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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181469
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20231214BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20231214BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20231214BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20231214BHJP
   H10B 41/70 20230101ALI20231214BHJP
   H10B 12/00 20230101ALI20231214BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
H01L29/78 613Z
H01L27/088 E
H01L27/088 331E
H01L27/146 C
H10B41/70
H10B12/00 801
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188128
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2022162468の分割
【原出願日】2014-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2013106284
(32)【優先日】2013-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2013147191
(32)【優先日】2013-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2013196300
(32)【優先日】2013-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014087067
(32)【優先日】2014-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】花岡 一哉
(72)【発明者】
【氏名】松林 大介
(72)【発明者】
【氏名】小林 由幸
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】松田 慎平
(57)【要約】
【課題】微細化に伴い顕著となる電気特性の低下を抑制できる構成の半導体装置を提供す
る。
【解決手段】第1の酸化物膜と、第1の酸化物膜の上の酸化物半導体膜と、酸化物半導体
膜に接するソース電極およびドレイン電極と、酸化物半導体膜、ソース電極およびドレイ
ン電極上の第2の酸化物膜と、第2の酸化物膜上のゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜に接す
るゲート電極と、を有し、酸化物半導体膜のチャネル幅方向の上端部は、曲面を有する構
成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタ上の第2のトランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタのチャネルは、シリコンを有し、
前記第2のトランジスタの半導体層は、Inと、Gaと、Znと、を有し
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方として機能する第1の導電層の下面は前記半導体層よりも下側に配置され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの他方として機能する第2の導電層の下面は前記半導体層よりも下側に配置され、
前記第1の導電層及び前記第2の導電層の各々は、前記半導体層の上面と接し、
前記半導体層の上に設けられた第1の絶縁層を有し、
前記第2のトランジスタのゲートとして機能する第3の導電層は、前記第1の絶縁層の上方に設けられ、
前記第3の導電層の上に設けられた第2の絶縁層を有し、
前記第2の絶縁層、前記第1の導電層、前記第2の導電層上に設けられた第3の絶縁層を有し、
前記第3の絶縁層上に接して、第4の導電層が設けられ、
前記第1のトランジスタのチャネルと前記第4の絶縁層の間に設けられた、前記第1のトランジスタのゲートとして機能する第5の導電層を有し、
前記第1のトランジスタは、前記第2のトランジスタと電気的に接続され、
前記第5の導電層上に設けられた第5の絶縁層を有し、
前記第5の絶縁層の上面に接する半導体層を有する半導体装置。
【請求項2】
第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタ上の第2のトランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタのチャネルは、シリコンを有し、
前記第2のトランジスタのチャネルは、酸化物半導体を有し
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方として機能する第1の導電層の下面は前記半導体層よりも下側に配置され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの他方として機能する第2の導電層の下面は前記半導体層よりも下側に配置され、
前記第1の導電層及び前記第2の導電層の各々は、前記半導体層の上面と接し、
前記半導体層の上に設けられた第1の絶縁層を有し、
前記第2のトランジスタのゲートとして機能する第3の導電層は、前記第1の絶縁層の上方に設けられ、
前記第3の導電層の上に設けられた第2の絶縁層を有し、
前記第2の絶縁層、前記第1の導電層、前記第2の導電層上に設けられた第3の絶縁層を有し、
前記第3の絶縁層上に接して、第4の導電層が設けられ、
前記第1のトランジスタのチャネルと前記第4の絶縁層の間に設けられた、前記第1のトランジスタのゲートとして機能する第5の導電層を有し、
前記第1のトランジスタは、前記第2のトランジスタと電気的に接続され、
前記第5の導電層上に設けられた第5の絶縁層を有し、
前記第5の絶縁層の上面に接する半導体層を有する半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記第1のトランジスタのチャネルが有するシリコンは、結晶を有する半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記第3の導電層の下面は、前記半導体層の上面よりも下側に配置されている半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装
置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術
が注目されている。当該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)の
ような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体薄膜として
シリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目さ
れている。
【0004】
例えば、トランジスタの活性層として、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、およ
び亜鉛(Zn)を含む非晶質酸化物半導体を用いたトランジスタが特許文献1に開示され
ている。
【0005】
また、酸化物半導体膜を、積層構造とすることで、キャリアの移動度を向上させる技術
が特許文献2、特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-165528号公報
【特許文献2】特開2011-124360号公報
【特許文献3】特開2011-138934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、回路の高集積化においてトランジスタの微細化は必須技術である。一方、ト
ランジスタを微細化すると、オン電流、しきい値電圧、S値(サブスレッショルド値)な
どのトランジスタの電気特性が悪化することが知られている。
【0008】
例えば、シリコンを用いたトランジスタでは、チャネル長を短縮すると、サブスレッシ
ョルド係数(S値)の劣化、しきい値電圧がマイナス側へ変動等の短チャネル効果が生じ
ることが知られている。
【0009】
一方、酸化物半導体を用いたトランジスタは、電子を多数キャリアとする蓄積層をチャ
ネルとするトランジスタ(蓄積型トランジスタともいう)であるため、シリコン等の反転
層をチャネルとするトランジスタ(反転型トランジスタともいう)と比較して短チャネル
でのDIBL(Drain-Induced Barrier Lowering)が起
こりにくい。酸化物半導体を用いたトランジスタでは、短チャネル効果に対する耐性を有
すると言い換えることもできる。
【0010】
また、トランジスタのチャネル幅を縮小すると、オン電流の低下が懸念される。オン電
流の向上を目的として、活性層の側面にもチャネルが形成されるよう活性層を厚膜化する
方法も知られているが、チャネルが形成される表面積が増大することで、チャネル形成領
域とゲート絶縁膜との界面にキャリアの散乱が増加するため、十分なオン電流の向上を見
込むのは容易ではない。
【0011】
したがって、本発明の一態様は、微細化に伴い顕著となる電気特性の低下を抑制できる
構成の半導体装置を提供することを目的の一つとする。または、集積度の高い半導体装置
を提供することを目的の一つとする。または、オン電流の悪化を低減した半導体装置を提
供することを目的の一つとする。または、低消費電力の半導体装置を提供することを目的
の一つとする。または、信頼性の高い半導体装置を提供することを目的の一つとする。ま
たは、電源が遮断されてもデータが保持される半導体装置を提供することを目的の一つと
する。または、新規な半導体装置を提供することを目的の一つとする。
【0012】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の
一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課
題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、
図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、積層された酸化物半導体膜を有する半導体装置に関する。
【0014】
本発明の一態様は、第1の酸化物膜と、第1の酸化物膜の上の酸化物半導体膜と、酸化
物半導体膜に接するソース電極およびドレイン電極と、酸化物半導体膜、ソース電極およ
びドレイン電極上の第2の酸化物膜と、第2の酸化物膜上のゲート絶縁膜と、ゲート絶縁
膜に接するゲート電極と、を有し、酸化物半導体膜のチャネル幅方向の上端部は、曲面を
有することを特徴とする半導体装置である。
【0015】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」などの序数詞は、構成要素の混同を避け
るために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0016】
また、上記構成において、酸化物半導体膜の上面は平坦部を有していてもよい。
【0017】
また、上記構成において、酸化物半導体膜のチャネル幅方向の端部の曲率半径r(端部
が2つの場合は、各曲率半径のr、r)が、0より大きく、チャネル幅Wの半分以下
(0<r(または、r、r)≦W/2)である。
【0018】
また、上記構成において、第2の酸化物膜の上端部はゲート絶縁膜の下端部と一致し、
ゲート絶縁膜の上端部はゲート電極の下端部と一致してもよい。
【0019】
また、上記構成において、第1の酸化物膜および第2の酸化物膜は、酸化物半導体膜よ
りも伝導帯下端のエネルギーが0.05eV以上2eV以下の範囲で真空準位に近いこと
が好ましい。
【0020】
また、上記構成において、第1の酸化物膜、酸化物半導体膜、ソース電極、ドレイン電
極、第2の酸化物膜、ゲート絶縁膜およびゲート電極に接して覆うバリア膜を有していて
もよい。
【0021】
また、上記構成において、バリア膜を介して第1の酸化物膜、酸化物半導体膜、ソース
電極およびドレイン電極の側壁に設けられた第1の側壁絶縁膜を有していてもよい。
【0022】
また、上記構成において、バリア膜を介して第2の酸化物膜、ゲート絶縁膜およびゲー
ト電極の側壁に設けられた第2の側壁絶縁膜を有していてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様を用いることにより、微細化に伴い顕著となる電気特性の低下を抑制で
きる構成の半導体装置を提供することができる。または、集積度の高い半導体装置を提供
することができる。または、オン電流の悪化を低減した半導体装置を提供することができ
る。または、低消費電力の半導体装置を提供することができる。または、信頼性の高い半
導体装置を提供することができる。または、電源が遮断されてもデータが保持される半導
体装置を提供することができる。または、新規な半導体装置を提供することができる。な
お、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態
様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、
明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、
請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】トランジスタを説明する上面図および断面図。
図2】多層膜のバンド構造を説明する図。
図3】トランジスタの拡大断面図。
図4】トランジスタのチャネル幅方向の断面図。
図5】トランジスタのチャネル幅方向の断面図。
図6】トランジスタを説明する上面図および断面図。
図7】トランジスタを説明する断面図。
図8】トランジスタの作製方法を説明する図。
図9】トランジスタの作製方法を説明する図。
図10】実施例で作製したトランジスタの断面STEM写真を説明する図。
図11】実施例で作製したトランジスタの電気特性評価を説明する図。
図12】実施例で作製したトランジスタの電気特性評価を説明する図。
図13】実施例で作製したトランジスタの電気特性評価を説明する図。
図14】トランジスタを説明する上面図および断面図。
図15】トランジスタの作製方法を説明する図。
図16】トランジスタの作製方法を説明する図。
図17】トランジスタの作製方法を説明する図。
図18】トランジスタの作製方法を説明する図。
図19】本発明の一態様の半導体装置を用いたインバータを説明する図。
図20】実施の形態に係る、半導体装置の回路図。
図21】実施の形態に係る、半導体装置のブロック図。
図22】実施の形態に係る、記憶装置を説明する回路図。
図23】実施の形態に係る、電子機器。
図24】半導体装置の一例を説明する等価回路図。
図25】トランジスタのチャネル幅方向の断面図。
図26】トランジスタのチャネル長方向の断面図。
図27】トランジスタのI-V特性を説明する図。
図28】トランジスタのI-V特性を説明する図。
図29】トランジスタのI-V特性を説明する図。
図30】トランジスタの温度依存性を説明する図。
図31】トランジスタの温度依存性を説明する図。
図32】トランジスタの信頼性を説明する図。
図33】トランジスタの信頼性を説明する図。
図34】トランジスタの電気特性を説明する図。
図35】トランジスタの電気特性を説明する図。
図36】トランジスタ構造の模式図。
図37】酸化物半導体膜のナノビーム電子回折パターンを示す図。
図38】透過電子回折測定装置の一例を示す図。
図39】透過電子回折測定による構造解析の一例を示す図。
図40】トランジスタの温度依存性を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定
されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に
変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実
施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構
成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共
通して用い、その繰り返しの説明は省略することがある。
【0026】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置について図面を用いて説明する。
【0027】
図1(A)乃至図1(C)は、本発明の一態様のトランジスタの上面図および断面図で
ある。図1(A)は上面図であり、図1(A)に示す一点鎖線A-Bの断面が図1(B)
、一点鎖線C-Dの断面が図1(C)に相当する。なお、図1(A)の上面図では、図の
明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。また、一点鎖線A-B方向をチャネル
長方向、一点鎖線C-D方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。また、チャネル長
とは、チャネル形成領域におけるキャリアが流れる方向の長さをいう。そして、チャネル
幅とは、チャネル長方向と垂直方向のチャネル形成領域の長さをいう。
【0028】
図1(A)乃至図1(C)に示すトランジスタ450は、基板400上の下地絶縁膜4
02と、下地絶縁膜402上の第1の酸化物膜404aおよび酸化物半導体膜404bと
、第1の酸化物膜404aおよび酸化物半導体膜404b上のソース電極406aおよび
ドレイン電極406bと、酸化物半導体膜404b、ソース電極406aおよびドレイン
電極406b上の第2の酸化物膜404cと、第2の酸化物膜404c上のゲート絶縁膜
408と、ゲート絶縁膜408上のゲート電極410と、ソース電極406a、ドレイン
電極406b、およびゲート電極410上の酸化物絶縁膜412と、を有する。また、第
1の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404b、および第2の酸化物膜404cを総称
して多層膜404と呼称する。
【0029】
また、トランジスタのチャネル長およびチャネル幅を微細化すると、レジストマスクを
用いて加工される電極や半導体膜等の端部が丸みを帯びる(曲面を有する)場合がある。
本実施の形態の酸化物半導体膜404bの形状は、断面から見て上端部が丸みを帯び、半
円形状になっている。このような構成になることで、酸化物半導体膜404b上に形成さ
れるゲート絶縁膜408、ゲート電極410および酸化物絶縁膜412の被覆性を向上さ
せることができる。また、ソース電極406aおよびドレイン電極406bの端部に生じ
る恐れのある電界集中を緩和することができ、トランジスタの劣化を抑制することができ
る。
【0030】
なお、酸化物半導体膜404bは、曲率半径がrである接触円からなる曲率を有する。
なお、曲率半径とは、曲線の接触円の半径と等しい。また、酸化物半導体膜404bは、
異なる接触円からなる曲率を二カ所以上有しても構わない。
【0031】
なお、具体的には、図1に示す酸化物半導体膜404bは、チャネル幅方向の上端部の
曲率半径r、曲率半径rを有する上端部とチャネル幅W離れたチャネル幅方向の上端
部の曲率半径rが、0より大きく、チャネル幅Wの半分以下(0<r、r≦W/2
)であると好ましい。また、図6(C)に示すように、チャネル幅方向において、酸化物
半導体膜404bの上面に平坦部がない場合、上端部の曲率半径rが、0より大きく、
チャネル幅Wの半分以下(0<r≦W/2)であると好ましい。
【0032】
なお、トランジスタの「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタ
を採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わること
がある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」という用語は、入れ
替えて用いることができるものとする。
【0033】
基板400は、単なる支持材料に限らず、他のトランジスタなどのデバイスが形成され
た基板であってもよい。この場合、トランジスタ450のゲート電極410、ソース電極
406a、およびドレイン電極406bの少なくとも一つは、上記の他のデバイスと電気
的に接続されていてもよい。
【0034】
下地絶縁膜402は、基板400からの不純物の拡散を防止する役割を有するほか、多
層膜404に酸素を供給する役割を担うことができる。したがって、下地絶縁膜402は
酸素を含む絶縁膜であることが好ましく、化学量論組成よりも多い酸素を含む絶縁膜であ
ることがより好ましい。また、上述のように基板400が他のデバイスが形成された基板
である場合、下地絶縁膜402は、層間絶縁膜としての機能も有する。その場合、下地絶
縁膜402の表面には凹凸が形成されるため、表面が平坦になるようにCMP(Chem
ical Mechanical Polishing)法等で平坦化処理を行うことが
好ましい。
【0035】
また、下地絶縁膜402には、酸素を供給することのできる酸化アルミニウム膜を用い
ることが好ましい。該酸化アルミニウム膜は、酸素を供給することができるだけでなく、
水素、水、および酸素のブロッキング効果を有する。なお、酸化アルミニウムと酸化シリ
コンを混ぜたターゲットで成膜した酸化シリコンが含まれている酸化アルミニウム膜を用
いることもできる。この際、酸化シリコンの含有量は、0.1wt%以上30wt%以下
であると好ましい。
【0036】
また、トランジスタ450のチャネルが形成される領域において多層膜404は、基板
400側から第1の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404b、第2の酸化物膜404
cが積層された構造を有している。また、酸化物半導体膜404bは、第1の酸化物膜4
04aおよび第2の酸化物膜404cで取り囲まれている構造となっている。また、図1
(C)に示すようにゲート電極410は、チャネル幅方向において、酸化物半導体膜40
4bを電気的に取り囲む構造になっている。
【0037】
ここで、一例としては、酸化物半導体膜404bには、第1の酸化物膜404aおよび
第2の酸化物膜404cよりも電子親和力(真空準位から伝導帯下端までのエネルギー)
が大きい酸化物半導体を用いる。電子親和力は、真空準位と価電子帯上端とのエネルギー
差(イオン化ポテンシャル)から、伝導帯下端と価電子帯上端とのエネルギー差(エネル
ギーギャップ)を差し引いた値として求めることができる。
【0038】
第1の酸化物膜404aおよび第2の酸化物膜404cは、酸化物半導体膜404bを
構成する金属元素を一種以上含み、例えば、伝導帯下端のエネルギーが酸化物半導体膜4
04bよりも、0.05eV、0.07eV、0.1eV、0.15eVのいずれか以上
であって、2eV、1eV、0.5eV、0.4eVのいずれか以下の範囲で真空準位に
近い酸化物半導体で形成することが好ましい。
【0039】
このような構造において、ゲート電極410に電界を印加すると、多層膜404のうち
、伝導帯下端のエネルギーが最も小さい酸化物半導体膜404bにチャネルが形成される
。すなわち、酸化物半導体膜404bとゲート絶縁膜408との間に第2の酸化物膜40
4cが形成されていることよって、トランジスタのチャネルがゲート絶縁膜と接しない構
造となる。
【0040】
また、第1の酸化物膜404aは、酸化物半導体膜404bを構成する金属元素を一種
以上含んで構成されるため、酸化物半導体膜404bと下地絶縁膜402が接した場合の
界面と比較して、酸化物半導体膜404bと第1の酸化物膜404aの界面に界面準位を
形成しにくくなる。該界面準位はチャネルを形成することがあるため、トランジスタのし
きい値電圧が変動することがある。したがって、第1の酸化物膜404aを設けることに
より、トランジスタのしきい値電圧などの電気特性のばらつきを低減することができる。
また、当該トランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0041】
また、第2の酸化物膜404cは、酸化物半導体膜404bを構成する金属元素を一種
以上含んで構成されるため、酸化物半導体膜404bとゲート絶縁膜408が接した場合
の界面と比較して、酸化物半導体膜404bと第2の酸化物膜404cとの界面ではキャ
リアの散乱が起こりにくくなる。したがって、第2の酸化物膜404cを設けることによ
り、トランジスタの電界効果移動度を高くすることができる。
【0042】
第1の酸化物膜404aおよび第2の酸化物膜404cには、例えば、Al、Ti、G
a、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHfを酸化物半導体膜404bよりも高い
原子数比で含む材料を用いることができる。具体的には、当該原子数比を1.5倍以上、
好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上とする。前述の元素は酸素と強く結合す
るため、酸素欠損が酸化物半導体膜に生じることを抑制する機能を有する。すなわち、第
1の酸化物膜404aおよび第2の酸化物膜404cは、酸化物半導体膜404bよりも
酸素欠損が生じにくいということができる。
【0043】
なお、第1の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404b、第2の酸化物膜404cが
、少なくともインジウム、亜鉛およびM(Al、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、L
a、CeまたはHf等の金属)を含むIn-M-Zn酸化物であるとき、第1の酸化物膜
404aをIn:M:Zn=x:y:z[原子数比]、酸化物半導体膜404bを
In:M:Zn=x:y:z[原子数比]、第2の酸化物膜404cをIn:M:
Zn=x3:3:[原子数比]とすると、y/xおよびy/xがy/x
よりも大きくなることが好ましい。y/xおよびy/xはy/xよりも1
.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上とする。このとき、酸化物
半導体膜404bにおいて、yがx以上であるとトランジスタの電気特性を安定させ
ることができる。ただし、yがxの3倍以上になると、トランジスタの電界効果移動
度が低下してしまうため、yはxの3倍未満であることが好ましい。
【0044】
第1の酸化物膜404aおよび第2の酸化物膜404cのZnおよびOを除いてのIn
とMの原子数比率は、好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic
%以上、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%以上
とする。また、酸化物半導体膜404bのZnおよびOを除いてのInとMの原子数比率
は、好ましくはInが25atomic%以上、Mが75atomic%未満、さらに好
ましくはInが34atomic%以上、Mが66atomic%未満とする。
【0045】
第1の酸化物膜404aおよび第2の酸化物膜404cの厚さは、3nm以上100n
m以下、好ましくは3nm以上50nm以下とする。また、酸化物半導体膜404bの厚
さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下、さらに好まし
くは3nm以上50nm以下とする。
【0046】
第1の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404b、第2の酸化物膜404cには、例
えば、インジウム、亜鉛およびガリウムを含んだ酸化物半導体を用いることができる。特
に、酸化物半導体膜404bにインジウムを含ませると、キャリア移動度が高くなるため
好ましい。
【0047】
なお、酸化物半導体膜をチャネルとするトランジスタに安定した電気特性を付与するた
めには、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低減し、酸化物半導体膜を真性または実質的に
真性にすることが有効である。ここで、実質的に真性とは、酸化物半導体膜のキャリア密
度が、1×1017/cm未満であること、好ましくは1×1015/cm未満であ
ること、さらに好ましくは1×1013/cm未満であることを指す。
【0048】
また、酸化物半導体膜中の水素の一部は、酸素欠損に捕獲され、酸化物半導体膜をn型
化する。よって、水素が多量に含まれた酸化物半導体膜は、高純度真性化された酸化物半
導体膜よりもフェルミ準位(Ef)が伝導帯下端(Ec)に近い位置にあり、トランジス
タの電界効果移動度の向上が期待される。酸化物半導体膜を真性または実質的に真性とす
ると、酸化物半導体膜のフェルミエネルギーはミッドギャップ(酸化物半導体膜のエネル
ギーギャップの中間のエネルギー)と一致する、または限りなく近づく。この場合、酸化
物半導体膜に含まれるキャリア数の減少により、電界効果移動度の低下が懸念される。
【0049】
しかしながら、本発明の一態様のトランジスタにおいては、酸化物半導体膜に垂直方向
からのゲート電界に加えて、側面方向からのゲート電界が印加される。すなわち、酸化物
半導体膜の全体的にゲート電界が印加させることとなり、電流は酸化物半導体膜全体を流
れる。これによって、高純度真性化による電気特性の変動の抑制を達成しつつ、トランジ
スタの電界効果移動度の向上を図ることが可能となる。
【0050】
また、酸化物半導体膜において、水素、窒素、炭素、シリコン、および主成分以外の金
属元素は不純物となる。例えば、水素および窒素はドナー準位の形成に寄与し、キャリア
密度を増大させてしまう。また、シリコンは酸化物半導体膜中で不純物準位の形成に寄与
する。当該不純物準位はトラップとなり、トランジスタの電気特性を劣化させることがあ
る。したがって、第1の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404b、第2の酸化物膜4
04cの膜中や、それぞれの界面において不純物濃度を低減させることが好ましい。
【0051】
酸化物半導体膜を真性または実質的に真性とするためには、SIMS(Seconda
ry Ion Mass Spectrometry)分析において、例えば、酸化物半
導体膜のある深さにおいて、または、酸化物半導体膜のある領域において、シリコン濃度
を1×1019atoms/cm未満、好ましくは5×1018atoms/cm
満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満とする部分を有していること
が好ましい。また、水素濃度は、例えば、酸化物半導体膜のある深さにおいて、または、
酸化物半導体膜のある領域において、2×1020atoms/cm以下、好ましくは
5×1019atoms/cm以下、より好ましくは1×1019atoms/cm
以下、さらに好ましくは5×1018atoms/cm以下とする部分を有しているこ
とが好ましい。また、窒素濃度は、例えば、酸化物半導体膜のある深さにおいて、または
、酸化物半導体膜のある領域において、5×1019atoms/cm未満、好ましく
は5×1018atoms/cm以下、より好ましくは1×1018atoms/cm
以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm以下とする部分を有している
ことが好ましい。
【0052】
また、酸化物半導体膜が結晶を含む場合、シリコンや炭素が高濃度で含まれると、酸化
物半導体膜の結晶性を低下させることがある。酸化物半導体膜の結晶性を低下させないた
めには、例えば、酸化物半導体膜のある深さにおいて、または、酸化物半導体膜のある領
域において、シリコン濃度を1×1019atoms/cm未満、好ましくは5×10
18atoms/cm未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満と
する部分を有していればよい。また、例えば、酸化物半導体膜のある深さにおいて、また
は、酸化物半導体膜のある領域において、炭素濃度を1×1019atoms/cm
満、好ましくは5×1018atoms/cm未満、さらに好ましくは1×1018
toms/cm未満とする部分を有していればよい。
【0053】
また、上述のように高純度化された酸化物半導体膜をチャネル形成領域に用いたトラン
ジスタのオフ電流は極めて小さい。例えば、ソースとドレインとの間の電圧を0.1V、
5V、または、10V程度とした場合に、トランジスタのチャネル幅で規格化したオフ電
流を数yA/μm乃至数zA/μmにまで低減することが可能となる。
【0054】
なお、トランジスタのゲート絶縁膜としては、シリコンを含む絶縁膜が多く用いられる
ため、上記理由により多層膜のチャネルとなる領域は、本発明の一態様のトランジスタの
ようにゲート絶縁膜と接しない構造が好ましいということができる。また、ゲート絶縁膜
と多層膜との界面にチャネルが形成される場合、該界面でキャリアの散乱が起こり、トラ
ンジスタの電界効果移動度が低くなる場合がある。このような観点からも、多層膜のチャ
ネルとなる領域はゲート絶縁膜から離すことが好ましいといえる。
【0055】
したがって、多層膜404を第1の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404b、第2
の酸化物膜404cの積層構造とすることで、酸化物半導体膜404bにチャネルを形成
することができ、高い電界効果移動度および安定した電気特性を有したトランジスタを形
成することができる。
【0056】
次に、多層膜404のバンド構造を説明する。バンド構造の解析は、第1の酸化物膜4
04aおよび第2の酸化物膜404cに相当する層としてエネルギーギャップが3.5e
VであるIn-Ga-Zn酸化物、酸化物半導体膜404bに相当する層としてエネルギ
ーギャップが3.15eVであるIn-Ga-Zn酸化物を用い、多層膜404に相当す
る積層を作製して行っている。
【0057】
第1の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404b、第2の酸化物膜404cの膜厚は
それぞれ10nmとし、エネルギーギャップは、分光エリプソメータ(HORIBA J
OBIN YVON社 UT-300)を用いて測定した。また、真空準位と価電子帯上
端のエネルギー差は、紫外線光電子分光分析(UPS:Ultraviolet Pho
toelectron Spectroscopy)装置(PHI社 VersaPro
be)を用いて測定した。
【0058】
図2(A)は、真空準位と価電子帯上端のエネルギー差と、各層のエネルギーギャップ
との差分として算出される真空準位と伝導帯下端のエネルギー差(電子親和力)から模式
的に示されるバンド構造の一部である。図2(A)は、第1の酸化物膜404aおよび第
2の酸化物膜404cと接して、酸化シリコン膜を設けた場合のバンド図である。ここで
、Evは真空準位のエネルギー、EcI1およびEcI2は酸化シリコン膜の伝導帯下端
のエネルギー、EcS1は第1の酸化物膜404aの伝導帯下端のエネルギー、EcS2
は酸化物半導体膜404bの伝導帯下端のエネルギー、EcS3は第2の酸化物膜404
cの伝導帯下端のエネルギーである。
【0059】
図2(A)に示すように、第1の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404b、第2の
酸化物膜404cにおいて、伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化する。これは、第1
の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404b、第2の酸化物膜404cの組成が近似す
ることにより、酸素が相互に拡散しやすい点からも理解される。したがって、第1の酸化
物膜404a、酸化物半導体膜404b、第2の酸化物膜404cは組成が異なる層の積
層体ではあるが、物性的に連続であるということもでき、図面において、当該積層体のそ
れぞれの界面は点線で表している。
【0060】
主成分を共通として積層された多層膜404は、各層を単に積層するのではなく連続接
合(ここでは特に伝導帯下端のエネルギーが各層の間で連続的に変化するU字型の井戸構
造(U Shape Well))が形成されるように作製する。すなわち、各層の界面
にトラップ中心や再結合中心のような欠陥準位を形成するような不純物が存在しないよう
に積層構造を形成する。仮に、積層された多層膜の層間に不純物が混在していると、エネ
ルギーバンドの連続性が失われ、界面でキャリアがトラップあるいは再結合により消滅し
てしまう。
【0061】
なお、図2(A)では、EcS1とEcS3が同様である場合について示したが、それ
ぞれが異なっていてもよい。例えば、EcS3よりもEcS1が高いエネルギーを有する
場合、バンド構造の一部は、図2(B)のように示される。
【0062】
例えば、EcS1=EcS3である場合は、第1の酸化物膜404aおよび第2の酸化
物膜404cにIn:Ga:Zn=1:3:2、1:3:3、1:3:4、1:3:6、
1:4:5、1:6:4または1:9:6(原子数比)、酸化物半導体膜404bにIn
:Ga:Zn=1:1:1または3:1:2(原子数比)のIn-Ga-Zn酸化物など
を用いることができる。また、EcS1>EcS3である場合は、第1の酸化物膜404
aにIn:Ga:Zn=1:6:4または1:9:6(原子数比)、酸化物半導体膜40
4bにIn:Ga:Zn=1:1:1、1:1:1.2、1:1:1.5または3:1:
2(原子数比)、第2の酸化物膜404cにIn:Ga:Zn=1:3:2、1:3:3
、1:3:4(原子数比)のIn-Ga-Zn酸化物などを用いることができる。
【0063】
図2(A)、図2(B)より、多層膜404における酸化物半導体膜404bがウェル
(井戸)となり、多層膜404を用いたトランジスタにおいて、チャネルが酸化物半導体
膜404bに形成されることがわかる。なお、多層膜404は伝導帯下端のエネルギーが
連続的に変化しているため、U字型井戸とも呼ぶことができる。また、このような構成で
形成されたチャネルを埋め込みチャネルということもできる。
【0064】
なお、第1の酸化物膜404aおよび第2の酸化物膜404cと、酸化シリコン膜など
の絶縁膜との界面近傍には、不純物や欠陥に起因したトラップ準位が形成され得る。第1
の酸化物膜404aおよび第2の酸化物膜404cがあることにより、酸化物半導体膜4
04bと当該トラップ準位とを遠ざけることができる。ただし、EcS1またはEcS3
と、EcS2とのエネルギー差が小さい場合、酸化物半導体膜404bの電子が該エネル
ギー差を越えてトラップ準位に達することがある。電子がトラップ準位に捕獲されること
で、絶縁膜界面にマイナスの固定電荷が生じ、トランジスタのしきい値電圧はプラス方向
にシフトしてしまう。
【0065】
したがって、トランジスタのしきい値電圧の変動を低減するには、EcS1およびEc
S3と、EcS2との間にエネルギー差を設けることが必要となる。それぞれの当該エネ
ルギー差は、0.1eV以上が好ましく、0.15eV以上がより好ましい。
【0066】
なお、第1の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404b、第2の酸化物膜404cに
は、結晶部が含まれることが好ましい。特にc軸に配向した結晶を用いることでトランジ
スタに安定した電気特性を付与することができる。
【0067】
なお、多層膜404にIn-Ga-Zn酸化物を用いる場合は、Inのゲート絶縁膜へ
の拡散を防ぐために、第2の酸化物膜404cは酸化物半導体膜404bよりもInが少
ない組成とすることが好ましい。
【0068】
ソース電極406aおよびドレイン電極406bには、酸素と結合し易い導電材料を用
いることが好ましい。例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wなどを用いるこ
とができる。上記材料において、特に酸素と結合し易いTiや、後のプロセス温度が比較
的高くできることなどから、融点の高いWを用いることがより好ましい。なお、酸素と結
合し易い導電材料には、酸素が拡散し易い材料も含まれる。
【0069】
酸素と結合し易い導電材料と多層膜を接触させると、多層膜中の酸素が、酸素と結合し
易い導電材料側に拡散する現象が起こる。当該現象は、温度が高いほど顕著に起こる。ト
ランジスタの作製工程には、いくつかの加熱工程があることから、上記現象により、多層
膜のソース電極またはドレイン電極と接触した近傍の領域に酸素欠損が発生し、膜中に僅
かに含まれる水素と当該酸素欠損が結合することにより当該領域はn型化する。したがっ
て、n型化した当該領域はトランジスタのソースまたはドレインとして作用させることが
できる。
【0070】
上記n型化した領域は、図3のトランジスタの拡大断面図(チャネル長方向の断面)に
示される。酸化物半導体膜404b中に点線で示される境界435は、真性半導体領域と
n型半導体領域の境界であり、酸化物半導体膜404bにおけるソース電極406aまた
はドレイン電極406bと接触した近傍の領域がn型化した領域となる。なお、境界43
5は模式的に示したものであり、実際には明瞭ではない場合がある。また、図3では、境
界435が酸化物半導体膜404b中で横方向に延びているように位置している状態を示
したが、酸化物半導体膜404bのソース電極406aまたはドレイン電極406bと第
1の酸化物膜404aとの間に挟まれた領域の膜厚方向全体がn型化することもある。ま
た、図示はしていないが、第1の酸化物膜404aまたは第2の酸化物膜404cにもn
型化領域が形成される場合もある。
【0071】
なお、チャネル長が極短いトランジスタを形成する場合、上記酸素欠損の発生によって
n型化した領域がトランジスタのチャネル長方向に延在してしまうことがある。この場合
、トランジスタの電気特性には、しきい値電圧のシフトやゲート電圧でオンオフの制御が
できない状態(導通状態)が現れる。そのため、チャネル長が極短いトランジスタを形成
する場合は、ソース電極およびドレイン電極に酸素と結合しやすい導電材料を用いること
が必ずしも好ましいとはいえない。
【0072】
このような場合にはソース電極406aおよびドレイン電極406bには、上述した材
料よりも酸素と結合しにくい導電材料を用いることが好ましい。当該導電材料としては、
例えば、窒化タンタル、窒化チタン、またはルテニウムを含む材料などを用いることがで
きる。なお、当該導電材料が酸化物半導体膜404bと接触する場合は、ソース電極40
6aおよびドレイン電極406bを、当該導電材料と前述した酸素と結合しやすい導電材
料を積層する構成としてもよい。
【0073】
ゲート絶縁膜408には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化
窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸
化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよ
び酸化タンタルを一種以上含む絶縁膜を用いることができる。また、ゲート絶縁膜408
は上記材料の積層であってもよい。
【0074】
ゲート電極410は、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Mo、Ru、
Ag、TaおよびWなどの導電膜を用いることができる。また、当該ゲート電極は、上記
材料の積層であってもよい。また、ゲート電極410には、窒素を含んだ導電膜を用いて
もよい。
【0075】
ゲート絶縁膜408、およびゲート電極410上には酸化物絶縁膜412が形成されて
いてもよい。当該酸化物絶縁膜412には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化
シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲ
ルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化
ハフニウムおよび酸化タンタルを一種以上含む絶縁膜を用いることができる。また、当該
酸化物絶縁膜412は上記材料の積層であってもよい。
【0076】
ここで、酸化物絶縁膜412は過剰酸素を有することが好ましい。過剰酸素を含む酸化
物絶縁膜とは、加熱処理などによって酸素を放出することができる酸化物絶縁膜をいう。
好ましくは、昇温脱離ガス分光法分析にて、酸素原子に換算しての酸素の放出量が1.0
×1019atoms/cm以上である膜とする。当該酸化物絶縁膜から放出される酸
素はゲート絶縁膜408を経由して多層膜404のチャネル形成領域に拡散させることが
できることから、チャネル形成領域に酸素欠損が形成された場合においても酸素を補填す
ることができる。したがって、安定したトランジスタの電気特性を得ることができる。
【0077】
また、酸化物絶縁膜412に酸化アルミニウム膜を用いることが好ましい。該酸化アル
ミニウム膜は、酸素を供給することができるだけでなく、水素、水、および酸素のブロッ
キング効果を有する。なお、酸化アルミニウムと酸化シリコンを混ぜたターゲットで成膜
した酸化シリコンが含まれている酸化アルミニウム膜を用いることもできる。この際、酸
化シリコンの含有量は、0.1wt%以上30wt%以下であると好ましい。
【0078】
半導体装置を高集積化するにはトランジスタの微細化が必須である。一方、トランジス
タの微細化によりトランジスタの電気特性が悪化することが知られており、特にチャネル
幅の縮小に直接起因するオン電流の低下は著しい。
【0079】
図4(A)、図4(B)は従来における酸化物半導体膜を用いたトランジスタのチャネ
ル幅方向の断面図である。当該トランジスタは、基板210上に下地絶縁膜220、当該
下地絶縁膜上に形成された酸化物半導体膜230、当該酸化物半導体膜上に形成されたゲ
ート絶縁膜260、およびゲート電極270を有する。
【0080】
図4(A)は、酸化物半導体膜230の膜厚よりもチャネル幅方向における当該酸化物
半導体膜の上面の長さ(W)が十分に大きいトランジスタである。この場合、チャネル
幅はWと定義して差し支えない。
【0081】
ゲート電極270から酸化物半導体膜230の側面に印加される電界は酸化物半導体膜
230の全体には及ばないため、酸化物半導体膜230の側面におけるチャネルの形成は
不十分となる。また、酸化物半導体膜230の膜厚に相当する側面の長さ(WS1、W
)は、その上面の長さ(W)に対する比率が小さいため、チャネルが形成されたとし
てもその寄与度は小さく見積もられる。したがって、Wが小さいほど、すなわち微細化
するほどオン電流は低下するといえる。
【0082】
また、図4(B)に示すように、Wが酸化物半導体膜230の膜厚と同じ程度にまで
縮小されたトランジスタの場合、ゲート電極270から酸化物半導体膜230の側面に印
加される電界は酸化物半導体膜230の全体に及ぶため、酸化物半導体膜230の側面に
もチャネルが形成される。よって、酸化物半導体膜230の膜厚を厚くすることなどによ
りオン電流の向上が期待されるが、従来のトランジスタにおいては、チャネル形成層(酸
化物半導体膜230)とゲート絶縁膜260との界面にキャリアの散乱が生じるため、オ
ン電流は十分には向上しない。
【0083】
また、成膜方法によっては酸化物半導体膜230の側面を覆うゲート絶縁膜260の膜
厚(TGI2)は、当該酸化物半導体膜の上面を覆う当該ゲート絶縁膜の膜厚(TGI1
)よりも薄くなりやすい。そのため、ゲート絶縁膜260に局所的に絶縁耐圧が低い部分
が生じ、トランジスタの信頼性を低下させることがある。
【0084】
また、TGI1とTGI2が異なるため、ゲート電極270から酸化物半導体膜230
に印加される電界にばらつきが生じる。そのため、オン電流にばらつきが生じることがあ
る。
【0085】
一方、本発明の一態様のトランジスタでは、前述したように、チャネルが形成される酸
化物半導体膜404bとゲート絶縁膜408との間に第2の酸化物膜404cが形成され
た構造を有している。そのため、チャネル形成層とゲート絶縁膜との界面で生じるキャリ
アの散乱を抑えることができ、トランジスタの電界効果移動度を高くすることができる。
【0086】
また、本発明の一態様のトランジスタでは、チャネルが形成される酸化物半導体膜40
4bを覆うように第2の酸化物膜404cが形成されているため、酸化物半導体膜404
bの側面においても上面と同様にキャリアの散乱を抑えることができる。すなわち、本発
明の一態様のトランジスタは、従来のトランジスタよりもオン電流を高くすることができ
る。
【0087】
したがって、本発明の一態様のトランジスタは、特に図5(A)、図5(B)に示すよ
うなWが酸化物半導体膜404bの膜厚と同じ程度、またはそれ以下にまで縮小された
構造において優れた効果を奏する。
【0088】
図5(A)、図5(B)に示すようなトランジスタの場合、ゲート電極170から酸化
物半導体膜404bの側面に印加される電界は酸化物半導体膜404bの全体に及ぶため
、酸化物半導体膜404bの側面にも上面に形成されるチャネルと同等のチャネルが形成
される。
【0089】
図5(A)に示すようなチャネル領域137がトランジスタに形成される場合、チャネ
ル幅はW、WS1、およびWS2の和と定義することができ、当該トランジスタには当
該チャネル幅に応じたオン電流が流れる。
【0090】
また、図5(B)に示すようなWが極めて小さいトランジスタの場合、チャネル領域
138が酸化物半導体膜404bのW方向全体に形成されることもある。この場合、酸
化物半導体膜404b全体に電流が流れるようになるため、トランジスタには極めて高い
オン電流が流れる。また、図5(A)に示すようなトランジスタにおいても、W、W
が十分に小さい場合は酸化物半導体膜404b全体に電流が流れるようになる。
【0091】
また、本発明の一態様のトランジスタは、ゲート絶縁膜160におけるTGI1とT
I2がほぼ等しいことを特徴の一つとする。そのため、酸化物半導体膜404bに対して
ゲート電極170から印加される電界にばらつきが生じず、酸化物半導体膜404bの上
面および側面に一様のチャネルが形成される。したがって、WS1、WS2がWと同等
のとき、上面のみにチャネルが形成されると見積もった場合と比べて、約3倍のオン電流
を得ることができる。また、WS1、WS2がWの2倍のとき、上面のみにチャネルが
形成されると見積もった場合と比べて、約5倍のオン電流を得ることができる。
【0092】
また、本発明の一態様のトランジスタは、ゲート絶縁膜160におけるTGI1とT
I2がほぼ同じであるため、ゲート絶縁膜260に局所的に絶縁耐圧が低い部分を生じる
ことなく、信頼性の高いトランジスタを形成することができる。
【0093】
なお、トランジスタのオン電流を効率よく向上させるにはW/WS1(WS2)=3
以下、好ましくはW/WS1(WS2)=1前後とする。具体的には、W/WS1
S2)=0.7乃至1.3とする。W/WS1(WS2)が3より大きい場合は、S
値やオフ電流が増加することがある。
【0094】
したがって、本発明の一態様のトランジスタは、トランジスタが微細化された場合にお
いても十分に高いオン電流を得ることができる。このような酸化物半導体膜を電気的にゲ
ート電極が取り囲み、オン電流が高められたトランジスタの構造を、surrounde
d channel(s-channel)構造ともよぶ。
【0095】
また、本発明の一態様のトランジスタは、酸化物半導体膜404bを第1の酸化物膜4
04a上に形成することで界面準位を形成しにくくする効果や、酸化物半導体膜404b
を三層構造の中間層とすることで上下からの不純物混入の影響を排除できる効果などを併
せて有する。そのため、酸化物半導体膜404bは第1の酸化物膜404aと第2の酸化
物膜404cで取り囲まれた構造となり、上述したトランジスタのオン電流の向上に加え
て、しきい値電圧の安定化や、S値の低減をはかることができる。したがって、Icut
(ゲート電圧VGが0V時の電流)を下げることができ、消費電力を低減させることがで
きる。また、トランジスタのしきい値電圧が安定化することから、半導体装置の長期信頼
性を向上させることができる。
【0096】
また、本発明の一態様のトランジスタは、下地絶縁膜120と基板110との間に導電
膜を備えていてもよい。当該導電膜を第2のゲート電極として用いることで、更なるオン
電流の増加や、しきい値電圧の制御を行うことができる。オン電流を増加させるには、例
えば、ゲート電極170と導電膜を同電位とし、デュアルゲートトランジスタとして駆動
させればよい。また、しきい値電圧の制御を行うには、ゲート電極170とは異なる定電
位を導電膜に供給すればよい。
【0097】
また、図6に示すようなトランジスタ460を用いることもできる。図6(A)乃至図
6(C)は、トランジスタ460の上面図および断面図である。図6(A)は上面図であ
り、図6(A)に示す一点鎖線A-Bの断面が図6(B)、一点鎖線C-Dの断面が図6
(C)に相当する。なお、図6(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省
いて図示している。
【0098】
図6図1の違いは、図1(C)に示すようにチャネル幅方向において、酸化物半導体
膜404bの上面に平坦部があるか否かの点である。
【0099】
また、図1に示すトランジスタ450や図6に示すトランジスタ460は、酸化物半導
体膜404bを第1の酸化物膜404aおよび第2の酸化物膜404cで挟んでいる多層
膜404を用いているがこれに限られず、図7に示すトランジスタ470のように第1の
酸化物膜404aおよび第2の酸化物膜404cを有さず、酸化物半導体膜404bのみ
ある構成にしてもよい。
【0100】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができ
る。
【0101】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で説明した図1に示すトランジスタ450の作製方法
について、図8および図9を用いて説明する。
【0102】
まず、基板400上に下地絶縁膜402を形成する(図8(A)参照)。
【0103】
基板400には、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用い
ることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体
基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI(Silicon On
Insulator)基板などを用いることも可能であり、これらの基板上に半導体素子
が設けられたものを用いてもよい。
【0104】
下地絶縁膜402は、プラズマCVD法またはスパッタ法等により、酸化アルミニウム
、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウ
ム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウ
ムおよび酸化タンタルなどの酸化物絶縁膜、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アル
ミニウム、窒化酸化アルミニウムなどの窒化物絶縁膜、または上記材料を混合した膜を用
いて形成することができる。また、上記材料の積層であってもよく、少なくとも多層膜4
04と接する上層は多層膜404への酸素の供給源となりえる過剰な酸素を含む材料で形
成することが好ましい。
【0105】
また、下地絶縁膜402にイオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョン
イオンインプランテーション法などを用いて酸素を添加してもよい。酸素を添加すること
によって、下地絶縁膜402から多層膜404への酸素の供給をさらに容易にすることが
できる。
【0106】
なお、基板400の表面が絶縁体であり、後に設ける多層膜404への不純物拡散の影
響が無い場合は、下地絶縁膜402を設けない構成とすることができる。
【0107】
次に、下地絶縁膜402上に第1の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404bをスパ
ッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて形成する(図8
B)参照)。このとき、図示するように下地絶縁膜402を若干過度にエッチングしても
よい。下地絶縁膜402を過度にエッチングすることで、後に形成するゲート電極410
で第2の酸化物膜404cを覆いやすくすることができる。
【0108】
なお、第1の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404bを島状に形成する際に、まず
、酸化物半導体膜404b上にハードマスクとなる膜(たとえばタングステン膜)および
レジストマスクを設け、ハードマスクとなる膜をエッチングしてハードマスクを形成し、
その後、レジストマスクを除去し、ハードマスクをマスクとして第1の酸化物膜404a
、酸化物半導体膜404bをエッチングする。その後、ハードマスクを除去する。この時
、エッチングするにつれて徐々にハードマスクが縮小していくため、自然にハードマスク
の端部が丸みを帯び、曲面を有する。これに伴い、酸化物半導体膜404bの形状も端部
が丸みを帯び、曲面を有する。このような構成になることで、酸化物半導体膜404b上
に形成される、第2の酸化物膜404c、ゲート絶縁膜408、ゲート電極410、酸化
物絶縁膜412の被覆性が向上し、段切れ等の形状不良の発生を防ぐことができる。また
、ソース電極406aおよびドレイン電極406bの端部に生じる恐れのある電界集中を
緩和することができ、トランジスタの劣化を抑制することができる。
【0109】
また、第1の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404bの積層、および後の工程で形
成する第2の酸化物膜404cを含めた積層において連続接合を形成するためには、ロー
ドロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装置(例えばスパッタ装置)を用いて各
層を大気に触れさせることなく連続して積層することが必要となる。スパッタ装置におけ
る各チャンバーは、酸化物半導体にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべく、ク
ライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて高真空排気(5×10-7Pa乃
至1×10-4Pa程度まで)できること、かつ、成膜される基板を100℃以上、好ま
しくは500℃以上に加熱できることが好ましい。または、ターボ分子ポンプとコールド
トラップを組み合わせて排気系からチャンバー内に炭素成分や水分等を含む気体が逆流し
ないようにしておくことが好ましい。
【0110】
高純度真性酸化物半導体を得るためには、チャンバー内を高真空排気するのみならずス
パッタガスの高純度化も必要である。スパッタガスとして用いる酸素ガスやアルゴンガス
は、露点が-40℃以下、好ましくは-80℃以下、より好ましくは-100℃以下にま
で高純度化したガスを用いることで酸化物半導体膜に水分等が取り込まれることを可能な
限り防ぐことができる。
【0111】
第1の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404b、および後の工程で形成される第2
の酸化物膜404cには、実施の形態1で説明した材料を用いることができる。例えば、
第1の酸化物膜404aにIn:Ga:Zn=1:3:4または1:3:2[原子数比]
のIn-Ga-Zn酸化物、酸化物半導体膜404bにIn:Ga:Zn=1:1:1[
原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物、第2の酸化物膜404cにIn:Ga:Zn=1
:3:4または1:3:2[原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物を用いることができる
【0112】
また、第1の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404b、第2の酸化物膜404cと
して用いることのできる酸化物半導体は、少なくともインジウム(In)もしくは亜鉛(
Zn)を含むことが好ましい。または、InとZnの双方を含むことが好ましい。また、
該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすため、それらと共に
、スタビライザーを含むことが好ましい。
【0113】
スタビライザーとしては、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、ア
ルミニウム(Al)、またはジルコニウム(Zr)等がある。また、他のスタビライザー
としては、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(
Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム
(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビ
ウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等があ
る。
【0114】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、In-Zn酸化
物、Sn-Zn酸化物、Al-Zn酸化物、Zn-Mg酸化物、Sn-Mg酸化物、In
-Mg酸化物、In-Ga酸化物、In-Ga-Zn酸化物、In-Al-Zn酸化物、
In-Sn-Zn酸化物、Sn-Ga-Zn酸化物、Al-Ga-Zn酸化物、Sn-A
l-Zn酸化物、In-Hf-Zn酸化物、In-La-Zn酸化物、In-Ce-Zn
酸化物、In-Pr-Zn酸化物、In-Nd-Zn酸化物、In-Sm-Zn酸化物、
In-Eu-Zn酸化物、In-Gd-Zn酸化物、In-Tb-Zn酸化物、In-D
y-Zn酸化物、In-Ho-Zn酸化物、In-Er-Zn酸化物、In-Tm-Zn
酸化物、In-Yb-Zn酸化物、In-Lu-Zn酸化物、In-Sn-Ga-Zn酸
化物、In-Hf-Ga-Zn酸化物、In-Al-Ga-Zn酸化物、In-Sn-A
l-Zn酸化物、In-Sn-Hf-Zn酸化物、In-Hf-Al-Zn酸化物を用い
ることができる。
【0115】
なお、ここで、例えば、In-Ga-Zn酸化物とは、InとGaとZnを主成分とし
て有する酸化物という意味である。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていて
もよい。また、本明細書においては、In-Ga-Zn酸化物で構成した膜をIGZO膜
とも呼ぶ。
【0116】
また、InMO(ZnO)(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を
用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、MnおよびCoから選ばれた一つの金属元素ま
たは複数の金属元素を示す。また、InSnO(ZnO)(n>0、且つ、nは整
数)で表記される材料を用いてもよい。
【0117】
ただし、実施の形態1に詳細を記したように、第1の酸化物膜404aおよび第2の酸
化物膜404cは、酸化物半導体膜404bよりも電子親和力が小さくなるように材料を
選択する。
【0118】
なお、酸化物膜および酸化物半導体膜の成膜には、スパッタ法を用いることが好ましい
。スパッタ法としては、RFスパッタ法、DCスパッタ法、ACスパッタ法等を用いるこ
とができる。特に、成膜時に発生するゴミを低減でき、かつ膜厚分布も均一とすることか
らDCスパッタ法を用いることが好ましい。
【0119】
第1の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404b、第2の酸化物膜404cとしてI
n-Ga-Zn酸化物を用いる場合、In、Ga、Znの原子数比としては、例えば、I
n:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=1:1:1.2、In:Ga:Zn=
1:1:1.5、In:Ga:Zn=2:2:1、In:Ga:Zn=3:1:2、In
:Ga:Zn=1:3:2、In:Ga:Zn=1:3:4、In:Ga:Zn=1:4
:3、In:Ga:Zn=1:5:4、In:Ga:Zn=1:6:6、In:Ga:Z
n=2:1:3、In:Ga:Zn=1:6:4、In:Ga:Zn=1:9:6、In
:Ga:Zn=1:1:4、In:Ga:Zn=1:1:2のいずれかの材料を用い、第
1の酸化物膜404aおよび第2の酸化物膜404cの電子親和力が酸化物半導体膜40
4bよりも小さくなるようにすればよい。
【0120】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b
+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+
C=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、(a-A)+(b-B)
+(c-C)≦rを満たすことをいう。rとしては、例えば、0.05とすればよい
。他の酸化物でも同様である。
【0121】
また、酸化物半導体膜404bは、第1の酸化物膜404aおよび第2の酸化物膜40
4cよりもインジウムの含有量を多くするとよい。酸化物半導体では主として重金属のs
軌道がキャリア伝導に寄与しており、Inの含有率を多くすることにより、より多くのs
軌道が重なるため、InがGaよりも多い組成となる酸化物はInがGaと同等または少
ない組成となる酸化物と比較して移動度が高くなる。そのため、酸化物半導体膜404b
にインジウムの含有量が多い酸化物を用いることで、高い移動度のトランジスタを実現す
ることができる。
【0122】
以下では、酸化物半導体膜の構造について説明する。
【0123】
なお、本明細書において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度
で配置されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また
、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をい
う。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0124】
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表
す。
【0125】
酸化物半導体膜は、非単結晶酸化物半導体膜と単結晶酸化物半導体膜とに大別される。
非単結晶酸化物半導体膜とは、CAAC-OS(C Axis Aligned Cry
stalline Oxide Semiconductor)膜、多結晶酸化物半導体
膜、微結晶酸化物半導体膜、非晶質酸化物半導体膜などをいう。
【0126】
まずは、CAAC-OS膜について説明する。
【0127】
CAAC-OS膜は、c軸配向した複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つである
【0128】
CAAC-OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Elec
tron Microscope)によって観察すると、明確な結晶部同士の境界、即ち
結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、C
AAC-OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0129】
CAAC-OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観
察)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原
子の各層は、CAAC-OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹
凸を反映した形状であり、CAAC-OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0130】
一方、CAAC-OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面T
EM観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列している
ことを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られ
ない。
【0131】
なお、CAAC-OS膜に対し、電子回折を行うと、配向性を示すスポット(輝点)が
観測される。例えば、CAAC-OS膜の上面に対し、例えば1nm以上30nm以下の
電子線を用いる電子回折(ナノビーム電子回折ともいう。)を行うと、スポットが観測さ
れる(図37(A)参照。)。
【0132】
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC-OS膜の結晶部は配向性を有し
ていることがわかる。
【0133】
CAAC-OS膜に対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)
装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnOの結晶を有するCAAC-OS
膜のout-of-plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピーク
が現れる場合がある。このピークは、InGaZnOの結晶の(009)面に帰属され
ることから、CAAC-OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に
概略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0134】
一方、CAAC-OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin-p
lane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピーク
は、InGaZnOの結晶の(110)面に帰属される。InGaZnOの単結晶酸
化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)
として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面
に帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC-OS膜の場合は、2θを
56°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
【0135】
以上のことから、CAAC-OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は
不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平
行な方向を向いていることがわかる。したがって、前述の断面TEM観察で確認された層
状に配列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
【0136】
なお、結晶部は、CAAC-OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を
行った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC-OS膜の被形成面ま
たは上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。したがって、例えば、CAAC-OS
膜の形状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC-OS膜の被
形成面または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
【0137】
また、CAAC-OS膜中の結晶化度が均一でなくてもよい。例えば、CAAC-OS
膜の結晶部が、CAAC-OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上
面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりも結晶化度が高くなることがある。また、CA
AC-OS膜に不純物を添加する場合、不純物が添加された領域の結晶化度が変化し、部
分的に結晶化度の異なる領域が形成されることもある。
【0138】
なお、InGaZnOの結晶を有するCAAC-OS膜のout-of-plane
法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現
れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC-OS膜中の一部に、c軸配向
性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC-OS膜は、2θが31°近傍
にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0139】
CAAC-OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素
、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリ
コンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸
化物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させ
る要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半
径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜
の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不
純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
【0140】
また、CAAC-OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化
物半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによっ
てキャリア発生源となることがある。
【0141】
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性また
は実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体
膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。したがって
、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性
(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高
純度真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半
導体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタと
なる。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要
する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度
が高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定
となる場合がある。
【0142】
また、CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特
性の変動が小さい。
【0143】
次に、多結晶酸化物半導体膜について説明する。
【0144】
多結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像で、結晶粒を確認することができる。多
結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶粒は、例えば、TEMによる観察像で、2nm以上3
00nm以下、3nm以上100nm以下または5nm以上50nm以下の粒径であるこ
とが多い。また、多結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像で、結晶粒界を確認でき
る場合がある。
【0145】
多結晶酸化物半導体膜は、複数の結晶粒を有し、当該複数の結晶粒間において結晶の方
位が異なっている場合がある。また、多結晶酸化物半導体膜に対し、XRD装置を用いて
構造解析を行うと、例えばInGaZnOの結晶を有する多結晶酸化物半導体膜のou
t-of-plane法による解析では、2θが31°近傍のピーク、2θが36°近傍
のピーク、またはそのほかのピークが現れる場合がある。
【0146】
多結晶酸化物半導体膜は、高い結晶性を有するため、高い電子移動度を有する場合があ
る。従って、多結晶酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、高い電界効果移動度を有す
る。ただし、多結晶酸化物半導体膜は、結晶粒界に不純物が偏析する場合がある。また、
多結晶酸化物半導体膜の結晶粒界は欠陥準位となる。多結晶酸化物半導体膜は、結晶粒界
がキャリアトラップやキャリア発生源となる場合があるため、多結晶酸化物半導体膜を用
いたトランジスタは、CAAC-OS膜を用いたトランジスタと比べて、電気特性の変動
が大きく、信頼性の低いトランジスタとなる場合がある。
【0147】
次に、微結晶酸化物半導体膜について説明する。
【0148】
微結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像では、明確に結晶部を確認することがで
きない場合がある。微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、1nm以上100nm以
下、または1nm以上10nm以下の大きさであることが多い。特に、1nm以上10n
m以下、または1nm以上3nm以下の微結晶であるナノ結晶(nc:nanocrys
tal)を有する酸化物半導体膜を、nc-OS(nanocrystalline O
xide Semiconductor)膜と呼ぶ。また、nc-OS膜は、例えば、T
EMによる観察像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。
【0149】
nc-OS膜は、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以
上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OS膜は、異な
る結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。
したがって、nc-OS膜は、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体膜と区別が付か
ない場合がある。例えば、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きい径のX線を用いるX
RD装置を用いて構造解析を行うと、out-of-plane法による解析では、結晶
面を示すピークが検出されない。また、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きいプロー
ブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子回折(制限視野電子回折ともいう。)
を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc-OS膜に対
し、結晶部の大きさと近いか結晶部より小さいプローブ径の電子線を用いるナノビーム電
子回折を行うと、スポットが観測される。また、nc-OS膜に対しナノビーム電子回折
を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。また
、nc-OS膜に対しナノビーム電子回折を行うと、リング状の領域内に複数のスポット
が観測される場合がある(図37(B)参照。)。
【0150】
nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも規則性の高い酸化物半導体膜である。そ
のため、nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし
、nc-OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc-
OS膜は、CAAC-OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0151】
従って、nc-OS膜は、CAAC-OS膜と比べて、キャリア密度が高くなる場合が
ある。キャリア密度が高い酸化物半導体膜は、電子移動度が高くなる場合がある。従って
、nc-OS膜を用いたトランジスタは、高い電界効果移動度を有する場合がある。また
、nc-OS膜は、CAAC-OS膜と比べて、欠陥準位密度が高いため、キャリアトラ
ップが多くなる場合がある。従って、nc-OS膜を用いたトランジスタは、CAAC-
OS膜を用いたトランジスタと比べて、電気特性の変動が大きく、信頼性の低いトランジ
スタとなる。ただし、nc-OS膜は、比較的不純物が多く含まれていても形成すること
ができるため、CAAC-OS膜よりも形成が容易となり、用途によっては好適に用いる
ことができる場合がある。そのため、nc-OS膜を用いたトランジスタを有する半導体
装置は、生産性高く作製することができる場合がある。
【0152】
次に、非晶質酸化物半導体膜について説明する。
【0153】
非晶質酸化物半導体膜は、膜中における原子配列が不規則であり、結晶部を有さない酸
化物半導体膜である。石英のような無定形状態を有する酸化物半導体膜が一例である。
【0154】
非晶質酸化物半導体膜は、TEMによる観察像で、結晶部を確認することができない。
【0155】
非晶質酸化物半導体膜に対し、XRD装置を用いた構造解析を行うと、out-of-
plane法による解析では、結晶面を示すピークが検出されない。また、非晶質酸化物
半導体膜に対し、電子回折を行うと、ハローパターンが観測される。また、非晶質酸化物
半導体膜に対し、ナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測されず、ハローパターン
が観測される。
【0156】
非晶質酸化物半導体膜は、水素などの不純物を高い濃度で含む酸化物半導体膜である。
また、非晶質酸化物半導体膜は、欠陥準位密度の高い酸化物半導体膜である。
【0157】
不純物濃度が高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜は、キャリアトラップやキャリ
ア発生源が多い酸化物半導体膜である。
【0158】
従って、非晶質酸化物半導体膜は、nc-OS膜と比べて、さらにキャリア密度が高く
なる場合がある。そのため、非晶質酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、ノーマリー
オンの電気特性になりやすい。従って、ノーマリーオンの電気特性が求められるトランジ
スタに好適に用いることができる場合がある。非晶質酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が
高いため、キャリアトラップが多くなる場合がある。従って、非晶質酸化物半導体膜を用
いたトランジスタは、CAAC-OS膜やnc-OS膜を用いたトランジスタと比べて、
電気特性の変動が大きく、信頼性の低いトランジスタとなる。
【0159】
次に、単結晶酸化物半導体膜について説明する。
【0160】
単結晶酸化物半導体膜は、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損が少ない
)酸化物半導体膜である。そのため、キャリア密度を低くすることができる。従って、単
結晶酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、ノーマリーオンの電気特性になることが少
ない。また、単結晶酸化物半導体膜は、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低いため、キ
ャリアトラップが少なくなる場合がある。従って、単結晶酸化物半導体膜を用いたトラン
ジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。
【0161】
なお、酸化物半導体膜は、欠陥が少ないと密度が高くなる。また、酸化物半導体膜は、
結晶性が高いと密度が高くなる。また、酸化物半導体膜は、水素などの不純物濃度が低い
と密度が高くなる。単結晶酸化物半導体膜は、CAAC-OS膜よりも密度が高い。また
、CAAC-OS膜は、微結晶酸化物半導体膜よりも密度が高い。また、多結晶酸化物半
導体膜は、微結晶酸化物半導体膜よりも密度が高い。また、微結晶酸化物半導体膜は、非
晶質酸化物半導体膜よりも密度が高い。
【0162】
なお、酸化物半導体膜は、例えば、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、C
AAC-OS膜のうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
【0163】
酸化物半導体膜が複数の構造を有する場合、ナノビーム電子回折を用いることで構造解
析が可能となる場合がある。
【0164】
図38(A)に、電子銃室10と、電子銃室10の下の光学系12と、光学系12の下
の試料室14と、試料室14の下の光学系16と、光学系16の下の観察室20と、観察
室20に設置されたカメラ18と、観察室20の下のフィルム室22と、を有する透過電
子回折測定装置を示す。カメラ18は、観察室20内部に向けて設置される。なお、フィ
ルム室22を有さなくても構わない。
【0165】
また、図38(B)に、図38(A)で示した透過電子回折測定装置内部の構造を示す
。透過電子回折測定装置内部では、電子銃室10に設置された電子銃から放出された電子
が、光学系12を介して試料室14に配置された物質28に照射される。物質28を通過
した電子は、光学系16を介して観察室20内部に設置された蛍光板32に入射する。蛍
光板32では、入射した電子の強度に応じたパターンが現れることで透過電子回折パター
ンを測定することができる。
【0166】
カメラ18は、蛍光板32を向いて設置されており、蛍光板32に現れたパターンを撮
影することが可能である。カメラ18のレンズの中央、および蛍光板32の中央を通る直
線と、蛍光板32の上面と、の為す角度は、例えば、15°以上80°以下、30°以上
75°以下、または45°以上70°以下とする。該角度が小さいほど、カメラ18で撮
影される透過電子回折パターンは歪みが大きくなる。ただし、あらかじめ該角度がわかっ
ていれば、得られた透過電子回折パターンの歪みを補正することも可能である。なお、カ
メラ18をフィルム室22に設置しても構わない場合がある。例えば、カメラ18をフィ
ルム室22に、電子24の入射方向と対向するように設置してもよい。この場合、蛍光板
32の裏面から歪みの少ない透過電子回折パターンを撮影することができる。
【0167】
試料室14には、試料である物質28を固定するためのホルダが設置されている。ホル
ダは、物質28を通過する電子を透過するような構造をしている。ホルダは、例えば、物
質28をX軸、Y軸、Z軸などに移動させる機能を有していてもよい。ホルダの移動機能
は、例えば、1nm以上10nm以下、5nm以上50nm以下、10nm以上100n
m以下、50nm以上500nm以下、100nm以上1μm以下などの範囲で移動させ
る精度を有すればよい。これらの範囲は、物質28の構造によって最適な範囲を設定すれ
ばよい。
【0168】
次に、上述した透過電子回折測定装置を用いて、物質の透過電子回折パターンを測定す
る方法について説明する。
【0169】
例えば、図38(B)に示すように物質におけるナノビームである電子24の照射位置
を変化させる(スキャンする)ことで、物質の構造が変化していく様子を確認することが
できる。このとき、物質28がCAAC-OS膜であれば、図37(A)に示したような
回折パターンが観測される。または、物質28がnc-OS膜であれば、図37(B)に
示したような回折パターンが観測される。
【0170】
ところで、物質28がCAAC-OS膜であったとしても、部分的にnc-OS膜など
と同様の回折パターンが観測される場合がある。したがって、CAAC-OS膜の良否は
、一定の範囲におけるCAAC-OS膜の回折パターンが観測される領域の割合(CAA
C化率ともいう。)で表すことができる場合がある。例えば、良質なCAAC-OS膜で
あれば、CAAC化率は、60%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%
以上、より好ましくは95%以上となる。なお、CAAC-OS膜と異なる回折パターン
が観測される領域の割合を非CAAC化率と表記する。
【0171】
一例として、成膜直後(as-depoと表記。)、350℃加熱処理後または450
℃加熱処理後のCAAC-OS膜を有する各試料の上面に対し、スキャンしながら透過電
子回折パターンを取得した。ここでは、5nm/秒の速度で60秒間スキャンしながら回
折パターンを観測し、観測された回折パターンを0.5秒ごとに静止画に変換することで
、CAAC化率を導出した。なお、電子線としては、プローブ径が1nmのナノビーム電
子線を用いた。
【0172】
各試料におけるCAAC化率を図39に示す。成膜直後および350℃加熱処理後と比
べて、450℃加熱処理後のCAAC化率が高いことがわかる。即ち、350℃より高い
温度(例えば400℃以上)における加熱処理によって、非CAAC化率が低くなる(C
AAC化率が高くなる)ことがわかる。ここで、CAAC-OS膜と異なる回折パターン
のほとんどはnc-OS膜と同様の回折パターンであった。したがって、加熱処理によっ
て、nc-OS膜と同様の構造を有する領域は、隣接する領域の構造の影響を受けて再配
列し、CAAC化していることが示唆される。
【0173】
このような測定方法を用いれば、複数の構造を有する酸化物半導体膜の構造解析が可能
となる場合がある。
【0174】
CAAC-OS膜は、例えば、多結晶である酸化物半導体スパッタ用ターゲットを用い
、スパッタ法によって成膜することができる。当該スパッタ用ターゲットにイオンが衝突
すると、スパッタ用ターゲットに含まれる結晶領域がa-b面から劈開し、a-b面に平
行な面を有する平板状またはペレット状のスパッタ粒子として剥離することがある。この
場合、当該平板状またはペレット状のスパッタ粒子は帯電しているためプラズマ中で凝集
せず、結晶状態を維持したまま基板に到達し、CAAC-OS膜を成膜することができる
【0175】
酸化物半導体膜404bの形成後に、第1の加熱処理を行ってもよい。第1の加熱処理
は、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下の温度で、不活性
ガス雰囲気、酸化性ガスを10ppm以上含む雰囲気、または減圧状態で行えばよい。ま
た、第1の加熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を
補うために酸化性ガスを10ppm以上含む雰囲気で行ってもよい。第1の加熱処理によ
って、酸化物半導体膜404bの結晶性を高め、さらに下地絶縁膜402、第1の酸化物
膜404aから水素や水などの不純物を除去することができる。なお、酸化物半導体膜4
04bを形成するエッチングの前に第1の加熱工程を行ってもよい。
【0176】
次に、第1の酸化物膜404aおよび酸化物半導体膜404b上にソース電極406a
およびドレイン電極406bとなる第1の導電膜を形成する。第1の導電膜としては、A
l、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、W、またはこれらを主成分とする合金材料を用いる
ことができる。例えば、スパッタ法などにより100nmのチタン膜を形成する。またC
VD法によりタングステン膜を形成してもよい。
【0177】
次に、第1の導電膜を酸化物半導体膜404b上で分断するようにエッチングし、ソー
ス電極406aおよびドレイン電極406bを形成する(図8(C)参照)。このとき、
第1の導電膜のオーバーエッチングによって、下地絶縁膜402の一部がエッチングされ
た形状となってもよい。
【0178】
次に、第1の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404b、ソース電極406aおよび
ドレイン電極406b上に、第2の酸化物膜403cを成膜する。
【0179】
なお、第2の酸化物膜403cを成膜後に第2の加熱処理を行ってもよい。第2の加熱
処理は、第1の加熱処理と同様の条件で行うことができる。第2の加熱処理により、第2
の酸化物膜403cから水素や水などの不純物を除去することができる。また、第1の酸
化物膜404aおよび酸化物半導体膜404bから、さらに水素や水などの不純物を除去
することができる。
【0180】
次に、第2の酸化物膜403c上にゲート絶縁膜408となる絶縁膜407を形成する
図9(A)参照)。絶縁膜407には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シ
リコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲル
マニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハ
フニウムおよび酸化タンタルなどを用いることができる。なお、絶縁膜407は、上記材
料の積層であってもよい。絶縁膜407は、スパッタ法、CVD法、MBE法、ALD法
またはPLD法などを用いて形成することができる。また、ゲート絶縁膜408は、原材
料、温度、圧力、電極間距離、投入電力などを調整し、図5(A)に示すようなTGI1
とTGI2がほぼ等しくなるような被覆性を向上させる条件を用いて形成することが好ま
しい。例えば、ゲート絶縁膜としての膜質が維持できる範囲で、高温、高圧の条件で成膜
することで被覆性を向上させることができる。
【0181】
次に、絶縁膜407上にゲート電極410となる第2の導電膜409を形成する(図9
(B)参照)。第2の導電膜409としては、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Cu、Y
、Zr、Mo、Ru、Ag、Ta、W、またはこれらを主成分とする合金材料を用いるこ
とができる。第2の導電膜409は、スパッタ法やCVD法などにより形成することがで
きる。また、第2の導電膜409としては、窒素を含んだ導電膜を用いてもよく、上記材
料を含む導電膜と窒素を含んだ導電膜の積層を用いてもよい。
【0182】
次に、ゲート電極410を形成するためのレジストマスクを用いて、第2の導電膜40
9を選択的にエッチングし、ゲート電極410を形成する(図9(C)参照)。
【0183】
続いて、上記レジストマスクまたはゲート電極410をマスクとして絶縁膜407を選
択的にエッチングし、ゲート絶縁膜408を形成する。
【0184】
続いて、上記レジストマスクまたはゲート電極410をマスクとして第2の酸化物膜4
03cをエッチングし、第2の酸化物膜404cを形成する。
【0185】
つまり、第2の酸化物膜404cの上端部はゲート絶縁膜408の下端部と一致し、ゲ
ート絶縁膜408の上端部はゲート電極410の下端部と一致する。なお、ゲート電極4
10をマスクとしてゲート絶縁膜408および第2の酸化物膜404cを形成しているが
これに限られず、第2の導電膜409の成膜前にゲート絶縁膜408および第2の酸化物
膜404cを形成してもよい。
【0186】
次に、ソース電極406a、ドレイン電極406b、ゲート電極410上に酸化物絶縁
膜412を形成する(図1(B)参照)。酸化物絶縁膜412は、下地絶縁膜402と同
様の材料、方法を用いて形成することができる。酸化物絶縁膜412としては、酸化アル
ミニウム膜、酸化マグネシウム膜、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリ
コン膜、窒化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化ゲルマニウム膜、酸化イットリウム膜、
酸化ジルコニウム膜、酸化ランタン膜、酸化ネオジム膜、酸化ハフニウム膜、酸化タンタ
ル膜、もしくは窒素を含む酸化物絶縁膜を用いるとよい。酸化物絶縁膜412は、スパッ
タ法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いてで形成することができ、多
層膜404に対し酸素を供給できるよう過剰に酸素を含む膜とすることが好ましい。
【0187】
また、酸化物絶縁膜412にイオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョ
ンイオンインプランテーション法などを用いて酸素を添加してもよい。酸素を添加するこ
とによって、酸化物絶縁膜412から多層膜404への酸素の供給をさらに容易にするこ
とができる。
【0188】
次に、第3の加熱処理を行ってもよい。第3の加熱処理は、第1の加熱処理と同様の条
件で行うことができる。第3の加熱処理により、下地絶縁膜402、ゲート絶縁膜408
、酸化物絶縁膜412から過剰酸素が放出されやすくなり、多層膜404の酸素欠損を低
減することができる。
【0189】
以上の工程で、図1に示すトランジスタ450を作製することができる。
【0190】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができ
る。
【0191】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1で説明したトランジスタとは異なる構造のトランジス
タについて説明する。
【0192】
図14(A)乃至図14(C)は、本発明の一態様のトランジスタの上面図および断面
図である。図14(A)は上面図であり、図14(A)に示す一点鎖線A-Bの断面が図
14(B)、一点鎖線C-Dの断面が図14(C)に相当する。なお、図14(A)の上
面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。また、一点鎖線A-B
方向をチャネル長方向、一点鎖線C-D方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。
【0193】
図14(A)乃至図14(C)に示すトランジスタ550は、基板400上の下地絶縁
膜402と、下地絶縁膜402上の第1の酸化物膜404aおよび酸化物半導体膜404
bと、第1の酸化物膜404aおよび酸化物半導体膜404b上のソース電極406aお
よびドレイン電極406bと、酸化物半導体膜404b、ソース電極406aおよびドレ
イン電極406b上の第2の酸化物膜404cと、第2の酸化物膜404c上のゲート絶
縁膜408と、ゲート絶縁膜408上のゲート電極410と、ソース電極406a、ドレ
イン電極406b、第2の酸化物膜404c、およびゲート電極410上のバリア膜41
4と、バリア膜414を介して第1の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404b、ソー
ス電極406aおよびドレイン電極406bの側壁を覆う側壁絶縁膜416と、バリア膜
414を介して第2の酸化物膜404c、ゲート絶縁膜408およびゲート電極410の
側壁を覆う側壁絶縁膜418と、ソース電極406a、ドレイン電極406b、ゲート電
極410、側壁絶縁膜416および側壁絶縁膜418上の酸化物絶縁膜412と、酸化物
絶縁膜412に開口を設け、該開口に埋め込まれ、ソース電極406aおよびドレイン電
極406bと電気的に接続する電極419aおよび電極419bと、電極419aおよび
電極419bと電気的に接続する配線420aおよび配線420bと、を有する。また、
第1の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404b、および第2の酸化物膜404cを総
称して多層膜404と呼称する。
【0194】
また、酸化物半導体膜404bの形状は、端部が丸みを帯び、円形を半分にしたような
形状になっている。このような構成になることで、酸化物半導体膜404b上に形成され
るゲート絶縁膜408やゲート電極410の被覆性を向上させることができる。
【0195】
バリア膜414は、水素、水、および酸素のブロッキング効果を有する絶縁膜で形成す
ることが好ましく、代表的には酸化アルミニウム膜で形成する。該酸化アルミニウム膜は
、ブロッキング効果に加え、酸素を供給することができる絶縁膜である。なお、酸化アル
ミニウムと酸化シリコンを混ぜたターゲットで成膜した酸化シリコンが含まれている酸化
アルミニウム膜を用いることもできる。この際、酸化シリコンの含有量は、0.1wt%
以上30wt%以下であると好ましい。
【0196】
また、多層膜404やゲート電極410の側壁に接するバリア膜414の被覆性が悪く
なるおそれがあるため、その箇所を側壁絶縁膜416および側壁絶縁膜418で覆うこと
で水素、水、および酸素をブロッキングすることができる。側壁絶縁膜416および側壁
絶縁膜418は、下地絶縁膜402やゲート絶縁膜408と同様の材料を用いることがで
きる。
【0197】
電極419aおよび電極419bは、ソース電極406aおよびドレイン電極406b
と電気的に接続される。また、配線420aおよび配線420bは、電極419aおよび
電極419bと電気的に接続される。微細加工する際、酸化物絶縁膜412に開口を設け
、開口を介してソース電極406aおよびドレイン電極406bと電気的に接続するよう
に配線420aおよび配線420bを形成しようすると、開口の底部にまで配線420a
および配線420bが到達せず、電気的に接続することができない。そのため、まず、開
口を電極419aおよび電極419bで埋めて、その後、配線420aおよび配線420
bを形成する必要がある。なお、ソース電極406aおよびドレイン電極406bと接す
ることが可能な材料を用いた配線420aおよび配線420bであれば、電極419aお
よび電極419aを用いる必要はない。
【0198】
電極419a、電極419b、配線420aおよび配線420bは、ソース電極406
a、ドレイン電極406bおよびゲート電極410と同様の材料を用いることができる。
【0199】
また、図18(A)に示すトランジスタ560のような側壁絶縁膜416がない構成に
してもよい。また、図18(B)に示すトランジスタ570のような側壁絶縁膜416お
よび側壁絶縁膜418がない構成にしてもよい。
【0200】
さらに、図18(C)に示すトランジスタ580のような電極419aおよび電極41
9bがソース電極406aおよびドレイン電極406bに達している構成にしてもよい。
【0201】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができ
る。
【0202】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態3で説明した図14に示すトランジスタ550の作製方
法について、図15乃至図17を用いて説明する。
【0203】
まず、基板400上に下地絶縁膜402、第1の酸化物膜403a、酸化物半導体膜4
03bを形成する(図15(A)参照)。基板400、下地絶縁膜402、第1の酸化物
膜403a、酸化物半導体膜403bの材料および作製方法は、先の実施の形態を参酌す
ることができる。
【0204】
次に、酸化物半導体膜403b上にソース電極406aおよびドレイン電極406bと
なる導電膜を形成し、チャネル領域となる部分と重なる部分のみ、エッチングし、導電膜
405aおよび導電膜405bを形成する(図15(B)参照)。ソース電極406aお
よびドレイン電極406bとなる導電膜の材料および作製方法は、先の実施の形態を参酌
することができる。
【0205】
次に、導電膜405aおよび導電膜405b上にレジストマスクを形成し、選択的に第
1の酸化物膜403a、酸化物半導体膜403b、導電膜405aおよび導電膜405b
をエッチングし、第1の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404b、ソース電極406
aおよびドレイン電極406bを形成する(図15(B)参照)。この時、レジストは薄
く、微細に形成することで、エッチングするにつれて徐々に縮小していくため、導電膜4
05aおよび導電膜405bは、自然に端部が丸みを帯び、曲面を有する場合がある。こ
のような構成になることで、ソース電極406aおよびドレイン電極406b上に形成さ
れる、第2の酸化物膜404c、ゲート絶縁膜408、ゲート電極410、酸化物絶縁膜
412の被覆性が向上し、段切れ等の形状不良の発生を防ぐことができる。
【0206】
次に、第1の酸化物膜404a、酸化物半導体膜404b、ソース電極406aおよび
ドレイン電極406b上に、第2の酸化物膜403c、絶縁膜407を成膜する(図16
(A)参照)。第2の酸化物膜403c、絶縁膜407の材料および作製方法は、先の実
施の形態を参酌することができる。
【0207】
なお、第2の酸化物膜403cを成膜後に第2の加熱処理を行ってもよい。第2の加熱
処理は、第1の加熱処理と同様の条件で行うことができる。第2の加熱処理により、第2
の酸化物膜404cから水素や水などの不純物を除去することができる。また、第1の酸
化物膜404aおよび酸化物半導体膜404bから、さらに水素や水などの不純物を除去
することができる。
【0208】
次に、絶縁膜407上にゲート電極410となる第2の導電膜を形成し、レジストマス
クを用いて、第2の導電膜を選択的にエッチングし、ゲート電極410を形成する(図1
6(B)参照)。ゲート電極410の材料および作製方法は、先の実施の形態を参酌する
ことができる。
【0209】
続いて、上記レジストマスクまたはゲート電極410をマスクとして絶縁膜407を選
択的にエッチングし、ゲート絶縁膜408を形成する。
【0210】
続いて、上記レジストマスクまたはゲート電極410をマスクとして第2の酸化物膜4
03cをエッチングし、第2の酸化物膜404cを形成する。
【0211】
次に、下地絶縁膜402、ソース電極406a、ドレイン電極406b、ゲート電極4
10上にバリア膜414を形成する(図16(C)参照)。
【0212】
バリア膜414は、水素、水、および酸素のブロッキング効果を有する絶縁膜であるた
め、多層膜404、下地絶縁膜402、ゲート絶縁膜408に含まれる酸素が外部に拡散
することを抑制することができ、効率よく酸素を酸化物半導体膜に供給して酸素欠損量を
低減することができるため、電気特性が良好になり、信頼性の高い半導体装置を提供する
ことができる。
【0213】
次に、側壁絶縁膜416、側壁絶縁膜418となる絶縁膜に対し異方性の高いエッチン
グ処理を行うことにより、バリア膜414を介して多層膜404、ソース電極406a、
ドレイン電極406b、ゲート絶縁膜408およびゲート電極410の側面に側壁絶縁膜
416、側壁絶縁膜418を形成することができる(図17(A)参照)。
【0214】
次に、バリア膜414上に酸化物絶縁膜412を形成する(図17(B)参照)。酸化
物絶縁膜412の材料および作製方法は、先の実施の形態を参酌することができる。
【0215】
次に、第3の加熱処理を行ってもよい。第3の加熱処理は、第1の加熱処理と同様の条
件で行うことができる。第3の加熱処理により、下地絶縁膜402、ゲート絶縁膜408
、酸化物絶縁膜412から過剰酸素が放出されやすくなり、多層膜404の酸素欠損を低
減することができる。
【0216】
次に、酸化物絶縁膜412、バリア膜414に開口を設け、酸化物絶縁膜412上およ
び開口に該開口を介してソース電極406aおよびドレイン電極406bと電気的に接続
する電極419aおよび電極419bを形成する。
【0217】
電極419aおよび電極419bは、開口に埋め込まれている。開口に電極419aお
よび電極419bを埋め込む手段としては、酸化物絶縁膜412上および開口に電極41
9aおよび電極419bとなる導電膜を形成し、導電膜に除去(研磨)処理を行うことに
より、酸化物絶縁膜412が露出するように導電膜の一部を除去する(図17(C)参照
)。
【0218】
除去方法としては化学的機械研磨(Chemical Mechanical Pol
ishing:CMP)処理を用いることが好適である。
【0219】
なお、本実施の形態では、導電膜の一部の除去にCMP処理を用いたが、他の除去処理
を用いてもよい。または、CMP処理等の研磨処理と、エッチング(ドライエッチング、
ウェットエッチング)処理や、プラズマ処理などを組み合わせてもよい。例えば、CMP
処理後、ドライエッチング処理やプラズマ処理(逆スパッタリングなど)を行い、処理表
面の平坦性向上を図ってもよい。除去処理において、エッチング処理、プラズマ処理など
をCMP処理と組み合わせて行う場合、工程順は特に限定されず、導電膜の材料、膜厚、
および表面の凹凸状態に合わせて適宜設定すればよい。また、CMP処理で導電膜の大部
分を除去し、残りの導電膜をドライエッチング処理等で除去してもよい。
【0220】
なお、CMP処理は、1回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよい。複数回に分けて
CMP処理を行う場合は、高い研磨レートの一次研磨を行った後、低い研磨レートの仕上
げ研磨を行うことが好ましい。このように研磨レートの異なる研磨を組み合わせることに
よって、導電膜(電極419a、電極419b)の表面の平坦性をより向上させることが
できる。
【0221】
次に、酸化物絶縁膜412、電極419a、電極419b上に電極419a、電極41
9bと電気的に接続する配線420aおよび配線420bを形成する(図14(B)参照
)。
【0222】
以上の工程で、図14に示すトランジスタ550を作製することができる。
【0223】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができ
る。
【0224】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様のトランジスタを利用した回路の一例について、図
面を参照して説明する。
【0225】
図19(A)、図19(B)に半導体装置の回路図を、図19(C)、図19(D)に
半導体装置の断面図をそれぞれ示す。図19(C)、図19(D)はそれぞれ、左側にト
ランジスタ450のチャネル長方向の断面図を示し、右側にチャネル幅方向の断面図を示
している。また回路図には、酸化物半導体が適用されたトランジスタであることを明示す
るために、「OS」の記載を付している。
【0226】
図19(C)、図19(D)に示す半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたト
ランジスタ2200を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタを有する。こ
こでは、第2の半導体材料を用いたトランジスタとして、実施の形態1で例示したトラン
ジスタ450を適用した例について説明する。
【0227】
ここで、第1の半導体材料と第2の半導体材料は異なる禁制帯幅を持つ材料とすること
が望ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料(シリコン、ゲ
ルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等など)とし、
第2の半導体材料を実施の形態1で説明した酸化物半導体とすることができる。酸化物半
導体以外の材料として単結晶シリコンなどを用いたトランジスタは、高速動作が容易であ
る。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ電流が低い。
【0228】
ここでは、トランジスタ2200がpチャネル型のトランジスタであるものとして説明
するが、nチャネル型のトランジスタを用いて異なる回路を構成できることは言うまでも
ない。また、酸化物半導体を用いた実施の形態1に示すようなトランジスタを用いる他は
、半導体装置に用いられる材料や半導体装置の構造など、半導体装置の具体的な構成をこ
こで示すものに限定する必要はない。
【0229】
図19(A)、図19(C)、図19(D)に示す構成は、pチャネル型のトランジス
タとnチャネル型のトランジスタを直列に接続し、且つ、それぞれのゲートを接続した、
いわゆるCMOS回路の構成例について示している。
【0230】
本発明の一態様の酸化物半導体が適用されたトランジスタは、オン電流が高められてい
るため、回路の高速動作が可能となる。
【0231】
図19(C)に示す構成では、トランジスタ2200の上部に、絶縁膜2201を介し
てトランジスタ450が設けられている。また、トランジスタ2200とトランジスタ4
50の間には複数の配線2202が設けられている。また各種絶縁膜に埋め込まれた複数
のプラグ2203により、上層と下層にそれぞれ設けられた配線や電極が電気的に接続さ
れている。また、トランジスタ450を覆う絶縁膜2204と、絶縁膜2204上に配線
2205と、トランジスタ450の一対の電極と同一の導電膜を加工して形成された配線
2206と、が設けられている。
【0232】
このように、2つのトランジスタを積層することにより、回路の占有面積が低減され、
より高密度に複数の回路を配置することができる。
【0233】
図19(C)では、トランジスタ450のソースまたはドレインの一方と、トランジス
タ2200のソースまたはドレインの一方が配線2202やプラグ2203によって電気
的に接続されている。また、トランジスタ450のゲートは、配線2205、配線220
6、プラグ2203および配線2202などを経由して、トランジスタ2200のゲート
と電気的に接続されている。
【0234】
図19(D)に示す構成では、トランジスタ450のゲート絶縁層にプラグ2203を
埋め込むための開口部が設けられ、トランジスタ450のゲートとプラグ2203とが接
する構成となっている。このような構成とすることで回路の集積化が容易であるのに加え
図19(C)に示す構成と比較して経由する配線やプラグの数や長さを低減できるため
、回路をより高速に動作させることができる。
【0235】
ここで、図19(C)、図19(D)に示す構成において、トランジスタ450やトラ
ンジスタ2200の電極の接続構成を異ならせることにより、様々な回路を構成すること
ができる。例えば図19(B)に示すように、それぞれのトランジスタのソースとドレイ
ンを接続した回路構成とすることにより、いわゆるアナログスイッチとして機能させるこ
とができる。
【0236】
また、先の実施の形態のトランジスタを用いて、対象物の情報を読み取るイメージセン
サ機能を有する半導体装置を作製することができる。
【0237】
図24に、イメージセンサ機能を有する半導体装置の等価回路の一例を示す。
【0238】
フォトダイオード602は、一方の電極がフォトダイオードリセット信号線658に、
他方の電極がトランジスタ640のゲートに電気的に接続されている。トランジスタ64
0は、ソース又はドレインの一方がフォトセンサ基準信号線672に、ソース又はドレイ
ンの他方がトランジスタ656のソース又はドレインの一方に電気的に接続されている。
トランジスタ656は、ゲートがゲート信号線659に、ソース又はドレインの他方がフ
ォトセンサ出力信号線671に電気的に接続されている。
【0239】
フォトダイオード602には、例えば、p型の導電型を有する半導体層と、高抵抗な(
i型の導電型を有する)半導体層と、n型の導電型を有する半導体層を積層するpin型
のフォトダイオードを適用することができる。
【0240】
フォトダイオード602に入射する光を検出することによって、被検出物の情報を読み
取ることができる。なお、被検出物の情報を読み取る際に、バックライトなどの光源を用
いることができる。
【0241】
なお、トランジスタ640およびトランジスタ656には、先の実施の形態のいずれか
で一例を示した、酸化物半導体にチャネルが形成されるトランジスタを用いることができ
る。図24では、トランジスタ640およびトランジスタ656が、酸化物半導体を含む
ことを明確に判明できるよう、トランジスタの記号に「OS」と付記している。
【0242】
トランジスタ640およびトランジスタ656は、上記実施の形態で一例を示したトラ
ンジスタであり、酸化物半導体膜をゲート電極によって電気的に囲い込む構成を有するこ
とが好ましい。また、酸化物半導体膜の形状は、上端部が丸みを帯び、曲面を有し、酸化
物半導体膜上に形成される膜の被覆性を向上させることができる。また、ソース電極およ
びドレイン電極の端部に生じる恐れのある電界集中を緩和することができ、トランジスタ
の劣化を抑制することができる。よって、トランジスタ640およびトランジスタ656
は、電気的特性変動が抑制された電気的に安定なトランジスタである。該トランジスタを
含むことで、図24で示すイメージセンサ機能を有する半導体装置として信頼性の高い半
導体装置を提供することができる。
【0243】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができ
る。
【0244】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様であるトランジスタを使用し、電力が供給されない
状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置(記憶
装置)の一例を、図面を用いて説明する。
【0245】
図20に半導体装置の回路図をそれぞれ示す。
【0246】
図20に示す半導体装置は、第1の半導体材料を用いたトランジスタ3200と第2の
半導体材料を用いたトランジスタ3300、および容量素子3400を有している。なお
、トランジスタ3300としては、実施の形態1で説明したトランジスタを用いることが
できる。
【0247】
トランジスタ3300は、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成されるトラ
ンジスタである。トランジスタ3300は、オフ電流が小さいため、これを用いることに
より長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必
要としない、或いは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ない半導体記憶装置とすること
が可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
【0248】
図20において、第1の配線3001はトランジスタ3200のソース電極と電気的に
接続され、第2の配線3002はトランジスタ3200のドレイン電極と電気的に接続さ
れている。また、第3の配線3003はトランジスタ3300のソース電極またはドレイ
ン電極の一方と電気的に接続され、第4の配線3004はトランジスタ3300のゲート
電極と電気的に接続されている。そして、トランジスタ3200のゲート電極、およびト
ランジスタ3300のソース電極またはドレイン電極の他方は、容量素子3400の電極
の一方と電気的に接続され、第5の配線3005は容量素子3400の電極の他方と電気
的に接続されている。
【0249】
図20に示す半導体装置では、トランジスタ3200のゲート電極の電位が保持可能と
いう特徴を活かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0250】
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線3004の電位を、ト
ランジスタ3300がオン状態となる電位にして、トランジスタ3300をオン状態とす
る。これにより、第3の配線3003の電位が、トランジスタ3200のゲート電極、お
よび容量素子3400に与えられる。すなわち、トランジスタ3200のゲート電極には
、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電
荷(以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるものと
する。その後、第4の配線3004の電位を、トランジスタ3300がオフ状態となる電
位にして、トランジスタ3300をオフ状態とすることにより、トランジスタ3200の
ゲート電極に与えられた電荷が保持される(保持)。
【0251】
トランジスタ3300のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ3200のゲート
電極の電荷は長時間にわたって保持される。
【0252】
次に情報の読み出しについて説明する。第1の配線3001に所定の電位(定電位)を
与えた状態で、第5の配線3005に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジ
スタ3200のゲート電極に保持された電荷量に応じて、第2の配線3002は異なる電
位をとる。一般に、トランジスタ3200をnチャネル型とすると、トランジスタ320
0のゲート電極にHighレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値電圧V
h_Hは、トランジスタ3200のゲート電極にLowレベル電荷が与えられている場合
の見かけのしきい値電圧Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値
電圧とは、トランジスタ3200を「オン状態」とするために必要な第5の配線3005
の電位をいうものとする。したがって、第5の配線3005の電位をVth_HとVth
_Lの間の電位Vとすることにより、トランジスタ3200のゲート電極に与えられた
電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場
合には、第5の配線3005の電位がV(>Vth_H)となれば、トランジスタ32
00は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線3
005の電位がV(<Vth_L)となっても、トランジスタ3200は「オフ状態」
のままである。このため、第2の配線3002の電位を判別することで、保持されている
情報を読み出すことができる。
【0253】
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合、所望のメモリセルの情報のみを読
み出せることが必要になる。このように情報を読み出さない場合には、ゲート電極の状態
にかかわらずトランジスタ3200が「オフ状態」となるような電位、つまり、Vth_
より小さい電位を第5の配線3005に与えればよい。または、ゲート電極の状態にか
かわらずトランジスタ3200が「オン状態」となるような電位、つまり、Vth_L
り大きい電位を第5の配線3005に与えればよい。
【0254】
本実施の形態に示す半導体装置では、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたオフ電
流の極めて小さいトランジスタを適用することで、極めて長期にわたり記憶内容を保持す
ることが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ
動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することがで
きる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが望ましい)で
あっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0255】
また、本実施の形態に示す半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、
素子の劣化の問題もない。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲー
トへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため
、ゲート絶縁層の劣化といった問題が全く生じない。すなわち、開示する発明に係る半導
体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、
信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報
の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。
【0256】
以上のように、微細化および高集積化を実現し、かつ高い電気的特性を付与された半導
体装置を提供することができる。
【0257】
(実施の形態7)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明したトランジスタを用いることができ、先の
実施の形態で説明した記憶装置を含むCPUについて説明する。
【0258】
図21は、実施の形態1で説明したトランジスタを少なくとも一部に用いたCPUの一
例の構成を示すブロック図である。
【0259】
図21に示すCPUは、基板1190上に、ALU1191(ALU:Arithme
tic logic unit、演算回路)、ALUコントローラ1192、インストラ
クションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、タイミングコントロー
ラ1195、レジスタ1196、レジスタコントローラ1197、バスインターフェース
1198、書き換え可能なROM1199、およびROMインターフェース1189を有
している。基板1190は、半導体基板、SOI基板、ガラス基板などを用いる。書き換
え可能なROM1199およびROMインターフェース1189は、別チップに設けても
よい。もちろん、図21に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実
際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。例えば、図21に示すCP
Uまたは演算回路を含む構成を一つのコアとし、当該コアを複数含み、それぞれのコアが
並列で動作するような構成としてもよい。また、CPUが内部演算回路やデータバスで扱
えるビット数は、例えば8ビット、16ビット、32ビット、64ビットなどとすること
ができる。
【0260】
バスインターフェース1198を介してCPUに入力された命令は、インストラクショ
ンデコーダ1193に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ1192、イン
タラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントロー
ラ1195に入力される。
【0261】
ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントロ
ーラ1197、タイミングコントローラ1195は、デコードされた命令に基づき、各種
制御を行なう。具体的にALUコントローラ1192は、ALU1191の動作を制御す
るための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ1194は、CPUのプログ
ラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマス
ク状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ1197は、レジスタ1196のア
ドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ1196の読み出しや書き込みを行なう
【0262】
また、タイミングコントローラ1195は、ALU1191、ALUコントローラ11
92、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、およ
びレジスタコントローラ1197の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えば
タイミングコントローラ1195は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信
号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、内部クロック信号CLK2を上
記各種回路に供給する。
【0263】
図21に示すCPUでは、レジスタ1196に、メモリセルが設けられている。レジス
タ1196のメモリセルとして、先の実施の形態に示したトランジスタを用いることがで
きる。
【0264】
図21に示すCPUにおいて、レジスタコントローラ1197は、ALU1191から
の指示に従い、レジスタ1196における保持動作の選択を行う。すなわち、レジスタ1
196が有するメモリセルにおいて、フリップフロップによるデータの保持を行うか、容
量素子によるデータの保持を行うかを、選択する。フリップフロップによるデータの保持
が選択されている場合、レジスタ1196内のメモリセルへの、電源電圧の供給が行われ
る。容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換
えが行われ、レジスタ1196内のメモリセルへの電源電圧の供給を停止することができ
る。
【0265】
図22は、レジスタ1196として用いることのできる記憶素子の回路図の一例である
。記憶素子700は、電源遮断で記憶データが揮発する回路701と、電源遮断で記憶デ
ータが揮発しない回路702と、スイッチ703と、スイッチ704と、論理素子706
と、容量素子707と、選択機能を有する回路720と、を有する。回路702は、容量
素子708と、トランジスタ709と、トランジスタ710と、を有する。なお、記憶素
子700は、必要に応じて、ダイオード、抵抗素子、インダクタなどのその他の素子をさ
らに有していても良い。
【0266】
ここで、回路702には、先の実施の形態で説明した記憶装置を用いることができる。
記憶素子700への電源電圧の供給が停止した際、回路702のトランジスタ709の第
1のゲートには接地電位(0V)、またはトランジスタ709がオフする電位が入力され
続ける構成とする。例えば、トランジスタ709の第1のゲートが抵抗等の負荷を介して
接地される構成とする。
【0267】
スイッチ703は、一導電型(例えば、nチャネル型)のトランジスタ713を用いて
構成され、スイッチ704は、一導電型とは逆の導電型(例えば、pチャネル型)のトラ
ンジスタ714を用いて構成した例を示す。ここで、スイッチ703の第1の端子はトラ
ンジスタ713のソースとドレインの一方に対応し、スイッチ703の第2の端子はトラ
ンジスタ713のソースとドレインの他方に対応し、スイッチ703はトランジスタ71
3のゲートに入力される制御信号RDによって、第1の端子と第2の端子の間の導通また
は非導通(つまり、トランジスタ713のオン状態またはオフ状態)が選択される。スイ
ッチ704の第1の端子はトランジスタ714のソースとドレインの一方に対応し、スイ
ッチ704の第2の端子はトランジスタ714のソースとドレインの他方に対応し、スイ
ッチ704はトランジスタ714のゲートに入力される制御信号RDによって、第1の端
子と第2の端子の間の導通または非導通(つまり、トランジスタ714のオン状態または
オフ状態)が選択される。
【0268】
トランジスタ709のソースとドレインの一方は、容量素子708の一対の電極のうち
の一方、およびトランジスタ710のゲートと電気的に接続される。ここで、接続部分を
ノードM2とする。トランジスタ710のソースとドレインの一方は、低電源電位を供給
することのできる配線(例えばGND線)に電気的に接続され、他方は、スイッチ703
の第1の端子(トランジスタ713のソースとドレインの一方)と電気的に接続される。
スイッチ703の第2の端子(トランジスタ713のソースとドレインの他方)はスイッ
チ704の第1の端子(トランジスタ714のソースとドレインの一方)と電気的に接続
される。スイッチ704の第2の端子(トランジスタ714のソースとドレインの他方)
は電源電位VDDを供給することのできる配線と電気的に接続される。スイッチ703の
第2の端子(トランジスタ713のソースとドレインの他方)と、スイッチ704の第1
の端子(トランジスタ714のソースとドレインの一方)と、論理素子706の入力端子
と、容量素子707の一対の電極のうちの一方と、は電気的に接続される。ここで、接続
部分をノードM1とする。容量素子707の一対の電極のうちの他方は、一定の電位が入
力される構成とすることができる。例えば、低電源電位(GND等)または高電源電位(
VDD等)が入力される構成とすることができる。容量素子707の一対の電極のうちの
他方は、低電源電位を供給することのできる配線(例えばGND線)と電気的に接続され
る。容量素子708の一対の電極のうちの他方は、一定の電位が入力される構成とするこ
とができる。例えば、低電源電位(GND等)または高電源電位(VDD等)が入力され
る構成とすることができる。容量素子708の一対の電極のうちの他方は、低電源電位を
供給することのできる配線(例えばGND線)と電気的に接続される。
【0269】
なお、容量素子707および容量素子708は、トランジスタや配線の寄生容量等を積
極的に利用することによって省略することも可能である。
【0270】
トランジスタ709の第1ゲート(第1のゲート電極)には、制御信号WEが入力され
る。スイッチ703およびスイッチ704は、制御信号WEとは異なる制御信号RDによ
って第1の端子と第2の端子の間の導通状態または非導通状態を選択され、一方のスイッ
チの第1の端子と第2の端子の間が導通状態のとき他方のスイッチの第1の端子と第2の
端子の間は非導通状態となる。
【0271】
トランジスタ709のソースとドレインの他方には、回路701に保持されたデータに
対応する信号が入力される。図22では、回路701から出力された信号が、トランジス
タ709のソースとドレインの他方に入力される例を示した。スイッチ703の第2の端
子(トランジスタ713のソースとドレインの他方)から出力される信号は、論理素子7
06によってその論理値が反転された反転信号となり、回路720を介して回路701に
入力される。
【0272】
なお、図22では、スイッチ703の第2の端子(トランジスタ713のソースとドレ
インの他方)から出力される信号は、論理素子706および回路720を介して回路70
1に入力する例を示したがこれに限定されない。スイッチ703の第2の端子(トランジ
スタ713のソースとドレインの他方)から出力される信号が、論理値を反転させられる
ことなく、回路701に入力されてもよい。例えば、回路701内に、入力端子から入力
された信号の論理値が反転した信号が保持されるノードが存在する場合に、スイッチ70
3の第2の端子(トランジスタ713のソースとドレインの他方)から出力される信号を
当該ノードに入力することができる。
【0273】
図22におけるトランジスタ709は、実施の形態1で説明したトランジスタを用いる
ことができる。また、実施の形態3で説明したように第2ゲート(第2のゲート電極)を
有する構成とすることが好ましい。第1ゲートには制御信号WEを入力し、第2ゲートに
は制御信号WE2を入力することができる。制御信号WE2は、一定の電位の信号とすれ
ばよい。当該一定の電位には、例えば、接地電位GNDやトランジスタ709のソース電
位よりも小さい電位などが選ばれる。制御信号WE2は、トランジスタ709のしきい値
電圧を制御するための電位信号であり、トランジスタ709のIcutをより低減するこ
とができる。なお、トランジスタ709としては、第2ゲートを有さないトランジスタを
用いることもできる。
【0274】
また、図22において、記憶素子700に用いられるトランジスタのうち、トランジス
タ709以外のトランジスタは、酸化物半導体以外の半導体でなる層または基板1190
にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。例えば、シリコン層またはシ
リコン基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。また、記憶素子7
00に用いられるトランジスタ全てを、チャネルが酸化物半導体膜で形成されるトランジ
スタとすることもできる。または、記憶素子700は、トランジスタ709以外にも、チ
ャネルが酸化物半導体膜で形成されるトランジスタを含んでいてもよく、残りのトランジ
スタは酸化物半導体以外の半導体でなる層または基板1190にチャネルが形成されるト
ランジスタとすることもできる。
【0275】
図22における回路701には、例えばフリップフロップ回路を用いることができる。
また、論理素子706としては、例えばインバータやクロックドインバータ等を用いるこ
とができる。
【0276】
本発明の一態様における半導体装置では、記憶素子700に電源電圧が供給されない間
は、回路701に記憶されていたデータを、回路702に設けられた容量素子708によ
って保持することができる。
【0277】
また、酸化物半導体膜にチャネルが形成されるトランジスタはオフ電流が極めて小さい
。例えば、酸化物半導体膜にチャネルが形成されるトランジスタのオフ電流は、結晶性を
有するシリコンにチャネルが形成されるトランジスタのオフ電流に比べて著しく低い。そ
のため、当該トランジスタをトランジスタ709として用いることによって、記憶素子7
00に電源電圧が供給されない間も容量素子708に保持された信号は長期間にわたり保
たれる。こうして、記憶素子700は電源電圧の供給が停止した間も記憶内容(データ)
を保持することが可能である。
【0278】
また、スイッチ703およびスイッチ704を設けることによって、プリチャージ動作
を行うことを特徴とする記憶素子であるため、電源電圧供給再開後に、回路701が元の
データを保持しなおすまでの時間を短くすることができる。
【0279】
また、回路702において、容量素子708によって保持された信号はトランジスタ7
10のゲートに入力される。そのため、記憶素子700への電源電圧の供給が再開された
後、容量素子708によって保持された信号を、トランジスタ710の状態(オン状態、
またはオフ状態)に変換して、回路702から読み出すことができる。それ故、容量素子
708に保持された信号に対応する電位が多少変動していても、元の信号を正確に読み出
すことが可能である。
【0280】
このような記憶素子700を、プロセッサが有するレジスタやキャッシュメモリなどの
記憶装置に用いることで、電源電圧の供給停止による記憶装置内のデータの消失を防ぐこ
とができる。また、電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰
することができる。よって、プロセッサ全体、もしくはプロセッサを構成する一つ、また
は複数の論理回路において、短い時間でも電源停止を行うことができるため、消費電力を
抑えることができる。
【0281】
本実施の形態では、記憶素子700をCPUに用いる例として説明したが、記憶素子7
00は、DSP(Digital Signal Processor)、カスタムLS
I、PLD(Programmable Logic Device)等のLSI、RF
-ID(Radio Frequency Identification)にも応用可
能である。
【0282】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施するこ
とができる。
【0283】
(実施の形態8)
本実施の形態では、実施の形態1で説明したトランジスタ、実施の形態5、実施の形態
6で説明した記憶装置、または実施の形態7で説明したCPU等(DSP、カスタムLS
I、PLD、RF-IDを含む)を用いることのできる電子機器の例について説明する。
【0284】
実施の形態1で説明したトランジスタ、実施の形態5、実施の形態6で説明した記憶装
置、または実施の形態7で説明したCPU等は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に
適用することができる。電子機器としては、テレビ、モニタ等の表示装置、照明装置、パ
ーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、画像再生装置、ポータブルオーディオプレー
ヤ、ラジオ、テープレコーダ、ステレオ、電話、コードレス電話、携帯電話、自動車電話
、トランシーバ、無線機、ゲーム機、電卓、携帯情報端末、電子手帳、電子書籍、電子翻
訳機、音声入力機器、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電気シェーバ、ICチップ
、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、電気掃除機、エアコンディ
ショナーなどの空調設備、食器洗い機、食器乾燥機、衣類乾燥機、布団乾燥機、電気冷蔵
庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、放射線測定器、透析装置、X線
診断装置等の医療機器、などが挙げられる。また、煙感知器、熱感知器、ガス警報装置、
防犯警報装置などの警報装置も挙げられる。さらに、誘導灯、信号機、ベルトコンベア、
エレベータ、エスカレータ、産業用ロボット、電力貯蔵システム等の産業機器も挙げられ
る。また、燃料を用いたエンジンや、非水系二次電池からの電力を用いて電動機により推
進する移動体なども、電子機器の範疇に含まれるものとする。上記移動体として、例えば
、電気自動車(EV)、内燃機関と電動機を併せ持ったハイブリッド車(HEV)、プラ
グインハイブリッド車(PHEV)、これらのタイヤ車輪を無限軌道に変えた装軌車両、
電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、ゴルフ用カート、
小型または大型船舶、潜水艦、ヘリコプター、航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機
や惑星探査機、宇宙船が挙げられる。これらの電子機器の一部の具体例を図23に示す。
【0285】
図23(A)に示すテレビジョン装置8000は、筐体8001に表示部8002が組
み込まれており、表示部8002により映像を表示し、スピーカ部8003から音声を出
力することが可能である。先の実施の形態で例示したトランジスタを筐体8001に組み
込まれた表示部8002を動作するための駆動回路または画素に用いることが可能である
【0286】
表示部8002は、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光
装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Devi
ce)、PDP(Plasma Display Panel)等の半導体表示装置を用
いることができる。
【0287】
テレビジョン装置8000は、受信機やモデムなどを備えていてもよい。テレビジョン
装置8000は、受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデム
を介して有線又は無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者か
ら受信者)又は双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行
うことも可能である。
【0288】
また、テレビジョン装置8000は、情報通信を行うためのCPU8004や、メモリ
を備えていてもよい。CPU8004やメモリに、先の実施の形態に示したトランジスタ
、記憶装置、またはCPUを用いることによって省電力化を図ることができる。
【0289】
図23(A)に示す警報装置8100は、住宅用火災警報器であり、煙または熱の検出
部8102と、マイクロコンピュータ8101を用いた電子機器の一例である。マイクロ
コンピュータ8101は、先の実施の形態に示したトランジスタ、記憶装置、またはCP
Uを含む。
【0290】
また、図23(A)に示す室内機8200および室外機8204を有するエアコンディ
ショナーは、先の実施の形態に示したトランジスタ、記憶装置、またはCPU等を含む電
子機器の一例である。具体的に、室内機8200は、筐体8201、送風口8202、C
PU8203等を有する。図23(A)においては、CPU8203が、室内機8200
に設けられている場合を例示しているが、CPU8203は室外機8204に設けられて
いてもよい。または、室内機8200と室外機8204の両方に、CPU8203が設け
られていてもよい。先の実施の形態に示したトランジスタをエアコンディショナーのCP
Uに用いることによって省電力化を図ることができる。
【0291】
また、図23(A)に示す電気冷凍冷蔵庫8300は、先の実施の形態に示したトラン
ジスタ、記憶装置、またはCPU等を含む電子機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷
蔵庫8300は、筐体8301、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303、CPU83
04等を有する。図23(A)では、CPU8304が、筐体8301の内部に設けられ
ている。先の実施の形態に示したトランジスタを電気冷凍冷蔵庫8300のCPU830
4に用いることによって省電力化が図れる。
【0292】
図23(B)、図23(C)には、電子機器の一例である電気自動車の例を示す。電気
自動車9700には、二次電池9701が搭載されている。二次電池9701の電力は、
回路9702により出力が調整されて、駆動装置9703に供給される。回路9702は
、図示しないROM、RAM、CPU等を有する処理装置9704によって制御される。
先の実施の形態に示したトランジスタを電気自動車9700のCPUに用いることによっ
て省電力化が図れる。
【0293】
駆動装置9703は、直流電動機もしくは交流電動機単体、または電動機と内燃機関と
、を組み合わせて構成される。処理装置9704は、電気自動車9700の運転者の操作
情報(加速、減速、停止など)や走行時の情報(上り坂や下り坂等の情報、駆動輪にかか
る負荷情報など)の入力情報に基づき、回路9702に制御信号を出力する。回路970
2は、処理装置9704の制御信号により、二次電池9701から供給される電気エネル
ギーを調整して駆動装置9703の出力を制御する。交流電動機を搭載している場合は、
図示していないが、直流を交流に変換するインバータも内蔵される。
【0294】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施するこ
とができる。
【実施例0295】
本実施例では、実施例試料として、図6(A)に示すトランジスタ460と同様の構成
のトランジスタについて作製し、断面形状を調べた。また、作製したトランジスタの電気
特性の評価を行った。
【0296】
はじめに、実施例試料の作製方法について示す。
【0297】
まず、シリコン基板上に下地絶縁膜となる膜厚300nmの酸化窒化シリコン(SiO
N)膜を形成した。酸化窒化シリコン膜は、スパッタリング法によりアルゴンおよび酸素
(アルゴン:酸素=25sccm:25sccm)混合雰囲気下において、圧力0.4P
a、電源電力(電源出力)5.0kWを印加し、シリコン基板とターゲットとの間の距離
を60mm、基板温度100℃の条件によって成膜した。
【0298】
酸化窒化シリコン膜表面を研磨処理後、膜厚10nmの第1の酸化物膜と膜厚40nm
の酸化物半導体膜を積層して形成した。成膜条件は、第1の酸化物膜はIn:Ga:Zn
=1:3:2(原子数比)の酸化物ターゲット(IGZO(132))を用いたスパッタ
リング法によりアルゴンおよび酸素(アルゴン:酸素=30sccm:15sccm)混
合雰囲気下において、圧力0.4Pa、電源電力0.5kWを印加し、ターゲットと基板
の間の距離を60mm、基板温度200℃として成膜し、酸化物半導体膜はIn:Ga:
Zn=1:1:1(原子数比)の酸化物ターゲット(IGZO(111))を用いたスパ
ッタリング法によりアルゴンおよび酸素(アルゴン:酸素=30sccm:15sccm
)混合雰囲気下において、圧力0.4Pa、電源電力0.5kWを印加し、ターゲットと
基板の間の距離を60mm、基板温度300℃として成膜した。なお、第1の酸化物膜お
よび酸化物半導体膜は、大気曝露せずに連続成膜を行った。
【0299】
次に、加熱処理を行った。加熱処理は窒素雰囲気下、450℃で1時間行った後、酸素
雰囲気下、450℃で1時間行った。
【0300】
次に、酸化物半導体膜上にハードマスクとなるタングステン膜を膜厚5nm成膜し、エ
ッチングしてハードマスクを形成した。エッチングは、ICP(Inductively
Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法により、四弗化炭
素(CF=100sccm)雰囲気下、電源電力2000W、バイアス電力50W、圧
力0.67Paにて行い、その後、四弗化炭素、酸素(CF:O=60sccm:4
0sccm)混合雰囲気下、電源電力1000W、バイアス電力25W、圧力2.0Pa
にて行った。
【0301】
次に、第1の酸化物膜および酸化物半導体膜を、ICPエッチング法により、メタンお
よびアルゴン(CH:Ar=16sccm:32sccm)混合雰囲気下、電源電力6
00W、バイアス電力100W、圧力1.0Pa、基板温度70℃においてエッチングし
て島状の第1の酸化物膜および酸化物半導体膜に加工した。
【0302】
次に、第1の酸化物膜および酸化物半導体膜上に、ソース電極およびドレイン電極とな
るタングステン(W)膜を膜厚10nm成膜した。成膜条件は、タングステンターゲット
を用いたスパッタリング法によりアルゴン(アルゴン80sccm)雰囲気下において、
圧力0.8Pa、電源電力(電源出力)1.0kWを印加し、シリコン基板とターゲット
との間の距離を60mm、基板温度230℃の条件によって成膜した。
【0303】
次に、タングステン膜上にレジストマスクを形成して、エッチングを行った。エッチン
グは、ICPエッチング法により、第1のエッチングを四弗化炭素(CF=100sc
cm)雰囲気下、電源電力2000W、バイアス電力50W、圧力0.67Paにて行い
、その後、第2のエッチングを四弗化炭素、酸素(CF:O=60sccm:40s
ccm)混合雰囲気下、電源電力1000W、バイアス電力25W、圧力2.0Paにて
行い、ソース電極およびドレイン電極を形成した。
【0304】
次に、酸化物半導体膜、ソース電極およびドレイン電極上に膜厚5nmの第2の酸化物
膜を成膜した。成膜条件は、In:Ga:Zn=1:3:2(原子数比)の酸化物ターゲ
ット(IGZO(132))を用いたスパッタリング法によりアルゴンおよび酸素(アル
ゴン:酸素=30sccm:15sccm)混合雰囲気下において、圧力0.4Pa、電
源電力0.5kWを印加し、ターゲットと基板の間の距離を60mm、基板温度200℃
とした。
【0305】
次に、CVD法によりゲート絶縁膜となる10nmの酸化窒化シリコン膜を成膜した。
【0306】
次に、酸化窒化シリコン膜上にスパッタリング法により膜厚10nmの窒化チタン膜を
、窒素(N=50sccm)雰囲気下、圧力0.2Pa、電源電力12kWを印加し、
ターゲットと基板の間の距離を400mm、基板温度常温として成膜し、その上に、膜厚
10nmのタングステン膜をアルゴン(Ar=100sccm)雰囲気下、圧力2.0P
a、電源電力4kWを印加し、ターゲットと基板の間の距離を60mm、基板温度230
℃として積層して成膜した。
【0307】
次に、ICPエッチング法により、膜厚10nmの窒化チタン膜および膜厚10nmの
タングステン膜の積層をエッチングした。エッチング条件は、塩素、四弗化炭素および酸
素(Cl:CF:O=45sccm:55sccm:55sccm)混合雰囲気下
、電源電力3000W、バイアス電力110W、圧力0.67Paにおいて第1のエッチ
ングを行い、第1のエッチングの後に三塩化硼素および塩素(BCl:Cl=150
sccm:50sccm)混合雰囲気下、電源電力1000W、バイアス電力50W、圧
力0.67Paにおいて第2のエッチングを行い、ゲート電極を形成した。
【0308】
次に、ICPエッチング法により、ゲート電極をマスクにとして、ゲート絶縁膜、第2
の酸化物膜の積層をエッチングした。エッチング条件は、メタンおよびアルゴン(CH
:Ar=16sccm:32sccm)混合雰囲気下、電源電力600W、バイアス電力
100W、圧力1.0Pa、基板温度70℃においてエッチングを行った。
【0309】
次に、ゲート電極上に膜厚20nmの酸化アルミニウム膜をスパッタリング法により成
膜し、その上に、膜厚150nmの酸化窒化シリコン膜をCVD法により成膜した。
【0310】
上記の方法により作製した実施例試料の断面STEM写真を図10に示す。図10(A
)はチャネル長方向の断面図、図10(B)はチャネル幅方向の断面図である。
【0311】
図10(B)に示すように、酸化物半導体膜であるIGZO(111)のチャネル幅方
向の断面は端部が丸みを帯び、半円状になっている。このような構成になることで、酸化
物半導体膜上に形成された、第2の酸化物膜、ゲート絶縁膜、ゲート電極の被覆性が向上
し、段切れ等の形状不良が発生していないことが確認された。
【0312】
また、作製したトランジスタのチャネル長は68nm、チャネル幅は34nmであった
【0313】
次に作製したトランジスタにおいて、ドレイン電圧(V:[V])が0.1Vまたは
1Vとし、ゲート電圧(V:[V])を-3Vから3Vまで掃引した際の、ドレイン電
流(I:[A])の測定を行った。実施例トランジスタの測定結果を図29に示す。図
29において、実線はドレイン電圧(V:[V])が1Vのときの測定結果であり、点
線はドレイン電圧(V:[V])が0.1Vのときの測定結果であり、横軸はゲート電
圧(V:[V])、縦軸はドレイン電流(I:[A]を示す。なお、「ドレイン電圧
(V:[V])」とは、ソースを基準としたドレインとソースの電位差であり、「ゲー
ト電圧(V:[V])」とは、ソースを基準としたゲートとソースの電位差である。
【0314】
図29に示すように本実施例で作製したトランジスタのオン電流は、ドレイン電圧(V
:[V])が1Vのときで5.31μAであった。また、ドレイン電圧が0.1Vのと
きの電界効果移動度は、20.0cm/Vsであった。また、ドレイン電圧が1Vのと
きのシフト値は0.13Aであった。なお、ここではドレイン電流が1×10-12Aで
のゲート電圧の値をシフト値と定義する。また、ドレイン電圧が1Vのときのしきい値電
圧は0.65Vであった。また、ドレイン電圧が0.1VのときのS値は113.1mV
/decであった。また、ドレイン電圧が1Vのときのオフ電流は測定下限以下であった
【0315】
以上より、本実施例のトランジスタは高い電気的特性をもつトランジスタであることが
示された。
【実施例0316】
本実施例では、実施例1で作製したトランジスタの温度依存性について評価を行った。
【0317】
評価は、-25℃、50℃および150℃の3条件でドレイン電圧(V:[V])が
1V、ゲート電圧(V:[V])を-3Vから3Vまで掃引した際の、ドレイン電流(
:[A])および電界効果移動度(μFE)の測定を行った。実施例トランジスタの
測定結果を図30に示す。図30において、横軸はゲート電圧(V:[V])、左側の
縦軸はドレイン電流(I:[A])、右側の縦軸は電界効果移動度(μFE:cm
Vs)を示す。
【0318】
図30に示すように実施例1で作製したトランジスタは、温度変化によりオン電流およ
び電界効果移動度があまり変化しないことが確認できた。
【0319】
また、しきい値電圧の温度の依存性について図31に示す。
【0320】
温度変化によりしきい値電圧の値はあまり変化しないことが確認できた。
【0321】
以上より、本実施例のトランジスタは温度耐性をもつトランジスタであることが示され
た。
【実施例0322】
本実施例では、実施例1で作製したトランジスタの信頼性について評価を行った。
【0323】
評価は、ストレス試験の条件としてソース電圧(Vs:[V])およびドレイン電圧(
Vd:[V])を0V、ゲート電圧を-1.8V、150℃で1時間印加し、ドレイン電
流(Id:[A])の測定を行った。実施例トランジスタの測定結果を図32(A)に示
す。図32(A)において、ドレイン電圧(Vd:[V])が0.1Vおよび1Vのとき
の測定結果であり、横軸はゲート電圧(Vg:[V])、縦軸はドレイン電流(Id:[
A])を示す。
【0324】
また、ストレス試験の条件としてソース電圧(Vs:[V])およびゲート電圧(Vg
:[V])を0V、ドレイン電圧を1.8V、150℃で1時間印加し、ドレイン電流(
Id:[A])の測定を行った。実施例トランジスタの測定結果を図32(B)に示す。
図32(B)において、ドレイン電圧(Vd:[V])が0.1Vおよび1Vのときの測
定結果であり、横軸はゲート電圧(Vg:[V])、縦軸はドレイン電流(Id:[A]
)を示す。
【0325】
なお、図中の実線は、ストレス試験前の測定結果を表し、図中の点線は、ストレス試験
後の測定結果を表す。図32(A)、図32(B)に示すように実施例1で作製したトラ
ンジスタのドレイン電圧(Vd:[V])が1Vのときのしきい値電圧の変化量ΔVth
は、図32(A)では0.03V、図32(B)では0.11Vであり、小さい変化量で
あった。
【0326】
また、図33(図中の四角形)にソース電圧(Vs:[V])およびゲート電圧(Vg
:[V])を0V、125℃で0.01年(87.6時間)、ドレイン電圧(Vd:[V
])を1.8V印加とし、しきい値電圧の変化量を示す。
【0327】
また、図33(図中のひし形)にソース電圧(Vs:[V])およびドレイン電圧(V
d:[V])を0V、125℃で0.01年(87.6時間)、ゲート電圧(Vg:[V
])を-1.8V印加とし、しきい値電圧の変化量を示す。
【0328】
図33に示すように実施例1で作製したトランジスタのしきい値電圧の変化量は、0.
01年経過した後でも変化量が小さいことが確認できた。
【0329】
以上より、本実施例のトランジスタは高い電気的安定性をもつトランジスタであること
が示された。
【実施例0330】
本実施例では、実施例1で作製したトランジスタのチャネル幅に対する電気特性の評価
を行った。
【0331】
まず、ドレイン電圧(V:[V])が1Vのときのチャネル幅に対するオン電流(I
on:[A])の測定を行った。実施例トランジスタの測定結果を図34(A)に示す。
図34(A)において、横軸はチャネル長[nm]、縦軸はオン電流(Ion:[A])
を示す。なお、図中のひし形はチャネル幅が40nm、三角はチャネル幅が100nm、
四角はチャネル幅が500nmのときの測定結果を示す。
【0332】
図34(A)により、チャネル幅が狭くなっても、オン電流Ionが高いことが確認で
きた。
【0333】
次に、ドレイン電圧(V:[V])が0.1Vのときのチャネル幅に対する電界効果
移動度の測定を行った。実施例トランジスタの測定結果を図34(B)に示す。図34
B)において、横軸はチャネル長[nm]、縦軸は電界効果移動度(μFE:cm/V
s)を示す。なお、図中のひし形はチャネル幅が40nm、三角はチャネル幅が100n
m、四角はチャネル幅が500nmのときの測定結果を示す。
【0334】
図34(B)により、チャネル幅が狭い方が移動度が高いことが確認できた。
【0335】
次に、ドレイン電圧(V:[V])が1Vのときのチャネル幅に対するしきい値電圧
の測定を行った。実施例トランジスタの測定結果を図34(C)に示す。図34(C)に
おいて、横軸はチャネル長[nm]、縦軸はしきい値電圧(Vth:[V])を示す。な
お、図中のひし形はチャネル幅が40nm、三角はチャネル幅が100nm、四角はチャ
ネル幅が500nmのときの測定結果を示す。
【0336】
図34(C)により、しきい値電圧はあまり変化していないことが確認できた。
【0337】
次に、ドレイン電圧(V:[V])が1Vのときのチャネル幅に対するシフト値の測
定を行った。シフト値とは立ち上がりの電圧のことであり、ドレイン電流(I:[A]
)が1E-12Aの場合のゲート電圧(V:[V])と定義する。実施例トランジスタ
の測定結果を図34(D)に示す。図34(D)において、横軸はチャネル長[nm]、
縦軸はシフト値[V]を示す。なお、図中のひし形はチャネル幅が40nm、三角はチャ
ネル幅が100nm、四角はチャネル幅が500nmのときの測定結果を示す。
【0338】
図34(D)により、チャネル幅が狭い方がシフト値の変化が小さいことが確認できた
【0339】
次に、ドレイン電圧(V:[V])が0.1Vのときのチャネル幅に対するS値の測
定を行った。実施例トランジスタの測定結果を図35(A)に示す。図35(A)におい
て、横軸はチャネル長[nm]、縦軸はS値[mV/dec.]を示す。なお、図中のひ
し形はチャネル幅が40nm、三角はチャネル幅が100nm、四角はチャネル幅が50
0nmのときの測定結果を示す。
【0340】
図35(A)により、チャネル幅が狭いほどS値が低下していることが確認できた。
【0341】
次に、チャネル幅に対するDIBLの測定を行った。ドレイン電圧(V:[V])が
0.1Vのときのしきい値電圧からドレイン電圧(V:[V])が1Vのときのしきい
値電圧を引き、それを0.9で割って得られた値をDIBLとしている。実施例トランジ
スタの測定結果を図35(B)に示す。図35(B)において、横軸はチャネル長[nm
]、縦軸はDIBL値[V/V.]を示す。なお、図中のひし形はチャネル幅が40nm
、三角はチャネル幅が100nm、四角はチャネル幅が500nmのときの測定結果を示
す。
【0342】
図35(B)により、チャネル幅が狭くなるにつれて、DIBLが低下していることが
確認できた。
【0343】
以上より、本実施例のトランジスタはチャネル幅が狭いほど高い電気的特性をもつトラ
ンジスタであることが示された。
【実施例0344】
本実施例では、実施例試料として、図6(A)に示すトランジスタ460と同様の構成
のトランジスタについて作製し、電気特性の評価を行った。
【0345】
はじめに、実施例試料の作製方法について示す。
【0346】
実施例試料の作製方法は、実施例1を参酌することができる。なお、第1の酸化物膜の
み実施例1と異なり、本実施例の第1の酸化物膜は、膜厚10nmであり、成膜条件は、
In:Ga:Zn=1:3:4(原子数比)の酸化物ターゲット(IGZO(134))
を用いたスパッタリング法によりアルゴンおよび酸素(アルゴン:酸素=30sccm:
15sccm)混合雰囲気下において、圧力0.4Pa、電源電力0.5kWを印加し、
ターゲットと基板の間の距離を60mm、基板温度200℃として成膜した。
【0347】
また、チャネル長70nm、チャネル幅40nmの実施例トランジスタを作製した。
【0348】
次に作製したトランジスタにおいて、ドレイン電圧(V:[V])が1Vとし、ゲー
ト電圧(V:[V])を-3Vから3Vまで掃引した際の、ドレイン電流(I:[A
])の測定を行った。また、ドレイン電圧が0.1Vのときの電界効果移動度(μFE)
の測定を行った。実施例トランジスタの測定結果を図11に示す。図11において、ドレ
イン電圧(V:[V])が1Vのときの測定結果であり、横軸はゲート電圧(V:[
V])、左側の縦軸はドレイン電流(I:[A])、右側の縦軸は電界効果移動度(μ
FE:cm/Vs)を示す。
【0349】
図11に示すように本実施例で作製したトランジスタのオン電流は、ドレイン電圧(V
:[V])が1Vのときで5.08μAであった。また、ドレイン電圧が0.1Vのと
きの電界効果移動度は、17.0cm/Vsであった。
【0350】
以上より、本実施例のトランジスタは高い電気的特性をもつトランジスタであることが
示された。
【実施例0351】
本実施例では、実施例試料として、図6(A)に示すトランジスタ460と同様の構成
のトランジスタについて作製し、チャネル幅に対する電気特性の評価を行った。
【0352】
はじめに、実施例試料の作製方法について示す。
【0353】
実施例試料の作製方法は、実施例1を参酌することができる。実施例1で用いた試料(
第1の酸化物膜が膜厚10nmのIGZO(132)、酸化物半導体膜が膜厚40nmの
IGZO(111))を試料A、実施例5で用いた試料(第1の酸化物膜が膜厚10nm
のIGZO(134)、酸化物半導体膜が膜厚40nmのIGZO(111))を試料B
、第1の酸化物膜が膜厚20nmのIGZO(132)、酸化物半導体膜が膜厚15nm
のIGZO(111)であり、その他の構成は試料Aと同じ試料Cを作製した。なお、試
料Cの成膜条件は、第1の酸化物膜をIn:Ga:Zn=1:3:2(原子数比)の酸化
物ターゲット(IGZO(132))を用いたスパッタリング法によりアルゴンおよび酸
素(アルゴン:酸素=30sccm:15sccm)混合雰囲気下において、圧力0.4
Pa、電源電力0.5kWを印加し、ターゲットと基板の間の距離を60mm、基板温度
200℃として成膜し、酸化物半導体膜をIn:Ga:Zn=1:1:1(原子数比)の
酸化物ターゲット(IGZO(111))を用いたスパッタリング法によりアルゴンおよ
び酸素(アルゴン:酸素=30sccm:15sccm)混合雰囲気下において、圧力0
.4Pa、電源電力0.5kWを印加し、ターゲットと基板の間の距離を60mm、基板
温度300℃として成膜した。
【0354】
また、チャネル長40nmの実施例トランジスタを作製した。
【0355】
次に作製したトランジスタにおいて、ドレイン電圧(V:[V])が1Vのときのチ
ャネル幅Wに対するオン電流(Ion:[A])の測定を行った。なお、本実施例では、
オン電流は、ゲート電圧がしきい値電圧+1Vのときの電流値とする。実施例トランジス
タの測定結果を図12および図13に示す。図12および図13において、横軸はチャネ
ル幅(W:[nm])、縦軸はオン電流(Ion:[A])を示す。
【0356】
図12により、酸化物半導体膜の膜厚を15nmにした試料Cは、チャネル幅Wが短く
なるにつれて、オン電流Ionが低下している。一方、酸化物半導体膜の膜厚を40nm
にした試料Aと試料Bは、チャネル幅Wが短くなってもオン電流Ionの低下は見られな
かった。
【0357】
酸化物半導体膜が厚くなることでチャネル幅が短い場合の横方向のゲート電極の電界が
強くなり、オン電流Ionが向上したと推測される。
【0358】
また、図13(A)は、試料Aのトランジスタの特性、図13(B)は、試料Bのトラ
ンジスタの特性、図13(C)は、試料Cのトランジスタの特性を示している。図13
り、試料A、試料B、試料Cのどの条件においても、チャネル幅Wが長くなるにつれて、
オン電流Ionが増加する傾向にあることが確認された。
【実施例0359】
本実施例では、実施例試料として、図6(A)に示すトランジスタ460と同様の構成
のトランジスタについて作製し、作製したトランジスタの電気特性の評価を行った。
【0360】
はじめに、実施例試料の作製方法について示す。
【0361】
まず、シリコン基板上に下地絶縁膜となる膜厚300nmの酸化窒化シリコン(SiO
N)膜を形成した。酸化窒化シリコン膜は、スパッタリング法によりアルゴンおよび酸素
(アルゴン:酸素=25sccm:25sccm)混合雰囲気下において、圧力0.4P
a、電源電力(電源出力)5.0kWを印加し、シリコン基板とターゲットとの間の距離
を60mm、基板温度100℃の条件によって成膜した。
【0362】
酸化窒化シリコン膜表面を研磨処理後、膜厚20nmの第1の酸化物膜と膜厚20nm
の酸化物半導体膜を積層して形成した。成膜条件は、第1の酸化物膜はIn:Ga:Zn
=1:3:4(原子数比)の酸化物ターゲット(IGZO(134))を用いたスパッタ
リング法によりアルゴンおよび酸素(アルゴン:酸素=40sccm:5sccm)混合
雰囲気下において、圧力0.4Pa、電源電力0.5kWを印加し、ターゲットと基板の
間の距離を60mm、基板温度200℃として成膜し、酸化物半導体膜はIn:Ga:Z
n=1:1:1(原子数比)の酸化物ターゲット(IGZO(111))を用いたスパッ
タリング法によりアルゴンおよび酸素(アルゴン:酸素=30sccm:15sccm)
混合雰囲気下において、圧力0.4Pa、電源電力0.5kWを印加し、ターゲットと基
板の間の距離を60mm、基板温度300℃として成膜した。なお、第1の酸化物膜およ
び酸化物半導体膜は、大気曝露せずに連続成膜を行った。
【0363】
次に、加熱処理を行った。加熱処理は窒素雰囲気下、450℃で1時間行った後、酸素
雰囲気下、450℃で1時間行った。
【0364】
次に、酸化物半導体膜上に、ソース電極およびドレイン電極となるタングステン膜を1
50nm成膜した。成膜条件は、タングステンターゲットを用いたスパッタリング法によ
りアルゴン(アルゴン80sccm)雰囲気下において、圧力0.8Pa、電源電力(電
源出力)1.0kWを印加し、シリコン基板とターゲットとの間の距離を60mm、基板
温度230℃の条件によって成膜した。
【0365】
次に、タングステン膜上にレジストマスクを形成して、エッチングを行った。エッチン
グは、ICPエッチング法により、第1のエッチングを塩素、四弗化炭素および酸素(C
:CF:O=45sccm:55sccm:55sccm)混合雰囲気下、電源
電力3000W、バイアス電力110W、圧力0.67Paにて行い、その後、第2のエ
ッチングを酸素(O=100sccm)雰囲気下、電源電力2000W、バイアス電力
0W、圧力3.0Paにて行い、さらに第3のエッチングを塩素、四弗化炭素および酸素
(Cl:CF:O=45sccm:55sccm:55sccm)混合雰囲気下、
電源電力3000W、バイアス電力110W、圧力0.67Paにて行い、ソース電極お
よびドレイン電極を形成した。
【0366】
次に、酸化物半導体膜上にレジストマスクを形成して、第1の酸化物膜および酸化物半
導体膜を、ICPエッチング法により、三塩化硼素(BCl=80sccm)雰囲気下
、電源電力450W、バイアス電力100W、圧力1.2Pa、基板温度70℃にて行い
、島状の第1の酸化物膜および酸化物半導体膜に加工した。
【0367】
次に、酸化物半導体膜、ソース電極およびドレイン電極上に膜厚5nmの第2の酸化物
膜を成膜した。成膜条件は、In:Ga:Zn=1:3:2(原子数比)の酸化物ターゲ
ット(IGZO(132))を用いたスパッタリング法によりアルゴンおよび酸素(アル
ゴン:酸素=30sccm:15sccm)混合雰囲気下において、圧力0.4Pa、電
源電力0.5kWを印加し、ターゲットと基板の間の距離を60mm、基板温度200℃
とした。
【0368】
次に、CVD法によりゲート絶縁膜となる20nmの酸化窒化シリコン膜を成膜した。
【0369】
次に、酸化窒化シリコン膜上にスパッタリング法により膜厚30nmの窒化タンタル膜
を、窒化タンタル及びアルゴン(TaN:Ar=50sccm:10sccm)雰囲気下
、圧力0.6Pa、電源電力1kWを印加し、ターゲットと基板の間の距離を60mm、
基板温度常温として成膜し、その上に、膜厚135nmのタングステン膜をアルゴン(A
r=100sccm)雰囲気下、圧力2.0Pa、電源電力4kWを印加し、ターゲット
と基板の間の距離を60mm、基板温度230℃として積層して成膜した。
【0370】
次に、ICPエッチング法により、膜厚30nmの窒化タンタル膜および膜厚135n
mのタングステン膜の積層をエッチングした。エッチング条件は、塩素、四弗化炭素およ
び酸素(Cl:CF:O=45sccm:55sccm:55sccm)混合雰囲
気下、電源電力3000W、バイアス電力110W、圧力0.67Paにおいて第1のエ
ッチングを行い、第1のエッチングの後に塩素(Cl=100sccm)雰囲気下、電
源電力1000W、バイアス電力50W、圧力0.67Paにおいて第2のエッチングを
行い、ゲート電極を形成した。
【0371】
次に、ICPエッチング法により、ゲート絶縁膜、第2の酸化物膜の積層をエッチング
した。エッチング条件は、三塩化硼素(BCl=80sccm)雰囲気下、電源電力4
50W、バイアス電力100W、圧力1.2Pa、基板温度70℃においてエッチングを
行った。
【0372】
次に、ゲート電極上に膜厚140nmの酸化アルミニウム膜をスパッタリング法により
成膜し、その上に、膜厚300nmの酸化窒化シリコン膜をCVD法により成膜した。
【0373】
作製したトランジスタのチャネル長は0.48μm、チャネル幅は0.5μmであった
【0374】
次に、作製したトランジスタの温度依存性について評価を行った。
【0375】
評価は、25℃、50℃、100℃、150℃、200℃および250℃の6条件でド
レイン電圧(V:[V])が1V、ゲート電圧(V:[V])を-3Vから3Vまで
掃引した際の、チャネル幅が1μmあたりのドレイン電流(I:[A])の測定を行っ
た。実施例トランジスタの測定結果を図40(A)に示す。図40(A)において、横軸
はゲート電圧(V:[V])、縦軸はドレイン電流(I:[A])を示す。なお、図
中の矢印は、矢印の根本から矢印の先に向かうにつれて温度が高くなっていることを表し
ている。
【0376】
図40に示すように本実施例で作製したトランジスタは、温度変化によりオン電流があ
まり変化しないことが確認できた。
【0377】
また、しきい値電圧およびS値の温度の依存性について図40(B)および図40(C
)に示す。
【0378】
温度変化によりしきい値電圧の値およびS値はあまり変化しないことが確認できた。
【0379】
以上より、本実施例のトランジスタは温度耐性をもつトランジスタであることが示され
た。
【実施例0380】
本実施例では、酸化物半導体膜の形状による電気特性の違いについて、シミュレーショ
ンを行い、評価した。
【0381】
まず、トランジスタの構造について説明する。
【0382】
図25(A)は、酸化物半導体膜の上端部が角ばっているトランジスタ(以下、四角構
造のトランジスタともいう)のチャネル幅方向の断面図である。図中のWは、チャネル幅
を示しており、酸化物半導体膜の膜厚はW/2となるようにした。
【0383】
また、図25(B)は、本発明の一態様の構造である酸化物半導体膜の上端部が曲面を
有しているトランジスタ(以下、半円形構造のトランジスタともいう)のチャネル幅方向
の断面図である。図中のrは、曲率半径を示しており、r=W/2となるようにした。
【0384】
なお、四角構造、半円形構造において、それぞれの実効チャネル幅は、四角構造では側
面と上面を足した2W、半円形構造では円周部分のπr=πW/2=1.57Wとなり、
このときの実効チャネル幅Wの比は、0.785となる。
【0385】
また、図25(A)および図25(B)に示すトランジスタのチャネル長方向の断面図
はどちらとも図26のようになる。図中のLは、チャネル長を示している。
【0386】
次に、計算条件について説明する。
【0387】
計算には、synopsys社のSentaurusを用い、表1に示す条件にてシミ
ュレーションを行った。
【0388】
【表1】
【0389】
図27にドレイン電圧(V:[V])が0.1VのときのI-V特性と移動度、
図28にドレイン電圧(V:[V])が1VのときのI-V特性と移動度を示す。
【0390】
図27および図28より、半円形構造のI-V特性は、四角構造に比べて立ち上が
り電圧がよくなっている。また、実効チャネル幅Wを用いて計算した移動度は、半円形構
造のほうが大きくなっている。
【0391】
また、表2に図27および図28より求めた各種特性値の比較を示す。
【0392】
【表2】
【0393】
表2より、半円形構造は、オン電流以外の特性で四角構造よりも優れていることが分か
る。また、オン電流に関しても、その比率は0.892となり、実効チャネル幅Wの比0
.785よりも大きい。つまり、半円形構造の方がチャネル部に電子を誘起しやすくなっ
ているといえる。
【0394】
半円形構造の方がチャネル部に電子を誘起しやすい理由として、実効チャネル幅Wとオ
ン電流の関係が1つの理由として考えられる。オン電流は、ゲート絶縁膜の容量(以下、
GI容量ともいう)に比例すると考えられるが、半円形構造ではGI容量が平行平板の式
で表されず、下記の式で近似的に表される。
【0395】
【数1】
【0396】
は半円形構造の単位チャネル長当たりのGI容量、εはゲート絶縁膜の誘電率、t
GIはゲート絶縁膜の膜厚、tOSは酸化物半導体膜の膜厚を表す。
【0397】
半円形構造の場合、GI容量は実効チャネル幅W(πtOS)に比例しておらず、オン
電流も上記したような実効チャネル幅Wの比で議論することができない。
【0398】
一方、四角構造の単位チャネル長当たりのGI容量は、下記の式で近似的に表される。
【0399】
【数2】
【0400】
オン電流を求めるには、GI容量の比で考える必要があり、数式2から求めた四角構造
のGI容量と数式1から求めた半円形構造のGI容量の比をとると、C/C=0.9
68程度となり、実効チャネル幅Wの比0.785よりも大きくなる。この見積もりは近
似的なものであるため、シミュレーションによる計算結果の比と一致しないが半円形構造
の方がチャネル部に電子を誘起しやすくなっているということができる。
<参考例>
【0401】
本参考例では、CAAC-OS膜を用いたトランジスタが短チャネル効果に対する耐性
が十分にある点について説明する。
【0402】
短チャネル効果に対する耐性の指標として、特性長(Characteristic
Length)が広く用いられている。特性長とは、チャネル部のポテンシャルの「曲が
り方」の指標であり、特性長が短いほどポテンシャルが急峻に立ち上がるため、短チャネ
ル効果に強い。
【0403】
CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、蓄積型トランジスタであり、CAAC-O
S膜を用いたトランジスタが短チャネル効果に強いのは、蓄積型トランジスタの特性長が
反転型トランジスタの特性長に比べて短い事に起因すると考えられる。
【0404】
図36にトランジスタ構造の模式図を用いて詳細に説明する。なお、εは半導体膜の
誘電率、εOXはゲート絶縁膜の誘電率、tは半導体膜の厚さ、tOXはゲート絶縁膜
の厚さである。
【0405】
まず、nチャネル型の反転型のトランジスタを想定し、そのポアソン方程式を解いてチ
ャネル部分のポテンシャルを解析する。なお、図中に斜線で示した、チャネル部となる半
導体膜中の微小な区間x乃至x+dxにガウスの法則を適用して以下の式を導いた。
【0406】
【数3】
【0407】
ここで、φ(x)は位置xにおけるポテンシャル(表面ポテンシャル)、φ(x+dx
)は位置x+dxにおけるポテンシャル(表面ポテンシャル)、Vはゲート電圧、V
はフラット・バンド電圧、eは素電荷、Nはアクセプター密度である。
【0408】
上記数式3を整理すると以下のようになる。
【0409】
【数4】
【0410】
なお、ここで以下の数式5を数式4に代入して数式6を得た。
【0411】
【数5】
【0412】
【数6】
【0413】
さらに以下の数式7を用いて数式6の一般解を求め、数式8を得た。
【0414】
【数7】
【0415】
【数8】
【0416】
さらにポテンシャルφ(x)は、次に示す境界条件を満たす。
【0417】
【数9】
【0418】
上記境界条件満たすように、係数A、Bを求め、整理することで、微分方程式の特解を
得ることができ、ポテンシャルφ(x)は以下のようになる。
【0419】
【数10】
【0420】
実際に、x=0またはx=Lをそれぞれ代入することにより、数式10は数式9の境界
条件を満たすことが容易に確かめられる。
【0421】
ここで、式中lは特性長であり、ポテンシャルの曲がり易さの指標となっており、短い
ほどFETのチャネル部のポテンシャルは急峻に変化する。
【0422】
よって、反転型のトランジスタの特性長は、以下のようになる。
【0423】
【数11】
【0424】
次に、CAAC-OS膜を用いたトランジスタを含む、蓄積型のトランジスタに対して
も同様の考察を行い、特性長を比較する。同じく、チャネル部となる半導体膜中の微小な
区間x乃至x+dxにガウスの法則を適用して以下の式を導いた。
【0425】
【数12】
【0426】
ここで、nは真性キャリア密度、kはボルツマン定数、φはフェルミ・ポテンシ
ャルである。
【0427】
上記式を整理すると以下のようになる。
【0428】
【数13】
【0429】
ただし、lは反転型のトランジスタの特性長に等しい。
【0430】
上記式に以下のような近似式(数式14)を用いて数式13の右辺を展開し、数式15
を得た。
【0431】
【数14】
【0432】
【数15】
【0433】
ここで、nは位置xにおける電子密度である。さらに、以下の数式16、数式17
を数式15に代入して数式18を得た。
【0434】
【数16】
【0435】
【数17】
【0436】
【数18】
【0437】
さらに以下の数式19を用いて数式18を整理して、数式20を得た。
【0438】
【数19】
【0439】
【数20】
【0440】
なお上記式は、点xの近傍のみ有効である。
【0441】
以上の議論から蓄積型のトランジスタの、点xの近傍における特性長は、以下のよう
になる。
【0442】
【数21】

反転型のトランジスタと蓄積型のトランジスタを比較するため、反転型のトランジスタ
における特性長lを改めてl(inv)と表し、蓄積型のトランジスタの特性長l’を改
めてl(acc)と表す。両者を比較する。
【0443】
【数22】
【0444】
上記式より、l(inv)>l(acc)であることが分かる。
【0445】
なお、点xによって、算出される蓄積型のトランジスタの特性長l(acc)の値は
、変化するが、いずれの場合でも反転型のトランジスタに比べると短くなる、さらに、ソ
ース/ドレイン付近では電子密度が多くなるため、ポテンシャルはより急峻に立ち上がる
【0446】
以上により蓄積型のトランジスタの特性長が反転型のトランジスタの特性長よりも短く
なることが示された。
【符号の説明】
【0447】
110 基板
120 下地絶縁膜
137 チャネル領域
138 チャネル領域
160 ゲート絶縁膜
170 ゲート電極
210 基板
220 下地絶縁膜
230 酸化物半導体膜
260 ゲート絶縁膜
270 ゲート電極
400 基板
402 下地絶縁膜
403a 第1の酸化物膜
403b 酸化物半導体膜
403c 第2の酸化物膜
404 多層膜
404a 第1の酸化物膜
404b 酸化物半導体膜
404c 第2の酸化物膜
405a 導電膜
405b 導電膜
406a ソース電極
406b ドレイン電極
407 絶縁膜
408 ゲート絶縁膜
409 導電膜
410 ゲート電極
412 酸化物絶縁膜
414 バリア膜
416 側壁絶縁膜
418 側壁絶縁膜
419a 電極
419b 電極
420a 配線
420b 配線
435 境界
450 トランジスタ
460 トランジスタ
470 トランジスタ
550 トランジスタ
560 トランジスタ
570 トランジスタ
580 トランジスタ
602 フォトダイオード
640 トランジスタ
656 トランジスタ
658 フォトダイオードリセット信号線
659 ゲート信号線
672 フォトセンサ基準信号線
700 記憶素子
701 回路
702 回路
703 スイッチ
704 スイッチ
706 論理素子
707 容量素子
708 容量素子
709 トランジスタ
710 トランジスタ
713 トランジスタ
714 トランジスタ
720 回路
1189 ROMインターフェース
1190 基板
1191 ALU
1192 ALUコントローラ
1193 インストラクションデコーダ
1194 インタラプトコントローラ
1195 タイミングコントローラ
1196 レジスタ
1197 レジスタコントローラ
1198 バスインターフェース
1199 ROM
2200 トランジスタ
2201 絶縁膜
2202 配線
2203 プラグ
2204 絶縁膜
2205 配線
2206 配線
3001 配線
3002 配線
3003 配線
3004 配線
3005 配線
3200 トランジスタ
3300 トランジスタ
3400 容量素子
8000 テレビジョン装置
8001 筐体
8002 表示部
8003 スピーカ部
8004 CPU
8100 警報装置
8101 マイクロコンピュータ
8102 検出部
8200 室内機
8201 筐体
8202 送風口
8203 CPU
8204 室外機
8300 電気冷凍冷蔵庫
8301 筐体
8302 冷蔵室用扉
8303 冷凍室用扉
8304 CPU
9700 電気自動車
9701 二次電池
9702 回路
9703 駆動装置
9704 処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40