(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181370
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】水処理方法及び水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/04 20230101AFI20231214BHJP
C02F 3/08 20230101ALI20231214BHJP
C02F 3/06 20230101ALI20231214BHJP
【FI】
C02F3/04
C02F3/08
C02F3/06
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023185905
(22)【出願日】2023-10-30
(62)【分割の表示】P 2020151638の分割
【原出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】米山 豊
(72)【発明者】
【氏名】高橋 惇太
(57)【要約】
【課題】有機物を含む被処理水から下水排除基準を満足する処理水を効率良く得ることが可能な水処理方法及び水処理装置を提供する。
【解決手段】有機物を含む被処理水を散水ろ床法による無曝気式無閉塞型の生物膜法を用いて処理する第1の生物処理手段と、流動担体法又は固定床法のいずれかを含む曝気式無閉塞型の生物膜法を用いて処理する第2の生物処理手段と、第2の生物処理手段で得られる第2の生物処理水を第1の生物処理手段に循環させる循環手段と、を備える生物処理手段に供給して生物処理を行うことを含み、第1の生物処理手段を第2の生物処理手段の上部に配置した同一の処理槽内で生物処理を行うことを特徴とする水処理方法である。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む被処理水を散水ろ床法による無曝気式無閉塞型の生物膜法を用いて処理する第1の生物処理手段と、流動担体法又は固定床法のいずれかを含む曝気式無閉塞型の生物膜法を用いて処理する第2の生物処理手段と、前記第2の生物処理手段で得られる第2の生物処理水を前記第1の生物処理手段に循環させる循環手段と、を備える生物処理手段に供給して生物処理を行うことを含み、
前記第1の生物処理手段を前記第2の生物処理手段の上部に配置した同一の処理槽内で前記生物処理を行うことを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
前記第1の生物処理手段での生物処理を2.0~8.0kg-BOD/m3/dで行い、前記第2の生物処理手段での生物処理を2.0kg-BOD/m3/d以下で行うことにより下水道放流用の生物処理水を得ることを特徴とする請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記被処理水を、前記第1の生物処理手段又は前記第2の生物処理手段に供給して生物処理することを特徴とする請求項1に記載の水処理方法。
【請求項4】
前記被処理水を、前記第2の生物処理手段に直接供給することを特徴とする請求項1に記載の水処理方法。
【請求項5】
前記被処理水は、浄化槽汚泥又はし尿を少なくとも含むことを特徴とする請求項1に記載の水処理方法。
【請求項6】
前記処理槽の水位を上下させることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項7】
有機物を含む被処理水に対し、散水ろ床法による無曝気式無閉塞型の生物膜法を用いて処理する第1の生物処理手段と、流動担体法又は固定床法のいずれかを含む曝気式無閉塞型の生物膜法を用いて処理する第2の生物処理手段と、前記第2の生物処理手段で得られる第2の生物処理水を前記第1の生物処理手段に循環させる循環手段と、を備える生物処理手段を備え、
同一の処理槽内において、前記第1の生物処理手段が前記第2の生物処理手段の上部に配置されていることを特徴とする水処理装置。
【請求項8】
前記第1の生物処理手段が、前記被処理水と酸素とが膜面を挟んで対向して浸透する構造を有する膜状担体を備えることを特徴とする請求項7に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記第1の生物処理手段及び前記第2の生物処理手段への前記被処理水の供給を切り替える切替手段と、
前記第1の生物処理手段及び前記第2の生物処理手段の生物処理条件又は前記被処理水の水質に基づいて、前記切替手段を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする請求項7又は8に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理方法及び水処理装置に関し、特に、浄化槽汚泥及びし尿系汚泥を処理し、処理水として下水道放流する水処理への適用に好適な水処理方法及び水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浄化槽汚泥及びし尿系汚泥を含む原水を処理して得られる処理水を下水道放流するためには下水排除基準を満足する必要があるが、下水排除基準は、一般的には、公共用水域への放流基準よりも基準が緩いことが知られている。例えば、公共用水域への放流基準としてBOD(生物化学的酸素要求量)10mg/L、T-N(全窒素)が10mg/L、SS(浮遊物質)が10mg/Lとされているのに対し、下水排除基準はBODが600mg/L、T-Nが240mg/L、SSが600mg/Lである。
【0003】
下水道放流のための従来の処理方法として、例えば、し尿等に含まれるごみ(し渣)を取り除き、排除基準まで希釈して放流する方法が知られている。この場合、一般的に希釈倍率は10~20倍程度となり、希釈水量及び下水道放流量が過剰となる。
【0004】
別の処理方法として、し尿等を脱水機で固液分離し、脱水分離液を希釈して下水道放流する方式がある。この場合、脱水分離液は除渣し尿と比較してBOD、SS、窒素等の成分が大幅に低減されるため、希釈倍率は一般に3~8倍程度とすることができるが、脱水分離液の水質には変動が見られるため、希釈水量も水によって大きく変動するという問題がある。
【0005】
また、し尿等を脱水機で固液分離する方法も、結局は、搬入量に対して4~9倍量を放流することとなるため、下水道放流量の低減効果は限定的である。固液分離では溶解性成分が除去されにくいため、し尿等に溶解性成分が多く含まれる場合には、脱水分離液の水質が悪化し、希釈水量を増加する必要性が生じる場合もある。放流水量の規制により放流基準を満足できない場合もある。
【0006】
希釈水量及び放流水量をより確実に削減する別の方法として、固液分離と生物処理とを組み合わせる方法が考えられる。例えば、特開昭61-50691号公報(特許文献1)には、浄化槽汚泥を固液分離した固液分を、し尿系汚水と混合して凝集処理を行い、その分離液を生物処理する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載される方法では、生物処理した水の放流先についての記載はないが、実施例1の処理液のBODが10mg/L以下まで処理可能であることなどから、公共用水域への放流を前提とした処理方式であることが推察できる。
【0009】
しかしながら、前述の通り、公共用水域への放流基準と比較すると下水排除基準は緩い傾向にあるため、下水道放流する処理水に対しては、特許文献1で言及されるような水質までは必要とされていない。
【0010】
一方で、引用文献1に記載されるような固液分離と生物処理とを組み合わせる水処理においては、下水排除基準を満たす程度に中途半端な処理を行うことが難しいという問題がある。例えば、生物処理として硝化脱窒処理を行う場合、窒素を全量ではなく例えば6割程度処理する方法、或いは、脱水分離液中に含まれるアンモニア性窒素を全量硝化した後にその6割だけ脱窒処理する方法等が考えられる。
【0011】
しかしながら、窒素を6割程度処理する場合は4割程度の硝酸性窒素が残留することになるため、後段の沈殿槽において嫌気状態となったところで再度脱窒が起こり、発生した窒素ガスによって汚泥が浮上し、沈殿槽で固液分離が十分に行えない場合がある。沈殿槽で固液分離ができない場合は、硝化脱窒槽のMLSS(活性汚泥濃度)が維持できず、処理そのものが悪化する。
【0012】
脱水分離液中に含まれるアンモニア性窒素を全量硝化する場合は、水槽容量が過大となること、硝化に必要な曝気風量が過大となること、脱窒に必要なメタノールやエタノール等の水素供与体の添加が必要となること等があり、求められる処理水質に対して設備及び運用コストが過大となる。
【0013】
浄化槽汚泥及びし尿系汚泥を効率良く処理する別の手法として、活性汚泥法を用いた生物処理によって、処理水の水質が下水排除基準未満となるまで粗処理を行い、希釈して下水道放流する方法も考えられる。しかしながら、活性汚泥法を用いた生物処理のために大型の水槽容量が必要となり、更に高BOD負荷に対応するための曝気風量も過大となるため、処理効率的に良好な手段であるとはいえない。
【0014】
上記課題を鑑み、本発明は、浄化槽汚泥及びし尿系汚泥等の有機物を含む被処理水から下水排除基準を満足する処理水を効率良く得ることが可能な水処理方法及び水処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、浄化槽汚泥及びし尿系汚泥等の有機物を含む被処理水を固液分離して得られる分離液の少なくとも一部に対して、特定の処理槽内で生物処理を行うことが有効であるとの知見を得た。
【0016】
以上の知見を基礎として完成した本発明の実施の形態に係る水処理方法は一側面において、浄化槽汚泥又はし尿系汚泥等の有機物を含む被処理水を散水ろ床法による無曝気式無閉塞型の生物膜法を用いて処理する第1の生物処理手段と、流動担体法又は固定床法のいずれかを含む曝気式無閉塞型の生物膜法を用いて処理する第2の生物処理手段と、第2の生物処理手段で得られる第2の生物処理水を第1の生物処理手段に循環させる循環手段と、を備える生物処理手段に供給して生物処理を行うことを含み、第1の生物処理手段を第2の生物処理手段の上部に配置した同一の処理槽内で生物処理を行う水処理方法である。
【0017】
本発明の実施の形態に係る水処理方法は一実施態様において、被処理水を、第1の生物処理手段及び第2の生物処理手段に供給して生物処理する。
【0018】
本発明の実施の形態に係る水処理方法は別の一実施態様において、被処理水を、第2の生物処理手段に直接供給する。
【0019】
本発明の実施の形態に係る水処理方法は更に別の一実施態様において、被処理水を貯留槽に貯留した後、貯留後の被処理水を生物処理手段に供給する。
【0020】
本発明の実施の形態に係る水処理装置は一側面において、浄化槽汚泥又はし尿系汚泥等の有機物を含む被処理水に対し、散水ろ床法による無曝気式無閉塞型の生物膜法を用いて処理する第1の生物処理手段と、流動担体法又は固定床法のいずれかを含む曝気式無閉塞型の生物膜法を用いて処理する第2の生物処理手段と、第2の生物処理手段で得られる第2の生物処理水を第1の生物処理手段に循環させる循環手段と、を備える生物処理手段を備え、同一の処理槽内において、第1の生物処理手段が第2の生物処理手段の上部に配置されている水処理装置である。
【0021】
本発明の実施の形態に係る水処理装置は別の一実施態様において、第1の生物処理手段が、被処理水と酸素とが膜面を挟んで対向して浸透する構造を有する膜状担体を備える。
【0022】
本発明の実施の形態に係る水処理装置は更に別の一実施態様において、第1の生物処理手段が、処理槽内への空気の流入を防ぐ閉塞手段を備える。
【0023】
本発明の実施の形態に係る水処理装置は更に別の一実施態様において、固液分離手段の後段に接続され、第1の生物処理手段及び第2の生物処理手段への被処理水の供給を切り替える切替手段と、第1の生物処理手段及び第2の生物処理手段の生物処理条件又は被処理水の水質に基づいて、切替手段を制御する制御手段とを備える。
【0024】
本発明の実施の形態に係る水処理装置は更に別の一実施態様において、第1の生物処理手段が、処理槽内で互いに並列に接続された複数の散水ろ床を備え、隣接する散水ろ床が、壁部により仕切られている。
【0025】
本発明の実施の形態に係る水処理装置は更に別の一実施態様において、第2の生物処理手段が、生物膜を付着させた担体を収容する処理槽と、処理槽に接続され、第2の生物処理水を貯留する貯留水槽と、貯留水槽に接続され、貯留水槽内の第2の生物処理水を、第1の生物処理手段へ返送可能な第1の配管と、処理槽に接続され、処理槽の下部から第2の生物処理水を引き抜いて、第1の生物処理手段へ返送可能な第2の配管とを備える。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、浄化槽汚泥又はし尿系汚泥等の有機物を含む被処理水から下水排除基準を満足する処理水を効率良く得ることが可能な水処理方法及び水処理装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る水処理装置を表す概略図である。
【
図2】本発明の第2の実施の形態に係る水処理装置を表す概略図である。
【
図3】本発明の第3の実施の形態に係る水処理装置を表す概略図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る生物処理手段の第1の構成例を示す概略図である。
【
図5】第1の構成例に係る第1の生物処理手段が備える膜状担体の一例を示す断面図である。
【
図6】第1の構成例に係る第1の生物処理手段が備える膜状担体の一例を示す側面図である。
【
図7】生物処理手段の第1の構成例の変形例を示す概略図である。
【
図8】第1の生物処理手段の処理槽に設けられた通気口及び閉塞手段の構成例を表す概略図であり、
図8(a)は通気状態、
図8(b)は閉塞状態を示す。
【
図9】第1の生物処理手段の別の変形例を示す概略図である。
【
図10】第1の生物処理手段の更に別の変形例を示す概略図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る生物処理手段の第2の構成例を示す概略図である。
【
図12】生物処理手段の第2の構成例の変形例を示す概略図である。
【
図13】本発明の実施の形態に係る生物処理手段の第3の構成例を示す概略図である。
【
図14】生物処理手段の第3の構成例を示す概略図である。
【
図15】生物処理手段の第3の構成例を示す概略図である。
【
図16】生物処理手段の第3の構成例を示す概略図である。
【
図17】本発明の実施の形態に係る生物処理手段のその他の変形例を示す概略図である。
【
図18】本発明の実施の形態に係る生物処理手段のその他の変形例を示す概略図である。
【
図19】浄化槽汚泥とし尿系汚泥の混合比の違いによる分離液の水質への影響を表すグラフの例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお、以下に示す実施の形態はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。また、以下に示す各実施の形態において説明された各構成を別の実施の形態に係る水処理装置に組み合わせ可能であることは勿論である。
【0029】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る水処理方法は、
図1に示すように、被処理水を固液分離して得られる分離液の少なくとも一部に対し、無閉塞型の生物膜法を用いて処理する第1の生物処理手段2及び第2の生物処理手段3と、第2の生物処理で得られる生物処理水を第1の生物処理手段に循環させる循環手段4とを備える生物処理手段10に供給して生物処理を行い、生物処理手段10で得られる生物処理水を下水排除基準を満たすように希釈して、下水道放流可能な処理水を得ることを含む。
【0030】
処理対象となる被処理水としては、浄化槽汚泥又はし尿系汚泥を少なくとも含むものであれば特に限定されない。典型的には、浄化槽汚泥、し尿系汚泥、又はこれら混合物が被処理水として好適に利用できる。この被処理水を固液分離して得られる分離液を、生物処理手段10へと導入する。被処理水としてし尿系汚泥と浄化槽汚泥とを混合する場合には、し尿系汚泥と浄化槽汚泥とを混合した混合液を固液分離してもよいが、し尿系汚泥と浄化槽汚泥とに対して、それぞれ別々に固液分離を行い、固液分離で得られる各分離液をその後混合することが固液分離性能の観点等から好ましい。
【0031】
固液分離手段1には、種々の固液分離装置を用いることができる。中でも、脱水機を用いて被処理水を分離汚泥と分離液とに固液分離することが、設備及び運用コスト面から好ましい。固液分離処理前の被処理水に対して濃縮処理を行うことも好ましい。濃縮方式としては、重力濃縮、機械濃縮の何れも有効な濃縮方式である。
【0032】
固液分離処理前に高分子凝集剤を添加した濃縮処理を行うことにより、濃縮汚泥の汚泥濃度(TS)を最大10~12質量%程度にまで濃縮することができる。高濃度に濃縮された濃縮汚泥に対して更に脱水機を用いて脱水処理を行えば、含水率70%以下の低含水率の脱水汚泥(分離汚泥)が得られるため、より顕著な汚泥減容効果が得られる。この低含水率の脱水汚泥のカロリーは高いため、焼却処理において補助燃料無しでの自燃が可能であり、省エネ、低コストとなる。
【0033】
生物処理手段10では生物膜を用いた生物処理が行われる。生物膜を用いた生物処理は、大きく分けて担体の定期的な洗浄工程を必要とするものと、生物膜量が処理の中で自律的にコントロールされるものとに分けることができる。前者には、生物膜ろ過法等が該当する。後者には、散水ろ床法、流動担体法、回転円盤法、固定床法(接触酸化法)が該当する。中でも、本発明の実施の形態に係る生物処理としては、生物膜量が処理の中で自律的にコントロールされるタイプの生物膜法を利用することが好ましく、これを本明細書において「無閉塞型の生物膜法」と定義する。
【0034】
生物処理手段10は、
図1に示すように、第1の生物処理手段2と、第2の生物処理手段3と、循環手段4とを備える。特に、無閉塞型の生物膜法の中でも、散水ろ床法及び流動担体法は、BOD容積負荷1kg-BOD/m
3/d以上でも安定して運転することが可能であり、敷地面積が限られる場合に有効であるため、第1の生物処理手段2と、第2の生物処理手段3とに採用されることが好ましい。
【0035】
第1の生物処理手段2は、散水ろ床法、回転円盤法、固定床法のいずれかを含む無曝気式無閉塞型の生物膜法を利用した処理を行うことが好ましい。第2の生物処理手段3は、流動担体法又は固定床法のいずれかを含む曝気式無閉塞型の生物膜法を利用した処理を行うことが好ましい。
【0036】
ここで、第1の生物処理手段2で行われる「無曝気式無閉塞型の生物膜法」とは、散水ろ床法、回転円盤法、固定床法およびそれらの組み合わせの中から選択される無閉塞型の生物膜法を利用して、曝気を行わない処理、即ち、生物膜を収容した処理槽内へブロワによる曝気等を行わない態様での生物処理を意味する。第2の生物処理手段3で行われる「曝気式無閉塞型の生物膜法」とは、流動担体法又は固定床法及びそれらの組み合わせの中から選択される無閉塞型の生物膜法を利用して、ブロワによる曝気等を行う処理、即ち、生物膜を収容した処理槽内へ空気の供給を行う態様での生物処理を意味する。
【0037】
第1の生物処理手段2を、散水ろ床法、回転円盤法、固定床法のいずれかを含む無曝気式無閉塞型の生物膜法を用いて処理することにより、分離液中のT-N成分を効率良く処理することができる。また、第2の生物処理手段3を、流動担体法又は固定床法のいずれかを含む生物膜法を用いて処理することにより、第2の生物処理手段の後段に置く沈殿槽を省略し、小型化ができるため、装置全体としてもコンパクト化が可能である。沈殿槽が無い場合は、BOD成分やT-N成分の残留に起因する汚泥の沈降不良を気にする必要も無く、沈殿槽を設ける場合にも、生物膜が生物処理槽内に保持されているので、たとえ沈降不良によって活性汚泥が流出したとしても、一定の生物処理が可能であるため、維持管理性にも優れている。したがって、下水放流などの粗処理には特に適した方法である。
【0038】
-第1の生物処理手段2で行われる無曝気式無閉塞型の生物膜法の例-
(1)散水ろ床法
散水ろ床法は、一般的には、好気性生物化学的処理法の一つであり、ろ材の表面に付着した微生物の作用によって、散布される被処理水(分離液)中の有機物を分解することにより、生物処理水を得る方法である。散水ろ床法は、一般的に、生物膜の表面が好気的、生物膜の内部が嫌気的になることが知られている。
【0039】
散水ろ床法に用いられる担体、散水部等の具体的構成に特に制限はない。担体の素材は、微生物が付着すればどのような素材でも良く、代表的なものとしては、プラスチック、砕石等が用いられる。担体の形状は、プレート状、球状、円柱状、直方体、中空状などいずれの形状でもよい。また、反応槽の容量に対する担体の充填率としては、40~80%、望ましくは50~70%が好ましい。膜状担体の場合は、反応槽の容量に対する膜の表面の面積として、0.05~0.15m2/m3となるように充填することが好ましい。
【0040】
より効率良く且つ安定的に生物処理を行うためには、散水ろ床に供給される固液分離後の分離液と散水ろ床内の酸素とが膜面を挟んで対向して浸透する構造を有する膜状担体が散水ろ床内に配置されることが好ましい。
【0041】
通常の粒状担体の場合、BOD容積負荷2~3kg-BOD/m3/d以上となると汚泥発生量は多くなり、ろ材閉塞が生じ、洗浄操作が必要となる。一方、膜状担体は、他の形状の担体を使用する処理方式と比較して、BOD容積負荷2~3kg-BOD/m3/d以上の高負荷条件でも閉塞せず安定して運転できるという利点を有している。これは、膜状担体では担体垂直方向に並べられ、担体から剥離した生物膜は担体間で閉塞することなく槽外に排出されるためである。
【0042】
第1の生物処理手段2として散水ろ床を使用する場合はBOD容積負荷を高くとり、空気中の酸素が水に溶解した分を消費し、生物膜の大半を嫌気状態に保つことができるため、第2の生物処理手段3からの硝化液を循環させると硝化液中のNOx-Nを窒素ガスに脱窒することを可能としている。
【0043】
固液分離後の分離液の散水ろ床への流入は、ポンプやサイフォン等を用いて散水ろ床の上方へ移送された後に行われる。散水にあたっては、ろ床全体に分離液が散水されればよく、多孔板、スプリンクラー型、スパイラル型のノズル、自走式の回転散水機等の任意の散水装置を用いることができる。
【0044】
第1の生物処理手段2に散水ろ床法を用いる場合は、脱窒工程を主体的に行うことを目的として処理条件を設定することが好ましく、例えば、BOD容積負荷を2.0~8.0kg-BOD/m3/d、より好ましくは3.0~6.0kg-BOD/m3/d、更に好ましくは4.0~5.0kg-BOD/m3/dの高負荷で運転することが好ましい。第1の生物処理手段2として散水ろ床を利用した場合、散水された水に、空気中の酸素が溶解して酸素が供給されるため、酸素供給能には制限がある。例えば、散水ろ床を用いて好気的にBOD分解できる量は、一般的には2kg-BOD/m3/d以下となる。第1の生物処理手段2に散水ろ床法を採用する場合、BOD容積負荷や処理槽内への外気の流入の制御等により、処理槽内で嫌気的条件を作り易くなるため、分離液中の全窒素(T-N)成分を除去する脱窒処理を効率的に進めることができる。
【0045】
(2)回転円盤法
回転円盤法は、回転する円盤の一部を被処理水と外気に触れさせることによって、円盤の表面に生物膜を形成させ、被処理水(分離液)中の有機分を分解させて生物処理水を得る方法である。曝気、エアレーションを行なわないため、風量調整が必要なブロワの設置が不要で、活性汚泥法等のように返送汚泥を供給する必要も無いため、より簡易な設備を供給できる点で有利であるのが一般的である。
本願のように脱窒工程を主体的に行うことを目的とし、回転円盤法を用いる場合、BOD容積負荷としては、2.0~4.0-BOD/m3/dが好ましく、過剰な負荷をかけると、円盤に過剰に微生物が付着し、回転軸が破損するという問題が発生する場合がある。
また、脱窒処理を行う場合は嫌気雰囲気にすることが好ましく、回転円盤設備の円盤が大気に接する箇所に覆蓋をすることが好ましい。
【0046】
円盤の材質及び具体的形状に特に制限は無く、任意の装置を用いることができる。例えば、円盤としての材質としては発泡スチロール、プラスチック、塩化ビニル、耐水ベニヤ、アルミニウム等の金属板が利用でき、直径1~3m、厚さ0.7~20mmの円盤状にして使用することができる。
【0047】
(3)固定床法
固定床法は、固定床担体を処理槽内に収容された液中に浸漬させ、分離液を通水させながら水中撹拌機等による攪拌、ガス攪拌により液混合を行うことで、担体表面に生物膜を形成させながら第2の生物処理手段3からの硝化液中のNOx-Nを分離液中のBOD成分に含まれる水素供与体を利用しながら生物学的脱窒処理して窒素除去を行う方法である。担体に付着した生物膜によって処理を行うため、活性汚泥法等と比べて返送による汚泥量のコントロールが不要であり、維持管理が容易となる。BOD容積負荷としては、1.0~3.0kg-BOD/m3/dが好ましく、高負荷で運転すると生物膜が肥大して接触材が目詰まりすることがある。
【0048】
固定床法の担体の材質及び具体的形状に特に制限は無く、任意の装置を用いることができる。担体の材質としては、ポリエチレン、プラスチック等が利用でき、形状としてはチューブ型、ひも状、網状、平板状、ボール状等の任意の形状とすることができる。
【0049】
-第2の生物処理手段3で行われる曝気式無閉塞型の生物膜法の例-
(1)流動担体法
流動担体法は、生物処理槽内に担体を収容し、担体が生物処理槽内で流動することにより微生物を被処理液中の有機物や酸素などと接触させて生物処理水を得る方法である。流動担体法を利用する生物処理槽は新設してもよいし、既存の貯留槽等に担体、散気装置等を導入してもよい。流動担体に使用される担体には特に制限はないが、代表的なものとして以下のものが挙げられる。
【0050】
使用する担体は、微生物が付着し、かつ曝気により流動する担体であればどのような担体でも良い。担体の素材としては、曝気により流動すればどのような担体でも良く、例えば、プラスチック(ポリウレタン(PU)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA))、木製チップ、砂等が利用される。担体の性状は、スポンジ状、ゲル状、固形状等であり得る。
【0051】
担体の形状は、球状、立方体状、円筒状、ハニカム状等の任意の形状とすることができる。中でも担体の外表面に微生物を付着させる結合固定化担体を利用することにより、生物処理槽内の環境に適した微生物を担体に付着させることができ、流入水の性状変動の影響を受けにくく、より安定した生物処理を行うことができる。
【0052】
担体の充填率としては、流動性と性能の観点から、20~40%が好ましい。充填率を20%以上とすることで槽内に多量の微生物を保持することができ、40%以下として適切な空隙をつくることで流動性を良好に保つことができる。第2の生物処理手段3に流動担体法を利用する場合、BOD容積負荷としては、2.0kg-BOD/m3/d以下、望ましくは1.0kg-BOD/m3/d以下、より望ましくは0.5kg-BOD/m3/d以下である。流動担体法は既設活性汚泥の曝気槽を利用する場合などに適している。
【0053】
なお、第1の生物処理手段2内の固定床、回転円盤又は散水ろ床に、嫌気性アンモニア酸化菌(アナモックス菌)を付着させることで、第1の生物処理手段2の生物膜中に嫌気性アンモニア酸化菌を増殖させ、第1の生物処理手段2における脱窒処理をより効率的に行うことができる。その場合、第2の生物処理手段3の処理槽のBOD容積負荷を、2.0kg-BOD/m3/d以下、好ましくは1.0kg-BOD/m3/d以下、より好ましくは0.5kg-BOD/m3/d以下とし、NH4-N負荷を1.0kg-BOD/m3/d以下、より好ましくは0.5kg-BOD/m3/d以下とし、溶存酸素(DO)を1.0~5mg/L、望ましくは2.5~4mg/Lとなるように処理条件を設定し、分離液に含まれるNH4-NをNOx-Nに酸化させる硝化反応を促進させる。
【0054】
硝化条件では、曝気により担体が槽全体で流動することで、原水との接触効率が上がり、硝化能力を上げることができる。なお、本実施形態における硝化処理の目的は、BOD、T-Nの粗取りであるため、全量を硝化させる必要はなく、目的濃度まで硝化が完了すればよい。
【0055】
更に本発明者らの検討によれば、第2の生物処理手段3の処理槽内のアンモニア性窒素含有排水の遊離アンモニア濃度を1.0~10mg/L、より好ましくは2.0~10mg/Lに維持するようにpHを調整することが好ましい。これにより、亜硝酸化菌の増殖を抑制しながら、アンモニア酸化菌を担体に優先的に付着させることができ、これにより安定した亜硝酸化処理が得られる。
【0056】
亜硝酸化処理では、通常NH4-NをNO3-Nまで硝化させるところを、NO2-Nで反応を止めることができるため、酸素の利用効率を上げ、酸素供給量を抑制することができる。更に、後段の脱窒条件では、原水中のBOD等を電子供与体とした従属脱窒に加え、NO2-NとNH4-Nによる嫌気性アンモニア酸化反応による脱窒も一部進行し、窒素除去効率を上げることができる。遊離アンモニア濃度は、(1)式に従って計算することができる。
【0057】
【0058】
(1)式からわかるように、遊離アンモニア濃度は、pH、NH4-N濃度、水温の変化の影響を受ける。硝化反応を亜硝酸型にすることで流動担体処理水中にはアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素が含まれる。この処理水を第1の生物処理手段2の散水ろ床、回転円盤又は固定床に供給することで、第1の生物処理手段2の生物膜中に嫌気性アンモニア酸化菌をより多く増殖させることができる。嫌気性アンモニア酸化菌はBOD源を必要としないため、BOD/N比が低い場合(BOD/N≦1)に従属性脱窒菌による窒素処理に比べて窒素処理性能が高くなる。
【0059】
(2)固定床法(接触酸化法)
固定床法は、上述の通り、固定床担体を処理槽内に収容された液中に浸漬させ、分離液を通水させながら曝気を行うことによって、担体表面に生物膜を形成させながら分離液中の有機分を分解させて生物処理水を得る方法である。第1の生物処理手段2に固定床法を用いる場合は、BOD容積負荷としては、0.1~1.0kg-BOD/m3/dが好ましい。
【0060】
循環手段4は、第2の生物処理手段3で得られる第2の生物処理水を第1の生物処理手段2に循環させる。第2の生物処理手段3で得られる第2の生物処理水を第1の生物処理手段2へ循環させることで、循環型硝化脱窒をより促進することができ、下水道放流用途のためにより安定化した水処理を行うことができる。
【0061】
生物処理手段10によって得られた生物処理水は、希釈手段5に送られ、希釈水と混合して下水排除基準を満たすように希釈される。本発明の実施の形態に係る水処理方法によれば、希釈倍率を典型的には1~4倍、より典型的には1~3倍、更には1~2倍とすることで下水排除基準を満たす量とすることができる。希釈は常時行っても良いし、下水排除基準を満たすために必要な場合にのみ行っても良い。これにより、従来の手法に比べてより少ない希釈水量で、下水道放流のための水質基準に応じたより効率的且つ適切な処理が行える。
【0062】
なお、上述の生物処理を行うことにより、生物処理水の希釈を行わなくてもよい程度にまで生物処理水が処理される場合もある。その場合は、生物処理水に対し、希釈を行うことなくそのまま下水道放流を行ってもよいことは勿論である。
【0063】
本発明の第1の実施の形態に係る水処理方法及び水処理装置によれば、浄化槽汚泥及びし尿系汚泥の少なくともいずれかを含む被処理水を固液分離した分離液の少なくとも一部に対して、上述の無閉塞型の生物膜法を用いて、分離液中の脱窒処理を目的とする第1の生物処理と、硝化処理を目的とする第2の生物処理を行い、第2の生物処理による生物処理水を第1の生物処理手段に循環させるとともに、第2の生物処理で得られる第2の生物処理水を希釈することで、浄化槽汚泥又はし尿系汚泥を含む被処理水から下水排除基準を満足する処理水を効率良く得ることが可能となる。
【0064】
なお、第1の実施の形態に係る水処理方法及び水処理装置によれば、固液分離によって得られた分離液の処理に、生物処理を採用しているため、生物処理手段10内の微生物の生育に必要なだけのリンを供給することで、生物処理による処理水の水質をより高く保ち、且つ安定化させることができる。
【0065】
一般的に、生物処理においては、BOD100mg/Lに対し、1mg/L程度のリンが必要とされている。このため、流入水(分離液)のBODに対し、この比を満足するようにリンを供給することが望ましい。処理が良好であれば、リンの濃度は1mg/L以下、好ましくは0.7mg/L以下、より好ましくは0.5mg/L以下に減らして供給しても良い。
【0066】
特に、浄化槽汚泥又はし尿系汚泥の固液分離処理において鉄系、アルミ系の凝集剤を使用する場合、リンが汚泥に取り込まれ、脱水分離液に含まれるリン濃度が低下するため、リンの添加を行うことでより安定した水質の処理水が得られる。粗処理では、リンのような栄養塩類の供給が軽視されがちであるが、リンが欠乏するとBODがほとんど除去できなくなることもあるため、実は、粗処理であっても、リンを供給することが重要となる場合が多いためである。
【0067】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る水処理方法は、
図2に示すように、固液分離手段1の後段に貯留槽9を設け、分離液を一定期間貯留槽9に貯留した後、貯留後の分離液を生物処理手段に供給する以外は、第1の実施の形態に係る水処理方法と実質的に同様である。
【0068】
第2の実施の形態に係る水処理方法及び水処理装置によれば、貯留槽9を備え、貯留槽9で固液分離手段1から供給された分離液を貯留することにより、分離液の水質及び水量を安定化させることができるため、被処理水の水質及び水量の変動に関わらず、常時安定した水量及び水質の分離液を、生物処理手段10へ供給することができる。その結果、生物処理手段10へ供給される分離液の性状変動を小さく抑えることができ、生物処理手段10における生物処理をより安定的に進めることができる。
【0069】
特に、し尿系汚泥及び浄化槽汚泥を処理する場合、し尿系汚泥と浄化槽汚泥の割合が変動するため、分離液のBOD濃度、T-N濃度も変動する。また、実際のし尿系汚泥及び浄化槽汚泥を脱水処理は、月曜日~金曜日の昼間(9時~15時頃)に行われるため、週末(土、日)の分離液の供給量は少なくなる傾向にある。即ち、分離液のBOD、T-N濃度変動の他に、水量変動が大きいため、運転条件によってはBOD処理成績の低下、或いはろ材閉塞などの問題の処理上の問題が生じる場合がある。第2の実施の形態に係る水処理方法及び水処理装置によれば、貯留槽で1日~2日程度分離液を貯留した後に、生物処理手段10へ分離液を供給することができるため、生物処理手段10における生物処理をより安定的に進めることができる。
【0070】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る水処理方法は、
図3に示すように、固液分離手段1の後段に接続され、分離液の供給を第1の生物処理手段2及び第2の生物処理手段3との間で切り替える切替手段7を更に備えることができる。切替手段7としては自動弁、電磁弁等の切替弁等が利用できる。切替手段7は制御手段6に接続されている。切替手段7は、分離液の供給を、第1の生物処理手段2及び第2の生物処理手段3の間で切り替えるための制御手段6からの制御信号の入力に基づいて、供給経路の切替を行い、これにより、分離液の生物処理手段10への供給制御が行われるように構成されることができる。
【0071】
制御手段6は、モニタリング手段8に接続されてもよい。制御手段6は、モニタリング手段8がモニタリングする第1の生物処理手段2及び第2の生物処理手段3の生物処理条件、及び/又は分離液の水質に基づいて、切替手段7を制御することができる。例えば、制御手段6は、第1の生物処理手段2及び第2の生物処理手段3に設定されたBOD容積負荷に対して、供給される分離液がそれぞれ最適な流量比となるように、第1の生物処理手段2及び第2の生物処理手段3へステップ流入させるとともに、このステップ流入の際の分離液のステップ比を調整することができる。例えば、第1の生物処理手段2のBOD容積負荷が8kg-BOD/m3/d以上、好ましくは6kg-BOD/m3/d以上となった場合に、BOD容積超過分のBOD量が第2の生物処理手段3で処理されるように分離液の一部を第2の生物処理手段3へ分配する。
【0072】
モニタリング手段8がモニタリングする水質項目に特に制限はないが、例えば、固液分離手段1から生物処理手段10へ供給される分離液、第1の生物処理手段2で得られる第1の生物処理水、第2の生物処理手段3で得られる第2の生物処理水の流量、水温、pH、ORP、BOD、COD、TOC、アンモニア態窒素、硝酸態窒素等をモニタリングすることができる。
【0073】
例えば、第1の生物処理手段2に散水ろ床法を用いて脱窒処理する際においては、処理槽内のBOD容積負荷が高くなった場合、ORP値は顕著に低下する。そのため、モニタリング手段8がモニタリングする項目としてORP値を指標とすることで、切替手段7による切替を適切化でき、第1の生物処理手段2においてより安定的且つ効率的な脱窒処理が可能となる。
【0074】
例えば、第1の生物処理手段2における脱窒処理に適正なORP値は-50mV~-300mV、好ましくは-100mV~-200mVである。そのため、適正なORP値の範囲となるように、制御手段6が、切替手段7を制御して、固液分離手段1からの分離液の一部を第1の生物処理手段2へ供給し、分離液の残りの一部を第2の生物処理手段へ供給するように分離液の供給を制御できる。なお、ORP値は白金電極とAg/AgCl比較電極を使用し、比較電極内部液(3.3mol/LのKCL)のセンサーを用いたORP計での測定値を示す。
【0075】
なお、被処理水中に含まれる浄化槽汚泥又はし尿系汚泥の濃度によっては、固液分離手段1で得られた分離液中のT-N成分が少なく、二段階の生物処理を行わなくてもよい場合がある。そのような場合は、分離液が第2の生物処理手段3に直接供給されるように、制御手段6が切替手段7の切替制御を行うことにより、生物処理をより効率化して、分離液中のT-N成分及びBOD成分の粗取りを行い、下水道放流に適した性状の処理水を効率良く得ることができる。
【0076】
図3に示す例では、モニタリング手段8のモニタリング結果に基づいて、制御手段6が切替手段7を制御する例を記載しているが、操作者が手動で分離液の供給制御を行ってもよいことは勿論である。
【0077】
散水ろ床法、流動担体法、回転円盤法、固定床法のいずれかを少なくとも含む無閉塞型の生物膜法を用いた生物処理を行う場合、流入水のBOD容積負荷が高いと、生物膜中の細菌はBOD細菌が優占種となり、硝化菌が増殖できない環境下となる。その結果、流入水中の窒素がBODで消費される分、T-N除去率が低くなってしまう。良好な生物処理を行うためには、生物処理のBOD容積負荷を低く設定する必要があるが、BOD容積負荷を低くしようとすると、生物処理槽の容量が大きくなり、装置の大型化が進み、建設費等のコスト高にもつながる。
【0078】
第3の実施の形態に係る水処理装置及び水処理方法によれば、分離液を第1の生物処理手段2に供給するとともに、第2の生物処理手段3にも供給して生物処理するように、分離液の流入比を制御することができるため、浄化槽汚泥又はし尿系汚泥を含む被処理水から下水排除基準を満足する処理水を効率良く得ることができる。浄化槽汚泥又はし尿系汚泥を含む被処理水の有機物濃度が低い場合等には、第1の生物処理手段を省略して、分離液を、第2の生物処理手段に直接供給することにより、小型の装置で、分離液の性状に適したより効率的な処理が行える。
【0079】
-装置構成及び処理フロー例-
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る水処理方法及び水処理装置に好適な装置構成及び処理フロー例について、
図4~
図18を用いて説明する。以下に示す装置構成及び処理フロー例は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。また、以下に示す装置構成及び処理フロー例において説明された各構成を互いに組み合わせることが可能であることは勿論である。
【0080】
(第1の構成例)
図4は、
図1の水処理装置に係る生物処理手段10の構成例を表す概略図である。生物処理手段10は、散水ろ床を備え、分離液を生物処理して第1の生物処理水を得る第1の生物処理手段2と、担体31を収容した処理槽30を備え、第1の生物処理水を生物処理して第2の生物処理水を得る第2の生物処理手段3と、第2の生物処理水を第1の生物処理手段2に循環させる循環手段4を備える。
【0081】
生物処理手段10が備える散水ろ床としては、
図5及び
図6に示すような、分離液と酸素とが膜面を挟んで対向して浸透する構造を有する膜状担体20を備えることが好ましい。
【0082】
膜状担体20は、一定の間隔を空けて並列に配置された支持体21と支持体21に支持される膜22を備え、ループ形状の膜22が支持体21を覆っている。分離液がループ形状の膜22の外面から浸透し、酸素がループ形状の膜22の内面に形成された空間23から膜の外面へ浸透するように構成されている。膜22は支持体21の上方外側で湾曲する湾曲部22aと、湾曲部22aの両端から互いに略平行に延伸する延伸部22b、22cとを備え、膜22の下端側、即ち、膜22を収容する処理槽(不図示)の底面と対向する側に、膜22の内面に堆積してその後剥離する汚泥(不図示)を空間23の外へ排出するための開口部22dが形成されている。
【0083】
図5及び
図6に示す構造の膜状担体20が、第1の生物処理手段2としての散水ろ床内に収容されることにより、分離液の供給側である膜状担体20の膜22の外側はBODが豊富で酸素が乏しいエリアとなる一方で、膜22の内側の酸素供給側はBODが乏しく酸素が豊富なエリアとなる。そのため、膜状担体20の膜22の外側には脱窒反応の進行に適した条件を作り出すことができ、膜22の内側は、硝化反応に適した条件を作り出すことができる。
【0084】
図5及び
図6に示す構造の膜状担体20を用いることにより、散水ろ床のろ材として砂や石などを使用する場合に比べて、酸素が乏しいエリアと酸素が豊富なエリアを一定の領域内に確実に形成させることができる。そのため、砂や石などのろ材を使用する場合に比べて硝化-脱窒反応が進行しやすい環境を作り出すことができる。また、開口部22dから膜22の内面に堆積した汚泥を排出させることができるため、より長期間安定した処理が行えるようになる。排出汚泥の中には生物から剥離したものが多く、これらの汚泥は沈降性が良いため、沈殿槽などの固液分離装置を経由して希釈水槽に固液分離液を供給すると良い。固液分離汚泥はし尿・浄化槽汚泥の脱水設備前の受槽に戻して、脱水処理を行い、脱水ケーキとして場外に排出すると良い。
【0085】
図4に示すように、第1の生物処理手段2としての散水ろ床は、第2の生物処理手段3の処理槽30上に設置された架台35上に配置されることができる。
図7に示すように、第1の生物処理手段2としての散水ろ床は、コンクリート基礎355上に配置されていてもよい。
【0086】
図4に示すように、第1の生物処理手段2の第1の生物処理水は、第2の生物処理手段3内へ供給される。第2の生物処理手段3の処理槽30内には、担体31が収容されており、曝気手段34による曝気により処理槽30を担体31が流動するようになっている。図示は省略しているが必要に応じて撹拌手段が設けられていても良い。
【0087】
曝気手段34は、処理槽30の底部に配置された散気管32に接続されており、散気管32から上方へ空気等の酸素含有気体が供給されることにより、処理槽内で液流が生じる。これにより、担体31と第1の生物処理水との接触が促進され、第2の生物処理が進行する。第2の生物処理水は、処理槽30の上方に配置されたスクリーン36を介して担体31が取り除かれ、一部がポンプ手段42及び循環手段4を介して第1の生物処理手段2が備える散水ろ床の上部へと汲み上げられ、散水ろ床の上方から散水ろ床内へ再び供給される。第2の生物処理水の残りは引き抜かれて希釈手段へと送られる。
【0088】
図4~
図7に示す第1の構成例によれば、水処理装置を小型化及び簡易化しながら、浄化槽汚泥又はし尿系汚泥を含む被処理液の固液分離液中に含まれるBOD、T-N成分を効率良く粗取りすることができる。
【0089】
図8(a)及び
図8(b)に示すように、第1の生物処理手段2は、処理槽内へ外気(空気)を流通させるための通気口25を備えるとともに、この通気口25を塞ぎ、第1の生物処理手段2内への空気の流入を防ぐための閉塞手段26を備えることが好ましい。通気口25は処理槽の下部から空気を流入させ、処理槽の上部から空気を流出させるように構成される。例えば、第1の生物処理手段2として、
図5及び
図6に例示する膜状担体20が収容される場合、通常は、通気口25を開けた状態で使用し、通気口から処理槽内へ大気の出入りを行う。処理槽外の温度が処理槽内の温度より低い場合、大気は処理槽下部の通気口25から入り、処理槽上部の通気口25から排出される。膜状担体20の底部に開口した開口部22dから酸素が供給されることで、膜22の内側に、硝化反応に適した条件を作り出すことができる。
【0090】
一方、
図8(b)に示すように、閉塞手段26で通気口25を閉塞して、処理槽への空気の流入がないようにすることにより嫌気的条件を作り出し、更に散水ろ床を構成する膜状担体20における生物処理のBOD容積負荷を3.0~6.0kg-BOD/m
3/dもの高負荷に設定することで、分離液中の全窒素(T-N)成分を除去する脱窒処理を効率的に進めることができる。その後、第2の生物処理において、第1の生物処理手段2で脱窒処理された第1の生物処理水を硝化処理することで、より効率的な硝化-脱窒処理を行い、分離液のBOD及びT-N成分を効率良く除去処理することができる。
【0091】
特に、被処理水に含まれる浄化槽汚泥の比率が高く、分離水中のBOD濃度が低下し、散水ろ床(脱窒槽)のBOD容積負荷が低い場合、例えば、具体的にはBOD容積負荷3kg-BOD/m
3/d以下、好ましくはBOD容積負荷2kg-BOD/m
3/d以下の場合に、閉塞手段26で処理槽への空気の流入を遮断することで、第1の生物処理が脱窒処理しやすい嫌気条件に制御しやすくなる。なお、
図8(b)の例では、閉塞手段26として通気口25を塞ぐ構成の例を示しているが、通気口25の開度を調整するような弁が閉塞手段26として配置されていてもよい。
【0092】
第1の生物処理手段2を構成する散水ろ床は、処理槽内に複数床、並列に配置して生物処理を行うようにしてもよい。
図9に示すように、第1の生物処理手段2は、処理槽内に互いに並列に接続された複数の散水ろ床20A、20B、20C、20Dを備え、各散水ろ床20A~20Dで処理された第1の生物処理水を貯留する貯留水槽27を更に備えていてもよい。貯留水槽27には、第2の生物処理手段3で処理された第2の生物処理水が循環手段(不図示)を介して供給されて混合されるとともに、固液分離手段1からの分離液が供給される。
【0093】
貯留水槽27内の上部から引き抜かれた第1の生物処理水は、図示しない第2の生物処理手段3へ供給される。貯留水槽27の下部から引き抜かれた第2の生物処理水は、循環手段28を介して、散水ろ床20A~20Dの上部に設けられた散水分配器29aから散水ろ床内へ供給される。散水ろ床20A~20Dがそれぞれ備える散水分配器29aには弁29bがそれぞれ設けられており、各散水ろ床20A~20Dの処理条件に応じて、その分配量が制御できるようになっている。散水ろ床20A~20Dを収容する処理槽には通気口25が設けられており、散水ろ床20A~20Dでの脱窒処理条件を効率良く進めるために、必要に応じて、
図10に示すような閉塞手段26で閉塞されることもできる。
図9に示す第1の生物処理手段2によれば、複数の散水ろ床20A~20Dを備えることにより、大量の分離液を処理することができ、処理効率が向上する。
【0094】
図10に示す例は、隣接する散水ろ床20A~20Dの間を壁部250で仕切った処理槽を備える。各散水ろ床20A~20Dの下部には、散気管274がそれぞれ配置されており、ブロワ271に接続された配管272を介して、各散気管274へ空気の供給が行えるように構成されている。また、各散水ろ床20A~20Dの下部には、各散水ろ床20A~20Dで処理された第1の生物処理水を、弁275を介して貯留水槽27へ供給するための配管276が接続されている。
【0095】
図10に示す第1の生物処理手段2によれば、各散水ろ床20A~20Dの処理条件に合わせて、一部の散水ろ床20A~20Dの運転を行うとともに、特定の散水ろ床20A~20Dを水中に浸漬させてブロワ271から散気を行うことにより、特定の散水ろ床20A~20Dに発生するろ床バエの駆除処理を行うことができる。
図10に示す構成によれば、ろ床バエの駆除処理のために全ての散水ろ床20A~20Dの運転を停止させる必要がないため、常に安定して第1の生物処理水を得ることができる。
【0096】
(第2の構成例)
図11は、
図3の生物処理手段10の構成例及び処理フローの例を表す説明図である。分離液は、切替手段7を介して第1の生物処理手段2及び/又は第2の生物処理手段3へ供給される。第1の生物処理手段2で処理された第1の生物処理水は、第1の生物処理手段2の下部のコンクリート基礎355上に配置された貯留水槽27へ収容される。貯留水槽27内の第1の生物処理水は、担体31を備える第2の生物処理手段3の処理槽30内へ供給される。処理槽30の上部には、第2の生物処理手段3で処理された第2の生物処理水を貯留する貯留水槽37を備える。貯留水槽37へ流入する第2の生物処理水は、スクリーン36等の担体分離機で担体31が取り除かれた後に供給される。
【0097】
貯留水槽27から処理槽30への第1生物処理水の供給又は分離液の処理槽30への供給がある期間は、貯留水槽37に一定量の第2の生物処理水が貯留される。その場合は、貯留水槽37に貯留された第2の生物処理水を、循環手段40を介して貯留水槽27へ返送した後、循環手段28を介して、第1の生物処理手段2へ循環させる。貯留水槽27へ貯留された第2の生物処理水の他の一部は、貯留水槽37の下部に接続された配管33を介して
図3の希釈手段5へ送られる。
【0098】
平日夜間、土日祝日などで固液分離手段1の運転が停止し、
図11に示す生物処理手段10へ分離液の流入が無い場合には、貯留水槽37内の第2の生物処理水の水量が徐々に減少し、第1の生物処理手段2へ循環させる第2の生物処理水の水量が十分に得られない場合がある。そのような場合には、処理槽30の下部に接続された配管38から、ストレーナ39を介して担体31を除去した第2の生物処理水を循環手段41を介して貯留水槽27へ循環させ、循環手段28を介して第1の生物処理手段2へ返送させる。また、第2の生物処理水の一部は、配管38及び配管33に接続されたポンプを介して
図3の希釈手段5へ送ることができる。貯留水槽37内の第2の生物処理水の水量は例えば水位計等を配置することで把握でき、この水位計の測定結果に基づいて、制御手段6が、第1の生物処理へ循環させる第2の生物処理水の取水方法を自動で選択できるようにしてもよいし、操作者が選択してもよい。
【0099】
図12に示すように、第1の生物処理水を貯留する貯留水槽27を省略して小型化を図ることも可能である。処理槽30への第1生物処理水の供給又は分離液の処理槽30への供給がある期間は、貯留水槽37に一定量の第2の生物処理水が貯留される。その場合は、貯留水槽37に貯留された第2の生物処理水を、循環手段40及び循環手段28を介して、第1の生物処理手段2へ循環させる。貯留水槽27へ貯留された第2の生物処理水の他の一部は、貯留水槽37の下部に接続された配管33を介して
図3の希釈手段5へ送られる。
【0100】
平日夜間、土日祝日などで固液分離手段1の運転が停止し、
図12に示す生物処理手段10へ分離液の流入が無い場合等には、貯留水槽37内の第2の生物処理水の水量が十分でなくなる場合がある。そのような場合は、処理槽30の下部に接続された配管38aから、ストレーナ39を介して担体31を除去した第2の生物処理水を、配管38c及び循環手段28を介して第1の生物処理手段2へ返送する。また、処理済の第2の生物処理水を、配管38a及び配管38bを介して
図3の希釈手段5へ送ることができる。第2の生物処理水の処理槽30からの引き抜き位置は、分離液の供給状況等に応じて、制御手段6が制御してもよいし、操作者が手動で設定してもよい。
【0101】
(第3の構成例)
図13~
図16は、
図3の生物処理手段10として、第1の生物処理手段2及び第2の生物処理手段3を同一の処理槽100内に収容した場合の構成例を示す。処理槽100の上部には、例えば、散水ろ床20A、20Bを備える第1の生物処理手段2が配置され、処理槽の下部には、担体31を備える第2の生物処理手段3が配置されている。処理槽100の頂部には、架台35等の蓋状部材が置かれているが、架台35はなくても構わない。架台35には、第1の生物処理で発生するガスを排出するための排気口29が設けられていてもよい。図示していないが、処理槽100内の通気を行うための通気口と通気口を閉塞するための閉塞手段が配置されていてもよい。
【0102】
処理槽100の底部には、散気管32が設けられており、弁330を介してブロワ34が接続されている。第1の生物処理手段2と第2の生物処理手段3とを仕切る仕切り板110の下方にも、ブロワ34及び弁330に接続された散気管321が配置されている。第2の生物処理手段3で処理された第2の生物処理水は、ストレーナ39を介して担体31が除去された後に、循環手段4を介して第1の生物処理手段2が備える散水ろ床20A、20Bの上方から散布されるようになっている。第2の生物処理水は、ストレーナ39及び配管51を介して
図3の希釈手段5へも送られるようになっている。
【0103】
分離液は、処理槽100の上部から、第1の生物処理手段2及び第2の生物処理手段3へ供給することができる。被処理水として浄化槽汚泥の比率が高く、分離液のBODが低くなる場合等には、分離液をそのまま第2の生物処理手段3へ供給することが好ましい。第1の生物処理手段2で処理された第1の生物処理水は、仕切り板110を通って、処理槽100の下方にある第2の生物処理手段3側(ゾーン3)へ流下し、
図14に示すように、ゾーン3内において、第2の生物処理が行われる。
【0104】
第1の生物処理手段2として、散水ろ床20A、20Bを使用した場合、水温(15~25℃)及びろ床バエ等のハエの増殖が活発な期間(春、秋)に、月に1~2回程度、ろ床バエの駆除処理を行う必要が生じる場合がある。そのような場合には、
図15及び
図16に示すように、処理槽100内の水位をゾーン3からゾーン2まで上げてゆき、最終的に散水ろ床20A、20Bとして利用される担体を完全に浸水可能な水位(ゾーン2とゾーン1との境界)まで上げて、一定期間担体を浸漬させる。この際、処理槽100内の水位がゾーン3からゾーン2内まで上昇した時点で、一定時間(15分~60分程度)浸漬後、弁330を介して、ブロワ34からの空気を散気管321へ流すようにし、ゾーン2内を曝気することで、ろ床バエの除去を行うことができる。
【0105】
図13~
図16に示す生物処理手段10によれば、第1の生物処理手段2及び第2の生物処理手段3を同一の処理槽100内に配置して装置のコンパクト化が図れるとともに、散水ろ床にハエが繁殖した場合においても、装置を解体することなく洗浄駆除作業を比較的簡単に行うことができる。
【0106】
(変形例)
図17に示すように、複数の生物処理手段10a、10bを直列に多段に接続することも可能である。生物処理手段10aは、第1の生物処理手段201及び第2の生物処理手段301及び循環手段401を備え、生物処理手段10bは、第1の生物処理手段211及び第2の生物処理手段311及び循環手段411を備えることができる。
図18に示すように、多段に接続した複数の生物処理手段10a、10b、・・・10nに対して、モニタリング手段8が検出した分離液の水質計12、一段目~N段目生物処理手段10a~10nにより得られる第1~第nの生物処理水の水質を測定する水質計13、14、15の測定結果に基づいて、分離液を所定のステップ比でステップ流入させるように構成されてもよい。
【0107】
本発明の実施の形態に係る水処理装置によれば、返送等による汚泥濃度制御が不要で、汚泥の再浮上等のトラブルが発生しない容易な維持管理にて、分離液中に含まれる有機物(BOD)および窒素(T-N)を効率良く粗取りすることが可能となり、これにより下水排除基準を満足するための希釈水量の削減し、施設の運転費用の削減することが可能となる。
【実施例0108】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0109】
(実施例1)
し尿系汚泥及び浄化槽汚泥を混合し、ポリ鉄、ポリマーにて調質後、脱水処理して得られた分離液を、
図1に示す水処理装置に供給して生物処理水を得た。脱水分離液には栄養塩(リン酸一カリウム)を添加した。表1に実験に使用した分離液の性状を示す。
【0110】
【0111】
第1の生物処理(以下、「工程(1)」という)として、散水ろ床(槽有効容量50L)を使用し、第2の生物処理(以下「工程(2)」という)として流動担体槽(槽有効容量250L)を使用した。散水ろ床に使用したろ材は、
図5及び
図6に示す膜状担体を使用した。流動担体槽に添加した担体は、担体はポリエチレン製のハニカム状担体(φ25mm、厚さ4mm、比表面積800m
2/m
3)を各槽容量に対し30容量%充填した。
【0112】
流動担体槽から散水ろ床への循環水量Qrは原水水量Qに対し0.5~2倍(平均1倍)とした。水温は25℃一定とした。原水水量を60~480L/dの範囲に変動させ、BOD処理、窒素処理性能の把握を行った。結果の一例を表2に示す。
【0113】
工程(1)をBOD容積負荷3~5.2kg-BOD/m3/dとした場合、NOx-N除去率70~85%と安定した良好な処理結果が得られた。工程(1)をBOD容積負荷2kg-BOD/m3/d未満、および7.2kg-BOD/m3/d超ではNOx-N除去率が低下する傾向にあった。前者においては好気的なBOD酸化のため、脱窒に必要な水素供与体が不足したためと考えられる。後者においては、生物膜量が増加し一部閉塞気味となり水の分散が悪くなったこと等によりNOx-N除去率が低下した。更に工程(1)のBOD容積負荷3~5.2kg-BOD/m3/dで運転したときのシステム全体(工程(1)+工程(2))では、BOD除去率90~95%、T-N除去率40~50%が得られた。必要希釈倍率は1.4~1.5倍となった(無処理の場合の希釈倍率3~4倍)。
【0114】
【0115】
(実施例2及び実施例3)
し尿系汚泥、浄化槽汚泥の比率が変わると分離液性状が異なってくる。表3及び
図19にし尿系汚泥、浄化槽汚泥の割合(し尿/浄化槽汚泥(比率))と分離液の性状の関係を示す。
【0116】
【0117】
し尿系汚泥の割合が高くなると分離液のBOD濃度、T-N濃度が高くなるため、下水道放流するための希釈水量は増加する傾向となることが分かる。上記を踏まえ、実施例1と同じ処理フロー及び処理設備で被処理水を変えて水処理実験を行った。結果を表4に示す。
【0118】
【0119】
実施例2では、表4に示すようにし尿の割合が高くなった場合に、分離液の一部を工程(2)に分配した。実施例3では水量250L/dと一定にし、工程(1)に供給した。結果を表5に示す。なお、処理水は1日分の処理水を混合した試料を分析した。
【0120】
【0121】
実施例2では、実施例3に比べて、T-N濃度は平均318mg/Lとなり、窒素除去率は50%となった。一方、実施例3では、処理水のT-N濃度は400mg/Lとなった。以上の結果より、し尿系汚泥の割合が高い場合に、分離液の性状に応じて、工程(2)に分離液の一部を分配することで、安定した窒素除去、および希釈倍率の低減効果が得られることが確認された。