(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181369
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】建設機械の障害物検出装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/24 20060101AFI20231214BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F9/20 N
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023185823
(22)【出願日】2023-10-30
(62)【分割の表示】P 2022066074の分割
【原出願日】2019-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木下 明
(72)【発明者】
【氏名】五頭 直紀
(57)【要約】
【課題】障害物対応処理を旋回体の旋回動作の動作速度に応じて行うことを可能とする。
【解決手段】建設機械1の障害物対応処理部31は、旋回動作中に旋回体3の動作速度の高低を判定し、動作速度が低いと判定される状況では、検出対象領域に障害物候補が検出されることが所定の複数回連続することを必要条件として、所定の障害物対応処理を実行し、動作速度が高いと判定される状況では、検出対象領域に前記障害物候補が検出されることを必要条件として、該検出の回数が前記所定の複数回に達する前に、所定の障害対応処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の旋回体の周囲に設定された検出対象領域に存在する障害物候補を検出する処理を逐次実行する機能と、
前記旋回体が旋回動作していないと判定される状況では、前記検出対象領域に前記障害物候補が検出されることが所定の複数回連続することを必要条件として、所定の障害物対応処理を実行する機能と、
前記旋回体が旋回動作していると判定される状況では、前記所定の複数回よりも少ない回数だけ前記検出対象領域に前記障害物候補が検出されることを必要条件として、前記所定の障害物対応処理を実行する機能と、
を有するように構成されている建設機械の障害物検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の障害物検出装置において、
前記旋回体が旋回動作していないと判定される状況では、前記建設機械が走行状態であることをさらなる必要条件として、前記所定の障害物対応処理を実行する機能を有する構成されている
建設機械の障害物検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建設機械の障害物検出装置において、
前記所定の障害物対応処理を実行する機能は、
前記旋回体が旋回動作し、かつ、前記旋回体の旋回速度が高いと判定される状況では、1回だけ前記検出対象領域に前記障害物候補が検出されることを必要条件として、前記所定の障害物対応処理を実行する機能を含んでいる
建設機械の障害物検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械の周囲に存在する障害物を検出可能な障害物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に見られるように、建設機械としての油圧ショベルの旋回体の周囲の所定の監視領域内に存在する障害物を検出し、該障害物の検出に応じて、油圧ショベルの動作(走行体の走行動作、あるいは、旋回体の旋回動作)を適宜制限したり、警報出力を発生させるようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、障害物対応処理を旋回体の旋回動作の有無に応じて行うことを可能とする障害物検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の建設機械の障害物検出装置は、
建設機械の旋回体の周囲に設定された検出対象領域に存在する障害物候補を検出する処理を逐次実行する機能と、
前記旋回体が旋回動作していないと判定される状況では、前記検出対象領域に前記障害物候補が検出されることが所定の複数回連続することを必要条件として、所定の障害物対応処理を実行する機能と、
前記旋回体が旋回動作していると判定される状況では、前記所定の複数回よりも少ない回数だけ前記検出対象領域に前記障害物候補が検出されることを必要条件として、前記所定の障害物対応処理を実行する機能と、
を有するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1Aは本発明に関連する参考の実施形態における建設機械(油圧ショベル)を上方から見た平面図、
図1Bは該建設機械(油圧ショベル)を側方から見た側面図。
【
図2】実施形態の建設機械に搭載した障害物検出装置の構成要素を示すブロック図。
【
図3】
図2に示す障害物対応処理部の処理(本発明に関連する参考例の処理)を示すフローチャート。
【
図5】
図5A及び
図5Bは、障害物候補の画像と高受光量画像との関係を時系列的に例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の一実施形態を
図1A~
図5Bを参照して以下に説明する。
図1A及び
図1Bを参照して、本実施形態における建設機械1は、例えば油圧ショベルである。
【0008】
この建設機械1は、クローラ式の走行体2と、走行体2上に搭載された旋回体3と、旋回体3に取り付けられた作業装置4とを備える公知の構造のものである。なお、
図1A及び
図1Bでは、建設機械1の基本構造を概略的に示している。
【0009】
走行体2は、左右一対のクローラ2L,2Rを有し、それぞれのクローラ2L,2Rを各別の走行用油圧モータ(図示省略)により駆動することが可能である。なお、走行体2は、クローラ式のものに限らず、車輪型のものであってもよい。
【0010】
旋回体3は、走行体2に対してヨー方向(上下方向の軸心周り方向)に旋回し得るように、旋回装置7を介して走行体2に取り付けられている。該旋回装置7は、図示を省略する旋回用油圧モータや旋回ギヤを有する公知の構造の装置である。旋回体3の前部には、運転者が搭乗する運転室5が備えられ、後部には、エンジン、油圧機器等が収容された機械室6が備えられている。
【0011】
作業装置4は、旋回体3の前部から延設されたブーム11と、ブーム11の先端部から延設されたアーム12と、アーム12の先端部に取付けられたバケット等のアタッチメント13とを備える。ブーム11、アーム12及びアタッチメント13のそれぞれは、図示を省略する油圧シリンダにより、旋回体3、ブーム11及びアーム12のそれぞれに対してピッチ方向(旋回体3の左右方向の軸周り方向)に揺動可能である。
【0012】
図1A及び
図1Bに示すように、本実施形態の建設機械1には、旋回体3の周囲に存在する障害物を検出するための複数のセンサ部20と、種々の制御処理及び演算処理を実行する機能を有するコントローラ30とが障害物検出装置の構成要素として搭載されている。
【0013】
各センサ部20は、その正面側の所定の監視領域に赤外線等のレーザ光を測定光として照射して、該測定光を反射し得る任意の物体までの距離測定(測距)を行い得る測定器であり、
図1A及び
図1Bに例示する如く、旋回体3の周囲に測定光を照射し得るように、該旋回体3の周縁部の複数個所のそれぞれに取り付けられている。
【0014】
各センサ部20は、
図2に示すように、その正面側の監視領域の複数の方位に向かって測定光を照射する投光部21と、各方位に照射された測定光の反射光(該方位に存在する物体からの反射光)を受光する受光部22と、投光部21の発光制御を行うと共に、受光部22から出力される受光信号に基づく計測処理を実行する機能を有する計測処理部23とを含む。
【0015】
投光部21は、例えば測定光を発信・増幅させる発信機により構成され、受光部22は、例えばPSD(光位置センサ)、受光素子等により構成される。また、計測処理部23は、例えば、マイクロコンピュータもしくはプロセッサ、メモリ、インターフェース回路等を含む1つ以上の電子回路ユニットにより構成される。
【0016】
そして、計測処理部23は、実装されたハードウェア構成及びプログラム(ソフトウェア構成)の両方又は一方により実現される機能として、測定光の各照射方向に存在する該測定光の反射物体までの距離を各照射方向毎に計測する処理を実行する測距部23aとしての機能と、各照射方向への測定光の照射に応じて受光部22で受光される該測定光の反射光の受光量(受光強度)を検出する受光量検出部23bとしての機能とを含む。
【0017】
この場合、測距部23aは、各照射方向毎の距離計測値(センサ部20から各照射方向に存在する反射物体までの距離の計測値)を、所謂TOF方式(TOF:Time Of Flight)で求める。具体的には、測距部23aは、各照射方向に投光部21から照射する測定光と、該測定光の照射に応じて受光部22で受光される該測定光の反射光との位相差、あるいは、測定光の照射タイミングと、反射光の受光タイミングとの時間差から、各照射方向での距離計測値を求める。
【0018】
ここで、投光部21からの測定光の各照射方向は、該測定光の全体的な(平均的な)照射方向としてのセンサ部20の正面方向で見た監視領域の画像(該正面方向に直交する平面に投影して見た該監視領域の二次元画像。以降、監視領域投影画像という)において、該照射方向に対応する位置の画素に対応付けることができる。
【0019】
例えば、センサ部20の上下方向での方位が互いに相違する複数の照射方向のそれぞれは、監視領域投影画像で上下方向の位置が互いに相違する画素に対応付けることができる。また、センサ部20の幅方向での方位が互いに相違する複数の照射方向のそれぞれは、監視領域投影画像で左右方向の位置が互いに相違する画素に対応付けることができる。
【0020】
そこで、測距部23aは、各照射方向での距離計測値を、監視領域投影画像において、各照射方向に対応する位置の画素に対応付けた測距データ(各照射方向での距離計測値と、該照射方向に対応する画素位置との組により構成されるデータ)を生成する。該測距データは、換言すれば、監視領域の距離画像(各画素の画素値が距離計測値である画像)を表すものである。
【0021】
また、受光量検出部23bは、各照射方向への測定光の照射時に、受光部22での反射光の受光に応じて該受光部22から出力される受光信号の大きさ(強度)に基づいて、各照射方向に対応する反射光の受光量(受光強度)を検出する。そして、受光量検出部23bは、各照射方向での受光量の検出値を、前記監視領域投影画像において、各照射方向に対応する位置の画素に対応付けた受光量検出データ(各照射方向での受光量の検出値と、該照射方向に対応する画素位置との組により構成されるデータ)を生成する。該受光量検出データは、換言すれば、各画素の画素値が受光量の検出値である画像を表すものである。
【0022】
コントローラ30は、マイクロコンピュータ、メモリ、インターフェース回路等を含む1つ以上の電子回路ユニットにより構成され、建設機械1の任意の適所、例えば旋回体3に搭載されている。なお、
図1A及び
図1Bでは、コントローラ30は、機械室6に搭載されているが、例えば運転室5に搭載されていてもよい。
【0023】
このコントローラ30は、各センサ部20の計測処理部23と有線又は無線による通信を行うことが可能であり、この通信により、各センサ部20から前記測距データ及び受光量検出データを適宜、取得可能である。また、コントローラ30には、図示しない種々のセンサから、建設機械1の走行体2、旋回体3及び作業装置4の動作状態を示すセンシング信号、あるいは、建設機械1の図示しない操縦装置(操作レバー、操作ペダル等)の操作状態を示すセンシング信号が入力される。
【0024】
そして、コントローラ30は、実装されたハードウェア構成及びプログラム(ソフトウェア構成)の両方又は一方により実現される機能として、旋回体3の周囲に存在して、該旋回体3と接触する可能性がある物体を障害物として検出すると共に、該障害物の検出に応じた所定の障害物対応処理を実行する障害物対応処理部31としての機能を有する。
【0025】
この場合、障害物対応処理部31は、後述する如く、各センサ部20から取得する測距データ及び受光量検出データに基づいて障害物を検出する。また、障害物対応処理部31は、所定の障害物対応処理として、例えば、旋回体3の旋回動作及び走行体2の走行動作の両方もしくは一方を強制的に停止もしくは減速させる制御処理を実行する。あるいは、該制御処理の代わりに、もしくは該制御処理に加えて、建設機械1の運転者、あるいは、建設機械1の周囲に存在する作業者に対して警報報知を行う。該警報報知の態様としては、例えば、表示器による表示、投光器による投光等の視覚的な報知、あるいは、音声、警報音等の聴覚的な報知を採用し得る。
【0026】
補足すると、建設機械1が遠隔操縦を行い得るものである場合等では、コントローラ30の全体もしくはその一部の機能部は、建設機械1の外部に設置されていてもよい。また、各センサ部20の計測処理部23の全体又は一部の処理は、コントローラ30で実行するようにしてもよい。また、コントローラ30は、建設機械1の通常時の運転制御を行う機能等、障害物対応処理部31以外の機能を含んでいてもよい。さらに、障害物対応処理部31の全体もしくはその一部の機能は、一つもしくは複数のセンサ部20に含まれていてもよい。そして、この場合、障害物対応処理部31としての機能を有するセンサ部20は、他のセンサ部20の処理情報を収集しつつ、障害物対応処理を実行するようにしてもよい。
【0027】
次に、障害物対応処理部31による障害物の検出処理を具体的に説明する。建設機械1の運転中に、コントローラ30の障害物対応処理部31は、
図3のフローチャートに示す処理を所定の制御処理周期で実行する。なお、
図3のフローチャートに示す処理は、本発明に関連する参考例の処理である。
【0028】
STEP1において、障害物対応処理部31は、各センサ部20の計測処理部23から測距データ及び受光量データを取得する。さらに、STEP2において、障害物対応処理部31は、各センサ部20から取得した測距データに基づいて、障害物の候補となる物体である障害物候補を検出する。
【0029】
この場合、本実施形態では、例えば、
図1A及び
図1Bに例示する如く、建設機械1の旋回体3の周囲(各センサ部20の監視領域に含まれる周囲)に、障害物の検出対象領域ARが設定(定義)されている。該検出対象領域ARは、その内部に物体が存在する場合、走行体2の走行動作又は旋回体3の旋回動作に応じて旋回体3との接触が生じる可能性がある領域である。
【0030】
図示例では、検出対象領域ARは、例えば、旋回体3の周囲のうち、建設機械1の運転者が視認できないか、もしくは視認し難い領域であると共に、旋回体3の外周面からの距離又は旋回体3の基準点からの距離が所定距離以下となる領域として設定されている。
【0031】
なお、検出対象領域ARの外周の境界を規定する上記所定距離は、旋回体3の周方向(旋回体3の旋回軸周りの方向)で変化するように設定されていてもよい。また、検出対象領域ARの形状もしくはサイズは、旋回体3の旋回角度もしくは旋回速度もしくは旋回方向、あるいは走行体2の走行速度もしく走行方向等に応じて変化するように設定されてもよい。
【0032】
STEP2においては、障害物対応処理部31は、各センサ部20から取得した測距データにより表される距離画像(二次元画像)から、所定値以下の互いに近似する距離計測値を有し、且つ、所定値以上のサイズ(面積又は縦横の長さ等のサイズ)を有する連続した画素群を、旋回体3に近接する物体(以降、近接物体という)の画像部分として抽出する。
【0033】
さらに、障害物対応処理部31は、抽出した画像部分の各画素の位置(距離画像上での位置)と、該画像部分の各画素の距離計測値とから、実空間上での当該近接物体の存在領域の位置(旋回体3に対する空間的な相対位置)を特定し、当該近接物体の存在領域の位置が、検出対象領域ARに属するか否かを判定する。そして、障害物対応処理部31は、当該近接物体の存在領域の位置が検出対象領域ARに属する場合に、当該近接物体を障害物候補として検出する。
【0034】
ここで、検出対象領域ARに複数の物体が存在する場合等では、前記距離画像から、複数の近接物体の画像部分が抽出される場合もある。この場合には、障害物対応処理部31は、当該複数の近接物体のうち、実空間上での存在位置が検出対象領域ARに属し、且つ、旋回体3に最も近い近接物体を障害物候補として検出する。
【0035】
なお、検出対象領域ARは、旋回体3の各センサ部20の搭載部位からの距離が所定値以下となる領域に一致していてもよい。その場合には、当該近接物体の存在領域の位置が、検出対象領域ARに属するか否かの判定を省略し得る。
【0036】
次いで、STEP3において、障害物対応処理部31は、障害物候補が検出されたか否かを判断する。この場合、STEP2において、前記近接物体の画像部分が抽出されないか、もしくは、抽出された各近接物体の実空間上での存在位置が検出対象領域ARに属さない場合には、STEP3の判断結果は否定的になる。この場合には、障害物対応処理部31は、現在の制御処理周期での処理を終了して、次の制御処理周期でSTEP1からの処理を改めて実行する。
【0037】
STEP2で障害物候補(旋回体3に最も近い近接物体)が検出された場合には、STEP3の判断結果が肯定的になる。この場合には、障害物対応処理部31は、次に、STEP4において、旋回体3の旋回動作状態であるか否かを判断する。この場合、障害物対応処理部31は、例えば、旋回体3の旋回動作用の操作器(図示しない)の操作状態を示す検出信号、あるいは、旋回用油圧モータ(図示しない)の出力軸もしくはこれに連動して回転する回転部材の回転速度を示す検出信号に基づいて、旋回体3の旋回動作状態であるか否かを判断する。
【0038】
STEP4で旋回体3の旋回動作が停止している状態では、STEP4の判断結果が否定的になる。この場合には、障害物対応処理部31は、さらに、STEP6において、走行体2の走行動作状態であるか否かを判断する。この場合、障害物対応処理部31は、例えば、走行体2の走行動作用の操作器(図示しない)の操作状態を示す検出信号、あるいは、左右の走行用油圧モータ(図示しない)のそれぞれの出力軸もしくはこれに連動して回転する回転部材の回転速度を示す検出信号に基づいて、走行体2の走行動作状態であるか否かを判断する。
【0039】
STEP6で走行体2の走行動作が停止している状態では、STEP6の判断結果が否定的になる。この場合には、旋回体3の旋回動作と走行体2の走行動作との両方が停止している状況であるので、障害物対応処理部31は、障害物候補が障害物であるか否かを特定することなく、現在の制御処理周期での処理を終了して、次の制御処理周期でSTEP1からの処理を改めて実行する。
【0040】
STEP6の判断結果が肯定的となる状況は、旋回体3の旋回動作が行われることなく、走行体2の走行動作が行われている状況である。この場合には、障害物対応処理部31は、次に、STEP7において、障害物候補(STEP2で検出された障害物候補)の画像の位置が、前記受光量データに基づいて特定される高受光量画像の位置と重なりを有するか否かを判断する。
【0041】
上記高受光量画像は、STEP1で取得した受光量データにより示される画像全体のうち、受光量の検出値が所定の閾値(一定値)以上の値となる画素から成る領域の画像である。そして、STEP7の判断処理は、より具体的には、次のように行われる。
【0042】
すなわち、障害物対応処理部31は、STEP1で取得した受光量データにより示される画像全体から、受光量の検出値が所定の閾値以上の値となる画素から成る高受光量画像を抽出し、該高受光量画像の位置(該高受光量画像を構成する各画素の位置)を特定する。そして、障害物対応処理部31は、STEP2で検出した障害物候補の画像の位置(該障害物候補の画像を構成する各画素の位置)と、高受光量画像の位置とに基づいて、該障害物候補の画像の位置が、高受光量画像の位置と重なりを有するか否かを判断する。
【0043】
この場合、障害物対応処理部31は、例えば、障害物候補の画像のうちの所定割合以上の面積もしくは画素数の各画素の位置が、高受光量画像のいずれかの画素の位置に一致する場合に、障害物候補の画像の位置が、高受光量画像の位置と重なりを有すると判断する(STEP7の判断結果を肯定的とする)。
【0044】
なお、STEP7の判断処理では、例えば、障害物候補の画像の各画素の位置での受光量の検出値が所定の閾値以上であるか否かを受光量データに基づいて特定し、障害物候補の画像全体のうちの所定割合以上の画素の位置での受光量の検出値が所定の閾値以上である場合に、障害物候補の画像の位置が、高受光量画像の位置と重なりを有すると判断してもよい。このようにした場合には、高受光量画像を直接的に抽出する処理は不要である。
【0045】
上記の如くSTEP7の判断処理を実行することで、障害物候補の画像の全体もしくは一部(所定割合以上の面積又は画素数を有する部分)の位置が、高受光量画像に含まれる場合にSTEP7の判断結果が肯定的になる。
【0046】
ここで、障害物候補とSTEP7の判断結果との関係について補足説明をしておく。センサ部20の監視領域で検出された障害物候補(旋回体3に最も近い近接物体)が、人、設置物等の構造物体である場合には、一般に、測定光の反射量が比較的多くなる傾向がある。このため、STEP2で検出された障害物候補が人等の構造物体である場合には、STE7の判断結果が肯定的になる。
【0047】
また、建設機械1の作業現場において、センサ部20の監視領域に、砂埃や粉塵等の細かい粒子が舞っている領域(以降、粒子領域という)が発生した場合、その粒子領域が障害物候補として検出される場合ある。ただし、粒子領域での測定光の反射量は、人等の構造物体からの測定光の反射量に比して少ないものとなる傾向がある。
【0048】
例えば、
図4Aは、センサ部20の正面側に人Pが存在すると共に、人Pの上体の周囲に、点描で示すように、砂埃や粉塵等の粒子が舞っている粒子領域Sが発生している状況を示している。この状況においては、センサ部20の測距部23aにより生成される測距データにより表される距離画像は、例えば、
図4Cに例示する如き画像となる。この例で
は、該距離画像には、人Pに対応する距離計測値を有する画像部分が得られていると共に、粒子領域Sに対応する画像部分が、人Pよりもセンサ部20に近い(人Pよりも距離計測値が小さい)画像部分として得られている。
【0049】
このため、人Pが検出対象領域ARに存在していなくとも、粒子領域Sが検出対象領域ARに存在する障害物候補として抽出される場合がある。
【0050】
一方、
図4Aに示す状況において、センサ部20の受光量検出部23bにより生成される受光量データにより表される画像は、例えば、
図4Bに例示する如き画像となる。
図4Bに示す如く、人Pの画像部分の受光量は比較的大きなものとなるものの、粒子領域Sに対応する画像部分の受光量は十分に小さいものとなる。なお、人Pに限らず、コーン等の設置物についても、該設置物の画像部分の受光量は比較的大きなものとなる。
【0051】
従って、測距データに基づいて(あるいは測距データにより表される距離画像に基づいて)、粒子領域が障害物候補として検出されたとしても、該障害物候補に対しては、基本的には、STEP7の判断結果が否定的になる。一方、人、設置物等の物体がSTEP2で障害物候補として検出された場合には、該障害物候補に対しては、該物体からの反射光の受光量が比較的大きくなるため、STEP7の判断結果が肯定的になる。このことは、後述のSTEP9の判断結果についても同様である。
【0052】
ただし、粒子領域は、砂埃や粉塵等の粒子が空中に浮遊している領域であるため、該粒子領域からの測定光の反射量(ひいては、センサ部20での受光量)は、該粒子領域での粒子の分布状態、該粒子の構成物質、該粒子領域の背後に存在する物体、センサ部20が搭載された旋回体3の動き等の種々様々な要因の影響を受けて、ばらつきを生じたり、時間的な変動が生じることもある。このため、障害物候補として検出されたものが粒子領域である場合に、該粒子領域からの反射光の受光量が一時的に比較的大きなものとなる場合もある。ひいてはSTEP7の判断結果が肯定的になる場合もある。
【0053】
そこで、STEP7の判断結果が肯定的になった場合には、障害物対応処理部31は、さらに、STEP8において、STEP7の判断結果が肯定的になることが、あらかじめ定められた所定回数であるN回(例えば3回)の制御処理周期で連続して生じたかを否かを判断する。そして、このSTEP7又は8の判断結果が否定的である場合には、障害物対応処理部31は、現在の制御処理周期での処理を終了して、次の制御処理周期でSTEP1からの処理を改めて実行する。
【0054】
また、STEP7の判断結果が肯定的になることをが、N回の制御処理周期で連続して発生することによってSTEP8の判断結果が肯定的になった場合には、障害物対応処理部31は、次に、STEP10において、障害物候補を障害物として特定し、さらに、前記した障害物対応処理を実行する。
【0055】
例えば、
図5Aに例示する如く、時刻t(n)の制御処理周期と、その次の時刻t(n+1)の制御処理周期と、その次の時刻t(n+2)の制御処理周期とのそれぞれのSTEP7で、障害物候補の画像の位置が、高受光量画像の位置と重なりを有することが確認された場合には、時刻t(n+2)の制御処理周期でのSTEP8の判断結果が肯定的になる。この場合、時刻t(n),t(n+1),t(n+2)のそれぞれの制御処理周期で検出された障害物候補は、測定光の反射量が定常的に比較的高い物体であるので、高い確度で人、設置物等の構造物体であるとみなし得る。そして、この場合、STEP10において、障害物対応処理が実行される。
【0056】
一方、
図5Bに例示する如く、時刻t(n)及びt(n+2)の制御処理周期でのSTEP7で
、障害物候補の画像の位置が、高受光量画像の位置と重なりを有することが確認されても、これらの間の時刻t(n+2)の制御処理周期でのSTEP7で、障害物候補の画像の位置が、高受光量画像の位置と重なりを有しないことが確認された場合には、時刻t(n),t(n+1),t(n+2)のそれぞれの制御処理周期でのSTEP8の判断結果が否定的になる。この場合、障害物候補は、測定光の反射量が定常的に比較的高いものとなる物体でないので、人、設置物等の構造物体でない可能性が高い。そして、この場合には、障害物対応処理は実行されない。
【0057】
STEP4において、旋回体3が旋回動作状態である場合には、STEP4の判断結果が肯定的になる。この場合には、障害物対応処理部31は、さらに、STEP5において、旋回体3の旋回動作が高速の旋回動作であるか否かを判断する。この場合、障害物対応処理部31は、例えば、建設機械1の動力源のエンジン(図示しない)の回転数が所定値以上の高速回転数であることが検出され、且つ、旋回動作用の操作器が最大旋回速度を要求する操作量もしくはこれに近い操作量で操作されていることが検出された場合に、旋回体3の旋回動作が高速の旋回動作であると判断する(STEP5の判断結果を肯定的とする)。
【0058】
あるいは、例えば、旋回用油圧モータの出力軸もしくはこれに連動して回転する回転部材の回転速度を検出し、その検出値が所定値以上の高速回転である場合に、旋回体3の旋回動作が高速の旋回動作であると判断してもよい。
【0059】
STEP5の判断結果が否定的になる場合は、旋回体3の旋回速度がさほど高速ではない状況である。この場合には、障害物対応処理部31は、STEP9において、前記STEP7と同じ判断処理を実行する。
【0060】
上記STEP9の判断結果が否定的である場合には、STEP7の判断結果が否定的である場合と同様に、障害物対応処理部31は、現在の制御処理周期での処理を終了して、次の制御処理周期でSTEP1からの処理を改めて実行する。
【0061】
一方、STEP9の判断結果が肯定的である場合には、障害物対応処理部31は、前記STEP8の判断処理を行うことなく、直ちにSTEP10において、障害物候補を障害物として特定し、さらに、前記した障害物対応処理を実行する。ここで、旋回体3の旋回動作時の周縁部の移動速度(旋回体3の周速度)は、走行体2の走行速度に比して比較的速いため、旋回体3の旋回動作に伴う障害物と旋回体3の接近は、走行体2の走行動作に伴う障害物と旋回体3の接近に比して早期に進行しやすい。換言すれば、障害物と旋回体3との間の距離の時間的変化率は、旋回体3の旋回動作が行われずに、走行体2の走行動作が行われている場合よりも、旋回体3の旋回動作が行われている場合の方が大きくなりやすい。このため、本実施形態では、STEP9の判断結果が肯定的である場合には、前記STEP8の判断処理を行うことなく、障害物対応処理を実行するようにしている。
【0062】
また、STEP5において、旋回体3の旋回動作が高速の旋回動作である場合には、障害物対応処理部31は、STEP7,9と同じ判断処理を実行することなく、直ちにSTEP10において、障害物候補を障害物として特定し、さらに、前記した障害物対応処理を実行する。
【0063】
以上説明した実施形態によれば、旋回体3の旋回動作が行われずに、走行体2の走行動作が行われている状態で、測距データに基づいて障害物候補が検出された場合には、受光量データに基づくSTEP7の判断処理の判断結果が肯定的になることが、N回(例えば3回)の制御処理周期で、連続して発生した場合に、障害物候補が障害物として特定され、障害物対応処理が実行される。
【0064】
このため、粒子領域が障害物として特定されてしまうのを高い確度で防止することができ、ひいては、粒子領域に応じて障害物対応処理が実行されてしまうのを極力防止することができる。
【0065】
また、この場合、人、設置物等の実際の障害物が障害物候補としてSTEP2で最初に検出されてから、N回(例えば3回)の制御処理周期を経て、障害物対応処理が実行されるものの、走行体2の走行動作による旋回体3の移動速度は低いので、N回(例えば3回)の制御処理周期を経た後の障害物対応処理の実行により、旋回体3と障害物との接触を回避することを適切に実現できる。
【0066】
また、旋回体3の周縁部の移動速度が走行体2の走行動作の場合よりも速くなりやすい旋回動作状態であって、且つ、旋回体3の旋回動作が高速の旋回動作でない状態では、測距データに基づいて障害物候補が検出された場合に、受光量データに基づくSTEP9の判断処理の判断結果が肯定的になると、STEP8の判断処理を実行することなく、直ちに、障害物候補が障害物として特定され、障害物対応処理が実行される。
【0067】
この場合、STEP8の判断処理を実行した場合よりも、障害物候補が、人、設置物等の障害物であるか否かの確度は低くなるものの、STEP9の判断結果が肯定的であるため、障害物候補が前記粒子領域である可能性は比較的低い。従って、障害物候補が粒子領域であるのに、障害物対応処理が行われてしまうことは抑制できる。一方、障害物候補が人、設置物等の実際の障害物である場合には、走行体2の走行動作状態の場合よりも、早期に障害物対応処理を実行することができる。ひいては、旋回体3と障害物との接触を回避することを適切に実現できる。
【0068】
また、旋回体3の旋回動作が高速に行われている状態では、測距データに基づいて障害物候補が検出された場合に、受光量データに基づくSTEP9の判断処理を実行することなく、直ちに、障害物候補が障害物として特定され、障害物対応処理が実行される。
【0069】
この場合、STEP7,9と同じ判断処理を実行しないので、障害物候補が粒子領域であった場合にも、障害物対応処理が実行されるものの、障害物候補が人、設置物等の実際の障害物である場合には、障害物候補の検出後、素早く障害物対応処理が実行される。これにより、旋回体3の旋回動作が高速の旋回動作である場合でも、障害物と旋回体3の接触が生じるのを適切に回避することが可能となる。
【0070】
前記実施形態では、旋回体3の旋回動作状態において、STEP9の判断結果が肯定的である場合に、直ちに、STEP10で、障害物候補を障害物として特定し、障害物対応処理を実行するようにした。ただし、例えば、STEP9の判断結果が肯定的となることが、前記STEP8での回数Nよりもりも少ない回数(例えば2回)連続して発生した場合に、障害物候補を障害物として特定し、障害物対応処理を実行するようにしてもよい。
【0071】
また、旋回体3の旋回速度が十分に小さい低速域では、走行体2の走行動作状態の場合と同様に、STEP7,8の処理を経て、障害物候補を障害物として特定し、障害物対応処理を実行するようにしてもよい。これにより、本発明の一実施形態が構築される。
【0072】
また、前記実施形態では、検出対象領域ARを、旋回体3の周囲のうちの前方側の領域を含まない領域としたが、検出対象領域ARは、旋回体3の前方側の領域を含むように設定されていてもよい。さらに、検出対象領域ARは、作業装置4の周囲の領域及び走行体の周囲の領域の一方又は両方を含むように設定されていてもよい。また、障害物対応処理は、前記した処理の他、作業装置4の作動を強制的に停止もしくは減速させる制御処理を含んでいてもよい。
【0073】
また、建設機械1は、油圧ショベルに限らず、クレーン等の建設機械であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…建設機械
3…旋回体
31…障害物対応処理部。