(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181473
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】医療デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20231214BHJP
A61B 17/3207 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A61B17/22
A61B17/3207
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188178
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2022201802の分割
【原出願日】2018-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2017059455
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】多田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】平尾 美朱帆
(57)【要約】
【課題】生体管腔内に存在する物体が長尺部材のルーメン内に詰まるのを防止できる医療デバイスを提供する。
【解決手段】医療デバイスは、軸方向に延在するルーメンが形成され、回転可能な長尺部材と、前記長尺部材の先端側の前記ルーメン内に少なくとも一部が挿入され、前記長尺部材の先端よりも先端側に延在する板状の部材を有する先端部材と、前記長尺部材の内壁に配置された破砕部と、を有し、前記先端部材の板状の部材の少なくとも一部と前記破砕部の先端側の少なくとも一部が、前記軸方向において重なる位置に配置されている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体管腔内に存在する物体を搬送するための医療デバイスであって、
軸方向に延在するルーメンが形成され、回転可能な長尺部材と、
前記長尺部材の先端側の前記ルーメン内に少なくとも一部が挿入され、前記長尺部材の先端よりも先端側に延在する板状の部材を有する先端部材と、
前記長尺部材の内壁に配置された破砕部と、を有し、
前記板状の部材の少なくとも一部と前記破砕部の先端側の少なくとも一部が、前記軸方向において重なる位置に配置された、医療デバイス。
【請求項2】
前記先端部材の正面視における中心部は、前記先端部材の正面視における端部よりも大きな厚みを有する、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記破砕部は、板状の形状である、請求項1又は請求項2に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記破砕部の先端部は、鋭利な形状を有する、請求項3に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記長尺部材を覆うカバー材と、
前記カバー材に接続され、前記カバー材の先端側に延在する接続部材と、を有し、
前記板状の部材は、前記接続部材を介して前記カバー材と接続されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記接続部と前記板状の部材との間に配置された支持部をさらに有する、請求項5に記載の医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
冠動脈等の血管内に形成された狭窄部を治療する方法として、バルーンカテーテルを使用した処置やステント留置術などが従来から行われている。しかしながら、バルーンによる血管内腔の拡張だけでは長期にわたる治療効果を得ることが困難であり、またステントの留置は新たな狭窄の要因となることが知られている。特に、狭窄部のプラークが石灰化して硬くなっている場合や狭窄部が血管の分岐部などに生じている場合のような複雑な病変においては、バルーンカテーテルやステントを使用した処置だけでは充分な治療効果を得ることができないこともある。このため、血管開存期間の延長や複雑病変における治療成績の改善に寄与する処置として、狭窄の要因となるプラークや石灰化病変、血栓などの物体を体外に除去するアテレクトミーが注目されている(下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、血管等の生体管腔内で処置を行う場合、血管内に存在する物体(例えば、狭窄部に対する処置によって生じたデブリや浮遊血栓等)の搬送が課題となる。
【0005】
例えば、ルーメンが形成されたカテーテル等の医療デバイスを利用して上記物体(搬送物)の搬送を行う場合、ルーメン内に吸引圧を作用させるための吸引デバイスが利用される。しかしながら、長尺なカテーテルのルーメン内では比較的大きな圧損が生じるため、吸引デバイスを利用した場合でもカテーテルの先端部に十分な吸引圧を作用させることは難しい。また、搬送物をルーメン内に流入させることができたとしても、搬送物の大きさによっては、当該搬送物をカテーテルの基端側まで搬送することができず、カテーテルの先端部付近に搬送物の詰まりなどを生じさせてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、生体管腔内に存在する物体が長尺部材のルーメン内に詰まるのを防止できる医療デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、生体管腔内に存在する物体を搬送するための医療デバイスであって、軸方向に延在するルーメンが形成され、回転可能な長尺部材と、前記長尺部材の先端側の前記ルーメン内に少なくとも一部が挿入され、前記長尺部材の先端よりも先端側に延在する板状の部材を有する先端部材と、前記長尺部材の内壁に配置された破砕部と、を有し、前記板状の部材の少なくとも一部と前記破砕部の先端側の少なくとも一部が、前記軸方向において重なる位置に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る医療デバイスは、破砕部が挿入部材に対して相対的に回転すると、破砕部と挿入部材との間に形成した間隙に搬送対象となる物体を挟み込んで、当該物体に対してせん断力を付与する。このため、医療デバイスは、長尺部材のルーメン内に搬送対象となる物体が詰まるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る医療デバイスを示す図である。
【
図2A】実施形態に係る医療デバイスの先端部を拡大して示す側面図である。
【
図2B】実施形態に係る医療デバイスの先端部を拡大して示す平面図である。
【
図3A】実施形態に係る医療デバイスの先端部の構成を簡略化して示す断面図である。
【
図3B】実施形態に係る医療デバイスの先端部の構成を簡略化して示す断面図である。
【
図4】実施形態に係る医療デバイスの挿入部材の先端部(先端部材)を示す斜視図である。
【
図5】実施形態に係る医療デバイスの破砕部を示す斜視図である。
【
図6】実施形態に係る医療デバイスの挿入部材の基端部(基端部材)を示す斜視図である。
【
図7A】実施形態に係る医療デバイスの手元操作部の拡大断面図である。
【
図7B】実施形態に係る長尺部材およびカバー材の拡大断面図である。
【
図8】実施形態に係る医療デバイスの使用例を模式的に示す断面図である。
【
図9】実施形態に係る医療デバイスの作用を説明するための図であって、
図3Aに対応する断面図である。
【
図10A】実施形態に係る医療デバイスの作用を説明するための図であって、
図2Aに示す矢印10A方向から見た正面図である。
【
図10B】実施形態に係る医療デバイスの作用を説明するための図であって、
図9に示す矢印10B-10B’に沿う断面図である。
【
図10C】実施形態に係る医療デバイスの作用を説明するための図であって、
図9に示す矢印10C-10C’に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
図1~
図7は、実施形態に係る医療デバイス1の各部の構成の説明に供する図であり、
図8~
図10は、医療デバイス1の作用の説明に供する図である。
【0012】
本実施形態に係る医療デバイス1は、
図8に示すように、生体管腔である血管Hに形成された狭窄部Sや閉塞部等の物体を切削する処置に用いることができる医療器具として構成している。
【0013】
図1を参照して、概説すると、医療デバイス1は、生体内に導入可能な長尺状のシース10と、シース10の先端側に配置された先端構造体100と、長尺部材20の基端側に配置された手元操作部250と、を有している。
【0014】
先端構造体100について説明する。
【0015】
図2Aは、シース10の先端部付近の側面図を示し、
図2Bはシース10の先端部付近の平面図を示している。
図3Aおよび
図3Bは、シース10の先端部付近の断面(軸方向に沿う縦断面)を拡大して示している。なお、
図3Aおよび
図3Bにおいては一部の部材(支持部170、接続部材175、ガイドワイヤ挿通部180、被覆部材190)の図示を省略している。
【0016】
本明細書では、医療デバイス1において血管Hに挿入する側を先端側(遠位側)と称し、手元操作部250が配置された側を基端側(近位側)と称する。また、シース10の延在方向(
図3Aおよび
図3Bに示す左右方向)を軸方向と称する。
【0017】
図2Aおよび
図2Bに示すように、先端構造体100は、シース10の先端部に配置された回転体110と、シース10のルーメン25(長尺部材20のルーメン25)内で搬送対象となる物体(例えば、狭窄部Sに対する処置によって生じたデブリDや浮遊血栓等)の破砕(切断)および搬送を行う搬送部120と、を有している。
【0018】
回転体110は、
図3Aに示すように、軸方向に延在する内腔115を備えた中空形状を有している。また、回転体110は、狭窄部Sに対して切削力を作用させる切削部113を有している。回転体110の先端部および基端部の各々には内腔115に連通する開口部が形成されている。
【0019】
回転体110の切削部113は、先端側に向けて凹凸状に切り欠いた形状(ノコギリ状)の刃面で構成されている。ノコギリ状の刃面で構成された切削部113は、狭窄部Sを細かく破砕することができ、狭窄部Sの切削を効率良く行うことができる。
【0020】
なお、切削部113は、狭窄部Sに対して切削力を作用させることが可能であれば、形状、厚み、長さ、材質等は特に限定されない。例えば、切削部113は、医療分野において公知のトレパン刃面(先端側に向けて肉厚が減少する環状の刃面)により構成することが可能である。切削部113をトレパン刃面で構成した場合、狭窄部S内へ回転体110を円滑に進入させることができ、狭窄部Sが軟質組織などである場合においても、狭窄部Sの切削を効率良く行うこと可能になる。
【0021】
回転体110は、例えば、生体適合性を備える公知の金属材料や樹脂材料、セラミックスなどによって構成することが可能である。上記金属材料としては、例えば、ステンレス、ニッケルチタン(チタン合金)、タングステン、コバルトクロム、チタン、タングステンカーバイトを用いることができる。また、上記各金属材料の表面に窒化処理等の表面処理を施して、母材よりもその表面の硬度を向上させたものを好適に用いることができる。また、切削部113は、例えば、同種または異種金属を多層に配置した多層構造で構成してもよい。上記樹脂材料としては、例えば、BS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、PEEK、ポリカーボネート、アクリル、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、アクリロニトリルスチレン、これらの樹脂材料にガラス繊維等の添加物を含有させて強度を向上させたものを用いることができる。
【0022】
図3Aおよび
図3Bに示すように、搬送部120は、回転体110の内腔115およびシース10のルーメン25に挿入された挿入部材130と、挿入部材130の周囲に配置された破砕部160と、を有している。
【0023】
挿入部材130は、当該挿入部材130の先端部を構成する先端部材140と、当該挿入部材130の基端部を構成する基端部材150と、を有している。
【0024】
図3Aに示すように、先端部材140の先端部142は、回転体110の先端から突出している。また、先端部材140の基端部143は、回転体110の内腔115に配置されている。
【0025】
図3Aに示すように、基端部材150の先端部152は、先端部材140の基端部143に固定されている。また、
図3Bに示すように、基端部材150の基端部153は、シース10のルーメン25内に配置されている。基端部材150の基端部153は、回転体110から基端側へ所定の距離だけ離間した位置に配置されている。
【0026】
図3Bに示すように、破砕部160の先端部162は、回転体110の内腔115に配置されている。破砕部160の先端部162は、軸方向において先端部材140の基端部143と重なる位置(基端部143付近)に配置されている。
【0027】
破砕部160の基端部163は、回転体110から基端側へ所定の距離だけ離間した位置に配置されている。破砕部160の基端部163は、軸方向において基端部材150の基端部153と重なる位置(基端部153付近)に配置されている。
【0028】
図3Aおよび
図3Bに示すように、破砕部160の先端部162は、固定部169aを介して回転体110の内壁に固定されている。また、回転体110の基端部は、シース10が備える長尺部材20の先端部と固定されている。
【0029】
長尺部材20は、回転可能に構成されている。
図3A中の矢印r1で示すように長尺部材20が回転すると、長尺部材20の回転に連動して
図3A中の矢印r2で示すように回転体110が回転する。また、回転体110が回転すると、回転体110の回転に連動して破砕部160が回転する。一方、挿入部材130(先端部材140および基端部材150)は、回転体110、長尺部材20、および破砕部160のいずれとも固定(連結)されていないため、各部材20、110、160の回転に連動して回転しない。つまり、挿入部材130は、非回転の状態で配置されている。
【0030】
次に、先端部材140、基端部材150、および破砕部160の形状等について説明する。
【0031】
【0032】
先端部材140は、一方の面側(図示例では上面側)に湾曲した形状を有する板状の部材で構成している。また、先端部材140は、先端部142側から基端部143側に向けて幅広となる形状(
図4に示す長手方向a1-a1’と直交するb1-b1’方向における寸法が先端部142側から基端部143側へ向けて大きくなる形状)で形成されている。
【0033】
図4および
図10A(
図2に示す矢印10A方向から見た正面図)に示すように、先端部材140の先端面142aは、正面側から見た形状が三日月状に湾曲した形状(正面視において、中央部分が最も面積が大きく、中央部分から両端部分へ向けて面積が徐々に減少した形状)で形成されている。なお、先端部材140の長手方向における各部の断面形状(長手方向と直交する方向に沿う断面形状)は、先端面142aと同様に、三日月状に湾曲した形状で形成されている(
図10Bを参照)。先端部材140は、上記正面視において、中央部分から各両端部にかけて一定の厚みを有する湾曲した形状に形成してもよい。
【0034】
先端部材140の内面は、先端部材140の外形形状に対応した湾曲した断面形状を有している(
図10Bを参照)。また、先端部材140の内側には空間部145が形成されている。
【0035】
先端部材140には、空間部145と当該空間部145の外部とを連通する複数の溝部146、147が形成されている。溝部146は、溝部147よりも先端側に配置されており、かつ、溝部147よりも小さな面積を有している。図示するように、溝部146は、例えば、先端部材140の幅方向に沿って対をなすように2つ形成することができる。同様に、溝部147は、例えば、先端部材140の幅方向に沿って対をなすように2つ形成することができる。
【0036】
先端部材140の基端部143の内側(先端部材140の内面側)には、基端部材150の先端部152が挿入される。先端部材140の基端部143と基端部材150の先端部152は固定されている。固定方法は、例えば、接着、溶着、はんだ付け等の公知の方法を採用することが可能である。
【0037】
なお、基端部材150の先端部152は、
図10Bに示すように、先端部材140の基端部143に対向する面側が先端部材140と直接的に接するように配置していてもよいし、例えば、先端部材140の基端部143に対向する面との間に固定部(接着剤、溶着部、はんだ等)を配置してもよい。
【0038】
先端部材140の基端部143には、先端部材140の一部を切り欠いて形成した切り欠き部143aが形成されている。
図3Aに示すように、破砕部160の先端部162は、切り欠き部143aが形成された位置と略同一の位置(軸方向において重なる位置)に配置されている。切り欠き部143aには、例えば、デブリD等に対して切削力を付与する刃面等を設けることが可能である。
【0039】
【0040】
破砕部160は、長手方向(a2-a2’方向)に螺旋状に延在する板状の部材で構成している。
【0041】
破砕部160は、長手方向に沿って互いに対向するように配置された第1螺旋部161aおよび第2螺旋部161bを有している。各螺旋部161a、161bは、互いに所定の間隔を空けて並行しており、それぞれが螺旋状(波状)に延在している。なお、
図4以外の各図においては、図示を簡略化するために、破砕部160は一つの連続した部材で表している。
【0042】
破砕部160の先端部162(各螺旋部161a、161bの先端部)は、刃面を形成する鋭利な形状を有している。また、破砕部160の基端部163は、各螺旋部161a、161bが一体的に連結されたリング状の終端部を構成している。
【0043】
破砕部160の先端部162は、先端が所定の方向に屈曲した爪のような形状(先端に向けて真っ直ぐ向かず、軸方向に対して傾斜した形状)を有している。なお、破砕部160の先端部162は、例えば、軸方向に対して真っ直ぐ向くように略直線状に延在する形状で形成してもよい。
【0044】
破砕部160は、先端に向けて真っ直ぐ向かず、軸方向に対して傾斜した形状を有する場合には、シース10内部への取り込み(搬送能力)が高まる。また、破砕部160は、先端に向けて真っ直ぐ向かう形状を有する場合、狭窄部等に対する破砕能力が向上する。
【0045】
前述したように、破砕部160の先端部162は、固定部169aを介して回転体110に固定されている(
図3Aを参照)。固定部169aは、例えば、接着、溶着、はんだ付け等の公知の方法で形成することができる。また、本実施形態では、破砕部160の先端部162よりも基端側に位置する部分でも、破砕部160を回転体110に固定している(
図3A中の固定部169bを参照)。このように、二つの固定部169a、169bを介して破砕部160を回転体110に固定しているため、回転体110から破砕部160が脱落等するのを好適に防止することができる。また、破砕部160は長尺部材の内面との間に破砕できない部分を有していても良い。また、破砕部160は長尺部材と一体でもよい。
【0046】
図3Bに示すように、破砕部160の基端部163は、基端部材150の基端部153付近に配置している。なお、破砕部160の基端部163は、基端部材150の基端部153の外周に沿って配置されているが、基端部材150の基端部153とは固定されていない。
【0047】
破砕部160は、例えば、シース10のルーメン25内に配置された状態でルーメン25を過剰に狭めることのないように、薄板状の部材で構成することが好ましい。また、破砕部160は、例えば、金属製の管状部材に対してレーザー加工等を施して、
図5に示すような螺旋形状を管状部材に付与することで製作することができる。
【0048】
【0049】
基端部材150は、長手方向(a3-a3’方向)に延在する中実な板状の部材で構成している。なお、基端部材150は、例えば、中空な板状の部材で構成することも可能である。
【0050】
基端部材150は、長手方向と直交する方向に沿う断面が先端部152から基端部153にかけて略一定の形状で形成されている。本実施形態では、基端部材150は、楕円形の断面形状を有している(
図10B、
図10Cを参照)。
【0051】
次に、
図3Aおよび
図3Bを参照して、挿入部材130(先端部材140および基端部材150)と破砕部160の配置関係について説明する。
【0052】
破砕部160は、先端部材140の基端部143付近から基端部材150の基端部153付近まで延在している。破砕部160は、先端部材140および基端部材150の周囲を螺旋状に巻回するように配置されている。また、破砕部160は、先端部材140および基端部材150の各々との間に所定の間隙gを形成するように配置されている。
【0053】
先端部材140の先端部142は、回転体110の先端部よりも先端側に突出して配置している。先端部材140の先端部142は、後述するように所定のガイド面A1を形成する(
図2Aおよび
図10Aを参照)。
【0054】
破砕部160の基端部163が配置される位置は、破砕部160が搬送対象となる物体を最終的に搬送させる位置を規定する。本実施形態では、回転体110から所定の距離だけ基端側へ離れた位置まで物体を搬送することを可能にするために、
図3Bに示すように、破砕部160の基端部163の位置をシース10のルーメン25内の所定の位置に設定している。
【0055】
挿入部材130(先端部材140および基端部材150)、および破砕部160に関する各寸法は特に限定されないが、例えば、以下のような寸法例を挙げることができる。
【0056】
先端部材140の全長(長手方向の長さ)は、例えば、5mm~25mmである。また、先端部材140が回転体110から突出する長さ(軸方向における突出長)は、例えば、3mm~20mmである。
【0057】
基端部材150の全長(長手方向の長さ)は、例えば、30~1600mmである。また、基端部材150は、例えば、29.5mm~1599.5mmが長尺部材20のルーメン25内に挿入される。
【0058】
破砕部160の全長(長手方向の長さ)は、例えば、28~1598mmである。また、破砕部160は、例えば、0.3mm~10mmが回転体110の内腔115に挿入される。また、破砕部160は、例えば、27.7mm程度が長尺部材20のルーメン25内に挿入される。
【0059】
なお、挿入部材130(先端部材140および基端部材150)および破砕部160を構成する材料は特に限定されないが、例えば、回転体110の材料として例示した各材料を用いることが可能である。
【0060】
次に、
図2A、
図2Bを参照して、先端構造体100に含まれる搬送部120(挿入部材130および破砕部160)以外の各構成部材について説明する。
【0061】
先端構造体100は、回転体110から突出した先端部材140の先端部142を支持する支持部170と、支持部170をシース10に固定する接続部材175と、接続部材175の先端部に配置されたガイドワイヤ挿通部180と、支持部170、ガイドワイヤ挿通部180、および接続部材175を一体的に接続する被覆部材190と、を有している。
【0062】
支持部170は、第1支持部171と、第2支持部172と、を有している。第1支持部171は、第2支持部172よりも先端側に配置されている。
【0063】
第1支持部171および第2支持部172は、軸方向と交差する方向(
図2Bに示す上下方向)に延在する円筒形状の部材で構成している。
【0064】
第1支持部171は第2支持部172よりも小さな外径を有している。先端部材140は、各支持部171、172に対して固定されている。固定方法は、例えば、接着、溶着、はんだ付け等の公知の方法を採用することができる。
【0065】
先端部材140は、第1支持部171と第2支持部172の外径差により、先端部142側が基端部173側よりも高さ方向の下方側(
図2Aの下方向)に向けて傾斜した状態で配置されている。
【0066】
接続部材175は、シース10の外表面(カバー材30の外表面)に固定されている。接続部材175は、略直線状に延在する棒状の部材で構成している。接続部材175の先端部には、ガイドワイヤルーメン185が形成されたガイドワイヤ挿通部180が固定されている。
【0067】
ガイドワイヤ挿通部180は、軸方向に延在した中空状の部材で構成している。ガイドワイヤ挿通部180の先端部は、血管H等の生体管腔内での円滑な移動を可能にするために、先端側に先細るテーパー形状を有している。なお、ガイドワイヤ挿通部180の形状、長さ、外径、内径、材質等について特に制限はない。例えば、図示するように軸方向に沿って略直線状に延在するようにガイドワイヤ挿通部180を配置することにより、先端構造体100の細径化を図ることが可能になる。これにより、狭窄部S等に対する医療デバイス1の挿通性(送達性)を向上させることができる。
【0068】
被覆部材190は、ガイドワイヤ挿通部180の基端部、接続部材175の先端部、および先端部材140の先端部142を覆った状態で各部材140、175、180を接続している。被覆部材190は、例えば、公知の熱収縮チューブにより構成することができる。熱収縮チューブとしては、例えば、ETFE(エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系樹脂、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、もしくはポリウレタン等で構成された中空状の部材を用いることが可能である。
【0069】
なお、ガイドワイヤ挿通部180、接続部材175、および先端部材140の接続方法は被覆部材190を使用した方法に限定されることはなく、例えば、接着、溶着、半田付け、接着テープのような固定部材による方法等を採用することも可能である。
【0070】
支持部170、接続部材175、およびガイドワイヤ挿通部180の構成材料は特に限定されず、例えば、公知の樹脂材料や金属材料を用いることが可能である。
【0071】
次に、先端部材140および支持部170が形成するガイド面A1について説明する。
【0072】
図2Aに示すように、ガイド面A1は、先端部材140および支持部170により、回転体110の先端側に形成される。また、
図10Aに示すように、先端部材140および支持部170は、先端構造体100を正面視した際に、回転体110の先端面(切削部113の端面)の一部を覆う(遮蔽する)。回転体110の切削部113が狭窄部Sと接触可能な範囲は、ガイド面A1が形成されていない範囲h1(以下、有効切削範囲とする)に制限される。
【0073】
上記のように、有効切削範囲h1を設定することの利点について
図8および
図10Aを参照して説明する。
図8および
図10Aは、医療デバイス1を使用して血管Hに形成された狭窄部Sを切削している際の様子を模式的に示している。
【0074】
狭窄部Sの切削に際して、術者等は、図中の矢印r2で示すように回転体110を回転させる。また、術者等は、回転体110を回転させた状態で狭窄部Sに切削部113を接近させて、狭窄部Sを切削する。例えば、このような処置を行っている最中に、意図せずに回転体110が狭窄部Sを越えて
図8中の上方側に位置する血管壁に到達してしまうと、切削部113が血管壁を貫通(穿孔)してしまうリスクが生じる。これに対して、前述したようにガイド面A1によって切削部113が切削力を及ぼす範囲が有効切削範囲h1に制限されていると、切削部113が血管壁を貫通するリスクが大幅に低減する。なお、有効切削範囲h1を血管壁の厚さよりも小さくなるよう設定することで、血管壁の貫通をより確実に防止することが可能になる。
【0075】
切削部113による切削効率を向上させる場合、切削効率と血管壁を貫通するリスクとのバランスを考慮したうえで、例えば、回転体110の形状や切削部113の外径を変更して有効切削範囲の大きさを調整することができる。このような調整を行うことにより、切削効率の向上と安全性の向上とを両立することが可能になる。
【0076】
次に、シース10について説明する。
【0077】
図7B(シース10の部分拡大断面図)に示すように、シース10は、長尺部材20と、カバー材(外層)30と、を有している。
【0078】
長尺部材20は、軸方向に延在するルーメン25を有する金属製の管状部材で構成している。長尺部材20には、所定のスリット21aが形成されている。長尺部材20は、スリット21aが形成されることにより、血管H等の生体管腔内における湾曲性が向上されたものとなっている。なお、スリット21aの具体的な形状は特に限定されない。また、例えば、大きさや形状が異なる複数のパターンのスリットを長尺部材20に形成することも可能である。
【0079】
カバー材30は、長尺部材20の外表面を覆うように配置されている。カバー材30は、生体内において生体組織を長尺部材20から保護する。また、カバー材30は、長尺部材20のルーメン25内に流入させた物体(デブリDや浮遊血栓)が長尺部材20の外部へ流出するのを防止する。カバー材30としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等の公知の樹脂材料で構成された中空状の部材(管状部材)を用いることが可能である。
【0080】
なお、長尺部材20は、当該長尺部材20の基端側から先端側(手元操作部250側から回転体110側)へ回転駆動力を伝達することが可能であれば構造や材質等は特に限定されない。例えば、長尺部材20は、単層または複数の層で構成された樹脂製のチューブ、樹脂製のチューブにブレード等の補強部材を付加したもの、スパイラル加工が施された金属製のパイプ、軸方向に伸縮可能な中空状のコイルバネなどにより構成することも可能である。
【0081】
長尺部材20は、回転体110に固定されている。本実施形態では、
図3Aに示すように、回転体110の内面と長尺部材20の内面の繋ぎ目が平坦(平滑)になるように、回転体110の基端面と長尺部材20の先端面とを位置合わせした状態で各部材10、110が固定されている。なお、長尺部材20と回転体110の固定方法としては、各部材10、110の材質を考慮した上で、例えば、接着、融着、溶着等の方法を採用することが可能である。
【0082】
シース10(長尺部材20およびカバー材30)の各寸法は特に限定されないが、例えば、長尺部材20の内径は0.7mm~2.5mm、長尺部材20の外径は、例えば、0.8mm~2.6mm、軸方向に沿う長さは、例えば、300mm~1600mmに形成できる。また、カバー材30の内径は、例えば、0.9mm~2.7mm、カバー材30の外径は、例えば、l1.0mm~3.0mm、カバー材30の軸方向に沿う長さは、例えば、300mm~1600mmに形成できる。
【0083】
次に、手元操作部250について説明する。
【0084】
図1に示すように、手元操作部250は、ハブ251と、ハブ251に設けられたコネクタ部253と、コネクタ部253に設けられたポート255と、を有している。
【0085】
長尺部材20の基端部23は、ハブ251を挿通してハブ251の基端ポート252から導出されている。ハブ251の基端部には、基端ポート252からの流体等の漏洩を防止する弁体257aを配置している。
【0086】
長尺部材20を被覆するカバー材30の基端部33はハブ251内に挿入さており、ハブ251内の所定の位置で固定されている。なお、カバー材30は、長尺部材20および回転体110とは固定(連結)されていない。
【0087】
コネクタ部253に設けられたポート内には、流体が流通可能な流路が形成されている。コネクタ部253は、例えば、医療分野において公知であるルアーテーパー型のコネクタなどによって構成することができる。
【0088】
ポート255には流体の流通を操作するための三方活栓を配置している。ポート255は、例えば、流体が流通可能なチューブ291を介して吸引装置290と連結することができる。吸引装置290は、例えば、負圧を発生させることが可能な公知の流体吸引ポンプで構成することができる。
【0089】
長尺部材20の基端部は、所定のコネクタ(図示省略)を介して外部駆動装置280と接続可能に構成している。外部駆動装置280には、長尺部材20を回転させるための駆動力を発生させる公知の電気モータ等により構成された駆動源が備えられている。
【0090】
外部駆動装置280を作動させて長尺部材20に回転力を付与すると、
図3A中の矢印r1で示すように長尺部材20が回転する。長尺部材20が回転すると、
図3A中の矢印r2で示すように長尺部材20の先端部に固定された回転体110と、回転体110に固定された破砕部160が回転する。なお、カバー材30は、長尺部材20および回転体110とは固定されていないため、長尺部材20が回転した場合においても回転しない。
【0091】
外部駆動装置280および吸引装置290の動作制御は、例えば、図示省略する制御部により行うことが可能である。制御部としては、例えば、CPU、RAM、ROM等を備える公知のマイクロコンピュータにより構成されたものを用いることができる。また、制御部は、例えば、外部駆動装置280や吸引装置290に実装させたものでもよいし、外部駆動装置280や吸引装置290とは別の装置に組み込まれて、各装置280、290との間で有線または無線により制御信号等の送受信を行うものでもよい。また、制御部として、電池やスイッチ等からなる簡単な電気回路を用いることができる他、さらにCPU、RAM、ROM等を備える公知のマイクロコンピュータにより構成されたものを用いてもよい。
【0092】
また、各種処置を行う際における回転体110の回転方向は、時計周り、反時計周りのいずれでもよい。また、時計周り、反時計周りを適宜に入れ替えて回転させてもよい。
【0093】
図7Aに示すように、長尺部材20は、手元操作部250のコネクタ部253付近に配置された開口部27を有している。長尺部材20のルーメン25は、開口部27を介して、手元操作部250のコネクタ部253の内部と連通している。
【0094】
長尺部材20の基端部23付近には、開口部27を介して長尺部材20の基端部23よりも基端側に吸引力が作用するのを防止するために、ルーメン25を閉塞する所定の閉塞部材28を配置している。閉塞部材28は、例えば、弾性部材等により構成することができる。
【0095】
手元操作部250の内部に配置された弁体257aは、手元操作部250に設けられたオープナー(押し子)257bを操作することにより、開いた状態と閉じた状態とに切り替え可能である。なお、弁体257aとオープナー257bは、公知のYコネクタに用いられるものと同様の構造のものを用いることができる。
【0096】
次に、
図8~10Cを参照して、医療デバイス1を使用した手技の手順例を説明する。
【0097】
図8は、医療デバイス1を使用して血管Bに形成された狭窄部Sの切削を行っている際の様子を模式的に示しており、
図9は、
図8に示す処置を行っている最中に発生したデブリDをシース10のルーメン25の基端側へ搬送する際の様子を示している。また、
図10Aは、
図2に示す矢印10A方向から見た正面図を示し、
図10Bは、
図9に示す矢印10B-10B’線に沿う断面図(軸直交断面図)を示し、
図10Cは、
図9に示す矢印10C-10C’線に沿う断面図(軸直交断面図)を示している。
【0098】
まず、術者等は、ガイディングシース(図示省略)を狭窄部S付近まで導入する。ガイディングシースは、当該ガイディングシースの導入に先立って導入されたガイドワイヤ(図示省略)に沿わせて、狭窄部S付近まで送達することができる。なお、ガイディングシースの送達に際して、ガイドワイヤの使用は適宜省略することも可能である。
【0099】
次に、術者等は、ガイディングシースを介して医療デバイス1を狭窄部S付近まで送達する。この際、ガイドワイヤ挿通部180にガイドワイヤwを挿通させる。術者等は、医療デバイス1をガイドワイヤwに沿わせることにより狭窄部S付近まで円滑に送達することができる。
【0100】
次に、術者等は、回転体110を矢印r2で示すように回転させながら、回転体110の切削部113を狭窄部Sに対して押し付ける。切削部113は、狭窄部Sに対して切削力を付与することにより、狭窄部Sに含まれる狭窄物(例えば、プラークや血栓)を削り取る。
【0101】
図10Aに示すように、回転体110の先端側にはガイド面A1が形成されるため、回転体110の切削部113と血管壁が接触可能な範囲は、有効切削範囲h1に制限される。これにより、切削部113が血管壁を貫通するリスクを大幅に低減することが可能になる。
【0102】
また、本実施形態では、先端部材140は、板状の部材(
図10Aに示す断面上において、左右方向に広がりを持った形状の部材)で構成されている。このため、
図10Aに示すように、比較的大きな面積のガイド面A1を形成することができる。さらに、先端部材140が幅方向に広がった断面形状を有するため、例えば、狭窄部Sに対する処置を行っている最中に先端部材140が
図10Aに示す上下方向に不用意に位置ずれするようなことがあっても、先端部材140が回転体110の内周面と接触して支持されるため、先端部材140の位置ずれが好適に抑えられる。
【0103】
また、先端部材140は、
図10Aに示すように、軸方向と直交する方向に沿う断面形状が三日月状に湾曲した形状で形成されている。このため、狭窄部Sは、厚みが比較的薄い三日月状(ピール状)に削り取られる。
【0104】
術者等は、切削部113により狭窄部Sを切削する際、例えば、
図1に示す吸引装置290を作動させて、削り取ったデブリDを回転体110の内腔115に吸引する。回転体110を回転させながら吸引装置290を作動させると、回転体110の回転に伴って誘起される対流によりデブリDを引き込む吸引力が増加するため、デブリDが回転体110の内腔115へ向けて円滑に移動する。
【0105】
回転体110の内腔115内に吸引されたデブリDは、破砕部160の先端部162と先端部材140の基端部143との間に挟まれる。そして、回転体110の回転に伴って破砕部160が先端部材140に対して相対的に回転すると、破砕部160の先端部162と先端部材140の基端部143との間に挟まれたデブリDにせん断力が付与されて、デブリDが細かく破砕(切断)される。
【0106】
また、狭窄部Sから完全に引き離されることなく狭窄部Sと一部が繋がったままの状態で回転体110の内腔115に進入する被切削物体が発生することがある。医療デバイス1は、破砕部160の先端部162と先端部材140の基端部143との間で上記被切削物体を挟み込むことにより、被切削物体に対して引っ張り力(軸方向に引き伸ばす力)を付与する。そして、回転体110の切削部113は、被切削物体に対して引っ張り力が付与された状態で、被切削物体の狭窄部Sに繋がる部位に対して切削力を付与し、狭窄部Sから被切削物体を切り取る。医療デバイス1は、被切削物体に対して引っ張り力が付与された状態で回転体110の切削部113により切削を行うことで、被切削物体を容易に切り離すことが可能になる。
【0107】
また、本実施形態では、破砕部160の先端部162が鋭利な形状で形成されているため(
図5を参照)、回転体110の内腔115内に吸引されたデブリDは、先端部材140の基端部143付近(破砕部160の先端部162が配置された箇所付近)に到達すると、破砕部160の先端部162によってより一層細かく切断される。
【0108】
回転体110の内腔115に吸引されたデブリDは、破砕部160と先端部材140との間に形成された間隙gに挟み込まれる。
【0109】
破砕部160は、回転体110の回転に伴って回転すると、先端部材140との間でデブリDにせん断応力を作用させて、デブリDを破砕する。また、デブリDは、破砕部160が回転すると、破砕部160と先端部材140との間で作用する回転力により、基端側へ向けて搬送される。
【0110】
デブリDは、先端部材140と破砕部160との間の間隙gおよび基端部材150と破砕部160との間の間隙gに挟み込まれた状態で、破砕部160が回転するのに伴ってせん断されつつ、各間隙gを経由してルーメン25の基端側へ搬送される。そして、デブリDは、破砕部160の基端部163(
図3Bを参照)に到達するまでの間にルーメン25に詰まることの無い程度の大きさまで破砕される。このため、デブリDがルーメン25に詰まるのを防止でき、シース10の基端部側(手元操作部250側)へ向けてデブリDを円滑に搬送することが可能になる。
【0111】
術者等は、狭窄部Sに対して回転体110の切削部113を押し付ける作業を継続して、医療デバイス1を先端側(
図8の左側)へ移動させる。この作業を行うことにより、狭窄部Sが延在する方向に沿って、狭窄部Sを切削することができる。術者等は、狭窄部Sに対する切削処置が完了したのを確認した後、医療デバイス1を生体外へ適宜抜去する。なお、引き続き他の狭窄部Sに対する処置を実施することも可能である。
【0112】
上記のように、本実施形態に係る処置方法は、長尺部材20のルーメン25内に挿入された挿入部材130と長尺部材20の内面に配置された破砕部160の先端部162との間に形成した間隙gに、所定の物体(狭窄部Sの一部や狭窄部Sから切断したデブリD等)を挟み込んだ状態で、破砕部160を挿入部材130に対して相対的に回転させることにより、所定の物体に対してせん断力を付与して、当該物体を破砕(切断)することを含む。
【0113】
また、上記処置方法は、間隙gに狭窄部Sの一部を挟み込んで狭窄部Sの一部に対して引っ張り力を付与しつつ、長尺部材20の先端部に配置された回転体110の切削部113を介して狭窄部Sに対して切削力を付与することにより、狭窄部Sの一部を切り離すことを含む。
【0114】
また、上記処置方法は、破砕部160の先端部162に形成された爪状の部分により、狭窄部Sの一部を引っ掛けた状態でせん断力を付与することを含む。
【0115】
また、上記処置方法は、破砕部160の先端部162に形成された鋭利な部分により、狭窄部Sの一部に対して切削力を付与することを含む。
【0116】
また、上記処置方法は、前記間隙gに挟まれた状態で破砕(切断)した物体を、挿入部材130と破砕部160との間に形成された複数の間隙gを介して、長尺部材20の基端側へ搬送することを含む。
【0117】
また、上記処置方法は、術者等が医療デバイス1を生体外に取り出した後、狭窄部Sを切除する際とは逆の回転方向への回転体110の回転を駆動することにより、シース10内部に収納されたデブリDを先端方向へ搬送して、回転体110の先端側へ排出するステップを含む。このようなステップを実施することにより、術者等は、デブリD等の状態(大きさや性状等)を容易に確認できる。
【0118】
次に、本実施形態に係る医療デバイス1の作用について説明する。
【0119】
上述したように、医療デバイス1は、軸方向に延在するルーメン25が形成された長尺部材20と、長尺部材20の先端側のルーメン25内に少なくとも一部が挿入された挿入部材130と、長尺部材20の先端側のルーメン25内において挿入部材130との間に間隙gを形成するように挿入部材130の周囲に配置されて、挿入部材130に対する相対的な回転に伴って搬送対象となる物体(デブリDや浮遊血栓等)をルーメン25の基端側へ搬送する破砕部160と、を有している。
【0120】
医療デバイス1は、破砕部160が挿入部材130に対して相対的に回転すると、破砕部160と挿入部材130との間に形成した間隙gに搬送対象となる物体を挟み込んで、当該物体に対してせん断力を付与する。このため、医療デバイス1は、長尺部材20のルーメン25内に搬送対象となる物体が詰まるのを防止できる。
【0121】
また、破砕部160の先端部165は、所定の方向に屈曲した形状を有しているため、破砕部160の先端部165と先端部材140の基端部143との間で搬送対象となる物体を挟み込んだ際、物体をより強固に挟み込むことができるため、物体に対して効率的にせん断力を付与することができる。
【0122】
また、長尺部材20は回転可能に構成されており、長尺部材20の先端部には長尺部材20の回転に伴って回転する回転体110が配置されている。そして、挿入部材130は、長尺部材20の回転と連動して回転することがないように非回転の状態で配置されている。一方で、破砕部160は、回転体110に固定されており、長尺部材20の回転に伴って回転する。医療デバイス1は、上記のように構成されているため、長尺部材20および回転体110の回転に連動させて破砕部160を円滑に回転させることができる。これにより、搬送対象となる物体をルーメン25の基端側へ容易に移動させることができる。
【0123】
また、回転体110は、回転に伴って切削力を作用させる切削部113を有している。このため、医療デバイス1は、狭窄部S等の切削を行うためのデバイスとして利用することができる。
【0124】
また、回転体110は、挿入部材130が挿通可能な中空形状を有している。挿入部材130の先端部(先端部材140の先端部142)は、回転体110の先端部よりも先端側に突出しており、回転体110の先端側から視て、切削部113の一部と重なりつつ切削部113の一部を露出させる位置に配置されている。このため、医療デバイス1は、狭窄部Sを切削する際、回転体110の先端側に配置されたガイド面A1により、切削部113の切削可能な範囲を制限することができる。これにより、医療デバイス1は、処置の最中に回転体110が血管Hの血管壁まで到達するようなことがあっても、回転体110が血管壁を貫通するのを好適に防止することができる。
【0125】
また、挿入部材130の先端部(先端部材140の先端部142)は、板状の部材で構成されている。このため、回転体110の先端側に形成されるガイド面A1の大きさを比較的大きく形成することが可能になるため、切削部113の切削可能な範囲を適切な大きさに調整することができる。
【0126】
また、挿入部材130の先端部(先端部材140)は、軸方向と直交する方向に沿う断面形状が三日月状に湾曲した形状で形成されている。このため、回転体110の切削部113は、厚みが比較的薄い三日月状に狭窄部Sを削り取ることができる。よって、長尺部材20のルーメン25内にデブリDが詰まるのを好適に防止することができる。
【0127】
また、破砕部160の先端部162は、鋭利な形状で形成されている。このため、破砕部160の先端部162により、デブリD等を切削することが可能になるため、長尺部材20のルーメン25内にデブリDが詰まるのをより一層好適に防止することができる。
【0128】
また、破砕部160は、螺旋状に延在する板状の部材で構成されているため、破砕部160と挿入部材130との間に形成された間隙gに挟み込んだデブリDを、破砕部160の回転に連動させて基端側へ容易に移動させることができる。さらに、破砕部160と挿入部材130との間でデブリDに対して効率的にせん断力を付与することが可能になる。さらに、破砕部160が板状であるため、破砕部160の配置によりルーメン25内の空間が過度に狭められるのを防止することができる。
【0129】
また、破砕部160は、長尺部材20のルーメン25の先端側から基端側へ所定の範囲に亘って延在している。このため、破砕部160の回転に連動させて、ルーメン25の基端側の所定位置までデブリDをより確実に搬送することができる。
【0130】
以下、上述した実施形態の変形例を説明する。
【0131】
<変形例>
例えば、
図11に示すように、挿入部材130は、シース10の軸方向(図に示す軸線c1に沿う方向)と直交する方向に沿う断面形状が真円ではない形状に形成できる。一例として、挿入部材130は、図示するように、軸方向に対して捻じられた形状で形成できる。このように形成された挿入部材130によれば、せん断応力を生じやすく、切断しやすくなる。
【0132】
また、例えば、
図12に示すように、破砕部160の先端部162は、断面形状を真円に形成できる。このように形成された破砕部160によれば、せん断応力に加え、延伸による切断効果を加えることができる。
【0133】
また、例えば、
図13に示すように、破砕部160の先端部162は、断面形状を非真円に形成できる。一例として、破砕部160の先端部162は、楕円形の断面形状で形成できる。このように形成された破砕部160によれば、せん断応力を生じやすく、切断しやすくなる。
【0134】
また、例えば、
図14に示すように、破砕部160の先端部162は、破砕部160の回転方向に沿う周方向側よりも回転方向の中心側に凸状をなすように配置できる。図示するように破砕部160の先端部162が楕円形の断面形状で形成される場合、楕円形の長軸方向に沿う中心軸が回転体110の中心側を向くように配置することができる。このように形成された破砕部160によれば、せん断応力を生じやすく、切断しやすくなる。
【0135】
また、破砕部160が板状の部材で形成されており、挿入部材130が板状の部材で形成されている場合、長尺部材20のルーメン25の体積(挿入部材130を除いた体積)を大きく確保できるため、長尺部材20のルーメン25での物体(デブリD等)の詰まりを防止できる。さらに、板状に形成された破砕部160と板状に形成された挿入部材130とによって、せん断応力が生じやすくなるため、物体が切断しやすくなる。
【0136】
また、破砕部160および挿入部材130のうち一方が板状の部材で、他方が真円でない円形の断面形状を有する部材である場合、長尺部材20のルーメン25の体積(挿入部材130を除いた体積)を大きく確保できるため、長尺部材20のルーメン25での物体の詰まりを防止できる。さらに、破砕部160および挿入部材130のうち一方が板状の部材で、他方が真円でない円形の断面形状を有する部材である場合、せん断応力に加え、切断対象となる物体の延伸による切断効果を加えることができる。また、破砕部160と挿入部材130の両方が真円でない断面形状を有する部材で構成される場合、せん断応力に加え、切断対象となる物体の延伸による切断効果を加えることができる。
【0137】
以上、実施形態を通じて本発明に係る医療デバイスを説明したが、本発明は実施形態で説明した内容のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0138】
例えば、医療デバイスを使用して行われる各種処置の対象となる生体管腔は、血管に限定されず、例えば、脈管、尿管、胆管、卵管、肝管等であってもよい。
【0139】
例えば、医療デバイスは、狭窄部等に対して切削力を付与する回転体を有していないデバイスとして構成することも可能である。また、医療デバイスに回転体が付加されている場合においても、切削対象となる物体が狭窄部や閉塞部に限定されることはない。なお、実施形態の説明においては、生体管腔の壁部の周方向の一部に形成された狭窄部を切削する処置を例示したが、狭窄部の形状や形成される周方向の位置等により医療デバイスの用途や機能が限定されることはない。
【0140】
実施形態の説明では、挿入部材に対して破砕部が回転することにより、物体に対してせん断力を付与する構成を示したが、物体に対するせん断力の付与は、挿入部材と破砕部との相対的な回転により実現されるものであればよい。したがって、挿入部材が破砕部に対して回転することにより、物体に対してせん断力が付与されるように医療デバイスを構成することも可能である。なお、実施形態では、破砕部を回転可能とするために、破砕部を回転体に固定した例を示したが、破砕部は、例えば、長尺部材に固定したり、長尺部材および回転体の両方に固定したりしてもよい。
【0141】
実施形態の説明では、挿入部材は、先端部材と基端部材の二つの部材で構成された例を示したが、挿入部材は一つの部材で構成してもよいし、三つ以上の部材で構成してもよい。
【0142】
また、例えば、挿入部材の具体的な形状は、図示により説明した形状に限定されることはない。例えば、挿入部材は、矩形状の断面を有する平板状の部材で構成したり、軸方向における各部で断面形状が相違する板状の部材等で構成したり、丸棒状の部材で構成することも可能である。また、挿入部材の断面形状を湾曲した形状で構成する場合においても、三日月状の形状以外の形状であってもよいし、湾曲形状における曲率等も適宜変更することが可能である。同様に、基端部材の形状も図示した形状に限定されることはなく、例えば、中空状(円筒状)の部材等で構成することも可能である。
【0143】
実施形態では、支持部を構成する部材として二つの円筒形状の部材を使用した例を説明したが、例えば、支持部は、一つの部材のみで構成してもよいし、三つ以上の部材で構成してもよい。また、支持部を構成する部材の具体的な形状や大きさ等も特に限定されることはない。
【0144】
実施形態では、破砕部として螺旋状に延在する板状の部材を利用した例を示したが、破砕部は、挿入部材に対する相対的な回転に伴って物体を基端側へ搬送することが可能な限り、具体的な形状等は限定されない。
【0145】
実施形態の説明では、破砕部が長尺部材のルーメンの一定の範囲にわたって延在する構成を例示したが、破砕部は、少なくとも長尺部材のルーメン内に物体を搬送させるように構成されていればよく、例えば、長尺部材の先端側の一定の範囲のみに破砕部を配置してもよい。
【0146】
また、実施形態において説明した医療デバイスの各部の構造や部材の配置等は適宜変更することができ、図示により説明した付加的な部材の使用の省略や、その他の付加的な部材の使用等も適宜に行い得る。
【0147】
本出願は、2017年3月24日に出願された日本国特許出願第2017-059455号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
【符号の説明】
【0148】
1 医療デバイス、
10 シース、
20 長尺部材、
25 長尺部材のルーメン、
30 カバー材、
100 先端構造体、
110 回転体、
113 切削部、
115 回転体の内腔、
120 搬送部、
130 挿入部材、
140 先端部材、
142 挿入部材の先端部、
142a 挿入部材の先端面、
143 挿入部材の基端部、
150 基端部材、
152 基端部材の先端部、
153 基端部材の基端部、
160 破砕部、
161a 第1螺旋部、
161b 第2螺旋部、
162 破砕部の先端部、
163 破砕部の基端部、
170 支持部、
180 ガイドワイヤ挿通部、
190 被覆部材、
250 手元操作部、
280 外部駆動装置、
290 吸引装置、
w ガイドワイヤ、
g 間隙、
A1 ガイド面、
h1 有効切削範囲、
H 血管、
S 狭窄部、
D デブリ。