(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181420
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
G03G21/00 530
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187464
(22)【出願日】2023-11-01
(62)【分割の表示】P 2022164151の分割
【原出願日】2019-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑崎 計成
(57)【要約】
【課題】ヒートシンクと搬送ベルトとの摺動面にヒートシンク又は搬送ベルトの削れ粉が付着することに起因する冷却性能の低下を抑制する。
【解決手段】シートSを冷却する冷却装置30であって、回転可能な上ベルト31と、上ベルト31と接触することでニップ部Nを形成する下ベルト32と、下ベルト32は上ベルト31とともにシートSを挟持して搬送し、ニップ部Nにおいて上ベルト31の内周面に接触するヒートシンク81と、清掃部33と、を備える。清掃部33は、上ベルト31の内周面においてニップ部N以外の位置で上ベルト31の内周面に接触するスクレーパ34と、スクレーパ34により上ベルト31の内周面から除去された異物を回収する回収ボックス35と、を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材を冷却する冷却装置であって、
回転可能な第1搬送ベルトと、
前記第1搬送ベルトと接触することでニップ部を形成する第2搬送ベルトと、
前記第2搬送ベルトは前記第1搬送ベルトとともに記録材を挟持して搬送し、
前記ニップ部において前記第1搬送ベルトの内周面に接触するヒートシンクと、
前記第1搬送ベルトの前記内周面において前記ニップ部以外の位置で前記第1搬送ベルトの前記内周面に接触する接触部材と、前記接触部材により前記第1搬送ベルトの前記内周面から除去された異物を回収する回収部材と、を有する清掃ユニットと、を備える、
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記ヒートシンクが前記第1搬送ベルトの前記内周面に接触する前記位置は、前記ニップ部における記録材の搬送方向において、前記ニップ部の領域内に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記回収部材は、鉛直方向において前記接触部材よりも下方に設けられ、
前記回収部材は、前記鉛直方向において上方に開口した開口部を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記第1搬送ベルトの回転方向において前記開口部の上流側の端部は、前記接触部材が前記第1搬送ベルトの前記内周面に接触する接触位置よりも上流に位置する、
ことを特徴とする請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記接触部材は、前記第1搬送ベルトの前記内周面に対して、前記第1搬送ベルトの回転方向に対して向き合うカウンタ方向に向かって接触するスクレーパを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記接触部材は、前記第1搬送ベルトの前記内周面に接触するフェルト部材を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記接触部材は、前記第1搬送ベルトの前記内周面に接触する回転可能なブラシを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記第1搬送ベルトを張架する複数の張架ローラを備え、
前記接触部材は、前記複数の張架ローラにより張架された前記第1搬送ベルトの最上位置において前記第1搬送ベルトの前記内周面に接触する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項9】
前記ニップ部における前記記録材の搬送方向において、前記ヒートシンクより上流に配置された第1ローラと、
前記ニップ部における前記記録材の前記搬送方向において、前記ヒートシンクより下流に配置された第2ローラと、
鉛直方向において前記ヒートシンクより上方に配置された第3ローラと、
前記鉛直方向において前記ヒートシンクより上方に配置された第4ローラと、を備え、
前記第1搬送ベルトは、前記第1ローラ、前記第2ローラ、前記第3ローラ、前記第4ローラにより張架され、
前記接触部材は、前記第3ローラ及び前記第4ローラの間で前記第1搬送ベルトの前記内周面に接触する、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項10】
前記接触部材は、鉛直方向において前記ヒートシンクより上方に配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項11】
前記第1搬送ベルトは、0.5重量%以上、かつ、20重量%以下の含有率でフッ素系樹脂添加剤を含有している、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項12】
前記ヒートシンクの放熱部に送風することで前記ヒートシンクを冷却するファンを備える、
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項13】
前記第2搬送ベルトの内周面に接触し、前記第1搬送ベルト及び前記第2搬送ベルトを前記ヒートシンクに向けて付勢し、前記ヒートシンクとの間で前記ニップ部を形成する回転部材を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項14】
前記第1搬送ベルトのポリイミド製の基材に、PTFEフィラが含有されている、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項15】
前記第1搬送ベルトに含有される前記PTFEフィラの平均粒径は、1μm~100μmである、
ことを特徴とする請求項14に記載の冷却装置。
【請求項16】
記録材にトナー像を形成する画像形成部と、
加熱部材と、前記加熱部材と共に記録材を挟持して搬送し、記録材にトナー像を前記加熱部材と共に定着する搬送部材と、を有する定着部と、
回転可能な第1搬送ベルトと、
前記第1搬送ベルトと接触することでニップ部を形成する、第2搬送ベルトと、
前記第2搬送ベルトは前記第1搬送ベルトとともに記録材を挟持して搬送し、
前記ニップ部において前記第1搬送ベルトの内周面に接触するヒートシンクと、
前記第1搬送ベルトの前記内周面において前記ニップ部以外の位置で前記第1搬送ベルトの前記内周面に接触する接触部材と、前記接触部材により前記第1搬送ベルトの前記内周面から除去された異物を回収する回収部材と、を有する清掃ユニットと、を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式等の画像形成装置において記録材に転写したトナー画像を加熱により定着した後の記録材を冷却するための冷却装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いた画像形成装置では、像担持体としての感光ドラム上に形成された静電潜像を現像装置でトナーにより現像してトナー像を形成し、このトナー像を記録材に転写してから定着装置において記録材に定着している。定着装置は、例えば定着フィルムなどの加熱回転体と、例えば加圧ローラなどの加圧回転体とを有し、その間に定着ニップ部を形成し、定着ニップ部において記録材を加熱及び加圧して未定着のトナー画像を記録材に定着する。
【0003】
このような画像形成装置では、定着装置においてシートに熱を加えてトナーを高温にして定着させるため、トナーが高温状態のままでシートが排出トレイに積載されると、シート同士がトナーによって貼り付いてしまう可能性がある。このような積載時のシートの貼り付きを防止するため、定着後の搬送経路においてシートを冷却するファンからなる冷却装置を有する画像形成装置が知られていた。しかしながら、画像形成装置の画像形成速度の高速化が進むにつれ、搬送速度が高速化すると、定着後の搬送経路でシートを冷やす時間が短縮されてしまい、ファンによる送風だけではシートを十分に冷却することができなかった。そこで、冷却効果を高めるために、定着後のシートを上下それぞれに設けた搬送ベルトにより挟持して搬送すると共に、上側の搬送ベルトの内周側にヒートシンクを配置した冷却装置が開発されている(特許文献1参照)。この冷却装置では、上側の搬送ベルトの内周面とヒートシンクとを当接させ、上側の搬送ベルトを冷却し、上下の搬送ベルトにて挟持して搬送することでシートを冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の冷却装置では、搬送ベルトとヒートシンクとが当接した状態で搬送ベルトが回転するので、搬送ベルトとヒートシンクとが摺動して搬送ベルトの内周面又はヒートシンクの摺動面が摩耗により削れてしまう虞がある。そして、搬送ベルト又はヒートシンクの削れによって生じる削れ粉が搬送ベルトとヒートシンクとの摺動面に堆積すると、ヒートシンクとシートとの間の熱抵抗が増大し、それによって冷却性能が低下してしまう虞がある。
【0006】
本発明は、ヒートシンクと搬送ベルトとの摺動面にヒートシンク又は搬送ベルトの削れ粉が付着することに起因する冷却性能の低下を抑制可能な冷却装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、記録材を冷却する冷却装置であって、回転可能な第1搬送ベルトと、前記第1搬送ベルトと接触することでニップ部を形成する第2搬送ベルトと、前記第2搬送ベルトは前記第1搬送ベルトとともに記録材を挟持して搬送し、前記ニップ部において前記第1搬送ベルトの内周面に接触するヒートシンクと、前記第1搬送ベルトの前記内周面において前記ニップ部以外の位置で前記第1搬送ベルトの前記内周面に接触する接触部材と、前記接触部材により前記第1搬送ベルトの前記内周面から除去された異物を回収する回収部材と、を有する清掃ユニットと、を備えることを特徴とする冷却装置である。
【0008】
本発明の一態様は、記録材にトナー像を形成する画像形成部と、加熱部材と、前記加熱部材と共に記録材を挟持して搬送し、記録材にトナー像を前記加熱部材と共に定着する搬送部材と、を有する定着部と、回転可能な第1搬送ベルトと、前記第1搬送ベルトと接触することでニップ部を形成する、第2搬送ベルトと、前記第2搬送ベルトは前記第1搬送ベルトとともに記録材を挟持して搬送し、前記ニップ部において前記第1搬送ベルトの内周面に接触するヒートシンクと、前記第1搬送ベルトの前記内周面において前記ニップ部以外の位置で前記第1搬送ベルトの前記内周面に接触する接触部材と、前記接触部材により前記第1搬送ベルトの前記内周面から除去された異物を回収する回収部材と、を有する清掃ユニットと、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヒートシンクと搬送ベルトとの摺動面にヒートシンク又は搬送ベルトの削れ粉が付着することに起因する冷却性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る画像形成装置の制御ブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る冷却装置を示す側面図である。
【
図4】比較例と実施例1との削れ粉の付着割合を示すグラフである。
【
図5】第2の実施形態に係る冷却装置を示す側面図である。
【
図6】比較例と実施例2との削れ粉の付着割合を示すグラフである。
【
図7】第3の実施形態に係る冷却装置を示す側面図である。
【
図8】第4の実施形態に係る冷却装置を示す側面図である。
【
図9】第5の実施形態に係る冷却装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態を、
図1~
図3を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、画像形成装置1の一例として、タンデム型のフルカラープリンタについて説明している。但し、本発明はタンデム型の画像形成装置1に搭載されることには限られず、他の方式の画像形成装置に搭載されるものであってもよく、また、フルカラーであることにも限られず、モノクロやモノカラーであってもよい。あるいは、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施することができる。
【0012】
図1に示すように、画像形成装置1は、装置本体10と、不図示のシート給送部と、画像形成部40と、定着装置20と、シートSを冷却する冷却装置30と、制御部70とを備えている。画像形成装置1は、不図示の原稿読取装置やパーソナルコンピュータ等のホスト機器、あるいはデジタルカメラやスマートフォン等の外部機器からの画像信号に応じて、4色フルカラー画像を記録材に形成することができる。尚、記録材であるシートSは、トナー像が形成されるものであり、具体例として、普通紙、普通紙の代用品である合成樹脂製のシート、厚紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート等がある。
【0013】
[画像形成部]
画像形成部40は、シート給送部から給送されたシートSに対して、画像情報に基づいて画像を未定着のトナー像として形成可能である。画像形成部40は、画像形成ユニット50y,50m,50c,50kと、トナーボトル41y,41m,41c,41kと、露光装置42y,42m,42c,42kと、中間転写ユニット44と、二次転写部45とを備えている。尚、本実施形態の画像形成装置1は、フルカラーに対応するものであり、画像形成ユニット50y,50m,50c,50kは、イエロー(y)、マゼンタ(m)、シアン(c)、ブラック(k)の4色それぞれに同様の構成で別個に設けられている。このため、
図1中では4色の各構成について同符号の後に色の識別子を付して示すが、明細書中では色の識別子を付さずに符号のみで説明する場合もある。
【0014】
画像形成ユニット50は、トナー像を担持して移動する感光ドラム51と、帯電ローラ52と、現像装置53と、不図示のクリーニングブレードと、を有している。画像形成ユニット50は、プロセスカートリッジとして一体にユニット化されて、装置本体10に対して着脱可能に構成され、後述する中間転写ベルト44bにトナー像を形成する。
【0015】
感光ドラム51は、回転可能であり、画像形成に用いられる静電潜像を担持する。感光ドラム51は、本実施形態では、外径30mmの負帯電性の有機感光体(OPC)であり、所定のプロセススピード(周速度)で矢印方向に、不図示のモータにより回転駆動される。帯電ローラ52y,52m,52c,52kは、各感光ドラム51の表面に接触し、従動して回転するゴムローラを用いており、感光ドラム51の表面を均一に帯電する。露光装置42は、レーザスキャナであり、制御部70から出力される分解色の画像情報に従って、レーザ光を発する。画像形成動作が開始されると、感光ドラム51が回転して表面が帯電ローラ52により帯電される。そして、露光装置42により画像情報に基づいてレーザ光が感光ドラム51に対して発光され、感光ドラム51の表面上に静電潜像が形成される。
【0016】
現像装置53y,53m,53c,53kは、現像スリーブ54y,54m,54c,54kを有し、現像バイアスが印加されることにより感光ドラム51に形成された静電潜像をトナーにより現像する。現像装置53は、トナーボトル41から供給された現像剤を収容すると共に、感光ドラム51上に形成された静電潜像を現像して可視化する。現像スリーブ54は、非磁性のトナー及び磁性のキャリアを有する現像剤を担持して、感光ドラム51に対向する現像領域に搬送する。
【0017】
感光ドラム51の表面上に現像されたトナー像は、中間転写ユニット44に対して一次転写される。一次転写後、中間転写ユニット44に転写されずに感光ドラム51上に残留したトナーは、感光ドラム51に当接して設けられたクリーニングブレードによって除去され、次の作像工程に備える。
【0018】
中間転写ユニット44は、駆動ローラ44aや従動ローラ44d、一次転写ローラ47y,47m,47c,47k等の複数のローラと、これらのローラに巻き掛けられ、トナー像を担持して移動する中間転写ベルト44bとを備えている。従動ローラ44dは、中間転写ベルト44bの張力を一定に制御するようにしたテンションローラである。一次転写ローラ47y,47m,47c,47kは、感光ドラム51y,51m,51c,51kにそれぞれ対向して配置され、中間転写ベルト44bに当接し、感光ドラム51のトナー像を中間転写ベルト44bに一次転写する。
【0019】
中間転写ベルト44bは、感光ドラム51に当接して感光ドラム51との間で一次転写部を形成し、一次転写バイアスが印加されることにより、感光ドラム51に形成されたトナー像を一次転写部で一次転写する。中間転写ベルト44bに一次転写ローラ47によって正極性の一次転写バイアスを印加することにより、感光ドラム51上のそれぞれの負極性を持つトナー像が中間転写ベルト44bに順次多重転写される。中間転写ベルト44bには、中間転写ベルト44b上の転写残トナーを清掃するベルトクリーニング装置56が設けられている。
【0020】
二次転写部45は、二次転写内ローラ45aと、二次転写外ローラ45bと、を備えている。二次転写外ローラ45bは、中間転写ベルト44bに当接し、中間転写ベルト44bとのニップ部においてトナーと逆極性の二次転写バイアスが印加される。トナー像の形成動作に並行してシートSが供給され、中間転写ベルト44bのトナー画像にタイミングを合わせて、搬送経路を介してシートSが二次転写部45に搬送される。これにより、二次転写外ローラ45bは、中間転写ベルト44bに担持されたトナー像を、ニップ部へ供給されたシートSに一括して二次転写する。
【0021】
定着装置20は、定着ローラ21及び加圧ローラ22を備えており、シートSに形成されたトナー像を加熱してシートSに定着させる。ここで、定着ローラ21はヒータ等の加熱源によって加熱される加熱ローラである。また、加圧ローラ22は、所定の圧力で定着ローラ21へシートSを加圧する加圧ローラである。そして、シートSは、定着ローラ21と加圧ローラ22とによって挟持された状態でシート搬送方向に搬送されることにより、画像形成部40で形成されシートSに転写されたトナー像は加熱及び加圧されてシートSに定着される。定着装置20で加熱されたシートSは、定着装置20から排出され、冷却装置30に搬送される。
【0022】
冷却装置30は、定着装置20の加熱によりトナー像が定着された後のシートSを冷却する。つまり、冷却装置30は、定着装置20によって加熱された温度が高い状態のシートSを冷却する。冷却装置30により冷却されたシートSは冷却装置30から排出され、不図示のシート排出部により画像形成装置1の外部に排出され、積載トレイ(積載部)2へ積載される。例えば、冷却装置30から排出されたシートSは、画像形成装置1の外部に設けられる積載トレイ2に排出及び積載される。また、画像形成装置1に連結され、画像形成されたシートSにステイプル処理などを施すシート処理装置に設けられる積載トレイへ排出及び積載される。
【0023】
つまり、シートSは、定着装置20を通過後、冷却装置30によって冷却された後に排出される。尚、シートSの両面に画像形成する場合は、シートSの第1面の画像形成及び定着が終了し冷却装置30で冷却された後、シートSは不図示の反転部で反転されて表裏が逆転されて、シートSの第2面の画像形成及び定着が終了し冷却装置30で冷却される。冷却装置30は、装置本体10に内蔵された駆動モータM1(
図2参照)によって駆動される。尚、冷却装置30による冷却とは、定着装置20から排出されたシートSの温度を低下させることである。
【0024】
[制御部]
図2に示すように、制御部70はコンピュータにより構成され、例えばCPU71と、各部を制御するプログラムを記憶するROM72と、データを一時的に記憶するRAM73と、外部と信号を入出力する入出力回路(I/F)74とを備えている。CPU71は、画像形成装置1の制御全体を司るマイクロプロセッサであり、システムコントローラの主体である。CPU71は、入出力回路74を介して、操作部やシート給送部や画像形成部40等に接続され、各部と信号をやり取りすると共に動作を制御する。制御部70には、冷却装置30の駆動モータM1が接続されており、冷却装置30の動作を制御可能である。ROM72には、シートSに画像を形成するための画像形成制御シーケンス等が記憶される。
【0025】
[冷却装置]
次に、冷却装置30について、
図3を用いて詳細に説明する。
図3に示すように、冷却装置30は、上ベルト(搬送ベルト)31と、下ベルト(回転体)32と、冷却部80と、を有している。尚、本実施形態では、回転体として下ベルト32を適用しているが、これには限られず、上ベルトと共にシートSを挟持搬送できるものであれば回転体は回転するローラであってもよい。
【0026】
[ベルト]
上ベルト31及び下ベルト32は、いずれも回転方向(搬送方向)において無端状で可撓性を有する回転可能なベルトからなり、強度を有するポリイミド製で、膜厚を100μmに設定し、周長は942mmとしている。上ベルト31及び下ベルト32は、互いに接触し、定着装置20を通って加熱された状態にあるシートSを挟持及び搬送して冷却するニップ部Nを形成している。本実施形態では、ニップ部Nはシート搬送方向D1において適宜な長さを有して形成されている。即ち、上ベルト31は、後述する構成により駆動モータM1から駆動力を伝達されることで回転可能に設けられている。また、下ベルト32は、上ベルト31との間でニップ部Nを形成し、上ベルト31と共に回転可能に設けられ、回転によりニップ部NでシートSを挟持して搬送する。また、本実施形態では、シートSはトナー像が加熱により定着され、上ベルト31はシートSのトナー像が定着された側の面に接触する。つまり、搬送路を搬送されるシートSの厚み方向において、定着ローラ21と同じ側(本実施形態では上側)の内部に冷却部80を有する上ベルト31を有している。これにより、シートSの温度が高い状態のトナー像が載った面は、冷却装置30のうち冷却部80による冷却効率がより高い上ベルト31側によって冷却されるため、より効率よくシートS及びシートS上のトナーを冷却することができる。但し、これには限られず、下ベルト32も上ベルト31を介して冷却部80によって冷却されるため、下ベルト32によってシートSのトナー像が定着された側の面に接触するようにしてもよい。
【0027】
上ベルト31は、上ベルト31を駆動させるための駆動ローラ60と、上ベルト31の寄りを制御するためステアリングローラ61と、アイドラローラ65とにより張架されて回転可能に支持されている。下ベルト32は、下ベルト32を駆動させるための駆動ローラ62と、下ベルト32の寄りを制御するためステアリングローラ63と、アイドラローラ66とにより張架されて回転可能に支持されている。
【0028】
駆動ローラ60,62はいずれも外径40mmであり、表層に厚み1mmのゴム層を有する。駆動ローラ60は、ラジアル方向には固定して設けられている。駆動ローラ62は、不図示の付勢ばねにより、駆動ローラ60に対して約49N(約5kgf)で加圧して設けられている。駆動ローラ60,62は、不図示の駆動ギアを介して駆動モータM1(
図2参照)に接続され、駆動モータM1の回転によって各ベルト31,32を駆動させる。尚、駆動ローラ60,62の寸法や構成については、本実施形態のものには限られない。
【0029】
ステアリングローラ61,63はいずれも外径40mmであり、表層に厚み1mmのゴム層を有する。ステアリングローラ61,63は、それぞれ各ベルト31,32に対して不図示の付勢ばねにより付勢されており、各ベルト31,32の張力が約39.2N(約4kgf)になるように設けられている。ステアリングローラ61,63は、各ステアリングローラ61,63の長手方向の中央部を回動支点として、舵角を切ることによって、各ベルト31,32の蛇行を調整可能にしている。尚、ステアリングローラ61,63の寸法や構成については、本実施形態のものには限られない。
【0030】
尚、下ベルト32の内周側には、各ベルト31,32を後述するヒートシンク81の受熱面83aに押圧するために、ニップ部Nのシート搬送方向D1の上流部と下流部とに加圧ローラ64,64が設けられている。各加圧ローラ64,64は、各ベルト31,32を約9.8N(約1kgf)の力で付勢して、ヒートシンク81に密着するよう押圧している。
【0031】
[冷却部]
冷却部80は、上ベルト31の内周面31aに接触するヒートシンク81に送風可能なファン82を有している。ヒートシンク81は、例えば金属製、ここではアルミ製で、ベース83とフィン(放熱部)84とを有している。ベース83は、厚さ10mmの板状で、下面がニップ部Nにおいて上ベルト31の内周面31aに接触して摺動する受熱面(摺動面)83aを有している。ベース83の上面には、シート搬送方向D1に並んだ複数のフィン84が、ファン82によって送風される空気との接触面積を得るように、厚さ1mm、高さ100mm、ピッチ5mmでベース83と一体的に設けられている。ニップ部Nに搬送されたシートSから伝導される上ベルト31の熱は、受熱面83aからベース83に伝導し、ベース83からフィン84に伝導して、フィン84から空気中に放熱される。これにより、ニップ部Nで挟持及び搬送されるシートSは、上ベルト31の内周側に配置されたヒートシンク81によって上ベルト31を介して冷却される。また、各ベルト31,32とヒートシンク81とは、加圧ローラ64,64により押圧されて密着しているので、各ベルト31,32とヒートシンク81との接触面積は十分に大きくなっている。これにより、各ベルト31,32にニップ部Nにおいて挟持されたシートSの熱は、上ベルト31を介してヒートシンク81に効率よく伝導される。即ち、ヒートシンク81は、上ベルト31の内周側に設けられ、上ベルト31に塗布される後述する固体潤滑剤39を介して接触し、上ベルト31を冷却する。
【0032】
ファン82は、フィン84に送風してフィン84を冷却するように設けられている。本実施形態では、ファン82はシート搬送方向D1に並んで2つ設けられており、いずれもシート搬送方向D1に直交する幅方向に送風するように設けられている。ここで、シート搬送方向D1を画像形成装置1の幅方向(左右方向)としたとき、ファン82は、画像形成装置1の前後方向において後ろ側であって、ヒートシンク81よりも後ろ側に配置されている。そして、ファン82は、ヒートシンク81に対して空気を吸気するように回転する。この構成により、フィン84の並び方向と鉛直方向とに直交する方向において、それぞれのフィン84の間にエアフローを形成している。つまり、ファン82は、各フィン84の間に画像形成装置1の前方から後方に空気が流れるように回転することで、ヒートシンク81を冷却する。また、1つのファン82からフィン84への送風量は、例えば2m3/minとしている。
【0033】
例えば、定着装置20によって加熱されたシートSは、冷却装置30に搬送される直前の温度が約90℃程度であり、冷却装置30を通過することによって、約60℃程度にまで冷却される。シートSには定着装置20によって定着されたトナー画像が載っており、冷却装置30に搬送される直前のシートSのトナー温度もシートSと同様に約90℃であり、冷却装置30を通過させることによって、約60℃程度にまで冷却される。
【0034】
ここで、シートS上に定着されたトナーのガラス転移点が、70℃であるとする。この場合、冷却装置30を備えない構成では、定着装置20から排出された約90℃のシートSは、ガラス転移点以上の温度の状態で画像形成装置1に設けられる積載トレイ2に積載されることになる。このように、ガラス転移点以上の温度のトナーは非常に軟らかく、加熱や加圧をされるとシートS同士を貼り付けてしまう場合がある。より詳細には、ガラス転移点以上のトナーが載ったシートSが積載トレイ2に積載されると、積載されることで加えられる圧力や積載されたシートSに蓄えられる熱によってシートS同士が貼り付いてしまう場合がある。
【0035】
そこで、本実施形態では、定着装置20に対してシート搬送方向下流側に冷却装置30を設けることで、定着装置20から排出されたシートSを冷却している。また、本実施形態では、定着装置20から排出されたシートSが画像形成装置1や更に下流に連結されるシート処理装置等の積載トレイ2に積載される際の温度が、ガラス転移点未満となるように、シートSを冷却する構成としている。
【0036】
ここで、ヒートシンク81と上ベルト31とは当接し、上ベルト31が回転することで、ヒートシンク81と上ベルト31とは摺擦する。このため、上ベルト31及びヒートシンク81の少なくとも一方が削れてしまい、削れ粉が発生する可能性がある。その削れ粉が徐々にヒートシンク81と上ベルト31との摺動面に付着して堆積していくと、ヒートシンク81とシートSとの間の熱抵抗が増大し、それによって、上ベルト31及びニップ部Nを通過するシートSの冷却性能が低下してしまう虞がある。
【0037】
[ベルトの添加剤]
そこで、本実施形態では、上ベルト31のポリイミド製の基材に、フッ素系樹脂添加剤の一例としてPTFEフィラを含有させている。ここでは、基材であるポリイミド樹脂内にPTFEフィラを均一に分散させるように含有させている。PTFEフィラの含有率としては、基材に対して0.5重量%以上、20重量%以下であることが好ましく、2重量%以上、10重量%以下であることがより好ましく、5重量%であることが最も好ましい。PTFEフィラの平均粒径は、1μm~100μmであることが好ましく、形状としては球状、粉砕状、板状、ウィスカ状などを適用可能であるが、表面平滑性及び分散性の観点から球状が好ましい。尚、本実施形態では、上ベルト31のポリイミド製の基材に含有させるフッ素系樹脂添加剤としてPTFEフィラを含有させた場合について説明したが、フッ素系樹脂添加剤としてはこれには限られない。フッ素系樹脂添加剤としては、例えば、FEPやPFAなどを適用してもよい。
【0038】
上ベルト31にPTFEフィラを含有させることで、ヒートシンク81及び上ベルト31の摩擦及び摩耗を低減している。また、上ベルト31にPTFEフィラが含有していることで、上ベルト31の削れ粉にもPTFEが含有されており、削れ粉がヒートシンク81の受熱面83aや各張架ローラなどの各部材に付着することを抑制する働きもある。
【0039】
上述したように、本実施形態の冷却装置30によれば、上ベルト31にPTFEフィラを含有させることで、ヒートシンク81の受熱面83a及び上ベルト31の内周面31aでの摩擦及び摩耗が低減し、削れ粉の発生を低減することができる。また、上ベルト31の内面表層が多少削れたとしても、上ベルト31の削れ粉自体にPTFEのようなフッ素系樹脂が含有されているため、ヒートシンク81の受熱面83a及び上ベルト31の内周面31aの摩擦及び摩耗の増大を抑制することができる。更に、削れ粉自体にPTFEのようなフッ素系樹脂が含有されているため、削れ粉自体が各部材に付着し難く、上ベルト31の内周面31aの各ローラや、ヒートシンク81の受熱面83aへの削れ粉の固着を抑制することができる。これにより、ヒートシンク81と上ベルト31との摺動面に、ヒートシンク81又は上ベルト31の削れ粉が堆積することを抑制することができる。従って、削れ粉が上ベルト31とヒートシンク81との摺動面に堆積することによるヒートシンク81とシートSとの間の熱抵抗の増大を抑制し、長期に亘って良好な冷却性能を安定して維持することができる。
【0040】
[実施例1]
上述した第1の実施形態の冷却装置30を使用して、削れ粉の付着状態を測定した。ここでは、ポリイミド製の基材に5重量%のPTFEフィラを含有した上ベルト31を適用し、上ベルト31及び下ベルト32のベルト回転速度を500mm/sで100時間稼働し、その間にシートSは通過させなかった。そして、ヒートシンク81の受熱面83aの全面を100%として、そのうちの50μm以上の厚みの削れ粉が付着した割合を測定した。その結果を
図4に示す。同図に示すように、本実施例の冷却装置30を用いた場合は、削れ粉の付着は1.1%程度であった。
【0041】
[比較例]
比較例として、ポリイミド製の基材にPTFEフィラを含有しない上ベルトと、上述した下ベルト32及びヒートシンク81とを利用して、削れ粉の付着状態を測定した。上記の実施例1と同様に上ベルト及び下ベルト32のベルト回転速度を500mm/sで100時間稼働し、その間にシートSは通過させず、上記の実施例1と同様に削れ粉が付着した割合を測定した。その結果を
図4に示す。同図に示すように、全面に対して、8%の領域に削れ粉が50μm以上付着していることが確認された。これにより、本実施形態の冷却装置30により、削れ粉の付着が抑制されていることが確認され、長期に亘って良好な冷却性能を安定して維持可能であることが確認された。
【0042】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態を、
図5を参照しながら詳細に説明する。第1の実施形態では、上ベルト31にフッ素系樹脂添加剤を含有させているので、削れ粉の発生量を大幅に軽減できるが、それでも多少の削れ粉は発生してしまい、長期間の使用によって、削れ粉がヒートシンク81の受熱面83aの全体に溜まる可能性がある。そこで、第2の実施形態では、冷却装置30に清掃部(清掃手段)33を設置する点で、第1の実施形態と構成を異にしている。但し、それ以外の構成については、第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0043】
清掃部33は、上ベルト31の内周側の上部に設けられ、スクレーパ(清掃部材)34と回収ボックス(回収手段)35とを有している。スクレーパ34は、上ベルト31の内周面31aの削れ粉を掻き落とすために設けられており、先端を上ベルト31の内周面31aの回転方向に対して向き合うカウンタ方向に向けて回収ボックス35に両面テープや接着剤により固定されている。即ち、スクレーパ34は、上ベルト31の内周面31aに接触するよう固定して設けられている。スクレーパ34としては、厚み0.1mmのPETシートが適用されており、その柔軟性により、上ベルト31への追従性を確保しつつ、上ベルト31に対しカウンタ方向に角度を有して当接していることで、削れ粉のすり抜けを抑制している。
【0044】
回収ボックス35は、スクレーパ34で掻き落とした削れ粉を、回収し溜めておくために設けられ、冷却装置30の不図示の筐体に固定されている。回収ボックス35は、スクレーパ34により上ベルト31の内周面31aから除去された異物である削れ粉を回収する。回収ボックス35の開口部は、上側に開口し、スクレーパ34及び上ベルト31の当接位置よりも、上ベルト31の回転方向上流側に広がるように設置されている。これにより、スクレーパ34により掻き落とされた削れ粉が下方に落下した時に、回収ボックス35によって効率よく回収されるようになる。
【0045】
上述したように、本実施形態の冷却装置30によれば、スクレーパ34及び回収ボックス35を有する清掃部33を備えているので、削れ粉を掻き落として回収することができる。また、上ベルト31の内面表層が多少削れたとしても、上ベルト31の削れ粉にはPTFEフィラが含有されているため、各部材に削れ粉が固着し難く、スクレーパ34による削れ粉の回収を効率的に実現することができる。これにより、ヒートシンク81と上ベルト31との摺動面に、ヒートシンク81又は上ベルト31の削れ粉が付着することを大幅に抑制することができる。従って、削れ粉が上ベルト31とヒートシンク81との摺動面に堆積することによるヒートシンク81とシートSとの間の熱抵抗の増大を大幅に抑制し、長期に亘って良好な冷却性能を安定して維持することができる。
【0046】
また、本実施形態の冷却装置30によれば、摩耗対策として潤滑剤を塗布する必要がないため、スクレーパ34によって、潤滑剤を掻き落とされる懸念がなく、潤滑剤を塗布する構成と比較して、長期に亘って安定した冷却性能及び摺動性能を維持できる。
【0047】
[実施例2]
上述した第2の実施形態の冷却装置30を使用して、削れ粉の付着状態を測定した。ここでは、ポリイミド製の基材に5重量%のPTFEフィラを含有した上ベルト31及びスクレーパ34を適用し、上ベルト31及び下ベルト32のベルト回転速度を500mm/sで100時間稼働し、その間にシートSは通過させなかった。そして、ヒートシンク81の受熱面83aの全面を100%として、そのうちの50μm以上の厚みの削れ粉が付着した割合を測定した。その結果を
図6に示す。同図に示すように、削れ粉の付着は0%であった。
【0048】
[比較例]
比較例として、ポリイミド製の基材にPTFEフィラを含有しない上ベルトと、上述した下ベルト32及びヒートシンク81とを利用して、スクレーパを設けずに、削れ粉の付着状態を測定した。尚、本比較例は、第1の実施形態における比較例と同一である。上記の実施例2と同様に上ベルト31及び下ベルト32のベルト回転速度を500mm/sで100時間稼働し、その間にシートSは通過させず、上記の実施例1と同様に削れ粉が付着した割合を測定した。その結果を
図6に示す。同図に示すように、全面に対して、8%の領域に削れ粉が50μm以上付着していることが確認された。これにより、本実施形態の冷却装置30により、削れ粉の付着が著しく抑制されていることが確認され、長期に亘って良好な冷却性能を安定して維持可能であることが確認された。
【0049】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態を、
図7を参照しながら詳細に説明する。第1の実施形態では、上ベルト31にフッ素系樹脂添加剤を含有させているので、削れ粉の発生量を大幅に軽減できるが、それでも多少の削れ粉は発生してしまい、長期間の使用により、削れ粉がヒートシンク81の受熱面83aの全体に溜まる可能性がある。そこで、第3の実施形態では、冷却装置30に清掃部(清掃手段)36を設置する点で、第1の実施形態と構成を異にしている。但し、それ以外の構成については、第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0050】
清掃部36は、上ベルト31の内周側の上部に設けられ、フェルト(清掃部材)37と回収ボックス(回収手段)38とを有している。フェルト37は、上ベルト31の内周面31aの削れ粉を掻き落とすために設けられており、先端を上ベルト31の内周面31aに対して略垂直方向に当接させて、回収ボックス38に固定して設けられている。即ち、フェルト37は、上ベルト31の内周面31aに接触するよう固定して設けられている。
【0051】
フェルト37としては、厚み3mmで、材質は摩耗などに強いアラミド繊維が適用されている。フェルト37は柔軟性を有しているため、上ベルト31に対して容易に追従し、削れ粉のすり抜けを抑制している。本実施形態では、フェルト37は上ベルト31に対して、垂直方向に当接させているが、これには限られず、上ベルト31に対してベルトの回転方向に鋭角又は鈍角の角度を設けて設置してもよい。いずれの場合も、フェルト37が上ベルト31の内周面31aに良好に追従して、削れ粉のすり抜けを抑制することができる。
【0052】
回収ボックス38は、フェルト37で掻き落とした削れ粉を回収して溜めておくために設けられ、冷却装置30の不図示の筐体に固定されている。フェルト37により削れ粉を掻き取る場合は、掻き取った削れ粉はフェルト37から、上ベルト31の回転方向上流側及び下流側の両方に飛散する可能性がある。そこで、回収ボックス38の開口部は、フェルト37及び上ベルト31の当接位置に対して、上ベルト31の回転方向上流側及び下流側に設置され、それぞれ上側に開口して設けられている。これにより、フェルト37により掻き落とされた削れ粉が下方に落下した時に、回収ボックス38によって効率よく回収されるようになる。
【0053】
上述したように、本実施形態の冷却装置30によれば、フェルト37及び回収ボックス38を有する清掃部36を備えているので、削れ粉を掻き落として回収することができる。また、上ベルト31の内面表層が多少削れたとしても、上ベルト31の削れ粉にはPTFEフィラが含有されているため、各部材に削れ粉が固着し難く、フェルト37による削れ粉の回収を効率的に実現することができる。これにより、ヒートシンク81と上ベルト31との摺動面に、ヒートシンク81又は上ベルト31の削れ粉が付着することを大幅に抑制することができる。従って、削れ粉が上ベルト31とヒートシンク81との摺動面に堆積することによるヒートシンク81とシートSとの間の熱抵抗の増大を大幅に抑制し、長期に亘って良好な冷却性能を安定して維持することができる。
【0054】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態を、
図8を参照しながら詳細に説明する。第1の実施形態では、上ベルト31にフッ素系樹脂添加剤を含有させているので、削れ粉の発生量を大幅に軽減できるが、それでも多少の削れ粉は発生してしまい、長時間耐久を行うと、削れ粉がヒートシンク81の受熱面83aの全体に溜まってきてしまう。そこで、第4の実施形態では、冷却装置30に清掃部(清掃手段)11を設置する点で、第1の実施形態と構成を異にしている。但し、それ以外の構成については、第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0055】
清掃部11は、上ベルト31の内周側の上部に設けられ、ブラシ(清掃部材)12と回収ボックス(回収手段)13とを有している。ブラシ12は、上ベルト31の内周面31aの削れ粉を掻き落とすために設けられており、上部を上ベルト31の内周面31aに当接させて設けられている。ブラシ12は、駆動ローラ60,62などの回転軸線方向に沿った方向を回転軸線として冷却装置30の不図示の筐体に回転可能に設けられており、本実施形態では上ベルト31に対して従動回転する。即ち、ブラシ12は、上ベルト31の内周面31aに接触するよう回転可能に設けられている。ブラシ12は、ローラ状の芯材の周面に多数のブラシ毛を有して構成されている。ブラシ毛としては、例えば、長さは約3mm、直径は約0.1mmで、材質は削れなどに強いアラミド繊維を適用している。このブラシ12のブラシ毛は柔軟性を有しているため、上ベルト31に対して容易に追従し、効率的に削れ粉を掻き取ることができる。
【0056】
回収ボックス13は、ブラシ12で掻き落とした削れ粉を、回収し溜めておくために設けられ、冷却装置30の不図示の筐体に固定されている。ブラシ12により削れ粉を掻き取る場合は、掻き取った削れ粉はブラシ12から、上ベルト31の回転方向上流側及び下流側の両方に飛散する可能性がある。そこで、回収ボックス13の開口部は、ブラシ12及び上ベルト31の当接位置に対して、上ベルト31の回転方向上流側及び下流側に設置され、それぞれ上側に開口して設けられている。これにより、ブラシ12により掻き落とされた削れ粉が下方に落下した時に、回収ボックス13によって効率よく回収されるようになる。
【0057】
尚、本実施形態では、ブラシ12は上ベルト31に対して従動回転させる場合について説明しているが、これには限られない。例えば、ブラシ12が駆動源により回転するようにして、上ベルト31に対して相対速度差をつけて回転させたり、あるいは、ブラシ12の回転を停止した状態で上ベルト31に当接させてもよい。
【0058】
上述したように、本実施形態の冷却装置30によれば、ブラシ12及び回収ボックス13を有する清掃部11を備えているので、削れ粉を掻き落として回収することができる。また、上ベルト31の内面表層が多少削れたとしても、上ベルト31の削れ粉にはPTFEフィラが含有されているため、各部材に削れ粉が固着し難く、ブラシ12による削れ粉の回収を効率的に実現することができる。これにより、ヒートシンク81と上ベルト31との摺動面に、ヒートシンク81又は上ベルト31の削れ粉が付着することを大幅に抑制することができる。従って、削れ粉が上ベルト31とヒートシンク81との摺動面に堆積することによるヒートシンク81とシートSとの間の熱抵抗の増大を大幅に抑制し、長期に亘って良好な冷却性能を安定して維持することができる。
【0059】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態を、
図9を参照しながら詳細に説明する。第1の実施形態では、上ベルト31にフッ素系樹脂添加剤を含有させているが、この上ベルト31は、PTFEフィラが内周面31aに析出していない構造をしており、内周面31aの表層には、厚さ約1μm~5μm程度のポリイミドのスキン層が存在する。ポリイミドのスキン層は、PTFEフィラを含有する層に比べて摩擦及び摩耗が発生しやすい。このため、上ベルト31の使用開始後の初期には、多少の削れ粉が発生してしまい、初期のうちには削れ粉がヒートシンク81の受熱面83aの全体に溜まってきてしまう虞がある。そこで、第5の実施形態では、上ベルト31の使用の初期に、内周面31aに固体潤滑剤39を塗布すると共に、冷却装置30に清掃部(清掃手段)33を設置する点で、第1の実施形態と構成を異にしている。但し、清掃部33については第2の実施形態と同様の構成であり、それ以外の構成については第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0060】
本実施形態では、上ベルト31を最初に使用する前、あるいは使用開始後の初期に、上ベルト31の内周面31aに固体潤滑剤39を塗布している。固体潤滑剤39としては、本実施形態では、オイル含有率が5%以下の速乾性フッ素パウダを使用している。但し、固体潤滑剤39としては速乾性フッ素パウダには限られず、例えば、ドライ系の潤滑剤やその他の種類の固体潤滑剤39であっても、同様の効果を得ることができる。耐久初期の上ベルト31においてスキン層が存在する状態では、初期に塗布した固体潤滑剤39がヒートシンク81との摺動部での摩擦及び摩耗を低減する。耐久が進んだ後の上ベルト31においてスキン層が削れた状態では、上ベルト31に含有しているPTFEフィラが内周面31aの表層に析出することで、摺動部での摩擦及び摩耗を低減する。
【0061】
固体潤滑剤39を用いることで、ヒートシンク81の受熱面83a及び上ベルト31の内周面31aでの摩耗を低減すると共に、上ベルト31の内周面31aの各ローラや、ヒートシンク81の受熱面83aへの削れ粉の固着を抑制することができる。しかしながら、固体潤滑剤39を使用しても、特に使用初期において僅かに発生する削れ粉は上ベルト31に乗って運ばれて、ヒートシンク81の上流側に溜まってしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、第2の実施形態と同様に、冷却装置30に清掃部(清掃手段)33を設置している。尚、ここでは、第2の実施形態と同様に冷却装置30に清掃部33を設置した場合について説明しているが、これには限られず、第3の実施形態と同様に清掃部36を設けたり、第4の実施形態と同様に清掃部11を設けるようにしてもよい。
【0062】
上述したように、本実施形態の冷却装置30によれば、上ベルト31の内周面31aに固体潤滑剤39を塗布しているので、耐久初期の上ベルト31にスキン層が存在する状態では固体潤滑剤39がヒートシンク81との摺動部での摩擦及び摩耗を低減する。また、清掃部33を備えているので、固体潤滑剤39を使用しても発生する削れ粉を、上ベルト31の内周面31aから掻き落として回収することができる。これにより、ヒートシンク81と上ベルト31との摺動面に、ヒートシンク81又は上ベルト31の削れ粉が付着することを大幅に抑制することができる。従って、削れ粉が上ベルト31とヒートシンク81との摺動面に堆積することによるヒートシンク81とシートSとの間の熱抵抗の増大を大幅に抑制し、長期に亘って良好な冷却性能を安定して維持することができる。
【0063】
<他の実施形態>
上述した各実施形態の冷却装置30では、ヒートシンク81はニップ部Nにおいて上ベルト31の内周面31aに接触する場合について説明したが、これには限られない。例えば、ヒートシンク81はニップ部N以外の部位において上ベルト31の内周面31aに接触するように設けられていてもよい。
【0064】
また、上述した各実施形態では、冷却装置30は画像形成装置1に内蔵されている場合について説明したが、これには限られず、例えば、画像形成装置とは別体で外付け用に設けられたものであってもよい。
【符号の説明】
【0065】
2…積載トレイ(積載部)、11……清掃部(清掃手段)、12…ブラシ(清掃部材)、13……回収ボックス(回収手段)、20…定着装置、30…冷却装置、31…上ベルト(搬送ベルト)、31a…内周面、32…下ベルト(回転体)、33…清掃部(清掃手段)、34…スクレーパ(清掃部材)、35…回収ボックス(回収手段)、36…清掃部(清掃手段)、37…フェルト(清掃部材)、38…回収ボックス(回収手段)、39…固体潤滑剤、81…ヒートシンク、82…ファン、83a…受熱面(摺動面)、84…フィン(放熱部)、N…ニップ部、S…シート(記録材)。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材を冷却する冷却装置であって、
回転可能な第1搬送ベルトと、
前記第1搬送ベルトと接触することでニップ部を形成する第2搬送ベルトと、
前記第2搬送ベルトは前記第1搬送ベルトとともに記録材を挟持して搬送し、
前記ニップ部において前記第1搬送ベルトの内周面に接触するヒートシンクと、
前記第1搬送ベルトの前記内周面において前記ニップ部以外の位置で前記第1搬送ベルトの前記内周面に接触する接触部材と、
前記第1搬送ベルトの内側において、前記第1搬送ベルトと前記接触部材との接触領域よりも鉛直方向下方に配置され、前記接触部材により前記第1搬送ベルトの前記内周面から除去された異物を回収する回収部材と、を備え、
鉛直方向上方から順に、前記接触領域、前記回収部材、前記ヒートシンク、前記ニップ部が配置されている、
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記第1搬送ベルト及び前記第2搬送ベルトを介して前記ヒートシンクと対向する位置において、前記第2搬送ベルトを前記第1搬送ベルトに向けて付勢することで前記第1搬送ベルトが前記ヒートシンクに当接するように、前記ヒートシンクに向かって付勢された付勢部材をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記付勢部材は、ローラである、
ことを特徴とする請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記第1搬送ベルトは、基材であるポリイミド樹脂内にPTFEフィラーを含有されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記第1搬送ベルトに含有されたPTFEフィラーの平均粒径は、1μm~100μmである、
ことを特徴とする請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記第1搬送ベルトに含有されたPTFEフィラーの形状は球状である、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記接触部材は、スクレーパである、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記スクレーパは、前記第1搬送ベルトの回転方向に対してカウンタで接触している、
ことを特徴とする請求項7に記載の冷却装置。
【請求項9】
鉛直方向において、前記接触領域は、前記第1搬送ベルトを懸架する複数のローラの上方の投影面上にない、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項10】
鉛直方向上方から見て、前記接触部材と前記回収部材とは、前記ヒートシンクと重なる位置に配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の冷却装置。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式等の画像形成装置において記録材に転写したトナー画像を加熱により定着した後の記録材を冷却するための冷却装置に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明は、ヒートシンクと搬送ベルトとの摺動面にヒートシンク又は搬送ベルトの削れ粉が付着することに起因する冷却性能の低下を抑制可能な冷却装置を提供することを目的とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の一態様は、記録材を冷却する冷却装置であって、回転可能な第1搬送ベルトと、前記第1搬送ベルトと接触することでニップ部を形成する第2搬送ベルトと、前記第2搬送ベルトは前記第1搬送ベルトとともに記録材を挟持して搬送し、前記ニップ部において前記第1搬送ベルトの内周面に接触するヒートシンクと、前記第1搬送ベルトの前記内周面において前記ニップ部以外の位置で前記第1搬送ベルトの前記内周面に接触する接触部材と、前記第1搬送ベルトの内側において、前記第1搬送ベルトと前記接触部材との接触領域よりも鉛直方向下方に配置され、前記接触部材により前記第1搬送ベルトの前記内周面から除去された異物を回収する回収部材と、を備え、鉛直方向上方から順に、前記接触領域、前記回収部材、前記ヒートシンク、前記ニップ部が配置されていることを特徴とする冷却装置である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】削除
【補正の内容】