(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181439
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】電子デバイス用光硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/00 20060101AFI20231214BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
C08G59/00
C08L83/06
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187683
(22)【出願日】2023-11-01
(62)【分割の表示】P 2019174922の分割
【原出願日】2019-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】竹中(笹野) 美香
(72)【発明者】
【氏名】下島 健
(72)【発明者】
【氏名】増井 良平
(57)【要約】
【課題】塗布性、硬化性、及び、低アウトガス性に優れ、かつ、低い誘電率を有する電子デバイス用光硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】硬化性樹脂と重合開始剤とを含有する電子デバイス用光硬化性樹脂組成物であって、前記硬化性樹脂は、単官能カチオン重合性化合物と多官能カチオン重合性化合物とを含み、前記単官能カチオン重合性化合物は、単官能脂肪族カチオン重合性化合物、及び、置換されていてもよいフェノキシ基を有する単官能カチオン重合性化合物の少なくともいずれかを含み、25℃、100kHzの条件で測定した誘電率が、3.5以下である電子デバイス用光硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と重合開始剤とを含有する電子デバイス用光硬化性樹脂組成物であって、
前記硬化性樹脂は、単官能カチオン重合性化合物と多官能カチオン重合性化合物とを含み、
前記単官能カチオン重合性化合物は、単官能脂肪族カチオン重合性化合物、及び、置換されていてもよいフェノキシ基を有する単官能カチオン重合性化合物の少なくともいずれかを含み、
25℃、100kHzの条件で測定した誘電率が、3.5以下である
ことを特徴とする電子デバイス用光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記単官能カチオン重合性化合物は、下記式(1-1)で表される化合物、下記式(1-2)で表される化合物、下記式(1-3)で表される化合物、下記式(1-4)で表される化合物、下記式(1-5)で表される化合物、下記式(1-6)で表される化合物、下記式(1-7)で表される化合物、下記式(1-8)で表される化合物、及び、下記式(1-9)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1記載の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物。
【化1】
【請求項3】
前記多官能カチオン重合性化合物は、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物、及び、下記式(4)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1又は2記載の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物。
【化2】
式(2)中、R
1は、それぞれ独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基を表し、R
2は、それぞれ独立に、結合手又は炭素数1以上6以下のアルキレン基を表し、Xは、エポキシ基を含む基、オキセタニル基を含む基、又は、ビニルエーテル基を含む基を表し、nは、0以上1000以下の整数を表す。
【化3】
式(3)中、R
3は、それぞれ独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基を表し、R
4は、結合手又は炭素数1以上6以下のアルキレン基を表し、R
5は、それぞれ独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基、エポキシ基を含む基、オキセタニル基を含む基、又は、ビニルエーテル基を含む基を表し、Xは、エポキシ基を含む基、オキセタニル基を含む基、又は、ビニルエーテル基を含む基を表す。lは、0以上1000以下の整数を表し、mは、1以上100以下の整数を表す。ただし、R
5がいずれも炭素数1以上10以下のアルキル基である場合、mは、2以上100以下の整数を表す。
【化4】
式(4)中、R
6は、それぞれ独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基、エポキシ基を含む基、オキセタニル基を含む基、又は、ビニルエーテル基を含む基を表し、2k個のR
6のうち、少なくとも2つのR
6は、エポキシ基を含む基、オキセタニル基を含む基、又は、ビニルエーテル基を表す。kは、3以上6以下の整数を表す。
【請求項4】
前記単官能カチオン重合性化合物と前記多官能カチオン重合性化合物との比率(単官能カチオン重合性化合物:多官能カチオン重合性化合物)が、重量比で、1:9から9:1である請求項1、2又は3記載の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
25℃における粘度が5mPa・s以上30mPa・s以下である請求項1、2、3又は4記載の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布性、硬化性、及び、低アウトガス性に優れ、かつ、低い誘電率を有する電子デバイス用光硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル用接着剤や回路基板用ソルダーレジスト等に用いられる電子デバイス用硬化性樹脂組成物として、適度な粘度を有して塗布性に優れ、かつ、光硬化性を有する材料が求められている。
【0003】
タッチパネルは、携帯電話、スマートフォン、カーナビゲーション、パーソナルコンピューター等の電子機器に使用されている。なかでも、静電容量式のタッチパネルは、機能性に優れることから、急速に普及している。
静電容量式のタッチパネルは、一般に、カバーパネルと、接着剤層と、基板とが積層されて構成されている。上記接着剤層には、透明性、及び、被着体に対する接着力に優れていることが求められる。このような接着剤層として、例えば、特許文献1には、特定のモノマー成分を重合することにより得られた(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤層が開示されている。
【0004】
一方、回路基板は、一般に、絶縁材料からなる基材上に形成された配線パターンによる回路を有し、最表面は、回路の保護、回路外部との絶縁等の目的でソルダーレジストと呼ばれる保護膜で被覆されている。また、ソルダーレジストを用いることにより、部品を実装したり、外部配線への接続を行ったりする際に、はんだが配線間に付着して短絡するハンダブリッジを防止することができる。ソルダーレジストには、例えば、特許文献2に開示されているように、パターンを形成するために感光性を有する硬化性樹脂組成物が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-034655号公報
【特許文献2】特開平08-259663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、静電容量式のタッチパネルの薄型化及び大型化に伴い、タッチパネルの応答速度を低下させないために、上述した接着剤層に用いられる硬化性樹脂組成物には、更に、低誘電率、低誘電正接といった誘電特性を有することが求められている。
一方、特許文献2に開示されているような硬化性樹脂組成物に用いられる硬化性樹脂は、感光性を付与するために酸基等の極性基を有することから、誘電率及び誘電正接が高くなり、その結果、高周波の電圧を回路に印加した場合に伝達遅延や信号損失が生じたりするという問題があった。また、微細なソルダーレジストパターンを容易にかつ効率的に形成する方法として、印刷方式によりソルダーレジストパターンを形成する方法が行われているが、従来の硬化性樹脂組成物を特にインクジェット法等による印刷方式に適した塗布性を有するものとした場合、誘電率及び誘電正接を低くすることが困難となるという問題があった。
本発明は、塗布性、硬化性、及び、低アウトガス性に優れ、かつ、低い誘電率を有する電子デバイス用光硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、硬化性樹脂と重合開始剤とを含有する電子デバイス用光硬化性樹脂組成物であって、上記硬化性樹脂は、単官能カチオン重合性化合物と多官能カチオン重合性化合物とを含み、上記単官能カチオン重合性化合物は、単官能脂肪族カチオン重合性化合物、及び、置換されていてもよいフェノキシ基を有する単官能カチオン重合性化合物の少なくともいずれかを含み、25℃、100kHzの条件で測定した誘電率が、3.5以下である電子デバイス用光硬化性樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、硬化性樹脂として、特定の構造を有する単官能カチオン重合性化合物と、多官能カチオン重合性化合物とを組み合わせて用いることにより、塗布性、硬化性、及び、低アウトガス性に優れ、かつ、低い誘電率を有する電子デバイス用光硬化性樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、単官能カチオン重合性化合物を含む。
上記単官能カチオン重合性化合物は、単官能脂肪族カチオン重合性化合物、及び、置換されていてもよいフェノキシ基を有する単官能カチオン重合性化合物(以下、「フェノキシ基含有単官能カチオン重合性化合物」ともいう)の少なくともいずれかを含む。上記単官能カチオン重合性化合物として、単官能脂肪族カチオン重合性化合物、及び、フェノキシ基含有単官能カチオン重合性化合物の少なくともいずれかを含有することにより、本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物は、塗布性に優れ、かつ、低い誘電率を有するものとなる。
【0010】
上記単官能カチオン重合性化合物は、1分子中に1つのカチオン重合性基を有する。
上記単官能カチオン重合性化合物の有するカチオン重合性基としては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基等が挙げられる。なかでも、エポキシ基、オキセタニル基が好ましい。
【0011】
上記単官能脂肪族カチオン重合性化合物は、脂肪族骨格を有する。
上記単官能脂肪族カチオン重合性化合物は、上記脂肪族骨格として、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族骨格のみを有するものであってもよいし、環状の脂肪族骨格を有するものであってもよい。
【0012】
上記フェノキシ基含有単官能カチオン重合性化合物において、上記フェノキシ基が置換されている場合の置換基としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1以上18以下のアルキル基、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2以上18以下のアルケニル基等が挙げられる。
【0013】
上記単官能カチオン重合性化合物は、具体的には、下記式(1-1)で表される化合物、下記式(1-2)で表される化合物、下記式(1-3)で表される化合物、下記式(1-4)で表される化合物、下記式(1-5)で表される化合物、下記式(1-6)で表される化合物、下記式(1-7)で表される化合物、下記式(1-8)で表される化合物、及び、下記式(1-9)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0014】
【0015】
上記硬化性樹脂100重量部中における上記単官能カチオン重合性化合物の含有量の好ましい下限は20重量部、好ましい上限は90重量部である。上記単官能カチオン重合性化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる電子デバイス用光硬化性樹脂組成物が優れた硬化性を維持しつつ、より塗布性に優れ、かつ、より誘電率の低いものとなる。上記単官能カチオン重合性化合物の含有量のより好ましい下限は30重量部、より好ましい上限は70重量部である。
【0016】
上記硬化性樹脂は、多官能カチオン重合性化合物を含む。
上記多官能カチオン重合性化合物を含有することにより、本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物は、硬化性に優れるものとなる。
【0017】
上記多官能カチオン重合性化合物は、1分子中に2つ以上のカチオン重合性基を有する。
上記多官能カチオン重合性化合物の有するカチオン重合性基としては、上述した単官能カチオン重合性化合物の有するカチオン重合性基と同様のものが挙げられる。なかでも、エポキシ基、オキセタニル基が好ましい。
【0018】
上記多官能カチオン重合性化合物は、2以上のカチオン重合性基を有するシリコーン化合物を含むことが好ましい。上記2以上のカチオン重合性基を有するシリコーン化合物を含むことにより、本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物は、低い誘電率を維持しつつ、硬化性により優れるものとなる。
【0019】
上記多官能カチオン重合性化合物は、上記2以上のカチオン重合性基を有するシリコーン化合物として、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物、及び、下記式(4)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0020】
【0021】
式(2)中、R1は、それぞれ独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基を表し、R2は、それぞれ独立に、結合手又は炭素数1以上6以下のアルキレン基を表し、Xは、エポキシ基を含む基、オキセタニル基を含む基、又は、ビニルエーテル基を含む基を表し、nは、0以上1000以下の整数を表す。
【0022】
【0023】
式(3)中、R3は、それぞれ独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基を表し、R4は、結合手又は炭素数1以上6以下のアルキレン基を表し、R5は、それぞれ独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基、エポキシ基を含む基、オキセタニル基を含む基、又は、ビニルエーテル基を含む基を表し、Xは、エポキシ基を含む基、オキセタニル基を含む基、又は、ビニルエーテル基を含む基を表す。lは、0以上1000以下の整数を表し、mは、1以上100以下の整数を表す。ただし、R5がいずれも炭素数1以上10以下のアルキル基である場合、mは、2以上100以下の整数を表す。
【0024】
【0025】
式(4)中、R6は、それぞれ独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基、エポキシ基を含む基、オキセタニル基を含む基、又は、ビニルエーテル基を含む基を表し、2k個のR6のうち、少なくとも2つのR6は、エポキシ基を含む基、オキセタニル基を含む基、又は、ビニルエーテル基を表す。kは、3以上6以下の整数を表す。
【0026】
上記式(2)中のX、上記式(3)中のR5及びX、並びに、上記式(4)中のR6における上記エポキシ基を含む基としては、下記式(5-1)又は(5-2)で表される基が好ましい。
上記式(2)中のX、上記式(3)中のR5及びX、並びに、上記式(4)中のR6における上記オキセタニル基を含む基としては、下記式(6)で表される基が好ましい。
上記式(2)中のX、上記式(3)中のR5及びX、並びに、上記式(4)中のR6における上記ビニルエーテル基を含む基としては、下記式(7)で表される基が好ましい。
【0027】
【0028】
式(5-1)及び(5-2)中、R7は、結合手、又は、酸素原子を有していてもよい炭素数1以上6以下のアルキレン基を表し、*は、結合位置を表す。
【0029】
【0030】
式(6)中、R8は、結合手、又は、酸素原子を有していてもよい炭素数1以上6以下のアルキレン基を表し、R9は、水素原子又は炭素数1以上10以下のアルキル基を表し、*は、結合位置を表す。
【0031】
【0032】
式(7)中、R10は、結合手、又は、酸素原子を有していてもよい炭素数1以上6以下のアルキレン基を表し、*は、結合位置を表す。
【0033】
上記硬化性樹脂100重量部中における上記多官能カチオン重合性化合物の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は80重量部である。上記多官能カチオン重合性化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる電子デバイス用光硬化性樹脂組成物が優れた塗布性及び低い誘電率を維持しつつ、硬化性により優れるものとなる。上記多官能カチオン重合性化合物の含有量のより好ましい下限は30重量部、より好ましい上限は70重量部である。
【0034】
上記単官能カチオン重合性化合物と上記多官能カチオン重合性化合物との比率(単官能カチオン重合性化合物:多官能カチオン重合性化合物)は、重量比で、1:9から9:1であることが好ましい。上記単官能カチオン重合性化合物と上記多官能カチオン重合性化合物との比率がこの範囲であることにより、得られる電子デバイス用光硬化性樹脂組成物が低い誘電率を維持しつつ、部材等へのダメージやアウトガスの発生を抑制してより信頼性に優れるものとなる。上記単官能カチオン重合性化合物と上記多官能カチオン重合性化合物との比率は、3:7から7:3であることがより好ましい。
【0035】
上記硬化性樹脂は、本発明の目的を阻害しない範囲で、粘度調整による塗布性の向上等を目的として、上記単官能カチオン重合性化合物及び上記多官能カチオン重合性化合物に加えて、その他の硬化性樹脂を含有してもよい。
上記その他の硬化性樹脂としては、(メタ)アクリル化合物等が挙げられる。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリル化合物」とは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0036】
上記(メタ)アクリル化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル変性シリコーンオイル等が挙げられる。
これらの(メタ)アクリル化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0037】
上記硬化性樹脂100重量部中における上記その他の硬化性樹脂の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は30重量部である。上記その他の硬化性樹脂の含有量がこの範囲であることにより、得られる電子デバイス用光硬化性樹脂組成物の誘電特性等を悪化させることなく、塗布性を向上させる等の効果により優れるものとなる。上記その他の硬化性樹脂の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は20重量部である。
【0038】
本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物は、重合開始剤を含有する。
上記重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤が好適に用いられる。また、上記その他の硬化性樹脂として上記(メタ)アクリル化合物を含有する場合、上記重合開始剤として上記光カチオン重合開始剤と光ラジカル重合開始剤とを併用してもよい。更に、本発明の目的を阻害しない範囲で熱カチオン重合開始剤や熱ラジカル重合開始剤を用いてもよい。
【0039】
上記光カチオン重合開始剤は、光照射によりプロトン酸又はルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、イオン性光酸発生型であってもよいし、非イオン性光酸発生型であってもよい。
【0040】
上記イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤のアニオン部分としては、例えば、BF4
-、PF6
-、SbF6
-、(BX4)-(但し、Xは、少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す)等が挙げられる。また、上記アニオン部分としては、PFm(CnF2n+1)6-m
-(但し、mは0以上5以下の整数であり、nは1以上6以下の整数である)等も挙げられる。
上記イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては、例えば、上記アニオン部分を有する、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族アンモニウム塩、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe塩等が挙げられる。
【0041】
上記芳香族スルホニウム塩としては、例えば、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(4-(4-アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0042】
上記芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0043】
上記芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0044】
上記芳香族アンモニウム塩としては、例えば、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0045】
上記(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe塩としては、例えば、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)ヘキサフルオロホスフェート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)ヘキサフルオロアンチモネート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)テトラフルオロボレート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0046】
上記非イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N-ヒドロキシイミドスルホネート等が挙げられる。
【0047】
上記光カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、みどり化学社製の光カチオン重合開始剤、ユニオンカーバイド社製の光カチオン重合開始剤、ADEKA社製の光カチオン重合開始剤、3M社製の光カチオン重合開始剤、BASF社製の光カチオン重合開始剤、ローディア社製の光カチオン重合開始剤等が挙げられる。
上記みどり化学社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、DTS-200等が挙げられる。
上記ユニオンカーバイド社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、UVI6990、UVI6974等が挙げられる。
上記ADEKA社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、SP-150、SP-170等が挙げられる。
上記3M社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、FC-508、FC-512等が挙げられる。
上記BASF社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、IRGACURE261、IRGACURE290等が挙げられる。
上記ローディア社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、PI2074等が挙げられる。
【0048】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジル、チオキサントン系化合物等が挙げられる。
【0049】
上記光ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、BASF社製の光ラジカル重合開始剤、東京化成工業社製の光ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
上記BASF社製の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE379、IRGACURE651、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE2959、IRGACURE OXE01、ルシリンTPO等が挙げられる。
上記東京化成工業社製の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
【0050】
上記熱カチオン重合開始剤としては、アニオン部分がBF4
-、PF6
-、SbF6
-、又は、(BX4)-(但し、Xは、少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す)で構成される、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。なかでも、スルホニウム塩、アンモニウム塩が好ましい。
【0051】
上記スルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0052】
上記ホスホニウム塩としては、エチルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、テトラブチルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0053】
上記アンモニウム塩としては、例えば、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムヘキサフルオロホスフェート、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロホスフェート、ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルフェニルジベンジルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、メチルフェニルジベンジルアンモニウムヘキサフルオロアンチモネート、メチルフェニルジベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェニルトリベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルフェニル(3,4-ジメチルベンジル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチル-N-ベンジルアニリニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N-ジエチル-N-ベンジルアニリニウムテトラフルオロボレート、N,N-ジメチル-N-ベンジルピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N-ジエチル-N-ベンジルピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。
【0054】
上記熱カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、三新化学工業社製の熱カチオン重合開始剤、King Industries社製の熱カチオン重合開始剤等が挙げられる。
上記三新化学工業社製の熱カチオン重合開始剤としては、例えば、サンエイドSI-60、サンエイドSI-80、サンエイドSI-B3、サンエイドSI-B3A、サンエイドSI-B4等が挙げられる。
上記King Industries社製の熱カチオン重合開始剤としては、例えば、CXC1612、CXC1821等が挙げられる。
【0055】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等からなるものが挙げられる。
上記アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
上記有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0056】
上記熱ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、VPE-0201、VPE-0401、VPE-0601、VPS-0501、VPS-1001、V-501(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
【0057】
上記重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部である。上記重合開始剤の含有量が0.01重量部以上であることにより、得られる電子デバイス用光硬化性樹脂組成物が硬化性により優れるものとなる。上記重合開始剤の含有量が10重量部以下であることにより、得られる電子デバイス用光硬化性樹脂組成物の硬化反応が速くなりすぎず、作業性により優れるものとなり、硬化物をより均一なものとすることができる。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0058】
本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物は、増感剤を含有してもよい。上記増感剤は、上記重合開始剤の重合開始効率をより向上させて、本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物の硬化反応をより促進させる役割を有する。
【0059】
上記増感剤としては、例えば、チオキサントン系化合物や、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ベンゾフェノン、2,4-ジクロロベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等が挙げられる。
上記チオキサントン系化合物としては、例えば、2,4-ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0060】
上記増感剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が3重量部である。上記増感剤の含有量が0.01重量部以上であることにより、増感効果がより発揮される。上記増感剤の含有量が3重量部以下であることにより、吸収が大きくなりすぎずに深部まで光を伝えることができる。上記増感剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は1重量部である。
【0061】
本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で熱硬化剤を含有してもよい。
上記熱硬化剤としては、例えば、ヒドラジド化合物、イミダゾール誘導体、酸無水物、ジシアンジアミド、グアニジン誘導体、変性脂肪族ポリアミン、各種アミンとエポキシ樹脂との付加生成物等が挙げられる。
上記ヒドラジド化合物としては、例えば、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントイン、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
上記イミダゾール誘導体としては、例えば、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、N-(2-(2-メチル-1-イミダゾリル)エチル)尿素、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、N,N’-ビス(2-メチル-1-イミダゾリルエチル)尿素、N,N’-(2-メチル-1-イミダゾリルエチル)-アジポアミド、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記酸無水物としては、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)等が挙げられる。
これらの熱硬化剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0062】
上記熱硬化剤のうち市販されているものとしては、例えば、大塚化学社製の熱硬化剤、味の素ファインテクノ社製の熱硬化剤等が挙げられる。
上記大塚化学社製の熱硬化剤としては、例えば、SDH、ADH等が挙げられる。
上記味の素ファインテクノ社製の熱硬化剤としては、例えば、アミキュアVDH、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH等が挙げられる。
【0063】
上記熱硬化剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.5重量部、好ましい上限が30重量部である。上記熱硬化剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる電子デバイス用光硬化性樹脂組成物が優れた保存安定性を維持したまま、熱硬化性により優れるものとなる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は15重量部である。
【0064】
本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物は、更に、シランカップリング剤を含有してもよい。上記シランカップリング剤は、本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物と基板等との接着性を向上させる役割を有する。
【0065】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシラン化合物は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0066】
上記シランカップリング剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、余剰のシランカップリング剤によるブリードアウトを抑制しつつ、得られる電子デバイス用光硬化性樹脂組成物の接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0067】
本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物は、硬化遅延剤を含有してもよい。上記硬化遅延剤を含有することにより、得られる電子デバイス用光硬化性樹脂組成物のポットライフを長くすることができる。
【0068】
上記硬化遅延剤としては、例えば、ポリエーテル化合物等が挙げられる。
上記ポリエーテル化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、クラウンエーテル化合物等が挙げられる。なかでも、クラウンエーテル化合物が好適である。
【0069】
上記硬化遅延剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が5.0重量部である。上記硬化遅延剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる電子デバイス用光硬化性樹脂組成物を硬化させる際のアウトガスの発生を抑制しつつ、遅延効果をより発揮できる。上記硬化遅延剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は3.0重量部である。
【0070】
本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物は、更に、本発明の目的を阻害しない範囲において、表面改質剤を含有してもよい。上記表面改質剤を含有することにより、本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物に塗膜の平坦性を付与することができる。
上記表面改質剤としては、例えば、界面活性剤やレベリング剤等が挙げられる。
【0071】
上記表面改質剤としては、例えば、シリコーン系、アクリル系、フッ素系等のものが挙げられる。
上記表面改質剤のうち市販されているものとしては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製の表面改質剤、AGCセイミケミカル社製の表面改質剤等が挙げられる。
上記ビックケミー・ジャパン社製の表面改質剤としては、例えば、BYK-340、BYK-345等が挙げられる。
上記AGCセイミケミカル社製の表面改質剤としては、例えば、サーフロンS-611等が挙げられる。
【0072】
本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、組成物中に発生した酸と反応する化合物又はイオン交換樹脂を含有してもよい。
【0073】
上記組成物中に発生した酸と反応する化合物としては、酸と中和する物質、例えば、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩又は炭酸水素塩等が挙げられる。具体的には例えば、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が用いられる。
【0074】
上記イオン交換樹脂としては、陽イオン交換型、陰イオン交換型、両イオン交換型のいずれも使用することができるが、特に塩化物イオンを吸着することのできる陽イオン交換型又は両イオン交換型が好適である。
【0075】
また、本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の公知の各種添加剤を含有してもよい。
【0076】
本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、硬化性樹脂と、重合開始剤と、必要に応じて添加するシランカップリング剤等の添加剤とを混合する方法等が挙げられる。
【0077】
本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物は、25℃、100kHzの条件で測定した誘電率の上限が3.5である。上記誘電率が3.5以下であることにより、本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物は、タッチパネル用接着剤や回路基板用ソルダーレジスト等の電子デバイス用接着剤や電子デバイス用コーティング剤等に好適に用いることができる。上記誘電率の好ましい上限は3.3、より好ましい上限は3.0である。
また、上記誘電率の好ましい下限は特にないが、実質的な下限は2.2である。
なお、上記「誘電率」は、誘電率測定装置を用いて測定することができる。
【0078】
本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物は、インクジェット法による塗布に好適に用いることができる。
上記インクジェット法としては、非加熱式インクジェット法であってもよいし、加熱式インクジェット法であってもよい。
なお、本明細書において、上記「非加熱式インクジェット法」は、28℃未満の塗布ヘッド温度でインクジェット塗布する方法であり、上記「加熱式インクジェット法」は、28℃以上の塗布ヘッド温度でインクジェット塗布する方法である。
【0079】
上記加熱式インクジェット法には、加熱機構を搭載したインクジェット用塗布ヘッドが用いられる。インクジェット塗布ヘッドが加熱機構を搭載していることにより、電子デバイス用光硬化性樹脂組成物を吐出する際に粘度と表面張力を低下させることができる。
【0080】
上記加熱機構を搭載したインクジェット用塗布ヘッドとしては、例えば、コニカミノルタ社製のKM1024シリーズや、富士フイルムDimatix社製のSG1024シリーズ等が挙げられる。
【0081】
本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物を上記加熱式インクジェット法による塗布に用いる場合、塗布ヘッドの加熱温度は、28℃~80℃の範囲であることが好ましい。上記塗布ヘッドの加熱温度がこの範囲であることにより、電子デバイス用光硬化性樹脂組成物の経時的な粘度上昇が更に抑制され、吐出安定性により優れるものとなる。
【0082】
本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物は、25℃における粘度の好ましい下限が5mPa・s、好ましい上限が30mPa・sである。上記25℃における粘度がこの範囲であることにより、インクジェット法によって好適に塗布することができる。
本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物の25℃における粘度のより好ましい下限は8mPa・sであり、更に好ましい下限は10mPa・sである。また、本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物の25℃における粘度のより好ましい上限は25mPa.sであり、更に好ましい上限は20mPa.sである。
なお、本明細書において上記「粘度」は、E型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定される値を意味する。上記E型粘度計としては、例えば、VISCOMETER TV-22(東機産業社製)等が挙げられ、CP1型のコーンプレートを用いることができる。
【0083】
本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物は、25℃における表面張力の好ましい下限が15mN/m、好ましい上限が35mN/mである。上記25℃における表面張力がこの範囲であることにより、インクジェット法によって好適に塗布することができる。上記25℃における表面張力のより好ましい下限は20mN/m、より好ましい上限は30mN/m、更に好ましい下限は22mN/m、更に好ましい上限は28mN/mである。
なお、上記表面張力は、動的濡れ性試験機によりWilhelmy法によって測定された値を意味する。上記動的濡れ性試験機としては、例えば、WET-6100型(レスカ社製)等が挙げられる。
【0084】
本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物は、300nm以上400nm以下の波長及び300mJ/cm2以上3000mJ/cm2以下の積算光量の光を照射することによって好適に硬化させることができる。
【0085】
上記光照射に用いる光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、エキシマレーザ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LEDランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が挙げられる。これらの光源は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
これらの光源は、上記光カチオン重合開始剤や上記光ラジカル重合開始剤の吸収波長に合わせて適宜選択される。
【0086】
本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物への光の照射手段としては、例えば、各種光源の同時照射、時間差をおいての逐次照射、同時照射と逐次照射との組み合わせ照射等が挙げられ、いずれの照射手段を用いてもよい。
【0087】
本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物は、タッチパネル用接着剤や回路基板用ソルダーレジスト等の電子デバイス用接着剤や電子デバイス用コーティング剤として好適に用いられる。また、本発明の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物は、有機EL表示素子等の表示素子用封止剤としても好適に用いられる。
【発明の効果】
【0088】
本発明によれば、塗布性、硬化性、及び、低アウトガス性に優れ、かつ、低い誘電率を有する電子デバイス用光硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0089】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0090】
(実施例1~10、比較例1~3)
表1、2に記載された配合比に従い、各材料を、ホモディスパー型撹拌混合機を用い、撹拌速度3000rpmで均一に撹拌混合することにより、実施例1~10及び比較例1~3の電子デバイス用光硬化性樹脂組成物を作製した。ホモディスパー型撹拌混合機としては、ホモディスパーL型(プライミクス社製)を用いた。
表1、2中、「X-22-169」は、上記式(2)中のR1がメチル基、R2が結合手、Xが上記式(5-2)で表される基(R7はエチレン基)、nが0(平均値)である化合物である。
表1、2中、「X-22-163」は、上記式(2)中のR1がメチル基、R2がn-プロピレン基、Xが上記式(5-1)で表される基(R7はオキシメチレン基)nが0(平均値)である化合物である。
表1、2中、「X-40-2678」は、上記式(4)中のR6のうち2つのR6が上記式(5-2)で表される基(R7はエチレン基)、他のR6がメチル基、kが4(平均値)である化合物である。
【0091】
得られた各電子デバイス用光硬化性樹脂組成物をPETフィルム上に100μmの厚みに塗布し、LED UVランプを用いて395nmの紫外線を3000mJ/cm2照射して硬化させた。LED UVランプとしては、SQシリーズ(クオークテクノロジー社製)を用いた。その後、硬化した膜の両面に、対向する様に金電極を直径2cmの円形に0.1μm厚に真空蒸着し、誘電率測定用試験片を作製した。得られた試験片について、誘電率測定装置を用いて、25℃、100kHzの条件で誘電率を測定した。誘電率測定装置としては、1260型インピーダンスアナライザー(ソーラートロン社製)及び1296型誘電率測定インターフェイス(ソーラートロン社製)を用いた。結果を表1、2に示した。
【0092】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各電子デバイス用光硬化性樹脂組成物について以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
【0093】
(粘度)
実施例及び比較例で得られた各電子デバイス用光硬化性樹脂組成物について、E型粘度計を用い、CP1型のコーンプレートにて、25℃、100rpmの条件における粘度を測定した。E型粘度計としては、VISCOMETER TV-22(東機産業社製)を用いた。
【0094】
(塗布性)
実施例及び比較例で得られた各電子デバイス用光硬化性樹脂組成物を、インクジェットプリンターを用いて、アルカリ洗浄した無アルカリガラス上に10ピコリットルの液滴量にて25μmピッチで格子状に印刷する塗布試験を行った。インクジェットプリンターとしては、マテリアルプリンタDMP-2831(富士フイルム社製)を用い、無アルカリガラスとしては、AN100(AGC社製)を用いた。
印刷領域に未塗布部分及びむらがなく均一に印刷されていた場合を「○」、未塗布部分はないがスジ状のむらが見られた場合を「△」、未塗布部分があった場合を「×」として塗布性を評価した。
【0095】
(硬化性)
実施例及び比較例で得られた各電子デバイス用光硬化性樹脂組成物について、LED UVランプを用いて395nmの紫外線を3000mJ/cm2照射して硬化させた。LED UVランプとしては、SQシリーズ(クオークテクノロジー社製)を用いた。硬化前の組成物と硬化物とについて、フーリエ変換赤外分光光度計にてFT-IR分析を行った。フーリエ変換赤外分光光度計としては、iS-5(ニコレー社製)を用いた。エポキシ基の場合は915cm-1のピークの硬化後の減少率、また、オキセタニル基の場合は980cm-1のピークの硬化後の減少率をそれぞれ硬化率(カチオン重合性基の反応率)として算出した。
硬化率が90%以上であった場合を「○」、70%以上90%未満であった場合を「△」、70%未満であった場合を「×」として硬化性を評価した。
【0096】
(低アウトガス性)
実施例及び比較例で得られた各電子デバイス用光硬化性樹脂組成物について、硬化物の加熱時に発生するアウトガスを以下に示すヘッドスペース法によるガスクロマトグラフにより測定した。
まず、各電子デバイス用光硬化性樹脂組成物100mgをアプリケーターにて300μmの厚さに塗工した後に、LEDランプにて波長365nmの紫外線を3000mJ/cm2照射して電子デバイス用光硬化性樹脂組成物を硬化させた。次いで、得られた硬化物をヘッドスペース用バイアルに入れてバイアルを封止し、100℃で30分間加熱して、ヘッドスペース法により発生ガスを測定した。
発生したガスが400ppm未満であった場合を「◎」、400ppm以上600ppm未満であった場合を「○」、600ppm以上800ppm未満であった場合を「△」、800ppm以上であった場合を「×」として低アウトガス性を評価した。
【0097】
【0098】
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明によれば、塗布性、硬化性、及び、低アウトガス性に優れ、かつ、低い誘電率を有する電子デバイス用光硬化性樹脂組成物を提供することができる。