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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181514
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20231214BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/16
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188956
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2019206569の分割
【原出願日】2019-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2019122574
(32)【優先日】2019-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】筧 豊
(57)【要約】
【課題】転写部を記録材が通過している際の転写電流に基づいて転写電圧を調整するリミッタ制御が可能な構成において、記録材に試験画像を形成する調整モードによる調整を適切に行うことが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】転写部材8に印加する電圧を定電圧制御すると共に、電流検知部21の検知結果が所定範囲内となるように電流検知部21の検知結果に基づいて転写部材8に印加する電圧を制御するリミッタ制御を実行可能な画像形成装置100は、トナー像を記録材Pに転写する第1のモードと、異なる複数の電圧を転写部材8に印加して複数の試験トナー像を記録材Pに転写する第2のモードと、を実行可能であり、制御部50は、第1のモードの実行時には、記録材Pが転写部8を通過している間にリミッタ制御を実行可能であり、第2のモードの実行時には、複数の試験トナー像が転写される領域が転写部N2を通過している間はリミッタ制御を行わない構成とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
電圧が印加されて前記像担持体に担持されたトナー像を転写部において記録材へ転写する転写部材と、
前記転写部材に電圧を印加する電源と、
前記転写部材に流れる電流を検知する電流検知部と、
記録材が前記転写部を通過している際に、前記転写部材に印加する電圧が所定電圧となるように定電圧制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記電流検知部の検知結果が所定範囲内となるように前記電流検知部の検知結果に基づいて前記転写部材に印加する電圧を制御するリミッタ制御を実行可能な画像形成装置において、
トナー像を記録材に転写する第1のモードと、異なる複数の電圧を前記転写部材に印加して複数の試験トナー像を記録材に転写する第2のモードと、を実行可能であり、
前記制御部は、前記第1のモードの実行時には、記録材が前記転写部を通過している間に前記リミッタ制御を実行可能であり、前記第2のモードの実行時には、前記複数の試験トナー像が転写される領域が前記転写部を通過している間は前記リミッタ制御を行わないことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2のモードの実行時に、記録材の搬送方向に関する前記複数の試験トナー像が転写される領域以外の少なくとも一部の領域が前記転写部を通過している間は、前記リミッタ制御を行うことが可能であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記少なくとも一部の領域は、記録材の搬送方向に関する先端側のトナー像が転写されない余白領域であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
トナー像を担持する像担持体と、
電圧が印加されて前記像担持体に担持されたトナー像を転写部において記録材へ転写する転写部材と、
前記転写部材に電圧を印加する電源と、
前記転写部材に流れる電流を検知する電流検知部と、
記録材が前記転写部を通過している際に、前記転写部材に印加する電圧が所定電圧となるように定電圧制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記電流検知部の検知結果が所定範囲内となるように前記電流検知部の検知結果に基づいて前記転写部材に印加する電圧を制御するリミッタ制御を実行可能な画像形成装置において、
トナー像を記録材に転写する第1のモードと、異なる複数の電圧を前記転写部材に印加して複数の試験トナー像を記録材に転写する第2のモードと、を実行可能であり、
前記制御部は、前記第1のモードの実行時に前記リミッタ制御を行う場合には、前記所定範囲を第1の所定範囲に設定し、前記第2のモードの実行時に前記リミッタ制御を行う場合には、前記所定範囲を前記第1の所定範囲よりも広い第2の所定範囲に設定する、ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記試験トナー像は、前記第1のモードの実行時の前記所定電圧を設定するためのトナー像であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記リミッタ制御において、前記転写部材に印加する電圧を所定の変更幅ごとに変更することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記リミッタ制御において、1回の変更により前記所定範囲と前記電流検知部の検知結果が示す電流との差分が所定値以下となるように前記転写部材に印加する電圧を変更することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記転写部に記録材が無い状態で前記転写部材に電圧を印加して取得した電圧電流特性に基づいて、前記リミッタ制御における1回あたりの電圧の変更量を設定することを特徴とする請求項6又は7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記像担持体は、別の像担持体から1次転写されたトナー像を記録材に2次転写するために搬送する中間転写体であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミ装置などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式などを用いた画像形成装置では、感光体や中間転写体などの像担持体から紙などの記録材へトナー像を静電的に転写することが行われる。この転写は、像担持体と当接して転写部を形成する転写ローラなどの転写部材に転写電圧が印加されることで行われることが多い。転写電圧が低すぎると、転写が十分に行われずに所望の画像濃度が得られない「画像濃度薄」が発生することがある。また、転写電圧が高すぎると、転写部で放電が発生し、その放電の影響でトナー像のトナーの電荷の極性が反転するなどして、トナー像が部分的に転写されない「白抜け」が発生することがある。そのため、高品質の画像を形成するためには、転写部材に適切な転写電圧を印加することが求められる。
【0003】
転写に必要な電荷量は記録材のサイズやトナー像の面積率によって様々に変動する。そのため、転写電圧は、所定の電流密度に対応した一定の電圧を印加する定電圧制御で印加されることが多い。転写電圧を定電圧制御で印加する場合には、記録材の外側や記録材上のトナー像が無い部分を流れる電流とは無関係に、目的のトナー像がある部分に所定の電圧に応じた転写電流を確保しやすいからである。しかし、転写部を構成する転写部材の電気抵抗は、製品のばらつき、部材温度、累積使用時間などに応じて変化し、転写部を通過する記録材の電気抵抗も、記録材の種類、周囲環境(温度・湿度)などに応じて変化する。そのため、転写電圧を定電圧制御する場合、転写部材や記録材の電気抵抗の変動に対応して転写電圧を調整することが必要になる。
【0004】
特許文献1では、転写電圧を定電圧制御する構成における、次のような転写電圧の制御方法が開示されている。連続画像形成の開始直前に記録材が無い状態の転写部に所定の電圧を印加して電流値を検知し、所定の目標電流が得られる電圧値を求める。そして、この電圧値に記録材の種類に応じた記録材分担電圧を加算して、転写時に定電圧制御で印加する転写電圧値を設定する。このような制御により、転写部材などの転写部の電気抵抗値の変動、記録材の電気抵抗値の変動によらず、所望の目標電流に応じた転写電圧を定電圧制御で印加することができる。
【0005】
ここで、記録材の種類には、例えば、上質紙、コート紙のような記録材の表面の平滑性の違いによる種類や、薄紙、厚紙のような記録材の厚さの違いによる種類がある。記録材分担電圧は、例えばこのような記録材の種類に応じて予め求めておくことができる。しかし、流通している記録材の種類は非常に多い。また、記録材の電気抵抗は記録材の湿り状態(記録材の含有水分量)によっても異なるが、記録材の含有水分量は環境(温度・湿度)が同じでも環境に置かれた時間などによって変動する。そのため、記録材分担電圧を予め精度よく求めることは困難であることが多い。記録材の電気抵抗の変動分も含めて転写電圧が適切な値でないと、上述のように画像濃度薄、白抜けといった画像不良が発生することがある。
【0006】
このような課題に対し、特許文献2、特許文献3では、転写電圧を定電圧制御する構成において、転写部を記録材が通過している際に転写部に供給される電流の上限値及び下限値を設けることが提案されている。このような制御により、転写部を記録材が通過している際に転写部に供給される電流を所定の範囲の電流とすることができるため、転写電流の不足又は過剰による画像不良の発生を抑制することができる。特許文献2では、上限値を環境情報に基づいて求めている。特許文献3では、環境以外に記録材の表裏、記録材の種類、記録材のサイズによって上限値及び下限値を求めている。
【0007】
一方、上述のような課題に対し、通常の画像形成とは別に調整動作を行うことで転写電圧を調整する方法もある。特許文献4では、1枚の記録材に複数の試験画像(以下、「パッチ」ともいう。)を転写電圧を切り替えながら形成して、各パッチの濃度の検知結果に基づいて転写電圧を調整することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004-117920号公報
【特許文献2】特許第4161005号公報
【特許文献3】特開2008-275946号公報
【特許文献4】特開2013-37185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2、3に記載されるような方法では、画像形成中に転写電圧が自動的に調整される。そのため、転写電圧を調整するためのユーザーの負担、転写電圧を調整するための時間、あるいは転写電圧の調整に必要な記録材(ヤレ紙)を抑制することができる。しかし、この方法では、実際に記録材上に形成された画像を見たり、その濃度を検知したりして転写電圧を調整している訳ではない。そのため、出力された画像の濃度がユーザーの好みに合わないなど、所望の結果とならない場合がある。
【0010】
そこで、特許文献2、3に記載されるような自動調整を可能とする一方で、必要に応じて特許文献4に記載されるような実際に記録材上に画像を形成して調整を行う調整モードを実行可能とすることが、様々なユーザーの要望に応えるためには望ましい。
【0011】
しかしながら、転写部を記録材が通過している際に検知された電流に基づいて転写電圧を自動的に調整する仕組みを有する構成では、パッチが想定された条件で出力されず、適切な調整を行えなくなることがある。つまり、例えば、パッチごとに転写電圧の絶対値を階段状に上昇させながら、1枚の記録材に複数のパッチを形成することがある。この場合に、転写部を記録材が通過している際に転写部に供給される電流を規制するような制御が行われると、図10(a)、(b)に示すように、所定の電流範囲でしか転写電圧を変化させることができなくなってしまう。例えば、絶対値が小さい転写電圧が印加される領域では、転写部に供給される電流が所定の電流範囲の下限値を下回り、転写電圧の絶対値を大きくするような調整が行われることがある。これにより、絶対値が小さい転写電圧で出力されるべきパッチが適切に出力されなくなることがある。逆に、絶対値が大きい転写電圧が印加される領域では、転写部に供給される電流が所定の電流範囲の上限値を上回り、転写電圧の絶対値を小さくするような調整が行われる。これにより、絶対値が大きい転写電圧で出力されるべきパッチが適切に出力されなくなることがある。そして、ユーザーの好みに合う画像濃度を達成できる転写電圧が、上述のように転写部に供給される電流が所定の電流範囲から外れる領域にある場合、上述のような自動調整が行われてしまうと、該領域の転写電圧でのパッチの出力が適切に行われなくなる。その結果、ユーザーの好みに応じた調整を行えなくなることがある。
【0012】
なお、転写電圧を定電圧制御する構成において、転写部を記録材が通過している際に、転写部材に流れる電流が所定の範囲から外れる場合に該電流が該所定の範囲に入るように転写電圧の定電圧制御の目標電圧を変更する制御を「リミッタ制御」ともいう。また、ここでは、電圧や電流の大小(高低)は、絶対値で比較した場合のものである。
【0013】
したがって、本発明の目的は、転写部を記録材が通過している際の転写電流に基づいて転写電圧を調整するリミッタ制御が可能な構成において、記録材に試験画像を形成する調整モードによる調整を適切に行うことが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナー像を担持する像担持体と、電圧が印加されて前記像担持体に担持されたトナー像を転写部において記録材へ転写する転写部材と、前記転写部材に電圧を印加する電源と、前記転写部材に流れる電流を検知する電流検知部と、記録材が前記転写部を通過している際に、前記転写部材に印加する電圧が所定電圧となるように定電圧制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記電流検知部の検知結果が所定範囲内となるように前記電流検知部の検知結果に基づいて前記転写部材に印加する電圧を制御するリミッタ制御を実行可能な画像形成装置において、トナー像を記録材に転写する第1のモードと、異なる複数の電圧を前記転写部材に印加して複数の試験トナー像を記録材に転写する第2のモードと、を実行可能であり、前記制御部は、前記第1のモードの実行時には、記録材が前記転写部を通過している間に前記リミッタ制御を実行可能であり、前記第2のモードの実行時には、前記複数の試験トナー像が転写される領域が前記転写部を通過している間は前記リミッタ制御を行わないことを特徴とする画像形成装置である。
【0015】
本発明の他の態様によると、トナー像を担持する像担持体と、電圧が印加されて前記像担持体に担持されたトナー像を転写部において記録材へ転写する転写部材と、前記転写部材に電圧を印加する電源と、前記転写部材に流れる電流を検知する電流検知部と、記録材が前記転写部を通過している際に、前記転写部材に印加する電圧が所定電圧となるように定電圧制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記電流検知部の検知結果が所定範囲内となるように前記電流検知部の検知結果に基づいて前記転写部材に印加する電圧を制御するリミッタ制御を実行可能な画像形成装置において、トナー像を記録材に転写する第1のモードと、異なる複数の電圧を前記転写部材に印加して複数の試験トナー像を記録材に転写する第2のモードと、を実行可能であり、前記制御部は、前記第1のモードの実行時に前記リミッタ制御を行う場合には、前記所定範囲を第1の所定範囲に設定し、前記第2のモードの実行時に前記リミッタ制御を行う場合には、前記所定範囲を前記第1の所定範囲よりも広い第2の所定範囲に設定する、ことを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、転写部を記録材が通過している際の転写電流に基づいて転写電圧を調整するリミッタ制御が可能な構成において、記録材に試験画像を形成する調整モードによる調整を適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】画像形成装置の概略断面図である。
図2】2次転写に関する構成の模式図である。
図3】画像形成装置の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。
図4】実施例1の制御のフローチャート図である。
図5】2次転写部の電圧と電流との関係の一例を示すグラフ図である。
図6】記録材分担電圧のテーブルデータの一例を示す模式図である。
図7】通紙部電流範囲のテーブルデータの一例を示す模式図である。
図8】調整チャート及び調整モードの設定画面の一例を示す模式図である。
図9】実施例1における調整チャートの出力時の2次転写電圧及び2次転写電流の推移を示すグラフ図である。
図10】課題を説明するためのグラフ図である。
図11】実施例2における調整チャートの出力時の2次転写電圧及び2次転写電流の推移を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0019】
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略構成図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することが可能な、中間転写方式を採用したタンデム型の複合機(複写機、プリンタ、ファクシミリ装置の機能を有する。)である。
【0020】
画像形成装置100は、複数の画像形成部(ステーション)として、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像を形成する第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKを有する。各画像形成部SY、SM、SC、SKにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを示す符号の末尾のY、M、C、Kを省略して総括的に説明することがある。本実施例では、画像形成部Sは、後述する感光ドラム1、帯電ローラ2、露光装置3、現像装置4、1次転写ローラ5、ドラムクリーニング装置6を有して構成される。
【0021】
トナー像(トナー画像)を担持する第1の像担持体としての、回転可能なドラム型(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム1は、図中矢印R1方向(反時計回り)に回転駆動される。回転する感光ドラム1の表面は、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ2によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電処理された感光ドラム1の表面は、画像情報に基づいて露光手段としての露光装置(レーザースキャナー装置)3によって走査露光され、感光ドラム1上に静電像(静電潜像)が形成される。
【0022】
感光ドラム1上に形成された静電像は、現像手段としての現像装置4によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム1上にトナー像が形成される。本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム1の帯電極性と同極性に帯電したトナーが付着する(反転現像方式)。本実施例では、現像時のトナーの帯電極性であるトナーの正規の帯電極性は負極性である。露光装置3によって形成される静電像は、小さいドット画像の集合体となっており、ドット画像の密度を変化させることで感光ドラム1上に形成するトナー像の濃度を変化させることができる。本実施例では、各色のトナー像は、それぞれ最大濃度が1.5~1.7程度となっており、最大濃度の時のトナーの載り量は0.4~0.6mg/cm程度となっている。
【0023】
4個の感光ドラム1の表面に当接可能なように、トナー像を担持する第2の像担持体としての、無端状のベルトで構成された中間転写体である中間転写ベルト7が配置されている。中間転写ベルト7は、別の像担持体から1次転写されたトナー像を記録材に2次転写するために搬送する中間転写体の一例である。中間転写ベルト7は、複数の張架ローラとしての駆動ローラ71、テンションローラ72、及び2次転写対向ローラ73に張架されている。駆動ローラ71は、中間転写ベルト7に駆動力を伝達する。テンションローラ72は、中間転写ベルト7の張力を一定に制御する。2次転写対向ローラ73は、後述する2次転写ローラ8の対向部材(対向電極)として機能する。中間転写ベルト7は、駆動ローラ71が回転駆動されることで、図中矢印R2方向(時計回り)に300~500mm/sec程度の搬送速度(周速度)で回転(周回移動)する。テンションローラ72は、付勢手段としてのばねの力によって、中間転写ベルト7を内周面側から外周面側へ押し出すような力が加えられており、この力によって中間転写ベルト7の搬送方向へは2~5kg程度のテンションがかけられている。中間転写ベルト7の内周面側には、各感光ドラム1に対応して、1次転写手段としてのローラ型の1次転写部材である1次転写ローラ5が配置されている。1次転写ローラ5は、中間転写ベルト7を介して感光ドラム1に向けて押圧されて、感光ドラム1と中間転写ベルト7とが接触する1次転写部(1次転写ニップ)N1を形成する。感光ドラム1上に形成されたトナー像は、1次転写部N1において、1次転写ローラ5の作用によって、回転している中間転写ベルト7上に静電的に転写(1次転写)される。1次転写工程時に、1次転写ローラ5には、1次転写電源(図示せず)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の直流電圧である1次転写電圧(1次転写バイアス)が印加される。例えばフルカラー画像の形成時には、各感光ドラム1上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト7上に重ね合わされるようにして順次転写される。
【0024】
中間転写ベルト7の外周面側において、2次転写対向ローラ73に対向する位置には、2次転写手段としてのローラ型の2次転写部材である2次転写ローラ8が配置されている。2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7を介して2次転写対向ローラ73に向けて押圧されて、中間転写ベルト7と2次転写ローラ8とが接触する2次転写部(2次転写ニップ)N2を形成する。中間転写ベルト7上に形成されたトナー像は、2次転写部N2において、2次転写ローラ8の作用によって、中間転写ベルト7と2次転写ローラ8とに挟持されて搬送されている記録材(シート、転写材)Pに静電的に転写(2次転写)される。記録材Pは、典型的には紙(用紙)であるが、これに限定されるものではなく、耐水紙のように樹脂で形成された合成紙、OHPシートなどのプラスチックシート、布などが用いられることもある。2次転写工程時に、2次転写ローラ8には、2次転写電源(高圧電源回路)20から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の直流電圧である2次転写電圧(2次転写バイアス)が印加される。記録材Pは、記録材カセット(図示せず)などに収容されており、給送ローラ(図示せず)などによって記録材カセットから1枚ずつ給送され、レジストローラ9へと送られる。この記録材Pは、レジストローラ9によって、一旦停止させられた後、中間転写ベルト7上のトナー像とタイミングが合わされて2次転写部N2へと供給される。
【0025】
トナー像が転写された記録材Pは、搬送部材などによって定着手段としての定着装置10へと搬送される。定着装置10は、未定着のトナー像を担持した記録材Pを加熱及び加圧することで、記録材Pにトナー像を定着(溶融、固着)させる。その後、記録材Pは、画像形成装置100の装置本体の外部に排出(出力)される。
【0026】
また、1次転写工程後に感光ドラム1の表面に残留したトナー(1次転写残トナー)は、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置6によって感光ドラム1の表面から除去されて回収される。また、2次転写工程後に中間転写ベルト7の表面に残留したトナー(2次転写残トナー)や紙粉などの付着物は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置74によって中間転写ベルト7の表面から除去されて回収される。
【0027】
ここで、本実施例では、中間転写ベルト7は、内周面側から外周面側に樹脂層、弾性層、表層の3層構造を有する無端状のベルトである。樹脂層を構成する樹脂材料としては、ポリイミド、ポリカーボネートなどを用いることができる。樹脂層の厚さは、70~100μmが好適である。また、弾性層を構成する弾性材料としては、ウレタンゴム、クロロプレンゴムなどを用いることができる。弾性層の厚さは、200~250μmが好適である。また、表層の材料としては、中間転写ベルト7の表面へのトナーの付着力を小さくして、2次転写部N2においてトナーを記録材Pへ転写しやすくする材料が望ましい。例えば、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂などのうちの1種類又は2種類以上の樹脂材料を使用することができる。あるいは、弾性材料(弾性材ゴム、エラストマー)、ブチルゴムなどの弾性材料のうちの1種類又は2種類以上を使用することができる。また、これらの材料に、表面エネルギーを小さくし潤滑性を高める材料、例えばフッ素樹脂などの粉体、粒子を1種類又は2種類以上、あるいはこれらの粉体、粒子のうち1種類又は2種類以上の粒径を異ならせたものを分散させて使用することができる。なお、表層の厚さは、5~10μmが好適である。中間転写ベルト7は、カーボンブラックなどの電気抵抗調整用の導電剤が添加されて電気抵抗が調整され、好ましくは体積抵抗率が1×10~1×1014Ω・cmとされている。
【0028】
また、本実施例では、2次転写ローラ8は、芯金(基材)と、芯金の周囲にイオン導電系発泡ゴム(NBRゴム)で形成された弾性層と、を有して構成される。本実施例では、2次転写ローラ8の外径は24mm、2次転写ローラ8の表面粗さRzは6.0~12.0(μm)である。また、本実施例では、2次転写ローラ8の電気抵抗値はN/N(23℃、50%RH)において2kVを印加して測定した場合1×10~1×10Ω、弾性層の硬度はAsker-C硬度で30~40°程度である。また、本実施例では、2次転写ローラ8の長手方向(回転軸線方向)の幅(記録材Pの搬送方向と略直交する方向の長さ)は310~340mm程度である。本実施例では、2次転写ローラ8の長手方向の幅は、画像形成装置100が搬送を保証する記録材Pの幅(搬送方向と略直交する方向の長さ)のうちの最大の幅(最大幅)より長い。本実施例では、記録材Pは2次転写ローラ8の長手方向の中央を基準として搬送されるため、画像形成装置100が搬送を保証する記録材Pは全て2次転写ローラ8の長手方向の長さ範囲内を通過する。これにより、様々なサイズの記録材Pを安定して搬送し、また様々なサイズの記録材Pにトナー像を安定して転写することが可能とされている。
【0029】
図2は、2次転写に関する構成の模式図である。2次転写ローラ8は中間転写ベルト7を介して2次転写対向ローラ73と当接することで2次転写部N2を形成している。2次転写ローラ8には、出力電圧値が可変の2次転写電源20が接続されている。2次転写対向ローラ73は、電気的に接地(グランドに接続)されている。2次転写部N2を記録材Pが通過している際に、2次転写ローラ8にトナーの正規の帯電極性とは逆極性の直流電圧である2次転写電圧が印加され、2次転写部N2に2次転写電流が供給されることで、中間転写ベルト7上のトナー像が記録材P上へ転写される。本実施例では、2次転写時に2次転写部N2には、例えば+20~+80μAの2次転写電流が流される。なお、本実施例の2次転写対向ローラ73に対応するローラを転写部材として用いてこれにトナーの正規の帯電極性と同極性の2次転写電圧を印加し、本実施例の2次転写ローラ8に対応するローラを対向電極として用いてこれを電気的に接地してもよい。
【0030】
本実施例では、各種の情報に基づいて、2次転写部N2を記録材Pが通過している際の2次転写電流の上限値及び下限値(「2次転写電流範囲」)が決められる。詳しくは後述するように、この各種の情報は、次の各情報を含む。まず、画像形成装置100の装置本体に設けられた操作部31(図3)や画像形成装置100と通信可能に接続されたパーソナルコンピュータなどの外部装置200(図3)で指定された条件(記録材Pの種類など)に関する情報である。また、環境センサ32(図3)の検知結果に関する情報である。また、2次転写部N2に記録材Pが到達する前に検知される2次転写部N2の電気抵抗に関する情報である。そして、2次転写部N2を記録材Pが通過している際に、2次転写部N2に流れる2次転写電流を検知しながら、該2次転写電流が上記2次転写電流範囲の電流となるように、2次転写電源20から定電圧制御で出力される2次転写電圧が制御される。ここで、特に、本実施例では、2次転写電流範囲は、2次転写部N2を通過する記録材Pの幅に関する情報に基づいて変化させられる。なお、本実施例では、操作部31や外部装置200から入力される情報に基づいて記録材Pの幅や厚さに関する情報が取得される。ただし、画像形成装置100内に記録材Pの幅や厚さを検知する検知手段を設けて、この検知手段によって取得される情報に基づいて制御を行うことも可能である。
【0031】
本実施例では、このような制御を行うために、2次転写電源20には、2次転写部N2(すなわち、2次転写ローラ8あるいは2次転写電源20)に流れる電流(2次転写電流)を検知する電流検知手段(電流検知部)としての電流検知回路21が接続されている。また、2次転写電源20には、2次転写電源20が出力している電圧(2次転写電圧)を検知する電圧検知手段(電圧検知部)としての電圧検知回路22が接続されている。なお、制御部50が電圧検知部として機能し、2次転写電源20から出力する電圧の指示値から、2次転写電源20が出力している電圧を検知するようになっていてもよい。本実施例では、2次転写電源20と、電流検知回路21と、電圧検知回路22とは、同一の高圧基板内に設けられている。
【0032】
2.制御態様
図3は、本実施例の画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。制御手段としての制御部(制御回路)50は、演算処理を行う中心的素子である演算制御手段としてのCPU51、記憶手段としてのRAM52、ROM53などのメモリ(記憶媒体)などを有して構成される。書き換え可能なメモリであるRAM52には、制御部50に入力された情報、検知された情報、演算結果などが格納され、ROM53には制御プログラム、予め求められたデータテーブルなどが格納されている。CPU51とRAM52、ROM53などのメモリとは互いにデータの転送や読込みが可能となっている。
【0033】
制御部50には、画像形成装置100に設けられた画像読み取り装置(図示せず)やパーソナルコンピュータなどの外部装置200が接続されている。また、制御部50には、画像形成装置100に設けられた操作部(操作パネル)31が接続されている。操作部31は、制御部50の制御によりユーザーやサービス担当者などの操作者に各種情報を表示する表示部と、操作者が画像形成に関する各種設定などを制御部50に入力するための入力部と、を有して構成される。操作部31は、表示部の機能と入力部の機能とを備えたタッチパネルなどで構成されていてよい。制御部50には、操作部31や外部装置200から、記録材Pの種類などの画像形成に関する制御指令を含むジョブの情報が入力される。なお、記録材Pの種類とは、普通紙、厚紙、薄紙、光沢紙、コート紙などの一般的特徴に基づく属性、メーカー、銘柄、品番、坪量、厚さなど、記録材Pを区別可能な任意の情報を包含するものである。なお、制御部50は、記録材Pの種類の情報を、該情報が直接的に入力されることで取得できる他、例えば記録材Pを収納する給送部のカセットが選択されることで、予めそのカセットと関係付けられて設定された情報から取得することもできる。また、制御部50には、2次転写電源20と、電流検知回路21と、電圧検知回路22と、が接続されている。本実施例では、2次転写電源20は、2次転写ローラ8に定電圧制御された直流電圧である2次転写電圧を印加する。なお、定電圧制御は、転写部(すなわち、転写部材)に印加される電圧の値が略一定の電圧値となるようにする制御である。また、制御部50には、環境センサ32が接続されている。本実施例では、環境センサ32は、画像形成装置100の筐体内の雰囲気の温度及び湿度を検知する。環境センサ32により検知された温度及び湿度の情報は、制御部50に入力される。制御部50は、環境センサ32によって検知された温度及び湿度に基づいて画像形成装置100の筐体内の雰囲気の水分量(含水分量、絶対水分量)を求めることができる。環境センサ32は、画像形成装置100の内部又は外部の少なくとも一方の温度又は湿度の少なくとも一方を検知する環境検知手段の一例である。制御部50は、画像読み取り装置や外部装置200からの画像情報、操作部31や外部装置200からの制御指令に基づき、画像形成装置100の各部を統括的に制御して、画像形成動作を実行させる。
【0034】
ここで、画像形成装置100は、1つの開始指示(プリント指示)により開始される、単一又は複数の記録材Pに画像を形成して出力する一連の動作であるジョブ(プリント動作)を実行する。ジョブは、一般に、画像形成工程、前回転工程、複数の記録材Pに画像を形成する場合の紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に記録材Pに形成して出力する画像の静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写を行う期間であり、画像形成時(画像形成期間)とはこの期間のことをいう。より詳細には、これら静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写の各工程を行う位置で、画像形成時のタイミングは異なる。前回転工程は、開始指示が入力されてから実際に画像を形成し始めるまでの、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程は、複数の記録材Pに対する画像形成を連続して行う際(連続画像形成)の記録材Pと記録材Pとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時(非画像形成期間)とは、画像形成時以外の期間であって、上記前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置100の電源投入時又はスリープ状態からの復帰時の準備動作である前多回転工程などが含まれる。本実施例では、非画像形成時に、2次転写電流の上限値及び下限値(「2次転写電流範囲」)を決定する制御などが実行される。なお、本実施例では、後述する調整モードにより調整チャートを出力する一連の動作も、該調整チャートを出力する調整モードのジョブであるものとする。
【0035】
3.2次転写電圧制御
次に、本実施例における2次転写電圧の制御について説明する。図4は、本実施例における2次転写電圧の制御の手順の概略を示すフローチャート図である。図4は、1枚の記録材Pに、操作者が指定する任意の画像情報に応じた画像(ここでは、「通常画像」ともいう。)又は調整チャートを形成するジョブを実行する場合を例として示している。
【0036】
まず、制御部50は、操作部31又は外部装置200からのジョブの情報を取得すると、ジョブの動作を開始させる(S101)。本実施例では、このジョブの情報には、操作者が指定する画像情報、画像を形成する記録材Pのサイズ(幅、長さ)、記録材Pの厚さと関連する情報(厚さ又は坪量)、記録材Pがコート紙であるか否かといった記録材Pの表面性と関連する情報(紙種カテゴリーの情報)が含まれる。制御部50は、このジョブの情報をRAM52に書き込む(S102)。
【0037】
次に、制御部50は、環境センサ32により検知される環境情報を取得する(S103)。また、ROM53には、環境情報と、中間転写ベルト7上のトナー像を記録材P上へ転写させるための転写電流の目標値(目標電流)Itargetと、の相関関係を示す情報がテーブルデータなどとして格納されている。制御部50は、S103で読み取った環境情報に基づいて、上記環境情報と目標電流Itargetとの関係を示す情報から、環境に対応した目標電流Itargetを求め、これをRAM52に書き込む(S104)。
【0038】
なお、環境情報に応じて目標電流Itargetを変えるのは、環境によってトナーの電荷量が変化するからである。上記環境情報と目標電流Itargetとの関係を示す情報は、予め実験などによって求めたものである。ここで、トナーの電荷量は、環境以外にも、現像装置4にトナーを補給するタイミング、現像装置4から出ていくトナー量といった使用履歴によっても影響を受けることがある。画像形成装置100は、これらの影響を抑制するために、現像装置4内のトナーの電荷量がある一定範囲内の値となるように構成されている。しかし、環境情報以外にも、中間転写ベルト7上のトナーの電荷量を左右する要因が分かっていれば、その情報によっても目標電流Itargetを変えてよい。また、画像形成装置100にトナーの電荷量を測定する測定手段を設け、この測定手段によって得られたトナーの電荷量の情報に基づいて目標電流Itargetを変えてもよい。
【0039】
次に、制御部50は、中間転写ベルト7上のトナー像、及びトナー像が転写される記録材Pが2次転写部N2に到達する前に、2次転写部N2の電気抵抗に関する情報を取得する(S105)。本実施例では、ATVC制御(Active Transfer Voltage Control)により2次転写部N2(本実施例では主に2次転写ローラ8)の電気抵抗に関する情報を取得する。つまり、2次転写ローラ8と中間転写ベルト7とが接触させられた状態で、2次転写電源20から2次転写ローラ8に所定の電圧(試験電圧)又は電流(試験電流)を供給する。そして、所定の電圧を供給している際の電流値、又は所定の電流を供給している際の電圧値を検知して、電圧と電流との関係(電圧電流特性)を取得する。この電圧と電流との関係は、2次転写部N2(本実施例では主に2次転写ローラ8)の電気抵抗に応じて変化する。本実施例の構成では、上記電圧と電流との関係は、電流が電圧に対して線形に変化(比例)するものではなく、図5に示すように電流が電圧の2次以上の多項式で表されるように変化するものである。そのため、本実施例では、上記電圧と電流との関係を多項式で表すことができるように、2次転写部N2の電気抵抗に関する情報を取得する際に供給する所定の電圧又は電流は、3点(3水準)以上の多段階とした。この水準の数は、十分な精度で電圧電流特性を取得できること、制御にかかる時間を必要以上に長くしないことなどの観点から適宜選択できるが、典型的には10水準以下で十分である場合が多い。
【0040】
次に、制御部50は、2次転写電源20から2次転写ローラ8に印加すべき2次転写電圧の目標値(目標電圧)を求める(S106)。つまり、制御部50は、S104でRAM52に書き込まれた目標電流Itargetと、S105で求めた電圧と電流との関係と、に基づいて、2次転写部N2に記録材Pが無い状態で目標電流Itargetを流すために必要な電圧値Vbを求める。この電圧値Vbは、2次転写部分担電圧に相当する。また、ROM53には、図6に示すような、記録材分担電圧Vpを求めるための情報が格納されている。本実施例では、この情報は、記録材Pの坪量の区分ごとの、雰囲気の水分量と記録材分担電圧Vpとの関係を示す、テーブルデータとして設定されている。なお、制御部50は、環境センサ32により検知される環境情報(温度・湿度)に基づいて雰囲気の水分量を求める。制御部50は、S102で取得したジョブの情報の中に含まれる記録材Pの坪量の情報と、S103で取得した環境情報と、に基づいて、上記テーブルデータから記録材分担電圧Vpを求める。そして、制御部50は、2次転写部N2を記録材Pが通過している際に2次転写電源20から2次転写ローラ8に印加する2次転写電圧Vtrの初期値として、上記VbとVpとを足し合わせたVb+Vpを求め、これをRAM52に書き込む。本実施例では、記録材Pが2次転写部N2に到達するまでに、2次転写電圧Vtrの初期値を求め、記録材Pが2次転写部N2に到達するタイミングに備える。
【0041】
なお、図6に示すような記録材分担電圧Vpを求めるためのテーブルデータは、予め実験などによって求められたものである。ここで、記録材分担電圧(記録材Pの電気抵抗分の転写電圧)Vpは、記録材Pの厚さと関連する情報(坪量)以外にも、記録材Pの表面性によっても変化することがある。そのため、上記テーブルデータは、記録材Pの表面性と関連する情報によっても記録材分担電圧Vpが変わるように設定されていてよい。また、本実施例では、記録材Pの厚さと関連する情報(更には記録材Pの表面性と関連する情報)は、S102で取得されるジョブの情報の中に含まれている。しかし、画像形成装置100に記録材Pの厚さや記録材Pの表面性を検知する測定手段を設け、この測定手段によって得られた情報に基づいて記録材分担電圧Vpを求めるようにしてもよい。
【0042】
次に、制御部50は、記録材Pに形成する画像が、操作者が実際に成果物として出力する任意の画像情報に応じた「通常画像」であるか、画像形成装置100の動作設定(出力条件)を調整するための所定の「調整チャート」であるかを判断する(S107)。制御部50は、ジョブの情報の中に含まれる、通常画像を出力する通常画像形成モード(第1のモード)であるか、調整チャートを出力する調整モード(第2のモード)であるか、を示す情報に基づいて、上記判断を行うことができる。
【0043】
制御部50は、S107で、記録材Pに形成する画像が調整チャートであると判断した場合は、該調整チャートを出力する記録材Pが2次転写部N2を通過している際に、後述するリミッタ制御(電流リミッタ制御)を行わない(S108)。つまり、この場合、制御部50は、2次転写部N2を記録材Pが通過している際に、2次転写電源20から2次転写ローラ8に印加する電圧がS106で決定した2次転写電圧Vtr(=Vb+Vp)に基づく所定の2次転写電圧となるように定電圧制御を行う。この所定の2次転写電圧は、詳しくは後述するように、調整チャートの複数のパッチを異なる2次転写電圧で2次転写するために、Vb+Vp、又はVb+Vp+ΔV(調整量)とされる。制御部50は、調整チャートの出力が終了するまで、S108の処理を継続する(S109)。ここでは、1枚の記録材Pに調整チャートを形成するジョブを実行する場合を例としている。複数の記録材Pに連続して調整チャートを形成するジョブの場合は、各調整チャートの2次転写時にリミッタ制御を行わないようにすればよい。なお、本実施例における記録材Pに調整チャートを形成して出力する調整モードについては、後述して更に詳しく説明する。
【0044】
一方、制御部50は、S107で、記録材Pに形成する画像が通常画像であると判断した場合は、該通常画像を出力する記録材Pが2次転写部N2を通過している際に、以下に説明するようにしてリミッタ制御を行う。つまり、この場合、制御部50は、2次転写部N2を記録材Pが通過している際に、2次転写ローラ8に流れる電流が所定の範囲から外れる場合に該電流が該所定の範囲に入るようにS106で決定した2次転写電圧Vtrを変更するリミッタ制御を行う。換言すれば、この場合、制御部50は、記録材Pが2次転写部N2を通過している際に、2次転写ローラ8に流れる電流範囲を制限する。
【0045】
制御部50は、以下のようにして2次転写部N2を記録材Pが通過している際の2次転写電流の上限値及び下限値(「2次転写電流範囲」)を決定する。(S110~S113)。つまり、ROM53には、図7に示すような、画像不良を抑制する観点から2次転写部N2を記録材Pが通過している際に通紙部分に流してよい電流の範囲(「通紙部電流範囲(通過部電流範囲)」)を求めるための情報が格納されている。本実施例では、この情報は、雰囲気の水分量と、通紙部分に流してよい電流の上限値及び下限値と、の関係を示すテーブルデータとして設定されている。なお、このテーブルデータは、予め実験などによって求められたものである。制御部50は、まず、S103で取得した環境情報に基づいて、上記テーブルデータから通紙部分に流してよい電流の範囲を求める(S110)。なお、通紙部分に流してよい電流の範囲は、記録材Pの幅によって変化する。本実施例では、上記テーブルデータは、A4サイズ相当の幅(297mm)の記録材Pを想定して設定されている。ここで、画像不良を抑制する観点から通紙部分に流してよい電流の範囲は、環境情報以外にも、記録材Pの厚さ、表面性によっても変化することがある。そのため、上記テーブルデータは、記録材Pの厚さと関連する情報(坪量)、記録材Pの表面性と関連する情報によっても電流の範囲が変化するように設定されていてよい。通紙部分に流してよい電流の範囲は、計算式として設定されていてもよい。また、通紙部分に流してよい電流の範囲は、記録材Pのサイズごとに複数のテーブルデータや計算式として設定されていてもよい。
【0046】
次に、制御部50は、S102で取得したジョブの情報の中に含まれる記録材Pの幅の情報に基づいて、S110で取得した通紙部分に流してよい電流の範囲を補正する(S111)。S110で求めた電流の範囲はA4サイズ相当の幅(297mm)に対応したものである。例えば実際に画像形成に使用する記録材Pの幅がA5縦送り相当の幅(148.5mm)、つまりA4サイズ相当の幅の半分の幅である場合は、S110で取得した上限値及び下限値がそれぞれ半分になるように、記録材Pの幅に比例した電流の範囲に補正する。すなわち、図7のテーブルデータから求まる補正前の通紙部電流の上限値をIp_max、下限値をIp_min、図7のテーブルデータを決めた際の記録材Pの幅をLp_basとする。また、実際に搬送される記録材Pの幅をLp、補正後の通紙部電流の上限値をIp_max_aft、下限値をIp_min_aftとする。このとき、補正後の通紙部電流の上限値、下限値は、それぞれ下記式1、式2により求めることができる。
Ip_max_aft=Lp/Lp_bas*Ip_max ・・・(式1)
Ip_min_aft=Lp/Lp_bas*Ip_min ・・・(式2)
【0047】
次に、制御部50は、次の各情報に基づいて、非通紙部分に流れる電流(「非通紙部電流(非通過部電流)」)Inpを求める(S112)。S102で取得したジョブの情報の中に含まれる記録材Pの幅の情報、S105で求めた2次転写部N2に記録材Pが無い状態での2次転写部N2の電圧と電流との関係の情報、及びS106で求めた2次転写電圧Vtrの情報である。例えば、2次転写ローラ8の幅が338mmであり、S102で取得した記録材Pの幅がA5縦送り相当の幅(148.5mm)である場合、非通紙部分の幅は2次転写ローラ8の幅から記録材Pの幅を差し引いた189.5mmとなる。そして、S106で求めた2次転写電圧Vtrが例えば1000Vであり、S105で求めた電圧と電流との関係から、該2次転写電圧Vtrに対応する電流が40μAであるものとする。この場合、上記2次転写電圧Vtrに対応して非通紙部分に流れる電流Inpは、次の比例計算、
40μA×189.5mm/338mm=22.4μA
から求めることができる。つまり、上記2次転写電圧Vtrに対応する電流40μAを、2次転写ローラ8の幅338mmに対する非通紙部分の幅189.5mmの割合分だけ小さくする比例計算によって、非通紙部分に流れる電流を求めることができる。
【0048】
次に、制御部50は、2次転写部N2を記録材Pが通過している際の2次転写電流の上限値及び下限値(「2次転写電流範囲」)を求め、求めた2次転写電流範囲をRAM52に記憶させる(S113)。つまり、制御部50は、S111で求めた通紙部電流の上限値及び下限値のそれぞれにS112で求めた非通紙部電流Inpを足し合わせ、2次転写部N2を記録材Pが通過している際の2次転写電流の上限値及び下限値(「2次転写電流範囲」)を求める。すなわち、2次転写部N2を記録材Pが通過している際の2次転写電流の上限値をI_max、下限値をI_minとする。このとき、2次転写電流の上限値、下限値は、それぞれ下記式3、式4により求めることができる。
I_max=Ip_max_aft+Inp ・・・(式3)
I_min=Ip_min_aft+Inp ・・・(式4)
【0049】
例えば、S110で取得したA4サイズ相当の幅に対応する通紙部分に流してよい電流の範囲の上限値が20μA、下限値が15μAの場合について考える。この場合、実際に画像形成に使用する記録材Pの幅がA5縦送り相当の幅であるときは、通紙部分に流してよい電流の範囲の上限値は10μA、下限値は7.5μAとなる。そして、S112で求めた非通紙部分に流れる電流が上記例のように22.4μAであるときは、2次転写電流範囲の上限値は32.4μA、下限値は29.9μAとなる。
【0050】
次に、制御部50は、2次転写部N2に記録材Pが到達してから2次転写部N2に記録材Pが存在する間、2次転写電圧Vtrを印加した際の2次転写電流を電流検知回路21により検知する(S114)。また、制御部50は、検知した2次転写電流値と、S113で求めた2次転写電流範囲とを比較し、2次転写電源20が出力する2次転写電圧Vtrを必要に応じて補正する(S115)。つまり、制御部50は、検知した2次転写電流値がS113で求めた2次転写電流範囲の値(下限値以上かつ上限値以下)の場合は、2次転写電源20が出力している2次転写電圧Vtrを変えずにそのまま維持する(S116)。一方、制御部50は、検知した2次転写電流値がS113で求めた2次転写電流範囲から外れている(下限値未満又は上限値を超える)場合は、該2次転写電流範囲の値となるように2次転写電源20が出力する2次転写電圧Vtrを補正する(S117)。本実施例では、上限値を超えている場合は、2次転写電圧Vtrを低下させて、2次転写電流が上限値を下回った時点で2次転写電圧Vtrの補正を止め、その時点の2次転写電圧Vtrを維持する。本実施例では、2次転写電圧Vtrは、所定の変更幅ΔVpで段階的に低下させる。また、本実施例では、下限値を下回っている場合は、2次転写電圧Vtrを上昇させて、2次転写電流が下限値を上回った時点で2次転写電圧Vtrの補正を止め、その時点の2次転写電圧Vtrを維持する。本実施例では、2次転写電圧Vtrは、所定の変更幅ΔVpで段階的に上昇させる。本実施例では、S114~S117の動作は、所定の検知時間(電流を検知する期間)と、所定の応答時間(電圧を変更する期間)と、を交互に繰り返すようにして行う。また、この検知時間と応答時間とを2次転写部N2に記録材Pがある間(より詳細には記録材Pの画像形成領域が2次転写部N2を通過している間)繰り返し行う。これにより、2次転写部N2を記録材Pが通過している際に検知される2次転写電流がS113で求めた2次転写電流範囲に収まるように、2次転写電圧Vtrが補正されていく。制御部50は、所望の画像の出力が終了するまで、S114~S117の処理を継続する(S118)。ここでは、1枚の記録材Pに通常画像を形成するジョブを実行する場合を例としている。複数の記録材Pに連続して通常画像を形成するジョブの場合は、全ての通所画像を出力し終えるまで、S114~S117の処理を繰り返せばよい。
【0051】
ここで、リミッタ制御における2次転写電圧の変更幅ΔVpは、例えば、次のようにして設定することができる。濃度ムラを抑制する観点などから、記録材Pの単位搬送距離あたりの2次転写電流の変更量を予め設定することができる。また、この記録材Pの単位搬送距離あたりの2次転写電流の変更量と、記録材Pの搬送速度と、2次転写電流のサンプリング時間とから、1回の2次転写電圧の変更による2次転写電流の変更量を設定することができる。そして、1回あたりの2次転写電圧の変更量である変更幅ΔVpは、この2次転写電流の変更量に相当する2次転写電圧の変更量に設定することができる。この場合、1回あたりの2次転写電流の変更量の情報を予め設定してROM53に格納しておくことができる。そして、制御部50は、ATVC制御により求めた電圧電流特性を用いて、上記2次転写電流の変更量から1回あたりの2次転写電圧の変更量である変更幅ΔVpを求めることができる。つまり、ATVC制御により求めた2次転写部N2の電気抵抗に関する情報に応じて、所定の2次転写電流の変更量に相当する2次転写電圧の変更量である変更幅ΔVpを求める。これにより、急激な2次転写電流の変化を抑制して、濃度ムラを抑制することが可能となる。このように、制御部50は、リミッタ制御において、2次転写電圧の目標電圧を所定の変更幅ごとに変更することができる。また、制御部50は、2次転写部N2に記録材Pが無い状態で2次転写ローラ8に電圧を印加して取得した電圧電流特性に基づいて、リミッタ制御における1回あたりの電圧の変更量を設定することができる。
【0052】
また、別法として、ATVC制御により求めた電圧電流特性を用いて、検知電流と2次転写電流範囲の下限値(下限値を下回っていた場合)又は上限値(上限値を上回っていた場合)との差分に相当する変更幅ΔVpを求めてもよい。つまり、ATVC制御により求めた2次転写部N2の電気抵抗に関する情報に応じて、検知電流と2次転写電流範囲の下限値又は上限値との差分を無くすことのできる変更幅ΔVpを求めることができる。これにより、1回の2次転写電圧の変更により、2次転写電流を2次転写電流範囲付近(典型的には下限値又は上限値)まで補正することができる。なお、この場合、2次転写電流範囲の上限値又は下限値との差分を無くすのに足る電圧よりも大きい電圧を変更幅ΔVpとしてもよい。また、この場合、2次転写電流を十分に所定の電流範囲付近まで補正できれば、制御の誤差などにより、補正後の2次転写電圧により供給される2次転写電流が所定の電流範囲から十分に小さい範囲で外れることがあってもよい。このように、制御部50は、リミッタ制御において、1回の変更により2次転写電流範囲と電流検知回路21の検知結果が示す電流との差分が所定値以下(この所定値はゼロでもよい)となるように、2次転写電圧の目標電圧を変更することができる。
【0053】
また、本実施例では、2次転写部N2を記録材Pが通過している際に2次転写部N2に流れる電流として、「通紙部電流(通過部電流)」と、「非通紙部電流(非通過部電流)」と、を考慮した。通紙部電流は、記録材Pの搬送方向と略直交する方向における2次転写部N2の記録材Pが通過する領域(「通紙部分(通過領域)」)に流れる電流である。また、非通紙部電流は、記録材Pの搬送方向と略直交する方向における2次転写部N2の記録材Pが通過しない領域(「非通紙部分(非通過領域)」)に流れる電流である。非通紙部分が生じるのは、2次転写ローラ8の長手方向の長さが、様々なサイズの記録材Pに対して安定して搬送及びトナー像の転写を行うために、画像形成装置100で保証している記録材の最大幅より大きくされるからである。2次転写部N2を記録材Pが通過している際に検知できる電流は通紙部電流と非通紙部電流との和である。前述の画像濃度薄、白抜けといった画像不良を抑制するためには、通紙部電流が適切な範囲の値になっていることが重要であるが、通紙部電流だけを検知することはできない。これに対し、記録材Pのサイズごとに適切な2次転写電流の上限値及び下限値(「2次転写電流範囲」)を予め求めておき、記録材Pのサイズに応じて2次転写部N2を記録材Pが通過中の2次転写電流をその2次転写電流範囲の値に制御することが考えられる。しかし、予め適切な2次転写電流範囲を決めても、非通紙部分を形成する2次転写ローラ8の電気抵抗は様々な条件で変動することがある。この様々な条件としては、製品のばらつき、環境(温度・湿度)、部材の温度・吸湿度、累積使用時間(画像形成装置の稼働状況や繰り返し使用量状況)などが挙げられる。そのため、2次転写ローラ8の電気抵抗の変動によって適切な2次転写電流範囲が変化してしまうことがある。そこで、本実施例では、記録材Pが2次転写部N2に無い状態での2次転写部N2の電気抵抗に関する情報の検知結果に基づいて、非通紙部電流を予測し、その予測結果と通紙部分に流してよい電流範囲とに基づいて2次転写電流範囲を求めた。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、上述のように、記録材Pのサイズごとに適切な2次転写電流範囲を予め求めておき、記録材Pのサイズに応じた2次転写電流範囲を用いてリミッタ制御を行うなどしてもよい。また、所望の精度などに応じて、非通紙部電流を考慮せずにリミッタ制御を行ってもよい。
【0054】
4.調整モード
次に、本実施例における調整モードについて更に説明する。記録材Pに調整チャートを形成して出力する調整モードとしては、様々なものが考えられるが、例えば次のものを挙げることができる。感光ドラム1上のトナー像を形成するための潜像形成条件や現像条件を調整するためのものがある。また、記録材P上にトナー像を転写する際の位置条件を調整するためのものがある。また、記録材P上にトナー像を転写する際の転写電圧条件を調整するためのものがある。本実施例では、記録材Pに調整チャートを形成して出力する調整モードは、2次転写電圧を調整するための調整モードである。
【0055】
つまり、本実施例では、上述のリミッタ制御による2次転写電圧の自動調整を可能としつつ、ユーザーの好みに合った濃度を達成するなどのために、ユーザーが実際に使用する記録材Pに調整チャートを出力して2次転写電圧を調整できるようになっている。特に、本実施例では、調整モードでは、所定の試験画像として1枚の記録材Pに2次転写電圧を切り替えながら複数のパッチを形成した調整チャートを出力する。このとき、本実施例では、調整チャートの出力に用いる記録材Pの種類(サイズ、厚さ、紙種カテゴリーなど)を指定して、調整モードを行うことができるようになっている。そして、本実施例では、この調整チャートを出力する際には、前述のリミッタ制御を行わず、前述のように該記録材Pの種類などに応じて決定したVb+Vp(=Vtr)、又はこれに基づくVb+Vp+ΔV(調整量)で2次転写電圧を定電圧制御する。また、本実施例では、ユーザーなどの操作者は、出力された調整チャートを目視又は測色計を用いて確認して、好ましい結果が得られたパッチに対応する2次転写電圧(より詳細にはΔV)を設定することが可能とされている。
【0056】
調整モードで出力する調整チャートは、特に限定されるものではない。調整チャートの各パッチの形状は、正方形や長方形などとすることができる。パッチの色は、確認したい画像不良や確認しやすさによって決めることができる。例えば、2次転写電圧を低い値から高くしていった場合に、レッド、グリーン、ブルーといった2次色のパッチを適切に転写することができる電圧値から2次転写電圧の下限値を決めることができる。また、2次転写電圧を更に高くしていった場合に、ハーフトーンのパッチに2次転写電圧が高いことによる画像不良が発生する電圧値から2次転写電圧の上限値を決めることができる。
【0057】
図8(a)は、本実施例における調整モードで出力する調整チャート300の一例の模式図である。調整チャート300は、搬送方向と略直交する方向(ここでは、「幅方向」ともいう。)に、1個のブルーベタのパッチ301、1個のブラックベタのパッチ302、及び2個のハーフトーンのパッチ303が配列されたパッチセットを有している。そして、この幅方向のパッチセット301~303が、搬送方向に11組配列されている。なお、本実施例では、ハーフトーンのパッチ303は、グレー(ブラックのハーフトーン)のパッチである。ここで、ベタ画像は、最大濃度レベルの画像である。また、本実施例では、ハーフトーン画像とは、ベタ画像のトナー載り量を100%としたとき、10%から80%のトナー載り量の画像である。また、本実施例では、調整チャート300には、搬送方向の11組のパッチセット301~303のそれぞれに対応付けられて、各組のパッチセットに対して印加された2次転写電圧の設定を識別するための識別情報304が設けられている。この識別情報304は、後述する調整値に対応する。本実施例では、11段階の2次転写電圧の設定に対応する11個(本実施例では-5~0~+5)の識別情報304が配置される。
【0058】
本実施例の画像形成装置100で使用できる最大の記録材Pのサイズは、幅方向13インチ(≒330mm)×搬送方向19.2インチ(≒487mm)であり、調整チャート300はこのサイズに対応している。記録材Pのサイズが13インチ×19.2インチ(縦送り)以下、かつ、A3サイズ(縦送り)以上の場合は、図示のチャートのデータから記録材Pのサイズに応じて切り取られた画像データに対応するチャートが出力される。このとき、本実施例では、先端中央基準で記録材Pのサイズに合わせて、画像データが切り取られる。つまり、記録材Pの搬送方向の先端と調整チャート300の搬送方向の先端(図中上端)とが合わされ、記録材Pの幅方向の中央と調整チャート300の幅方向の中央とが合わされて、画像データが切り取られる。また、本実施例では、端部(本実施例では幅方向の両端部及び搬送方向の両端部)に余白2.5mmが設けられるようにして画像データが切り取られる。例えば、A3サイズ(縦送り)の記録材Pに調整チャート300が出力される場合は、端部にそれぞれ2.5mmの余白をあけるようにして短辺292mm×長辺415mmのサイズの画像データが切り取られる。そして、この切り取られた画像データに対応する画像が、A3サイズの記録材Pに、先端中央基準で、出力される。幅方向のサイズが13インチよりも小さい記録材Pが用いられる場合、幅方向の端部のハーフトーンのパッチ303の幅方向のサイズが小さくなっていく。また、幅方向のサイズが13インチよりも小さい記録材Pが用いられる場合、搬送方向の後端の余白が小さくなっていく。なお、本実施例では、A3サイズより小さい記録材Pが用いられる場合、必要な調整値分のパッチを出力できる分だけ、複数枚の記録材Pに調整チャートを形成して出力することができるようになっている。また、本実施例では、定型サイズだけでなく、例えば操作者が操作部31や外部装置200から入力して指定することで、任意のサイズ(フリーサイズ)の記録材Pを用いて調整チャートを出力することもできるようになっている。
【0059】
パッチの大きさは、操作者が画像不良の有無を判断しやすい大きさであることが求められる。ブルーベタのパッチ301、ブラックベタのパッチ302の転写性については、パッチの大きさが小さいと判断が難しくなりやすいので、パッチの大きさは、10mm角以上が好ましく、25mm角以上の大きさであることがより好ましい。ハーフトーンのパッチ303における、2次転写電圧を高くしていった場合に発生する異常放電による画像不良は、白い点のような画像不良になることが多い。この画像不良は、ベタ画像の転写性に比べて、小さい画像でも判断しやすい傾向がある。しかし、画像が小さすぎない方が見やすいため、本実施例では、ハーフトーンのパッチ303の搬送方向の幅は、ブルーベタのパッチ301、ブラックベタのパッチ302の搬送方向の幅と同じにしている。また、搬送方向におけるパッチセット301~303間の間隔は、2次転写電圧の切り替えを行えるように設定すればよい。本実施例では、ブルーベタのパッチ301及びブラックベタのパッチ302は、それぞれ25.7mm×25.7mmの正方形(一辺が幅方向と略平行)とされている。また、本実施例では、幅方向両端部のハーフトーンのパッチ303は、それぞれ搬送方向の幅が25.7mmとされ、幅方向は調整チャート300の最端部にまで伸びている。また、本実施例では、搬送方向におけるパッチセット301~303間の間隔は、9.5mmとされている。この間隔に対応する調整チャート300上の部分が2次転写部N2を通過しているタイミングで、2次転写電圧が切り替えられる。調整チャート300の搬送方向の11組のパッチセット301~303は、記録材PのサイズがA3サイズの場合に搬送方向の長さ415mmに収まるように、搬送方向の長さ387mmの範囲に配置されている。
【0060】
なお、記録材Pの搬送方向の先端及び後端の近傍(例えば端縁から内側に20~30mm程度の範囲)には、パッチが形成されないようにすることが好ましい。これは、次のような理由によるものである。つまり、記録材Pの搬送方向の端部のうち、幅方向の端部には発生せずに、先端又は後端にだけ発生する画像不良がある場合がある。この場合に、2次転写電圧を振ったために画像不良が発生したのか否かを判断しにくくなることがあるからである。
【0061】
調整チャート300の各パッチは中間転写ベルト7上に形成するまでのプロセス条件は全て同じとされている。そして、2次転写部N2で記録材P上にパッチを転写する際の2次転写電圧が、搬送方向に並んで配置されたパッチセット301~303ごとに異なっている。この2次転写電圧の違いにより、記録材P上に出力される各パッチセット301~303の濃度が異なるものとなることが想定されている。
【0062】
図9(a)、(b)はそれぞれ、本実施例における調整チャート300の出力時の2次転写電圧、2次転写電流の推移を模式的に示すグラフ図である。調整チャート300の識別情報304が示す調整値「0」に対応するパッチセット301~303は、図4のS106で決定された2次転写電圧の初期値Vb+Vp(=Vtr)で記録材Pに2次転写される。そして、調整値「0」より小さい調整値に対応するパッチセット301~303(搬送方向の先端側)は、初期値より絶対値が小さい2次転写電圧で記録材Pに2次転写される。逆に、調整値「0」より大きい調整値に対応するパッチセット301~303(搬送方向の後端側)は、初期値より絶対値が大きい2次転写電圧で記録材Pに2次転写される。本実施例では、調整値が「1」異なるごとに、所定の電圧幅だけ2次転写電圧を変化させて(本実施例では絶対値を大きくして)、階段状に2次転写電圧を変化させる。この変動幅は、数10V~数100V程度が好適であり、本実施例では150Vとした。例えば、調整値が「-5」のパッチセット301~303に対して印加される2次転写電圧は、Vb+Vp+(-5*150V)となる。
【0063】
ユーザーなどの操作者は、出力された調整チャート300のパッチを、視認又は測色器(図示せず)による測定により確認する。そして、操作者が好む画像を出力可能な2次転写電圧の調整値を選び、操作部31や外部装置200に表示された設定画面を介して制御部50に入力する。これにより、操作者が実際に使用する記録材Pの種類や状態に応じて、操作者の好みに応じた結果が得られるように2次転写電圧を調整することが可能となる。図8(b)は、操作者が調整モードの設定を入力するための設定画面400の一例を示す模式図である。この設定画面400は、記録材Pのオモテ面とウラ面とに対する2次転写電圧の調整値を設定するための電圧設定部401を有する。また、この設定画面400は、調整チャート300を記録材Pの片面に出力するか両面に出力するかを選択するための出力面選択部402を有する。また、この設定画面400は、調整チャート300の出力を指示するための出力指示部403を有する。また、この設定画面400は、設定を確定するための確定部(OKボタン)404、設定の変更をキャンセルするためのキャンセルボタン405を有する。電圧設定部401において調整値「0」が選択された場合には、2次転写電圧が図4のS106で決定される初期値Vb+Vp(=Vtr)に設定され、また調整チャート300の出力時の2次転写電圧の中心電圧値がその電圧に設定される。また、「0」以外の調整値が選択された場合には、調整値の1レベルごとに150Vの調整量ΔVで2次転写電圧が調整され、また調整チャート300の出力時の2次転写電圧の中心電圧値がその電圧に設定される。調整値が選択された後に、出力指示部403が選択されることによって、選択された中心電圧値で調整チャート300が出力される。また、調整値が選択された後に確定部404が選択されることで、2次転写電圧の設定が確定され、RAM52に格納される。調整チャートに好みの結果が無い場合には、調整チャート300の出力時の2次転写電圧の中心電圧値を変更して、調整チャート300の出力を繰り返すことができる。
【0064】
なお、本実施例では、操作者が調整チャート300のパッチを目視又は測色器を用いて確認して、2次転写電圧を調整する場合についてしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、操作者が、出力された調整チャート300を、画像形成装置100が備えた画像読み取り装置(図示せず)にセットして、この画像読み取り装置に調整チャートの各パッチの濃度情報(輝度情報)を読み取らせることができる。そして、制御部50がその濃度情報の検知結果に基づいて、予め設定された所定の条件に合致する(例えば最も濃度が濃い)パッチに対応する調整量を決定して、2次転写電圧を調整することができる。あるいは、画像形成装置100から調整チャート300が出力される際に調整チャート300の各パッチの濃度情報(輝度情報)を読み取るインラインの画像センサを設けてもよい。この場合も、上記同様、制御部50がその画像センサの検知結果に基づいて2次転写電圧を調整することができる。また、前述の測色器としては、画像形成装置100の外部の測色器、又は画像形成装置100に接続された測色器を用いることができる。外部の測色器を用いる場合は、その測定結果に基づいて操作者が所望の設定を制御部50に入力することができる。また、画像形成装置100に接続された測色器を用いる場合は、その測定結果が制御部50に読み込まれ、制御部50がその測定結果に基づいて画像濃度が適切となるように2次転写電圧の調整値に反映させるようにしてもよい。
【0065】
ここで、本実施例では、調整モード以外の時には、“3.2次転写電圧制御”で説明したようなリミッタ制御を行うようにしている。このリミッタ制御とは別に、2次転写電源(高圧電源回路)20に、過剰電流抑制の観点から、保護回路による電流リミッタや、印加電圧の高圧上限値が設けられていても良い。この保護回路による電流リミッタは、上述のリミッタ制御による通常画像形成中の画像を保証するための電流範囲より広く設定されている。例えば、本実施例で使用される2次転写電源20は、過剰電流抑制の観点から300~400μAの保護回路を有しており、2次転写部N2にこの値以上の電流が流れようとすると回路保護のため2次転写電源20が一時的に遮断される制御が入る。また、この2次転写電源20が印加可能な電圧は7~10kV程度であり、“3.2次転写電圧制御”で説明したようなリミッタ制御によって2次転写電圧を上げる必要がある場合でも、この値以上には2次転写電圧は大きくならないようになっている。
【0066】
また、2次転写電源20が上述のような過剰電流抑制の観点からの保護回路による電流リミッタや印加電圧の高圧上限値を有している場合、調整モードにおいてもこれらが有効であることが望ましい。つまり、本実施例では、上述のように、調整チャートを出力する際に、通常画像形成中の画像を保証するための電流範囲を制限するリミッタ制御がオフになっている。ただし、この場合でも、上述のような過剰電流抑制の観点からの保護回路による電流リミッタや印加電圧の高圧上限値は有効であることが望ましい。
【0067】
5.効果
図10(a)、(b)はそれぞれ、本実施例とは異なり調整チャートの出力時にリミッタ制御を行った場合の2次転写電圧、2次転写電流の推移を模式的に示すグラフ図である。なお、調整チャート自体は本実施例のものと実質的に同じであるものとする。前述のように、調整チャートの出力時にリミッタ制御を行った場合、所定の2次電流範囲でしか2次転写電圧を変化させることができなくなってしまう。そして、操作者の好みに合う画像濃度を達成できる2次転写電圧が、2次転写電流が所定の範囲から外れる領域にある場合、リミッタ制御が行われてしまうと、該領域の2次転写電圧でのパッチの出力が適切に行われなくなる。その結果、操作者の好みに応じた調整を行えなくなることがある。
【0068】
これに対して、図9(a)、(b)に示すように、本実施例では、調整チャートを出力する際にリミッタ制御を行わない。そのため、想定された範囲の2次転写電圧で適切にパッチを出力することができる。その結果、操作者の好みに応じた調整を行うことができる。
【0069】
なお、本実施例では、調整チャートを出力する記録材Pが2次転写部N2を通過している間の全期間でリミッタ制御を行わない場合について説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、記録材Pの搬送方向に関しパッチが形成されない領域については、リミッタ制御を行ってもよい。調整チャートは、記録材Pの搬送方向の先端から後端まで隙間なくパッチが形成されるとは限らず、先端側又は後端側の少なくとも一方にパッチが形成されない余白領域が存在する場合がある。この場合、この余白領域が2次転写部N2を通過している間はリミッタ制御を行うことが可能である。2次転写電圧を調整するための調整チャートを出力する場合、例えば、調整値「0」に対応する2次転写電圧の設定を、記録材Pの搬送方向の先端側の余白部でのリミッタ制御で調整した値になるようにすることができる。これにより、2次転写電流が最適に近い状態となる2次転写電圧を挟むようにして振った2次転写電圧の設定で、調整チャートを出力することができ、より適切な調整を行うことが可能になる。また、例えば複数枚の記録材Pに連続して調整チャートを形成する場合などに、先行する記録材Pの後端側の余白領域においてもリミッタ制御を行って後続の記録材Pに備えることも有効である。つまり、調整チャートを出力する記録材Pの搬送方向に関するパッチが形成される領域が2次転写部N2を通過している間はリミッタ制御を行わないようにする。ここで、パッチが形成される領域とは、記録材Pの搬送方向に関するパッチが転写される領域の先端から後端までの範囲である。記録材Pの搬送方向に複数のパッチが転写される場合は、記録材Pの搬送方向に関する先端のパッチの先端から、後端のパッチの後端までの範囲である。そして、記録材Pの先端側のパッチが形成されない余白領域、更には後端側のパッチが形成されない余白領域が2次転写部N2を通過している間はリミッタ制御を行うことを可能とすることができる。なお、先端側又は後端側の少なくとも一方が2次転写部N2を通過している際にのみリミッタ制御を行うことを可能としてもよい。
【0070】
このように、本実施例では、画像形成装置100は、記録材Pが転写部N2を通過している際に、転写部材8に印加する電圧が所定電圧となるように定電圧制御する制御部50を備えている。この制御部50は、電流検知部21の検知結果が所定範囲内となるように電流検知部21の検知結果に基づいて転写部材8に印加する電圧を制御するリミッタ制御を実行可能である。また、画像形成装置100は、トナー像を記録材Pに転写する第1のモード(通常画像形成モード)と、異なる複数の電圧を転写部材8に印加して複数の試験トナー像を記録材Pに転写する第2のモード(調整モード)と、を実行可能である。そして、制御部50は、第1のモードの実行時には、記録材Pが転写部N2を通過している間にリミッタ制御を実行可能である。一方、制御部50は、第2のモードの実行時には、複数の試験トナー像が転写される領域が転写部N2を通過している間はリミッタ制御を行わない。本実施例では、試験トナー像は、第1のモードの実行時の上記所定電圧(転写電圧の目標電圧)を設定するためのトナー像である。また、制御部50は、第2のモードの実行時に、記録材Pの搬送方向に関する複数の試験トナー像が転写される領域以外の少なくとも一部の領域が転写部N2を通過している間は、リミッタ制御を行うことが可能である。例えば、該少なくとも一部の領域は、記録材Pの搬送方向に関する先端側のトナー像が転写されない余白領域である。
【0071】
以上説明したように、本実施例によれば、通常画像を出力する際に、記録材Pの種類や状態によらず2次転写電流の不足又は過剰の発生を抑制して、適切に画像を出力することができる。それと共に、本実施例によれば、調整チャートを出力する際に、動作設定を制限することなく、適切に調整チャートを出力することができるため、操作者の好みに応じた調整を適切に行うことが可能となる。したがって、本実施例によれば、2次転写部を記録材Pが通過している際の2次転写電流に基づいて2次転写電圧を調整するリミッタ制御が可能な構成において、記録材Pに試験画像を形成する調整モードによる調整を適切に行うことが可能となる。
【0072】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0073】
実施例1では、調整チャートを出力する際(あるいは調整チャートのパッチが形成される領域が2次転写部を通過している際)にはリミッタ制御を行わないようにした。これに対し、リミッタ制御を完全に行わないのでなく、2次転写電流範囲を広げる(上限値と下限値との差分を大きくする)ことでも、実施例1に近い効果を期待することできる。
【0074】
実施例1に即して更に説明すると、制御部50は、図4のS107で記録材Pに形成する画像が調整チャートであると判断した場合も、通常画像を形成する場合における図4のS110~S118の処理と同様の処理を実行する。ただし、2次転写電流範囲を、通常画像を形成する場合よりも広くする。図11(a)、(b)はそれぞれ、本実施例における調整チャートを出力する場合の2次転写電圧、2次転写電流の推移を模式的に示すグラフ図である。例えば、調整チャートを出力する場合の2次転写電流範囲は、通常は実質的にリミッタ制御が機能しないようにするように設定することができる。ただし、この2次転写電流範囲の上限値、下限値は、電流検知回路21で検知可能な電流範囲の値である。なお、2次転写電流範囲の上限値又は下限値の少なくとも一方(図示の例では両方)を、2次転写電流範囲を広げるように変更することで、通常画像を出力する場合よりも調整チャートを出力する場合の2次転写電流範囲を広げることができる。
【0075】
このように、本実施例では、制御部50は、第1のモード(通常画像形成モード)の実行時にリミッタ制御を行う場合には、転写電流の所定範囲を第1の所定範囲に設定し、第2のモード(調整モード)の実行時にリミッタ制御を行う場合には、転写電流の所定範囲を上記第1の所定範囲よりも広い第2の所定範囲に設定する。
【0076】
以上説明したように、本実施例によっても、実施例1と同様の効果が得られる。
【0077】
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0078】
リミッタ制御は、電流の上限値及び下限値のうちいずれか一方のみを設けて行うこともできる。例えば、標準的な記録材よりも電気抵抗が大きい記録材が用いられ、転写電流が下限値を下回ることが多いことがわかっている場合などには、下限値のみを設けることができる。逆に、標準的な記録材よりも電気抵抗が小さい記録材が用いられ、転写電流が上限値を上回ることが多いことがわかっている場合などには、上限値のみを設けることができる。つまり、リミッタ制御において転写電流が所定範囲内となるようにするとは、下限値以上の電流とすること、上限値以下の電流とすること、及び下限値以上かつ上限値以下とすることを包含するものである。
【0079】
また、上述の実施例では、記録材は、搬送方向と略直交する方向における転写部材の中央を基準として搬送されたが、これに限定されるものではなく、例えば一方の端部側を基準として搬送される構成とされていてもよく、本発明を等しく適用することができる。
【0080】
また、本発明は、画像形成部を一つだけ有するモノクロ画像形成装置にも等しく適用することができる。この場合、本発明は、感光ドラムなどとされる像担持体から記録材にトナー像が転写される転写部に関して適用されることになる。
【符号の説明】
【0081】
7 中間転写ベルト
8 2次転写ローラ
20 2次転写電源
21 電流検知回路
22 電圧検知回路
50 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-11-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体からトナー像が転写される中間転写ベルトと、
電圧が印加され、転写部において前記中間転写ベルトから記録材にトナー像を転写する転写部材と、
前記転写部材に電圧を印加する電源と、
前記転写部材に流れる電流を検知する電流検知部と、
前記転写部材に印加される電圧を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
(i)前記転写部を記録材が通過している際に、前記電流検知部により検知される検知結果が、記録材の種類に基づいて決定される所定範囲内である場合、前記転写部材に印加される電圧が一定となるように定電圧制御を行い、前記検知結果が前記所定範囲の上限値を超えた場合に、前記検知結果が前記上限値を超えないように前記転写部材に印加される電圧を変更し、変更後の電圧で定電圧制御を継続して行う第1制御と、
(ii)前記転写部を記録材が通過している際に、前記検知結果が前記上限値を超えた場合であっても、前記検知結果に基づいて前記転写部材に印加される電圧を変更することなく、前記転写部材に所定電圧を印加する第2制御と、
を実行可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1制御の実行時において、前記検知結果が前記上限値を超えた場合に、前記転写部材に印加する電圧を段階的に低下させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1制御とは別に、前記転写部材に流れる電流が所定電流以上とならないように前記電源を一時的に遮断する保護回路を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記所定電流は、前記上限値よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記保護回路は、前記第2制御の実行時において有効であることを特徴とする請求項3又は4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
所定の指示を手動入力可能な操作部を備え、前記制御部は、前記操作部から入力される前記所定の指示に基づいて、前記第2制御を実行することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体からトナー像が転写される中間転写ベルトと、電圧が印加され、転写部において前記中間転写ベルトから記録材にトナー像を転写する転写部材と、前記転写部材に電圧を印加する電源と、前記転写部材に流れる電流を検知する電流検知部と、前記転写部材に印加される電圧を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、(i)前記転写部を記録材が通過している際に、前記電流検知部により検知される検知結果が、記録材の種類に基づいて決定される所定範囲内である場合、前記転写部材に印加される電圧が一定となるように定電圧制御を行い、前記検知結果が前記所定範囲の上限値を超えた場合に、前記検知結果が前記上限値を超えないように前記転写部材に印加される電圧を変更し、変更後の電圧で定電圧制御を継続して行う第1制御と、(ii)前記転写部を記録材が通過している際に、前記検知結果が前記上限値を超えた場合であっても、前記検知結果に基づいて前記転写部材に印加される電圧を変更することなく、前記転写部材に所定電圧を印加する第2制御と、を実行可能であることを特徴とする画像形成装置である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】