(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181242
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】プレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法、プレキャスト部材の接合方法およびプレキャスト部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 7/16 20060101AFI20231214BHJP
B28B 7/30 20060101ALI20231214BHJP
E04C 3/20 20060101ALI20231214BHJP
E04B 1/18 20060101ALI20231214BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B28B7/16 C
B28B7/30
E04C3/20
E04B1/18 G
E04B1/58 508A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023178688
(22)【出願日】2023-10-17
(62)【分割の表示】P 2020044950の分割
【原出願日】2020-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107272
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 敬二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109140
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 研一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 博幸
(57)【要約】
【課題】スパイラル形のシース管を用いずに、鉄筋挿入孔の界面を鉄筋への付着力が期待できる仕上げとし、低コスト化を実現可能なプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法、その鉄筋挿入孔に鉄筋を挿入し確実に定着させるプレキャスト部材の接合方法およびプレキャスト部材を提供する。
【解決手段】このプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法は、管周方向の凹凸が管長手方向に繰り返し多数形成された合成樹脂製可撓電線管31の内側に単管32を挿入して鉄筋挿入孔用型枠材30を作製し、鉄筋挿入孔用型枠材を配置したプレキャスト部材用型枠にコンクリートを打設して作製されたプレキャスト部材から単管を取り外し合成樹脂製可撓電線管を取り外すことで鉄筋挿入孔用型枠材を除去することにより合成樹脂製可撓電線管の凹凸に対応した凹凸が内周面に形成された鉄筋挿入孔をプレキャスト部材に形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャスト部材に鉄筋挿入孔を形成する方法であって、
管周方向の凹凸が管長手方向に繰り返し多数形成された合成樹脂製可撓電線管の内側に単管を挿入して鉄筋挿入孔用型枠材を作製する工程と、
前記鉄筋挿入孔用型枠材をプレキャスト部材用型枠に配置する工程と、
前記プレキャスト部材用型枠にコンクリートを打設する工程と、
前記コンクリート打設により作製されたプレキャスト部材から前記単管を取り外す工程と、
前記プレキャスト部材から前記合成樹脂製可撓電線管を取り外すことで前記鉄筋挿入孔用型枠材を除去する工程と、を含み、
前記鉄筋挿入孔用型枠材の除去により前記合成樹脂製可撓電線管の凹凸に対応した凹凸が内周面に形成された鉄筋挿入孔を前記プレキャスト部材に形成するプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法。
【請求項2】
前記合成樹脂製可撓電線管に予め全長に渡って切れ目を入れておき、前記単管を抜いてから前記合成樹脂製可撓電線管を前記切れ目から内側に折り曲げて外せるようにする請求項1に記載のプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法。
【請求項3】
前記単管の外周に鉄筋カバーを配置してから、前記単管を前記合成樹脂製可撓電線管の内側に挿入する請求項1または2に記載のプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法。
【請求項4】
前記鉄筋カバーに予め全長に渡って切れ目を入れておき、前記単管を抜いてから前記鉄筋カバーを前記切れ目から内側に折り曲げて外せるようにする請求項3に記載のプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法により第1プレキャスト部材の第1鉄筋挿入孔および第2プレキャスト部材の第2鉄筋挿入孔をそれぞれ形成し、前記第1および第2鉄筋挿入孔に鉄筋を挿入し、次に、充填材を前記第1および第2鉄筋挿入孔内に充填して前記鉄筋を定着させることで前記第1プレキャスト部材と前記第2プレキャスト部材とを接合するプレキャスト部材の接合方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載のプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法により形成された鉄筋挿入孔を有するプレキャスト部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト部材に鉄筋挿入孔を形成する方法、その鉄筋挿入孔に鉄筋を挿入し定着させるプレキャスト部材の接合方法およびプレキャスト部材に関する。
【背景技術】
【0002】
RC造建物の柱、梁をプレキャスト(PCa)部材とした場合、その接合部(柱梁)における梁主筋は、通し配筋となるかまたは接合部内で機械式継ぎ手となる場合が多い。一方、柱梁接合部もPCa化する構工法が幾つか提案されているが、柱梁接合部を含むすべての部材がPCa化された構工法として実用化されているのは、LRV工法あるいはスクライム工法の2工法である。これらの工法の詳細を見ると、前者については、接合部から両方向に半スパン分延びるPCa梁の梁主筋は、接合される梁PCaに組み込まれた機械式継ぎ手にグラウト接合される。PCa梁部分接合後に、柱梁接合部の柱主筋貫通孔を柱PCa下端の柱主筋(長さ≧接合部高さ+定着長さ)が貫通し、かつ1層下の柱PCa(機械式継ぎ手)にグラウト定着する機構が基本となっている。後者については、柱PCaは、上部が柱梁接合部と一体となった形状で、梁PCaの梁主筋は、(柱せい+定着長さ)以上の長さを有し、片側から柱梁接合部を貫通し、逆側の梁PCaの雌孔(機械式継ぎ手)にグラウト定着する機構が基本となっている。これらの構工法は、いずれもこれまで常識的に捉えられていた鉄筋の接合方法を、一方は部材全体を貫通し、なおかつ逆側の部材に定着させると言う、発想の転換を図り、他方は、部材中央で両方からの定着で、部材内で一体化を図ると言う、常識外れの継ぎ手方法となっている。
【0003】
この部材内を貫通する鉄筋挿入孔の作製方法に着目すると、PCa部材の鉄筋挿入孔の型枠材にスパイラル形シース管を用いる方法と、紙ボイド管と薄肉塩ビ管を用いる方法が公知であるが、前者のスパイラル形のシース管を型枠材として使用する方法は、シース管に螺旋形の節形が刻んであるため、コンクリートとの付着が良く、厚みが薄型でも剛性に富み、コンクリート圧が作動しても挿入孔の形状を保持できるため多く使用されている。
【0004】
特許文献1は、PCa部材にシース管を用いずに容易に貫通孔内に凹凸を設けるために、単管パイプにビニールホースを被せ、ビニールホースの周囲にゴムひもを螺旋状に巻き付け、PCa部材施工用の治具とし、この治具を型枠内の貫通孔を形成する予定の位置に固定し、コンクリートを打設し、所定の強度を発現後、単管パイプ、ビニールホース、ゴムひもの順に治具を除去し、治具を除去した跡は主筋の貫通孔となり、その内面には螺旋状に延びた凹部が形成された状態となることにより、PCa部材にシース管レスで主筋貫通孔を形成し、かつ、貫通孔の内面に容易に凹凸を設けるようにしたPCa部材の製造方法を開示する(
図5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のスパイラル形シース管を用いる方法は、同形のシース管を所定位置に据えるだけであるが、最終的にグラウト材注入孔が管の途中になる場合、注入孔のジョイントが複雑な形状になったり、管径の種類が限定されているため、鉄筋との間隙が相対的に大きくなり、グラウト材が必要以上に多くなる可能性がある。また、結果的に捨て型枠となるため、全貫通孔長分の材料が必要となる。すなわち、スパイラル形のシース管は、捨て型枠であり、その価格と取付け手間を考慮すると決して安価とは言えず、また、挿入する鉄筋の径よりも大きな径のシース管を用いる必要があるため、配筋が交差する箇所では、その配置に制限が生じる可能性が高い。
【0007】
また、紙ボイド管と薄肉塩ビ管を用いる方法は、シース管と同様に、そのままで型枠材として使用でき、剥離剤を塗布するなどすれば、転用も可能となるが、何れにしても、出来形面が打ち放しになるため、鉄筋の付着力が大幅に低減される可能性が大きい。
【0008】
特許文献1の方法は、シース管を用いない工法の実現のため単管パイプにビニールホースを被せ、ビニールホースの周囲にゴムひもを螺旋状に巻き付けた治具を型枠内に固定するが、ビニールホースの周囲に巻き付けたゴムひもにより螺旋状に延びた溝を形成することから、きちんとした溝形状にならない場合が多く、鉄筋の付着力が低減する可能性が大きい。また、プレキャスト部材からのゴムひも撤去も手間がかかり容易ではない。
【0009】
プレキャスト(PCa)工法によるプレキャスト率を高めるには、主筋の貫通孔がポイントとなることは、LRV工法やスクライム工法の部材構成を見ても明らかである。しかしながら、構造的には貫通孔内の鉄筋付着力を担保する必要があり、界面を形成するグラウト材が貫通孔内の全域に渡り密実に注入されることが必要条件となる。さらに、貫通孔とグラウト材の接触面にも付着力が期待されるが、ボイド材や塩ビ管では、接触面が円滑となるため、界面で破断する可能性が大きく、少なくともシース管ほどの付着力は期待できない。
【0010】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、スパイラル形のシース管を用いずに、鉄筋挿入孔の界面を鉄筋への付着力が期待できる仕上げとし、脱型・転用可能な材料構成とし、低コスト化を実現可能なプレキャスト(PCa)部材の鉄筋挿入孔の形成方法、その鉄筋挿入孔に鉄筋を挿入し確実に定着させるプレキャスト部材の接合方法およびプレキャスト部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するためのプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法は、プレキャスト部材に鉄筋挿入孔を形成する方法であって、
管周方向の凹凸が管長手方向に繰り返し多数形成された合成樹脂製可撓電線管の内側に単管を挿入して鉄筋挿入孔用型枠材を作製する工程と、前記鉄筋挿入孔用型枠材をプレキャスト部材用型枠に配置する工程と、前記プレキャスト部材用型枠にコンクリートを打設する工程と、前記コンクリート打設により作製されたプレキャスト部材から前記単管を取り外す工程と、前記プレキャスト部材から前記合成樹脂製可撓電線管を取り外すことで前記鉄筋挿入孔用型枠材を除去する工程と、を含み、
前記鉄筋挿入孔用型枠材の除去により前記合成樹脂製可撓電線管の凹凸に対応した凹凸が内周面に形成された鉄筋挿入孔を前記プレキャスト部材に形成するものである。
【0012】
このプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法によれば、管周方向の凹凸が管長手方向に繰り返し多数形成された合成樹脂製可撓電線管の内側に単管を挿入し作製した鉄筋挿入孔用型枠材をプレキャスト部材用型枠に配置し、コンクリート打設後にプレキャスト部材から単管を取り外し合成樹脂製可撓電線管を取り外すことで鉄筋挿入孔用型枠材を脱型した後にプレキャスト部材にできる鉄筋挿入孔には、その内周面において合成樹脂製可撓電線管の凹凸に対応した孔周方向の凹凸が孔長手方向に多数形成される。この鉄筋挿入孔の内周面における多数の凹凸は、比較的硬質な合成樹脂製可撓電線管の凹凸によって形状が明瞭で品質のよい仕上げとなる。そのため、このプレキャスト部材の鉄筋挿入孔に鉄筋が挿入され、充填材が充填されることで、鉄筋挿入孔内に形成された凹凸面により充填材の充分な付着力を得ることができる。このようにして、従来のスパイラル形のシース管を用いずに鉄筋挿入孔内で充分な鉄筋の定着力を得て鉄筋とプレキャスト部材とを確実に一体化させることができる。また、電気工事の分野で多用され比較的廉価な市販品である合成樹脂製可撓電線管を転用し、シース管を使用せずに済むので、材料費がかさまずにコスト的に有利である。
【0013】
上記プレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法において、前記合成樹脂製可撓電線管に予め全長に渡って切れ目を入れておき、前記単管を抜いてから前記合成樹脂製可撓電線管を前記切れ目から内側に折り曲げて外せるようにすることで前記プレキャスト部材からの取り外しが容易になる。
【0014】
また、必要に応じて前記単管の外周に鉄筋カバーを配置してから、前記単管を前記合成樹脂製可撓電線管の内側に挿入することが好ましい。これにより、単管の引き抜きがより容易になる。
【0015】
また、前記鉄筋カバーに予め全長に渡って切れ目を入れておき、前記単管を抜いてから前記鉄筋カバーを前記切れ目から内側に折り曲げて外せるようにすることで取り外しが容易になる。
【0016】
上記目的を達成するためのプレキャスト部材の接合方法は、上述のプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法により第1プレキャスト部材の第1鉄筋挿入孔および第2プレキャスト部材の第2鉄筋挿入孔をそれぞれ形成し、前記第1および第2鉄筋挿入孔に鉄筋を挿入し、次に、充填材を前記第1および第2鉄筋挿入孔内に充填して前記鉄筋を定着させることで前記第1プレキャスト部材と前記第2プレキャスト部材とを接合するものである。
【0017】
このプレキャスト部材の接合方法によれば、上述のプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法により形成した第1および第2鉄筋挿入孔に鉄筋を挿入し、次に、充填材を充填することで、第1,第2プレキャスト部材の第1,第2鉄筋挿入孔内において充填材の充分な付着力を得ることができる。このようにして、従来のスパイラル形のシース管を用いずに鉄筋挿入孔内で充分な鉄筋の定着力を得て鉄筋とプレキャスト部材とを確実に一体化させることで第1プレキャスト部材と第2プレキャスト部材とを確実に接合させることができる。
【0018】
上記目的を達成するためのプレキャスト部材は、上述のプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法により形成された鉄筋挿入孔を有する。
【0019】
このプレキャスト部材によれば、鉄筋挿入孔には、その内周面において合成樹脂製可撓電線管の凹凸に対応した孔周面の凹凸が孔長手方向に多数形成されている。この鉄筋挿入孔の内周面における多数の凹凸は、硬質な合成樹脂製可撓電線管の凹凸によって形状が明瞭で品質のよい仕上げとなっている。このプレキャスト部材の鉄筋挿入孔に鉄筋が挿入され充填材が充填されると、鉄筋挿入孔内において充填材による充分な付着力を得ることができ、鉄筋挿入孔内で充分な鉄筋の定着力を得て鉄筋とプレキャスト部材とを確実に一体化させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法、プレキャスト部材の接合方法およびプレキャスト部材によれば、スパイラル形のシース管を用いずに、鉄筋挿入孔の界面を鉄筋への付着力が期待できる仕上げにすることができるとともに、脱型・転用可能な材料構成にできることから、低コスト化を実現することができ、また、プレキャスト部材の鉄筋挿入孔に鉄筋を挿入し、鉄筋とプレキャスト部材とを確実に一体化でき、プレキャスト部材同士を確実に接合できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態による単管と合成樹脂製可撓電線管とから構成した鉄筋挿入孔形成のための型枠材の作製工程を示す外観図(a)、作製後の型枠材の外観図(b)および型枠材を端部から見た側面図(c)である。
【
図2】
図1の合成樹脂製可撓電線管の部分側面図(a)および管長手方向に切断してみた断面図(b)である。
【
図3】鉄筋カバーを単管に被せて構成した鉄筋挿入孔形成のための型枠材の
図1(c)と同様の側面図である。
【
図4】本実施形態におけるプレキャスト部材である柱梁接合部の要部側断面図である。
【
図5】本実施形態におけるプレキャスト部材である梁部材の要部側断面図である。
【
図6】
図4の柱梁接合部および
図5の梁部材に形成された鉄筋挿入孔の要部断面図である。
【
図7】本実施形態による鉄筋挿入孔の形成工程およびプレキャスト部材同士の接合工程を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図4の柱梁接合部の鉄筋挿入孔と
図5の梁部材の鉄筋挿入孔とに対し梁主筋を挿入する状況を示す側断面図である。
【
図9】本実験例でコンクリート部材に形成した鉄筋挿入孔の外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
図1は本実施形態による単管と合成樹脂製可撓電線管とから構成した鉄筋挿入孔形成のための型枠材の作製工程を示す外観図(a)、作製後の型枠材の外観図(b)および型枠材を端部から見た側面図(c)である。
図2は、
図1の合成樹脂製可撓電線管の部分側面図(a)および管長手方向に切断してみた断面図(b)である。
図3は、鉄筋カバーを単管に被せて構成した鉄筋挿入孔形成のための型枠材の
図1(c)と同様の側面図である。
【0023】
図1(a)~(c)のように、合成樹脂製可撓電線管31の内側に塩ビ管や鋼管等からなる単管32を挿入する(
図2(b)参照)ことで、鉄筋挿入孔形成のための型枠材30を作製する。なお、単管32として実際に使用する鉄筋と同じ径の鉄筋や棒鋼を用いてもよい。
【0024】
図2(a)(b)のように、合成樹脂製可撓電線管31は、管周方向に一周形成された凹部31aと、凹部31aと隣接して一体に一周形成された凸部31bと、を有し、凹部31aと凸部31bとが管長手方向に繰り返し多数形成されている。なお、合成樹脂製可撓電線管31は、内部に電線を通すようにしてコンクリートに埋設もしくは露出して使用され、電気工事の分野で多用されているもので、PF管やCD管として市販されており、多数の内径サイズの製品も用意されている。
【0025】
また、鉄筋挿入孔形成用型枠材30の長さは、作製されるプレキャスト部材における鉄筋挿入孔の長さに応じて設定される。鉄筋挿入孔形成用型枠材30の径は、合成樹脂製可撓電線管31の外径に対応し、PF管・CD管の既定のサイズ(内径)から鉄筋径に応じて選択される。単管32の外径は、鉄筋挿入孔に挿入される鉄筋の径に応じて選定される。
【0026】
また、合成樹脂製可撓電線管31の内径と単管32の外径との関係から、必要に応じて
図3のように、スチレンボイド等からなる鉄筋カバー33を単管32に被せてから、この単管32を合成樹脂製可撓電線管31の内側に挿入することで鉄筋挿入孔形成用型枠材30Aとしてもよい。
【0027】
また、合成樹脂製可撓電線管31には、予め全長に渡って切れ目を入れておき、鉄筋挿入孔形成用型枠材30の脱型時に、単管32を抜いてから合成樹脂製可撓電線管31を切れ目から内側に折り曲げるようにして外せるようにすることが好ましい。また、
図3の場合にも鉄筋カバー33に予め全長に渡って切れ目を入れておき、鉄筋挿入孔形成用型枠材30の脱型時に、単管32を抜いてから鉄筋カバー33を切れ目から内側に折り曲げるようにして外せるようにすることが好ましい。
【0028】
次に、
図1,
図2の鉄筋挿入孔形成用型枠材30により鉄筋挿入孔を形成するプレキャスト部材の例を説明する。
図4は、本実施形態におけるプレキャスト部材である柱梁接合部の要部側断面図である。
図5は、同じくプレキャスト部材である梁部材の要部側断面図である。
図6は、
図4の柱梁接合部および
図5の梁部材に形成された鉄筋挿入孔の要部断面図である。
【0029】
図4のように、柱梁接合部11は、柱と梁との接合部を含むプレキャスト部材であって、複数の柱主筋11dと、柱主筋11dに直交して接続する複数の柱内せん断補強筋11eとが配置され、破線で示すように、後工程で梁主筋が挿入される複数の鉄筋挿入孔17が水平方向に貫通した横孔として形成されている。なお、柱梁接合部11には複数の鉄筋挿入孔17に充填材を注入し充填するための複数の注入管20が配置されている。
【0030】
図5のように、梁部材12は、
図4の柱梁接合部11と接合されるプレキャスト部材であって、梁部材端部から水平方向の所定距離に機械式充填継ぎ手15が配置され、
図5の破線で示すように、機械式充填継ぎ手15から梁部材端部まで、後工程で梁主筋が挿入される複数の鉄筋挿入孔18が横孔として形成されている。機械式充填継ぎ手15の一方側には複数の梁主筋12aと、梁主筋12a等に直交して接続する複数のせん断補強筋12bとが配置されており、複数の梁主筋12aが梁部材12に定着されている。
【0031】
図4の柱梁接合部11は、所定の型枠(図示省略)にコンクリートを打設することで作製されるが、鉄筋挿入孔17は、所定の型枠(図示省略)に
図1,
図2の鉄筋挿入孔形成用型枠材30を配置し、コンクリート打設後に脱型することで形成される。
図5の梁部材12は、所定の型枠(図示省略)にコンクリートを打設することで作製されるが、鉄筋挿入孔18は、所定の型枠(図示省略)に
図1,
図2の鉄筋挿入孔形成用型枠材30を配置し、コンクリート打設後に脱型することで形成される。
【0032】
図6のように、
図4の柱梁接合部11の鉄筋挿入孔17および
図5の梁部材12の鉄筋挿入孔18の内周面には、合成樹脂製可撓電線管31の凹部31aに対応した周方向に一周の凸部Aと、凸部31bに対応した周方向に一周の凹部Bとが孔軸方向に繰り返し多数形成される。
【0033】
次に、プレキャスト部材における鉄筋挿入孔の形成工程およびプレキャスト部材同士の接合工程について
図1~
図8を参照して説明する。
図7は、本実施形態による鉄筋挿入孔の形成工程およびプレキャスト部材同士の接合工程を説明するためのフローチャートである。
図8は、
図4の柱梁接合部の鉄筋挿入孔と
図5の梁部材の鉄筋挿入孔とに対し梁主筋を挿入する状況を示す側断面図である。
【0034】
まず、プレキャスト部材における鉄筋挿入孔の形成工程S01~S16について説明するが、本形成工程では、
図3のように、鉄筋カバー33を被せた単管32を合成樹脂製可撓電線管31の内部に挿入した型枠材30Aを用いる。
【0035】
図1~
図3のように、鋼管からなる単管32にスチレンボイドからなる鉄筋カバー33を被せ(S01)、この単管32を合成樹脂製可撓電線管31の内側に挿入し(S02)、鉄筋挿入孔形成用型枠材30Aを作製する(S03)。
【0036】
次に、鉄筋挿入孔形成用型枠材30Aをプレキャスト部材用型枠(図示省略)に取り付け(S04)、プレキャスト部材に形成される鉄筋挿入孔の位置を調整する(S05)。次に、プレキャスト部材用型枠内にコンクリートを打設し(S06)、所定期間経過後、プレキャスト部材用型枠を取り外し(S07)、プレキャスト部材が表出する。なお、かかるプレキャスト部材は、
図4の柱梁接合部11や
図5の梁部材12であってよい。
【0037】
次に、鉄筋挿入孔形成用型枠材30Aの脱型を準備する(S08)。すなわち、プレキャスト部材の所定面において単管32を表出させ(S09)、単管32を抜いて取り外す(S10)。次に、スチレンボイド(鉄筋カバー33)を表出させ(S11)、スチレンボイドを取り外す(S12)。このとき、スチレンボイドには全長に渡って切れ目を入れているので、スチレンボイドを容易に内側に折り曲げるようにして外すことができ容易に取り外すことができる。
【0038】
次に、合成樹脂製可撓電線管31を表出させ(S13)、合成樹脂製可撓電線管31を取り外すことで、鉄筋挿入孔形成用型枠材30Aの脱型が完了する(S14)。このとき、合成樹脂製可撓電線管31には全長に渡って切れ目を入れているので、合成樹脂製可撓電線管31を容易に内側に折り曲げるようにして外すことができ容易にプレキャスト部材から取り外すことができる。
【0039】
次に、鉄筋挿入孔形成用型枠材30Aの脱型によりたとえば
図4の柱梁接合部11,
図5の梁部材12に鉄筋挿入孔17,18が表出し(S15)、かかる鉄筋挿入孔17,18の出来形を確認する(S16)。
【0040】
以上のようにして、
図4の柱梁接合部11や
図5の梁部材12のプレキャスト部材に鉄筋挿入孔17,18を形成できるが、かかる鉄筋挿入孔17,18の内周面には、
図6のように、合成樹脂製可撓電線管31の凹部31aに対応した周方向に一周の凸部Aと、凸部31bに対応した周方向に一周の凹部Bとが孔軸方向に繰り返し多数形成されている。かかる凸部Aと凹部Bとは、比較的硬質な合成樹脂製可撓電線管31の凹部31aと凸部31bによって形状が明瞭で品質のよい仕上げとなっている。このため、鉄筋挿入孔に鉄筋が挿入され充填材が充填されると、鉄筋挿入孔内において充填材の充分な付着力を得ることができる。このようにして、従来のスパイラル形のシース管を用いずに鉄筋挿入孔内で充分な鉄筋の定着力を得て鉄筋とプレキャスト部材とを確実に一体化させることができる。また、電気工事の分野で多用され比較的廉価な市販品である合成樹脂製可撓電線管を転用し、シース管を使用せずに済むので、材料費がかさまずにコスト的に有利である。
【0041】
また、特許文献1のように、単管パイプにビニールホースを被せ、ビニールホースの周囲にゴムひもを螺旋状に巻き付けた型枠材により形成した鉄筋挿入孔の内周面は、ゴムひもによる螺旋状の溝形状が柔らかなビニールホースとゴムひもとによって形成されるため溝形状が不明瞭で不充分な品質となり易いのに対し、本実施形態によれば、比較的硬質な合成樹脂製可撓電線管31を用い、その外周面の多数の凹部31aと凸部31bとが、打設されたコンクリートにより変形され難いので、内周面の溝形状が明瞭で品質のよい鉄筋挿入孔を形成できる。このため、鉄筋挿入孔内において充填材による充分な付着力を得ることができる。また、特許文献1ではビニールホースの周囲にゴムひもを螺旋状に巻き付けるという面倒な工程が必要であるが、本実施形態の形成方法では、単管32を合成樹脂製可撓電線管31の内部に挿入するだけで型枠材を作製でき、簡単な工程で済む。
【0042】
次に、プレキャスト部材同士の接合工程S17~S19について説明すると、
図8のように、柱梁接合部11の鉄筋挿入孔17から梁部材12の鉄筋挿入孔18へと挿入する梁主筋である鉄筋14を用意し(S17)、柱梁接合部11に対し梁部材12を支保材等により支持し位置決めした状態で、鉄筋14を柱梁接合部11の鉄筋挿入孔17から挿入し梁部材12の鉄筋挿入孔18へと挿入し、鉄筋14の先端を梁部材12内の機械式充填継ぎ手15内に挿入し適切な位置に固定する(S18)。
【0043】
次に、柱梁接合部11に予め設けた注入管20を通してグラウド材等の充填材を鉄筋挿入孔17へ注入することで、
図6のように鉄筋挿入孔17と鉄筋14とから形成される孔内充填空間Sに充填材を充填する(S19)。かかる充填材の注入により鉄筋挿入孔17から梁部材12の鉄筋挿入孔18と鉄筋14とによる孔内充填空間Sおよび機械式充填継ぎ手15内にまで充填材が充填される。
【0044】
以上のようにして、柱梁接合部11の鉄筋挿入孔17および梁部材12の鉄筋挿入孔18内の孔内充填空間S(
図6)に充填材を充填することで、柱梁接合部11の鉄筋挿入孔17および梁部材12の鉄筋挿入孔18において充填材の硬化後に充分な付着力を得ることができる。このようにして、従来のスパイラル形のシース管を用いずに鉄筋挿入孔17,18内で充分な鉄筋14の定着力を得て鉄筋14と柱梁接合部11、梁部材12とを確実に一体化させることで柱梁接合部11と梁部材12とを確実に接合させることができる。
【0045】
なお、
図8において、鉄筋14は柱梁接合部11の鉄筋挿入孔17および梁部材12の鉄筋挿入孔18に挿入されると、柱梁接合部11の
図8の右側に突き出るが、柱梁接合部11の右側には、もう一つの梁部材(図示省略)が配置され、鉄筋14の突き出し部分が鉄筋挿入孔18と同様の鉄筋挿入孔に挿入され、充填材により定着されるように構成できる。
【0046】
(実験例)
次に、本実施形態の鉄筋挿入孔の形成方法によってコンクリート部材に鉄筋挿入孔を形成した実験例について説明する。本実験例では、合成樹脂製可撓電線管内径53mm、スチレンボイドt=5mm、単管外径42.7mmとして
図3と同様の鉄筋挿入孔形成用型枠材を作製し、型枠内に配置し固定した後、コンクリート打設をし、型枠を取り外してコンクリート部材を表出させ、コンクリート部材から鉄筋挿入孔形成用型枠材を除去した。
図9にコンクリート部材に形成された鉄筋挿入孔の外観写真を示す。
図9から鉄筋挿入孔の内周面は、合成樹脂製可撓電線管の外周の凹凸に対応して凹凸形状が明瞭で品質のよい仕上げとなっていることがわかる。
【0047】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、
図4,
図5ではプレキャスト部材として柱梁接合部や梁部材を例にしたが、本発明はこれに限定されず、他のプレキャスト部材の鉄筋挿入孔にも適用できることはもちろんである。
【0048】
また、
図7の鉄筋挿入孔の形成工程S01~S16では
図3の型枠材30Aを用いたが、鉄筋カバー33を用いずに
図1の単管32を合成樹脂製可撓電線管31の内部に挿入した型枠材30を用いてもよいことはもちろんであり、この場合、
図7の工程S01,S12が省略される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、スパイラル形のシース管を用いずに、プレキャスト部材の鉄筋挿入孔の界面を鉄筋への付着力が期待できる仕上げにすることができるとともに、脱型・転用可能な材料構成にできることから、低コスト化を実現することができる。プレキャスト部材の鉄筋挿入孔に鉄筋を挿入し鉄筋とプレキャスト部材とを確実に一体化でき、プレキャスト部材同士を確実に接合できるため、かかる接合工程を含む各種施工工事において品質の向上およびコスト減を図ることができる。
【符号の説明】
【0050】
11 柱梁接合部(プレキャスト部材)
12 梁部材(プレキャスト部材)
14 鉄筋
17,18 鉄筋挿入孔
30,30A 鉄筋挿入孔用型枠材
31 合成樹脂製可撓電線管
31a 合成樹脂製可撓電線管の凹部
31b 合成樹脂製可撓電線管の凸部
32 単管
33 鉄筋カバー
A 鉄筋挿入孔の内周面の凸部
B 鉄筋挿入孔の内周面の凹部
S 孔内充填空間
【手続補正書】
【提出日】2023-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャスト部材に鉄筋挿入孔を形成する方法であって、
単管の外周に鉄筋カバーを配置する工程と、
管周方向の凹凸が管長手方向に繰り返し多数形成された合成樹脂製可撓電線管の内側に前記単管を挿入して鉄筋挿入孔用型枠材を作製する工程と、
前記鉄筋挿入孔用型枠材をプレキャスト部材用型枠に配置する工程と、
前記プレキャスト部材用型枠にコンクリートを打設する工程と、
前記コンクリート打設により作製されたプレキャスト部材から前記単管を取り外す工程と、
前記プレキャスト部材から前記合成樹脂製可撓電線管を取り外すことで前記鉄筋挿入孔用型枠材を除去する工程と、を含み、
前記鉄筋挿入孔用型枠材の除去により前記合成樹脂製可撓電線管の凹凸に対応した凹凸が内周面に形成された鉄筋挿入孔を前記プレキャスト部材に形成するプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法。
【請求項2】
前記合成樹脂製可撓電線管に予め全長に渡って切れ目を入れておき、前記単管を抜いてから前記合成樹脂製可撓電線管を前記切れ目から内側に折り曲げて外せるようにする請求項1に記載のプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法。
【請求項3】
前記鉄筋カバーに予め全長に渡って切れ目を入れておき、前記単管を抜いてから前記鉄筋カバーを前記切れ目から内側に折り曲げて外せるようにする請求項1または2に記載のプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法により第1プレキャスト部材の第1鉄筋挿入孔および第2プレキャスト部材の第2鉄筋挿入孔をそれぞれ形成し、前記第1および第2鉄筋挿入孔に鉄筋を挿入し、次に、充填材を前記第1および第2鉄筋挿入孔内に充填して前記鉄筋を定着させることで前記第1プレキャスト部材と前記第2プレキャスト部材とを接合するプレキャスト部材の接合方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載のプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法により鉄筋挿入孔を形成するプレキャスト部材の製造方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、プレキャスト部材に鉄筋挿入孔を形成する方法、その鉄筋挿入孔に鉄筋を挿入し定着させるプレキャスト部材の接合方法およびプレキャスト部材の製造方法に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、スパイラル形のシース管を用いずに、鉄筋挿入孔の界面を鉄筋への付着力が期待できる仕上げとし、脱型・転用可能な材料構成とし、低コスト化を実現可能なプレキャスト(PCa)部材の鉄筋挿入孔の形成方法、その鉄筋挿入孔に鉄筋を挿入し確実に定着させるプレキャスト部材の接合方法およびプレキャスト部材の製造方法を提供することを目的とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
上記目的を達成するためのプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法は、プレキャスト部材に鉄筋挿入孔を形成する方法であって、
単管の外周に鉄筋カバーを配置する工程と、管周方向の凹凸が管長手方向に繰り返し多数形成された合成樹脂製可撓電線管の内側に前記単管を挿入して鉄筋挿入孔用型枠材を作製する工程と、前記鉄筋挿入孔用型枠材をプレキャスト部材用型枠に配置する工程と、前記プレキャスト部材用型枠にコンクリートを打設する工程と、前記コンクリート打設により作製されたプレキャスト部材から前記単管を取り外す工程と、前記プレキャスト部材から前記合成樹脂製可撓電線管を取り外すことで前記鉄筋挿入孔用型枠材を除去する工程と、を含み、
前記鉄筋挿入孔用型枠材の除去により前記合成樹脂製可撓電線管の凹凸に対応した凹凸が内周面に形成された鉄筋挿入孔を前記プレキャスト部材に形成するものである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
このプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法によれば、管周方向の凹凸が管長手方向に繰り返し多数形成された合成樹脂製可撓電線管の内側に、外周に鉄筋カバーが配置された単管を挿入し作製した鉄筋挿入孔用型枠材をプレキャスト部材用型枠に配置し、コンクリート打設後にプレキャスト部材から単管を取り外し合成樹脂製可撓電線管を取り外すことで鉄筋挿入孔用型枠材を脱型した後にプレキャスト部材にできる鉄筋挿入孔には、その内周面において合成樹脂製可撓電線管の凹凸に対応した孔周方向の凹凸が孔長手方向に多数形成される。この鉄筋挿入孔の内周面における多数の凹凸は、比較的硬質な合成樹脂製可撓電線管の凹凸によって形状が明瞭で品質のよい仕上げとなる。そのため、このプレキャスト部材の鉄筋挿入孔に鉄筋が挿入され、充填材が充填されることで、鉄筋挿入孔内に形成された凹凸面により充填材の充分な付着力を得ることができる。このようにして、従来のスパイラル形のシース管を用いずに鉄筋挿入孔内で充分な鉄筋の定着力を得て鉄筋とプレキャスト部材とを確実に一体化させることができる。また、電気工事の分野で多用され比較的廉価な市販品である合成樹脂製可撓電線管を転用し、シース管を使用せずに済むので、材料費がかさまずにコスト的に有利である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
上記目的を達成するためのプレキャスト部材の製造方法は、上述のプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法により鉄筋挿入孔を形成するものである。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
この製造方法により製造されたプレキャスト部材によれば、鉄筋挿入孔には、その内周面において合成樹脂製可撓電線管の凹凸に対応した孔周面の凹凸が孔長手方向に多数形成されている。この鉄筋挿入孔の内周面における多数の凹凸は、硬質な合成樹脂製可撓電線管の凹凸によって形状が明瞭で品質のよい仕上げとなっている。このプレキャスト部材の鉄筋挿入孔に鉄筋が挿入され充填材が充填されると、鉄筋挿入孔内において充填材による充分な付着力を得ることができ、鉄筋挿入孔内で充分な鉄筋の定着力を得て鉄筋とプレキャスト部材とを確実に一体化させることができる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
本発明のプレキャスト部材の鉄筋挿入孔の形成方法、プレキャスト部材の接合方法およびプレキャスト部材の製造方法によれば、スパイラル形のシース管を用いずに、鉄筋挿入孔の界面を鉄筋への付着力が期待できる仕上げにすることができるとともに、脱型・転用可能な材料構成にできることから、低コスト化を実現することができ、また、プレキャスト部材の鉄筋挿入孔に鉄筋を挿入し、鉄筋とプレキャスト部材とを確実に一体化でき、プレキャスト部材同士を確実に接合できる。