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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181286
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】アダプタおよび継手構造
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/12 20060101AFI20231214BHJP
   F16L 43/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
E03C1/12 E
F16L43/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023180445
(22)【出願日】2023-10-19
(62)【分割の表示】P 2019044072の分割
【原出願日】2019-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2018047045
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 総
(72)【発明者】
【氏名】福屋 博史
(72)【発明者】
【氏名】木村 英治
(72)【発明者】
【氏名】渕上 斉太
(72)【発明者】
【氏名】徳丸 武司
(57)【要約】
【課題】多様なサイズの立管に継手を対応させる。
【解決手段】アダプタ70は、内部に立管20が配置される第1端部51と、横管が装着される第2端部52と、第1端部51と第2端部52とを接続する曲管部53と、を備える継手50に用いられ、立管20と第1端部51との間に配置されるアダプタ70であって、第1端部51内に配置され、第1端部51と曲管部53とを接続する第1段部57に支持され、かつ、内部に立管20が配置される本体部75と、本体部75から突出して曲管部53内に配置される整流部76と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に立管が配置される第1端部と、横管が装着される第2端部と、前記第1端部と前記第2端部とを接続する曲管部と、を備える継手に用いられ、前記立管と前記第1端部との間に配置されるアダプタであって、
前記第1端部内に配置され、前記第1端部と前記曲管部とを接続する第1段部に支持され、かつ、内部に前記立管が配置される本体部と、
前記本体部から突出して前記曲管部内に配置される整流部と、を備えるアダプタ。
【請求項2】
前記本体部内に配置され、内部に前記立管が嵌合される弾性リングと、
前記本体部に装着され、前記弾性リングの前記本体部からの離脱を規制する規制部材と、を更に備える請求項1に記載のアダプタ。
【請求項3】
内部に立管が配置される第1端部と、横管が装着される第2端部と、前記第1端部と前記第2端部とを接続する曲管部と、を備える継手と、
請求項1または2に記載のアダプタと、を備える継手構造。
【請求項4】
内部に立管が配置される第1端部と、横管が装着される第2端部と、前記第1端部と前記第2端部とを接続する曲管部と、を備える継手と、
請求項2に記載のアダプタと、を備え、
前記規制部材が、前記第1端部内に配置される継手構造。
【請求項5】
前記曲管部は、前記第2端部から前記第2端部の軸線方向に延びる第2管部を備え、 前記整流部は、前記第2管部の管頂よりも上方に位置する請求項3または4に記載の継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アダプタおよび継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に記載されたような、立管と横管とを接続する継手が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-116732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の継手では、立管のサイズごとに継手を用意する必要がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、多様なサイズの立管に継手を対応させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るアダプタは、内部に立管が配置される第1端部と、横管が装着される第2端部と、前記第1端部と前記第2端部とを接続する曲管部と、を備える継手に用いられ、前記立管と前記第1端部との間に配置されるアダプタであって、前記第1端部内に配置され、前記第1端部と前記曲管部とを接続する第1段部に支持され、かつ、内部に前記立管が配置される本体部と、前記本体部から突出して前記曲管部内に配置される整流部と、を備える。
【0007】
本体部が第1端部内に配置され、かつ、本体部内に立管が配置される。したがって、立管が第1端部よりも小径の場合であっても、立管を第1端部にアダプタを介して装着させることができる。その結果、同一の継手を、多様なサイズの立管に適用することができる。これにより、例えば、金型などの設備投資を抑えること等ができる。
アダプタを使用することで、前述のように継手に対して小径な立管を適用することができる。この場合、立管から継手に排水が排出されるときに、排水が継手内に排出される領域を、継手を上側から見た上面視において、立管の内部空間が投影される領域に収めることができる。よって、継手内に、排水によって満たされない空間(空気層)を確保し易くすることができる。ここで、継手内が排水によって満たされた場合、排水が継手から高速で排出されると立管内が負圧になり易く、排水が継手から低速で排出されると立管内が正圧になり易い。そのため、立管からの排水時に継手内に空気層を確保することで、立管内の予期しない負圧化や正圧化を抑制することができる。その結果、立管が、例えば、横管の第1端部が接続されるいわゆる集合継手を含む場合には、前記横管の第2端部が接続される排水設備において封水破壊が生じるのを抑制することができる。
本体部が、継手の第1段部に支持される。したがって、アダプタの本体部を継手の第1段部によって下方から支持することが可能になり、例えば、アダプタおよび立管を、継手によって安定して支持すること等ができる。
整流部が、本体部から突出して曲管部内に配置される。したがって、仮に立管内を流下する排水が旋回流を形成したとしても、その旋回流を整流部によって整流し、排水の挙動を制御し易くすることができる。これにより、継手の排水性能を良好に確保することができる。
整流部が、継手ではなくアダプタに備えられている。したがって、例えば前述のように、立管が第1端部よりも小径の場合であっても、立管と整流部との位置関係を適切に調整し易くすることができる。すなわち、整流部が継手に備えられている場合であって、立管が第1端部よりも小径であるとき、例えば、立管が配置される第1端部内の位置によっては、立管から流下する排水が整流部から離れ過ぎるおそれがある。この場合、整流部による排水の整流が不十分になり、継手の排水性能が確保できない可能性がある。
【0008】
前記本体部内に配置され、内部に前記立管が嵌合される弾性リングと、前記本体部に装着され、前記弾性リングの前記本体部からの離脱を規制する規制部材と、を更に備えてもよい。
【0009】
弾性リングが本体部内に配置され、弾性リング内に立管が嵌合される。したがって、立管から継手内に流れる排水の予期せぬ漏出を抑制することができる。
規制部材が、本体部に装着され、かつ、弾性リングの本体部からの離脱を規制する。したがって、前述した排水の漏出を抑制する効果を、単に規制部材を本体部に装着させることによって確実に奏功させることができる。
【0010】
本発明に係る継手構造は、内部に立管が配置される第1端部と、横管が装着される第2端部と、前記第1端部と前記第2端部とを接続する曲管部と、を備える継手と、前記アダプタと、を備える。
【0011】
本発明に係る継手構造は、内部に立管が配置される第1端部と、横管が装着される第2端部と、前記第1端部と前記第2端部とを接続する曲管部と、を備える継手と、前記アダプタと、を備え、前記規制部材が、前記第1端部内に配置される。
【0012】
規制部材が、第1端部内に配置される。したがって、規制部材を第1端部によって覆って保護することができる。これにより、例えば、規制部材が外部からの不意の外力を受けるのを第1端部によって遮ることが可能になり、規制部材の予期せぬ離脱を抑制すること等ができる。
【0013】
前記曲管部は、前記第2端部から前記第2端部の軸線方向に延びる第2管部を備え、前記整流部は、前記第2管部の管頂よりも上方に位置してもよい。
【0014】
整流部が、第2管部の管頂よりも上方に位置する。したがって、例えば、排水が第2管部を流れるときに、この排水の流れが整流部によって阻害されるのを抑制すること等ができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、多様なサイズの立管に継手を対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る排水システムの上下方向に沿う断面図であって、立主管および横主管を側面視した図である。
図2図1に示す継手構造の上下方向に沿う断面図である。
図3図2に示す継手構造の要部を示す断面図である。
図4図2に示す継手構造を構成する本体部材(アダプタ本体)の断面図である。
図5図4に示す本体部材(アダプタ本体)の平面図である。
図6図2に示す継手構造を構成するアダプタの断面図である。
図7図2に示す継手構造の製造方法を説明する断面図である。
図8】本発明の第1変形例に係る継手構造の上下方向に沿う断面図である。
図9】本発明の第2変形例に係る継手構造の上下方向に沿う断面図である。
図10】本発明の第3変形例に係る継手構造の上下方向に沿う断面図である。
図11】本発明の第4変形例に係る継手構造の上下方向に沿う断面図である。
図12】本発明の第5変形例に係る継手構造を構成する本体部材(アダプタ本体)の上下方向に沿う断面図である。
図13図12に示す本体部材(アダプタ本体)の平面図である。
図14】本発明の第6変形例に係る継手構造を構成する本体部材(アダプタ本体)の上下方向に沿う断面図である。
図15図14に示す本体部材(アダプタ本体)の平面図である。
図16図14に示す本体部材(アダプタ本体)の正面図である。
図17】本発明の第7変形例に係る継手構造を構成する本体部材(アダプタ本体)の上下方向に沿う断面図である。
図18図17に示す本体部材(アダプタ本体)の平面図である。
図19図17に示す本体部材(アダプタ本体)の背面図である。
図20図17に示す本体部材(アダプタ本体)を第2側、斜め下側から見た斜視図である。
図21】本発明の第8変形例に係る継手構造を構成する本体部材(アダプタ本体)の上下方向に沿う断面図である。
図22図21に示す本体部材(アダプタ本体)を第1側、斜め下側から見た斜視図である。
図23図21に示す本体部材(アダプタ本体)を第2側、斜め下側から見た斜視図である。
図24図21に示す本体部材(アダプタ本体)の底面図である。
図25】本発明の第9変形例に係る継手構造を構成する本体部材(アダプタ本体)の上下方向に沿う断面図である。
図26図25に示す本体部材(アダプタ本体)を第1側、斜め下側から見た斜視図である。
図27図25に示す本体部材(アダプタ本体)を第2側、斜め下側から見た斜視図である。
図28図25に示す本体部材(アダプタ本体)の底面図である。
図29】本発明の第10変形例に係る継手構造を構成する本体部材(アダプタ本体)の上下方向に沿う断面図である。
図30図29に示す本体部材(アダプタ本体)を第1側、斜め下側から見た斜視図である。
図31図29に示す本体部材(アダプタ本体)を第2側、斜め下側から見た斜視図である。
図32図29に示す本体部材(アダプタ本体)の底面図である。
図33】本発明の第11変形例に係る継手構造を構成する本体部材(アダプタ本体)の上下方向に沿う断面図である。
図34図33に示す本体部材(アダプタ本体)を第1側、斜め下側から見た斜視図である。
図35図33に示す本体部材(アダプタ本体)を第2側、斜め下側から見た斜視図である。
図36図33に示す本体部材(アダプタ本体)の底面図である。
図37】本発明の第1参考例に係る継手構造の上下方向に沿う断面図である。
図38】本発明の第2参考例に係る継手構造の上下方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1から図7を参照し、本発明の一実施形態に係る排水システムを説明する。 図1に示すように、排水システム10は、高層マンションや商業ビル等の多層階建物(建物)に適用される。この種の建物においては、各階の便器、化粧台、流し台等の衛生機器(排水設備)から排出される排水が、排水路の立主管20に横枝管を介して流入する。立主管20は、各階層(床スラブS)を通過するように設けられている。排水は、立主管20に沿って多層階建物の最下階まで流下し、立主管20の下端に接続された脚部継手50を介して横主管30に流れ込み、最終的に下水本管や浄化槽等に送られる。排水システム10は、各階の排水設備からの排水を建物の外部に排出する。
【0018】
排水システム10は、立主管20(立管)と、横主管30(横管)と、継手構造40と、を備えている。
立主管20は、各階に設けられた排水設備からの排水を集合させ下方に導く。立主管20は、各階に対応して複数設けられた集合継手21と、上下方向に隣り合う階に配置された集合継手21を接続する図示しない第1配管と、を備えている。
複数の集合継手21のうち、建物の最下階に設けられた最下階用の集合継手21は、枝管接続部22と、スラブ貫通部23と、を備えている。
【0019】
枝管接続部22は、床スラブSよりも上方に配置されている。枝管接続部22には、図示しない横枝管が接続される。横枝管は、排水設備から排出された排水を枝管接続部22に導く。なお枝管接続部22の一部または全部は、透明であってもよい。この場合、横枝管から枝管接続部22に流入した排水を外部から視認することができる。
【0020】
スラブ貫通部23は、枝管接続部22から下方に延びている。スラブ貫通部23は、上下方向に延びる筒状に形成されている。スラブ貫通部23は、床スラブSを上下方向に貫通する。スラブ貫通部23の下端部は、床スラブSから下方に向けて突出している。スラブ貫通部23(立主管20)の呼び径は、例えば、75~125程度である。
【0021】
なおスラブ貫通部23は、熱膨張性を具備していてもよい。この場合、複数階のうち、1つの階で仮に火災が発生しても、スラブ貫通部23が膨張することで、立主管20の内部が閉塞される。これにより、火災が発生した階の上下の階に、立主管20の内部を通して炎が到達するのを抑制することができる。スラブ貫通部23は、例えば、鋳鉄などの金属や塩化ビニルなどの樹脂により管状に構成されているが、樹脂の場合には多層管により形成されていてもよく、この場合、塩化ビニル樹脂により形成された内層および外層と、塩化ビニル樹脂および熱膨張黒鉛を含む中間層と、を備える構成を採用することができる。
【0022】
横主管30は、立主管20を流れた排水を水平方向に導いて敷地外に排出する。横主管30は、第2配管31と、掃除用継手32と、備えている。第2配管31は、継手構造40に接続されている。第2配管31(横主管30)の呼び径は、例えば、100~150程度であってもよい。横主管30の呼び径が、立主管20の呼び径よりも大きくてもよい。
掃除用継手32は、第2配管31を間に挟んで継手構造40の反対側に配置されている。掃除用継手32は、掃除口33が形成されている。掃除口33には、蓋体34が着脱自在に装着されている。なお掃除用継手32の一部または全部は、透明であってもよい。この場合、第2配管31から掃除用継手32に流入した排水を外部から視認することができる。
【0023】
図1から図6に示すように、継手構造40は、立主管20と横主管30とを接続する。継手構造40は、脚部継手50(継手)と、アダプタ70と、を備えている。
図1および図2に示すように、脚部継手50は、内部に立主管20が配置される第1端部51と、横主管30が装着される第2端部52と、第1端部51と第2端部52とを接続する曲管部53と、を備えている。第1端部51は、立主管20が挿入される受け口である。第1端部51には、スラブ貫通部23の下端部が装着される。第2端部52は、横主管30が挿入される受け口である。第2端部52内には、第2配管31が嵌合される。第2端部52の内周面には、第2配管31の外周面が接着される。
【0024】
図2に示すように、第2端部52は、第1端部51に対して水平方向のうちの一方向Dにずらされている。以下では、一方向Dに沿って第1端部51に対して第2端部52が位置する方向を第1側D1といい、一方向Dの反対側を第2側D2という。第1端部51の軸線(以下、第1軸線O1という)を上下方向に平行に配置したとき、第2端部52の軸線(以下、第2軸線O2という)には、第1側D1に向かうに従い下方に向かう排水勾配がつく。第1軸線O1と第2軸線O2とは互いに交差する。第1端部51の上端縁から両軸線O1、O2の交点Xまでの距離L1は、200mm以下であってもよい。
【0025】
曲管部53は、第1端部51から、第1端部51の軸線方向(下方)に延びる第1管部54と、第2端部52から、第2端部52の軸線方向に延びる第2管部55と、第1管部54と第2管部55とを接続する接続部56と、を備えている。
第1管部54は、第1端部51よりも小径である。第1端部51と第1管部54とは、第1段部57を介して接続されている。
【0026】
第2管部55は、第2端部52よりも小径である。第2端部52と第2管部55とは、第2段部58を介して接続されている。第2管部55の管頂55aのうち、第2側D2に位置する端部は、第1管部54の下端部のうち、第1側D1に位置する部分に直結されている。
接続部56は、第1管部54と第2管部55を、前述のように両者が直結されている部分を除いて全周にわたって接続している。接続部56には、下方に向けて突出する被支持部59が設けられている。被支持部59は、例えば、図示しない支持金具により支持される。
【0027】
脚部継手50は、例えば、塩化ビニルなどの樹脂により形成されていてもよく、特に、耐衝撃性に優れた樹脂を用いることが好ましい。
耐衝撃性に優れた樹脂は、例えば、塩化ビニル樹脂としては、(1)ポリ塩化ビニル重合体に衝撃性改良樹脂を混合した樹脂、(2)ポリ塩化ビニル重合体と衝撃性改良樹脂をグラフト共重合した樹脂、(3)塩化ビニルモノマーと、この塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体、(4)塩化ビニル以外の(共)重合体に塩化ビニルをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられる。これら(1)~(4)は単独で使用されても良く、2種以上が併用されても良い。また、必要に応じて上記ポリ塩化ビニル系樹脂を塩素化しても良い。
【0028】
上記の(1)においてポリ塩化ビニル重合体に混合する衝撃性改良樹脂や、上記の(2)においてポリ塩化ビニル重合体とグラフト共重合する衝撃性改良樹脂としては、ゴム特性を有する樹脂が挙げられる。具体的には、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、メチルメタクリルレート-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリルゴム、塩素化ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体などが挙げられる。これらは単独で使用されても良く、2種以上が併用されても良い。
【0029】
上記のゴム特性を有する樹脂を混合又はグラフト共重合したポリ塩化ビニル系樹脂を用いることで、ポリ塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性を向上させることができる。
脚部継手50には立主管20から落下する排水が直接当たるため、脚部継手50は破損し易い。耐衝撃性に優れた樹脂を脚部継手50に用いることで、排水による衝撃を起因として脚部継手50が破損することを防止できる。
【0030】
なお脚部継手50の一部または全部は、透明であってもよい。この場合、立主管20から脚部継手50に流入した排水を外部から視認することができる。
また、第1端部51の呼び径(内径、外径)が、横主管30(第2配管31)の呼び径(内径、外径)よりも大きいことが好ましい。この場合、第1端部51内に装着される最大の呼び径の立主管20(スラブ貫通部23)を採用しても、横主管30の排水能力を立主管20の排水能力と同等以上に確保することができる。その結果、排水システム10全体での排水能力を維持することができる。
【0031】
さらに、脚部継手50は、立主管20や横主管30よりも肉厚が大きいことが好ましい。特に、脚部継手50を構成する曲管部53(第1管部54、第2管部55、接続部56)の肉厚が大きいことが好ましく、具体的には、曲管部53の肉厚が5mm以上とされ、6mm以上であることが好ましい。
前述したように脚部継手50には立主管20から落下する排水が直接当たるが、曲管部53の肉厚を大きくすることで、排水による衝撃を起因として脚部継手50が破損することを防止できる。
【0032】
図2および図3に示すように、アダプタ70は、立主管20と第1端部51との間に配置される。本実施形態では、立主管20(スラブ貫通部23)の外径が、第1端部51の外径よりも小さく、アダプタ70は、立主管20と第1端部51との直径差を調整する。以下では、アダプタ70の径方向を径方向といい、アダプタ70の周方向を周方向という。
【0033】
アダプタ70は、アダプタ本体71と、弾性リング72と、規制部材73と、を備えている。
アダプタ本体71は、本体部75と、整流部76と、を備えている。本体部75は、第1端部51内に配置され、第1段部57に支持されている。本体部75内には、立主管20(スラブ貫通部23)が配置されている。図3に示すように、本体部75は、リング部77と、第1筒部78と、を備えている。
【0034】
アダプタ70のうち、弾性リング72を除く部材は、塩化ビニル樹脂により形成されていてもよく、例えば、塩化ビニルなどの樹脂により形成されていてもよく、特に、耐衝撃性に優れた樹脂を用いることが好ましい。
耐衝撃性に優れた樹脂は、例えば、塩化ビニル樹脂としては、(1)ポリ塩化ビニル重合体に衝撃性改良樹脂を混合した樹脂、(2)ポリ塩化ビニル重合体と衝撃性改良樹脂をグラフト共重合した樹脂、(3)塩化ビニルモノマーと、この塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体、(4)塩化ビニル以外の(共)重合体に塩化ビニルをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられる。これら(1)~(4)は単独で使用されても良く、2種以上が併用されても良い。また、必要に応じて上記ポリ塩化ビニル系樹脂を塩素化しても良い。
【0035】
上記の(1)においてポリ塩化ビニル重合体に混合する衝撃性改良樹脂や、上記の(2)においてポリ塩化ビニル重合体とグラフト共重合する衝撃性改良樹脂としては、ゴム特性を有する樹脂が挙げられる。具体的には、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、メチルメタクリルレート-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリルゴム、塩素化ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体などが挙げられる。これらは単独で使用されても良く、2種以上が併用されても良い。
【0036】
上記のゴム特性を有する樹脂を混合又はグラフト共重合したポリ塩化ビニル系樹脂を用いることで、ポリ塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性を向上させることができる。
アダプタ70は複雑な構造をしていて破損し易い。しかしながら、耐衝撃性に優れた樹脂をアダプタ70に用いることで、例えば継手構造40を誤って落下させた場合などにアダプタ70が破損することを防止できる。
【0037】
リング部77は、第1端部51内に嵌合(しまり嵌め)されている。図2に示すように、リング部77の内側の開口部77aの軸線は、第1端部51の第1軸線O1に対して第2側D2にずらされている。開口部77aは、第1端部51に対して偏心している。図3に示すように、リング部77は、厚肉部79と、薄肉部80と、を備えている。
厚肉部79は、リング部77の外周部とされ、薄肉部80は、リング部77の内周部とされている。厚肉部79と薄肉部80とは、径方向に連続して配置されている。薄肉部80の肉厚(アダプタ70の軸方向に沿う肉厚)は、厚肉部79の肉厚よりも薄い。
【0038】
薄肉部80の上面は、厚肉部79の上面に段差を介して連結されている。薄肉部80の下面は、厚肉部79の下面と段差なく滑らかに連なっている。
図2に示すように、厚肉部79のうち、第1側D1に位置する部分の一方向Dの長さは、第2側D2に位置する部分の一方向Dの長さよりも長い。薄肉部80のうち、第1側D1に位置する部分の一方向Dの長さと、第2側D2に位置する部分の一方向Dの長さとは、同等である。
【0039】
図3に示すように、第1筒部78は、リング部77から上方に延びている。第1筒部78は、厚肉部79における内周縁に配置されている。第1筒部78は、リング部77の開口部77aと同軸に配置されている。第1筒部78の外周面には、突条81が設けられている。突条81は、第1筒部78の上端部に設けられている。突条81は、周方向の全周にわたって連続して設けられている。
【0040】
図2に示すように、整流部76は、本体部75から突出して曲管部53内に配置される。整流部76は、薄肉部80から下方に向けて突出し、第1管部54内に配置されている。整流部76は、第2管部55の管頂55aよりも上方に位置する。言い換えると、整流部76は、第1管部54内に限定して配置され、接続部56内には配置されていない。
【0041】
図4および図5に示すように、整流部76は、板部82と、突起部83と、を備えている。板部82は、周方向に延びている。板部82の上端部は、リング部77の下面に連結されている。板部82は、リング部77のうち、第1側D1に位置する部分に限定して配置されている。言い換えると、板部82は、リング部77の全周には配置されていない。
【0042】
突起部83は、板部82から径方向の内側に向けて突出している。図5に示すように、突起部83は、周方向に間隔をあけて複数配置されている。図示の例では、突起部83は、板部82における周方向の両端部に配置されている。図4に示すように、突起部83の径方向の内側に向けた突出量は、上方から下方に向かうに従って大きくなった後、小さくなっている。突起部83のうち、径方向の内側に向けた突出量が最大の部分は、突起部83における上下方向の中央よりも上側に位置している。突起部83は、周方向から見た側面視において、径方向の内側に向けて凸となる曲線形状をなしている。
【0043】
図3に示すように、弾性リング72は、例えばゴムなどの弾性体により形成されている。弾性リング72は、本体部75内に配置される。弾性リング72内には、立主管20が嵌合される。弾性リング72は、本体リング84と、第1凸部85および第2凸部86と、を備えている。
本体リング84は、第1筒部78内に密に嵌合されている。本体リング84の内径は、リング部77の内径(開口部77aの直径)よりも大きい。
【0044】
第1凸部85および第2凸部86は、本体リング84の内周面に設けられている。第1凸部85および第2凸部86は、周方向の全周にわたって連続して設けられている。
第1凸部85は、本体リング84の下端部に設けられている。第1凸部85の内径は、リング部77の内径と同等である。第1凸部85は、リング部77により下方から支持されている。第1凸部85の上面には、立主管20(スラブ貫通部23)の下端面が突き当てられている。
【0045】
第2凸部86は、本体リング84の上端部に設けられている。第2凸部86は、径方向の内側に向かうに従って下方に向けて延びる。第2凸部86の内径は、立主管20(スラブ貫通部23)の外径よりも小さい。弾性リング72内に挿入された立主管20によって、第2凸部86は下方および径方向の外側に向けて弾性変形させられる。その結果、第2凸部86が立主管20に全周にわたって密に接触(圧接)し、弾性リング72と立主管20との間でのシール性が確保される。
【0046】
規制部材73は、本体部75に装着され、弾性リング72の本体部75からの離脱を規制する。規制部材73は、第1端部51内に配置される。規制部材73は、第2筒部87と、フランジ部88と、を備えている。
第2筒部87は、第1筒部78に外側から嵌合(しまり嵌め)される。本実施形態では、第2筒部87は、第1筒部78と第1端部51との間に配置される。第2筒部87は、第1端部51内に嵌合(しまり嵌め)される。第2筒部87の下端面は、厚肉部79の上面から離間している。
【0047】
フランジ部88は、第2筒部87の上端部から径方向の内側に向けて突出している。フランジ部88は、第1筒部78および本体リング84を上方から覆っている。フランジ部88の下面は、第1筒部78および本体リング84それぞれの上端面に当接している。 なおアダプタ70(特にアダプタ本体71および規制部材73)は、視認性の観点から透明であってもよい。
【0048】
この排水システム10において、アダプタ70を脚部継手50に組み付ける際には、まず図6に示すように、アダプタ本体71、弾性リング72および規制部材73を組み合わせ、脚部継手50の外部でアダプタ70を形成する。
その後、図7に示すように、アダプタ70を第1端部51内に嵌合させる。ここで本実施形態では、アダプタ70において第2側D2に位置する部分において、厚肉部79の一方向Dに沿った大きさL2が、第1筒部78の内周面と第2筒部87の内周面との間の一方向Dに沿った大きさL3よりも大きい。そのため、アダプタ70を第1端部51内に嵌合させるときに、例えば、規制部材73が第1端部51の上端面に突き当たる等して規制部材73が本体部75から予期せず離脱することが規制される。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る継手構造40およびアダプタ70によれば、本体部75が第1端部51内に配置され、かつ、本体部75内に立主管20が配置される。したがって、立主管20が第1端部51よりも小径の場合であっても、立主管20を第1端部51にアダプタ70を介して装着させることができる。その結果、同一の脚部継手50を、多様なサイズの立主管20に適用することができる。これにより、例えば、金型などの設備投資を抑えること等ができる。
【0050】
アダプタ70を使用することで、前述のように脚部継手50に対して小径な立主管20を適用することができる。この場合、立主管20から脚部継手50に排水が排出されるときに、排水が脚部継手50内に排出される領域を、脚部継手50を上側から見た上面視において、立主管20の内部空間が投影される領域に収めることができる。よって、脚部継手50内に、排水によって満たされない空間(空気層)を確保し易くすることができる。ここで、脚部継手50内が排水によって満たされた場合、排水が脚部継手50から高速で排出されると立主管20内が負圧になり易く、排水が脚部継手50から低速で排出されると立主管20内が正圧になり易い。そのため、立主管20からの排水時に脚部継手50内に空気層を確保することで、立主管20内の予期しない負圧化や正圧化を抑制することができる。その結果、立主管20が、例えば本実施形態のように、前記横枝管の第1端部が接続されるいわゆる集合継手21を含む場合には、前記横枝管の第2端部が接続される排水設備において封水破壊が生じるのを抑制することができる。
【0051】
本体部75が、脚部継手50の第1段部57に支持される。したがって、アダプタ70の本体部75を脚部継手50の第1段部57によって下方から支持することが可能になり、例えば、アダプタ70および立主管20を、脚部継手50によって安定して支持すること等ができる。
【0052】
整流部76が、本体部75から突出して曲管部53内に配置される。したがって、仮に立主管20内を流下する排水が旋回流を形成したとしても、その旋回流を整流部76によって整流し、排水の挙動を制御し易くすることができる。これにより、脚部継手50の排水性能を良好に確保することができる。
【0053】
整流部76が、脚部継手50ではなくアダプタ70に備えられている。したがって、例えば前述のように、立主管20が第1端部51よりも小径の場合であっても、立主管20と整流部76との位置関係を適切に調整し易くすることができる。すなわち、整流部76が脚部継手50に備えられている場合であって、立主管20が第1端部51よりも小径であるとき、例えば、立主管20が配置される第1端部51内の位置によっては、立主管20から流下する排水が整流部76から離れ過ぎるおそれがある。この場合、整流部76による排水の整流が不十分になり、脚部継手50の排水性能が確保できない可能性がある。
【0054】
整流部76が、第2管部55の管頂55aよりも上方に位置する。したがって、例えば、排水が第2管部55を流れるときに、この排水の流れが整流部76によって阻害されるのを抑制すること等ができる。
【0055】
弾性リング72が本体部75内に配置され、弾性リング72内に立主管20が嵌合される。したがって、立主管20から脚部継手50内に流れる排水の予期せぬ漏出を抑制することができる。
【0056】
規制部材73が、本体部75に装着され、かつ、弾性リング72の本体部75からの離脱を規制する。したがって、前述した排水の漏出を抑制する効果を、単に規制部材73を本体部75に装着させることによって確実に奏功させることができる。
【0057】
規制部材73が、第1端部51内に配置される。したがって、規制部材73を第1端部51によって覆って保護することができる。これにより、例えば、規制部材73が外部からの不意の外力を受けるのを第1端部51によって遮ることが可能になり、規制部材73の予期せぬ離脱を抑制すること等ができる。
【0058】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0059】
例えば、図8に示す第1変形例に係る継手構造40Aのように、開口部77aが、図2に示す前記実施形態に係る継手構造40の開口部77aよりも小径であってもよい。この場合、立主管20の呼び径(内径、外径)も、前記実施形態に係る継手構造40の立主管20の呼び径(内径、外径)よりも小さい。
【0060】
図9に示す第2変形例に係る継手構造40Bや、図10に示す第3変形例に係る継手構造40Cのように、第2管部55が短くてもよい。図9に示す第2変形例に係る継手構造40Bでは、第2管部55が、図2に示す前記実施形態に係る第2管部55に対して短くなっている。図10に示す第3変形例に係る継手構造40Cでは、第2管部55が、図8に示す第1変形例に係る第2管部55に対して短くなっている。
【0061】
図11に示す第4変形例に係る継手構造40Dのように、アダプタ70と第1端部51との間に、両者の相対的な回転を規制する回り止め90が設けられていてもよい。
回り止め90は、凹部91と凸部92とを備えている。本実施形態では、凹部91が第1端部51の内周面(図示の例では、第1端部51において第2側D2に位置する部分の内周面)に形成され、凸部92が規制部材73の外周面(図示の例では、規制部材73において第2側D2に位置する部分の外周面)に形成されている。凸部92は、凹部91内に嵌合されている。アダプタ70が第1端部51に対して相対的に回転しようとしたときに、凸部92が凹部91の内面に係止することで、前述の回転が規制される。
【0062】
図12および図13に示す第5変形例に係るアダプタ本体71Aのように、整流部76の板部82が、周方向の全周にわたって連続し、筒状に形成されていてもよい。この場合、突起部83が、周方向の全周にわたって等間隔をあけて複数配置されていてもよい。さらにこの場合、板部82と第1管部54との間に前記空気層を形成し易くすることができる。これにより、例えば前述のような、排水設備における封水破壊の発生を効果的に抑制することができる。
また、図14から図16に示す第6変形例に係るアダプタ本体71Bのように、板部82の上下方向の大きさが、板部82の周方向の位置によって異なっていてもよい。このアダプタ本体71Bでは、板部82が、第5変形例に係るアダプタ本体71と同様に、筒状に形成されている。その上で、板部82のうち、第1側D1に位置する一部分(以下、第1部分82aという)が、残りの部分(以下、第2部分82bという)に比べて上下方向に大きい。第1部分82aの上下方向の大きさは、第2部分82bの上下方向の大きさの2倍以上である。第1部分82aは、第2部分82bに比べて周方向に小さい。図15および図16に示すように、第1部分82aの周方向に沿った大きさは、板部82全周の1/4程度である。言い換えると、第1部分82aは、アダプタ本体71の軸線Lを中心とした中心角度90度の範囲に位置している。整流部76は、板部82、突起部83に加え、突部89を更に備えている。突部89は、板部82から径方向の外側に突出している。突部89の上下方向の大きさは、板部82の上下方向の大きさと同等である。突部89の上端は、リング部77の下面に連結されている。突部89の下端の上下方向の位置は、第1部分82aの下端の上下方向の位置と一致している。
【0063】
図17から図20に示す第7変形例に係るアダプタ本体71Cのように、突起部83が、アダプタ本体71Cの軸線L回りに延びる螺旋状に形成されていてもよい。突起部83は、周方向の一方側から他方側に向かうに従って下方に向けて延びている。周方向の一方側は、図18に示すようなアダプタ本体71Cを上側から見た上面視において、前記軸線L回りに沿う反時計回り側である。周方向の他方側は、前記上面視において、前記軸線L回りに沿う時計回り側である。突起部83は、厚さ方向が上下方向となる螺旋板状に形成されている。突起部83の径方向の大きさは、突起部83における周方向の両端部において小さく、突起部83における周方向の中央部において大きい。なお板部82は、周方向の全周ではなく、周方向の位置部分(第1側D1に位置する部分)のみに設けられている。図19に示すように、板部82の上下方向の大きさは、周方向に沿う一方側から他方側に向かうに従い大きくなっている。突起部83は、板部82の下端に、その全長(下端の周方向の全長)にわたって設けられている。
この場合、立主管20内から脚部継手50内に流下する排水を突起部83によって旋回流に整流することができる。その結果、例えば、軸線L上に空気芯を確保することが可能になり、排水性能を効果的に確保することができる。
【0064】
図21から図24に示す第8変形例に係るアダプタ本体71D、図25から図28に示す第9変形例に係るアダプタ本体71E、図29から図32に示す第10変形例に係るアダプタ本体71F、図33から図36に示す第11変形例に係るアダプタ本体71Gのように、板部82の傾斜角度や幅が、前記実施形態に係るアダプタ本体71における板部82の傾斜角度や幅と異なっていてもよい。
【0065】
図21から図24に示す第8変形例に係るアダプタ本体71D、および図25から図28に示す第9変形例に係るアダプタ本体71Eでは、板部82の傾斜角度θが共通している。板部82の傾斜角度θとは、軸線Lを含み一方向Dに沿うアダプタ本体71D、71Eの縦断面において、上下方向に延びる仮想線に対して板部82(板部82において第2側D2を向く面)が傾斜する角度である。アダプタ本体71D、71Eでは、前記傾斜角度θが、いずれも15度となっている。
一方、アダプタ本体71Dとアダプタ本体71Eとでは、板部82の幅が異なっている。板部82の幅とは、板部82の周方向の大きさである。アダプタ本体71Dの板部82の幅は、アダプタ本体71Eの板部82の幅よりも小さい。アダプタ本体71Dの板部82は、軸線Lを中心とした中心角度90度の範囲に位置している。アダプタ本体71Eの板部82は、軸線Lを中心とした中心角度180度の範囲に位置している。
【0066】
図29から図32に示す第10変形例に係るアダプタ本体71F、および図33から図36に示す第11変形例に係るアダプタ本体71Gでは、板部82の傾斜角度θが共通している。アダプタ本体71F、71Gでは、前記傾斜角度θが、いずれも30度となっている。
一方、アダプタ本体71Fとアダプタ本体71Gとでは、板部82の幅が異なっている。アダプタ本体71Fの板部82の幅は、アダプタ本体71Gの板部82の幅よりも小さい。アダプタ本体71Fの板部82は、軸線Lを中心とした中心角度90度の範囲に位置している。アダプタ本体71Gの板部82は、軸線Lを中心とした中心角度180度の範囲に位置している。
【0067】
これらのアダプタ本体71D、71E、71F、71Gでは、板部82の傾斜角度θが,0度より大きく45度より小さい。これにより、立主管20からの排水が板部82に衝突したとしても、衝突エネルギーの一部を、排水の流れの変化のための運動エネルギーに変換して消費させることができる。その結果、排水を起因とする衝突音を低減させることができる。なお、前記実施形態に係るアダプタ本体71では、傾斜角度θが0度である。
【0068】
ここで、板部82の傾斜角度θや幅と、排水時に生じる衝突音と、の関係を確認する検証試験を実施した。検証試験としては、板部82の傾斜角度θについて検証した第1検証試験と、板部82の幅について検証した第2検証試験と、を実施した。
第1の検証試験では、傾斜角度θが0度のベンチマークのアダプタ本体として、前記実施形態に係るアダプタ本体71を準備した。傾斜角度θが15度のアダプタ本体として、第9変形例に係るアダプタ本体71Eを準備した。傾斜角度θが30度のアダプタ本体として、第11変形例に係るアダプタ本体71Gを準備した。また、傾斜角度θが45度のアダプタ本体も別途、準備した。これらの4種類のアダプタ本体をそれぞれ備えるアダプタについて、共通の条件下で立主管20から排水を排出したときにおける衝突音の250Hz域の音圧レベル(dB)を計測した。その結果、0度のアダプタ本体では31.0dB、15度のアダプタ本体では27.1dB、30度のアダプタ本体では26.7dB、45度のアダプタ本体では29.5dBであった。
第2の検証試験では、ベンチマークのアダプタ本体として、前記実施形態に係るアダプタ本体71を準備した。幅狭のアダプタ本体として、第10変形例に係るアダプタ本体71F(傾斜角度θが30度)を準備した。幅広のアダプタ本体として、第11変形例に係るアダプタ本体71G(傾斜角度θが30度)を準備した。これらの3種類のアダプタ本体をそれぞれ備えるアダプタについて、共通の条件下で立主管20から排水を排出したときにおける衝突音の250Hz域の音圧レベル(dB)を計測した。その結果、ベンチマークのアダプタ本体では31.0dB、幅狭のアダプタ本体では28.0dB、幅広のアダプタ本体では26.7dBとなった。
【0069】
図37に示す第1参考例に係る継手構造40Eや、図38に示す第2参考例に係る継手構造40Fのように、アダプタ70がなくてもよい。この場合、弾性リング72が、第1端部51内に嵌合され、規制部材73が、第1端部51に装着されている。なお、図38に示す第2参考例に係る継手構造40Fでは、図37に示す第1参考例に係る継手構造40Eに比べて、第2管部55が長くなっている。
【0070】
前記実施形態や各変形例、各参考例において、弾性リング72や規制部材73がなくてもよい。前記実施形態や各変形例において弾性リング72と規制部材73を省略する場合、スラブ貫通部23とアダプタ本体71とを接着剤やフランジを用いて接続してもよい。接着剤を用いて接続する場合には、スラブ貫通部23およびアダプタ本体71が樹脂で構成されていることが好ましい。フランジを用いて接続する場合には、スラブ貫通部23の下端部およびアダプタ本体71の第1筒部78の上端それぞれに、ボルト穴を備えたフランジが設けられていることが好ましい。
前記実施形態や各変形例、各参考例において、整流部76の少なくとも一部が、第2管部55の管頂55aよりも下方に位置していてもよい。
【0071】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10 排水システム
20 立主管(主管)
30 横主管(横管)
40、40A、40B、40C、40D、40E、40F 継手構造
50 脚部継手(継手)
51 第1端部
52 第2端部
53 曲管部
55 第2管部
55a管頂
57 第1段部
70 アダプタ
72 弾性リング
73 規制部材
75 本体部
76 整流部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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