(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181506
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】車両用ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
B60T 8/88 20060101AFI20231214BHJP
B60T 7/06 20060101ALI20231214BHJP
B60T 8/171 20060101ALI20231214BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20231214BHJP
G05G 1/38 20080401ALI20231214BHJP
G05G 5/03 20080401ALI20231214BHJP
【FI】
B60T8/88
B60T7/06 E
B60T8/171 Z
G05G1/30 E
G05G1/38
G05G5/03 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188737
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2020007568の分割
【原出願日】2020-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳田 悦豪
(72)【発明者】
【氏名】難波 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】北斗 大輔
(57)【要約】
【課題】ブレーキペダルの操作異常を判定する車両用ブレーキ装置を提供する。
【解決手段】車両用ブレーキ装置80は、ペダル部811とペダル部811が操作されることにより回転軸Oを中心に回転するレバー部812とを有するブレーキペダル81と、レバー部812を回転可能に支持するハウジング88と、ブレーキペダル81のストローク量Xに応じてレバー部812に対する反力を発生させる反力発生部90と、反力発生部による反力が発生している状態においてブレーキペダルが操作されるときにレバー部から力を受けることにより変形する変形部953を有する変形部材95と、ストローク量Xに応じた信号を出力するストロークセンサ86と、ストロークセンサ86からの出力が、変形部953が変形するときのストロークセンサ86の出力の値以上であるとき、ブレーキペダル81の操作が異常であると判定するECUと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダル部(811)と、前記ペダル部が操作されることにより回転軸(O)を中心に回転するレバー部(812)とを有するブレーキペダル(81)と、
前記レバー部を回転可能に支持するハウジング(88)と、
前記ブレーキペダルが操作されるときに前記レバー部から力を受けることによって、前記ブレーキペダルのストローク量(X)に応じて前記レバー部に対する反力(Fr)を発生させる反力発生部(90)と、
前記反力発生部による前記反力が発生している状態において前記ブレーキペダルが操作されるときに前記レバー部から受ける力によって変形する変形部(953、961)を有する変形部材(95、96)と、
前記ストローク量に応じた信号を出力するストロークセンサ(86)と、
前記ストロークセンサからの出力(Vs)が、前記変形部が変形するときの前記ストロークセンサの出力の値以上であるとき、前記ブレーキペダルの操作が異常であると判定する判定部(53)と、
を備える車両用ブレーキ装置。
【請求項2】
前記変形部は、前記ブレーキペダルが操作されるときに前記レバー部から受ける力によって破損し、
前記判定部は、前記変形部が破損するとき、前記ブレーキペダルの操作が異常であると判定する請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項3】
前記変形部は、前記ブレーキペダルが操作されるときに前記レバー部から受ける力によって塑性変形し、
前記判定部は、前記変形部が塑性変形するとき、前記ブレーキペダルの操作が異常であると判定する請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項4】
前記変形部は、前記ブレーキペダルが操作されるときに前記レバー部から受ける力によって弾性変形し、
前記判定部は、前記変形部が弾性変形するとき、前記ブレーキペダルの操作が異常であると判定する請求項1に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項5】
前記変形部が変形するときの前記ストローク量よりも前記ストローク量が大きくなるとき、前記レバー部と接触することによって前記レバー部の回転を停止させるストッパ(99)をさらに備える請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項6】
前記ストッパは、前記ハウジングに配置されている請求項5に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項7】
前記ストッパは、前記変形部材に配置されている請求項5に記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項8】
前記変形部材は、前記ハウジングに配置されている請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項9】
前記変形部は、前記ブレーキペダルが操作されるときに前記レバー部と接触する接触面(955)を含み、
前記接触面は、前記レバー部に向かって凸に湾曲している請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用ブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、ペダルにかかる負荷に対して支持断面積を狭めた弱点部が形成されている車両用ペダル装置が知られている。この車両用ペダル装置では、ペダルと一体化されたペダルセンサの検知レバーに弱点部が形成されているため、検知レバーがこの弱点部を起点として比較的容易に変形することができる。これにより、ペダルの異常な回転ストロークを検知レバーが検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者等の検討によれば、特許文献1に記載される車両用ペダル装置では、ペダルセンサの検知レバーが弱点部を起点に変形するとき、ペダルセンサの出力は、例えば車両のエンジンが高出力状態とならないように比較的小さくなる。
【0005】
ここで、例えば、ブレーキバイワイヤシステムを搭載する車両のブレーキにおいては、ペダルが踏まれていると検出されることによって車両を停止させることができる。このため、車両のブレーキにおいては、ペダルセンサの検知レバーが変形しても、ペダルセンサの出力は、車両が停止できるように比較的大きくなっている必要がある。
【0006】
したがって、特許文献1に記載される車両用ペダル装置を車両のブレーキに適用すると、検知レバーが変形したときにペダルセンサの出力が比較的小さくなるため、ペダルが踏まれていないと検出されることがある。これにより、特許文献1に記載される車両用ペダル装置を車両のブレーキに適用すると、ブレーキペダル操作の異常判定がしにくい。
【0007】
本開示は、ブレーキペダルの操作異常を判定する車両用ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、ペダル部(811)と、ペダル部が操作されることにより回転軸(O)を中心に回転するレバー部(812)とを有するブレーキペダル(81)と、レバー部を回転可能に支持するハウジング(88)と、ブレーキペダルが操作されるときにレバー部から力を受けることによって、ブレーキペダルのストローク量(X)に応じてレバー部に対する反力(Fr)を発生させる反力発生部(90)と、反力発生部による反力が発生している状態においてブレーキペダルが操作されるときにレバー部から受ける力によって変形する変形部(953、961)を有する変形部材(95、96)と、ストローク量に応じた信号を出力するストロークセンサ(86)と、ストロークセンサからの出力(Vs)が、変形部が変形するときのストロークセンサの出力の値以上であるとき、ブレーキペダルの操作が異常であると判定する判定部(53)と、を備える車両用ブレーキ装置である。
【0009】
これにより、ブレーキペダルの操作が異常であることが判定される。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の車両用ブレーキ装置が用いられる車両用ブレーキシステム。
【
図3】車両用ブレーキ装置が車両に取り付けられたときの図。
【
図5】ストローク量と反力とセンサ出力との関係図。
【
図12】車両用ブレーキシステムのECUの処理を示すフローチャート。
【
図13】第2実施形態の車両用ブレーキ装置の断面図。
【
図14】ストローク量と反力とセンサ出力との関係図。
【
図17】第3実施形態の車両用ブレーキ装置の断面図。
【
図18】第4実施形態の車両用ブレーキ装置の断面図。
【
図21】第5実施形態の車両用ブレーキ装置の断面図。
【
図23】第6実施形態の車両用ブレーキ装置におけるストローク量と反力とセンサ出力との関係図。
【
図24】第7実施形態の車両用ブレーキ装置におけるストローク量と反力とセンサ出力との関係図。
【
図25】第8実施形態の車両用ブレーキ装置におけるストローク量と反力とセンサ出力との関係図。
【
図26】第9実施形態の車両用ブレーキ装置におけるストローク量と反力とセンサ出力との関係図。
【
図27】第10実施形態の車両用ブレーキ装置におけるストローク量と反力とセンサ出力との関係図。
【
図28】他の実施形態の車両用ブレーキ装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0013】
(第1実施形態)
車両用ブレーキ装置80は、車両6の各車輪である左前輪FL、右前輪FR、左後輪RL、右後輪RRを制御する車両用ブレーキシステム1に用いられる。まず、この車両用ブレーキシステム1について説明する。
【0014】
車両用ブレーキシステム1は、
図1に示すように、左前輪用ホイールシリンダ、右前輪用ホイールシリンダ、左後輪用ホイールシリンダおよび右後輪用ホイールシリンダを備えている。また、車両用ブレーキシステム1は、第1アクチュエータ10、第2アクチュエータ20、電源40、ECU53および車両用ブレーキ装置80を備えている。なお、以下では、便宜上、ホイールシリンダをW/Cと記載する。また、ECUは、Electronic Control Unitの略である。
【0015】
左前輪用W/C2は、左前輪FLに配置されている。右前輪用W/C3は、右前輪FRに配置されている。左後輪用W/C4は、左後輪RLに配置されている。右後輪用W/C5は、右後輪RRに配置されている。また、左前輪用W/C2、右前輪用W/C3、左後輪用W/C4および右後輪用W/C5は、車両6の図示しない各ブレーキパッドにそれぞれ接続されている。
【0016】
第1アクチュエータ10は、例えば、図示しないリザーバ、ポンプ、モータおよび圧力センサ等を有しており、ブレーキ液圧を発生させる。また、第1アクチュエータ10は、この発生したブレーキ液圧を増加させる。このブレーキ液圧が増加したブレーキ液は、後述の第2アクチュエータ20に流動する。
【0017】
第2アクチュエータ20は、例えば、図示しない差圧制御弁、増圧制御弁、減圧制御弁、ポンプ、モータおよび圧力センサ等を有しており、ブレーキ液圧を発生させる。また、第2アクチュエータ20は、第1アクチュエータ10から流動したブレーキ液を左前輪用W/C2、右前輪用W/C3、左後輪用W/C4および右後輪用W/C5のそれぞれに流動させる。
【0018】
電源40は、ECU53に電力を供給する。
【0019】
ECU53は、マイコン等を主体として構成されており、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ、I/Oおよびこれらの構成を接続するバスライン等を備えている。また、ECU53は、ROMに記憶されているプログラムを実行することにより、第1アクチュエータ10および第2アクチュエータ20を制御する。なお、この第1アクチュエータ10および第2アクチュエータ20の制御の詳細については、後述する。
【0020】
車両用ブレーキ装置80は、
図2に示すように、ブレーキペダル81、ストロークセンサ86、ハウジング88、反力発生部90、変形部材95およびストッパ99を備えている。
【0021】
ブレーキペダル81は、車両6の運転者によって踏まれることにより操作される。具体的には、ブレーキペダル81は、ペダル部811およびレバー部812を有する。
【0022】
ペダル部811は、車両6の運転者によって踏まれる。
【0023】
レバー部812は、ペダル部811に接続されており、ペダル部811が車両6の運転者によって踏まれるとき、回転軸Oを中心に回転する。
【0024】
ストロークセンサ86は、例えば、レバー部812の回転軸O上に配置されている。また、ストロークセンサ86は、
図1に示すように、車両6の運転者の踏力によるブレーキペダル81の操作量であるストローク量Xに応じた信号をECU53に出力する。また、ここでは、ストローク量Xは、例えば、
図2に示すように、ペダル部811が車両6の前方に向かう並進移動量である。さらに、ストローク量Xとストロークセンサ86のセンサ出力Vsとは線形関係となるように調整されている。また、ここでは、ストローク量Xが大きくなるにつれて、ストロークセンサ86のセンサ出力Vsが大きくなる。なお、ここでは、センサ出力Vsは、例えば、電圧によって表示される。また、ストロークセンサ86は、レバー部812の回転軸Oを中心とした回転角度θに応じた信号を、ECU53に出力してもよい。この場合、回転角度θとストロークセンサ86の信号とは、ストローク量Xとセンサ出力Vsとの関係と同様に、線形関係となるように調整される。
【0025】
ハウジング88は、
図2および
図3に示すように、車両6のエンジンルーム等の車室外7と車室8とを区切る隔壁であるダッシュパネル9に取り付けられている。なお、ダッシュパネル9は、バルクヘッドと呼称されることもある。また、車室外7では、車両6のエンジンだけでなく、車両6のバッテリや空調装置等も配置されている。
【0026】
また、ハウジング88は、
図2に示すように、有底筒状に形成されており、第1取り付け部881、第2取り付け部882、ボルト887、ハウジング底部883、ハウジング筒部884およびハウジング延長部888を有する。ここで、説明のため、便宜上、車両6の前方に対して上側を、単に上側と記載する。車両6の前方に対して下側を、単に下側と記載する。
【0027】
第1取り付け部881は、後述のハウジング底部883に接続されており、ハウジング底部883から上方に延びている。また、第1取り付け部881は、第1取り付け穴885を含む。この第1取り付け穴885およびダッシュパネル9の第1穴901にボルト887が挿入されることにより、第1取り付け部881がダッシュパネル9に取り付けられている。なお、ここでは、ボルト887は、ダッシュパネル9を貫通しないように挿入されている。
【0028】
第2取り付け部882は、後述のハウジング筒部884のうち前側に接続されており、ハウジング筒部884から下方に延びている。また、第2取り付け部882は、第2取り付け穴886を含む。この第2取り付け穴886およびダッシュパネル9の第2穴902にボルト887が挿入されることにより、第2取り付け部882がダッシュパネル9に取り付けられている。
【0029】
ハウジング底部883は、レバー部812が回転軸Oを中心に回転可能にレバー部812の一部を支持するとともに、ストロークセンサ86を支持する。
【0030】
ハウジング筒部884は、筒状であって、ハウジング底部883に接続されており、ハウジング底部883から下方に延びている。また、ハウジング筒部884は、レバー部812の一部を収容している。
【0031】
ハウジング延長部888は、ハウジング筒部884のうち後側に接続されている。また、ハウジング延長部888は、ハウジング筒部884のうち後側からレバー後面814に向かって、ここでは、ハウジング筒部884のうち後側から前方に向かって延びている。このため、ハウジング延長部888は、初期状態においてレバー後面814と接触している。これにより、ハウジング延長部888は、初期状態においてレバー部812が後側に向かって回転しないようにレバー部812を支持している。なお、レバー後面814は、レバー部812のうち後面であって、レバー部812のうちペダル部811側に位置している。
【0032】
反力発生部90は、ストローク量Xに応じてレバー部812に対する反力Frを発生させる。具体的には、反力発生部90は、第1弾性部材91および第2弾性部材92を有する。
【0033】
第1弾性部材91は、例えば、圧縮コイルばねである。また、第1弾性部材91は、ハウジング筒部884のうち前側と、レバー前面813とに接続されている。なお、レバー前面813は、レバー部812のうち前面であって、レバー部812のうちペダル部811とは反対側に位置している。
【0034】
第2弾性部材92は、例えば、圧縮コイルばねである。また、第2弾性部材92の一端は、ハウジング筒部884のうち前側に接続されている。さらに、第2弾性部材92の他端は、初期状態においてレバー部812とは接続されていないで、レバー前面813に対向している。このため、第2弾性部材92の他端は、初期状態においてレバー前面813と非接触になっている。また、第2弾性部材92は、第1弾性部材91と並列に配置されている。さらに、ここでは、第2弾性部材92の弾性率は、第1弾性部材91の弾性率よりも大きくなっている。
【0035】
変形部材95は、ハウジング88と別体になっており、ハウジング筒部884のうち前側に配置されている。なお、変形部材95はハウジング88と一体になっていてもよい。
【0036】
具体的には、変形部材95は、
図2および
図4に示すように、基部951、延長部952および変形部953を有する。
【0037】
基部951は、溶接、溶着および接着等によってハウジング筒部884のうち前側と接続されており、上下方向に延びている。なお、図示しない基部951およびハウジング筒部884の穴にねじ等が挿入されることにより、基部951とハウジング筒部884とが接続されてもよい。
【0038】
延長部952は、基部951のうち上側と後述の変形部953のうち上側とに接続されており、前後方向に延びている。この延長部952により、基部951のうち下側と変形部953のうち下側との間には、空間が形成されている。また、ここでは、初期状態において、基部951と変形部953との間の空間における基部951から変形部953までの前後方向の距離は、回転軸O側からペダル部811側に向かって、ここでは、上側から下側に向かって大きくなっている。
【0039】
変形部953は、延長部952のうち後側に接続されており、上下方向かつ延長部952からレバー前面813に向かう方向に延びている。また、変形部953は、接触部954、凹部956および変形容易部957を含む。
【0040】
接触部954は、変形部953のうち下側に接続されており、レバー前面813に向かって、ここでは、後方に向かって突出している。さらに、接触部954は、接触面955を含む。接触面955は、レバー前面813に対向している。また、接触面955は、初期状態においてレバー前面813と非接触になっている。さらに、初期状態での接触面955からレバー前面813までの前後方向における距離は、初期状態での第2弾性部材92の他端からレバー前面813までの前後方向における距離よりも長くなっている。また、接触面955は、半円柱の側面形状に湾曲することによりレバー前面813に向かって凸に湾曲している。なお、接触面955は、半球面形状に湾曲することによりレバー前面813に向かって凸に湾曲してもよい。
【0041】
凹部956は、変形部953のうち上側に形成されている。また、凹部956は、例えば、切り欠きであって、V字状の溝になっている。
【0042】
変形容易部957は、凹部956の深さ方向に凹部956と隣接している。この凹部956によって、変形容易部957における凹部956の深さ方向の断面は、変形部953における凹部956の深さ方向の断面のうち最も小さくなっている。このため、変形部953に力がかかるとき、変形容易部957にかかる応力は、変形部953にかかる応力のうち最も大きくなる。したがって、変形容易部957は、変形部953のうち最も変形しやすくなっている。このため、変形容易部957は、変形部953が変形するときの起点になりやすくなっている。
【0043】
ストッパ99は、後述するように、ペダル部811が異常に操作されるときに、レバー部812の回転を停止させる。具体的には、ストッパ99は、
図2に示すように、ハウジング筒部884のうち前側に接続されている。また、ストッパ99は、ハウジング筒部884のうち前側からレバー前面813に向かって、ここでは、ハウジング筒部884のうち前側から後方に向かって突出している。また、ストッパ99の弾性率は、非常に大きくなっており、第1弾性部材91、第2弾性部材92および変形部材95の弾性率よりも大きくなっている。このため、ストッパ99は、レバー部812から受ける力によりほとんど変形しないようになっている。さらに、ストッパ99は、ストッパ面991を含む。ストッパ面991は、レバー前面813に対向している。また、ストッパ面991は、初期状態においてレバー前面813と非接触になっている。さらに、初期状態でのストッパ面991からレバー前面813までの前後方向における距離は、初期状態での接触面955からレバー前面813までの前後方向における距離よりも長くなっている。また、ストッパ面991は、半円柱の側面形状に湾曲することによりレバー前面813に向かって凸に湾曲している。なお、ストッパ面991は、半球面形状に湾曲することによりレバー前面813に向かって凸に湾曲してもよい。
【0044】
以上のように、車両用ブレーキシステム1は構成されている。この車両用ブレーキシステム1では、車両用ブレーキ装置80によって車両6の安全性が向上する。この安全性向上を説明するために、車両用ブレーキ装置80の作動について、
図5のストローク量Xと反力Frとセンサ出力Vsとの関係図および
図2、
図6~
図11を参照して説明する。
【0045】
図2に示すように、ブレーキペダル81が操作される前であってストローク量Xがゼロである初期状態において、レバー部812が第1弾性部材91に付勢されている。これにより、ハウジング延長部888とレバー後面814とが接触する。このとき、ハウジング延長部888は、レバー部812を支持する。このため、レバー部812は、初期状態において回転しないようになっている。このとき、
図5に示すように、ストロークセンサ86のセンサ出力Vsは、初期状態のときの値であるVs0になっている。
【0046】
また、車両6の運転者の踏力によってブレーキペダル81が操作されて、ストローク量Xがゼロより大きく、X1未満になる。このとき、ストローク量Xとストロークセンサ86のセンサ出力Vsとは線形関係になっているため、ストローク量Xが大きくなるにつれて、センサ出力Vsが大きくなっている。
【0047】
このとき、
図6に示すように、車両6の運転者の踏力に対応する力がレバー部812から第1弾性部材91に伝達される。これにより、レバー部812がハウジング延長部888から離れる。また、第1弾性部材91がレバー部812から力を受ける。このため、第1弾性部材91が圧縮されるため、第1弾性部材91の復元力が発生する。
【0048】
したがって、このとき、第1弾性部材91の復元力によって、レバー部812に対する反力Frが発生する。
【0049】
また、この第1弾性部材91の復元力は、第1弾性部材91の変形量に比例する。さらに、第1弾性部材91の変形量は、ストローク量Xに比例する。これにより、第1弾性部材91の復元力は、ストローク量Xに比例する。このため、ストローク量Xと第1弾性部材91による反力Frとは、線形関係になっている。
【0050】
よって、ストローク量Xがゼロより大きく、X1未満であるとき、
図5に示すように、ストローク量Xが大きくなるにつれて、反力Frが大きくなっている。
【0051】
また、ストローク量XがX1であるとき、センサ出力VsがVs1になる。このとき、レバー前面813と第2弾性部材92の他端とが接触する。なお、X1は、初期状態の第2弾性部材92の他端からレバー前面813までの前後方向における距離等によって設定される。
【0052】
また、車両6の運転者の踏力によってブレーキペダル81が操作されて、ストローク量XがX1以上、X2未満になる。このとき、ストローク量Xとストロークセンサ86のセンサ出力Vsとは線形関係になっているため、ストローク量Xが大きくなるにつれて、センサ出力Vsが大きくなっている。
【0053】
このとき、
図7に示すように、車両6の運転者の踏力に対応する力がレバー部812から第1弾性部材91および第2弾性部材92に伝達される。これにより、第1弾性部材91および第2弾性部材92が圧縮されるため、第1弾性部材91および第2弾性部材92の復元力が発生する。
【0054】
したがって、このとき、第1弾性部材91の復元力と、第2弾性部材92の復元力とによってレバー部812に対する反力Frが発生する。
【0055】
ここで、上記したように、ストローク量Xと第1弾性部材91による反力Frとは、線形関係になっている。また、第1弾性部材91と同様に、第2弾性部材92の復元力は、第2弾性部材92の変形量に比例する。さらに、第2弾性部材92の変形量は、ストローク量Xに比例する。これにより、第2弾性部材92の復元力は、ストローク量Xに比例する。このため、ストローク量Xと第2弾性部材92による反力Frとは、線形関係になっている。したがって、このときのレバー部812に対する反力Frは、第1弾性部材91による反力Frと、第2弾性部材92による反力Frとの重ね合わせであるため、線形関係になっている。
【0056】
よって、ストローク量XがX1以上、X2未満であるとき、
図4に示すように、ストローク量Xが大きくなるにつれて、レバー部812に対する反力Frが大きくなっている。また、ここでは、第2弾性部材92の弾性率が第1弾性部材91の弾性率よりも大きくなっている。このため、ストローク量XがX1以上、X2未満であるときのストローク量Xに対する反力Frの変化量は、比較的大きくなっている。これにより、車両6の制動力に対応する力が車両6の運転者に作用しやすくなるため、車両6の運転がしやすくなっている。
【0057】
また、ストローク量XがX2であるとき、センサ出力VsがVs2になる。このとき、レバー部812と変形部953とが接触する。具体的には、レバー前面813と変形部953の接触面955とが接触する。また、ここでは、接触面955が半円柱の側面形状であってレバー前面813に向かって凸に湾曲しているため、レバー部812と変形部953とは、線接触する。また、ここで、初期状態において、基部951と変形部953との間の空間における基部951から変形部953までの前後方向の距離は、上側から下側に向かって大きくなっている。このため、レバー部812と変形部953とが接触するとき、ブレーキペダル81のレバー部812と延長部952とが干渉しないようになっている。なお、X2は、初期状態の変形部953の接触面955からレバー前面813までの前後方向における距離等によって設定される。ここでは、初期状態において、接触面955からレバー前面813までの前後方向における距離が第2弾性部材92の他端からレバー前面813までの前後方向における距離よりも長くなっているため、X2は、X1よりも大きくなっている。また、ここでは、ストローク量XがX2以下であるときのブレーキペダル81の操作範囲が、ブレーキペダル81の通常使用範囲になっている。さらに、以下に説明するように、ストローク量XがX2より大きくなるときのブレーキペダル81の操作範囲は、過荷重検知のための範囲になっている。
【0058】
また、車両6の運転者の踏力によってブレーキペダル81が操作されて、ストローク量XがX2より大きく、X3未満になる。このとき、ストローク量Xとストロークセンサ86のセンサ出力Vsとは線形関係になっているため、ストローク量Xが大きくなるにつれて、センサ出力Vsが大きくなっている。
【0059】
このとき、
図8に示すように、上記と同様に、車両6の運転者の踏力に対応する力がレバー部812から第1弾性部材91および第2弾性部材92に伝達される。このため、第1弾性部材91および第2弾性部材92の復元力によるレバー部812に対する反力Frが発生する。
【0060】
また、このとき、車両6の運転者の踏力に対応する力がレバー部812から変形部953に伝達される。これにより、変形部953は、弾性変形する。なお、ここでは、変形部953の変形が弾性変形であるため、車両6の運転者がペダル部811の踏み込みを停止すると、変形部953の形状は、初期状態の形状に戻る。
【0061】
ここで、上記したように、変形部953の変形容易部957が変形部953のうち最も変形しやすくなっている。このため、変形部953は、レバー部812から力を受けるとき、変形容易部957を起点にしてたわむ。また、ここで、延長部952により、基部951のうち下側と変形部953のうち下側との間には、空間が形成されている。このため、ここでは、変形部953は、変形容易部957を起点にして、この空間を小さくようにたわむ。また、変形部953が弾性変形するため、変形部953の復元力が発生する。この変形部953の復元力により、レバー部812に対する反力Frが発生する。
【0062】
したがって、このとき、第1弾性部材91の復元力と、第2弾性部材92の復元力と、変形部953の復元力とによってレバー部812に対する反力Frが発生する。
【0063】
また、この変形部953の復元力は、変形部953のたわみ量に比例する。さらに、変形部953のたわみ量は、ストローク量Xに比例する。よって、この変形部953のたわみによる復元力は、ストローク量Xに比例する。このため、変形部953による反力Frとストローク量Xとは線形関係になっている。なお、このときのストローク量Xに対する変形部953による反力Frの変化量は、変形部953の曲げ剛性によって設定される。曲げ剛性とは、ここでは、変形部953のヤング率と変形部953の断面2次モーメントとの乗算値である。
【0064】
ここで、上記したように、ストローク量Xと第1弾性部材91および第2弾性部材92による反力Frとは、線形関係になっている。したがって、このときのレバー部812に対する反力Frは、第1弾性部材91による反力Frと、第2弾性部材92による反力Frと、変形部953による反力Frとの重ね合わせであるため、線形関係になっている。
【0065】
よって、ストローク量XがX2より大きく、X3未満であるとき、
図5に示すように、ストローク量Xが大きくなるにつれて、レバー部812に対する反力Frが大きくなっている。
【0066】
また、ストローク量XがX3であるとき、センサ出力VsがVs3になる。このとき、レバー部812から変形部953に伝達される力により、変形部953が降伏する、すなわち、塑性変形し始める。なお、X3は、変形部953が降伏するときのストローク量Xであるため、変形部953の材料および形状等によって設定される。また、変形部材95は、ここでは例えば、延性材料で形成されている。
【0067】
また、車両6の運転者の踏力によってブレーキペダル81が操作されて、ストローク量XがX3以上、X4未満になる。このとき、ストローク量Xとストロークセンサ86のセンサ出力Vsとは線形関係になっているため、ストローク量Xが大きくなるにつれて、センサ出力Vsが大きくなっている。
【0068】
このとき、
図9に示すように、上記と同様に、車両6の運転者の踏力に対応する力がレバー部812から第1弾性部材91および第2弾性部材92に伝達されるため、第1弾性部材91および第2弾性部材92によるレバー部812に対する反力Frが発生する。
【0069】
また、このとき、車両6の運転者の踏力に対応する力がレバー部812から変形部953に伝達される。これにより、変形部953は、塑性変形する。具体的には、変形部953は、上記と同様に、変形容易部957を起点にしてたわむ。なお、ここでは、変形部953が塑性変形するため、車両6の運転者がペダル部811の踏み込みを停止しても、変形部953の形状は、初期状態の形状に戻らない。
【0070】
また、ここでは、変形部953の変形が塑性変形を伴うたわみであるため、変形部953は、レバー部812から受ける力に対する反作用の力によってレバー部812に対する反力Frを発生させる。
【0071】
したがって、このとき、第1弾性部材91の復元力と、第2弾性部材92の復元力と、変形部953がレバー部812から受ける力に対する変形部953の反作用の力とによってレバー部812に対する反力Frが発生する。
【0072】
また、変形部953がレバー部812から受ける力に対する変形部953の反作用の力は、変形部953のたわみ量に比例する。このため、上記と同様に、変形部953による反力Frとストローク量Xとは、線形関係になっている。
【0073】
ここで、上記したように、ストローク量Xと第1弾性部材91および第2弾性部材92による反力Frとは、線形関係になっている。したがって、このときのレバー部812に対する反力Frは、第1弾性部材91による反力Frと、第2弾性部材92による反力Frと、変形部953による反力Frとの重ね合わせであるため、線形関係になっている。
【0074】
よって、ストローク量XがX3以上、X4未満であるとき、
図5に示すように、ストローク量Xが大きくなるにつれて、レバー部812に対する反力Frが大きくなっている。
【0075】
また、ストローク量XがX4であるとき、センサ出力Vsが後述の第1センサ所定値Vs_th1になる。このとき、レバー部812から変形部953に伝達される力により、変形部953が破損する。具体的には、変形容易部957が変形部953のうち最も変形しやすくなっているため、変形容易部957が破断する。このため、X4は、変形部953が破損するときのストローク量Xであるため、変形部953の材料および形状等によって設定されている。
【0076】
また、車両6の運転者の踏力によってブレーキペダル81が操作されて、ストローク量XがX4以上、X5未満になる。このとき、ストローク量Xとストロークセンサ86のセンサ出力Vsとは線形関係になっているため、ストローク量Xが大きくなるにつれて、センサ出力Vsが大きくなっている。このため、このときのセンサ出力Vsは、第1センサ所定値Vs_th1より大きくなっている。
【0077】
このとき、
図10に示すように、上記と同様に、車両6の運転者の踏力に対応する力がレバー部812から第1弾性部材91および第2弾性部材92に伝達される。このため、第1弾性部材91および第2弾性部材92によるレバー部812に対する反力Frが発生する。
【0078】
また、このとき、変形部953が破損、ここでは、変形容易部957が破断しているため、変形部953による反力Frが発生しない。
【0079】
したがって、このとき、第1弾性部材91および第2弾性部材92の復元力によって、レバー部812に対する反力Frが発生する。
【0080】
ここで、上記したように、ストローク量Xと第1弾性部材91および第2弾性部材92による反力Frとは、線形関係になっている。このため、このときのレバー部812に対する反力Frは、第1弾性部材91による反力Frと、第2弾性部材92による反力Frとの重ね合わせであるため、線形関係になっている。
【0081】
よって、ストローク量XがX4以上、X5未満であるとき、
図5に示すように、ストローク量Xが大きくなるにつれて、レバー部812に対する反力Frが大きくなっている。
【0082】
また、ストローク量XがX5であるとき、センサ出力Vsが第2センサ所定値Vs_th2になる。このとき、
図11に示すように、レバー部812とストッパ99とが接触する。具体的には、レバー前面813とストッパ面991とが接触する。これにより、レバー部812の前方に向かう回転が停止する。したがって、ここでは、第2センサ所定値Vs_th2は、ブレーキペダル81が操作されるときのセンサ出力Vsの限界値になっている。なお、X5は、初期状態のストッパ面991からレバー前面813までの前後方向における距離等によって設定される。また、初期状態でのストッパ面991からレバー前面813までの前後方向における距離は、初期状態での接触面955からレバー前面813までの前後方向における距離と、変形部953が破損するまでの変形部953のたわみ量との和よりも長くなっている。このため、X5は、X4よりも大きくなっている。
【0083】
以上のように、車両用ブレーキ装置80は、作動する。
【0084】
次に、上記した車両用ブレーキ装置80による車両6の安全性向上を説明するために、
図12のフローチャートを参照して、ストロークセンサ86からのセンサ出力Vsに基づく車両用ブレーキシステム1のECU53の処理について説明する。ここでは、例えば、車両6のイグニッションがオンされたときに、ECU53は、ECU53のROMに記憶されているプログラムを実行する。
【0085】
ステップS100において、ECU53は、各種情報を取得する。具体的には、ECU53は、ブレーキペダル81のストローク量Xに対応するセンサ出力Vsをストロークセンサ86から取得する。また、ECU53は、車両6のヨーレート、加速度、操舵角、各車輪速度、車速を図示しないセンサ等から取得する。
【0086】
続いて、ステップS110において、ECU53は、ブレーキペダル81の操作が異常であるか否かを判定する。具体的には、ECU53は、ステップS100にて取得したセンサ出力Vsが第1センサ所定値Vs_th1以上であるか否かを判定する。
【0087】
センサ出力Vsが第1センサ所定値Vs_th1以上であるとき、上記したように、ストローク量XがX4以上であるため、変形部953が破損する。このため、このとき、ECU53は、ブレーキペダル81の操作が異常であると判定する。その後、処理は、ステップS130に移行する。したがって、ここでは、第1センサ所定値Vs_th1は、ブレーキペダル81の操作が異常であることを示す値になっている。また、第1センサ所定値Vs_th1は、後述するように、車両6の安全を確保するために、車両6を停止させる制御の実行を指示する値にもなっている。
【0088】
また、ここで、ストローク量XがX4より大きいX5であるとき、レバー部812とストッパ99とが接触することによりレバー部812の前方に向かう回転が停止される。このため、ストローク量XがX5を超えることはなく、センサ出力Vsが第2センサ所定値Vs_th2を超えることはない。しかし、ブレーキペダル81およびストロークセンサ86の故障等によって、センサ出力Vsが第2センサ所定値Vs_th2を超えた場合にも、ECU53は、ブレーキペダル81の操作が異常であると判定する。その後、処理は、ステップS130に移行する。
【0089】
また、センサ出力Vsが第1センサ所定値Vs_th1未満であるとき、変形部953は、破損していないため、ECU53は、ブレーキペダル81の操作が正常であると判定する。その後、処理は、ステップS120に移行する。
【0090】
ステップS110に続くステップS120において、ブレーキペダル81の操作が正常であるため、ECU53は、車両6のブレーキについての通常制御を行う。例えば、ECU53は、ステップS100にて取得したセンサ出力Vsに基づいて、第1アクチュエータ10を制御する。例えば、ECU53は、ステップS100にて取得したセンサ出力Vsが大きくなるにつれて、第1アクチュエータ10から第2アクチュエータ20に流動するブレーキ液の液圧を大きくする。これにより、液圧が比較的大きいブレーキ液は、第1アクチュエータ10から第2アクチュエータ20に流動する。また、このとき、ECU53は、第2アクチュエータ20を制御する。これにより、第2アクチュエータ20は、第1アクチュエータ10から第2アクチュエータ20に流動したブレーキ液を左前輪用W/C2、右前輪用W/C3、左後輪用W/C4、右後輪用W/C5に流動させる。したがって、図示しない各ブレーキパッドがそれに対応するブレーキディスクと摩擦接触する。よって、各ブレーキディスクに対応する車輪が減速されるため、車両6は、減速する。これにより、車両6は、停止する。
【0091】
また、ECU53は、ABS制御およびVSC制御等を行う。なお、ABSは、Antilock Brake Systemの略である。また、VSCは、Vehicle stability controlの略である。
【0092】
例えば、ECU53は、ステップS100にて取得した各車輪速度および車速に基づいて、左前輪FL、右前輪FR、左後輪RL、右後輪RRの各スリップ率を演算する。そして、ECU53は、このスリップ率に基づいて、ABS制御を実行するか否かを判定する。また、ECU53は、ABS制御を実行するとき、このスリップ率に応じて減圧モード、保持モード、増圧モードのいずれかを行う。減圧モードでは、制御対象輪に対応する第2アクチュエータ20の図示しない増圧制御弁が遮断状態にされるとともに、第2アクチュエータ20の図示しない減圧制御弁が適宜連通状態にされることにより、制御対象輪に対応するW/Cの圧力が減少する。また、保持モードでは、制御対象輪に対応する第2アクチュエータ20の図示しない増圧制御弁および減圧制御弁が遮断状態にされることにより、制御対象輪に対応するW/Cの圧力が保持される。さらに、増圧モードでは、制御対象輪に対応する第2アクチュエータ20の図示しない減圧制御弁が遮断状態にされるとともに、第2アクチュエータ20の図示しない増圧制御弁が適宜連通状態にされることにより、制御対象輪に対応するW/Cの圧力が増加する。このようにして、車両6の各車輪のスリップ率が制御されるため、左前輪FL、右前輪FR、左後輪RL、右後輪RRがロックに至ることが抑制される。
【0093】
また、例えば、ECU53は、ステップS100にて取得したヨーレート、操舵角、加速度、各車輪速度および車速等に基づいて、車両6の横滑り状態を演算する。そして、ECU53は、この車両6の横滑り状態に基づいて、VSC制御を実行するか否かを判定する。また、ECU53は、VSC制御を実行するとき、この車両6の横滑り状態に基づいて、車両6の旋回を安定させるための制御対象輪を選定する。さらに、ECU53は、この選定した制御対象輪に対応するW/Cの圧力が増加するように第2アクチュエータ20を制御する。これにより、制御対象輪に対応するW/Cのブレーキ液圧が増加するため、車両6の横滑りが抑制される。このため、車両6の走行が安定する。
【0094】
このようにして、ECU53は、車両6のブレーキについての通常制御を行う。その後、処理は、ステップS100に戻る。なお、このとき、ECU53は、図示しない他のECUからの信号に基づいて、衝突回避制御および回生協調制御等を行ってもよい。
【0095】
ステップS110に続くステップS130において、センサ出力Vsが第1センサ所定値Vs_th1以上であって、ブレーキペダル81の操作が異常であるため、ECU53は、車両6の安全を確保するために車両6を強制的に停止させる。例えば、ECU53は、第1アクチュエータ10から第2アクチュエータ20に流動するブレーキ液の液圧が所定の液圧となるように第1アクチュエータ10を制御する。また、ECU53は、車両6のスリップ率等に基づいて、車両6の制動力が比較的大きくなるように第2アクチュエータ20を制御する。これにより、第2アクチュエータ20は、ECU53からの信号に基づいて、第1アクチュエータ10から流動するブレーキ液の液圧を調整する。この第2アクチュエータ20により調整されたブレーキ液が左前輪用W/C2、右前輪用W/C3、左後輪用W/C4、右後輪用W/C5に流動する。したがって、図示しない各ブレーキパッドがそれに対応するブレーキディスクと摩擦接触する。よって、各ブレーキディスクに対応する車輪が減速されるため、車両6は、減速する。これにより、車両6が強制的に停止する。
【0096】
このようにして、車両用ブレーキシステム1のECU53の処理が行われる。この車両用ブレーキシステム1では、車両用ブレーキ装置80によって、車両6の安全性が向上する。以下では、この車両用ブレーキ装置80による安全性の向上について説明する。
【0097】
車両用ブレーキ装置80では、
図10に示すように、変形部953が破損するとき、ストローク量Xは、
図5に示すように、X4以上、X5以下である。このとき、ストロークセンサ86は、ブレーキペダル81の操作が異常であることを示して車両6を停止させる制御の実行を指示する値を出力する。具体的には、ストロークセンサ86は、第1センサ所定値Vs_th1以上となるセンサ出力VsをECU53に出力する。これにより、ブレーキペダル81の操作が異常であるときに車両6を停止させることができる。具体的には、ECU53の処理がステップS110からステップS130に移行することによって、ECU53は、車両6の安全を確保するために車両6を強制的に停止させる。したがって、車両6の安全が確保されるため、車両6の安全性が向上する。
【0098】
また、車両用ブレーキ装置80は、以下に説明するような効果も奏する。
【0099】
[1]変形部材95の変形部953は、第1弾性部材91および第2弾性部材92による反力Frが発生している状態においてブレーキペダル81が操作されるときにレバー部812から力を受けることにより変形する。これにより、変形部953は、反力Frを発生させる。このとき、ブレーキペダル81を操作している運転者は、比較的大きな反力Frを感じることができる。このため、ブレーキペダル81が操作されるときに第1弾性部材91および第2弾性部材92が変形し過ぎないように、第1弾性部材91および第2弾性部材92の変形を規制することができる。
【0100】
[2]車両用ブレーキ装置80では、
図5および
図11に示すように、変形部953が破損するときのストローク量XであるX4よりも大きいX5にストローク量Xがなるとき、レバー部812とストッパ99とが接触する。これにより、レバー部812の前方に向かう回転が停止するため、レバー部812が回転し過ぎることによって生じる車両6の運転者の不安感が抑制される。
【0101】
[3]変形部材95は、ハウジング88に配置されている。具体的には、変形部材95は、ハウジング筒部884のうち前側に配置されている。ここで、ハウジング88は、ダッシュパネル9に取り付けられているため、固定されている。これにより、変形部材95がハウジング88により固定されて動かないため、動くブレーキペダル81に変形部材95が配置された場合と比較して、ブレーキペダル81によって破損した変形部953の破片は、比較的飛散しにくくなる。
【0102】
[4]
図5に示すように、ストローク量XがX2以上であるとき、変形部材95は、レバー部812と接触する。具体的には、変形部953の接触面955とレバー前面813とが接触する。また、ここでは、接触面955は、半円柱の側面形状であってレバー前面813に向かって凸に湾曲している。したがって、変形部953の接触面955とレバー前面813との接触は、線接触になる。これにより、接触面955とレバー前面813とが面接触する場合と比較して、接触面955とレバー前面813との接触面積が小さくなるため、接触面955とレバー前面813とが接触する位置の精度が向上する。また、これにより、変形部953がレバー部812から受ける力のバラつきが抑制されるため、変形部953がレバー部812から受ける力の精度が向上する。したがって、変形部953にかかる応力の精度が向上するため、変形部953が変形するときのストローク量X、ここでは、上記したX2、X3、X4の精度が向上する。よって、X2、X3、X4のそれぞれに対応するセンサ出力Vsの精度が向上する。
【0103】
また、接触面955は、上記したように、半球面形状であってレバー前面813に向かって凸に湾曲してもよい。この場合、変形部953の接触面955とレバー前面813との接触は、点接触になる。これにより、接触面955とレバー前面813との接触面積が比較的小さくなる。したがって、上記と同様に、X2、X3、X4のそれぞれに対応するセンサ出力Vsの精度が向上する。
【0104】
[5]変形部953は、凹部956および変形容易部957を含む。凹部956によって、変形容易部957における凹部956の深さ方向の断面は、変形部953における凹部956の深さ方向の断面のうち最も小さくなっている。このため、変形部953に力がかかるとき、変形容易部957にかかる応力は、変形部953にかかる応力のうち最も大きくなる。これにより、変形容易部957は、変形部953が変形するときの起点になりやすくなっている。このため、変形部953が変形するときのストローク量X、ここでは、X2、X3、X4の精度が向上する。よって、X2、X3、X4のそれぞれに対応するセンサ出力Vsの精度が向上する。
【0105】
(第2実施形態)
第2実施形態では、変形部材の形態が異なる。これにより、センサ出力Vsが第1センサ所定値Vs_th1以上となるときのストローク量Xが異なる。これら以外は、第1実施形態と同様である。
【0106】
図13に示すように、変形部材96は、圧縮コイルばねである。また、変形部材96の一端は、ハウジング筒部884のうち前側に接続されている。さらに、変形部材96の他端は、初期状態においてレバー部812とは接続されていないで、レバー前面813に対向している。このため、変形部材96の他端は、初期状態においてレバー前面813と非接触になっている。また、初期状態での変形部材96の他端からレバー前面813までの前後方向における距離は、初期状態での第2弾性部材92の他端からレバー前面813までの前後方向における距離よりも長くなっている。さらに、初期状態でのストッパ面991からレバー前面813までの前後方向における距離は、初期状態での変形部材96の他端からレバー前面813までの前後方向における距離よりも長くなっている。
【0107】
また、変形部材96は、コイル状の変形部961を有する。変形部961は、後述するように、ブレーキペダル81が操作されるときに変形部材96がレバー部812から受ける力により弾性変形する。また、ここでは、変形部材96の弾性率は、第1弾性部材91の弾性率および第2弾性部材92の弾性率よりも大きくなっている。
【0108】
次に、この変形部材96を備えた車両用ブレーキ装置80の作動について、
図14のストローク量Xと反力Frとセンサ出力Vsとの関係図および
図13、
図15、
図16を参照して説明する。
【0109】
図13に示すように、ブレーキペダル81が操作される前であってストローク量Xがゼロである初期状態において、上記と同様に、レバー部812が第1弾性部材91に付勢されている。これにより、ハウジング延長部888とレバー後面814とが接触する。このとき、ハウジング延長部888は、レバー部812を支持する。このため、レバー部812は、初期状態において回転しないようになっている。このとき、
図14に示すように、ストロークセンサ86のセンサ出力Vsは、初期状態のときの値であるVs0になっている。
【0110】
また、車両6の運転者の踏力によってブレーキペダル81が操作されて、ストローク量Xがゼロより大きく、X6未満になる。このとき、上記と同様に、ストローク量Xとストロークセンサ86のセンサ出力Vsとは線形関係になっているため、ストローク量Xが大きくなるにつれて、センサ出力Vsが大きくなっている。
【0111】
このとき、上記と同様に、車両6の運転者の踏力に対応する力がレバー部812から第1弾性部材91に伝達されるため、第1弾性部材91の復元力によるレバー部812に対する反力Frが発生する。
【0112】
また、ストローク量XがX6であるとき、レバー前面813と第2弾性部材92の他端とが接触する。なお、X6は、上記したX1と同様に、初期状態の第2弾性部材92の他端からレバー前面813までの前後方向における距離等によって設定される。
【0113】
また、車両6の運転者の踏力によってブレーキペダル81が操作されて、ストローク量XがX6以上、X7未満になる。このとき、上記と同様に、ストローク量Xが大きくなるにつれて、センサ出力Vsが大きくなっている。
【0114】
このとき、上記と同様に、車両6の運転者の踏力に対応する力がレバー部812から第1弾性部材91および第2弾性部材92に伝達される。このため、第1弾性部材91および第2弾性部材92の復元力によるレバー部812に対する反力Frが発生する。また、ここでは、第2弾性部材92の弾性率が第1弾性部材91の弾性率よりも大きくなっている。このため、ストローク量XがX7以上、X8未満であるときのストローク量Xに対する反力Frの変化量は、比較的大きくなっている。これにより、車両6の制動力に対応する力が車両6の運転者に作用しやすくなるため、車両6の運転がしやすくなっている。
【0115】
また、ストローク量XがX7であるとき、レバー部812と変形部材96とが接触する。具体的には、レバー前面813と変形部材96の他端とが接触する。なお、X7は、初期状態の変形部材96の他端からレバー前面813までの前後方向における距離等によって設定されている。また、ここでは、ストローク量XがX7以下であるときのブレーキペダル81の操作範囲が、ブレーキペダル81の通常使用範囲になっている。さらに、以下に説明するように、ストローク量XがX7より大きくなるときのブレーキペダル81の操作範囲は、過荷重検知のための範囲になっている。
【0116】
また、車両6の運転者の踏力によってブレーキペダル81が操作されて、ストローク量XがX7より大きく、X8未満になる。このとき、上記と同様に、ストローク量Xが大きくなるにつれて、センサ出力Vsが大きくなっている。
【0117】
このとき、上記と同様に、車両6の運転者の踏力に対応する力がレバー部812から第1弾性部材91および第2弾性部材92に伝達されるため、第1弾性部材91および第2弾性部材92の復元力によるレバー部812に対する反力Frが発生する。
【0118】
また、このとき、
図15に示すように、車両6の運転者の踏力に対応する力がレバー部812から変形部材96に伝達される。これにより、変形部材96の変形部961は、圧縮されるため、弾性変形する。このため、変形部961の復元力が発生する。この変形部961の復元力により、レバー部812に対する反力Frが発生する。
【0119】
したがって、このとき、第1弾性部材91、第2弾性部材92および変形部961の復元力によって、レバー部812に対する反力Frが発生する。
【0120】
また、この変形部961の復元力は、変形部961の変形量に比例する。さらに、変形部961の変形量は、ストローク量Xに比例する。したがって、この変形部961の復元力は、ストローク量Xに比例する。このため、変形部961による反力Frとストローク量Xとは、線形関係になっている。
【0121】
ここで、上記したように、ストローク量Xと第1弾性部材91および第2弾性部材92による反力Frとは、線形関係になっている。したがって、このときのレバー部812に対する反力Frは、第1弾性部材91による反力Frと、第2弾性部材92による反力Frと、変形部961による反力Frとの重ね合わせであるため、線形関係になっている。
【0122】
よって、ストローク量XがX7以上、X8未満であるとき、
図14に示すように、ストローク量Xが大きくなるにつれて、レバー部812に対する反力Frが大きくなっている。また、ここでは、変形部材96の弾性率が第1弾性部材91の弾性率および第2弾性部材92の弾性率よりも大きくなっている。このため、ストローク量XがX7以上、X8未満であるときのストローク量Xに対する反力Frの変化量は、ストローク量XがX7未満であるときのストローク量Xに対する反力Frの変化量よりも十分に大きくなっている。これにより、ストローク量XがX7以上に達したときに、車両6の運転者は、ブレーキペダル81が変形部材96に突き当たった感触を得ることができる。
【0123】
また、ストローク量XがX8であるとき、センサ出力Vsが第1センサ所定値Vs_th1になる。このとき、上記と同様に、車両6の運転者の踏力に対応する力がレバー部812から第1弾性部材91、第2弾性部材92および変形部材96に伝達される。このため、第1弾性部材91、第2弾性部材92および変形部材96によるレバー部812に対する反力Frが発生する。したがって、このときのレバー部812に対する反力Frは、第1弾性部材91による反力Frと、第2弾性部材92による反力Frと、変形部961による反力Frとの重ね合わせになっている。
【0124】
また、車両6の運転者の踏力によってブレーキペダル81が操作されて、ストローク量XがX8以上、X9未満になる。このとき、上記と同様に、ストローク量Xが大きくなるにつれて、センサ出力Vsが大きくなっている。
【0125】
このとき、上記と同様に、車両6の運転者の踏力に対応する力がレバー部812から第1弾性部材91、第2弾性部材92および変形部材96に伝達される。このため、第1弾性部材91、第2弾性部材92および変形部材96によるレバー部812に対する反力Frが発生する。
【0126】
また、ストローク量XがX9であるとき、センサ出力Vsが第2センサ所定値Vs_th2になる。このとき、
図16に示すように、レバー部812とストッパ99とが接触する。具体的には、レバー前面813とストッパ面991とが接触する。これにより、レバー部812の前方に向かう回転が停止する。なお、X9は、上記したX5と同様に、初期状態のストッパ面991からレバー前面813までの前後方向における距離等によって設定される。また、初期状態でのストッパ面991からレバー前面813までの前後方向における距離は、以下のようになっている。この距離は、初期状態での変形部材96の他端からレバー前面813までの前後方向における距離と、センサ出力Vsが第1センサ所定値Vs_th1であるときの変形部961の変形量との和よりも長くなっている。このため、X9は、X8よりも大きくなっている。
【0127】
以上のように、車両用ブレーキ装置80は、作動する。
【0128】
また、上記と同様に、車両用ブレーキシステム1のECU53は、ステップS100にて、ストローク量Xに対応するセンサ出力Vsをストロークセンサ86から取得する。さらに、ECU53は、この取得したセンサ出力Vsに基づいて、車両6のブレーキにおける通常制御および停止制御のいずれかを行う。具体的には、ECU53は、センサ出力Vsが第1センサ所定値Vs_th1未満であるとき、ブレーキペダル81の操作が正常であるため、ステップS120にて上記した通常制御を行う。ECU53は、センサ出力Vsが第1センサ所定値Vs_th1以上であるとき、ブレーキペダル81の操作が異常であるため、ステップS130にて上記した停止制御を行う。これにより、車両6の安全が確保される。
【0129】
したがって、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。なお、第2実施形態では、変形部材96は、圧縮コイルばねであるため、破損しにくくなっている。このため、上記[3]にて説明した効果と同様の効果を奏する。また、変形部材96は、圧縮コイルばねであるため、変形部材96とレバー前面813との接触面積は、比較的小さくなる。このため、上記[4]にて説明した効果と同様の効果を奏する。さらに、変形部材96は、圧縮コイルばねであるため、変形部961の変形量は、ストローク量Xと比例関係になっているため、ストローク量Xと線形関係である。このため、変形部961が変形するときのストローク量Xの精度は、比較的高くなる。このため、上記[5]にて説明した効果と同様の効果を奏する。
【0130】
(第3実施形態)
第3実施形態では、変形部材の配置が異なる点を除いて、第1実施形態と同様である。
【0131】
ここでは、変形部材95は、
図17に示すように、レバー部812に配置されている。また、ここでは、変形部材95は、レバー部812と一体になっている。具体的には、変形部材95の基部951は、レバー前面813に接続されており、レバー前面813に沿う方向に延びている。延長部952は、上記と同様に、基部951のうち上側と変形部953のうち上側とに接続されており、前後方向に延びている。また、変形部材95の変形部953は、延長部952のうち前側に接続されており、上下方向かつ延長部952からハウジング筒部884のうち前側に向かう方向に延びている。また、変形部953の接触部954は、ハウジング筒部884のうち前側に向かって、ここでは、前方に向かって突出している。なお、ここでは、変形部材95は、レバー部812と一体になっているが、レバー部812と別体になっていてもよい。
【0132】
第3実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。なお、第3実施形態では、変形部材95がレバー部812に配置されているため、上記[3]にて説明した効果を奏しない。
【0133】
(第4実施形態)
第4実施形態では、変形部材の形態が異なる点を除いて、第1実施形態と同様である。
【0134】
ここでは、変形部材95は、
図18および
図19に示すように、上記した基部951、延長部952、変形部953、凹部956および変形容易部957に加えて、保持部958をさらに有する。
【0135】
保持部958は、板ばねになっており、基部951のうち下側と変形部953のうち下側とに接続されている。このため、保持部958は、変形部953が変形するとともに、弾性変形する。具体的には、保持部958は、変形部953から伝達される力を受けて、たわむ。
【0136】
ここで、上記したように、ストローク量XがX4である場合、すなわち、センサ出力Vsが第1センサ所定値Vs_th1になる場合、レバー部812から変形部953に伝達される力により変形部953が破損する。具体的には、変形容易部957が変形部953のうち最も変形しやすくなっているため、変形容易部957が破断する。このとき、
図20に示すように、保持部958は、レバー部812から変形部953を経由して伝達される力を受けて、変形部953の変形とともにたわむ。ここで、上記したように、保持部958は、基部951のうち下側と変形部953のうち下側とに接続されている。このため、変形容易部957が破断して変形部953が延長部952から外れても、保持部958は、変形部953が飛散しないように変形部953を保持する。
【0137】
第4実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0138】
(第5実施形態)
第5実施形態では、変形部材およびストッパの形態が異なる点を除いて、第4実施形態と同様である。
【0139】
ここでは、
図21および
図22に示すように、ストッパ99は、変形部材95に配置されている。また、ここでは、ストッパ99は、変形部材95と一体になっている。この場合において、ストッパ99は、変形部材95の基部951に接続されており、基部951からレバー前面813に向かって、ここでは、基部951から後方に向かって突出する。また、ストッパ99のストッパ面991は、上記と同様に、レバー前面813に対向しており、初期状態においてレバー前面813と非接触になっている。また、初期状態でのストッパ面991からレバー前面813までの前後方向における距離は、初期状態での接触面955からレバー前面813までの前後方向における距離よりも長くなっている。さらに、ストッパ面991は、半円柱の側面形状であってレバー前面813に向かって凸に湾曲している。なお、ここでは、ストッパ99は、変形部材95と一体になっているが、変形部材95と別体になっていてもよい。
【0140】
第5実施形態においても、第4実施形態と同様の効果を奏する。
【0141】
(第6実施形態)
第6実施形態では、第1実施形態と同様に、ストローク量XがX2より大きく、X3未満であるとき、レバー部812から変形部953に伝達される力により、変形部953が弾性変形する。また、ここでは、変形部材95は、例えば、脆性材料で形成されている。このため、第6実施形態では、
図23に示すように、ストローク量XがX3であるとき、レバー部812から変形部953に伝達される力により、変形部953が破損する。また、ストローク量XがX3以上、X5未満であるとき、変形部953が破損、ここでは、変形容易部957が破断しているため、変形部953による反力Frが発生しない。したがって、このとき、第1弾性部材91および第2弾性部材92の復元力によって、レバー部812に対する反力Frが発生する。さらに、ここでは、ストローク量XがX3より大きく、X5未満のX4になるとき、ここでは、変形部953が破損している状態であるとき、センサ出力Vsが第1センサ所定値Vs_th1になっている。
【0142】
第6実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0143】
(第7実施形態)
第7実施形態では、
図24に示すように、ストローク量XがX2より大きく、X4未満であるとき、レバー部812から変形部953に伝達される力により、変形部953が弾性変形する。ストローク量XがX4であるとき、レバー部812から変形部953に伝達される力により、変形部953が降伏する、すなわち、塑性変形し始める。また、ストローク量XがX4以上、X5未満であるとき、変形部953の変形が塑性変形を伴うたわみであるため、変形部953は、レバー部812から受ける力に対する反作用の力によってレバー部812に対する反力Frを発生させる。したがって、このとき、第1弾性部材91の復元力と、第2弾性部材92の復元力と、変形部953がレバー部812から受ける力に対する変形部953の反作用の力とによってレバー部812に対する反力Frが発生する。また、ここでは、ストローク量XがX4になるとき、変形部953が塑性変形するとき、センサ出力Vsが第1センサ所定値Vs_th1になっている。
【0144】
第7実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0145】
(第8実施形態)
第8実施形態では、第1実施形態と同様に、ストローク量Xに対して変形部953が変形するため、ストローク量Xに対して反力Frおよびセンサ出力Vsが変化する。具体的には、ストローク量XがX3であるとき、レバー部812から変形部953に伝達される力により、変形部953が降伏する、すなわち、塑性変形し始める。このとき、第1弾性部材91の復元力と、第2弾性部材92の復元力と、変形部953がレバー部812から受ける力に対する変形部953の反作用の力とによってレバー部812に対する反力Frが発生する。また、ストローク量XがX4であるとき、レバー部812から変形部953に伝達される力により、変形部953が破損する。さらに、ストローク量XがX5であるとき、レバー部812とストッパ99とが接触することにより、レバー部812の前方に向かう回転が停止する。
【0146】
また、第8実施形態では、
図25に示すように、ストローク量XがX4より大きく、X5未満であるとき、ここでは、変形部953が破損しているときのセンサ出力Vsが第1センサ所定値Vs_th1になっている。
【0147】
第8実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。第8実施形態のように、ストローク量XがX4より大きく、X5未満であるときのセンサ出力Vsが第1センサ所定値Vs_th1になっていてもよい。
【0148】
(第9実施形態)
第9実施形態では、第1実施形態と同様に、ストローク量Xに対して変形部953が変形するため、ストローク量Xに対して反力Frおよびセンサ出力Vsが変化する。
【0149】
また、第9実施形態では、
図26に示すように、ストローク量XがX3以上、X4未満であるとき、ここでは、変形部953が塑性変形しているときのセンサ出力Vsが第1センサ所定値Vs_th1になっている。
【0150】
第9実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。第9実施形態のように、ストローク量XがX4より小さいX3以上、X4未満であるときのセンサ出力Vsが第1センサ所定値Vs_th1になっていてもよい。
【0151】
(第10実施形態)
第10実施形態では、第1実施形態と同様に、ストローク量Xに対して変形部953が変形するため、ストローク量Xに対して反力Frおよびセンサ出力Vsが変化する。
【0152】
また、第10実施形態では、
図27に示すように、ストローク量XがX2より大きく、X3未満であるとき、ここでは、変形部953が弾性変形しているときのセンサ出力Vsが第1センサ所定値Vs_th1になっている。
【0153】
第10実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。第10実施形態のように、ストローク量XがX2より大きく、X3未満であるときのセンサ出力Vsが第1センサ所定値Vs_th1になっていてもよい。
【0154】
(他の実施形態)
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態に対して、適宜変更が可能である。例えば、上記実施形態が適宜組み合わされてもよい。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0155】
本開示に記載の制御部等およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部等およびその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部等およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0156】
(1)上記実施形態では、車両用ブレーキ装置80は、ストロークセンサ86を備える。これに対して、ストロークセンサ86の数は、1つに限定されないで、2つ以上であってもよい。
【0157】
(2)上記実施形態では、第1弾性部材91および第2弾性部材92は、圧縮コイルばねである。これに対して、第1弾性部材91および第2弾性部材92は、圧縮コイルばねであることに限定されない。また、変形部材95およびストッパ99は、ハウジング筒部884のうち前側に配置されている。これに対して、第1弾性部材91、第2弾性部材92、変形部材95およびストッパ99は、ハウジング筒部884のうち前側に配置されていることに限定されない。
【0158】
例えば、
図28に示すように、第1弾性部材91は、引張ばねであってもよく、ハウジング筒部884のうち後側とレバー後面814とに接続されてもよい。また、第2弾性部材92は、引張ばねであってもよい。この場合、第2弾性部材92の一端は、例えば、ハウジング筒部884のうち後側に接続されている。第2弾性部材92の他端は、第2弾性部材用接触部921に接続されている。第2弾性部材用接触部921は、ハウジング筒部884に固定されており、ブレーキペダル81が操作されるとき、レバー前面813と接触する。これにより、第2弾性部材用接触部921は、レバー部812から力を受ける。この第2弾性部材用接触部921が受ける力によって第2弾性部材92が引っ張られるため、第2弾性部材92の復元力が発生する。さらに、変形部材95は、U字形状に形成されている。変形部材95の基部951は、ハウジング筒部884のうち後側に接続されており、前後方向に延びている。また、変形部材95の変形部953は、ここでは、基部951に接続されており、車両6の前方に対して左右方向に延びている。さらに、変形部953の凹部956は、変形部953の接触面955とは反対側に形成されている。この凹部956によって変形容易部957が形成されている。また、ストッパ99は、U字形状に形成されており、ハウジング筒部884のうち後側に接続されている。このような形態であっても、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、この形態と第1実施形態とが組み合わされてもよい。
【0159】
(3)上記実施形態では、反力発生部90は、第1弾性部材91および第2弾性部材92をそれぞれ1つ有する。これに対して、第1弾性部材91の数は、1つに限定されないで、複数であってもよい。また、第2弾性部材92の数は、1つに限定されないで、複数であってもよい。また、反力発生部90は、ダンパを有してもよい。このダンパは、例えば、油および空気等の粘性流体を有している。この粘性流体によって、単位時間あたりのストローク量Xの変化量であるストローク変化量ΔXに応じた反力Frが発生する。
【0160】
(4)上記実施形態では、凹部956は、V字状に溝になっている。これに対して、凹部956は、V字状の溝に限定されないで、例えば、U字状の溝および段差等であってもよい。
【0161】
(5)上記実施形態では、ストローク量Xが大きくなるにつれて、ストロークセンサ86のセンサ出力Vsが大きくなる。これに対して、ストローク量Xが大きくなるにつれて、ストロークセンサ86のセンサ出力Vsが大きくなることに限定されない。例えば、ストローク量Xが大きくなるにつれて、ストロークセンサ86のセンサ出力Vsが小さくなってもよい。
【0162】
この場合、変形部953が変形するとき、例えば、第1実施形態においては、上記したストローク量XがX4以上であるとき、ストロークセンサ86は、第1センサ所定値Vs_th1以下となるセンサ出力VsをECU53に出力する。
【0163】
また、ストローク量XがX4より大きいX5になるとき、レバー部812とストッパ99とが接触することによりレバー部812の前方に向かう回転が停止される。このとき、ストローク量Xが大きくなるにつれて、ストロークセンサ86のセンサ出力Vsが小さくなるため、ストローク量XがX5であるときのセンサ出力Vsは、ストローク量XがX4であるときのセンサ出力Vsよりも小さい。したがって、この場合、ストローク量XがX5であるときのセンサ出力Vsである第2センサ所定値Vs_th2は、ストローク量XがX4であるときのセンサ出力Vsである第1センサ所定値Vs_th1よりも小さい。
【0164】
さらに、この場合、ECU53は、センサ出力Vsが第1センサ所定値Vs_th1より大きいとき、ブレーキペダル81の操作が正常であるため、ステップS120にて上記した通常制御を行う。ECU53は、センサ出力Vsが第1センサ所定値Vs_th1以下であるとき、ブレーキペダル81の操作が異常であるため、ステップS130にて上記した停止制御を行う。これにより、車両6の安全が確保される。
【符号の説明】
【0165】
80 車両用ブレーキ装置
81 ブレーキペダル
811 ペダル部
812 レバー部
86 ストロークセンサ
88 ハウジング
90 反力発生部
953、961 変形部
95、96 変形部材
99 ストッパ