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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181477
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】成形容器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/34 20060101AFI20231214BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B65D25/34 B
B65D1/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188250
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2019155813の分割
【原出願日】2019-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2018181362
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(72)【発明者】
【氏名】田中 優樹
(72)【発明者】
【氏名】苗村 正
(57)【要約】
【課題】金属箔層および樹脂層を有する積層体からなり容器外側に印刷による表示が設けられる成形容器として、加圧加熱殺菌を行う場合でも表示が消えるおそれがなく、また、表示にずれや変形が生じるおそれのないものを提供する。
【解決手段】成形容器20は、金属箔層11と、金属箔層の一方の面に積層された保護樹脂層12と、金属箔層の他方の面に積層されたシーラント層13とを有している積層体10を、保護樹脂層が容器外側となるように成形してなる。保護樹脂層の表面によって構成されている成形容器の外面の少なくとも一部に、光硬化性インキ4が塗工されて光照射により硬化させられることにより印刷層24が形成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔層と、前記金属箔層の一方の面に積層された保護樹脂層と、前記金属箔層の他方の面に積層されたシーラント層とを有している積層体を、前記保護樹脂層が容器外側となるように成形してなる成形容器であって、
前記保護樹脂層の表面によって構成されている前記成形容器の外面の少なくとも一部に、光硬化性インキが塗工されて光照射により硬化させられることにより印刷層が形成されている、成形容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属箔層および樹脂層を有する積層体を成形してなる成形容器に関し、特にレトルト食品を内容物とする場合に好適に用いられる成形容器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レトルト食品を密封包装するための容器として、金属箔層と、金属箔層の一方の面に積層された保護樹脂層と、金属箔層の他方の面に積層されたシーラント層とを有する積層体を、保護樹脂層が容器外側となるようにカップ状等の立体形状に成形してなる成形容器が
知られている。上記の成形容器によれば、金属製の缶等と比べて、軽量であって、コストが抑えられる上、優れた品質維持性が得られるといった利点がある。
ここで、レトルト食品の場合、成形容器および蓋材により密封包装された状態で、ボイル処理等による加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)が行われるが、成形容器の外面に、内容物の名称、特徴、成分表示等の文字や図柄等よりなる表示を直接印刷すると、レトルト殺菌後に印刷層が剥離して表示が消えることがある。そのため、通常の場合、成形容器の外面には直接印刷せず、表面に所要の表示が印刷されたシールをレトルト殺菌後に成形容器の外面に貼り付けたり、成形容器を収容する外箱を用意して同外箱の外面に所要の表示を印刷したりすることが行われていた。
しかしながら、シールや外箱を使用する場合、内容物の充填密封後に1工程余分に増える上、容器以外の材料が必要となるため、製造に手間やコストがかかるという問題があった。
【0003】
そこで、例えば下記特許文献1に記載されているように、容器外面を構成する透明樹脂層の内側に印刷層を形成した積層体を成形してなる成形容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-196841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1等に記載の成形容器の場合、成形時に印刷層に歪みが生じて、表示された文字や図柄等がずれたり変形したりすることがあり、特に、カップ状容器の側壁外面に設けられる表示については、成形に伴う印刷層の歪みの度合いが大きくなるため、表示された文字等が読めなくなったり、体裁が著しく損なわれたりすることがあった。
【0006】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、金属箔層および樹脂層を有する積層体からなり容器外側に印刷による表示が設けられる成形容器として、加圧加熱殺菌を行う場合でも表示が消えるおそれがなく、また、表示にずれや変形が生じるおそれのないものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0008】
1)金属箔層と、前記金属箔層の一方の面に積層された保護樹脂層と、前記金属箔層の他方の面に積層されたシーラント層とを有している積層体を、前記保護樹脂層が容器外側となるように成形してなる成形容器であって、
前記保護樹脂層の表面によって構成されている前記成形容器の外面の少なくとも一部に、光硬化性インキが塗工されて光照射により硬化させられることにより印刷層が形成されている、成形容器。
【0009】
2)前記成形容器が、底壁と、前記底壁の周縁から立ち上がった側壁とを備えているカップ状のものであって、前記側壁の外面の少なくとも一部に前記印刷層が形成されている、前記1)の成形容器。
【0010】
3)前記光硬化性インキが、光硬化性樹脂よりなる主剤、光重合開始剤および顔料を含む、前記1)または2)の成形容器
【0011】
4)前記光硬化性樹脂が多官能(メタ)アクリレートを含む、前記3)の成形容器。
【0012】
5)前記多官能(メタ)アクリレートが、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも二つ有するウレタン(メタ)アクリレートと、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも三つ有する(メタ)アクリレート(分子内にウレタン結合を有するものを除く。)とを含む、前記4)の成形容器。
【0013】
6)前記外側樹脂層の表面に40~60mN/mの濡れ張力の印刷受容層が形成されており、かつ該印刷受容層の表面に前記印刷層が形成されている、前記1)~5)のいずれかの成形容器。
【0014】
7)前記印刷層が、2色以上の光硬化性インキによる多色印刷層である、前記1)~6)のいずれかの成形容器。
【0015】
8)金属箔層と、前記金属箔層の一方の面に積層された保護樹脂層と、前記金属箔層の他方の面に積層されたシーラント層とを有している積層体を、前記保護樹脂層が容器外側となるように成形して成形容器を形成する工程と、
前記成形容器の外面の少なくとも一部に光硬化性インキを塗工する工程と、
塗工された前記光硬化性インキに光を照射して硬化させることにより印刷層を形成する工程とを含んでいる、成形容器の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
前記1)の成形容器によれば、保護樹脂層の表面よりなる成形容器の外面に、光硬化性インキが塗工されて光照射により硬化させられることにより、耐久性および密着性に優れた印刷層が形成されているので、同容器に食品等の内容物を充填密封した後に蒸気や熱水による加圧加熱殺菌を行う場合でも、印刷層による表示が消えるおそれがなく、また、上記印刷層は成形後の容器の外面に形成されており、印刷層による表示にずれや変形が生じるおそれがないので、表示された文字等が読めなくなったり、体裁が著しく損なわれたりするといった問題が生じない。
【0017】
前記2)の成形容器によれば、カップ状に成形されていて、その側壁の外面に光硬化性インキによる印刷層が形成されているので、例えば内容物である食品等の名称、特徴、成分等を表す文字や、デザイン性に優れた図柄等を見やすく表示することができる。
【0018】
前記3)~5)の成形容器によれば、光硬化性インキが光硬化性樹脂よりなる主剤、光重合開始剤および顔料を少なくとも含有し、前記光硬化性樹脂が多官能(メタ)アクリレートを含んでいるので、耐久性および密着性に優れた印刷層が得られる。とりわけ、前記多官能(メタ)アクリレートが分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも二つ有するウレタン(メタ)アクリレートと、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも三つ有する(メタ)アクリレート(分子内にウレタン結合を有するものを除く。)とを含んでいる場合には、耐久性および密着性に極めて優れた印刷層が得られるので、加圧加熱殺菌によって印刷層による表示が消えるおそれがなく、特にレトルト食品用の容器として好適に用いることができる。
【0019】
前記6)の成形容器によれば、外側樹脂層の表面に40~60mN/mの濡れ張力を有する印刷受容層が形成されているので、この印刷受容層の表面に形成される印刷層の密着性を向上させることができる。
【0020】
前記7)の成形容器によれば、その外面に2色以上の光硬化性インキによる多色印刷層が形成されているため、同印刷層による表示がさらに見やすくなり、また、容器の意匠性も高められる。
【0021】
前記8)の成形容器の製造方法によれば、金属箔層、保護樹脂層およびシーラント層を有する積層体を成形して得られた成形容器の外面に、光硬化性インキを塗工して光照射により硬化させることにより、耐久性および密着性に優れた印刷層が形成されるので、同容器に食品等の内容物を充填密封した後に加圧加熱殺菌を行う場合でも、印刷層による表示が消えるおそれがなく、また、上記印刷層は成形後の容器の外面に形成されており、印刷層による表示にずれや変形が生じるおそれがないので、表示された文字等が読めなくなったり体裁が著しく損なわれたりするといった問題が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明の実施形態に係る成形容器の材料として用いられる積層体の層構造を示す部分拡大断面図である。
図2】同積層体を成形してなる成形容器を示す垂直断面図である。
図3】同成形容器の側壁外面に印刷層を形成する工程を順次示す正面図である。
図4】印刷層が形成された成形容器の斜視図である。
図5】同成形容器の側壁の層構造を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施形態を、図1図5を参照して説明する。
【0024】
図1は、この発明による成形容器の成形材料として用いられる積層体の層構造を示したものである。図1に示す積層体(10)は、金属箔層(11)と、金属箔層(11)の一方の面に積層された保護樹脂層(12)と、金属箔層(11)の他方の面に積層されたシーラント層(13)とを有している。保護樹脂層(12)の表面には、印刷受容層(14)が形成されている。
【0025】
金属箔層(11)は、内容物をガス、水蒸気、光等から保護するためのバリア層として機能する。
金属箔層(11)を構成する金属箔としては、アルミニウム箔、鉄箔、ステンレス鋼箔、銅箔、ニッケル箔等を使用することができるが、コストやバリア機能や耐食性、成形性を考慮すると、アルミニウム箔が好適である。アルミニウム箔は純アルミニウム箔とアルミニウム合金箔のいずれであってもよく、また、軟質、硬質のいずれであってもよいが、JIS H4160で分類されるA8000系やA3000系の軟質材(O材)は特に成形性に優れており、例えばA8021H-OやA8079H-Oを好適に用いることができる。
金属箔層(11)の両面には、保護樹脂層(12)やシーラント層(13)との接合性を高めるために、化成処理等による下地層(アンカーコート層)(図示略)を形成しておくのが好ましい。処理液としては、各種公知のものを特に制限なく使用できるが、例えば、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水およびアルコールからなる塗工液が好適である。
金属箔層(11)の厚さは特に制限されないが、5~300μm程度とするのが好ましく、40~150μm程度とするのがより好ましい。金属箔層(11)の厚さを上記範囲とすることによって、充分なバリア性と成形加工性を得ることができる。
【0026】
保護樹脂層(12)は、成形容器(20)の外面を構成するとともに、金属箔層(11)の耐食性等を高めて保護する役割を担っており、各種公知の熱硬化性樹脂フィルムよりなる。熱硬化性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)等のポリオレフィン樹脂よりなる延伸または無延伸フィルムや、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等のポリエステル樹脂よりなる延伸または無延伸フィルム、6-ナイロン樹脂(PA6)等のポリアミド樹脂よりなる延伸または無延伸フィルムによって構成される。
保護樹脂層(12)の厚さは特に制限されないが、成形性や耐久性、耐食性、製造コスト、シール時の熱影響等を考慮して20~150μm程度、好ましくは25~100μm程度とするのがよい。
保護樹脂層(12)と金属箔層(11)との積層は、例えば、接着剤層(図示略)を介して、ドライラミネート法により行われる。接着剤層には、例えば、2液硬化型のポリウレタン樹脂系接着剤が好適であり、特に2液硬化型ポリエステル-ポリウレタン樹脂系接着剤および/または2液硬化型ポリエーテル-ポリウレタン樹脂系接着剤が好ましい。
【0027】
シーラント層(13)は、成形容器(20)の内面を構成するとともに、成形容器(20)に熱融着性を付与するものであり、各種公知の熱可塑性樹脂フィルムよりなる。熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)や、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)および高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)等のポリエチレン樹脂(PE)といったポリオレフィン樹脂よりなる無延伸フィルムが好適に用いられる。また、シーラント層(13)としては、前記ポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂を例えば共押出法により貼り合わせた積層フィルムを使用することもでき、この場合、ポリプロピレン樹脂層の厚みは通常45~500μm程度、好ましくは140~370μm程度であり、ポリエチレン樹脂層の厚みは通常5~100μm程度、好ましくは10~80μm程度である。また、シーラント層(13)自体の厚みも特に制限されないが、内容物による金属薄層(11)の耐腐食性や成形容器(20)の強度の確保、さらにコストを考慮すると、通常50~600μm程度、好ましくは150~450μm程度とするのがよい。
シーラント層(13)と金属箔層(11)との積層は、例えば、接着剤層(図示略)を介して、ドライラミネート法により行われる。接着剤層には、例えば、2液硬化型のポリウレタン樹脂系接着剤や2液硬化型ポリエーテル樹脂系接着剤、ポリアクリル系接着剤等が使用でき、特に耐熱性・耐レトルト性の点で2液硬化型ポリエステル-ポリウレタン樹脂系接着剤および/または2液硬化型ポリエーテル-ポリウレタン樹脂系接着剤が好ましい。
【0028】
印刷受容層(14)は、成形容器(20)の外面を構成する保護樹脂層(12)と印刷層(24)の密着性を高めるためのものである。この印刷受容層(14)は、保護樹脂層(12)の表面にフレーム処理やコロナ処理等を施すことによって形成でき、その表面の濡れ張力(JIS K6768)(以下、濡れ張力というときは同様。)は、印刷需要層(14)と印刷層(24)の密着性を考慮すると、通常40mN/m以上60mN/m以下、好ましくは42mN/m以上55mN/m以下である。
【0029】
図2は、上記積層体(10)を成形してなる成形容器(20)を示したものである。
図示の成形容器(20)は、平面より見て円形の底壁(21)と、底壁(21)の周縁から立ち上がった円筒状の側壁(22)と、側壁(22)の上端縁から径方向外方にのびた水平なフランジ(23)とを備えているカップ状のものである(図4も参照)。
底壁(21)の下面には、半径方向の中間位置に、中心側を向いた環状段差(211)が形成されており、この環状段差(211)よりも内側の底壁(21)部分が台状に隆起させられている。なお、底壁(21)の平面形状は、円形となされる他、楕円形や略方形等であってもよい。
側壁(22)は、上方に向かって次第に直径が大きくなるテーパ筒状となされている。また、側壁(22)外面の上部には、下向きの環状段差(221)が形成されている。したがって、この成形容器(20)は、複数個を上下に重ねた状態で保管・運搬等を行うことができる上、重ねた状態で、成形容器(20)の側壁(22)外面における環状段差(221)よりも下側部分が、下位の成形容器(20)の側壁(22)部分と接触しないようになっているので、同下側部分に印刷層(24)を形成すれば、重ねた際に印刷層(24)が擦れるのが回避される(図4等参照)。
成形容器(20)の形状は、上記のようなカップ状には限定されず、内容物等に応じて適宜のものとすることができる。また、成形容器(20)は、深絞り成形や張出成形等によって形成される他、例えば内容物が錠剤等の小さいものである場合、エンボス加工(エンボス成形)によって形成することもできる。
【0030】
図3は、上記成形容器(20)の側壁(22)外面に印刷層(24)を形成する手順を示したものである。
具体的には、成形容器(20)の側壁(22)外面に光硬化性インキ(4)を塗工する工程(図3(a)参照)と、塗工された光硬化性インキ(4)に光を照射して硬化させることにより印刷層(24)を形成する工程(図3(b)参照)とよりなる。
印刷方法としては、オフセット印刷やインクジェット印刷等が挙げられる。図3(a)には、オフセット印刷による印刷工程が示されており、版胴(図示略)から転写されたブランケット胴(3)表面の光硬化性インキ(4)が、ブランケット胴(3)と回転接触する成形容器(20)の側壁(22)外面に転写されることによって、印刷が行われるようになっている。また、印刷は、2色以上の光硬化性インキによる多色印刷であってもよく、この場合、印刷層(24)による表示がさらに見やすくなり、また、成形容器(20)の意匠性も高められる。
【0031】
光硬化性インキは、光硬化性樹脂よりなる主剤、光重合開始剤および顔料を含むものであって、塗工後に、光を短時間照射することによって硬化する速乾性に優れたものである。
【0032】
主剤を構成する光硬化性樹脂としては、成形容器(20)外面(保護樹脂層(12)表面)への印刷層(24)の密着性を考慮すると、多官能(メタ)アクリレートを含むものが好ましい。なお、本明細書において「多官能(メタ)アクリレート」とは、分子内にアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を少なくとも2個有する光硬化性の化合物をいう。
【0033】
前記多官能(メタ)アクリレートとしては、光硬化性インキ用の光硬化性樹脂として公知のものであれば特に限定されない。具体例としては、ウレタン(メタ)アクリレートや、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、それら以外の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
前記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリオールおよびポリイソシアネートの重合体(イソシアネート基末端プレポリマー)と水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物が挙げられる。ポリオールとしてはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオールおよびポリブタジエングリコール等の高分子ポリオールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール3-メチル-1,5-ペンタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオール等の低分子量ポリオールが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。各原料は二種以上が組み合わさったものであってよい。
【0035】
前記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との付加反応物が挙げられる。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF
型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールE型エポキシ樹脂、水添クレゾールノボラック型エポキシ樹脂および水添フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、二種以上を組み合わせてもよい。エポキシ(メタ)アクリレートの具体例としては、エチレンオキシド変性ビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノール型ジ(メタ)アクリレートおよびそれらの水添物等が挙げられる。
【0036】
前記ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、二塩基酸および多価アルコールの重合体とエポキシ基含有(メタ)アクリレートとの反応物が挙げられる。二塩基酸としては例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸およびナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、多価アルコールとしては例えば前記低分子ポリオールが挙げられる。各原料は二種以上が組み合わさったものであってよい。
【0037】
前記したもの以外の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよびトリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のトリ(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートおよびエチレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の分子内に(メタ)アクリロイル基を5~6個有する(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは二種以上が組み合わさったものであってよい。
【0038】
前記多官能(メタ)アクリレートとしては、印刷層の密着性や耐熱性の点で、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも二つ有するウレタン(メタ)アクリレートと、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも三つ有する(メタ)アクリレート(分子内にウレタン結合を有するものを除く。)の組合せが好ましい。
【0039】
前記光重合開始剤としては、各種公知のベンゾフェノン系開始剤、アセトフェノン系開始剤およびベンゾインエーテル系開始剤等が挙げられ、二種以上を組み合わせてもよい。
【0040】
前記顔料としては、各種公知の白色顔料、黒色顔料、黄色顔料、橙色顔料、褐色顔料、赤色顔料、青色顔料および緑色顔料等が挙げられる。
【0041】
光硬化性インキにおける主剤、光重合開始剤および顔料の含有量は特に限定されないが、通常、固形分換算で、主剤100質量部に対して光重合開始剤が0.1~30質量部程度、顔料が1~80質量部程度である。
【0042】
光硬化性インキには必要に応じ反応性希釈剤として各種公知のモノ(メタ)アクリレートを含ませてよい。具体的には、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アク
リレート、ポリエチレングリコール-プロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-テトラメチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール-ポリブチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートおよびフェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられ、二種以上を組み合わせてもよい。
【0043】
光硬化性インキを硬化させるために同インキに照射する光としては、可視光線、紫外線、X線、γ線といった波長約500nm以下の電磁波が挙げられる。図3(b)の場合、コンベア(5)に上下逆さまに載置された成形容器(20)に、その上方に所定距離をおいて配置された水銀ランプ(6)等の光源から光(7)を照射している。
【0044】
図4および図5は、上記印刷工程により印刷層(24)が形成された状態の成形容器(20)を示すものである。
印刷層(24)は、成形容器(20)の側壁(22)外面に形成されており、同印刷層(24)によって所要の表示が構成されている。表示としては、内容物の名称、特徴、成分、製造元等を表す文字や図柄等が挙げられる。この印刷層(24)は、積層体(10)を成形して得られた成形容器(20)の側壁(22)外面に印刷して形成されたものであるので、成形前の積層体に印刷層を形成した場合のように成形に伴う歪み等の発生は一切なく、表示がずれたり読めなかったりすることがない。なお、印刷層(24)は、成形容器(20)の側壁(22)外面に形成される他、底壁(21)下面やフランジ(23)下面に形成されてもよい。
そして、図示は省略したが、上記の成形容器(20)に、内容物である食品等が充填された後、その上方開口を覆うように蓋材が施されることにより、内容物が密封包装された包装体が得られる。なお、蓋材としては、例えば、金属箔層と、金属箔層の下面に積層されたシーラント層とを少なくとも有する積層体からなるものが用いられ、成形容器(20)のフランジ(23)上面にヒートシートされる。
さらに、その後工程として、得られた包装体を、ボイル処理等により加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)することがある。この場合、成形容器(20)の外面が熱水や水蒸気に晒されることになるが、光硬化性インキ(4)による印刷層(24)は、熱水や水蒸気に対する耐性および密着性に優れているため、印刷層(24)が剥がれて表示が消えたりするおそれがない。
【実施例0045】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、この発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
<実施例1>
JIS H4160で規定されたA8021H-Oよりなる厚さ120μmのアルミニウム箔(=金属箔層)の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水およびアルコールからなる塗工液を、片面当たりのクロム付着量が10mg/mとなるように塗工した後、180℃で乾燥を行って、下地層を形成した。
次に、前記アルミニウム箔の一方の面に、2液硬化型のポリエーテル-ポリウレタン樹脂系接着剤を固形分付着量が3g/mとなるように塗布した後、100℃で乾燥を行ってから、厚さ30μmの無延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(CPP)(=保護樹脂層)を貼り合わせた。
また、前記アルミニウム箔の他方の面に、前記2液硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤が3g/mとなるように塗布した後、100℃で乾燥を行ってから、厚さ50μmのポリエチレン樹脂フィルムおよび厚さ250μmの無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムからなる厚さ300μmの共押出フィルム(=シーラント層)を、ポリプロピレン樹脂層がアルミニウム箔側となるように貼り合わせて、40℃の環境下で10日間エージング処理した後、積層体を得た。
【0047】
上記の積層体を200cm×200cmの大きさの方形に切り出してなる成形材料を、深絞り成形機(株式会社アマダ製)を用いて、無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムが容器外側となるように深絞り成形することにより、カップ状の成形容器を作製した。深絞り成形は、プレス速度:35spm、しわ抑え圧力:0.4MPaの条件下で行った。成形容器は、底壁の内径が75mm、フランジの内径が80mm、深さが35mmとなるような寸法とした。また、成形後に、フランジを、その幅が5mmになるようにトリミング加工した。そして、容器外側の無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの表面にコロナ処理を行い、表面の濡れ張力を44mN/mに調節した。
【0048】
そして、上記成形容器の側壁外面に、グラビアオフセット印刷機を用いて、UVインキを塗工した。
UVインキは、主剤としてアクリロイル基を2つ有するウレタンアクリレート樹脂70質量部、光重合開始剤としてベンゾフェノン6質量部およびペンタエリスリトールトリアクリレート15質量部、ならびに顔料としてアニリンブラック(黒色)9質量部を含むもの(T&K TOKA(株)製、商品名「T-12」)を用いた。次いで、塗工されたUVインキに、水銀ランプ(出力240W/cm)を用いて、照射距離10cmで光を5秒間照射することにより、成形容器の側壁外面に印刷層を形成した。こうして得られた印刷済み成形容器を実施例1とした。
【0049】
<実施例2>
実施例1と同様の方法で積層体を得、実施例1と同じ条件でカップ状の成形容器を作製した。次いで、容器外側の無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの表面にコロナ処理を行い、表面の濡れ張力を42mN/mに調節した。その後、側壁外面に実施例1に係るUVインキを実施例1と同様の条件で塗工し、印刷層を形成した。
【0050】
<実施例3>
実施例1と同様の方法で積層体を得、実施例1と同じ条件でカップ状の成形容器を作製した。次いで、容器外側の無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの表面にコロナ処理を行い、表面の濡れ張力を40mN/mに調節した。その後、側壁外面に実施例1に係るUVインキを実施例1と同様の条件で塗工し、印刷層を形成した。
【0051】
<実施例4>
実施例1と同様の方法で積層体を得実施例1と同じ条件でカップ状の成形容器を作製した。次いで、容器外側の無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの表面にコロナ処理を行い、表面の濡れ張力を38mN/mに調節した。その後、側壁外面に実施例1に係るUVインキを実施例1と同様の条件で塗工し、印刷層を形成した。
【0052】
<比較例1>
実施例1と同様の方法で得られた積層体を用い、実施例1と同じ条件でカップ状の成形容器を作製した。次いで、その側壁外面に、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂系の非UVインキを塗工した後、150℃で3秒間乾燥させることにより印刷層を形成させることで、印刷済み成形容器を作製した。
【0053】
<印刷層の密着性の検証>
実施例1~4および比較例1の成形容器の印刷層のレトルト殺菌前の密着性と、レトルト殺菌装置を用いて120℃で30分間熱水処理した後の密着性とをテストした。
テストは、幅25mmのニチバン製粘着テープを、実施例1~4および比較例1の成形容器の印刷層に貼り付けて、その上から2kgの重りを載せた状態で10分間放置した後、粘着テープを剥がし、それによって印刷層のインキが剥がれたか否かを目視で確認することにより行った。
その結果、実施例1と2の場合には、レトルト処理有無に関わらず粘着テープの粘着面に付着物がなく、成形容器の印刷層にも剥がれた痕は見られなかった。
実施例3の場合には、レトルト処理無しでは粘着テープの粘着面に付着物がなく、成形容器の印刷層にも剥がれた痕が見られなかった。レトルト処理後は印刷層に若干の剥がれが認められたが、実用上は問題ない範囲であった。
実施例4の場合には、レトルト処理無しでは印刷層に若干の剥がれが見られたが、実用上は問題ない範囲であった。一方、レトルト処理後は印刷層に剥がれが認められた。
一方、比較例1では、レトルト処理有無に関わらず、成形容器の印刷層に剥がれた痕が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
この発明は、金属箔層および樹脂層を有する積層体を成形してなり、特にレトルト食品用の成形容器として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0055】
(10):積層体
(11):金属箔層
(12):保護樹脂層
(13):シーラント層
(14):印刷受容層
(20):成形容器
(21):底壁
(22):側壁
(23):フランジ
(24):印刷層
(4):光硬化性インキ
(7):光
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-12-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔層と、前記金属箔層の一方の面に積層された保護樹脂層と、前記金属箔層の他方の面に積層されたシーラント層とを有している積層体を、前記保護樹脂層が容器外側となるように成形してなる成形容器であって、
前記成形容器は、底壁と、前記底壁の周縁から立ち上がった側壁とを備えているカップ状のものであり、
前記側壁は、上方に向かって次第に直径が大きくなるテーパ筒状となされており、
前記側壁の外面の上部に、下向きの環状段差が形成されており、
前記保護樹脂層の表面によって構成されている前記成形容器の側壁の外面における前記環状段差よりも下側の部分に、光硬化性インキが塗工されて光照射により硬化させられることにより印刷層が形成されている、成形容器。
【請求項2】
前記光硬化性インキが、光硬化性樹脂よりなる主剤、光重合開始剤および顔料を含む、請求項1の成形容器。
【請求項3】
前記光硬化性樹脂が多官能(メタ)アクリレートを含む、請求項2の成形容器。
【請求項4】
前記多官能(メタ)アクリレートが、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも二つ有するウレタン(メタ)アクリレートと、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも三つ有する(メタ)アクリレート(分子内にウレタン結合を有するものを除く。)とを含む、請求項3の成形容器。
【請求項5】
前記積層体が、前記保護樹脂層の表面に形成されかつJIS K6768に準拠して測定される表面の濡れ張力が38~60mN/mである印刷受容層をさらに有しており、前記印刷受容層の表面に前記印刷層が形成されている、請求項1~4のいずれかの成形容器。
【請求項6】
前記印刷層が、2色以上の光硬化性インキによる多色印刷層である、請求項1~5のいずれかの成形容器。
【請求項7】
金属箔層と、前記金属箔層の一方の面に積層された保護樹脂層と、前記金属箔層の他方の面に積層されたシーラント層とを有している積層体を、前記保護樹脂層が容器外側となるように成形して、底壁と、前記底壁の周縁から立ち上がりかつ上方に向かって次第に直径が大きくなるテーパ筒状の側壁と、前記側壁の外面の上部に形成された下向きの環状段差とを備えているカップ状の成形容器を形成する工程と、
前記成形容器の側壁の外面における前記環状段差よりも下側の部分に光硬化性インキを塗工する工程と、
塗工された前記光硬化性インキに光を照射して硬化させることにより印刷層を形成する工程とを含んでいる、
成形容器の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属箔層および樹脂層を有する積層体を成形してなる成形容器に関し、特にレトルト食品を内容物とする場合に好適に用いられる成形容器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レトルト食品を密封包装するための容器として、金属箔層と、金属箔層の一方の面に積層された保護樹脂層と、金属箔層の他方の面に積層されたシーラント層とを有する積層体を、保護樹脂層が容器外側となるようにカップ状等の立体形状に成形してなる成形容器が
知られている。上記の成形容器によれば、金属製の缶等と比べて、軽量であって、コストが抑えられる上、優れた品質維持性が得られるといった利点がある。
ここで、レトルト食品の場合、成形容器および蓋材により密封包装された状態で、ボイル処理等による加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)が行われるが、成形容器の外面に、内容物の名称、特徴、成分表示等の文字や図柄等よりなる表示を直接印刷すると、レトルト殺菌後に印刷層が剥離して表示が消えることがある。そのため、通常の場合、成形容器の外面には直接印刷せず、表面に所要の表示が印刷されたシールをレトルト殺菌後に成形容器の外面に貼り付けたり、成形容器を収容する外箱を用意して同外箱の外面に所要の表示を印刷したりすることが行われていた。
しかしながら、シールや外箱を使用する場合、内容物の充填密封後に1工程余分に増える上、容器以外の材料が必要となるため、製造に手間やコストがかかるという問題があった。
【0003】
そこで、例えば下記特許文献1に記載されているように、容器外面を構成する透明樹脂層の内側に印刷層を形成した積層体を成形してなる成形容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-196841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1等に記載の成形容器の場合、成形時に印刷層に歪みが生じて、表示された文字や図柄等がずれたり変形したりすることがあり、特に、カップ状容器の側壁外面に設けられる表示については、成形に伴う印刷層の歪みの度合いが大きくなるため、表示された文字等が読めなくなったり、体裁が著しく損なわれたりすることがあった。
【0006】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、金属箔層および樹脂層を有する積層体からなり容器外側に印刷による表示が設けられる成形容器として、加圧加熱殺菌を行う場合でも表示が消えるおそれがなく、また、表示にずれや変形が生じるおそれのないものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0008】
1)金属箔層と、前記金属箔層の一方の面に積層された保護樹脂層と、前記金属箔層の他方の面に積層されたシーラント層とを有している積層体を、前記保護樹脂層が容器外側となるように成形してなる成形容器であって、
前記成形容器は、底壁と、前記底壁の周縁から立ち上がった側壁とを備えているカップ状のものであり、
前記側壁は、上方に向かって次第に直径が大きくなるテーパ筒状となされており、
前記側壁の外面の上部に、下向きの環状段差が形成されており、
前記保護樹脂層の表面によって構成されている前記成形容器の側壁の外面における前記環状段差よりも下側の部分に、光硬化性インキが塗工されて光照射により硬化させられることにより印刷層が形成されている、成形容器。
【0009】
2)前記光硬化性インキが、光硬化性樹脂よりなる主剤、光重合開始剤および顔料を含む、前記1)の成形容器
【0010】
3)前記光硬化性樹脂が多官能(メタ)アクリレートを含む、前記2)の成形容器。
【0011】
4)前記多官能(メタ)アクリレートが、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも二つ有するウレタン(メタ)アクリレートと、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも三つ有する(メタ)アクリレート(分子内にウレタン結合を有するものを除く。)とを含む、前記3)の成形容器。
【0012】
前記積層体が、前記保護樹脂層の表面に形成されかつJIS K6768に準拠して測定される表面の濡れ張力が38~60mN/mである印刷受容層をさらに有しており前記印刷受容層の表面に前記印刷層が形成されている、前記1)~)のいずれかの成形容器。
【0013】
)前記印刷層が、2色以上の光硬化性インキによる多色印刷層である、前記1)~)のいずれかの成形容器。
【0014】
)金属箔層と、前記金属箔層の一方の面に積層された保護樹脂層と、前記金属箔層の他方の面に積層されたシーラント層とを有している積層体を、前記保護樹脂層が容器外側となるように成形して、底壁と、前記底壁の周縁から立ち上がりかつ上方に向かって次第に直径が大きくなるテーパ筒状の側壁と、前記側壁の外面の上部に形成された下向きの環状段差とを備えているカップ状の成形容器を形成する工程と、
前記成形容器の側壁の外面における前記環状段差よりも下側の部分に光硬化性インキを塗工する工程と、
塗工された前記光硬化性インキに光を照射して硬化させることにより印刷層を形成する工程とを含んでいる、成形容器の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
前記1)の成形容器によれば、保護樹脂層の表面よりなる成形容器の側壁の外面における環状段差よりも下側の部分に、光硬化性インキが塗工されて光照射により硬化させられることにより、耐久性および密着性に優れた印刷層が形成されているので、同容器に食品等の内容物を充填密封した後に蒸気や熱水による加圧加熱殺菌を行う場合でも、印刷層による表示が消えるおそれがなく、また、上記印刷層は成形後の容器の側壁の外面における環状段差よりも下側の部分に形成されており、印刷層による表示にずれや変形が生じるおそれがないので、表示された文字等が読めなくなったり、体裁が著しく損なわれたりするといった問題が生じない。
また、前記1)の成形容器によれば、カップ状に成形されていて、その側壁の外面における環状段差よりも下側の部分に光硬化性インキによる印刷層が形成されているので、例えば内容物である食品等の名称、特徴、成分等を表す文字や、デザイン性に優れた図柄等を見やすく表示することができる。
さらに、前記1)の成形容器によれば、複数個を上下に重ねた状態で保管・運搬等を行うことができる上、重ねた状態で、成形容器の側壁外面における環状段差よりも下側部分が、下位の成形容器の側壁部分と接触しないようになっていて、同下側部分に印刷層が形成されているので、重ねた際に印刷層が擦れるのが回避される。
【0016】
前記)~)の成形容器によれば、光硬化性インキが光硬化性樹脂よりなる主剤、光重合開始剤および顔料を少なくとも含有し、前記光硬化性樹脂が多官能(メタ)アクリレートを含んでいるので、耐久性および密着性に優れた印刷層が得られる。とりわけ、前記多官能(メタ)アクリレートが分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも二つ有するウレタン(メタ)アクリレートと、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも三つ有する(メタ)アクリレート(分子内にウレタン結合を有するものを除く。)とを含んでいる場合には、耐久性および密着性に極めて優れた印刷層が得られるので、加圧加熱殺菌によって印刷層による表示が消えるおそれがなく、特にレトルト食品用の容器として好適に用いることができる。
【0017】
前記)の成形容器によれば、保護樹脂層の表面に38~60mN/mの濡れ張力を有する印刷受容層が形成されているので、この印刷受容層の表面に形成される印刷層の密着性を向上させることができる。
【0018】
前記)の成形容器によれば、その外面に2色以上の光硬化性インキによる多色印刷層が形成されているため、同印刷層による表示がさらに見やすくなり、また、容器の意匠性も高められる。
【0019】
前記)の成形容器の製造方法によれば、金属箔層、保護樹脂層およびシーラント層を有する積層体をカップ状に成形して得られた成形容器の側壁の外面における前記環状段差よりも下側の部分に、光硬化性インキを塗工して光照射により硬化させることにより、耐久性および密着性に優れた印刷層が形成されるので、同容器に食品等の内容物を充填密封した後に加圧加熱殺菌を行う場合でも、印刷層による表示が消えるおそれがなく、また、上記印刷層は成形後の容器の側壁の外面における前記環状段差よりも下側の部分に形成されており、印刷層による表示にずれや変形が生じるおそれがないので、表示された文字等が読めなくなったり体裁が著しく損なわれたりするといった問題が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の実施形態に係る成形容器の材料として用いられる積層体の層構造を示す部分拡大断面図である。
図2】同積層体を成形してなる成形容器を示す垂直断面図である。
図3】同成形容器の側壁外面に印刷層を形成する工程を順次示す正面図である。
図4】印刷層が形成された成形容器の斜視図である。
図5】同成形容器の側壁の層構造を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施形態を、図1図5を参照して説明する。
【0022】
図1は、この発明による成形容器の成形材料として用いられる積層体の層構造を示したものである。図1に示す積層体(10)は、金属箔層(11)と、金属箔層(11)の一方の面に積層された保護樹脂層(12)と、金属箔層(11)の他方の面に積層されたシーラント層(13)とを有している。保護樹脂層(12)の表面には、印刷受容層(14)が形成されている。
【0023】
金属箔層(11)は、内容物をガス、水蒸気、光等から保護するためのバリア層として機能する。
金属箔層(11)を構成する金属箔としては、アルミニウム箔、鉄箔、ステンレス鋼箔、銅箔、ニッケル箔等を使用することができるが、コストやバリア機能や耐食性、成形性を考慮すると、アルミニウム箔が好適である。アルミニウム箔は純アルミニウム箔とアルミニウム合金箔のいずれであってもよく、また、軟質、硬質のいずれであってもよいが、JIS H4160で分類されるA8000系やA3000系の軟質材(O材)は特に成形性に優れており、例えばA8021H-OやA8079H-Oを好適に用いることができる。
金属箔層(11)の両面には、保護樹脂層(12)やシーラント層(13)との接合性を高めるために、化成処理等による下地層(アンカーコート層)(図示略)を形成しておくのが好ましい。処理液としては、各種公知のものを特に制限なく使用できるが、例えば、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水およびアルコールからなる塗工液が好適である。
金属箔層(11)の厚さは特に制限されないが、5~300μm程度とするのが好ましく、40~150μm程度とするのがより好ましい。金属箔層(11)の厚さを上記範囲とすることによって、充分なバリア性と成形加工性を得ることができる。
【0024】
保護樹脂層(12)は、成形容器(20)の外面を構成するとともに、金属箔層(11)の耐食性等を高めて保護する役割を担っており、各種公知の熱硬化性樹脂フィルムよりなる。熱硬化性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)等のポリオレフィン樹脂よりなる延伸または無延伸フィルムや、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等のポリエステル樹脂よりなる延伸または無延伸フィルム、6-ナイロン樹脂(PA6)等のポリアミド樹脂よりなる延伸または無延伸フィルムによって構成される。
保護樹脂層(12)の厚さは特に制限されないが、成形性や耐久性、耐食性、製造コスト、シール時の熱影響等を考慮して20~150μm程度、好ましくは25~100μm程度とするのがよい。
保護樹脂層(12)と金属箔層(11)との積層は、例えば、接着剤層(図示略)を介して、ドライラミネート法により行われる。接着剤層には、例えば、2液硬化型のポリウレタン樹脂系接着剤が好適であり、特に2液硬化型ポリエステル-ポリウレタン樹脂系接着剤および/または2液硬化型ポリエーテル-ポリウレタン樹脂系接着剤が好ましい。
【0025】
シーラント層(13)は、成形容器(20)の内面を構成するとともに、成形容器(20)に熱融着性を付与するものであり、各種公知の熱可塑性樹脂フィルムよりなる。熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)や、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)および高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)等のポリエチレン樹脂(PE)といったポリオレフィン樹脂よりなる無延伸フィルムが好適に用いられる。また、シーラント層(13)としては、前記ポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂を例えば共押出法により貼り合わせた積層フィルムを使用することもでき、この場合、ポリプロピレン樹脂層の厚みは通常45~500μm程度、好ましくは140~370μm程度であり、ポリエチレン樹脂層の厚みは通常5~100μm程度、好ましくは10~80μm程度である。また、シーラント層(13)自体の厚みも特に制限されないが、内容物による金属薄層(11)の耐腐食性や成形容器(20)の強度の確保、さらにコストを考慮すると、通常50~600μm程度、好ましくは150~450μm程度とするのがよい。
シーラント層(13)と金属箔層(11)との積層は、例えば、接着剤層(図示略)を介して、ドライラミネート法により行われる。接着剤層には、例えば、2液硬化型のポリウレタン樹脂系接着剤や2液硬化型ポリエーテル樹脂系接着剤、ポリアクリル系接着剤等が使用でき、特に耐熱性・耐レトルト性の点で2液硬化型ポリエステル-ポリウレタン樹脂系接着剤および/または2液硬化型ポリエーテル-ポリウレタン樹脂系接着剤が好ましい。
【0026】
印刷受容層(14)は、成形容器(20)の外面を構成する保護樹脂層(12)と印刷層(24)の密着性を高めるためのものである。この印刷受容層(14)は、保護樹脂層(12)の表面にフレーム処理やコロナ処理等を施すことによって形成でき、その表面の濡れ張力(JIS K6768)(以下、濡れ張力というときは同様。)は、印刷需要層(14)と印刷層(24)の密着性を考慮すると、通常40mN/m以上60mN/m以下、好ましくは42mN/m以上55mN/m以下である。
【0027】
図2は、上記積層体(10)を成形してなる成形容器(20)を示したものである。
図示の成形容器(20)は、平面より見て円形の底壁(21)と、底壁(21)の周縁から立ち上がった円筒状の側壁(22)と、側壁(22)の上端縁から径方向外方にのびた水平なフランジ(23)とを備えているカップ状のものである(図4も参照)。
底壁(21)の下面には、半径方向の中間位置に、中心側を向いた環状段差(211)が形成されており、この環状段差(211)よりも内側の底壁(21)部分が台状に隆起させられている。なお、底壁(21)の平面形状は、円形となされる他、楕円形や略方形等であってもよい。
側壁(22)は、上方に向かって次第に直径が大きくなるテーパ筒状となされている。また、側壁(22)外面の上部には、下向きの環状段差(221)が形成されている。したがって、この成形容器(20)は、複数個を上下に重ねた状態で保管・運搬等を行うことができる上、重ねた状態で、成形容器(20)の側壁(22)外面における環状段差(221)よりも下側部分が、下位の成形容器(20)の側壁(22)部分と接触しないようになっているので、同下側部分に印刷層(24)を形成すれば、重ねた際に印刷層(24)が擦れるのが回避される(図4等参照)。
成形容器(20)の形状は、上記のようなカップ状には限定されず、内容物等に応じて適宜のものとすることができる。また、成形容器(20)は、深絞り成形や張出成形等によって形成される他、例えば内容物が錠剤等の小さいものである場合、エンボス加工(エンボス成形)によって形成することもできる。
【0028】
図3は、上記成形容器(20)の側壁(22)外面に印刷層(24)を形成する手順を示したものである。
具体的には、成形容器(20)の側壁(22)外面に光硬化性インキ(4)を塗工する工程(図3(a)参照)と、塗工された光硬化性インキ(4)に光を照射して硬化させることにより印刷層(24)を形成する工程(図3(b)参照)とよりなる。
印刷方法としては、オフセット印刷やインクジェット印刷等が挙げられる。図3(a)には、オフセット印刷による印刷工程が示されており、版胴(図示略)から転写されたブランケット胴(3)表面の光硬化性インキ(4)が、ブランケット胴(3)と回転接触する成形容器(20)の側壁(22)外面に転写されることによって、印刷が行われるようになっている。また、印刷は、2色以上の光硬化性インキによる多色印刷であってもよく、この場合、印刷層(24)による表示がさらに見やすくなり、また、成形容器(20)の意匠性も高められる。
【0029】
光硬化性インキは、光硬化性樹脂よりなる主剤、光重合開始剤および顔料を含むものであって、塗工後に、光を短時間照射することによって硬化する速乾性に優れたものである。
【0030】
主剤を構成する光硬化性樹脂としては、成形容器(20)外面(保護樹脂層(12)表面)への印刷層(24)の密着性を考慮すると、多官能(メタ)アクリレートを含むものが好ましい。なお、本明細書において「多官能(メタ)アクリレート」とは、分子内にアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を少なくとも2個有する光硬化性の化合物をいう。
【0031】
前記多官能(メタ)アクリレートとしては、光硬化性インキ用の光硬化性樹脂として公知のものであれば特に限定されない。具体例としては、ウレタン(メタ)アクリレートや、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、それら以外の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0032】
前記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリオールおよびポリイソシアネートの重合体(イソシアネート基末端プレポリマー)と水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物が挙げられる。ポリオールとしてはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオールおよびポリブタジエングリコール等の高分子ポリオールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール3-メチル-1,5-ペンタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオール等の低分子量ポリオールが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。各原料は二種以上が組み合わさったものであってよい。
【0033】
前記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との付加反応物が挙げられる。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF
型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールE型エポキシ樹脂、水添クレゾールノボラック型エポキシ樹脂および水添フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、二種以上を組み合わせてもよい。エポキシ(メタ)アクリレートの具体例としては、エチレンオキシド変性ビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノール型ジ(メタ)アクリレートおよびそれらの水添物等が挙げられる。
【0034】
前記ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、二塩基酸および多価アルコールの重合体とエポキシ基含有(メタ)アクリレートとの反応物が挙げられる。二塩基酸としては例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸およびナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、多価アルコールとしては例えば前記低分子ポリオールが挙げられる。各原料は二種以上が組み合わさったものであってよい。
【0035】
前記したもの以外の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよびトリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のトリ(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートおよびエチレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の分子内に(メタ)アクリロイル基を5~6個有する(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは二種以上が組み合わさったものであってよい。
【0036】
前記多官能(メタ)アクリレートとしては、印刷層の密着性や耐熱性の点で、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも二つ有するウレタン(メタ)アクリレートと、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも三つ有する(メタ)アクリレート(分子内にウレタン結合を有するものを除く。)の組合せが好ましい。
【0037】
前記光重合開始剤としては、各種公知のベンゾフェノン系開始剤、アセトフェノン系開始剤およびベンゾインエーテル系開始剤等が挙げられ、二種以上を組み合わせてもよい。
【0038】
前記顔料としては、各種公知の白色顔料、黒色顔料、黄色顔料、橙色顔料、褐色顔料、赤色顔料、青色顔料および緑色顔料等が挙げられる。
【0039】
光硬化性インキにおける主剤、光重合開始剤および顔料の含有量は特に限定されないが、通常、固形分換算で、主剤100質量部に対して光重合開始剤が0.1~30質量部程度、顔料が1~80質量部程度である。
【0040】
光硬化性インキには必要に応じ反応性希釈剤として各種公知のモノ(メタ)アクリレートを含ませてよい。具体的には、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アク
リレート、ポリエチレングリコール-プロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-テトラメチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール-ポリブチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートおよびフェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられ、二種以上を組み合わせてもよい。
【0041】
光硬化性インキを硬化させるために同インキに照射する光としては、可視光線、紫外線、X線、γ線といった波長約500nm以下の電磁波が挙げられる。図3(b)の場合、コンベア(5)に上下逆さまに載置された成形容器(20)に、その上方に所定距離をおいて配置された水銀ランプ(6)等の光源から光(7)を照射している。
【0042】
図4および図5は、上記印刷工程により印刷層(24)が形成された状態の成形容器(20)を示すものである。
印刷層(24)は、成形容器(20)の側壁(22)外面に形成されており、同印刷層(24)によって所要の表示が構成されている。表示としては、内容物の名称、特徴、成分、製造元等を表す文字や図柄等が挙げられる。この印刷層(24)は、積層体(10)を成形して得られた成形容器(20)の側壁(22)外面に印刷して形成されたものであるので、成形前の積層体に印刷層を形成した場合のように成形に伴う歪み等の発生は一切なく、表示がずれたり読めなかったりすることがない。なお、印刷層(24)は、成形容器(20)の側壁(22)外面に形成される他、底壁(21)下面やフランジ(23)下面に形成されてもよい。
そして、図示は省略したが、上記の成形容器(20)に、内容物である食品等が充填された後、その上方開口を覆うように蓋材が施されることにより、内容物が密封包装された包装体が得られる。なお、蓋材としては、例えば、金属箔層と、金属箔層の下面に積層されたシーラント層とを少なくとも有する積層体からなるものが用いられ、成形容器(20)のフランジ(23)上面にヒートシートされる。
さらに、その後工程として、得られた包装体を、ボイル処理等により加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)することがある。この場合、成形容器(20)の外面が熱水や水蒸気に晒されることになるが、光硬化性インキ(4)による印刷層(24)は、熱水や水蒸気に対する耐性および密着性に優れているため、印刷層(24)が剥がれて表示が消えたりするおそれがない。
【実施例0043】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、この発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
<実施例1>
JIS H4160で規定されたA8021H-Oよりなる厚さ120μmのアルミニウム箔(=金属箔層)の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水およびアルコールからなる塗工液を、片面当たりのクロム付着量が10mg/mとなるように塗工した後、180℃で乾燥を行って、下地層を形成した。
次に、前記アルミニウム箔の一方の面に、2液硬化型のポリエーテル-ポリウレタン樹脂系接着剤を固形分付着量が3g/mとなるように塗布した後、100℃で乾燥を行ってから、厚さ30μmの無延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(CPP)(=保護樹脂層)を貼り合わせた。
また、前記アルミニウム箔の他方の面に、前記2液硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤が3g/mとなるように塗布した後、100℃で乾燥を行ってから、厚さ50μmのポリエチレン樹脂フィルムおよび厚さ250μmの無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムからなる厚さ300μmの共押出フィルム(=シーラント層)を、ポリプロピレン樹脂層がアルミニウム箔側となるように貼り合わせて、40℃の環境下で10日間エージング処理した後、積層体を得た。
【0045】
上記の積層体を200cm×200cmの大きさの方形に切り出してなる成形材料を、深絞り成形機(株式会社アマダ製)を用いて、無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムが容器外側となるように深絞り成形することにより、カップ状の成形容器を作製した。深絞り成形は、プレス速度:35spm、しわ抑え圧力:0.4MPaの条件下で行った。成形容器は、底壁の内径が75mm、フランジの内径が80mm、深さが35mmとなるような寸法とした。また、成形後に、フランジを、その幅が5mmになるようにトリミング加工した。そして、容器外側の無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの表面にコロナ処理を行い、表面の濡れ張力を44mN/mに調節した。
【0046】
そして、上記成形容器の側壁外面に、グラビアオフセット印刷機を用いて、UVインキを塗工した。
UVインキは、主剤としてアクリロイル基を2つ有するウレタンアクリレート樹脂70質量部、光重合開始剤としてベンゾフェノン6質量部およびペンタエリスリトールトリアクリレート15質量部、ならびに顔料としてアニリンブラック(黒色)9質量部を含むもの(T&K TOKA(株)製、商品名「T-12」)を用いた。次いで、塗工されたUVインキに、水銀ランプ(出力240W/cm)を用いて、照射距離10cmで光を5秒間照射することにより、成形容器の側壁外面に印刷層を形成した。こうして得られた印刷済み成形容器を実施例1とした。
【0047】
<実施例2>
実施例1と同様の方法で積層体を得、実施例1と同じ条件でカップ状の成形容器を作製した。次いで、容器外側の無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの表面にコロナ処理を行い、表面の濡れ張力を42mN/mに調節した。その後、側壁外面に実施例1に係るUVインキを実施例1と同様の条件で塗工し、印刷層を形成した。
【0048】
<実施例3>
実施例1と同様の方法で積層体を得、実施例1と同じ条件でカップ状の成形容器を作製した。次いで、容器外側の無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの表面にコロナ処理を行い、表面の濡れ張力を40mN/mに調節した。その後、側壁外面に実施例1に係るUVインキを実施例1と同様の条件で塗工し、印刷層を形成した。
【0049】
<実施例4>
実施例1と同様の方法で積層体を得実施例1と同じ条件でカップ状の成形容器を作製した。次いで、容器外側の無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの表面にコロナ処理を行い、表面の濡れ張力を38mN/mに調節した。その後、側壁外面に実施例1に係るUVインキを実施例1と同様の条件で塗工し、印刷層を形成した。
【0050】
<比較例1>
実施例1と同様の方法で得られた積層体を用い、実施例1と同じ条件でカップ状の成形容器を作製した。次いで、その側壁外面に、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂系の非UVインキを塗工した後、150℃で3秒間乾燥させることにより印刷層を形成させることで、印刷済み成形容器を作製した。
【0051】
<印刷層の密着性の検証>
実施例1~4および比較例1の成形容器の印刷層のレトルト殺菌前の密着性と、レトルト殺菌装置を用いて120℃で30分間熱水処理した後の密着性とをテストした。
テストは、幅25mmのニチバン製粘着テープを、実施例1~4および比較例1の成形容器の印刷層に貼り付けて、その上から2kgの重りを載せた状態で10分間放置した後、粘着テープを剥がし、それによって印刷層のインキが剥がれたか否かを目視で確認することにより行った。
その結果、実施例1と2の場合には、レトルト処理有無に関わらず粘着テープの粘着面に付着物がなく、成形容器の印刷層にも剥がれた痕は見られなかった。
実施例3の場合には、レトルト処理無しでは粘着テープの粘着面に付着物がなく、成形容器の印刷層にも剥がれた痕が見られなかった。レトルト処理後は印刷層に若干の剥がれが認められたが、実用上は問題ない範囲であった。
実施例4の場合には、レトルト処理無しでは印刷層に若干の剥がれが見られたが、実用上は問題ない範囲であった。一方、レトルト処理後は印刷層に剥がれが認められた。
一方、比較例1では、レトルト処理有無に関わらず、成形容器の印刷層に剥がれた痕が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
この発明は、金属箔層および樹脂層を有する積層体を成形してなり、特にレトルト食品用の成形容器として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0053】
(10):積層体
(11):金属箔層
(12):保護樹脂層
(13):シーラント層
(14):印刷受容層
(20):成形容器
(21):底壁
(22):側壁
(23):フランジ
(24):印刷層
(4):光硬化性インキ
(7):光