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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181463
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
F01N3/28 301V
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188084
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2022061776の分割
【原出願日】2017-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 伸治
(57)【要約】
【課題】シリンダヘッドの配置構成を利用した合理的な改造により、振動によるDPFの支持機構の破損を抑制する。
【解決手段】エンジンは、シリンダヘッドと、排気マニホールドと、前記排気マニホールドからの排気ガスを浄化する排ガス浄化装置と、前記排ガス浄化装置を少なくとも前記シリンダヘッドに支持させる支持機構と、を備える。前記支持機構は、前記排ガス浄化装置を少なくとも当該エンジンの上下方向と前後方向に支持する支持部材を有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドと、
排気マニホールドと、
前記排気マニホールドからの排気ガスを浄化する排ガス浄化装置と、
前記排ガス浄化装置を少なくとも前記シリンダヘッドに支持させる支持機構と、を備えるエンジンであって、
前記支持機構は、前記排ガス浄化装置を少なくとも当該エンジンの上下方向と前後方向に支持する支持部材を有する、エンジン。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンであって、
前記排ガス浄化装置は、前記支持機構により、さらに当該エンジンの左右方向に支持される。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエンジンであって、
前記排ガス浄化装置は、その長手方向がエンジンの左右方向を向いて設けられている。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のエンジンであって、
前記支持部材は、前記シリンダヘッドと吸気マニホールドに取り付けられている。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のエンジンであって、
前記排ガス浄化装置の前記排気マニホールド側を支持する支持台が前記シリンダヘッドに固定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械や農業機械等の作業機械に搭載されるディーゼルエンジン等のエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンダヘッドの上部に、排気マニホールドからの排気ガスを浄化するDPFが、クランク軸の回転軸芯に対して平面視で直交又は略直交する姿勢で配設され、前記排気ガスの一部をEGRガスとして吸気マニホールドに還流する吸気コレクタが、吸気マニホールドに固定されているエンジンが知られる。上述のエンジンは、シリンダヘッドの上部に配設されるDPFの姿勢が、クランク軸の回転軸芯に対して平面視で直交又は略直交する横向き姿勢に構成されているため、例えば、DPFがクランク軸の回転軸芯方向に沿って配設されている場合に比して、エンジン周りの占有スペースのコンパクト化を図ることができる。
【0003】
そして、上述の横向き姿勢のDPFをエンジンに支持させるにあたって、従来では、特許文献1に示すように、DPFをシリンダヘッド及び吸気マニホールドに支持させる支持機構が設けられている。この支持機構は、DPFにおける排気マニホールド側の部位をシリンダヘッドの左側面に固定するための入口側ブラケットと、DPFにおける吸気マニホールド側の部位をシリンダヘッドの前面に固定するための出口側ブラケットと、出口側ブラケットの上下中間部位と吸気マニホールドとを連結する連結ブラケットとから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-178813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のDPFの支持構造では、シリンダヘッドの左側面に対する入口側ブラケットの取付け位置と、シリンダヘッドの前面に対する出口側ブラケットの取付け位置と、吸気マニホールドに対する連結ブラケットの取付け位置が、平面視でクランク軸の回転軸芯に対する直交方向の線分に対して互いに近い位置に配置されている。そのため、エンジンに伝播される振動によってDPFがクランク軸の回転軸芯方向に沿ったピッチ方向(図1の矢印方向b)に揺れ動き易い。
特に、スキッドステアローダ等の作業機に搭載されるエンジンの場合には、駆動対象機器用の出力軸部が臨むフライホイールハウジングに、作業機用油圧ポンプ等の質量の大きな駆動対象機器(図1図2の仮想線で示す部分)が固定連結される。そのため、作業機が地面の凹凸や段差等を走行したとき、作業機の上下振動(図1の矢印方向a)が質量の大きな駆動対象機器で増幅されてエンジン及びDPFにピッチ方向(図1の矢印方向b)の揺れとして伝播される。このとき、DPFは、シリンダヘッドの上部における駆動対象機器用の出力軸部側から離間する端部側に配設されているため、エンジン以上にDPFがピッチ方向に大きく揺れ動き、DPFの支持機構の破損を招来する可能性がある。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、シリンダヘッドの配置構成を利用した合理的な改造により、振動によるDPFの支持機構の破損を抑制することのできるエンジンを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による第1の特徴構成は、シリンダヘッドと、排気マニホールドと、前記排気マニホールドからの排気ガスを浄化する排ガス浄化装置と、前記排ガス浄化装置を少なくとも前記シリンダヘッドに支持させる支持機構と、を備えるエンジンであって、前記支持機構は、前記排ガス浄化装置を少なくとも当該エンジンの上下方向と前後方向に支持する支持部材を有する点にある。
【0008】
本発明による第2の特徴構成は、前記排ガス浄化装置は、前記支持機構により、さらに当該エンジンの左右方向に支持される点にある。
【0009】
本発明による第3の特徴構成は、前記排ガス浄化装置は、その長手方向がエンジンの左右方向を向いて設けられている点にある。
【0010】
本発明による第4の特徴構成は、前記支持部材は、前記シリンダヘッドと吸気マニホールドに取り付けられている点にある。
本発明による第5の特徴構成は、前記排ガス浄化装置の前記排気マニホールド側を支持する支持台が前記シリンダヘッドに固定される点にある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ディーゼルエンジンの左側の斜視図
図2】ディーゼルエンジンの右側の斜視図
図3】DPFを分離したエンジン上部の斜視図
図4】DPFの取付け部の左側の斜視図
図5】DPFの取付け部の右側の斜視図
図6】DPFの取付け部の前方側斜視図
図7】DPFの取付け部の分解斜視図
図8】DPFの取付け部の組付け斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1図2は、エンジンの一例で、建設機械や農業機械等の作業機械に搭載される原動機としてのディーゼルエンジン1を示す。ディーゼルエンジン1の説明にあたっては、便宜上、排気マニホールド7の配置側をディーゼルエンジン1の左側とし、吸気マニホールド6の配置側をディーゼルエンジン1の右側とする。また、クランク軸(エンジン出力軸)2の回転軸芯方向を前後方向とし、冷却ファン(図示省略)の配置側を前側、駆動対象機器100に対するクランク軸2の出力軸部2A側を後側とする。
また、図1図2はディーゼルエンジン1の全体の斜視図を示す。図3図8は、DPF40の支持構造を明確に表すため、その周辺の部品を適宜取外した状態で表現している。例えば、図6は、ターボ過給機30を取外した状態で表現している。
【0013】
ディーゼルエンジン1は、図1図2に示すように、エンジン出力用のクランク軸2とピストン(図示省略)を内蔵するシリンダブロック3を備える。シリンダブロック3の上面にはシリンダヘッド4が固定され、シリンダヘッド4の上面にはヘッドカバー5が固定されている。シリンダヘッド4の右側面4c(図7参照)には吸気マニホールド6が固定され、シリンダヘッド4の左側面4b(図7参照)には排気マニホールド7が固定されている。シリンダブロック3の前面には、冷却ファン(図示省略)を軸支するファン軸8が設けられている。シリンダブロック3の後面にはフライホイールハウジング9が固定され、このフライホイールハウジング9内には、クランク軸2の後端側の出力軸部2Aに軸支されるフライホイール10が配置されている。
【0014】
本実施形態では、図1図2の仮想線に示すように、フライホイールハウジング9には、クランク軸2の出力軸部2Aに直結される作業機用油圧ポンプ等の質量の大きな駆動対象機器100が固定連結されている。
【0015】
ディーゼルエンジン1の吸気系は、後述のターボ過給機30のコンプレッサ32が設けられる吸気管15と、後述のEGR装置50の吸気コレクタ51と、吸気マニホールド6と、を備える。
【0016】
ターボ過給機30は、図1に示すように、排気管20に設けられるターボ過給機30のタービン31と、吸気管15に設けられるコンプレッサ32とで構成される。タービン31は排気管20を流れる排気ガスのエネルギにより回転し、タービン31と同軸のコンプレッサ32を駆動する。コンプレッサ32はエアクリーナ(図示省略)を介して吸入される新気(外部空気)を圧縮する。「新気」とは、後述するEGRガスを含まない空気のことである。圧縮されて大気圧を超える加圧空気は、吸気コレクタ51へと送られる。
【0017】
排気マニホールド7には、図6に示すように、外方上方に向かって開口する排気ガス排出筒部21が一体形成されている。この排気ガス排出筒部21には、図1に示すように、タービン31のガス入口部が接続され、タービン31のガス出口部には、エルボ状の管継手22の上流側端部が接続されている。エルボ状の管継手22の下流側端部には、DPF40の排気ガス導入部42に接続される排気連結管23の上流側端部が接続されている。排気連結管23の下流側の連結フランジ23Aは、図1図2に示すように、DPF40の排気ガス導入部42の連結フランジ42Aにボルト締結されている。上述の管継手22と排気連結管23とをもって排気管20が構成されている。
【0018】
吸気マニホールド6は、図2に示すように、吸気管15を介して供給された加圧空気をシリンダ数に応じた数に分けてシリンダヘッド4へ供給する。シリンダヘッド4には、インジェクタ(燃料噴射装置)16が配置されている。インジェクタ16は、所定のタイミングで燃焼室に燃料を噴射する。インジェクタ16が燃料を噴射してシリンダブロック3内のピストンを駆動させることで、ディーゼルエンジン1は動力を発生させることができる。
【0019】
ディーゼルエンジン1の排気系は、図1に示すように、排気マニホールド7と、ターボ過給機30のタービン31が設けられている排気管20と、連続再生式の排気ガス浄化装置を構成するDPF40と、を備える。
【0020】
排気マニホールド7は、複数の燃焼室で発生した排気ガスをまとめてターボ過給機30のタービン31へ供給する。排気マニホールド7を通過した排気ガスは、一部がEGRガスとしてEGR装置50によって吸気系に還流され、残りがDPF40で浄化された後に排出される。
【0021】
EGR装置50は、図1図2に示すように、排気マニホールド7からの一部のEGRガスと吸気管15から供給される新気とを混合させて吸気マニホールド6に供給する吸気コレクタ51と、吸気管15を吸気コレクタ51に連通させる吸気スロットル部材52と、排気マニホールド7にEGRクーラ53を介して接続される還流管路としての再循環排気ガス管54と、再循環排気ガス管54に吸気コレクタ51を連通させるEGRバルブ部材55とを備えている。 EGRバルブ部材55内のEGRバルブ(図示省略)の開度を調節することにより、吸気コレクタ51へのEGRガスの供給量を調節する。
【0022】
上述の構成により、吸気管15から吸気スロットル部材52を介して吸気コレクタ51内に新気(外部空気)を供給する一方、排気マニホールド7からEGRバルブ部材55を介して吸気コレクタ51内にEGRガスを供給する。吸気管15からの新気と、排気マニホールド7からのEGRガスとが、吸気コレクタ51内で混合された後、吸気マニホールド6に供給される。すなわち、ディーゼルエンジン1から排気マニホールド7に排出された排気ガスの一部が、吸気マニホールド6からディーゼルエンジン1に還流されることによって、高負荷運転時の最高燃焼温度が低下し、ディーゼルエンジン1からのNOx(窒素酸化物)の排出量が低減される。
【0023】
EGRクーラ53のガス入口部は、排気マニホールド7に一体形成されたEGRガス取出し管56に接続され、EGRクーラ53のガス出口部は、管継手部材57を介して再循環排気ガス管54に接続されている。管継手部材57は、排気マニホールド7にボルト締結されている。
【0024】
DPF40は、左右方向に沿う円筒形状の耐熱金属材料製の排気ガス浄化ケース41を備える。この排気ガス浄化ケース41の外周面における左端部側には、後方に向かって開口する排ガス導入口42a(図3参照)を備えた排気ガス導入部42が突出形成されている。排気ガス浄化ケース41の右側の端面には、浄化された排気ガスを排出する浄化ガス排出口43が設けられている。この浄化ガス排出口43から排出される排気ガスは、消音器やテールパイプを介して外部に排出される。
【0025】
排気ガス浄化ケース41は、図3に示すように、二酸化窒素(NO2)を生成する白金等のディーゼル酸化触媒44(ガス浄化体)が内部に装着されている触媒ケース体45と、捕集した粒子状物質(PM)を比較的低温で連続的に酸化除去するハニカム構造のスートフィルタ46(ガス浄化体)が内部に装着されているフィルタケース体47とを備える。触媒ケース体45のガス出口側端部に設けられた第1連結フランジ45Aとフィルタケース体47のガス入口側端部に設けられた第2連結フランジ47Aとは、左右方向から接合された状態でボルト・ナットにより締結されている。
【0026】
また、フィルタケース体47のガス出口側端部には、図2図3に示すように、浄化ガス排出口43を備えた蓋体48と、第3連結フランジ49が設けられている。第3連結フランジ49の背面側には、周方向で二分された分割補強フランジ板50A,50B(図1参照)がボルト・ナットにて締結されている。そのうち、下方側の分割補強フランジ板50Aには、第3連結フランジ49よりも直径方向の外方側に突出する連結板部50aが一体形成されている。この連結板部50aには、後述の第1ブラケット70を左右方向から第1ボルト74・ナット75で締結するための複数のボルト挿通孔50bが形成されている。
本実施形態では、図3に示すように、ボルト挿通孔50bは、排気ガス浄化ケース41側の分割補強フランジ板50Aの下側の周方向の三箇所に形成されている。周方向の両側に位置するボルト挿通孔50bは円形孔に形成され、周方向の中央に位置するボルト挿通孔50bは、下方に開口する略「U」字状の切欠き孔に形成されている。
【0027】
上述の構成により、ディーゼル酸化触媒44の酸化作用によって生成された二酸化窒素(NO2)が、スートフィルタ46内に供給される。ディーゼルエンジン1の排気ガス中に含まれた粒子状物質(PM)は、スートフィルタ46に捕集されて、二酸化窒素(NO2)によって連続的に酸化除去される。ディーゼルエンジン1の排気ガス中の粒状物質(PM)の除去に加え、ディーゼルエンジン1の排気ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)の含有量が低減される。
【0028】
上述の如く構成されたディーゼルエンジン1、特に、スキッドステアローダ等の作業機に搭載されるディーゼルエンジン1の場合には、図1図2の仮想線で示すように、フライホイールハウジング9に、クランク軸2の出力軸部2Aに直結される作業機用油圧ポンプ等の質量の大きな駆動対象機器100が固定連結される。そのため、作業機が地面の凹凸や段差等を走行したとき、作業機の上下振動(図1の矢印方向a)が質量の大きな駆動対象機器100で増幅されてディーゼルエンジン1及びDPF40にピッチ方向(図1の矢印方向b)の揺れとして伝播される。このとき、DPF40は、シリンダヘッド4の上部におけるクランク軸2の出力軸部2A側から前方側に離間する前端部側に配設されているため、ディーゼルエンジン1以上にDPF40がピッチ方向に大きく揺れ動く現象が発生する。
【0029】
そこで、本件発明のDPF40の支持構造は、シリンダヘッド4の給気側の配置構成を利用した合理的な改造で上述のピッチ方向の振動対策を講じたものであり、以下にそれの具体的構造について詳述する。
図3図8に示すように、DPF40の排気ガス浄化ケース41をシリンダヘッド4及び吸気マニホールド6に支持させ、且つ、その支持位置よりもクランク軸2の回転軸芯方向に偏位する吸気コレクタ51に支持させる支持機構60が設けられている。この支持機構60は、排気ガス浄化ケース41をシリンダヘッド4及び吸気マニホールド6に支持させる第1支持具61と、排気ガス浄化ケース41を吸気コレクタ51に支持させる第2支持具62から構成されている。
さらに、第1支持具61は、排気ガス浄化ケース41における吸気マニホールド6側の部位をシリンダヘッド4及び吸気マニホールド6に固定する第1ブラケット70と、排気ガス浄化ケース41における排気マニホールド7側の部位をシリンダヘッド4に固定する固定バンド90から構成されている。
また、第2支持具62は、第1ブラケット70と吸気コレクタ51とにわたって架設される第2ブラケット80から構成されている。
【0030】
第1ブラケット70は、図5図7に示すように、排気ガス浄化ケース41の分割補強フランジ板50Aの背面に当接可能な前後方向に沿う鉛直姿勢の第1取付け板部71と、シリンダヘッド4の前面4aに当接可能な左右方向に沿う鉛直姿勢の第2取付け板部72と、吸気マニホールド6の前端部の上面に形成された第1取付け部65に当接可能な左右方向に沿う水平姿勢の第3取付け板部73と、を備える。
第2取付け板部72は、第1取付け板部71の前端において左右方向の内方側に直角に折り曲げ形成され、且つ、シリンダヘッド4の前面4aの左側部位に向かって斜め下方に延出されている。第3取付け板部73は、第1取付け板部71の下端において水平方向に沿って左右方向の内方側に直角に折り曲げ形成されている。
【0031】
第1ブラケット70の第1取付け板部71の上端部には、図5図7に示すように、排気ガス浄化ケース41の分割補強フランジ板50Aの連結板部50aを左右方向姿勢の第1ボルト74・ナット75で締結するための複数の第1ボルト挿通孔71aが形成されている。
本実施形態では、第1取付け板部71の第1ボルト挿通孔71aは、排気ガス浄化ケース41の分割補強フランジ板50Aの周方向の三箇所に対応する部位に形成されている。周方向中央の第1ボルト挿通孔71aに挿通される第1ボルト74は、周方向両側の第1ボルト挿通孔71aに挿通される第1ボルト74とは逆向きの内方側から挿通され、ナット75は外側から螺合される。これは、固定バンド90の支持台91の受け面91aに、DPF40の排気ガス浄化ケース41を載置した状態で、下方側の分割補強フランジ板50Aにおける周方向中央側の略「U」字状のボルト挿通孔50bを、周方向中央の第1ボルト74に対して上方から係合保持させる。これにより、DPF40の荷重が第1ブラケット70と固定バンド90の支持台91とに載置支持されるので、DPF40の固定操作を容易に行うことができる。
【0032】
第2取付け板部72の下端部には、図5図7に示すように、シリンダヘッド4の前面4aの右側部位に形成された複数のねじ孔(図示省略)に前後方向姿勢の第2ボルト76で締結するための複数の第2ボルト挿通孔72aが形成されている。
本実施形態では、第2取付け板部72の第2ボルト挿通孔72aは、三角形の頂点となる三箇所に形成されている。
【0033】
第3取付け板部73の先端部には、図4図7図8に示すように、吸気マニホールド6の第1取付け部65に形成された複数の第1ねじ孔65aに上下方向姿勢の第3ボルト77で締結するための複数の第3ボルト挿通孔73aが形成されている。
本実施形態では、第3取付け板部73の第3ボルト挿通孔73aは、前後方向に所定間隔をおいた二箇所に形成されている。
吸気マニホールド6の第1取付け部65は、図7に示すように、二本の柱状体65Aが前後方向で一体的に結合した形態に構成され、両柱状体65Aの水平な上面には、上方に開口する第1ねじ孔65aが形成されている。
【0034】
また、図7図8に示すように、第1ブラケット70の第1取付け板部71の内面と第2取付け板部72の内面とにわたる水平な補強板78が溶接等で固着されている。第1ブラケット70の第1取付け板部71の内面には、補強板78の上面に上方から当接する荷重伝達板79が、排気ガス浄化ケース41の分割補強フランジ板50Aと一緒に第1ボルト74・ナット75で共締め固定されている。そのため、荷重伝達板79における分割補強フランジ板50Aの周方向に沿った三箇所の各々には、左右方向に貫通する第4ボルト挿通孔79aが形成されている。図7に示すように、荷重伝達板79の内面における周方向両側の第4ボルト挿通孔79aに対応する部位にはナット75が溶接等で固着されている。
【0035】
上述の構成により、DPF40の荷重の一部は、第1ブラケット70の補強板78と荷重伝達板79との当接部においても支持させることができるので、第1ブラケット70の第1取付け板部71と排気ガス浄化ケース41側の分割補強フランジ板50Aとを第1ボルト74・ナット75のみで締結する場合に比して、DPF40の支持機構60を頑丈に構成することができる。
【0036】
第2ブラケット80は、図4図7図8に示すように、第1ブラケット70の第1取付け板部71の内面のうち、補強板78及び荷重伝達板79の取付け領域を除く部位に当接可能な前後方向に沿う鉛直板部81と、吸気コレクタ51の前端部の上面に突出形成された第2取付け部66の水平な上面に対して上方から当接可能な前後方向に沿う水平板部(当たり部の一例)82と、を備える。
鉛直板部81は、左右方向視において略「L」字状の輪郭形状に形成され、水平板部82は、鉛直板部81の下端において左右方向の内方側に直角に折り曲げ形成されている。
【0037】
図7に示すように、第2ブラケット80の鉛直板部81の上端部及び前端部の各々には、左右方向に貫通する第3ねじ孔81aが形成されている。鉛直板部81の第3ねじ孔81aに対応する第1ブラケット70の第1取付け板部71にも左右方向に貫通する第5ボルト挿通孔71bが形成されている。
図3図5図7に示すように、第2ブラケット80の鉛直板部81と第1ブラケット70の第1取付け板部71とは、第5ボルト挿通孔71bに挿通された左右方向姿勢の第4ボルト83を第3ねじ孔81aに螺合することにより締結されている。
【0038】
図7に示すように、第2ブラケット80の水平板部82には、上下方向に貫通する第6ボルト挿通孔82aが形成され、吸気コレクタ51の第2取付け部66には、上方に開口する第2ねじ孔66aが形成されている。
本実施形態では、水平板部82の第6ボルト挿通孔82a及び第2取付け部66の第2ねじ孔66aは前後方向の二箇所に形成されている。また、水平板部82の第6ボルト挿通孔82aは、平面視において、吸気マニホールド6側に向かって開口する略「U」字状に切欠き形成されている。
そして、第2ブラケット80の水平板部82と吸気コレクタ51の第2取付け部66とは、水平板部82の第6ボルト挿通孔82aに挿通された上下方向姿勢の第5ボルト84を第2取付け部66の第2ねじ孔66aに螺合することにより締結されている。
【0039】
固定バンド90は、図3図5図8に示すように、排気ガス浄化ケース41における排気マニホールド7側の部位を受け止め可能な円弧状の受け面91aを備えた左右方向視で略「Y」字状の支持台91と、支持台91に載置した排気ガス浄化ケース41を受け面91a側に引き寄せて締め付け固定する可撓性のバンド部材92と、を備える。
支持台91の下端部には、図7に示すように、シリンダヘッド4の左側面4bの前端側部位に形成された複数の第4ねじ孔93に左右方向姿勢の第6ボルト94で締結するための複数の第7ボルト挿通孔95が形成されている。
【0040】
支持台91の受け面91aの後方側端部には、図5図8に示すように、バンド部材92の一端部に設けた第1固定金具96のねじ軸96aが挿入される第1ねじ挿通孔97が貫通形成されている。この第1ねじ挿通孔97に挿入された第1固定金具96のねじ軸96aは、第1ねじ挿通孔97(図8参照)から下方に突出するねじ軸96aの先端側にナット96bを螺合することにより抜止め固定される。
また、支持台91の受け面91aの前方側端部には、図3図7図8に示すように、バンド部材92の他端部に設けた第2固定金具98のねじ軸98aが前方側から脱着可能な平面視略「U」の字状の第2ねじ挿通孔99(図8参照)が切欠き形成されている。この第2ねじ挿通孔99に挿入された第2固定金具98のねじ軸98aの先端側にナット98bを螺合し、このナット98bを緊締側に締め込み操作する。このナット98bの締め込み操作に伴うバンド部材92の縮径変化により、支持台91に載置した排気ガス浄化ケース41が受け面91a側に引き寄せて締め付け固定される。
【0041】
上述の如く構成されたDPF40の支持構造においては、図7図8に示すように、シリンダヘッド4の右側面4cに吸気マニホールド6が複数本のボルトで強固に固定されている。さらに、この吸気マニホールド6の外側面には吸気コレクタ51が複数本のボルトで強固に固定されている。そのため、シリンダヘッド4と吸気マニホールド6と吸気コレクタ51とは、同一の振動系に属することになる。
【0042】
また、吸気マニホールド6は、図7図8に示すように、シリンダヘッド4の右側面4cの前端近傍から後端近くまで及ぶ長さを有する。吸気コレクタ51は、吸気マニホールド6の前端からやや後方に偏位した位置から吸気マニホールド6の後端近くまで及ぶ長さを有する。そのため、図4図8に示すように、吸気マニホールド6の前端部の上面に形成された第1取付け部65は、シリンダヘッド4の前面4aよりも少し後方に位置する。吸気コレクタ51の前端部の上面に突出形成された第2取付け部66は、吸気マニホールド6の第1取付け部65よりもやや後方に偏位する配置関係にある。
【0043】
そして、支持機構60の第1支持具61の一方を構成する第1ブラケット70の第2取付け板部72は、図5図6に示すように、複数本の前後方向姿勢の第2ボルト76でシリンダヘッド4の前面4aに強固に固定される。この第1ブラケット70の第2取付け板部72とシリンダヘッド4の前面4aとの固定連結位置が、DPF40をシリンダヘッド4に支持させる第1支持位置P1になる。
シリンダヘッド4の前面4aよりも少し後方側に偏位する吸気マニホールド6の第1取付け部65には、図4図5図8に示すように、第1ブラケット70の第3取付け板部73が上方から当接し、この当接した第3取付け板部73は、複数本の上下方向姿勢の第3ボルト77で吸気マニホールド6の第1取付け部65に強固に固定される。この吸気マニホールド6の第1取付け部65と第1ブラケット70の第3取付け板部73との固定連結位置が、DPF40を吸気マニホールド6に支持させる第2支持位置P2になる。
【0044】
さらに、第1ブラケット70の第1取付け板部71には、図4図5図8に示すように、第2支持具62の第2ブラケット80の鉛直板部81が、複数本の左右方向姿勢の第4ボルト83で強固に固定される。この第2ブラケット80の水平板部82は、吸気マニホールド6の第1取付け部65よりも後方側に偏位する吸気コレクタ51の第2取付け部66に上方から当接し、この当接した水平板部82は、複数本の上下方向姿勢の第5ボルト84で吸気コレクタ51の第2取付け部66に強固に固定される。この第2ブラケット80の水平板部82と吸気コレクタ51の第2取付け部66との固定連結位置が、DPF40を吸気コレクタ51に支持させる第3支持位置P3になる。
【0045】
そして、第1ブラケット70の第1取付け板部71には、DPF40の排気ガス浄化ケース41の分割補強フランジ板50Aが、複数本の第1ボルト74・ナット75で強固に連結される。この連結状態では、DPF40の吸気マニホールド6側の部位は、シリンダヘッド4の前面4a側となる第1支持位置P1と、吸気マニホールド6の第1取付け部65側となる第2支持位置P2と、吸気コレクタ51の第2取付け部66側となる第3支持位置P3との前後方向で偏位する3点で支持される。これにより、クランク軸2の回転軸芯方向に沿ったピッチ方向での振動に対する支持強度を向上することができる。しかも、DPF40の支持機構60を振動系の異なる部材間に固定する場合に比して、支持機構60の内部応力の発生を抑制することができ、支持機構60を頑丈に構成することができる。
したがって、シリンダヘッド4の給気側の配置構成である吸気コレクタ51を利用した上述の合理的な改造により、ピッチ方向の振動によるDPF40の支持機構60の破損を抑制することができる。
【0046】
また、第1支持具61の第1ブラケット70は、DPF40における吸気マニホールド6側の部位、つまり、排気ガス浄化ケース41の分割補強フランジ板50Aと、シリンダヘッド4の前面4aと、吸気マニホールド6の第1取付け部65との三者間に設けられているので、この第1ブラケット70と吸気コレクタ51の第2取付け部66との間の架設距離は、DPF40と吸気コレクタ51との間の距離よりも短くなる。架設距離が短くなる分だけ第2支持具62を構成する第2ブラケット80の軽量化、コストの低廉化を図ることができる。
【0047】
さらに、第2支持具62の第2ブラケット80をシリンダヘッド4又は吸気マニホールド6に支持させる場合に比較して、吸気コレクタ51への負担分散によってシリンダヘッド4や吸気マニホールド6の剛性を確保することができる。
【0048】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の実施形態では、DPF40が、シリンダヘッド4の上部における駆動対象機器100用の出力軸部2A側から離間する端部側に配設されたディーゼルエンジン1について説明したが、本発明の技術は、DPF40が、シリンダヘッド4の上部における出力軸部2A側に寄った端部側に配設されたディーゼルエンジン1にも適用することができる。
【0049】
(2)上述の実施形態では、第1支持具61の第1ブラケット70と第2支持具62の第2ブラケット80とを各別に構成したが、第1ブラケット70と第2ブラケット80とを折り曲げ加工や溶接等で一体的に構成してもよい。
【0050】
(3)上述の実施形態では、第2支持具62の第2ブラケット80を、第1ブラケット70と吸気コレクタ51の第2取付け部66とにわたって架設したが、この第2ブラケット80を、DPF40と吸気コレクタ51の第2取付け部66とにわたって架設してもよい。
【0051】
[付記]
以上の通り、本発明の実施形態に係るエンジンは、排気マニホールドからの排気ガスを浄化するDPFがシリンダヘッドの上方に配設されるエンジンであって、前記DPFを前記シリンダヘッドと吸気マニホールドとに少なくとも支持させる支持機構が設けられる構成であってよい。
【0052】
上記構成において、前記DPFの前記排気マニホールド側を支持する支持台が前記シリンダヘッドに固定される構成であってよい。
【0053】
上記構成において、前記排気ガスの一部をEGRガスとして前記吸気マニホールドに還流する吸気コレクタが、前記吸気マニホールドに固定され、前記DPFを前記シリンダヘッドと前記吸気マニホールドと前記吸気コレクタとに支持させる前記支持機構が設けられる構成としてよい。
【0054】
上記構成において、前記支持機構は、前記DPFを前記シリンダヘッド及び前記吸気マニホールドに支持させる第1支持具と、前記DPFを前記吸気コレクタに支持させる第2支持具とを少なくとも含む構成であってよい。
【0055】
上記構成において、前記支持機構には、前記DPFを前記シリンダヘッドに支持させる第1支持位置と、前記DPFを前記吸気マニホールドに支持させる第2支持位置と、前記DPFを前記吸気コレクタに支持させる第3支持位置とが備えられ、前記第3支持位置は、前記第1支持位置及び前記第2支持位置に対してクランク軸の回転軸芯方向に偏位した位置に配置されている構成であってよい。
【0056】
以上のような構成によれば、振動系が同一となるシリンダヘッド及び吸気マニホールドに支持させる支持機構によってDPFを支持することができるので、振動に対する支持強度を向上することができる。しかも、DPFの支持機構を振動系の異なる部材間に固定する場合に比して、支持機構の内部応力の発生を抑制することができ、支持機構を頑丈に構成することができる。
【符号の説明】
【0057】
2 クランク軸
2A 出力軸部
4 シリンダヘッド
6 吸気マニホールド
7 排気マニホールド
40 DPF
51 吸気コレクタ
60 支持機構
61 第1支持具
62 第2支持具
66 取付け部(第2取付け部)
70 第1ブラケット
80 第2ブラケット
82 当たり部(水平板部)
84 ボルト(第5ボルト)
100 駆動対象機器
P1 第1支持位置
P2 第2支持位置
P3 第3支持位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8