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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181260
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】断熱材成形型及び断熱材製造方法
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/00 20220101AFI20231214BHJP
   B29C 39/24 20060101ALI20231214BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20231214BHJP
   B29C 44/36 20060101ALI20231214BHJP
   B29C 44/58 20060101ALI20231214BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20231214BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
F24H9/00 E
B29C39/24
B29C44/00 A
B29C44/36
B29C44/58
B29C33/42
B29C45/26
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023179583
(22)【出願日】2023-10-18
(62)【分割の表示】P 2020002118の分割
【原出願日】2020-01-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 航太
(72)【発明者】
【氏名】後藤 翔
(72)【発明者】
【氏名】内藤 修平
(72)【発明者】
【氏名】風間 史郎
(57)【要約】
【課題】貯湯タンクに接続された配管を通す回避穴を有する発泡ウレタン断熱材の成形時に欠肉部が発生することを防止する上で有利になる断熱材成形型及び断熱材製造方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る断熱材成形型は、円筒状の貯湯タンクを覆う発泡ウレタン断熱材を成形する断熱材成形型であって、発泡ウレタン断熱材の内壁面から外壁面へ貫通する回避穴を成形するための金型凸部が断熱材成形型の金型内面から突出しており、金型凸部の形状は、突出方向に垂直な断面において、ウレタン原料の流れ方向に沿う方向を長軸とする楕円形の断面になる楕円柱状を呈するものである。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の貯湯タンクを覆う発泡ウレタン断熱材を成形する断熱材成形型であって、
前記発泡ウレタン断熱材の内壁面から外壁面へ貫通する回避穴を成形するための金型凸部が前記断熱材成形型の金型内面から突出しており、
前記金型凸部の形状は、前記突出方向に垂直な断面において、ウレタン原料の流れ方向に沿う方向を長軸とする楕円形の断面になる楕円柱状を呈する断熱材成形型。
【請求項2】
前記回避穴は、前記外壁面に開口する外側開口と、前記内壁面に開口する内側開口とを有し、
前記外側開口の面積が前記内側開口の面積よりも大きい請求項1に記載の断熱材成形型。
【請求項3】
前記回避穴は、錐台状の内部空間を有する請求項1または請求項2に記載の断熱材成形型。
【請求項4】
円筒状の貯湯タンクを覆う発泡ウレタン断熱材を断熱材成形型により成形する断熱材製造方法であって、
前記発泡ウレタン断熱材の内壁面から外壁面へ貫通する回避穴を成形するための金型凸部が前記断熱材成形型の金型内面から突出しており、
前記金型凸部は、その突出方向に垂直な断面形状が楕円形であり、
前記金型凸部の近くにおいてウレタン原料が前記楕円形の長手方向に沿って流れるように前記ウレタン原料を注入する断熱材製造方法。
【請求項5】
前記回避穴は、前記外壁面に開口する外側開口と、前記内壁面に開口する内側開口とを有し、
前記外側開口の面積が前記内側開口の面積よりも大きい請求項4に記載の断熱材製造方法。
【請求項6】
前記回避穴は、錐台状の内部空間を有する請求項4または請求項5に記載の断熱材製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、断熱材成形型及び断熱材製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貯湯式給湯機の貯湯タンクを覆う断熱材の材料として、発泡スチロールが主流であったが、近年、より断熱性能の高い発泡ウレタン断熱材が注目されている。下記特許文献1には、ポリウレタン発泡体を成形する発泡成形型の下型において、壁面が交差する隅部の下型底面には、その下型底面に注入されたポリウレタン原料が流れ広がる際に、隅部へ向かって流れる原料の中央部の流れがその外側の原料の流れよりも速くなるようにした流速調整部を設けたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-213160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
貯湯タンクを覆う断熱材には、貯湯タンクに接続された配管を通す回避穴を設ける必要がある。貯湯タンクを覆う断熱材として発泡ウレタン断熱材を用いる場合の課題として、ウレタン原料を金型へ注入して発泡・成形する際に、金型内の凹凸の影響により、ウレタン原料が金型全体に行き渡らず、成形品に欠肉部が発生することで、断熱性能及び外観に影響を及ぼすという課題がある。例えば、断熱材を成形する金型の下型には、回避穴を成形するための凸部が設けられ、型閉時に当該凸部が上型に接する。それゆえ、当該凸部がウレタン原料の流動に対して障害物となり、成形品に欠肉部が発生しやすい。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、貯湯タンクに接続された配管を通す回避穴を有する発泡ウレタン断熱材の成形時に欠肉部が発生することを防止する上で有利になる断熱材成形型及び断熱材製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る断熱材成形型は、円筒状の貯湯タンクを覆う発泡ウレタン断熱材を成形する断熱材成形型であって、発泡ウレタン断熱材の内壁面から外壁面へ貫通する回避穴を成形するための金型凸部が断熱材成形型の金型内面から突出しており、金型凸部の形状は、突出方向に垂直な断面において、ウレタン原料の流れ方向に沿う方向を長軸とする楕円形の断面になる楕円柱状を呈するものである。
本開示に係る断熱材製造方法は、円筒状の貯湯タンクを覆う発泡ウレタン断熱材を断熱材成形型により成形する断熱材製造方法であって、発泡ウレタン断熱材の内壁面から外壁面へ貫通する回避穴を成形するための金型凸部が断熱材成形型の金型内面から突出しており、金型凸部は、その突出方向に垂直な断面形状が楕円形であり、金型凸部の近くにおいてウレタン原料が楕円形の長手方向に沿って流れるようにウレタン原料を注入するものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、貯湯タンクに接続された配管を通す回避穴を有する発泡ウレタン断熱材の成形時に欠肉部が発生することを防止する上で有利になる断熱材成形型及び断熱材製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1による貯湯式給湯機を示す正面図である。
図2】実施の形態1による貯湯式給湯機が備える貯湯タンクの斜視図である。
図3】貯湯タンク、及び貯湯タンクを覆う断熱材の分解斜視図である。
図4】貯湯タンクが断熱材で覆われた状態を示す斜視図である。
図5】前面断熱材の斜視図である。
図6】前面断熱材の正面図である。
図7】前面断熱材の断面図である。
図8】実施の形態1による断熱材成形型の下型の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図において共通または対応する要素には、同一の符号を付して、説明を簡略化または省略する。なお、本開示で角度に言及した場合において、和が360度となる優角と劣角とがあるときには原則として劣角の角度を指すものとする。以下の説明において、「水」との記載は、原則として、液体の水を意味し、低温の水から高温の湯までが含まれうるものとする。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による貯湯式給湯機100を示す正面図である。図1に示すように、本実施の形態の貯湯式給湯機100は、貯湯タンク1を内蔵した貯湯タンクユニット30と、水を加熱して高温の湯を生成可能な加熱手段4とを有している。貯湯タンクユニット30と加熱手段4との間は、入水配管3及び出湯配管5により接続されている。貯湯タンクユニット30には、外部の水道等の水源からの水を供給する給水配管2と、風呂給湯配管6と、給湯配管7とが接続されている。貯湯タンク1内に貯留された水は、貯湯タンク1の下部から導出され、入水配管3を通って加熱手段4へ搬送される。加熱手段4は、例えば、冷凍サイクルを用いて水を加熱するヒートポンプユニットで構成される。加熱手段4に搬送された水は、加熱されて高温の湯となる。この高温の湯は、出湯配管5を通って貯湯タンクユニット30に戻り、貯湯タンク1の上部から貯湯タンク1内に流入して貯留される。貯湯タンクユニット30の内部には、貯湯タンク1内から取り出された高温の湯と、給水配管2から供給される水とを混合して温度調節するための混合弁が備えられている。この混合弁により温度調節された湯水は、風呂給湯配管6を介して、浴室の浴槽40へ供給され、あるいは、給湯配管7を介して、シャワー、台所、洗面所の蛇口などの給湯端末へ供給される。なお、本開示における加熱手段は、上述した構成に限定されるものではなく、例えば電気ヒータ等の加熱手段を貯湯タンク1内に配置したものであってもよい。
【0011】
貯湯タンクユニット30は、直方体状の外形を有する箱状の外郭ケース10を備えている。貯湯タンク1は、熱の散逸を抑制するための後述する断熱材により覆われた状態で、外郭ケース10内に収納されている。外郭ケース10の下方には複数本のタンクユニット脚12が設置されている。これらのタンクユニット脚12により貯湯タンクユニット30が地面または台座に対し支持固定されている。
【0012】
図1は、外郭ケース10のうちの前面板を取り外した状態を示している。図1のようにすることで、貯湯タンクユニット30内に配置された配管、ポンプ、バルブ、追焚き用熱交換器、制御基板などの機器のメンテナンスを行うことができる。
【0013】
貯湯タンク1の内部には、温度の違いによる水の比重の差によって、上側が高温で下側が低温になる温度成層を形成可能である。貯湯式給湯機100の使用時に、貯湯タンク1の内部には、例えば、上方に高温水層、下方に低温水層、その間に中温水層、という温度分布が形成される。
【0014】
図2は、実施の形態1による貯湯式給湯機100が備える貯湯タンク1の斜視図である。図2に示すように、貯湯タンク1は、円筒状の形状を有する。貯湯タンク1は、例えば、ステンレス鋼のような金属材料で作られている。貯湯タンクユニット30が設置場所に据え付けられた状態では、貯湯タンク1の円筒軸方向は鉛直線に対して実質的に平行になる。貯湯タンク1は、円筒軸方向に沿って直径が一定となった胴部1aと、胴部1aの上方に設けられた上部1bと、胴部1aの下方に設けられた下部1cとを備える。上部1b及び下部1cのそれぞれは、例えば半球状または椀状の鏡板により形成される。
【0015】
貯湯タンク1の胴部1aに中温水口17が設けられている。中温水が通る配管(図示省略)が中温水口17に接続される。中温水口17から中温水が貯湯タンク1に流入したり、貯湯タンク1内の中温水が中温水口17から流出したりする。図示の例では、二つの中温水口17が設けられている。二つの中温水口17は、貯湯タンク1の円筒軸方向に関して互いに異なる位置にあるとともに、貯湯タンク1の周方向に関して互いに同じ位置にある。貯湯タンク1が備える中温水口17の数は、この例に限定されず、例えば一つだけでもよい。
【0016】
貯湯タンク1の上部1bに高温水口18が設けられている。図示の例では、二つの高温水口18が設けられており、一方の高温水口18に出湯配管5が接続され、他方の高温水口18に給湯配管7が接続される。出湯配管5を通る高温水が上記一方の高温水口18から貯湯タンク1に流入する。貯湯タンク1内の高温水が上記他方の高温水口18から給湯配管7へ流出する。貯湯タンク1が備える高温水口18の数は、この例に限定されず、例えば一つだけでもよい。
【0017】
図示を省略するが、貯湯タンク1の下部1cに設けられた低温水口に給水配管2及び入水配管3が接続されている。給水配管2を通る低温水が低温水口から貯湯タンク1に流入する。貯湯タンク1内の低温水が低温水口から入水配管3へ流出する。また、貯湯タンク1の表面には、複数の貯湯温度センサ(図示省略)が互いに高さの異なる位置に設置されている。これらの貯湯温度センサにより貯湯タンク1内の鉛直方向に沿った水温分布を検出することにより、貯湯タンク1内の残湯量及び蓄熱量を検出できる。残湯量あるいは蓄熱量が少なくなると、加熱手段4を用いて貯湯タンク1内に湯を貯める貯湯運転が実行される。
【0018】
図3は、貯湯タンク1、及び貯湯タンク1を覆う断熱材の分解斜視図である。図4は、貯湯タンク1が断熱材で覆われた状態を示す斜視図である。図3に示すように、本実施の形態の貯湯式給湯機100は、貯湯タンク1を覆う断熱材として、真空断熱材11と、上部断熱材13と、前面断熱材14と、背面断熱材15と、下部断熱材16とを備える。真空断熱材11は、貯湯タンク1の胴部1aを覆う。図示の例では、2枚の真空断熱材11が設けられており、一方の真空断熱材11が胴部1aの外周のうちの左側の半周を覆い、他方の真空断熱材11が胴部1aの外周のうちの右側の半周を覆う。
【0019】
上部断熱材13は、貯湯タンク1の上部1bを覆う。前面断熱材14及び背面断熱材15は、真空断熱材11の上から貯湯タンク1の胴部1aを覆う。前面断熱材14は、胴部1aの外周のうち、前面側の半周を覆う。背面断熱材15は、胴部1aの外周のうち、背面側の半周を覆う。下部断熱材16は、貯湯タンク1の下部1cを覆う。上部断熱材13、前面断熱材14、背面断熱材15、及び下部断熱材16のそれぞれは、発泡プラスチックを成形して作られている。
【0020】
図3及び図4が示すとおり、上部断熱材13、前面断熱材14、背面断熱材15、及び下部断熱材16のそれぞれは、複雑な形状を有している。その理由は大きく分けて二つある。一つの理由は、貯湯タンク1の各部に接続された配管を避けるためである。もう一つの理由は、熱交換器あるいは循環ポンプなどの機器を支持するためである。これらの理由により、各断熱材には、配管を通すための回避穴、機器を支持する凸部などが設けられる。
【0021】
貯湯式給湯機100においては、貯湯タンク1に貯えられた湯から散逸する熱量を低減することが、省エネルギー性能を高める上で重要になる。このため、貯湯タンク1を覆う断熱材の断熱性能が重要となる。一般的に広く使用されている断熱材の材料として、発泡ポリスチレン(以下、EPSと称する)がある。また、EPSよりも熱伝導率が小さい発泡ウレタン断熱材は、断熱性能に優れる。一般的に、EPSの熱伝導率は、33mW/(m・K)~38mW/(m・K)程度であり、発泡ウレタン断熱材の熱伝導率は、20mW/(m・K)~24mW/(m・K)程度である。よって、発泡ウレタン断熱材は、同じ厚さのEPSに比べて、1.5倍~2倍程度の断熱性能を有する。
【0022】
真空断熱材11は、例えばグラスウールで作られた芯材を、ガスバリア性を有するラミネートフィルムからなる袋に入れ、内部を真空に近い減圧状態(以下、「真空状態」と称する)にしたものである。真空断熱材11は、袋内の空気を極力なくし、真空状態とすることで、高い断熱性能を達成することができる。真空断熱材11の熱伝導率は、例えば1.8mW/(m・K)~2.8mW/(m・K)程度である。このような真空断熱材11は、同じ厚さのEPSに比べ、15倍~20倍の断熱性能を有する。その一方で、真空断熱材11は衝撃に弱く、袋に穴が開いて真空状態が解除されると、その熱伝導率は、30mW/(m・K)~40mW/(m・K)程度まで上昇してしまう。
【0023】
上述したように、断熱性能においてはEPSよりも発泡ウレタン断熱材の方が優れるが、成形性においては発泡ウレタン断熱材よりもEPSの方が優れている。EPSは、スチレンの原料ビーズに蒸気を当て樹脂を柔らかくするのと同時に、ビーズの中に入っているガスを膨張させて予備発泡させた後、金型に充填されたビーズ同士を融着させることで成形を行う。EPSの成形においては、金型の細部までビーズが行き渡るため、欠肉部が発生しにくい。これに対し、発泡ウレタン断熱材は、原料となるポリオールとイソシアネートのそれぞれを成分を主とした2つの原液を発泡機で混合後、充填する空間に液状で注入し、発泡及び硬化させる。このような発泡ウレタン断熱材の成形においては、原料が粘度の高い液体であるため、成形品の形状が複雑な場合、細部の形状に対応できず欠肉部が発生する可能性がある。
【0024】
本実施の形態において、前面断熱材14は、発泡ウレタン断熱材である。前面断熱材14を発泡ウレタン断熱材にすることで、前面断熱材14をEPSにした場合に比べて、断熱性能が向上する。図4に示すように、前面断熱材14は、中温水口17に接続される配管を通すための回避穴19を有している。本実施の形態では、二つの中温水口17に対応して、二つの回避穴19が前面断熱材14に形成されている。
【0025】
図5は、前面断熱材14の斜視図である。図6は、前面断熱材14の正面図である。図7は、前面断熱材14の断面図である。図7の断面は、貯湯タンク1の円筒軸と回避穴19とを通る平面で切断した断面である。これらの図に示すように、前面断熱材14は、貯湯タンク1の表面に向く内壁面14aと、内壁面14aとは反対側に向く外壁面14bとを有する。回避穴19は、内壁面14aから外壁面14bへ貫通する。図7に示すように、回避穴19は、外壁面14bに開口する外側開口19bと、内壁面14aに開口する内側開口19aとを有する。図6に示すように、外側開口19bの形状は、楕円形である。ここで、本開示における「楕円形」とは、数学上で円錐曲線の一つとして定義される楕円の形状に限定されるものではない。本開示における「楕円形」とは、長手方向を有する丸みを帯びた形状を広く含むものであり、例えば、半円の両端と別の半円の両端とが二つの線分を介してつながったような形状でもよいし、ラグビーボールの縦断面のような形状でもよい。
【0026】
本実施の形態であれば、回避穴19の外側開口19bが楕円形であることで、以下の効果が得られる。前面断熱材14を貯湯タンク1に取り付けた後に中温水口17に配管を接続する作業のときに、回避穴19の内側の空間に余裕が生まれるので、作業がしやすいとともに、中温水口17に配管を固定するファスナー(図示省略)が前面断熱材14に接触することを確実に防止できる。これらのことから、作業性が向上する。
【0027】
本実施の形態による断熱材製造方法は、ウレタン原料を断熱材成形型に注入して発泡及び硬化させることより前面断熱材14を成形する方法である。図8は、本実施の形態による断熱材成形型の下型21の一部を示す図である。図8に示すように、下型21は、金型内面21aと、金型内面21aから突出する金型凸部22とを有している。図8中の上の図は金型内面21aに対して垂直な平面で切断した断面図であり、図8中の下の図は金型内面21aに対して垂直な方向から金型凸部22を見た図である。金型内面21aは、前面断熱材14の外壁面14bを成形する面である。金型凸部22は、回避穴19を成形するための凸部である。成形時には、上型(図示省略)が下型21の上に重なり、その上型が金型凸部22の上面に接する。
【0028】
金型凸部22の形状は、回避穴19の形状に対応している。金型凸部22は、楕円形の基部22aを有する。基部22aは、金型凸部22のうち、金型内面21aに接する部分である。基部22aにより外側開口19bが成形される。基部22aの楕円形は、外側開口19bの楕円形に対応している。金型凸部22は、その突出方向に垂直な断面形状が楕円形である。図8中には、成形時のウレタン原料の流れ方向が矢印で示されている。このように、本実施の形態の断熱材製造方法では、金型凸部22の近くにおいて、ウレタン原料が、金型凸部22の楕円形の長手方向に沿って流れるようにウレタン原料を注入する。これにより、ウレタン原料が金型凸部22の裏側まで回り込みやすいので、欠肉部の発生を確実に防止することができる。
【0029】
前面断熱材14は、貯湯タンク1の円筒軸方向を長手方向とする形状を有している。成形時には、前面断熱材14の長手方向に沿ってウレタン原料が流れる。図6に示すように、本実施の形態おける外側開口19bの長手方向は、貯湯タンク1の円筒軸方向に平行である。したがって、金型凸部22の楕円形の長手方向に沿ってウレタン原料が流れるので、欠肉部の発生を確実に防止することができる。
【0030】
図8に示すように、本実施の形態における金型凸部22は、内側開口19aを成形する頂部22bを有する。図6に示すように、本実施の形態における内側開口19aの形状は、円形である。このため、頂部22bの形状の円形である。本実施の形態であれば、頂部22bが円形であることで、頂部22bの周りにウレタン原料がさらに回り込みやすくなる。それゆえ、欠肉部の発生を防止する上でより有利になる。なお、内側開口19a及び頂部22bの形状を楕円形にしてもよい。その場合でも、同様の効果が得られる。
【0031】
図6及び図7に示すように、本実施の形態における外側開口19bの面積は、内側開口19aの面積よりも大きい。これにより、以下の効果が得られる。外側開口19bの面積が大きいので、回避穴19の内側の空間がさらに広くなり、中温水口17に配管を接続するときの作業性を向上する上でより有利になる。また、内側開口19aの面積が小さいので、貯湯タンク1の熱が回避穴19から漏洩することを抑制する上でより有利になる。
【0032】
図8に示すように、本実施の形態における金型凸部22の形状は、その突出方向に垂直な断面積が、金型内面21aから離れるにつれて漸減する錐台状を呈する。これにより、以下の効果が得られる。金型凸部22の側面22cと、金型内面21aとの間の角度が鈍角になるので、金型凸部22の周りにウレタン原料がさらに回り込みやすくなる。それゆえ、欠肉部の発生を防止する上でより有利になる。なお、金型凸部22の形状が錐台状を呈することで、図7のように、回避穴19の内部空間の形状も錐台状となる。
【0033】
特に、図8に示す例において、金型凸部22の側面22cは、金型凸部22の上方の空間の一点と、楕円形の基部22aの外周の各点とを結ぶ線分により形作られる楕円推体に沿う形状を有する。これにより、金型凸部22の周りにウレタン原料がさらに回り込みやすくなる。それゆえ、欠肉部の発生を防止する上でより有利になる。なお、回避穴19の内部空間の形状は、楕円錐台状となる。
【0034】
図8に示す例に代えて、金型凸部22の形状は、その突出方向に垂直な断面において、ウレタン原料の流れ方向に沿う方向を長軸とする楕円形の断面になる楕円柱状を呈するものでもよい。その場合であっても、金型凸部22の周りにウレタン原料が回り込みやすいので、欠肉部の発生を防止する上でより有利になる。
【0035】
本実施の形態において、背面断熱材15は、発泡ウレタン断熱材であることが好ましい。背面断熱材15を発泡ウレタン断熱材にすることで、背面断熱材15をEPSにした場合に比べて、断熱性能が向上する。背面断熱材15が発泡ウレタン断熱材である場合、前面断熱材14が第一発泡ウレタン断熱材に相当し、背面断熱材15は、前面断熱材14に隣り合って配置される第二発泡ウレタン断熱材に相当する。
【0036】
図3及び図5に示すように、前面断熱材14は、背面断熱材15に接するエッジ14cの一部に形成された曲線形状の第一切欠き部20を有する。背面断熱材15は、前面断熱材14に接するエッジ15aの一部に形成された曲線形状の第二切欠き部23を有する。図示の例は、第一切欠き部20及び第二切欠き部23のそれぞれは、中心角が180度の円弧形状の縁部を有する。図4に示すように、前面断熱材14及び背面断熱材15が貯湯タンク1に取り付けられてエッジ14cがエッジ15aに接すると、第一切欠き部20と第二切欠き部23とが合わさって円形の開口が形成される。この開口から、真空断熱材11の一部を目視可能である。真空断熱材11の袋に穴が開いて空気が入り込むことで真空状態が解除されると、真空断熱材11が空気で膨らむ。このため、上記開口から真空断熱材11の一部を目視して膨らんでいないかどうかを確認すれば、真空断熱材11の袋に穴が開いていないかどうか、すなわち真空断熱材11の断熱性能が低下していないかどうかを点検できる。本実施の形態であれば、前面断熱材14及び背面断熱材15を取り外すことなく、真空断熱材11の断熱性能が低下していないかどうかを容易に点検できる。本実施の形態であれば、第一切欠き部20と第二切欠き部23とが合わさって形成される開口から真空断熱材11の一部を目視できるので、目視できる範囲が大きくなり、真空断熱材11を点検しやすい。
【0037】
なお、図示の例に代えて、背面断熱材15に第二切欠き部23を設けずに、前面断熱材14の第一切欠き部20だけから真空断熱材11の一部を目視可能とするようにしてもよい。あるいは、前面断熱材14に第一切欠き部20を設けずに、背面断熱材15の第二切欠き部23だけから真空断熱材11の一部を目視可能とするようにしてもよい。
【0038】
独立した穴を前面断熱材14に設ける場合には、前面断熱材14の成形時に原料の合流が発生するのでウェルドラインが発生する可能性がある。これに対し、第一切欠き部20の成形においては、原料の合流が発生しないので、ウェルドラインの発生を防ぐことができる。特に、第一切欠き部20が曲線形状であることから、第一切欠き部20を成形する金型凸部も曲線形状となるので、ウレタン原料の流動に対する抵抗が低くなり、欠肉部の発生をより確実に防ぐことができる。背面断熱材15の第二切欠き部23についても、上記と同様の効果が得られる。
【0039】
上部断熱材13及び下部断熱材16の少なくとも一方を発泡ウレタン断熱材としてもよい。本実施の形態では、配管を通す回避穴19を前面断熱材14に形成する例について説明したが、上部断熱材13、背面断熱材15、及び下部断熱材16のうちの少なくとも一つに、本実施の形態と同様にして、回避穴19を形成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 貯湯タンク、 1 貯湯タンク、 1a 胴部、 1b 上部、 1c 下部、 2 給水配管、 3 入水配管、 4 加熱手段、 5 出湯配管、 6 風呂給湯配管、 7 給湯配管、 10 外郭ケース、 11 真空断熱材、 12 タンクユニット脚、 13 上部断熱材、 14 前面断熱材、 14a 内壁面、 14b 外壁面、 14c エッジ、 15 背面断熱材、 15a エッジ、 16 下部断熱材、 17 中温水口、 18 高温水口、 19 回避穴、 19a 内側開口、 19b 外側開口、 20 第一切欠き部、 21 下型、 21a 金型内面、 22 金型凸部、 22a 基部、 22b 頂部、 22c 側面、 23 第二切欠き部、 30 貯湯タンクユニット、 40 浴槽、 100 貯湯式給湯機
図1
図2
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図5
図6
図7
図8