IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ みこらった株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-自動車及び自動車用プログラム 図1
  • 特開-自動車及び自動車用プログラム 図2
  • 特開-自動車及び自動車用プログラム 図3
  • 特開-自動車及び自動車用プログラム 図4
  • 特開-自動車及び自動車用プログラム 図5
  • 特開-自動車及び自動車用プログラム 図6
  • 特開-自動車及び自動車用プログラム 図7
  • 特開-自動車及び自動車用プログラム 図8
  • 特開-自動車及び自動車用プログラム 図9
  • 特開-自動車及び自動車用プログラム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181515
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】自動車及び自動車用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231214BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/09 H
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023189002
(22)【出願日】2023-11-06
(62)【分割の表示】P 2022140439の分割
【原出願日】2016-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】514228217
【氏名又は名称】みこらった株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 將洋
(72)【発明者】
【氏名】佐古 曜一郎
(57)【要約】
【課題】他車影響振る舞いを実行しようとする場合において、交通事故を確実に回避して、安全に行えることを担保することができる自動車を提供する。
【解決手段】手動運転モードと、自律走行が可能な自動運転モードとを備える自動車である。送受信機能を有し、車々間で無線通信するための無線通信部と、無線通信部を通じた、他車からの車々間通信要求の受信を監視する監視手段と、監視手段で、他車からの車々間通信要求を受信した場合に、自車が自動運転モードの状態であるか否か判別して、自動運転モードの状態である場合に、前記車々間通信要求を送信してきた他車との間に通信路を生成する通信路生成手段とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動運転モードと、自律走行が可能な自動運転モードとを備える自動車であって、
送受信機能を有し、車々間で無線通信するための無線通信部と、
前記無線通信部を通じた、他車からの車々間通信要求の受信を監視する監視手段と、
前記監視手段で、前記他車からの車々間通信要求を受信した場合に、自車が前記自動運転モードの状態であるか否か判別して、前記自動運転モードの状態である場合に、前記車々間通信要求を送信してきた他車との間に通信路を生成する通信路生成手段と、
を備えることを特徴とする自動車。
【請求項2】
自車が前記手動運転モードの状態である場合には、前記通信路を生成しない
ことを特徴とする請求項1に記載の自動車。
【請求項3】
前記他車と車々間通信をしている間は、前記自動運転モードから、前記手動運転モードへの切り替えを不可とする
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車。
【請求項4】
前記通信路生成手段で生成した通信路を通じて前記他車から送られてくる、周辺の他車の振る舞いに影響を与える他車影響振る舞いを通知するための振る舞い予定情報を解析する振る舞い予定情報解析手段と、
前記振る舞い予定情報解析手段での解析結果に基づいて、前記振る舞い予定情報に対応する自車の振る舞いを決定する振る舞い決定手段と、
前記振る舞い決定手段で決定した前記自車の振る舞いの情報を含む返信情報を、前記他車に、前記通信路を通じて送る返信情報送信手段と、
を備えることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の自動車。
【請求項5】
前記振る舞い予定情報には、前記他車の現在位置情報及び前記他車影響振る舞いに関係する走行路に関する情報が含まれており、
前記振る舞い予定情報解析手段で、前記振る舞い予定情報に含まれる前記他車の現在位置情報及び前記他車影響振る舞いに関係する走行路に関する情報から、自車の走行が影響されるか否かを判断し、影響がないと判断した場合に、前記通信路生成手段で生成した前記通信路を切断する
ことを特徴とする請求項4に記載の自動車。
【請求項6】
前記振る舞い決定手段は、前記他車との間での車々間通信において、前記他車の走行速度の情報を取得し、取得した前記情報から検知される前記他車の走行速度と、自車の走行速度とに基づいて、前記自車の振る舞いを決定する
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の自動車。
【請求項7】
自車の周辺を撮影するカメラを備え、
前記振る舞い決定手段は、前記カメラの撮影画像から交通標示及び/または交通標識を認識し、その認識結果に基づいて自車の周辺における交通法規を判別し、判別した前記交通法規を考慮して前記自車の振る舞いを決定する
ことを特徴とする請求項4~請求項6のいずれかに記載の自動車。
【請求項8】
自車の周辺を撮影するカメラを備え、
前記振る舞い決定手段は、前記カメラの撮影画像から自車の周辺状況を判別し、判別した前記周辺状況を考慮して前記自車の振る舞いを決定する
ことを特徴とする請求項4~請求項7のいずれかに記載の自動車。
【請求項9】
前記振る舞い予定情報には、前記他車を特定するための情報が含まれていると共に、前記返信情報には、自車を特定させるための情報が含まれている
ことを特徴とする請求項4~請求項8のいずれかに記載の自動車。
【請求項10】
前記他車影響振る舞いは、車両が左側通行か、右側通行かに応じて、異なっている
ことを特徴とする請求項4~請求項9のいずれかに記載の自動車。
【請求項11】
前記他車影響振る舞いは、信号機の有無に基づいて設定されている
ことを特徴とする請求項4~請求項10のいずれかに記載の自動車。
【請求項12】
前記他車影響振る舞いは、車両間の優先関係に基づいて設定されている
ことを特徴とする請求項4~請求項11のいずれかに記載の自動車。
【請求項13】
自車の周辺を撮影するカメラ及び/または自車の周辺の音声を収音するマイクロフォンを備えると共に、前記カメラで撮影された自車の周辺の撮影画像及び/または前記マイクロフォンで収音された自車の周囲の音声から、緊急車両を検出する手段を備え、
前記振る舞い決定手段では、前記緊急車両を優先した自車の振る舞いをするように決定する
ことを特徴とする請求項4~請求項12のいずれかに記載の自動車。
【請求項14】
前記他車影響振る舞いの完了通知を前記他車から受信した場合には、前記通信路を切断する
ことを特徴とする請求項4~請求項13のいずれかに記載の自動車。
【請求項15】
自車が前記手動運転モードの状態である場合には、前記自動運転モードに切り替え、前記通信路生成手段で前記通信路を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動車。
【請求項16】
周辺の他車の振る舞いに影響を与える他車影響振る舞いの実行が必要な経路案内のルート上の地点に対応して、車々間通信のトリガー情報を含めた経路案内データを形成するカーナビゲーション機能部を備える
ことを特徴とする請求項1~請求項15のいずれかに記載の自動車。
【請求項17】
前記カーナビゲーション機能部による前記経路案内データを用いた経路案内の実行中に、前記トリガー情報を検知した前記ルート上の地点において、前記無線通信部を通じて、周辺の他車に車々間通信要求をする
ことを特徴とする請求項16に記載の自動車。
【請求項18】
自車の周辺を撮影するカメラを備え、
前記カメラの撮影画像から所定の状況を認識したことを車々間通信のトリガー情報として検知して、周辺の他車に車々間通信要求をする
ことを特徴とする請求項1~請求項17のいずれかに記載の自動車。
【請求項19】
前記所定の状況は、交差点進入時、高速道路進入時又は駅のロータリー進入時を含む
ことを特徴とする請求項18に記載の自動車。
【請求項20】
前記無線通信部を通じて、周辺の他車に車々間通信要求をする車々間通信要求手段を備える
ことを特徴とする請求項1~請求項19のいずれかに記載の自動車。
【請求項21】
車々間通信要求ボタンを備え、
前記車々間通信要求ボタンが操作されたときには、前記車々間通信要求手段は、前記無線通信部を通じて、周辺の他車に車々間通信要求をする
ことを特徴とする請求項20に記載の自動車。
【請求項22】
前記車々間通信要求手段は、道路上に設置されているビーコンからの電波情報を受信したことを前記車々間通信のトリガー情報として検知して、周辺の他車に車々間通信要求を
する
ことを特徴とする請求項20又は請求項21に記載の自動車。
【請求項23】
前記車々間通信要求手段は、バックライト点灯、ブレーキライト点灯、急アクセル、急ブレーキのうち少なくとも1つを前記車々間通信のトリガー情報として
検知して、周辺の他車に車々間通信要求をする
ことを特徴とする請求項20~請求項22のいずれかに記載の自動車。
【請求項24】
前記周辺の他車に前記車々間通信要求をし、前記周辺の他車から所定時間以内に応答情報を受信しなかった場合に、車々間通信可能な他車が周辺に存在しない旨のメッセージを運転者に通知する
ことを特徴とする請求項17~請求項23のいずれかに記載の自動車。
【請求項25】
前記他車からの車々間通信要求に応じて、前記他車が自律的に自車の振る舞いを実行する自動運転車であるか、あるいは自律的に自車の振る舞いを実行する自動運転モードの状態であるかの情報を含む応答情報を前記無線通信部を通じて受信する手段と、
前記受信した応答情報から、前記他車が自律的に自車の振る舞いを実行する自動運転車であるか、あるいは自律的に自車の振る舞いを実行する自動運転モードの状態であるかを判別する判別手段と、
を備え、
前記通信路生成手段は、前記判別手段の判別結果に基づいて、自律的に自車の振る舞いを実行する自動運転車であると判別した他車、あるいは自律的に自車の振る舞いを実行する自動運転モードの状態であると判別した他車との間に通信路を生成する
ことを特徴とする請求項1~請求項24のいずれかに記載の自動車。
【請求項26】
手動運転モードと、自律走行が可能な自動運転モードとを備えると共に、送受信機能を有し、車々間で無線通信するための無線通信部を備える自動車が備えるコンピュータを、
前記無線通信部を通じた、他車からの車々間通信要求の受信を監視する監視手段、
前記監視手段で、前記他車からの車々間通信要求を受信した場合に、自車が前記自動運転モードの状態であるか否か判別して、前記自動運転モードの状態である場合に、前記車々間通信要求を送信してきた他車との間に通信路を生成する通信路生成手段、
として機能させるための自動車用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車及び自動車用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転者による運転操作が無くても自律走行が可能である自動運転モードを備える自動車が登場してきている(例えば、特許文献1(特開2012-48563号公報)参照)。この種の自動車としては、手動運転モードと自動運転モードとを切り替え可能なもののほか、自動運転モードのみを備える自動運転車や、無人で自律走行することが可能な自動運転車も登場するものと考えられる。
【0003】
この種の自動車の自動運転モードによる自律走行は、現状では、安全性が容易に確保できる場所や環境でのみ認められるなど、制限が課されている場合が多いが、近い将来、公道を自由に走行することが可能になるものと推察される。
【0004】
自動運転モードを備える自動車が、公道を自由に走行することが可能になると、手動運転しかできない自動車(マニュアル仕様車)と、自動運転モードを備える自動車(便宜上、以下の説明では自動運転モードを備える自動車を自動運転車ということにする)とが、同じ道路上を同時に走行するようになる。
【0005】
マニュアル仕様車の場合には、運転者によって交通法規を厳守しなかったり、予測が不可能な振る舞いをすることがあるなどが不可避であるのが現状であるが、自動運転車による自動運転モードでは、交通法規が厳守されると共に、障害物は必ず避けて走行することが予測される。すなわち、マニュアル仕様車と、自動運転車とでは、異なる走行態様を取ることが予測される。
【0006】
したがって、周辺を走行している自動車が、マニュアル仕様車か、自動運転車かを知ることができれば、歩行者や、運転者や、自動車(自動運転車)自身が、それらの自動車の動きや振る舞いを予測して、自己の振る舞いや走行について、安全を確保したり、注意したりすることができる可能性が高まり、事故の発生を未然に防ぐなど、交通安全に役立つようになることが期待できる。つまり、走行中の自動車がマニュアル仕様車か、自動運転車かが分かれば、自分の行動や振る舞いを定めるについて、それを参考にすることができて、交通安全上、好ましい。
【0007】
そこで、例えば特許文献2(特開2015-228152号公報)には、自動車同士の間での車々間通信により、自車の動作中モードが自動運転モードか、手動運転モードかを互いに送受して、自車の周辺の他車についての動作モードを把握することができるようにしたものが提案されている。この特許文献2の技術によれば、自車の周辺の他車について払う注意を、把握した動作モードに応じて重くしたり、軽くしたりすることができて便利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-48563号公報
【特許文献2】特開2015-228152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2の技術では、走行中の自動車の動作モードを知り、当該知った動作モードを参考にして安全運転をするようにすることができるだけで、自車がこれから行おうとする振る舞いを、交通事故が生じさせることなく、安全に実行することを担保することはできなかった。特に、例えば、右折や左折、車線変更、合流など、他車の振る舞いに影響を与える他車影響振る舞いを、交通事故を確実に回避して、安全に行えることを担保することはできなかった。
【0010】
この発明は、以上の点に鑑み、他車影響振る舞いを実行しようとする場合において、交通事故を確実に回避して、安全に行えることを担保することができる自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、
手動運転モードと、自律走行が可能な自動運転モードとを備える自動車であって、
送受信機能を有し、車々間で無線通信するための無線通信部と、
前記無線通信部を通じた、他車からの車々間通信要求の受信を監視する監視手段と、
前記監視手段で、前記他車からの車々間通信要求を受信した場合に、自車が前記自動運転モードの状態であるか否か判別して、前記自動運転モードの状態である場合に、前記車々間通信要求を送信してきた他車との間に通信路を生成する通信路生成手段と、
を備えることを特徴とする自動車を提供する。
【0012】
上述の構成の請求項1の自動車においては、監視手段で、無線通信部を通じた、他車からの車々間通信要求の受信を監視する。この監視手段で、他車からの車々間通信要求を受信した場合に、自車が自動運転モードの状態であるか否か判別して、自動運転モードの状態である場合に、車々間通信要求を送信してきた他車との間に通信路を生成する。
【0013】
したがって、請求項1の自動車によれば、自動運転モードの状態でのみ、車々間通信要求をしてきた他車と通信路を生成することができる。これにより、通信路を通じて他車から、例えば、右折や左折、車線変更、合流など、他車の振る舞いに影響を与える他車影響振る舞いの通知を受信した場合においても、自動運転モードの状態での自車の振る舞いを決定することができ、交通事故を回避して、安全に他車影響振る舞いを行えることが期待できる。
【発明の効果】
【0014】
この発明による自動車によれば、自動運転モードの状態でのみ、車々間通信要求をしてきた他車と通信路を生成するので、交通事故を回避して、安全に他車影響振る舞いを行えることが期待できるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明による自動車の実施形態の電子制御回路部の構成例を示すブロック図である。
図2図1の例の自動車の電子制御回路部の要部の構成例を説明するための機能ブロック図である。
図3図1の例の自動車の電子制御回路部の処理動作例を説明するためのフローチャートを示す図である。
図4図1の例の自動車の電子制御回路部の処理動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
図5図1の例の自動車の電子制御回路部の処理動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
図6図1の例の自動車の電子制御回路部の処理動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
図7図1の例の自動車の電子制御回路部の処理動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
図8】この発明による自動車の実施形態により実行される他車影響振る舞いの一例を説明するための図である。
図9】この発明による自動車の実施形態により実行される他車影響振る舞いの他の一例を説明するための図である。
図10】この発明による自動車の実施形態により実行される他車影響振る舞いの更に他の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明による自動車の実施形態を、自律的に自車の振る舞いを実行する自動運転モードを備える自動運転車の場合として、以下に説明する。図1は、この発明による自動車の実施形態としての自動運転車1の電子制御回路部10の一例のハードウェア構成例を示す図である。なお、この実施形態の自動運転車1は、電気自動車の場合の例である。ただし、バッテリーは、図1では図示を省略した。
【0017】
また、この実施形態の自動運転車1は、自律的に自車の振る舞いを実行する自動運転モードと、手動運転モードとを備えている。手動運転モードは、自動運転車ではない通常の自動車と同様に、運転者のアクセルペダル操作やブレーキペダル操作、シフトレバー操作及びステアリング操作(ハンドル操作)に応じた走行ができるモードである。また、自動運転モードは、運転者がアクセルペダル操作やブレーキペダル操作、シフトレバー操作及びステアリング操作をしなくても、自動運転車1自身が自動的(自律的)に障害物を回避しながら進路変更をする走行モードである。
【0018】
自動運転車1の運転者は、例えば後述するタッチパネル112を通じた所定の操作により、手動運転モードで走行中の自動運転車1を自動運転モードに切り替えることができると共に、自動運転モードで走行中に、運転者がアクセルペダル操作やブレーキペダル操作、シフトレバー操作またはステアリング操作など所定の操作をすると、自動的に手動運転モードに戻るように構成されている。
【0019】
図1に示すように、電子制御回路部10は、制御部101に対して、システムバス100を通じて、無線通信部102、モータ駆動制御部103、ステアリング駆動制御部104、手動/自動運転モード切替制御部105、レーダー群106、カメラ群107、センサ群108、周囲状況把握部109、現在位置検出部110、表示部111、タッチパネル112、カーナビ機能部113、自車情報記憶部114、走行速度及び方向検出部115、時計部116、車々間通信制御処理部117、振る舞い制御部118、音声入出力部119、のそれぞれが接続されている。
【0020】
モータ駆動制御部103には、モータ駆動部121が接続されている。ステアリング駆動制御部104には、ステアリング駆動部122が接続されている。手動/自動運転モード切替制御部105には、手動運転操作検知部123が接続されている。また、カーナビ機能部113には、カーナビ用データベース124が接続されている。さらに、音声入出力部119には、マイクロフォン125と、スピーカ126とが接続されている。
【0021】
制御部101は、コンピュータを搭載して構成されていて、自動運転車1の全体を制御する。
【0022】
無線通信部102は、車々間通信を行うためのもので、通常は、受信待機モードとなっている。そして、後述するように、車々間通信制御処理部117の制御に従って、発信トリガーが発生したときには、車々間通信要求信号をブロードキャストにより送信し、その応答情報を通信相手から受けたときに、車々間通信を行うようにする動作する。また、無線通信部102は、車々間通信制御処理部117の制御に従って、受信待機モードにおいて、車々間通信要求信号の受信したときには、当該車々間通信要求信号の発信車との間に生成される通信路を通じた車々間通信を行うように動作する。
【0023】
モータ駆動制御部103は、制御部101の制御の下に、この実施形態の電気自動車で構成される自動運転車1のモータ駆動部121への駆動信号の供給を制御して、自動運転車1の走行開始、走行速度制御(ブレーキ制御及びアクセル制御を含む)、走行停止などを制御するようにする。
【0024】
ステアリング駆動制御部104は、制御部101の制御の下に、この実施形態の自動運転車1のステアリング駆動部122への駆動制御信号の供給を制御して、自動運転車1の進路変更の制御をするようにする。
【0025】
手動/自動運転モード切替制御部105は、タッチパネル112を通じた選択操作入力に応じて、自動運転車1の運転モードを、手動運転モードと、自動運転モードとのいずれかに切り替える制御を行う。手動運転操作検知部123は、運転者によるアクセルペダル操作やブレーキペダル操作、シフトレバー操作さらにはステアリング操作の操作情報を受けて、その手動運転操作情報を手動/自動運転モード切替制御部105に供給する。
【0026】
手動/自動運転モード切替制御部105は、自動運転車1が手動運転モードのときには、この手動運転操作検知部123からの手動運転操作情報を、モータ駆動制御部103、ステアリング駆動制御部104に供給して、モータ駆動部121、ステアリング駆動部122を、運転者のペダル操作やシフトレバー操作、ステアリング操作(ハンドル操作)に応じて制御する。
【0027】
また、手動/自動運転モード切替制御部105は、自動運転車1が自動運転モードのときには、後述するようにして、レーダー群106、カメラ群107、センサ群108、周囲状況把握部109の出力に基づいて制御部101で生成される自動運転操作情報を、モータ駆動制御部103、ステアリング駆動制御部104に供給して、モータ駆動部121、ステアリング駆動部122を、自動運転操作情報により駆動制御する。なお、自動運転モードにおいては、カーナビ機能部113において、運転者などにより設定された行先(目的地)に対する現在位置からの経路が探索され、その探索された経路に沿って走行するように制御される。
【0028】
なお、手動運転モードを備えずに自動運転モードのみを備える完全自動運転車の場合、手動/自動運転モード切替制御部105、手動運転操作検知部123は、もちろん備えていない。また、手動運転操作に必要なアクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリング(ハンドル)などもなくてもよい。ただし、安全確保のために、ブレーキペダル(ブレーキボタン、ブレーキに対応するタッチパネル入力や音声入力でもよい)を備え、ブレーキ操作だけは手動で対応できるようにしてもよい。
【0029】
レーダー群106は、自動運転車1の車両の周囲に存在する人や物との距離を測るためのもので、レーザー・レーダー(ライダー)やミリ波レーダーなどからなる。レーザー・レーダーは、例えば天井やバンパー付近に埋め込まれ、ミリ波レーダーは、例えば車両の前部及び後部に設けられている。レーザー・レーダーとミリ波レーダーの両方を備えてもよいし、一方のみであってもよい。また、サブミリ波レーダーやマイクロ波レーダーなど、その他のレーダーを用いてもよい。さらに、レーダーと同様の目的で音波や超音波によるソナー(図示せず)を用いることができる。
【0030】
カメラ群107は、第1の実施形態のカメラ群207に対応するもので、自動運転車1の車内を撮影する1~複数個のカメラと、自動運転車1の前方、側方、後方など、車外の周囲を撮影する1~複数個のカメラとを含む。
【0031】
センサ群108は、ドアの開閉や窓の開閉を検知する開閉検知センサ、シートベルト着用を検出するためのセンサ、運転席や助手席などの座席に乗車者が着座したことを検知する着座センサなどの他、車外の近傍の人物を検知する人感センサ(赤外線センサ)や自動運転のための補助となる情報を取得するための各種センサからなる。自動運転のための補助となる情報を取得するための各種センサとしては、例えば車両やタイヤの振動を検出するための振動センサ、タイヤの回転数を検出する回転数センサ、方位を検出するための地磁気センサ、加速度を検出するための加速度センサ、角度や角速度を検出するためのジャイロセンサ(ジャイロスコープ)、などが含まれる。また、この実施形態では、センサ群108には、右ウインカーや左ウインカー(方向指示器)やハザードランプ(非常点滅灯)等の点滅、バックライトやブレーキライト等の点灯を検知するセンサも含まれている。
【0032】
周囲状況把握部109は、レーダー群106やセンサ群108、また、カメラ群107の撮影画像を用いて、自車の周囲の移動体(人物を含む)や、道路の車線数及び自車の走行中車線、上り坂、下り坂などの周囲環境を把握するようにする。周囲状況把握部109は、例えばベイズ理論に基づいた処理を行うことで、周囲の障害物や移動体を把握するようにする。この周囲状況把握部109で把握された周囲環境、周囲の障害物や移動体の情報は、後述する車々間通信制御処理部117や振る舞い制御部118において、交通法規に則ると共に、安全を確保する振る舞いを決定するために利用される。
【0033】
また、この実施形態では、周囲状況把握部109は、カメラ群107の自車の周囲の撮影画像から、交通標示や交通標識を認識する機能を備えている。周囲状況把握部109で認識された交通標示や交通標識は、後述する振る舞い制御部118において、交通法規に則った振る舞いをするために利用される。
【0034】
現在位置検出部110は、第1の実施形態の車載装置2の現在位置検出部204に対応するもので、GPS衛星からの電波を受信して、自車の現在位置を検出する。現在位置検出部110は、GPS衛星からの電波により検出された位置の精度をさらに高めるため、GPS衛星からの電波の受信で検出された現在位置の情報のみではなく、センサ群108に含まれる1~複数個のセンサ及びレーダー群106、カメラ群107の撮影画像(ナビ機能を併用)などをも用いると共に、例えばベイズ理論に基づいた処理を行うことで、より精度の高い現在位置を検出確認するようにしている。
【0035】
自動運転車1は、自動運転モードにおいては、現在位置検出部110や周囲状況把握部109において、レーダー群106、カメラ群107、センサ群108、GPS衛星からの電波の受信で取得した位置情報などの各種情報、つまり、人間の目や耳から得る情報に対応する情報をベイズ理論などにより処理し、これに基づき、制御部101は、自車の進路変更や障害物の回避など知的な情報処理(AI(人工知能))及び制御(AI(人工知能))を行って、自動運転操作情報を生成する。そして、生成された自動運転操作情報に基づいて、モータ駆動制御部103によりモータ駆動部121が駆動され、ステアリング駆動制御部104によりステアリング駆動部122が駆動されることで、自律移動制御がなされる。したがって、この実施形態では、自律移動制御手段は、制御部101と、レーダー群106、カメラ群107、センサ群108、周囲状況把握部109、現在位置検出部110、及びモータ駆動制御部103、モータ駆動部121、ステアリング駆動制御部104、ステアリング駆動部122、更に後述するカーナビ機能部113とにより構成される。
【0036】
表示部111は、例えばLCD(Liquid Crystal Display;液晶ディスプレイ)からなる。タッチパネル112は、LCDからなる表示部111の表示画面の上に、指によるタッチ入力が可能なタッチセンサが重畳されて配設されたものである。表示部111の表示画面には、制御部101の制御に基づき、ソフトウェアボタン(キーボードの文字入力用ボタンを含む)を含む表示画像が表示される。そして、タッチパネル112は、表示画面に表示されているソフトウェアボタン上の指によるタッチを検出すると、そのタッチを制御部101に伝達する。これを受けた制御部101は、ソフトウェアボタンに対応する制御処理を実行するように構成されている。なお、ソフトウェアボタンは、別途キーボードなどを用いることで対応してもよい。
【0037】
カーナビ機能部113に接続されているカーナビ用データベース124には、国内の地図及び経路案内データが、予め格納されている。カーナビ機能部113は、カーナビ用データベース124に記憶されている地図や、経路案内データに基づいて、自動運転車1が指定された目的地まで移動するのを補助するように案内するための機能部である。カーナビ機能部113は、使用者(運転車または乗車者)により設定入力された出発地、経由地、目的地、探索条件に基づいて経路探索を行って、経路案内データを作成し、この経路案内データを用いて経路案内処理を実行する。この実施形態では、カーナビ機能部113は、手動運転モードと、自動運転モードとで、若干異なる経路案内処理をするように構成されている。
【0038】
すなわち、手動運転モードにおいては、カーナビ機能部113は、表示部111の表示画面上において、目的地までの経路(ルート)を明示的に表示する地図上に、現在位置検出部110で検出確認されている自車位置を重畳表示した画像を表示すると共に、自車の移動に伴い、地図上の自車位置(現在位置)を移動させ、かつ、ルート上の交差点や分岐点など、経路案内が必要な箇所で音声案内をするようにする。これは、通常のカーナビ機能と同様である。
【0039】
一方、自動運転モードにおいては、カーナビ機能部113は、自車の現在位置が目的地までのルート上から離れているときには、その離間方向及び距離の情報を、後述する振る舞い制御部118に通知すると共に、自車の現在位置が目的地までのルート上に在るときには、自車の移動に伴い、ルート上の交差点や分岐点などの手前で、ルートに沿った進路方向の変更指示情報を振る舞い制御部118に通知するようにする。
【0040】
振る舞い制御部118は、制御部101の制御の下において、このカーナビ機能部113から通知された情報と、現在位置検出部110の現在位置確認結果及び周囲状況把握部109の把握結果とに基づいて、自車がルート上を指示された通りの進路をとって移動するように、モータ駆動制御部103を通じてモータ駆動部121を制御すると共に、ステアリング駆動制御部104を通じてステアリング駆動部122を制御するための自動運転操作情報を生成する。したがって、自動運転モードにおけるカーナビ機能部113及び制御部101による目的地までの経路案内により、乗車者が無人の状態においても、自動運転車1は、目的地まで移動することができる。
【0041】
また、この実施形態では、カーナビ機能部113は、自動運転モードにおいては、右折時や左折時の方向指示器の点滅、また、緊急停止時などのハザードランプの点滅などをする地点及び点滅させる指示器の情報(左側の指示器か、右側の指示器や、両方か)についての指示器制御情報も、経路案内データに含めるようにしている。振る舞い制御部118は、この経路案内データに含まれる指示器制御情報に基づいて、現在位置が当該指示器制御地点になった位置で、指示された指示器の点滅制御を実行する。
【0042】
なお、指示器制御情報は、点滅などをする地点及び点滅させる指示器の情報には限られるものではなく、点灯などをする地点及び点灯させる指示器の情報であってもよい。例えば、バック走行時のバックライト(後退灯)の点灯(白色点灯)やブレーキ時のブレーキライト(制動灯)の点灯(赤色点灯)などをする地点及び点灯させる指示器の情報(バックライトか、ブレーキライトか、両方か)についての指示器制御情報も、経路案内データに含めるようにすることができる。振る舞い制御部118は、点滅制御の場合と同様、この経路案内データに含まれる指示器制御情報に基づいて、現在位置が当該指示器制御地点になった位置で、指示された指示器の点灯制御を実行する。
【0043】
さらに、この実施形態では、周辺の他車の振る舞いに影響を与える振る舞い(以下、他車影響振る舞いという)が予め定められており、カーナビ機能部113は、探索結果の経路案内データには、他車影響振る舞いの実行が必要な地点に対応して、他車影響振る舞い発生情報が含められている。この他車影響振る舞いとしては、自動運転車が右折や左折をする振る舞い、走行車線を変更する振る舞い、一般道や高速道で合流する振る舞い、渋滞中の車列に進入する振る舞い、などが、予め定められて、自動運転車1に登録されている。
【0044】
他車影響振る舞い発生情報には、発生する他車影響振る舞いが何であるかの情報と、当該他車影響振る舞いが行われる地点の情報が含まれる。この他車影響振る舞い発生情報は、他車影響振る舞いが実際に実行されるルート上の地点と同一地点またはその手前の地点に対応して挿入される。例えば、後述するように、右折や左折、合流などが他車影響振る舞いとして自動運転車1に予め設定されており、カーナビ機能部113は、他車影響振る舞い発生情報を、それらの振る舞いが必要となるルート上の交差点や、合流地点と同一地点またはその手前の地点に対応して挿入する。この他車影響振る舞い発生情報は、後述するように、車々間通信の発信トリガーの情報として用いられる。なお、他車影響振る舞い発生地点情報の挿入地点は、方向指示器やハザードランプの点滅指示地点や、バックライトやブレーキライトの点灯指示地点と同一地点でもよいし、それよりも手前の地点でもよい。
【0045】
自車情報記憶部114は、自車が自動運転モードを備えるか否かの情報を含むモード情報と、自車を他車と区別して特定させるための情報とからなる自車情報を記憶している。この自車情報は、自動運転車1の製造工場において、作業者により入力されて格納される。また、自動運転車1の販売時に、ディーラーなど販売店において、販売者により入力されて格納される。もちろん、作業者や販売者による自車情報の入力は、直接入力の場合でも、自動車会社などの所定のサーバからのダウンロード入力であってもよい。さらに、自車情報が、自動運転車1の販売後に入力される場合には、自動運転車1の所有者や使用者、あるいは管理者や管理会社などにより入力されて格納される。
【0046】
自車情報記憶部114に記憶されるモード情報としては、この例では、マニュアル仕様車か、自動運転モードを備える自動運転車か、そして、自動運転車であれば、マニュアル運転モードと自動運転モードとを切り替えられるタイプ、自動運転モードのみのタイプ、無人運転が可能なタイプなどの複数タイプの内のいずれのタイプかなどの情報を含む。なお、自動運転車に搭載され利用されるAI(Artificial Intelligence;人工知能)の開発元やバージョンなど、ソースが何であるか、レベルの高さがどれぐらいかなどが特定できる場合は、それらの情報を自車情報として含んでもよい。また、AIの場合、一般的に学習により進化し、安全性や走行性能などを高めていくため、走行時間や走行距離と、AIに依拠する安全性や走行性能などの間には高い相関があるため、走行時間や走行距離を自車情報として含めるようにしてもよい。なお、AIは、LSIなどハードウェアで搭載される場合と、ソフトウェアで搭載される場合がある。
【0047】
また、自車情報記憶部114に記憶される、自車の自動運転車1を他車と区別して特定させるための情報としては、他車と異なる情報のみならず、当該自動運転車1の仕様の情報などを含んでもよいことは言うまでもない。自車情報記憶部114に記憶される自車情報の例としては、例えば、国番号(どこの国の車か)、製造会社(自動車会社)、車種、車名、ボディーカラー、排気量、駆動方式(ガソリン車、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)、EV(Electric Vehicle)、燃料電池車など)、自動運転モードの有無、乗車可能人数、ナンバープレートのナンバー、一般車両か特殊車両(救急車、消防自動車、パトカー、タクシー、バスなど)か、その他のメーカーオプション(製造会社が自由に設定可能)などとされる。
【0048】
走行速度及び方向検出部115は、センサ群108の速度センサのセンサ出力から、あるいは、時計部116からの時刻変化の間の現在位置検出部110で検出された現在位置の位置変化から、自動運転車1の走行速度を検出し、また、センサ群108の加速度センサ、ジャイロセンサや方位センサのセンサ出力から、自動運転車1の移動速度を検出する。時計部116は、年、月、日、時、分、秒の時間情報を生成する。
【0049】
車々間通信制御処理部117は、この実施形態における無線通信部102を用いて受信待機動作、車々間通信の発信時動作及び受信時動作を制御する。この車々間通信制御処理部117については、後で詳述する。
【0050】
振る舞い制御部118は、自動運転モードにおける自車の振る舞いの実行を制御する。すなわち、この実施形態の自動運転車1は、自動運転モードにおいては、カーナビ機能部113による経路探索により決定された目的地までの経路案内情報に従って、現在位置検出部110で検出された現在位置においてするべき振る舞いを実行しながら走行する。振る舞い制御部118は、現在位置検出部110で検出された現在位置において当該自動運転車1がするべき、経路案内情報に基づいた振る舞いを決定して、その振る舞いの実行を制御する機能部である。
【0051】
そして、この実施形態の自動運転車1においては、さらに、振る舞い制御部118は、車々間通信制御処理部117において後述するようにしてその時にすべき振る舞いが決定された場合には、その決定された振る舞いを優先的に実行するように制御する。
【0052】
音声入出力部119は、マイクロフォン125で収音した周囲の音声の音声信号を取り込むと共に、運転者等に報知するための音声信号をスピーカ126に供給して放音させるようにする。この実施形態では、マイクロフォン125で収音した周囲の音声の内、例えば緊急車両(救急車、消防車、パトカー等)のサイレンの音は、車々間通信制御処理部117や振る舞い制御部118における振る舞いの決定処理の際に利用され、この場合にも緊急車両の走行を優先するように振る舞いを決定する。そして、この実施形態では、運転者に対して通知する必要なメッセージ音声信号が、制御部101、車々間通信制御処理部117などで生成され、そのメッセージ音声信号がスピーカ126を通じて放音される。
【0053】
以上のように、自動運転車1の電子制御回路部10は構成されるが、図1に示した各処理ブロックのうち、モータ駆動制御部103、ステアリング駆動制御部104、手動/自動運転モード切替制御部105、周囲状況把握部109、現在位置検出部110、カーナビ機能部113、走行速度及び方向検出部115、車々間通信制御処理部117、振る舞い制御部118、の各処理機能は、制御部101がプログラムを実行することで行うソフトウェア処理として実現することができる。
【0054】
[車々間通信制御処理部117の構成例]
図2は、車々間通信制御処理部117の処理機能を説明するための機能ブロック図である。すなわち、この実施形態では、車々間通信制御処理部117は、機能部として、通信監視部1170と、発信時処理部200と、受信時処理部300とを備えて構成される。
【0055】
通信監視部1170は、車々間通信のアプリケーションプログラムが立ち上げられているときには、他車からの車々間通信要求の受信の待ち受け監視を行うと共に、自車において、車々間通信要求の発信トリガーが発生したかどうかの監視を行う。
【0056】
車々間通信要求の発信トリガーは、自動運転車1が、周辺の他車の振る舞いに影響を与える振る舞いとして予め定められた他車影響振る舞いをすべきタイミングとなった時に発生する。この例では、前述したように、自動運転車が右折や左折をするとき、走行車線を変更するとき、一般道や高速道で合流するとき、渋滞中の車列に進入するとき、などの場合の振る舞いが、予め他車影響振る舞いとして定められており、通信監視部1170は、それらの他車影響振る舞いの発生を監視するようにする。
【0057】
この実施形態では、前述したように、カーナビ機能部113は、経路案内データを作成する際に、他車影響振る舞いがルート上に必要になる地点と同一地点またはその手前の地点に、他車影響振る舞い発生情報を挿入するようにしている。この実施形態では、通信監視部1170は、自動運転車1において、手動運転モードと自動運転モードに限らず、カーナビ機能部113による経路案内が実行されているときには、現在位置が、他車影響振る舞い発生情報が挿入されている地点になったときに、発信トリガーの発生を検出するようにする。そして、通信監視部1170は、発信トリガーが発生したことを検出したときには、発信時処理部200を起動させ、発信トリガー発生通知と、検出した他車影響振る舞いの情報を、発信時処理部200に供給するように制御する。
【0058】
また、通信監視部1170は、手動運転モードにおいて、カーナビ機能部113による経路案内が実行されていないときには、運転者による方向指示器やハザードランプの点滅開始操作(ブレーキ操作を伴ってもよい)があった時に、発信トリガーの発生を検出すると共に、点滅開始操作された方向指示器やハザードランプの点滅操作に基づいて、そのときの他車影響振る舞いを認識するようにする。
【0059】
この場合に、方向指示器のみでは、他車影響振る舞いを特定することができない場合もあるので、運転者のタッチパネルを通じた操作を伴うようにしてもよい。例えば、右側への方向指示器の右ウインカーを点滅させたときには、それは右折を意味する場合と、車線変更を意味する場合とがある。そのため、右側への方向指示器を運転車が操作したときに、表示部111の表示画面には、右折及び車線変更の操作ボタン(アイコンボタン)が表示される。また、左側への方向指示器の左ウインカーを点滅させたときには、左折を意味する場合と、左側に寄って車両を停車する場合等がある。この場合には、表示部111の表示画面に、左折及び左側に寄って車両を停車することを示す操作ボタン(アイコンボタン)が表示される。運転者は、表示部111の表示画面に表示されている操作ボタンのいずれかを操作する。この操作は、タッチパネル112で検知される。方向指示器の操作に加えたこの運転者のボタン操作により、他車影響振る舞いを確実に認識することができる。
【0060】
もちろん、カメラ群107の撮影画像から、交差点進入時や高速道路進入時など、所定の状況を認識したときに、発信トリガーの発生を検出する、あるいは発信トリガーを発生させると共に、そのときの他車影響振る舞いを認識するようにしてもよい。また、交差点に設置される信号機や道路に沿って所定の間隔で設置されるビーコンから電波情報を受信して、交差点への進入時や高速道路への進入時など、所定の状況を認識したときに、発信トリガーの発生を検出する、あるいは発信トリガーを発生させると共に、そのときの他車影響振る舞いを認識するようにしてもよい。
【0061】
そして、通信監視部1170は、発信トリガーが発生したことを検出したときには、発信時処理部200を起動させ、発信トリガー発生通知と、認識した他車影響振る舞いの情報を供給するように制御する。
【0062】
また、通信監視部1170は、他車からの車々間通信要求の受信を検知したときには、受信時処理部300を起動させ、車々間通信要求の受信通知を、受信時処理部300に供給するように制御する。
【0063】
発信時処理部200は、後述する発信時処理を実行し、終了したときには、その旨を通信監視部1170に通知する。また、受信時処理部300は、後述する受信時処理を実行し、終了したときには、その旨を通信監視部1170に通知する。通信監視部1170は、この終了の通知を受けると、他車からの車々間通信要求の受信の待ち受け監視を行うと共に、自車において、車々間通信要求の発信トリガーが発生したかどうかの監視する状態に復帰する。
【0064】
<<発信時処理部200>>
発信時処理部200は、図2に示すように、車々間通信要求部201と、通信路生成管理部202と、振る舞い予定情報生成送信部203と、返信情報解析部204と、他車振る舞い確認部205と、振る舞い決定部206とを備える。
【0065】
車々間通信要求部201は、発信トリガーの発生通知を通信監視部1170から受けると、車々間通信要求を無線通信部102を通じて送出する。
【0066】
通信路生成管理部202は、車々間通信要求に対応する他車の応答情報を監視して、応答情報を送ってきた1または複数の他車と通信路を生成する。そして、通信路生成管理部202は、その後の車々間通信を管理し、車々間通信が終了したことを検知したら、その旨を通信監視部1170に通知する。
【0067】
振る舞い予定情報生成送信部203は、発信トリガーの発生通知と共に送られてくる他車影響振る舞いの情報から、自車が行おうとする他車影響振る舞いと、当該他車影響振る舞いの実行予定の位置(地点)の情報を含む振る舞い予定情報を生成して、通信路生成管理部202で生成された通信路を通じて他車に送信する。この実施形態では、他車に送る振る舞い予定情報には、更に、現在位置検出部110で検出された自車の現在位置と、自車情報記憶部114に記憶されている自車を特定するための情報と、走行速度及び方向検出部115で検出された自車の走行速度及び走行方向の情報も含められる。
【0068】
返信情報解析部204は、振る舞い予定情報を受信した他車から送られてくる返信情報を解析して、自車の他車影響振る舞いに対する他車の振る舞いを解析する。
【0069】
他車振る舞い確認部205は、返信情報解析部204での解析結果により検出された他車の振る舞いの中から、自車の他車影響振る舞いに関与する他車の振る舞いを特定し、その他車の振る舞いにより、自車の他車影響振る舞いが安全に実行できると判断したときには、その他車の振る舞いを確認したことを示す確認通知を、当該他車に対して送信するようにする。
【0070】
振る舞い決定部206は、他車振る舞い確認部205で確認通知を送信した他車の振る舞いに対応して安全に実行するようにするための振る舞いを決定する。この振る舞い決定部206での振る舞い決定の処理に当たっては、周囲状況把握部109での把握結果も参照される。すなわち、例えば緊急車両が存在する場合には、その緊急車両を優先するようにしたり、交通標示や交通標識を検出したら、それに基づく交通規則に従った振る舞いとするように決定する。
【0071】
この振る舞い決定部206では、自車が手動運転モードと自動運転モードとでは、異なる処理を行う。すなわち、自車が手動運転モードのときには、振る舞い決定部206は、運転者に対して、例えば表示部111の表示画面を通じた表示メッセージにより、あるいは、スピーカ126を通じた音声メッセージにより、他車の振る舞いを通知するようにする振る舞いを決定し、その決定した振る舞いの情報を、振る舞い制御部118に渡して実行させるようにする。運転者は、この通知から、安全に他車影響振る舞いを実行することができると認識することができ、マニュアル操作で、当該他車影響振る舞いを実行することができる。
【0072】
また、自車が自動運転モードのときには、振る舞い決定部206は、他車振る舞い確認部205で確認通知を送信した他車の振る舞いに対応して安全に実行するようにするための自動運転についての振る舞いを決定し、その決定した振る舞いの情報を、振る舞い制御部118に渡して実行させるようにする。これにより、振る舞い制御部118が、安全に他車影響振る舞いを実行することができる。
【0073】
<<受信時処理部300>>
受信時処理部300は、図2に示すように、通信路生成管理部301と、振る舞い予定情報解析部302と、通信路維持要否判断部303と、振る舞い決定部304と、返信情報生成送信部305と、確認通知受信検出部306とを備えて構成されている。
【0074】
通信路生成管理部301は、通信監視部1170からの車々間通信要求の受信通知を受け取ると、自車が自動運転モードであるかどうか判別し、自動運転モードであれば、車々間通信要求に応答する応答情報を生成して、車々間通信要求を発信した発信車に送信し、発信車との通信路を生成するようにする。なお、制御部101は、この通信路が生成されている間は、自動運転モードから、手動運転モードへの切り替えができないように制御するようにする。
【0075】
一方、車々間通信要求の受信通知を受け取った時に自車が手動運転モードである場合には、この実施形態では、通信路生成管理部301は、車々間通信要求に応答せず、発信車との通信路は生成しない。そして、通信路生成管理部202は、通信路を生成したときには、その後の車々間通信を管理し、車々間通信が終了したことを検知したら、その旨を通信監視部1170に通知する。
【0076】
なお、車々間通信要求の受信通知を受け取った時に、自車が手動運転モードであった場合に、強制的に自動運転モードに切り替え、あるいは、運転者に、自動運転モードへ切り替えの許可を問い合わせて、運転者から許可の回答を得たときに、自動運転モードに切り替えて、自動運転モードになったら、車々間通信要求に応答する応答情報を生成して、発信車に送信し、発信車との通信路を生成するようにしてもよい。
【0077】
振る舞い予定情報解析部302は、通信路生成管理部301で生成された通信路を通じて発信車から送られてくる振る舞い予定情報を解析し、発信車が実行予定の他車影響振る舞いが何であるかと、発信車の現在位置、走行速度、走行方向、当該他車影響振る舞いが実行される地点の位置及び影響を受ける車線などを解析して検出し、その検出した解析結果を通信路維持要否判断部303に供給する。
【0078】
通信路維持要否判断部303は、振る舞い予定情報解析部302の解析結果から、発信車の他車影響振る舞いが実行されたときに、自車が実際に影響を受けるか否か判断し、影響を受けると判断したときには、生成した通信路を維持するように決定し、影響を受けないと判断したときには、生成した通信路を切断して、発信車との車々間通信をこの時点で終了する。
【0079】
振る舞い決定部304は、通信路維持要否判断部303で、生成した通信路を維持すると決定したときに、振る舞い予定情報解析部302での振る舞い予定情報の解析結果に基づいて、自車の振る舞いを決定するようにする。例えば、自車の現在位置及び走行速度、発信車の現在位置及び走行速度、そして、発信車が他車影響振る舞いを実行する地点の位置とから、発信車の他車影響振る舞いを優先させるよりも、自車は発信車が他車影響振る舞いを実行する地点を先に通過した方が良いと判断したときには、「そのまま先に通過」と決定するようにする。また、上記の情報に基づいて、発信車の他車影響振る舞いを優先させることができると判断したときには、例えば「徐行して発信車の他車影響振る舞いを優先させる」と決定するようにする。振る舞い決定部304は、決定した振る舞いの情報を、返信情報生成送信部305に供給する。
【0080】
なお、この振る舞い決定部304での振る舞い決定の処理に当たっては、周囲状況把握部109での把握結果も参照される。すなわち、例えば緊急車両が存在する場合には、その緊急車両を優先するようにしたり、交通標示や交通標識を検出したら、それに基づく交通規則に従った振る舞いとするように決定する。
【0081】
返信情報生成送信部305は、振る舞い決定部304からの決定された振る舞いの情報と、自車の位置情報及び自車を特定させるための自車情報とを含めた返信情報を生成し、その生成した返信情報を発信車に送信する。
【0082】
確認通知受信確認部306は、返信情報生成送信部305から送出された返信情報に対応して、発信車からの確認通知の受信を受けたか否か判別し、確認通知を受けたときには、発信車が自車の振る舞いを確認したと判断して、振る舞い決定部304で決定された自車の振る舞いを実行するように、当該自車の振る舞いの情報を振る舞い制御部118に供給する。
【0083】
こうして、この実施形態の自動運転車1は、他車からの車々間通信要求を受けたときには、自車が自動運転モードの場合に当該車々間通信要求を受け付けて、その車々間通信要求を発信した発信車との間で車々間通信を行って、自車の振る舞いを決定する。そして、その車々間通信で、発信車の他車影響振る舞いを優先するとして自車の振る舞いを決定したときには、車々間通信により、発信車の確認通知を受け取って、自車の振る舞いを実行するようにする。
【0084】
この場合に、発信車は、返信情報により自車の他車影響振る舞いを優先させるようにする振る舞いを送ってきた他車が自動運転モードであることから、確実にその振る舞いを実行してくれると期待することができるので、自車の他車影響振る舞いを、確実かつ安全に実行することができる。
【0085】
一方、返信情報により自車の他車影響振る舞いを優先させるようにする振る舞いを送った自動運転車1は、発信車からの自車の振る舞いについての確認通知を受け取って、自車の振る舞いを実行するようにしているので、発信車が自車の振る舞いを車々間通信により確認し、理解した上で、他車影響振る舞いを実行することが予測され、安全を確保して自車の振る舞いを実行することができる。
【0086】
[実施形態の自動運転車1での処理動作の例]
次に、以上のように構成されている実施形態の自動運転車1の車々間通信制御処理部117の処理動作について、図3図7のフローチャートを参照して説明する。なお、以下の説明は、制御部101が、車々間通信制御処理部117の処理機能をプログラムを実行することで行うソフトウェア処理として実現した場合として説明する。
【0087】
先ず、車々間通信制御処理部117の通信監視部1170での処理動作の例を、図3のフローチャートを参照しながら説明する。
【0088】
制御部101は、無線通信部102を通じた他車からの車々間通信要求の受信を待ち受け監視すると共に、自車において、発信トリガーが発生したか否かの監視を行う(ステップS101)。そして、制御部101は、発信トリガーを検出したか否か判別し(ステップS102)、発信トリガーを検出したと判別したときには、発信時処理部200を起動させ、発信トリガー発生通知と、検出した他車影響振る舞いの情報を、発信時処理部200に供給するように制御する(ステップS103)。
【0089】
そして、制御部101は、発信時処理部200での発信時処理が終了したか否か判別し(ステップS104)、終了していないと判別したときには、ステップS103に戻って、発信時処理を継続する。また、ステップS104で、発信時処理が終了したと判別したときには、制御部101は、処理をステップS101に戻し、このステップS101以降の処理を繰り返す。
【0090】
また、ステップS102で、発信トリガーを検出してはいないと判別したときには、制御部101は、車々間通信要求の受信を検出したか否か判別し(ステップS105)、車々間通信要求の受信を検出したと判別したときには、受信時処理部300を起動させ、車々間通信要求の受信通知を、受信時処理部300に供給するように制御する(ステップS106)。
【0091】
そして、制御部101は、受信時処理部300での受信時処理が終了したか否か判別し(ステップS107)、終了していないと判別したときには、ステップS106に戻って、受信時処理を継続する。また、ステップS107で、受信時処理が終了したと判別したときには、制御部101は、処理をステップS101に戻し、このステップS101以降の処理を繰り返す。
【0092】
また、ステップS105で、車々間通信要求の受信を検出してはいないと判別したときには、制御部101は、処理をステップS101に戻し、このステップS101以降の処理を繰り返す。
【0093】
次に、車々間通信制御処理部117の発信時処理部200の処理動作の例を、図4及び図5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0094】
制御部101は、発信トリガー発生通知を受信したときには、図4のフローチャートを開始させ、無線通信部102を通じて車々間通信要求を送出する(ステップS111)。そして、制御部101は、他車からの応答情報を受信を検出したか否かを監視し(ステップS112)、他車からの応答情報を、例えば所定時間以上受信しなかったと判別したときには、通信路は生成せずに、車々間通信が可能な他車が周辺に存在しない旨のメッセージを生成して、表示部111の表示画面に表示すると共に、スピーカ126を通じて放音して、運転者に通知するようにする(ステップS114)。そして、この発信時処理ルーチンを終了する。
【0095】
また、ステップS112で、他車からの応答情報の受信を検出したと判別したときには、制御部101は、当該他車との通信路を生成する(ステップS113)。この場合に、複数の他車からの応答情報を受信したときには、それら複数の他車のそれぞれとの間に通信路を生成するようにする。
【0096】
次に、制御部101は、発信トリガー発生通知と共に通信監視部1170から送られてくる他車影響振る舞いの情報と、当該他車影響振る舞いの実行予定の位置(地点)の情報と、自車の走行速度及び走行方向の情報とを含む振る舞い予定情報を生成して、生成された通信路を通じて他車に送信する(ステップS115)。
【0097】
次に、制御部101は、他車からの返信情報の受信を待ち(ステップS116)、他車からの返信情報の受信を検出したと判別したときには、受信した返信情報を解析することで、返信してきた相手車を特定し(ステップS117)、その特定した相手車との必要な更なる車々間通信を実行し、他車が決定した振る舞いの情報を取得する(ステップS118)。
【0098】
次に、制御部101は、他車が決定した振る舞いを確認したら、その確認通知を生成し、当該他車に送信する(ステップS119)。
【0099】
次に、制御部101は、自車が手動運転モードの状態か、自動運転モードの状態であるかを判別する(図5のステップS121)。このステップS121で、自車が手動運転モードの状態であると判別したときには、制御部101は、確認した他車の振る舞いの通知メッセージを生成して、表示部111の表示画面に表示すると共に、スピーカ126を通じて放音し、運転者に通知して、当該他車の振る舞いに応じた振る舞いを実行するように促す(ステップS122)。
【0100】
また、ステップS121で、自車が自動運転モードの状態であると判別したときには、制御部101は、確認した他車の振る舞いに応じて安全に自車による他車影響振る舞いを実行することができるようする自車の振る舞いを決定し、振る舞い制御部118に伝達するようにする(ステップS123)。振る舞い制御部118の機能を制御部101がプログラム処理として実行する場合には、制御部101が、決定した振る舞いを実行する。
【0101】
ステップS122及びステップS123の次には、制御部101は、自車の振る舞い(他車影響振る舞い)の実行が終了するのを待ち(ステップS124)、終了したと判別したときには、通信路を通じて他車に他車影響振る舞いの実行終了通知を送信する(ステップS125)。そして、制御部101は、他車との通信路を切断し(ステップS126)、車々間通信による振る舞い処理の終了を、表示部111の表示画面にメッセージ表示すると共に、スピーカ126を通じて音声メッセージとして放音し、運転車に通知する(ステップS127)。以上により、発信時処理ルーチンを終了する。
【0102】
次に、車々間通信制御処理部117の受信時処理部300の処理動作の例を、図6及び図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0103】
制御部101は、他車からの車々間通信要求の受信を検知したときには、受信時処理部300を起動させ、図6のフローチャートを開始させるようにする。まず、制御部101は、自車は自動運転モードしか有しない自動運転車であるか否か判別する(ステップS131)。そして、ステップS131で、自車は、自動運転モードしか有しない自動運転車であると判別したときには、制御部101は、車々間通信要求を発信してきた発信車に、車々間通信要求に対する応答情報を送り、当該発信車との間に通信路を生成する(ステップS132)。
【0104】
また、ステップS131で、自車は、自動運転モードしか有しない自動運転車ではないと判別したときには、制御部101は、自動運転モード中か否か判別する(ステップS133)。このステップS133で、自動運転モード中であると判別したときには、制御部101は、車々間通信要求を発信してきた発信車に、車々間通信要求に対する応答情報を送り、当該発信車との間に通信路を生成する(ステップS132)。
【0105】
ステップS133で、自動運転モード中ではないと判別したときには、制御部101は、自動運転モードへの切り替えが可能であるか否か判別する(ステップS134)。このステップS134では、例えば運転者に、「車々間通信要求があるので、自動運転モードに切り替えてよいか」と問い合わせて、その問い合わせに対して、自動運転モードへの切り替えの許可を回答してきたか否かを判別する。
【0106】
このステップS133で、自動運転モードへの切り替えが不可である(運転者が切替を拒否)と判別したときには、制御部101は、通信路を生成せずに(ステップS135)、この処理ルーチンを終了する。
【0107】
また、ステップS134で、自動運転モードへの切り替えが可能である(運転者が切替を許可)と判別したときには、制御部101は、自動運転モードへの切り替えを行い(ステップS136)、車々間通信要求を発信してきた発信車に、車々間通信要求に対する応答情報を送り、当該発信車との間に通信路を生成する(ステップS132)。
【0108】
ステップS132の次には、制御部101は、発信車からの振る舞い予定情報を受信して、解析する(ステップS137)。そして、制御部101は、その解析結果から、発信車からの振る舞い予定情報で示される他車影響振る舞いが、自車の振る舞いに影響するか否か判別し(ステップS138)、影響がないと判別したときには、生成した通信路を切断して(ステップS139)、この処理ルーチンを終了する。
【0109】
また、ステップS138で、発信車の他車影響振る舞いが、自車の振る舞いに影響する
と判別したときには、制御部101は、自車を特定するための自車情報と、自車の現在位置、走行速度及び走行方向などを含めた返信情報を生成して、発信車に送信する(図7のステップS141)。
【0110】
そして、制御部101は、必要があれば、発信車との間で自車の振る舞いを決定するための更なる車々間通信を行う(ステップS142)。そして、制御部101は、発信車との間での車々間通信の結果に基づいて、自車の振る舞いを決定し、その決定した自車の振る舞いを発信車に送信する(ステップS143)。
【0111】
そして、制御部101は、発信車からの確認通知の受信を待ち(ステップS144)、確認通知の受信を判別したときには、決定した自車の振る舞いを実行するように、振る舞い制御部118に伝達する(ステップS145)。
【0112】
次に、制御部101は、発信車からの他車影響振る舞いの実行終了通知の受信を待ち(ステップS146)、実行終了通知を受信したと判別したときには、発信車との間の通信路を切断する(ステップS147)。そして、制御部101は、手動運転モードへの切り替え禁止を解除し(ステップS148)、表示部111の表示画面を通じて、また、スピーカによる放音音声により、車々間通信による振る舞い処理終了を運転者に通知する(ステップS149)。そして、この受信時処理ルーチンを終了する。
【0113】
[他車影響振る舞いについて、車々間通信により実行される振る舞いの例]
以下の説明では、便宜上、全ての自動車が、実施形態の自動運転車1の車々間通信制御処理部117を有するものとして説明する。なお、当該車々間通信制御処理部117を搭載していない自動車とは、実施形態の自動運転車1は、通信ができないので、その自動車は、他車影響振る舞いに対応して振る舞いを決定してくれる対象車から排除するようにする。
【0114】
<合流>
図8は、A車が、脇道2から、片側2車線の広い道路3に、他車影響振る舞いの例である「合流」をする場合を示している。なお、このシチュエーションは、高速道路において、本線に合流のための道路2から、2車線の本線3に合流する場合と同様である。
【0115】
この図8の例においては、広い道路3の進行方向の左側車線3Lには、他車としてのB車が、右側車線3Rには、他車としてのC車が、それぞれ走行しているものとしている。
【0116】
A車は、合流地点の近傍に来ると、発信トリガーが発生して、車々間通信要求を送出する。この発信トリガーは、上述したように、運転者が方向指示器等を操作したとき、カメラ群107の撮影画像から所定の状況を認識したとき、あるいは、カーナビ機能部113における経路案内データに含まれている他車影響振る舞い発生情報に基づいて発生する。
【0117】
A車により発せられた車々間通信要求は、B車及びC車で受信され、A車と、B車及びC車のそれぞれとの間に、一旦、通信路が生成される。B車は、通信路を通じて送られてくるA車の他車影響振る舞いとしての「合流」の情報を受け取り、自車が、「合流」により影響を受ける左側車線3Lにおいて合流地点の手前を走行中であることから、A車の他車影響振る舞いである「合流」は、自車の振る舞いに影響すると判断して通信路を維持する。
【0118】
これに対してC車は、「合流」には直接的に影響の無い右側車線3Rを走行中であるので、合流地点の手前であっても、A車の他車影響振る舞いである「合流」は、自車の振る舞いに影響しないと判断して、通信路を切断する。
【0119】
そして、通信路を維持したB車は、自車の前方でのA車の合流が可能であるかどうかを、A車の現在位置、A車の走行速度、A車の走行方向、自車の現在位置、自車の走行速度、自車の走行方向、さらには自車のカメラが撮影したA車及びA車の周囲の画像などから判断し、合流が可能であると判断したときには、より安全を考慮して、例えば「速度を落として、A車の合流を優先する」という振る舞いを決定し、それをA車に通知する。
【0120】
A車は、B車からの決定された振る舞いの情報を受けて確認し、B車に確認通知を送信し、図8において、点線で示すようにして、合流の振る舞いを実行する。B車は、A車からの確認通知を受けて、A車が「合流」の振る舞いをするであろうことを予測しながら、自車が決定した振る舞いを実行する。以上により、A車は、安全に他車影響振る舞いである「合流」の振る舞いをすることができる。なお、B車の後方に後続の他車(図示せず)が存在する場合には、後述の図9に示す場合と同様に、A車は当該後続の他車ともB車と同様の通信を行い、B車によるA車の合流の許可の振る舞いに応じて、A車が合流の振る舞いを完了することで、B車と共に、当該後続の他車も車々間通信を終了することとなる。
【0121】
<渋滞中の進入>
次に、図9の例は、他車影響振る舞いの例として、A車が、脇道21から、渋滞中の車線4に進入あるいは当該渋滞中の道路4の対向車線5に進入する場合を示している。
【0122】
この場合、A車は、合流地点の近傍に来ると、発信トリガーが発生して、車々間通信要求を送出する。この発信トリガーは、上述したように、手動運転モードにおいては、運転者が方向指示器を操作したことに基づいて発生する。また、カーナビ機能が動作しているときには、経路案内データに含まれる他車影響振る舞い発生情報に基づいて発生する。ただし、この場合の他車影響振る舞いとしては、渋滞中の車列が存在していることを自動運転車1がカメラ群107の撮影画像から判断することで、自動運転車1は、「左折」は「渋滞中の車列への進入(左折)」とし、また、対向車線5への「右折」は、「渋滞中の車列を超えた進入(右折)」とする。
【0123】
A車により発せられた車々間通信要求は、渋滞中の車線4上のB車、C車、D車、E車、F車、G車及び対向車線5を走行中のH車、I車で受信され、A車との間に、一旦、通信路が生成される。その後の動作は、渋滞中の車線4に進入(左折)する場合と、渋滞中の車線4の対向車線5に進入(右折)する場合とで異なるので、分けて説明する。
【0124】
<<渋滞中の車列への進入(左折)>>
B車及びC車は、通信路を通じて送られてくるA車の他車影響振る舞いとしての「渋滞中の車列への進入」を受け取り、自車が、当該他車影響振る舞いにより影響を受ける車線4上に在るが、進入地点を既に過ぎているので、A車の他車影響振る舞いは、自車の振る舞いに影響しないと判断して、通信路を切断する。そして、D車~G車は、通信路を通じて送られてくるA車の他車影響振る舞いとしての「渋滞中の車列への進入」を受け取り、自車が、当該他車影響振る舞いにより影響を受ける車線4上に在り、しかも、進入地点の手前を走行中であることから、A車の他車影響振る舞いである「渋滞中の車列への進入」は、自車の振る舞いに影響するとして、通信路を維持する。
【0125】
また、対向車線5のH車及びI車は、A車の他車影響振る舞いとしての「渋滞中の車列への進入」は、車線4での事象であることから、A車の他車影響振る舞いは、自車の振る舞いに影響しないと判断して、通信路を切断する。
【0126】
そして、通信路を維持したD車~G車は、自車の前方でのA車の進入が可能であるかどうかを、A車の現在位置、A車の走行速度、A車の走行方向、自車の現在位置、自車の走行速度、自車の走行方向、さらには自車のカメラが撮影したA車及びA車の周囲の画像などから判断する。すると、D車は、自車の位置がA車の進入を妨げる位置となっているので、D車は、例えば「自車の進入地点通過後の、A車の進入を許可する」という振る舞いを決定し、それをA車に通知する。また、E車~G車は、自車の前においてA車の進入が可能であると判断し、例えば「自車の前での、A車の進入を許可する」という振る舞いを決定し、それをA車に通知する。
【0127】
以上の通知を受けたA車は、D車が通過した後、E車の前で、渋滞中の車列への進入が可能であると判断し、当該振る舞い動作を実行するようにする。この振る舞い動作が終了すると、A車は、D車~G車に、振る舞い終了を通知するので、A車とこれらD車~G車のそれぞれとの通信路は切断されて、車々間通信は終了となる。
【0128】
<<渋滞中の車列を超えた進入(右折)>>
車線4上のB車~G車は、この場合にも、上述の「渋滞中の車列への進入」の場合と同様の動作をする。すなわち、E車~G車は、「自車の前での、A車の進入を許可する」という振る舞いを決定し、それをA車に通知する。
【0129】
そして、この場合には、車線5上のH車は、車線5におけるA車の進入地点よりも手前の位置を走行しているので、A車の他車影響振る舞いにより自車の振る舞いが影響を受けると判断して、通信路を維持するようにする。そして、I車は、A車が進入しようとしている車線5上に存在しているが、A車の進入地点を過ぎた地点を走行中であるので、A車の他車影響振る舞いにより自車の振る舞いが影響を受けることはないと判断して、通信路を切断する。
【0130】
そして、通信路を維持したH車は、自車の前方でのA車の進入が可能であるかどうかを、A車の現在位置、A車の走行速度、A車の走行方向、自車の現在位置、自車の走行速度、自車の走行方向、さらには自車のカメラが撮影したA車及びA車の周囲の画像などから判断する。そして、H車は、自車の前においてA車の進入が可能であると判断したときには、例えば「自車の前での、A車の進入を許可する」という振る舞いを決定し、それをA車に通知する。
【0131】
このH車からの通知を、前述したE車~G車からの通知と共に受けたA車は、渋滞中の車列を横切って、車線5に進入する他車影響振る舞いを実行するようにする。この振る舞い動作が終了すると、A車は、D車~G車に加えてH車に、振る舞い終了を通知するので、A車とこれらD車~G車及びH車のそれぞれとの通信路は切断されて、車々間通信は終了となる。
【0132】
なお、H車が「自車の前での、A車の進入を許可しない」という振る舞いを決定し、それをA車に通知してきた場合は、A車は、車線4に進入して車線5の手前で待機し、H車の後続の他車(図示せず)と車々間通信を行い、当該後続の他車が「自車の前での、A車の進入を許可する」という振る舞いを決定し、それをA車に通知するまで待つ。もちろん、前述したE車~G車からの通知があっても、H車から進入の許可がない限り、E車~G車の通行の妨げになると判断し、A車は、車線4に進入せず、車線4の手前で待機していてもよい。
【0133】
<交差点での右折や左折>
次に、図10の例は、他車影響振る舞いの例として、車線6を走行中のA車が、交差点において、右折して、車線9に進入する場合を示している。
【0134】
この場合、A車は、右折地点の交差点の近傍に来ると、発信トリガーが発生して、車々間通信要求を送出する。この発信トリガーは、手動運転モードにおいては、運転者が右折の方向指示器を操作したことに基づいて発生する。また、カーナビ機能が動作しているときには、経路案内データに含まれる他車影響振る舞い発生情報に基づいて発生する。
【0135】
A車により発せられた車々間通信要求は、A車の周辺のB車、C車、D車、E車、F車で受信され、A車との間に、一旦、通信路が生成される。
【0136】
そして、A車が走行中の車線6と交差する、A車の前方の左側の道路8に存在するB車は、当該交差点の直前に居るので、A車の他車影響振る舞いである「交差点を右折」は、自車の振る舞いに影響するので、生成した通信路を維持する。また、車線6においてA車の後を走行中のC車は、A車の他車影響振る舞いである「交差点を右折」は、自車の振る舞いには、直接には影響がないと判断して、通信路を切断する。また、対向車線7において交差点の手前を走行中であるD車及びE車は、A車の他車影響振る舞いである「交差点を右折」は、自車の振る舞いに影響するので、生成した通信路を維持する。また、対向車線7において交差点を過ぎた位置を走行中であるF車は、A車の他車影響振る舞いである「交差点を右折」は、自車の振る舞いに影響しないので、生成した通信路を切断する。
【0137】
そして、通信路を維持したB車は、例えば自車が居る方の道路よりも、車線6,7の方が優先するため、一時停止の交通標示や交通標識がある場合には、A車に対して、「一時停止して、貴車の右折を優先します」という振る舞いを決定し、それをA車に通知する。
【0138】
また、通信路を維持したD車及びE車は、自車の前方でのA車の右折が可能であるかどうかを、A車の現在位置、A車の走行速度、A車の走行方向、自車の現在位置、自車の走行速度、自車の走行方向、さらには自車のカメラが撮影したA車及びA車の周囲の画像などから判断し、右折が可能であると判断したときには、より安全を考慮して、例えば「速度を落として、A車の右折を優先する」という振る舞いを決定し、それをA車に通知する。
【0139】
A車は、B車、D車及びE車からの決定された振る舞いの情報を受けて確認し、B車、D車及びE車に確認通知を送信し、図10において、点線で示すようにして、右折の振る舞いを実行する。B車、D車及びE車は、A車からの確認通知を受けて、A車が「右折」の振る舞いをするであろうことを予測しながら、自車が決定した振る舞いを実行する。以上により、A車は、安全に他車影響振る舞いである「右折」の振る舞いをすることができる。
【0140】
この右折の振る舞い動作が終了すると、A車は、B車、D車及びE車に、振る舞い終了を通知するので、A車とこれらB車、D車及びE車のそれぞれとの通信路は切断されて、車々間通信は終了となる。
【0141】
上述の右折の例では、交差点に信号機のない場合を想定しているが、信号機が設置されている場合は、当該信号機への対応が優先され、それによりA車~E車の振る舞い動作は制限されるため、右折の振る舞い動作は変わってくる場合がある。この例では、A車が走行中の車線6と交差する、A車の前方の左側の道路8に存在するB車は、当該交差点の直前に居るが、A車の他車影響振る舞いである「交差点を右折」するタイミングには、当該信号機(赤信号)により、当該交差点の直前で一時停止している。したがって、B車は自車の振る舞いに影響しないと判断し、生成した通信路を遮断する。なお、この例では、C車~F車は信号機のない場合と振る舞い動作は変わらない。
【0142】
なお、信号機の設置の有無や、信号機の示す指示内容(赤信号、青信号、黄信号、右折のみ可、左折のみ可、直進のみ可等)は、カメラ群107の撮影画像から認識することができる。また、信号機が発信する電波を受信し、信号機の設置の有無や、信号機の示す指示内容を獲得することもできる。
【0143】
以上の例では、右折の振る舞い動作を説明したが、左折の場合は、D車やE車もA車の影響を受けないので、その点、左折の振る舞い動作は変わってくる。なお、左折により進入しようとしている道路が、センターラインや中央分離帯が存在する道幅の広い道路であれば、B車はA車が進入しようとしている車線とは異なる車線に存在するので、この場合の左折は他車影響振る舞いとしなくてもよい。しかし、左折により進入しようとしている道路が、センターラインや中央分離帯が存在しない道幅の狭い道路である場合には、B車に対して、A車の左折は他車影響振る舞いとなる。
【0144】
まず、A車により発せられた車々間通信要求は、A車の周辺のB車、C車、D車、E車、F車で受信され、A車との間に、一旦、通信路が生成されるまでは、右折の場合も左折の場合も変わらない。
【0145】
そして、A車が走行中の車線6と交差する、A車の前方の左側の道路8に存在するB車は、当該交差点の直前に居るので、A車の他車影響振る舞いである「交差点を左折」は、自車の振る舞いに影響するので、生成した通信路を維持する。
【0146】
また、車線6においてA車の後を走行中のC車は、A車の他車影響振る舞いである「交差点を左折」は、自車の振る舞いには、直接には影響がないと判断して、通信路を切断する。また、対向車線7において交差点の手前を走行中であるD車及びE車は、A車の他車影響振る舞いである「交差点を左折」は、自車の振る舞いには、直接には影響がないと判断して、通信路を切断する。さらに、対向車線7において交差点を過ぎた位置を走行中であるF車は、A車の他車影響振る舞いである「交差点を左折」は、自車の振る舞いに影響しないので、生成した通信路を切断する。
【0147】
そして、通信路を維持したB車は、左折後のA車が対向車線に入ることから、A車に対して、「徐行しますので、貴車は気を付けて左折してください」という振る舞いを決定し、それをA車に通知する。
【0148】
A車は、B車からの決定された振る舞いの情報を受けて確認し、B車に確認通知を送信し、図示はしないが、左折の振る舞いを実行する。B車は、A車からの確認通知を受けて、A車が「左折」の振る舞いをするであろうことを予測しながら、自車が決定した振る舞いを実行する。以上により、A車は、安全に他車影響振る舞いである「左折」の振る舞いをすることができる。
【0149】
この左折の振る舞い動作が終了すると、A車は、B車に、振る舞い終了を通知するので、A車とB車との通信路は切断されて、車々間通信は終了となる。
【0150】
上述の左折の例では、交差点に信号機のない場合を想定しているが、信号機が設置されている場合は、当該信号機への対応が優先され、それによりA車~E車の振る舞い動作は制限されるため、左折の振る舞い動作は変わってくる場合がある。この例では、A車が走行中の車線6と交差する、A車の前方の左側の道路8に存在するB車は、当該交差点の直前に居るが、A車の他車影響振る舞いである「交差点を左折」するタイミングには、当該信号機(赤信号)により、当該交差点の直前で一時停止していなければならない。したがって、B車は自車の振る舞いに影響しないと判断し、生成した通信路を遮断する。あるいは、B車がカメラの撮影画像から自車のいる道路が道幅の狭い道路であることを認識し、A車の左折を妨害しないように左側の路肩で一時停止する振る舞いをしてもよい。なお、この例では、C車~F車は信号機のない場合と振る舞い動作は変わらない。
【0151】
なお、上述の右折と左折の例は、日本、イギリス、インドのような車両が左側通行の国の場合であるが、米国、フランス、ドイツ、イタリア、中国のような車両が右側通行の国の場合は、左折の場合に、対向車線の車に他車影響振る舞いが必要となり、右折の場合は、対向車線の車には他車影響振る舞いが必要なくなるため、振る舞い設定を変更しなければならない。
【0152】
国や右側通行・左側通行の特定は、運転者がマニュアルで設定してもよいが、次のようにして、自動運転車1自身が、右側通行か左側通行かを決定してもよい。すなわち、自動運転車1は、車両が左側通行の国と右側通行の国とを、それぞれ記憶部に記憶しておく。そして、自動運転車1は、現在位置検出部110で検出した現在位置から自車が現在走行中の国を特定し、特定した現在走行中の国により上記記憶部を参照することで、右側通行か左側通行かを決定するようにする。
【0153】
なお、自動運転車1自身が現在走行中の国を特定したり、特定した国に応じて右側通行か左側通行かを決定するのではなく、自動運転車1の現在位置検出部110で検出した現在走行中の現在位置の情報を、例えばインターネットを通じて、車両が左側通行の国と右側通行の国とを記憶する記憶部を備えるサーバに送り、当該サーバ装置から、走行中の現在位置から特定される国が、左側通行か右側通行かの情報を受信するようにしてもよい。
【0154】
[その他の実施形態又は変形例]
上述の実施形態では、受信時処理部で、自車が自動運転車あるいは自動運転モード中であるときにのみ、車々間通信要求に対して応答することで、発信車と車々間通信する他車を、自動運転車あるいは自動運転モード中である自動車に限定するようにした。
【0155】
しかし、車々間通信要求に対する応答情報に、他車が自動運転車あるいは自動運転モード中であるか否かを示す情報を含めるようにして、発信車が、その情報から、他車が自動運転車あるいは自動運転モード中であるか否かを判別し、その判別結果に基づいて、自動運転車あるいは自動運転モード中である自動車のみと通信路を生成するように構成することで、発信車と車々間通信する他車を、自動運転車あるいは自動運転モード中である自動車に限定するようにしてもよい。
【0156】
また、上述の実施形態の説明では、他車影響振る舞いは、方向指示器による指示を伴う振る舞いのみについて説明したが、例えば交通信号機が無い交差点での直進なども他車影響振る舞いとなるので、方向指示器による指示を伴わない場合もある。また、駅のロータリーなどで、車線がなく、どう動いてよいかわからない場合もある。そのような場合には、手動運転モードでは、車々間通信ボタンを操作するなどするようにしてもよい。自動運転モードにおいては、発信トリガー発生ポイントとして経路案内データに含まれる他車影響振る舞いとして、そのような他車影響振る舞いを、予め設定しておけばよい。なお、手動運転モードや自動運転モードにかかわらず、カメラ群107の撮影画像から、交差点進入時や駅のロータリー進入時を認識したときに、発信トリガーを発生し、車々間通信を開始し、そのときの他車影響振る舞いを認識するようにしてもよい。
【0157】
また、上述の実施形態では、道路交通法などの交通法規で規定されている、優先道路の存在や、道幅の広さによる優先関係、坂道の上り下りの違いによる優先関係などに基づく車両間の優先関係については説明していないが、これらの車両間の優先関係を周囲状況把握部109で把握した場合、把握した車両間の優先関係に基づいて他車影響振る舞いを決定するのはもちろんである。
【0158】
なお、交通法規や車両間の優先関係については、国によって異なっていたり、同じ国内でも州(米国)や省(中国)、都道府県(日本)など地域によって異なっていたりする場合があるが、当該場合は、自動運転車1は、現在位置検出部110で検出した現在位置から自車が現在走行中の国や州、省、都道府県など地域を特定し、特定した現在走行中の国や地域に応じた交通法規や車両間の優先関係に基づいて他車影響振る舞いを決定するようにすればよい。
【0159】
上述の実施形態で説明した例は、一例に過ぎず、様々な状況において適用できることはもちろんである。例えば、自宅などの車庫から自動車を道路に出す場合、駐車場から道路に出る場合、車々間通信による他車影響振る舞いが効果的に働く。特に車庫や駐車場からバック走行で道路に出る場合は、切返しも必要な場合があり、そのための車間距離を保つような他車影響振る舞いが必要となる。この場合、バック走行に伴うバックライト点灯により、発信トリガーを発生させ、車々間通信を開始し、そのときの他車影響振る舞いを認識するようにしてもよい。
【0160】
また、急アクセルや急ブレーキがかかった場合も、他車への危険性があるため、それらの操作をしたことを検出し、発信トリガーを発生させ、車々間通信を開始し、そのときの他車影響振る舞いを認識するようにしてもよい。なお、急ブレーキの場合は、ブレーキがかかるとともに、バックライトが点灯するため、このブレーキライトの点灯により、発信トリガーを発生させ、車々間通信を開始し、そのときの他車影響振る舞いを認識するようにしてもよい。
【0161】
なお、上述した例では、全ての自動車が、車々間通信機能を備えるものとして、動作を説明したが、車々間通信機能を備えない自動車も存在する場合があると考えられる。その場合を考慮して、他車影響振る舞いが実行されようとしている地点の近傍にいる車々間通信の機能を備える自動車は、例えばカメラで撮影した撮影画像など、自車の前後を走行中の自動車の情報を、他車影響振る舞いをしようとしている自動車に送るようにする。他車影響振る舞いをしようとしている自動車は、この情報を解析することで、他車影響振る舞いが実行されようとしている地点の近傍に居る車両の情報を取得することができて、安全に他車影響振る舞いを行うときの有益な情報とすることができる。
【0162】
また、上述の実施形態の自動運転車は、自動運転モードと、手動運転モードとを備える構成であったが、自動運転モードのみを備える自動運転車であってもよいし、無人の自動運転車であってもよい。
【0163】
なお、この発明の自動車は、四輪の自動車に限らず、自動二輪車、自動三輪車その他を含むものである。また、この発明の自動車は、普通自動車、軽自動車、トラックのみならず、バス、トラクター、ダンプカー、ショベルカー、フォークリフト、また、一人乗り自動車、原動機付自転車、電動車椅子などであってもよい。もちろん、一般の四輪の自動車、バスなどの公共機関の車両、トラックやトラクターなどの大型車両や特殊車両、自動二輪車、原動機付自転車、電動車椅子などの車両の種別によって、交通法規や車両間の優先関係は異なっているため、この発明の自動車は、当該種別に応じた交通法規や車両間の優先関係に基づいて他車影響振る舞いを決定するようにすることができる。
【符号の説明】
【0164】
1…自動運転車、101…制御部、102…無線通信部、105…手動/自動運転モード切替制御部、107…カメラ群、108…センサ群、109…周囲状況把握部、110…現在位置検出部、111…表示部、113…カーナビ機能部、114…自車情報記憶部、115…走行速度及び方向検出部、117…車々間通信制御処理部、118…振る舞い制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10