(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181445
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】アクチビンIIa型受容体変異体および同変異体を含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20231214BHJP
C07K 14/71 20060101ALI20231214BHJP
C07K 14/735 20060101ALI20231214BHJP
C07K 14/76 20060101ALI20231214BHJP
C07K 14/78 20060101ALI20231214BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231214BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20231214BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231214BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231214BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231214BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231214BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231214BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20231214BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20231214BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20231214BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20231214BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20231214BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231214BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231214BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20231214BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231214BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20231214BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20231214BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20231214BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20231214BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20231214BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231214BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/71 ZNA
C07K14/735
C07K14/76
C07K14/78
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K38/16
A61P21/00
A61P21/04
A61P25/02
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P3/00
A61P3/10
A61P3/04
A61P3/06
A61K47/68
A61K47/62
A61K47/65
A61K39/395 Y
A61K39/395 W
A61K48/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187775
(22)【出願日】2023-11-01
(62)【分割の表示】P 2022056962の分割
【原出願日】2017-11-09
(31)【優先権主張番号】62/531,943
(32)【優先日】2017-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/420,476
(32)【優先日】2016-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519165308
【氏名又は名称】ケロス セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】KEROS THERAPEUTICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】シーラ、ジャスバー エス.
(72)【発明者】
【氏名】ラシェイ、ジェニファー
(57)【要約】
【課題】細胞外アクチビンIIa型受容体(ActRIIa)変異体および同変異体を含む医薬組成物を提供すること。
【解決手段】細胞外ActRIIa変異体を含むポリペプチドは、Fcドメインの単量体または部分に融合した細胞外ActRIIa変異体を含む。同変異体を含む医薬組成物は、筋力低下および筋肉の萎縮を伴う疾患および病態(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、顔面頭蓋上腕筋ジストロフィー、封入体筋炎、筋萎縮性側索硬化症、サルコペニア、または癌悪液質)、或いは代謝性疾患(例えば、肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病)を治療するために使用される。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外アクチビンIIa型受容体(ActRIIa)変異体を含み、
前記変異体は
GAILGRSETQECLX1X2NANWX3X4X5X6TNQTGVEX7CX8GX9X10X11X12X13X14HCX15ATWX16NISGSIEIVX17X18GCX19X20X21DX22NCYDRTDCVEX23X24X25X26PX27VYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS(配列番号1)
の配列を有し、
配列中、X1はFまたはYであり;X2はFまたはYであり;X3はEまたはAであり;X4はKまたはLであり;X5はDまたはEであり;X6はRまたはAであり;X7はPまたはRであり;X8はYまたはEであり;X9はDまたはEであり;X10はKまたはQであり;X11はDまたはAであり;X12はKまたはAであり;X13はRまたはAであり;X14はRまたはLであり;X15はFまたはYであり;X16はK、R、またはAであり;X17はK、A、Y、F、またはIであり;X18はQまたはKであり;X19はWまたはAであり;X20はLまたはAであり;X21はD、K、R、A、F、G、M、N、またはIであり;X22はI、F、またはAであり;X23はKまたはTであり;X24はKまたはEであり;X25はDまたはEであり;X26はSまたはNであり;かつ、X27はEまたはQであり、かつ
前記変異体は、配列番号73の配列を有する野生型細胞外ActRIIaまたは配列番号76~96の配列のうちいずれか1つを有する細胞外ActRIIaに対して少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、
ポリペプチド。
【請求項2】
前記変異体が
GAILGRSETQECLFX2NANWX3X4X5X6TNQTGVEX7CX8GX9KX11X12X13X14HCX15ATWX16NISGSIEIVX17X18GCX19X20X21DX22NCYDRTDCVEX23X24X25X26PX27VYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS(配列番号2)
の配列を有する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記変異体が
GAILGRSETQECLFX2NANWEX4X5RTNQTGVEX7CX8GX9KDKRX14HCX15ATWX16NISGSIEIVKX18GCWLDDX22NCYDRTDCVEX23X24X25X26PX27VYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS(配列番号3)
の配列を有する、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記変異体が
GAILGRSETQECLFX2NANWEX4DRTNQTGVEX7CX8GX9KDKRX14HCX15ATWX16NISGSIEIVKX18GCWLDDX22NCYDRTDCVEX23KX25X26PX27VYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS(配列番号4)
の配列を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記変異体が
GAILGRSETQECLFX2NANWEX4DRTNQTGVEPCX8GX9KDKRX14HCFATWKNISGSIEIVKX18GCWLDDINCYDRTDCVEX23KX25X26PX27VYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS(配列番号5)
の配列を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
X1がFである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項7】
X1がYである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項8】
X10がKである、請求項1、6、または7に記載のポリペプチド。
【請求項9】
X10がQである、請求項1、6、または7に記載のポリペプチド。
【請求項10】
X2がFである、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
X2がまたはYである、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
X3がEである、請求項1、2、および6~11のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
X3がAである、請求項1、2、および6~11のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
X4がKである、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項15】
X4がLである、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項16】
X5がDである、請求項1、2、3、および6~15のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項17】
X5がEである、請求項1、2、3、および6~15のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項18】
X6がRである、請求項1、2、および6~17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項19】
X6がAである、請求項1、2および6~17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項20】
X7がPである、請求項1~4および6~19のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項21】
X7がRである、請求項1~4および6~19のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項22】
X8がYである、請求項1~21のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項23】
X8がEである、請求項1~21のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項24】
X9がDである、請求項1~23のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項25】
X9がEである、請求項1~23のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項26】
X11がDである、請求項1、2および6~25のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項27】
X11がAである、請求項1、2および6~25のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項28】
X12がKである、請求項1、2および6~27のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項29】
X12がAである、請求項1、2および6~27のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項30】
X13がRである、請求項1、2および6~29のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項31】
X13がAである、請求項1、2および6~29のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項32】
X14がRである、請求項1~31のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項33】
X14がLである、請求項1~31のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項34】
X15がFである、請求項1~4および6~33のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項35】
X15がYである、請求項1~4および6~33のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項36】
X16がKである、請求項1~4および6~35のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項37】
X16がRである、請求項1~4および6~35のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項38】
X16がAである、請求項1~4および6~35のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項39】
X17がKである、請求項1、2および6~38のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項40】
X17がAである、請求項1、2および6~38のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項41】
X17がYである、請求項1、2および6~38のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項42】
X17がFである、請求項1、2および6~38のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項43】
X17がIである、請求項1、2および6~38のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項44】
X18がQである、請求項1~43のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項45】
X18がKである、請求項1~43のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項46】
X19がWである、請求項1、2および6~45のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項47】
X19がAである、請求項1、2および6~45のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項48】
X20がLである、請求項1、2および6~47のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項49】
X20がAである、請求項1、2および6~47のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項50】
X21がDである、請求項1、2および6~49のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項51】
X21がKである、請求項1、2および6~49のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項52】
X21がRである、請求項1、2および6~49のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項53】
X21がAである、請求項1、2および6~49のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項54】
X21がFである、請求項1、2および6~49のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項55】
X21がGである、請求項1、2および6~49のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項56】
X21がMである、請求項1、2および6~49のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項57】
X21がNである、請求項1、2および6~49のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項58】
X21がIである、請求項1、2および6~49のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項59】
X22がIである、請求項1~4および6~58のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項60】
X22がFである、請求項1~4および6~58のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項61】
X22がAである、請求項1~4および6~58のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項62】
X23がKである、請求項1~61のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項63】
X23がTである、請求項1~61のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項64】
X24がKである、請求項1、2、3、および6~63のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項65】
X24がEである、請求項1、2、3、および6~63のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項66】
X25がDである、請求項1~65のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項67】
X25がEである、請求項1~65のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項68】
X26がSである、請求項1~67のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項69】
X26がNである、請求項1~67のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項70】
X27がEである、請求項1~69のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項71】
X27がQである、請求項1~69のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項72】
X23がTであり、X24がEであり、X25がEであり、かつ、X26がNである、請求項1~71のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項73】
X23がTであり、X24がKであり、X25がEであり、かつ、X26がNである、請求項1~71のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項74】
X17がKである、請求項1~73のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項75】
前記変異体が配列番号6~72のうちいずれか1つの配列を有する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項76】
位置X24のアミノ酸がアミノ酸Kで置換されている、請求項1~75のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項77】
位置X24のアミノ酸がアミノ酸Eで置換されている、請求項1~75のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項78】
1以上のアミノ酸のC末端伸長部をさらに含む、請求項1~77のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項79】
前記C末端伸長部がNPである、請求項78に記載のポリペプチド。
【請求項80】
前記C末端伸長部がNPVTPKである、請求項78に記載のポリペプチド。
【請求項81】
リンカーを介してポリペプチドのC末端に融合されたFcドメイン単量体をさらに含む、請求項1~80のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項82】
前記Fcドメイン単量体が配列番号97の配列を含む、請求項81に記載のポリペプチド。
【請求項83】
リンカーを介してポリペプチドのC末端に融合された野生型Fcドメインをさらに含む、請求項1~80のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項84】
前記野生型Fcドメインが配列番号151の配列を含む、請求項83に記載のポリペプチド。
【請求項85】
リンカーを介してポリペプチドのC末端に融合された、アミノ酸置換を有するFcドメインをさらに含む、請求項1~80のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項86】
前記Fcドメインが二量体を形成しない、請求項85に記載のポリペプチド。
【請求項87】
リンカーを介してポリペプチドのC末端に融合されたアルブミン結合ペプチドをさらに含む、請求項1~80のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項88】
前記アルブミン結合ペプチドが配列番号152の配列を含む、請求項87に記載のポリペプチド。
【請求項89】
リンカーを介してポリペプチドのC末端に融合されたフィブロネクチンドメインをさらに含む、請求項1~80のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項90】
前記フィブロネクチンドメインが配列番号153の配列を含む、請求項89に記載のポリペプチド。
【請求項91】
リンカーを介してポリペプチドのC末端に融合されたヒト血清アルブミンをさらに含む、請求項1~80のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項92】
前記ヒト血清アルブミンが配列番号154の配列を含む、請求項91に記載のポリペプチド。
【請求項93】
二量体を形成する、請求項81または82に記載のポリペプチド。
【請求項94】
前記リンカーがアミノ酸スペーサーである、請求項81~93のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項95】
前記アミノ酸スペーサーがGGG、GGGA(配列番号98)、GGGG(配列番号100)、GGGAG(配列番号130)、GGGAGG(配列番号131)、またはGGGAGGG(配列番号132)である、請求項94に記載のポリペプチド。
【請求項96】
少なくとも7日の血清半減期を有する、請求項1~95のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項97】
200pM以上のKDでヒト骨形成因子9(BMP9)と結合する、請求項1~96のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項98】
アクチビンおよびミオスタチンのうちの少なくとも一方と結合し、かつ、ヒトBMP9との結合は低いかまたは弱い、請求項97に記載のポリペプチド。
【請求項99】
ヒトBMP9と実質的に結合しない、請求項97または98に記載のポリペプチド。
【請求項100】
800pM以下のKDでヒトアクチビンAと結合する、請求項1~99のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項101】
800pM以下のKDでヒトアクチビンBと結合する、請求項1~100のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項102】
5pM以上のKDでヒトGDF-11と結合する、請求項1~101のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項103】
請求項1~102のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項104】
請求項103の核酸分子を含むベクター。
【請求項105】
請求項103に記載の核酸分子または請求項104に記載のベクターを含み、前記核酸分子またはベクターが宿主細胞内で発現される、請求項1~102のいずれか一項に記載のポリペプチドを発現する宿主細胞。
【請求項106】
請求項1~102のいずれか一項に記載のポリペプチドを作製する方法であって、
a)請求項103に記載の核酸分子または請求項104に記載のベクターを含む宿主細胞を提供すること、および
b)前記ポリペプチドの形成を可能とする条件下、宿主細胞内で前記核酸分子またはベクターを発現させること
を含む、方法。
【請求項107】
請求項1~102のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項103に記載の核酸分子、または請求項104に記載のベクターと1種類以上の薬学上許容される担体または賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項108】
前記ポリペプチドが治療上有効な量である、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項109】
それを必要とする対象において筋肉量を増加させる方法であって、前記対象に、治療有効量の、請求項1~102のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項103に記載の核酸分子、請求項104に記載のベクター、または請求項107または108に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項110】
前記対象が、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、封入体筋炎、筋萎縮性側索硬化症、サルコペニア、または癌悪液質を有する、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
筋力低下および筋肉の萎縮を伴う疾患または病態を有する対象においてミオスタチン、アクチビンおよびBMP9のうちの少なくとも1つのシグナル伝達に作用する方法であって、前記対象に、治療有効量の、請求項1~102のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項103に記載の核酸分子、請求項104に記載のベクター、または請求項107もしくは108に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項112】
前記疾患または病態が、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、封入体筋炎、筋萎縮性側索硬化症、サルコペニア、または癌悪液質である、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
デュシェンヌ型筋ジストロフィーを有する対象を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量の、請求項1~102のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項103に記載の核酸分子、請求項104に記載のベクター、または請求項107もしくは108のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項114】
顔面嚢胞上腕性筋ジストロフィーを有する対象を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量の、請求項1~102のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項103に記載の核酸分子、請求項104に記載のベクター、または請求項107もしくは108のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項115】
封入体筋炎を有する対象を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量の、請求項1~102のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項103に記載の核酸分子、請求項104に記載のベクター、または請求項107もしくは108のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項116】
筋萎縮性側索硬化症を有する対象を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量の、請求項1~102のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項103に記載の核酸分子、請求項104に記載のベクター、または請求項107もしくは108のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項117】
それを必要とする対象において体脂肪を減少させる方法であって、前記対象に、治療有効量の、請求項1~102のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項103に記載の核酸分子、請求項104に記載のベクター、または請求項107もしくは108のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項118】
それを必要とする対象において体重を減少させる方法であって、前記対象に、治療有効量の、請求項1~102のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項103に記載の核酸分子、請求項104に記載のベクター、または請求項107もしくは108のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項119】
それを必要とする対象において血糖を低下させる方法であって、前記対象に、治療有効量の、請求項1~102のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項103に記載の核酸分子、請求項104に記載のベクター、または請求項107もしくは108のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項120】
それを必要とする対象においてインスリン感受性を高める方法であって、前記対象に、治療有効量の、請求項1~102のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項103に記載の核酸分子、請求項104に記載のベクター、または請求項107もしくは108のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項121】
前記対象が代謝性疾患を有するか、または同代謝性疾患を発症するリスクがある、請求項117~120のいずれか一項に記載の方法。
【請求項122】
代謝性疾患を有するかまたは代謝性疾患を発症するリスクがある対象においてミオスタチン、アクチビンおよびBMP9のうちの少なくとも1つのシグナル伝達に作用する方法であって、前記対象に、治療有効量の、請求項1~102のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項103に記載の核酸分子、請求項104に記載のベクター、または請求項107もしくは108のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項123】
対象において代謝性疾患の治療および予防のうちの少なくとも一方を行う方法であって、前記方法は、前記対象に、治療有効量の、請求項1~102のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項103に記載の核酸分子、請求項104に記載のベクター、または請求項107もしくは108のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項124】
前記代謝性疾患が肥満、1型糖尿病および2型糖尿病からなる群より選択される、請求項121~123のいずれか一項に記載の方法。
【請求項125】
前記代謝性疾患が肥満である、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
前記代謝性疾患が1型糖尿病である、請求項124に記載の方法。
【請求項127】
前記代謝性疾患が2型糖尿病である、請求項124に記載の方法。
【請求項128】
前記方法は、前記対象の体重および体重増加の割合の少なくとも一方を減少させる、請求項117~127のいずれか一項に記載の方法。
【請求項129】
前記方法は前記対象の体脂肪の量および体脂肪の割合の少なくとも一方を減少させる、請求項117~128のいずれか一項に記載の方法。
【請求項130】
前記方法は、前記対象の食物摂取に対する食欲に影響を及ぼさない、請求項117~129のいずれか一項に記載の方法。
【請求項131】
前記方法が前記対象の肥満を軽減する、請求項117~130のいずれか一項に記載の方法。
【請求項132】
前記方法は、前記対象の精巣上体および腎周囲の脂肪体の重量を減少させる、請求項117~131のいずれか一項に記載の方法。
【請求項133】
前記方法は、前記対象の皮下脂肪および内臓脂肪のうちの少なくとも一方の量を減少させる、請求項117~132のいずれか一項に記載の方法。
【請求項134】
前記方法は、前記対象の空腹時インスリンレベルを低下させる、請求項117~133のいずれか一項に記載の方法。
【請求項135】
前記方法は、前記対象の血糖値を低下させる、請求項117~134のいずれか一項に記載の方法。
【請求項136】
前記方法は、前記対象のインスリン感受性を高める、請求項117~135のいずれか一項に記載の方法。
【請求項137】
前記方法は、前記対象のグルコースクリアランス速度を増加させる、請求項117~136のいずれか一項に記載の方法。
【請求項138】
前記方法は、前記対象の血清脂質プロフィールを改善する、請求項117~137のいずれか一項に記載の方法。
【請求項139】
前記方法は、除脂肪量を減少させない、請求項117~138のいずれか一項に記載の方法。
【請求項140】
前記方法は筋肉量を増加させる、請求項109~139のいずれか一項に記載の方法。
【請求項141】
前記方法はアクチビンおよびミオスタチンのうちの少なくとも一方の対応する受容体への結合を低減または阻害する、請求項109~140のいずれか一項に記載の方法。
【請求項142】
ポリペプチド、核酸、ベクター、または医薬組成物が、筋肉量および強度のうちの少なくとも一方を増加させるか、対象においてミオスタチン、アクチビンおよびBMP9のうちの少なくとも1つに作用するか、または、アクチビンおよびミオスタチンのうちの少なくとも一方の対応する受容体への結合を減少、もしくは阻害するのに十分な量にて投与される、請求項109~116および140~141のいずれか一項に記載の方法。
【請求項143】
ポリペプチド、核酸、ベクター、または医薬組成物が、体脂肪を減少させる、皮下脂肪の量を減少させる、内臓脂肪の量を減少させる、肥満を低減する、精巣上体および腎周囲の脂肪体の重量を減少させる、体脂肪率を減少させる、体重を減少させる、体重増加率を減少させる、空腹時インスリンレベルを低下させる、血糖値を低下させる、インスリン感受性を高める、対象におけるミオスタチン、アクチビンおよびBMP9のうちの少なくとも1つのシグナル伝達に作用する、脂肪細胞の増殖を低減する、アクチビンおよびミオスタチンのうちの少なくとも一方の対応する受容体への結合を減少もしくは阻害する、LDLを減少させる、トリグリセリドを減少させる、血清脂質プロフィールを改善する、インスリン生合成およびβ-細胞からの分泌のうちの少なくとも一方を調節する、インスリンの必要性を遅らせる、延期するもしくは低減させる、或いはグルコースクリアランスを高める、のに十分な量で投与される、請求項117~141のいずれか一項に記載の方法。
【請求項144】
前記方法は前記対象において血管合併症を引き起こさない、請求項109~143のいずれか一項に記載の方法。
【請求項145】
前記方法が血管透過性または漏出を増加させない、請求項144に記載の方法。
【請求項146】
前記方法が前記対象の骨塩密度を増加させる、請求項109~145のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチビンIIa型受容体変異体およびそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)、封入体筋炎(IBM)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、筋力低下および筋肉の萎縮、および/または随意筋運動を制御する運動ニューロンが関与する筋疾患の例である。DMDは、X連鎖ジストロフィン遺伝子の変異によって引き起こされ、すべての骨格筋における進行性の筋変性およびの筋力低下によって特徴付けられる。FSHDは特に顔、肩、上腕、下肢の骨格筋に影響を与える。IBMは主として大腿部の筋肉並びに指および手首の屈曲を制御する腕の筋肉に作用する炎症性筋疾患である。ALSは、運動ニューロンの変性による、体全体の筋硬直、筋けいれん、および筋萎縮を特徴とする運動ニューロン疾患である。これらの壊滅的な筋疾患を有する対象の治療および生存を改善するための努力はいまだ成功していない。
【0003】
米国では、過剰体重が深刻化する問題であり、人口の約25%が罹患している。内臓および皮下の増加という事実は様々な臓器の機能不全を引き起こす。過剰体重は、肥満、糖尿病(例えば、1型糖尿病および2型糖尿病)、心血管疾患、およびいくつかの形態の癌を含む一連の合併症のリスク因子である。インスリン抵抗性は肥満にも関連しており、膵臓組織が高量のインスリンを必要とするときに起こる。膵臓β細胞がその要求を満たすのに十分なインスリンをもはや産生できなくなると、高血糖症が起こり、そして2型糖尿病を発症する。肥満にて増加する脂肪細胞は、この過程において役割を果たすと考えられている。糖尿病(例えば、1型糖尿病および2型糖尿病)およびインスリン抵抗性などの肥満および代謝性疾患の有病率にもかかわらず、利用可能な治療選択肢はほとんどない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの筋疾患および代謝性疾患に対する新規な治療法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、細胞外アクチビンIIa型受容体(ActRIIa:activin receptor type IIa)変異体を含むポリペプチドに関する。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、Fcドメインの単量体または部分のN末端またはC末端に融合した細胞外ActRIIa変異体を含む。そのような部分は、アミノ酸または他の共有結合によって結合されていてもよく、そしてポリペプチドの安定性を増加させる。Fcドメイン単量体に融合した細胞外ActRIIa変異体を含むポリペプチドはまた、2つのFcドメイン単量体間の相互作用を介して二量体(例えば、ホモ二量体またはヘテロ二量体)を形成し得る。本発明のポリペプチドは、筋力低下および筋肉の萎縮(weakness and atrophy of muscles)を含む疾患または病態、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(FSHD)、封入体筋炎(IBM)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、サルコペニアまたは癌悪液質、を有する対象において筋肉量および強度を増加させるために使用され得る。本発明のポリペプチドはまた、代謝性疾患(例えば、肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病)を有するかまたは発症するリスクがある対象において、体重を減少させるため、体脂肪を減少させるため、グルコースクリアランスを増加させるため、インスリン感受性を高めるため、または空腹時インスリンレベルを低下させるために使用され得る。さらに、本発明のポリペプチドはまた、筋力低下および筋肉の萎縮を伴う疾患もしくは病態、或いは代謝性疾患を、発症するリスクを有するかまたはそれを有する対象において、ミオスタチン、アクチビン、および/または骨形成タンパク質9(BMP9)シグナル伝達に作用するために使用され得る。
【0006】
一態様において、本発明は、細胞外アクチビンIIa型受容体(ActRIIa)変異体を含むポリペプチドであって、前記変異体は、
GAILGRSETQECLX1X2NANWX3X4X5X6TNQTGVEX7CX8GX9X10X11X12X13X14HCX15ATWX16NISGSIEIVX17X18GCX19X20X21DX22NCYDRTDCVEX23X24X25X26PX27VYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS(配列番号1)の配列を有し、配列中、X1はFまたはYであり;X2はFまたはYであり;X3はEまたはAであり;X4はKまたはLであり;X5はDまたはEであり;X6はRまたはAであり;X7はPまたはRであり;X8はYまたはEであり;X9はDまたはEであり;X10はKまたはQであり;X11はDまたはAであり;X12はKまたはAであり;X13はRまたはAであり;X14はRまたはLであり;X15はFまたはYであり;X16はK、R、またはAであり;X17はK、A、Y、F、またはIであり;X18はQまたはKであり;X19はWまたはAであり;X20はLまたはAであり;X21はD、K、R、A、F、G、M、N、またはIであり;X22はI、F、またはAであり;X23はKまたはTであり;X24はKまたはEであり;X25はDまたはEであり;X26はSまたはNであり;かつ、X27はEまたはQであり、かつ前記変異体は、配列番号73の配列を有する野生型細胞外ActRIIaまたは配列番号76~96の配列のうちいずれか1つを有する細胞外ActRIIaに対して少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、
ポリペプチドに関する。
【0007】
いくつかの実施形態において、変異体は、
GAILGRSETQECLFX2NANWX3X4X5X6TNQTGVEX7CX8GX9KX11X12X13X14HCX15ATWX16NISGSIEIVX17X18GCX19X20X21DX22NCYDRTDCVEX23X24X25X26PX27VYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS(配列番号2)
の配列を有し、配列中、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X19、X20、X21、X22、X23、X24、X25、X26、およびX27は上記と同じように定義される。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記変異体は、
GAILGRSETQECLFX2NANWEX4X5RTNQTGVEX7CX8GX9KDKRX14HCX15ATWX16NISGSIEIVKX18GCWLDDX22NCYDRTDCVEX23X24X25X26PX27VYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS(配列番号3)
の配列を有し、配列中、X2、X4、X5、X7、X8、X9、X14、X15、X16、X18、X22、X23、X24、X25、X26、およびX27は上記のように定義される。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記変異体は、
GAILGRSETQECLFX2NANWEX4DRTNQTGVEX7CX8GX9KDKRX14HCX15ATWX16NISGSIEIVKX18GCWLDDX22NCYDRTDCVEX23KX25X26PX27VYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS(配列番号4)
の配列を有し、配列中、X2、X4、X7、X8、X9、X14、X15、X16、X18、X22、X23、X25、X26、およびX27は上記のように定義される。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記変異体は、
GAILGRSETQECLFX2NANWEX4DRTNQTGVEPCX8GX9KDKRX14HCFATWKNISGSIEIVKX18GCWLDDINCYDRTDCVEX23KX25X26PX27VYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS(配列番号5)
の配列を有し、配列中、X2、X4、X8、X9、X14、X18、X23、X25、X26、およびX27は上記のように定義される。
【0011】
上述の実施形態のいずれにおいても、X1はFまたはYである。上述の実施形態のいずれにおいても、X2はFまたはYである。上述の実施形態のいずれにおいても、X3はEまたはAである。上述の実施形態のいずれにおいても、X4はKまたはLである。上述の実施形態のいずれにおいても、X5はDまたはEである。上述の実施形態のいずれにおいても、X6はRまたはAである。上述の実施形態のいずれにおいても、X7はPまたはRである。上述の実施形態のいずれにおいても、X8はYまたはEである。上述の実施形態のいずれにおいても、X9はDまたはEである。上述の実施形態のいずれにおいても、X10はKまたはQである。上述の実施形態のいずれにおいても、X11はDまたはAである。上述の実施形態のいずれにおいても、X12はKまたはAである。上述の実施形態のいずれにおいても、X13はRまたはAである。上述の実施形態のいずれにおいても、X14はRまたはLである。上述の実施形態のいずれにおいても、X15はFまたはYである。上述の実施形態のいずれにおいても、X16はK、R、またはAである。上述の実施形態のいずれにおいても、X17はK、A、Y、F、またはIである。上述の実施形態のいずれにおいても、X18はQまたはKである。上述の実施形態のいずれにおいても、X19はWまたはAである。上述の実施形態のいずれにおいても、X20はLまたはAである。上述の実施形態のいずれにおいても、X21はD、K、R、A、F、G、M、N、またはIである。上述の実施形態のいずれにおいても、X22はI、F、またはAである。上述の実施形態のいずれにおいても、X23はKまたはTである。上述の実施形態のいずれにおいても、X24はKまたはEである。上述の実施形態のいずれにおいても、X25はDまたはEである。上述の実施形態のいずれにおいても、X26はSまたはNである。上述の実施形態のいずれにおいても、X27はEまたはQである。上述の実施形態のいずれにおいても、X23はTであり、X24はEであり、X25はEであり、かつ、X26はNである。上述の実施形態のいずれにおいても、X23はTであり、X24はKであり、X25はEであり、かつ、X26はNである。上述の実施形態のいずれにおいても、X17はKである。
【0012】
上述の実施形態のいずれにおいても、前記変異体は、配列番号6~72のうちいずれか1つの配列を有する。
上述の実施形態のいずれにおいても、位置X24のアミノ酸は、アミノ酸Kで置換可能である。
【0013】
上述の実施形態のいずれにおいても、位置X24のアミノ酸は、アミノ酸Eで置換可能である。
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、1以上のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、またはそれ以上のアミノ酸)のC末端伸長部をさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、C末端伸長部は、アミノ酸配列NPである。いくつかの実施形態では、C末端伸長部は、アミノ酸配列NPVTPK(配列番号155)である。
【0014】
前述の実施形態のいずれかにおいて、本明細書に記載のポリペプチドは、ポリペプチドのC末端に融合または共有結合した部分をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、同部分はポリペプチドの安定性を増大させるかまたは薬物動態を改善する。いくつかの実施形態において、同部分はFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、またはヒト血清アルブミンである。
【0015】
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、リンカーを介してポリペプチドのC末端に融合されたFcドメイン単量体をさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、Fcドメイン単量体に融合された本明細書に記載の細胞外ActRIIa変異体を含むポリペプチドは、2つのFcドメイン単量体間の相互作用を介して二量体(例えば、ホモ二量体またはヘテロ二量体)を形成し得る。いくつかの実施形態では、Fcドメイン単量体は、配列番号97の配列を有する。
【0016】
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、リンカーを介してポリペプチドのC末端に融合されたFcドメインをさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、野生型Fcドメインである。いくつかの実施形態では、野生型Fcドメインは、配列番号151の配列を有する。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、1以上のアミノ酸置換を含むFcドメインは、二量体を形成しない。
【0017】
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、リンカーを介してポリペプチドのC末端に融合されたアルブミン結合ペプチドをさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、アルブミン結合ペプチドは、配列番号152の配列を有する。
【0018】
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、リンカーを介してポリペプチドのC末端に融合されたフィブロネクチンドメインをさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、フィブロネクチンドメインペプチドは、配列番号153の配列を有する。
【0019】
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、リンカーを介してポリペプチドのC末端に融合されたヒト血清アルブミンをさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、ヒト血清アルブミンは、配列番号154の配列を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、リンカーは、アミノ酸スペーサーである。いくつかの実施形態では、アミノ酸スペーサーは、GGG、GGGA(配列番号98)、GGGG(配列番号100)、GGGAG(配列番号130)、GGGAGG(配列番号131)、またはGGGAGGG(配列番号132)である。
【0021】
いくつかの実施形態では、アミノ酸スペーサーは、GGGS(配列番号99)、GGGGA(配列番号101)、GGGGS(配列番号102)、GGGGG(配列番号103)、GGAG(配列番号104)、GGSG(配列番号105)、AGGG(配列番号106)、SGGG(配列番号107)、GAGA(配列番号108)、GSGS(配列番号109)、GAGAGA(配列番号110)、GSGSGS(配列番号111)、GAGAGAGA(配列番号112)、GSGSGSGS(配列番号113)、GAGAGAGAGA(配列番号114)、GSGSGSGSGS(配列番号115)、GAGAGAGAGAGA(配列番号116)、およびGSGSGSGSGSGS(配列番号117)、GGAGGA(配列番号118)、GGSGGS(配列番号119)、GGAGGAGGA(配列番号120)、GGSGGSGGS(配列番号121)、GGAGGAGGAGGA(配列番号122)、GGSGGSGGSGGS(配列番号123)、GGAGGGAG(配列番号124)、GGSGGGSG(配列番号125)、GGAGGGAGGGAG(配列番号126)、およびGGSGGGSGGGSG(配列番号127)、GGGGAGGGGAGGGGA(配列番号128)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号129)、AAAL(配列番号133)、AAAK(配列番号134)、AAAR(配列番号135)、EGKSSGSGSESKST(配列番号136)、GSAGSAAGSGEF(配列番号137)、AEAAAKEAAAKA(配列番号138)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号139)、GENLYFQSGG(配列番号140)、SACYCELS(配列番号141)、RSIAT(配列番号142)、RPACKIPNDLKQKVMNH(配列番号143)、GGSAGGSGSGSSGGSSGASGTGTAGTGSGSGTGSG(配列番号144)、AAANSSIDLISVPVDSR(配列番号145)、GGSGGGSEGGGSEGGGSEGGGSEGGGSEGGGSGGGS(配列番号146)、EAAAK(配列番号147)、またはPAPAP(配列番号148)である。
【0022】
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、少なくとも7日の血清半減期を有する。
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、200pM以上のKDでヒト骨形成因子9(BMP9)と結合する。いくつかの実施形態では、このポリペプチドは、アクチビンおよび/またはミオスタチンと結合し、ヒトBMP9との結合は低い(例えば、弱い)。いくつかの実施形態では、このポリペプチドは、ヒトBMP9とは実質的に結合しない。
【0023】
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、800pM以下のKDでヒトアクチビンAと結合する。
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、およそ800pM以下のKDでヒトアクチビンBと結合する。
【0024】
上述の実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載のポリペプチドは、およそ5pM以上のKDでヒトGDF-11と結合する。
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のポリペプチド(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体を含むポリペプチド)をコードする核酸分子に関する。別の態様では、本発明はまた、本明細書に記載の核酸分子を含むベクターに関する。
【0025】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のポリペプチドを発現する宿主細胞に関し、その宿主細胞は、前記2つの態様に記載されている核酸分子またはベクターを含み、この核酸分子またはベクターは宿主細胞内で発現される。
【0026】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のポリペプチドを作製する方法に関し、その方法は、a)本明細書に記載の核酸分子またはベクターを含む宿主細胞を提供すること、およびb)前記ポリペプチドの形成を可能とする条件下、宿主細胞内で前記核酸分子またはベクターを発現させること、を含む。
【0027】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のポリペプチド、核酸分子、またはベクターと1以上の薬学上許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物に関する。前記医薬組成物のいくつかの実施形態では、ポリペプチド、核酸分子、またはベクターは治療有効量である。
【0028】
別の態様では、本発明はまた、Fcドメイン単量体(例えば、配列番号97の配列)のN末端またはC末端に融合された、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体をそれぞれ含む2つの同一のポリペプチドを含む構築物(例えば、ホモ二量体)に関する。これら2つのポリペプチド内の2つのFcドメイン単量体は相互作用して、構築物内にFcドメインを形成する。
【0029】
別の態様において、本発明はまた、それぞれが配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体であって、Fcドメイン単量体(例えば、配列番号97の配列)のN末端またはC末端に融合している変異体を含む2つの異なるポリペプチド(例えばヘテロ二量体)を含む構築物に関する。2つのポリペプチド中の2つのFcドメイン単量体は相互作用して構築物中にFcドメインを形成する。
【0030】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象において筋肉量を増加させる方法に関する。この方法は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0031】
対象の筋肉量を増加させる方法のいくつかの実施形態において、対象は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(FSHD)、封入体筋炎(IBM)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、サルコペニア、または癌悪液質を有する。
【0032】
別の態様において、本発明は、筋力低下および筋肉の萎縮を含む疾患または病態を有する対象においてミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用する(例えば、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれらの受容体への結合を低減または阻害する)方法に関し、ここで、同方法は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む。この態様のいくつかの実施形態において、疾患または病態はDMD、FSHD、IBM、ALS、サルコペニア、または癌悪液質である。
【0033】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによるDMDを有する対象を治療する方法に関する。
【0034】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによるFSHDを有する対象を治療する方法に関する。
【0035】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによるIBMを有する対象を治療する方法に関する。
【0036】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによるALSを有する対象を治療する方法に関する。
【0037】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによる、それを必要とする対象の体脂肪を減少させる方法に関する。
【0038】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによる、それを必要とする対象の体重を減少させる方法に関する。
【0039】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによる、それを必要とする対象の血糖を低下させる方法に関する。
【0040】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによる、それを必要とする対象においてインスリン感受性を高める方法に関する。
【0041】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、対象は代謝性疾患を患っているかまたは発症するリスクがある。いくつかの実施形態において、代謝性疾患は、肥満、1型糖尿病および2型糖尿病を含む群から選択される。
【0042】
別の態様において、本発明は、代謝性疾患を有するか、又は代謝性疾患を発症させるリスクを有する対象において、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用する(例えば、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれらの受容体への結合を低減または阻害する)方法であって、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによる方法に関する。
【0043】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の治療有効量のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクター、または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することによって対象の代謝性疾患を治療および/または予防する方法に関する。
【0044】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、代謝性疾患は、肥満、1型糖尿病および2型糖尿病を含む群から選択される。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、代謝性疾患は肥満である。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、代謝性疾患は1型糖尿病である。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、代謝性疾患は2型糖尿病である。
【0045】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、前記対象の体重および/または体重増加の割合を減少させる。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は前記対象の体脂肪の量および/または体脂肪の割合を減少させる。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は前記対象の食物摂取に対する食欲に影響を及ぼさない。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は前記対象の肥満を軽減する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は前記対象の精巣上体および腎周囲の脂肪体の重量を減らす。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、前記対象の皮下脂肪および/または内臓脂肪の量を減らす。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は前記対象の空腹時インスリンのレベルを低下させる。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は前記対象の血糖値を低下させる。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は前記対象のインスリン感受性を高める。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は前記対象のグルコースクリアランス速度を増加させる。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は前記対象の血清脂質プロフィールを改善する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は除脂肪量を低減しない。
【0046】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は筋肉量を増加させる。
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法はアクチビンおよび/またはミオスタチンのそれらの受容体への結合を低減または阻害する。
【0047】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、ポリペプチド、核酸、ベクター、または医薬組成物は、筋肉量および/または強度を増大させるのに、対象におけるミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用するのに、または、アクチビンおよび/またはミオスタチンのそれらの受容体への結合を減少させるかまたは阻害するのに、十分な量で投与される。
【0048】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、ポリペプチド、核酸、ベクター、または医薬組成物は、体脂肪を減少させる、皮下脂肪の量を減少させる、内臓脂肪の量を減少させる、肥満症を軽減する、精巣上体および腎周囲の脂肪体の重量を減らす、体脂肪率を減少させる、体重を減少させる、体重増加率を減少させる、空腹時インスリンレベルを低下させる、血糖値を低下させる、インスリン感受性を高める、対象においてミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用する、脂肪細胞の増殖を減少させる、アクチビンおよび/またはミオスタチンのそれらの受容体への結合を減少または阻害する、LDLを減少させる、トリグリセリドを減少させる、血清脂質プロフィールを改善する、インスリン生合成および/またはβ-細胞からの分泌を調節する、インスリンの必要性を遅延する、延期する、もしくは低減する、或いはグルコースクリアランスを増加させるのに十分な量にて投与される。
【0049】
本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、その方法は、対象において血管合併症(例えば、血管透過性または漏出の増加)を引き起こさない。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、その方法は、対象において骨塩密度を増加させる。
【0050】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、変異体は配列番号69の配列を有する。いくつかの実施形態において、配列番号69の配列を有する変異体は、位置X17にアミノ酸K、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENまたはTKEN、および/またはC末端伸長部(例えば、C末端に1、2、3、4、5、6またはそれ以上のさらなるアミノ酸、例えば、アミノ酸NPまたはNPVTPK(配列番号155))を有する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、治療有効量の配列番号69の配列を有する変異体、任意選択にて、位置X17にアミノ酸K、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENまたはTKEN、および/またはC末端伸長部を有する変異体、或いは同変異体を含有する医薬組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象(例えば、DMD、FSHD、IBM、ALS、サルコペニア、または癌悪液質を有する対象)において筋肉量の増加させることまたは筋肉障害を治療すること、対象(例えば、DMD、FSHD、IBM、ALS、サルコペニア、癌悪液質、肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病を有するかまたは発症するリスクがある対象)においてミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のシグナル伝達に作用すること、対象(例えば、肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病を有する対象)において体脂肪または体重を減少させること、または対象(例えば、肥満、1型糖尿病もしくは2型糖尿病を有するか、または発症するリスクがある対象)において代謝性疾患を治療および/または予防すること、を含む。
【0051】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、変異体は配列番号58の配列を有する。いくつかの実施形態において、配列番号58の配列を有する変異体は、位置X17にアミノ酸K、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENまたはTKEN、および/またはC末端伸長部(例えば、C末端に1、2、3、4、5、6またはそれ以上のさらなるアミノ酸、例えば、アミノ酸NPまたはNPVTPK(配列番号155))を有する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、治療有効量の配列番号58の配列を有する変異体、任意選択にて、位置X17にアミノ酸K、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENまたはTKEN、および/またはC末端伸長部を有する変異体、或いは同変異体を含有する医薬組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象(例えば、DMD、FSHD、IBM、ALS、サルコペニア、または癌悪液質を有する対象)において筋肉量の増加させることまたは筋肉障害を治療すること、対象(例えば、DMD、FSHD、IBM、ALS、サルコペニア、癌悪液質、肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病を有するかまたは発症するリスクがある対象)においてミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のシグナル伝達に作用すること、対象(例えば、肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病を有する対象)において体脂肪または体重を減少させること、または対象(例えば、肥満、1型糖尿病もしくは2型糖尿病を有するか、または発症するリスクがある対象)において代謝性疾患を治療および/または予防すること、を含む。
【0052】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、変異体は配列番号6の配列を有する。いくつかの実施形態において、配列番号6の配列を有する変異体は、位置X17にアミノ酸K、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENまたはTKEN、および/またはC末端伸長部(例えば、C末端に1、2、3、4、5、6またはそれ以上のさらなるアミノ酸、例えば、アミノ酸NPまたはNPVTPK(配列番号155))を有する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、治療有効量の配列番号6の配列を有する変異体、任意選択にて、位置X17にアミノ酸K、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENまたはTKEN、および/またはC末端伸長部を有する変異体、或いは同変異体を含有する医薬組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象(例えば、DMD、FSHD、IBM、ALS、サルコペニア、または癌悪液質を有する対象)において筋肉量の増加させることまたは筋肉障害を治療すること、対象(例えば、DMD、FSHD、IBM、ALS、サルコペニア、癌悪液質、肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病を有するかまたは発症するリスクがある対象)においてミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のシグナル伝達に作用すること、対象(例えば、肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病を有する対象)において体脂肪または体重を減少させること、または対象(例えば、肥満、1型糖尿病もしくは2型糖尿病を有するか、または発症するリスクがある対象)において代謝性疾患を治療および/または予防すること、を含む。
【0053】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、変異体は配列番号38の配列を有する。いくつかの実施形態において、配列番号38の配列を有する変異体は、位置X17にアミノ酸K、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENまたはTKEN、および/またはC末端伸長部(例えば、C末端に1、2、3、4、5、6またはそれ以上のさらなるアミノ酸、例えば、アミノ酸NPまたはNPVTPK(配列番号155))を有する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、治療有効量の配列番号38の配列を有する変異体、任意選択にて、位置X17にアミノ酸K、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENまたはTKEN、および/またはC末端伸長部を有する変異体、或いは同変異体を含有する医薬組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象(例えば、DMD、FSHD、IBM、ALS、サルコペニア、または癌悪液質を有する対象)において筋肉量の増加させることまたは筋肉障害を治療すること、対象(例えば、DMD、FSHD、IBM、ALS、サルコペニア、癌悪液質、肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病を有するかまたは発症するリスクがある対象)においてミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のシグナル伝達に作用すること、対象(例えば、肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病を有する対象)において体脂肪または体重を減少させること、または対象(例えば、肥満、1型糖尿病もしくは2型糖尿病を有するか、または発症するリスクがある対象)において代謝性疾患を治療および/または予防すること、を含む。
【0054】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、変異体は配列番号41の配列を有する。いくつかの実施形態において、配列番号41の配列を有する変異体は、位置X17にアミノ酸K、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENまたはTKEN、および/またはC末端伸長部(例えば、C末端に1、2、3、4、5、6またはそれ以上のさらなるアミノ酸、例えば、アミノ酸NPまたはNPVTPK(配列番号155))を有する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、治療有効量の配列番号41の配列を有する変異体、任意選択にて、位置X17にアミノ酸K、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENまたはTKEN、および/またはC末端伸長部を有する変異体、或いは同変異体を含有する医薬組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象(例えば、DMD、FSHD、IBM、ALS、サルコペニア、または癌悪液質を有する対象)において筋肉量の増加させることまたは筋肉障害を治療すること、対象(例えば、DMD、FSHD、IBM、ALS、サルコペニア、癌悪液質、肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病を有するかまたは発症するリスクがある対象)においてミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のシグナル伝達に作用すること、対象(例えば、肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病を有する対象)において体脂肪または体重を減少させること、または対象(例えば、肥満、1型糖尿病もしくは2型糖尿病を有するか、または発症するリスクがある対象)において代謝性疾患を治療および/または予防すること、を含む。
【0055】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、変異体は配列番号44の配列を有する。いくつかの実施形態において、配列番号44の配列を有する変異体は、位置X17にアミノ酸K、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENまたはTKEN、および/またはC末端伸長部(例えば、C末端に1、2、3、4、5、6またはそれ以上のさらなるアミノ酸、例えば、アミノ酸NPまたはNPVTPK(配列番号155))を有する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、治療有効量の配列番号44の配列を有する変異体、任意選択にて、位置X17にアミノ酸K、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENまたはTKEN、および/またはC末端伸長部を有する変異体、或いは同変異体を含有する医薬組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象(例えば、DMD、FSHD、IBM、ALS、サルコペニア、または癌悪液質を有する対象)において筋肉量の増加させることまたは筋肉障害を治療すること、対象(例えば、DMD、FSHD、IBM、ALS、サルコペニア、癌悪液質、肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病を有するかまたは発症するリスクがある対象)においてミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のシグナル伝達に作用すること、対象(例えば、肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病を有する対象)において体脂肪または体重を減少させること、または対象(例えば、肥満、1型糖尿病もしくは2型糖尿病を有するか、または発症するリスクがある対象)において代謝性疾患を治療および/または予防すること、を含む。
【0056】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、変異体は配列番号70の配列を有する。いくつかの実施形態において、配列番号70の配列を有する変異体は、位置X17にアミノ酸K、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENまたはTKEN、および/またはC末端伸長部(例えば、C末端に1、2、3、4、5、6またはそれ以上のさらなるアミノ酸、例えば、アミノ酸NPまたはNPVTPK(配列番号155))を有する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、治療有効量の配列番号70の配列を有する変異体、任意選択にて、位置X17にアミノ酸K、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENまたはTKEN、および/またはC末端伸長部を有する変異体、或いは同変異体を含有する医薬組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象(例えば、DMD、FSHD、IBM、ALS、サルコペニア、または癌悪液質を有する対象)において筋肉量の増加させることまたは筋肉障害を治療すること、対象(例えば、DMD、FSHD、IBM、ALS、サルコペニア、癌悪液質、肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病を有するかまたは発症するリスクがある対象)においてミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のシグナル伝達に作用すること、対象(例えば、肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病を有する対象)において体脂肪または体重を減少させること、または対象(例えば、肥満、1型糖尿病もしくは2型糖尿病を有するか、または発症するリスクがある対象)において代謝性疾患を治療および/または予防すること、を含む。
【0057】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、変異体は配列番号71の配列を有する。いくつかの実施形態において、配列番号71の配列を有する変異体は、位置X17にアミノ酸K、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENまたはTKEN、および/またはC末端伸長部(例えば、C末端に1、2、3、4、5、6またはそれ以上のさらなるアミノ酸、例えば、アミノ酸NPまたはNPVTPK(配列番号155))を有する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、治療有効量の配列番号71の配列を有する変異体、任意選択にて、位置X17にアミノ酸K、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENまたはTKEN、および/またはC末端伸長部を有する変異体、或いは同変異体を含有する医薬組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象(例えば、DMD、FSHD、IBM、ALS、サルコペニア、または癌悪液質を有する対象)において筋肉量の増加させることまたは筋肉障害を治療すること、対象(例えば、DMD、FSHD、IBM、ALS、サルコペニア、癌悪液質、肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病を有するかまたは発症するリスクがある対象)においてミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のシグナル伝達に作用すること、対象(例えば、肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病を有する対象)において体脂肪または体重を減少させること、または対象(例えば、肥満、1型糖尿病もしくは2型糖尿病を有するか、または発症するリスクがある対象)において代謝性疾患を治療および/または予防すること、を含む。
【0058】
上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、変異体は配列番号72の配列を有する。いくつかの実施形態において、配列番号72の配列を有する変異体は、位置X17にアミノ酸K、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENまたはTKEN、および/またはC末端伸長部(例えば、C末端に1、2、3、4、5、6またはそれ以上のさらなるアミノ酸、例えば、アミノ酸NPまたはNPVTPK(配列番号155))を有する。上記の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、治療有効量の配列番号72の配列を有する変異体、任意選択にて、位置X17にアミノ酸K、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENまたはTKEN、および/またはC末端伸長部を有する変異体、或いは同変異体を含有する医薬組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象(例えば、DMD、FSHD、IBM、ALS、サルコペニア、または癌悪液質を有する対象)において筋肉量の増加させることまたは筋肉障害を治療すること、対象(例えば、DMD、FSHD、IBM、ALS、サルコペニア、癌悪液質、肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病を有するかまたは発症するリスクがある対象)においてミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のシグナル伝達に作用すること、対象(例えば、肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病を有する対象)において体脂肪または体重を減少させること、または対象(例えば、肥満、1型糖尿病もしくは2型糖尿病を有するか、または発症するリスクがある対象)において代謝性疾患を治療および/または予防すること、を含む。
【0059】
定義
本明細書で使用する場合、用語「細胞外アクチビンIIa型受容体(ActRIIa)変異体」は、野生型細胞外ActRIIaに対して少なくとも1つのアミノ酸置換(例えば、下記に示す配列番号75の配列の太字部分)を有する1回膜貫通型受容体ActRIIaの可溶型細胞外部分または配列番号76~96の配列のうちいずれか1つを有する細胞外ActRIIaを含むペプチドを指す。野生型ヒトActRIIa前駆体タンパク質の配列を下記に示し(配列番号75)、シグナルペプチドを斜体で、細胞外部分を太字で示す。
【0060】
野生型ヒトActRIIa前駆体タンパク質(配列番号75):
【0061】
【0062】
細胞外ActRIIa変異体は、配列番号1~72のうちいずれか1つの配列を有し得る。特定の実施形態では、細胞外ActRIIa変異体は、配列番号6~72(表2)のうちいずれか1つの配列を有する。いくつかの実施形態では、細胞外ActRIIa変異体は、野生型細胞外ActRIIaの配列(配列番号73)と少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、87%、90%、92%、95%、97%、またはそれを超える)アミノ酸配列同一性を有し得る。
【0063】
本明細書で使用する場合、用語「細胞外ActRIIb変異体」は、野生型細胞外ActRIIb(例えば、配列番号74の配列)に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を有する1回膜貫通型受容体ActRIIbの可溶型細胞外部分を含むペプチドを指す。細胞外ActRIIb変異体は、下記に示す配列番号149の配列を有し得る。
【0064】
細胞外ActRIIb変異体(配列番号149):
GRGEAETRECIFYNANWEKDRTNQSGLEPCYGDQDKRRHCFASWKNSSGTIELVKQGCWLDDINCYDRQECVAKKDSPEVYFCCCEGNFCNERFTHLPEAGGPEVTYEPPPTAPT
本明細書で使用する場合、用語「リンカー」は、2つの要素、例えば、ペプチドまたはタンパク質ドメインの間の結合を指す。本明細書に記載のポリペプチドは、ある部分に融合された細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含み得る。この部分は、ポリペプチドの安定性を増すか、または薬物動態特性を改善することができる。この部分(例えば、Fcドメイン単量体、野生型Fcドメイン、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、またはヒト血清アルブミン)は、リンカーを介してポリペプチドに融合されていてもよい。リンカーは、共有結合またはスペーサーであり得る。用語「結合」は、化学結合、例えば、アミド結合またはジスルフィド結合、または化学反応、例えば、化学共役から作り出されるいずれの種類の結合も指す。用語「スペーサー」は、2つの要素の間に空間および/またはフレキシビリティを設けるために2つの要素、例えば、ペプチドまたはタンパク質ドメインの間に存在する部分(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー)またはアミノ酸配列(例えば、1~200アミノ酸の配列)を指す。アミノ酸スペーサーは、ポリペプチドの一次配列の一部である(例えば、ポリペプチド主鎖により空間が設けられたペプチドに融合されている)。例えば、Fcドメインを形成する2つのヒンジ領域の間のジスルフィド結合の形成は、リンカーと見なされない。
【0065】
本明細書で使用する場合、用語「Fcドメイン」は、2つのFcドメイン単量体の二量体を指す。Fcドメインは、少なくともCH2ドメインおよびCH3ドメインを含むヒトFcドメインと少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも85%、90%、95%、97%、または100%の配列同一性)を有する。Fcドメイン単量体は、第2および第3の抗体定常ドメイン(CH2およびCH3)を含む。いくつかの実施形態では、Fcドメイン単量体はまた、ヒンジドメインも含む。Fcドメインは、例えば可変ドメインまたは相補性決定領域(CDR)など、抗原認識領域として働き得る免疫グロブリンのいずれの部分も含まない。野生型Fcドメインでは、2つのFcドメイン単量体は、2つのCH3抗体定常ドメイン間の相互作用、ならびに2つの二量体形成Fcドメイン単量体のヒンジドメイン間で形成する1以上のジスルフィド結合によって二量体を形成する。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、「デッドFcドメイン」の典型としてエフェクター機能を欠くように変異させてもよい。特定の実施形態では、Fcドメインの各Fcドメイン単量体は、FcドメインとFcγ受容体の間の相互作用または結合を低減するようにCH2抗体定常ドメイン内にアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、Fcドメインの二量体形成を低減または阻害する1以上のアミノ酸置換を含む。Fcドメインは、IgG、IgE、IgM、IgA、またはIgDを含むいずれの免疫グロブリン抗体アイソタイプであってもよい。加えて、Fcドメインは、IgGサブタイプ(例えば、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、またはIgG4)であってもよい。Fcドメインはまた、非天然Fcドメイン、例えば、組換えFcドメインであってもよい。
【0066】
本明細書で使用する場合、用語「アルブミン結合ペプチド」は、血清アルブミンに対して親和性を有し、血清アルブミンと結合する働きをするアミノ酸12~16個のアミノ酸配列を指す。アルブミン結合ペプチドは、例えば、ヒト、マウス、またはラットなど、起源の異なるものであってもよい。いくつかの実施形態では、アルブミン結合ペプチドは、配列DICLPRWGCLW(配列番号152)を有する。
【0067】
本明細書で使用する場合、用語「フィブロネクチンドメイン」は、例えば、インテグリンなどの膜貫通受容体タンパク質、ならびにコラーゲンおよびフィブリンなどの細胞外マトリックス成分と結合する、細胞外マトリックスの高分子量糖タンパク質、またはそのフラグメントを指す。いくつかの実施形態では、フィブロネクチンドメインは、UniProt ID NO:P02751の配列のアミノ酸610~702を有するフィブロネクチンIII型ドメイン(配列番号153)である。他の実施形態では、フィブロネクチンドメインは、アドネクチンタンパク質である。
【0068】
本明細書で使用する場合、用語「ヒト血清アルブミン」は、ヒト血漿中に存在するアルブミンタンパク質を指す。ヒト血清アルブミンは、血液中に最も豊富なタンパク質である。ヒト血清アルブミンは、血清タンパク質の約半分を占める。いくつかの実施形態では、ヒト血清アルブミンは、UniProt ID NO:P02768(配列番号154)の配列を有する。
【0069】
本明細書で使用する場合、用語「融合された」は、化学共役、組換え手段、および化学結合、例えば、アミド結合を含む手段による、2以上の要素、成分、またはタンパク質ドメイン、例えば、ペプチドまたはポリペプチドの組合せまたは結合を表すために使用される。例えば、化学共役、化学結合、ペプチドリンカー、または他のいずれかの共有結合手段を介して2つの単一のペプチドを直列に融合して1つの連続するタンパク質構造、例えばポリペプチドを形成することができる。本明細書に記載のポリペプチドのいくつかの実施形態では、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を、リンカーを介して、ある部分(例えば、Fcドメイン単量体(例えば、配列番号97の配列)、野生型Fcドメイン(例えば、配列番号151の配列)、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド(例えば、配列番号152の配列)、フィブロネクチンドメイン(例えば、配列番号153の配列)、またはヒト血清アルブミン(例えば、配列番号154の配列))のN末端またはC末端に直列で融合させてよい。例えば、細胞外ActRIIa変異体を、ペプチドリンカーを介して、ある部分(例えば、Fcドメイン単量体、野生型Fcドメイン、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、またはヒト血清アルブミン)に融合させるが、この場合、ペプチドリンカーのN末端を、化学結合、例えば、ペプチド結合を介して細胞外ActRIIa変異体のC末端に融合させ、かつ、ペプチドリンカーのC末端を、化学結合、例えば、ペプチド結合を介して、その部分(例えば、Fcドメイン単量体、野生型Fcドメイン、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、またはヒト血清アルブミン)のN末端に融合させる。
【0070】
本明細書で使用する場合、用語「C末端伸長部(extension)」は、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~70(例えば、配列番号6~70)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチドのC末端への1以上のアミノ酸の付加を指す。C末端伸長部は、1~6個のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6またはそれ以上のアミノ酸)であり得る。例示的なC末端伸長部は、アミノ酸配列NP(2個のアミノ酸C末端伸長部)およびアミノ酸配列NPVTPK(配列番号155)(6個のアミノ酸C末端伸長部)である。ポリペプチドの活性を混乱させないいずれのアミノ酸配列も使用可能である。配列番号71、すなわち、NPのC末端伸長部を有する配列番号69の配列、および配列番号72、すなわち、NPVTPKのC末端伸長部を有する配列番号69の配列は、本発明のポリペプチドがC末端伸長部を含むように改変され得る可能性のある方法のうちの2つに相当する。
【0071】
本明細書で使用する場合、用語「同一性パーセント(%)(percent(%)identity)」は、配列をアラインし、最大同一性パーセントを得るために必要に応じてギャップを導入した後(すなわち、ギャップは、最適なアラインメントのために候補配列と参照配列の一方または両方に導入することができ、比較の目的で非相同配列を無視することができる)、参照配列、例えば、野生型細胞外ActRIIa(例えば、配列番号73)のアミノ酸(または核酸)残基と同一である、候補配列、例えば、細胞外ActRIIa変異体のアミノ酸(または核酸)残基のパーセンテージを指す。同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、例えば、BLAST、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアなどの公開コンピュータソフトウエアを使用するなど、当技術分野の技術の範囲内にある様々な方法で達成することができる。当業者は、比較する配列の全長にわたって最大アラインメントを得るために必要なアルゴリズムを含め、アラインメントを評価するための適当なパラメータを決定することができる。いくつかの実施形態では、所与の参照配列に対する(to,with,or against)所与の候補配列のアミノ酸(または核酸)配列同一性パーセント(あるいは、これは所与の参照配列に対して特定のアミノ酸(または核酸)配列同一性パーセントを有するまたは含む所与の候補配列と表現することもできる)は次のように計算される:
100×(A/Bの分数)
式中、Aは、候補配列と参照配列のアラインメントにおいて同一スコアが与えられたアミノ酸(または核酸)残基の数であり、Bは、参照配列のアミノ酸(または核酸)残基の総数である。いくつかの実施形態では、候補配列の長さが参照配列の長さと等しくない場合、参照配列に対する候補配列のアミノ酸(または核酸)配列同一性パーセントは、候補配列に対する参照配列のアミノ酸(または核酸)配列同一性パーセントと等しくないであろう。
【0072】
特定の実施形態では、候補配列との比較のためにアラインされる参照配列は、候補配列が候補配列の全長または候補配列の連続するアミノ酸(または核酸)残基の選択された部分にわたって50%~100%の同一性を示すことを示し得る。比較目的でアラインされる候補配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%である。候補配列の位置が参照配列の対応する位置と同じアミノ酸(または核酸)残基で占められていれば、それらの分子はその位置において同一である。
【0073】
本明細書で使用する場合、用語「血清半減期」は、対象に治療タンパク質を投与するという文脈で、その対象においてそのタンパク質の血漿濃度が半分に減少するのに要する時間を指す。タンパク質は、再分布したり、または血流から排除されたり、または例えば、タンパク質分解によって分解されたりすることがある。本明細書に記載されるように、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチドは、ヒトにおいて7日の血清半減期を示す。
【0074】
本明細書で使用する場合、用語「代謝性疾患」は、エネルギーを放出するために食物中の炭水化物、タンパク質、および脂肪を分解し、そして、化学物質を他の物質に変換し、エネルギー利用および/または貯蔵のために細胞内へそれらを輸送することのような、対象の代謝に関連する疾患、障害、または症候群を指す。代謝性疾患のいくつかの症状には、高血清トリグリセリド、高い低密度コレステロール(LDL)、低い高密度コレステロール(HDL)、および/または空腹時インスリンレベルの上昇、空腹時血漿グルコースの上昇、腹部肥満(中心性肥満)ならびに血圧上昇が含まれる。代謝性疾患は、心血管疾患などの他の疾患を発症するリスクを高める。本発明において、代謝性疾患としては、肥満、1型糖尿病および2型糖尿病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
本明細書で使用する場合、用語「体重増加率(%)」は、以前の時点における対象の以前の体重と比較した、増加した体重の割合(%)を指す。体重増加率(%)は次のように計算できる。
【0076】
100×[(後の時点での体重-以前の時点での体重)/(以前の時点での体重)]
本発明において、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチド、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチドをコードする核酸分子、またはそのような核酸分子を含有するベクターを対象に投与することは、対象の体重増加の割合(%)を減少させる。
【0077】
本明細書で使用する場合、用語「食物摂取に対する食欲」は、対象の自然な欲求または食物に対する必要性を指す。対象の食物摂取に対する食欲は、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチドが投与された後に消費される食物の量を測定することによってモニターすることができる。本発明において、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチド、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチドをコードする核酸分子、またはそのような核酸分子を含有するベクターを対象に投与することは、対象の食物摂取に対する食欲には影響を与えることはない。
【0078】
本明細書中で使用される場合、用語「肥満(adiposity)」は、対象の脂肪組織に貯蔵されている脂肪をいう。本発明において、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチド、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチドをコードする核酸分子、またはそのような核酸分子を含有するベクターを対象に投与することは、除脂肪量に影響を及ぼすことなく対象の肥満を軽減する。
【0079】
本明細書で使用する場合、用語「除脂肪量(lean mass)」は、例えば、除脂肪量、体脂肪、および体液を含む身体の組成の成分を指す。通常、除脂肪量は、総体重から体脂肪と体液の重量を引いて計算される。典型的には、対象の除脂肪量は全体重の60%~90%の間である。本発明において、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチド、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチドをコードする核酸分子、またはそのような核酸分子を含有するベクターを対象に投与することは、除脂肪量に影響を与えることなく対象の肥満(すなわち脂肪)を減少させる。
【0080】
本明細書中で使用される場合、用語「精巣上体および腎周囲の脂肪体(epididymal and perirenal fat pads)」とは、精巣上体および腎臓周辺の密集した脂肪細胞をいう。本発明において、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチド、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチドをコードする核酸分子、またはそのような核酸分子を含有するベクターを対象に投与することは、対象の精巣上体および腎周囲の脂肪体の重量を減少させる。
【0081】
本明細書中で使用される場合、用語「空腹時インスリン」は、対象がある期間(すなわち、12~24時間)にわたって食物摂取を全くしていない間の対象のインスリンレベルを指す。空腹時インスリンレベルは代謝性疾患の診断に使用される。空腹時インスリンレベルは、対象が代謝性疾患を発症するリスクがあるかどうかの指標としても使用される。通常、1型糖尿病に罹患している対象において、対象の空腹時インスリンレベルは健康な対象の空腹時インスリンレベルと比較して低い。インスリン抵抗性(すなわち、2型糖尿病)を患っている対象において、対象の空腹時インスリンレベルは、健康な対象のインスリンレベルと比較して高い。本発明において、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチド、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチドをコードする核酸分子、またはそのような核酸分子を含有するベクターを対象に投与することは、対象の空腹時インスリンレベルを低下させる。
【0082】
本明細書で使用する場合、用語「グルコースクリアランス速度」は、グルコースが血液から除去される速度を指す。グルコースクリアランス速度は、ブドウ糖負荷試験(GTT)で測定することができる。GTTにおいて、対象に一定量のグルコースを投与し、その後血液サンプルを採取して、それが血液からどれだけ早く除去されるかを決定する。グルコースクリアランス速度は、肥満、糖尿病、およびインスリン抵抗性などの代謝性疾患を発症するリスクを診断および/または決定する際のパラメータとして使用することができる。
【0083】
本明細書中で使用される場合、用語「血清脂質プロフィール(serum lipid profile)」とは、対象の血清中の異なる種類の脂質およびリポタンパク質の分布の測定を指す。そのような測定は、一団の血液検査によって達成することができる。対象の血清中の脂質およびリポタンパク質の種類としては、コレステロール(例えば、高密度リポタンパク質(HDL)および低密度リポタンパク質(LDL))、トリグリセリド、および遊離脂肪酸(FFA)が挙げられるが、これらに限定されない。異なる種類の脂質およびリポタンパク質の分布は、肥満、糖尿病、およびインスリン抵抗性などの代謝性疾患を発症するリスクを診断および/または決定する際のパラメータとして使用することができる。高レベルのコレステロール、特に低密度リポタンパク質は、一般に特定の代謝性疾患、またはいくつかの重篤な医学的症例では心血管疾患を発症するための指標またはリスク因子と見なされている。本発明において、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチド、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチドをコードする核酸分子、またはそのような核酸分子を含有するベクターを対象に投与することは、コレステロール(特に低密度リポタンパク質)およびトリグリセリドのレベルが低下するように対象の血清脂質プロフィールを改善する。
【0084】
本明細書で使用する場合、用語「親和性」または「結合親和性」は、2分子間の結合相互作用の強度を指す。一般に、結合親和性は、分子とその結合相手、例えば、細胞外ActRIIa変異体とBMP9またはアクチビンAの間の非共有結合的相互作用の総和の強度を指す。そうではないことが示されない限り、結合親和性は、固有結合親和性を指し、これは結合対のメンバー間の1:1相互作用を表す。2分子間の結合親和性は、一般に、解離定数(KD)または親和性定数(KA)によって記載される。互いに低い結合親和性を有する2分子は、一般に、ゆっくりと結合し、容易に解離する傾向があり、大きなKDを示す。互いに高い親和性を有する2分子は、一般に、容易に結合し、結合をより長く維持する傾向があり、小さいKDを示す。2つの相互作用分子のKDは、例えば、表面プラズモン共鳴などの当技術分野で周知の方法および技術を用いて決定することができる。KDは、koff/konの比として計算される。
【0085】
本明細書で使用する場合、用語「筋肉量(muscle mass)」は、身体の組成の成分を指す。通常、筋肉量は総体重から体脂肪と体液の重量を引いて計算される。筋肉量の割合(%)は、対象の遺伝子構成、年齢、人種、および健康状態などに応じて個人間で大きく異なり得る。通常、対象の筋肉量は、全体重の20%~50%であり得る。
【0086】
本明細書で使用する場合、「ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用する(affecting)」という句は、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれらの受容体、例えば、ActRIIa、ActRIIb、およびBMPRII(例えば、ActRIIa)への結合を変化させることを意味する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞外ActRIIa変異体を含むポリペプチドは、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれらの受容体、例えば、ActRIIa、ActRIIb、およびBMPRII(例えば、ActRIIa)への結合を低減または阻害する。本明細書に記載されるように、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含む本発明のポリペプチドは、BMP9に対して弱い結合親和性(例えば、KD 200pM以上)を有し得る。
【0087】
本明細書で使用する場合、用語「血管合併症」は、血管障害または血管に対するいずれかの損傷、例えば、血管壁に対する損傷を指す。血管壁に対する損傷は、血管透過性または漏出の増加を招き得る。用語「血管透過性または漏出」は、小分子、タンパク質、および細胞を血管に流入させ、血管から流出させる血管壁の能力を指す。血管透過性または漏出の増加は、血管壁に並ぶ内皮細胞間の間隙の増大(例えば、間隙の大きさおよび/もしくは数の増大)ならびに/または血管壁の薄化によって起こり得る。
【0088】
本明細書で使用する場合、用語「ポリペプチド」は、単量体がアミノ酸残基であり、それらがアミド結合を介して相互に共有結合されている単一のポリマーを表す。ポリペプチドとは、天然型、組換え型、または合成生産されたいずれのアミノ酸配列も包含するものとする。
【0089】
本明細書で使用する場合、用語「ホモ二量体(homodimer)」は、2つの同一の高分子、例えば、タンパク質または核酸によって形成された分子構築物を指す。これら2つの同一の単量体は、共有結合または非共有結合によってホモ二量体を形成し得る。例えば、Fcドメインは、2つのFcドメイン単量体が同じ配列を含めば、2つのFcドメイン単量体のホモ二量体であり得る。別の例では、Fcドメイン単量体に融合された細胞外ActRIIa変異体を含む本明細書に記載のポリペプチドは、2つのFcドメイン単量体の相互作用を介してホモ二量体を形成することができ、これらのFcドメイン単量体はホモ二量体においてFcドメインを形成する。
【0090】
本明細書で使用する場合、用語「ヘテロ二量体(heterodimer)」は、2つの異なる高分子、例えば、タンパク質または核酸によって形成された分子構築物を指す。これら2つの単量体は、共有結合または非共有結合によってヘテロ二量体を形成し得る。例えば、Fcドメイン単量体に融合された細胞外ActRIIa変異体を含む本明細書に記載のポリペプチドは、異なるActRIIa変異体にそれぞれ融合された2つのFcドメイン単量体の相互作用を介してヘテロ二量体を形成することができ、これらのFcドメイン単量体はヘテロ二量体においてFcドメインを形成する。
【0091】
本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞」は、必要な細胞成分、例えば、対応する核酸からタンパク質を発現させるために必要とされる細胞小器官を含む媒体を指す。核酸は一般に、当技術分野で公知の従来技術(形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、ダイレクトマイクロインジェクションなど)によって宿主細胞に導入することができる核酸ベクター内に含まれる。宿主細胞は、原核細胞、例えば、細菌細胞、または真核細胞、例えば、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞またはHEK293細胞)であり得る。
【0092】
本明細書中で使用される場合、用語「治療有効量」とは、本発明のポリペプチド、核酸、もしくはベクター、または本発明のポリペプチド、核酸、もしくはベクターを含有する医薬組成物の量であって、筋疾患などの疾患、または筋力低下および筋肉の萎縮を伴う疾患または病態のような疾患、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、顔面頭蓋上腕筋ジストロフィー(FSHD)、封入体筋炎(IBM)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、サルコペニア、または癌悪液質のような疾患を有する患者を治療する上で、所望の治療効果を達成するのに有効である量を指す。「治療有効量」という用語はまた、本発明のポリペプチド、核酸、もしくはベクターまたは本発明のポリペプチド、核酸、もしくはベクターを含む医薬組成物の量であって、代謝性疾患などの疾患、または過剰体重、過剰体脂肪、高血糖、空腹時インスリンレベルの上昇、またはインスリン抵抗性を伴う病態、例えば肥満、1型糖尿病、または2型糖尿病を治療する上で、所望の治療効果を達成するのに有効である量を指す。特に、治療有効量のポリペプチド、核酸、またはベクターは有害な副作用を回避する。
【0093】
本明細書で使用する場合、用語「医薬組成物」は、有効成分ならびにその有効成分を投与方法に適したものとできるように賦形剤および希釈剤を含む医薬または医薬製剤を指す。本発明の医薬組成物は、ポリペプチド、核酸、またはベクターと適合する薬学上許容される成分を含む。医薬組成物は経口投与用の錠剤もしくはカプセル剤形であっても、または静脈投与または皮下投与用の水性剤形であってもよい。
【0094】
本明細書で使用する場合、用語「薬学上許容される担体または賦形剤」は、医薬組成物中の賦形剤または希釈剤を指す。薬学上許容される担体は、その製剤の他の成分と適合し、かつ、レシピエントに有害であってはならない。本発明では、薬学上許容される担体または賦形剤は、細胞外ActRIIa変異体を含むポリペプチド、そのポリペプチドをコードする核酸分子、またはそのような核酸分子を含有するベクターに十分な薬学的安定性を提供しなければならない。担体または賦形剤の性質は、投与様式によって異なる。例えば、静脈内投与には、水溶液担体が一般に使用され、経口投与には、固体担体が好ましい。
【0095】
本明細書で使用する場合、用語「治療するおよび/または予防する」とは、本発明の方法および組成物を使用して、疾患、例えば代謝性疾患(例えば肥満、1型糖尿病および2型糖尿病)または筋疾患(例えば、DMD、FSHD、IBM、およびALS)を治療するおよび/または予防することを指す。一般に、代謝性または筋肉性疾患の治療は、対象が代謝性または筋肉性疾患を発症した後におよび/または対象が代謝性または筋疾患と既に診断された後に行われる。代謝性または筋肉性疾患を予防することは、対象が代謝性または筋肉性疾患を発症するリスクがあるときにとられるステップまたは手順を指す。対象は、代謝性疾患もしくは筋疾患の指標もしくはそれを発症するリスク因子があると医師により判断されるか、または、その代謝性疾患もしくは筋疾患をまだ発症していないが家族歴もしくはその代謝性疾患もしくは筋疾患を発症する遺伝的素因を有すると医師により判断される、徴候もしくは軽度の症状を示し得る。
【0096】
本明細書で使用する場合、用語「対象」は、哺乳動物、例えば、好ましくは、ヒトを指す。哺乳動物としては、限定されるものではないが、ヒトおよび飼育動物および農用動物、例えば、サル(例えば、カニクイザル)、マウス、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシなどが含まれる。
【発明の効果】
【0097】
本発明によれば、アクチビンIIa型受容体変異体および同変異体を含む医薬組成物が提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【
図1】
図1は、細胞外ActRIIaおよびActRIIbの野生型配列ならびにActRIIa変異体のアミノ酸置換を示す配列アラインメントである。
【
図2A】
図2Aおよび2Bは、体重についての細胞外ActRIIa変異体の効果を示す散布図(scatter plots)である。マウスは、示されたActRIIa変異体をコードするプラスミド構築物または対照プラスミドの単回のハイドロダイナミックインジェクションを受けている。
【
図2B】
図2Aおよび2Bは、体重についての細胞外ActRIIa変異体の効果を示す散布図である。マウスは、示されたActRIIa変異体をコードするプラスミド構築物または対照プラスミドの単回のハイドロダイナミックインジェクションを受けている。
【
図3A】
図3Aおよび3Bは、筋肉量についての細胞外ActRIIa変異体の効果を示す棒グラフである。
【
図3B】
図3Aおよび3Bは、筋肉量についての細胞外ActRIIa変異体の効果を示す棒グラフである。
【
図4A】
図4Aは、体重についての細胞外ActRIIa変異体の効果を示す散布図である。マウスは、示された精製組換えActRIIa変異体またはビヒクル対照の腹腔内注射を週に2回で4週間受けている。
【
図4B】
図4Bは、組織分析による個々の筋肉重量についての細胞外ActRIIa変異体の効果を示す棒グラフである。
【
図5A】
図5Aは、試験の過程における体重についての細胞外ActRIIa変異体の効果を示す散布図である。マウスは示されたActRIIa変異体をコードするプラスミド構築物または対照プラスミドの単回のハイドロダイナミックインジェクションを受けている。
【
図5B】
図5Bは、28日目の終了時における体重についての細胞外ActRIIa変異体の効果を示す棒グラフである。
【
図6A】
図6Aおよび6Bは、組織分析による体重についての細胞外ActRIIa変異体の効果を示す棒グラフである。
【
図6B】
図6Aおよび6Bは、組織分析による体重についての細胞外ActRIIa変異体の効果を示す棒グラフである。
【
図7A】
図7Aおよび7Bは、体重についての異なる用量の細胞外ActRIIa変異体の効果を示す散布図である。マウスは、示された精製組換えActRIIa変異体またはビヒクル対照の腹腔内注射を週に2回で4週間受けている。
【
図7B】
図7Aおよび7Bは、体重についての異なる用量の細胞外ActRIIa変異体の効果を示す散布図である。マウスは、示された精製組換えActRIIa変異体またはビヒクル対照の腹腔内注射を週に2回で4週間受けている。
【
図8A】
図8Aおよび8Bは、筋肉量(
図8A)および脂肪量(
図8B)についての異なる用量の細胞外ActRIIa変異体の効果を示す棒グラフである。
【
図8B】
図8Aおよび8Bは、筋肉量(
図8A)および脂肪量(
図8B)についての異なる用量の細胞外ActRIIa変異体の効果を示す棒グラフである。
【
図9A】
図9Aおよび9Bは、組織分析による筋肉量についての細胞外ActRIIa変異体の異なる用量の影響を示す棒グラフである。
【
図9B】
図9Aおよび9Bは、組織分析による筋肉量についての細胞外ActRIIa変異体の異なる用量の影響を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0099】
本発明は、細胞外アクチビンIIa型受容体(ActRIIa)変異体を含むポリペプチドに関する。いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドは、ある部分(例えば、Fcドメイン単量体、野生型Fcドメイン、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、またはヒト血清アルブミン)に融合された細胞外ActRIIa変異体を含む。Fcドメイン単量体に融合された細胞外ActRIIa変異体を含むポリペプチドはまた、2つのFcドメイン単量体間の相互作用を介して二量体(例えば、ホモ二量体またはヘテロ二量体)を形成し得る。本明細書に記載のActRIIa変異体は、アクチビンおよびミオスタチンに比べて骨形成因子9(BMP9)に対して結合親和性が弱いか、または結合親和性を全く持たない。本発明はまた、本明細書に記載の細胞外ActRIIa変異体を含むポリペプチドを対象に投与することによる、対象において、筋肉量および筋力を増加させることによって筋力低下および筋肉の萎縮を伴う疾患および病態を治療する方法、代謝性疾患を治療または予防する方法、またはミオスタチン、アクチビンおよび/またはBMP9シグナル伝達に作用する方法を含む。
【0100】
I.細胞外アクチビンIIa型受容体(ActRIIa)変異体
アクチビンII型受容体は、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β:transforming growth factor β)スーパーファミリーのリガンドに対するシグナルを調節する1回膜貫通ドメイン受容体である。TGF-βスーパーファミリーのリガンドは、宿主において筋肉成長、血管成長、細胞分化、恒常性、および骨形成などの多くの生理学的プロセスに関与する。TGF-βスーパーファミリーのリガンドの例としては、例えば、アクチビン、インヒビン、成長分化因子(GDF:growth differentiation factor)(例えば、GDF8、ミオスタチンとしても知られる)、および骨形成因子(BMP)(例えば、BMP9)が挙げられる。ミオスタチンおよびアクチビンは骨格筋成長の調節において役割を果たすことが知られている。例えば、ミオスタチンを備えていないマウスは骨格筋量の大幅な増加を示す。
【0101】
アクチビンは脂肪組織においても高度に発現されており、肥満マウスの皮下脂肪および内臓脂肪においてミオスタチンレベルおよびアクチビン受容体レベルの上昇が観察されている。さらに、ミオスタチンは肥満およびインスリン抵抗性の女性の骨格筋および血漿中で上昇することが示されており、そしてI型およびII型アクチビン受容体の両方が膵臓機能および糖尿病に関連している。これらのデータは、アクチビンリガンド(例えば、アクチビン、ミオスタチン)の発現の増加またはアクチビン受容体自体の発現の増加のいずれかによるアクチビン受容体を介するシグナル伝達の増加が、肥満並びに、1型糖尿病および2型糖尿病のような代謝障害をもたらし得ることを示唆する。したがって、このシグナル伝達を減少または阻害する方法は、肥満および代謝性障害の治療に使用され得る。
【0102】
2つのタイプのアクチビンII型受容体:ActRIIaおよびActRIIbが存在する。研究によれば、BMP9はActRIIaの約300倍の結合親和性でActRIIbと結合することが示されている(例えば、Townson他のJ.Biol.Chem.287:27313,2012参照)。ActRIIaは、ActRIIbに比べて長い半減期を有することが知られている。本発明は、ActRIIaの有益な生理学的特性および薬物動態特性も維持しつつ、ActRIIbによって与えられる生理学的特性を付与するという目的でActRIIaにActRIIbのアミノ酸残基を導入することによって構築される細胞外ActRIIa変異体を記載する。最適なペプチドは、より長い血清半減期および例えばBMP9に対して低い結合親和性を保持しつつ、筋肉量の有意な増加を与える。好ましいActRIIa変異体はまた、野生型ActRIIaに比べてアクチビンおよび/またはミオスタチンに対する結合の改善を示し、これにより、それらはリガンド結合に関して内因性のアクチビン受容体と競合可能となり、内因性のアクチビン受容体シグナル伝達を低減または阻害することができる。これらの変異体は、アクチビン受容体シグナル伝達が上昇している障害、例えば代謝障害などの障害を治療するために使用することができ、体脂肪、体重、またはインスリン抵抗性の減少(例えば、インスリン感受性の増加)をもたらす。いくつかの実施形態では、BMP9に対する変異体の結合親和性を低減または除去するために細胞外ActRIIa変異体にアミノ酸置換を導入することができる。ヒトActRIIaおよびActRIIbの細胞外部分の野生型アミノ酸配列を下記に示す。
【0103】
ヒトActRIIa細胞外部分(配列番号73):
GAILGRSETQECLFFNANWEKDRTNQTGVEPCYGDKDKRRHCFATWKNISGSIEIVKQGCWLDDINCYDRTDCVEKKDSPEVYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS
ヒトActRIIb細胞外部分(配列番号74):
GRGEAETRECIYYNANWELERTNQSGLERCEGEQDKRLHCYASWRNSSGTIELVKKGCWLDDFNCYDRQECVATEENPQVYFCCCEGNFCNERFTHLPEAGGPEVTYEPPPTAPT
本明細書に記載のポリペプチドは、配列番号73の配列を有する野生型細胞外ActRIIaまたは配列番号76~96の配列のうちいずれか1つを有する細胞外ActRIIaに対して少なくとも1つのアミノ酸置換を有する細胞外ActRIIa変異体を含む。27箇所の異なる位置の潜在的アミノ酸置換が細胞外ActRIIa変異体に導入され得る(表1)。いくつかの実施形態では、細胞外ActRIIa変異体は、野生型細胞外ActRIIa(配列番号73)の配列と少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、87%、90%、92%、95%、97%、またはそれを超える)アミノ酸配列同一性を有し得る。細胞外ActRIIa変異体は、野生型細胞外ActRIIa(配列番号73)の配列に対して1以上(例えば、1~27、1~25、1~23、1~21、1~19、1~17、1~15、1~13、1~11、1~9、1~7、1~5、1~3、または1~2;例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27)のアミノ酸置換を有し得る。いくつかの実施形態では、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1の配列を有する細胞外ActRIIa変異体)は、表1に挙げられているような27箇所の位置の全てにアミノ酸置換を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、細胞外ActRIIa変異体は、表1に挙げられているような27箇所の位置のうち複数の位置、例えば、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、または26箇所にアミノ酸置換を含んでいてもよい。
【0104】
アミノ酸置換は、本発明のActRIIa変異体の活性および/または結合親和性を低下または向上させ得る。ポリペプチド機能を維持するためには、表1および2に示される配列(配列番号1~72(例えば、配列番号6~72))の位置X17のリシン(K)が保持されることが重要である。その位置における置換は、活性の消失をもたらし得る。例えば、
GAILGRSETQECLFYNANWELERTNQTGVERCEGEKDKRLHCYATWRNISGSIEIVAKGCWLDDFNCYDRTDCVETEENPQVYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS(配列番号150)
の配列を有するActRIIa変異体はin vivoにおいて活性が低減され、X17におけるリシン(K)のアラニン(A)での置換が許容されないことを示す。よって、表1および2の変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)を含む本発明のActRIIa変異体)は、位置X17にアミノ酸Kを保持する。
【0105】
本発明のActRIIa変異体は好ましくは、BMP9に対する結合が低減されているか、弱いか、または実質的に無い。位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TEENを含むActRIIa変異体ならびに位置X24にアミノ酸Kを維持し、かつ、位置X23、X24、X25、およびX26にアミノ酸配列TKENを有する変異体では、BMP9結合が低減されている。配列TEENおよびTKENは、本発明のActRIIa変異体(例えば、表1および2の変異体、例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72))では、BMP9結合の低減をもたらすために互換的に使用可能である。
【0106】
本発明のActRIIa変異体は、C末端伸長部(例えば、C末端における付加的アミノ酸)をさらに含み得る。C末端伸長部には、表1および2(例えば、配列番号1~70(例えば、配列番号6~70))に示される変異体のいずれかのC末端に1~6個の付加的アミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6またはそれ以上の付加的アミノ酸)を付加することができる。本発明のActRIIa変異体に含まれ得る1つの可能性のあるC末端伸長部はアミノ酸配列NPである。例えば、C末端伸長部を含む配列は、配列番号71(例えば、C末端伸長部NPを有する配列番号69)である。本発明のActRIIa変異体に含まれ得るもう1つの例としてのC末端伸長部はアミノ酸配列NPVTPK(配列番号155)である。例えば、C末端伸長部を含む配列は、配列番号72(例えば、C末端伸長部NPVTPKを有する配列番号69)である。
【0107】
【0108】
配列番号2の配列を有する細胞外ActRIIa変異体のいくつかの実施形態では、X3はEであり、X6はRであり、X11はDであり、X12はKであり、X13はRであり、X16はKまたはRであり、X17はKであり、X19はWであり、X20はLであり、X21はDであり、かつ、X22はIまたはFである。配列番号1または2の配列を有する細胞外ActRIIa変異体のいくつかの実施形態では、X17はKである。配列番号1~3の配列を有する細胞外ActRIIa変異体のいくつかの実施形態では、X17はKであり、X23はTであり、X24はEであり、X25はEであり、かつ、X26はNである。配列番号1~5のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体のいくつかの実施形態では、X17はKであり、X23はTであり、X24はKであり、X25はEであり、かつ、X26はNである。
【0109】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドは、配列番号6~72(表2)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体を含む。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
いくつかの実施形態では、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つ)を含む本発明のポリペプチドは、位置X17にアミノ酸Kを有する。位置X17のアミノ酸を変更すると、活性の低減がもたらされる。例えば、
GAILGRSETQECLFYNANWELERTNQTGVERCEGEKDKRLHCYATWRNISGSIEIVAKGCWLDDFNCYDRTDCVETEENPQVYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS(配列番号150)
の配列を有するActRIIa変異体は、in vivoにおいて活性が低減され、X17におけるKのAでの置換が許容されないことを示す。
【0115】
いくつかの実施形態では、位置X23、X24、X25、およびX26に配列TEENを有する細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つ)を含む本発明のポリペプチドは、位置X24にアミノ酸Eのアミノ酸Kでの置換を有し得る。いくつかの実施形態では、位置X23、X24、X25、およびX26に配列TKENを有する細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つ)を含む本発明のポリペプチドは、位置X24にアミノ酸Kのアミノ酸Eでの置換を有し得る。位置X23、X24、X25、およびX26に配列TEENまたはTKENを有するポリペプチドは、BMP9に対する結合が低減されているか、または弱い。
【0116】
いくつかの実施形態では、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~70(例えば、配列番号6~70)のうちいずれか1つ)を含む本発明のポリペプチドは、C末端伸長部(例えば、C末端における付加的アミノ酸)をさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、C末端伸長部は、アミノ酸配列NPである。例えば、C末端伸長部を含む配列は、配列番号71(例えば、C末端伸長部NPを有する配列番号69)である。いくつかの実施形態では、C末端伸長部は、アミノ酸配列NPVTPK(配列番号155)である。例えば、C末端伸長部を含む配列は、配列番号72(例えば、C末端伸長部NPVTPKを有する配列番号69)である。C末端伸長部には、C末端に1~6個の付加的アミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6またはそれ以上の付加的アミノ酸)を付加することができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、細胞外ActRIIa変異体を含む本発明のポリペプチドは、ある部分(例えば、Fcドメイン単量体、野生型Fcドメイン、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、またはヒト血清アルブミン)をさらに含んでいてもよく、この部分はリンカーをまたは他の共有結合を介して細胞外ActRIIa変異体のN末端またはC末端(例えば、C末端)に融合させることができる。Fcドメイン単量体に融合された細胞外ActRIIa変異体を含むポリペプチドは、2つのFcドメイン単量体間の相互作用を介して二量体(例えば、ホモ二量体またはヘテロ二量体)を形成することができ、これらのFcドメイン単量体は合わさって二量体においてFcドメインを形成する。
【0118】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞外ActRIIa変異体は、以下の表3に示される配列番号76~96のうちいずれの配列も持たない。
【0119】
【0120】
【0121】
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドは、ヒトにおいて少なくとも7日の血清半減期を有する。ポリペプチドは、200pM以上のKDで骨形成因子9(BMP9)と結合し得る。このポリペプチドは、10pM以上のKDでアクチビンAと結合し得る。いくつかの実施形態では、このポリペプチドは、BMP9またはアクチビンAと結合しない。いくつかの実施形態では、このポリペプチドは、アクチビンおよび/またはミオスタチンと結合し、かつ、BMP9に低い(例えば、弱い)結合を示す。いくつかの実施形態では、BMP9に対する結合が低いまたは弱いポリペプチドは、位置X23、X24、X25、およびX26に配列TEENまたはTKENを有する。
【0122】
加えて、いくつかの実施形態では、このポリペプチドは、約200pM以上のKD(例えば、約200、300、400、500、600、700、800、または900pM以上のKD、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、または50nM以上のKD、例えば、約200pM~約50nMの間のKD)でヒトBMP9と結合し得る。いくつかの実施形態では、このポリペプチドは、ヒトBMP9と実質的に結合しない。いくつかの実施形態では、このポリペプチドは、約800pM以下のKD(例えば、約800、700、600、500、400、300、200、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1pM以下のKD、例えば、約800pM~約200pMの間のKD)でヒトアクチビンAと結合し得る。いくつかの実施形態では、このポリペプチドは、800pM以下のKD(例えば、約800、700、600、500、400、300、200、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1pM以下のKD、例えば、約800pM~約200pMの間のKD)でヒトアクチビンBと結合し得る。このポリペプチドは、およそ5pM以上のKD(例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、または200pM以上のKD)で成長および分化因子11(GDF-11)とも結合し得る。
【0123】
II.Fcドメイン
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドは、ポリペプチドの血清半減期を延長するために、免疫グロブリンのFcドメイン単量体またはFcドメインのフラグメントに融合された細胞外ActRIIa変異体を含み得る。Fcドメイン単量体に融合された細胞外ActRIIa変異体を含むポリペプチドは、2つのFcドメイン単量体間の相互作用を介して二量体(例えば、ホモ二量体またはヘテロ二量体)を形成することができ、これらのFcドメイン単量体は二量体においてFcドメインを形成する。従来から当技術分野で知られているように、Fcドメインは、免疫グロブリンのC末端に見られるタンパク質構造である。Fcドメインは、CH3抗体定常ドメイン間の相互作用によって二量体を形成する2つのFcドメイン単量体を含む。野生型Fcドメインは、Fc受容体、例えば、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、FcγRIIIb、FcγRIVに結合する最小構造を形成する。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、「デッド(dead)」Fcドメインに典型的に、エフェクター機能を欠くように変異させることができる。例えば、Fcドメインは、FcドメインとFcγ受容体の間の相互作用を最小にすることが知られている特定のアミノ酸置換を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、FcドメインはIgG1抗体に由来し、アミノ酸置換L234A、L235A、およびG237Aを含む。いくつかの実施形態では、FcドメインはIgG1抗体に由来し、アミノ酸置換D265A、K322A、およびN434Aを含む。上記のアミノ酸位置は、Kabat(Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))に従って定義される。アミノ酸残基のKabatのナンバリングは、所与の抗体に関して、抗体配列の相同性領域を「標準」Kabatナンバリング配列とアラインすることによって決定することができる。さらに、いくつかの実施形態では、Fcドメインは、いずれの免疫系関連応答も誘導しない。例えば、Fcドメイン単量体に融合された細胞外ActRIIa変異体を含むポリペプチドの二量体におけるFcドメインは、FcドメインとFcγ受容体の間の相互作用または結合を低減するように改変されてもよい。細胞外ActRIIa変異体に融合させることができるFcドメイン単量体の配列を下記に示す(配列番号97):
THTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPVPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGPFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
いくつかの実施形態では、FcドメインはIgG1抗体に由来し、配列番号97の配列に対してアミノ酸置換L12A、L13A、およびG15Aを含む。いくつかの実施形態では、FcドメインはIgG1抗体に由来し、配列番号97の配列に対してアミノ酸置換D43A、K100A、およびN212Aを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)は、従来の遺伝学的または化学的手段、例えば、化学共役によってFcドメイン単量体(例えば、配列番号97)のN末端またはC末端に融合させることができる。任意選択にて、細胞外ActRIIa変異体とFcドメイン単量体の間にリンカー(例えば、スペーサー)を挿入することができる。Fcドメイン単量体は、細胞外ActRIIa変異体のN末端またはC末端(例えば、C末端)に融合させることができる。
【0124】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドは、Fcドメインに融合された細胞外ActRIIa変異体を含み得る。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、Fcドメインの二量体形成を低減または阻害する1以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、ヒンジドメインを含む。Fcドメインは、免疫グロブリン抗体アイソタイプIgG、IgE、IgM、IgA、またはIgDのものであり得る。加えて、Fcドメインは、IgGサブタイプ(例えば、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、またはIgG4)であり得る。Fcドメインはまた、非天然Fcドメイン、例えば、組換えFcドメインであってもよい。
【0125】
二量体形成が低減されたFcドメインを作出する方法は当技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、立体衝突のために二量体形成を障害するように、CH3-CH3二量体界面に大きな側鎖を有する1以上のアミノ酸(例えば、チロシンまたはトリプトファン)を導入してもよい。他の実施形態では、有利な相互作用を除くために、CH3-CH3二量体界面に小さい側鎖を有する1以上のアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、またはトレオニン)を導入してもよい。CH3ドメインに大きなまたは小さな側鎖を有するアミノ酸を導入する方法は、例えば、Ying他(J Biol Chem.287:19399-19408,2012)、米国特許出願公開第2006/0074225号明細書、米国特許第8,216,805号明細書および米国特許第5,731,168号明細書、Ridgway他(Protein Eng.9:617-612,1996)、Atwell他(J Mol Biol.270:26-35,1997)、およびMerchant他(Nat Biotechnol.16:677-681,1998)に記載されており、これらは全て、それらの全内容を本明細書の一部として援用する。
【0126】
さらに他の実施形態では、2つのFcドメイン間でCH3-CH3界面を構成するCH3ドメインの1以上のアミノ酸残基を、正電荷を有するアミノ酸残基(例えば、リシン、アルギニン、もしくはヒスチジン)または負電荷を有するアミノ酸残基(例えば、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸)で置換し、その相互作用が、導入された特定の電荷のアミノ酸によって静電気的に不利となるようにする。二量体形成に不利となるように、または二量体形成を妨げるようにCH3ドメインに電荷アミノ酸を導入する方法は、例えば、Ying他(J Biol Chem.287:19399-19408,2012)、米国特許出願公開第2006/0074225号明細書、米国特許出願公開第2012/0244578号明細書、および米国特許出願公開第2014/0024111号明細書に記載されており、これらは全て、それらの全内容を本明細書の一部として援用する。
【0127】
本発明のいくつかの実施形態では、Fcドメインは、ヒトIgG1の配列に対し以下のアミノ酸置換:T366W、T366Y、T394W、F405W、Y349T、Y349E、Y349V、L351T、L351H、L351N、L352K、P353S、S354D、D356K、D356R、D356S、E357K、E357R、E357Q、S364A、T366E、L368T、L368Y、L368E、K370E、K370D、K370Q、K392E、K392D、T394N、P395N、P396T、V397T、V397Q、L398T、D399K、D399R、D399N、F405T、F405H、F405R、Y407T、Y407H、Y407I、K409E、K409D、K409T、およびK409Iの1以上を含む。特定の一実施形態では、Fcドメインは、ヒトIgG1の配列に対してアミノ酸置換T366Wを含む。野生型Fcドメインの配列を配列番号151に示す。
【0128】
III.アルブミン結合ペプチド
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドは、血清タンパク質結合ペプチドに融合された細胞外ActRIIa変異体を含み得る。血清タンパク質ペプチドとの結合は、タンパク質薬の薬物動態を改善することができる。
【0129】
一例として、本明細書に記載の方法および組成物において使用可能なアルブミン結合ペプチドは一般に当技術分野で公知である。一実施形態では、アルブミン結合ペプチドは、配列DICLPRWGCLW(配列番号152)を含む。
【0130】
本発明では、細胞外ActRIIa変異体の血清半減期を延長するために、本明細書に記載の細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)のN末端またはC末端(例えば、C末端)にアルブミン結合ペプチドを連結することができる。いくつかの実施形態では、アルブミン結合ペプチドは、細胞外ActRIIa変異体のN末端またはC末端に直接またはリンカーを介して連結する。
【0131】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)は、従来の遺伝学的または化学的手段、例えば、化学共役によってアルブミン結合ペプチド(例えば、配列番号152)のN末端またはC末端に融合させることができる。所望により、細胞外ActRIIa変異体とアルブミン結合ペプチドの間にリンカー(例えば、スペーサー)を挿入することができる。理論に縛られるものではないが、本明細書に記載の細胞外ActRIIa変異体にアルブミン結合ペプチドが含まれると、その血清アルブミンへの結合を介して治療タンパク質の保持の延長がもたらされ得ると思われる。
【0132】
IV.フィブロネクチンドメイン
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドは、フィブロネクチンドメインに融合された細胞外ActRIIa変異体を含み得る。フィブロネクチンドメインとの結合は、タンパク質薬の薬物動態を改善することができる。
【0133】
フィブロネクチンドメインは、例えば、インテグリンなどの膜貫通受容体タンパク質、ならびにコラーゲンおよびフィブリンなどの細胞外マトリックス成分と結合する細胞外マトリックスの高分子量糖タンパク質、またはそのフラグメントである。本発明のいくつかの実施形態では、細胞外ActRIIa変異体の血清半減期を延長するために、本明細書に記載の細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)のN末端またはC末端(例えば、C末端)にフィブロネクチンドメインが連結される。フィブロネクチンドメインは、細胞外ActRIIa変異体のN末端またはC末端に直接またはリンカーを介して連結することができる。
【0134】
一例として、本明細書に記載の方法および組成物において使用可能なフィブロネクチンドメインは一般に当技術分野で公知である。一実施形態では、フィブロネクチンドメインは、UniProt ID NO:P02751の配列のアミノ酸610~702を有するフィブロネクチンIII型ドメイン(配列番号153)である。別の実施形態では、フィブロネクチンドメインは、アドネクチンタンパク質である。
【0135】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)は、従来の遺伝学的または化学的手段、例えば、化学共役によってフィブロネクチンドメイン(例えば、配列番号153)のN末端またはC末端に融合させることができる。所望により、細胞外ActRIIa変異体とフィブロネクチンドメインの間にリンカー(例えば、スペーサー)を挿入することができる。理論に縛られるものではないが、本明細書に記載の細胞外ActRIIa変異体にフィブロネクチンドメインが含まれると、そのインテグリンならびにコラーゲンおよびフィブリンなどの細胞外マトリックス成分への結合を介して治療タンパク質の保持の延長がもたらされ得ると思われる。
【0136】
V.血清アルブミン
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドは、血清アルブミンに融合された細胞外ActRIIa変異体を含み得る。血清アルブミンとの結合は、タンパク質薬の薬物動態を改善することができる。
【0137】
血清アルブミンは、哺乳動物において最も豊富な血液タンパク質である球状のタンパク質である。血清アルブミンは、肝臓で生産され、血清タンパク質の約半分を占める。血清アルブミンは血液中では単量体で可溶型である。血清アルブミンの最も重要ないくつかの機能として、体内におけるホルモン、脂肪酸、およびその他のタンパク質の輸送、pHの緩衝、ならびに血管と身体組織の間の体液の適正な分布に必要とされる浸透圧の維持が挙げられる。好ましい実施形態では、血清アルブミンは、ヒト血清アルブミンである。本発明のいくつかの実施形態では、細胞外ActRIIa変異体の血清半減期を延長するために、本明細書に記載の細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)のN末端またはC末端(例えば、C末端)にヒト血清アルブミンが連結される。ヒト血清アルブミンは、細胞外ActRIIa変異体のN末端またはC末端に直接またはリンカーを介して連結することができる。
【0138】
一例として、本明細書に記載の方法および組成物において使用可能な血清アルブミンは一般に当技術分野で公知である。一実施形態では、血清アルブミンは、UniProt ID NO:P02768(配列番号154)の配列を含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)は、従来の遺伝学的または化学的手段、例えば、化学共役によってヒト血清アルブミン(例えば、配列番号154)のN末端またはC末端に融合させることができる。所望により、細胞外ActRIIa変異体とヒト血清アルブミンの間にリンカー(例えば、スペーサー)を挿入することができる。理論に縛られるものではないが、本明細書に記載の細胞外ActRIIa変異体にヒト血清アルブミンが含まれると、治療タンパク質の保持の延長がもたらされ得ると思われる。
【0140】
VI.リンカー
本明細書に記載のポリペプチドは、リンカーを介してある部分に融合された細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含み得る。いくつかの実施形態では、その部分は、ポリペプチドの安定性を高める。例としての部分には、Fcドメイン単量体、野生型Fcドメイン、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、またはヒト血清アルブミンが含まれる。本発明では、ある部分(例えば、Fcドメイン単量体(例えば、配列番号97の配列)、野生型Fcドメイン(例えば、配列番号151)、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド(例えば、配列番号152)、フィブロネクチンドメイン(例えば、配列番号153)、またはヒト血清アルブミン(例えば、配列番号154))と細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)の間のリンカーは、1~200個のアミノ酸を含むアミノ酸スペーサーであり得る。好適なペプチドスペーサーは当技術分野で公知であり、例えば、グリシン、アラニン、およびセリンなどのフレキシブルなアミノ酸残基を含むペプチドリンカーを含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、GA、GS、GG、GGA、GGS、GGG、GGGA(配列番号98)、GGGS(配列番号99)、GGGG(配列番号100)、GGGGA(配列番号101)、GGGGS(配列番号102)、GGGGG(配列番号103)、GGAG(配列番号104)、GGSG(配列番号105)、AGGG(配列番号106)、またはSGGG(配列番号107)のモチーフ、例えば、多重または反復モチーフを含み得る。いくつかの実施形態では、スペーサーは、GAまたはGS、例えば、GA、GS、GAGA(配列番号108)、GSGS(配列番号109)、GAGAGA(配列番号110)、GSGSGS(配列番号111)、GAGAGAGA(配列番号112)、GSGSGSGS(配列番号113)、GAGAGAGAGA(配列番号114)、GSGSGSGSGS(配列番号115)、GAGAGAGAGAGA(配列番号116)、およびGSGSGSGSGSGS(配列番号117)のモチーフを含む2~12個のアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、スペーサーは、GGAまたはGGS、例えば、GGA、GGS、GGAGGA(配列番号118)、GGSGGS(配列番号119)、GGAGGAGGA(配列番号120)、GGSGGSGGS(配列番号121)、GGAGGAGGAGGA(配列番号122)、およびGGSGGSGGSGGS(配列番号123)のモチーフを含む3~12個のアミノ酸を含み得る。さらにいくつかの実施形態では、スペーサーは、GGAG(配列番号104)、GGSG(配列番号105)、例えば、GGAG(配列番号104)、GGSG(配列番号105)、GGAGGGAG(配列番号124)、GGSGGGSG(配列番号125)、GGAGGGAGGGAG(配列番号126)、およびGGSGGGSGGGSG(配列番号127)のモチーフを含む4~12個のアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、スペーサーは、GGGGA(配列番号101)またはGGGGS(配列番号102)、例えば、GGGGAGGGGAGGGGA(配列番号128)およびGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号129)のモチーフを含み得る。本発明のいくつかの実施形態では、ある部分(例えば、Fcドメイン単量体、野生型Fcドメイン、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、または血清アルブミン)と細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)の間のアミノ酸スペーサーは、GGG、GGGA(配列番号98)、GGGG(配列番号100)、GGGAG(配列番号130)、GGGAGG(配列番号131)、またはGGGAGGG(配列番号132)であり得る。
【0141】
いくつかの実施形態では、スペーサーはまた、グリシン、アラニン、およびセリン以外のアミノ酸、例えば、AAAL(配列番号133)、AAAK(配列番号134)、AAAR(配列番号135)、EGKSSGSGSESKST(配列番号136)、GSAGSAAGSGEF(配列番号137)、AEAAAKEAAAKA(配列番号138)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号139)、GENLYFQSGG(配列番号140)、SACYCELS(配列番号141)、RSIAT(配列番号142)、RPACKIPNDLKQKVMNH(配列番号143)、GGSAGGSGSGSSGGSSGASGTGTAGGTGSGSGTGSG(配列番号144)、AAANSSIDLISVPVDSR(配列番号145)、またはGGSGGGSEGGGSEGGGSEGGGSEGGGSEGGGSGGGS(配列番号146)も含み得る。いくつかの実施形態では、スペーサーは、EAAAK(配列番号147)のモチーフ、例えば、多重または反復モチーフを含み得る。いくつかの実施形態では、スペーサーは、(XP)n(ここで、Xは、任意のアミノ酸(例えば、A、K、またはE)であってもよく、nは1~5である)、およびPAPAP(配列番号148)などのプロリンリッチ配列のモチーフ、例えば、多重または反復モチーフを含み得る。
【0142】
使用するペプチドスペーサーおよびアミノ酸の長さは、関与する2つのタンパク質および最終的なタンパク質融合ポリペプチドに求められるフレキシビリティの程度によって調節することができる。スペーサーの長さは、適正なタンパク質折り畳みを確保し、凝集の形成を避けるように調節することができる。
【0143】
VII.ベクター、宿主細胞、およびタンパク質生産
本発明のポリペプチドは、宿主細胞から生産することができる。宿主細胞とは、必要な細胞成分、例えば、対応する核酸から本明細書に記載のポリペプチドおよび融合ポリペプチドを発現させるために必要とされる細胞小器官を含む媒体を指す。これらの核酸は、当技術分野で公知の従来技術(例えば、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、ダイレクトマイクロインジェクション、または感染など)によって宿主細胞に導入することができる核酸ベクター内に含まれていてもよい。核酸ベクターの選択は、一部は使用する宿主細胞によって異なる。一般に、好ましい宿主細胞は真核生物(例えば、哺乳動物)または原核生物(例えば、細菌)起源である。
【0144】
核酸ベクターの構築および宿主細胞
本発明のポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸配列は、当技術分野で公知の様々な方法によって作製することができる。これらの方法には、限定されるものではないが、オリゴヌクレオチド媒介(または部位指定)突然変異誘発およびPCR突然変異誘発が含まれる。本発明のポリペプチドをコードする核酸分子は、例えば、遺伝子合成などの標準技術を用いて得ることができる。あるいは、野生型細胞外ActRIIaをコードする核酸分子は、例えば、QuikChange(商標)突然変異誘発などの当技術分野における標準技術を用いて、特定のアミノ酸置換を含むように変異させることができる。核酸分子は、ヌクレオチド合成装置またはPCR技術を用いて合成することができる。
【0145】
本発明のポリペプチドをコードする核酸配列は、原核生物または真核生物の宿主細胞で核酸分子を複製および発現することができるベクターに挿入することができる。当技術分野では多くのベクターが利用可能であり、本発明の目的において使用できる。各ベクターは種々の成分を含んでいてもよく、これらの成分は特定の宿主細胞と適合するように調節および最適化することができる。例えば、ベクター成分としては、限定されるものではないが、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位、シグナル配列、目的タンパク質をコードする核酸配列、および転写終結配列が含まれる。
【0146】
いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞を本発明の宿主細胞として使用することができる。哺乳動物細胞種の例としては、限定されるものではないが、ヒト胎児腎(HEK)(例えば、HEK293、HEK293F)細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、COS細胞、PC3細胞、Vero細胞、MC3T3細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、VERY細胞、BHK細胞、MDCK細胞、W138細胞、BT483細胞、Hs578T細胞、HTB2細胞、BT20細胞、T47D細胞、NS0細胞(免疫グロブリン鎖を内因的に生産しないマウス骨髄腫細胞株)、CRL7O3O細胞、およびHsS78Bst細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、大腸菌(E.coli)細胞も本発明の宿主細胞として使用可能である。大腸菌株としては、限定されるものではないが、大腸菌294(ATCC(登録商標)31,446)、大腸菌λ1776(ATCC(登録商標)31,537)、大腸菌BL21(DE3)(ATCC(登録商標)BAA-1025)、および大腸菌RV308(ATCC(登録商標)31,608)が挙げられる。異なる宿主細胞は、翻訳後プロセシングおよびタンパク質産物の修飾(例えば、グリコシル化)に特徴的かつ特異的な機構を有する。適当な細胞株または宿主系は、発現されるポリペプチドの適正な修飾およびプロセシングを確保するために選択することができる。上記の発現ベクターは、当技術分野における従来技術、例えば、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、およびダイレクトマイクロインジェクションを用いて適当な宿主細胞に導入することができる。タンパク質生産用のためにベクターが宿主細胞に導入されれば、プロモーターを誘導する、形質転換体を選択する、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために必要に応じて修飾された従来の栄養培地で宿主細胞を培養する。治療タンパク質の発現のための方法は当技術分野で公知であり、例えば、Paulina Balbas,Argelia Lorence(eds.)、Recombinant Gene Expression:Reviews and Protocols(Methods in Molecular Biology),Humana Press;第2版(2004年)、およびVladimir VoynovおよびJustin A.Caravella(eds.)、Therapeutic Proteins:Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology),Humana Press;第2版(2012年)が参照される。
【0147】
タンパク質生産、回収および精製
本発明のポリペプチドを生産するために使用される宿主細胞は、当技術分野で公知であり、選択された宿主細胞の培養に好適な培地で増殖させることができる。哺乳動物宿主細胞に好適な培地の例としては、最小必須培地(MEM:Minimal Essential Medium)、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM:Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)、Expi293(商標)発現培地、ウシ胎仔血清(FBS:fetal bovine serum)を添加したDMEM、およびRPMI-1640が挙げられる。細菌宿主細胞に好適な培地の例としては、選択薬剤、例えば、アンピシリンなどの必要な添加を行ったLuria broth(LB)が挙げられる。宿主細胞は、好適な温度、例えば、約20℃~約39℃、例えば、25℃~約37℃、好ましくは、37℃、および5~10%などのCO2レベルで培養する。培地のpHは、主として宿主生物に応じて、一般に、約6.8~7.4、例えば、7.0である。本発明の発現ベクターでは誘導プロモーターが使用され、プロモーターの活性化に好適な条件下でタンパク質発現が誘導される。
【0148】
いくつかの実施形態では、使用する発現ベクターおよび宿主細胞に応じて、発現されるタンパク質を宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)から細胞培養培地へ分泌させることができる。タンパク質の回収は、細胞残渣を除去するために細胞培養培地を濾過することを含み得る。これらのタンパク質をさらに精製してもよい。本発明のポリペプチドは、タンパク質精製の技術分野で公知の任意の方法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、およびサイズ排除カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差溶解度、またはタンパク質精製のための他のいずれかの標準技術によって、精製することができる。タンパク質は、例えば、プロテインAカラム(例えば、POROSプロテインAクロマトグラフィー)などのアフィニティーカラムを適切に選択し、クロマトグラフィーカラム(例えば、POROS HS-50陽イオン交換クロマトグラフィー)、濾過、限外濾過、塩析および透析法と組み合わせることによって単離および精製することができる。
【0149】
他の実施形態では、宿主細胞は、発現されたタンパク質を回収するために、例えば、浸透圧ショック、音波処理、または溶解によって破壊することができる。細胞が破壊されれば、細胞残渣を遠心分離または濾過によって除去することができる。場合によっては、精製を容易にするためにポリペプチドをペプチドなどのマーカー配列に結合させることもできる。マーカーアミノ酸配列の例は、ヘキサヒスチジンペプチド(Hisタグ)であり、これはマイクロモルの親和性で、ニッケル官能基を有するアガロースアフィニティーカラムに結合する。精製に有用な他のペプチドタグとしては、限定されるものではないが、血球凝集素「HA」タグが含まれ、これはインフルエンザ血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに相当する(Wilson他、Cell 37:767,1984)。
【0150】
あるいは、本発明のポリペプチドは、例えば、遺伝子療法において、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクター(例えば、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルスベクター、例えば、変異ワクシニアアンカラ(MVA:Modified Vaccinia Ankara))、アデノ随伴ウイルスベクター、およびアルファウイルスベクター))を投与することにより、対象(例えば、ヒト)の細胞によって生産することができる。ベクターは、対象の細胞内にあれば(例えば、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、ダイレクトマイクロインジェクション、感染など)、ポリペプチドの発現を促進し、これは次に細胞から分泌される。疾患または障害の治療が所望の転帰である場合には、それ以上の作用は必要とされないと思われる。タンパク質の採集が望まれる場合には、対象から血液を採取し、当技術分野で公知の方法によって血液からタンパク質を精製することができる。
【0151】
VIII.医薬組成物および製剤
本発明は、本明細書に記載のポリペプチド(例えば、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチド)を含む医薬組成物に関する。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、治療タンパク質として、C末端伸長部(例えば、1、2、3、4、5、6またはそれ以上の付加的アミノ酸)を有する細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~70(例えば、配列番号6~70)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、治療タンパク質として、ある部分(例えば、Fcドメイン単量体、またはその二量体、野生型Fcドメイン、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、または血清アルブミン)に融合された細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のうちいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドを含む本発明の医薬組成物は、療法において、他の薬剤(例えば、治療生物製剤および/または小分子)または組成物と併用することができる。治療有効量のポリペプチドに加え、医薬組成物は1種類以上の薬学上許容される担体または賦形剤を含んでいてもよく、当業者に公知の方法によって調剤することはできる。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子(DNAもしくはRNA、例えば、mRNA)、またはそのような核酸分子を含有するベクターを含む。
【0152】
医薬組成物の許容される担体および賦形剤は、使用される用量および濃度でレシピエントに無毒である。許容される担体および賦形剤は、リン酸塩、クエン酸塩、HEPES、およびTAEなどのバッファー、アスコルビン酸およびメチオニンなどの酸化防止剤、塩化ヘキサメトニウム、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、レゾルシノール、および塩化ベンザルコニウムなどの保存剤、ヒト血清アルブミン、ゼラチン、デキストラン、および免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、ヒスチジン、およびリシンなどのアミノ酸、ならびにグルコース、マンノース、スクロース、およびソルビトールなどの炭水化物を含み得る。本発明の医薬組成物は、注射製剤の形態で非経口的に投与することができる。注射用医薬組成物は、無菌溶液または任意の薬学上許容される液体をビヒクルとして用いて調剤することができる。薬学上許容されるビヒクルとしては、限定されるものではないが、無菌水、生理食塩水、および細胞培養培地(例えば、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)、α-改変イーグル培地(α-MEM)、F-12培地)が挙げられる。調剤方法は当技術分野で公知であり、例えば、Banga(ed.)、Therapeutic Peptides and Proteins:Formulation, Processing and Delivery Systems(第3版)、Taylor & Francis Group,CRC Press(2015)が参照される。
【0153】
本発明の医薬組成物は、ヒドロキシルメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルなどのマイクロカプセル中に調製してもよい。本発明の医薬組成物はまた、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセルなどの他の薬物送達システム中に調製してもよい。このような技術は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第22版(2012年)に記載されている。in vivo投与に使用される医薬組成物は無菌でなければならない。これは無菌濾過膜を介した濾過によって容易に達成される。
【0154】
本発明の医薬組成物はまた、徐放性製剤として調製してもよい。徐放性製剤の好適な例としては、本発明のポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられる。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリアクチド(polyactides)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー(例えば、LUPRON DEPOT(商標))、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。一部の徐放性製剤は、数ヶ月、例えば、1~6か月にわたって分子の放出を可能とするが、他の製剤は本発明の医薬組成物をより短い期間、例えば、数日~数週間で放出する。
【0155】
医薬組成物は、必要であれば、単位剤形で形成することができる。医薬製剤中に含まれる有効成分、例えば、本発明のポリペプチドの量は、指定の範囲内で適切な用量が提供されるような量(例えば、0.01~100mg/kg体重の範囲内の用量)である。
【0156】
遺伝子療法用の医薬組成物は許容される希釈剤中にあってよく、または遺伝子送達ビヒクルが包埋された緩徐放出マトリックスを含み得る。送達方法としてハイドロダイナミックインジェクションが使用される場合には、本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸分子またはその核酸分子を含有するベクター(例えば、ウイルスベクター)を含有する医薬組成物は、大きな液量で静脈内に容易に送達される。in vivo遺伝子送達ビヒクルとして使用可能なベクターとしては、限定されるものではないが、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルスベクター、例えば、変異ワクシニアアンカラ)、アデノ随伴ウイルスベクター、およびアルファウイルスベクターが挙げられる。
【0157】
IX.経路、用量、および投与
治療タンパク質として本発明のポリペプチドを含む医薬組成物は、例えば、静脈内投与、非経口投与、皮下投与、筋肉内投与、動脈内投与、くも膜下腔内投与、または腹腔内投与向けに調剤されてよい。医薬組成物はまた、経口投与、鼻腔投与、噴霧投与、エアロゾル投与、直腸、もしくは膣投与用に調剤し、またはそれらを介して投与することができる。注射製剤に関しては、種々の有効な医薬担体が当技術分野で知られている。例えば、ASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel,第18版(2014)を参照されたい。
【0158】
いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子またはそのような核酸分子を含有するベクターを含む医薬組成物は、遺伝子送達によって送達することができる。遺伝子送達の方法は、当業者に周知である。in vivo遺伝子送達および発現に使用可能なベクターとしては、限定されるものではないが、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルスベクター、例えば、変異ワクシニアアンカラ(MVA))、アデノ随伴ウイルスベクター、およびアルファウイルスベクターが挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドをコードするmRNA分子を直接対象に投与してもよい。
【0159】
本発明のいくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸分子またはそのような核酸分子を含有するベクターは、ハイドロダイナミックインジェクションプラットフォームを用いて投与することができる。ハイドロダイナミックインジェクション法では、本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸分子を、操作したプラスミド(例えば、ウイルスプラスミド)内の強力なプロモーターの制御下に置く。プラスミドは多くの場合、大きな液量で静脈内に容易に送達される。ハイドロダイナミックインジェクションは、大きな液量の迅速な注入から得られる高圧が静脈からの流体およびプラスミドの管外遊出をもたらすように細胞透過性を高めるために、静脈内で、制御された流体力学的圧力を使用する。核酸分子の発現は、主として肝臓によって駆動される。マウスでは、ハイドロダイナミックインジェクションは、多くの場合、プラスミドの尾静脈への注射によって行われる。特定の実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドをコードするmRNA分子は、ハイドロダイナミックインジェクションを用いて投与することができる。
【0160】
本発明の医薬組成物の用量は、投与経路、治療される疾患、および対象の身体的特徴、例えば、年齢、体重、健康状態を含む因子によって決まる。本発明の医薬組成物は、0.01~500mg/kgの範囲(例えば、0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、250、300、350、400、450、または500mg/kg)、より具体的な実施形態では、約0.1~約30mg/kg、より具体的な実施形態では、約0.3~約30mg/kgの用量の本発明のポリペプチドを含み得る。用量は、対象の疾患の程度および種々のパラメータなどの従来の因子に従って医師が適合させることができる。
【0161】
医薬組成物は、その剤形に適した様式で、症状の改善または修復をもたらすために治療有効量で投与される。医薬組成物は、様々な剤形、例えば、静脈内剤形、皮下剤形、および経口剤形(例えば、摂取可能な溶液、薬物放出カプセル)で投与される。一般に、治療タンパク質は、0.1~100mg/kg、例えば、1~50mg/kgで投与される。本発明のポリペプチドを含む医薬組成物は、それを必要とする対象に、例えば、毎日、毎週、隔週、毎月、隔月、四半期毎、半年毎、1年毎、または医学的に必要に応じて1回以上(例えば、1~10回以上)投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドを含む医薬組成物は、それを必要とする対象に、毎週、隔週、毎月、隔月、または四半期毎に投与することができる。用量は単回または複数回の投与計画で提供することができる。投与間のタイミングは、医学的状態が改善すると減らすことができ、または患者の健康が減退すると増やすことができる。
【0162】
X.治療方法
本発明は、ActRIIbの細胞外部分からActRIIaの細胞外部分へアミノ酸を置換すると、特性が改善されたActRIIa変異体が得られるという発見に基づく。ActRIIbからActRIIaに残基を導入することによって作出されたActRIIa変異体は、より長い血清半減期およびBMP9に対する低い結合親和性などのActRIIaの有益な特性を保持し、かつ、アクチビンAおよびBに対する結合の増強(表4参照)および筋肉量を増加させる能力(実施例1~3および5~6を参照)のようなActRIIbの有益な特性のいくつかを獲得する。これらのActRIIa変異体特性は、リガンド結合に関して内因性のアクチビン受容体と競合し得る有用な治療性(therapeutic)を作出する。ActRIIa変異体は受容体の細胞外部分を含むので、それらは可溶型であり、かつ、細胞内シグナル伝達経路を活性化することなく、リガンド(例えば、アクチビンAおよびB、ミオスタチン、GDF11)と結合してそれらを隔離する(sequester)ことができる。よって、細胞外ActRIIa変異体は、アクチビンシグナル伝達の上昇が関連付けられている疾患または病態(例えば、アクチビン受容体またはアクチビン受容体リガンドの発現の増加に関連する疾患または病態)を治療するために使用することができる。例えば、ミオスタチンの喪失は骨格筋の筋肉量を増加させることが示されており、ミオスタチンが骨格筋の成長を阻害することを示唆している。その結果、ミオスタチンに結合して内因性受容体との相互作用を減少させる治療薬による治療は、筋肉量を増加させるための実行可能なアプローチとなり得ることになる。実際、本発明の細胞外ActRIIa変異体はマウスの筋肉量を増加させる(実施例1~3および5~6を参照)。これらのデータは、本明細書に記載の細胞外ActRIIa変異体が筋肉量を増加させ、筋力低下または筋肉の萎縮をもたらす疾患または病態を有する対象を治療するために使用できることを示している。
【0163】
さらに、これらのデータは、本発明の細胞外ActRIIa変異体を用いてアクチビン受容体またはアクチビン受容体リガンドの発現上昇に関連する他の疾患または病態、例えば代謝性疾患(例えば、肥満、1型糖尿病および2型糖尿病)を治療することができる説得力のある理由を提示する。筋肉量を増やすことが体脂肪および/または体重を減らす一つの方法であることを多くの研究が示しており、これは本明細書に記載の細胞外ActRIIa変異体を使用して、筋肉量を増やすことによって間接的に代謝性疾患(例えば肥満、1型糖尿病および2型糖尿病)を治療できることを示している。しかしながら、肥満マウスおよびヒトにおいてアクチビン受容体およびアクチビン受容体リガンドが増加することが示されているので、本明細書に記載の細胞外ActRIIa変異体を使用して、(例えば、内因性のアクチビン受容体リガンド、例えばアクチビンおよびミオスタチンと結合し、それらを隔離することによって)アクチビン受容体シグナル伝達の上昇を減少させることによって肥満を治療することができる。
【0164】
本発明は、それを必要とする対象において筋肉量および強度を増加させるために使用することができる組成物および治療方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象は、筋力低下または筋肉の萎縮(例えば、骨格筋の筋力低下または萎縮)を引き起こす疾患を有していてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、筋力低下および筋肉の萎縮を伴う疾患または病態を有する対象においてミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用することに関する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の細胞外ActRIIa変異体を含むポリペプチドは、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれらの受容体(例えばActRIIa、ActRIIb、およびBMPRII(例えばActRIIa))への結合を低減または阻害する。いくつかの実施形態において、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用する(例えば、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれらの受容体(例えば、ActRIIa、ActRIIb、およびBMPRII(例えば、ActRIIa))への結合を低減または阻害する)ことにより、対象の筋肉量が増加する。
【0165】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチド(例えば、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチド)は、筋肉量を増加させるために、または対象におけるミオスタチン、アクチビンおよび/またはBMP9シグナル伝達に作用するために、対象に投与され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、対象の骨塩密度を高める。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、血管透過性の増加または漏出のような対象における血管合併症を引き起こさない。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、対象は、筋力低下および筋肉の萎縮を伴う疾患または病態(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、顔面頭蓋上腕筋ジストロフィー(FSHD)、封入体筋炎(IBM)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)サルコペニア、または癌悪液質)を有する。
【0166】
本発明はまた、対象に本明細書に記載のポリペプチド(例えば、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチド)を投与することによって、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)、封入体筋炎(IBM)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、サルコペニア、または癌悪液質を有する対象を治療する方法を含む。
【0167】
本明細書に記載の組成物および方法はまた、代謝性疾患、例えば肥満および糖尿病(1型糖尿病および2型糖尿病)などの医学的状態を治療および/または予防するためにも使用することができる。いくつかの実施形態において、対象は肥満を引き起こす疾患を患っていてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、肥満、糖尿病(1型糖尿病および2型糖尿病)、または肥満をもたらす疾患または病態を有する対象においてミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用することに関する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の細胞外ActRIIa変異体を含むポリペプチドは、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれらの受容体(例えばActRIIa、ActRIIb、およびBMPRII(例えばActRIIa))への結合を低減または阻害する。いくつかの実施形態において、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用する(例えば、ミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9のそれらの受容体(例えば、ActRIIa、ActRIIb、およびBMPRII(例えば、ActRIIa))への結合を低減または阻害する)ことにより、対象の体脂肪(例えば、体脂肪量または体脂肪率)の減少、対象の体重または体重増加の減少、空腹時インスリンレベルの低下、グルコースクリアランスの増加、またはインスリン感受性の増加(例えば、インスリン抵抗性の低下)をもたらす。
【0168】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチド(例えば、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチド)は、(例えば、肥満を発症するリスクがある患者(例えば、太りすぎの患者、肥満の家族歴がある患者、または肥満のリスク増加に関連する他の医学的症状または遺伝的リスク因子がある患者)において)肥満の発症を予防するために、および/または既に肥満と診断された患者を治療するために、対象に投与され得る。例えば、対象への細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)の投与は、脂肪の量を減らすことによって、対象の体重を減らすことに役立ち得る。いくつかの実施形態において、細胞外ActRIIa変異体は、除脂肪量を維持または増加させながら脂肪の量を低減する。
【0169】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチド(例えば、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチド)は、糖尿病(例えば、1型糖尿病および2型糖尿病)の発症を予防するため、および/またはすでに糖尿病と診断された患者を治療するために使用され得る。糖尿病を発症する可能性が高い患者(例えば、遺伝的素因、糖尿病の家族歴、前糖尿病(prediabetes)、他の自己免疫疾患との関連、または他の代謝性疾患を有する個体)には、予防的に本明細書に記載のポリペプチド(例えば、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチド)が投与されてもよく、それにより、細胞外ActRIIaポリペプチドが、β-細胞の正常機能および健全な状態を維持するとともにβ-細胞に対する自己免疫性炎症性の損傷を予防または遅延し得る。他の実施形態において、本明細書に記載のポリペプチド(例えば、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチド)は、糖尿病(例えば、1型糖尿病および2型糖尿病)と診断される前に、または糖尿病の臨床症状(例えば、高血糖値、高空腹時インスリンレベル、インスリン抵抗性、多尿症、多飲、多食症)と診断される前に、個体に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、細胞外ActRIIaポリペプチドは、患者がインスリンを必要とする前に患者に投与することができる。さらに他の実施形態において、細胞外ActRIIaポリペプチドの投与は、糖尿病患者におけるインスリン治療の必要性を遅らせるかまたは延期することができる。例えば、本発明の細胞外ActRIIaポリペプチドの対象への投与は、血液からのグルコースクリアランス速度を増加させるのを助け得る。
【0170】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチド(例えば、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチド)は、肥満または糖尿病(例えば、1型糖尿病および2型糖尿病)の患者の発症を予防および/または治療するために、あるいはミオスタチン、アクチビン、および/またはBMP9シグナル伝達に作用するため(例えば、アクチビン、ミオスタチン、および/またはBMP9のそれらの受容体への結合を低減または阻害するため)に、対象に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、体脂肪を減少させる(例えば、皮下脂肪および/または内臓脂肪の量を減少させる、肥満症を減少させる、精巣上体および腎周囲脂肪体の重量を減少させる、または体脂肪率を減少させる)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、体重を減少させるかまたは体重増加を減少させる(例えば、体重増加の割合を減少させる)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は脂肪細胞の増殖を減少させる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法はLDLを低下させる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法はトリグリセリドを減少させる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、対象の血清脂質プロフィールを改善する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、除脂肪量を減少させることなく(例えば、除脂肪量に影響を与えず、または除脂肪量を増加させないで)体脂肪を減少させる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は体脂肪を減少させ、筋肉量を増加させる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、血糖値(例えば、空腹時血糖値)を低下させる、および/またはグルコースクリアランスを上昇させる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、空腹時インスリンレベルを低下させるおよび/またはインスリン感受性を改善する(例えば、インスリン抵抗性を低下させる)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、インスリン生合成および/またはβ-細胞からの分泌を調節する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、食物摂取に対する食欲に影響を及ぼさない。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、血管透過性の増加または漏出のような対象における血管合併症を引き起こさない。
【0171】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリペプチド(例えば、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチド)は、筋肉量を増やすことによって、体脂肪を低減する、体重を低減する、或いはインスリン感受性および/またはグルコースクリアランスを増加させる。
【0172】
本明細書に記載の方法のいずれにおいても、細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~71(例えば、配列番号6~71)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチドであってさらに、1~6個のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6個またはそれ以上のアミノ酸)のC末端伸長部を含むポリペプチドが治療用タンパク質として使用され得る。本明細書に記載の方法のいずれにおいても、ある部分(例えば、Fcドメイン単量体、野生型Fcドメイン、アミノ酸置換(例えば、二量体形成を低減する1以上の置換)を有するFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、またはヒト血清アルブミン)に融合された細胞外ActRIIa変異体(例えば、配列番号1~72(例えば、配列番号6~72)のいずれか1つの配列を有する細胞外ActRIIa変異体)を含むポリペプチドの二量体(例えばホモ二量体またはヘテロ二量体)は、治療用タンパク質として使用されてもよい。本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸、または該核酸を含有するベクターもまた、本明細書に記載の方法のいずれかに従って投与され得る。本明細書に記載の方法のいずれにおいても、ポリペプチド、核酸、またはベクターは医薬組成物の一部として投与することができる。
【実施例0173】
実施例1:細胞外ActRIIa変異体の体重に及ぼす効果
C57Bl/6マウスに、以下の6つのポリペプチドのうちの1つをコードするプラスミド構築物の単回のハイドロダイナミックインジェクション(hydrodynamic injection)を行った(n=10/群)。
【0174】
(1)ヒトFc(hFc)、
(2)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合した細胞外ActRIIa(配列番号73)、
(3)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合した細胞外ActRIIb(配列番号74)、
(4)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合した細胞外ActRIIa変異体(配列番号69)、そして
(5)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合した細胞外ActRIIb変異体(配列番号149)。
【0175】
100μgのプラスミド構築物を5~8秒間かけて体重の10%の容量で送達した。高容量かつ短時間の注入は、プラスミドが発現されるであろう肝細胞にプラスミドを導入するのに必要な圧力を提供し、特に目的のタンパク質(protein of interest)は強力かつ遍在するプロモーターの下で発現される。目的のタンパク質は肝細胞の内因性機構(endogenous machinery)の下で分泌され、自由に循環する。マウスを週2回30日間秤量し、測定値をグラム単位の絶対体重(BW)およびベースライン測定値からの体重変化のパーセントとして記録した(それぞれ
図2Aおよび2B)。
【0176】
実施例2:細胞外ActRIIa変異体の筋肉量に及ぼす効果
マウスに、以下の6つのポリペプチドのうちの1つをコードするプラスミド構築物の単回のハイドロダイナミックインジェクションを行った(n=10/群)。
【0177】
(1)ヒトFc(hFc)、
(2)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合した細胞外ActRIIa(配列番号73)、
(3)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合した細胞外ActRIIb(配列番号74)、
(4)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合した細胞外ActRIIa変異体(配列番号69)、そして
(5)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合した細胞外ActRIIb変異体(配列番号149)。
【0178】
100μgのプラスミド構築物を5~8秒間かけて体重の10%の容量で送達した。高容量かつ短時間の注入は、プラスミドが発現されるであろう肝細胞にプラスミドを導入するのに必要な圧力を提供し、特に目的のタンパク質は強力かつ遍在するプロモーターの下で発現される。目的のタンパク質は肝細胞の内因性機構の下で分泌され、自由に循環する。試験の0日目(ベースライン)、14日目および28日目に、マウスを、MiniSpec LF90 NMR分析器(Bruker(テキサス州ウッドランズ所在))を使用して、除脂肪量の決定のためにNMR分析にかけた。ベースラインからの除脂肪量の変化率を14日目および28日目に記録した(
図3Aおよび3B)。
【0179】
実施例3:精製組換えタンパク質として投与した場合の細胞外ActRIIa変異体の体重に及ぼす効果
雌C57Bl/6マウス(Taconic Biosciences(ニューヨーク州ハドソン所在))は、トリス緩衝生理食塩水ビヒクルまたは以下の5つの精製組換えポリペプチドのうちの1つを10mg/kgの用量で4週間にわたり週2回腹腔内注射した(n=10/群)。
【0180】
(1)トリス緩衝生理食塩水、
(2)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合した細胞外ActRIIa(配列番号73)、
(3)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合した細胞外ActRIIb(配列番号74)、
(4)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合した細胞外ActRIIa/b変異体(配列番号69)、
(5)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合した細胞外ActRIIa/b9Δ9変異体(配列番号58)、そして
(6)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合した細胞外ActRIIa/bΔ9min変異体(配列番号6)。
【0181】
精製組換えタンパク質を、HEK293細胞における一過性発現によって作製し、プロテインAセファロースクロマトグラフィーを使用して馴化培地から精製した。
4週間の投与後、マウスを人道的に屠殺し、剖検を行った。剖検には、全身、ならびに腓腹筋、胸筋、および大腿四頭筋に対する重量の収集が含まれた。筋肉/体重データの統計分析は、GraphPad Prism 7(GraphPad Software(カリフォルニア州ラホヤ所在))で行った(それぞれ
図4Aおよび4B)。
【0182】
実施例4:表面プラズモン共鳴(SPR)によるActRIIa変異体結合親和性の評価
ActRIIa変異体とリガンドであるアクチビンA、アクチビンB、成長分化因子11(GDF11)、およびBMP-9との間の相互作用の動態を測定するためにBiacore 3000を使用した。ActRIIa変異体を実施例3に記載の方法に従って発現および精製した。ActRIIa変異体を、適正な配向を確保するためにフローセル2~4において捕捉抗体(GEGEからの抗マウス)を用いてチップ(CM4またはCM5)に固定した。フローセル1は非特異的結合およびバルク効果を差し引くために参照セルとして使用した。GE Healthcare(商標)からのHBS-EP+緩衝液をランニング緩衝液として使用した。物質移動効果を避けるために40μl/分にて、一定の濃度系で各リガンドを流した。各相互作用のKDを計算するため、BioLogic(商標)ソフトウエアによりScrubber2を用いてデータを解析した(表4)。
【0183】
【0184】
実施例5:細胞外ActRIIa変異体の体重および筋肉重量に及ぼす効果
C57Bl/6マウスに、以下の12のポリペプチドのうちの1つをコードするプラスミド構築物の単回のハイドロダイナミックインジェクションを行った(n=10/群)。
【0185】
(1)ビヒクル、
(2)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合したpLEV113-ActRIIa(19~127)(配列番号73)、
(3)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合したpLEV113-ActRIIb(41~155)(配列番号74)、
(4)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合したpLEV113-ActRIIa/b(配列番号69)、
(5)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合したpLEV113-ActRIIb/a(配列番号149)、
(6)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合したpLEV113-ActRIIa/b+(配列番号150)、
(7)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合したpLEV113-ActRIIa/b-デルタ9m2(配列番号38)、
(8)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合したpLEV113-ActRIIa/b-デルタ9m3(配列番号41)、
(9)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合したpLEV113-ActRIIa/b-デルタ9m4(配列番号44)、
(10)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合したpLEV113-ActRIIa/bmax1(配列番号70)、
(11)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合したpLEV113-ActRIIa/bmax2(配列番号71)、そして
(12)GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合したpLEV113-ActRIIa/bmax1(配列番号72)。
【0186】
100μgのプラスミド構築物を5~8秒間かけて体重の10%の容量で送達した。高容量かつ短時間の注入は、プラスミドが発現されるであろう肝細胞にプラスミドを導入するのに必要な圧力を提供し、特に目的のタンパク質は強力かつ遍在するプロモーターの下で発現される。目的のタンパク質は肝細胞の内因性機構の下で分泌され、自由に循環する。マウスを週2回30日間秤量し、測定値をグラム単位の絶対体重(BW)およびベースライン測定値からの体重変化のパーセントとして記録した(それぞれ
図5Aおよび5B)。試験終了時に筋肉も秤量し、測定値をグラムで記録した(
図6Aおよび6B)。
【0187】
実施例6:細胞外ActRIIa変異体の体重、筋肉重量、および筋肉量に及ぼす用量効果(dose effect)
8週齢の雄のC57BL/6マウスを9群に体重を合わせた(n=10/群)。群に5mL/kgのビヒクル(Tris緩衝生理食塩水、pH7.4)または4つの濃度のActRIIA/B-Fc(GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合した配列番号69)またはActRIIA/BΔ9-Fc(GGGリンカーを介してhFcのN末端に融合した配列番号58)のうちの1つのいずれかを投与した。評価された用量は、20mg/kg、8mg/kg、3mg/kgおよび1mg/kgであった。処置は、週に2回で4週間(8回)腹腔内(IP)投与し、そして試験は試験28日目に終了した。試験中、投与日(
図7Aおよび7B)に体重を記録し、試験終了時に、除脂肪および脂肪の質量分析のために群をNMRイメージングし(
図8Aおよび8B)、胸筋および腓腹筋の筋肉重量を回収して秤量した(
図9Aおよび9B)。
【0188】
実施例7:肥満に対する細胞外ActRIIa変異体の効果
成体雄のC57BL/6マウスを体重が一致した処置群に割り当てた(n=10/群)。全ての動物は、通常の固形飼料(Chow;Purina LabDiet5001(ミズーリ州セントルイス所在))または高脂肪食(HFD;Research Diets(登録商標)D12331(ニュージャージー州ニューブランズウィック所在))で維持した。固形飼料を摂取している群およびHFDを摂取している群を、さらに週に2回、ActRII変異体またはビヒクルのいずれかを60日間投与される群に分けた。体重は処置時に週に2回測定する。ベースライン時(治療剤の投与およびHFDへの移行前)にMiniSpec LF50を使用して、次いで試験終了時まで隔週で体組成を測定する。試験終了日に、目的の組織(血清、血漿、筋肉および脂肪蓄積物)を外科的に取り出し、そして秤量する。続いて、血清サンプルを肥満のバイオマーカーについて評価し、血漿をHba1cレベルについて評価した。
【0189】
その他の実施形態
本発明をその特定の実施形態に関して記載してきたが、さらなる改変が可能であり、本願は、一般に本発明の原理に従う本発明のいずれの変形形態、使用、または適応も包含することが意図され、本開示からのそのような逸脱を含むことは、本発明が属する技術分野内の既知または関連の実施の範囲内にあり、以上に示す本質的特徴に該当し得ることが理解されるであろう。
【0190】
各個の刊行物、特許、および特許出願の全内容が本明細書の一部として援用されることが具体的かつ個々に示される場合と同等に、全ての刊行物、特許、および特許出願の全内容は本明細書の一部として援用される。
【0191】
他の実施形態も以下の特許請求の範囲内にある。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
細胞外アクチビンIIa型受容体(ActRIIa)変異体を含み、
前記変異体は
GAILGRSETQECLX1X2NANWX3X4X5X6TNQTGVEX7CX8GX9X10X11X12X13X14HCX15ATWX16NISGSIEIVX17X18GCX19X20X21DX22NCYDRTDCVEX23X24X25X26PX27VYFCCCEGNMCNEKFSYFPEMEVTQPTS(配列番号1)の配列を有し、配列中、X1はFまたはYであり;X2はYであり;X3はEであり;X4はLであり;X5はEまたはDであり;X6はRであり;X7はRまたはPであり;X8はEであり;X9はEであり;X10はKまたはQであり;X11はDであり;X12はKであり;X13はRであり;X14はLであり;X15はYまたはFであり;X16はRまたはKであり;X17はKであり;X18はKであり;X19はWであり;X20はLであり;X21はDであり;X22はFまたはIであり;X23はTであり;X24はEまたはKであり;X25はEであり;X26はNであり;かつ、X27はQである、ポリペプチド。
【0192】
[付記2]
X1はFであり、かつX10はKである、付記1に記載のポリペプチド。
[付記3]
前記変異体が配列番号6~72のうちいずれか1つの配列を有する、付記1に記載のポリペプチド。
【0193】
[付記4]
1以上のアミノ酸のC末端伸長部をさらに含む、付記1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0194】
[付記5]
前記C末端伸長部がNPまたはNPVTPKである、付記4に記載のポリペプチド。
[付記6]
リンカーを介してポリペプチドのC末端に融合されたFcドメイン単量体、野生型Fcドメイン、アミノ酸置換を含むFcドメイン、アルブミン結合ペプチド、フィブロネクチンドメイン、またはヒト血清アルブミンをさらに含む、付記1~5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0195】
[付記7]
前記リンカーがアミノ酸スペーサーである、付記6に記載のポリペプチド。
[付記8]
付記1~7のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸分子。
【0196】
[付記9]
付記8の核酸分子を含むベクター。
[付記10]
付記1~7のいずれか一項に記載のポリペプチド、付記8に記載の核酸分子、または付記9に記載のベクターと、1種類以上の薬学上許容される担体または賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【0197】
[付記11]
筋力低下または筋肉の萎縮を含む疾患または病態を有する対象を治療するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、治療有効量の、付記1~7のいずれか一項に記載のポリペプチド、付記8に記載の核酸分子、または付記9に記載のベクターを含み、前記医薬組成物は前記対象に投与されるものである、医薬組成物。
【0198】
[付記12]
前記疾患または病態は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、サルコペニア、癌悪液質、または封入体筋炎である、付記11に記載の医薬組成物。
【0199】
[付記13]
それを必要とする対象において筋肉量を増加させる医薬組成物であって、前記医薬組成物は、治療有効量の、付記1~7のいずれか一項に記載のポリペプチド、付記8に記載の核酸分子、または付記9に記載のベクター、を含み、前記医薬組成物は前記対象に投与されるものである、医薬組成物。
【0200】
[付記14]
前記対象が、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、封入体筋炎、筋萎縮性側索硬化症、サルコペニア、または癌悪液質を有する、付記13に記載の医薬組成物。
【0201】
[付記15]
デュシェンヌ型筋ジストロフィー、顔面嚢胞上腕性筋ジストロフィー、封入体筋炎、筋萎縮性側索硬化症、サルコペニア、または癌悪液質を有する対象を治療するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は治療有効量の、付記1~7のいずれか一項に記載のポリペプチド、付記8に記載の核酸分子、または付記9に記載のベクターを含み、前記医薬組成物は前記対象に投与されるものである、医薬組成物。