(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181394
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】建物の構造部材へのリベットの取付構造
(51)【国際特許分類】
F16B 19/10 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
F16B19/10 F
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023186394
(22)【出願日】2023-10-31
(62)【分割の表示】P 2019190165の分割
【原出願日】2019-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】仁科 勇輝
(57)【要約】
【課題】主に、安価にリベットの機能を向上することなどができるようにする。
【解決手段】建物の構造部材へのリベットの取付構造では、リベット1は、後端側にツバ部2を有するスリーブ3と、スリーブ3の内部に挿通配置される軸部4とを備え、軸部4は、スリーブ3の先端部5から突出される部分に、スリーブ3の先端部5の外径D1よりも大径の頭部6を有している。
スリーブ3は、ツバ部2よりも先端寄りに位置する後端側の外周部分に、先端部5の外径D1よりも大径の段差領域7を部分的に有している。
段差領域7は、締結固定前の外径D2が被締結部材11に設けられた取付穴13に無理嵌めが可能な程度に取付穴13よりも大径になっている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端側にツバ部を有するスリーブと、該スリーブの内部に挿通配置される軸部とを備え、該軸部は、前記スリーブの先端部から突出される部分に、前記スリーブの前記先端部の外径よりも大径の頭部を有しており、
前記スリーブは、前記ツバ部よりも先端寄りに位置する後端側の外周部分に、前記先端部の外径よりも大径の段差領域を部分的に有し、
建物の構造部材を被締結部材として、
前記スリーブは、前記被締結部材に設けられた取付穴へ挿入したときに、該取付穴から突出される先端側の部分に前記頭部によって拡げられる変形予定部を有し、前記取付穴の内部に位置される後端側の部分に前記段差領域を有しており、
前記変形予定部は、締結固定前の外径が前記取付穴よりも小さくなっていると共に、前記段差領域は、締結固定前の外径が前記取付穴に無理嵌めが可能な程度に前記取付穴よりも大径になっていることを特徴とする建物の構造部材へのリベットの取付構造。
【請求項2】
後端側にツバ部を有するスリーブと、該スリーブの内部に挿通配置される軸部とを備え、該軸部は、前記スリーブの先端部から突出される部分に、前記スリーブの前記先端部の外径よりも大径の頭部を有しており、
前記スリーブは、前記ツバ部よりも先端寄りに位置する後端側の外周部分に、前記先端部の外径よりも大径の段差領域を部分的に有し、
建物の構造部材を被締結部材として、
前記スリーブは、前記被締結部材に設けられた取付穴へ挿入したときに、該取付穴から突出される先端側の部分に前記頭部によって拡げられる変形予定部を有し、前記取付穴の内部に位置される後端側の部分に前記段差領域を有しており、
前記変形予定部は、締結固定前の外径が前記取付穴よりも小さくなっていると共に、前記段差領域は、締結固定前の外径が締結固定前の外径が前記取付穴と同じ径、または、実質的に同じ径といえる範囲で前記取付穴よりも小径になっていることを特徴とする建物の構造部材へのリベットの取付構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建物の構造部材へのリベットの取付構造であって、
前記軸部は、中間部にくびれ部を有すると共に、前記くびれ部および前記頭部を除く外周面の全域に繰り返しの山谷部またはネジ山となる複数の凹凸部を有していることを特徴とする建物の構造部材へのリベットの取付構造。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の建物の構造部材へのリベットの取付構造であって、
前記変形予定部は、カシメ固定後に拡げられた前記先端側の部分が、前記被締結部材における、前記ツバ部の外周よりも径方向の外側の位置を押さえるように、締結固定前の長さが前記段差領域よりも前記スリーブの軸線方向に長くなっていることを特徴とする建物の構造部材へのリベットの取付構造。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の建物の構造部材へのリベットの取付構造であって、
前記被締結部材は、入口側の前記取付穴が、出口側の前記取付穴よりも小さくなっており、
前記段差領域は、入口側の前記取付穴に対して-0.2mm~0mm、または、0よりも大きく+0.2mm以下のクリアランスを有し、
出口側の前記取付穴に対して0.3mm~0.7mmのクリアランスを有することを特徴とする建物の構造部材へのリベットの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の構造部材へのリベットの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の被締結部材を締結するのにリベットが用いられている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献に記載されたリベットは、後端側にツバ部を有するスリーブと、スリーブ内に挿通配置されて、先端部に(スリーブの先端部よりも)大径の頭部を有する軸部とを備えている。そして、スリーブに対し、軸部をツバ部の側へ引込んで、頭部をツバ部の側へ相対的に変位させることにより、スリーブの先端部が頭部によって強制的に拡げられる。そのため、複数の被締結部材に設けられた取付穴に、片側からリベットを挿通させた状態で上記を行うことにより、スリーブの先端部の拡げられた部分(変形部)とツバ部とで複数の被締結部材を挟み付けるようにして、複数の被締結部材を締結固定することができる。
【0003】
上記特許文献に記載されたリベットでは、スリーブの外周に弾性体を取付けることで、複数の被締結部材を締結しているリベットに作用される外力(リベットの半径方向の力)を弾性体によって吸収させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に記載されたリベットには、外力を吸収するために、スリーブの外周に、別体で設けた弾性体を取付けるようにしていたので、部品点数が増えてしまい、コストがかかるなどの問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記した問題点の改善に寄与することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対して、本発明は、
後端側にツバ部を有するスリーブと、該スリーブの内部に挿通配置される軸部とを備え、該軸部は、前記スリーブの先端部から突出される部分に、前記スリーブの前記先端部の外径よりも大径の頭部を有しており、
前記スリーブは、前記ツバ部よりも先端寄りに位置する後端側の外周部分に、前記先端部の外径よりも大径の段差領域を部分的に有し、
建物の構造部材を被締結部材として、
前記スリーブは、前記被締結部材に設けられた取付穴へ挿入したときに、該取付穴から突出される先端側の部分に前記頭部によって拡げられる変形予定部を有し、前記取付穴の内部に位置される後端側の部分に前記段差領域を有しており、
前記変形予定部は、締結固定前の外径が前記取付穴よりも小さくなっていると共に、前記段差領域は、締結固定前の外径が前記取付穴に無理嵌めが可能な程度に前記取付穴よりも大径になっていることを特徴とする建物の構造部材へのリベットの取付構造。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記構成によって、安価にリベットの機能を向上することなどができる。また、段差領域は、締結固定前の外径が、取付穴に無理嵌めが可能な程度に取付穴よりも大径になっていることで、取付穴に対するリベットのガタ付きを抑制して、リベットによる建物の構造部材に対する保持力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態にかかるリベットの全体側面図である。
【
図2】
図1のスリーブの一部破断した全体側面図である。
【
図4】
図1のリベットを取付穴に挿入する状態を示す側面図である。
【
図5】リベットを取付穴に挿入する状態を示す側面図である。
【
図6】取付穴に挿入したリベットをカシメ固定した状態を示す側面図である。
【
図7】建物を構成する建物ユニットに対し、この実施例のリベットによって外壁材を取付けるための間柱を設置した状態を示す斜視図である。
【
図8】この実施例のリベットによって外壁材を間柱に取付けた状態を示す建物ユニットの側面図である。
【
図9】この実施例のリベットによって取付けられた外壁材の、水平力(せん断力)に対する層間変位の状態を調べるせん断試験の様子を示す図である。
【
図10】せん断試験の結果をまとめた、せん断力と層間変位との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1~
図10は、この実施の形態を説明するためのものである。
【実施例0011】
<構成>以下、構成について説明する。
【0012】
(1)
図1は、この実施例にかかるリベット1を示すものである。このリベット1は、後端側にツバ部2を有するスリーブ3(
図2)と、スリーブ3の内部に挿通配置される軸部4(
図3)とを備えている。軸部4は、スリーブ3の先端部5から突出される部分に、スリーブ3の先端部5の外径D1(
図4)よりも大径の頭部6を有している。
そして、スリーブ3は、ツバ部2よりも先端寄りに位置する後端側の外周部分に、先端部5の外径D1よりも大径(外径D2)の段差領域7を部分的に有している。
【0013】
ここで、リベット1は、カシメによって複数の被締結部材11,12(
図4)を締結固定(カシメ固定または接合)するための締結具のことである。この実施例のリベット1は、スリーブ3および軸部4の2つの部品によって構成されている。
【0014】
なお、被締結部材11,12は、リベット1によって締結固定される部材のことである。複数の被締結部材11,12とは、2つ以上の被締結部材11,12のことである。複数の被締結部材11,12には、重ね合わせた状態で互いに連通するようにそれぞれ取付穴13,14が形成される。互いに連通された取付穴13,14は、リベット1を差し込む側(被締結部材11の側)が入口部となり、その反対のリベット1が突出される側(被締結部材12の側)が出口部となる。被締結部材11,12については、後述する。この実施例のリベット1は、複数の被締結部材11,12の片側(入口部の側)からの作業によって締結固定ができるようにしたワンサイドリベットとなっている。
【0015】
後端側は、スリーブ3の長手方向(軸線方向)の中央部よりも後側の部分のことである。なお、後端部8は、スリーブ3の軸線方向の両端部のうちの一方の端部のことであり、作業上、ツバ部2を形成した側の端部が後端部8となり、ツバ部2が形成されない反対側の端部が先端部5となる。ツバ部2は、スリーブ3の後端部8、または、後端寄りの位置に形成される。この実施例では、ツバ部2は、スリーブ3の後端寄りの位置に形成されており、スリーブ3のツバ部2よりも後端側の部分は、先端部5とほぼ同径か、または、先端部5よりも大径とされており、また、後端部8には、後端側へ向かって先細りとなるテーパ部などが形成されている。
【0016】
ツバ部2は、スリーブ3の外周に一体に形成された、取付穴13,14よりも径の大きい円盤状の部分である。ツバ部2は、スリーブ3の外周面からほぼ半径方向へ張出すように同心円状に形成される。ツバ部2は、スリーブ3の周方向に一定の幅(張出量)を有して連続的に形成される。ツバ部2は、両面を平坦面などとすることで、全周に亘って均一肉厚に形成される。なお、ツバ部2の外周縁部には、必要に応じて、アール状の面取部などを形成しても良い。ツバ部2は、リベット1のカシメ固定の際に、複数の被締結部材11,12のうちの片側の面(被締結部材11側の面)に当接係止される。
【0017】
スリーブ3は、リベット1の本体部分を構成する金属製の部品であり、ほぼ中空円筒状をしている。スリーブ3は、軸線方向に対して真っ直ぐに延ばされており、少なくともツバ部2や段差領域7よりも前端側の部分は、外周面を円筒面状などとすることができる。スリーブ3の内部の軸心位置には、軸線方向へほぼ均一径で延びる貫通穴15(
図2)が真っ直ぐに形成されている。スリーブ3は、取付穴13,14を合計した長さよりも軸線方向に長く延びるように形成される。スリーブ3は、リベット1のカシメ固定の際に、先端部5の側から取付穴13,14(の入口部)へ挿入される。
【0018】
スリーブ3の内部とは、スリーブ3の軸心位置に形成された貫通穴15のことである。
【0019】
軸部4は、スリーブ3を変形させてカシメ固定を行わせるための金属製の部品である。軸部4は、スリーブ3よりも硬質の金属材によって形成される。軸部4は、貫通穴15へ軸線方向に移動自在または摺動自在に通される。軸部4は、貫通穴15の内径とほぼ等しいかそれよりも若干小さい外径寸法を有して、スリーブ3の軸線方向へ真っ直ぐに延ばされる。軸部4は、軸線方向に対しスリーブ3よりも長く延ばされて、スリーブ3の両端部から突出するように、スリーブ3に設置される。
【0020】
軸部4は、ほぼ一定の径寸法を有するほぼ円柱状の部材にして、外周面が円筒面状になるようにしても良いが、この実施例では、軸部4の後端部を後方へ引張り易いように、外周面に、複数の凹凸部16(
図3)を設けるようにしている。凹凸部16は、例えば、繰り返しの山谷部などとしても良いし、または、ネジ山(雄ネジ)などとしても良い。凹凸部16は、軸部4の、軸線方向のほぼ全域に亘って形成しても良い。
【0021】
また、軸部4の軸線方向の中間部には、くびれ部17(
図3)などを適宜形成することができる。このくびれ部17は、例えば、リベット1によるカシメ固定後に、スリーブ3に対して軸部4の位置を固定するロック部などとして使うことができるし、または、スリーブ3の後端部8から突出された軸部4の後端側の不要となった部分を切断除去し易くするためのものとして使うことなどができる。この実施例では、くびれ部17は、凹凸部16の間に設けられている。そして、軸部4は、後端部をスリーブ3の先端部5の側から貫通穴15へ挿通するようになっており、軸部4の後端部には、スリーブ3への挿入を案内するための先細状のテーパ部18(
図3)などを形成しても良い。
【0022】
スリーブ3の先端部5の外径D1は、取付穴13,14へ挿入できる大きさとされる。
【0023】
頭部6は、軸部4の先端に一体に形成された拡径部である。頭部6は、取付穴13,14へ通せるように、取付穴13,14よりは若干小径に形成される。頭部6は、スリーブ3の先端部5に対する加工治具となるように、後端側の面が、後狭まりの傾斜面19とされている。そして、
図5、
図6に示すように、リベット1のカシメ固定の際に、この傾斜面19を、スリーブ3の先端部5に食い込ませることによって、スリーブ3は先端部5およびその周辺が強制的に変形されて拡げられる。そして、このスリーブ3の先端部5の変形された部分とツバ部2とによって、複数の被締結部材11,12が挟着固定される。なお、頭部6は、先端側の面をほぼ球面状などとしても良い。
【0024】
段差領域7は、スリーブ3の後端側の部分に局所的に形成された段差状の部分(段差部)のことである。段差領域7は、スリーブ3を側方から見たときに、段差状になっていれば、どのような形状の段差であっても良い。この実施例では、スリーブ3を、部分的に厚肉にして外周部分を大径化することで、周方向に連続する段差部を形成している。
【0025】
(2)スリーブ3は、被締結部材11,12に設けられた取付穴13,14へ挿入したときに、取付穴13,14から突出される先端側の部分に頭部6によって拡げられる変形予定部31を有し、取付穴13,14の内部に位置される後端側の部分に段差領域7を有しても良い。
変形予定部31は、外径D1が取付穴13,14(の径D3,D4、
図4)よりも小さくなっていると共に、段差領域7は、外径D2が取付穴13,14(の径D3,D4)とほぼ同等の大きさを有しても良い。
【0026】
ここで、スリーブ3の取付穴13,14の内部に位置される部分は、スリーブ3のツバ部2の位置から、スリーブ3の先端側へ向かって、取付穴13,14を合計した長さと等しい距離進んだ位置までの部分である。この部分は、スリーブ3の後端側の部分の一部である。また、取付穴13,14から突出される先端側の部分は、取付穴13,14を合計した長さよりも先端側に存在する部分である。この部分は、主にスリーブ3の先端部5の周辺部分となるが、後端側の部分の前寄りの部分も含まれる場合がある。
【0027】
変形予定部31は、取付穴13,14から突出される先端側の部分のほぼ全域に亘って形成されるのが好ましい。変形予定部31は、外周面が先端部5の外径D1と同じ径寸法の円筒面とされる。なお、変形予定部31には、頭部6によって変形され易くするために、例えば、内周面や外周面などに割溝などを適宜形成したり、内周面や外周面などを他の部分よりも薄肉に形成したりしても良い。但し、変形予定部31の軸線方向の大きさや範囲は、上記に限るものではない。変形予定部31は、カシメ固定後には変形部31a(
図6)となる。
【0028】
段差領域7は、取付穴13,14の内部に位置される部分のほぼ全域に亘って形成するのが好ましい。但し、段差領域7の軸線方向の大きさや範囲は、上記に限るものではない。
【0029】
変形予定部31の外径D1は、通常の場合、取付穴13,14(の径D3,D4)に対して、十分なクリアランス32(余裕代、
図4)を有する程度に小径化される。
【0030】
段差領域7の外径D2は、取付穴13,14の大きさに合わせた(クリアランス32がほぼない)大きさに予め設定される。同等は、等しい(同じ)か、ほぼ等しいといえる範囲で若干大き目か、または、若干小さ目となる寸法のことである。若干大き目か、または、若干小さ目の「若干」は、例えば、上記したクリアランス32の1~2割程度の大きさなどすることができる。段差領域7の外径D2は、複数の被締結部材11,12に設けられた取付穴13,14に通るように、取付穴13,14と同じか、取付穴13,14よりも若干小径に形成するのが好ましい。但し、無理嵌めが可能な程度であれば、段差領域7の外径D2は、取付穴13,14(の径D3,D4)よりも若干大径であっても良い。
【0031】
具体的には、例えば、複数の被締結部材11,12の取付穴13,14の径D3,D4を、それぞれ7.5mmおよび8.0mmとした場合、小さい方のD3の大きさ(7.5mm)を基準にして、ほぼ1.0mm(±0.2mm)程度のクリアランス32を確保できるように、変形予定部31は外径D1を6.3mm~6.7mmなどに設定し、段差領域7はクリアランス32がほぼできないように外径D2を7.3mm~7.7mmなどに設定される。但し、変形予定部31や段差領域7などの寸法関係については、必ずしも上記に限るものではない。
【0032】
(3)段差領域7は、先端側に先細状のテーパ部41を有しても良い。
【0033】
ここで、テーパ部41は、段差領域7の先端側に設けた、先端部5の側へ向って先細りとなる傾斜面のことである。このテーパ部41は、段差領域7の外径D2の大きさから、変形予定部31の外径D1の大きさへ向かって連続的に縮径されるように、一定の角度の傾斜面などとするのが好ましい。
【0034】
(4)
図7、
図8に示すように、被締結部材11,12は、建物51の構造部材52であっても良い。
【0035】
ここで、建物51は、どのような構造のものであっても良いが、例えば、ユニット建物とすることができる。ユニット建物は、予め工場で製造したほぼ箱型の建物ユニット53を建築現場へ複数搬送して建築現場で組み立てることにより、短期間のうちに構築できるようにした建物51のことである。ユニット建物で使用される建物ユニット53には、鉄骨系のものや木質系のものなどが存在しているが、例えば、鉄骨系の建物ユニット53は、4本の柱54の上端間を4本の天井梁55で矩形状に連結し、4本の柱54の下端間を4本の床梁56で矩形状に連結してなるボックスラーメン構造のユニットフレームを有している。
【0036】
建物51の構造部材52は、建物51の基本構造を構成する部材のことである。ユニット建物の場合、ユニットフレームや、ユニットフレームを構成する各部材(柱54や天井梁55や床梁56など)や、ユニットフレームに取付けられる外壁材57(耐力壁、
図8)などが構造部材52となる。また、ユニットフレームには、天井梁55と床梁56との間に上下方向に延びる間柱58を設置して、この間柱58に外壁材57を取付けるようにしているが、間柱58も構造部材52となる。なお、外壁材57の裏面側には、外壁材57を間柱58に取付けるための金属製の取付枠部59(
図5)が構造部材52として設けられる。そして、被締結部材11,12は、例えば、間柱58および外壁材57(の取付枠部59)などとすることができる。
【0037】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0038】
リベット1は、以下のようにして、複数の被締結部材11,12を締結固定するのに用いられる。
【0039】
まず、複数の被締結部材11,12を重ね合わせた状態にして、複数の被締結部材11,12に互いに連通するように形成された取付穴13,14へ、取付穴13,14の片側(例えば、取付穴13の側)から反対側へリベット1を差込むようにする。このとき、リベット1は、スリーブ3に軸部4を挿入配置して一体化された状態となっており、この状態で、スリーブ3の先端部5を、取付穴13,14の片側の入口部へ差込んで、スリーブ3の先端部5周辺および軸部4の頭部6などを取付穴13,14の反対側(例えば、取付穴14の側)の出口部から突出させ、更に、ツバ部2(の先端側の面)を被締結部材11,12の片側の面(例えば、被締結部材11の面)に当接係止させるようにする。
【0040】
次に、スリーブ3を、被締結部材11にツバ部2が当接係止された状態に保ちつつ、スリーブ3に挿通配置されている軸部4をツバ部2の側(後端側)へ引込むようにして、スリーブ3に対し、軸部4の頭部6をツバ部2の側へ相対的に変位させる。軸部4の引込みは、例えば、軸部4を真っ直ぐに軸線方向へ引張るようにしても良いし、軸部4を周方向に回転させながら引込むようにしても良い。
【0041】
そして、頭部6をスリーブ3に対して相対的に変位させることで、頭部6によってスリーブ3の先端部5周辺における被締結部材12から突出された部分(変形予定部31)の全部または一部を強制的に拡げるようにする。これにより、スリーブ3の先端側の拡げられた部分(変形部31a)とツバ部2とで複数の被締結部材11,12の両面が挟み付けられ、複数の被締結部材11,12がリベット1によって締結固定(カシメ固定)される。
【0042】
このように、この実施例のリベット1(ワンサイドリベット)を用いることで、片側からの作業で複数の被締結部材11,12を容易に締結(または接合)することができ、複数の被締結部材11,12を見栄えの良い状態で固定することや、生産性良く複数の被締結部材11,12を固定することなどが可能になる。
【0043】
この際、リベット1による締結部は、複数の被締結部材11,12の間に(リベット1の半径方向の)力(せん断力)が作用されても、被締結部材11,12どうしがリベット1の半径方向に変位(層間変位)されないようになっているのが望ましい。しかし、スリーブ3と取付穴13,14との間にクリアランス32があると、リベット1によって被締結部材11,12どうしの層間変位を抑制することが難しくなる。
【0044】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0045】
(効果 1)リベット1は、ツバ部2よりも先端寄りに位置する後端側の外周部分に、先端部5の外径D1よりも大径の段差領域7を部分的に有しても良い。これにより、スリーブ3に径の異なる部分(先端部5および段差領域7)が同時且つ一体的に設けられることになるので、径が異なるそれぞれの部分にそれぞれ異なる機能を持たせることができるようになる。そして、スリーブ3の後端側の外周部分に予め段差領域7を一体に設けておくことで、(例えば、スリーブ3の外周に、別体で形成された弾性体などを取付ける必要などをなくすことができるため、)安価にリベット1の機能向上を図ることなどが可能になる。
【0046】
(効果 2)より具体的には、スリーブ3の取付穴13,14の内部に位置される後端側の部分に段差領域7を設けて、段差領域7の外径D2を取付穴13,14の径D3,D4と同等としても良い。これにより、取付穴13,14と段差領域7との間にクリアランス32が無くなるかまたは無視できる程度に小さくなるため、取付穴13,14の内部でリベット1が径方向に変位したり傾いたりし難くなるので、取付穴13,14に対するリベット1のガタ付きを抑制して、リベット1による被締結部材11,12に対する保持力を高めることができる。よって、リベット1によって締結された被締結部材11,12がリベット1の径方向に変位され難くなり、被締結部材11,12を径方向に変位させるのに必要な力(せん断力)が大きくなるので、リベット1による被締結部材11,12の締結部の、外力に対する耐力を向上することができる。また、段差領域7と取付穴13,14との間にクリアランス32が無くなるかまたは無視できる程度に小さくなることから、取付穴13,14の部分の封止力や密閉性を確保・向上することができる。
【0047】
そして、スリーブ3の取付穴13,14から突出される(先端部5から段差領域7までの間の)部分に変形予定部31を設けて、変形予定部31の外径D1を取付穴13,14よりも小さくしても良い。これにより、変形予定部31と取付穴13,14との間に所要のクリアランス32が確保されるので、変形予定部31を取付穴13,14へ通し易くなり、その分、リベット1による被締結部材11,12の締結時の施工性(または生産性)を向上することができる。
【0048】
よって、リベット1における、締結時の施工性の向上と、締結後のリベット1による締結部の耐力の向上や、取付穴13,14部分の封止力・密閉性の向上とを、安価な構成(変形予定部31と段差領域7とを一体に有する構成)で同時に実現できる。
【0049】
(効果 3)スリーブ3の段差領域7は、先端側に先細状のテーパ部41を有しても良い。これにより、スリーブ3の変形予定部31を被締結部材11,12に形成された取付穴13,14へ挿入した後に、テーパ部41による案内が行われることで、(変形予定部31よりも大径の)段差領域7を取付穴13,14の内部へ挿入し易くすること(例えば、引掛かることなくスムーズに挿入することや、必要な場合には無理嵌めを行わせること)ができる。また、取付穴13,14への段差領域7の挿入を案内する際に、テーパ部41によって(多少の芯ズレがあっても)スリーブ3と取付穴13,14との芯出しを行わせることができ、被締結部材11,12に対するリベット1の締結部の精度を向上することができる。
【0050】
(効果 4)リベット1によって締結される被締結部材11,12を、建物51の構造部材52としても良い。この実施例のリベット1は、(スリーブ3に段差領域7を一体に設けたことによって、通常の段差領域7がないものと比べて)高い保持力が得られるようになるため、リベット1を、建物51を構成する複数の構造部材52どうしの締結に対して支障なく用いることが可能になる。
【0051】
そして、例えば、被締結部材11としての構造部材52を、建物51の間柱58および外壁材57として、間柱58に対する外壁材57の取付けに、この実施例のリベット1を用いた場合に、
図9に示すような、せん断試験を行ったところ、
図10のグラフに示されるような結果が得られた。上記せん断試験は、建物51の外壁材57(耐力壁)に水平力(せん断力)を作用させたときの、間柱58に対する外壁材57の(仮想線で示すような)層間変位の状態を調べたものである。
【0052】
即ち、段差領域7を有するこの実施例のリベット1を用いた場合は、実線で示すグラフのようになり、段差領域7を有していない(従来の)リベット1を用いた破線のグラフと比べて、全体的に、層間変位に要するせん断力が大きくなるように改善されており、その分、リベット1による締結部の耐力が向上して、建物51における変形防止性能が高くなることが確認された。
【0053】
そのため、グラフの層間変位が小さい(左側の)領域では、締結部の初期剛性が格段に向上することによる建物51の居住性の向上が得られ、また、層間変位が大きい(右側の)領域では、締結部の耐力が向上することによる耐震性の向上を得ることができる。よって、建物51に(例えば、交通振動や地震などの)水平力が作用された場合に、住居振動による不快感の防止や、被締結部材11,12(外壁材57)のガタ付きの抑制などを図ると共に、地震による内装の被害などの抑制や、大地震に対する建物51の耐力の向上などを図ることができる。
【0054】
なお、この実施例のリベット1は、建物51の複数の構造部材52どうしの取付けに用いるのに適しているが、構造部材52どうしの取付け以外にも、例えば、サッシや手すり等の建物51に通常設けられている非構造部材の(構造部材52や構造部材52以外への)取付けなどに対しても有効に使用することが可能である。