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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181578
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】工程剥離紙用原紙及び工程剥離紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/38 20060101AFI20231218BHJP
   D21H 19/82 20060101ALI20231218BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20231218BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
D21H19/38
D21H19/82
B32B29/00
B32B27/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094787
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】名越 応昇
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆貴
(72)【発明者】
【氏名】浦崎 淳
【テーマコード(参考)】
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
4F100AA01B
4F100AB19B
4F100AK25C
4F100CA13B
4F100DG10A
4F100EH46C
4F100EJ08C
4F100EJ53C
4F100JB09B
4F100JB14C
4F100JL14C
4F100YY00B
4F100YY00C
4L055AA02
4L055AA03
4L055AC06
4L055AG04
4L055AG08
4L055AG10
4L055AG11
4L055AG12
4L055AG47
4L055AG48
4L055AG63
4L055AG64
4L055AG71
4L055AG74
4L055AG76
4L055AG84
4L055AG87
4L055AG89
4L055AH01
4L055AH02
4L055AH09
4L055AH10
4L055AH37
4L055BE02
4L055BE08
4L055BE09
4L055BE11
4L055EA05
4L055EA08
4L055EA14
4L055GA43
(57)【要約】
【課題】工程剥離紙の剥離面の面質の悪化及び工程剥離紙用原紙の最外塗工層の劣化を防止して、工程剥離紙として繰り返し使用に好適な剥離紙用原紙を提供することである。
【解決手段】課題は、紙基材と、前記紙基材の少なくとも片面に対して塗工層を有し、前記塗工層中において紙基材を基準として最外に位置する最外塗工層が無機顔料、バインダー、耐水化剤及び水溶性ジルコニウム化合物を含有する工程剥離紙用原紙によって解決できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、前記紙基材の少なくとも片面に対して塗工層を有し、前記塗工層中において紙基材を基準として最外に位置する最外塗工層が無機顔料、バインダー、耐水化剤及び水溶性ジルコニウム化合物を含有する工程剥離紙用原紙。
【請求項2】
請求項1に記載の工程剥離紙用原紙の前記最外塗工層に対して、剥離剤層を有する工程剥離紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成皮革等の製造に使用する工程剥離紙に関連し、前記工程剥離紙の基材である工程剥離紙用原紙及びそれを用いる工程剥離紙に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンレザー及び塩化ビニルレザー等から成る合成皮革は、安定的に製造できるために衣類、靴、鞄、ソファー等の幅広い分野で使用される。
この様な合成皮革は、例えば、工程剥離紙に対してウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、アミド樹脂及びアミノ樹脂等の合成皮革形成用樹脂から成る群から選ばれる一種又は二種以上を含む塗料を塗工、並びに乾燥若しくは硬化させて合成皮革となる樹脂膜を形成し、次いで種々の方法によって樹脂膜から工程剥離紙を剥離して製造することができる。
【0003】
工程剥離紙は、工程剥離紙用原紙と、前記工程剥離紙用原紙に対して剥離剤層を有する構造である。この様な工程剥離紙用原紙は公知である。例えば、基紙と、前記基紙の少なくとも一方の面に澱粉及び耐水化剤を含有する目止め層を備える剥離紙用原紙であって、前記目止め層中の前記澱粉及び前記耐水化剤の固形分重量比が99.5/0.5~95/5であり、前記耐水化剤がポリアミドエピクロロヒドリン及び/又はポリアミンエピクロロヒドリンである剥離紙用原紙と、前記剥離紙用原紙を用いた剥離紙が公知である(例えば、特許文献1参照)。また例えば、支持体の両面に、顔料と合成ゴムを含む接着剤と水溶性高分子とを含有する目止め層用塗工液を塗工して乾燥させることで目止め層を設けた工程剥離紙用原紙であって、前記支持体の両面のうち、先に目止め層用塗工液を塗工した面を第一面、後に目止め層用塗工液を塗工した面を第二面とし、前記第一面の目止め層表面、及び第二面の目止め層表面には、直径50μm以下のピンホールが存在し、前記支持体の層間で厚み方向に二分割した際の各面の王研式透気度が、第一面は10000~15000秒であり、第二面は4000~8000秒である工程剥離紙用原紙が公知である(例えば、特許文献2参照)。また例えば、紙基材の一面上に顔料及びバインダーから成る塗工層が設けられた工程剥離紙用原紙であって、前記顔料がシリカであり、かつ前記工程剥離紙用原紙の平滑度が60秒以下、透気度が10000秒以上である工程剥離紙用原紙が公知である(例えば、特許文献3参照)。
剥離剤は、例えば、シリコーン系樹脂、アルキド系樹脂、アルキドシリコーン共重合樹脂、シリコーン変性アミノアルキド系樹脂、シリコーン変性アミノアクリル系樹脂等及びこれらの混合物、並びに電子線硬化性のシリコーン系樹脂及びアクリル系樹脂等である。
また、一般粘着用、テープ用、キャスティング工程用、成型工程用及び食品衛生分野用の剥離紙用原紙は、例えば、紙基材の少なくとも片面に水溶性高分子化合物と架橋剤を含む水性樹脂組成物を塗布・乾燥して得られたシリコーン塗工用剥離紙原紙において、樹脂組成物の塗布量が0.3g/m~5.0g/m(乾燥固形分換算)であり、かつ、樹脂組成物の溶出量が0.2g/m以下であることを特徴とする剥離紙用原紙が公知である(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-155898号公報
【特許文献2】特開2016-160544号公報
【特許文献3】特開2013-181255号公報
【特許文献4】特開平08-299895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の様な合成皮革の製造において、工程剥離紙は、得られた樹脂膜、すなわち合成皮革から剥離して回収される。そして、回収された工程剥離紙は合成皮革の製造に再利用される。従来、工程剥離紙は3~4回程度の繰り返し使用されるところ、近年の廃棄物削減の要求から、工程剥離紙は10~20回程度の繰り返し使用が要求される。
【0006】
工程剥離紙の繰り返し使用に際して課題は、樹脂膜を剥離した場合の工程剥離紙の剥離面の面質悪化である。工程剥離紙の悪化した面質は、剥離面側の樹脂膜の面質、すなわち合成樹脂の面質を悪化する。工程剥離紙の剥離面の面質悪化は、工程剥離紙用原紙からの剥離剤層の剥けに起因する。剥けは、工程剥離紙用原紙に対する剥離剤層の根付きが不十分であるために発生する。
また、工程剥離紙の繰り返し使用に際して課題は、剥離剤層と接する工程剥離紙用原紙の塗工層、すなわち最外塗工層の劣化である。剥離剤層の剥けがない場合であっても、工程剥離紙用原紙の最外塗工層の劣化によって工程剥離紙の剥離面が欠落する。工程剥離紙用原紙の最外塗工層の劣化は、合成樹脂を形成するための塗料に含まれる溶剤等の成分に起因する。劣化は、工程剥離紙用原紙の最外塗工層が強度低下するために発生する。
【0007】
上記を鑑みて本発明の目的は、工程剥離紙の剥離面の面質の悪化及び工程剥離紙用原紙の最外塗工層の劣化を防止して、工程剥離紙として繰り返し使用に好適な剥離紙用原紙を提供することである。さらに、前記工程剥離紙用原紙を用いた工程剥離紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明の目的は、以下によって達成される。
[1]紙基材と、前記紙基材の少なくとも片面に対して塗工層を有し、前記塗工層中において紙基材を基準として最外に位置する最外塗工層が無機顔料、バインダー、耐水化剤及び水溶性ジルコニウム化合物を含有する工程剥離紙用原紙。
また、本発明の目的は、以下によって達成される。
[2]上記[1]に記載の工程剥離紙用原紙の上記最外塗工層に対して剥離剤層を有する工程剥離紙。
【発明の効果】
【0009】
本発明の構成である、工程剥離紙用原紙の最外塗工層が耐水化剤及び水溶性ジルコニウム化合物を含有することで、剥離剤層の根付きの不十分と最外塗工層の強度低下とを防ぐことができる。結果、工程剥離紙として繰り返し使用に好適な剥離紙用原紙及びそれを用いた工程剥離紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。
工程剥離紙用原紙は、少なくともその片面に対して剥離性を発現する樹脂等の剥離剤を塗工及び乾燥して剥離剤層を設ける前のものを指す。工程剥離紙は、工程剥離紙用原紙の少なくとも片面に対して剥離性を発現する樹脂等の剥離剤を塗工及び乾燥して剥離剤層を設けたものを指す。
剥離剤は、工程剥離紙の分野で従来公知のものである。剥離剤は、例えば、シリコーン系樹脂、アルキド系樹脂、アルキドシリコーン共重合樹脂、シリコーン変性アミノアルキド系樹脂、シリコーン変性アミノアクリル系樹脂等及びこれらの混合物、並びに電子線硬化性のシリコーン系樹脂及びアクリル系樹脂等を挙げることができる。
【0011】
工程剥離紙は、合成皮革だけでなく、炭素強化繊維複合材料等の製造に用いることができる。好適には、合成皮革の製造に用いる工程剥離紙である。工程剥離紙を使用する合成皮革の製造は、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、アミド樹脂及びアミノ樹脂等の合成皮革形成用樹脂から成る群から選ばれる一種又は二種以上を含む塗料を工程剥離紙に対して塗工及び乾燥し、該樹脂が固化した後に工程剥離紙から剥離する方法である。剥離された工程剥離紙は、回収され、合成皮革の製造に再び利用される。
【0012】
工程剥離紙は、工程剥離紙用原紙と前記工程剥離紙用原紙の少なくとも片面に対して設けた剥離剤層とから成る。剥離剤層は、工程剥離紙用原紙の下記する最外塗工層を有する面に対して設ける。
いくつかの実施態様において、工程剥離紙は、工程剥離紙用原紙が下記する最外塗工層を両面に有する場合、工程剥離紙用原紙の両面に対して剥離剤層を有する。この理由は、工程剥離紙が表裏に関係無く使用できるからである。また、いくつかの実施態様において、工程剥離紙は、工程剥離紙用原紙が下記する最外塗工層を両面又は片面に有する場合、工程剥離紙用原紙の最外塗工層を有する片面に対してのみ剥離剤層を有する。また、いくつかの実施態様において、工程剥離紙は、工程剥離紙用原紙が下記する最外塗工層を片面に有する場合、工程剥離紙用原紙の当該最外塗工層を有する片面に対してのみ剥離剤層を有する。これらの理由は、製造コストの点で優位になるからである。
また、いくつかの実施態様において、工程剥離紙は、工程剥離紙用原紙の片面に対して剥離剤層を有する場合、前記剥離剤層を有する側と異なる工程剥離紙用原紙の反対側面に対してバックコート層を有する。この理由は、工程剥離紙のカールを防止又は寸法安定性を向上することができるからである。バックコート層は、塗工紙分野で従来公知のものである。少なくとも一つの実施態様において、工程剥離紙は、工程剥離紙用原紙に対してバックコート層を有しない。この理由は、製造コストの点で優位になるからである。
【0013】
いくつかの実施態様において、剥離剤層の塗工量は、工程剥離紙用原紙の片面あたり15g/m以上50g/m以下である。工程剥離紙の繰り返し使用が良化するからである。
【0014】
工程剥離紙用原紙は、紙基材と、前記紙基材の少なくとも片面に対して塗工層とを有する。
いくつかの実施態様において、工程剥離紙用原紙は、紙基材の両面に対して塗工層を有する。この理由は、工程剥離紙用原紙が表裏に関係無く使用できるからである。少なくとも一つの実施態様において、工程剥離紙用原紙は、紙基材の片面に対してのみ塗工層を有する。この理由は、製造コストの点で優位になるからである。
また、いくつかの実施態様において、工程剥離紙用原紙は、紙基材の片面に対して塗工層を有する場合、前記塗工層を有する側と異なる紙基材の反対側面に対してバックコート層を有する。この理由は、工程剥離紙用原紙のカールを防止又は寸法安定性を向上することができるからである。バックコート層は、塗工紙分野で従来公知のものである。少なくとも一つの実施態様において、工程剥離紙用原紙は、紙基材に対してバックコート層を有しない。この理由は、製造コストの点で優位になるからである。
【0015】
工程剥離紙用原紙が有する塗工層は、一層又は二層以上である。塗工層中において、紙基材を基準として最外に位置する塗工層を最外塗工層という。塗工層が一層の場合は、当該一層の塗工層が最外塗工層となる。いくつかの実施態様において、工程剥離紙用原紙が有する塗工層は一層又は二層である。この理由は、製造コストの点で優位になるからである。
塗工層が二層以上である場合、紙基材と最外塗工層との間に位置する塗工層は、塗工紙分野で従来公知の無機顔料、有機顔料及びバインダー並びに必要に応じて各種添加剤を含有する層であって、無機顔料の種類及び含有量、有機顔料の種類及び含有量、バインダーの種類及び含有量、並びに各種添加剤の種類及び含有量等を特に限定しない。いくつかの実施態様において、紙基材と最外塗工層との間に位置する塗工層は、紙基材に存在する空隙乃至窪みを埋める目止め機能を有する層である。少なくとも一つの実施態様において、紙基材と最外塗工層との間に位置する塗工層は、無機顔料として重質炭酸カルシウム乃至軽質炭酸カルシウムである炭酸カルシウム、並びにバインダーとしてスチレンブタジエン系共重合樹脂及び澱粉類を含有する層である。この理由は、目止め機能を有しながら、紙基材と最外塗工層との接着性を良化するからである。
【0016】
最外塗工層は、無機顔料及びバインダーを含有する。
無機顔料は、塗工紙分野で従来公知のものである。無機顔料は、例えば、カオリン、重質炭酸カルシウム乃至軽質炭酸カルシウムである炭酸カルシウム、タルク、サチンホワイト、リトポン、酸化チタン、酸化亜鉛、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、活性白土及び珪藻土等を挙げることができる。いくつかの実施態様において、無機顔料は、重質炭酸カルシウム乃至軽質炭酸カルシウムである炭酸カルシウムである。この理由は、工程剥離紙の繰り返し使用が良化するからである。
【0017】
バインダーは、塗工紙分野で従来公知のものである。バインダーは、例えば、澱粉、加工澱粉及び変性澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース等のセルロース類、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、プルラン、アラビアゴム、カラヤゴム、アルブミン等の天然由来の樹脂又はその誘導体、種々ケン化度及び重合度のポリビニルアルコール類並びにシラノール変性、カルボキシ基変性、シリル基、カルボキシル基、アミノ基及びアセトアセチル基等の種々官能基を導入した変性ポリビニルアルコール並びにエチレン等他の単量体をランダム的、グラフト的若しくはブロック的に導入した変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、無水マレイン酸系樹脂、(メタ)アクリル酸系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステルブタジエン系共重合樹脂、スチレンブタジエン系共重合樹脂、スチレンブタジエンアクリロニトリル系共重合樹脂及びエチレン酢酸ビニル系共重合樹脂等の共重合樹脂並びにこれらの各種共重合体のカルボキシ基等の官能基含有単量体による官能基変性共重合樹脂、メラミン系樹脂及び尿素系樹脂等の熱硬化樹脂等のバインダー、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、ポリビニルブチラール、並びにアルキド系樹脂等を挙げることができる。いくつかの実施態様において、バインダーは、スチレンブタジエン系共重合樹脂及びポリビニルアルコール類である。この理由は、工程剥離紙の繰り返し使用が良化するからである。
【0018】
いくつかの実施態様において、最外塗工層におけるバインダーの含有量は、最外塗工層中の無機顔料100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下である。この理由は、工程剥離紙の繰り返し使用が良化するからである。
【0019】
最外塗工層は、必要に応じて各種添加剤を含有することができる。添加剤は、塗工紙分野で従来公知のものである。添加剤は、例えば、有機顔料、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、架橋剤、分散剤、嵩高剤、増粘剤、流動性改良剤、ピッチコントロール剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、保湿剤、防腐剤、防バイ剤及び耐水化剤等を挙げることができる。
【0020】
最外塗工層は、耐水化剤及び水溶性ジルコニウム化合物を含有する。
耐水化剤は、通常、塗工紙に必要な耐水性を付与するために塗工層等に配合する薬剤であって、塗工紙分野で従来公知のものである。耐水化剤は、例えば、ポリアミドポリアミン樹脂のエピクロロヒドリン変性物、ポリアミドポリ尿素系樹脂、変性ポリアミド、アミノホルムアルデヒド樹脂及び多官能性エポキシ化合物等、ホルムアルデヒド、グリオキザール、ジアルデヒド澱粉、変性アミン系樹脂、尿素ホルムアルデヒド系樹脂、メラミンホルムアルデヒド系樹脂、ポリアミド尿素ホルムアルデヒド系樹脂、グリセロールポリグリシジルエーテル系樹脂、ケトン系樹脂、硫酸亜鉛、ホウ砂、サチンホワイト、並びに炭酸亜鉛アンモニウム錯体等の多価金属化合物等を挙げることができる。いくつかの実施態様において、耐水化剤は変性ポリアミドである。この理由は、工程剥離紙の繰り返し使用が良化するからである。
変性ポリアミドは、製紙分野で従来公知のものである。変性ポリアミドは、例えば、主鎖がアミド結合によって複数の単量体が結合して成るポリマーであって、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、エピハロヒドリン化合物、カルボン酸化合物、アルコール化合物、シラノール化合物及びアミン化合物から選択される一種又は二種以上の化合物で改質された樹脂である。
【0021】
いくつかの実施態様において、最外塗工層における耐水化剤の含有量は、最外塗工層中の無機顔料100質量部に対して、0.2質量部以上1.5質量部以下である。この理由は、工程剥離紙の繰り返し使用が良化するからである。
【0022】
水溶性ジルコニウム化合物は、ジルコニウム塩及びその水和物から成る群から選ばれる一種又は二種以上である。水溶性ジルコニウム化合物は、例えば、塩化ジルコニウム(ZrCl)、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl・nHO)、硫酸ジルコニウム(Zr(SO・nHO)、オキシ硫酸ジルコニウム(ZrOSO・nHO)、硝酸ジルコニウム(Zr(NO・nHO)、オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO・nHO)、酢酸ジルコニウム(Zr(CHCOO))、二酢酸ジルコニウム(Zr(CHCOO))、四酢酸ジルコニウム(Zr(CHCOO))、オキシ酢酸ジルコニウム(ZrO(CHCOO))及び炭酸ジルコニウムアンモニウム((NHZrO(CO)等、並びにこれらの水和物を挙げることができる。さらにまた、水溶性ジルコニウム化合物は、例えば、各種ジルコニウムアルコキシド等を挙げることができる。いくつかの実施態様において、水溶性ジルコニウム化合物は炭酸ジルコニウムアンモニウムである。この理由は、工程剥離紙の繰り返し使用が良化するからである。
【0023】
いくつかの実施態様において、最外塗工層における水溶性ジルコニウム化合物の含有量は、最外塗工層中のバインダー100質量部に対して、0.2質量部以上5質量部以下である。この理由は、工程剥離紙の繰り返し使用が良化するからである。
【0024】
塗工層が最外塗工層を含め二層以上の場合、工程剥離紙用原紙は、最外塗工層を含む塗工層の総塗工量が片面あたり10g/m以上30g/m以下である。塗工層として最外塗工層のみの場合、工程剥離紙用原紙は、最外塗工層の塗工量が片面あたり10g/m以上30g/m以下である。これら理由は、工程剥離紙の繰り返し使用が良化するからである。
【0025】
紙基材に対して塗工層乃至最外塗工層を及び工程剥離紙用原紙に対して剥離剤層を設ける方法は、特に限定されない。設ける例としては、製紙分野で従来公知の塗工装置を用いて各層を形成するための塗工層塗工液を塗工する方法を挙げることができる。塗工装置の例としては、サイズプレス、フィルムプレスコーター、ロッドコーター、エアーナイフコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、Eバーコーター、フィルムトランスファーコーター、及び多段ロールコーター等を挙げることができる。さらに、剥離剤層を設ける方法では、塗工層塗工液を塗工後に従来公知の乾燥装置を用いた剥離剤層の乾燥、又は剥離剤層が電子線硬化性の場合は従来公知の電子線照射装置を用いる硬化を施すことができる。
【0026】
工程剥離紙において、上記剥離剤層を有する側は、工程剥離紙用原紙の最外塗工層を有する側である。
【0027】
紙基材は、木材パルプ及び/又は非木材パルプから成るスラリーに対して、填料、サイズ剤、バインダー、定着剤、歩留り剤及び紙力剤等の各種添加剤を必要に応じて添加した紙料を、酸性、中性又はアルカリ性の条件で、従来公知の抄紙方法によって抄造した抄造紙、前記抄造紙をサイズプレス液でサイズプレス処理した処理抄造紙、前記抄造紙を表面処理液で表面処理した処理抄造紙、又は前記抄造紙若しくは前記処理抄造紙に対してカレンダー処理を施した普通紙である。
さらに、上記紙料には、その他の添加剤として、顔料分散剤、嵩高剤、増粘剤、流動性改良剤、ピッチコントロール剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、保湿剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤及び乾燥紙力増強剤等から成る群から選ばれる一種又は二種以上を、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、適宜添加することができる。
【0028】
抄造は、従来公知の抄紙機を用いて行われる。抄紙機は、例えば、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、円網抄紙機、ヤンキー抄紙機等を挙げることができる。
【0029】
カレンダー処理とは、ロール間に紙を通すことによって平滑性や厚みを平均化する処理である。カレンダー処理の装置は、例えば、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダー等を挙げることができる。
【0030】
木材パルプは、製紙分野で従来公知のものである。木材パルプは、例えば、LBKP(Leaf Bleached Kraft Pulp)及びNBKP(Needle Bleached Kraft Pulp)等の化学パルプ、GP(Groundwood Pulp)、PGW(Pressure GroundWood pulp)、RMP(Refiner Mechanical Pulp)、TMP(ThermoMechanical Pulp)、CTMP(ChemiThermoMechanical Pulp)、CMP(ChemiMechanical Pulp)及びCGP(ChemiGroundwood Pulp)等の機械パルプ、DIP(DeInked Pulp)等の古紙パルプ、並びに製紙工場で発生する損紙(Spoilage)を離解して成るパルプを挙げることができる。
非木材パルプは、製紙分野で従来公知の非木材繊維からなるパルプである。非木材繊維の原料は、例えば、コウゾ、ミツマタ及びガンピ等の木本靭皮、亜麻、大麻及びケナフ等の草本靭皮、マニラ麻、アバカ及びサイザル麻等の葉繊維、イネわら、ムギわら、サトウキビバカス、タケ及びエスパルト等の禾本科植物、並びにワタ及びリンター等の種毛を挙げることができる。木材パルプ及び/又は非木材パルプは、前記木材パルプ及び前記非木材パルプから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0031】
填料は、製紙分野で従来公知の顔料である。顔料は、例えば、重質炭酸カルシウム乃至軽質炭酸カルシウムである炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、シリカ、珪酸アルミニウム、珪藻土、活性白土、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の無機顔料を挙げることができる。さらにスチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン系プラスチックピグメント、尿素樹脂、メラミン樹脂及びマイクロカプセル等の有機顔料を挙げることができる。填料は、前記無機顔料及び前記有機顔料から成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0032】
いくつかの実施態様において、紙基材は、紙支持体の灰分量が5質量%以上15質量%以下である。この理由は、灰分が前記範囲であれば紙基材は平滑性の向上とサイズ性の低下防止とが両立でき、最終的に工程剥離紙として工程剥離紙用原紙に塗工層を介して設ける剥離剤層の根付きが良化するからである。ここで、灰分量とは、燃焼処理前の紙支持体の絶乾質量に対する紙支持体を500℃で1時間燃焼処理を行った後の不燃物の質量の比率(質量%)である。灰分量は、紙支持体中の填料含有量を調整する等の従来公知の方法で制御することができる。
【実施例0033】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限られるものではない。なお、質量部は乾燥固形分量あるいは実質成分量を示す。また、塗工量は乾燥固形分量を示す。
【0034】
(紙基材)
CSF濾水度420mlのLBKP75質量部、CSF濾水度480mlのNBKP10質量部、損紙由来パルプ15質量部から成るパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム8質量部、カチオン化澱粉10質量部、及び硫酸バンド8質量部を配合して紙料を調成した。前記紙料を長網抄紙機で抄造して抄造紙を得た。抄造紙は、紙料の供給量、抄紙工程のプレスパート条件及びドライヤーパート条件、並びにカレンダー処理有無又はその条件を制御して、坪量158g/mとした。得られた抄造紙の両面に対してサイズプレス装置で澱粉を片面あたり塗工量0.5g/mとなるようにサイズプレスして、紙基材を得た。
【0035】
<塗工層塗工液>
塗工層塗工液は、下記の内容により調製した。
重質炭酸カルシウム 100質量部
リン酸エステル化澱粉 2質量部
スチレンブタジエンアクリロニトリル共重合樹脂 8質量部
上記の内容で配合し、水で混合・分散して、濃度63質量%に調整した。
【0036】
<最外塗工層塗工液>
最外塗工層塗工液は、下記の内容により調製した。
重質炭酸カルシウム 70質量部
軽質炭酸カルシウム 30質量部
スチレンブタジエン系共重合樹脂 10質量部
ポリビニルアルコール(ケン化度97mol%、重合度1700)
3質量部
耐水化剤 種類は表1に記載/0質量部又は0.8質量部
水溶性ジルコニウム化合物 種類は表1に記載/0質量部又は1質量部
上記の内容で配合し、水で混合・分散して、濃度48質量%に調整した。
【0037】
表1に記載する耐水化剤及び水溶性ジルコニウム化合物としては、耐水化剤1に変性ポリアミド(田岡化学工業、SUMIREZ(登録商標) SPI-M22)を、耐水化剤2にポリアミンエピクロロヒドリン系樹脂(星光PMC、TDK-168)を、水溶性ジルコニウム化合物1に炭酸ジルコニウムアンモニウム(第一稀元素化学工業、ジルコゾール(登録商標)AC-7)を、水溶性ジルコニウム化合物2に酢酸ジルコニウム(第一稀元素化学工業、ジルコゾールZA-20)を用いた。
【0038】
【表1】
【0039】
<工程剥離紙用原紙 タイプ1>
紙基材の片面に対して最外塗工層塗工液をブレードコーターを用いて塗工し、塗工後熱風乾燥機を用いて乾燥した。さらに、乾燥後にカレンダー処理を施して、工程剥離紙用原紙を得た。塗工量は15g/mとした。
【0040】
<工程剥離紙用原紙 タイプ2>
紙基材の片面に対して塗工層塗工液をブレードコーターを用いて塗工し、塗工後熱風乾燥機を用いて乾燥した。得た塗工層に対して最外塗工層塗工液をエアーナイフコーターを用いて塗工し、塗工後熱風乾燥機を用いて乾燥した。さらに、乾燥後にカレンダー処理を施して、工程剥離紙用原紙を得た。塗工層の塗工量は8g/mとし、最外塗工層の塗工量は7g/mとした。
【0041】
<工程剥離紙>
工程剥離紙用原紙の最外塗工層を有する側に対して、剥離剤として電子線硬化性のアクリル系樹脂(東亞合成、アロニックス(登録商標)M-306)を含む剥離剤層塗工液を電子線硬化性のアクリル系樹脂の乾燥固形分量で30g/mになるように、バーコーターを用いて塗工、続いて電子線を照射して剥離剤層を硬化させ、工程剥離紙用原紙に剥離剤層を設けた工程剥離紙を得た。
【0042】
<工程剥離紙の繰り返し使用の評価>
未使用の工程剥離紙の剥離剤層を有する側に対して、塩化ビニルペーストを塗工及び200℃で2分の加熱乾燥をして固化した。塗工量は25g/mとした。得られた塩化ビニルシートをテンシロン剥離試験機を用いて工程剥離紙から剥離(200mm/min)して工程剥離紙を回収した。回収した工程剥離紙の剥離剤層を有する側に対して、塩化ビニルペーストを塗工及び200℃で2分の加熱乾燥をして固化した。塗工量は25g/mとした。得られた塩化ビニルシートをテンシロン剥離試験機を用いて工程剥離紙から剥離(200mm/min)して工程剥離紙を回収した。以降、回収した工程剥離紙を用いて同様の操作によって繰り返し使用を行った。
回数毎に、工程剥離紙の剥離面の状態を観察して下記の基準で評価した。結果を表1に記載する。本発明において、工程剥離紙用原紙及び工程剥離紙は、A、B又はCの評価であれば繰り返し使用に好適であるとする。
A:繰り返し20回までは、
工程剥離紙の剥離剤層の剥け及び欠落が概ね認められない。
B:繰り返し15回までは、
工程剥離紙の剥離剤層の剥け及び欠落が概ね認められない。
C:繰り返し10回までは、
工程剥離紙の剥離剤層の剥け及び欠落が概ね認められない。
D:繰り返し5回までは、
工程剥離紙の剥離剤層の剥け及び欠落が概ね認められない。
【0043】
表1から、本発明に該当する実施例1~8の工程剥離紙用原紙及びそれを用いた工程剥離紙は、繰り返し使用に好適であると分かる。一方、本発明に該当しない比較例1~4の工程剥離紙用原紙及びそれを用いた工程剥離紙は、繰り返し使用に劣ると分かる。