(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181487
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】X線CT装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
A61B6/03 373
A61B6/03 330Z
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188402
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2020023087の分割
【原出願日】2020-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】叶井 絵梨
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 博明
(57)【要約】
【課題】光子計数型検出器を用いた撮影を効率的に進めること。
【解決手段】実施形態のX線CT装置は、取得部と、推定部と、判定部とを備える。取得部は、本スキャン前の光子計数型検出器の初期温度情報と、被写体の形状に関する情報と、本スキャンのスキャン条件とを取得する。推定部は、初期温度情報と、被写体の形状に関する情報と、本スキャンのスキャン条件に関する情報とに基づいて、本スキャンを実行した場合の光子計数型検出器の温度変化を推定する。判定部は、温度変化に基づいて、初期温度情報を取得したタイミングにおける本スキャンの実行可否を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光子計数型検出器に対する被写体の位置情報を取得する取得部と、
前記被写体の中心位置と視野中心とのずれの有無を判定する判定部と、
前記被写体の中心位置が前記視野中心からずれた場合に、位置ずれに関する情報を表示させる表示部と、
を備える、X線CT装置。
【請求項2】
前記取得部は、本スキャン前の光子計数型検出器の初期温度情報と、被写体の形状に関する情報と、本スキャンのスキャン条件とを取得し、
前記初期温度情報と、前記被写体の形状に関する情報と、本スキャンのスキャン条件に関する情報とに基づいて、当該本スキャンを実行した場合の前記光子計数型検出器の温度変化を推定する推定部と、
前記温度変化に基づいて、前記初期温度情報を取得したタイミングにおける本スキャンの実行可否を判定するスキャン判定部と、
を更に備える、請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記被写体の形状に関する情報と、本スキャンのスキャン条件に関する情報とに基づいて、当該本スキャンを実行した場合の前記光子計数型検出器における発熱量を推定し、前記初期温度情報と前記発熱量とに基づいて、前記温度変化を推定する、請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記光子計数型検出器の雰囲気温度に関する情報に更に基づいて、前記本スキャンを実行した場合の前記光子計数型検出器における発熱量を推定し、前記初期温度情報と前記発熱量とに基づいて、前記温度変化を推定する、請求項3に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記初期温度情報と、前記発熱量に基づく温度上昇値に基づいて、前記本スキャンを実行した場合の前記光子計数型検出器における温度を推定する、請求項3又は4に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記スキャン判定部は、前記光子計数型検出器における変化後の温度と閾値とを比較し、前記変化後の温度が閾値を超えない場合に、前記本スキャンを実行すると判定する、請求項2乃至5のいずれか1つに記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記スキャン判定部における判定結果が、前記タイミングにおける本スキャンが実行不可の場合に、前記光子計数型検出器の温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間を算出する算出部を更に備える、請求項2乃至6のいずれか1つに記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記算出部は、前記光子計数型検出器の雰囲気温度に関する情報に更に基づいて、前記待ち時間を算出する、請求項7に記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記表示部は、前記待ち時間に関する情報を表示する、請求項7又は8に記載のX線CT装置。
【請求項10】
前記取得部は、X線管における温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間に関する情報を更に取得し、
前記表示部は、前記光子計数型検出器の温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間と、前記X線管における温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間とのうち、より長い待ち時間に関する情報を表示する、請求項9に記載のX線CT装置。
【請求項11】
前記スキャン判定部における判定結果が、前記タイミングにおける本スキャンが実行不可の場合に、前記本スキャンのスキャン条件を再設定する制御部を更に備える、請求項2乃至10のいずれか1つに記載のX線CT装置。
【請求項12】
前記取得部は、前記本スキャン中の前記光子計数型検出器における温度情報を更に取得し、
前記スキャン判定部は、前記光子計数型検出器の温度が閾値を超える場合に、前記本スキャンの終了までの時間に基づいて、当該本スキャンを継続するか否かを判定する、請求項2乃至11のいずれか1つに記載のX線CT装置。
【請求項13】
前記スキャン判定部は、前記本スキャンの終了までの時間が閾値を超える場合に、スキャン条件の変更、前記光子計数型検出器における一部動作の停止、又は、前記本スキャンの中止のいずれかを決定する、請求項12に記載のX線CT装置。
【請求項14】
前記スキャン判定部は、前記光子計数型検出器の温度の上昇傾向及び前記本スキャンの検査内容のうち、少なくとも一方に基づいて、スキャン条件の変更、前記光子計数型検出器における一部動作の停止、又は、前記本スキャンの中止のいずれかを決定する、請求項13に記載のX線CT装置。
【請求項15】
前記被写体の中心位置の前記視野中心からのずれ量に基づいて、前記被写体の位置を移動させる制御部を更に備える、請求項1乃至14のいずれか1つに記載のX線CT装置。
【請求項16】
前記取得部は、位置決めスキャンが実行された際の前記光子計数型検出器における計数率又は温度センサに基づいて、前記初期温度情報を取得する、請求項2乃至14のいずれか1つに記載のX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光子計数型検出器を面検出器として構成する場合、光子計数型検出器からの微小な出力電流を計測するために、光子計数型検出器の極近傍にはASIC(Application Specific Integrated Circuit)が高密度に配置される。ASICは、計数結果を収集する際に計数率に応じて発熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-18021号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0076357号明細書
【特許文献3】米国特許第9229115号明細書
【特許文献4】特開2003-130961号公報
【特許文献5】特開平4-315985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、光子計数型検出器を用いた撮影を効率的に進めることを可能にすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るX線CT装置は、取得部と、推定部と、判定部とを備える。取得部は、本スキャン前の光子計数型検出器の初期温度情報と、被写体の形状に関する情報と、本スキャンのスキャン条件とを取得する。推定部は、前記初期温度情報と、前記被写体の形状に関する情報と、本スキャンのスキャン条件に関する情報とに基づいて、当該本スキャンを実行した場合の前記光子計数型検出器の温度変化を推定する。判定部は、前記温度変化に基づいて、前記初期温度情報を取得したタイミングにおける本スキャンの実行可否を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るX線検出器12の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るX線CT装置による処理の概要を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る制御機能による初期温度情報の取得の一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る対応情報の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る対応情報の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る算出機能による処理の一例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る入射線量の分布の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る待ち時間の表示の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に係るX線検出器12の構成の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、変形例に係る対応情報の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、変形例に係る対応情報の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、第1の実施形態に係るX線CT装置の処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図14】
図14は、変形例に係るX線CT装置の処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図15】
図15は、第2の実施形態に係るX線CT装置の処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図16】
図16は、第3の実施形態に係るX線CT装置の処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図17】
図17は、第4の実施形態に係るX線CT装置の処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図18】
図18は、第5の実施形態に係る判定機能による処理を説明するための図である。
【
図19】
図19は、第5の実施形態に係るX線CT装置の処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図20】
図20は、その他の実施形態に係るX線CT装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら、X線CT装置の実施形態について詳細に説明する。また、本願に係るX線CT装置は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。また、実施形態は、内容に矛盾が生じない範囲で他の実施形態や従来技術との組み合わせが可能である。また、以下の説明において、同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0008】
また、以下の実施形態で説明するX線CT装置は、フォトンカウンティングCTを実行可能な装置である。すなわち、以下の実施形態で説明するX線CT装置は、フォトンカウンティング方式のX線検出器(光子計数型検出器)を用いて被検体を透過したX線を計数することで、X線CT画像データを再構成可能な装置である。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。
【0010】
ここで、
図1においては、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とする。なお、
図1は、説明のために架台装置10を複数方向から描画したものであり、X線CT装置1が架台装置10を1つ有する場合を示す。
【0011】
架台装置10は、X線管11と、X線検出器12と、回転フレーム13と、X線高電圧装置14と、制御装置15と、ウェッジ16と、コリメータ17と、DAS(Data Acquisition System)18とを有する。
【0012】
X線管11は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することで、被検体Pに対し照射するX線を発生する。例えば、X線管11には、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。
【0013】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。例えば、回転フレーム13は、アルミニウムを材料とした鋳物である。なお、回転フレーム13は、X線管11及びX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14やウェッジ16、コリメータ17、DAS18等を更に支持することもできる。更に、回転フレーム13は、
図1において図示しない種々の構成を更に支持することもできる。
【0014】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ16は、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウム等を加工したフィルタである。
【0015】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。なお、コリメータ17は、X線絞りと呼ばれる場合もある。また、
図1においては、X線管11とコリメータ17との間にウェッジ16が配置される場合を示すが、X線管11とウェッジ16との間にコリメータ17が配置される場合であってもよい。この場合、ウェッジ16は、X線管11から照射され、コリメータ17により照射範囲が制限されたX線を透過して減衰させる。
【0016】
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管11が発生するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。なお、X線高電圧装置14は、回転フレーム13に設けられてもよいし、図示しない固定フレームに設けられても構わない。
【0017】
制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置15は、入力インターフェース43からの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う。例えば、制御装置15は、回転フレーム13の回転や架台装置10のチルト、寝台装置30及び天板33の動作等について制御を行う。一例を挙げると、制御装置15は、架台装置10をチルトさせる制御として、入力された傾斜角度(チルト角度)情報により、X軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させる。なお、制御装置15は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0018】
X線検出器12は、光子計数型検出器であり、X線光子が入射するごとに、当該X線光子のエネルギー値を計測可能な信号を出力する。X線光子は、例えば、X線管11から照射され被検体Pを透過したX線光子である。X線検出器12は、X線光子が入射するごとに、1パルスの電気信号(アナログ信号)を出力する複数の検出素子を有する。電気信号(パルス)の数を計数することで、各検出素子に入射したX線光子の数を計数することが可能である。また、この信号に対して、処理の演算処理を行なうことで、当該信号の出力を引き起こしたX線光子のエネルギー値を計測することができる。例えば、X線検出器12は、検出素子が、チャンネル方向(
図1中のX軸方向)にN列、スライス方向(
図1中のZ軸方向)にM列配置された面検出器である。
【0019】
上記の検出素子は、例えば、シンチレータと光電子増倍管等の光センサとにより構成される。かかる場合、X線検出器12は、入射したX線光子をシンチレータによりシンチレータ光に変換し、シンチレータ光を光電子増倍管等の光センサにより電気信号に変換する間接変換型の検出器となる。また、上記した検出素子は、例えば、CdTe(テルル化カドミウム:cadmium telluride)やCdZnTe(テルル化カドミウム亜鉛:cadmium Zinc telluride)などの半導体検出素子に電極が配置されたものである。かかる場合、X線検出器12は、入射したX線光子を、直接、電気信号に変換する直接変換型の検出器となる。
【0020】
X線検出器12は、上記した検出素子と、検出素子に接続されて、検出素子が検出したX線光子を計数するASIC(Application Specific Integrated Circuit)とを複数有する。ASICは、検出素子が出力した個々の電荷を弁別することで、検出素子に入射したX線光子の数を計数する。また、ASICは、個々の電荷の大きさに基づく演算処理を行なうことで、計数したX線光子のエネルギーを計測する。さらに、ASICは、X線光子の計数結果をデジタルデータとしてDAS18に出力する。
【0021】
図2は、第1の実施形態に係るX線検出器12の構成の一例を示す図である。例えば、X線検出器12は、
図2に示すように、検出素子121に対してASIC122が接続される。ASIC125は、例えば、コンデンサ122aと、増幅回路122bと、波形整形回路122cと、コンパレータ回路122dと、カウンタ122eとを有する。なお、
図4においては、説明の便宜上、単一の検出素子121とASIC122とを示しているが、実際には、X線検出器12は、複数の検出素子121とASIC122とを有する。
【0022】
コンデンサ122aは、検出素子121が出力した電荷を蓄積する。増幅回路122bは、コンデンサ125aに集電される電荷を積分して電気量のパルス信号としてそれぞれ出力する回路である。このパルス信号は、X線光子のエネルギー量に対応する波高及び面積を有する。すなわち、この電気信号(パルス)の波高値は、X線光子のエネルギー値と相関性を有する。
【0023】
波形整形回路122cは、増幅回路122bから出力されるパルス信号の周波数特性を調整し、かつゲイン及びオフセットを与えることによってパルス信号の波形を整形する回路である。
【0024】
コンパレータ回路122dは、入射したX線光子に基づくパルス信号の波高或いは面積を、弁別すべき複数のエネルギー帯域に対応して予め設定された閾値と比較して、閾値との比較結果を後段のカウンタ122eに出力する回路である。具体的には、コンパレータ回路122dは、波形整形回路122cから入力されたパルス信号の波高或いは面積を閾値と比較して、比較結果に応じて、対応するエネルギー帯のカウンタ122eに結果を出力する。
【0025】
カウンタ122eは、対応するエネルギー帯域毎にパルス信号をカウントすることで、エネルギー帯域ごとのX線光子を計数して、計数結果をデジタルデータとしてDAS18に出力する。具体的には、カウンタ122eは、コンパレータ回路122dからの入力に応じて、エネルギー帯域毎の計数値をカウントアップし、計数結果をDAS18に出力する。
【0026】
DAS18は、X線検出器12から入力された計数処理の結果に基づいて検出データを生成する。検出データは、例えば、サイノグラムである。サイノグラムは、X線管11の各位置において各検出素子に入射した計数処理の結果を並べたデータである。サイノグラムは、ビュー方向及びチャンネル方向を軸とする2次元直交座標系に、計数処理の結果を並べたデータである。DAS18は、例えば、X線検出器12におけるスライス方向の列単位で、サイノグラムを生成する。ここで、計数処理の結果は、エネルギービンごとのX線の光子数を割り当てたデータである。例えば、DAS18は、X線管11から照射されて被検体Pを透過したX線に由来する光子(X線光子)を計数し、当該計数したX線光子のエネルギーを弁別して計数処理の結果とする。DAS18は、生成した検出データをコンソール装置40へ転送する。DAS18は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0027】
DAS18が生成したデータは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode: LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分(例えば、固定フレーム等。
図1での図示は省略している)に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置40へと転送される。ここで、非回転部分とは、例えば、回転フレーム13を回転可能に支持する固定フレーム等である。なお、回転フレーム13から架台装置10の非回転部分へのデータの送信方法は、光通信に限らず、非接触型の如何なるデータ伝送方式を採用してもよいし、接触型のデータ伝送方式を採用しても構わない。
【0028】
寝台装置30は、撮影対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを有する。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を、天板33の長軸方向に移動する駆動機構であり、モータ及びアクチュエータ等を含む。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0029】
コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44とを有する。なお、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40又はコンソール装置40の各構成要素の一部が含まれてもよい。
【0030】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、投影データやCT画像データを記憶する。また、例えば、メモリ41は、X線CT装置1に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。また、例えば、メモリ41は、
図1に示すように、対応情報411を記憶する。なお、対応情報411については、後に詳述する。メモリ41は、X線CT装置1とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0031】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成された各種の画像を表示したり、操作者から各種の操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。また、ディスプレイ42は、撮影の待ち時間に関する情報などを表示する。なお、撮影の待ち時間に関する情報については、後に詳述する。例えば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、ディスプレイ42は、表示部の一例である。
【0032】
入力インターフェース43は、操作者から各種の入力操作を受け付けて、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。また、例えば、入力インターフェース43は、スキャン条件や、CT画像データを再構成する際の再構成条件、CT画像データから後処理画像を生成する際の画像処理条件等の入力操作を操作者から受け付ける。
【0033】
例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース43は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、コンソール装置40とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース43の例に含まれる。
【0034】
処理回路44は、X線CT装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路44は、制御機能441、前処理機能442、再構成処理機能443、画像処理機能444、推定機能445、判定機能446及び算出機能447を実行する。ここで、例えば、
図1に示す処理回路44の構成要素である制御機能441、前処理機能442、再構成処理機能443、画像処理機能444、推定機能445、判定機能446及び算出機能447が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ41内に記録されている。処理回路44は、例えば、プロセッサであり、メモリ41から各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路44は、
図1の処理回路44内に示された各機能を有することとなる。
【0035】
なお、
図1においては、制御機能441、前処理機能442、再構成処理機能443、画像処理機能444、推定機能445、判定機能446及び算出機能447の各処理機能が単一の処理回路44によって実現される場合を示したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、処理回路44は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路44が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0036】
制御機能441は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、各種処理を制御する。具体的には、制御機能441は、架台装置10で行なわれるCTスキャンを制御する。例えば、制御機能441は、X線高電圧装置14、X線検出器12、制御装置15、DAS18及び寝台駆動装置32の動作を制御することで、架台装置10における計数結果の収集処理を制御する。一例を挙げると、制御機能441は、位置決め画像(スキャノ画像)を収集する位置決めスキャン及び診断に用いる画像を収集する撮影(本スキャン)における投影データの収集処理をそれぞれ制御する。
【0037】
また、制御機能441は、種々の情報の取得を制御する。なお、制御機能441によって取得される情報については、後に詳述する。また、制御機能441は、メモリ41が記憶する各種画像データや、撮影の待ち時間に関する情報などをディスプレイ42に表示するように制御する。
【0038】
前処理機能442は、DAS18から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施して投影データを生成する。
【0039】
再構成処理機能443は、前処理機能442にて生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。再構成処理機能443は、再構成したCT画像データをメモリ41に格納する。
【0040】
ここで、フォトンカウンティングCTで得られる計数結果から生成された投影データには、被検体Pを透過することで減弱されたX線のエネルギーの情報が含まれている。このため、再構成処理機能443は、例えば、特定のエネルギー成分のCT画像データを再構成することができる。また、再構成処理機能443は、例えば、複数のエネルギー成分それぞれのCT画像データを再構成することができる。
【0041】
また、再構成処理機能443は、例えば、各エネルギー成分のCT画像データの各画素にエネルギー成分に応じた色調を割り当て、エネルギー成分に応じて色分けされた複数のCT画像データを重畳した画像データを生成することができる。また、再構成処理機能443は、例えば、物質固有のK吸収端を利用して、当該物質の同定が可能となる画像データを生成することができる。再構成処理機能443が生成する他の画像データとしては、単色X線画像データや密度画像データ、実効原子番号画像データ等が挙げられる。
【0042】
CT画像データを再構成するには被検体の周囲一周、360°分の投影データが、またハーフスキャン法でも180°+ファン角度分の投影データが必要とされる。いずれの再構成方式に対しても本実施形態へ適用可能である。
【0043】
画像処理機能444は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、再構成処理機能443によって生成されたCT画像データを公知の方法により、任意断面の断層像やレンダリング処理による3次元画像等の画像データに変換する。画像処理機能444は、変換した画像データをメモリ41に格納する。
【0044】
推定機能445は、X線検出器12の温度変化を推定する。判定機能446は、X線検出器12の温度変化に基づいて、本スキャンの実行可否を判定する。算出機能447は、撮影の待ち時間を算出する。なお、これら各種機能による処理については、後に詳述する。また、推定機能445は、推定部の一例である。また、判定機能446は、判定部の一例である。また、算出機能447は、算出部の一例である。
【0045】
以上、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成について説明した。かかる構成のもと、X線CT装置1は、光子計数型検出器を用いた撮影を効率的に進めることを可能にする。上述したように、光子計数型検出器は、X線の入射線量に応じた発熱量でASICが発熱する。ここで、ASICの発熱による検出器の温度上昇は、検出器の性能に影響を及ぼすため、検出器の温度が、性能に影響を及ぼす温度(上限温度)に達することがないように管理する必要がある。
【0046】
そこで、本実施形態に係るX線CT装置1では、X線検出器12の温度変化を推定し、推定した温度変化に基づいて、スキャンが実施可能か否かを判定することで、撮影を効率的に進めることを可能にする。具体的には、X線CT装置1は、スキャン開始前のX線検出器12の温度である初期温度の情報を取得して、設定されたスキャン条件でスキャンを実行した場合に達するX線検出器12の温度を推定し、推定した温度が上限温度を超えるか否かを判定することで、スキャンが実施可能か否かを判定する。
【0047】
図3は、第1の実施形態に係るX線CT装置1による処理の概要を説明するための図である。ここで、
図3においては、縦軸に「検出器温度(℃)」を示し、横軸に「時間(s)」を示した温度変化のグラフを示す。例えば、X線CT装置1は、撮影の開始時点における検出器の初期温度「a」の情報を取得する。そして、X線CT装置1は、スキャン条件に基づいて、X線検出器12の発熱量を推定し、初期温度「a」からの温度変化を推定する。
【0048】
ここで、例えば、推定した温度変化が、
図3の直線L1であった場合、X線CT装置1は、変化後の温度が上限温度「X」を超えるため、スキャン実施不可と判定する。一方、推定した温度が、
図3の直線L2であった場合、X線CT装置1は、変化後の温度が上限温度「X」を超えないため、スキャン実施可能と判定する。
【0049】
上述したように、ASICの発熱量は、X線の入射線量に応じて異なる。したがって、X線CT装置1は、X線検出器12において発熱量が最も高い位置において、変化後の温度が上限温度を超えるか否かを判定することで、X線検出器12全体で上限温度を超えないように制御する。以下、X線CT装置1における処理の詳細について説明する。
【0050】
本実施形態に係る制御機能441は、本スキャン前のX線検出器12(光子計数型検出器)の初期温度情報と、被写体の形状に関する情報と、本スキャンのスキャン条件とを取得する。ここで、制御機能441は、位置決めスキャンが実行された際のX線検出器12における計数率又は温度センサに基づいて、初期温度情報を取得することができる。以下では、まず、位置決めスキャンにおける計数率を用いる場合のX線CT装置1における処理について説明する。
【0051】
かかる場合には、制御機能441は、位置決めスキャンによって計測された単位時間当たりの入射光子数(カウントレート)に基づいて発熱量を算出し、算出した発熱量に基づいて現時点のX線検出器12の温度情報を取得する。
図4は、第1の実施形態に係る制御機能441による初期温度情報の取得の一例を説明するための図である。
図4においては、縦軸に「検出器温度(℃)」を示し、横軸に「時間(s)」を示した温度変化のグラフを示す。
【0052】
例えば、制御機能441は、位置決めスキャンにおいて収集された位置ごとのカウントレートの情報を取得して、最も高いカウントレートを示す位置の発熱量を算出する。そして、制御機能441は、位置決めスキャン前のX線検出器12の温度(
図4における温度「b」)に対して、発熱量に基づく温度変化を加味することで、現時点(位置決めスキャン後)のX線検出器12の温度(
図4における温度「a」)を取得する。
【0053】
ここで、X線CT装置1は、カウントレートに応じた発熱量、及び、発熱量に応じた温度変化の情報を、予め対応情報411として、メモリ41に記憶する。
図5は、第1の実施形態に係る対応情報411の一例を示す図である。例えば、
図5に示すように、メモリ41は、カウントレートと、発熱量と、温度変化とを対応付けた対応情報を記憶する。
【0054】
一例を挙げると、メモリ41は、対応情報「カウントレート:C<C1、発熱量:Q1、温度変化:T1」を記憶する。かかる対応情報は、カウントレート「C」が「C1」未満である場合の発熱量は「Q1」であり、発熱量が「Q1」の場合の温度変化が「T1」であることを示す。同様に、メモリ41は、カウントレート「C」が「C1」以上「C2」未満の場合と、カウントレート「C」が「C2」以上「C3」未満の場合と、カウントレート「C」が「C3」以上の場合とについて、それぞれ発熱量と温度変化を対応付けた対応情報を記憶する。ここで、カウントレートに応じた発熱量は、数式「発熱量(Q)=電圧(V)×電流(A)×カウント×k(計数)」によって算出することができる。そこで、例えば、メモリ41は、スキャン条件(電圧及び電流)ごとに、
図5に示す対応情報を記憶するようにしてもよい。
【0055】
なお、
図5に示す例はあくまでも一例であり、カウントレートと、発熱量と、温度変化とを対応付けた対応情報は、図示のものに限られない。例えば、対応情報として、カウントレートに応じた発熱量を算出するための上記した数式と、発熱量と温度変化との対応関係とが記憶される場合でもよい。かかる場合には、制御機能441は、上記した数式によって発熱量を算出し、算出した発熱量に対応する温度変化を取得する。
【0056】
制御機能441は、位置決めスキャンにおいて収集された位置ごとのカウントレートの情報を取得し、最も高いカウントレートに対応する温度変化を、
図5に示す対応情報に基づいて算出する。そして、制御機能441は、位置決めスキャン前の温度(
図4における温度「b」)に対して、算出した温度変化を加味することで、初期温度「a」を取得する。
【0057】
ここで、位置決めスキャン前のX線検出器12の温度「b」は、予め設定された温度、或いは、1つ前のスキャンに基づいて推定される温度が用いられる。例えば、スキャンを実行した後に一定の時間が経過している場合には、予め設定された温度が温度「b」として用いられる。すなわち、X線検出器12が、発熱によって温度上昇していない場合には、予め設定された温度が、位置決めスキャン前の温度「b」として用いられる。なお、ここで設定される温度は、例えば、発熱していない状態で直接計測されたX線検出器12の温度や、X線CT装置1が設置された検査室の室温に基づく温度などが適用される。
【0058】
また、例えば、スキャンを実行した後に一定の時間が経過していない場合には、1つ前のスキャンに基づいて推定される温度が温度「b」として用いられる。すなわち、制御機能441は、1つ前のスキャンが終了した時点からの経過時間に基づいて、現時点のX線検出器12の温度を算出し、算出した温度を温度「b」として用いる。
【0059】
ここで、スキャンを実行していない状態における経過時間と温度変化との対応関係は、対応情報411として予めメモリ41に記憶される。
図6は、第1の実施形態に係る対応情報411の一例を示す図である。例えば、
図6に示すように、メモリ41は、時間と、温度変化とを対応付けた対応情報を記憶する。
【0060】
一例を挙げると、メモリ41は、対応情報「時間:t1、温度変化:-T5」を記憶する。かかる対応情報は、経過時間が「t1」である場合の温度変化が「-T5」であることを示す。同様に、メモリ41は、経過時間ごとに温度変化を対応付けた対応情報を記憶する。なお、
図6に示す例はあくまでも一例であり、時間と、温度変化とを対応付けた対応情報は、図示のものに限られない。例えば、メモリ41は、経過時間と温度変化との関係を示す関係式を記憶する場合でもよい。
【0061】
制御機能441は、1つ前のスキャン直後のX線検出器12の温度を取得する。そして、制御機能441は、
図6に示す対応情報を参照して、1つ前のスキャンが終了してからの経過時間に対応する温度変化を算出し、1つ前のスキャン直後のX線検出器12の温度に対して、算出した温度変化を加味することで、現時点のX線検出器12の温度を算出する。
【0062】
制御機能441は、初期温度「a」を取得するとともに、被写体情報及びスキャン条件を取得して、推定機能445に送信する。例えば、制御機能441は、位置決めスキャンによって取得された位置決め画像に基づいて、被検体の体厚などを含む被写体の形状に関する情報を取得する。また、制御機能441は、当該被検体の本スキャンのスキャン条件を取得する。
【0063】
ここで、被写体の形状に関する情報は、位置決めスキャンによって取得された位置決め画像に基づくだけではなく、その他、種々の方法によって取得される場合でもよい。例えば、被写体の形状に関する情報は、光学カメラによる光学画像に基づいて取得される場合でもよく、或いは、被検体の体型情報(身長、体重等)に基づいて体型を推定することで取得される場合でもよい。
【0064】
例えば、光学画像に基づいて被写体の形状に関する情報を取得する場合、X線CT装置1は、光学カメラが接続され、光学カメラによって撮影された被写体の光学画像を取得する。そして、制御機能441は、被写体の光学画像に基づいて、被検体の体厚などを含む被写体の形状に関する情報を取得する。一例を挙げると、制御機能441は、光学画像に含まれる被写体を抽出し、光学画像において示されるサイズと実際のサイズとの対応関係に基づいて、光学画像に含まれる被写体の形状に関する情報を取得する。
【0065】
また、例えば、被検体の体型情報に基づいて形状情報を取得する場合、制御機能441は、ネットワークを介して被検体の体型情報を取得する。そして、制御機能441は、取得した体型情報に基づいて、スキャン対象部位の形状を推定することで、形状に関する情報を取得する。
【0066】
推定機能445は、初期温度情報と、被写体の形状に関する情報と、本スキャンのスキャン条件に関する情報とに基づいて、当該本スキャンを実行した場合のX線検出器12の温度変化を推定する。具体的には、推定機能445は、被写体の形状に関する情報と、本スキャンのスキャン条件に関する情報とに基づいて、当該本スキャンを実行した場合のX線検出器12における発熱量を推定し、初期温度情報と発熱量とに基づいて、温度変化を推定する。すなわち、推定機能445は、初期温度情報と、発熱量に基づく温度上昇値に基づいて、本スキャンを実行した場合のX線検出器12における温度を推定する。
【0067】
例えば、推定機能445は、被検体情報と本スキャンのスキャン条件に基づいて、本スキャンを実行した場合のカウントレートを推定する。例えば、推定機能445は、被検体の体厚、対象部位などの被検体情報と、管電圧、管電流などのスキャン条件に基づいて、本スキャンを実行した場合の位置ごとのカウントレートを推定する。
【0068】
そして、推定機能445は、
図5に示す対応情報を参照して、推定した各位置のカウントレートに対応する発熱量をそれぞれ推定し、推定した発熱量から各位置における温度変化をそれぞれ推定する。例えば、推定機能445は、推定した発熱量に基づいて、X線検出器12の各位置における温度の上昇値を推定する。その後、推定機能445は、推定した位置ごとの温度変化の情報を判定機能446に送信する。
【0069】
判定機能446は、温度変化に基づいて、初期温度情報を取得したタイミングにおける本スキャンの実行可否を判定する。具体的には、判定機能446は、X線検出器12における変化後の温度と閾値とを比較し、変化後の温度が閾値を超えない場合に、本スキャンを実行すると判定する。例えば、判定機能446は、位置決めスキャン終了時の初期温度に対して、推定機能445によって推定された温度変化を加味することで、本スキャンを実行した場合にX線検出器12の温度が上限温度を超えるか否かを判定する。すなわち、判定機能446は、
図4に示す位置決めスキャン終了時における初期温度(温度「a」)に対して、推定機能445によって推定された温度の上昇値を加算した場合に、上限温度「X」を超えるか否かを判定する。
【0070】
ここで、上限温度「X」を超える場合(
図4の直線L1の場合)には、判定機能446は、本スキャンの実行が不可であると判定する。一方、上限温度「X」を超えない場合(
図4の直線L2の場合)には、判定機能446は、本スキャンの実行が可能であると判定する。
【0071】
判定機能446によって、本スキャンの実行が可能であると判定されると、制御機能441は、位置決めスキャン後、操作者による本スキャン開始の操作に応じて、本スキャンの実行を制御する。
【0072】
一方、判定機能446によって、本スキャンの実行が不可であると判定されると、算出機能447は、本スキャンが可能となるまでの待ち時間を算出する。すなわち、算出機能447は、判定機能446における判定結果が、位置決めスキャン直後のタイミングにおける本スキャンが実行不可の場合に、X線検出器12の温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間を算出する。
【0073】
図7は、第1の実施形態に係る算出機能447による処理の一例を説明するための図である。
図7においては、縦軸に「検出器温度(℃)」を示し、横軸に「時間(s)」を示した温度変化のグラフを示す。例えば、判定機能446による判定結果が、
図4の直線L1となった場合、算出機能447は、推定機能445によって推定された温度変化を加味した場合でもX線検出器12の温度が上限温度「X」を超えなくなるまでの待ち時間を算出する。
【0074】
すなわち、本実施形態に係るX線CT装置1は、本スキャンを実行せずに待機することで、X線検出器12の温度を初期温度「a」から低下させ、推定機能445によって推定された温度変化を加味した場合でもX線検出器12の温度が上限温度「X」を超えなくなるように制御する。
【0075】
算出機能447は、推定機能445によって推定された温度変化を初期温度に加味した場合に、上限温度「X」を超える分の温度が低下するまでの待ち時間を、時間と温度変化との対応情報に基づいて算出する。例えば、算出機能447は、
図6に示す対応情報を用いて、上限温度「X」を超える分の温度に対応する時間を算出する。
【0076】
上述したように、ASICの発熱量は、入射線量に応じて異なるため、X線CT装置1は、X線検出器12において発熱量が最も高い位置において、変化後の温度が上限温度を超えるか否か判定し、超える場合には待ち時間を算出する。ここで、X線検出器12に対する入射線量の分布は、被写体の形状、X線の曝射方向、スキャン条件によって異なる。
【0077】
図8は、第1の実施形態に係る入射線量の分布の一例を示す図である。ここで、
図8においては、上段に被検体に対するX線の曝射方向を示し、下段に上段の曝射方向からX線が曝射された際の入射線量の分布を示す。ここで、
図8における下段では、縦軸に「入射線量」を示し、横軸に「チャネル方向の検出素子」の位置を示す。すなわち、
図8における下段は、チャネル方向に配置された1スライス分の検出素子群に対する入射線量の分布を示す。
【0078】
例えば、X線検出器12に対するX線の入射線量の分布は、
図8に示すように、被検体と空気との境界部分において高い入射線量を示す。これは、ウェッジ16やコリメータ17によって、被検体の外側の領域に対するX線の入射が制限されるとともに、被検体に対するX線の入射は、予め定められた分布になるように制御されるためである。
【0079】
例えば、被検体中心と、視野(FOV:field of view)中心とが一致している場合、本スキャンでの一連の曝射による入射線量は、
図8の上段に示す「0°」からの曝射において被検体と空気との境界部分となる位置の検出素子で最も高くなると考えられる。したがって、位置決めスキャンが
図8の上段に示す「0°」の1方向からのみ収集された場合、X線CT装置1は、位置決めスキャンにおいてカウントレートが最も高い位置の検出素子に対応するASICの発熱量が最も高いと判定し、当該位置の温度が上限温度を超えないように制御する。すなわち、制御機能441、推定機能445、判定機能446、及び、算出機能447は、位置決めスキャンにおいてカウントレートが最も高い位置を対象として、上記した処理を実行する。
【0080】
なお、位置決めスキャンが複数の方向で実行された場合、制御機能441は、各方向のカウントレートの平均値を算出し、算出した平均値に対応する温度変化に基づいて、発熱量が最も高くなる位置を特定する。推定機能445、判定機能446、及び、算出機能447は、特定された位置を対象として、上記した処理を実行する。
【0081】
上述したように、算出機能447によって待ち時間が算出されると、制御機能441は、
図9に示すように、算出された待ち時間をディスプレイ42にて表示するように制御する。ここで、ディスプレイ42にて表示される待ち時間は、本スキャン開始までの時間である場合でもよく、或いは、本スキャン終了までの時間(本スキャン開始までの時間+本スキャンにかかる時間)の場合でもよい。制御機能441は、待ち時間を表示した後に本スキャン開始の操作を受け付けた場合、待ち時間経過後に、本スキャンを実行するように制御する。なお、
図9は、第1の実施形態に係る待ち時間の表示の一例を示す図である。
【0082】
このように、X線CT装置1は、スキャンによってX線検出器12の温度が上限温度を超えるか否かを判定し、上限温度を超える場合に、待ち時間を表示させる。これにより、X線CT装置1は、被検体ごとに、撮影に必要な時間を操作者に把握させることができ、撮影を効率的に進めることを可能にする。
【0083】
ここで、上述した実施形態では、位置決めスキャンにおけるカウントレートに基づいて、初期温度を取得する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、温度センサを用いて初期温度を取得する場合でもよい。かかる場合には、X線検出器12に対して温度センサが設けられる。
【0084】
図10は、第1の実施形態に係るX線検出器12の構成の一例を示す図である。例えば、X線検出器12は、
図10に示すように、温度センサ123をさらに備える。温度センサ123は、例えば、熱電対、測温抵抗体、サーミスタ、IC温度センサなどである。
【0085】
制御機能441は、温度センサ123によって検出される温度情報を取得することで、X線検出器12における初期温度情報を取得する。例えば、制御機能441は、位置決めスキャンが実行された後に温度センサ123によって検出された温度を、初期温度として取得する。
【0086】
なお、温度センサ123は、ASIC122ごとに配置されてもよいが、所定の間隔で配置される場合でもよい。温度センサ123が所定の間隔で配置される場合には、各温度センサ123において検出される温度と、各ASIC122における温度との対応関係を示す対応情報がメモリ41に記憶される。制御機能441は、メモリ41に記憶された温度の対応情報に基づいて、各温度センサ123によって検出された温度から、各ASIC122の温度を取得する。
【0087】
なお、本実施形態に係る温度センサ123は、新たに設けられるものに限られず、例えば、回路保護のために設置された温度保護回路が用いられる場合でもよい。かかる場合には、制御機能441は、温度保護回路から温度情報を読み出すことで、初期温度を取得する。
【0088】
推定機能445、判定機能446、算出機能447は、温度センサ123に基づいて取得された初期温度を用いて、上述した各種処理を実行する。
【0089】
(変形例)
上述した実施形態では、X線検出器12周辺の雰囲気温度の影響を考慮しない場合の温度変化に基づく制御について説明した。変形例では、雰囲気温度を考慮した場合の温度変化に基づく制御について説明する。かかる場合には、X線検出器12の周囲に温度センサが配置され(不図示)、制御機能441は、当該温度センサによって検出される雰囲気温度の情報を取得する。そして、制御機能441は、取得した雰囲気温度と、位置決めスキャンにおけるカウントレートとを用いて、初期温度の情報を取得する。
【0090】
ここで、雰囲気温度を考慮する場合、X線CT装置1は、カウントレートに応じた発熱量、及び、発熱量と雰囲気温度に応じた温度変化の情報を、予め対応情報411として、メモリ41に記憶する。
図11は、変形例に係る対応情報411の一例を示す図である。例えば、
図11に示すように、メモリ41は、カウントレートと、発熱量と、雰囲気温度と、温度変化とを対応付けた対応情報を記憶する。
【0091】
一例を挙げると、メモリ41は、対応情報「カウントレート:C<C1、発熱量:Q1、雰囲気温度:T<T10、温度変化:T20」を記憶する。かかる対応情報は、カウントレート「C」が「C1」未満である場合の発熱量は「Q1」であり、発熱量が「Q1」かつ雰囲気温度「T」が「T10」未満の場合の温度変化が「T20」であることを示す。同様に、メモリ41は、発熱量が「Q1」、かつ、雰囲気温度「T」が「T10」以上、「T11」未満の場合と、発熱量が「Q1」、かつ、雰囲気温度「T」が「T11」以上、「T12」未満の場合と、発熱量が「Q1」、かつ、雰囲気温度「T」が「T12」以上の場合とについて、それぞれ温度変化を対応付けた対応情報を記憶する。
【0092】
なお、
図11においては、「カウントレート:C<C1、発熱量:Q1」の場合の対応情報のみを示しているが、実際には、「カウントレート:C1≦C<C2、発熱量:Q2」の場合と、「カウントレート:C2≦C<C3、発熱量:Q3」の場合と、「カウントレート:C3≦C、発熱量:Q4」の場合とについて、雰囲気温度ごとの温度変化が、メモリ41にそれぞれ記憶される。なお、
図11に示す例はあくまでも一例であり、カウントレートと、発熱量と、雰囲気温度、温度変化とを対応付けた対応情報は、図示のものに限られない。
【0093】
制御機能441は、位置決めスキャンにおいて収集された位置ごとのカウントレートの情報を取得し、最も高いカウントレートに対応する温度変化を、
図11に示す対応情報に基づいて算出する。そして、制御機能441は、位置決めスキャン前の温度に対して、算出した温度変化を加味することで、初期温度を取得する。
【0094】
推定機能445は、X線検出器12の雰囲気温度に関する情報に更に基づいて、本スキャンを実行した場合のX線検出器12における発熱量を推定し、初期温度情報と発熱量とに基づいて、温度変化を推定する。例えば、推定機能445は、被検体情報と本スキャンのスキャン条件に基づいて、本スキャンを実行した場合のカウントレートを推定する。また、推定機能445は、雰囲気温度を取得する。
【0095】
そして、推定機能445は、
図11に示す対応情報を参照して、推定した各位置のカウントレートに対応する発熱量をそれぞれ推定し、発熱量と雰囲気温度とから各位置における温度変化をそれぞれ推定する。例えば、推定機能445は、発熱量と雰囲気温度に基づいて、X線検出器12の各位置における温度の上昇値を推定する。その後、推定機能445は、推定した位置ごとの温度変化の情報を判定機能446に送信する。
【0096】
判定機能446は、位置決めスキャン終了時の初期温度に対して、推定機能445によって推定された温度変化を加味することで、本スキャンを実行した場合にX線検出器12の温度が上限温度を超えるか否かを判定する。
【0097】
算出機能447は、判定機能446によって本スキャンが実行不可と判定された場合に、X線検出器12の温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間を、雰囲気温度を考慮して算出する。
【0098】
ここで、雰囲気温度を考慮する場合、X線CT装置1は、スキャンを実行していない状態における経過時間と、雰囲気温度と、温度変化との対応関係を示す情報を、対応情報411として予めメモリ41に記憶する。
図12は、変形例に係る対応情報411の一例を示す図である。例えば、
図12に示すように、メモリ41は、時間と、雰囲気温度と、温度変化とを対応付けた対応情報を記憶する。
【0099】
一例を挙げると、メモリ41は、対応情報「時間:t1、雰囲気温度:T<T10、温度変化:-T30」を記憶する。かかる対応情報は、経過時間が「t1」であり、雰囲気温度「T」が「T10」未満である場合の温度変化が「-T30」であることを示す。同様に、メモリ41は、経過時間「t1」における雰囲気温度ごとの温度変化を対応付けた対応情報を記憶する。なお、
図12においては、経過時間「t1」についてのみ示しているが、実際には、「t2」~「t5」の各経過時間について、雰囲気温度ごとの温度変化を対応付けた対応情報が記憶される。なお、
図12に示す例はあくまでも一例であり、時間と、雰囲気温度と、温度変化とを対応付けた対応情報は、図示のものに限られない。例えば、メモリ41は、経過時間と雰囲気温度と温度変化との関係を示す関係式を記憶する場合でもよい。
【0100】
なお、雰囲気温度が取得される場合、制御機能441は、位置決めスキャン前のX線検出器12の温度「b」の算出において、
図12に示す対応情報を用いることができる。すなわち、スキャンを実行した後に一定の時間が経過しておらず、1つ前のスキャンに基づいて推定される温度を温度「b」として用いる場合に、制御機能441は、
図12に示す対応情報に基づいて、現時点のX線検出器12の温度を算出する。例えば、制御機能441は、
図12に示す対応情報に基づいて、1つ前のスキャンが終了した時点からの経過時間と雰囲気温度とに対応する温度変化を算出し、1つ前のスキャン直後のX線検出器12の温度に対して、算出した温度変化を加味することで、現時点のX線検出器12の温度を算出する。
【0101】
次に、
図13、
図14を用いて、第1の実施形態に係るX線CT装置1の処理、及び、変形例に係るX線CT装置1の処理について説明する。
図13は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の処理の手順を説明するためのフローチャートである。
図14は、変形例に係るX線CT装置1の処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【0102】
ここで、
図13におけるステップS101~S102、S107~S109は、処理回路44が、メモリ41から制御機能441に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。また、
図13におけるステップS103~S104は、処理回路44が、メモリ41から推定機能445に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。また、
図13におけるステップS105は、処理回路44が、メモリ41から判定機能446に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。また、
図13におけるステップS106は、処理回路44が、メモリ41から算出機能447に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。
【0103】
図13に示すように、X線CT装置1においては、まず、処理回路44が、位置決めスキャンを実行して(ステップS101)、初期温度を算出する(ステップS102)。そして、処理回路44は、被検体情報とスキャン条件に基づいて発熱量を推定して(ステップS103)、初期温度と発熱量とから、本スキャンを実行した場合の温度変化を推定する(ステップS104)。
【0104】
その後、処理回路44は、推定した温度変化に基づいて、本スキャンが実行可能か否かを判定する(ステップS105)。ここで、本スキャンが実行不可の場合(ステップS105、否定)、処理回路44は、本スキャンが実行可能となるまでの待ち時間を算出して(ステップS106)、算出した待ち時間をディスプレイ42に表示させる(ステップS107)。なお、本スキャンが実行可能の場合(ステップS105、肯定)、処理回路44は、撮影を開始する(ステップS109)。
【0105】
ステップS107において待ち時間をディスプレイ42に表示させると、処理回路44は、待ち時間が経過したか否かを判定する(ステップS108)。ここで、待ち時間が経過すると(ステップS108、肯定)、処理回路44は、撮影を開始する(ステップS109)。なお、待ち時間が経過するまで、処理回路44は、待機状態である(ステップS108、否定)。
【0106】
図14におけるステップS201~S202、S207~S209は、処理回路44が、メモリ41から制御機能441に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。また、
図14におけるステップS203~S204、S210は、処理回路44が、メモリ41から推定機能445に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。また、
図14におけるステップS205は、処理回路44が、メモリ41から判定機能446に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。また、
図14におけるステップS206は、処理回路44が、メモリ41から算出機能447に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。
【0107】
図14に示すように、X線CT装置1においては、まず、処理回路44が、位置決めスキャンを実行して(ステップS201)、雰囲気温度を考慮して初期温度を算出する(ステップS202)。そして、処理回路44は、被検体情報とスキャン条件に基づいて発熱量を推定して(ステップS203)、初期温度と発熱量と雰囲気温度とから、本スキャンを実行した場合の温度変化を推定する(ステップS204)。
【0108】
その後、処理回路44は、推定した温度変化に基づいて、本スキャンが実行可能か否かを判定する(ステップS205)。ここで、本スキャンが実行不可の場合(ステップS205、否定)、処理回路44は、雰囲気温度を考慮して、本スキャンが実行可能となるまでの待ち時間を算出して(ステップS206)、算出した待ち時間をディスプレイ42に表示させる(ステップS207)。なお、本スキャンが実行可能の場合(ステップS205、肯定)、処理回路44は、撮影を開始する(ステップS209)。
【0109】
ステップS207において待ち時間をディスプレイ42に表示させると、処理回路44は、待ち時間が経過したか否かを判定する(ステップS208)。ここで、待ち時間が経過すると(ステップS208、肯定)、処理回路44は、撮影を開始する(ステップS209)。
【0110】
一方、待ち時間が経過していない場合には(ステップS208、否定)、処理回路44は、雰囲気温度が変化したか否かを判定する(ステップS210)。ここで、雰囲気温度が変化した場合には(ステップS210、肯定)、処理回路44は、ステップS204に戻って、変化後の雰囲気温度を用いて温度変化を再推定する。そして、ステップS205において、撮影が不可の場合には、処理回路44は、再推定した温度変化に基づいて、待ち時間を再算出して、ディスプレイ42に表示させる。なお、雰囲気温度が変化していない場合には、処理回路44は、待ち時間の表示を継続する(ステップS210、否定)。
【0111】
上述したように、第1の実施形態によれば、制御機能441は、本スキャン前のX線検出器12の初期温度情報と、被写体の形状に関する情報と、本スキャンのスキャン条件とを取得する。推定機能445は、初期温度情報と、被写体の形状に関する情報と、本スキャンのスキャン条件に関する情報とに基づいて、当該本スキャンを実行した場合のX線検出器12の温度変化を推定する。判定機能446は、温度変化に基づいて、初期温度情報を取得したタイミングにおける本スキャンの実行可否を判定する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、X線検出器12の温度上昇を考慮してスキャンを実施することができ、光子計数型検出器を用いた撮影を効率的に進めることを可能にする。さらに、X線CT装置1は、X線検出器12の温度が上限温度を超えないように制御することができ、温度上昇によるX線検出器12の故障・性能変化の発生確率を低下させることを可能にする。
【0112】
また、第1の実施形態によれば、推定機能445は、被写体の形状に関する情報と、本スキャンのスキャン条件に関する情報とに基づいて、当該本スキャンを実行した場合のX線検出器12における発熱量を推定し、初期温度情報と発熱量とに基づいて、温度変化を推定する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、本スキャンの実施可否を精度よく判定することを可能にする。
【0113】
また、第1の実施形態によれば、推定機能445は、X線検出器12の雰囲気温度に関する情報に更に基づいて、本スキャンを実行した場合のX線検出器における発熱量を推定し、初期温度情報と発熱量とに基づいて、温度変化を推定する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、温度変化をより正確に推定することを可能にする。
【0114】
また、第1の実施形態によれば、推定機能445は、初期温度情報と、発熱量に基づく温度上昇値に基づいて、本スキャンを実行した場合のX線検出器12における温度を推定する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、本スキャンを実行した場合のX線検出器12における温度を精度よく推定することを可能にする。
【0115】
また、第1の実施形態によれば、判定機能446は、X線検出器12における変化後の温度と閾値とを比較し、変化後の温度が閾値を超えない場合に、本スキャンを実行すると判定する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、X線検出器12の上限温度を超えないように制御することを可能にする。
【0116】
また、第1の実施形態によれば、算出機能447は、判定機能446における判定結果が、初期温度情報を取得したタイミングにおける本スキャンが実行不可の場合に、X線検出器12の温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間を算出する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、本スキャンが実行可能となるまでの待ち時間を把握させることができ、撮影を効率的に進めることを可能にする。
【0117】
また、第1の実施形態によれば、算出機能447は、X線検出器12の雰囲気温度に関する情報に更に基づいて、待ち時間を算出する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、より正確な待ち時間を算出することを可能にする。
【0118】
また、第1の実施形態によれば、ディスプレイ42には、待ち時間に関する情報を表示する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、待ち時間を操作者に把握させることを可能にする。
【0119】
また、第1の実施形態によれば、制御機能441は、位置決めスキャンが実行された際のX線検出器12における計数率又は温度センサに基づいて、初期温度情報を取得する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、初期温度情報を容易に取得することを可能にする。
【0120】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、X線検出器12における温度変化を推定し、本スキャンが実施不可の場合に、待ち時間を表示する例について説明した。第2の実施形態では、本スキャンが実施不可の場合にスキャン条件を再設定する例について説明する。ここで、第2の実施形態に係るX線CT装置1は、第1の実施形態と比較して、制御機能441による処理内容が異なる。以下、これを中心に説明する。
【0121】
第2の実施形態に係る制御機能441は、判定機能446における判定結果が、初期温度情報を取得したタイミングにおける本スキャンが実行不可の場合に、本スキャンのスキャン条件を再設定する。例えば、制御機能441は、ディスプレイ42に対して、待ち時間とともに、待ち時間を承認するか否かを入力するためのGUIを表示させる。ここで、操作者が待ち時間を承認しない旨の操作を実行した場合に、制御機能441は、スキャン条件を再設定して、再設定したスキャン条件を操作者に提示するように制御する。
【0122】
ここで、メモリ41は、画質を担保するための最低限のスキャン条件を、対象部位ごとに予め記憶する。制御機能441は、対象部位に対応するスキャン条件をメモリ41から読み出して、ディスプレイ42に表示させる。制御機能441によってスキャン条件が再設定されると、算出機能447は、待ち時間を再算出する。制御機能441は、再算出された待ち時間を再度ディスプレイ42に表示させるように制御する。
【0123】
次に、
図15を用いて、第2の実施形態に係るX線CT装置1の処理について説明する。
図15は、第2の実施形態に係るX線CT装置1の処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【0124】
図15におけるステップS301~S302、S307~S310は、処理回路44が、メモリ41から制御機能441に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。また、
図15におけるステップS303~S304は、処理回路44が、メモリ41から推定機能445に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。また、
図15におけるステップS305は、処理回路44が、メモリ41から判定機能446に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。また、
図15におけるステップS306は、処理回路44が、メモリ41から算出機能447に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。
【0125】
図15に示すように、X線CT装置1においては、まず、処理回路44が、位置決めスキャンを実行して(ステップS301)、初期温度を算出する(ステップS302)。そして、処理回路44は、被検体情報とスキャン条件に基づいて発熱量を推定して(ステップS303)、初期温度と発熱量とから、本スキャンを実行した場合の温度変化を推定する(ステップS304)。
【0126】
その後、処理回路44は、推定した温度変化に基づいて、本スキャンが実行可能か否かを判定する(ステップS305)。ここで、本スキャンが実行不可の場合(ステップS305、否定)、処理回路44は、本スキャンが実行可能となるまでの待ち時間を算出して(ステップS306)、算出した待ち時間をディスプレイ42に表示させる(ステップS307)。なお、本スキャンが実行可能の場合(ステップS305、肯定)、処理回路44は、撮影を開始する(ステップS310)。
【0127】
ステップS307において待ち時間をディスプレイ42に表示させると、処理回路44は、待ち時間が承諾されたか否かを判定する(ステップS308)。ここで、待ち時間が承諾されない場合(ステップS308、否定)、処理回路44は、撮影条件を再プランニングして(ステップS311)、ステップS303に戻り、発熱量を推定する。一方、待ち時間が承諾された場合(ステップS308、肯定)、処理回路44は、待ち時間が経過したか否かを判定する(ステップS309)。ここで、待ち時間が経過すると(ステップS309、肯定)、処理回路44は、撮影を開始する(ステップS310)。なお、待ち時間が経過するまで、処理回路44は待機状態である(ステップS309、否定)。
【0128】
なお、
図15においては、雰囲気温度を考慮しない場合の処理について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、雰囲気温度を考慮して、温度変化及び待ち時間を算出する場合でもよい。すなわち、第2の実施形態に係る処理回路44は、
図14に示す各処理ステップを適宜組み合わせて実行することもできる。
【0129】
上述したように、第2の実施形態によれば、制御機能441は、判定機能446における判定結果が、初期温度情報を取得したタイミングにおける本スキャンが実行不可の場合に、本スキャンのスキャン条件を再設定する。従って、第2の実施形態に係るX線CT装置1は、スキャン条件の再プランニングによって待ち時間の短縮を行うことを可能にする。
【0130】
(第3の実施形態)
上述した第1の実施形態では、X線検出器12における温度変化を推定し、本スキャンが実施不可の場合に、待ち時間を表示する例について説明した。第3の実施形態では、X線検出器12の待ち時間に加えて、X線管11の待ち時間を加味する例について説明する。ここで、第3の実施形態に係るX線CT装置1は、第1の実施形態と比較して、制御機能441及び判定機能446による処理内容が異なる。以下、これらを中心に説明する。
【0131】
X線管11は、陰極で発生した熱電子が衝突するターゲットにおいて熱が蓄積する。このターゲットにおける熱の蓄積は、性能変化を生じさせる。したがって、X線CT装置1では、X線管11を保護するため、ターゲットの熱を低下させるための待ち時間を設ける保護機能が備えられている。そこで、第3の実施形態に係るX線CT装置1では、X線検出器12に関する待ち時間とX線管11に関する待ち時間の両方を考慮して、本スキャンの実施可否を判定するとともに、待ち時間の表示を行う。
【0132】
第3の実施形態に係る制御機能441は、X線管における温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間に関する情報を更に取得する。例えば、制御機能441は、X線高電圧装置14から印加される電圧や、ターゲットに対して熱電子を照射する時間に基づいて、待ち時間を算出する。
【0133】
第3の実施形態に係る判定機能446は、X線検出器12の温度変化と、X線管11における温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間とに基づいて、初期温度情報を取得したタイミングにおける本スキャンの実行可否を判定する。具体的には、判定機能446は、X線検出器12における変化後の温度が閾値を超えるか否かを判定するとともに、X線管11に関する待ち時間があるか否かを判定する。
【0134】
ここで、X線検出器12における変化後の温度が閾値を超えず、かつ、X線管11に関する待ち時間がない場合に、判定機能446は、本スキャンが実行可能であると判定する。すなわち、X線検出器12における変化後の温度が閾値を超える場合、および/または、X線管11に関する待ち時間がある場合、判定機能446は、本スキャンが実行不可であると判定する。
【0135】
そして、制御機能441は、X線検出器12の温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間と、X線管11における温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間とのうち、より長い待ち時間に関する情報をディスプレイ42表示させる。例えば、制御機能441は、X線検出器12における変化後の温度が閾値を超え、かつ、X線管11に関する待ち時間がない場合、算出機能447によって算出された待ち時間をディスプレイ42に表示させる。また、例えば、制御機能441は、X線検出器12における変化後の温度が閾値を超えず、かつ、X線管11に関する待ち時間がある場合、X線管11に関する待ち時間をディスプレイ42に表示させる。また、例えば、制御機能441は、X線検出器12における変化後の温度が閾値を超え、かつ、X線管11に関する待ち時間がある場合、算出機能447によって算出された待ち時間と、X線管11に関する待ち時間とのうち、より長い待ち時間をディスプレイ42に表示させる。
【0136】
なお、第3の実施形態に係る制御機能441は、第2の実施形態で説明したように、スキャン条件の再プランニングを行うことができる。例えば、X線管11に関する待ち時間がある場合、制御機能441は、X線管11の待ち時間を考慮して、スキャン条件を再プランニングする。
【0137】
次に、
図16を用いて、第3の実施形態に係るX線CT装置1の処理について説明する。
図16は、第3の実施形態に係るX線CT装置1の処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【0138】
図16におけるステップS401~S402、S405、S408~S410は、処理回路44が、メモリ41から制御機能441に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。また、
図16におけるステップS403~S404は、処理回路44が、メモリ41から推定機能445に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。また、
図16におけるステップS406は、処理回路44が、メモリ41から判定機能446に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。また、
図16におけるステップS407は、処理回路44が、メモリ41から算出機能447に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。
【0139】
図16に示すように、X線CT装置1においては、まず、処理回路44が、位置決めスキャンを実行して(ステップS401)、初期温度を算出する(ステップS402)。そして、処理回路44は、被検体情報とスキャン条件に基づいて発熱量を推定して(ステップS403)、初期温度と発熱量とから、本スキャンを実行した場合の温度変化を推定する(ステップS404)。さらに、処理回路44は、X線管11の待ち時間に関する情報を取得する(ステップS405)。
【0140】
その後、処理回路44は、推定した温度変化及び取得した待ち時間に関する情報に基づいて、本スキャンが実行可能か否かを判定する(ステップS406)。ここで、本スキャンが実行不可の場合(ステップS406、否定)、処理回路44は、本スキャンが実行可能となるまでの待ち時間を算出して(ステップS407)、算出した待ち時間をディスプレイ42に表示させる(ステップS408)。ここで、X線管11及びX線検出器12の両方で待ち時間がある場合には、処理回路44は、より長い待ち時間をディスプレイ42に表示させる。なお、本スキャンが実行可能の場合(ステップS406、肯定)、処理回路44は、撮影を開始する(ステップS410)。
【0141】
ステップS408において待ち時間をディスプレイ42に表示させると、処理回路44は、待ち時間が経過したか否かを判定する(ステップS409)。ここで、待ち時間が経過すると(ステップS409、肯定)、処理回路44は、撮影を開始する(ステップS410)。なお、待ち時間が経過するまで、処理回路44は待機状態である(ステップS409、否定)。
【0142】
なお、
図16においては、雰囲気温度を考慮せず、かつ、スキャン条件の再プランニングを行わない場合の処理について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、雰囲気温度を考慮して、温度変化及び待ち時間を算出するとともに、スキャン条件の再プランニングを実行する場合でもよい。すなわち、第3の実施形態に係る処理回路44は、
図14及び
図15に示す各処理ステップを適宜組み合わせて実行することもできる。
【0143】
上述したように、第3の実施形態によれば、制御機能441は、X線管11における温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間に関する情報を更に取得する。ディスプレイ42は、X線検出器12の温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間と、X線管11における温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間とのうち、より長い待ち時間に関する情報を表示する。従って、第3の実施形態に係るX線CT装置1は、X線検出器12に関する待ち時間に加えて、X線管11に関する待ち時間を考慮した待ち時間を操作者に把握させることができ、撮影をより効率的に進めることを可能にする。
【0144】
また、第3の実施形態によれば、制御機能441は、X線管11における温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間に関する情報を更に取得する。判定機能446は、X線検出器12の温度変化と、X線管11における温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間とに基づいて、初期温度情報を取得したタイミングにおける本スキャンの実行可否を判定する。従って、第3の実施形態に係るX線CT装置1は、X線検出器12に関する待ち時間に加えて、X線管11に関する待ち時間を考慮することができ、撮影をより効率的に進めることを可能にする。
【0145】
(第4の実施形態)
上述した実施形態では、本スキャンを実行する前に、X線検出器12における温度変化を推定し、本スキャンが実施不可の場合に、待ち時間を表示する例について説明した。第4の実施形態では、本スキャンを実行中にも温度変化を推定する例について説明する。ここで、第4の実施形態に係るX線CT装置1は、第1の実施形態と比較して、制御機能441及び判定機能446による処理内容が異なる。以下、これらを中心に説明する。
【0146】
第4の実施形態に係る制御機能441は、本スキャン中のX線検出器12における温度情報を更に取得する。例えば、制御機能441は、本スキャンにおけるカウントレートをリアルタイムで経時的に取得する。制御機能441によって本スキャン中のカウントレートが取得されると、推定機能445は、X線検出器12の温度変化を推定する。すなわち、推定機能445は、本スキャンによるX線検出器12のリアルタイムの温度変化を推定する。
【0147】
推定機能445によって本スキャン中の温度変化が推定されると、判定機能446は、X線検出器12の温度が閾値を超えるか否かを判定する。例えば、判定機能446は、推定機能445によって推定された本スキャン中の温度変化が、本スキャン前に推定した温度変化よりも高い温度上昇を示し、本スキャンが終了するまでにX線検出器12の温度が閾値を超えてしまうか否かを判定する。
【0148】
ここで、判定機能446は、X線検出器12の温度が閾値を超える場合に、本スキャンの終了までの時間に基づいて、当該本スキャンを継続するか否かを判定する。具体的には、判定機能446は、X線検出器12の温度が閾値を超えると判定した場合に、判定した時点から本スキャン終了までの時間を算出し、算出した時間が許容範囲内か(閾値を超えるか)否かを判定する。
【0149】
ここで、本スキャン終了までの時間が閾値を超えない場合、判定機能446は、本スキャンを継続すると判定する。すなわち、判定機能446は、X線検出器12の温度の上限温度に対する超過が相対的に小さいと判定される場合に、本スキャンを継続すると判定する。
【0150】
一方、本スキャン終了までの時間が閾値を超えた場合、判定機能446は、スキャン条件の変更、X線検出器12における一部動作の停止、又は、本スキャンの中止のいずれかを決定する。すなわち、判定機能446は、X線検出器12の温度の上限温度に対する超過が相対的に大きくなると判定される場合に、スキャン条件の変更、X線検出器12における一部動作の停止、又は、本スキャンの中止のいずれかを決定する。
【0151】
例えば、判定機能446は、X線検出器12の温度の上昇傾向及び本スキャンの検査内容のうち、少なくとも一方に基づいて、スキャン条件の変更、X線検出器12における一部動作の停止、又は、本スキャンの中止のいずれかを決定する。
【0152】
一例を挙げると、判定機能446は、温度上昇率(単位時間当たり上昇温度)が閾値を超える場合や、再スキャンが可能な検査の場合に、本スキャンを中止すると決定する。すなわち、判定機能446は、X線検出器12の温度の上限温度に対する超過がより大きくなると判定される場合や、再スキャンを行った場合の被検体の負荷が大きくない場合などに、本スキャンを中止すると決定する。
【0153】
また、例えば、判定機能446は、温度上昇率が閾値を超えない場合や、再スキャンが困難な検査の場合に、スキャン条件の変更、或いは、X線検出器12における一部動作の停止を決定する。例えば、判定機能446は、検査内容が造影検査などである場合に、スキャン条件の変更、或いは、X線検出器12における一部動作の停止を決定する。
【0154】
一例を挙げると、判定機能446は、スキャン条件の変更として、線量の抑制、スキャン時間の短縮などを決定する。また、判定機能446は、一部のASIC122のみ動作を停止させることを決定する。ここで、判定機能446は、例えば、被検体と空気との境界部分となる位置の検出素子に対応するASIC122の動作を停止させる。
【0155】
なお、上述した実施形態では、本スキャン中のX線検出器12の温度に関する情報として、カウントレートを取得する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、温度センサによって取得される温度情報が取得される場合でもよい。かかる場合には、X線検出器12に温度センサ123が設けられ、制御機能441が、本スキャン中に温度センサ123によって検出される温度情報を取得する。
【0156】
次に、
図17を用いて、第4の実施形態に係るX線CT装置1の処理について説明する。
図17は、第4の実施形態に係るX線CT装置1の処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【0157】
図17におけるステップS501~S502、S507~S509は、処理回路44が、メモリ41から制御機能441に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。また、
図17におけるステップS503~S504は、処理回路44が、メモリ41から推定機能445に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。また、
図17におけるステップS505、S510~514は、処理回路44が、メモリ41から判定機能446に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。また、
図17におけるステップS506は、処理回路44が、メモリ41から算出機能447に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。
【0158】
図17に示すように、X線CT装置1においては、まず、処理回路44が、位置決めスキャンを実行して(ステップS501)、初期温度を算出する(ステップS502)。そして、処理回路44は、被検体情報とスキャン条件に基づいて発熱量を推定して(ステップS503)、初期温度と発熱量とから、本スキャンを実行した場合の温度変化を推定する(ステップS504)。
【0159】
その後、処理回路44は、推定した温度変化及び取得した待ち時間に関する情報に基づいて、本スキャンが実行可能か否かを判定する(ステップS505)。ここで、本スキャンが実行不可の場合(ステップS505、否定)、処理回路44は、本スキャンが実行可能となるまでの待ち時間を算出して(ステップS506)、算出した待ち時間をディスプレイ42に表示させる(ステップS507)。なお、本スキャンが実行可能の場合(ステップS505、肯定)、処理回路44は、撮影を開始する(ステップS509)。
【0160】
ステップS507において待ち時間をディスプレイ42に表示させると、処理回路44は、待ち時間が経過したか否かを判定する(ステップS508)。ここで、待ち時間が経過すると(ステップS508、肯定)、処理回路44は、撮影を開始する(ステップS509)。なお、待ち時間が経過するまで、処理回路44は待機状態である(ステップS508、否定)。
【0161】
さらに、ステップS509において撮影が開始されると、処理回路44は、X線検出器12の温度に関する情報を取得して、上限温度を超えるか否かを判定する(ステップS510)。ここで、上限温度を超えない場合(ステップS510、否定)、処理回路44は、撮影を継続する(ステップS513)。
【0162】
一方、上限温度を超える場合(ステップS510、肯定)、処理回路44は、本スキャン終了までの時間を算出して(ステップS511)、算出した時間が許容範囲内か否かを判定する(ステップS512)。ここで、許容範囲内である(閾値を超えない)場合(ステップS512、肯定)、処理回路44は、スキャンを継続する(ステップS513)。
【0163】
一方、許容範囲内である(閾値を超える)場合(ステップS512、否定)、処理回路44は、スキャン条件を変更する、一部のASIC122の動作を停止する、或いは、本スキャン中止することで、X線検出器12における温度上昇を回避する(ステップS514)。
【0164】
なお、第4の実施形態に係る処理回路44は、
図14~
図16に示す各処理ステップを適宜組み合わせて実行することもできる。
【0165】
上述したように、第4の実施形態によれば、制御機能441は、本スキャン中のX線検出器12における温度情報を更に取得する。判定機能446は、X線検出器12の温度が閾値を超える場合に、本スキャンの終了までの時間に基づいて、当該本スキャンを継続するか否かを判定する。従って、第4の実施形態に係るX線CT装置1は、本スキャン中もX線検出器12の温度をモニタリングして、実際の状況に応じて対応することを可能にする。
【0166】
また、第4の実施形態によれば、判定機能446は、本スキャンの終了までの時間が閾値を超える場合に、スキャン条件の変更、X線検出器12における一部動作の停止、又は、本スキャンの中止のいずれかを決定する。従って、第4の実施形態に係るX線CT装置1は、本スキャン中の過度の温度上昇を回避することを可能にする。
【0167】
また、第4の実施形態によれば、判定機能446は、X線検出器12の温度の上昇傾向及び本スキャンの検査内容のうち、少なくとも一方に基づいて、スキャン条件の変更、X線検出器における一部動作の停止、又は、本スキャンの中止のいずれかを決定する。従って、第4の実施形態に係るX線CT装置1は、本スキャン中の実際の温度の上昇傾向や、被検体に対する負荷を考慮して対応することでき、X線検出器12の温度上昇に対して適切な処理を行うことを可能にする。
【0168】
(第5の実施形態)
上述した実施形態では、被検体中心と視野中心とが一致していることを前提とした処理について説明した。第5の実施形態では、被検体中心と視野中心とが一致しているか否かを判定する例について説明する。ここで、第5の実施形態に係るX線CT装置1は、第1の実施形態と比較して、制御機能441及び判定機能446による処理内容が異なる。以下、これらを中心に説明する。
【0169】
第5の実施形態に係る制御機能441は、被写体の位置情報を更に取得する。例えば、制御機能441は、位置決めスキャンによって撮影された位置決め画像に基づいて、FOVにおける被検体の位置の情報を取得する。
【0170】
第5の実施形態に係る判定機能446は、被検体の中心位置と視野中心とのずれの有無を判定する。具体的には、判定機能446は、被検体の中心位置と視野中心とが一致するか否かを判定し、一致しない場合に、ずれ量を算出する。
【0171】
図18は、第5の実施形態に係る判定機能446による処理を説明するための図である。例えば、判定機能446は、被検体Pの位置が視野中心からずれているか否かを判定する。ここで、
図18に示すように、被検体Pの位置が視野中心からずれている場合、本来被検体Pによって照射されるX線が、被検体Pを透過せずに、X線検出器12に入射されることとなる。すなわち、
図18における領域R1では、想定以上のX線が入射されることとなる。このような場合、温度変化を正しく推定できず、温度が上限温度を超えるか否かを正しく判定できない場合がある。
【0172】
そこで、被検体の中心位置と視野中心とが一致せず、ずれ量が算出されると、制御機能441は、位置ずれに関する情報をディスプレイ42に表示させる。例えば、制御機能441は、位置ずれが生じていることを示す警告情報や、ずれの方向及びずれ量などをディスプレイ42に表示させる。
【0173】
また、制御機能441は、被検体の中心位置の前記視野中心からのずれ量に基づいて、被検体の位置を移動させる。例えば、制御機能441は、ずれの方向及びずれ量に基づいて、寝台装置30を制御することで、被検体の中心位置と視野中心とが一致するように、被検体の位置を移動させる。
【0174】
なお、制御機能441による被検体の移動制御は、自動で実行される場合でもよく、或いは、操作者による操作に応じて実行される場合でもよい。ここで、操作者による操作に応じて移動制御が実行される場合、制御機能441は、天板33の移動方向や移動量などを示す情報をディスプレイ42に表示させたり、被検体の中心位置を合わせるための投光線を投光器によって出力させるように制御したりすることができる。
【0175】
次に、
図19を用いて、第5の実施形態に係るX線CT装置1の処理について説明する。
図19は、第5の実施形態に係るX線CT装置1の処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【0176】
ここで、
図19におけるステップS601~S602、S604~S606、S611~S613は、処理回路44が、メモリ41から制御機能441に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。また、
図19におけるステップS607~S608は、処理回路44が、メモリ41から推定機能445に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。また、
図19におけるステップS603、S609は、処理回路44が、メモリ41から判定機能446に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。また、
図19におけるステップS610は、処理回路44が、メモリ41から算出機能447に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。
【0177】
図19に示すように、X線CT装置1においては、まず、処理回路44が、位置決めスキャンを実行して(ステップS601)、被写体位置を検出して(ステップS602)、位置ずれがあるか否かを判定する(ステップS603)。ここで、位置ずれがある場合には(ステップS603、肯定)、処理回路44は、ディスプレイ42にアラートを表示させ(ステップS604)、位置ずれを修正する(ステップS605)。
【0178】
位置ずれが無い場合(ステップS603、否定)、及び、位置ずれを修正した後、処理回路44は、初期温度を算出する(ステップS606)。そして、処理回路44は、被検体情報とスキャン条件に基づいて発熱量を推定して(ステップS607)、初期温度と発熱量とから、本スキャンを実行した場合の温度変化を推定する(ステップS608)。
【0179】
その後、処理回路44は、推定した温度変化に基づいて、本スキャンが実行可能か否かを判定する(ステップS609)。ここで、本スキャンが実行不可の場合(ステップS609、否定)、処理回路44は、本スキャンが実行可能となるまでの待ち時間を算出して(ステップS610)、算出した待ち時間をディスプレイ42に表示させる(ステップS611)。なお、本スキャンが実行可能の場合(ステップS609、肯定)、処理回路44は、撮影を開始する(ステップS613)。
【0180】
ステップS611において待ち時間をディスプレイ42に表示させると、処理回路44は、待ち時間が経過したか否かを判定する(ステップS612)。ここで、待ち時間が経過すると(ステップS612、肯定)、処理回路44は、撮影を開始する(ステップS613)。なお、待ち時間が経過するまで、処理回路44は、待機状態である(ステップS612、否定)。
【0181】
なお、第5の実施形態に係る処理回路44は、
図14~
図17に示す各処理ステップを適宜組み合わせて実行することもできる。
【0182】
上述したように、第5の実施形態によれば、制御機能441は、被検体の位置情報を更に取得する。判定機能446は、被検体の中心位置と視野中心とのずれの有無を判定する。ディスプレイ42は、被検体の中心位置が視野中心からずれた場合に、位置ずれに関する情報を表示させる。従って、第5の実施形態に係るX線CT装置1は、正確な温度変化を推定することを可能にする。
【0183】
また、第5の実施形態によれば、制御機能441は、被検体の中心位置の視野中心からのずれ量に基づいて、被検体の位置を移動させる。従って、第5の実施形態に係るX線CT装置1は、位置ずれを修正することを可能にする。
【0184】
(その他の実施形態)
さて、これまで第1~第5の実施形態について説明したが、上述した第1~第5の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0185】
上述した第5の実施形態では、被検体の位置ずれに関する処理とX線検出器12の温度変化に関する処理の両方を実行するX線CT装置1について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、X線CT装置1は、被検体の位置ずれに関する処理のみを行うように構成されてもよい。
【0186】
図20は、その他の実施形態に係るX線CT装置1の構成の一例を示す図である。
図20に示すように、その他の実施形態に係るX線CT装置1は、
図1に示すX線CT装置1と比較して、推定機能445、判定機能446及び算出機能447を備えず、判定機能448を備える点が異なる。以下、これを中心に説明し、同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0187】
その他の実施形態に係る制御機能441は、X線検出器12に対する被写体の位置情報を取得する。例えば、制御機能441は、位置決めスキャンによって撮影された位置決め画像に基づいて、FOVにおける被検体の位置の情報を取得する。
【0188】
その他の実施形態に係る判定機能448は、被検体の中心位置と視野中心とのずれの有無を判定する。具体的には、判定機能448は、被検体の中心位置と視野中心とが一致するか否かを判定し、一致しない場合に、ずれ量を算出する。
【0189】
被検体の中心位置と視野中心とが一致せず、ずれ量が算出されると、制御機能441は、位置ずれに関する情報をディスプレイ42に表示させる。例えば、制御機能441は、位置ずれが生じていることを示す警告情報や、ずれの方向及びずれ量などをディスプレイ42に表示させる。
【0190】
また、制御機能441は、被検体の中心位置の前記視野中心からのずれ量に基づいて、被検体の位置を移動させる。例えば、制御機能441は、ずれの方向及びずれ量に基づいて、寝台装置30を制御することで、被検体の中心位置と視野中心とが一致するように、被検体の位置を移動させる。
【0191】
なお、制御機能441による被検体の移動制御は、自動で実行される場合でもよく、或いは、操作者による操作に応じて実行される場合でもよい。ここで、操作者による操作に応じて移動制御が実行される場合、制御機能441は、天板33の移動方向や移動量などを示す情報をディスプレイ42に表示させたり、被検体の中心位置を合わせるための投光線を投光器によって出力させるように制御したりすることができる。
【0192】
上述したように、制御機能441は、被検体の位置情報を取得する。判定機能448は、被検体の中心位置と視野中心とのずれの有無を判定する。ディスプレイ42は、被検体の中心位置が視野中心からずれた場合に、位置ずれに関する情報を表示させる。従って、その他の実施形態に係るX線CT装置1は、位置ずれに関する情報を提供することを可能にする。
【0193】
また、制御機能441は、被検体の中心位置の視野中心からのずれ量に基づいて、被検体の位置を移動させる。従って、その他の実施形態に係るX線CT装置1は、位置ずれを修正することを可能にする。
【0194】
また、上述した実施形態では、処理回路44において複数の機能を実行するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数の機能を独立の回路としてコンソール装置40内に設け、各回路がそれぞれの機能を実行するようにしてもよい。
【0195】
上述した実施形態において図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0196】
また、上述した実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0197】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリ41に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、メモリ41にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。更に、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0198】
ここで、上述した実施形態で説明した方法は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。このプログラムは、ROM(Read Only Memory)やメモリ等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、後述する各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0199】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、光子計数型検出器を用いた撮影を効率的に進めることができる。
【0200】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0201】
以上の実施形態に関し、発明の一側面および選択的な特徴として以下の付記を開示する。
(付記1)
本スキャン前の光子計数型検出器の初期温度情報と、被写体の形状に関する情報と、本スキャンのスキャン条件とを取得する取得部と、
前記初期温度情報と、前記被写体の形状に関する情報と、本スキャンのスキャン条件に関する情報とに基づいて、当該本スキャンを実行した場合の前記光子計数型検出器の温度変化を推定する推定部と、
前記温度変化に基づいて、前記初期温度情報を取得したタイミングにおける本スキャンの実行可否を判定する判定部と
を備える、X線CT装置。
(付記2)
前記推定部は、前記被写体の形状に関する情報と、本スキャンのスキャン条件に関する情報とに基づいて、当該本スキャンを実行した場合の前記光子計数型検出器における発熱量を推定し、前記初期温度情報と前記発熱量とに基づいて、前記温度変化を推定してもよい。
(付記3)
前記推定部は、前記光子計数型検出器の雰囲気温度に関する情報に更に基づいて、前記本スキャンを実行した場合の前記光子計数型検出器における発熱量を推定し、前記初期温度情報と前記発熱量とに基づいて、前記温度変化を推定してもよい。
(付記4)
前記推定部は、前記初期温度情報と、前記発熱量に基づく温度上昇値に基づいて、前記本スキャンを実行した場合の前記光子計数型検出器における温度を推定してもよい。
(付記5)
前記判定部は、前記光子計数型検出器における変化後の温度と閾値とを比較し、前記変化後の温度が閾値を超えない場合に、前記本スキャンを実行すると判定してもよい。
(付記6)
前記判定部における判定結果が、前記タイミングにおける本スキャンが実行不可の場合に、前記光子計数型検出器の温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間を算出する算出部を更に備えてもよい。
(付記7)
前記算出部は、前記光子計数型検出器の雰囲気温度に関する情報に更に基づいて、前記待ち時間を算出してもよい。
(付記8)
前記待ち時間に関する情報を表示する表示部を更に備えてもよい。
(付記9)
前記取得部は、X線管における温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間に関する情報を更に取得し、
前記表示部は、前記光子計数型検出器の温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間と、前記X線管における温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間とのうち、より長い待ち時間に関する情報を表示してもよい。
(付記10)
前記取得部は、X線管における温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間に関する情報を更に取得し、
前記判定部は、前記光子計数型検出器の温度変化と、前記X線管における温度が本スキャンを実行可能な状態になるまでの待ち時間とに基づいて、前記初期温度情報を取得したタイミングにおける本スキャンの実行可否を判定してもよい。
(付記11)
前記判定部における判定結果が、前記タイミングにおける本スキャンが実行不可の場合に、前記本スキャンのスキャン条件を再設定する制御部を更に備えてもよい。
(付記12)
前記取得部は、前記本スキャン中の前記光子計数型検出器における温度情報を更に取得し、
前記判定部は、前記光子計数型検出器の温度が閾値を超える場合に、前記本スキャンの終了までの時間に基づいて、当該本スキャンを継続するか否かを判定してもよい。
(付記13)
前記判定部は、前記本スキャンの終了までの時間が閾値を超える場合に、スキャン条件の変更、前記光子計数型検出器における一部動作の停止、又は、前記本スキャンの中止のいずれかを決定してもよい。
(付記14)
前記判定部は、前記光子計数型検出器の温度の上昇傾向及び前記本スキャンの検査内容のうち、少なくとも一方に基づいて、スキャン条件の変更、前記光子計数型検出器における一部動作の停止、又は、前記本スキャンの中止のいずれかを決定してもよい。
(付記15)
前記取得部は、前記被写体の位置情報を更に取得し、
前記判定部は、前記被検体の中心位置と視野中心とのずれの有無を判定し、
前記被検体の中心位置が前記視野中心からずれた場合に、位置ずれに関する情報を表示させる表示部と、
を更に備えてもよい。
(付記16)
前記被検体の中心位置の前記視野中心からのずれ量に基づいて、前記被写体の位置を移動させる制御部を更に備えてもよい。
(付記17)
前記取得部は、位置決めスキャンが実行された際の前記光子計数型検出器における計数率又は温度センサに基づいて、前記初期温度情報を取得してもよい。
(付記18)
光子計数型検出器に対する被写体の位置情報を取得する取得部と、
前記被検体の中心位置と視野中心とのずれの有無を判定する判定部と、
前記被検体の中心位置が前記視野中心からずれた場合に、位置ずれに関する情報を表示させる表示部と、
を備える、X線CT装置。
【符号の説明】
【0202】
1 X線CT装置
11 X線管
12 X線検出器
44 処理回路
441 制御機能
445 推定機能
446 判定機能
447 算出機能