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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181417
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料
(51)【国際特許分類】
   C12C 12/00 20060101AFI20231214BHJP
   C12C 11/00 20060101ALI20231214BHJP
   C12C 7/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
C12C12/00
C12C11/00 A
C12C7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187453
(22)【出願日】2023-11-01
(62)【分割の表示】P 2022150456の分割
【原出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【弁理士】
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悠一
(72)【発明者】
【氏名】岡島 高穂
(72)【発明者】
【氏名】丸橋 太一
(57)【要約】
【課題】ビールらしい麦の味わいを有し、さらに、スッキリした飲みやすい味わいを有す
るビールテイスト飲料を提供する。
【解決手段】オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、および、外観発酵度が70.
0%以上、アルコール度数が25.0(v/v)%未満であるビールテイスト飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、外観発酵度が70.0%以上、および、
アルコール度数が25.0(v/v)%未満であるビールテイスト飲料。
【請求項2】
外観発酵度が74.0%以上である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
リン酸含有量が300質量ppm以上である、請求項1または2に記載のビールテイス
ト飲料。
【請求項4】
リン酸含有量が3000質量ppm以下である、請求項1~3のいずれかに記載のビー
ルテイスト飲料。
【請求項5】
アルコール度数が10.5(v/v)%以上である、請求項1~4のいずれかに記載の
ビールテイスト飲料。
【請求項6】
色度が5EBC以上である、請求項1~5のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
【請求項7】
麦芽使用比率が40質量%以上である、請求項1~6のいずれかに記載のビールテイス
ト飲料。
【請求項8】
ビールテイスト飲料がエールビールテイスト飲料である、請求項1~7のいずれかに記
載のビールテイスト飲料。
【請求項9】
ビールテイスト飲料が発酵ビールテイスト飲料である、請求項1~8のいずれかに記載
のビールテイスト飲料。
【請求項10】
外観発酵度が70.0%以上になるように発酵させる発酵工程を有する、オリジナルエ
キス濃度が20.0質量%以上、および、アルコール度数が25.0(v/v)%未満の
ビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項11】
オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、アルコール度数が25.0(v/v)%
未満、および、外観発酵度が70.0%以上となるように調整する工程を有する、ビール
テイスト飲料の香味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールテイスト飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、最近の消費者の多様化した好みに応じて、様々なビールテイスト飲料が検討
され、提供されている。
例えば、特許文献1には、ビールらしい苦味と後キレを有するビールテイスト飲料の提
供を目的として、0.3~5ppmのクワシンおよび/または0.5~5ppmのキニー
ネを含んでなるビールテイスト飲料が記載されている。このような状況において、ビール
らしい麦の味わいを感じられるようにオリジナルエキス濃度を高くすると飲みにくい味わ
いになってしまう傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-6077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ビールテイスト飲料において、ビールらしい麦の味わいを有し、さらに、スッキリした
飲みやすい味わいを有するビールテイスト飲料が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、および、外観発酵度が70.
0%以上、アルコール度数が25.0(v/v)%未満であるビールテイスト飲料を提供
する。
すなわち、本発明には、以下の態様の発明が含まれる。
[1]
オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、外観発酵度が70.0%以上、および、
アルコール度数が25.0(v/v)%未満であるビールテイスト飲料。
[2]
アルコール度数が10.5(v/v)%以上である、[1]に記載のビールテイスト飲
料。
[3]
色度が5EBC以上である、[1]または[2]に記載のビールテイスト飲料。
[4]
麦芽使用比率が40質量%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載のビールテイ
スト飲料。
[5]
麦芽使用比率が50質量%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載のビールテイ
スト飲料。
[6]
ビールテイスト飲料が発酵ビールテイスト飲料である、[1]~[5]のいずれかに記
載のビールテイスト飲料。
[7]
外観発酵度が70.0%以上になるように発酵させる発酵工程を有する、オリジナルエ
キス濃度が20.0質量%以上、および、アルコール度数が25.0(v/v)%未満の
ビールテイスト飲料の製造方法。
[8]
オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、アルコール度数が25.0(v/v)%
未満、および、外観発酵度が70.0%以上となるように調整する工程を有する、ビール
テイスト飲料の香味改善方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の好適な一態様によれば、ビールらしい麦の味わいを有し、さらに、スッキリし
た飲みやすい味わいを有するビールテイスト飲料を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.ビールテイスト飲料
本明細書において、「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつアルコール含
有の炭酸飲料をいう。つまり、本明細書のビールテイスト飲料は、特に断わりがない場合
、ビール風味を有するいずれの炭酸飲料をも包含する。
したがって、「ビールテイスト飲料」には、麦芽、ホップ、および水を原料として、こ
れらを、酵母を用いて発酵させて得られる麦芽発酵飲料であるビールや、発酵ビールテイ
スト飲料だけでなく、エステルや高級アルコールやラクトンなどを含むビール香料が添加
された炭酸飲料をも包含する。ビール香料としては、例えば、酢酸イソアミル、酢酸エチ
ル、n-プロパノール、イソブタノール、アセトアルデヒド、カプロン酸エチル、カプリ
ル酸エチル、イソアミルプロピオネート、リナロール、ゲラニオール、シトラール、4-
ビニルグアイアコール(4-VG)、4-メチル-3-ペンテン酸、2-メチル-2-ペ
ンテン酸、1,4-シネオール、1,8-シネオール、2,3-ジエチル-5-メチルピ
ラジン、γ-デカノラクトン、γ-ウンデカラクトン、ヘキサン酸エチル、2-メチル酪
酸エチル、n-酪酸エチル、ミルセン、シトラール、リモネン、マルトール、エチルマル
トール、フェニル酢酸、フラネオール、フルフラール、メチオナール、3-メチル-2-
ブテン-1-チオール、3-メチル-2-ブタンチオール、ダイアセチル、フェルラ酸、
ゲラン酸、ゲラニルアセテート、酪酸エチル、オクタン酸、デカン酸、9-デセン酸、ノ
ナン酸、テトラデカン酸、プロパン酸、2-メチルプロパン酸、γ-ブチロラクトン、2
-アミノアセトフェノン、3-フェニルプロピオン酸エチル、2-エチル-4-ヒドロキ
シ-5-メチル-3(2H)-フラノン、ジメチルスルホン、3-メチルシクロペンタン
-1,2-ジオン、2-メチルブタナール、3-メチルブタナール、2-メチルテトラヒ
ドロフラン-3-オン、2-アセチルフラン、2-メチルテトラヒドロフラン-3-オン
、ヘキサナール、ヘキサノール、シス-3-ヘキセナール、1-オクテン-3-オール、
β-ユーデスモール、4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン、β-カリオフィ
レン、β-ミルセン、フルフリルアルコール、2-エチルピラジン、2,3-ジメチルピ
ラジン、酢酸2-メチルブチル、イソアミルアルコール、5-ヒドロキシメチルフルフラ
ール、フェニルアセトアルデヒド、1-フェニル-3-ブテン-1-オン、トランス-2
-ヘキセナール、ノナナール、フェネチルアルコールが挙げられる。
さらに、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、上面発酵酵母(サッカロマイセス等
)を用いた発酵工程を経て醸造されたエールビールテイスト飲料であってもよく、下面発
酵酵母(サッカロマイセス等)を用いた発酵工程を経て醸造されたラガービールテイスト
飲料、ピルスナービールテイスト飲料であってもよい。
【0008】
ビールテイスト飲料におけるオリジナルエキス(O-Ex)濃度(原麦汁濃度)が高く
なると、ビールらしい麦の味わいを感じやすくなり、水っぽさを感じにくくなる。そこで
、本発明の一態様のビールテイスト飲料のオリジナルエキス濃度は20.0質量%以上で
あり、21.0質量%以上、21.5質量%以上、22.0質量%以上、22.5質量%
以上、23.0質量%以上、23.5質量%以上、24.0質量%以上、24.5質量%
以上、25.0質量%以上、25.5質量%以上、26.0質量%以上、26.5質量%
以上、27.0質量%以上、27.5質量%以上、28.0質量%以上、28.5質量%
以上、29.0質量%以上、29.5質量%以上、30.0質量%以上、30.5質量%
以上、31.0質量%以上、31.5質量%以上、または32.0質量%以上であっても
よい。また、本発明の一態様のビールテイスト飲料のオリジナルエキス濃度は、飲みやす
さの観点から、好ましくは50.0質量%以下、より好ましくは45.0質量%以下、さ
らに好ましくは40.0質量%以下、よりさらに好ましくは37.0質量%以下、よりさ
らに好ましくは35.0質量%以下、よりさらに好ましくは34.0質量%以下、よりさ
らに好ましくは33.0質量%以下、よりさらに好ましくは32.5質量%以下、よりさ
らに好ましくは32.0質量%以下、よりさらに好ましくは31.5質量%以下、よりさ
らに好ましくは31.0質量%以下、よりさらに好ましくは30.5質量%以下、特に好
ましくは30.0質量%以下であるが、29.5質量%以下、29.0質量%以下、28
.5質量%以下、28.0質量%以下、27.5質量%以下、27.0質量%以下、26
.5質量%以下、26.0質量%以下、25.5質量%以下、25.0質量%以下、24
.質量量%以下、24.0質量%以下、23.5質量%以下、23.0質量%以下、22
.5質量%以下、22.0質量%以下、21.5質量%以下、21.0質量%以下、20
.5質量%以下、20.0質量%以下、19.5質量%以下、19.0質量%以下であっ
てもよい。
オリジナルエキス濃度の調整は、希釈水または炭酸水の添加、原材料(麦芽、コーング
リッツ、糖液等)の種類、原材料の量、麦汁濾過の時間、麦汁濾過のpH、煮沸時間、煮
沸温度等を適宜設定して行うことができる。
本発明に係るビールテイスト飲料のオリジナルエキス(原麦汁エキス)は、例えば、改
訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員
会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂に記載されている方法によって測定することが
できる。
【0009】
上述のとおり、オリジナルエキス濃度が高くなるとビールらしい麦の味わいを感じやす
くなり、水っぽさを感じにくくなるが、オリジナルエキス濃度が高くなると飲みにくくな
る場合が生じる。そこで、本発明のビールテイスト飲料では、糖化条件および発酵条件を
調整して外観発酵度を70.0%以上に上げることによって、飲みやすくスッキリとした
味わいのビールテイスト飲料を提供できる。
【0010】
本発明のビールテイスト飲料の外観発酵度は70.0%以上であるが、麦に由来する豊
かな味わいをより向上させたビールテイスト飲料とする観点から、71.0%以上、72
.0%以上、73.0%以上、74.0%以上、75.0%以上、76.0%以上、78
.0%以上、80.0%以上、82.0%以上、84.0%以上、86.0%以上、88
.0%以上、89.0%以上、90.0%以上、91.0%以上、92.0%以上、93
.0%以上、94.0%以上、95.0%以上、96.0%以上、97.0%以上、98
.0%以上、99.0%以上、100.0%以上、101.0%以上、102.0%以上
、103.0%以上、104.0%以上、105.0%以上、106.0%以上、107
.0%以上、108.0%以上、109.0%以上、110.0%以上、または111.
0%以上としてもよい。
本発明のビールテイスト飲料の外観発酵度は、ビールらしい麦の味わいをより向上させ
たビールテイスト飲料とする観点から、110.0%以下、105.0%以下、104.
0%以下、103.0%以下、102.0%以下、101.0%以下、100.0%以下
、99.0%以下、98.0%以下、97.0%以下、96.0%以下、95.0%以下
、94.0%以下、93.0%以下、92.0%以下、91.0%以下、または90.0
%以下としてもよい。
【0011】
本明細書において、「外観発酵度」とは、発酵前の液に含まれる全糖濃度のうち、酵母
がアルコール発酵の栄養源として消費できる糖濃度の占める割合を意味する。例えば、本
発明のビールテイスト飲料の外観発酵度AAは、下記式(1)から算出することができる

式(1):AA(%)=100×(P-Es)/P
上記式(1)中、「P」は、オリジナルエキス(原麦汁エキス)であり、「BCOJビ
ール分析法(日本醸造協会発酵、ビール酒造組合編集、2004年11月1日改訂版)」
に記載された方法により、測定することができる。
また、「Es」は、ビールテイスト飲料の外観エキスを示す。外観エキスは、例えば、
「BCOJビール分析法(日本醸造協会発酵、ビール酒造組合編集、2004年11月1
日改訂版)」に記載されるように、下記式(2)から算出することができる。
式(2):Es=-460.234+662.649×D-202.414×D
(式(2)中、Dは、ガス抜きビールテイスト飲料の比重である。)
なお、外観エキス「Es」は、上記式(2)中のDによって負の値になることがあるた
め、算出される外観発酵度が100%を超える場合がある。
【0012】
なお、ビールテイスト飲料の外観発酵度の調整は、希釈水または炭酸水の添加、原材料
(麦芽、コーングリッツ、糖液等)の種類、原材料の量、酵素の種類、酵素(糖質分解酵
素、異性化酵素等も含む)の添加量、酵素反応時の温度、酵素の添加のタイミング、糖化
時間、糖化時のpH、糖化時の温度、仕込工程(麦芽投入から酵母添加前までの麦汁製造
工程)でのpH、仕込工程での温度、麦汁濾過の時間、麦汁を調製する際(糖化時含む)
の各温度領域の設定温度及び保持時間、発酵前液のオリジナルエキス濃度、発酵工程での
オリジナルエキス濃度、発酵条件(酸素濃度、通気条件、酵母品種、酵母の添加量、酵母
増殖数、酵母の除去タイミング、発酵温度、発酵時間、圧力設定、二酸化炭素濃度等)、
冷却タイミング、冷却温度、冷却時間等を適宜設定して行うことができる。
【0013】
ビールテイスト飲料のアルコール度数は、特に制限はなく、例えば、1.0(v/v)
%以上、2.0(v/v)%以上、3.0(v/v)%以上、3.5(v/v)%以上、
4.0(v/v)%以上、4.5(v/v)%以上、5.0(v/v)%以上、5.5(
v/v)%以上、6.0(v/v)%以上、6.5(v/v)%以上、7.0(v/v)
%以上、8.0(v/v)%以上、または9.0(v/v)%以上であってもよいが、飲
みごたえの観点から、好ましくは10.0(v/v)%以上、より好ましくは10.5(
v/v)%以上、さらに好ましく11.0(v/v)%以上であり、さらに、11.5(
v/v)%以上、12.0(v/v)%以上、12.5(v/v)%以上、13.0(v
/v)%以上、または、13.5(v/v)%以上であってもよい。また、ビールテイス
ト飲料のアルコール度数は、25.0(v/v)%未満であり、好ましくは24.0(v
/v)%以下であり、より好ましくは23.0(v/v)%以下、さらに好ましくは22
.0(v/v)%以下、よりさらに好ましくは21.0(v/v)%以下、特に好ましく
は20.0(v/v)%以下であり、19.0(v/v)%以下、18.5(v/v)%
以下、18.0(v/v)%以下、17.5(v/v)%以下、17.0(v/v)%以
下、16.5(v/v)%以下、16.0(v/v)%以下、15.5(v/v)%以下
、15.0(v/v)%以下、14.5(v/v)%以下、14.0(v/v)%以下、
13.5(v/v)%以下、13.0(v/v)%以下、12.5(v/v)%以下、1
2.0(v/v)%以下、11.5(v/v)%以下、または11.0(v/v)%以下
としてもよい。
【0014】
なお、本明細書において、アルコール度数は、体積/体積基準の百分率((v/v)%
)で示されるものとする。また、飲料のアルコール含有量は、公知のいずれの方法によっ
ても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。
アルコール度数の調整は、希釈水または炭酸水の添加、原材料(麦芽、コーングリッツ
、糖液等)の種類、原材料の量、酵素の種類、酵素の添加量、酵素の添加のタイミング、
仕込槽で糖化時間、仕込槽でのタンパク分解時間、仕込槽でのpH、仕込工程(麦芽投入
から酵母添加前での麦汁製造工程)でのpH、pH調整の際に使用する酸の添加量、pH
調整のタイミング(仕込時、発酵時、発酵完了時、ビール濾過前、ビール濾過後など)、
麦汁を調製する際(糖化時含む)の各温度領域の設定温度及び保持時間、発酵前液のオリ
ジナルエキス濃度、発酵工程でのオリジナルエキス濃度、発酵条件(酸素濃度、通気条件
、酵母品種、酵母の添加量、酵母増殖数、酵母の除去タイミング、発酵温度、発酵時間、
圧力設定、二酸化炭素濃度等)、スピリッツや醸造アルコールなどの添加等を適宜設定し
て行うことができる。
本発明のビールテイスト飲料の外観発酵度は70.0%以上であるから、本発明の一態
様のビールテイスト飲料は、外観発酵度は70.0%以上となる発酵条件によって発生し
たビールテイスト飲料原液を、炭酸水等で希釈したり、スピリッツ等でアルコール成分を
さらに添加したりするなどして製造できる。
【0015】
また、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、アルコール成分として、さらに、穀物
に由来するスピリッツ(蒸留酒)を含有してもよい。
本明細書において、スピリッツとは、麦、米、そば、トウモロコシ、芋、さとうきび等
の穀物を原料として、麦芽または必要により酵素剤を用いて糖化し、酵母を用いて発酵さ
せた後、さらに蒸留して得られる酒類を意味する。スピリッツの原材料である穀物として
は、イネ科に属する植物が好ましく、麦がより好ましい。
【0016】
本発明の一態様のビールテイスト飲料の色度は、ビールらしい見た目とビールらしい芳
ばしさを感じやすくする観点から、好ましくは5.0EBC以上、より好ましくは5.3
EBC以上、さらに好ましくは5.6EBC以上、よりさらに好ましくは5.9EBC以
上、特に好ましくは6.2EBC以上であり、また、6.5EBC以上、7.0EBC以
上、7.5EBC以上、または、8.0EBC以上であってもよい。
また、本発明の一態様のビールテイスト飲料の色度は、好ましくは80.0EBC以下
、より好ましくは75.0EBC以下、さらに好ましくは70.0EBC以下、よりさら
に好ましくは65.0EBC以下、さらに好ましくは60.0EBC以下、よりさらに好
ましくは55.0EBC以下、さらに好ましくは50.0EBC以下、よりさらに好まし
くは45.0EBC以下、さらに好ましくは40.0EBC以下、よりさらに好ましくは
35.0EBC以下、さらに好ましくは30.0EBC以下、よりさらに好ましくは25
.0EBC以下、さらに好ましくは20.0EBC以下、よりさらに好ましくは15.0
EBC以下、さらに好ましくは12.0EBC以下、よりさらに好ましくは10.0EB
C以下である。
【0017】
本明細書において、飲料の「色度」は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本
醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)
の「8.8 色度」に記載された測定法よって測定することができる。なお、飲料の「色
度」は、欧州醸造協会(European Brewery Convention)により定められた色度の単位(
EBC単位)により特定される。数値が小さいほど色が薄く明るい飲料であり、逆に、数
値が大きいほど色が濃く暗い飲料である。
また、本発明の一態様のビールテイスト飲料の色度は、例えば、使用する麦芽の種類、
2種以上の麦芽を併用する場合にはその配合比率、発酵前液を調製する際の煮沸条件等を
適宜調整することにより制御できる。より具体的に、例えば、ビールテイスト飲料の色度
を高くするには、麦芽として濃色麦芽の配合比率を高くこと、煮沸処理時の温度を高くす
ること、煮沸時間を長くすること、及び糖化液の調製の際にデコクションを実施すること
等により、調整可能である。また、原麦汁エキス濃度を高めることや、麦芽比率を高める
ことによっても、色度を高く調整することができる。カラメル色素などの食品添加物や着
色のある糖液などの量を制御することで、調整することもできる。
【0018】
本発明の一態様のビールテイスト飲料のpHは、特に限定されないが、飲料のスッキリ
とした味わいの向上の観点から、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.1以上、よ
り好ましくは3.2以上、さらに好ましくは3.3以上、よりさらに好ましくは3.4以
上、特に好ましくは3.5以上であり、また、3.6以上、3.6以上、3.7以上、3
.8以上、3.9以上、4.0以上、4.1以上、4.2以上、4.3以上、4.4以上
、4.5以上、4.6以上、または4.7以上であってもよい。また、微生物の発生を抑
制の観点から、ビールテイスト飲料のpHは、好ましくは5.0以下、より好ましくは4
.9以下、さらに好ましくは4.8以下、よりさらに好ましくは4.7以下、よりさらに
好ましくは4.6以下、特に好ましくは4.5以下であり、また、4.4以下、4.3以
下、4.2以下、4.1以下、4.0以下、3.9以下、3.8以下、3.7以下、3.
6以下、3.5以下、3.4以下、または3.3以下であってもよい。
pHの調整は、希釈水または炭酸水の添加、原材料(麦芽、コーングリッツ、糖液等)
の種類、原材料の量、酵素の種類、酵素の添加量、酵素の添加のタイミング、仕込槽で糖
化時間、仕込槽でのタンパク分解時間、仕込槽でのpH、仕込工程(麦芽投入から酵母添
加前での麦汁製造工程)でのpH、pH調整の際に使用する酸の種類(乳酸、リン酸、リ
ンゴ酸、酒石酸、クエン酸など)、pH調整の際に使用する酸の添加量、pH調整のタイ
ミング(仕込時、発酵時、発酵完了時、ビール濾過前、ビール濾過後など)、麦汁を調製
する際(糖化時含む)の各温度領域の設定温度及び保持時間、発酵前液のオリジナルエキ
ス濃度、発酵工程でのオリジナルエキス濃度、発酵条件(酸素濃度、通気条件、酵母品種
、酵母の添加量、酵母増殖数、酵母の除去タイミング、発酵温度、発酵時間、圧力設定、
二酸化炭素濃度等)、冷却タイミング、冷却温度、冷却時間等を適宜設定して行うことが
できる。
【0019】
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、容器詰の態様に適している。容器の例として
は、ビン、ペットボトル、缶、または樽が挙げられるが、特に持ち運びが容易であるとの
観点から、缶、ビン、ペットボトルが好ましい。
【0020】
本発明のビールテイスト飲料の製造に使用できる穀物、甘味料等の任意の添加原料につ
いては、「1.1原材料」において詳述する。
【0021】
1.1 原材料
本発明の一態様のビールテイスト飲料の主な原材料は、水および麦芽であるが、ホップ
を用いることが好ましく、その他に、麦などのイネ科の植物以外の植物の実・果皮・樹皮
・葉・花・茎・根・種子、甘味料、水溶性食物繊維、苦味料または苦味付与剤、酸化防止
剤、香料、酸味料、塩類等を用いてもよい。
【0022】
麦芽とは、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦などの麦類の種
子を発芽させて乾燥させ、除根したものをいい、産地や品種は、いずれのものであっても
よい。
本発明の一態様においては、大麦麦芽を用いることが好ましい。大麦麦芽は、日本のビ
ールテイスト飲料の原料として最も一般的に用いられる麦芽の1つである。大麦には、二
条大麦、六条大麦などの種類があるが、いずれを用いてもよい。さらに、通常麦芽のほか
、色麦芽なども用いることができる。なお、色麦芽を用いる際には、種類の異なる色麦芽
を適宜組み合わせて用いてもよいし、一種類の色麦芽を用いてもよい。
【0023】
本発明のビールテイスト飲料に使用する麦芽はmodificationが80%以上
であることが好ましい。modificationが80%未満であると麦汁の粘度が上
がったり、濁度が上がったりして、麦汁濾過性、ビール濾過性などの生産効率が悪化する
。そのため、modificationが80%以上である麦芽をつかうことが好ましい
。本実施例、比較例ではmodificationが80%以上である麦芽を使った。m
odificationはMEBAK Raw Materials Barley A
djuncts Malt Hops And Hop Products Publi
shed by the Chairman Dr.Fritz Jacob Self
-published by MEBAK 85350 Freising-Weihe
nstephan,Germany 2011の3.1.3.8 Modificati
on and Homogeneity(Calcofluor Carlsberg
Method-EBC)に記載の方法で測定することができる。
なお、本発明の一態様のビールテイスト飲料においては、使用する麦芽は、所望のビー
ルテイスト飲料の色度に応じて、適宜選択されることが好ましく、選択する麦芽は、単独
であってもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
麦芽には、窒素化合物およびポリフェノールが含まれている。したがって、本発明にお
いては、本発明のビールテイスト飲料の全窒素量および総ポリフェノール量を本発明で規
定される範囲内とするために、原料における麦芽の比率を一定の範囲に設定することが好
ましい。具体的には、麦芽比率(全ての麦芽の使用比率)は、好ましくは50質量%以上
、より好ましくは51質量%以上、さらに好ましくは52質量%以上、よりさらに好まし
くは53質量%以上、さらに好ましくは54質量%以上、よりさらに好ましくは55質量
%以上、さらに好ましくは56質量%以上、よりさらに好ましくは57質量%以上、特に
好ましくは58質量%以上であり、また、60質量%以上、62質量%以上、64質量%
以上、66質量%以上、66.6質量%以上、67質量%以上、68質量%以上、70質
量%以上、72質量%以上、74質量%以上、76質量%以上、78質量%以上、80質
量%以上、90質量%以上、95%質量%以上または100質量%であってもよい。麦芽
比率を向上させることにより、麦芽に由来する豊かな味わいや、麦の旨味をより強く感じ
ることができるビールテイスト飲料を製造できる。
また、麦芽比率が高すぎると不適な満腹感を与えやすくなるため、好ましくは90質量
%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、よりさらに
好ましくは78質量%以下、よりさらに好ましくは76質量%以下、よりさらに好ましく
は74質量%以下、よりさらに好ましくは72質量%以下、よりさらに好ましくは70質
量%以下であり、また68質量%以下、67質量%以下、66.6質量%以下、66質量
%以下、65質量%以下、63質量%以下、62質量%以下、60質量%以下、または5
8質量%以下であってもよい。
本明細書において、麦芽比率とは平成30年4月1日が施工日の酒税法および酒類行政
関係法令等解釈通達に従って計算された値を意味する。
【0025】
麦芽比率を抑制する場合、酵母が資化可能な麦芽以外の原料(炭素源、窒素源)を増量
することが好ましい。酵母が資化可能な原料の炭素源としては単糖、二糖、三糖、それら
の糖液等が挙げられ、窒素源としては酵母エキス、大豆タンパク、麦芽、大豆、酵母エキ
ス、エンドウ、小麦麦芽、未発芽の穀物、これらの分解物等が挙げられる。また未発芽の
穀物としては、例えば、未発芽の大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エ
ン麦、米(白米、玄米等)、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、豆(大豆、えんど
う豆等)、そば、ソルガム、粟、ひえ等が挙げられる。また、これらの穀物から得られた
デンプン、これらの抽出物(エキス)を用いても良い。
【0026】
麦などのイネ科の植物以外の植物の実・果皮・樹皮・葉・花・茎・根・種子としては、
特に限定されない。ここで植物としては、柑橘類、ソフトフルーツ類、ハーブ類、スパイ
ス類などが挙げられる。柑橘類としては、オレンジ、ゆず、レモン、ライム、ミカン、グ
レープフルーツ、伊予柑、キンカン、かぼす、ダイダイ、シークワーサー、すだちなどが
挙げられる。ソフトフルーツ類としては、桃、ブドウ、バナナ、リンゴ、ブドウ、パイナ
ップル、イチゴ、梨、マスカット、カシスなどがあげられる。ハーブ類、スパイス類とし
ては、コリアンダー、ペッパー、フェンネル、花椒、山椒、カルダモン、キャラウェイ、
ナツメグ、メース、ジュニパーベリー、オールスパイス、バニラ、エルダーベリー、グレ
インズ・オブ・パラダイス、アニス、スターアニスなどが挙げられる。
これらの原材料は、そのまま使ってもよいし、粉砕して使ってもよいし、水やエタノー
ルなどの溶媒で抽出したものを使ってもよいし、搾汁したもの(果汁など)を使ってもよ
い。上記を1種または2種以上を併用して用いることができる。
消費者の嗜好に合わせて上記を適宜使用できるが、ビールらしいスッキリした爽快な味
わいを楽しむには上記の柑橘類、ソフトフルーツ類、ハーブ類、スパイス類を全く使用し
ない、あるいは使用量を最小限にすることが好ましい。特にカシスはビール中に不適な乳
様の香りがつくことからカシスやカシス果汁は全く使用しない、あるいは使用量を最小限
にすることが好ましい。
【0027】
本発明の一態様で用いるホップの形態としては、例えば、ペレットホップ、粉末ホップ
、ホップエキス等が挙げられる。また、用いるホップは、イソ化ホップ、還元ホップ等の
ホップ加工品を用いてもよい。
ホップの添加量としては、適宜調製されるが、飲料全量に対して、好ましくは0.00
01~1質量%である。また、原材料としてホップを用いたビールテイスト飲料は、ホッ
プに由来する成分であるイソα酸を含有した飲料となる。ホップを用いたビールテイスト
飲料のイソα酸の含有量としては、当該ビールテイスト飲料の全量(100質量%)基準
で、好ましくは5.0質量ppm以上、より好ましくは7.0質量ppm以上、さらに好
ましくは10.0質量ppm以上であり、また、13.0質量ppm以上、または、16
.0質量ppm以上であってもよい。また、ホップを用いたビールテイスト飲料のイソα
酸の含有量としては、当該ビールテイスト飲料の全量(100質量%)基準で、好ましく
は100.0質量ppm以下、より好ましくは95.0質量ppm以下、さらに好ましく
は90.0質量ppm以下であり、また、85.0質量ppm以下、80.0質量ppm
以下、75.0質量ppm以下、70.0質量ppm以下、65.0質量ppm以下、6
0.0質量ppm以下、58.0質量ppm以下、56.0質量ppm以下、54.0質
量ppm以下、52.0質量ppm以下、50.0質量ppm以下、48.0質量ppm
以下、46.0質量ppm以下、44.0質量ppm以下、42.0質量ppm以下、4
0.0質量ppm以下、38.0質量ppm以下、36.0質量ppm以下、34.0質
量ppm以下、32.0質量ppm以下、30.0質量ppm以下であってもよい。
なお、本明細書において、イソα酸の含有量は、改訂BCOJビール分析法(公益財団
法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増
補改訂)に記載の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析法により測定された値を
意味する。
【0028】
本発明のビールテイスト飲料の苦味価は、特に限定されないが、5.0BUs以上80.
0BUs以下であることが好ましい。本明細書において、「苦味価」とは、イソフムロン
などのイソα酸類によってもたらされる苦味の指標である。苦味価は、「BCOJビール
分析法(2004.11.1 改訂版) 8.15 苦味価」の項に記載の方法に従って
測定することができる。具体的には、脱ガスしたサンプルに酸を加えた後イソオクタンで
抽出し、得られたイソオクタン層の吸光度を、イソオクタンを対照にして275nmで計
測し、ファクターを乗じて苦味価(BUs)を得ることができる。
本発明のビールテイスト飲料の苦味価は、好ましくは5.0BUs以上であるが、より
好ましくは10.0BUs以上、より好ましくは15.0BUs以上、さらに好ましくは
20.0BUs以上、よりさらに好ましくは22.0BUs以上、より好ましくは24.
0BUs以上、さらに好ましくは28.0BUs以上、よりさらに好ましくは30.0B
Us以上、より好ましくは32.0BUs以上、さらに好ましくは34.0BUs以上、
よりさらに好ましくは36.0BUs以上、より好ましくは38.0BUs以上、さらに
好ましくは40.0BUs以上、よりさらに好ましくは42.0BUs以上、より好まし
くは44.0BUs以上、さらに好ましくは46.0BUs以上、よりさらに好ましくは
48.0BUs以上、より好ましくは50.0BUs以上、さらに好ましくは52.0B
Us以上、よりさらに好ましくは54.0BUs以上である。
また、本発明のビールテイスト飲料の苦味価は、好ましくは80.0BUs以下である
が、より好ましくは75.0BUs以下、より好ましくは70.0BUs以下、さらに好
ましくは65.0BUs以下、よりさらに好ましくは60.0BUs以下であり、また、
65.0BUs以下、60.0BUs以下、58.0BUs以下、または、56.0BU
s以下、よりさらに好ましくは54.0BUs以下であり、また、52.0BUs以下、
50.0BUs以下、48.0BUs以下、または、46.0BUs以下、よりさらに好
ましくは44.0BUs以下であり、また、42.0BUs以下、40.0BUs以下、
38.0BUs以下、または36.0BUs以下であってもよい。
苦味価は、飲料に含まれるイソα酸の含有量に依存し、イソα酸はホップに多く含まれ
る苦味成分である。したがって、ホップの使用量を制御することによって、所定の値の苦
味価を有する飲料を製造できる。
【0029】
甘味料としては、穀物由来のデンプンを酸または酵素等で分解した市販の糖化液、ショ
糖、市販の水飴等の糖類、三糖類以上の糖、糖アルコール、異性化糖、ステビア等の天然
甘味料、人工甘味料等が挙げられる。
これらの糖類の形態は、溶液等の液体であってもよく、粉末等の固体であってもよい。
また、デンプンの原料穀物の種類、デンプンの精製方法、および酵素や酸による加水分
解等の処理条件についても特に制限はない。例えば、酵素や酸による加水分解の条件を適
宜設定することにより、マルトースの比率を高めた糖類を用いてもよい。その他、スクロ
ース、フルクトース、グルコース、マルトース、トレハロース、マルトトリオース、マル
トテトラオース、イソマルトース、イソマルトトリオース、イソマルトテトラオースおよ
びこれらの溶液(糖液)等を用いることもできる。
また、人工甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム(アセ
スルファムK)、スクラロース、ネオテーム等が挙げられる。
これらの甘味料は単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
水溶性食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、グア
ーガム分解物、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、ラミナリン、フコイジン、カラ
ギーナン等が挙げられ、安定性や安全性等の汎用性の観点から、難消化性デキストリンま
たはポリデキストロースが好ましい。
【0031】
ビールテイスト飲料において、苦味は、ホップ等によって付与することが好ましいが、
さらに、苦味料または苦味付与剤を用いてもよい。
苦味料または苦味付与剤としては、特に限定されず、通常のビールや発泡酒に苦味付与
剤として用いられるものが使用でき、例えば、ナリンギン、マンネンロウ、レイシ、姫茴
香、杜松実、セージ、迷迭香、マンネンタケ、月桂樹、マンネンタケ、クワシン、柑橘抽
出物、ニガキ抽出物、コーヒー抽出物、茶抽出物、ゴーヤ抽出物、ハス胚芽抽出物、キダ
チアロエ抽出物、マンネンロウ抽出物、レイシ抽出物、ローレル抽出物、セージ抽出物、
キャラウェイ抽出物、ニガヨモギ抽出物、アブシンチン、アルギン酸等が挙げられる。
【0032】
酸化防止剤としては、特に限定されず、通常のビールや発泡酒に酸化防止剤として用い
られるものが使用でき、例えば、アスコルビン酸、エリソルビン酸、カテキン等が挙げら
れる。
【0033】
香料としては、特に限定されず、一般的なビール香料を用いることができる。ビール香
料は、ビール様の風味付けのために用いるものであり、発酵により発生する醸造成分等が
含まれる。
なお、ビールテイスト飲料は、アルコール発酵により生じる酢酸エチルを含むものであ
るが、当該酢酸エチルは、香料としての機能を有する。そのため、ビールテイスト飲料の
製造過程でアルコール発酵を伴う場合には、ビール香料を別途添加する必要性は低いが、
所望に応じて、ビール香料を添加してもよい。
酢酸エチル以外のビール香料としては、エステルや高級アルコール等が挙げられ、具体
的には、酢酸イソアミル、酢酸エチル、n-プロパノール、イソブタノール、アセトアル
デヒド、カプロン酸エチル、カプリル酸エチル、イソアミルプロピオネート、リナロール
、ゲラニオール、シトラール、4-ビニルグアイアコール(4-VG)、4-メチル-3
-ペンテン酸、2-メチル-2-ペンテン酸、1,4-シネオール、1,8-シネオール
、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、γ-デカノラクトン、γ-ウンデカラクトン
、ヘキサン酸エチル、2-メチル酪酸エチル、n-酪酸エチル、ミルセン、シトラール、
リモネン、マルトール、エチルマルトール、フェニル酢酸、フラネオール、フルフラール
、メチオナール、3-メチル-2-ブテン-1-チオール、3-メチル-2-ブタンチオ
ール、ダイアセチル、フェルラ酸、ゲラン酸、ゲラニルアセテート、酪酸エチル、オクタ
ン酸、デカン酸、9-デセン酸、ノナン酸、テトラデカン酸、プロパン酸、2-メチルプ
ロパン酸、γ-ブチロラクトン、2-アミノアセトフェノン、3-フェニルプロピオン酸
エチル、2-エチル-4-ヒドロキシ-5-メチル-3(2H)-フラノン、ジメチルス
ルホン、3-メチルシクロペンタン-1,2-ジオン、2-メチルブタナール、3-メチ
ルブタナール、2-メチルテトラヒドロフラン-3-オン、2-アセチルフラン、2-メ
チルテトラヒドロフラン-3-オン、ヘキサナール、ヘキサノール、シス-3-ヘキセナ
ール、1-オクテン-3-オール、β-ユーデスモール、4-メルカプト-4-メチルペ
ンタン-2-オン、β-カリオフィレン、β-ミルセン、フルフリルアルコール、2-エ
チルピラジン、2,3-ジメチルピラジン、酢酸2-メチルブチル、イソアミルアルコー
ル、5-ヒドロキシメチルフルフラール、フェニルアセトアルデヒド、1-フェニル-3
-ブテン-1-オン、トランス-2-ヘキセナール、ノナナール、フェネチルアルコール
が挙げられる。
【0034】
本発明のビールテイスト飲料のエステルや高級アルコールの濃度は希釈水または炭酸水
の添加、酵母を添加する前の発酵前液の糖組成やアミノ酸組成、糖の濃度やアミノ酸の濃
度、発酵前液のオリジナルエキス濃度、酵母品種、発酵条件(酸素濃度、通気条件、酵母
品種、酵母の添加量、酵母増殖数、酵母の除去タイミング、発酵温度、発酵時間、圧力設
定、二酸化炭素濃度等)、冷却タイミング等を適宜設定して制御することができる。
【0035】
酸味料としては、酸味を有する物質であれば特に限定されないが、例えば、リン酸、ク
エン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸、コハク酸、グルコノ
デルタラクトンまたはそれらの塩が挙げられる。
これらの酸味料の中でも、リン酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、
フィチン酸、酢酸、コハク酸またはこれらの塩が好ましく、リン酸、クエン酸、乳酸、酒
石酸、酢酸またはこれらの塩がより好ましく、リン酸、またはリン酸塩が特に好ましい。
これらの酸味料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
本発明の一態様のビールテイスト飲料においては、リン酸、またはリン酸塩を含むこと
は、ビールテイスト飲料に不適な満腹感を抑えることに特段影響を与えることはないが、
pHを下げて微生物保証を確保しながら、不適な酸味を飲料に付与しないことが可能とな
る。
【0037】
また、ビールテイスト飲料をよりすっきりとした味わいとするために、本発明の一態様
のビールテイスト飲料において、リン酸の含有量は300質量ppm以上が好ましく、3
50質量ppm以上がより好ましく、400質量ppm以上がさらに好ましく、450質
量ppm以上がよりさらに好ましく、500質量ppm以上が特に好ましく、550質量
ppm以上、600質量ppm以上、650質量ppm以上、700質量ppm以上、7
50質量ppm以上、800質量ppm以上、850質量ppm以上、900質量ppm
以上、950質量ppm以上、1000質量ppm以上、1050質量ppm以上、11
00質量ppm以上、1150質量ppm以上、1200質量ppm以上、1250質量
ppm以上、1300質量ppm以上、1350質量ppm以上、1400質量ppm以
上、1450質量ppm以上、または1500質量ppm以上であってもよい。
ビールテイスト飲料に不適な酸味を付与しないために、本発明の一態様のビールテイス
ト飲料において、リン酸の含有量は3000質量ppm以下が好ましく、2800質量p
pm以下がより好ましく、2600質量ppm以下がさらに好ましく、2500質量pp
m以下がよりさらに好ましく、2400質量ppm以下がよりさらに好ましく、2300
質量ppm以下がさらに好ましく、2200質量ppm以下がよりさらに好ましく、21
00質量ppm以下がよりさらに好ましく、2000質量ppm以下が特に好ましく、1
950質量ppm以下、1900質量ppm以下、1850質量ppm以下、1800質
量ppm以下、1750質量ppm以下、1700質量ppm以下、1650質量ppm
以下、1600質量ppm以下、1550質量ppm以下、1500質量ppm以下、1
450質量ppm以下、1400質量ppm以下、1350質量ppm以下、または13
00質量ppm以下であってもよい。
【0038】
本発明のビールテイスト飲料のリン酸の含有量は、例えば、高速液体クロマトグラフィ
ーによって測定することができる。
【0039】
保存料としては、例えば、安息香酸;安息香酸ナトリウム等の安息香酸塩;パラオキシ
安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等の安息香酸エステル;二炭酸ジメチル等
が挙げられる。また、保存料としては、強力サンプレザー(三栄源エフ・エフ・アイ株式
会社製、安息香酸ナトリウムと安息香酸ブチルの混合物)等の市販の製剤を用いてもよい
。これらの保存料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
保存料の配合量は、好ましくは5~1200質量ppm、より好ましくは10~110
0質量ppm、さらに好ましくは15~1000質量ppm、よりさらに好ましくは20
~900質量ppmである。
【0040】
塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、酸性リン酸カリウム、酸性リン酸カルシウム
、リン酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩
化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウム、塩化カリウム、ク
エン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム等が挙げられる。
これらの塩類は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
1.2 炭酸ガス
本発明の一態様のビールテイスト飲料に含まれる炭酸ガスは、原材料に含まれる炭酸ガ
スを利用してもよく、また、炭酸水との混和または炭酸ガスの添加等で溶解させてもよい

本発明の一態様のビールテイスト飲料は、アルコール発酵を行うため、この発酵工程で
生じた炭酸ガスをそのまま用いることができるが、適宜炭酸水を加えて、炭酸ガスの量を
調製してもよい。
【0042】
本発明の一態様のビールテイスト飲料の炭酸ガス濃度は、好ましくは0.30(w/w
)%以上、より好ましくは0.35(w/w)%以上、更に好ましくは0.40(w/w
)%以上で、より更に好ましくは0.42(w/w)%以上、特に好ましくは0.45(
w/w)%以上であり、また、好ましくは0.80(w/w)%以下、より好ましくは0
.70(w/w)%以下、更に好ましくは0.60(w/w)%以下、より更に好ましく
は0.57(w/w)以下、特に好ましくは0.55(w/w)%以下である。
なお、本明細書において、炭酸ガス濃度は、対象となる飲料が入った容器を時々振りな
がら20℃の水槽に30分間以上浸して、当該飲料が20℃になるよう調整した後に、ガ
スボリューム測定装置(例えば、GVA-500(京都電子工業株式会社製)等)を用い
て測定することができる。
【0043】
本発明の一態様のビールテイスト飲料が容器詰め飲料である場合、容器詰め飲料の炭酸
ガス圧は、上記の炭酸ガス濃度となる範囲で適宜調整すればよいが、飲料の炭酸ガス圧は
5.0kg/cm以下、4.5kg/cm以下、または4.0kg/cm以下であ
り、また、0.20kg/cm以上、0.50kg/cm以上、または1.0kg/
cm以上であり、これらの上限および下限のいずれを組み合わせてもよい。例えば、飲
料の炭酸ガス圧は、0.20kg/cm以上5.0kg/cm以下、0.50kg/
cm以上4.5kg/cm以下、または、1.0kg/cm以上4.0kg/cm
以下であってよい。
本明細書において、ガス圧とは、特別な場合を除き、容器内におけるガス圧をいう。
圧力の測定は、当業者によく知られた方法、例えば20℃にした試料をガス内圧計に固
定した後、一度ガス内圧計の活栓を開いてガスを抜き、再び活栓を閉じ、ガス内圧計を振
り動かして指針が一定の位置に達したときの値を読み取る方法を用いて、または市販のガ
ス圧測定装置を用いて測定することができる。
【0044】
1.3 その他の添加物
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じ
て、様々な添加物を添加してもよい。
そのような添加物としては、例えば、着色料、泡形成剤、発酵促進剤、酵母エキス、ペ
プチド含有物等のタンパク質系物質、アミノ酸等の調味料が挙げられる。
着色料は、飲料にビール様の色を与えるために使用するものであり、カラメル色素など
を用いることができる。泡形成剤は、飲料にビール様の泡を形成させるため、あるいは飲
料の泡を保持させるために使用するものであり、大豆サポニン、キラヤサポニン等の植物
抽出サポニン系物質、コーン、大豆などの植物タンパク、およびコラーゲンペプチド等の
ペプチド含有物、酵母エキス、乳を起源とする原料などを適宜使用することができる。
発酵促進剤は、酵母による発酵を促進させるために使用するものであり、例えば、酵母
エキス、米や麦などの糠成分、ビタミン、ミネラル剤などを単独または組み合わせて使用
することができる。
【0045】
1.4 容器詰飲料
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、容器に詰められた容器詰飲料であってもよい
。容器詰飲料にはいずれの形態・材質の容器を用いてもよく、容器の例としては、ビン、
缶、樽またはペットボトルが挙げられるが、特に持ち運びが容易であるとの観点から、缶
、ビンやペットボトルが好ましい。
【0046】
2. ビールテイスト飲料の製造方法
本発明の一態様である発酵ビールテイスト飲料の製造方法としては、下記工程(1)~
(3)を有する。
・工程(1):原材料に対して、糖化処理、煮沸処理、および固形分除去処理の少なくと
も1つの処理を行い、発酵前液を得る工程。
・工程(2):工程(1)で得た発酵前液を冷却し、冷却発酵前液を得る工程。
・工程(3):工程(2)で得た冷却発酵前液に酵母を添加して外観発酵度が70.0%
以上となるように発酵を行う工程(発酵工程)。
【0047】
当該発酵ビールテイスト飲料の製造方法において、オリジナルエキス濃度、リン酸の含
有量、pH、アルコール度数、色度等の調整は、下記の(i)~(v)のいずれか1つ以
上のタイミングで行うことができるが、調整する工程は必須ではない。
・(i):工程(1)の前
・(ii):工程(1)、工程(2)、および工程(3)の少なくとも1つの工程と同時
・(iii):工程(1)と工程(2)の間
・(iv):工程(2)と工程(3)の間
・(v):工程(3)の後
また、リン酸の含有量を調整する方法としては、リン酸を直接配合する方法でもよいが
、リン酸を含有する原材料の配合量を調整することで行ってもよい。また、リン酸の含有
量が多すぎる場合には、水や炭酸水を添加して調整してもよい。
【0048】
<工程(1)>
工程(1)は、各種原材料を用いて、糖化処理、煮沸処理、および固形分除去処理のう
ち少なくとも1つの処理を行い、発酵前液を得る工程である。
例えば、各種原材料として、麦芽を用いる場合には、水および麦芽を含む各種原材料を
仕込釜または仕込槽に投入し、必要に応じて、発酵前に、原材料に由来する成分の変化を
促進する多糖分解酵素やタンパク分解酵素などの酵素剤を添加してもよい。
当該酵素剤としては、例えば、アミラーゼ、プロテアーゼ、プリンヌクレオシダーゼ、
デアミナーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、グルカナーゼ、キシラーゼ、ペクチナーゼ
、セルラーゼ、リパーゼ、グルコシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、トランスグルコシ
ダーゼ等が挙げられる。また、酒税法および酒類行政関係法令通達(平成30年6月27
日改正)の第3条「7酒類の原料として取り扱わない物品」の「(3)酒造の合理化等の
目的で醸造工程中に加える次の酵素剤」に該当する酵素剤を挙げられる。
これらの酵素剤を添加することで、得られる発酵ビールテイスト飲料の成分組成を効率
よく調整させることができる。麦芽以外の各種原材料としては、ホップ、保存料、甘味料
、水溶性食物繊維、苦味料または苦味付与剤、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類等を加え
てもよい。これらは、糖化処理を行う前に加えてもよく、糖化処理の途中で加えてもよく
、糖化処理の終了後に加えてもよい。また、これらは、次工程のアルコール発酵中やアル
コール発酵後に加えてもよい。
【0049】
各種原材料の混合物は、加温し、原材料の澱粉質を糖化させて糖化処理を行う。
糖化処理の温度および時間は、使用する麦芽の種類や、麦芽比率、水および麦芽以外の
原材料、使用する酵素の種類や量、最終的に得られる飲料のオリジナルエキス濃度等を考
慮して適宜調整することが好ましい。本発明の一態様において、ビールテイスト飲料の外
観発酵度を上記範囲に調整する観点から、糖化処理の温度は55~75℃であり、糖化処
理の時間は15~240分であることが好ましい。糖化処理後に、濾過を行い、糖化液が
得られる。
【0050】
なお、この糖化液は煮沸処理を行うことが好ましい。
この煮沸処理を行う際に、原材料としてホップや苦味料等を用いる場合には、これらを
加えることが好ましい。ホップや苦味料等は、糖化液の煮沸開始から煮沸終了前の間で加
えてもよい。
なお、上記の糖化液の代わりに、麦芽エキスに温水を加えたものに、ホップや苦味料等
を加えて煮沸処理を行い、発酵前液を調製してもよい。
【0051】
また、各種原材料として、麦芽を使用しない場合には、炭素源を含有する液糖、麦また
は麦芽以外のアミノ酸含有原料としての窒素源、ホップ、保存料、甘味料、水溶性食物繊
維、苦味料または苦味付与剤、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類等を、温水と共に混合し
、液糖溶液を調製し、その液糖溶液に対して煮沸処理を行い、発酵前液を調製してもよい

ホップを用いる場合には、煮沸処理前に加えてもよく、液糖溶液の煮沸開始から煮沸終
了前の間で加えてもよい。
【0052】
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)で得た発酵前液を冷却し、冷却発酵前液を得る工程である。
煮沸処理終了後には、ワールプールに移送し、0~23℃に冷却する。そして、冷却後
に、凝固タンパク等の固形分の除去処理を行い、オリジナルエキス濃度を調整してもよい

このような処理を経て、冷却発酵前液が得られる。
【0053】
<工程(3)>
工程(3)は、工程(2)で得た冷却発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う
工程である。
本工程で用いる酵母は、製造すべき発酵飲料の種類、目的とする香味や発酵条件等を考
慮して適宜選択することができ、上面発酵酵母を用いてもよく、下面発酵酵母を用いても
よい。
【0054】
酵母は、酵母懸濁液のまま原材料に添加してもよいし、遠心分離あるいは沈降により酵
母を濃縮したスラリーを発酵前液に添加してもよい。また、遠心分離の後、完全に上澄み
を取り除いたものを添加してもよい。酵母の原液への添加量は適宜設定できるが、例えば
、5×10cells/mL~1×10cells/mL程度である。
【0055】
アルコール発酵を行う際の発酵温度および発酵期間等の諸条件は外観発酵度が70.0
%以上となるように設定され、例えば、8~25℃、5~10日間の条件で発酵させるこ
とができる。発酵工程の途中で発酵液の温度(昇温または降温)もしくは圧力を変化させ
てもよい。
ビールテイスト飲料の外観発酵度は、トランスグルコシダーゼ等の多糖分解酵素につい
て種類、添加量および添加のタイミングを適宜設定して調整することができ、また、発酵
工程の途中で発酵液の温度(昇温または降温)もしくは圧力を変化させることによっても
調整できる。
また、本工程の終了後に、ろ過機等で酵母を取り除き、必要に応じて水や香料、酸味料
、色素等の添加剤を加えてもよい。
【0056】
これらの工程後、貯酒工程およびろ過工程等の当業者に周知のビールテイスト飲料の製
造で行われる工程を行ってもよい。
このようにして得られた発酵ビールテイスト飲料は、所定の容器に充填され、製品とし
て市場に流通する。
発酵ビールテイスト飲料の容器詰め方法としては、特に限定されず、当業者に周知の容
器詰め方法を用いることができる。容器詰め工程によって、発酵ビールテイスト飲料は容
器に充填・密閉される。容器詰め工程には、いずれの形態・材質の容器を用いてもよく、
容器の例としては、上述のとおりである。
【0057】
3. ビールテイスト飲料の香味改善方法
本発明は、ビールテイスト飲料の香味改善方法にも関する。本発明の一態様の香味改善
方法は、具体的には、ビールテイスト飲料を、オリジナルエキス濃度が20.0質量%以
上、および、外観発酵度が70.0%以上、アルコール度数が25.0(v/v)%未満
となるように調整する。
【0058】
本明細書において、ビールテイスト飲料の「香味」とは、麦の旨味、麦に由来する豊か
な味わい、飲み応え、および味の厚みを包含する。また、本明細書において、「香味改善
」または「香味を改善する」とは、外観発酵度、およびオリジナルエキス濃度を上記範囲
に調整した飲料が、当該調整を行っていない飲料と比べて、ビールらしい麦の味わい、ま
たはスッキリした飲みやすい味わいが達成されることを意味する。
【0059】
オリジナルエキス濃度および外観発酵度を調整する方法は、上記「1.ビールテイスト
飲料」および上記「2.ビールテイスト飲料の製造方法」で述べたとおりである。
【実施例0060】
以下、実施例等により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によっ
ては制限されない。
また、実施例において、オリジナルエキス濃度および外観発酵度は、改訂BCOJビー
ル分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会
〕編集2013年増補改訂)に記載されている方法に基づいて測定した。
【0061】
<飲料の調製>
粉砕した大麦麦芽を温水120Lが入った仕込槽に投入した後、段階的に温度を上げて
保持し、ろ過して麦芽粕等を除去した。ろ過後、当該原料液およびホップを煮沸釜に投入
し、所定の麦芽比率になるように糖液を添加し、温水で100Lに調整して熱麦汁を得た
。なお、麦芽比率は40~100%になるように調整し、麦芽比率100%のビールテイ
スト飲料については糖液を添加しなかった。
得られた熱麦汁を冷却し、酸素による通気を実施することで酵母添加前の発酵前液60
Lを得た。
【0062】
このようにして得られた発酵前液にビール酵母(上面発酵酵母)を添加して約1週間発
酵させた後、さらに約1週間の熟成期間を経て、酵母をろ過で除去して、エキス調整水を
添加しビールテイスト飲料を調製した。
それぞれの実施例および比較例において、麦芽やホップ等の原材料の量や種類、マッシ
ングパターン、多糖分解酵素およびタンパク分解酵素の種類、添加量および添加のタイミ
ング、麦汁を調製する際の各温度領域の設定温度、保持時間、pH調整、麦汁濾過時の濁
度、ホップの添加タイミング、煮沸時間、発酵条件、等を適宜設定し、色度が5EBC以
上、アルコール度数が25.0%未満、かつ、表1に示すオリジナルエキス濃度、外観発
酵度、pH、リン酸含有量となるように調整した。
【0063】
<官能評価>
得られたビールテイスト飲料の評価は、同一の6人のパネラーが、各飲料の試飲をし、
以下のように行った。
【0064】
4℃程度まで冷却したビールテイスト飲料を、各パネラーが試飲し、「ビールらしい麦
の味わい」および「スッキリした飲みやすい味わい」という評価項目について、下記のス
コア基準に基づき、3.0(最大値)~1.0(最小値)の範囲で、0.1刻みのスコア
にて評価し、6人のパネラーのスコアの平均値を算出した。
評価に際しては、評価項目がそれぞれ下記基準「1.0」「2.0」および「3.0」
に該当するサンプルを予め用意し、各パネラー間での基準の統一を図った。また、すべて
の実施例および比較例の官能評価においても、同じ飲料に対して、各パネラー間での2.
0以上のスコアの値の差異は確認されなかった。
【0065】
[ビールらしい麦の味わい]
・「3.0」:ビールらしい麦の味わいが非常に強く感じられる。
・「2.5」:ビールらしい麦の味わいが強く感じられる。
・「2.0」:ビールらしい麦の味わいが感じられる。
・「1.5」:ビールらしい麦の味わいがあまり感じられない。
・「1.0」:ビールらしい麦の味わいがほとんど感じられない。
【0066】
[スッキリした飲みやすい味わい]
・「3.0」:スッキリした飲みやすい味わいが非常に強く感じられる。
・「2.5」:スッキリした飲みやすい味わいが強く感じられる。
・「2.0」:スッキリした飲みやすい味わいが感じられる。
・「1.5」:スッキリした飲みやすい味わいがあまり感じられない。
・「1.0」:スッキリした飲みやすい味わいがほとんど感じられない。
【0067】
また、前記3つの評価項目に基づき、下記の基準で総合評価を行った。
[総合評価]
・「A」:検証した2つの官能評価項目の平均スコアのすべてが2.0以上である。
・「B」:検証した2つの官能評価項目の平均スコアのどちらか一方が2.0未満である
【0068】
【表1】
【0069】
実施例の結果から、ビールテイスト飲料における オリジナルエキス濃度が20.0質
量%以上、および、外観発酵度が70.0%以上、アルコール度数が25.0(v/v)
%未満であると、「ビールらしい麦の味わい」を有しながら、「スッキリした飲みやすい
味わい」も有する飲料を提供できた。