(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181325
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】積層酸化物材料の作製方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/20 20060101AFI20231214BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20231214BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L29/78 618B
H01L29/78 618E
H01L29/78 627G
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183640
(22)【出願日】2023-10-26
(62)【分割の表示】P 2022070647の分割
【原出願日】2010-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2009270856
(32)【優先日】2009-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(57)【要約】
【課題】トランジスタなどの半導体素子を有する半導体装置を安価に得ることのできる生
産性の高い作製工程を提供することを課題の一とする。
【解決手段】下地部材上に、酸化物部材を形成し、加熱処理を行って表面から内部に向か
って結晶成長する第1の酸化物結晶部材を形成し、第1の酸化物結晶部材上に第2の酸化
物結晶部材を積層して設ける積層酸化物材料の作製方法である。特に第1の酸化物結晶部
材と第2の酸化物結晶部材がc軸を共通している。ホモ結晶成長またはヘテロ結晶成長の
同軸(アキシャル)成長をさせていることである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地部材上に、酸化物部材を形成し、
加熱処理を行って表面から内部に向かって結晶成長する第1の酸化物結晶部材を形成し、且つ、前記下地部材の表面直上に非晶質成分を残存し、
前記第1の酸化物結晶部材上に第2の酸化物結晶部材を積層して設ける積層酸化物材料の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタ法で積層成膜とその結晶化熱処理を行い、半導体装置の製造に用いら
れる積層酸化物材料に関する。例えば、トランジスタ、ダイオード等の半導体用途に好適
な材料を提供する。また、トランジスタなどの半導体素子で構成された回路を有する半導
体装置およびその作製方法に関する。例えば、電源回路に搭載されるパワーデバイスや、
メモリ、サイリスタ、コンバータ、イメージセンサなどを含む半導体集積回路、液晶表示
パネルに代表される電気光学装置や有機発光素子を有する発光表示装置を部品として搭載
した電子機器に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装
置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
半導体材料として、代表的な材料はSiであるが、その他にSiCやGaNなども開発が
進められている。しかし、これらは1500℃以上の温度を単結晶部材の処理に必要とし
、薄膜化デバイスまたは三次元化デバイスに用いることができない。
【0004】
一方、近年、絶縁表面を有する基板上に比較的、低温で形成された半導体薄膜(厚さ数
~数百nm程度)を用いてトランジスタを構成する技術が注目されている。トランジスタ
はICや電気光学装置のような電子デバイスに広く応用され、特に画像表示装置のスイッ
チング素子として開発が急がれている。
【0005】
また、金属酸化物は多様に存在しさまざまな用途に用いられている。酸化インジウムはよ
く知られた材料であり、液晶ディスプレイなどで必要とされる透光性を有する電極材料と
して用いられている。金属酸化物の中には半導体特性を示すものがある。半導体特性を示
す金属酸化物としては、例えば、酸化タングステン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜
鉛などがあり、このような半導体特性を示す金属酸化物をチャネル形成領域とするトラン
ジスタが既に知られている(特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-123861号公報
【特許文献2】特開2007-96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様は、スパッタ法でトランジスタ、ダイオード等の半導体用途に好適な材料
を提供することを課題の一とする。
【0008】
また、本発明の一態様は、電界効果移動度が高く、オフ電流が低いトランジスタを提供す
ることを課題の一とする。また、所謂ノーマリーオフのスイッチング素子を実現し、低消
費電力の半導体装置を提供することも課題の一とする。また、高いトランジスタ性能を有
し、且つ、高い信頼性を有するトランジスタを提供することも課題の一とする。
【0009】
また、本発明の一態様は、トランジスタなどの半導体素子を有する半導体装置を安価に得
ることのできる生産性の高い作製工程を提供することも課題の一とする。
【0010】
また、本発明の一態様は、高い信頼性を有するトランジスタを提供することを課題の一と
する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書で開示する本発明の一態様は、下地部材上に、酸化物部材を形成し、加熱処理を
行って表面から内部に向かって結晶成長する第1の酸化物結晶部材を形成し、第1の酸化
物結晶部材上に第2の酸化物結晶部材を積層して設ける積層酸化物材料の作製方法である
。特に第1の酸化物結晶部材と第2の酸化物結晶部材がc軸を共通している、ホモ結晶成
長またはヘテロ結晶成長の同軸(アキシャル)成長をさせていることである。
【0012】
なお、第1の酸化物結晶部材は、第1の酸化物結晶部材の表面に対して垂直方向にc軸配
向をしている。特にエピタキシャル成長(一つの結晶構造の成長)する第1の非単結晶薄
膜を種として第2の酸化物部材を結晶成長させている。なお、それぞれの酸化物結晶部材
でのa-b面での隣り合っている平面の複数の元素は同一である。また、第1の酸化物結
晶部材のc軸方向は、深さ方向また上方向に一致する。
【0013】
上記作製方法の最大の特徴は、任意の下地表面を有するアモルファス絶縁物(例えば酸化
物)上に結晶成長をさせている構成である。
【0014】
また、他の発明の一つは、下地部材上に、酸化物部材を形成し、加熱処理を行って表面か
ら内部に向かって結晶成長する第1の酸化物結晶部材を形成し、且つ、下地部材表面直上
に非晶質成分を残存し、第1の酸化物結晶部材上に同一材料であり、且つ、ホモ結晶成長
をしている第2の酸化物結晶部材を積層して設ける積層酸化物材料の作製方法である。
【0015】
また、他の発明の一つは、下地部材上に、酸化物部材を形成し、加熱処理を行って表面か
ら内部に向かって結晶成長する第1の酸化物結晶部材を形成し、且つ、下地部材表面直上
に非晶質成分を残存し、第1の酸化物結晶部材上に異なる材料であり、且つ、ヘテロ結晶
成長をしている第2の酸化物結晶部材を積層して設ける積層酸化物材料の作製方法である
。
【0016】
上記各作製方法において、ホモ結晶成長またはヘテロ結晶成長は、成膜中に温度を200
℃以上600℃以下に加熱しながら結晶成長させて得ることを特徴としている。
【0017】
また、上記各作製方法において、第1の酸化物結晶部材及び第2の酸化物結晶部材は高純
度の真性の導電型であることを特徴としている。
【0018】
また、上記各作製方法において、積層酸化物材料のキャリア濃度は、1.0×1012c
m-3未満、好ましくは、1.45×1010cm-3未満であることを特徴としている
。
【0019】
上記各作製方法において、第1の酸化物結晶部材の結晶配向した下側界面は、下地部材と
離間して設けることを特徴とする。酸化物部材の膜厚または、加熱処理の条件などを適宜
調節することにより、意図的に第1の酸化物結晶部材の結晶配向した下側界面と下地部材
との間に酸化物部材のアモルファス領域を残存させてバッファとして機能させ、結晶領域
を下地部材表面より離間して設け、デバイスを作製した場合に下地部材との界面散乱によ
る影響を低減することができる。例えば、上記積層酸化物材料を半導体層としてゲート絶
縁層上に形成するボトムゲート型トランジスタを作製する場合、チャネル形成領域は、ゲ
ート絶縁層の界面に形成されるのではなく、ゲート絶縁層表面と離間している多結晶層に
形成され、ゲート絶縁層と酸化物結晶部材との界面散乱の影響が低減される。従って、ゲ
ート絶縁層表面と離間している結晶層を有するトランジスタは、埋め込みチャネル(Bu
ried Channel)トランジスタとも呼べる。
【0020】
本発明の技術思想の一つは、酸化物半導体中にさらに加えることをせずに、逆に不本意に
存在する水、水素という不純物を意図的に除去することにより、酸化物半導体自体を高純
度化することである。すなわち、ドナー準位を構成する水または水素を除去し、さらに酸
素欠損を低減し、酸化物半導体を構成する主成分材料の酸素を十分に供給することにより
、酸化物半導体を高純度化することである。
【0021】
酸化物半導体を成膜することで1020cm-3のレベルの水素がSIMS(二次イオン
質量分析)で測定される。このドナー準位の原因となる水または水素を意図的に除去し、
さらに水または水素の除去に伴い同時に減少してしまう酸素(酸化物半導体の成分の一つ
)を酸化物半導体に加えることにより、酸化物半導体を高純度化し、電気的にi型(真性
)半導体とする。
【0022】
また、本発明の技術思想の一つにおいては、酸化物半導体中の水、水素の量は少なければ
少ないほど好ましく、キャリアも少なければ少ないほど良い。すなわち、キャリア密度は
1×1012cm-3未満、さらに好ましくは測定限界以下の1.45×1010cm-
3未満が求められる。更には、本発明の技術思想は、ゼロに近いまたはゼロが理想である
。特に、酸化物半導体を、酸素、窒素、または超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下
、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)雰囲気で、450℃以上
850℃以下、好ましくは550℃以上750℃以下の加熱処理をすることにより、n型
不純物となる水、または水素を除去し、高純度化することができる。また、水、または水
素等の不純物を除去することにより、酸化物半導体を高純度化することで、キャリア密度
を1×1012cm-3未満、さらに好ましくは測定限界以下の1.45×1010cm
-3未満とすることができる。
【0023】
更に、熱処理を450℃以上850℃以下、好ましくは600℃以上700℃以下の高温
とすると、酸化物半導体を高純度化すると共に、結晶化させることが可能であり、酸化物
半導体の表面から内部に向かって結晶成長し、c軸方向を有する非単結晶領域を有する酸
化物半導体となる。
【0024】
本発明は、当該c軸方向を有する非単結晶領域を有する酸化物半導体を種結晶として、そ
の上に第2の酸化物半導体を設け、450℃以上850℃以下、好ましくは550℃以上
750℃以下の加熱処理をすることで、第2の酸化物半導体を、種結晶と同様にc軸配向
を有する非単結晶領域とすることができる。即ち、種結晶と第2の酸化物半導体のc軸が
同軸となる、理想的なアキシャル成長、またはエピタキシャル成長をさせることができる
。
【0025】
また、種結晶と同軸となる第2の酸化物半導体は、成膜後の熱処理による固相成長のみで
はなく、200℃以上600℃以下、好ましくは200℃以上550℃以下で加熱しなが
ら第2の酸化物半導体を成膜、代表的にはスパッタリング法により成膜することで、堆積
しつつ結晶成長させることができる。
【0026】
さらには、酸化物半導体のキャリアを低減し、好ましくは無くしてしまうことで、トラン
ジスタにおいて酸化物半導体はキャリアを通過させる通路(パス)として機能させる。そ
の結果、酸化物半導体は高純度化したi型(真性)半導体であり、キャリアがない、また
は極めて少なくせしめることにより、トランジスタのオフ状態ではオフ電流を極めて低く
できるというのが本発明の技術思想の一つである。
【0027】
また、酸化物半導体は通路(パス)として機能し、酸化物半導体自体がキャリアを有さな
い、または極めて少ないように高純度化したi型(真性)とすると、キャリアはソース電
極、ドレイン電極を通して供給される。酸化物半導体の電子親和力χおよびフェルミレベ
ル、理想的には真性フェルミレベルと一致したフェルミレベルと、ソース、ドレインの電
極の仕事関数とを適宜選択することで、ソース電極及びドレイン電極からキャリアを注入
させることが可能となり、n型トランジスタ及びp型トランジスタを適宜作製することが
できる。
【0028】
上記酸化物結晶部材、及び酸化物部材は全て金属酸化物であり、四元系金属酸化物である
In-Sn-Ga-Zn-O系膜や、三元系金属酸化物であるIn-Ga-Zn-O系膜
、In-Sn-Zn-O系膜、In-Al-Zn-O系膜、Sn-Ga-Zn-O系膜、
Al-Ga-Zn-O系膜、Sn-Al-Zn-O系膜や、二元系金属酸化物であるIn
-Zn-O系膜、Sn-Zn-O系膜、Al-Zn-O系膜、Zn-Mg-O系膜、Sn
-Mg-O系膜、In-Mg-O系膜や、単元系金属酸化物であるIn-O系膜、Sn-
O系膜、Zn-O系膜などの金属酸化物膜を用いることができる。なお、ここで、例えば
、In-Sn-Ga-Zn-O膜とは、インジウム(In)、錫(Sn)、ガリウム(G
a)、亜鉛(Zn)を有する酸化物膜、という意味であり、その化学量論比はとくに問わ
ない。
【0029】
また、上記酸化物結晶部材、及び酸化物部材は、InMO3(ZnO)m(m>0、且つ
mは自然数でない)で表記される材料としても表現できる。ここで、Mは、Ga、Al、
MnおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、G
a及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。
【0030】
また、In-A-B-Oで表現される酸化物半導体材料を用いても良い。ここで、Aは、
ガリウム(Ga)やアルミニウム(Al)などの13族元素、シリコン(Si)やゲルマ
ニウム(Ge)に代表される14族元素などから選択される一または複数種類の元素を表
す。また、Bは、亜鉛(Zn)に代表される12族元素から選択される一又は複数種類の
元素を表す。なお、In、A、Bの含有量は任意であり、Aの含有量がゼロの場合を含む
。一方、InおよびBの含有量はゼロではない。すなわち、上述の表記には、In-Ga
-Zn-OやIn-Zn-Oなどが含まれる。また、本明細書でいうIn-Ga-Zn-
Oで表記される酸化物半導体材料は、InGaO3(ZnO)m(m>0、且つmは自然
数でない)であり、mが自然数でないことは、ICP-MS分析や、RBS分析を用いて
確認することができる。
【0031】
従来の酸化物半導体は一般にn型であり、ゲート電圧が0Vでもソース電極とドレイン電
極の間に電流が流れる、所謂ノーマリーオンとなりやすい。電界効果移動度が高くともト
ランジスタがノーマリーオンであると、回路として制御することが困難である。酸化物半
導体がn型である場合のフェルミ準位(EF)は、バンドギャップ中央に位置する真性フ
ェルミ準位(Ei)から離れて、伝導帯寄りに位置している。なお、酸化物半導体におい
て水素はドナーでありn型化する一つの要因であることが知られている。また、酸素欠損
もn型化する一つの要因であることが知られている。
【0032】
そこで酸化物半導体層をi型とするため、n型不純物である水素を酸化物半導体から除去
し、酸化物半導体の主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化し、かつ、酸素
欠損を除去することにより真性(i型)とし、又は真性型とする。すなわち、不純物を添
加してi型化するのでなく、水素や水等の不純物や酸素欠損を極力除去することにより、
高純度化されたi型(真性半導体)又はそれに近づけることを特徴としている。そうする
ことにより、フェルミ準位(EF)を真性フェルミ準位(Ei)と同じレベルにまでする
ことができる。
【0033】
酸化物半導体層を高純度化することにより、トランジスタのしきい値電圧値をプラスとす
ることができ、所謂ノーマリーオフのスイッチング素子を実現できる。
【0034】
高純度化するためのプロセスの一つとして、酸化物半導体膜の成膜を行う前、または成膜
中、または成膜後に、スパッタ装置内の水分などを除去することが好ましい。スパッタ装
置内の水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、
クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい
。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよ
い。クライオポンプを用いて排気したスパッタ装置の成膜室は、例えば、水素原子や、水
(H2O)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物
半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。さらに、酸化物半導体用ターゲット中の
酸化物半導体の相対密度は80%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは99.
9%以上とすることが好ましい。相対密度の高いターゲットを用いると、形成される酸化
物半導体膜中の不純物濃度を低減することができる。
【0035】
形成される酸化物半導体膜中に不純物が混入すると、後に行う結晶化のための加熱処理の
際、一方向の結晶成長、即ち表面から下方向の結晶成長を阻害する恐れがあるため、酸化
物半導体膜中に一切の不純物(p型またはn型を作る不純物)がない状態とすることが理
想的である。また、半導体を構成しない重金属、Fe、Niなどの不純物元素も1×10
15cm-3以下とすることが理想的である。脱水化、脱水素化により酸化物半導体を高
純度化する、またはこの工程を特に強く行うと同時に酸化物半導体を結晶化させることは
極めて重要である。
【0036】
また、酸化物半導体膜の成膜を行う前に、スパッタ装置内壁や、ターゲット表面やターゲ
ット材料中の水分または水素を除去するためにプレヒート処理を行っても良い。プレヒー
ト処理としては成膜チャンバー内を減圧下で200℃~600℃に加熱する方法が有効で
ある。また、被処理基板を加熱しながら成膜してチャンバー内壁に水分などを吸着させる
方法も有効である。この場合のターゲット冷却液は、水ではなく油脂等を用いるとよい。
加熱せずに窒素の導入と排気を繰り返しても一定の効果が得られるが、加熱しながら行う
となお良い。プレヒート処理を終えたら、基板またはスパッタ装置を冷却し、酸化物半導
体膜の成膜を行う。
【0037】
また、酸化物半導体膜、又はその上に接して形成する材料膜を、成膜する際に用いるアル
ゴンや酸素などのスパッタガスも水素、水、水酸基を含む化合物又は水素化物などの不純
物が、ppmの単位で表される程度の濃度、ppbの単位で表される程度の濃度まで除去
された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0038】
また、スパッタ法による酸化物半導体膜の成膜中に基板を200℃以上600℃以下に加
熱してもよい。200℃以上600℃以下に加熱すると、その前に第1の非単結晶層が予
め形成されているならば、成膜とともに同軸方向の結晶成長(特にc軸方向の結晶成長)
が期待できる。
【0039】
また、高純度化するためのプロセスの一つとして、水素及び水分をほとんど含まない雰囲
気下(窒素雰囲気、酸素雰囲気、乾燥空気雰囲気(例えば、水分については露点-40℃
以下、好ましくは露点-50℃以下)など)で第1の加熱処理を行う。この第1の加熱処
理は、酸化物半導体層中からH、OHなどを脱離させる脱水化または脱水素化とも呼ぶこ
とができ、不活性雰囲気下で昇温し、途中で酸素を含む雰囲気に切り替える加熱処理を行
う場合や、酸素雰囲気下で加熱処理を行う場合は、加酸化処理とも呼べる。
【0040】
第1の加熱処理は、電気炉を用いた加熱方法、加熱した気体を用いるGRTA(Gas
Rapid Thermal Anneal)法またはランプ光を用いるLRTA(La
mp Rapid Thermal Anneal)法などの瞬間加熱方法などを用いる
ことができる。また、第1の加熱処理は、450nm以下の光を照射する加熱も同時に行
ってもよい。高純度化のための第1の加熱処理は、第1の加熱処理後の酸化物半導体層に
対してTDS(Thermal Desorption Spectroscopy)で
450℃まで測定を行っても水の2つのピークのうち、少なくとも300℃付近に現れる
1つのピークは検出されない程度の条件で行う。従って、高純度化のための加熱処理が行
われた酸化物半導体層を用いたトランジスタに対してTDSで450℃まで測定を行って
も少なくとも300℃付近に現れる水のピークは検出されない。
【0041】
第1の加熱処理は、結晶成長の種がない状態で結晶成長を行うため、高温で短時間に加熱
を行い、表面から内部に向かう結晶成長のみとなるようにすることが好ましい。また、酸
化物半導体層の表面が平坦であると、良好な板状の非単結晶層を得ることができるため、
できるだけ下地部材、例えば絶縁層や、基板の平坦性が高いことが望ましい。例えば、市
販されているシリコンウェハと同程度の平坦性、例えば、表面粗度が1μm四方の領域に
おけるAFM測定での高低差が1nm以下、好ましくは0.2nm以下とする。
【0042】
非単結晶層は、酸化物半導体中のInの電子雲が互いに重なり合って連接することにより
、電気伝導率σを大きくする。従って、非単結晶層を有するトランジスタは、高い電界効
果移動度を実現することができる。
【0043】
第1の加熱処理により形成した非単結晶層を種としてさらに結晶成長を行う方法の一つを
以下に
図1(A)、
図1(B)、及び
図1(C)を用いて示す。
【0044】
工程順序の概略を説明すると、下地部材上に第1の酸化物半導体層を形成した後、高純度
化するための第1の加熱処理を行い、高純度化するための第1の加熱処理と同一工程によ
り、第1の酸化物半導体層の表面に比較的結晶方位の揃った非単結晶層を形成し、その上
に第2の酸化物半導体層を積層する。さらに結晶化のための第2の加熱処理を行うことに
より、第1の酸化物半導体層の表面の非単結晶層を種として第2の酸化物半導体層を結晶
化するという順序で行われる。
【0045】
第1の加熱処理は、結晶成長の種がない状態で表面から結晶成長が行われるのに対して、
第2の加熱処理は、種となる平板状の非単結晶層があるため、結晶成長が可能な最低温度
で長時間に加熱を行うと良好な結晶性を得ることができ、好ましい。第2の加熱処理によ
り行われる結晶成長の方向は、下から上の方向、基板側から表面側の方向(再結晶方向と
も呼ぶ)であり、第1の加熱処理での結晶成長の方向と異なっている。また、第1の加熱
処理で得られた非単結晶層は第2の加熱処理で再び加熱されるため、さらに結晶性が向上
する。
【0046】
図1(A)は、下地部材520上に形成された第1の酸化物半導体層に対して結晶化のた
めの第1の加熱処理が行われた後の状態を示している。第1の酸化物半導体層や下地部材
520の材料や加熱温度や加熱時間などの条件にもよるが、第1の加熱処理により、表面
から結晶成長しても第1の酸化物結晶部材521bの先端が下地部材520の界面にまで
届かず、非晶質状態の領域521aを残存させる。
【0047】
また、
図1(B)は、第2の酸化物部材522の成膜直後の断面図である。第2の酸化物
部材522は、スパッタ法で形成され、その金属酸化物ターゲットは、In
2O
3:Ga
2O
3:ZnO=1:1:2[mol数比]の金属酸化物ターゲットや、In
2O
3:G
a
2O
3:ZnO=1:1:4[mol数比]の金属酸化物ターゲットを用いればよい。
【0048】
また、スパッタ法による第2の酸化物部材522の成膜中に基板を200℃以上600℃
以下に加熱してもよい。この基板温度で成膜を行うと、第2の酸化物部材522は前配列
ができる。また、直接エピタキシャル成長することができる。
【0049】
なお、実際に
図1(B)に対応する構造を作製し、断面を撮影したTEM写真が
図4(A
)である。模式図を
図4(B)に示す。なお、TEM写真は、加速電圧を300kVとし
、高分解能透過電子顕微鏡(日立製作所製「H9000-NAR」:TEM)で観察した
高倍写真(400万倍)である。
図4(A)を撮影したサンプルは、ガラス基板上に絶縁
層を形成し、その上に5nmの膜厚の第1のIn-Ga-Zn-O膜を形成し、窒素雰囲
気下で650℃、6分の加熱処理を行い、その後30nmの膜厚の第2のIn-Ga-Z
n-O膜を積層形成した。なお、絶縁層は、高密度プラズマ装置による膜厚100nmの
酸化窒化珪素膜(SiOxNyとも呼ぶ、ただし、x>y>0)を用いている。
図4(A
)では、第1のIn-Ga-Zn-O膜は第1のIn-Ga-Zn-O膜の表面に対して
垂直方向にc軸配向していることと、絶縁層との第1のIn-Ga-Zn-O膜の界面付
近は結晶化されていないことが確認できる。
【0050】
金属酸化物半導体層としては、InGaxZnyOzで表される材料を用いることができ
る。ここで、x、y、zは任意の数である。また、x、y、zは整数である必要はなく、
非整数であっても良い。なお、xは0であっても良いが、yは0でないことが望ましい。
例えば、当該表記は、xが0であるIn-Zn-Oを含んでいる。また、x=1、y=1
で表記される場合や、x=1、y=0.5で表記される場合などを含む。また、酸化物半
導体層表面と垂直な方向にc軸配向した結晶、例えば非単結晶とするためには、高純度化
された酸化物半導体を用いることが好ましく、膜中の不純物を極めて少なくすることによ
って結晶性の高い非単結晶を得ることができる。本工程により、得られる金属酸化物半導
体層中における平板状の結晶は、In2Ga2ZnO7(In:Ga:Zn:O=2:2
:1:7)の結晶である。また、この平板状の結晶を有する金属酸化物半導体層のキャリ
ア濃度は1×1012cm-3未満、好ましくは1.45×1010cm-3未満である
。
【0051】
また、
図4(A)を撮影したサンプルの第1のIn-Ga-Zn-O膜及び第2のIn-
Ga-Zn-O膜は、同じスパッタ装置を用い、酸化物半導体用ターゲット(In-Ga
-Zn-O系酸化物半導体用ターゲット(In
2O
3:Ga
2O
3:ZnO=1:1:2
[mol数比])を用い、圧力0.6Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素とアルゴ
ンの混合雰囲気下(酸素流量50sccm、アルゴン流量50sccm)、基板温度20
0℃、成膜速度4nm/minで成膜した。また、このターゲットの材料及び組成に限定
されず、例えば、In
2O
3:Ga
2O
3:ZnO=1:1:1[mol数比]のターゲ
ットを用いた場合、In
2Ga
2ZnO
7の非単結晶を得やすい。
【0052】
In2Ga2ZnO7の結晶構造はIn、Ga、Znのいずれかを含有し、a軸(a-a
xis)およびb軸(b-axis)に平行なレイヤーの積層構造として捉えることがで
きる。In2Ga2ZnO7の結晶の電気伝導は、主としてInによって制御されるため
、Inを含有するレイヤーの、a軸およびb軸に平行な方向に関する電気特性は良好であ
る。In2Ga2ZnO7の結晶は、Inの電子雲が互いに重なり合って連接し、キャリ
アパスが形成される。
【0053】
また、上記ターゲットに代えて、In2O3:Ga2O3:ZnO=2:1:8[mol
数比]の金属酸化物ターゲットを用いてもよい。
【0054】
また、Gaを含まないIn2O3:ZnO=1:2[mol比]の金属酸化物ターゲット
を用いてもよい。ボトムゲート型のトランジスタとする場合、Gaの酸化物は絶縁物であ
るため、第1のIn-Ga-Zn-O膜を用いる場合に比べ、In-Zn-O膜を用いる
場合には電界効果移動度を高くすることができる。
【0055】
また、
図1(C)は、第2の加熱処理後の断面図である。第2の加熱処理によって、第1
の酸化物結晶部材521bの非単結晶層を種として第2の酸化物部材522の表面に向か
って上方に結晶成長し、第2の酸化物結晶部材523bが形成され、結晶部材同士が同一
結晶軸を有する。
【0056】
第1の酸化物部材と第2の酸化物部材の材料は、表面に対して垂直方向にc軸配向してい
る非単結晶が得られるのであれば、特に限定されず、異なる材料を用いてもよいし、同一
成分を含む材料を用いてもよい。同一成分を含むとは同じ元素を有する意味である。
【0057】
なお、第1の酸化物部材と第2の酸化物部材に同一成分を含む酸化物半導体材料を用いる
場合、
図1(C)で点線で示したように、第1の酸化物結晶部材523aと第2の酸化物
結晶部材523bの境界は不明瞭となる。
【0058】
また、
図1(C)においては、下地部材520上に接して、非晶質状態のままの領域52
3c、第1の酸化物結晶部材523a、第2の酸化物結晶部材523bの順に積層された
3層構造と言える。
【0059】
この第2の加熱処理も、酸化物半導体層中からH、OHなどを脱離させる脱水化または脱
水素化とも呼ぶことができ、不活性雰囲気下で昇温し、途中で雰囲気を切り替え酸素を含
む雰囲気下とする加熱処理を行う場合や、酸素雰囲気下で加熱処理を行う場合は、加酸化
処理とも呼べる。
【0060】
酸化物半導体層の水素濃度は、1×1018cm-3以下、1×1016cm-3以下、
さらには実質的には0が好ましい。また、酸化物半導体層のキャリア密度は、1×101
2cm-3未満、さらに好ましくは測定限界以下の1.45×1010cm-3未満であ
る。即ち、酸化物半導体層のキャリア密度は、限りなくゼロに近い。また、バンドギャッ
プは2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。なお、
酸化物半導体層中の水素濃度測定は、二次イオン質量分析法(SIMS:Seconda
ry Ion Mass Spectroscopy)で行うことができる。キャリア密
度は、ホール効果測定により測定することができる。また、より低密度のキャリア密度の
測定は、CV測定(Capacitance-Voltage-Measurement
)の測定結果及び数式1により求めることができる。
【0061】
【0062】
こうして、第1の酸化物結晶部材523aと第2の酸化物結晶部材523bの積層からな
る非単結晶層は、2回に分けて結晶成長させることができる。
【0063】
また、実際に、第2のIn-Ga-Zn-O膜の成膜後に窒素雰囲気下で650℃、6分
の加熱処理を行い、断面を撮影したTEM写真が
図5(A)である。なお、模式図を
図5
(B)に示す。
図5(A)では、第2のIn-Ga-Zn-O膜の全体が結晶化している
様子が確認できる。また、第2のIn-Ga-Zn-O膜の非単結晶層は第2のIn-G
a-Zn-O膜の表面に対して垂直方向にc軸配向していることが確認できる。また、第
2の熱処理後も絶縁層との第1のIn-Ga-Zn-O膜の界面付近は結晶化されていな
いことが確認できる。
【0064】
なお、
図1(A)において、第1の酸化物半導体層の表面の比較的結晶方位の揃った非単
結晶層は、表面から深さ方向に結晶成長するため、下地部材の影響を受けることなく形成
することができる。
【0065】
第1の酸化物半導体層、例えば、In-Ga-Zn-O膜の表面に比較的結晶方位の揃っ
た非単結晶層が形成されるメカニズムを一例に説明する。加熱処理により、In-Ga-
Zn-O膜中に含まれる亜鉛が拡散し、表面近傍に集まり、結晶成長の種となり、その結
晶成長は、横方向(表面に平行な方向)の結晶成長のほうが、深さ方向(表面に垂直な方
向)の結晶成長よりも強いため、平板状の非単結晶層が形成される。即ち、a-b面の方
向とc軸の方向とではa-b面の方向の方が結晶化しやすい。また、それぞれのa-b面
は一致していない。また、In-Ga-Zn-O膜の表面より上は自由空間であり、ここ
での上方への結晶の成長はない。これらのことは、TDSの測定時に450℃まで測定を
行った際、InやGaは検出されないが、亜鉛は真空加熱条件下、特に300℃付近でピ
ーク検出されることが確認できていることから推察される。なお、TDSの測定は真空中
で行われ、亜鉛の離脱は200℃付近から検出されていることが確認できている。
【0066】
また、比較例として、50nmの膜厚のIn-Ga-Zn-O膜を形成した後、700℃
、1時間の加熱を行ったサンプルの断面を撮影したTEM写真が
図6(A)である。なお
、模式図を
図6(B)に示す。この
図6(A)のTEM写真は、加速電圧を300kVと
し、高分解能透過電子顕微鏡(日立製作所製「H9000-NAR」:TEM)で観察し
た高倍写真(200万倍)である。
図6(A)では、In-Ga-Zn-O膜の表面から
約5nm程度が結晶化し、In-Ga-Zn-O膜の内部には多くの非晶質部分と、配向
の揃っていない複数の結晶がランダムに存在している様子が確認できる。従って、膜厚を
50nmと厚く成膜した後に650℃よりも高い700℃、6分よりも長い1時間の加熱
処理を1回行っても50nmの膜厚全体を高い配向性を有する非単結晶層にすることは困
難であると言える。
【0067】
これらの実験結果から、2回に分けて成膜を行い、結晶成長の種となる非単結晶層を形成
した後、再度成膜した後に結晶成長させることで膜厚の厚い非単結晶層を形成することが
できると言え、本明細書で開示する方法が極めて有用であることがわかる。2回に分けて
成膜を行い、2回の熱処理を行うことで初めて高い配向を有する非単結晶層、即ち、酸化
物結晶部材の表面に対して垂直方向にc軸配向をしている非単結晶層を厚く得ることがで
きる。
【0068】
また、本明細書で開示する本発明の一態様は、下地部材上に、第1の酸化物結晶部材の表
面から内部に向かって結晶成長する第1の酸化物結晶部材と、第1の酸化物結晶部材上に
第2の酸化物結晶部材を積層してなる積層酸化物材料である。なお、表面から内部に向か
って結晶成長する第1の酸化物結晶部材は、第1の酸化物結晶部材の表面に対して垂直方
向にc軸配向をしている。
【0069】
上記構成は、下地部材と第1の酸化物結晶部材の間に非晶質を含む酸化物部材を配置せし
めることを特徴とする。また、意図的に下地部材と第1の酸化物結晶部材の間に非晶質を
含む酸化物部材を配置せしめることによって、下地部材表面に達するまで結晶成長させな
い条件で加熱処理を行うことができるため、生産性を向上させることができる。
【0070】
また、本明細書で開示する本発明の一態様は、第1の酸化物結晶部材上に同一結晶構造の
第2の酸化物結晶部材を第1の酸化物結晶部材の表面上方に少なくとも一部成長せしめる
ことを特徴とする積層酸化物材料である。
【0071】
また、他の発明の一つは、半導体装置の作製方法であり、その構成は、下地部材表面上に
平坦表面を有するゲート電極層を形成し、ゲート電極層上にゲート絶縁層を形成し、ゲー
ト絶縁層上に第1の酸化物半導体層を形成し、第1の加熱処理を行って第1の酸化物半導
体層の表面から内部に向かって結晶成長させて第1の非単結晶層を形成し、第1の非単結
晶層上に第2の酸化物半導体層を形成し、第2の加熱処理を行って第1の非単結晶層から
その上の第2酸化物半導体層表面に向かって結晶成長させて第2の非単結晶層を形成し、
第1の非単結晶層及び第2の非単結晶層の積層上にソース電極層またはドレイン電極層を
形成し、第1の非単結晶層の結晶配向した下側界面は、ゲート絶縁層の表面と離間してい
ることを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0072】
また上記構成において、第1の非単結晶層は、第1の非単結晶層の表面に対して垂直方向
にc軸配向をしていることを特徴としている。
【0073】
また、他の発明の一つは、半導体装置であり、その構成は、下地部材表面上に平坦表面を
有するゲート電極層と、ゲート電極層上にゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上に非晶質を含
む金属酸化物層と、非晶質を含む金属酸化物層上に、表面に対して垂直方向にc軸配向を
している第1の非単結晶層と、第1の非単結晶層上に接し、且つ、表面に対して垂直方向
にc軸配向をしている第2の非単結晶層と、第1の非単結晶層及び第2の非単結晶層の積
層上にソース電極層またはドレイン電極層とを有し、第1の非単結晶層及び第2の非単結
晶層は、金属酸化物層であることを特徴とする半導体装置である。
【0074】
上記構成において、第2の非単結晶層表面のゲート電極層と重なる領域の高低差は、1n
m以下、好ましくは、0.2nm以下であることを特徴としている。
【0075】
また、金属酸化物、代表的にはIn-Ga-Zn-O膜を用いるデバイスは、単結晶Si
を用いるデバイスや、SiCを用いるデバイスや、GaNを用いるデバイスとは全く異な
っている。
【0076】
ワイドギャップ半導体としてSiC(3.26eV)、GaN(3.39eV)が知られ
ている。しかしながら、SiCやGaNは高価な材料である。また、SiCは、低抵抗領
域を選択的に形成するため、リンやアルミニウムのドーピングを行った後に活性化するた
めの温度が1700℃以上必要とされている。即ち、SiCやGaNは、1000℃以上
の処理温度を必要としており、ガラス基板上またはLSIが形成された基板の上方での薄
膜化は実質的に不可能である。
【0077】
また、SiCやGaNは単結晶のみであり、PN接合での制御を求められ、より完全な単
結晶であることを必要としている。したがって、製造工程で意図しない微量の不純物が混
入することによって、それがドナーやアクセプタとなるため、キャリア濃度の下限には限
界がある。一方、金属酸化物は、アモルファス、多結晶、または単結晶の全ての結晶構造
を利用することができる。PN接合の制御を用いることなく、φMS対χOS+1/2E
gOS、φMD対χOS+1/2EgOSと、ソース及びドレインの仕事関数と、金属酸
化物の電子親和力と、エネルギーバンド幅の物性を利用して、PN接合と等価のバンド制
御を行っていることが金属酸化物の特徴の一つである。
【0078】
金属酸化物、代表的にはIn-Ga-Zn-O膜のバンドギャップも単結晶シリコンの約
3倍広く、SiCに比べ製造コストが低くできるので安価な材料である。
【0079】
In-Ga-Zn-Oのバンドギャップは、3.05eVであり、この値を元に真性キャ
リア密度を計算する。固体中の電子のエネルギー分布f(E)は次の式で示されるフェル
ミ・ディラック統計に従うことが知られている。
【0080】
【0081】
キャリア密度が著しく高くない(縮退していない)普通の半導体では、次の関係式が成立
する。
【0082】
【0083】
従って、(1)式のフェルミ・ディラック分布は次の式で示されるボルツマン分布の式に
近似される。
【0084】
【0085】
(3)式を使って半導体の真性キャリア密度(ni)を計算すると以下の式が得られる。
【0086】
【0087】
そして、(4)式に、SiとIn-Ga-Zn-Oの実効状態密度(Nc、Nv)、バン
ドギャップ(Eg)の値を代入し、真性キャリア密度を計算した。その結果を表1に示す
。
【0088】
【0089】
In-Ga-Zn-Oは、Siに比べて極端に真性キャリア密度が少ないことがわかる。
また、酸化物半導体のキャリア密度が1×1012cm-3未満、さらに好ましくは測定
限界以下の1.45×1010cm-3未満とすることが好ましい。IGZOのバンドギ
ャップとして3.05eVを選んだ場合、SiとIn-Ga-Zn-Oでは、真性キャリ
ア濃度についておよそフェルミ・ディラックの分布則が正しいと仮定して、前者は後者よ
りキャリア密度が約1017倍大きいと言える。
【0090】
また、金属酸化物は室温から450℃の加熱温度によるスパッタ法で薄膜の形成が可能で
あり、プロセス最高温度は300℃以上800℃以下とすることができ、プロセス最高温
度をガラスの歪み点以下とする場合には、大面積のガラス基板上に形成することも可能で
ある。従って、工業化にはプロセス最高温度が300℃以上800℃以下でバンドギャッ
プの広い金属酸化物を作製できることが重要である。
【0091】
また、シリコン集積回路の三次元化をするに当たっても、金属酸化物の処理温度では下側
(シリコン側)の接合を壊す温度未満の300℃以上800℃以下であるので、シリコン
集積回路とその上方に金属酸化物FET層を形成して三次元化した集積回路への適用も可
能である。
【0092】
これまで報告された金属酸化物はアモルファス状態のもの、あるいは、多結晶状態のもの
、あるいは、1500℃程度の高温での処理により単結晶を得るもののみであったが、上
記に示したように、金属酸化物の平板状の非単結晶を形成した後、金属酸化物の平板状の
非単結晶を種として結晶成長させる方法により比較的低温でc軸配向を有する非単結晶薄
膜ができ、さらに厚膜の非単結晶ができると、より広い工業応用が開ける。なお、良質な
厚膜の非単結晶を得るには、基板の平坦性・平滑性が高いことが好ましい。なぜならば、
わずかな基板の凹凸が、局所的なc軸のぶれとなり、結晶成長が進展するにつれて、隣接
する結晶のc軸の向きと異なることにより結晶の転移等の欠陥となるからである。
【発明の効果】
【0093】
金属酸化物膜を2回に分けて成膜し、2回に分けて加熱処理を行うことで、下地部材の材
料が、酸化物、窒化物、金属など材料を問わず、それらの表面(絶縁物表面または酸化物
、窒化物、または金属表面)上に膜厚の大きい非単結晶層、即ち、膜表面に垂直にc軸配
向した非単結晶層を得ることができる。
【0094】
なお、c軸配向した非単結晶層を有する酸化物半導体層を用いたトランジスタは、高い電
界効果移動度を有するトランジスタを実現できる。また、オフ電流が低いトランジスタを
実現できる。また、所謂ノーマリーオフのスイッチング素子を実現し、低消費電力の半導
体装置を提供することができる。
【0095】
また、c軸配向した非単結晶層を有する酸化物半導体層を用いたトランジスタは、BT試
験前後におけるトランジスタのしきい値電圧の変化量を抑制することができ、高い信頼性
を実現することができる。また、c軸配向した非単結晶層を有する酸化物半導体層を用い
たトランジスタは、トランジスタに光を照射しつづけて行うBT試験前後においてもトラ
ンジスタのしきい値電圧の変化量が低減でき、安定した電気的特性を有するトランジスタ
を作製することができる。
【0096】
第1の酸化物半導体層の表面に薄い非単結晶層を形成できる第1の加熱処理の条件とし、
下地部材の表面に達するまで結晶成長させない条件としても、その上に第2の酸化物半導
体層を形成し、薄い非単結晶層を種として第2の酸化物半導体層を非単結晶とすることが
できる。第1の加熱処理温度条件の温度を下げる、或いは加熱時間を短縮することができ
るため、大面積基板上に形成する製造プロセスに適している。また、第1の加熱処理温度
及び第2の加熱温度を600℃以下とすればガラスの収縮量も抑えることができる。従っ
て、安価に得ることのできる生産性の高い作製工程を提供することができる。
【0097】
また、意図的に第1の酸化物結晶部材の結晶配向した下側界面を下地部材の表面と離間し
て設け、デバイスを作製した場合に下地部材との界面散乱による影響を低減することがで
きる。ゲート絶縁層と離間している結晶層をチャネル形成領域とすることにより、埋め込
みチャネル(Buried Channel)トランジスタを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【
図3】本発明の一態様を示す断面図及び上面図である。
【
図5】第2の加熱処理後の断面TEM写真図及びその模式図である。
【
図6】比較例の断面TEM写真図及びその模式図である。
【
図7】酸化物半導体を用いたボトムゲート型のトランジスタの縦断面図。
【
図8】
図7に示すA-A’断面におけるエネルギーバンド図(模式図)。
【
図9】(A)ゲート(GE1)に正の電圧(VG>0)が印加された状態を示し、(B)ゲート(GE1)に負の電位(VG<0)が印加された状態を示す図。
【
図10】真空準位と金属の仕事関数(φ
M)、酸化物半導体の電子親和力(χ)の関係を示す図。
【
図12】本発明の一態様を示す上面図及び断面図である。
【
図13】本発明の一態様を示す上面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0099】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は
以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれ
ば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈さ
れるものではない。
【0100】
(実施の形態1)
本実施の形態では、トランジスタの作製例の一例を
図1、
図2、及び
図3を用いて示す。
【0101】
まず、絶縁表面を有する基板である基板400上に、導電膜を形成した後、フォトマスク
を用いてフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層401を設ける。
【0102】
基板400としては、半導体基板、サファイア基板、石英基板、セラミック基板などが挙
げられるが、中でも大量生産することができるガラス基板を用いることが好ましい。基板
400として用いるガラス基板は、後の加熱処理の温度が高い場合には、歪み点が730
℃以上のものを用いると良い。また、基板400には、例えば、アルミノシリケートガラ
ス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられ
ている。なお、酸化ホウ素と比較して酸化バリウム(BaO)を多く含ませることで、よ
り実用的な耐熱ガラスが得られる。このため、B2O3よりBaOを多く含むガラス基板
を用いることが好ましい。
【0103】
また、下地層となる絶縁層を基板400とゲート電極層401の間に設けてもよい。下地
層は、基板400からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化珪素、酸化珪素、
窒化酸化珪素、または酸化窒化珪素から選ばれた一または複数の層による積層構造により
形成することができる。
【0104】
ゲート電極層401としては、金属導電層を用いることができる。金属導電層の材料とし
ては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素、または上述した元素
を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金等を用いるのが好ましい。例えば
、チタン層上にアルミニウム層と、該アルミニウム層上にチタン層が積層された三層の積
層構造、またはモリブデン層上にアルミニウム層と、該アルミニウム層上にモリブデン層
を積層した三層の積層構造とすることが好ましい。勿論、金属導電層として単層、または
2層構造、または4層以上の積層構造としてもよい。後に加熱処理を行う場合、ゲート電
極層401としてその加熱処理温度に耐えうる材料を選択することが好ましい、
【0105】
次いで、ゲート電極層401上にゲート絶縁層402を形成する。ゲート絶縁層402は
、プラズマCVD法又はスパッタ法等を用いて、酸化珪素層、窒化珪素層、酸化ハフニウ
ム層、酸化窒化珪素層又は窒化酸化珪素層を単層で又は積層して形成することができる。
例えば、窒化珪素膜と酸化珪素膜の積層とする。ゲート絶縁層402の膜厚は50nm以
上200nm以下とする。
【0106】
本実施の形態において、ゲート絶縁層402の形成は、高密度プラズマ装置により行う。
ここでは、高密度プラズマ装置は、1×1011/cm3以上のプラズマ密度を達成でき
る装置を指している。例えば、3kW~6kWのマイクロ波電力を印加してプラズマを発
生させて、絶縁膜の成膜を行う。
【0107】
チャンバーに材料ガスとしてモノシランガス(SiH4)と亜酸化窒素(N2O)と希ガ
スを導入し、10Pa~30Paの圧力下で高密度プラズマを発生させてガラス等の絶縁
表面を有する基板上に絶縁膜を形成する。その後、モノシランガスの供給を停止し、大気
に曝すことなく亜酸化窒素(N2O)と希ガスとを導入して絶縁膜表面にプラズマ処理を
行ってもよい。少なくとも亜酸化窒素(N2O)と希ガスとを導入して絶縁膜表面に行わ
れるプラズマ処理は、絶縁膜の成膜より後に行う。上記プロセス順序を経た絶縁膜は、膜
厚が薄く、例えば100nm未満であっても信頼性を確保することができる絶縁膜である
。
【0108】
ゲート絶縁層402の形成の際、チャンバーに導入するモノシランガス(SiH4)と亜
酸化窒素(N2O)との流量比は、1:10から1:200の範囲とする。また、チャン
バーに導入する希ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノンなどを用い
ることができるが、中でも安価であるアルゴンを用いることが好ましい。
【0109】
また、高密度プラズマ装置により得られた絶縁膜は、一定した厚さの膜形成ができるため
段差被覆性に優れている。また、高密度プラズマ装置により得られる絶縁膜は、薄い膜の
厚みを精密に制御することができる。
【0110】
上記プロセス順序を経た絶縁膜は、従来の平行平板型のPCVD装置で得られる絶縁膜と
は大きく異なっており、同じエッチャントを用いてエッチング速度を比較した場合におい
て、平行平板型のPCVD装置で得られる絶縁膜の10%以上または20%以上遅く、高
密度プラズマ装置で得られる絶縁膜は緻密な膜と言える。
【0111】
本実施の形態では、ゲート絶縁層402として高密度プラズマ装置を用いて成膜した膜厚
100nmの酸化窒化珪素膜(SiOxNyとも呼ぶ、ただし、x>y>0)を用いる。
【0112】
次いで、ゲート絶縁層402上に、厚さ2nm以上15nm以下の第1の酸化物半導体層
を形成する。また、第1の酸化物半導体層は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、
酸素雰囲気下、又は希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素混合雰囲気下においてスパッ
タ法により形成することができる。
【0113】
また、酸化物半導体膜の成膜を行う前、または成膜中、または成膜後に、スパッタ装置内
の水分などを除去することが好ましい。スパッタ装置内の水分を除去するためには、吸着
型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタ
ンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポ
ンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した
スパッタ装置の成膜室は、例えば、水素原子や、水(H2O)など水素原子を含む化合物
を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成膜し酸化物半導体膜に含まれる不純物
の濃度を低減できる。
【0114】
第1の酸化物半導体層としては、四元系金属酸化物であるIn-Sn-Ga-Zn-O系
膜や、三元系金属酸化物であるIn-Ga-Zn-O系膜、In-Sn-Zn-O系膜、
In-Al-Zn-O系膜、Sn-Ga-Zn-O系膜、Al-Ga-Zn-O系膜、S
n-Al-Zn-O系膜や、二元系金属酸化物であるIn-Zn-O系膜、Sn-Zn-
O系膜、Al-Zn-O系膜、Zn-Mg-O系膜、Sn-Mg-O系膜、In-Mg-
O系膜や、単元系金属酸化物であるIn-O系膜、Sn-O系膜、Zn-O系膜などの酸
化物半導体膜を用いることができる。
【0115】
また、第1の酸化物半導体層は、InMO3(ZnO)m(m>0、且つmは自然数でな
い)で表記される薄膜を用いることもできる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびC
oから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、
Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。
【0116】
本実施の形態では、酸化物半導体用ターゲット(In-Ga-Zn-O系酸化物半導体用
ターゲット(In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:2[mol数比])を用いて、
基板とターゲットの間との距離を170mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5
kW、酸素のみ、アルゴンのみ、又はアルゴン及び酸素雰囲気下で膜厚10nmの第1の
酸化物半導体層を成膜する。また、酸化物半導体用ターゲットとしてIn2O3:Ga2
O3:ZnO=1:1:1[mol数比]の組成比を有するターゲット、またはIn2O
3:Ga2O3:ZnO=1:1:4[mol数比]の組成比を有するターゲットを用い
ることもできる。本実施の形態では、後に加熱処理を行い意図的に結晶化させるため、結
晶化が生じやすい酸化物半導体用ターゲットを用いることが好ましい。
【0117】
また、酸化物半導体用ターゲット中の酸化物半導体の相対密度は80%以上、好ましくは
95%以上、さらに好ましくは99.9%以上とするのが好ましい。相対密度の高いター
ゲットを用いると、形成される酸化物半導体膜中の不純物濃度を低減することができ、電
気特性または信頼性の高いトランジスタを得ることができる。
【0118】
また、第1の酸化物半導体層の成膜を行う前、スパッタ装置内壁や、ターゲット表面やタ
ーゲット材料中の水分または水素を除去するためにプレヒート処理を行うと良い。プレヒ
ート処理としては成膜チャンバー内を減圧下で200℃~600℃に加熱する方法や、加
熱しながら窒素や不活性ガスの導入と排気を繰り返す方法等がある。プレヒート処理を終
えたら、基板またはスパッタ装置を冷却した後大気にふれることなく酸化物半導体膜の成
膜を行う。この場合のターゲット冷却液は、水ではなく油脂等を用いるとよい。加熱せず
に窒素の導入と排気を繰り返しても一定の効果が得られるが、加熱しながら行うとなお良
い。
【0119】
次いで、第1の酸化物半導体層の第1の加熱処理を行い、少なくとも一部を結晶化させる
。第1の加熱処理の温度は、450℃以上850℃以下、好ましくは550℃以上750
℃以下とする。また、加熱時間は1分以上24時間以下とする。第1の加熱処理によって
少なくとも表面に非単結晶層を有する第1の酸化物半導体層403を形成する(
図2(A
)参照。)。表面に形成される非単結晶層は、表面から内部に向かって結晶成長し、2n
m以上10nm以下の平均厚さを有する平板状の非単結晶である。また、表面に形成され
る非単結晶層は、その表面に対して垂直方向にc軸配向をしている。本実施の形態では、
第1の加熱処理によってゲート絶縁層界面付近を除いて第1の酸化物半導体層のほとんど
を多結晶とする例を示す。
【0120】
なお、第1の加熱処理においては、窒素、酸素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の
希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する
窒素、酸素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.99
99%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1pp
m以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。また、H2Oが20pp
m以下の超乾燥空気中で第1の加熱処理を行っても良い。また、第1の加熱処理の昇温時
には炉の内部を窒素雰囲気とし、冷却時には炉の内部を酸素雰囲気として雰囲気を切り替
えてもよく、窒素雰囲気で脱水または脱水化が行われた後、雰囲気を切り替えて酸素雰囲
気にすることで第1の酸化物半導体層内部に酸素を補給してi型とすることができる。
【0121】
なお、第1の加熱処理に用いる加熱処理装置は特に限られず、抵抗発熱体などの発熱体か
らの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば
、電気炉や、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、L
RTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Ra
pid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、
ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ
、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射に
より、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を
行う装置である。
【0122】
次いで、少なくとも表面に非単結晶層を有する第1の酸化物半導体層403上に、第1の
酸化物半導体層403よりも膜厚の大きい第2の酸化物半導体層404を形成する(
図2
(B)参照。)。なお、第2の酸化物半導体層404の膜厚は、作製するデバイスによっ
て最適な膜厚を実施者が決定すればよい。例えば、ボトムゲート型トランジスタを作製す
る場合は、第1の酸化物半導体層403と第2の酸化物半導体層404の合計膜厚は10
nm以上200nm以下とする。また、第2の酸化物半導体層は、希ガス(代表的にはア
ルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素雰囲気下
においてスパッタ法により形成することができる。
【0123】
第2の酸化物半導体層404としては、四元系金属酸化物であるIn-Sn-Ga-Zn
-O系膜や、三元系金属酸化物であるIn-Ga-Zn-O系膜、In-Sn-Zn-O
系膜、In-Al-Zn-O系膜、Sn-Ga-Zn-O系膜、Al-Ga-Zn-O系
膜、Sn-Al-Zn-O系膜や、二元系金属酸化物であるIn-Zn-O系膜、Sn-
Zn-O系膜、Al-Zn-O系膜、Zn-Mg-O系膜、Sn-Mg-O系膜、In-
Mg-O系膜や、単元系金属酸化物であるIn-O系膜、Sn-O系膜、Zn-O系膜な
どの酸化物半導体膜を用いることができる。
【0124】
また、第1の酸化物半導体層と第2の酸化物半導体層404は、同一成分を含む材料を用
いること、あるいは同一の結晶構造かつ近接した格子定数(ミスマッチが1%以下)を有
することが好ましい。同一成分を含む材料を用いる場合、後に行われる結晶化において第
1の酸化物半導体層の非単結晶層を種として結晶成長を行いやすくなる。また、同一成分
を含む材料である場合には、密着性などの界面物性や電気的特性も良好である。
【0125】
次いで、第2の加熱処理を行い、第1の酸化物半導体層の非単結晶層を種として結晶成長
を行う。第2の加熱処理の温度は、450℃以上850℃以下、好ましくは550℃以上
750℃以下とする。また、加熱時間は1分以上24時間以下とする。第2の加熱処理に
よって第2の酸化物半導体層を結晶化させる。こうして酸化物半導体積層430を得るこ
とができる(
図2(C)参照。)。なお、意図的に酸化物半導体積層430とゲート絶縁
層402の界面付近は結晶化させないようにする。この場合、ゲート絶縁層上に接する非
晶質層、その上に接する結晶層(ここでは、第1の酸化物半導体層の非単結晶と第2の酸
化物半導体層の非単結晶の積層を1層と見なす)と2層構造となる。
【0126】
第2の加熱処理の加熱温度を550℃以上とすると、第2の酸化物半導体層404が厚い
場合、表面から下方に成長する結晶層と、第1の酸化物半導体層を種に上方に成長する結
晶層との間に非晶質層とが形成されることがある。この場合、ゲート絶縁層上に接する非
晶質層、その上に結晶層、その上に非晶質層、その上に結晶層と4層構造となる。ここで
も、第1の酸化物半導体層の非単結晶と第2の酸化物半導体層の非単結晶の積層を1層と
見なして4層構造と呼んでいる。
【0127】
また、第2の酸化物半導体層404の材料によっては、第2の加熱処理の加熱温度を50
0℃未満とすると表面からの結晶成長が進まず、第1の酸化物半導体層を種に上方に成長
する結晶層が形成される場合があり、この場合ゲート絶縁層上に接する非晶質層、その上
に結晶層、その上に非晶質層の3層構造となる。なお、ここでも、第1の酸化物半導体層
の非単結晶と第2の酸化物半導体層の非単結晶の積層を1層と見なして3層構造と呼んで
いる。このように、第2の酸化物半導体層404の材料およびその膜厚と第2の加熱処理
の加熱条件によって様々な積層構造を取ることができるため、実施者は、所望の積層構造
に合わせて、第2の酸化物半導体層404の材料およびその膜厚と第2の加熱処理の加熱
条件を適宜調節することが重要である。
【0128】
なお、酸化物半導体積層430のうち、ゲート絶縁層の凹凸と重なる領域は結晶粒界があ
り、多結晶体となる。また、酸化物半導体積層430のうち、チャネル形成領域となる領
域は、少なくとも平坦面を有し、第1の酸化物半導体層と第2の酸化物半導体層が同じc
軸配向をしている非単結晶体である。また、酸化物半導体積層430のうち、チャネル形
成領域も多結晶のa軸及びb軸がずれる。
【0129】
図2(A)、
図2(B)、及び
図2(C)では、結晶化していないゲート絶縁層402と
の界面付近の様子が図示されていないが、ゲート絶縁層との界面付近を分かりやすく説明
するために、
図1(A)、
図1(B)、及び
図1(C)の拡大模式図を用いて示す。
図2
(A)は
図1(A)に対応しており、下地部材520は、ゲート絶縁層402に相当する
。また、
図2(B)は
図1(B)に対応しており、第2の酸化物部材522の成膜直後の
断面図である。また、
図2(C)は、
図1(C)に対応しており、第2の加熱処理後の断
面図である。
【0130】
なお、第2の加熱処理においても、窒素、酸素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の
希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する
窒素、酸素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N以上、好まし
くは7N以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする
ことが好ましい。また、H2Oが20ppm以下の超乾燥空気中で第2の加熱処理を行っ
ても良い。また、第2の加熱処理の昇温時には炉の内部を窒素雰囲気とし、冷却時には炉
の内部を酸素雰囲気として雰囲気を切り替えても良い。
【0131】
なお、第2の加熱処理に用いる加熱処理装置も特に限られず、抵抗発熱体などの発熱体か
らの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば
、電気炉や、GRTA装置、LRTA装置等のRTA装置を用いることができる。
【0132】
次いで、第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層からなる酸化物半導体積層43
0をフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体積層431に加工する(
図2(D
)参照。)。また、島状の酸化物半導体積層431を形成するためのレジストマスクをイ
ンクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォ
トマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0133】
次いで、ゲート絶縁層402、及び島状の酸化物半導体積層431に、スパッタ法などに
より金属導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、
選択的にエッチングを行って金属電極層を形成する。
【0134】
後にソース電極及びドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)となる金属導
電膜の材料としては、Al、Cu、Cr、Ta、Ti、Mo、Wなどの金属材料、または
該金属材料を成分とする合金材料で形成する。また、Al、Cuなどの金属層の下側もし
くは上側の一方または双方にCr、Ta、Ti、Mo、Wなどの高融点金属層を積層させ
た構成としても良い。また、Si、Ti、Ta、W、Mo、Cr、Nd、Sc、YなどA
l膜に生ずるヒロックやウィスカーの発生を防止する元素が添加されているAl材料を用
いることで耐熱性を向上させることが可能となる。
【0135】
例えば、金属導電膜としては、チタン層上にアルミニウム層と、該アルミニウム層上にチ
タン層が積層された三層の積層構造、またはモリブデン層上にアルミニウム層と、該アル
ミニウム層上にモリブデン層を積層した三層の積層構造とすることが好ましい。また、金
属導電膜としてアルミニウム層とタングステン層を積層した二層の積層構造、銅層とタン
グステン層を積層した二層の積層構造、アルミニウム層とモリブデン層を積層した二層の
積層構造とすることもできる。勿論、金属導電膜として単層、または4層以上の積層構造
としてもよい。
【0136】
また、ソース電極及びドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)となる金属
導電膜の材料としては、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物とし
ては酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化
インジウム酸化スズ合金(In2O3―SnO2、ITOと略記する)、酸化インジウム
酸化亜鉛合金(In2O3―ZnO)または上記金属酸化物材料にシリコン若しくは酸化
シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0137】
次いで、レジストマスクを除去し、フォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成
し、選択的にエッチングを行ってソース電極層405a、及びドレイン電極層405bを
形成した後、レジストマスクを除去する(
図2(E)参照。)。なお、このフォトリソグ
ラフィ工程では、島状の酸化物半導体積層431は一部のみがエッチングされ、溝部(凹
部)を有する酸化物半導体層となることもある。
【0138】
また、
図2(E)に示すように、ゲート電極層401は、ソース電極層405a(または
ドレイン電極層405b)と重なる領域を有することも特徴の一つである。ソース電極層
405aの端部と、ゲート絶縁層402の段差、即ち断面図において、ゲート絶縁層の平
坦面からテーパー面となる変化点との間の領域(ここでは
図2(E)中で示したL
OV領
域)を有している。酸化物半導体積層432のL
OV領域は、ゲート電極層の端部の凹凸
で生じる結晶粒界に、キャリアが流れないようにするために重要である。
【0139】
また、酸化物半導体積層432の側面において、ソース電極層405a、またはドレイン
電極層405bと接する非単結晶層が非晶質状態となることもある。
【0140】
また、ソース電極層405a、及びドレイン電極層405bを形成するためのレジストマ
スクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成す
るとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0141】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過
した光が複数の強度となる露光マスクである多階調マスクによって形成されたレジストマ
スクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマ
スクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことでさらに形状を変形するこ
とができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる
。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応
するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ
、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0142】
次いで、酸化物半導体層の一部に接する保護絶縁膜となる酸化物絶縁層407を形成する
。
【0143】
酸化物絶縁層407は、少なくとも1nm以上の膜厚とし、スパッタ法など、酸化物絶縁
層407に水、水素等の不純物を混入させない方法を適宜用いて形成することができる。
本実施の形態では、酸化物絶縁層407として膜厚300nmの酸化珪素膜をスパッタ法
を用いて成膜する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の
形態では100℃とする。酸化珪素膜のスパッタ法による成膜は、希ガス(代表的にはア
ルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素雰囲気
下において行うことができる。また、ターゲットとして酸化珪素ターゲットまたは珪素タ
ーゲットを用いることができる。例えば、珪素ターゲットを用いて、酸素、及び窒素雰囲
気下でスパッタ法により酸化珪素を形成することができる。低抵抗化した酸化物半導体層
に接して形成する酸化物絶縁層407は、水分や、水素イオンや、OH-などの不純物を
含まず、これらが外部から侵入することをブロックする無機絶縁膜を用い、代表的には酸
化珪素膜、窒化酸化珪素膜、酸化アルミニウム膜、または酸化窒化アルミニウム膜などを
用いる。さらに、酸化物絶縁層407上に窒化珪素膜、窒化アルミニウム膜などの保護絶
縁層を形成してもよい。
【0144】
また、酸化物絶縁層407の形成を行う前、スパッタ装置内壁や、ターゲット表面やター
ゲット材料中の水分または水素を除去するためにプレヒート処理を行うと良い。プレヒー
ト処理を終えたら、基板またはスパッタ装置を冷却した後大気にふれることなく酸化物絶
縁層の成膜を行う。この場合のターゲット冷却液は、水ではなく油脂等を用いるとよい。
加熱せずに窒素の導入と排気を繰り返しても一定の効果が得られるが、加熱しながら行う
となお良い。
【0145】
また、酸化物絶縁層407の形成の形成後、大気に触れることなく、スパッタ法により窒
化珪素膜を積層する構造を形成してもよい。
【0146】
また、酸化物絶縁層407及びゲート絶縁層402に対して、ゲート電極層401に達す
るコンタクトホールを形成し、ゲート電極層401に電気的に接続し、ゲート電位を与え
る接続電極を酸化物絶縁層407上に形成してもよい。また、ゲート絶縁層402を形成
後にゲート電極層401に達するコンタクトホールを形成し、その上にソース電極層また
はドレイン電極層と同じ材料で接続電極を形成し、接続電極上に酸化物絶縁層407を形
成し、酸化物絶縁層407に接続電極に達するコンタクトホールを形成した後、接続電極
と電気的に接続する電極を形成してゲート電位を与える電極を酸化物絶縁層407上に形
成してもよい。
【0147】
以上の工程でトランジスタ470が形成される(
図3(B)参照。)。また、
図3(A)
にトランジスタ470の上面図の一例を示す。なお、
図3(B)は、
図3(A)の鎖線C
1-C2で切断した断面図に相当する。
【0148】
トランジスタ470は、チャネル形成領域のゲート電極層の上面を平坦とし、その平坦面
に垂直にc軸配向している酸化物部材を有するとともに、ソース電極層またはドレイン電
極層は、ゲート電極層の端部による凹凸にまで重なり合っていることも特徴の一つである
。酸化物部材(本実施の形態では酸化物半導体積層432)は、基板側に凹凸があった場
合には、凹部のぶつかる領域に結晶粒界がある多結晶となる。従って、
図3(B)に示す
Lov領域を形成することによって、ゲート電極層の端部の凹凸で生じる結晶粒界に、キ
ャリアが流れないようにすることができる。そのため、トランジスタ470において、ソ
ース電極層またはドレイン電極層は、ゲート電極の平坦部の上方にまで渡って設け、ゲー
ト電極層とかさなり(オーバーラップ)を有する。
【0149】
なお、トランジスタ470のチャネル形成領域と重なるゲート絶縁層の表面における高低
差は、1nm以下、好ましくは0.2nm以下である平坦面を有する。キャリアの流れる
チャネル形成領域は、非単結晶である。
【0150】
図3(B)に示すトランジスタ470は、意図的に結晶層をゲート絶縁層と離間して設け
るため、チャネル形成領域は、ゲート絶縁層との界面に形成されるのではなく、ゲート絶
縁層と離間している結晶層に形成され、ゲート絶縁層と酸化物部材との界面散乱の影響が
低減される。
【0151】
第1の加熱処理及び第2の加熱処理により、結晶化を行い、n型不純物である水素を酸化
物半導体から除去し、酸化物半導体の主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度
化することにより真性(i型)とし、又は真性型としている。すなわち、不純物を添加し
てi型化するのでなく、水素や水等の不純物を極力除去したことにより、高純度化された
i型(真性半導体)又はそれに近づける。酸化物半導体層を高純度化することにより、ト
ランジスタのしきい値電圧値をプラスとすることができ、所謂ノーマリーオフのトランジ
スタ470を実現できる。
【0152】
また、
図3(B)に示すトランジスタ470の構造に特に限定されないことは言うまでも
ない。ボトムゲート型トランジスタであればよく、例えば、
図2(E)でのソース電極層
及びドレイン電極層の形成時のエッチングダメージを保護するために、チャネル形成領域
と重なる酸化物絶縁層をチャネルストッパーとして設けるチャネルストップ型のトランジ
スタとしてもよい。
【0153】
また、酸化物絶縁層407上にバックゲートとして機能させることのできる電極層を設け
てもよい。バックゲートの電位は、固定電位、例えば0Vや、接地電位とすることができ
、実施者が適宜決定すればよい。また、酸化物半導体層の上下にゲート電極を設けること
によって、トランジスタの信頼性を調べるためのバイアス-熱ストレス試験(以下、BT
試験という)において、BT試験前後におけるトランジスタのしきい値電圧の変化量を低
減することができる。即ち、酸化物半導体層の上下にゲート電極を設けることによって、
信頼性を向上することができる。また、バックゲートに加えるゲート電圧を制御すること
によって、しきい値電圧を制御することができる。また、しきい値電圧を正としてエンハ
ンスメント型トランジスタとして機能させることができる。また、しきい値電圧を負とし
てデプレッション型トランジスタとして機能させることもできる。例えば、エンハンスメ
ント型トランジスタとデプレッション型トランジスタを組み合わせてインバータ回路(以
下、EDMOS回路という)を構成し、駆動回路に用いることができる。駆動回路は、論
理回路部と、スイッチ部またはバッファ部を少なくとも有する。論理回路部は上記EDM
OS回路を含む回路構成とする。
【0154】
また、以下に酸化物半導体を用いたボトムゲート型のトランジスタの動作原理について説
明する。
【0155】
図7は、酸化物半導体を用いたトランジスタの縦断面図を示す。ゲート電極(GE1)
上にゲート絶縁膜(GI)を介して酸化物半導体層(OS)が設けられ、その上にソース
電極(S)及びドレイン電極(D)が設けられている。また、ソース電極(S)及びドレ
イン電極(D)を覆う酸化物絶縁層上に酸化物半導体層(OS)のチャネル形成領域と重
なるバックゲート(GE2)を有している。
【0156】
図8は、
図7に示すA-A’断面におけるエネルギーバンド図(模式図)を示す。
図8
(A)はソースとドレインの間の電圧を等電位(VD=0V)とした場合を示し、
図8(
B)はソースに対しドレインに正の電位(VD>0)を加えた場合を示す。
【0157】
図9は、
図7におけるB-B’の断面におけるエネルギーバンド図(模式図)を示し、
ゲート電圧が0Vの場合の状態を示す。
図9(A)はゲート電極(GE1)に正の電圧(
VG>0)が印加された状態であり、ソース電極とドレイン電極の間にキャリア(電子)
が流れるオン状態を示している。また、
図9(B)は、ゲート電極(GE1)に負の電圧
(VG<0)が印加された状態であり、オフ状態(少数キャリアは流れない)である場合
を示す。
【0158】
酸化物半導体の厚さが50nm程度であり、酸化物半導体が高純度化されたことにより
ドナー濃度が1×1018/cm3以下であれば、空乏層は酸化物半導体の全体に渡って
広がる。すなわち完全空乏型の状態とみなすことができる。
【0159】
図10は、真空準位と金属の仕事関数(φ
M)、酸化物半導体の電子親和力(χ)の関
係を示す。
【0160】
常温において金属中の電子は縮退しており、フェルミ準位は伝導帯内に位置する。一方
、従来の酸化物半導体は一般にn型であり、その場合のフェルミ準位(EF)は、バンド
ギャップ中央に位置する真性フェルミ準位(Ei)から離れて、伝導帯寄りに位置してい
る。なお、酸化物半導体において水素の一部はドナーとなりn型化する一つの要因である
ことが知られている。
【0161】
これに対して本発明に係る酸化物半導体は、n型不純物である水素を酸化物半導体から
除去し、酸化物半導体の主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することに
より真性(i型)とし、又は真性型とせんとしたものである。すなわち、不純物を添加し
てi型化するのでなく、水素や水等の不純物を極力除去したことにより、高純度化された
i型(真性半導体)又はそれに近づけることを特徴としている。そうすることにより、フ
ェルミ準位(EF)は真性フェルミ準位(Ei)と同じレベルにまですることができる。
【0162】
酸化物半導体は3.05eV~3.15eVのバンドギャップ(Eg)を有している。
酸化物半導体のバンドギャップ(Eg)が3.15eVである場合、電子親和力(χ)は
4.3eVと言われている。ソース電極及びドレイン電極を構成するチタン(Ti)の仕
事関数は、酸化物半導体の電子親和力(χ)とほぼ等しい。この場合、金属-酸化物半導
体界面において、電子に対してショットキー型の障壁は形成されない。
【0163】
すなわち、金属の仕事関数(φ
M)と酸化物半導体の電子親和力(χ)が等しい場合、
両者が接触すると
図8(A)で示すようなエネルギーバンド図(模式図)が示される。
【0164】
図8(B)において黒丸(●)は電子を示し、ドレインに正の電位が印加されると、電
子はバリア(h)をこえて酸化物半導体に注入され、ドレインに向かって流れる。この場
合、バリア(h)の高さは、ゲート電圧とドレイン電圧に依存して変化するが、正のドレ
イン電圧が印加された場合には、電圧印加のない
図8(A)のバリアの高さすなわちバン
ドギャップ(Eg)の1/2よりもバリアの高さ(h)は小さい値となる。
【0165】
このとき電子は、
図9(A)で示すようにゲート絶縁膜と高純度化された酸化物半導体
との界面における、酸化物半導体側のエネルギー的に安定な最低部を移動する。
【0166】
また、
図9(B)において、ゲート電極(GE1)に負の電位(逆バイアス)が印加さ
れると、少数キャリアであるホールは実質的にゼロであるため、電流は限りなくゼロに近
い値となる。
【0167】
このように酸化物半導体の主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化するこ
とにより真性(i型)とし、又は実質的に真性型とすることで、ゲート絶縁膜との界面特
性が顕在化するので、バルクの特性と分離して考える必要がある。そのためゲート絶縁膜
は、酸化物半導体と良好な界面を形成できるものが必要となる。例えば、VHF帯~マイ
クロ波帯の電源周波数で生成される高密度プラズマを用いたCVD法で作製される絶縁膜
、又はスパッタ法で作製される絶縁膜を用いることが好ましい。
【0168】
酸化物半導体を高純度化しつつ、酸化物半導体とゲート絶縁膜との界面を良好なものと
することにより、トランジスタの特性としてチャネル幅Wが1×104μmでチャネル長
が3μmの素子であっても、オフ電流が10-13A以下であり、サブスレッショルドス
イング値(S値)が0.1V/dec.(ゲート絶縁膜厚100nm)という特性が十分
に期待される。
【0169】
このように、酸化物半導体の主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化する
ことにより、非単結晶を形成し、トランジスタの動作を良好なものとすることができる。
【0170】
(実施の形態2)
実施の形態1は、第1の酸化物部材と第2の酸化物部材に同一成分を含む酸化物半導体材
料を用いる場合を示したが、本実施の形態では異なる成分の酸化物半導体材料を用いる場
合を示す。
【0171】
実施の形態1と同様に、第1の加熱処理により、表面から結晶成長しても第1の酸化物結
晶部材521bの先端が下地部材520との界面にまで届くことなく、非晶質状態の領域
521aを残存させる(
図11(A)参照。)。なお、
図11(A)中、
図1(A)と同
じ部分には同じ符号を用いて説明する。
【0172】
次いで、
図11(B)は、第1の酸化物結晶部材521b上に第2の酸化物部材532を
成膜した直後の断面図である。第2の酸化物部材532は、第1の酸化物結晶部材521
bと異なる材料である。
【0173】
そして、第2の酸化物部材532を成膜した後に第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理
によって、
図11(C)に示すように結晶成長を行う。
図11(C)に示すように、第1
の酸化物部材521bの非単結晶層を種として第2の酸化物部材の表面に向かって上方に
結晶成長し、第2の酸化物結晶部材533bが形成される。第2の酸化物部材532とし
て第1の酸化物結晶部材521bと異なる成分の酸化物半導体材料を用いるため、
図11
(C)に示すように、第1の酸化物結晶部材521bと第2の酸化物結晶部材533bの
境界が形成される。また、第2の加熱処理によっても、ゲート絶縁層界面付近を除いて第
1の酸化物半導体層のほとんどを結晶領域とする。
【0174】
図11(C)の構造は、下地部材520上に接して非晶質状態のままの領域533c、そ
の上に第1の酸化物結晶部材533a、その上に第2の酸化物結晶部材533bの順に積
層された3層構造と言える。
【0175】
また、成長させたい第2の酸化物結晶部材と下地となる第1の酸化物結晶部材が同じ場合
はホモエピタキシー(ホモ結晶成長)と呼ぶ。また、成長させたい第2の酸化物結晶部材
と下地となる第1の酸化物結晶部材が異なる場合はヘテロエピタキシー(ヘテロ結晶成長
)と呼ぶ。本実施の形態では、それぞれの材料の選択により、どちらも可能である。
【0176】
また、第1の加熱処理の条件や第2の加熱処理の条件は実施の形態1に記した条件範囲と
する。なお、意図的に非晶質状態のままの領域533cが下地部材520の表面に接して
残るような条件を実施者が適宜選択すればよい。
【0177】
また、本実施の形態は、実施の形態1と自由に組み合わせることができる。
【0178】
(実施の形態3)
本実施の形態では、複数の結晶がc軸配向した結晶層を有する積層酸化物材料を含むトラ
ンジスタを作製し、該トランジスタを画素部、さらには駆動回路に用いて表示機能を有す
る半導体装置(表示装置ともいう)を作製する場合について説明する。また、トランジス
タを、駆動回路の一部または全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパ
ネルを形成することができる。
【0179】
表示装置は表示素子を含む。表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光
素子(発光表示素子ともいう)を用いることができる。発光素子は、電流または電圧によ
って輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electr
o Luminescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インクなど、電気
的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
【0180】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラ
を含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。さらに表示装置は、該表示装置
を作製する過程における、表示素子が完成する前の一形態に相当する素子基板に関し、該
素子基板は、電流を表示素子に供給するための手段を複数の各画素に備える。素子基板は
、具体的には、表示素子の画素電極のみが形成された状態であっても良いし、画素電極と
なる導電層を形成した後であって、エッチングして画素電極を形成する前の状態であって
も良いし、あらゆる形態があてはまる。
【0181】
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光
源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPC(Flexible pr
inted circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bon
ding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り
付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュ
ール、または表示素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回
路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0182】
本実施の形態では、本発明の一形態である半導体装置として液晶表示装置の例を示す。ま
ず、半導体装置の一形態に相当する液晶表示パネルの外観及び断面について、
図12を用
いて説明する。
図12は、第1の基板4001上に形成されたc軸配向した結晶層を有す
る積層酸化物材料を半導体層として含むトランジスタ4010、4011、及び液晶素子
4013を、第2の基板4006との間にシール材4005によって封止した、パネルの
上面図であり、
図12(B)は、
図12(A1)(A2)のM-Nにおける断面図に相当
する。
【0183】
第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004とを囲む
ようにして、シール材4005が設けられている。また画素部4002と、走査線駆動回
路4004の上に第2の基板4006が設けられている。よって画素部4002と、走査
線駆動回路4004とは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006
とによって、液晶層4008と共に封止されている。また第1の基板4001上のシール
材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶
半導体又は多結晶半導体で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。
【0184】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG方法、
ワイヤボンディング方法、或いはTAB方法などを用いることができる。
図12(A1)
は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、
図12(A2)は、
TAB方法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0185】
また、第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は
、トランジスタを複数有しており、
図12(B)では、画素部4002に含まれるトラン
ジスタ4010と、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示し
ている。トランジスタ4010、4011上には絶縁層4020、4021が設けられて
いる。
【0186】
トランジスタ4010、4011は、実施の形態1で示したc軸配向した結晶層を有する
積層酸化物材料を含むトランジスタを適用することができる。本実施の形態において、ト
ランジスタ4010、4011はnチャネル型トランジスタである。
【0187】
絶縁層4021上において、駆動回路用のトランジスタ4011の酸化物半導体層のチャ
ネル形成領域と重なる位置に導電層4040が設けられている。導電層4040を酸化物
半導体層のチャネル形成領域と重なる位置に設けることによって、BT試験前後における
トランジスタ4011のしきい値電圧の変化量を低減することができる。また、導電層4
040は、電位がトランジスタ4011のゲート電極層と同じでもよいし、異なっていて
も良く、第2のゲート電極層として機能させることもできる。また、導電層4040の電
位がGND、0V、或いはフローティング状態であってもよい。
【0188】
また、液晶素子4013が有する画素電極層4030は、トランジスタ4010と電気的
に接続されている。そして液晶素子4013の対向電極層4031は第2の基板4006
上に形成されている。画素電極層4030と対向電極層4031と液晶層4008とが重
なっている部分が、液晶素子4013に相当する。なお、画素電極層4030、対向電極
層4031はそれぞれ配向膜として機能する絶縁層4032、4033が設けられ、絶縁
層4032、4033を介して液晶層4008を挟持している。
【0189】
なお、第1の基板4001、第2の基板4006としては、ガラス、金属(代表的にはス
テンレス)、セラミックス、プラスチックを用いることができる。プラスチックとしては
、FRP(Fiberglass-Reinforced Plastics)板、PV
F(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フィ
ルムを用いることができる。また、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステル
フィルムで挟んだ構造のシートを用いることもできる。
【0190】
また、4035は絶縁層を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり
、画素電極層4030と対向電極層4031との間の距離(セルギャップ)を制御するた
めに設けられている。なお球状のスペーサを用いていても良い。また、対向電極層403
1は、トランジスタ4010と同一基板上に設けられる共通電位線と電気的に接続される
。また、共通接続部を用いて、一対の基板間に配置される導電性粒子を介して対向電極層
4031と共通電位線とを電気的に接続することができる。なお、導電性粒子はシール材
4005に含有させる。
【0191】
また、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つで
あり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直
前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善
するために5重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶層4008に
用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が1msec
以下と短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。
【0192】
また、ブルー相を示す液晶を用いると、配向膜へのラビング処理も不要となるため、ラビ
ング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示
装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させるこ
とが可能となる。特に、酸化物半導体層を用いるトランジスタは、静電気の影響によりト
ランジスタの電気的な特性が著しく変動して設計範囲を逸脱する恐れがある。よって酸化
物半導体層を用いるトランジスタを有する液晶表示装置にブルー相の液晶材料を用いるこ
とはより効果的である。
【0193】
なお、本実施の形態で示す液晶表示装置は透過型液晶表示装置の例であるが、液晶表示装
置は反射型液晶表示装置でも半透過型液晶表示装置でも適用できる。
【0194】
また、本実施の形態で示す液晶表示装置では、基板の外側(視認側)に偏光板を設け、内
側に着色層、表示素子に用いる電極層という順に設ける例を示すが、偏光板は基板の内側
に設けてもよい。また、偏光板と着色層の積層構造も本実施の形態に限定されず、偏光板
及び着色層の材料や作製工程条件によって適宜設定すればよい。また、必要に応じてブラ
ックマトリクスとして機能する遮光層を設けてもよい。
【0195】
また、本実施の形態では、トランジスタの表面凹凸を低減するため、及びトランジスタの
信頼性を向上させるため、トランジスタを保護層や平坦化絶縁層として機能する絶縁層(
絶縁層4020、絶縁層4021)で覆う構成となっている。なお、保護層は、大気中に
浮遊する有機物や金属物、水蒸気などの汚染不純物の侵入を防ぐためのものであり、緻密
な膜が好ましい。保護層は、スパッタ法を用いて、酸化珪素層、窒化珪素層、酸化窒化珪
素層、窒化酸化珪素層、酸化アルミニウム層、窒化アルミニウム層、酸化窒化アルミニウ
ム層、又は窒化酸化アルミニウム層の単層、又は積層で形成すればよい。本実施の形態で
は保護層をスパッタ法で形成する例を示すが、特に限定されず種々の方法で形成すればよ
い。
【0196】
ここでは、保護層として積層構造の絶縁層4020を形成する。ここでは、絶縁層402
0の一層目として、スパッタ法を用いて酸化珪素層を形成する。保護層として酸化珪素層
を用いると、ソース電極層及びドレイン電極層として用いるアルミニウム層のヒロック防
止に効果がある。
【0197】
また、保護層の二層目として絶縁層を形成する。ここでは、絶縁層4020の二層目とし
て、スパッタ法を用いて窒化珪素層を形成する。保護層として窒化珪素層を用いると、ナ
トリウム等のイオンが半導体領域中に侵入して、TFTの電気特性を変化させることを抑
制することができる。
【0198】
また、平坦化絶縁層として絶縁層4021を形成する。絶縁層4021としては、ポリイ
ミド、アクリル、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機
材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low-k材料)
、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いる
ことができる。なお、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層させることで、絶縁層
4021を形成してもよい。
【0199】
なおシロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi-O-S
i結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は置換基としては有機基(例えばアルキ
ル基やアリール基)やフルオロ基を用いても良い。また、有機基はフルオロ基を有してい
ても良い。
【0200】
絶縁層4021の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタ法、SOG法
、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン
印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイ
フコーター等を用いることができる。絶縁層4021を材料液を用いて形成する場合、ベ
ークする工程で同時に、半導体層のアニール(300℃~400℃)を行ってもよい。絶
縁層4021の焼成工程と半導体層のアニールを兼ねることで効率よく半導体装置を作製
することが可能となる。
【0201】
画素電極層4030、対向電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物
、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、
酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、
インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する
導電性材料を用いることができる。
【0202】
また、画素電極層4030、対向電極層4031として、導電性高分子(導電性ポリマー
ともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性組成物を用いて形
成した画素電極は、シート抵抗が10000Ω/□以下、波長550nmにおける透光率
が70%以上であることが好ましい。また、導電性組成物に含まれる導電性高分子の抵抗
率が0.1Ω・cm以下であることが好ましい。
【0203】
導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子が用いることができる。例え
ば、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリチオフェンま
たはその誘導体、若しくはこれらの2種以上の共重合体などがあげられる。
【0204】
また別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4
002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0205】
本実施の形態では、接続端子電極4015が、液晶素子4013が有する画素電極層40
30と同じ導電層から形成され、端子電極4016は、トランジスタ4010、4011
のソース電極層及びドレイン電極層と同じ導電層で形成されている。
【0206】
接続端子電極4015は、FPC4018が有する端子と、異方性導電層4019を介し
て電気的に接続されている。
【0207】
また
図12においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、第1の基板4001に実
装している例を示しているが、本実施の形態はこの構成に限定されない。走査線駆動回路
を別途形成して実装しても良いし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部の
みを別途形成して実装しても良い。
【0208】
また、必要であれば、カラーフィルタを各画素に対応して設ける。また、第1の基板40
01と第2の基板4006の外側には偏光板や拡散板を設ける。また、バックライトの光
源は冷陰極管やLEDにより構成されて液晶表示モジュールとなる。
【0209】
液晶表示モジュールには、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(I
n-Plane-Switching)モード、FFS(Fringe Field S
witching)モード、MVA(Multi-domain Vertical A
lignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alig
nment)モード、ASM(Axially Symmetric aligned
Micro-cell)モード、OCB(Optical Compensated B
irefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liqui
d Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liq
uid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0210】
以上の工程により、信頼性の高い液晶表示装置を作製することができる。
【0211】
また、実施の形態1に示すc軸配向した結晶層を有する積層酸化物材料の作製方法を用い
て液晶表示装置の駆動回路のトランジスタを作製することにより、駆動回路部のトランジ
スタのノーマリーオフを実現し、省電力化を図ることができる。
【0212】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能
である。
【0213】
(実施の形態4)
半導体装置の一形態に相当する発光表示パネル(発光パネルともいう)の外観及び断面に
ついて、
図13を用いて説明する。
図13は、第1の基板上に形成されたc軸配向した結
晶層を有する積層酸化物材料を含むトランジスタ及び発光素子を、第2の基板との間にシ
ール材によって封止した、パネルの平面図であり、
図13(B)は、
図13(A)のH-
Iにおける断面図に相当する。
【0214】
第1の基板4501上に設けられた画素部4502、信号線駆動回路4503a、450
3b、及び走査線駆動回路4504a、4504bを囲むようにして、シール材4505
が設けられている。また画素部4502、信号線駆動回路4503a、4503b、及び
走査線駆動回路4504a、4504bの上に第2の基板4506が設けられている。よ
って画素部4502、信号線駆動回路4503a、4503b、及び走査線駆動回路45
04a、4504bは、第1の基板4501とシール材4505と第2の基板4506と
によって、充填材4507と共に密封されている。このように外気に曝されないように気
密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィル
ム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0215】
また第1の基板4501上に設けられた画素部4502、信号線駆動回路4503a、4
503b、及び走査線駆動回路4504a、4504bは、トランジスタを複数有してお
り、
図13(B)では、画素部4502に含まれるトランジスタ4510と、信号線駆動
回路4503aに含まれるトランジスタ4509とを例示している。
【0216】
トランジスタ4509、4510は、実施の形態1で示したc軸配向した結晶層を有する
積層酸化物材料を含む信頼性の高いトランジスタを適用することができる。本実施の形態
において、トランジスタ4509、4510はnチャネル型トランジスタである。
【0217】
絶縁層4544上において駆動回路用のトランジスタ4509の酸化物半導体層のチャネ
ル形成領域と重なる位置に導電層4540が設けられている。導電層4540を酸化物半
導体層のチャネル形成領域と重なる位置に設けることによって、BT試験前後におけるト
ランジスタ4509のしきい値電圧の変化量を低減することができる。また、導電層45
40は、電位がトランジスタ4509のゲート電極層と同じでもよいし、異なっていても
良く、第2のゲート電極層として機能させることもできる。また、導電層4540の電位
がGND、0V、或いはフローティング状態であってもよい。
【0218】
トランジスタ4509は、保護絶縁層としてチャネル形成領域を含む半導体層に接して絶
縁層4541が形成されている。絶縁層4541は実施の形態1で示した酸化物絶縁層4
07と同様な材料及び方法で形成すればよい。また、トランジスタの表面凹凸を低減する
ため平坦化絶縁層として機能する絶縁層4544で覆う構成となっている。ここでは、絶
縁層4541として、スパッタ法により酸化珪素層を形成する。
【0219】
絶縁層4544は、実施の形態3で示した絶縁層4021と同様な材料及び方法で形成す
ればよい。ここでは、絶縁層4544としてアクリルを用いる。
【0220】
また4511は発光素子に相当し、発光素子4511が有する画素電極である第1の電極
層4517は、トランジスタ4510のソース電極層またはドレイン電極層と電気的に接
続されている。なお発光素子4511の構成は、第1の電極層4517、電界発光層45
12、第2の電極層4513の積層構造であるが、示した構成に限定されない。発光素子
4511から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子4511の構成は適宜変えるこ
とができる。
【0221】
隔壁4520は、有機樹脂層、無機絶縁層または有機ポリシロキサンを用いて形成する。
特に感光性の材料を用い、第1の電極層4517上に開口部を形成し、その開口部の側壁
が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0222】
電界発光層4512は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成
されていてもどちらでも良い。
【0223】
発光素子4511に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層
4513及び隔壁4520上に保護層を形成してもよい。保護層としては、窒化珪素層、
窒化酸化珪素層、DLC層等を形成することができる。
【0224】
また、信号線駆動回路4503a、4503b、走査線駆動回路4504a、4504b
、または画素部4502に与えられる各種信号及び電位は、FPC4518a、4518
bから供給されている。
【0225】
接続端子電極4515が、発光素子4511が有する第1の電極層4517と同じ導電層
から形成され、端子電極4516は、トランジスタ4509、4510が有するソース電
極層及びドレイン電極層と同じ導電層から形成されている。
【0226】
接続端子電極4515は、FPC4518aが有する端子と、異方性導電層4519を介
して電気的に接続されている。
【0227】
発光素子4511からの光の取り出し方向に位置する基板は、透光性でなければならない
。その場合には、ガラス板、プラスチック板、ポリエステルフィルムまたはアクリルフィ
ルムのような透光性を有する材料を用いる。
【0228】
また、充填材4507としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹
脂または熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル、
ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEV
A(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。例えば充填材として窒素を用い
ればよい。
【0229】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、
位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよ
い。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により
反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0230】
信号線駆動回路4503a、4503b、及び走査線駆動回路4504a、4504bは
、別途用意された基板上に単結晶半導体又は多結晶半導体によって形成された駆動回路で
実装されていてもよい。また、信号線駆動回路のみ、或いは一部、又は走査線駆動回路の
み、或いは一部のみを別途形成して実装しても良く、
図13の構成に限定されない。
【0231】
以上の工程により、信頼性の高い発光表示装置(表示パネル)を作製することができる。
【0232】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能
である。
【0233】
(実施の形態5)
半導体装置の一形態として電子ペーパーの例を示す。
【0234】
実施の形態1に示す方法により得られるc軸配向した結晶層を有する積層酸化物材料を含
むトランジスタは、スイッチング素子と電気的に接続する素子を利用して電子インクを駆
動させる電子ペーパーに用いてもよい。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動デ
ィスプレイ)とも呼ばれており、紙と同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、
薄くて軽い形状とすることが可能という利点を有している。
【0235】
電気泳動ディスプレイは、様々な形態が考えられ得るが、プラスの電荷を有する第1の粒
子と、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒または溶質に
複数分散されたものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、マイクロ
カプセル中の粒子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみを表示す
るものである。なお、第1の粒子または第2の粒子は染料を含み、電界がない場合におい
て移動しないものである。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色は異なるもの(無色を
含む)とする。
【0236】
このように、電気泳動ディスプレイは、誘電定数の高い物質が高い電界領域に移動する、
いわゆる誘電泳動的効果を利用したディスプレイである。
【0237】
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものであり、こ
の電子インクはガラス、プラスチック、布、紙などの表面に印刷することができる。また
、カラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
【0238】
また、アクティブマトリクス基板上に適宜、二つの電極の間に挟まれるように上記マイク
ロカプセルを複数配置すればアクティブマトリクス型の表示装置が完成し、マイクロカプ
セルに電界を印加すれば表示を行うことができる。例えば、実施の形態1のc軸配向した
結晶層を有する積層酸化物材料を含むトランジスタによって得られるアクティブマトリク
ス基板を用いることができる。
【0239】
なお、マイクロカプセル中の第1の粒子および第2の粒子は、導電体材料、絶縁体材料、
半導体材料、磁性材料、液晶材料、強誘電性材料、エレクトロルミネセント材料、エレク
トロクロミック材料、磁気泳動材料から選ばれた一種の材料、またはこれらの複合材料を
用いればよい。
【0240】
図14は、半導体装置の例としてアクティブマトリクス型の電子ペーパーを示す。半導体
装置に用いられるトランジスタ581としては、実施の形態1で示すトランジスタと同様
に作製でき、c軸配向した結晶層を有する積層酸化物材料を含む信頼性の高いトランジス
タである。
【0241】
図14の電子ペーパーは、ツイストボール表示方式を用いた表示装置の例である。ツイス
トボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を表示素子に用いる電極層であ
る第1の電極層及び第2の電極層の間に配置し、第1の電極層及び第2の電極層に電位差
を生じさせての球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0242】
トランジスタ581はボトムゲート構造のトランジスタであり、酸化物半導体層と接する
絶縁層583に覆われている。トランジスタ581のソース電極層又はドレイン電極層は
、第1の電極層587と、絶縁層583、584、585に形成する開口で接しており電
気的に接続している。第1の電極層587と第2の電極層588との間には黒色領域59
0a及び白色領域590bを有し、周りに液体で満たされているキャビティ594を含む
球形粒子589が一対の基板580、596の間に設けられており、球形粒子589の周
囲は樹脂等の充填材595で充填されている(
図14参照。)。
【0243】
また、第1の電極層587が画素電極に相当し、第2の電極層588が共通電極に相当す
る。第2の電極層588は、トランジスタ581と同一基板上に設けられる共通電位線と
電気的に接続される。共通接続部を用いて、一対の基板間に配置される導電性粒子を介し
て第2の電極層588と共通電位線とを電気的に接続することができる。
【0244】
また、ツイストボールを用いた素子の代わりに、電気泳動素子を用いることも可能である
。透明な液体と、正に帯電した白い微粒子と負に帯電した黒い微粒子とを封入した直径1
0μm~200μm程度のマイクロカプセルを用いる。第1の電極層と第2の電極層との
間に設けられるマイクロカプセルは、第1の電極層と第2の電極層によって、電場が与え
られると、白い微粒子と、黒い微粒子が逆の方向に移動し、白または黒を表示することが
できる。この原理を応用した表示素子が電気泳動表示素子であり、一般的に電子ペーパー
とよばれている。電気泳動表示素子は、液晶表示素子に比べて反射率が高いため、補助ラ
イトは不要であり、また消費電力が小さく、薄暗い場所でも表示部を認識することが可能
である。また、表示部に電源が供給されない場合であっても、一度表示した像を保持する
ことが可能であるため、電波発信源から表示機能付き半導体装置(単に表示装置、又は表
示装置を具備する半導体装置ともいう)を遠ざけた場合であっても、表示された像を保存
しておくことが可能となる。
【0245】
以上の工程により、信頼性の高い電子ペーパーを作製することができる。
【0246】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能
である。
【0247】
(実施の形態6)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用すること
ができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン
受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメ
ラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型
ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられ
る。
【0248】
本実施の形態では、実施の形態3乃至5のいずれか一で得られる表示装置を搭載した電子
機器の例について
図15を用いて説明する。
【0249】
図15(A)は、少なくとも表示装置を一部品として実装して作製したノート型のパー
ソナルコンピュータであり、本体3001、筐体3002、表示部3003、キーボード
3004などによって構成されている。なお、実施の形態3に示す液晶表示装置をノート
型のパーソナルコンピュータは有している。
【0250】
図15(B)は、少なくとも表示装置を一部品として実装して作製した携帯情報端末(
PDA)であり、本体3021には表示部3023と、外部インターフェイス3025と
、操作ボタン3024等が設けられている。また操作用の付属品としてスタイラス302
2がある。なお、実施の形態4に示す発光表示装置を携帯情報端末は有している。
【0251】
図15(C)は実施の形態5に示す電子ペーパーを一部品として実装して作製した電子
書籍である。
図15(C)は、電子書籍の一例を示している。例えば、電子書籍2700
は、筐体2701および筐体2703の2つの筐体で構成されている。筐体2701およ
び筐体2703は、軸部2711により一体とされており、該軸部2711を軸として開
閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが
可能となる。
【0252】
筐体2701には表示部2705が組み込まれ、筐体2703には表示部2707が組み
込まれている。表示部2705および表示部2707は、続き画面を表示する構成として
もよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とするこ
とで、例えば右側の表示部(
図15(C)では表示部2705)に文章を表示し、左側の
表示部(
図15(C)では表示部2707)に画像を表示することができる。
【0253】
また、
図15(C)では、筐体2701に操作部などを備えた例を示している。例えば、
筐体2701において、電源2721、操作キー2723、スピーカ2725などを備え
ている。操作キー2723により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面
にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏
面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子、またはACアダプタおよびU
SBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える
構成としてもよい。さらに、電子書籍2700は、電子辞書としての機能を持たせた構成
としてもよい。
【0254】
また、電子書籍2700は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、
電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすること
も可能である。
【0255】
図15(D)は、少なくとも表示装置を一部品として実装して作製した携帯電話であり
、筐体2800及び筐体2801の二つの筐体で構成されている。筐体2801には、表
示パネル2802、スピーカー2803、マイクロフォン2804、ポインティングデバ
イス2806、カメラ用レンズ2807、外部接続端子2808などを備えている。また
、筐体2800には、携帯型情報端末の充電を行う太陽電池セル2810、外部メモリス
ロット2811などを備えている。また、アンテナは筐体2801内部に内蔵されている
。
【0256】
また、表示パネル2802はタッチパネルを備えており、
図15(D)には映像表示され
ている複数の操作キー2805を点線で示している。なお、太陽電池セル2810で出力
される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0257】
表示パネル2802は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネ
ル2802と同一面上にカメラ用レンズ2807を備えているため、テレビ電話が可能で
ある。スピーカー2803及びマイクロフォン2804は音声通話に限らず、テレビ電話
、録音、再生などが可能である。さらに、筐体2800と筐体2801は、スライドし、
図15(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に
適した小型化が可能である。
【0258】
外部接続端子2808はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能
であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部
メモリスロット2811に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応でき
る。
【0259】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであって
もよい。
【0260】
図15(E)は少なくとも表示装置を一部品として実装して作製したデジタルカメラで
あり、本体3051、表示部(A)3057、接眼部3053、操作スイッチ3054、
表示部(B)3055、バッテリー3056などによって構成されている。
【0261】
本実施の形態は、実施の形態1乃至5のいずれか一と自由に組み合わせることができる。
【実施例0262】
本実施例では、ターゲット組成の異なる酸化物部材を積層する実験を行い、断面観察を行
った。
【0263】
サンプルは、ガラス基板上に30nmの膜厚の酸化窒化珪素膜(下地膜)をPCVD法に
より形成した後、In-Ga-Zn-O膜を5nmの設定で形成し、第1の加熱処理を行
った後、In-Ga-Zn-O膜を30nmの設定で形成し、第2の加熱処理を行った。
【0264】
サンプル1では、5nmのIn-Ga-Zn-O膜の成膜条件は、In2O3:Ga2O
3:ZnO=1:1:2[mol数比]の金属酸化物ターゲットを用い、圧力0.6Pa
、直流(DC)電源5kW、酸素とアルゴンの混合雰囲気下(酸素流量50sccm、ア
ルゴン流量50sccm)、基板温度200℃、成膜速度13.4nm/minで成膜し
た。また、第1の加熱処理は、窒素雰囲気で650℃、6分とした。また、第1の加熱処
理後に成膜した30nmのIn-Ga-Zn-O膜を成膜する条件は、In2O3:Ga
2O3:ZnO=1:1:1[mol比]の金属酸化物ターゲットを用い、圧力0.6P
a、直流(DC)電源0.5kW、酸素雰囲気下(酸素流量20sccm)、基板温度を
室温とし、成膜速度13.4nm/minで成膜した。また、第2の加熱処理は、窒素雰
囲気で650℃、6分とした。
【0265】
こうして得られたサンプル1の断面観察を行ったところ、下地膜表面から3.5nm~5
.2nmまで結晶化していることが確認でき、さらに下側のIn-Ga-Zn-O膜は表
面から1.2~1.5nmまでが結晶化していることが確認できた。また、下地膜表面か
ら6nm~34nmの領域は非晶質状態であった。
【0266】
なお、In-Ga-Zn-O膜と下地膜の界面付近は、結晶化しておらず、非晶質状態で
あることが確認できた。
【0267】
また、比較例として、第2の加熱処理を行わなかったサンプル2の断面観察を行ったとこ
ろ、下側のIn-Ga-Zn-O膜の表面から0.5~1.5nmまで結晶化しているこ
とが確認できた。サンプル2では、5nmのIn-Ga-Zn-O膜をサンプル1の5n
mのIn-Ga-Zn-O膜と同じ成膜条件で成膜した。30nmのIn-Ga-Zn-
O膜の成膜条件を、In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:2[mol数比]の金属
酸化物ターゲットを用い、圧力0.6Pa、直流(DC)電源5kW、酸素とアルゴンの
混合雰囲気下(酸素流量50sccm、アルゴン流量50sccm)、基板温度200℃
、成膜速度13.4nm/minで成膜した。
【0268】
また、サンプル2と同じサンプル作製条件とし、さらに窒素雰囲気で650℃、6分の第
2の加熱処理を行ったサンプル3の断面観察を行ったところ、下地膜近傍から、上側のI
n-Ga-Zn-O膜の表面まで配向を持って結晶化が進んでいることが確認できた。結
晶化している膜厚は28nm~30nmであった。ただし、このサンプル3においてもI
n-Ga-Zn-O膜と下地膜の界面付近は、結晶化しておらず、非晶質状態であること
が確認できた。
【0269】
また、サンプル4として、ガラス基板上に30nmの膜厚の酸化窒化珪素膜(下地膜)を
PCVD法により形成した後、In-Ga-Zn-O膜を3nmの設定で形成し、第1の
加熱処理を行った後、In-Ga-Zn-O膜を30nmの設定で形成し、第2の加熱処
理を行った。3nmと30nmのIn-Ga-Zn-O膜の成膜条件は、どちらも、In
2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:2[mol数比]の金属酸化物ターゲットを用い
、圧力0.6Pa、直流(DC)電源5kW、酸素とアルゴンの混合雰囲気下(酸素流量
50sccm、アルゴン流量50sccm)、基板温度200℃、成膜速度13.4nm
/minで成膜した。
【0270】
また、サンプル4では、第1の加熱処理も第2の加熱処理も窒素雰囲気で670℃、6分
とした。
【0271】
こうして得られたサンプル4の断面観察を行ったところ、In-Ga-Zn-O膜と下地
膜の界面も結晶化されたことが確認でき、さらに上側のIn-Ga-Zn-O膜中では、
下地膜側の配向に沿って結晶化が部分的に起こっていることが確認できる。また、下側の
In-Ga-Zn-O膜表面からも結晶化しており、配向が確認できる。
【0272】
このように、酸化物半導体膜の組成、酸化物半導体膜の膜厚、酸化物半導体膜の成膜条件
、酸化物半導体膜成膜後の加熱処理条件によっても結晶化される領域が異なるため、実施
者はデバイスの作製条件を適宜調節することが好ましい。