(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181524
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/08 20060101AFI20231214BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B41J2/08
B41J2/01 301
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023189089
(22)【出願日】2023-11-06
(62)【分割の表示】P 2019127987の分割
【原出願日】2019-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山川 英樹
(57)【要約】
【課題】外部へ吐出されるエアに課せられた制約条件を緩和する。
【解決手段】インクジェット記録装置Iは、ノズル12、帯電電極13および偏向電極15を内部に収容し、かつインク粒の飛翔空間Saを区画する筐体10と、偏向電極15によって偏向されたインク粒を外部に吐出するインク吐出口50b、および、エアを外部に吐出するエア吐出口50cがそれぞれ開口した吐出面50aと、飛翔空間Saとは分離されたエア供給経路S3を区画するとともに、このエア供給経路S3を介してエア吐出口50cにエアを供給するエア吐出部材50と、を備える。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク粒を吐出するノズルと、
前記ノズルから吐出されたインク粒を帯電させる帯電電極と、
前記帯電電極によって帯電されたインク粒の飛翔方向を偏向させる偏向電極と、
前記ノズル、前記帯電電極および前記偏向電極を内部に収容し、かつインク粒の飛翔空間を区画する筐体と、
前記偏向電極によって偏向されたインク粒を外部に吐出するインク吐出口、および、該インク吐出口の周りに設けられ、エアを外部に吐出するエア吐出口がそれぞれ開口した吐出面と、
前記飛翔空間とは分離されたエア供給経路を区画するとともに、該エア供給経路を介して前記エア吐出口にエアを供給するエア供給部と、を備える
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたインクジェット記録装置において、
前記エア吐出口は、複数の孔から構成され、
前記複数の孔は、前記インク吐出口を取り囲むように配置される
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたインクジェット記録装置において、
前記エア供給部は、前記吐出面と、該吐出面に対向する背面と、を有し、かつ前記筐体とは別体の部材として構成され、
前記エア供給経路は、前記背面と前記吐出面との間に形成される
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたインクジェット記録装置において、
前記筐体の一端面には、前記偏向電極によって偏向されたインク粒を通過させるインク通過孔が設けられ、
前記エア供給部は、前記インク通過孔と前記インク吐出口とが繋がるように、前記筐体の一端面に取り付けられる
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載されたインクジェット記録装置において、
前記飛翔空間は、
前記筐体の内部空間と、
前記エア供給部に設けられかつ前記インク吐出口にインク粒を供給するインク吐出経路と、によって構成され、
前記インク吐出経路を介して、前記インク通過孔および前記インク吐出口が接続されることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載されたインクジェット記録装置において、
前記筐体の内部には、前記エア供給経路に連通するエア供給管が設けられている
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載されたインクジェット記録装置において、
前記ノズル、前記帯電電極、前記偏向電極および前記筐体を有し、インク粒とされたインクを吐出する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドに接続され、前記ノズルにインクを供給するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記ノズルに供給されるインクを蓄えるインクタンクと、
前記エア供給経路にエアを供給するエアポンプと、を有する
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項8】
請求項7に記載されたインクジェット記録装置において、
前記エアポンプは、前記エア供給経路および前記飛翔空間の双方にエアを注入する
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークに印字加工を施すためのインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、インク粒(液滴)を吐出するノズル(ノズルヘッド)と、このノズルから吐出されたインク粒を帯電させる帯電電極と、この帯電電極によって帯電されたインク粒の飛翔方向を偏向させる偏向電極と、を備えたインクジェット記録装置が開示されている。
【0004】
前記特許文献1に開示されているインクジェット記録装置は、インク粒をワークの表面に着弾させるとともに、その着弾位置を偏向電極によって調整することで、所望の印字加工を実現することができる。
【0005】
ここで、前記特許文献1に係るノズル、帯電電極および偏向電極は、印字ヘッド(インクジェットヘッド)をなすカバーの内部に収容されており、このカバーが、インク粒の飛翔空間を区画するようになっている。
【0006】
このように構成した場合、ワークの表面による跳ね返り、および、ワークの帯電により生じる斥力等に起因してインク粒が印字ヘッドまで戻り、印字ヘッドの内外を汚す可能性がある。
【0007】
そこで、前記特許文献1には、カバー内に区画される飛翔空間に対し、エアを供給するためのエア供給経路を連通させることで、飛翔空間内へエアを供給することが開示されている。この場合、インク粒の吐出口を通じてエアを外部に吐出させることで、インク粒の跳ね返り等を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明者らは、エアの供給態様を適宜変更することで、そのエアを種々の用途に用いることを検討した。例えば、ワークが水分を含んでいる場合には、エアの流速を増大させて勢いよく吐出させることで、そのワークを乾かしつつ印字することができる。また、ワークが冷えていて霜が付着している場合には、エアの温度を上げて熱風を吐出させることで、その霜を取り除きつつ印字することが可能となる。
【0010】
しかしながら、前記特許文献1に記載されているように、飛翔空間内へエアを供給するように構成した場合、エアの供給態様を自由に変更できないことに本願発明者らは気付いた。
【0011】
すなわち、エアの流速を過度に強くしてしまうと、インク粒の流れを乱してしまう可能性がある。また、エアの温度を過度に高くしてしまうと、インクの粒子化に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0012】
このように、公知の構成を用いた場合は、インク粒の流れ、および、インクの粒子化を損なわない範囲内でしかエアの供給態様を変更することができず、そうした制約条件の下でエアを供給せざるを得なかった。
【0013】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外部へ吐出されるエアに課せられた制約条件を緩和することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
具体的に、本開示の第1の側面は、インクジェット記録装置に係る。このインクジェット記録装置は、インク粒を吐出するノズルと、前記ノズルから吐出されたインク粒を帯電させる帯電電極と、前記帯電電極によって帯電されたインク粒の飛翔方向を偏向させる偏向電極と、前記ノズル、前記帯電電極および前記偏向電極を内部に収容し、かつインク粒の飛翔空間を区画する筐体と、を備える。
【0015】
そして、本開示の第1の側面によれば、前記インクジェット記録装置は、前記偏向電極によって偏向されたインク粒を外部に吐出するインク吐出口、および、該インク吐出口の周りに設けられ、エアを外部に吐出するエア吐出口がそれぞれ開口した吐出面と、前記飛翔空間とは分離されたエア供給経路を区画するとともに、該エア供給経路を介して前記エア吐出口へエアを供給するエア供給部と、を備える。
【0016】
ここで、「インク吐出口の周り」の語は、インク吐出口の周囲を取り囲むような部位に限定されず、インク吐出口付近の部位全般を指す。
【0017】
また、前記エア供給部は、前記筐体と別体としてもよいし、一体としてもよい。
【0018】
この構成によれば、インク粒を外部に吐出するインク吐出口の周りには、エアを外部に吐出するエア吐出口が開口している。このエア吐出口には、エア供給経路を介してエアが供給されるようになっている。
【0019】
ここで、エア供給経路は、インク粒の飛翔空間とは分離されている。これにより、エア供給経路を介して供給されるエアは、筐体内を飛翔するインク粒とは干渉しないようになる。したがって、インク粒の流れおよび粒子化を損なうことなく、エアの供給態様を変更することが可能となる。
【0020】
このように、前記の構成によれば、印字ヘッドからエアを吐出させる場合に、そのエアに課せられた制約条件を緩和することができる。
【0021】
また、本開示の第2の側面によれば、前記エア吐出口は、複数の孔から構成され、前記複数の孔は、前記インク吐出口を取り囲むように配置される、としてもよい。
【0022】
この構成によれば、インク吐出口とエア吐出口とを近接させることができる。そのことで、インク粒の跳ね返り等を抑制する上で有利になる。
【0023】
また、本開示の第3の側面によれば、前記エア供給部は、前記吐出面と、該吐出面に対向する背面と、を有し、かつ前記筐体とは別体の部材として構成され、前記エア供給経路は、前記背面と前記吐出面との間に形成される、としてもよい。
【0024】
ここで、エア供給部は、筐体に対して直に接触するように構成してもよいし、筐体とは直に接触しないように構成してもよい。
【0025】
この構成によれば、エア供給部は、筐体に対して別体の部材によって構成される。例えば、エア遇供給経路の要否に応じてエア供給部を取り外すことで、インクジェット記録装置Iの使い勝手を向上させることができる。
【0026】
また、本開示の第4の側面によれば、前記筐体の一端面には、前記偏向電極によって偏向されたインク粒を通過させるインク通過孔が設けられ、前記エア供給部は、前記インク通過孔と前記インク吐出口とが繋がるように、前記筐体の一端面に取り付けられる、としてもよい。
【0027】
この構成によれば、エア供給部は、筐体の一端面に取り付けられることになる。これにより、エア供給部を安定して保持する上で有利になる。
【0028】
また、本開示の第5の側面によれば、前記飛翔空間は、前記筐体の内部空間と、前記エア供給部に設けられかつ前記インク吐出口にインク粒を供給するインク吐出経路と、によって構成され、前記インク吐出経路を介して、前記インク通過孔および前記インク吐出口が接続される、としてもよい。
【0029】
この構成によれば、筐体にエア吐出部材を装着したときに、筐体とエア吐出部材によってインク粒の飛翔空間を構成することができる。
【0030】
また、本開示の第6の側面によれば、前記筐体の内部には、前記エア供給経路に連通するエア供給管が設けられている、としてもよい。
【0031】
この構成によれば、筐体の内部にエア供給管を設けることで、インクジェット記録装置をよりコンパクトに構成することができる。
【0032】
また、本開示の第7の側面によれば、前記インクジェット記録装置は、前記ノズル、前記帯電電極、前記偏向電極および前記筐体を有し、インク粒とされたインクを吐出する印字ヘッドと、前記印字ヘッドに接続され、前記ノズルにインクを供給するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記ノズルに供給されるインクを蓄えるインクタンクと、前記エア供給経路にエアを注入するエアポンプと、を有する、としてもよい。
【0033】
この構成によれば、インクヘッドに接続されるコントローラからエアを供給することができる。
【0034】
また、本開示の第8の側面によれば、前記エアポンプは、前記エア供給経路および前記飛翔空間の双方にエアを注入する、としてもよい。
【0035】
この構成によれば、エア供給経路からエア吐出口を通じてエアを吐出させつつも、飛翔空間からインク吐出口を通じてエアを吐出させることも可能となる。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、前記インクジェット記録装置によれば、汚れを抑制するためのエアを吐出させる場合に、そのエアに課せられた制約条件を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、自動印字システムの全体構成を例示する図である。
【
図2A】
図2Aは、インクジェット記録装置の概略構成を例示する図である。
【
図2B】
図2Bは、印字ヘッドの概略構成を例示する図である。
【
図3】
図3は、印字ヘッドの全体構成を例示する斜視図である。
【
図4】
図4は、印字ヘッドの先端を例示する斜視図である。
【
図5】
図5は、印字ヘッドの先端を例示する分解斜視図である。
【
図6】
図6は、印字ヘッドの先端を例示する分解斜視図である。
【
図7A】
図7Aは、印字ヘッドの一断面を概略的に例示する断面図である。
【
図7B】
図7Bは、印字ヘッドの他断面を概略的に例示する断面図である。
【
図8】
図8は、印字ヘッドの一断面を部分的に例示する断面図である。
【
図9A】
図9Aは、印字ヘッドの一断面を部分的に例示する斜視図である。
【
図9B】
図9Bは、印字ヘッドの他断面を部分的に例示する斜視図である。
【
図10】
図10は、エアパージに関連した処理を例示するフローチャートである。
【
図11】
図11は、印字ヘッドの変形例を例示する斜視図である。
【
図12】
図12は、印字ヘッドの変形例における一断面を例示する図である。
【
図13】
図13は、印字ヘッドの変形例における他断面を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
【0039】
すなわち、本明細書では、インクジェット記録装置の一例として、産業用インクジェットプリンタについて説明するが、ここに開示する技術は、インクジェット記録装置および産業用インクジェットプリンタという名称に関わらず、インクジェットを用いた一般の機器に適用することができる。
【0040】
また、本明細書においては、インクジェット記録装置による印字加工について説明するが、ここでいう「印字加工」には、文字の印刷、図形のマーキング等、インクジェットを応用したあらゆる加工処理が含まれる。
【0041】
<全体構成>
図1は自動印字システムSの全体構成を例示する図である。また、
図2Aはインクジェット記録装置Iの概略構成を例示する図であり、
図2Bはインクジェット記録装置Iにおける印字ヘッド1の概略構成を例示する図である。
図1に例示する自動印字システムSは、工場等の搬送ラインLに設置されており、その搬送ラインLを流れる各ワークWに対し、順番に印字加工を施すように構成されている。なお、本開示の適用対象は、自動印字システムSには限定されない。自動以外の方法を用いた印字システムに適用することもできる。
【0042】
具体的に、自動印字システムSは、粒子状のインク(インク粒)をワークWに着弾させることで印字を行うインクジェット記録装置Iと、これに接続される操作用端末800および外部機器900と、を備えている。なお、操作用端末800および外部機器900は、必須ではない。
【0043】
詳しくは、
図1~
図2Bに例示するインクジェット記録装置Iは、インク粒をノズル12から吐出するとともに、そのインク粒をワークWに着弾させる印字ヘッド1と、この印字ヘッド1に対して制御信号、インクおよび溶剤を供給するコントローラ100と、を備えている。コントローラ100が印字ヘッド1に制御信号を供給することで、インク粒の軌跡を制御する。これにより、ワークW上でのインク粒の着弾位置が調整されて、所望の印字加工が実現されるようになっている。
【0044】
特に、本実施形態に係るインクジェット記録装置Iは、いわゆるコンティニュアス方式のインクジェットプリンタ(Continuous Ink Jet printer:CIJ)として構成されている。すなわち、インクジェット記録装置Iは、インクの揮発に起因した目詰まり(特に、
ノズル12の目詰まり)等を防止するために、印字加工を実行していないときであっても、その内部を常にインクが循環している。コンティニュアス方式を採用することで、目詰まりを招くことなく、速乾性のインクを用いることができるようになる。
【0045】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置Iは、溶剤を印字ヘッド1へ送り出すことで、ノズル12等、印字ヘッド1の各部を洗浄することができるようになっている。洗浄に用いられた溶剤は、必要に応じて回収されて、インクの濃度(粘度)を調整するために再利用することができる。
【0046】
インクおよび溶剤の循環を実現するために、印字ヘッド1は、インクまたは溶剤を吐出するノズル12に加えて、そのノズル12から吐出されたインク、または、該ノズル12から吐出された溶剤を回収するガター16を備えている。コントローラ100から印字ヘッド1へ送り込まれたインクまたは溶剤は、ノズル12から吐出されてガター16によって回収される。そうして回収されたインクまたは溶剤は、コントローラ100へと送り戻されて再利用される。こうした工程を繰り返し行うことで、インクおよび溶剤を循環させることができる。
【0047】
加えて、本実施形態に係るインクジェット記録装置Iは、その印字ヘッド1からエアを吐出させる機能を備えている。以下の記載では、同機能と、これに関連した処理と、を「エアパージ」と呼称する。このインクジェット記録装置Iは、印字加工に際してエアパージを実施することで、印字ヘッド1の汚損抑制、ワークWの乾燥、および、ワークWの霜取り等を実現することができる。
【0048】
操作用端末800は、例えば中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)
および記憶装置を有しており、コントローラ100に接続されている。この操作用端末800は、印字加工における印字条件を設定するとともに、印字加工に関連した情報をユーザに示すための端末として機能する。
【0049】
なお、本実施形態における印字条件には、印字されるべき文字列等の内容に加えて、前述のエアパージに関連した条件およびパラメータ(以下、「パージ設定」ともいう)が含まれる。
【0050】
操作用端末800により設定される印字条件は、コントローラ100に出力されて、その記憶部102に記憶される。コントローラ100の記憶部102に加えて、または、この記憶部102に代えて、操作用端末800が印字条件を記憶してもよい。
【0051】
なお、操作用端末800は、例えばコントローラ100に組み込んで一体化することができる。この場合は「操作用端末」という呼称ではなく、コントロールユニット等の呼称が用いられることになるが、少なくともこの実施形態においては、操作用端末800とコントローラ100は別体とされている。
【0052】
外部機器900は、必要に応じてコントローラ100に接続される。
図1および
図2Aに示す例では、外部機器900として、ワーク検出センサ901、搬送速度センサ902およびプログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller:PLC
)903が設けられている。
【0053】
具体的に、ワーク検出センサ901は、搬送ラインLにおけるワークWの有無を検出し、その検出結果を示す信号(検出信号)をコントローラ100へ出力する。ワーク検出センサ901から出力される検出信号は、印字加工を開始するためのトリガー(印字トリガ)として機能する。
【0054】
搬送速度センサ902は、例えばロータリエンコーダから構成されており、ワークWの搬送速度を検出することができる。搬送速度センサ902は、その検出結果を示す信号(検出信号)をコントローラ100へ出力する。コントローラ100は、搬送速度センサ902から入力された検出信号に基づいて、印字ヘッド1からインク粒を吐出するタイミング等を制御する。
【0055】
またPLC903は、
図2Aに例示するように、コントローラ100と電気的に接続されている。PLC903は、予め定めたシーケンスに従って自動印字システムSを制御するために用いられる。
【0056】
インクジェット記録装置Iには、上述した機器や装置以外にも、操作および制御を行うための装置、その他の各種処理を行うためのコンピュータ、記憶装置、周辺機器等を接続することもできる。この場合の接続は、例えば、IEEE1394、RS-232、RS-422およびUSB等のシリアル接続、またはパラレル接続としてもよい。あるいは、10BASE-T、100BASE-TX、1000BASE-T等のネットワークを介して電気的、磁気的または光学的な接続を採用することもできる。また、有線接続以外にも、IEEE802等の無線LAN、または、Bluetooth(登録商標)等の電波、赤外線、光通信等を利用した無線接続でもよい。さらに、データの交換や各種設定の保存等を行うための記憶装置に用いる記憶媒体としては、例えば、各種メモリカード、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ、ハードディスク等を利用することができる。
【0057】
以下、コントローラ100および印字ヘッド1それぞれのハード構成と、コントローラ100による印字ヘッド1の制御に係る構成と、について順番に説明をする。
【0058】
<コントローラ100>
コントローラ100は、印字ヘッド1を電気的に制御するとともに、印字用のインク、インクを希釈するための溶剤、および、ワークWの表面に吹付けるためのエアを印字ヘッド1へ供給することができる。
【0059】
具体的に、本実施形態に係るコントローラ100は、電気的な制御に関連した構成要素として、前述の印字条件を記憶する記憶部102と、コントローラ100および印字ヘッド1の各部を制御する制御部101と、ユーザによる操作を受け付けるとともに、ユーザへ情報を表示する操作表示部103と、を備えている。
【0060】
コントローラ100はまた、インク等の供給に関連した構成要素として、印字ヘッド1のノズル12にインクを供給するインク供給部104と、このノズル12およびインク供給部104に溶剤を供給する溶剤供給部105と、前述のエアパージを実施するべく、印字ヘッド1にエアを供給するエアポンプ106と、を備えている。
【0061】
(記憶部102)
記憶部102は、後述の操作表示部103、または、操作用端末800を介して設定された印字条件を記憶するとともに、外部からの制御信号に基づいて、記憶された印字条件を制御部101へと出力するように構成されている。
【0062】
具体的に、記憶部102は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等を用いて構成されており、印字条件を示す情報を一時的または継続的に記憶することができる。なお、操作用端末800をコントローラ100に組み込んだ場合には、操作用端末800が記憶部102を兼用してもよい。
【0063】
(制御部101)
制御部101は、記憶部102に記憶された印字条件に基づいて、少なくとも、コントローラ100におけるインク供給部104、溶剤供給部105およびエアポンプ106と、印字ヘッド1におけるノズル12、帯電電極13および偏向電極15と、を制御する。制御部101が各部を制御することにより、ワークWの印字加工が実施される。
【0064】
具体的に、制御部101は、CPU、メモリ、入出力バスを有しており、操作表示部103または操作用端末800を介して入力された情報を示す信号と、記憶部102から読み込んだ印字条件を示す信号と、に基づいて制御信号を生成する。制御部101は、そうして生成した制御信号をコントローラ100およびインクジェット記録装置Iの各部へと出力することにより、ワークWに対する印字加工を制御する。
【0065】
例えば制御部101は、ワークWを加工するときには、記憶部102に記憶された印字内容を読み込んで、その印字内容に基づいた制御信号を生成する。そして、制御部101は、その制御信号を帯電電極13へと出力することで、印字内容に対応した着弾位置を実現するようにインク粒を飛翔させる。
【0066】
(操作表示部103)
操作表示部103は、例えばコントローラ100を構成する筐体に設けられる(
図1を参照)。この操作表示部103は、インクジェット記録装置Iに関連した種々の情報を表示するディスプレイと、例えば、複数の押し釦からなるスイッチと、からなる。操作表示部103を操作することで、インクジェット記録装置Iの電源ON/OFF等を切替えることができる。なお、操作用端末800をコントローラ100に組み込んだ場合には、操作用端末800が操作表示部103を兼用してもよい。
【0067】
この操作表示部103は、前述の操作用端末800と同様に、印字における印字条件を設定することができる。操作表示部103により設定される印字条件は、コントローラ100に出力されて、その記憶部102に記憶される。以下の記載では、ユーザが操作表示部103を操作するケースを前提に説明するが、操作表示部103の代わりに操作用端末800を用いることもできる。
【0068】
(インク供給部104)
インク供給部104は、主たる構成要素として、補充用のインクを収容したインクカートリッジ104aと、このインクカートリッジ104aからインクが供給されるメインタンク104bと、を有している。インクカートリッジ104a、メインタンク104bおよび印字ヘッド1は、インク流通経路104cを介して流体的に接続されている。
【0069】
このうち、インクカートリッジ104aは、コントローラ100に対して着脱自在に構成されており、これを付け替えることで、メインタンク104bにインクを補充することができる。
【0070】
このように、本実施形態に係るインクジェット記録装置Iは、いわゆる“カートリッジ式”のインクジェットプリンタとして構成されているが、この構成には限定されない。例えば、手動で開閉可能なタンクを設けるとともに、そのタンクに対してインクを補充するように構成してもよい。
【0071】
メインタンク104bは、溶剤によって濃度(粘度)調整されたインクを収容するように構成されている。こうした構成を実現するために、インクカートリッジ104aからメインタンク104bへ至る経路には、溶剤用の経路が接続されている。本実施形態に係る
メインタンク104bは、ノズル12へ供給されるインク液を蓄える容器であり、「インクタンク」の例示である。
【0072】
また、インク流通経路104cは、印字ヘッド1にインクを供給するための経路であり、例えば、ノズル12にインクを送り込むための経路と、ガター16からインクを送り戻すための経路と、を有している。前者の経路は、インクカートリッジ104aと、メインタンク104bと、ノズル12とを接続している。後者の経路は、ガター16と、メインタンク104bとを接続している。これらの経路によって、印字ヘッド1とコントローラ100との間でインクを循環させることができる。
【0073】
図示は省略したが、インク流通経路104cには、例えば、複数の電磁弁と、複数のポンプと、が設けられている。このうち、各電磁弁は、制御部101から出力された制御信号を受けて開閉し、インクの流れを制御することができる。一方、各ポンプは、制御部101から出力された制御信号を受けてインクを圧送し、電磁弁と同様に、インクの流れを制御することができる。
【0074】
(溶剤供給部105)
溶剤供給部105は、主たる構成要素として、補充用の溶剤を収容した溶剤カートリッジ105aと、洗浄に用いられた溶剤を蓄えるコンディショニングタンク105bと、を有している。溶剤カートリッジ105a、コンディショニングタンク105bおよび印字ヘッド1は、溶剤流通経路105cを介して流体的に接続されている。
【0075】
このうち、溶剤カートリッジ105aは、コントローラ100に対して着脱自在に構成されている。この溶剤カートリッジ105aを付け替えることで、コントローラ100に溶剤を補充することができる。溶剤カートリッジ105aの代わりに溶剤タンクを設けてもよい。
【0076】
コンディショニングタンク105bは、洗浄に用いられた溶剤を収容するように構成されている。前述のように、ノズル12から吐出された溶剤は、インクと同様にガター16によって回収される。そのため、ガター16からインクを送り戻すための経路は、溶剤を送り戻すための経路を兼用している。この経路は中途の部位で分岐していて、分岐したうちの一方は前述のメインタンク104bに接続されている。そして、分岐したうちの他方がコンディショニングタンク105bに接続されている。
【0077】
また、溶剤流通経路105cは、印字ヘッド1およびメインタンク104b等に溶剤を供給するための経路であり、例えば、ノズル12に溶剤を送り込むための経路と、ガター16から溶剤を送り戻すための経路と、を有している。前者の経路は、溶剤カートリッジ105aとノズル12とを接続している。後者の経路は、前述のように、インクを送り戻すための経路を兼ねている。これらの経路によって、印字ヘッド1とコントローラ100との間で溶剤を循環させることができる。
【0078】
図示は省略したが、溶剤流通経路105cには、例えば、複数の電磁弁と、複数のポンプと、が設けられている。このうち、各電磁弁は、制御部101から出力された制御信号を受けて開閉し、溶剤の流れを制御することができる。一方、各ポンプは、制御部101から出力された制御信号を受けて溶剤を圧送し、電磁弁と同様に、溶剤の流れを制御することができる。
【0079】
なお、溶剤流通経路105c、および、前述のインク流通経路104cという分類は、説明を簡潔にするためになされた便宜上の分類に過ぎない。溶剤流通経路105cおよびインク流通経路104cは、相互に接続されていたり、一方が他方を兼ねていたりするた
め、実質的に不可分となっている。
【0080】
(エアポンプ106)
エアポンプ106は、制御部101からの制御信号を受けてエアを圧送するように構成されている。エアポンプ106によって圧送されたエアは、エアチューブ106cを通じて印字ヘッド1へと供給されてエアパージに用いられる。
【0081】
また、本実施形態に係るエアチューブ106cは、中途の部位で分岐していて、一方は筐体10の内部空間としてのインク用空間S1に連通している一方、他方は後述のエア供給管19に接続されている(
図2Bを参照)。後述のように、筐体10は、ノズル12等を内部に収容するための部材である。
【0082】
なお、「筐体10内のインク用空間S1に連通している」の語は、広義に解釈され得る。すなわち、
図2Aに例示するように、インク用空間S1と直接的に連通させてもよいし、溶剤流通経路105c等、他の経路を経由させて間接的に連通させてもよい。
【0083】
また、
図2Aにおいては、コントローラ100の一要素としてエアポンプ106を例示したが、この構成には限定されない。エアポンプ106は、コントローラ100に内蔵されてもよいし、コントローラ100とは独立した外部機器として設けてもよい。またそもそも、エアポンプ106は必須ではない。例えば、工場等に設置されたエア設備とエアチューブ106cとを接続することで、いわゆる工場エアを利用することもできる。
【0084】
また、エアチューブ106cを分岐させる構成も必須ではない。例えば、インク用空間S1に通じるエアチューブと、エア供給管19に接続されるエアチューブと、を別々に設けてもよい。この場合、各エアチューブに専用のエアポンプを接続してもよい。あるいは、一方のエアチューブにはエアポンプを接続し、他方のエアチューブには工場エアを供給してもよい。
【0085】
(他の構成要素)
コントローラ100には、制御信号を送受するための電気配線と、インクを送受するためのチューブ(具体的には、インク流通経路104cを区画するチューブ)と、溶剤を送受するためのチューブ(具体的には、溶剤流通経路105cを区画するチューブ)と、エアを供給するためのエアチューブ106cと、が束になって被覆された接続ケーブル107が設けられている。この接続ケーブル107は可撓性を有しており、印字ヘッド1の上端部に接続されている(
図1および
図3を参照)。コントローラ100と印字ヘッド1は、この接続ケーブル107を介して電気的にかつ流体的に接続されている。
【0086】
<印字ヘッド1>
印字ヘッド1は、コントローラ100から供給される制御信号、インクおよび溶剤に基づいて、濃度調整されたインクを粒子状のインク粒として吐出する。印字ヘッド1は、そうして吐出されたインク粒の飛翔方向を偏向せしめるとともに、偏向されたインク粒をワークWの表面に着弾させることで、そのワークWに対して印字加工を実行することができる。
【0087】
具体的に、本実施形態に係る印字ヘッド1は、主たる構成要素として、インクを加振する加振器11と、加振器11により加振されたインクまたは溶剤を吐出するノズル12と、ノズル12から吐出された粒子状のインクを帯電させる帯電電極13と、インクの帯電状態を監視する帯電検出センサ14と、帯電電極13により帯電されたインクの飛翔方向を偏向させる偏向電極15と、偏向電極15により非偏向とされたインク、または、ノズル12を通過した溶剤(具体的には、ノズル12から吐出された溶剤)を回収するガター
16と、を備えている。
【0088】
図2Bに例示するように、印字ヘッド1は、加振器11、ノズル12、帯電電極13、帯電検出センサ14、偏向電極15およびガター16を内部に収容し、かつ、インク粒の飛翔空間Saを区画する筐体10を備えている。この印字ヘッド1は、偏向電極15によって偏向されたインク粒を、飛翔空間Saを介して筐体10の外部に吐出することができる。
【0089】
なお、インク粒の飛翔空間Saは、筐体10内に設けたインク用空間S1と、後述のエア吐出部材50に設けたインク吐出経路S2と、によって区画されている。前述の加振器11、ノズル12、帯電電極13、帯電検出センサ14および偏向電極15は、前者のインク用空間S1にレイアウトされている。
【0090】
以下、印字ヘッド1をなす各部について、順番に説明をする。なお、以下の記載において「上下方向」とは、鉛直方向に沿った方向を指す。例えば、
図2Bの紙面上方が「上方向」に相当し、同図の紙面下方が「下方向」に相当する。他の図においても、これに対応する方向を「上下方向」という。
【0091】
(加振器11)
図2Bに例示するように、加振器11は、インク用空間S1の上端付近に配置されている。本実施形態に係る加振器11には、インクに上下振動を付与(加振)するためのデバイス(例えばピエゾ素子)が内蔵されている。この加振器11は、接続ケーブル107を介してインクが供給されるように構成されており、そうして供給されたインクを加振することができる。加振器11によって加振されたインクは、ノズル12へと供給される。
【0092】
なお、図示は省略したが、本実施形態に係る加振器11は接地されている。
【0093】
(ノズル12)
図2Bに例示するように、ノズル12は、加振器11の下端部に接続されており、その開口端(インクの噴射口)を下方に向けた姿勢で配置されている。ノズル12の開口端から、加振器11によって加振されたインクを吐出することができる。このノズル12には、例えば立下時に印字ヘッド1内部の圧力を抜くためのリターン経路(不図示)が接続されている。また、不図示の吸引経路を通じて、ノズル12から溶剤を出すこともできる。
【0094】
ここで、加振器11によって加振されずにノズル12から吐出されたインクは、軸状のいわゆる“インク軸”となって流れる。一方、加振されたインクは、ノズル12から吐出された直後に粒子化されて、いわゆる“インク粒”となる。ノズル12から吐出されたインクは、帯電電極13を通過する。
【0095】
なお、印字ヘッド1を洗浄すべく供給された溶剤は、加振器11とノズル12を順番に通過して、ノズル12から吐出される。そうして吐出される溶剤は、軸状に流れて、帯電電極13を通過する。
【0096】
(帯電電極13)
図2Bに例示するように、帯電電極13は、左右一対の金属板によって構成されており、ノズル12の下方に配置されている。ここで、一対の金属板は、それぞれの長手方向を上下方向に沿わせた姿勢で、かつ互いに向い合うような姿勢で固定されている。ノズル12から吐出されたインクは、一対の金属板の間を通過することになる。
【0097】
本実施形態に係る帯電電極13には、少なくとも印字動作を実行するときに電位(正電
位)が印加される。これにより、加振器11と帯電電極13との間に電位差を生じさせ、帯電電極13を通過するインク粒を帯電させることが可能となる。各インク粒を帯電させるために、本実施形態に係る帯電電極13は、ノズル12から吐出されたインクが粒子化するブレークポイント付近に配置される。
【0098】
詳しくは、帯電電極13には、コントローラ100によって制御可能なパルス電位が印加される。ここで、帯電電極13に対して相対的に高い電圧を印加した場合は、それよりも低い電圧を印加した場合に比して、各インク粒の帯電量(負の電荷の大きさ)が大きくなる。各インク粒は、その帯電量が大きい場合には、それが小さい場合に比して、偏向電極15によって大きく偏向される。コントローラ100がパルス電位の大きさを調整することで、インク粒の偏向量を制御することができる。帯電電極13によって帯電されたインク粒は、帯電検出センサ14の側方を通過して偏向電極15へ至る。
【0099】
また、ノズル12から吐出される溶剤は、帯電されることなく、帯電検出センサ14の側方を通過して偏向電極15へ至る。
【0100】
(帯電検出センサ14)
図2Bに例示するように、帯電検出センサ14は、帯電電極13の下方に配置されている。詳しくは、帯電検出センサ14は、帯電電極13を構成する金属板(
図2Bに示す例では、紙面右側の金属板)の直下方にレイアウトされており、インク粒が飛翔する際の軌跡と交わらないように配置されている。このような配置を採ることで、インク粒と帯電検出センサ14との衝突を避けることが可能となる。
【0101】
また、本実施形態に係る帯電検出センサ14は、筐体10の内部に設けた回路基板17(
図7Aを参照)に接続されている。帯電検出センサ14は、その側方を通過するインク粒の帯電状態を検出することができる。帯電検出センサ14による検出結果は、検出信号として制御部101に出力される。この検出信号に基づいて、制御部101は、各インク粒が適切に帯電しているか否かを判定することができる。
【0102】
(偏向電極15)
図2Bに例示するように、偏向電極15は、左右一対の金属板(いわゆる「対向電極」)によって構成されており、帯電電極13および帯電検出センサ14の下方に配置されている。ここで、一対の金属板は、それぞれの長手方向を略上下方向に沿わせた姿勢で、かつ互いに向い合うような姿勢で固定されている。帯電電極13を通過したインク粒は、偏向電極15をなす一対の金属板の間を通過することになる。
【0103】
偏向電極15には、コントローラ100によって制御可能な電圧が印加される。これにより、偏向電極15をなす金属板の間には電位差が生じることになる。この電位差によってインク粒の飛翔方向を偏向させることができる。インク粒の飛翔方向は、一対の金属板の並び方向に沿って偏向され得る。
【0104】
すなわち、帯電電極13および偏向電極15それぞれに印加される電圧を介して、インク粒の軌跡を制御することができる。そうして制御されるインク粒には、偏向電極15により偏向されたものと、非偏向とされたものと、が含まれる。このうち、前者のインク粒がワークWの印字に関与する。このインク粒は、筐体10の下面に設けた吐出口10bから吐出されて、ワークWに着弾する。
【0105】
一方、偏向電極15により非偏向とされたインク粒は、ワークWの印字に関与しない。こうしたインク粒、または、そもそも粒子化されていない軸状のインクは、
図2Bにおいて鎖線で例示したように、ガター16の中に到達する。同様に、印字ヘッド1におけるノ
ズル12等の洗浄に用いられて偏向電極15を通過した溶剤もまた、ガター16の中に至る。
【0106】
(ガター16)
図2Bに例示するように、ガター16は、その開口端を上方に向けた曲管によって構成されており、偏向電極15の下方に配置されている。本実施形態に係るガター16は、ワークWの印字に関与しないインクと、ノズル12を通過した溶剤(具体的には、ノズル12から吐出された溶剤)と、を回収することができる。
【0107】
詳しくは、本実施形態においては、ガター16の開口端と、ノズル12の開口端と、が互いに向い合うように配置されている。このように配置することで、ノズル12の開口端から鉛直方向に沿って流れた液体を、ガター16の開口端から受け入れることが可能になる。
【0108】
ガター16によって回収されたインクまたは溶剤は、インク流通経路104c、溶剤流通経路105c等を通じてコントローラ100に送り戻されて、メインタンク104bまたはコンディショニングタンク105bに蓄えられるようになっている。
【0109】
(印字ヘッド1の主要動作)
ここまでに説明したように、ワークWに印字加工を実行する場合、加振器11によって加振されたインクがノズル12から吐出される。このインクは、コントローラ100のインク供給部104から適宜供給されるようになっている。ノズル12から吐出されたインクは、その吐出直後に粒子化し、帯電電極13によって帯電される。帯電電極13によって帯電されたインク粒は、帯電検出センサ14によって帯電状態が検出された上で、偏向電極15を通過する。
【0110】
そして、偏向電極15によって飛翔方向が偏向されたインク粒は、飛翔空間Saとしてのインク用空間S1およびインク吐出経路S2を順番に通過して、印字ヘッド1の外部に吐出される(
図2B、
図9Aおよび
図9Bの矢印F1を参照)。印字ヘッド1から吐出されたインク粒は、ワークWの表面上に着弾する。ここで、インク粒の着弾位置は、各インク粒の帯電量と、偏向電極15への印加電圧を介して制御される。
【0111】
また、前述のように、本実施形態に係るインクジェット記録装置Iは、コンティニュアス方式のインクジェットプリンタとして構成されているため、印字加工を実行しないときであっても、ノズル12からインクが吐出され続けるようになっている。このときに吐出されるインクは、偏向電極15によって偏向されない(換言すれば、「非偏向」とされる)。非偏向とされたインクは、印字加工に関与することなく、ガター16により回収されて装置内部を循環し、再利用される。
【0112】
また、印字ヘッド1を洗浄する場合は、溶剤がノズル12から吐出される。この溶剤は、コントローラ100の溶剤供給部105から適宜供給されるようになっている。ノズル12から吐出された溶剤は、粒子化、帯電、偏向等されることなく、ガター16により回収されて再利用される。
【0113】
なお、ワークWに印字加工を実行する場合は、ノズル12からインクが吐出されるのに加えて、エアポンプ106によってエアが吐出される(エアパージ)。エアを供給するためのエアチューブ106cは、前述のように、筐体10内のインク用空間S1に連通する一方と、エア供給管19に接続される他方と、に分岐している。
【0114】
このエアチューブ106cは、印字ヘッド1からエアを吐出せしめるために用いられる
。前述のように分岐させた一方は、エアによってインク用空間S1の内部を乾燥させたり、このインク用空間S1、ひいてはインク粒の飛翔空間Saを介してエアを吐出させたりすることができる(
図2Bの矢印F2を参照)。
【0115】
一方、前述のように分岐させた他方は、エア供給管19およびエア供給経路S3を介してエアを吐出させることができる。具体的に、エアチューブ106cとエア供給管19との接続部の近傍には、電磁弁18が収容されている。本実施形態に係る電磁弁18は、制御部101と電気的に接続されており、制御部101から出力される制御信号を受けて開閉する。電磁弁18を適宜開閉することで、エア供給管19におけるエアの流れを制御して、エア供給経路S3にエアを送り込むことが可能となる。
【0116】
図2B等に例示するように、エア供給経路S3は、インク粒の飛翔空間Saとは分離されている。したがって、エア供給経路S3を介して外部に吐出されるエアは、インク粒の粒子化および流れに影響を与えることなく、印字ヘッド1から吐出される(
図2Bおよび
図8の矢印F3を参照)。
【0117】
ここで、本実施形態に係るエア供給経路S3は、エア供給部としてのエア吐出部材50によって区画されている。以下、このエア吐出部材50について詳述すべく、同部材に関連した構成から順番に説明をする。
【0118】
<エア吐出部材50>
図3は印字ヘッド1の全体構成を例示する斜視図であり、
図4は印字ヘッド1の先端を例示する斜視図である。また、
図5および
図6は印字ヘッド1の先端を例示する分解斜視図であり、
図7Aおよび
図7Bは、それぞれ、印字ヘッド1の一断面および他断面を概略的に例示する断面図である。
【0119】
また、
図8は印字ヘッド1の一断面を部分的に例示する断面図であり、
図9Aは印字ヘッド1の一断面を部分的に例示する斜視図であり、
図9Bは印字ヘッド1の他断面を部分的に例示する斜視図である。
【0120】
ここで、「印字ヘッド1の一断面」とは、
図7A等に例示するように、エア供給管19を縦断する断面を指す。また、「印字ヘッド1の他断面」とは、
図7B等に例示するように、インク吐出経路S2を縦断する断面を指す。
【0121】
図3に例示するように、筐体10は、紙面上下方向に延びる略直方状の外形を有している。以下の記載では、筐体10の長手方向を単に「上下方向」と呼称する一方、この上下方向に直交する2方向を、それぞれ「前後方向」および「左右方向」と呼称する。他の図においても、これらに対応する方向を、それぞれ、「上下方向」、「前後方向」、および「左右方向」と呼称する。
【0122】
ここで、「上」とは
図3の紙面上側を指し、「下」とは紙面下側を指す。同様に、「前」とは
図3の紙面手前側(具体的には、左手前側)を指し、「後」とは紙面奥側(具体的には、右奥側)を指し、「左」とは紙面左側(具体的には、左下側)を指し、「右」とは紙面右側「具体的には、右上側」を指す。他の図においても、これらに対応するものを、それぞれ、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」および「右」という。
【0123】
また、
図7A等に例示するように、筐体10の内部空間は、ノズル12、帯電電極13および偏向電極15等を収容したインク用空間S1と、回路基板17をはじめとする電子部品を収容した回路用空間S4と、に2分されている。具体的に、筐体10の内部には、左右方向および上下方向に沿って延びる仕切板10dが設けられている。この仕切板10
dより前側のスペースがインク用空間S1を構成し、仕切板10dより後側のスペースが回路用空間S4を構成している。
【0124】
前述のように、インク用空間S1には、上方から順に、加振器11と、ノズル12と、帯電電極13と、帯電検出センサ14と、偏向電極15と、ガター16とが、配置されている。このうち帯電検出センサ14は、回路用空間S4に配置した回路基板17から延びており、仕切板10dを貫いてインク用空間S1内に露出している。
【0125】
また、回路用空間S4には、前方から順に、回路基板17と、エア供給管19と、が配置されている。回路基板17は、薄板状の外形を有しており、仕切板10dに沿わせるような姿勢で固定されている。回路基板17の前面には帯電検出センサ14が接続されている。帯電検出センサ14による検出結果は、この回路基板17を介して制御部101に送信される。
【0126】
またエア供給管19は、接続ケーブル107を構成するエアチューブ106cに接続されており、筐体10の後面に沿って上下に延びている。エア供給管19の上端部にエアチューブ106cが接続されており、下方に向かってエアを送り出すことができる。エア供給管19の下端部は、筐体10の下面10aに開口したエア通過孔10cに繋がっている。このエア通過孔10cは、エア供給管19を通じて供給されるエアを筐体10から吐出させることができる。
【0127】
なお、エア供給管19とエアチューブ106cを一体としてもよい。その場合は、エアチューブ106cがエア供給管19として機能することになる。
【0128】
一方、
図3に例示するように、筐体10の前面には、着脱可能なカバー部材10fが設けられている。カバー部材10fは、他の部材とともにインク用空間S1を区画している。このカバー部材10fは、例えばノズル12等のメンテナンス(特に、手作業でのメンテナンス)に際して取り外されるようになっている。カバー部材10fを取り外すことで、インク用空間S1に対して外部からアクセス可能になる。
【0129】
図3に例示するように、印字ヘッド1の上端には、前述した接続ケーブル107の一端が繋がっている。一方、印字ヘッド1の下面は、インクおよびエアを吐出するための吐出面50aとして機能する。
【0130】
図2B、
図3および
図4に例示するように、吐出面50aには、偏向電極15によって偏向されたインク粒を外部に吐出するインク吐出口50bと、このインク吐出口50bの周りに設けられ、エアを外部に吐出するエア吐出口50cと、がそれぞれ開口している。
【0131】
このうち、インク吐出口50bは、左右方向に沿って延びる長円状の開口部として形成されている。インク吐出口50bの長手方向(つまり、左右方向)は、偏向電極15をなす金属板の並び方向と略一致する。つまり、インク吐出口50bは、インク粒が偏向される方向に沿って延びている。
【0132】
また
図7Bに例示するように、インク吐出口50bは、インク用空間S1の直下方に配置されている。すなわち、
図4および
図5に例示するように、インク吐出口50bは、前後方向においては前側に配置されることになる。
【0133】
一方、エア吐出口50cは、互いに同径とされた複数の孔(特に貫通孔)から構成されている。
図4から見て取れるように、それら複数の孔は、少なくともインク吐出口50bを取り囲むように、等間隔で並んでいる。
【0134】
特に、本実施形態に係るエア吐出口50cは、吐出面50aのうち、インク吐出口50bが開口した部位と、ボルト孔52を設けた部位と、を除いた全域にわたって開口している。
【0135】
また、エア吐出口50cを構成する各孔は、例えば
図8、
図9Aおよび
図9Bに例示するように、吐出面50aを面直に貫くように延びている。このように構成すると、エア吐出口50cから吐出されるエアの流れ方向を、直下方へと指向させることができる(
図2Bの矢印F3も参照)。
【0136】
ここで、本実施形態に係る吐出面50aは、ノズル12および回路基板17等を収容した筐体10とは別体のエア吐出部材50によって構成されている。このエア吐出部材50は、インク粒の飛翔空間Saとは分離されたエア供給経路S3を区画するとともに、そのエア供給経路S3を介してエア吐出口50cにエアを供給するように構成されている。このエア吐出口50cを通じて、印字ヘッド1の外部へとエアを吐出させることが可能になる。なお、エア吐出部材50は「エア供給部」の例示である。
【0137】
具体的に、エア吐出部材50は、矩形薄板状の外形を有する中空の部材であり、前述の吐出面50aと、これに対向する背面50dと、を有している。
図4~
図5に例示するように、吐出面50aおよび背面50dの前後方向における寸法は、それぞれ、筐体10の下面10aの前後方向における寸法と略一致している。同様に、吐出面50aおよび背面50dの左右向における寸法は、それぞれ、筐体10の下面10aの左右方向における寸法と略一致している。
【0138】
エア吐出部材50における背面50dには、エア供給管19を接続可能としたエア導入口50fが開口している。エア供給経路S3は、エア吐出部材50の内部に区画されている。詳しくは、本実施形態に係るエア供給経路S3は、エア吐出部材50の背面50dと吐出面50aとの間に形成されており、エア導入口50fとエア吐出口50cとを連通させてなる。
【0139】
また
図6および
図7Aに例示するように、エア導入口50fは、回路用空間S4の直下方に配置されている。すなわち、
図6に例示するように、エア導入口50fは、前後方向においては後側(さらに詳しくは、インク導入口50eおよびボルト孔52の後側)に配置されることになる。
【0140】
同様に、エア吐出部材50における背面50dには、インク用空間S1と、インク吐出経路S2と、を連通させるためのインク導入口50eが開口している。インク吐出経路S2は、エア供給経路S3から分離された状態で、エア吐出部材50の内部に区画されている。詳しくは、本実施形態に係るインク吐出経路S2は、エア吐出部材50の背面50dと吐出面50aとの間に形成されており、インク導入口50eとインク吐出口50bとを連通させてなる。
【0141】
図2Bにおいて概略的に例示したように、エア供給経路S3は、インク用空間S1およびインク吐出経路S2からなる飛翔空間Saとは繋がっておらず、相互に分離されるようになっている(
図9B等も参照)。
【0142】
また、エア吐出部材50は、同部材を厚み方向に貫くボルト孔52、52を有している。各ボルト孔52は、左右方向に並んだ一対の貫通孔として構成されており、それぞれ、エア吐出部材50における吐出面50aおよび背面50dに開口している。
図6および
図9B等に示すように、各ボルト孔52は、前後方向においては後側(本実施形態では、イ
ンク導入口50eおよびインク吐出口50bの後方、かつエア導入口50fの前方)に配置されている。
【0143】
このように配置することで、ボルト孔52と、インク吐出口50bと、を離間させることができる。そのことで、インク吐出口50bの周りに、より多くのエア吐出口50cを設けることが可能になる。
【0144】
本実施形態に係るエア吐出部材50は、既に説明したように筐体10とは別体である。このエア吐出部材50は、筐体10に対して着脱可能に構成されている。エア吐出部材50の装着に際しては、エア吐出部材50の背面50dが、筐体10の一端面(具体的には、筐体10の下面10a)に取り付けられるようになっている。エア吐出部材50を装着することで、その吐出面50aを、印字ヘッド1全体の下面と見なすことができるようになる。
【0145】
エア吐出部材50を着脱させるべく、筐体10の下面10aには左右一対のボルト挿入部10eが設けられている。各ボルト挿入部10eは、筐体10の下面10aに開口した穴として設けられており、それぞれ、前述のボルト孔52に対応した位置に設けられている。具体的に、各ボルト挿入部10eは、インク通過孔10bに比して、エア通過孔10cに近接している(
図5を参照)。そのようなレイアウトを採用することで、本実施形態に係るボルト挿入部10eは、いずれも、インク用空間S1ではなく、回路用空間S4に配置されるようになっている(
図7Bを参照)。
【0146】
したがって、筐体10の下面10aと、エア吐出部材50の背面50dと、を互いに接触させることで、一方のボルト孔52と、それに対応するボルト挿入部10eと、を重ね合せることができる。そのように重ね合せた状態で、ボルト孔52およびボルト挿入部10eにボルト51を挿入して締結することで、筐体10にエア吐出部材50を装着することができる。
【0147】
図2B等に例示するように、筐体10にエア吐出部材50を装着した状態では、インク用空間S1と、インク吐出経路S2と、が連通することになる。これを実現するために、筐体10の下面10aには、偏向電極15によって偏向されたインク粒を通過させるインク通過孔10bが開口している(
図5も参照)。
【0148】
インク通過孔10bは、筐体10の下面10aを貫通しており、左右方向に沿って延びる長円状の貫通孔として形成されている。
図7B等に例示するように、インク通過孔10bは、インク用空間S1に連通している。またインク吐出口50bと同様に、インク通過孔10bは、インク粒が偏向される方向に沿って延びている。
【0149】
本実施形態に係るエア吐出部材50は、インク通過孔10bとインク吐出口50bとが繋がるように、筐体10の下面10aに取り付けられる。具体的に、筐体10の下面10aにエア吐出部材50を装着することで、インク用空間S1に通じるインク通過孔10bと、インク吐出経路S2に通じるインク導入口50eと、を繋げることができる。これにより、インク通過孔10bからインク吐出口50bまで繋がることとなり、インク用空間S1とインク吐出経路S2とが連通する。前述の飛翔空間Saは、このようにして連通させたインク用空間S1とインク吐出経路S2とにより構成される。
図2B、
図9Aおよび
図9Bにおける矢印F1に例示するように、筐体10内を飛翔したインクは、インク吐出口50bから吐出される。
【0150】
また、
図2B等に例示するように、筐体10にエア吐出部材50を装着した状態では、エア供給管19と、エア供給経路S3と、が接続されることになる。これを実現するため
に、筐体10の下面10aには、前述のエア通過孔10cが開口している(
図5も参照)。既に説明したように、エア通過孔10cは、エア供給管19の下端部と繋がっている。
【0151】
本実施形態に係るエア吐出部材50は、エア通過孔10cとエア吐出口50cとが繋がるように、筐体10の下面10aに取り付けられる。具体的に、筐体10の下面10aにエア吐出部材50を装着することで、エア供給管19に通じるエア通過孔10cと、エア供給経路S3に通じるエア導入口50fと、を繋げることができる。これにより、エア通過孔10cからエア吐出口50cまで繋がることとなり、エア供給管19とエア供給経路S3とが連通する。
図2Bおよび
図8における矢印F3に例示するように、エア供給管19から供給されたエアは、エア吐出口50cから吐出される。
【0152】
エア供給管19とエア供給経路S3とを連通させることで、このエア供給経路S3を利用したエアパージを実施できるようになる。本実施形態では、コントローラ100を構成する制御部101が、エアポンプ106、電磁弁18等を介してエアパージを実行するようになっている。
【0153】
エアパージの実行タイミングは、ワークWの種別および加工環境等に応じて、適宜、変更可能である。以下、エアパージの実行タイミングについて、
図10を用いて説明する。
【0154】
<エアパージの実行タイミングについて>
図10は、エアパージに関連した処理を例示するフローチャートである。
【0155】
まず、ステップS1において、制御部101が印字条件を読み込む。ステップS1で読み込まれる印字条件には、前述のように、エアパージに関連したパージ設定が含まれている。
【0156】
パージ設定には、エア供給経路S3を介して吐出されるエアの供給態様を示すパラメータ(具体的には、エアの流速および温度の目標値を示すパラメータ)と、エアパージの実行タイミングを示す条件と、が含まれている。
【0157】
このうち、エアパージの実行タイミングは、
図10におけるステップS2と、ステップS4と、ステップS6と、に例示されるように、少なくとも3通りの選択肢から選ばれるようになっている。
【0158】
すなわち、ステップS1から続くステップS2において、制御部101は、エアパージを常時実行するか否かを判定する。この判定がYESの場合はステップS3へ進み、制御部101は、電磁弁18を常時開放するように、この電磁弁18に制御信号を出力する。これにより、電磁弁18が継続的に開放された状態で、エア供給経路S3にエアが供給される。そうして供給されたエアは、エア吐出口50cから継続的に吐出される。電磁弁18を継続的に開放したことで、エアを吐出させ続けることができ、エアパージが常時実行されるようになる。
【0159】
一方、ステップS3の判定がNOの場合はステップS4へ進み、制御部101は、印字トリガ毎にエアパージを実行するか否かを判定する。この判定がYESの場合はステップS5へ進み、制御部101は、印字トリガに応じて電磁弁18に制御信号を出力する。具体的に、制御部101は、該制御部101に印字トリガが入力されたとき、換言すれば、ワーク検出センサ901によってワークWが検出されたときに、電磁弁18を開放させてエアパージを実行する。
【0160】
また、ステップS4の判定がNOの場合はステップS6へ進み、制御部101は、外部
入力に同期してエアパージを実行するか否かを判定する。この判定がYESの場合はステップS7へ進み、制御部101は、外部入力に応じて電磁弁18に制御信号を出力する。具体的に、制御部101は、PLC903から信号が入力されているときには、電磁弁18を開放してエアパージを実行する一方、PLC903からの信号が途絶えたときには、電磁弁18を開放してエアパージを中断する。このような構成は、エアの節約、ひいては加工費用の抑制に有効である。
【0161】
そして、ステップS6判定もNOの場合はステップS8へ進む。この場合、制御部101は、エアパージを実行せずにリターンする。
【0162】
なお、ステップS3、ステップS5およびステップS7におけるエアの供給態様は、前述のパージ設定に基づいて制御される。例えば、エアの流速は、エアポンプ106および電磁弁18によって制御される。
【0163】
<エア供給経路S3を用いたエアパージについて>
本実施形態によれば、インク粒を外部に吐出するインク吐出口50bの周りには、エアを外部に吐出するエア吐出口50cが開口している。このエア吐出口50cには、エア供給経路S3を介してエアが供給されるようになっている。
【0164】
ここで、エア供給経路S3は、
図7Aおよび
図7B等に例示するように、インク粒の飛翔空間Saとは分離されている。これにより、エア供給経路S3を介して供給されるエアは、筐体10内を飛翔するインク粒とは干渉しないようになる。したがって、インク粒の流れおよび粒子化を損なうことなく、エアの供給態様を変更することが可能となる。
【0165】
このように、本実施形態によれば、印字ヘッド1からエアを吐出させる場合に、そのエアに課せられた制約条件を緩和することができる。
【0166】
また、
図4に例示するように、エア吐出口50cは、インク吐出口50bを取り囲むように配置されている。このように配置することで、インク吐出口50bとエア吐出口50cとを近接させることができる。そのことで、インク粒の跳ね返り等に起因した、印字ヘッド1の汚損を抑制する上で有利になる。
【0167】
ここで、
図5に例示するように、ボルト51、ボルト孔52およびボルト挿入部10eは、いずれも、印字ヘッド1を所定方向(前後方向)に2分したときの一側(後側)に配置されている。一方、インク通過孔10b、インク導入口50eおよびインク吐出口50bは、いずれも、印字ヘッド1を所定方向(前後方向)に2分したときの他側(前側)に配置されている。
【0168】
このように配置することで、インク吐出口50bと、ボルト51およびボルト孔52と、を離間させることができ、インク吐出口50b周辺のスペースが確保される。これにより、インク吐出口50bの近傍にエア吐出口50cを設けることができ、これらの開口を近接させることが可能になる。そのことで、インク粒の跳ね返り等に起因した、印字ヘッド1の汚損を抑制する上で一層有利になる。
【0169】
また、
図5に例示するように、エア供給部としてのエア吐出部材50は、筐体10に対して別体のエア吐出部材50によって構成される。例えば、エア供給経路S3の要否に応じてエア吐出部材50を取り外すことで、インクジェット記録装置Iの使い勝手を向上させることができる。
【0170】
また、
図5に例示するように、エア吐出部材50は、筐体10の下面10aに取り付け
られることになる。これにより、エア吐出部材50を安定して保持する上で有利になる。
【0171】
また、
図7Aに例示するように、筐体10の内部にエア供給管19を設けることで、インクジェット記録装置Iをよりコンパクトに構成することができる。
【0172】
また
図7A~
図7Bに例示するように、筐体10の内部には、少なくともノズル12、帯電電極13および偏向電極15を収容する第1の内部空間(インク用空間S1)と、少なくとも回路基板17を収容する第2の内部空間(回路用空間S4)と、が区画されており、エア供給管19は、回路用空間S4に設けられている。
【0173】
このように、インク用空間S1ではなく、回路用空間S4にエア供給管19を設けることで、エア供給管19内で生じる脈動に起因した、インクの流れおよび粒子化への影響を抑制することができる。
【0174】
また、本実施形態に係るエアポンプ106は、
図2Bに例示するように、エア供給経路S3および飛翔空間Sa(具体的には、インク用空間S1)の双方にエアを注入するようになっている。
【0175】
これによれば、エア供給経路S3からエア吐出口50cを通じてエアを吐出させつつも、飛翔空間Saからインク吐出口50bを通じてエアを吐出させることも可能となる。
【0176】
<印字ヘッド1の変形例>
前記実施形態では、筐体10の内部にエア供給管19を配置するように構成されていたが、この構成には限定されない。例えば、筐体10の外部にエア供給管19を配置してもよい。後者の配置について、
図11~
図13を用いて説明をする。
【0177】
具体的に、
図11は印字ヘッド1の変形例を例示する斜視図であり、
図12は印字ヘッド1の変形例における一断面を例示する図である。
図13は印字ヘッド1の変形例における他断面を例示する図である。
【0178】
以下の説明においては、印字ヘッド1の変形例を単に「印字ヘッド」と呼称するとともに、これに符号「1’」を付して説明をする。他の構成要素についても同様である。
【0179】
図11に例示するように、印字ヘッド1’における筐体10’の下面には、変形例に係るエア吐出部材50’が取り付けられている。このエア吐出部材50’の下面は、前記実施形態と同様に、吐出面50a’として機能する。
【0180】
具体的に、
図12~
図13に例示するように、吐出面50a’には、インク粒を外部に吐出するインク吐出口50b’と、そのインク吐出口50b’の周りに設けられ、エアを外部に吐出するエア吐出口50c’と、がそれぞれ開口している。
【0181】
ここで、インク吐出口50b’は、前記実施形態と同様に構成されており、
図13に例示するように、筐体10’の下面に開口したインク通過孔10b’と連通している。エア吐出口50c’も、前記実施形態と同様に構成されている。
【0182】
しかし、この変形例に係るエア供給管19’は、
図11~
図13等に例示するように、筐体10’の外部に配置されている。具体的に、変形例に係るエア供給管19’は、印字ヘッド1’の後面に沿って上下方向に延びている。
【0183】
そして、エア供給管19’の上端部は、工場等のエア設備、および、エアポンプ等に接
続されている一方、エア供給管19’の下端部は、エア吐出部材50’の一側面(具体的には、後側の側面)から突出させた連結部53’に接続されている。この連結部53’を介して、エア供給管19’からエア吐出口50c’にエアを供給することができるようになっている。
【0184】
<その他の実施形態>
前記実施形態では、電磁弁18の開閉動作を通じてエアの流れを制御する構成について例示したが、この構成には限定されない。例えば、電磁弁18を用いることなく、エアポンプ106の圧送動作を通じてエアの流れを制御してもよい。この場合、電磁弁18は不要となる。
【0185】
また前記実施形態では、エア供給経路S3ばかりでなく、飛翔空間Saにもエアを注入するように構成されていたが、この構成には限定されない。飛翔空間Saへのエアの注入は、省略することができる。
【0186】
また前記実施形態では、エア吐出口50cを構成する各孔は、吐出面50aを面直に貫くように延びていたが、この構成には限定されない。例えば、インクの流れ方向から遠ざけるように、吐出面50aに対して斜め方向に延ばしてもよい。また、エア吐出口50cを斜め方向に延ばす代わりに、筐体10の下面10aに対して、吐出面50aを斜めに傾斜させてもよい。また、斜め方向に限らず、例えば、前後左右方向にエアを吐出させてもよい。直下方へとエアを吐出させる構成と、斜め方向、および、前後左右方向にエアを吐出させる構成と、を組み合わせてもよい。このように構成すると、エア吐出口50cから吐出されるエアは、ワークW上でのインク粒の着弾位置から離れた位置に吹付けられるようになる。また、前後左右方向にエアを吐出させることで、ワークWからゴミ等を遠ざけることができるようになる。
【0187】
また前記実施形態では、吐出面50aの前後左右方向における寸法は、筐体10の下面10aの前後左右方向における寸法と略一致していたが、この構成には限定されない。例えば、吐出面50aを、搬送ラインLにおけるワークWの流れ方向に沿って延ばしてもよい。このように構成すると、ワークWにインク粒が着弾するよりも早いタイミングで、ワークWにエアを吹付けることができるようになる。
【0188】
また前記実施形態では、筐体10の下面10aと、エア吐出部材50の背面50dと、を互いに接触させるように構成されていたが、この構成には限定されない。例えば、筐体10の下面10aと、エア吐出部材50の背面50dと、を相互に離間させつつも、例えば、別体のアタッチメントを用いて筐体10にエア吐出部材50を装着することもできる。
【0189】
またそもそも、筐体10とエア吐出部材50とを別体にする構成は、必須ではない。例えば、筐体10の下端部の形状に工夫を凝らすことで、その下端部にエア供給経路S3を設けることもできる。この場合、筐体10の下面10aが吐出面50aとして機能するとともに、筐体10の下端部がエア供給部として機能することになる。
【符号の説明】
【0190】
S 自動印字システム
1 印字ヘッド
10 筐体
10a 筐体の下面(筐体の一端面)
10b インク通過孔
12 ノズル
13 帯電電極
15 偏向電極
19 エア供給管
50 エア吐出部材(エア供給部)
50a 吐出面
50b インク吐出口
50c エア吐出口
50d 背面
100 コントローラ
104 インク供給部
104b メインタンク(インクタンク)
105 溶剤供給部
106 エアポンプ
Sa 飛翔空間
S1 インク用空間(筐体の内部空間)
S2 インク吐出経路
S3 エア供給経路
【手続補正書】
【提出日】2023-12-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク粒を吐出するノズルと、
前記ノズルから吐出されたインク粒を帯電させる帯電電極と、
前記帯電電極によって帯電されたインク粒の帯電状態を監視する帯電検出センサと、
前記帯電電極によって帯電されたインク粒の飛翔方向を偏向させる偏向電極と、
前記偏向電極によって非偏向とされたインク粒を回収するガターと、
前記ノズル、前記帯電電極、前記帯電検出センサ、前記偏向電極および前記ガターがこの順番で長手方向に並べて配置され、該長手方向に延びる筐体と、
前記筐体に対して着脱可能に構成され、
前記筐体に取り付けられることによって、前記偏向電極により偏向されたインク粒が通過する長円状のインク通過孔を形成するとともにインク粒の飛翔空間を区画する一方、
前記筐体から取り外されることによって、前記飛翔空間に対して外部からアクセス可能にするカバー部材と、
前記カバー部材によって形成される前記インク通過孔につながる長円状のインク吐出口、および、該インク吐出口の周りに設けられ、エアを外部に吐出するエア吐出口がそれぞれ開口した吐出面と、
前記飛翔空間とは分離されたエア供給経路を区画するとともに、該エア供給経路を介して前記エア吐出口にエアを供給するエア供給部と、を備える
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたインクジェット記録装置において、
前記飛翔空間は、
前記筐体に前記カバー部材を取り付けることによって形成され、かつ、前記ノズル、前記帯電電極および前記偏向電極を内部に収容する内部空間と、
前記エア供給部に設けられ、前記インク吐出口にインク粒を供給するインク吐出経路と、によって構成され、
前記筐体に前記カバー部材を取り付けることによって形成される前記インク通過孔を介して、前記内部空間と前記インク吐出経路とが連通する
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたインクジェット記録装置において、
前記内部空間に配置され、前記長手方向に沿って延びかつ外部からのエアを前記エア供給部に送り込むエア供給管を備える
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたインクジェット記録装置において、
前記内部空間を、前記ノズル、前記帯電電極および前記偏向電極を内部に収容するインク用空間と、前記帯電検出センサが接続された回路基板および前記エア供給管を内部に収容する回路用空間と、に二分する仕切り板をさらに備え、
前記エア供給部は、前記エア供給管と繋がるエア導入口を前記回路用空間の先方に形成するとともに、該エア導入口及び前記エア供給経路を介して、前記インク用空間の先方に形成された前記エア吐出口にエアを供給する
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載されたインクジェット記録装置において、
前記エア供給部は、前記筐体の先端に着脱可能に配置されるとともに一面に前記吐出面を有しかつ前記長手方向と直交する方向に延びるエア吐出部材である
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項1に記載されたインクジェット記録装置において、
前記筐体の内部に配置され、前記長手方向に沿って延びかつ外部からのエアを前記エア供給部に送り込むエア供給管を備える
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
請求項1に記載されたインクジェット記録装置において、
前記筐体の外部に配置され、前記長手方向に沿って延びかつ外部からのエアを前記エア供給部に送り込むエア供給管を備える
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載されたインクジェット記録装置において、
前記エア供給部は、一面に前記吐出面を有し、かつ、前記長手方向と直交する方向に延びるエア吐出部材から構成され、
前記エア吐出部材には、前記筐体の先端に前記エア吐出部材を装着することで前記エア供給管と前記エア供給経路を繋げるためのエア導入口が形成されている
ことを特徴とするインクジェット記録装置。