
図6においてスリット1ライン分であるSP間の距離(単位距離)を移動するのに要した時間)を計測することで印刷ヘッド41の移動速度(印刷ヘッド41がどの程度の速度で駆動しているかの駆動モータの駆動速度)を把握することができる。このように、本実施形態のエンコーダ401は、速度検出部としても機能する。
なお、ここで「速度」とは、単位時間あたりの移動量(印刷ヘッド41の移動距離)でもよいし、単位距離(ここでは例えばエンコーダ401のスリット1ライン分の距離)あたりの移動時間でもよい。
印刷ヘッド41から吐出されるインクを狙った位置に着弾させるためには、印刷ヘッド41を等速で駆動させることが重要である。このため、出力情報(ここでは印刷ヘッド41を移動させる駆動モータ(X方向移動モータ46)の駆動速度の情報)に基づいて入力値(ここでは駆動モータにかける電圧のDuty比)を決定するフィードバック制御を用いて駆動モータの制御を行う。
【0047】
具体的には、目標とする駆動速度と、現在の駆動速度との差分に基づいて駆動モータにかける電圧のDuty比(入力値)を算出する。
図7は、本実施形態におけるフィードバック制御の概要を表すブロック線図である。
図7では、フィードバック制御として、例えば出力値(ここでは駆動モータの駆動速度)と目標値との偏差、その積分、及び微分の3つの要素によって入力値(ここでは駆動モータ(X方向移動モータ46)にかける電圧のDuty比)の制御を行うPID制御(Proportional-Integral-Differential Controller)を用いる場合を図示している。
なお、図中「p」は比例要素(Pゲイン、P=Proportional)を表し、「i」は積分要素(Iゲイン、I=Integral)を表し、「d」は微分要素(Dゲイン、D=Derivative)を表す。なお、ここに示すフィードバック制御は、一例であり、駆動モータ(X方向移動モータ46)にかける電圧のDuty比(入力値)を得るための手法はPID制御に限定されない。
【0048】
駆動モータ(X方向移動モータ46)の駆動速度を算出するタイミングを「DP」としたとき、次に駆動モータ(X方向移動モータ46)に入力する電圧のDuty比(入力値)を算出するフィードバック算出間隔(駆動速度を算出し次に駆動モータに入力する電圧のDuty比を算出する間隔、
図6においてDP間の間隔)は特に限定されないが、例えば1ms間隔である。
なお、このフィードバック制御は、エンコーダ401のスリット板401aを通過するタイミング(
図6において「SP」)とは独立して処理されるものである。
【0049】
印刷部40における移動体としての印刷ヘッド41、印刷ヘッド41を駆動させる駆動モータとしてのX方向移動モータ46及びY方向移動モータ48、エンコーダ401は、後述する制御装置30の印刷制御部314(
図2参照)に接続され、該印刷制御部314によって制御される。
【0050】
制御装置30は、例えば筐体11天面の下面側等に配置された図示しない基板等に設置されている。
制御装置30は、
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ31(制御部)と、ROM(Read Only Memory)321及びRAM(Random Access Memory)322等で構成される記憶部32とを備えるコンピュータである。
【0051】
記憶部32には、ネイルプリント装置1を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的には、記憶部32のROM321には、印刷処理を行うための印刷プログラム等の各種プログラムが格納されており、これらのプログラムが制御装置30によって実行されることによって、ネイルプリント装置1の各部が統括制御されるようになっている。すなわち、制御装置30のプロセッサ(CPU)31がこれらのプログラムを例えばRAM322の作業領域に展開して実行することによって、ネイルプリント装置1の各部が統括制御されるようになっている。
【0052】
プロセッサ31は、機能的に見た場合、通信制御部311、撮影制御部312、爪情報検出部313、印刷制御部314、ランプ制御部315等として機能する。これら通信制御部311、撮影制御部312、爪情報検出部313、印刷制御部314、ランプ制御部315等としての機能は、CPU等のプロセッサ31と記憶部32のROM321に記憶されたプログラムとの協働によって実現される。
つまり、CPU等のプロセッサ31が記憶部32のROM321に記憶された上述の機能に対応するプログラムを、例えば記憶部32のRAM322の作業領域に展開して実行することによって実現される。なお、プロセッサ31が備える機能はこれに限定されず、その他各種の機能を備えていてもよい。
【0053】
プロセッサ31の通信制御部311としての機能は、通信部14の動作を制御するものである。本実施形態では、端末装置7との間での通信を制御し、端末装置7から印刷用データ等が送信された場合にこれを受信する。
また、撮影部50によって爪画像が取得されたときは、爪画像データを端末装置7に送信してもよい。
また、後述する爪情報検出部313により爪情報が検出されると、これを端末装置7側に送信する。
なお、ネイルプリント装置1側で印刷中や印刷前後にトラブル等が発生した場合等、動作状況に異変が生じた場合には、その旨を端末装置7側に送信する。本実施形態では、印刷ヘッド41の位置が所定時間内で変化がないことをエンコーダ401が検出した場合には、通信制御部311は、印刷ヘッド41と爪Tとが干渉(例えば爪T等との衝突)したものとして、通信部14を介してその旨を端末装置7側に送信する。
【0054】
プロセッサ31の撮影制御部312としての機能は、撮影部50の撮像装置51及び照明装置52を制御して撮像装置51により、指載置部2に載置された印刷指U1の爪Tの画像を含む指の画像(以下「爪画像」という。)を撮影させるものである。
撮影部50により取得された爪画像の画像データは、通信部14を介して端末装置7に送信される。なお、画像データは記憶部32に記憶されてもよい。
【0055】
プロセッサ31の爪情報検出部313としての機能は、撮像装置51によって撮影された指載置部2に載置された印刷指U1の爪Tの画像に基づいて、印刷指U1の爪Tについての爪情報を検出するものである。
ここで、爪情報とは、例えば、爪Tの輪郭(爪形状、爪Tの水平位置のXY座標等)、爪Tの表面の、XY平面に対する傾斜角度(爪Tの傾斜角度、爪曲率)等である。なお、撮像装置51によって撮影された画像等から爪Tの高さ(爪Tの垂直方向の位置、以下「爪Tの垂直位置」又は単に「爪Tの位置」ともいう。)を取得できる場合には、爪Tの高さも爪情報に含まれる。
【0056】
プロセッサ31の印刷制御部314としての機能は、端末装置7から送信された印刷用データに基づいて印刷部40に制御信号を出力し、爪Tに対してこの印刷用データにしたがった印刷を施すように印刷部40のX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48、印刷ヘッド41等を制御するものである。
印刷制御部314には、エンコーダ401からの印刷ヘッド41の位置情報が送られており、印刷制御部314は、この位置情報等に基づいて、X方向移動モータ46、Y方向移動モータ48、印刷ヘッド41等を制御し、爪Tへの印刷を行わせる。
そして、本実施形態のプロセッサ31は、印刷制御部314として、印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たしているか否かを判断し、印刷ヘッドによる印刷動作が設定された条件を満たしていると判断する場合には通常の処理(印刷処理)を続行させ、印刷ヘッドによる印刷動作が設定された条件を満たさないと判断する場合には印刷ヘッド41が爪Tと干渉した(すなわち、衝突したり接触した)ことによるエラー状態が生じたものと判断し印刷動作とは異なるエラー対応処理に移行させる。エラー対応処理としては、まず駆動モータ(すなわち、X方向移動モータ46、Y方向移動モータ48)を停止させ、印刷ヘッド41による印刷動作(移動及びインク吐出)を停止させる。
【0057】
また、本実施形態では、前述のように、ヘッド移動機構49を構成する駆動モータであるX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48が移動体である印刷ヘッド41の移動速度を複数段階に切り替えることができるように構成されている。印刷制御部314は、少なくとも爪表面の上方を最初に移動させる際には、印刷ヘッド41を第1移動速度で移動させるように、X方向移動モータ46、Y方向移動モータ48による印刷ヘッド41の移動を制御するようになっている。
ここで「第1移動速度」とは、X方向移動モータ46、Y方向移動モータが切り替え可能な移動速度の内、仮に印刷ヘッド41が印刷指U1や爪Tに衝突(干渉)してもユーザが大きな衝撃を感じにくく、印刷ヘッド41等の装置各部が破損等しない程度の速度であり、後述する第2移動速度(例えば、1秒間に20cm程度)よりも遅い速度であって、例えば第2移動速度の半分程度の速度であることが好ましい。
【0058】
また、印刷制御部314には、位置検出部であるエンコーダ401からの印刷ヘッド41の位置情報が送られるようになっている。エンコーダ401が検出した印刷ヘッド41の位置が所定時間内に変化がない場合には、印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たしていない場合であるとして、印刷制御部314は、印刷ヘッド41を停止させるように駆動モータであるX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48を制御する。
例えば、
図4に示すように、爪Tが印刷に適した高さ位置となるように印刷指U1が指載置部2に載置されていれば、移動体である印刷ヘッド41は爪Tに衝突(干渉)することなく、予め定められた一定の速度で爪Tの表面の上方を移動する。このように印刷ヘッド41が所定の速度で移動している状態を「印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たしている」状態であるとする。
【0059】
なお、ここで「所定の速度」とは、印刷モード等に応じた適切な速度として設定される印刷ヘッド41の移動速度であり、必ずしも同一の速度ではない。すなわち、印刷制御部314は、ユーザの操作等により設定されたモード等に応じた適切な速度で印刷ヘッド41を移動させるようになっている。例えば高精細に印刷を行うモードが設定されている場合であれば印刷ヘッド41の移動速度は比較的低速となり、迅速に印刷するモードが設定されている場合であれば印刷ヘッド41の移動速度は高精細なモードにおける速度よりも速い速度となる。
これに対して、
図5に示すように、指載置部2において印刷指U1が浮き上がり、爪Tが印刷に適した高さ位置よりも上がっていると、爪Tの表面の上方を移動する移動体である印刷ヘッド41が爪Tに衝突してしまい、動けなくなる。この場合、エンコーダ401の検出する印刷ヘッド41の位置が変化しない状態となる。このように印刷ヘッド41の位置が変化しない状態を「印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさない」状態であるとする。
【0060】
ここで、「所定時間」とは、1秒に満たない極短い時間(例えば、200msec程度)であることが好ましい。200msec程度の短時間でも印刷ヘッド41が停止すれば、爪Tとの衝突(干渉)等、何らかの異常が発生したと判断することができ、印刷ヘッド41を停止させる必要性がある。
所定時間内に印刷ヘッド41の位置が変化しない場合、印刷制御部314は、単に印刷ヘッド41を停止させるだけでもよいし、一旦停止させた後に、所定の待機位置等に印刷ヘッド41を移動させて停止させるようにX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48を制御してもよい。
ここで、「所定時間内に印刷ヘッド41の位置が変化しない場合、印刷制御部314は印刷ヘッド41を停止させる」という制御を詳述すると、即ち、所定時間内に印刷ヘッド41の位置が変化しない場合、例えば、印刷制御部314は移動モータの駆動トルクを、所定時間内に印刷ヘッド41の位置が変化しないとされた時点よりも小さくし、印刷ヘッド41が移動しようとする力を低下させた上で停止させているという制御を一例として提示する。
【0061】
なお、印刷指U1が装置内に配置されたまま印刷ヘッド41を移動させようとすると、印刷ヘッド41が印刷指U1やその爪Tをさらに押圧したり爪Tの上に無理に乗り上がろうとして余計に擦れあったりするおそれがある。このため、「印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさない」状態となったときには、印刷ヘッド41を停止させた状態でユーザに印刷指U1を装置から取り出させ、所定の待機位置等に印刷ヘッド41を移動させるのは、印刷指U1が取り出されてからとしてもよい。
【0062】
なお、「爪表面の上方を最初に移動させる際」には印刷ヘッド41からインクを吐出させずに、印刷指U1及び爪Tが適切な位置に載置され印刷ヘッド41と干渉しないかどうかをチェックするためだけの移動としてもよいし、爪表面の上方を最初に移動する際にも印刷ヘッド41からインクを吐出させて爪表面に印刷を行うようにしてもよい。
印刷前にチェックのためだけに印刷ヘッド41を移動させる場合には、印刷指U1及び爪Tが印刷ヘッド41と干渉する場合に、印刷前に位置調整をやり直すことができ、インクの無駄や、やり直す手間等を防ぐことができる。
【0063】
他方で、爪表面の上方を最初に移動する際にも印刷ヘッド41による印刷を行うとした場合には、チェックのためだけに要する時間をなくして、迅速に印刷動作を進めることができる。
この場合、例えば、移動体である印刷ヘッド41が、複数回走査することによって爪表面に印刷を行うものである場合、印刷制御部314は、少なくともその1回目の走査の際に、第1移動速度で印刷ヘッド41を移動させるようにX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48を制御する。
【0064】
例えば、
図8(a)から
図8(c)に示すように、1つの爪Tについて3回走査を行い、印刷を完了する場合、
図8(a)に示す1回目の走査の際には、印刷制御部314は、印刷ヘッド41を第1移動速度で移動させ、爪Tとの衝突等の異常(印刷指U1や爪Tとの干渉)が発生しなければ、移動速度を第2移動速度に切り替えて、そのまま
図8(b)に示す2回目の走査、
図8(c)に示す3回目の走査を行って、爪Tに対する印刷を完了させる。
図8(a)から
図8(c)では、移動体である印刷ヘッド41の移動方向を太矢印で示し、印刷の終わった部分である印刷終了領域Afを網掛けで示している。
なお、ここで「第2移動速度」とは一般的な印刷装置の印刷速度(例えば、1秒間に20cm程度)を示す。なお、2回目の走査、3回目の走査の際の印刷ヘッド41の移動速度は特に限定されず、例えば第1移動速度のまま印刷を行ってもよい。また、「第2移動速度」は1種類に限定されない。「第2移動速度」として複数種類の速度が容易されていてもよい。例えば、駆動モータであるX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48が3段階以上速度切り替えを行うことができる場合には、印刷制御部314は、2回目、3回目と段階的に印刷ヘッド41の第2移動速度を速くするように駆動モータを制御してもよい。
【0065】
なお、1つの爪Tについて何回の走査で印刷を完了させるかは適宜設定される事項であり、本実施形態に示した例に限定されない。
例えば、1回の走査で爪Tの表面全体に印刷を施すようにしてもよい。
この場合、爪表面の上方を最初に移動する際に印刷ヘッド41による印刷を行う場合には、1回第1移動速度で印刷ヘッド41を移動させながら印刷を行うことで、印刷ヘッド41と爪Tとの干渉の有無のチェックと爪Tへの印刷とが同時に完了する。
また、爪表面の上方を最初に移動させる際に印刷ヘッド41からインクを吐出させずに、印刷ヘッド41と爪Tとが干渉しないかどうかをチェックするためだけの移動とする場合には、チェックのための移動と、印刷のための移動の2回の走査で爪Tへの印刷が完了する。
【0066】
また本実施形態では、プロセッサ31は、必要に応じて印刷ヘッド41をクリーニング部9に移動させ、印刷ヘッド41のインク吐出面411をクリーニングする印刷ヘッド41のクリーニング処理(例えば、スピット部91によるスピット処理やワイプ部92によるワイプ処理)を行わせるようになっている。
クリーニング処理は、通常印刷を開始する際や、一連の印刷動作(例えば1つの爪Tについての印刷)が終了したときに行われる。
さらに本実施形態では、プロセッサ31は、印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさないと判断する場合に、エラー対応処理として駆動モータを停止させた後、さらにクリーニング部9において印刷ヘッド41のクリーニング処理を行わせるようになっている。
クリーニング処理の具体的な内容は適宜設定されることが好ましい。この点については後述する。
【0067】
プロセッサ31のランプ制御部315としての機能は、報知用ランプ13を制御して点灯状態を切り替えることで、装置各部の動作状態をユーザに知らせるものである。
本実施形態において、ランプ制御部315は、例えば印刷準備が完了している段階では報知用ランプ13のうち緑色のランプを点灯させ、正常に印刷動作が行われている間は緑色のランプを点滅させ、何らかの異常が生じた場合(すなわち、「印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさない」状態となったとき)には赤色のランプを点灯又は点滅させる。
特に本実施形態では、ランプ制御部315としてのプロセッサ31は、エンコーダ401が検出した印刷ヘッド41の位置が所定時間内で変化がない場合に、「印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさない」状態となったと判断して、報知用ランプ13のうち赤色のランプを点灯又は点滅させ、異常の発生をユーザに報知するようになっている。
【0068】
次に、本実施形態のネイルプリント方法について説明する。
本実施形態のネイルプリント装置1を用いてネイルプリントを行う場合には、ユーザは、ネイルプリント装置1の操作部12等を操作して電源を入れ起動させる。
また、端末装置7についても電源を入れて端末装置7の操作部71からネイルプリント処理の実行を選択する。これによりネイルプリントAP821bが起動する。
ネイルプリントAP821bが起動すると、端末装置7の表示制御部812は表示部72にネイルデザインの一覧と所望のデザインを選択するよう指示するメッセージ等を表示させる。次にユーザは、タッチパネル、その他の操作部71を操作することで爪Tに印刷するネイルデザインを選択する。これにより、操作信号が制御装置80に送られ、所望のネイルデザインが爪Tに印刷するデザインとして選択される。
【0069】
次に、端末装置7の表示制御部812は表示部72に、印刷したい爪T(及びその印刷指U1)をネイルプリント装置1の指載置部2に載置するよう指示する指示画面を表示させる。
指載置部2に印刷指U1が載置されると、印刷指U1が撮影部50によって撮影され、爪画像が取得される。そして、爪情報検出部313としてのプロセッサ31が撮影部50によって取得された爪画像について画像処理を行うことにより爪Tの輪郭等の爪情報を検出する。
爪情報検出部313によって検出された爪情報は、通信部14,74を介して端末装置7に送られ、端末装置7の印刷データ生成部813はこの爪情報に基づいてネイルデザインのデータを印刷範囲である爪領域に合せ込み、適宜補正等を行って印刷用データを生成する。
印刷データ生成部813により生成された印刷用データは、端末装置7から通信部14,74を介してネイルプリント装置1に送信される。
【0070】
図9に示すように、印刷用データを受信すると、ネイルプリント装置1の印刷制御部314としてのプロセッサ31は、印刷用データを印刷部40に出力し(ステップS1)、印刷処理プログラム等と協働して印刷処理を開始させる。
このとき、印刷制御部314は、まず、印刷ヘッド41を所定の待機位置から印刷開始位置(複数回の走査で印刷を行う場合、1走査目の印刷部分に対応する位置。例えば、
図8(a)に示す印刷ヘッド41の位置)に移動させる(ステップS2)。
そして、印刷制御部314は、印刷ヘッド41を第1移動速度で移動させるようにX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48による印刷ヘッド41の移動を制御し、印刷ヘッド41からインクを吐出させながら、1走査目の印刷を行わせる(ステップS3)。
なお、爪表面の上方を最初に移動させる際には印刷ヘッド41からのインク吐出を行わないとする場合には、印刷ヘッド41は必ずしも1走査目の印刷部分に対応する位置(すなわち、印刷開始位置)から移動を開始する必要はなく、爪表面のいずれかの部分の上方を移動可能な位置から移動を開始して印刷ヘッド41と爪Tとの干渉の有無をチェックできればよい。
【0071】
印刷制御部314としてのプロセッサ31には、エンコーダ401から印刷ヘッド41の位置情報が随時送られており、印刷制御部314は、印刷ヘッド41の位置が正常に変化しているか否か(印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たしているか否か)を判断する(ステップS4)。
印刷ヘッド41の位置が正常に変化している場合(ステップS4;YES)には、印刷制御部314は、印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たしていると判断し、1走査目が終了した後、印刷ヘッド41を2走査目の印刷部分に対応する位置(例えば、
図8(b)に示す印刷ヘッド41の位置)に移動させ(ステップS5)、引き続き、2走査目以降の印刷を行わせる(ステップS6)。
なお、2走査目以降の印刷の際には、爪表面の上方を最初に移動させる際(本実施形態では、1走査目の走査の際)の第1移動速度よりも速い第2移動速度(例えば、一般的な印刷装置の通常の印刷速度)で行うことが好ましい。
所定回数(例えば、
図8(a)から
図8(c)に示す例では3回)の走査が終了(ステップS7)すると、当該爪Tについてネイルデザインの印刷が完了し、本実施形態における印刷処理が終了する。
【0072】
他方、印刷ヘッド41の位置が変化していない場合(ステップS4;NO)には、印刷制御部314は、印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさないと判断し、エラー対応処理として直ちに印刷ヘッド41を停止させるようにX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48を制御して(ステップS8)、印刷動作を中止する。なお、印刷ヘッド41がインク吐出を行っている場合には、印刷制御部314は、インク吐出動作についても停止させる。
【0073】
印刷ヘッド41の印刷動作に異常が発生した場合(すなわち、動かなくなった、印刷動作を停止した等の場合)には、ランプ制御部315としてのプロセッサ31が報知用ランプ13のうち赤色のランプを点灯させ、ユーザに異常の発生(エラー)を報知する(ステップS9)。
また、異常が発生した旨を端末装置7に送信して、端末装置7側の表示部72にエラーメッセージや、印刷指U1の載置し直しを求めるメッセージ等を表示させてもよい。
【0074】
このようにすることで、印刷指U1や爪Tが適切に載置されておらず、移動体である印刷ヘッド41と衝突してしまうような場合でも、ユーザの印刷指U1や爪Tに与える衝撃
を最小限に抑え、安全にネイルプリントをやり直すことができる。
【0075】
さらに、本実施形態のプロセッサ31は、印刷動作がエラーとなった場合(すなわち、印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさないと判断する場合)には、エラー対応処理として印刷ヘッド41を停止させたのち、クリーニング部9において印刷ヘッド41のクリーニング処理を行わせる(ステップS10)。
これは、ユーザの爪Tに印刷ヘッド41が接触したことによってインク吐出面411(印刷ヘッド41のノズル)が汚れてしまうことに対する対処として、次に行われる印刷への悪影響を排除するために、印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさないと判断した場合において印刷ヘッド41のクリーニング処理を印刷ヘッドの停止に続いて行うようにしたものである。
【0076】
なお、前述のように、印刷ヘッド41をクリーニング部9に移動させる際には、印刷ヘッド41がさらに印刷指U1や爪Tに干渉しないように、印刷指U1が装置外に取り出されてから移動を開始することが好ましい。
このため、例えば印刷動作がエラーとなった場合には、端末装置7の表示部72に「指を抜いたらボタンを押してください」等のメッセージを表示させ、ユーザが印刷指U1を装置から抜き取り、端末装置7の操作部71等を操作すると、当該入力操作があったことがプロセッサ31に出力されるようにしてもよい。この場合、ユーザが印刷指U1を装置から抜き取った旨の情報をプロセッサ31が取得するとクリーニング処理に移行する。
なお、印刷指U1が装置外に取り出されたことをプロセッサ31が把握する手法はこれに限定されない。例えば撮影部50によって装置内の画像を随時取得し、当該画像を解析して、装置内に印刷指U1があるか否かを検出してもよい。また、例えば、指載置部2内に印刷指U1の有無を検知するセンサ(例えば押圧センサ、タッチセンサ等)を設け、当該センサからの検出結果に基づいて装置内に印刷指U1があるか否かを検出してもよい。
【0077】
クリーニング処理としては、程度の異なる複数種類が用意されていることが好ましい。
そして、例えば、プロセッサ31が、印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさないと判断したレベルに応じてクリーニング処理の種類を選択するようになっていることが好ましい。
例えば、本実施形態のクリーニング部9は、前述のようにスピット処理を行うスピット部91と、インク吐出面411をワイプするワイプ処理を行うワイプ部92とを含んでおり、クリーニング処理は、スピット処理、ワイプ処理又はこれらの組合せによって行われるようになっている。
【0078】
図10(a)及び
図10(b)は、クリーニング処理の具体的な内容の一例を示すフローチャートである。
図10(a)に示すシーケンスAは、念入りにクリーニングを行いたい場合に実行するクリーニング処理の例であり、
図10(b)に示すシーケンスBは、印刷終了時等に通常行われるクリーニング処理の例である。
シーケンスAの場合には、
図10(a)に示すように、印刷を開始するように端末装置7の操作部71等から指示が入力されると(ステップS21)、プロセッサ31は、まず印刷ヘッド41をスピット部91に移動させ、ノズルから500発の吐出動作を行わせる(ステップS22)。次に印刷ヘッド41をワイプ部92に移動させ、印刷ヘッド41のノズル面411をワイプ部材921でワイプする(ステップS23)。さらにプロセッサ31は、再び印刷ヘッド41をスピット部91に移動させ、ノズルから1000発の吐出動作を行わせる(ステップS24)。その後、印刷ヘッド41を所定の印刷開始位置に移動させ、印刷処理が行われる(ステップS25)。印刷が終了すると、再び印刷ヘッド41をスピット部91に移動させ、ノズルから300発の吐出動作を行わせた上で(ステップS26)、キャップ機構に移動させて、印刷ヘッド41のノズル面をキャッピングする(ステップS26)。これにより、印刷からクリーニング処理までの一連の処理が終了する。
シーケンスAのように、スピット処理を繰り返ししっかりと行うことで、印刷ヘッド41が爪Tに当たってインクがインク吐出面411に付着してしまった場合等でもインク吐出面411及び各ノズルを、印刷を行うのに適した状態に回復させることができる。
【0079】
他方シーケンスBの場合には、
図10(B)に示すように、印刷を開始するように端末装置7の操作部71等から指示が入力されると(ステップS31)、プロセッサ31は、まず印刷ヘッド41をスピット部91に移動させ、ノズルから300発の吐出動作を行わせる(ステップS32)。その後、印刷ヘッド41を所定の印刷開始位置に移動させ、印刷処理が行われる(ステップS33)。印刷が終了すると、再び印刷ヘッド41をスピット部91に移動させ、ノズルから300発の吐出動作を行わせた上で(ステップS34)、キャップ機構に移動させて、印刷ヘッド41のノズル面をキャッピングする(ステップS35)。これにより、印刷からクリーニング処理までの一連の処理が終了する。
シーケンスBのように、スピット処理を印刷の前後に1回ずつ行うのみで、印刷処理を行うことで、インク吐出面411及び各ノズルを、印刷を行うのに適した状態に回復させるとともに迅速に印刷処理を行うことができる。
【0080】
クリーニング処理を丁寧に行う方が確実にインク吐出面411をクリーニングすることができる。しかしその一方で、クリーニング処理に時間を要し、またスピット処理を多く行うとその分印刷外においてインクを多く消費してしまう。
このため、印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさないと判断されたが、すぐに印刷ヘッド41が停止し、あまりインク汚れ等が生じていないと判断される場合にはシーケンスBによるクリーニング処理を選択し、印刷動作が進んで爪全面にインクが多く付着している状態の爪Tに印刷ヘッド41が衝突した場合や印刷ヘッド41が停止した後暫く放置されていた場合等、インク汚れの程度がひどいかインクが固着してしまっている可能性があると判断される場合にはシーケンスAによる丁寧なクリーニング処理を選択するといったように、プロセッサ31がエラーのレベル(印刷ヘッド41の状態)に応じてクリーニング処理の種類を選択するようにすることが好ましい。
このように、シーケンスAによるクリーニングを行うかシーケンスBによるクリーニングを行うかの判断は、印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさないと判断された時点から印刷ヘッド41が停止するまでに掛かった時間が予め設定しておいた閾値を超えたかどうかで判断する又は印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさないと判断された時点から印刷ヘッド41が停止するまでに掛かった距離が予め設定された閾値を超えたかどうかで判断してもよい。
【0081】
なお、プロセッサ31が選択可能なクリーニング処理の種類はここに例示した2種類に限定されない。クリーニング処理の種類は1種類でもよいし、3種類以上用意されていてもよい。
例えばシーケンスAのステップS22,ステップS24,ステップS26におけるスピット処理のインク吐出回数をさらに増加させて、シーケンスAよりもさらに丁寧なクリーニングを行ったり、逆にステップS22,ステップS24,ステップS26におけるスピット処理のインク吐出回数を減らしたシーケンスAとシーケンスBとの中間レベルとなるクリーニング処理を用意して、状況に応じて選択可能としてもよい。
また、ワイプ処理におけるワイプ動作の回数を調整することで、さらに複数段階の種類のクリーニング処理を選択可能としてもよい。
【0082】
クリーニング処理が終了すると、プロセッサ31はさらに爪Tに対する印刷処理を行うか否かを判断し(ステップS11)、印刷処理を行うと判断される場合(ステップS11;YES)には、ステップS1に戻って処理を繰り返し、印刷処理を行わないと判断される場合(ステップS11;NO)には処理を終了する。
なおこの場合における「印刷処理を行うと判断される場合」には、エラーとなって印刷が中止された爪Tに対する再印刷を行う場合と、異なる指の爪Tに対する印刷を行う場合とが含まれる。エラーとなって印刷が中止された爪Tに対する再印刷の場合、印刷する画像に変更がない場合には、ステップS1を省略しステップS2から再開してもよい。
【0083】
以上のように、本実施形態によれば、印刷ヘッド41による爪Tに対する印刷が開始された後、プロセッサ31が、印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たしているか否かを判断して、設定された条件を満たしていると判断する場合には通常の処理を続行させ、設定された条件を満たさないと判断する場合にはエラー対応処理として駆動モータを停止させる。
このため、爪Tに対する印刷中に何らかのエラーが発生した場合には、速やかに印刷ヘッドを停止させて対応することができ、爪Tに対する印刷動作を安全に行うことができる。
また、印刷がエラーになった場合には、一旦爪Tに塗布されたインクを落として印刷をやり直すことが必要となるが、本実施形態では印刷ヘッドが停止するため、安全に指を装置外に取り出すことができ、爪Tに塗布されたインクの除去等、印刷のやり直しに向けた作業も迅速・円滑に行うことができる。
【0084】
また、本実施形態では、印刷ヘッド41の位置を検出する位置検出部としてのエンコーダ401を備えている。
このため、簡易な構成で印刷ヘッド41が正常に動作しているか否かを知ることができる。
【0085】
そして、エンコーダ401が検出した印刷ヘッド41の位置が所定時間内で変化がない場合には、印刷制御部314としてのプロセッサ31は、「印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさない」状態にあると判断し、印刷ヘッド41を停止させるようになっている。
このため、簡易な構成で印刷ヘッド41が印刷指U1や爪Tと衝突した等により動けない状態となっていることを検知することができる。
【0086】
また、本実施形態のネイルプリント装置1は、印刷ヘッド41のインク吐出面411をクリーニングするクリーニング部9をさらに備え、プロセッサ31は、印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさないと判断する場合に、エラー対応処理として駆動モータを停止させた後さらにクリーニング部9による印刷ヘッド41のクリーニング処理を行わせる。
このため、何らかのエラーによりインク吐出面411が汚れてしまった場合にも、クリーニングにより印刷に適した状態に回復させることができる。
【0087】
また、本実施形態では、クリーニング処理として、程度の異なる複数種類が用意されており、プロセッサ31は、印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさないと判断したレベルに応じてクリーニング処理の種類を選択する。
このため、エラーの程度等に応じて、必要に応じた適切なクリーニング処理を行うことができる。
【0088】
また、本実施形態では、クリーニング部9は、スピット処理を行うスピット部91と、前記インク吐出面をワイプするワイプ処理を行うワイプ部92とを含んでおり、クリーニング処理は、スピット処理、ワイプ処理又はこれらの組合せである。
このため、スピット処理によりノズルの目詰まり等を解消したりワイプ処理によってインク吐出面411に付着したインクを拭き取る等、印刷ヘッド41やインク吐出面411の汚れの程度等に応じて、適切なクリーニング処理を行うことができる。
【0089】
また、本実施形態では、爪表面の上方を移動しながら爪表面に印刷を行う移動体である印刷ヘッド41を駆動させる駆動モータとしてのX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48が、印刷ヘッド41の移動速度を複数段階に切り替え可能に構成されており、少なくとも爪表面の上方を最初に移動させる際には、印刷制御部314が、駆動モータが切り替え可能な移動速度の内、第1移動速度で印刷ヘッド41を移動させるように駆動モータを制御するようになっている。
そして、第1移動速度で移動させた後、印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たしていると判断する場合に、第1移動速度よりも早い第2移動速度で印刷ヘッド41を移動させるようになっている。
このため、印刷指U1や爪Tの載置の仕方が不適切で印刷ヘッド41と干渉(衝突)してしまうような場合でも、印刷指U1や爪Tが受ける衝撃が最低限で済み、また、印刷ヘッド41等の装置各部が衝撃で破損・故障するのも防ぐことができる。
これにより、安全にネイルプリントを行うことができる。
また、第1移動速度で印刷ヘッド41を移動させ異常が検出されなかったとき、その後は一定速度の第2移動速度で印刷ヘッド41を移動させるように制御している。
このため、一旦安全が確認された後は迅速に印刷動作を行うことができ、迅速かつ安全にネイルプリントを行うことができる。
【0090】
また、本実施形態では、印刷ヘッド41は、爪表面の上方を最初に移動する際にも爪表面への印刷動作(すなわち、インク吐出)を行うようになっている。
このため、爪表面の上方を最初に移動する際には、印刷指U1や爪Tと印刷ヘッド41との干渉チェックと印刷動作とを兼ねることができ、無駄な時間を省いて、迅速かつ安全にネイルプリントを行うことができる。
【0091】
また、本実施形態では、印刷ヘッド41は、複数回走査することによって爪表面に印刷を行うものであり、印刷制御部314は、このうち1回目の走査の際に、第1移動速度で印刷ヘッド41を移動させるように駆動モータを制御するようになっている。
このため、複数回の走査でネイルプリントを完成させる場合にも、無駄な時間を省いて、迅速かつ安全にネイルプリントを行うことができる。
【0092】
また、本実施形態では、各部の動作状態をユーザに報知する報知手段として、ネイルプリント装置1側に報知用ランプ13を備え、端末装置7側には警告表示等を行うことのできる表示部72を備え、位置検出部であるエンコーダ401が検出した印刷ヘッド41の位置が所定時間内で変化がない場合に、その旨をユーザに報知するようになっている。
このため、ユーザはネイルプリントができない状況やその原因を知ることができ、適切に対応することができる。
【0093】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0094】
例えば、本実施形態では、
図8(a)から
図8(c)に示すように、複数回の走査で爪表面に印刷を行う場合に、最初の1走査目のみを第1移動速度で行い、その後の2走査目以降は一定速度の第2移動速度で行うものとしたが、印刷ヘッド41の走査速度の制御はこれに限定されない。
印刷ヘッド41の走査は、最初の1走査目のみを第1移動速度で行い、その後の第2移動速度は、印刷ヘッド41の速度が徐々に速くなるようにすればよく、例えば、1走査目よりも2走査目、2走査目よりも3走査目の方が印刷ヘッド41の速度が速くなるように段階的に移動速度を切り替えるように印刷制御部314が駆動モータを制御してもよい。
また、1つの走査の中でも徐々に印刷ヘッド41の速度が上がるようにしてもよい。
このようにすることで、一旦印刷指U1や爪Tと印刷ヘッド41との干渉がないと判断された後はできるだけ速い速度で印刷を行い、迅速にネイルプリントを仕上げることが可能となる。
【0095】
また、本実施形態で示した印刷ヘッド41の走査の際の移動速度(駆動速度)を複数段階に制御することは必須ではない。
すなわち、上記実施形態ではプロセッサ31は、印刷ヘッド41を少なくとも爪表面の上方を最初に移動させる際、第1移動速度で印刷ヘッド41を移動するよう駆動モータを制御した後、設定された条件を満たしていると判断した場合に、印刷ヘッド41を第1移動速度より速い第2移動速度で移動するように駆動モータを制御する場合を例示した。
ただし本発明では、ここで例示したような複数段階の速度制御を行うことは必須の要素ではない。
例えば、最初の1走査目から印刷終了まで通常の印刷速度に相当する第2移動速度で印刷ヘッド41を移動させてもよい。
この場合には、ネイルプリントをより迅速に完了させることできる。
【0096】
また本実施形態では、「印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさない」状態となったときには、印刷指U1が装置外に取り出されるまで印刷ヘッド41を停止させたままとする例を示したが、印刷ヘッド41の動作制御はこれに限定されない。
例えば、プロセッサ31がエンコーダ401からの情報に基づいて印刷ヘッド41の位置を判断し、印刷指U1から遠ざかる方向(例えば印刷ヘッド41がX方向における印刷指U1の右側に位置していると判断される場合(例えば
図8(b)に示す状態)には、右方向)に印刷ヘッド41を移動させてクリーニング部9やキャップ機構6等に印刷ヘッド41を移動させるようにしてもよい。
この場合には、印刷指U1が装置外に取り出されたことを判断しなくても印刷ヘッド41を現状から迅速に移動させクリーニング処理等を行うことができる。
【0097】
また、既に印刷ヘッド41が爪Tの上に乗り上げてしまっている場合には、プロセッサ31は、印刷ヘッド41が爪幅方向(
図8(a)~
図8(c)等においてX方向)の中心位置よりも右側にあるか左側にあるかによって爪Tの上を移動する距離がより短い方に印刷ヘッド41を移動させるように制御してもよい。
例えば、X方向を右から左に向かって印刷ヘッド41が移動する場合に、印刷ヘッド41が爪幅方向の中心位置に達する前に停止(すなわち、中心位置よりも右側で停止)した場合には、印刷ヘッド41を右側に戻すように移動させて爪Tの上から離脱させる。また、同様にX方向を右から左に向かって印刷ヘッド41が移動する場合に、印刷ヘッド41が爪幅方向の中心位置を越えて停止(すなわち、中心位置よりも左側で停止)した場合には、そのまま印刷ヘッド41を左側に移動させて爪Tの上から離脱させる。
【0098】
印刷ヘッド41が爪Tの上に乗り上げている状態のままでは印刷指U1を抜き取ろうとしても困難である場合もある。また、印刷ヘッド41のインク吐出面411と爪Tとが接触している状態のまま無理に印刷指U1を引き抜こうとすると、爪Tを痛めるおそれがある。さらに、印刷ヘッド41側としてもインク吐出面411が傷つくおそれがあり、印刷ヘッド41と印刷指U1や爪Tとが当たっている(干渉している)状態をできるだけ早く解消することが好ましい。
この場合、両者のダメージを最小限に抑えられるように、印刷ヘッド41と爪Tとの位置関係等に基づいて、プロセッサ31が、印刷ヘッド41の移動方向(離脱方向)を決定することが好ましい。
【0099】
また本実施形態では、印刷ヘッド41の位置を検出する位置検出部としてのみならず、印刷ヘッド41の移動速度を検出する速度検出部としても機能するエンコーダ401を備えている。そこで、プロセッサ31は、エンコーダ401の検出結果に基づいて印刷ヘッド41の速度が所定閾値以下となったことをもって、印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさないと判断してもよい。
すなわち、本実施形態では、印刷ヘッド41の位置が所定時間内で変化がない場合に、「印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさない」状態にあるとして印刷ヘッド41を停止させる場合を例示したが、「印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさない」状態にあるか否かの判断はこれに限定されない。
印刷ヘッド41の速度が所定の閾値以下になった場合には、「印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさない」状態となったものとして、印刷制御部314が印刷ヘッド41を停止させるように駆動モータを制御する等のエラー対応処理を行うとしてもよい。
【0100】
図11は、印刷ヘッドを駆動させたときの速度特性を示すグラフである。
図11では、座標700以降の領域が印刷領域PAとされ、印刷ヘッド41の目標とされる駆動速度が7ips(inch/second)であり、座標600から印刷ヘッド41の駆動(印刷動作のための移動)が開始された場合を例示している。
図11に示す例では、印刷ヘッド41の駆動速度は、印刷領域PAである座標700以降の領域では目標速度である7ips(inch/second)の速度で安定している。
なお、
図11に示すグラフ上、座標700以降の領域でも速度特性が約1ipsの振幅で細かく上下動しているが、この速度変動幅αは、駆動モータ(ブラシ付きDCモータ)の有する特性によって生じるものであり、正常に動作しても生じてしまう誤差の範囲内の速度変化である。
印刷ヘッド41が印刷指U1や爪Tと接触すると、例えば
図11において点線で示すように印刷ヘッド41の駆動速度が急激に低下する。このため、例えば、上述の誤差範囲である速度変動幅αを加味しても明らかに何らかの異常が発生したものと判断できる速度に閾値を設け、この閾値を下回ったと判断した時点(例えば
図11においてβで示す点)で印刷ヘッド41が印刷指U1や爪Tと接触する等のエラーが発生したものと判断することが好ましい。
【0101】
この場合の閾値をどの程度に設定するかは適宜定められるが、例えば
図11に示す例では目標速度の60%に閾値を設けている。
また、
図11に示す例では、目標速度を7ips(inch/second)とし、閾値もこれを基準に設定する例を示しているが、目標速度は印刷モード等に応じた適切な速度として設定される印刷ヘッド41の移動速度であり、7ips(inch/second)に限定されない。
すなわち、前述のように、印刷制御部314は、ユーザの操作等により設定されたモード等に応じた適切な速度で印刷ヘッド41を移動させるようになっている。このため、例えば高精細に印刷を行うモードが設定されている場合であれば目標速度も比較的低速となり、迅速に印刷するモードが設定されている場合であれば目標速度は高精細なモードにおいて設定される速度よりも速い速度となる。
【0102】
このように、印刷指U1や爪Tと印刷ヘッド41との干渉の有無を印刷ヘッド41の駆動速度の変化で判断する場合には、移動体である印刷ヘッド41が印刷指U1や爪Tに突き当たって動かなくなるほどではないが、印刷ヘッド41のインク吐出面411等が爪表面に接触しながら移動している場合等でも適切に異常の発生を検知することができる。
印刷ヘッド41がわずかに爪Tに接触した程度であっても、爪表面が汚れ、美しい仕上がりのネイルプリントとならない。このような場合にも印刷ヘッド41を停止させることができ、インクを無駄に吐出することを防ぐことができるとともに、ネイルプリントのやり直し等の対応を早期に行うことができる。
【0103】
なお、スリット板401aに極細かい幅でスリットを形成し、エンコーダ401でこれを読み取ることによって、印刷ヘッド41が印刷指U1や爪Tをわずかにかすった程度の変化でも検出できるように構成してもよい。
この場合にも早期にエラーの発生を検出し適切な対応(駆動モータを停止させる等のエラー対応処理)を行うことができる。
【0104】
また、本実施形態では、印刷指U1や爪Tと印刷ヘッド41との干渉がないか否かを、エンコーダ401が検出する印刷ヘッド41の位置の変化で判断する場合を例示したが、印刷指U1や爪Tと印刷ヘッド41との干渉の有無の判断は、エンコーダ401の検出結果によるものに限定されない。
例えば、プロセッサ31が、駆動モータのトルクを参照することによって「印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさない」状態となったか否かを判断してもよい。
すなわち、印刷ヘッド41の駆動速度を一定に維持しようとする場合、駆動モータにはある一定のトルクがかかっている。しかし、印刷ヘッド41が印刷指U1や爪Tと干渉すると、同じトルクでは印刷ヘッド41の駆動速度を維持することができなくなり、駆動モータのトルクが変化する。
したがって、トルクの変化を見ることによってもエラーの発生を検知することができる。
【0105】
また例えば、
図12に示すように、ネイルプリント装置1の撮影部50を爪Tの上に配置させて爪Tの表面(爪表面)の画像を取得させ、取得された画像に異常がある場合には、「印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさない」状態となったものとして、印刷制御部314が印刷ヘッド41を停止させるように駆動モータを制御する等のエラー対応処理を行うとしてもよい。
【0106】
通常、爪Tにネイルプリントを行う場合には、発色をよくする等のために事前に爪表面に白色等の下地を塗ることが行われる。
この場合、印刷ヘッド41が移動前であり印刷開始位置にあるときには、
図13(a)に示すように、全面白色であったものが、印刷ヘッド41が爪表面の上方を移動した後に、
図13(b)に示すように汚れている場合には、印刷ヘッド41(印刷ヘッド41のインク吐出面等)が爪表面と接触したものと判断することができる。
そこで、撮影部50によって取得された画像にこのような異常がある場合には、「印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさない」状態となったものとして、印刷制御部314としてのプロセッサ31は、印刷ヘッド41を停止させる等のエラー対応処理を行う。
また、この場合にも、報知用ランプ13の点灯、端末装置7の表示部72への表示等を行って、当該異常の発生をユーザに報知することが好ましい。
【0107】
なお、印刷ヘッド41が印刷開始位置にあるときの画像(例えば、
図13(a)に示す画像)と、印刷ヘッド41が爪表面の上方を移動した後の画像との間に変化がある場合でも、それが印刷予定の絵柄が1走査分描かれて1走査分の領域が印刷終了領域Afとなった画像(例えば、
図13(c)に示すような画像)である場合には、印刷制御部314は、異常と判断せず、そのまま印刷動作を続けさせる。
印刷ヘッド41が爪表面の上方を移動した後の画像にどのような変化がある場合に異常と判断するかは、例えば印刷制御部314が印刷用データと撮影画像とを比較することで行われる。
【0108】
さらに、撮影部50によって取得された画像から印刷ヘッド41の位置を取得し、印刷ヘッド41の位置が変化していない場合や正常な印刷動作をしていないと判断される場合
に「印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさない」状態となったものとして、印刷制御部314としてのプロセッサ31が、印刷ヘッド41を停止させる等のエラー対応処理を行うとしてもよい。
【0109】
このように、印刷指U1や爪Tと印刷ヘッド41との干渉の有無を画像で判断する場合には、移動体である印刷ヘッド41が印刷指U1や爪Tに突き当たって動かなくなるほどではないが、爪表面に印刷ヘッド41の一部が擦れる等により爪表面を汚してしまい、美しい仕上がりのネイルプリントとならないような場合にも、印刷ヘッド41を停止させることができ、ネイルプリントのやり直し等の対応を早期に行うことができる。
このため、エンコーダ401による印刷ヘッド41の位置検出のみでは対応が難しい場面にも対応することが可能となる。
【0110】
なお、上述のように、印刷ヘッド41の駆動速度の変化を見てエラーの発生を判断する場合や、駆動モータのトルクの変化を見てエラーの発生を判断する場合等、印刷ヘッド41の位置の変化(すなわち印刷ヘッド41が停止したか否か)以外によって「印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさない」状態となったか否かを判断する場合には、変化が微細であり、それのみではエラーが発生したか否かを正確に判断することが難しい場合もあり得る。
そこで、これらの手法を用いる場合には、判断の正確性を担保するために、撮影部50によって画像を取得しこれを解析する手法も併せて用いることが好ましい。
【0111】
また、本実施形態では、「印刷ヘッド41による印刷動作が設定された条件を満たさない」状態となった場合のエラー対応処理として、印刷ヘッド41(これを駆動させる駆動モータ)を停止させ、クリーニング処理を行う場合を例示したが、エラー対応処理はこれに限定されない。
例えば、エラー対応処理として印刷ヘッド41(これを駆動させる駆動モータ)を停止させるのみとしてもよい。エラーの程度によってはインク吐出面411等のクリーニングでは対応できない場合も考えられる。なお、このような場合には、印刷ヘッド41を交換するようユーザに促す表示を行う等の対応を行ってもよい。
【0112】
また、本実施形態では、最初の1走査目のみを第1移動速度で行う場合を例示したが、これに限定されない。
例えば、ネイルプリント装置に印刷指U1及び爪Tを側爪郭側から撮影可能な撮影部を備えて、印刷指U1を指載置部2に載置した際に、爪T(爪Tの表面)と移動体である印刷ヘッド41とが所定値以上近接する範囲を検出し、その範囲の上方を走査する際にも第1移動速度となるように印刷制御部314が駆動モータを制御してもよい。
これにより、
図1等におけるY方向での爪の湾曲が強いユーザにおいても、印刷ヘッド41の印刷指U1や爪Tへの衝突の衝撃を和らげることができる。
【0113】
また、本実施形態では、印刷指U1や爪Tと干渉する移動体が印刷ヘッド41である場合を例示したが、移動体は印刷ヘッド41に限定されない。例えば、印刷ヘッド41を保持するキャリッジであってもよく、キャリッジが印刷指U1や爪Tと干渉することでエンコーダ401等が異常を検知した場合にも、印刷制御部314は、印刷ヘッド41(及びキャリッジ)の移動を停止させるように駆動モータを制御する。
また、印刷ヘッド41やキャリッジ等が印刷指U1や爪Tと干渉する前に、印刷指U1や爪Tに突き当たるような緩衝部材が印刷ヘッド41やキャリッジ等に取り付けられていてもよい。この場合には緩衝部材も移動体に含まれるものとする。
この場合、緩衝部材をウレタン樹脂等の柔らかい材料で形成すれば、印刷指U1や爪Tへの衝撃をより一層和らげることができるとともに、印刷ヘッド41等の破損もより確実に防ぐことができる。
【0114】
また、本実施形態では、クリーニング部9としてスピット部91とワイプ部92とを有する場合を例示したが、クリーニング部9の種類はこれに限定されない。これらの代わりに、又はこれらと併せて、他のクリーニング部を設けてもよい。
他のクリーニング部としては、例えば、フェルト等の高吸収性の材料で形成された吸収部材をインク吐出面411に押し当ててインク吐出面411に付着したインク等を吸収・吸着させて除去するもの等を設けてもよい。
複数種類のクリーニング部9を備える場合、いかなる種類のクリーニングをどの程度行うかの組み合わせは、エラーの程度や状況に応じてプロセッサ31が適宜判断することが好ましい。
【0115】
また、本実施形態では、ネイルプリント装置1側の報知手段として報知用ランプ13が設けられている場合を例示したが、報知手段はこれに限定されない。
例えば、ネイルプリント装置1に警告メッセージ等を表示可能な表示部を備えて、これを報知手段として機能させてもよい。また、ネイルプリント装置1に報知手段としてスピーカ等の音声出力手段を設けて、音声やブザー等によりユーザに報知するようにしてもよい。
【0116】
本実施形態では、印刷開始指示の入力や、印刷用データの生成等を端末装置7側で行う場合を例としたが、各種指示の入力部や印刷用データを生成する印刷データ生成部等をネイルプリント装置1側に設けて、ネイルプリント装置1の制御装置30がこれらの処理を行うようにしてもよい。
また、本実施形態では、ネイルプリント装置1が端末装置7と連携して印刷システムを構成し、爪に印刷を行う場合を例示したが、ネイルプリント装置1はここに示すようなものに限定されず、単体で印刷動作が完結するように構成されたものであってもよい。
【0117】
また、本実施形態では、ネイルデザインの画像データを格納するネイルデザイン記憶領域822が端末装置7の記憶部82に設けられている場合を例示したが、ネイルデザインの画像データは端末装置7の記憶部82に保存されている場合に限定されず、ネイルプリント装置1の記憶部32に保存されていてもよい。
また、ネットワーク回線等を介して接続可能なサーバ装置等にネイルデザインの画像データを記憶させておき、サーバ装置等にアクセスしてネイルデザインの画像データを参照可能に構成してもよい。
このようにすることで、より多くのネイルデザインの中から印刷するデザインを選択することが可能となる。
【0118】
また、本実施形態では、ネイルプリント装置1の印刷ヘッド41として、インクジェット方式の印刷ヘッド41を備える構成としたが、印刷ヘッド41の構成はこれに限定されない。
【0119】
また、ネイルプリント装置1に、印刷後にインクを乾燥させるためのヒータやファンを備える乾燥部が設けられていてもよい。
【0120】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
爪表面に印刷を行う印刷ヘッドと、
各部を制御するプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、前記印刷ヘッドによる印刷動作が設定された条件を満たしているか否かを判断し、前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たしていると判断する場合には前記印刷動作を続行させ、前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たさないと判断する場合には前記印刷ヘッドが前記爪と干渉したことによるエラー状態が生じたものと判断し前記印刷動作とは異なるエラー対応処理を行わせるネイルプリント装置。
<請求項2>
前記印刷ヘッドの移動速度を検出する速度検出部をさらに備え、
前記プロセッサは、前記速度検出部が検出した前記印刷ヘッドの速度が設定された閾値以下となったことをもって、前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たさないと判断する請求項1に記載のネイルプリント装置。
<請求項3>
前記印刷ヘッドの位置を検出する位置検出部をさらに備え、
前記プロセッサは、前記位置検出部が検出した前記印刷ヘッドの位置が所定時間内で変化がないことをもって、前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たさないと判断する請求項1に記載のネイルプリント装置。
<請求項4>
前記爪表面を撮影して前記爪表面の画像を取得する撮像装置をさらに備え、
前記プロセッサは、前記撮像装置により取得された画像に異常があることもって、前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たさないと判断する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のネイルプリント装置。
<請求項5>
前記印刷ヘッドを移動させる駆動モータをさらに備え、
前記プロセッサは、前記印刷ヘッドを少なくとも前記爪表面の上方を最初に移動させる際、第1移動速度で前記印刷ヘッドを移動するよう前記駆動モータを制御した後、前記設定された条件を満たしていると判断した場合、前記印刷ヘッドを前記第1移動速度より速い第2移動速度で移動するように前記駆動モータを制御する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のネイルプリント装置。
<請求項6>
前記印刷ヘッドは、複数回走査することによって前記爪表面に印刷を行うものであり、
前記プロセッサは、少なくとも1回目の走査の際に、前記第1移動速度で前記印刷ヘッドを移動させるように前記駆動モータを制御する請求項5に記載のネイルプリント装置。<請求項7>
前記印刷ヘッドが複数回走査することによって前記爪表面に印刷を行う場合に、前記プロセッサは、前記印刷ヘッドの前記第2移動速度が徐々に速くなるように前記駆動モータを制御する請求項5に記載のネイルプリント装置。
<請求項8>
前記印刷ヘッドが複数回走査することによって前記爪表面に印刷を行う場合に、前記プロセッサは、前記印刷ヘッドの前記第2移動速度を一定速度になるように前記駆動モータを制御する請求項5に記載のネイルプリント装置。
<請求項9>
前記プロセッサは、前記爪表面と前記印刷ヘッドとが所定値以上近接する範囲を走査する際に、前記第1移動速度で前記印刷ヘッドを移動させるように前記駆動モータを制御する請求項5から請求項8のいずれか一項に記載のネイルプリント装置。
<請求項10>
前記印刷ヘッドのインク吐出面をクリーニングするクリーニング部をさらに備え、
前記プロセッサは、前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たさないと判断する場合に、前記エラー対応処理として前記クリーニング部による前記印刷ヘッドのクリーニング処理を行わせる請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のネイルプリント装置。
<請求項11>
前記クリーニング処理として、程度の異なる複数種類が用意されており、
前記プロセッサは、前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たさないと判断したときの前記印刷ヘッドの状態に応じて前記クリーニング処理の種類を選択する請求項10に記載のネイルプリント装置。
<請求項12>
前記クリーニング部は、スピット処理を行うスピット部と、前記インク吐出面をワイプするワイプ処理を行うワイプ部とを含んでおり、
前記クリーニング処理は、前記スピット処理、前記ワイプ処理又はこれらの組合せである請求項10又は請求項11に記載のネイルプリント装置。
<請求項13>
ネイルプリント装置のネイルプリント方法であり、
前記ネイルプリント装置は、爪表面に印刷を行う印刷ヘッドを備え、
前記印刷ヘッドによる印刷動作が設定された条件を満たしているか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程において前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たしていると判断する場合には前記印刷動作を続行させ、前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たさないと判断する場合には前記印刷ヘッドが前記爪と干渉したことによるエラー状態が生じたものと判断し前記印刷動作とは異なるエラー対応処理を行わせる処理選択工程と、
を含んでいるネイルプリント方法。
<請求項14>
爪表面に印刷を行う印刷ヘッドを備えるネイルプリント装置のコンピュータに、
前記印刷ヘッドによる印刷動作が設定された条件を満たしているか否かを判断する判断機能と、
前記判断機能によって前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たしていると判断する場合には前記印刷動作を続行させ、前記印刷ヘッドによる印刷動作が前記設定された条件を満たさないと判断する場合には前記印刷ヘッドが前記爪と干渉したことによるエラー状態が生じたものと判断し前記印刷動作とは異なるエラー対応処理を行わせる処理選択機能と、
を実現させるプログラム。
【符号の説明】
【0121】
1 ネイルプリント装置
7 端末装置
13 報知用ランプ
40 印刷部
41 印刷ヘッド
31 プロセッサ
32 記憶部
313 爪情報検出部
314 印刷制御部
401 エンコーダ
T 爪
U1 印刷指
【手続補正書】
【提出日】2023-10-20
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷制御方法及びプログラムに関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、印刷ヘッドが印刷対象に接触した場合であっても、その衝撃をできるだけ軽減して故障の発生を抑制することのできる印刷装置、印刷制御方法及びプログラムを提供することを課題とするものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る印刷装置は、インクを吐出する印刷ヘッドの印刷対象への接触を検出する検出手段と、前記印刷ヘッドを前記印刷対象の上方を最初に移動させるときに第1移動速度で前記印刷ヘッドを移動させるとともに、前記第1移動速度で前記印刷ヘッドを移動させているときに前記印刷ヘッドの前記印刷対象への接触が前記検出手段により非検出とされたことを条件に、前記印刷ヘッドの移動速度が前記第1移動速度よりも速い第2移動速度になるように前記印刷ヘッドの移動速度を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る印刷制御方法は、印刷装置が実行する印刷制御方法であって、インクを吐出する印刷ヘッドの印刷対象への接触を検出する検出処理と、前記印刷ヘッドを前記印刷対象の上方を最初に移動させるときに第1移動速度で前記印刷ヘッドを移動させるとともに、前記第1移動速度で前記印刷ヘッドを移動させているときに前記印刷ヘッドの前記印刷対象への接触が前記検出処理で非検出とされたことを条件に、前記印刷ヘッドの移動速度が前記第1移動速度よりも速い第2移動速度になるように前記印刷ヘッドの移動速度を制御する移動制御処理と、を含むことを特徴とする。
また、本発明に係るプログラムは、インクを吐出する印刷ヘッドの印刷対象への接触を検出する検出手段を備えたコンピュータを、前記印刷ヘッドを前記印刷対象の上方を最初に移動させるときに第1移動速度で前記印刷ヘッドを移動させるとともに、前記第1移動速度で前記印刷ヘッドを移動させているときに前記印刷ヘッドの前記印刷対象への接触が前記検出手段により非検出とされたことを条件に、前記印刷ヘッドの移動速度が前記第1移動速度よりも速い第2移動速度になるように前記印刷ヘッドの移動速度を制御する制御手段、として機能させることを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明によれば、印刷ヘッドが印刷対象に接触した場合であっても、その衝撃をできるだけ軽減して故障の発生を抑制することのできる印刷装置、印刷制御方法及びプログラムを提供できる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する印刷ヘッドの印刷対象への接触を検出する検出手段と、
前記印刷ヘッドを前記印刷対象の上方を最初に移動させるときに第1移動速度で前記印刷ヘッドを移動させるとともに、前記第1移動速度で前記印刷ヘッドを移動させているときに前記印刷ヘッドの前記印刷対象への接触が前記検出手段により非検出とされたことを条件に、前記印刷ヘッドの移動速度が前記第1移動速度よりも速い第2移動速度になるように前記印刷ヘッドの移動速度を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記印刷ヘッドを前記印刷対象の上方を最初に移動させるときには前記印刷ヘッドからの前記インクの吐出を停止させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記印刷対象への前記印刷ヘッドの接触が前記検出手段により検出された場合には前記印刷ヘッドの移動を一旦停止させたうえで、所定のタイミングで前記印刷ヘッドを所定のクリーニング部に移動させる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
印刷装置が実行する印刷制御方法であって、
インクを吐出する印刷ヘッドの印刷対象への接触を検出する検出処理と、
前記印刷ヘッドを前記印刷対象の上方を最初に移動させるときに第1移動速度で前記印刷ヘッドを移動させるとともに、前記第1移動速度で前記印刷ヘッドを移動させているときに前記印刷ヘッドの前記印刷対象への接触が前記検出処理で非検出とされたことを条件に、前記印刷ヘッドの移動速度が前記第1移動速度よりも速い第2移動速度になるように前記印刷ヘッドの移動速度を制御する移動制御処理と、
を含むことを特徴とする印刷制御方法。
【請求項5】
インクを吐出する印刷ヘッドの印刷対象への接触を検出する検出手段を備えたコンピュータを、
前記印刷ヘッドを前記印刷対象の上方を最初に移動させるときに第1移動速度で前記印刷ヘッドを移動させるとともに、前記第1移動速度で前記印刷ヘッドを移動させているときに前記印刷ヘッドの前記印刷対象への接触が前記検出手段により非検出とされたことを条件に、前記印刷ヘッドの移動速度が前記第1移動速度よりも速い第2移動速度になるように前記印刷ヘッドの移動速度を制御する制御手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。