(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181287
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ガス置換方法
(51)【国際特許分類】
B63B 25/08 20060101AFI20231214BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20231214BHJP
B63J 2/08 20060101ALI20231214BHJP
F17C 9/00 20060101ALI20231214BHJP
B65D 88/06 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B63B25/08
B63B25/16
B63J2/08 B
F17C9/00 B
B65D88/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023180460
(22)【出願日】2023-10-19
(62)【分割の表示】P 2019229388の分割
【原出願日】2019-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 聡成
(72)【発明者】
【氏名】森本 晋介
(72)【発明者】
【氏名】小形 俊夫
(57)【要約】
【課題】タンク内に積み込むガスの種類の切替を効率良く行い、作業に要する手間と時間を抑える。
【解決手段】ガス置換方法は、アンモニアガスが充填されたタンクに、前記アンモニアガスよりも比重の大きい窒素ガスを供給し、前記アンモニアガスの下方に前記窒素ガスによる分離層を形成する工程と、前記タンクの下部に前記窒素ガスよりも比重の大きい二酸化炭素ガスを供給し、前記タンクの上部から前記アンモニアガス及び前記分離層を順次排出する工程と、を含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアガスが充填されたタンクに、前記アンモニアガスよりも比重の大きい窒素ガスを供給し、前記アンモニアガスの下方に前記窒素ガスによる分離層を形成する工程と、
前記タンクの下部に前記窒素ガスよりも比重の大きい二酸化炭素ガスを供給し、前記タンクの上部から前記アンモニアガス及び前記分離層を順次排出する工程と、
を含むガス置換方法。
【請求項2】
前記窒素ガス、及び前記二酸化炭素ガスを、前記タンク内の下部に開口する下部配管を通し、前記タンクに供給する
請求項1に記載のガス置換方法。
【請求項3】
二酸化炭素ガスが充填されたタンクに、前記二酸化炭素ガスよりも比重の小さい窒素ガスを供給し、前記二酸化炭素ガスの上方に前記窒素ガスによる分離層を形成する工程と、
前記タンクの上部に前記窒素ガスよりも比重の小さいアンモニアガスを供給し、前記タンクの下部から前記二酸化炭素ガス及び前記分離層を順次排出する工程と、
を含むガス置換方法。
【請求項4】
前記窒素ガス、及び前記アンモニアガスを、前記タンク内の上部に開口する上部供給管を通し、前記タンク内に供給する
請求項3に記載のガス置換方法。
【請求項5】
前記窒素ガスによる分離層を形成する工程では、
前記分離層を形成する前記窒素ガスは、前記タンクの容量よりも少ない量を前記タンクに供給する
請求項1から4の何れか一項に記載のガス置換方法。
【請求項6】
前記タンクは、船舶の船体に設けられたものである
請求項1から5の何れか一項に記載のガス置換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス置換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガスを運搬する船舶等には、液化ガスを貯留するタンクが設けられている。このようなタンクでは、メンテンナンス等によりタンク開放する際に、タンク内に残留した液化ガスと酸素とが接触しないように、まずタンク内に不活性なイナートガスを充満させ、その後、タンク内のイナートガスを大気等に置換する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記液化ガスを貯留するタンクにおいては、タンクに貯留するガスの種類を切り換える場合がある。この際、切換前にタンクに貯留されていた第一のガスの残留ガスと、切替後にタンクに貯留される第二のガスとの接触により不具合が生じる可能性がある。この不具合としては、例えば、第一のガスと第二のガスとが化学反応して、固形物等が生成されてしまうことが例示できる。また、第一のガスが第二のガスに混入し、切替後に、タンク内に第一のガスが残留してしまう可能性もある。そのため、タンクに貯留するガスの種類を切り換える場合には、特許文献1のイナートガスの場合と同様に、タンク内の第一のガスを不活性ガスに置換した後に、第二のガスをタンク内に積み込むような運用をする必要がある。
しかしながら、上記したような手法では、タンク内に積み込むガスの種類を切り替える際に、第一の液化ガスのタンク外への払い出し、タンク内の不活性ガス等への置換、タンク内への第二の液化ガスの積込、といった工程を順次実行する必要があるため、タンク内に積み込むガスの種類を切り替える作業に要する手間と時間が掛かってしまうという課題がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、タンク内に積み込むガスの種類を切り換える作業に要する手間と時間を抑えることができるガス置換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係るガス置換方法は、アンモニアガスが充填されたタンクに、前記アンモニアガスよりも比重の大きい窒素ガスを供給し、前記アンモニアガスの下方に前記窒素ガスによる分離層を形成する工程と、前記タンクの下部に前記窒素ガスよりも比重の大きい二酸化炭素ガスを供給し、前記タンクの上部から前記アンモニアガス及び前記分離層を順次排出する工程と、を含む。
【0007】
本開示に係るガス置換方法は、二酸化炭素ガスが充填されたタンクに、前記二酸化炭素ガスよりも比重の小さい窒素ガスを供給し、前記二酸化炭素ガスの上方に前記窒素ガスによる分離層を形成する工程と、前記タンクの上部に前記窒素ガスよりも比重の小さいアンモニアガスを供給し、前記タンクの下部から前記二酸化炭素ガス及び前記分離層を順次排出する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示のガス置換方法によれば、タンク内に積み込むガスの種類を切り替える作業に要する手間と時間を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係るガス置換方法が適用されるタンクを備えた船舶の概略構成を示す平面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係るガス置換方法が適用されるタンクにおいて、タンクに液化二酸化炭素を積み込んだ状態を示す側断面図である。
【
図3】本開示の実施形態に係るガス置換方法が適用されるタンクにおいて、タンクに液化アンモニアを積み込んだ状態を示す側断面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係るガス置換方法の手順を示すフローチャートである。
【
図5】本開示の実施形態に係るガス置換方法において、タンクに第一ガスが残留した状態を示す側断面図である。
【
図6】本開示の実施形態に係るガス置換方法において、タンクに不活性ガスを供給して分離層が形成された状態を示す側断面図である。
【
図7】本開示の実施形態に係るガス置換方法において、タンクに第二ガスが供給され、第一ガス、及び分離層が押し上げられた状態を示す側断面図である。
【
図8】本開示の実施形態に係るガス置換方法において、タンクの第一ガス、及び分離層が排出された状態を示す側断面図である。
【
図9】本開示の実施形態に係るガス置換方法の手順を示すフローチャートである。
【
図10】本開示の実施形態に係るガス置換方法において、タンクに第二ガスが残留した状態を示す側断面図である。
【
図11】本開示の実施形態に係るガス置換方法において、タンクに不活性ガスを供給して分離層が形成された状態を示す側断面図である。
【
図12】本開示の実施形態に係るガス置換方法において、タンクに第一ガスが供給され、第二ガス、及び分離層が押し下げられた状態を示す側断面図である。
【
図13】本開示の実施形態に係るガス置換方法において、タンクの第二ガス、及び分離層が排出された状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態に係る船舶について、
図1、
図2を参照して説明する。
(船舶の船体構成)
図1、
図2に示す本開示の実施形態の船舶1は、例えば、液化二酸化炭素と、液化アンモニアと、を選択的に運搬可能とされている。この船舶1は、船体2と、タンク21と、積込配管30と、を少なくとも備えている。
【0011】
(船体の構成)
図1に示すように、船体2は、その外殻をなす、一対の舷側3A,3Bと、船底(図示無し)と、甲板5と、を有している。舷側3A,3Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を備えている。船底(図示無し)は、これら舷側3A,3Bを接続する船底外板を備えている。これら一対の舷側3A,3B及び船底(図示無し)により、船体2の外殻は、船首尾方向Daに直交する断面において、U字状を成している。この実施形態で例示する甲板5は、外部に露出する全通甲板である。船体2には、船尾2b側の甲板5上に、居住区を有する上部構造7が形成されている。
【0012】
船体2内には、上部構造7よりも船首2a側に、貨物搭載区画(ホールド)8が形成されている。貨物搭載区画8は、甲板5に対して下方の船底(図示無し)に向けて凹み、上方に開口している。
【0013】
(タンクの構成)
タンク21は、貨物搭載区画8内に、複数配置されている。この実施形態におけるタンク21は、貨物搭載区画8内に、例えば計7個配置されている。貨物搭載区画8内におけるタンク21のレイアウト、設置数は何ら限定するものではない。この実施形態において、各タンク21は、例えば、水平方向(具体的には、船首尾方向)に延びる円筒状である。なお、タンク21は、円筒状に限られるものではなく球形であってもよい。
【0014】
図2に示すように、各タンク21には、上部配管32と、下部配管33と、が設けられている。
上部配管32は、タンク21の外部からタンク21の内部に至っている。上部配管32の先端には、タンク21内の上部に開口する開口部32aが形成されている。ここで、タンク21内の上部とは、タンク21内の領域のうち、上下方向Dvにおけるタンク21の中央よりもタンク21の上端に近い側の領域を意味しており、一例として、タンク21頂部を挙げることができる。上部配管32は、後述する他の配管に接続可能に設けられている。また、上部配管32には、開閉弁(図示無し)が設けられている。開閉弁(図示無し)は、例えば上部配管32に他の配管を着脱するとき等に、必要に応じて上部配管32内の流路を開閉する。
【0015】
下部配管33は、タンク21の外部からタンク21の内部に延びて設けられている。下部配管33の先端には、タンク21内の下部に開口する開口部33aが形成されている。ここで、タンク21内の下部とは、タンク21内の領域のうち、上下方向Dvにおけるタンク21の中央よりもタンク21の下端に近い側の領域を意味しており、一例として、タンク21底部を挙げることができる。下部配管33の他端は、後述する他の配管に接続可能に設けられている。また、下部配管33には、開閉弁(図示無し)が設けられている。開閉弁(図示無し)は、例えば下部配管33に他の配管を着脱するとき等に、必要に応じて下部配管33内の流路を開閉する。
【0016】
上記タンク21には、液化二酸化炭素Lcと、液化アンモニアLaとの何れか一方、を選択的に積込可能である。船舶1は、液化二酸化炭素Lc、及び液化アンモニアLaの何れか一方のみを繰り返し運搬する場合、以下のようにして、タンク21への液化二酸化炭素の積込及び払い出し、又はタンク21への液化アンモニアの積込及び払い出しを行う。
【0017】
(タンクへの液化二酸化炭素の積込、及び払い出し)
図2に示すように、液化二酸化炭素Lcをタンク21に積み込むには、下部配管33に、船外の液化二酸化炭素供給設備等から液化二酸化炭素Lcが供給される配管(図示無し)を接続する。船外から下部配管33に液化二酸化炭素Lcを送り込むと、液化二酸化炭素Lcは、開口部33aからタンク21内に積み込まれる。このようにして、タンク21内に液化二酸化炭素Lcが貯留される。なお、液化二酸化炭素Lcのタンク21への積込は、上部配管32を通して行ってもよい。
【0018】
タンク21内に貯留された液化二酸化炭素Lcを払い出すときには、例えば、カーゴポンプ(図示無し)により下部配管33を通してタンク21内から液化二酸化炭素Lcを吸い出す。これにより、タンク21内の液化二酸化炭素Lcが、下部配管33を通して、船外の液化二酸化炭素回収設備等に払い出される。
【0019】
(タンクへの液化アンモニアの積込、及び払い出し)
図3に示すように、液化アンモニアLaをタンク21に積み込むには、下部配管33に、船外の液化アンモニア供給設備等から液化アンモニアLaが供給される配管(図示無し)を接続する。船外から下部配管33に液化アンモニアLaを送り込むと、液化アンモニアLaは、開口部33aからタンク21内に積み込まれる。このようにして、タンク21内に液化アンモニアLaが貯留される。なお、液化アンモニアLaのタンク21への積込は、上部配管32を通して行ってもよい。
【0020】
タンク21内に貯留された液化アンモニアLaを払い出すには、例えば、カーゴポンプ(図示無し)により下部配管33を通してタンク21内から液化アンモニアLaを吸い出す。これにより、タンク21内の液化アンモニアLaが、下部配管33を通して、船外の液化二酸化炭素回収設備等に払い出される。
【0021】
船舶1において、タンク21内に積み込む液化ガスの種類を切り替える場合、以下のようなガス置換方法を実行する。
(液化アンモニアから液化二酸化炭素へのガス置換方法)
図4に示すように、液化アンモニアから液化二酸化炭素へのガス置換方法S10は、分離層103を形成する工程S11と、アンモニアガスG1及び分離層103を順次排出する工程S12と、を含む。
【0022】
(分離層を形成する工程)
タンク21内の液化アンモニアLaを船外の液化アンモニア回収設備等に払い出した後には、
図5に示すように、タンク21内には、残留した気体のアンモニアガス(第一ガス)G1が充填されている。分離層103を形成する工程S11では、
図6に示すように、下部配管33に、船内又は船外に設けられた窒素ガス発生装置等の窒素ガス供給源から窒素ガス(不活性ガス)Gsを送り込む。窒素ガスGsは、下部配管33の開口部33aから、タンク21内の下部に供給される。窒素ガスGsは、アンモニアガスG1よりも比重が大きい。そのため、タンク21内の下部に窒素ガスGsを供給すると、タンク21内にアンモニアガス層101と分離層103とが形成される。アンモニアガス層101は、窒素ガスGsによってタンク21内の上部に押し上げられたアンモニアガスG1からなる。分離層103は、窒素ガスGsからなり、アンモニアガス層101の下方に形成される。
【0023】
分離層103を形成する工程S11では、分離層103を形成する窒素ガスGsとして、タンク21の容量よりも少ない量の窒素ガスGsをタンク21に供給する。上記窒素ガス発生装置にて生成される窒素ガスGsの露点は、液化二酸化炭素Lcの温度(例えば、-50℃)より低い温度になっている。また、窒素ガスGsをタンク21内に供給するのに伴って、タンク21の上部のアンモニアガスG1の一部が、上部配管32を通してタンク21外に押し出されてもよい。上部配管32を通して押し出されるアンモニアガスG1は、船外のガス回収設備で回収したり、船外の大気中に排出したりする。ここで、上記した二酸化炭素ガスG2やタンク21の内面は、液化二酸化炭素Lcと同じ温度であると想定される。そのため、上記のように、窒素ガスGsの露点を液化二酸化炭素Lcの温度よりも低い温度にすることで、残留する二酸化炭素ガスG2やタンク21の内面に窒素ガスGsが触れても窒素ガスGsに含まれる水分が凝縮して結露することを抑制できる。
【0024】
(アンモニアガス及び分離層を順次排出する工程)
アンモニアガスG1及び分離層103を順次排出する工程S12では、
図7に示すように、タンク21の下部に窒素ガスGsよりも比重の大きい二酸化炭素ガス(第二ガス)G2を供給する。二酸化炭素ガスG2は、二酸化炭素ガス供給設備等から、下部配管33を通して、開口部33aからタンク21内の下部に供給される。二酸化炭素ガスG2の比重は、窒素ガスGs及びアンモニアガスG1の比重よりも大きい。そのため、タンク21の下部に二酸化炭素ガスG2が供給されると、タンク21内でアンモニアガス層101及び分離層103の下方に、二酸化炭素ガス層102が形成される。なお、アンモニアガスG1及び分離層103を順次排出する工程S12では、二酸化炭素ガスG2に加えて、液化二酸化炭素Lcを、タンク21内の下部に供給してもよい。
【0025】
この状態のタンク21内では、上部のアンモニアガス層101と下部の二酸化炭素ガス層102との間に、分離層103が介在している。
二酸化炭素ガスG2をタンク21の下部に供給し続けると、タンク21内における二酸化炭素ガスG2量が増えるにしたがって、タンク21の上部のアンモニアガス層101を形成するアンモニアガスG1、およびその下方の分離層103を形成する窒素ガスGsが押し上げられる。押し上げられたアンモニアガスG1、及び窒素ガスGsは、上部配管32を通して、タンク21外に順次排出されていく。上部配管32を通して押し出されるアンモニアガスG1、及び窒素ガスGsは、船外のガス回収設備で回収したり、船外の大気中に排出したりする。
【0026】
図8に示すように、アンモニアガスG1、及び窒素ガスGsの全てがタンク21外に排出されると、タンク21内には二酸化炭素ガスG2のみが残留する。しかる後、
図2に示したように、タンク21への液化二酸化炭素Lcの積込を行う。
【0027】
(液化二酸化炭素から液化アンモニアへのガス置換方法)
図9に示すように、液化二酸化炭素から液化アンモニアへのガス置換方法S20は、分離層103を形成する工程S21と、二酸化炭素ガスG2及び分離層103を順次排出する工程S22と、を含む。
【0028】
(分離層を形成する工程)
タンク21内の液化二酸化炭素Lcを、船外の液化二酸化炭素回収設備等に払い出した後には、
図10に示すように、タンク21内には、残留した気体の液化二酸化炭素(第二ガス)G2が充填されている。分離層103を形成する工程S21では、
図11に示すように、二酸化炭素ガスG2が充填されたタンク21に、窒素ガス(不活性ガス)Gsを供給する。窒素ガスGsは、窒素ガス供給源から上部配管32に供給され、開口部32aからタンク21内の上部に供給される。窒素ガスGsは、二酸化炭素ガスG2よりも比重が小さい。このため、タンク21内の上部に窒素ガスGsを供給すると、タンク21内に二酸化炭素ガス層102と分離層103とが形成される。二酸化炭素ガス層102は、窒素ガスGsによってタンク21内の下部に押し下げられた二酸化炭素ガスG2からなる。分離層103は、窒素ガスGsからなり、二酸化炭素ガス層102の上方に形成される。
【0029】
分離層103を形成する工程S21では、分離層103を形成する窒素ガスGsとして、タンク21の容量よりも少ない量の窒素ガスGsをタンク21に供給する。また、窒素ガスGsをタンク21内に供給するのに伴って、タンク21の下部の二酸化炭素ガスG2の一部が、下部配管33を通してタンク21外に排出されてもよい。上部配管32を通して押し出される二酸化炭素ガスG2は、船外のガス回収設備で回収したり、船外の大気中に排出したりする。
【0030】
(二酸化炭素ガス及び分離層を順次排出する工程)
二酸化炭素ガスG2及び分離層103を順次排出する工程S22では、
図12に示すように、タンク21の上部にアンモニアガス(第一ガス)G1を供給する。アンモニアガスG1は、アンモニアガス供給設備等から、上部配管32を通し、開口部32aからタンク21内の上部に供給される。アンモニアガスG1は、窒素ガスGs及び二酸化炭素ガスG2よりも比重が小さい。このため、タンク21内で二酸化炭素ガス層102及び分離層103の上部にアンモニアガス層101が形成される。
【0031】
この状態のタンク21内では、下部の二酸化炭素ガス層102と上部のアンモニアガス層101との間に、分離層103が介在している。
アンモニアガスG1をタンク21の上部に供給し続けると、タンク21内におけるアンモニアガスG1(アンモニアガス層101)の量が増えるにしたがって、タンク21の下部の二酸化炭素ガスG2、およびその下方の分離層103を形成する窒素ガスGsが、下方に押し下げられる。これにより、二酸化炭素ガスG2、窒素ガスGsが、下部配管33を通して、タンク21外に順次排出されていく。上部配管32を通して押し出される二酸化炭素ガスG2、窒素ガスGsは、船外のガス回収設備で回収したり、船外の大気中に排出したりする。
【0032】
二酸化炭素ガスG2、及び窒素ガスGsの全てがタンク21外に排出されると、
図13に示すように、タンク21内にはアンモニアガスG1のみが残留する。しかる後、
図3に示したように、タンク21への液化アンモニアLaの積込を行う。
【0033】
(作用効果)
上記実施形態のガス置換方法S10では、アンモニアガスG1が充填されたタンク21に、アンモニアガスG1よりも比重の大きい窒素ガスGsを供給し、アンモニアガスG1の下方に窒素ガスGsによる分離層103を形成する工程S11と、タンク21の下部に窒素ガスGsよりも比重の大きい二酸化炭素ガスG2を供給し、タンク21の上部からアンモニアガスG1及び分離層103を順次排出する工程S12と、を含んでいる。
このガス置換方法S10では、タンク21内の上部のアンモニアガスG1と下部の二酸化炭素ガスG2との間に、分離層103を介在させることができる。そのため、アンモニアガスG1と二酸化炭素ガスG2との接触を抑えることができる。また、二酸化炭素ガスG2をタンク21の下部に供給し続ければ、タンク21の上部のアンモニアガスG1、およびその下方の分離層103を形成する窒素ガスGsがタンク21外に順次排出されていく。このようにして、アンモニアガスG1が充填されていたタンク21内を、二酸化炭素ガスG2に置換することができる。その結果、タンク内に積み込むガスの種類の切替を効率良く行い、ガスの種類を切り替える作業に要する手間と時間を抑えることが可能となる。
【0034】
上記実施形態のガス置換方法S10では、窒素ガスGs、及び二酸化炭素ガスG2を、タンク21内の下部に開口する下部配管33を通し、タンク21に供給している。
このようにアンモニアガスG1よりも比重が大きい窒素ガスGsを、タンク21内の下部に開口する下部配管33を通してタンク21に供給することで、タンク21内でアンモニアガスG1の下方に窒素ガスGsによる分離層103を迅速に形成することができる。さらに、窒素ガスGsよりも比重が大きい二酸化炭素ガスG2を、タンク21内の下部に開口する下部配管33を通してタンク21に供給することで、タンク21内で分離層103の下方に二酸化炭素ガスG2を供給することができる。
【0035】
上記実施形態のガス置換方法S20では、二酸化炭素ガスG2が充填されたタンク21に、二酸化炭素ガスG2よりも比重の小さい窒素ガスGsを供給し、二酸化炭素ガスG2の上方に窒素ガスGsによる分離層103を形成する工程S21と、タンク21の上部に窒素ガスGsよりも比重の小さいアンモニアガスG1を供給し、タンク21の下部から二酸化炭素ガスG2及び分離層103を順次排出する工程S22と、を含んでいる。
【0036】
このガス置換方法S20は、タンク21内で、上部のアンモニアガスG1と下部の二酸化炭素ガスG2との間に、分離層103を介在させることができる。そのため、アンモニアガスG1と二酸化炭素ガスG2との接触を抑えることができる。また、アンモニアガスG1をタンク21の上部に供給し続けると、タンク21の下部の二酸化炭素ガスG2、およびその上方の分離層103を形成する窒素ガスGsが、タンク21外に順次排出されていく。このようにして、二酸化炭素ガスG2が充填されていたタンク21内を、アンモニアガスG1に置換することができる。その結果、タンク内に積み込むガスの種類の切替を効率良く行い、ガスの種類を切り替える作業に要する手間と時間を抑えることが可能となる。
【0037】
上記実施形態のガス置換方法S20では、窒素ガスGs、及びアンモニアガスG1を、タンク21内の上部に開口する上部配管32を通し、タンク21内に供給している。
このように二酸化炭素ガスG2よりも比重が小さい窒素ガスGsを、タンク21内の上部に開口する上部配管32を通してタンク21に供給することで、タンク21内で二酸化炭素ガスG2の上方に窒素ガスGsによる分離層103を形成することができる。窒素ガスGsよりも比重が小さいアンモニアガスG1を、タンク21内の上部に開口する上部配管32を通してタンク21に供給することで、タンク21内で分離層103の上方にアンモニアガスG1を供給することができる。
【0038】
上記実施形態のガス置換方法S10、S20では、窒素ガスGsによる分離層103を形成する工程S11、S21において、分離層103を形成する窒素ガスGsは、タンク21の容量よりも少ない量がタンク21に供給される。
これにより、分離層103を形成する窒素ガスGsのタンク21内への供給量を抑え、分離層103を形成するための窒素ガスGsのタンク21内への供給に要する手間と時間を抑えることができる。
【0039】
上記実施形態のガス置換方法S10、S20は、タンク21は、船舶1の船体2に設けられたものである。
これにより、船舶1の船体2に設けられたタンク21に積み込むガスの種類の切替を効率良く行い、ガスの種類を切り替える作業に要する手間と時間を抑えることが可能となる。
【0040】
(その他の実施形態)
以上、この実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態では、第一ガスをアンモニアガスG1、第二ガスを二酸化炭素ガスG2、不活性ガスを窒素ガスGsとしたが、これに限るものではない。例えば、第一ガスをアンモニア、第二ガスをプロパン又はブタンとしてもよい。
また、上記実施形態では、窒素ガスGsを用いる場合を説明したが、窒素ガスGsに代えて、例えば、ドライエア(乾燥空気)等を用いてもよい。
【0041】
<付記>
実施形態に記載のガス置換方法S10、S20は、例えば以下のように把握される。
【0042】
(1)第1の態様に係るガス置換方法S10は、第一ガスG1が充填されたタンク21に、前記第一ガスG1よりも比重の大きい不活性ガスGsを供給し、前記第一ガスG1の下方に前記不活性ガスGsによる分離層103を形成する工程S11と、前記タンク21の下部に前記不活性ガスGsよりも比重の大きい第二ガスG2を供給し、前記タンク21の上部から前記第一ガスG1及び前記分離層103を順次排出する工程S12と、を含む。
【0043】
このガス置換方法S10では、分離層103を形成する不活性ガスGsは、第一ガスG1よりも比重が大きいため、タンク21内に不活性ガスGsを供給すると、タンク21内で第一ガスG1の下方に不活性ガスGsによる分離層103が形成される。第一ガスG1は、分離層103の上方で、タンク21の上部に位置する。第二ガスG2は不活性ガスGsよりも比重が大きい。そのため、タンク21の下部に第二ガスG2を供給すると、タンク21内で第一ガスG1及び分離層103の下方に第二ガスG2が送り込まれていく。この状態で、タンク21内では、上部の第一ガスG1と下部の第二ガスG2との間に、分離層103が介在する。これにより、第一ガスG1と第二ガスG2との接触を抑えることができる。また、第二ガスG2をタンク21の下部に供給し続ければ、タンク21の上部の第一ガスG1、およびその下方の分離層103を形成する不活性ガスGsをタンク21外に順次排出することができる。第一ガスG1、及び不活性ガスGsの全てがタンク21外に排出されると、タンク21内には第二ガスG2のみが残留する。その結果、第一ガスG1が充填されていたタンク21内を、第二ガスG2に置換することができる。したがって、タンク21内に積み込むガスの種類の切替を効率良く行い、ガスの種類を切り替える作業に要する手間と時間を抑えることが可能となる。
【0044】
(2)第2の態様に係るガス置換方法S10は、(1)のガス置換方法S10であって、前記不活性ガスGs、及び前記第二ガスG2を、前記タンク21内の下部に開口する下部配管33を通し、前記タンク21に供給する。
【0045】
これにより、第一ガスG1よりも比重が大きい不活性ガスGsを、タンク21内の下部に開口する下部配管33を通してタンク21に供給することで、タンク21内で第一ガスG1の下方に不活性ガスGsによる分離層103を迅速に形成することができる。さらに、不活性ガスGsよりも比重が大きい第二ガスG2を、タンク21内の下部に開口する下部配管33を通してタンク21に供給することで、タンク21内で分離層103の下方に第二ガスG2を供給することができる。
【0046】
(3)第3の態様に係るガス置換方法S20は、第二ガスG2が充填されたタンク21に、前記第二ガスG2よりも比重の小さい不活性ガスGsを供給し、前記第二ガスG2の上方に前記不活性ガスGsによる分離層103を形成する工程S21と、前記タンク21の上部に前記不活性ガスGsよりも比重の小さい第一ガスG1を供給し、前記タンク21の下部から前記第二ガスG2及び前記分離層103を順次排出する工程S22と、を含む。
【0047】
このガス置換方法S20では、分離層103を形成する不活性ガスGsは、第二ガスG2よりも比重が小さい。そのため、タンク21内に不活性ガスGsを供給すると、タンク21内で第二ガスG2の上方に不活性ガスGsによる分離層103が形成される。また、第一ガスG1は不活性ガスGsよりも比重が小さい。そのため、タンク21の上部に第一ガスG1を供給すると、タンク21内で第二ガスG2及び分離層103の上方に第一ガスG1が貯まっていく。この状態で、タンク21内では、上部の第一ガスG1と下部の第二ガスG2との間に、分離層103が介在する。そのため、第一ガスG1と第二ガスG2との接触を抑えることができる。また、第一ガスG1をタンク21の上部に供給し続ければ、タンク21の下部の第二ガスG2、およびその上方の分離層103を形成する不活性ガスGsが、タンク21外に順次排出されていく。第二ガスG2、及び不活性ガスGsの全てがタンク21外に排出されると、タンク21内には第一ガスG1のみが残留する。このようにして、第二ガスG2が充填されていたタンク21内を、第一ガスG1に置換することができる。その結果、タンク21内に積み込むガスの種類の切替を効率良く行い、ガスの種類を切り替える作業に要する手間と時間を抑えることが可能となる。
【0048】
(4)第4の態様に係るガス置換方法S20は、(3)のガス置換方法S20であって、前記不活性ガスGs、及び前記第一ガスG1を、前記タンク21内の上部に開口する上部配管32を通し、前記タンク21内に供給する。
【0049】
このように第二ガスG2よりも比重が小さい不活性ガスGsを、タンク21内の上部に開口する上部配管32を通してタンク21に供給することで、タンク21内で第二ガスG2の上方に不活性ガスGsによる分離層103を形成することができる。さらに、不活性ガスGsよりも比重が小さい第一ガスG1を、タンク21内の上部に開口する上部配管32を通してタンク21に供給することで、タンク21内で分離層103の上方に第一ガスG1を供給することができる。
【0050】
(5)第5の態様に係るガス置換方法S10、S20は、(1)から(4)の何れか一つガス置換方法S10、S20であって、前記不活性ガスGsによる分離層103を形成する工程S11、S21では、前記分離層103を形成する前記不活性ガスGsは、前記タンク21の容量よりも少ない量を前記タンク21に供給する。
【0051】
これにより、分離層103を形成する不活性ガスGsのタンク21内への供給量を抑え、分離層103を形成するための不活性ガスGsのタンク21内への供給に要する手間と時間を抑えることができる。
【0052】
(6)第6の態様に係るガス置換方法S10、S20は、(1)から(5)の何れか一つガス置換方法S10、S20であって、前記タンク21は、船舶1の船体2に設けられたものである。
【0053】
これにより、船舶の船体に設けられたタンク21に積み込むガスの種類の切替を効率良く行い、ガスの種類を切り替える作業に要する手間と時間を抑えることが可能となる。
【0054】
第一ガスG1の例としては、アンモニアガスが挙げられる。不活性ガスGsの例としては、第一ガスG1がアンモニアガスである場合、窒素ガスが挙げられる。第二ガスG2の例としては、不活性ガスGsが窒素ガスである場合、二酸化炭素ガスが挙げられる。
【符号の説明】
【0055】
1…船舶
2…船体
2a…船首
2b…船尾
3A、3B…舷側
5…甲板
7…上部構造
8…貨物搭載区画
21…タンク
30…積込配管
32…上部配管
32a…開口部
33…下部配管
33a…開口部
101…アンモニアガス層
102…二酸化炭素ガス層
103…分離層
Da…船首尾方向
G1…アンモニアガス(第一ガス)
G2…二酸化炭素ガス(第二ガス)
Gs…窒素ガス(不活性ガス)
La…液化アンモニア
Lc…液化二酸化炭素