(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181577
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】足場構造
(51)【国際特許分類】
E02D 29/12 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
E02D29/12 Z
E02D29/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094785
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】591084654
【氏名又は名称】エバタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】須藤 塁己
(72)【発明者】
【氏名】村上 浩
(72)【発明者】
【氏名】張替 英樹
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147BA00
2D147BA07
(57)【要約】
【課題】マンホール内で補修工事等を行う際の安全性を高めると共に、口径の小さいマンホール等にも容易に敷設することのできる足場構造を提供する。
【解決手段】平面視で円形の円柱状空間を形成する壁面から、鉛直方向に延びる中心軸に向かって水平方向に突出するフランジ部44の上面に、3カ所以上で当接するように載置され、折り畳み可能な受枠1と、受枠に載置される足場板とを備える足場構造。受枠を正方形のフレーム状に形成することができ、足場板を上面視で円形のグレーチング足場板21とし、半円形に折り畳み可能としてもよく、折り畳み可能な平板状の足場板51、52を用いることもできる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で円形の円柱状空間を形成する壁面から、鉛直方向に延びる中心軸に向かって水平方向に突出するフランジ部の上面に、3カ所以上で当接するように載置され、折り畳み可能な受枠と、
該受枠に載置される足場板とを備えることを特徴とする足場構造。
【請求項2】
前記受枠は、正方形のフレーム状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の足場構造。
【請求項3】
前記足場板は、上面視で円形のグレーチング足場板であって、半円形に折り畳み可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の足場構造。
【請求項4】
前記足場板は、折り畳み可能な平板状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の足場構造。
【請求項5】
前記平面視で円形の円柱状空間を形成する壁面は、下水管路網に設置されているコンクリート製の既設マンホール内に設置された治具組立体の壁面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の足場構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道施設等に用いられるマンホールの再構築工事等に用いる足場構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下水管路網に設置されているコンクリート製の既設マンホールは、硫化水素等に起因する腐食や経年劣化によりマンホールの内面に腐食部分が生じ、これを補修せずに放置すると、周囲からの土圧によって腐食部分に亀裂が生じ、この亀裂が漏水事故や崩壊事故の引き金となるおそれがある。
【0003】
そこで、本出願人は、非開削で上記補修工事等を行うため、弾性を有する合成樹脂材料を主成分とする外板部を内枠部の外面に取り付けて治具を構成し、この治具を複数組み合わせて筒状にすることで、機械的強度に優れ、軽量で、製造コストを低く抑えた下水道施設の再構築工事用治具組立体を提供した(特許文献1参照)。
【0004】
上記特許文献1に記載の治具組立体を用いて下水道施設の再構築工事等を行う際に、深さ1.8m以上の高所作業では、落下防止措置を講じたり、足場を設けて作業を行う必要がある。マンホール用の簡易足場としては、特許文献2等に記載のようなステップに固定したり、吊り下げ式のものが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-133175号公報
【特許文献2】特開2009-270317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の簡易足場では、足場面積が狭く安定性に欠けることから、マンホール内で補修工事等を行う際の安全性の低下が懸念される。また、口径の小さいマンホール等では、足場をマンホール内に持ち込んだり、構築するのが容易ではないという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、マンホール内で補修工事等を行う際の安全性を高めると共に、口径の小さいマンホール等にも容易に敷設することのできる足場構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は足場構造であって、平面視で円形の円柱状空間を形成する壁面から、鉛直方向に延びる中心軸に向かって水平方向に突出するフランジ部の上面に、3カ所以上で当接するように載置され、折り畳み可能な受枠と、該受枠に載置される足場板とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、円柱状空間の内部の水平面全体を塞ぐように足場を形成することができるため、円柱状空間内で補修工事等を行う際の安全性を高めることができる。また、受枠を折り畳み可能に構成したため、口径の小さいマンホール等にも容易に敷設することができ、取り扱いが容易で保管にも便利である。
【0010】
上記足場構造において、前記受枠を正方形のフレーム状に形成することができる。また、前記足場板を上面視で円形のグレーチング足場板とし、半円形に折り畳み可能としてもよく、折り畳み可能な平板状の足場板を用いることもできる。
【0011】
さらに、前記平面視で円形の円柱状空間を形成する壁面は、下水管路網に設置されているコンクリート製の既設マンホール内に設置された治具組立体の壁面であってもよく、本発明に係る足場構造を用いて効率よく既設マンホール内で補修工事等を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、マンホール内で補修工事等を行う際の安全性を高めると共に、口径の小さいマンホール等にも容易に敷設することのできる足場構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る足場構造を構成する受枠を示す概略図であって、(a)は折り畳んだ状態を示す平面図、(b)は一段広げた状態を示す正面図、(c)は(b)の平面図、(d)は全開した状態を示す平面図である。
【
図2】本発明に係る足場構造を構成するグレーチング足場を示す概略図であって、(a)は半分に折り畳んだ状態を示す平面図、(b)は(a)のD-D線断面図、(c)全開した状態を示す平面図、(d)は(c)のE-E線断面図である。
【
図3】
図1に示す受枠をマンホールに設置する要領を説明するための断面正面図、(b)は一部破断斜視図である。
【
図4】
図2のグレーチング足場を
図1の受枠に載置した状態を示す図であって、(a)は上面図、(b)はマンホール内に設置した状態を示す断面正面図である。
【
図5】本発明に係る足場構造の第2の実施形態を示す図であって、(a)は足場板を
図1の受枠に載置した状態を示す上面図、(b)はマンホール内に設置した状態を示す断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る足場構造を構成する受枠1を示し、
図1(a)の折り畳んだ状態では、2本の枠部材2、3の一方の枠部材2が第1連結部4に固定され、他方の枠部材3が第1連結部4に固定された軸5に回動可能に連結されている。また、2本の枠部材2、3の下方(裏側)にも、2本の枠部材12、13の一方の枠部材12が第2連結部14に固定され、他方の枠部材13が第2連結部14に固定された軸15に回動可能に連結されている。
【0016】
枠部材2、3、12、13の第1連結部4や第2連結部14に連結されていない側の一端には、各々連結部材6、7、16、17が固着され、以下に詳述するように、連結部材6、16はヒンジによって互いに回動可能であり、連結部材7、17もヒンジによって互いに回動可能に構成される。
【0017】
図1(b)、(c)は、
図1(a)の状態から枠部材2、12を矢印A方向に、枠部材3、13を矢印B方向に回転させた(広げた)状態を示す。枠部材3、13は、各々軸5、15を介して第1連結部4、第2連結部14に対して回動可能であるが、ストッパ(不図示)によって
図1(c)の状態からさらに広がることはなく、枠部材3、13は枠部材2、12に対して90°開いた状態となる。
【0018】
次に、
図1(b)、(c)の状態から、枠部材12、13を固定した状態で、枠部材2、3を矢印C方向、すなわち、
図1(c)の状態から枠部材2、3を紙面から上に離れる方向に持ち上げた後、紙面に向かって落とすように180°回転させると、
図1(d)の全開状態となる。
【0019】
図1(d)の状態では、連結部材6、16及び連結部材7、17が各々ヒンジ8、9で連結され、連結部材6、7、16、17の裏面が同一平面内に位置する状態で維持され、これらの裏面と第1連結部4及び第2連結部14の裏面も同一平面内に位置する状態で維持され、上面視で正方形のフレーム状の受枠1が形成される。
【0020】
次に、本発明に係る足場構造を構成するグレーチング足場21について
図2を参照しながら説明する。
【0021】
図2(a)、(b)に示すように、グレーチング足場21は、半円形状のグレーチング足場板22、23と、足場板22の表面に2本のボルト27及び2本のボルト28で固定された2枚の支持板24、25と、足場板23の表面に2本のボルト(
図2(a)、(b)には不図示、
図2(c)のボルト29に相当)で固定された1枚の支持板26とで構成され、2枚のグレーチング足場板22、23は、ヒンジ30で互いに回動可能に構成される。尚、
図2(b)、(d)では上記ボルトの記載を省略している。
【0022】
図2(a)、(b)の状態で足場板22を固定し、足場板23を矢印F方向に180°回転させると、
図2(c)、(d)のようになり、この状態では、足場板22と足場板23の表面が同一平面上に位置し、支持板24~26が足場板22と足場板23の間に介在するため、足場板22と足場板23をさらに回動させることができない。そこで、後述するように、
図2(c)、(d)の状態のグレーチング足場21を上記受枠1に載置することで足場として使用することができる。
【0023】
次に、上記受枠1及びグレーチング足場21のマンホールへの設置例について説明する。
【0024】
図3に例示するマンホール41は、複数のコンクリートブロックからなる組立式であって、内部には治具組立体43が設置されている。治具組立体43は、マンホール41の再構築工事等に用いるものであり、樹脂や金属等で全体的に円筒状に形成され、内壁からはフランジ部44が鉛直方向の中心軸に向かって水平方向に突出している。
【0025】
まず、マンホール41の開口部42から折り畳んだ状態(
図1(a)の状態)の受枠1を挿入し、マンホール41の内部で
図1に示した要領で広げ、4つのコーナー部をフランジ部44の上面に載置する。
【0026】
次に、
図4に示すように、フランジ部44の上面に位置する受枠1にグレーチング足場21を載置し、マンホール41内に足場が完成する。グレーチング足場21が図示の状態を維持することで上面に付加された荷重に耐えることができる。
【0027】
上記足場構造によれば、治具組立体43の内部の水平面全体を塞ぐように足場を形成することができるため、補修工事等を行う際の安全性を高めることができる。また、受枠1やグレーチング足場21を折り畳み可能に構成したため、口径の小さいマンホール41等にも容易に敷設することができ、取り扱いが容易で保管にも便利である。
【0028】
次に、本発明に係る足場構造のもう一つの実施形態 について
図5を参照しながら説明する。
【0029】
この実施形態では、上記グレーチング足場21に代えて折り畳み可能な平板状の足場板51、52を用いる。他の構成は、上記実施の形態と同様である。
【0030】
足場板51は、2枚の上面視台形状の板53、54が各々の板53、54の上面に固定されたヒンジ55、56によって連結されて折り畳み可能となっており、図示の状態は広げられた状態である。ヒンジ55、56によって板53、54は図示の状態を維持することができ、上面に付加された荷重に耐えることができる。足場板52は、足場板51と形状が上面視で線対称であるが、足場板51と同様に構成される。足場板51及び足場板52によって全体的に上面視で8角形の足場が形成される。
【0031】
本実施の形態においても、治具組立体43の内部の水平面全体を塞ぐように足場を形成することができるため、補修工事等を行う際の安全性を高めることができる。また、足場板51及び足場板52は折り畳み可能であるため、取り扱いが容易であり、保管にも便利である。
【0032】
尚、上記実施の形態においては、受枠1を上面視で正方形のフレーム状に形成し、4つのコーナー部をフランジ部44の上面に載置したが、受枠1の構成はこれに限定されず、フランジ部44に3カ所以上で当接するように載置され、折り畳み可能であれば他の構成を採用することもできる。また、受枠1に載置される足場板も上記構成を有するグレーチング足場21や足場板51、52に限定されない。
【0033】
また、本発明に係る足場構造は、上記治具組立体43以外にも用いることができ、平面視で円形の円柱状空間を形成する壁面から、鉛直方向に延びる中心軸に向かって水平方向に突出するフランジ部を有する構造物等であれば設置可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 受枠
2、3、12、13 枠部材
4 第1連結部
5、15 軸
6、7、16、17 連結部材
8、9 ヒンジ
14 第2連結部
21 グレーチング足場
22、23 足場板
24~26 支持板
27~29 ボルト
30 ヒンジ
41 マンホール
42 開口部
43 治具組立体
44 フランジ部
51、52 足場板
53、54 板
55、56 ヒンジ