(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181373
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】パターン形成装置、及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 9/02 20060101AFI20231214BHJP
G03F 7/20 20060101ALN20231214BHJP
【FI】
G03F9/02 H
G03F7/20 521
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023186020
(22)【出願日】2023-10-30
(62)【分割の表示】P 2019210885の分割
【原出願日】2019-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】杉山 享
(57)【要約】
【課題】 アライメント精度の点で有利なパターン形成装置を提供する。
【解決手段】 アライメント光学系を用いて基板上のマークの画像を取得する検出部と、前記検出部で取得した前記マークの画像の画像処理を行い前記マークの位置を計測する画像処理部と、を含む第1計測部と、前記第1計測部との相対位置が固定され、前記基板の表面位置を計測する第2計測部と、前記第1計測部で計測された前記マークの位置に基づいて、前記基板の位置の制御を行い、前記基板上にパターンを形成するよう制御する制御部を有し、前記制御部は、前記基板の表面位置が前記アライメント光学系の焦点深度内にない場合でも、前記第1計測部による前記マークの画像の取得を開始するよう前記第1計測部を制御し、前記マークの画像を取得している間に、前記第2計測部による前記基板の表面位置の計測結果に基づいて、前記基板の表面位置を調整するフォーカス制御を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アライメント光学系を用いて基板上のマークの画像を取得する検出部と、前記検出部で取得した前記マークの画像の画像処理を行い前記マークの位置を計測する画像処理部と、を含む第1計測部と、
前記第1計測部との相対位置が固定され、前記基板の表面位置を計測する第2計測部と、
前記第1計測部で計測された前記マークの位置に基づいて、前記基板の位置の制御を行い、前記基板上にパターンを形成するよう制御する制御部を有し、
前記制御部は、
前記基板の表面位置が前記アライメント光学系の焦点深度内にない場合でも、前記第1計測部による前記マークの画像の取得を開始するよう前記第1計測部を制御し、
前記マークの画像を取得している間に、前記第2計測部による前記基板の表面位置の計測結果に基づいて、前記基板の表面位置が前記アライメント光学系の焦点深度内に含まれるように前記基板の表面位置を調整するフォーカス制御を行うことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項2】
原版のパターンからの光を前記基板上に投影する投影光学系をさらに有し、
前記制御部は、前記第1計測部で計測された前記マークの位置に基づいて、前記投影光学系の光軸と直交する面における前記基板の位置合わせを行うことを特徴とする請求項1に記載のパターン形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記基板の位置合わせのために前記マークの画像を取得している間に、
前記フォーカス制御を少なくとも2回行うことを特徴とする請求項2に記載のパターン形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記基板の位置合わせのために前記マークの画像の取得を開始するタイミングで前記第2計測部による前記基板の表面位置の計測を行い、計測された前記基板の表面位置を、前記アライメント光学系の合焦位置に向けて移動させながら、前記マークの画像を取得することを特徴とする請求項2に記載のパターン形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2計測部による前記基板の表面位置の計測と前記第1計測部による前記マークの位置の計測を並行して行う第1計測モードと、前記第2計測部による前記基板の表面位置の計測を前記第1計測部による前記マークの位置の計測と独立して行う第2計測モードから選択された計測モードによって、前記基板の表面位置の計測及び前記マークの位置の計測を行うことを特徴とする請求項1に記載のパターン形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記基板の高さを変化させながら検出した前記マークの位置の検出結果と、前記基板の高さを変化させない状態で検出した前記マークの位置の検出結果とに基づいて選択された前記計測モードによって、前記基板の表面位置の計測及び前記マークの位置の計測を行うことを特徴とする請求項5に記載のパターン形成装置。
【請求項7】
前記第1計測部は、前記マークを撮像する撮像素子を有することを特徴とする請求項1に記載のパターン形成装置。
【請求項8】
前記第1計測部は、前記マークの位置を計測するためにパターンマッチング処理又はエッジ検出処理を行うことを特徴とする請求項7に記載のパターン形成装置。
【請求項9】
前記基板を保持する保持部をさらに有し、
前記制御部は、前記マークの位置に基づいて、前記保持部に対する前記基板の位置ずれを補正するプリアライメントを行うことを特徴とする請求項1に記載のパターン形成装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記プリアライメントの後に、前記保持部に対する前記基板の位置ずれを、前記プリアライメントよりも高精度に補正するファインアライメントを行うことを特徴とする請求項9に記載のパターン形成装置。
【請求項11】
前記第1計測部に含まれる光学系の一部と、前記第2計測部に含まれる光学系の一部は共通であることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のパターン形成装置を用いて基板にパターン形成を行う工程と、
前記工程で前記パターン形成が行われた前記基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成装置、及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッドなどのデバイスを製造する際に、投影光学系によって、レチクルのパターンをウエハなどの基板に投影してパターンを転写する露光装置等のパターン形成装置が使用されている。
【0003】
パターン形成装置においては、電子機器の小型化や需要の拡大に伴い、メモリやMPUに代表される半導体素子の微細化と生産性を両立させる必要がある。従って、露光装置等のパターン形成装置には、解像度、オーバーレイ精度、スループットなどの基本性能を向上させることが要求されている。
【0004】
半導体素子の微細化に伴い、オーバーレイ精度の向上が求められるため、レチクルと基板との相対的な位置を合わせるアライメントについても高精度化が必要となる。基板のアライメントに関する技術として、基板上に設けられたアライメントマークを用いて、プリアライメント及びファインアライメントの2種類のアライメントを行うことが知られている。
【0005】
プリアライメントは、基板ステージに送り込まれた基板の位置ずれ量を検出し、ファインアライメントが開始できるように、当該位置ずれを補正して基板を粗く位置合わせ(位置決め)することである。また、ファインアライメントは、基板ステージに保持された基板の位置を高精度に計測し、基板の位置合わせ誤差が許容範囲内になるように、基板を精密に位置合わせ(位置決め)することである。
【0006】
一方で、スループット向上のために、アライメントの高速化も要求されている。特許文献1は、アライメントマークの検出時間を短縮することにより、アライメントの高速化を図る技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
具体的には、特許文献1は、複数のアライメントセンサを用いて複数のアライメントマークを同時に検出可能なマーク検出装置を開示している。各アライメントセンサの光学系の焦点深度内に検出対象のアライメントマークが位置するように基板の高さ位置を調節した後に、複数のアライメントマークを同時に検出することで、アライメントマークの検出時間の短縮を図っている。
【0009】
しかしながら、特許文献1のマーク検出装置では、アライメントマークの検出動作中には基板の高さ位置の調節を行っていない。そのため、基板の高さ位置がアライメントセンサの光学系の焦点深度内にない状態でアライメントマークの検出を行ってしまうことがあり、結果としてアライメントマークの検出精度が低下してアライメントの精度低下を招くおそれがある。
【0010】
本発明は、アライメント精度の点で有利なパターン形成装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのパターン形成装置は、アライメント光学系を用いて基板上のマークの画像を取得する検出部と、前記検出部で取得した前記マークの画像の画像処理を行い前記マークの位置を計測する画像処理部と、を含む第1計測部と、前記第1計測部との相対位置が固定され、前記基板の表面位置を計測する第2計測部と、前記第1計測部で計測された前記マークの位置に基づいて、前記基板の位置の制御を行い、前記基板上にパターンを形成するよう制御する制御部を有し、前記制御部は、前記基板の表面位置が前記アライメント光学系の焦点深度内にない場合でも、前記第1計測部による前記マークの画像の取得を開始するよう前記第1計測部を制御し、前記マークの画像を取得している間に、前記第2計測部による前記基板の表面位置の計測結果に基づいて、前記基板の表面位置が前記アライメント光学系の焦点深度内に含まれるように前記基板の表面位置を調整するフォーカス制御を行う特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えば、アライメント精度の点で有利なパターン形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一側面としての露光装置の構成を示す概略図である。
【
図2】基板アライメント光学系の構成、及びアライメント光の光路を示す概略図である。
【
図3】基板フォーカス光学系の構成、及びフォーカス光の光路を示す概略図である。
【
図4】本発明の実施例1にかかるフォーカス制御を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施例2にかかるフォーカス制御を示す概略図である。
【
図6】基板上に設けられるアライメントマークの配置及び構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、本発明のパターン形成装置としての露光装置1の構成を示す概略図である。露光装置1は、物品としての半導体素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッドなどのデバイスの製造に用いられ、パターン形成を基板に行うリソグラフィ装置である。露光装置1は、ステップ・アンド・スキャン方式、或いは、ステップ・アンド・リピート方式で基板を露光する。なお、本発明は、露光装置に限らず、EUV光の照射により基板上にレジストの潜像パターンを形成するリソグラフィ装置やインプリント装置等にも適用可能である。
【0016】
露光装置1は、主制御部100と、光源制御部110と、アライメント光源120と、画像処理部130と、ステージ制御部140と、干渉計150と、レチクル(原版)アライメント計測部160と、レチクルステージ171を有する。また、露光装置1は、投影光学系180と、基板アライメント計測部(第1計測部)190と、基板ステージ200と、フォーカス光源220と、基板フォーカス計測部(第2計測部)230を有する。
【0017】
レチクルステージ171は、照明光学系(不図示)によって照明されるレチクル170を保持して移動する。レチクル170には、基板210に転写すべきパターンが描画されている。投影光学系180は、レチクル170のパターンを基板210に投影する。基板ステージ200は、基板を保持して可動の保持部であって、本実施形態では、基板210を保持して移動する。
【0018】
レチクルアライメント計測部160は、レチクル170のアライメントに用いられる。レチクルアライメント計測部160は、例えば、蓄積型光電変換素子で構成される撮像素子161と、レチクル170に設けられたアライメントマークからの光を撮像素子161に導く光学系162とを含む。基板アライメント計測部190は、基板210のアライメントに用いられる。基板アライメント計測部190は、本実施形態では、オフアクシス光学系であって、基板210に設けられたアライメントマーク211を検出する。
【0019】
主制御部100は、CPUやメモリなどを含み、露光装置1の全体の動作を制御する。主制御部100は、露光装置1の各部を制御して、基板210を露光する露光処理及びそれに関連する処理を行う。本実施形態では、主制御部100は、レチクル170に形成されたアライメントマークの位置や基板210に形成されたアライメントマーク211の位置に基づいて、投影光学系の光軸と直交する面内における基板ステージ200の位置を制御する。換言すれば、主制御部100は、レチクル170と基板210との位置合わせ、例えば、グローバルアライメントを行い、レチクル170と基板210の位置合わせが行われた状態で、基板210に対する露光処理を実行する。
【0020】
アライメント光源120は、ハロゲンランプなどを含み、基板210に形成されたアライメントマーク211を照明する。光源制御部110は、アライメント光源120からの光、即ち、アライメントマーク211を照明するためのアライメント光の照明強度を制御する。
【0021】
画像処理部130は、レチクルアライメント計測部160における撮像素子161や基板アライメント計測部190における撮像素子からの画像信号(検出信号)を画像処理してアライメントマークの位置計測を行う。本実施形態において、画像処理部130及び基板アライメント計測部190は、基板210に形成されたアライメントマーク211の位置を計測する計測装置として機能する。
【0022】
基板フォーカス計測部230は、基板210の表面位置を計測する。当該計測結果は、信号処理部240によって処理され、主制御部100は、基板210の表面位置が基板アライメント計測部190を構成するアライメント光学系の焦点深度内に含まれるように基板210の高さを調整するフォーカス制御を行う。基板フォーカス計測部230は、基板アライメント計測部190に対して相対位置が固定されている。干渉計150は、基板ステージ200に設けられたミラーに光を照射し、ミラーで反射された光を検出することで、基板ステージ200の位置を計測する。ステージ制御部140は、干渉計150によって計測された基板ステージ200の位置に基づいて、基板ステージ200を任意の位置に移動させる(駆動制御する)。
【0023】
露光装置1において、照明光学系からの光(露光光)は、レチクルステージ171に保持されたレチクル170を通過して投影光学系180に入射する。レチクル170と基板210とは、光学的に共役な位置関係になっているため、レチクル170のパターンは、投影光学系180を介して、基板ステージ200に保持された基板210に転写される。
【0024】
図2は、基板アライメント計測部190の構成、及びアライメント光の光路を示す概略図である。基板アライメント計測部190は、基板210に形成されたアライメントマーク211を検出して検出信号、本実施形態では、画像信号を生成する検出部として機能する。基板アライメント計測部190に含まれる各光学系が、基板アライメント光学系を構成している。
【0025】
基板アライメント計測部190の照明光源20は、赤外光(例えば、1000~1500nm)及び可視光(例えば、400~800nm)を発生する。アライメント光源120からの光は第1リレー光学系21、波長フィルタ板22、第2リレー光学系23を通り、基板アライメント光学系の瞳面に配置された開口絞り24に到達する。
【0026】
波長フィルタ板22は、透過波長帯域の異なる複数のフィルタを含み、主制御部100からの指令でフィルタの切換を行う。開口絞り24は、照明σの異なる複数の絞りを含み、主制御部100からの指令で絞りの切換を行うことで、照明σを変更することができる。
図2では、波長フィルタ板22と開口絞り24とがそれぞれ複数のフィルタと複数の絞りを備えているが、波長フィルタ板22と開口絞り24とは別にフィルタと絞りとを追加してもよい。
図2における波長フィルタ板22は、可視光を透過するフィルタと赤外光を透過するフィルタとを備えており、これらのフィルタを切り替えることによりマークの検出に使用する光の波長を選択できる。
【0027】
開口絞り24まで到達した光は第1照明光学系25、第2照明光学系27を通って偏光ビームスプリッタ28に導かれる。偏光ビームスプリッタ28により反射された紙面に垂直なS偏光光は、NA絞り26、プリズム63、λ/4板29を透過して円偏光に変換され、対物レンズ30を通って基板210に形成されたマーク211を照明する(照明光は
図2中の実線で示す)。NA絞り26は絞り量を変えることでNAを変更することができる。NA絞り26の絞り量は主制御部100からの指令で変更可能である。プリズム63は、アライメント光を透過する特性を持っている。
【0028】
マーク211から発生した反射光、回折光、散乱光は(
図2中の1点波線で示す)、再度対物レンズ30及びλ/4板29を透過し、紙面に平行なP偏光に変換される。P偏光は、プリズム63、偏光ビームスプリッタ28を透過し、リレーレンズ31、第1結像光学系32、光学部材35、第2結像光学系33、波長シフト差を調整する光学部材38を通過する。光学部材38を通過したP偏光は、マーク211の検出信号を光電変換素子34(例えば、CCDカメラ)上に形成する。
【0029】
続いて、
図3を用いて、基板フォーカス計測部230の構成、及び光路について説明する。上述したように、基板フォーカス計測部230は、基板210の表面位置を計測する。当該計測結果に基づいて、主制御部100は、基板210の表面位置が基板アライメント光学系の焦点深度内に含まれるように基板210の高さを調整するフォーカス制御を実行する。
【0030】
図3(a)は、フォーカス光が基板210へ照射される様子を示している。フォーカス光源220から照射されたフォーカス光は、レンズ56を通して、パターン板57を照明する。フォーカス光源220は可視光帯域の光を発生する。パターン板57は、ガラス基板にスリットパターンが描画されており、パターン板57の中心部に描画されたスリットパターンを照明されたフォーカス光は、レンズ58を通りミラー59で反射されてレンズ60に到達する。説明の都合上、パターン板57以降のフォーカス光は、主光線のみを記載するが、実際にはNAを持った光線である。
【0031】
フォーカス光はレンズ60の中心ではなく、レンズ60の中心から偏心した位置に到達し、レンズ60で屈折されることによって、基準ミラー61を通過し、レンズ62に到達する。レンズ62に到達した光も、レンズ62の中心ではなく、レンズ62の中心から偏心した位置に到達する。レンズ62で屈折されたフォーカス光は、プリズム63に到達する。プリズム63はフォーカス光を反射し、アライメント光を透過させる特性のプリズムである。プリズム63で反射されたフォーカス光は、λ/4板29を透過し、レンズ30に到達する。フォーカス光はレンズ30の中心ではなく、レンズ30の中心から偏心した位置に到達し、レンズ30で屈折されることによって、
図3(a)に示すように基板210に対して入射角度θで斜入射する。
【0032】
続いて
図3(b)を用いて、基板210に斜入射したフォーカス光がフォーカス検出センサ65で受光されるまでの光路について説明する。基板210で反射されたフォーカス光は、基板210に入射したときと同じ角度θで基板210によって反射され、レンズ30に到達する。このとき、フォーカス光はレンズ30の中心ではなく、レンズ30の中心から偏心した位置に到達し、レンズ30で屈折されることによって、λ/4板29を透過し、プリズム63に到達する。
【0033】
プリズム63で反射されたフォーカス光は、レンズ62に到達する。このとき、フォーカス光はレンズ62の中心ではなく、レンズ62の中心から偏心した位置に到達し、レンズ62で屈折されることによって、基準ミラー61を通過し、レンズ60に到達する。このとき、フォーカス光はレンズ60の中心ではなく、レンズ60の中心から偏心した位置に到達し、レンズ60で屈折されることによって、レンズ64の中心に到達し、レンズ64を透過し、フォーカス検出センサ65で受光される。
【0034】
図3を用いて、基板フォーカス計測部230が基板210にフォーカス光を斜入射し、基板210で反射されたフォーカス光がフォーカス検出センサ65で受光される様子について説明した。以上の説明により、基板210がフォーカス方向(Z方向)に移動することに応じて、フォーカス検出センサ65においてフォーカス光が受光される位置がずれることがわかる。この受光位置のずれから、基板210の表面位置を計測することができる。
【0035】
これまでに説明したように、基板アライメント計測部190を構成する基板アライメント光学系と、基板フォーカス計測部230を構成する光学系の一部は共通となっている。
【0036】
これにより、基板アライメント計測部190と基板フォーカス計測部230を合わせた構成の大型化を抑制することができる。
【0037】
本発明の露光装置では、基板アライメント計測部190がアライメントマーク211の画像信号を生成するのと並行して、基板フォーカス計測部230が基板210の表面位置の計測を行う。また、基板アライメント計測部190がアライメントマーク211の画像信号を生成するのと並行して、主制御部100はフォーカス制御を行う。以下、フォーカス制御の具体的な実施例について説明する。
【0038】
(実施例1)
図4を用いて、実施例1のフォーカス制御について説明する。
図4において、横軸は時刻Tを示し、縦軸は高さ方向(Z軸方向)の基板210の位置を示す。
図4に示したように、基板210の高さ方向の位置は経時的に変化することがある。そのため、アライメントマーク211の画像信号の生成を開始するタイミングAで、基板アライメント光学系の焦点深度内に基板210の表面位置が存在しないことがあり得る。
【0039】
そこで、本実施例では、基板アライメント計測部190がアライメントマーク211の画像信号の生成を開始するタイミングで、基板フォーカス計測部230は基板210の表面位置の計測を行う。そして、主制御部100は、基板210の表面位置の計測結果に基づいて、基板210の表面位置が、基板アライメント光学系の焦点深度内に位置するようにフォーカス制御を行う。
【0040】
一般的に、アライメントマーク211の画像信号を取得する時間に対して、フォーカス制御に要する時間は短いため、アライメントマーク211の画像信号を取得する間に複数回のフォーカス制御を実行することができる。
図4では、タイミングB及びCで基板210の表面位置計測が再度行われ、主制御部100は、当該計測結果に基づいて再度フォーカス制御を行う。これにより、アライメントマーク211の画像信号を取得する期間のほとんどの期間において、基板アライメント光学系の焦点深度内に基板210を配置することができる。
【0041】
なお、本実施例では、アライメントマーク211の画像信号を取得する期間中にフォーカス制御が3回行われる例を示したが、フォーカス制御は少なくとも2回行われることが好ましい。
【0042】
(実施例2)
続いて、
図5を用いて実施例2のフォーカス制御について説明する。
図5において、横軸は時刻Tを示し、縦軸は高さ方向(Z軸方向)の基板210の位置を示す。本実施例では、基板アライメント計測部190がアライメントマーク211の画像信号の生成を開始するタイミングで、基板フォーカス計測部230は基板210の表面位置の計測を行う。そして、主制御部100は、基板210の表面位置の計測結果に基づいて、基板210の位置を、基板アライメント光学系の合焦位置に向けて移動させるフォーカス制御を行う。
【0043】
実施例2のフォーカス制御では、アライメントマーク211の画像信号の生成開始から生成終了まで基板210の高さ方向の位置を移動させる。これにより、実施例1と比較して簡易な制御により、基板アライメント光学系の焦点深度内に基板210の表面位置を維持させることができる。
【0044】
以上のように、アライメントマーク211の画像信号を生成するのと並行して、フォーカス制御を行うことで、アライメントマーク211の画像信号を精度良く取得することが可能となる。取得された画像信号は、画像処理部130によって読み出される。画像処理部130は、画像信号に対してパターンマッチング処理を行うことで、撮像面におけるアライメントマーク211の位置を得る。但し、画像処理は、パターンマッチング処理に限定されるものではなく、アライメントマーク211の位置を得ることが可能な処理であればよい。従って、画像処理は、例えば、エッジ検出処理であってもよい。
【0045】
このようにして得られたアライメントマーク211の位置情報に基づいて、露光装置1において、プリアライメント及びファインアライメントの2種類のアライメントが行われる。プリアライメントは、基板搬送系から基板ステージ200に送り込まれた基板210の位置ずれ量を検出し、ファインアライメントが開始できるように、基板210を粗く位置合わせ(位置決め)することである。また、ファインアライメントは、基板ステージ200に保持された基板210の位置を高精度に計測し、基板210の位置合わせ誤差が許容範囲内になるように、基板210を精密に位置合わせ(位置決め)することである。
【0046】
図6を用いて、アライメント処理に関連するアライメントマークの配置、及びアライメント処理の流れについて説明する。基板210には、
図6(a)に示すように、レチクルのパターン転写領域である複数のショット領域301が格子状に配列されている。ショット領域301には、通常、同一のパターンが形成されている。
図6(b)に示すように、ショット領域301のパターン領域(回路パターン領域)RPRの周辺のスクライブラインには、アライメントマークとして、プリアライメントマークPAM及びファインアライメントマークFAMが設けられている。
【0047】
以下、一般的なアライメント処理について説明する。アライメント処理では、
図6(a)に示すように、基板210の複数のショット領域301から、アライメントマークを検出する対象のショット領域を選択し、各ショット領域のアライメントマークを検出する。例えば、
図6では、プリアライメントでアライメントマークを検出するショット領域として、サンプルショット領域302が選択されている。
【0048】
プリアライメントでは、複数のショット領域301から2以上のショット領域がサンプルショット領域302として選択される。各サンプルショット領域302において、撮像素子における画像信号を用いてプリアライメントマークPAMの位置計測が行われる。
【0049】
また、ファインアライメントでアライメントマークを検出するショット領域として、サンプルショット領域303が選択されている。ファインアライメントでは、複数のショット領域301から、基板210を露光するのに必要なアライメント精度に応じて、サンプルショット領域302の数よりも多い数のサンプルショット領域303が選択される。各サンプルショット領域303において、画像信号を用いてファインアライメントマークFAMの位置計測が行われる。
【0050】
このように、本実施形態の露光装置1では、アライメントマーク211の画像信号を精度良く取得することができ、結果として、アライメント精度を向上させることができる。従って、露光装置1は、重ね合わせ精度の高い高品位なデバイス(半導体デバイス、液晶表示デバイスなど)を提供することができる。
【0051】
本発明の実施形態における物品の製造方法は、例えば、半導体デバイスなどのマイクロデバイスや微細構造を有する素子などの物品を製造するのに好適である。かかる製造方法は、露光装置1を用いて、感光剤が塗布された基板を露光する工程(パターン形成を基板に行う工程)と、露光した基板を現像する工程(パターン形成を行われた基板を加工する工程)とを含む。また、上記形成工程につづけて、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージングなど)を含みうる。本実施形態における物品の製造方法は、従来に比べて、物品の性能、品質、生産性及び生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0053】
(変形例)
上述した実施例では、アライメントマーク211の画像信号を生成するのと並行してフォーカス制御を行っているが、アライメントマーク211の位置検出結果に応じて、アライメントマーク211の画像信号を生成する前にフォーカス制御を行っても良い。
【0054】
具体的には、以下に記載する2つの計測モードから選択された計測モードによってアライメントマーク211の位置計測を行う。第1計測モードでは、基板フォーカス計測部230による基板210の表面位置の計測と基板アライメント計測部190による基板210上のマークの位置の計測が並行して行われる。一方、第2計測モードでは、基板フォーカス計測部230による基板210の表面位置の計測が、基板アライメント計測部190による基板210上のマークの位置の計測と独立して行われる。
【0055】
計測モードの選定に際しては、基板210の高さを変化させながら検出した、アライメントマーク211の位置計測結果と、基板210の高さを変化させない状態で検出した、アライメントマーク211の位置計測結果を比較する。2つの位置計測結果の差分が所定値以下の場合には、基板フォーカス計測部230による基板210の表面位置の計測と基板アライメント計測部190による基板210上のマークの位置の計測を並行して行っても問題ないため、第1計測モードが選定される。一方、2つの位置計測結果の差分が所定値を超えた場合には第2計測モードが選定される。
【0056】
計測モードの選定は、例えば、ロットの先頭の基板に対する露光処理を開始するタイミング等で行われる。
【0057】
最適な計測モードによってアライメントマーク211の位置計測を行うことで、位置計測精度を低下させることなく、位置計測のための時間を短縮させることが可能となる。
【0058】
(物品の製造方法)
次に、前述の露光装置を利用した物品(半導体IC素子、液晶表示素子、カラーフィルタ、MEMS等)の製造方法を説明する。物品は、前述の露光装置を使用して、感光剤が塗布された基板(ウエハ、ガラス基板等)を露光する工程と、その基板(感光剤)を現像する工程と、現像された基板を他の周知の加工工程で処理することにより製造される。他の周知の工程には、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等が含まれる。本製造方法によれば、従来よりも高品位の物品を製造することができる。