(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181322
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】睡眠時無呼吸を治療するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/216 20060101AFI20231214BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20231214BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231214BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231214BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A61K31/216
A61K31/137
A61K45/00
A61P11/00
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183525
(22)【出願日】2023-10-25
(62)【分割の表示】P 2020542075の分割
【原出願日】2019-01-30
(31)【優先権主張番号】62/623,892
(32)【優先日】2018-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520282649
【氏名又は名称】アプニメッド,インコーポレイテッド(デラウェア)
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ローレンス ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォール,バリー
(72)【発明者】
【氏名】ルンスマン,ウォルター ジェイ.
(57)【要約】
【課題】睡眠時無呼吸を治療するための方法および組成物を提供すること。
【解決手段】治療を必要とする被験体に、(i)ノルエピネフリン再取込み阻害剤(NRI)および(ii)実質的にエナンチオマー的に純粋な(R)-オキシブチニンの有効量を投与する工程を含む、咽頭気道虚脱に関連する状態を有する被験体を治療する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする被験体に、(i)ノルエピネフリン再取込み阻害剤(NRI)および(ii)実質的にエナンチオマー的に純粋な(R)-オキシブチニンの有効量を投与する工程を含む、咽頭気道虚脱に関連する状態を有する被験体を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願についての相互参照
本願は、2018年1月30日に出願された米国仮特許出願第62/623,892号に対する35 U.S.C. § 119(e)下の優先権を主張する。この先行出願の開示は、本願の開示の一部とみなされ、その全体において参照により本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、(R)-オキシブチニン(oxybutynin)およびノルエピネフリン再取込み阻害剤(NRI)を含む医薬組成物、ならびに(R)-オキシブチニンおよびノルエピネフリン再取込み阻害剤(NRI)を投与する工程を含む睡眠時無呼吸を治療する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠時の咽頭気道の虚脱により引き起こされる一般的な障害である。OSAは、深刻な健康上の結果を有し得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Taranto-Montemurro et al., Sleep. 2017 Feb 1;40(2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、睡眠時無呼吸を治療するための方法および組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本発明の一局面は、治療を必要とする被験体に、(i)ノルエピネフリン再取込み阻害剤(NRI)および(ii)実質的にエナンチオマー的に(enantomerically)純粋な(R)-オキシブチニンの有効量を投与する工程を含む、咽頭気道虚脱に関連する状態を有する被験体を治療する方法を提供する。
【0007】
本発明のこの局面の態様は、以下の選択的な特徴の1つ以上を含み得る。いくつかの態様において、NRIはノルエピネフリン選択的再取込み阻害剤(NSRI)である。いくつかの態様において、NSRIは、アメダリン、アトモキセチン、CP-39,332、ダレダリン、エジボキセチン(Edivoxetine)、エスレボキセチン、ロルタラミン、ニソキセチン(Nisoxetine)、レボキセチン(Reboxetine)、タロプラム(Talopram)、タルスプラム(Talsupram)、タンダミンおよびビロキサジン(Viloxazine)からなる群より選択される。いくつかの態様において、NRIは、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シクラジンドール(Ciclazindol)、デシプラミン、デスベンラファキシン(Desvenlafaxine)、デキスメチルフェニデート(Dexmethilphenidate)、ジエチルプロピオン(Diethylpropion)、ドキセピン、デュロキセチン、イミプラミン、レボミルナシプラン(Levomilnacipran)、マニファキシン、マプロチリン(Maprotiline)、メチルフェニデート、ミルナシプラン、ネファゾドン(Nefazodone)、ノルトリプチリン、フェンジメトラジン(Phendimetrazine)、プロトリプチリン(Protryptyline)、ラダファキシン(Radafaxine)、タペンタドール(Tapentadol)、テニロキサジン(Teniloxazine)およびベンラファキシンからなる群より選択されるノルエピネフリン非選択的再取込み阻害剤(NNRI)である。いくつかの態様において、NRIは、アトモキセチンおよびレボキセチンからなる群より選択される。いくつかの態様において、NRIはアトモキセチンである。いくつかの態様において、アトモキセチンは約20~約100mg(例えば約25~約75mg)の用量で投与される。いくつかの態様において、(R)-オキシブチニンは即時放出製剤である。いくつかの態様において、(R)-オキシブチニンは延長放出製剤である。いくつかの態様において、(R)-オキシブチニンは約2~約15mgの用量で投与される。例えば、(R)-オキシブチニンは即時放出製剤であり得、約2.5~約10mgの用量で投与され得る。または例えば、(R)-オキシブチニンは延長放出製剤であり得、約5~約15mgの用量で投与され得る。いくつかの態様において、咽頭気道虚脱に関連する状態は睡眠時無呼吸または単純いびきである。例えば、咽頭気道虚脱に関連する状態は閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)であり得る。いくつかの態様において、被験体は、非完全(non-fully)意識的状態(例えば睡眠)にある。いくつかの態様において、NRIおよび(R)-オキシブチニンは、単一組成物中で投与される。いくつかの態様において、単一組成物は、経口投与形態(例えばシロップ剤、丸薬、錠剤、トローチ剤、カプセル剤またはパッチ)である。
【0008】
本発明の別の局面は、薬学的に許容され得る担体中に(i)ノルエピネフリン再取込み阻害剤(NRI)および(ii)実質的にエナンチオマー的に(enantiomerically)純粋な(R)-オキシブチニンを含む医薬組成物を提供する。
【0009】
本発明のこの局面の態様は、以下の選択的特徴の1つ以上を含み得る。いくつかの態様において、NRIはノルエピネフリン選択的再取込み阻害剤(NSRI)である。いくつかの態様において、NSRIは、アメダリン、アトモキセチン、CP-39,332、ダレダリン、エジボキセチン、エスレボキセチン、ロルタラミン、ニソキセチン、レボキセチン、タロプラム、タルスプラム、タンダミンおよびビロキサジンからなる群より選択される。いくつかの態様において、NRIは、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シクラジンドール、デシプラミン、デスベンラファキシン、デキスメチルフェニデート、ジエチルプロピオン、ドキセピン、デュロキセチン、イミプラミン、レボミルナシプラン、マニファキシン、マプロチリン、メチルフェニデート、ミルナシプラン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、フェンジメトラジン、プロトリプチリン、ラダファキシン、タペンタドール、テニロキサジンおよびベンラファキシンからなる群より選択されるノルエピネフリン非選択的再取込み阻害剤(NNRI)である。いくつかの態様において、NRIは、アトモキセチンおよびレボキセチンからなる群より選択される。いくつかの態様において、NRIはアトモキセチンである。いくつかの態様において、アトモキセチンは約20~約100mg(例えば約25~約75mg)の量で存在する。いくつかの態様において、(R)-オキシブチニンは即時放出製剤である。いくつかの態様において、(R)-オキシブチニンは延長放出製剤である。いくつかの態様において、(R)-オキシブチニンは約2~約15mgの量で存在する。例えば、(R)-オキシブチニンは即時放出製剤であり得、約2.5~約10mgの量で存在し得る。または例えば、(R)-オキシブチニンは延長放出製剤であり得、約5~約15mgの量で存在し得る。いくつかの態様において、該組成物は、咽頭気道虚脱に関連する状態を有する被験体の治療における使用のためのものである。いくつかの態様において、咽頭気道虚脱に関連する状態は睡眠時無呼吸または単純いびきである。いくつかの態様において、咽頭気道虚脱に関連する状態は閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)である。いくつかの態様において、被験体は非完全意識的状態(例えば睡眠)にある。
【0010】
本発明の別の局面は、咽頭気道虚脱に関連する状態を有する被験体の治療における使用のための、ノルエピネフリン再取込み阻害剤(NRI)および実質的にエナンチオマー的に純粋な(R)-オキシブチニンを提供する。
【0011】
本発明の別の局面は、ノルエピネフリン再取込み阻害剤(NRI)および実質的にエナンチオマー的に純粋な(R)-オキシブチニンを含むキットを提供する。いくつかの態様において、該キットは、咽頭気道虚脱に関連する状態を有する被験体の治療における使用のためのものである。
【0012】
そうではないと定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。方法および材料は本発明における使用のために本明細書において記載され、当該技術分野で公知の他の適切な方法および材料も使用され得る。材料、方法および実施例は例示のみのものであり、限定を意図しない。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリーおよび他の参照文献は、それらの全体において参照により援用される。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が支配的である。
【0013】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面ならびに特許請求の範囲から明白である。
【0014】
即ち、本発明の要旨は、以下のものに関する。
項1
治療を必要とする被験体に、(i)ノルエピネフリン再取込み阻害剤(NRI)および(ii)実質的にエナンチオマー的に純粋な(R)-オキシブチニンの有効量を投与する工程を含む、咽頭気道虚脱に関連する状態を有する被験体を治療する方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、睡眠時無呼吸を治療するための方法および組成物が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面の簡単な説明
以下の図面は例示により提供され、特許請求される発明の範囲を限定することを意図しない。
【
図1】
図1は、閉塞性無呼吸のグラフによる例示である。最上部のチャンネルは、睡眠の脳波(EEG)パターンを示す、次のチャンネルは気流を示す。次の3つのチャンネルは、胸部および腹部の動きならびに食道圧力の変化による換気努力(ventilatory effort)を示し、これらの全ては呼吸筋肉の収縮を反映する。最後のチャンネルは、オキシヘモグロビン飽和を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
ヒトにおいて、咽頭気道領域は、骨または軟骨の支持を有さず、筋肉により開放されたままに保持される。睡眠時にこれらの筋肉が弛緩する際、咽頭は、虚脱して、気流の停止を生じ得る。
図1に示されるように、換気努力は継続して、食道圧力変化の増加により示される閉塞を克服するための試みを増加する。胸部および腹部の動きは反対方向にあり、塞がれた気道に対する横隔膜の収縮の結果として、腹部壁が外側に広げられ、胸部壁は内側にへこむ。
【0018】
呼吸するための努力を増加することにより、EEG上で可視化され得る睡眠からの覚醒がもたらされ(
図1)、気道の開放および正常な呼吸の再開が生じる。無呼吸の間の気流の欠如はまた、オキシヘモグロビン飽和の低下(
図1)により示される低酸素を引き起こす。重症度は一般的に、睡眠の1時間あたりに起こる無呼吸(少なくとも10秒間の呼吸の停止)および減呼吸(気流および酸素飽和の低下)の平均数を組み合わせたものである無呼吸-減呼吸指数(AHI)を使用して測定される(Ruehland et al., The new AASM criteria for scoring hypopneas: Impact on the apnea hypopnea index. SLEEP 2009;32(2):150-157)。
【0019】
OSAの厳しい定義が使用される場合(1時間当たり>15事象のAHIまたは日中の眠気を伴う1時間当たり>5事象のAHI)、推定の有病率は男性において約15%および女性において5%である。米国において推定で3000万人の個体がOSAを有し、このうち約600万人が診断されている。米国におけるOSAの有病率は、加齢および肥満の割合の増加のために増加しているように思われる。OSAは、主要な共存症(comorbidities)および経済的費用、例えば:高血圧、糖尿病、心臓血管疾患、自動車事故、仕事場での事故および疲労/生産力の消失と関連する。(Young et al., WMJ 2009; 108:246; Peppard et al., Am J Epidemiol 2013; 177:1006.)
【0020】
現在の主要な治療は、持続陽圧気道圧(CPAP)である。CPAPは、事実上全ての患者に有効であり、診断された患者の約85%がCPAPを処方されているが、コンプライアンスは低い。患者は、CPAPが不快であり時々我慢できないものであることに気づき、患者の少なくとも30%(80%まで)が定期的に行っておらず(non-adherent)、そのため治療されない(Weaver, Proc Am Thorac Soc. 2008 Feb 15; 5(2): 173-178)。変動性の成功率を有する他の治療様式としては、経口器具(10%)および手術(5%)が挙げられるが、いずれも一般的な集団の全てにおいて効果的でないことがある。今日まで、有効であることが示された薬理的な治療はない。
【0021】
睡眠中のヒトにおいて咽頭筋肉を活性化するための医薬のための研究はがっかりするものであり、セロトニン再取込み阻害剤、三環系抗鬱薬および鎮静薬などの薬剤は全て、ヒトにおいて試験され、OSA重症度の低減に有効でないことが示されている。例えばProia and Hudgel, Chest. 1991 Aug;100(2):416-21;Brownell et al., N Engl J Med 1982, 307:1037-1042;Sangal et al., Sleep Med. 2008 Jul;9(5):506-10. Epub 2007 Sep 27;Marshall et al. p. 2008 Jun;31(6):824-31;Eckert et al., Clin Sci (Lond). 2011 Jun;120(12);505-14;Taranto-Montemurro et al., Sleep. 2017 Feb 1;40(2)参照。
【0022】
治療方法
本明細書に記載される方法は、睡眠時の咽頭気道筋肉の虚脱に関連する障害の治療のための方法を含む。いくつかの態様において、該障害は閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)または単純いびきである。一般的に、該方法は、当該技術分野で公知および/または本明細書に記載されるように、ノルエピネフリン再取込み阻害剤および実質的にエナンチオマー的に純粋な(R)-オキシブチニンの治療有効量を、かかる治療を必要とするかまたはかかる治療を必要とすると決定された被験体に投与する工程を含む。
【0023】
この文脈で使用される場合、「治療(treat)」することは、咽頭気道虚脱に関連する障害の少なくとも1つの症状を改善することを意味する。時々、睡眠時の咽頭気道虚脱は、いびきおよび/または呼吸の中断(無呼吸または減呼吸)、睡眠からの覚醒ならびに酸素富化の低下(低酸素血症)をもたらすので、治療は、いびき、無呼吸/減呼吸、睡眠分断(sleep fragmentation)および低酸素血症の低下をもたらし得る。OSAを有する被験体の治療のための本明細書に記載される化合物の治療有効量の投与は、AHIの低下をもたらす。
【0024】
1以上の投与、適用または用量において有効量が投与され得る。該組成物は、1日に1回以上から1週間に1回以上:例えば1日おきに1回投与され得る。いくつかの態様において、組成物は毎日投与される。当業者は、限定されないが、疾患もしくは障害の重症度、以前の治療、被験体の一般的な健康状態および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含む特定の要因が、被験体を効果的に治療するために必要な用量およびタイミングに影響し得ることを理解する。さらに、本明細書に記載される治療化合物の治療有効量を用いた被験体の治療は、単一の治療または一連の治療を含み得る。
【0025】
治療化合物(すなわち単一の組成物または別々の組成物中のNRIおよび(R)-オキシブチニン)の用量、毒性および治療効力は、例えばLD50(集団の50%に対して致死である用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効である用量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順により決定され得る。毒性と治療効果の間の用量比は治療的指標であり、これは比LD50/ED50として表され得る。
【0026】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られるデータは、ヒトにおける使用のためのある範囲の用量を製剤化することに使用され得る。かかる化合物の用量は、好ましくは、毒性がほとんどないかまたは全くないED50を含むある範囲の循環濃度内にある。該用量は、使用される剤型および利用される投与経路に応じてこの範囲内で変化し得る。本発明の方法において使用される任意の化合物について、治療有効用量は最初に細胞培養アッセイから推定され得る。用量は、細胞培養において決定されるように、IC50(すなわち症状の1/2最大阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて製剤化され得る。かかる情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定し得る。血漿中のレベルは、例えば高性能液体クロマトグラフィーにより測定され得る。
【0027】
いくつかの態様において、該方法は、20~100mgの用量のアトモキセチン(または別のNRIのそれと同等な用量)および2~15mgの用量の(R)-オキシブチニンを投与する工程を含む。いくつかの態様において、該方法は、75mgのアトモキセチン/6mgの(R)-オキシブチニン;75mgのアトモキセチン/5mgの(R)-オキシブチニン;75mgのアトモキセチン/4.5mgの(R)-オキシブチニン;50mgのアトモキセチン/4mgの(R)-オキシブチニン;または25mgのアトモキセチン/3mgの(R)-オキシブチニンを、例えば睡眠時間の15~60、例えば15~25、20~30または20~45分前に投与する工程を含む。
【0028】
医薬組成物および投与方法
本明細書に記載される方法は、有効成分としてノルエピネフリン再取込み阻害剤および実質的にエナンチオマー的に純粋な(R)-オキシブチニンを含む医薬組成物の使用を含む。ノルエピネフリン再取込み阻害剤および(R)-オキシブチニンは、単一組成物中または別々の組成物中で投与され得る。
【0029】
例示的なノルエピネフリン再取込み阻害剤(NRI)としては、選択的NRIであるアメダリン(UK-3540-1)、アトモキセチン(Strattera)、CP-39,332、ダレダリン(UK-3557-15)、エジボキセチン(LY-2216684)、エスレボキセチン、ロルタラミン(LM-1404)、ニソキセチン(LY-94,939)、レボキセチン(Edronax、Vestra)、タロプラム(Lu 3-010)、タルスプラム(Lu 5-005)、タンダミン(AY-23,946)、ビロキサジン(Vivalan)が挙げられ;非選択的なNRIとしては、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シクラジンドール、デシプラミン、デスベンラファキシン、デキスメチルフェニデート、ジエチルプロピオン、ドキセピン、デュロキセチン、イミプラミン、レボミルナシプラン、マニファキシン (GW-320,659)、マプロチリン、メチルフェニデート、ミルナシプラン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、フェンジメトラジン、フェンメトラジン(Phenmetrazine)、プロトリプチリン、ラダファキシン(GW-353,162)、タペンタドール(Nucynta)、テニロキサジン(Lucelan、Metatone)およびベンラファキシンが挙げられる。
【0030】
いくつかの態様において、ノルエピネフリン再取込み阻害剤はアトモキセチンである。
【0031】
(R)-オキシブチニンは、抗ムスカリン薬である。該薬物は、オキシブチニンの(R)-エナンチオマーである。本明細書に記載されるように、実質的にエナンチオマー的に純粋な(R)-オキシブチニンを含む組成物は、(R)-オキシブチニンのエナンチオマー対(すなわち(S)-オキシブチニン)に対して、エナンチオマー過剰の(R)-オキシブチニンを含む。実質的にエナンチオマー的に純粋な(R)-オキシブチニンのエナンチオマー過剰は、≧80%、≧90%、≧95%、≧98%、≧99%、≧99.5%、≧99.8%または≧99.9%であり得る。
【0032】
医薬組成物は典型的に、薬学的に許容され得る担体を含む。本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容され得る担体」としては、薬学的投与に適合性の食塩水、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張性剤および吸収遅延剤などが挙げられる。補助的な活性化合物、例えばゾルピデム、エスゾピクロン、ベンゾジアゼピン、ガバペンチン、チアガビン(tiagabine)およびキシレム(xyrem)などの催眠薬も組成物に組み込まれ得る。いくつかの態様において、OSAを有する患者は、投与されたノルエピネフリン阻害剤により悪化され得る低い覚醒閾値を有する。患者が、1つ以上のノルエピネフリン阻害剤(例えばアトモキセチン)の使用により引き起こされるかまたは悪化される低い覚醒閾値を有するかかる態様において、催眠薬は、OSA、咽頭気道虚脱またはそれらの組合せを有する患者の覚醒閾値を増加するための補助的な活性化合物として使用され得る。いくつかの態様において、患者の覚醒閾値は、睡眠ポリグラフ計(PSG)により測定され得る。いくつかの態様において、医薬組成物は、1つ以上のノルエピネフリン再取込み阻害剤、実質的にエナンチオマー的に純粋な(R)-オキシブチニンおよび催眠薬を含む。いくつかの態様において、治療を必要とする被験体に、(i)ノルエピネフリン再取込み阻害剤(NRI);(ii)実質的にエナンチオマー的に純粋な(R)-オキシブチニン;および(iii)催眠薬の有効量を投与する工程を含む、咽頭気道虚脱に関連する状態を有する被験体を治療するための方法が提供される。本明細書に記載される組成物および方法の特徴は、催眠薬を組み込む態様との任意の組合せにおいて使用され得る。
【0033】
いくつかの態様において、該方法は、20~100mgの用量のアトモキセチン(または別のNRIのそれと同等な用量)、2~15mgの用量の(R)-オキシブチニンおよび0.5~15mgの用量のゾルピデム(または別の催眠薬のそれと同等な用量)を投与する工程を含む。いくつかの態様において、該方法は、75mgのアトモキセチン/6mgの(R)-オキシブチニン/10mgのゾルピデム;75mgのアトモキセチン/5mgの(R)-オキシブチニン/10mgのゾルピデム;75mgのアトモキセチン/4.5mgの(R)-オキシブチニン/5mgのゾルピデム;50mgのアトモキセチン/4mgの(R)-オキシブチニン/3.5mgのゾルピデム;または25mgのアトモキセチン/3mgの(R)-オキシブチニン/1.75mgのゾルピデムを、例えば睡眠時間の15~60、例えば15~25、20~30または20~45分前に投与する工程を含む。いくつかの態様において、催眠薬は、約0.5~約15mg、約0.5~約10mg、約0.5~約5mg、約0.5~約3.5mgまたは約0.5~約1.75mgの量で存在する。いくつかの態様において、ノルエピネフリン再取込み阻害剤(NRI)、実質的にエナンチオマー的に純粋な(R)-オキシブチニンおよび催眠薬は、単一組成物中、例えばシロップ剤、丸薬、錠剤、カプセル剤またはパッチの形態での経口投与において投与される。
【0034】
医薬組成物は典型的に、その意図される投与経路と適合性になるように製剤化される。投与経路の例としては、全身性経口または経皮の投与が挙げられる。
【0035】
適切な医薬組成物を製剤化する方法は当該技術分野で公知であり、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 21版, 2005;およびDrugs and the Pharmaceutical Sciences: a Series of Textbooks and Monographs (Dekker, NY)のシリーズの書籍参照。例えば、経口組成物は一般的に、不活性希釈剤または可食性担体を含む。経口治療投与の目的で、活性化合物(1つまたは複数)は、賦形剤と一体化され得、丸薬、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤、例えばゼラチンカプセルの形態で使用され得る。経口組成物はまた、液体担体を使用して調製され得る。薬学的に適合性の結合剤および/またはアジュバント材料が、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸薬、カプセル剤、トローチ剤等は、以下の成分または同様の性質を有する化合物:微結晶性セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、プリモゲルもしくはトウモロコシデンプンなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステロート(Sterotes)などの滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤(glidant);スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ調味料などの矯味矯臭剤のいずれかを含み得る。
【0036】
本明細書に記載される化合物の1つまたは両方(すなわちノルエピネフリン再取込み阻害剤および実質的にエナンチオマー的に純粋な(R)-オキシブチニンの1つまたは両方)の全身投与はまた、例えば皮膚に適用されるパッチ、ゲルまたはローション剤を使用して、経皮的手段によりなされ得る。経皮投与のために、上皮バリアの浸透に適切な浸透剤が製剤中に使用され得る。かかる浸透剤は、一般的に当該技術分野で公知である。例えば、経皮投与のために、活性化合物は、当該技術分野で一般的に公知のように、軟膏(ointment)、膏薬(salve)、ゲルまたはクリーム中に製剤化され得る。ゲルおよび/またはローション剤は、個々のサシェ中でまたは毎日適用される定量用量ポンプを介して提供され得;例えばCohn et al., Ther Adv Urol. 2016 Apr; 8(2): 83-90参照。
【0037】
一態様において、治療化合物は、身体からの迅速な排除から治療化合物を保護する担体、例えば埋没物および微小封入送達系を含む制御放出製剤と共に調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性で生体適合性のポリマーが使用され得る。かかる製剤は、標準的な技術を使用して調製され得るか、または例えばAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に入手し得る。薬学的に許容され得る担体としてリポソーム懸濁物も使用し得る。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載されるような当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0038】
該医薬組成物は、本明細書に記載される方法における投与または使用のための指示書と共に、容器、パックまたはディスペンサー中に含まれ得る。
【実施例0039】
実施例
本発明は、特許請求の範囲に記載される発明の範囲を限定しない以下の実施例においてさらに記載される。
【0040】
実施例1. パイロット試験
健常なヒト個体において、おとがい舌筋活性に対する選択的ノルアドレナリン作用性再取込み阻害剤アトモキセチン80mgと組み合わせた抗ムスカリン薬(R)-オキシブチニン5mgの効果をパイロット試験において測定する。
【0041】
患者の第1の群にはアトモキセチン80mgと(R)-オキシブチニン5mgの組合せを与える。患者の第2の群にはプラシーボを与える。おとがい舌筋活性(EMGGG、最大のパーセンテージとして定量)は、穏やかな目覚め時に測定する。単一の呼吸のそれぞれのピークEMGGGを測定し、対応する咽頭蓋圧に対してプロットする。また、EMGGGを安定なNREM睡眠時に測定する。
【0042】
プラシーボ夜間の睡眠時に変動性ではあるが明確なEMGGG活性の低下があることおよび対照的に、患者にアトモキセチン+(R)-オキシブチニンを投与した場合、咽頭筋活性の睡眠に関連する低下が部分的または完全に防がれることが予想される。
【0043】
プラシーボと比較して、試験薬物は、NREM睡眠時にかなり高いEMGGG活性を生じることが予想される。試験薬物を投与された場合にREM睡眠を示す被験体について、該薬物はREM睡眠時に効果的であることも予想される。
【0044】
実施例2. 交差試験
OSAヒト患者において、プラシーボ対照二重盲検無作為化交差試験を行う。参加者は、無作為化された順序で睡眠の30分前に、治療(アトモキセチン80mg+(R)-オキシブチニン5mg)またはプラシーボを受ける。アトモキセチンと(R)-オキシブチニンの組合せは、無呼吸減呼吸指数を低下することが予想され、全ての患者は、OSA重症度の向上を経験することが予想される。予想されるさらなる利益は、換気駆動の増加に対するおとがい舌筋応答性の増加、上気道筋活性の向上、換気の向上、酸素レベル(SaO2)の向上、総睡眠時間の増加および睡眠効率の向上である。
【0045】
【0046】
他の態様
本発明は、その詳細な説明と共に記載されるが、前述の記載は例示を意図し、添付の特許請求の範囲の範囲により規定される本発明の範囲を限定しないことが理解される。他の局面、利点および改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
【0047】
本発明の態様として以下のものが挙げられる。
項1
治療を必要とする被験体に、(i)ノルエピネフリン再取込み阻害剤(NRI)および(ii)実質的にエナンチオマー的に純粋な(R)-オキシブチニンの有効量を投与する工程を含む、咽頭気道虚脱に関連する状態を有する被験体を治療する方法。
項2
NRIがノルエピネフリン選択的再取込み阻害剤(NSRI)である、項1記載の方法。
項3
NSRIが、アメダリン、アトモキセチン、CP-39,332、ダレダリン、エジボキセチン、エスレボキセチン、ロルタラミン、ニソキセチン、レボキセチン、タロプラム、タルスプラム、タンダミンおよびビロキサジンからなる群より選択される、項2記載の方法。
項4
NRIが、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シクラジンドール、デシプラミン、デスベンラファキシン、デキスメチルフェニデート、ジエチルプロピオン、ドキセピン、デュロキセチン、イミプラミン、レボミルナシプラン、マニファキシン、マプロチリン、メチルフェニデート、ミルナシプラン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、フェンジメトラジン、プロトリプチリン、ラダファキシン、タペンタドール、テニロキサジンおよびベンラファキシンからなる群より選択されるノルエピネフリン非選択的再取込み阻害剤(NNRI)である、項1記載の方法。
項5
NRIがアトモキセチンおよびレボキセチンからなる群より選択される、項1記載の方法。
項6
NRIがアトモキセチンである、項5記載の方法。
項7
アトモキセチンが約20~約100mgの用量で投与される、項6記載の方法。
項8
アトモキセチンが約25~約75mgの用量で投与される、項7記載の方法。
項9
(R)-オキシブチニンが即時放出製剤である、項1記載の方法。
項10
(R)-オキシブチニンが延長放出製剤である、項1記載の方法。
項11
(R)-オキシブチニンが約2~約15mgの用量で投与される、項1記載の方法。
項12
(R)-オキシブチニンが即時放出製剤であり、約2.5~約10mgの用量で投与される、項11記載の方法。
項13
(R)-オキシブチニンが延長放出製剤であり、約5~約15mgの用量で投与される、項11記載の方法。
項14
咽頭気道虚脱に関連する状態が、睡眠時無呼吸または単純いびきである、項1~13いずれか記載の方法。
項15
咽頭気道虚脱に関連する状態が、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)である、項14記載の方法。
項16
被験体が、非完全意識的状態にある、項1~15いずれか記載の方法。
項17
非完全意識的状態が睡眠である、項16記載の方法。
項18
NRIおよび(R)-オキシブチニンが単一組成物中で投与される、項1~17いずれか記載の方法。
項19
単一組成物が経口投与形態である、項18記載の方法。
項20
経口投与形態が、シロップ剤、丸薬、錠剤、トローチ剤、カプセル剤またはパッチである、項19記載の方法。
項21
薬学的に許容され得る担体中に(i)ノルエピネフリン再取込み阻害剤(NRI)および(ii)実質的にエナンチオマー的に純粋な(R)-オキシブチニンを含む、医薬組成物。
項22
NRIがノルエピネフリン選択的再取込み阻害剤(NSRI)である、項21記載の組成物。
項23
NSRIが、アメダリン、アトモキセチン、CP-39,332、ダレダリン、エジボキセチン、エスレボキセチン、ロルタラミン、ニソキセチン、レボキセチン、タロプラム、タルスプラム、タンダミンおよびビロキサジンからなる群より選択される、項22記載の組成物。
項24
NRIが、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シクラジンドール、デシプラミン、デスベンラファキシン、デキスメチルフェニデート、ジエチルプロピオン、ドキセピン、デュロキセチン、イミプラミン、レボミルナシプラン、マニファキシン、マプロチリン、メチルフェニデート、ミルナシプラン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、フェンジメトラジン、プロトリプチリン、ラダファキシン、タペンタドール、テニロキサジンおよびベンラファキシンからなる群より選択されるノルエピネフリン非選択的再取込み阻害剤(NNRI)である、項21記載の組成物。
項25
NRIがアトモキセチンおよびレボキセチンからなる群より選択される、項21記載の組成物。
項26
NRIがアトモキセチンである、項25記載の組成物。
項27
アトモキセチンが約20~約100mgの量で存在する、項26記載の組成物。
項28
アトモキセチンが約25~約75mgの量で存在する、項27記載の組成物。
項29
(R)-オキシブチニンが即時放出製剤である、項21記載の組成物。
項30
(R)-オキシブチニンが延長放出製剤である、項21記載の組成物。
項31
(R)-オキシブチニンが約2~約15mgの量で存在する、項21記載の組成物。
項32
(R)-オキシブチニンが即時放出製剤であり、約2.5~約10mgの量で存在する、項31記載の組成物。
項33
(R)-オキシブチニンが延長放出製剤であり、約5~約15mgの量で存在する、項31記載の組成物。
項34
咽頭気道虚脱に関連する状態を有する被験体の治療における使用のための、項21~33いずれか記載の組成物。
項35
咽頭気道虚脱に関連する状態が睡眠時無呼吸または単純いびきである、項34記載の組成物。
項36
咽頭気道虚脱に関連する状態が閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)である、項35記載の組成物。
項37
被験体が非完全意識的状態にある、項34~36いずれか記載の組成物。
項38
非完全意識的状態が睡眠である、項37記載の組成物。
項39
咽頭気道虚脱に関連する状態を有する被験体の治療における使用のための、ノルエピネフリン再取込み阻害剤(NRI)および実質的にエナンチオマー的に純粋な(R)-オキシブチニン。
項40
ノルエピネフリン再取込み阻害剤(NRI)および実質的にエナンチオマー的に純粋な(R)-オキシブチニンを含む、キット。
項41
咽頭気道虚脱に関連する状態を有する被験体の治療における使用のための、項40記載のキット。