(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181581
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20231218BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
G03G15/20 525
G03G21/00 322
G03G21/00 370
G03G21/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094790
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本宮 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】中林 淳一郎
【テーマコード(参考)】
2H033
2H134
2H270
【Fターム(参考)】
2H033BA25
2H033BA31
2H033BA49
2H033BA51
2H033BA54
2H033BA55
2H033BA56
2H033BA57
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB18
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB34
2H134GA07
2H134HE01
2H134HE04
2H134HE05
2H134HE07
2H134HE11
2H134HE12
2H134KA40
2H134KB05
2H134KB15
2H134KB20
2H270LA44
2H270LA80
2H270LA98
2H270LD04
2H270MC45
2H270MD02
2H270MD12
2H270NE01
2H270RA13
2H270RA14
2H270RC05
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC08
(57)【要約】
【課題】ウェブが所定残量になった以降に、電源オフされてから電源オンされても、ウェブに残量があれば画像形成ジョブを実行可能とする。
【解決手段】ウェブが所定残量に達した以降に、画像形成装置が電源オフされてから電源オンされた場合(S12)に、電源オフ時と電源オン時とにおけるウェブの外径変化に基づいて画像形成ジョブの実行許可を判定する(S13)。ウェブ212の外径変化が所定の閾値より大きければ、電源オフ時から電源オン時までにウェブ残量が減少したと看做し、「ニアエンド継続不可」として画像形成ジョブの実行を許可しない(S14)。他方、ウェブの外径変化が所定の閾値以下であれば、ウェブ残量が減少していないと看做し、画像形成ジョブの実行を許可する。これにより、画像形成装置が電源オフされてから電源オンされても、ウェブ残量が減少しておらずウェブに残量があれば、使用者は画像形成ジョブを実行させることができる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置であって、
記録材にトナー像を形成する画像形成ユニットと、
回転体と、
前記回転体に摺擦し前記回転体上のトナーを除去するウェブと、前記ウェブを前記回転体との摺擦位置に供給可能な供給部と、前記供給部との間に架け渡された前記ウェブを巻き取る巻き取り部とを有するクリーニングユニットと、
前記巻き取り部を駆動する駆動部と、
前記ウェブが所定残量になったことを検出する検出部と、
前記巻き取り部に巻き取られた前記ウェブの外径に基づく信号を出力する外径信号出力部と、
前記画像形成ユニットを制御して記録材にトナー像を形成する画像形成ジョブを実行可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記検出部により前記ウェブが所定残量になったことを検出した状態で、前記画像形成装置が電源オフされてから電源オンされた場合に、前記画像形成装置の電源オフ時に出力されていた前記外径信号出力部の信号値と、前記画像形成装置の電源オン時に出力された前記外径信号出力部の信号値との差の絶対値が、所定の閾値以下の場合には前記画像形成ジョブの実行を許可し、前記絶対値が前記閾値より大きい場合には前記画像形成ジョブの実行を許可しない、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ウェブは、前記所定残量を示す位置に切り欠き部が形成されており、
前記検出部は、前記ウェブに当接するように変位可能に配置された当接部と、前記切り欠き部を通過した際の前記当接部の変位を検出可能な検出センサとを有し、前記当接部が前記切り欠き部を通過して変位した場合に前記ウェブが所定残量になったことを検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、画像形成ジョブを実行している場合、所定枚数の記録材にトナー像を形成する毎に、前記駆動部を駆動して前記巻き取り部により所定量の前記ウェブを巻き取り、
前記ウェブが所定残量になった以降の前記ウェブの巻き取り回数が所定回数よりも大きくなった場合、実行している画像形成ジョブの終了後は画像形成ジョブの実行を許可しない、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、1回当たりの前記ウェブの巻き取り量が前記所定量となるように、前記外径信号出力部の信号値に基づいて前記駆動部を制御して前記巻き取り部の回転量を調整する、
ことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記外径信号出力部は、前記巻き取り部に巻き取られた前記ウェブの表面に当接し、前記ウェブの外径の変化に応じて揺動する揺動部と、前記揺動部の揺動に応じて回転する回転部と、前記回転部の回転に応じて抵抗値を変化させて前記揺動部の揺動量を電圧値に変換し前記ウェブの外径に基づく信号として出力する変換部とを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
記録材にトナー像を形成する画像形成ユニットと、
第一回転体と、前記第一回転体に当接して記録材を挟持搬送する定着ニップ部を形成する第二回転体とを有し、前記画像形成ユニットにより記録材に形成されたトナー像を記録材に定着する定着ユニットと、
前記ウェブと前記第一回転体との間に配置され、前記第一回転体と当接して前記第一回転体を清掃する中間回転体と、を備え、
前記回転体は、前記中間回転体である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記供給部と前記巻き取り部の間に配置され、前記ウェブを前記中間回転体に向けて押圧する押圧回転体を備える、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリあるいは複合機などの電子写真技術を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置では、記録材に形成されたトナー像を定着ユニットで加熱、加圧することによって記録材にトナー像を定着させているが、トナー像の定着の際に、定着ユニットの定着ローラ(あるいは加圧ローラ)にトナーが付着することがある。例えば定着ローラにトナーが付着すると、トナーによって記録材を汚してしまい得る。そのため、不織布で形成されたクリーニングウェブ(以下、単にウェブと呼ぶ)を有するクリーニング装置を用い、定着ローラに付着したトナーを除去している。こうしたクリーニング装置の場合、ウェブは少しずつ巻き取られながら消費される。そして、従来ではウェブに切り欠き部を形成し、ウェブに当接させたフラグ部材が切り欠き部を通過し変位することに応じて、ウェブ残量が所定残量に達したことをフォトセンサにより検出できるようにしている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、画像形成装置では、例えばサービスマンなどの使用者が画像形成装置の電源をオフしてクリーニング装置をメンテナンスすることがある。その際に、使用者によりウェブの張り直しが行われて、ウェブ残量が減ることがある。従来の場合、ウェブ残量が所定残量に達した後にウェブ残量が減少しても、減少後のウェブ残量を検出することが難しい。それ故、所定残量に達したウェブが張り直された後に画像形成ジョブが実行されると、ウェブが使い切られ、ウェブが破れたり画像不良が生じたりする虞があった。そのため、ウェブ残量が所定残量に達した後は、ウェブが交換されないと画像形成ジョブを実行させることができないようにしていた。
【0005】
しかしながら、残量があるにも関わらずウェブを交換しなければならないのはウェブに無駄を生じさせ得るし、また、ウェブが交換されてからでないと画像形成ジョブを実行できないのは、画像形成装置の運用効率を低下させ得る。そこで、ウェブが所定残量になった以降に、画像形成装置が電源オフされてから電源オンされたとしても、ウェブに残量があれば画像形成ジョブを実行可能な装置が望まれていたが、未だそうした装置は提案されていない。
【0006】
本発明は上記問題に鑑み、ウェブが所定残量になった以降に、画像形成装置が電源オフされてから電源オンされたとしても、ウェブに残量があれば画像形成ジョブを実行可能な画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る画像形成装置は、画像形成装置であって、記録材にトナー像を形成する画像形成ユニットと、回転体と、前記回転体に摺擦し前記回転体上のトナーを除去するウェブと、前記ウェブを前記回転体との摺擦位置に供給可能な供給部と、前記供給部との間に架け渡された前記ウェブを巻き取る巻き取り部とを有するクリーニングユニットと、前記巻き取り部を駆動する駆動部と、前記ウェブが所定残量になったことを検出する検出部と、前記巻き取り部に巻き取られた前記ウェブの外径に基づく信号を出力する外径信号出力部と、前記画像形成ユニットを制御して記録材にトナー像を形成する画像形成ジョブを実行可能な制御部と、を備え、前記制御部は、前記検出部により前記ウェブが所定残量になったことを検出した状態で、前記画像形成装置が電源オフされてから電源オンされた場合に、前記画像形成装置の電源オフ時に出力されていた前記外径信号出力部の信号値と、前記画像形成装置の電源オン時に出力された前記外径信号出力部の信号値との差の絶対値が、所定の閾値以下の場合には前記画像形成ジョブの実行を許可し、前記絶対値が前記閾値より大きい場合には前記画像形成ジョブの実行を許可しない、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ウェブが所定残量になった以降に、画像形成装置が電源オフされてから電源オンされたとしても、ウェブに残量があれば画像形成ジョブを実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図。
【
図3】切り欠きセンサユニットを説明するための上面図であり、(a)切り欠き部を通過する前、(b)切り欠き部を通過し変位する時、(c)切り欠き部を通過した後。
【
図4】切り欠きセンサユニットの動作を説明するための側面図であり、(a)検出前、(b)検出後。
【
図5】ウェブ外径検出部を示す側面図であり、(a)ウェブ残量が少ない場合、(b)ウェブ残量が多い場合。
【
図7】ウェブ残量の検出方法について説明するための図であり、(a)比較例の場合、(b)本実施形態の場合。
【
図10】ニアエンドカウンタ処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<画像形成装置>
以下、本発明の一実施形態について説明する。
図1に示す画像形成装置100は、回転移動する中間転写ベルト130に沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを配置したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。
【0011】
画像形成部Paでは、感光ドラム3aにイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト130に転写される。画像形成部Pbでは、感光ドラム3bにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト130に転写される。画像形成部Pc、Pdでは、それぞれ感光ドラム3c、3dにシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて中間転写ベルト130に転写される。中間転写ベルト130に転写された四色のトナー像は、二次転写部T2へ搬送されて記録材Pへ二次転写される。記録材Pとしては、普通紙、厚紙、ラフ紙、凹凸紙、コート紙等の用紙、プラスチックフィルム、布など、といった様々な種類のシート材が挙げられる。
【0012】
分離ローラ16は、カセット10から引き出した記録材Pを1枚ずつに分離して、レジストレーションローラ12へ送る。レジストレーションローラ12は、中間転写ベルト130のトナー像にタイミングを合わせて記録材Pを二次転写部T2へ送る。四色のトナー像を二次転写された記録材Pは定着ユニット9で加熱及び加圧されて、表面にトナー像が定着される。
【0013】
片面印刷の場合、定着ユニット9によりトナー像が定着された記録材Pは、そのまま排出トレイ163へ排出される。両面印刷の場合、表面にトナー像を定着された記録材Pは反転パスへ搬送され表裏が反転された後に、再びレジストレーションローラ12へ給送される。そして、記録材Pは二次転写部T2で裏面にトナー像が転写され、定着ユニット9により裏面にトナー像が定着された後に、排出トレイ163へ排出される。
【0014】
<画像形成部>
画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、現像装置1a、1b、1c、1dで用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外は、実質的にほぼ同一に構成されている。そこで、以下では代表してイエローの画像形成部Paを例に説明し、その他の画像形成部Pb、Pc、Pdについては説明を省略する。
【0015】
画像形成部Paは、感光ドラム3aを囲んで、帯電装置2a、露光装置La、現像装置1a、一次転写ローラ24a、ドラムクリーニング装置4aが配設されている。感光ドラム3aは、例えばアルミニウム製シリンダの外周面に感光層が形成された電子写真感光体であり、所定のプロセススピードで矢印R1方向に回転される。帯電装置2aは、不図示の電源からの帯電電圧の印加に応じて感光ドラム3aの表面を所定電位に一様に帯電する。露光装置Laは、各色の画像を展開した走査線画像信号をON-OFF変調したレーザービームを不図示の回転ミラーで走査して、感光ドラム3aに静電潜像を形成する。現像装置1aは現像剤を用いて、感光ドラム3a上に形成された静電潜像をトナー像に現像する。
【0016】
一次転写ローラ24aは、中間転写ベルト130を押圧して、感光ドラム3aと中間転写ベルト130の間に一次転写部を形成する。一次転写ローラ24aに不図示の電源から一次転写電圧が印加されることにより、感光ドラム3a上のトナー像が中間転写ベルト130へ一次転写される。中間転写ベルト130は、テンションローラ15、二次転写内ローラ14、及び駆動ローラ13に掛け渡して支持され、駆動ローラ13に駆動されて矢印A方向に回転する。二次転写外ローラ11は、二次転写内ローラ14に支持された中間転写ベルト130に当接して二次転写部T2を形成する。二次転写外ローラ11に不図示の電源から二次転写電圧が印加されることで、二次転写部T2を通過する記録材Pへ中間転写ベルト130上のトナー像が二次転写される。なお、本実施形態の場合、画像形成部Pa~Pd、中間転写ベルト130、一次転写ローラ24a~24d、駆動ローラ13、テンションローラ15、二次転写内ローラ14、二次転写外ローラ11は、記録材Pにトナー像を形成可能な画像形成ユニット600を構成している。
【0017】
ドラムクリーニング装置4aは、感光ドラム3aにクリーニングブレードを摺擦させて一次転写後に感光ドラム3a上に残る転写残トナーを回収する。ベルトクリーニング装置22は、二次転写後に中間転写ベルト130上に残る転写残トナーを回収する。
【0018】
なお、装置本体100aには、開閉可能な扉500が設けられている。使用者は扉500を開けた状態で、装置本体100a内の定着ユニット9に外部からアクセス可能であって、定着ユニット9のメンテナンス作業や後述するクリーニングウェブの交換作業などを行い得る。また、扉500の開閉を検出する開閉センサ710が設けられている。
【0019】
<定着ユニット>
次に、本実施形態の定着ユニット9の構成について、
図2を用いて説明する。定着ユニット9は、記録材P上のトナー像を加熱するための定着ローラ201と、記録材Pを加圧するための加圧ローラ202と、定着ローラ201をクリーニングするためのウェブユニット210を有する。第一回転体としての定着ローラ201は、不図示のモータ等により回転駆動される。
【0020】
定着ローラ201や加圧ローラ202は、例えばアルミニウムや鉄等により円筒状に形成された芯金と、シリコーンゴムからなり芯金の外周面に形成された弾性層と、弾性層の外周面を被覆する離型層とを有している。離型層は、例えばテトラフルオロエチレン―パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)もしくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂のチューブにより形成されている。
【0021】
定着ローラ201の内部には、定着ローラ201を加熱するハロゲンヒータ205が配置されている。そして、定着ローラ201の表面温度はサーミスタ206によって検出され、検出された表面温度は制御部150(
図1参照)に入力される。制御部150は、定着ローラ201の表面温度が設定した温調温度になるように、ハロゲンヒータ205の温度を調整する。本実施形態では様々な記録材Pに対応させるため、記録材Pの種類(より具体的には坪量)に応じて「135~200℃」の範囲で温調温度が設定される。
【0022】
第二回転体としての加圧ローラ202は不図示のバネ等によって例えば総圧力約784N(約80kg)で定着ローラ201に圧接し、定着ローラ201との間に定着ニップ部を形成する。加圧ローラ202は定着ローラ201に圧接することで、回転する定着ローラ201に従動回転する。トナー像が形成された記録材Pは、これら回転する定着ローラ201と加圧ローラ202とにより挟持搬送され、定着ニップ部を通過する際に熱及び圧力が加えられることにより、記録材P上にトナー像が定着される。
【0023】
<ウェブユニット>
上記のように、定着ローラ201は加熱され表面温度が高いことから、熱によって溶融された記録材P上のトナー(所謂、オフセットトナー)が付着し易い。また、画像形成動作中に記録材Pがジャムした場合に、記録材P上の未定着トナーが定着ローラ201に付着する虞がある。そこで、定着ローラ201に付着したトナーを除去するために、ウェブユニット210が設けられている。
【0024】
クリーニングユニットとしてのウェブユニット210は、ウェブ供給ローラ211と、クリーニングウェブ(以下、単にウェブ212)と、定着ローラ201に当接する回収ローラ204と、ウェブ押圧ローラ213と、ウェブ巻き取りローラ214を備える。供給部としてのウェブ供給ローラ211は未使用のウェブ212を保持し、ウェブ巻き取りローラ214に従動してウェブ212を回収ローラ204との摺擦位置Kに供給可能である。ウェブ212は、例えばノーメックス(登録商標)やヒメロンなどの耐熱不織布により、幅「330mm」、全長「37000mm」、厚さ「65μm」に形成されている。
【0025】
巻き取り部としてのウェブ巻き取りローラ214はウェブ駆動モータ240により回転駆動され、ウェブ供給ローラ211から送り出され使用済みとなったウェブ212を巻き取る。ウェブ巻き取りローラ214は、ウェブ212の未使用部分を回収ローラ204に当接させるように、ウェブ212を巻き取る。ウェブ212はウェブ供給ローラ211との間に架け渡されて、ウェブ巻き取りローラ214に巻き取られた状態(ロール状態)で取り外し可能に保持されている。
【0026】
押圧回転体としてのウェブ押圧ローラ213は回転自在に設けられ、またウェブ供給ローラ211から送り出されたウェブ212を回収ローラ204へ押圧している。それ故、ウェブ212は回収ローラ204に対し当接する。つまり、ウェブ212は定着ローラ201を直接摺擦することなく、定着ローラ201に当接し従動回転する回収ローラ204を摺擦する。こうして、定着ローラ201に付着したトナーが回収ローラ204により清掃され、回収ローラ204を介してウェブ212により間接的に除去されるようにしている。
【0027】
回転体(中間回転体)としての回収ローラ204は例えば直径「20mm」の棒状の金属部材であって、表層がステンレス(SUS304)などで形成されている。この場合、回収ローラ204におけるトナーに対しての離型性が定着ローラ201の離型層よりも低いため、定着ローラ201からトナーが回収ローラ204に移って付着しやすい。そして、回収ローラ204にウェブ212が当接されることで、回収ローラ204上(回転体上)に付着したトナーがウェブ212により除去される。例えば、定着ローラ201と回収ローラ204が形成するニップ部の回転方向長さは約「2mm」であり、回収ローラ204とウェブ212が形成するニップ部の回転方向長さは約「8mm」である。
【0028】
ところで、ウェブ212により定着ローラ201に付着したトナーを除去する本実施形態の場合、ウェブ212が使い切られると、ウェブ212をそれ以上巻き取ることができず、同一箇所で回収ローラ204を繰り返し摺擦することになる。そうなると、定着ローラ201上に付着したトナーが除去されずに定着ローラ201に連れ回り、定着の際に記録材Pに付着し得るのでトナー汚れを生じさせる原因となる。そこで、使い切られた状態でウェブ212が使用されないようにするために、ウェブ212が所定残量に達したことを検出するようにしている。以下、ウェブ212が所定残量に達したことを検出するための切り欠きセンサユニットの構成及び動作について、
図3(a)乃至
図4(b)を用いて説明する。
【0029】
<切り欠きセンサユニット>
ウェブ212には、
図3(a)に示すように、移動方向(巻き取り方向)に切り欠き部212aが形成されている。切り欠き部212aは、ウェブ212の移動方向に交差する方向の縁部に形成されている。切り欠きセンサユニット300は、ウェブ212の巻き取りに伴って切り欠き部212aを検出可能に、ウェブ212の移動経路に配置されている。
【0030】
切り欠きセンサユニット300は、当接部としてのフラグ301と、検出部としてのフラグセンサ302とを有する。フラグ301は、不図示のバネによってウェブ212に向けて付勢され、ウェブ212に当接するように変位可能に配置されている。切り欠きセンサユニット300は、ウェブ212の巻き取りに伴って上記の切り欠き部212aが通過したことをフラグセンサ302により検出する。検出センサとしてのフラグセンサ302は発光部と受光部とを有するフォトセンサであり、制御部150(
図1参照)に信号入出力可能に接続されている。
【0031】
図3(a)に示すように、フラグ301がウェブ212に当接した当接状態にある場合、
図4(a)に示すように、フラグ301によって発光部と受光部との間が遮られず、フラグセンサ302は発光部から発せられる光が受光部に受光された透光状態(OFF)にある。他方、
図3(b)及び
図3(c)に示すように、フラグ301の当接状態が解除されると、
図4(b)に示すように、フラグ301によって発光部と受光部との間が遮られ、フラグセンサ302は発光部から発せられる光が受光部に受光されない遮光状態(ON)に変わる。
【0032】
そして、ウェブ212の始端から切り欠き部212aまでは、フラグ301の当接状態が解除されず、フラグセンサ302は透光状態に維持される。他方、ウェブ212の切り欠き部212aがフラグ301に到達すると、フラグ301の当接状態が解除され、フラグセンサ302は透光状態から遮光状態へ移行する。そして、その後は、
図3(c)に示すように、フラグ301は変位したまま変位前の位置に戻らず、フラグセンサ302は
図4(b)に示した透光状態に維持される。
【0033】
このように、フラグ301が切り欠き部212aに到達することに伴い、フラグセンサ302が透光状態から遮光状態に変わることにより、切り欠きセンサユニット300はウェブ212の切り欠き部212aを検出し得る。切り欠き部212aは、例えばウェブ212の始端からの長さがウェブ212の全長の「95%」の位置に形成される。例えば、ウェブ212の全長が「37000mm」であれば、ウェブ212の始端からのウェブ長さが「35150mm」の所定位置、言い換えればウェブ残量が「1850mm」の位置に、切り欠き部212aが形成されることになる。例えば、ウェブ巻き取りローラ214に巻き取られるウェブ212の巻き取り量が「0.1mm/枚」であるならば、ウェブ残量が「18500枚」のときに検出される。
【0034】
<ウェブ外径検出部>
本実施形態では、ウェブ巻き取りローラ214に巻き取られたウェブ212の外径を検出するために、ウェブ外径検出部220が設けられている。ウェブ外径検出部220について、
図5(a)乃至
図6を用いて説明する。
図5(a)は、ウェブ巻き取りローラ214にウェブ212がまだ巻き取られていない状態を示す。
図5(b)は、ウェブ巻き取りローラ214にウェブ212が巻き取られている状態を示す。
【0035】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、外径信号出力部としてのウェブ外径検出部220は、外径検出レバー221と、リンクギア222と、2段ギア223と、ロータリーボリュームギア224と、ロータリー型ボリューム抵抗225とを有する。
【0036】
揺動部としての外径検出レバー221は、一端側がウェブ巻き取りローラ214に巻き取られたウェブ212の表面に、ウェブ212の巻き取りに影響しない程度の圧力で当接し、他端側がリンクギア222に当接している。外径検出レバー221は、ウェブ巻き取りローラ214に巻き取られたウェブ212の外径の大きさに従って揺動可能に設けられている。それ故、ウェブ212の外径の大きさに従って一端側が変位すると、他端側がリンクギア222を押下する。これにより、リンクギア222は外径検出レバー221に連動して揺動する。
【0037】
リンクギア222は2段ギア223と噛み合っており、リンクギア222が外径検出レバー221の回動量にリンクして揺動すると、2段ギア223は回転する。2段ギア223はロータリーボリュームギア224とも噛み合っており、2段ギア223が回転すると、ロータリーボリュームギア224が回転する。ロータリーボリュームギア224のギア軸はDカット軸であり、ロータリー型ボリューム抵抗225の回転部225aと勘合している。そのため、ロータリーボリュームギア224の回転に応じて、ロータリー型ボリューム抵抗225の回転部225aが回転する。
【0038】
こうして、本実施形態では、ウェブ212が巻き取られ、ウェブ巻き取りローラ214に巻き取られたウェブ212の外径が大きくなることに伴い、外径検出レバー221が半時計回りに回動する。外径検出レバー221が回動すると、リンクギア222、2段ギア223、ロータリーボリュームギア224を介して、ロータリー型ボリューム抵抗225の回転部225aが回転される。ロータリー型ボリューム抵抗225は端子1~3を有しており、回転部225aの回転角度によって端子1~2間の抵抗値R12、及び端子2~3間の抵抗値R23の抵抗値が変化する。
【0039】
図6に示すように、ロータリー型ボリューム抵抗225の端子1~3は制御部150に接続されている。詳しくは、端子1はGNDに、端子2は検出電圧VsnsとしてCPU151に繋がれている入力端子に、端子3は「3.3V」電源にそれぞれ接続されている。本実施形態では、ロータリー型ボリューム抵抗225の全抵抗値R13(端子1~3間の抵抗値)を「10kΩ」とし、ロータリー型ボリューム抵抗225の回転部225aの回転角度によって、端子1~2間の抵抗値R12と端子2~3間の抵抗値R23が変化する。つまり、抵抗値「R13=R12+R23=10kΩ」である。また、CPU151へ入力される検出電圧Vsnsは、電源により印加される「3.3V」を抵抗値R12と抵抗値R23の比で得られる電圧であり、以下に示す式1から求められる。
Vsns=3.3V×(R12)÷(R12+R23)・・・式1
【0040】
このように、ウェブ外径検出部220は、ウェブ巻き取りローラ214に巻き取られたウェブ212の外径を機械的な揺動量として得て、変換部としてのロータリー型ボリューム抵抗225により機械的な揺動量を信号値として検出電圧Vsnsに変換して出力する。
【0041】
<制御部>
画像形成装置100は制御部150を備えており、
図2に示すように、制御部150には操作部180、ウェブ駆動モータ240、ウェブ外径検出部220が接続されている。制御部150には
図2に示した以外にも、例えば感光ドラムや駆動ローラ等を回転駆動するモータ、帯電電圧や一次転写電圧等の電圧を印加する電源などの各種機器が接続されているが、ここでは発明の本旨でないのでそれらの図示及び説明を省略する。
【0042】
制御部150は、画像形成動作などの画像形成装置100の各種動作を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)151、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリ152を有する。メモリ152には、画像形成装置100を制御するための各種プログラムや各種データが記憶される。CPU151は、メモリ152に記憶されている画像形成処理(不図示)や後述する「ウェブ残量検出処理」(
図8参照)などの各種プログラムを実行し得る。また、メモリ152は各種プログラムの実行に伴う演算処理結果などを一次的に記憶し得る。
【0043】
制御部150には、装置本体100aに設けられた操作部180が接続される。操作部180は、制御部150への各種情報の入力や制御部150から得られる各種情報の表示を行い得る。操作部180は例えばタッチパネルであって、制御部150は使用者による操作部180上に表示されたソフトウェアキーの操作に応じて、例えば画像形成ジョブの開始など各種情報の入力を受け付ける。また、制御部150は、ウェブ212の交換を促す交換メッセージや動作エラーなどの各種情報、実行可能な各種プログラムを操作部180に表示して使用者に提示する。なお、ウェブ212の交換を使用者に提示する場合、操作部180への交換メッセージの表示によらず、例えばLEDによる光の点滅やスピーカによる警告音の発生等によって提示できるようにしてもよい。
【0044】
画像形成ジョブとは、記録材Pに画像形成するプリント信号に基づいて、画像形成動作を開始してから画像形成動作を完了するまでの一連の動作のことである。即ち、画像形成を行うにあたり必要となる予備動作(所謂、前回転)を開始してから、画像形成工程を経て、画像形成を終了するにあたり必要となる予備動作(所謂、後回転)が完了するまでの一連の動作のことである。具体的には、プリント信号を受けた(画像形成ジョブの受信)後の前回転時(画像形成前の準備動作)から、後回転(画像形成後の動作)までのことを指し、画像形成期間、紙間を含む。
【0045】
また、制御部150には上記のフラグセンサ302が接続され、フラグセンサ302がフラグ301の変位を検出したことに基づいて(
図3(b)参照)、制御部150はウェブ212の残量に関する情報としてウェブ212が所定残量に到達したことを出力する。さらに、本実施形態の場合、ウェブユニット210におけるウェブ212の交換を検出可能なウェブ交換センサ700が設けられ、制御部150に接続されている。制御部150はウェブ交換センサ700の検出信号に基づいて、ウェブ212が交換されたか否かを判定し得る。なお、制御部150には上記した開閉センサ710が接続され、開閉センサ710により扉500の開閉が検出された場合、定着ユニット9のメンテナンス作業やウェブ212の交換作業が行われたと判定してよい。
【0046】
制御部150は、上述したように、ウェブ巻き取りローラ214を回転駆動する駆動部としてのウェブ駆動モータ240を制御する。制御部150は、所定枚数の記録材Pにトナー像を形成する毎に、ウェブ212の巻き取り量が所定値(例えば、0.1mm/枚)となるように、ウェブ駆動モータ240を制御する。定着ローラ201に付着するトナーが多い場合には、ウェブ212がより大きい巻き取り量(例えば、0.5mm/枚)でウェブ供給ローラ211から送り出されるように、ウェブ駆動モータ240を制御するのが好ましい。なお、複数枚の記録材Pにトナー像を形成する毎に、ウェブ212の巻き取り量が所定値(例えば、0.1mm/10枚)となるように、ウェブ駆動モータ240を制御してもよい。
【0047】
また、上述したように、本実施形態では、ウェブ外径検出部220によりウェブ巻き取りローラ214に巻き取られたウェブ212の外径を検出できるようにしている。ウェブ外径検出部220は、外径検出レバー221を用いてウェブ巻き取りローラ214のウェブ外径を機械的に揺動量として得て、この揺動量をロータリー型ボリューム抵抗225により電圧値(検出電圧Vsns)に変換して制御部150に出力する。
【0048】
ウェブ212の外径(mm)と、ロータリー型ボリューム抵抗225の検出電圧Vsns(V)と、ウェブ残量予測値(mm)とにおける各値の一例を示すテーブルデータを、表1に示す。このテーブルデータは、予めメモリ152に記憶されている。なお、検出電圧Vsnsが表1に記載ない場合、ウェブ212の外径及びウェブ残量予測値は表1において実際の検出電圧Vsnsに近い2点の規定値を線形補間した値となる。制御部150は、ウェブ外径の大小に関わらず、1回当たりのウェブ212の巻き取り量が所定値となるように、ウェブ残量予測値に基づいてウェブ駆動モータ240を制御してウェブ巻き取りローラ214の回転量を調整し得る。
【表1】
【0049】
ところで、画像形成装置100では、使用者が電源をオフしてウェブユニット210をメンテナンスすることがある。その際に、使用者がウェブ212の張り直しを行うこともあり、それに応じてウェブ残量は減少する。上記したウェブ外径検出部220を有しておらず、上述したフラグ301の変位によってウェブ残量が所定残量に達したことを検出する比較例の場合、フラグ301の変位後にウェブ残量が減少しても、正しいウェブ残量を検出することが難しい。ここで、比較例におけるウェブ残量の検出方法について
図7(a)を用い、本実施形態におけるウェブ残量の検出方法について
図7(b)を用いて、それぞれ説明する。
【0050】
比較例では、
図7(a)に示すように、ウェブ212の残量が十分に「有り」の場合、つまりはフラグ301が切り欠き部212aを通過しておらず変位していない状態である場合は、フラグセンサ302は透光状態(OFF)である。フラグセンサ302が透光状態(OFF)から遮光状態(ON)になると、制御部150はウェブ残量が所定残量に達した「ニアエンド状態」であるとする。
【0051】
制御部150は「ニアエンド状態」から、ウェブ212の巻き取り回数などをカウントした「ニアエンドカウンタ」を用いて、ウェブ残量が所定残量よりも少なくなっても、ウェブ残量を推定することができる。「ニアエンドカウンタ」は、画像形成装置100が電源オン状態のときに制御部150によりカウントされる。そして、制御部150は「ニアエンドカウンタ」が所定のエンド閾値を超えると、ウェブ212の交換が必要な「エンド状態」と判定する。つまり、「ニアエンド状態」は、所定枚数の記録材Pに対する画像形成であればウェブ212が足りる所定残量以下である状態を示す。「エンド状態」は、「ニアエンド状態」よりもウェブ残量が少なく、新たに画像形成ジョブを行うとウェブ212を使い切ってしまう虞がある状態を示す。比較例の場合、制御部150は「ニアエンド状態」と「エンド状態」の違いを「ニアエンドカウンタ」で区別し、「ニアエンドカウンタ」が例えばエンド閾値「50000」より大きくなれば「ニアエンド状態」から「エンド状態」に移行したと判定する。
【0052】
ただし、比較例の場合、ウェブユニット210のメンテナンス作業時に、ウェブ212が張り直されたとしても、画像形成装置100が電源オフ状態であるので、「ニアエンドカウンタ」はカウントされない。つまり、ウェブ残量の更新は、画像形成装置100が電源オン状態のときに行われ、電源オフ状態のときには行われないため、電源オフ状態のときにウェブ212の巻き直しが行われた場合、ウェブ残量の推定が難しかった。
【0053】
そうであると、電源オンの前後で推定されるウェブ残量に誤差が生じ得るので、「ニアエンド状態」の検出後はウェブ212の交換を使用者に報知し、ウェブ212が交換されるまで、新たな画像形成ジョブの実行を許可しないようにしている。即ち、比較例の場合、フラグ301が変位し「ニアエンド状態」になると、実行中の画像形成ジョブの終了後に、使用者は引き続き画像形成ジョブを実行しようとしても、ウェブ212を交換してからでないと、新たに画像形成ジョブを実行することができなかった。このように、比較例の場合、フラグ301の変位後、使用者はウェブ212に残量があるにも関わらずウェブ212の交換を行わざるを得なかったので、ウェブ212に無駄が生じていた。
【0054】
これに対し、本実施形態では、
図7(b)に示すように、切り欠きセンサユニット300によるウェブ残量の検出後に、ウェブ外径検出部220により検出されるウェブ212の外径と「ニアエンドカウンタ」とを用いて、「ニアエンド状態」以降におけるウェブ212の残量を推定できる。そして、詳しくは後述するが、「ニアエンド状態」以降に電源オフされてから電源オンされた場合には、制御部150がウェブ212の外径変化に基づいて画像形成ジョブの実行可否を判定するようにしている。
【0055】
なお、ウェブ外径検出部220(詳しくはロータリー型ボリューム抵抗225)の検出電圧Vsnsは、ギアのかみ合わせなどによる誤差を含み得るため、精度に限界がある。そのため、
図7(b)に示すように、ウェブ外径検出部220の検出電圧Vsnsをそのまま用いるのではなく、ウェブ212の外径に応じた所定区分(例えば、小、中、大の3区分)に分けて、外径変化の判定に用いている。例えば、表1に示した外径テーブルデータにおいて、「20mm」以下のウェブ外径が「小」、「20mmより大きく50mm以下」のウェブ外径が「中」、「50mm」より大きいウェブ外径が「大」に相当する。
図7(b)に示す残量判定データは、予めメモリ152に記憶されている。
【0056】
また、ウェブ外径検出部220によるウェブ外径の検出精度を高める方法として、ロータリー型ボリューム抵抗225の検出電圧Vsnsを基準点で校正する方法がある。本実施形態では、例えば切り欠きセンサユニット300(詳しくはフラグセンサ302)が「ON」となった「ニアエンド状態」のロータリー型ボリューム抵抗225の検出電圧が基準点としてメモリ152に記憶され、「ニアエンド状態」以降における検出電圧Vsnsの校正に用いる。これにより、「ニアエンド状態」から「エンド状態」までのウェブ212の外径を精度よく検出できる。また、例えば切り欠きセンサユニット300が「OFF」つまり「ニアエンド状態」となったときに、ロータリー型ボリューム抵抗225の検出電圧を別の基準点としてメモリ152に記憶しておき、ウェブ212の交換後から「ニアエンド状態」までにおける検出電圧Vsnsの校正に用いてよい。
【0057】
<ウェブ残量判定処理>
次に、本実施形態の「ウェブ残量判定処理」について、
図2、
図3、
図7を参照しながら
図8乃至
図10を用いて説明する。本実施形態の場合、使用者は例えばウェブ212の巻き直しを含む定着ユニット9のメンテナンス作業を行う前に画像形成装置100の電源をオフし、メンテナンス作業後に画像形成装置100の電源をオンする。ここに示す「ウェブ残量判定処理」は、画像形成装置100が電源オフされてから電源オンされることに応じて、制御部150により開始されて繰り返し実行される。
【0058】
制御部150は、装置本体100aの電源オンに伴い、切り欠きセンサユニット300が「OFF」か否かを判定する(S1)。切り欠きセンサユニット300が「OFF」である場合、即ちウェブ212が所定残量に達していない場合(S1のYes)、制御部150はウェブ212に十分な「残量あり」と検出して(S2)、「ウェブ残量判定処理」を終了する。ウェブ212に十分な残量がある場合、制御部150は画像形成ジョブを実行しているときに、所定枚数の記録材Pにトナー像を形成する毎に、ウェブ駆動モータ240を駆動してウェブ巻き取りローラ214により所定量のウェブ212の巻き取りを行う。
【0059】
切り欠きセンサユニット300が「ON」である場合、即ち切り欠き部212aにおいてフラグ301が変位した状態で、ウェブ212が所定残量に達している場合(S1のNo)、制御部150は既に「ニアエンド継続不可」に設定済みであるか否かを判定する(S3)。「ニアエンド継続不可」は、後述する「ニアエンド継続処理」(
図8参照)により設定される。「ニアエンド継続不可」に設定済みである場合(S3のYes)、制御部150は「ウェブ残量判定処理」を終了する。
【0060】
「ニアエンド継続不可」に設定済みでない場合(S3のNo)、制御部150は後述する「ニアエンド継続処理」を実行する(S4)。その後、制御部150は、「ニアエンド継続処理」の実行に伴い「ニアエンド継続不可」に設定したか否かを判定する(S5)。「ニアエンド継続不可」に設定した場合(S5のYes)、制御部150は「ウェブ残量判定処理」を終了する。「ニアエンド継続不可」に設定していない場合(S5のNo)、制御部150はニアエンドカウンタに基づいて「ニアエンド状態」から「エンド状態」に移行したかを判定するための「ニアエンドカウンタ処理」を実行してから(S6)、「ウェブ残量判定処理」を終了する。「ニアエンドカウンタ処理」については後述する(
図10参照)。
【0061】
<ニアエンド継続処理>
上記の「ニアエンド継続処理」(
図8のS4)について、
図2を参照しながら
図9を用いて説明する。まず、制御部150は、ウェブ外径検出部220により検出されるウェブ外径を変数rol_Nowとしてメモリ152にセットする(S11)。そして、制御部150は、前回「ウェブ残量判定処理」を実行したときから電源のオフがあったか否かを判定する(S12)。
【0062】
前回の処理後に電源がオフからオンされていない場合(S12のNo)、制御部150はウェブ残量に余裕があるとして、変数rol_Nowを変数rol_lastにセットしメモリ152に記憶してから(S15)、「ウェブ残量判定処理」(
図8参照)に戻る。他方、前回処理後に電源がオフからオンされている場合(S12のYes)、制御部150は、変数rol_Nowと変数rol_lastとの差の絶対値を閾値end_thと比較して、ウェブ外径が変化したか否かを判定する(S13)。ここでは、変数rol_Nowと変数rol_lastとの差の絶対値が閾値end_thより大きい場合に、電源オンの前後においてウェブ外径が変化したと判定する。なお、閾値end_thは例えば実験的に得られたウェブ外径検出部220の誤差を加味して、ウェブ外径の変化を判定できる値に設定されている。
【0063】
ウェブ外径が変化していない場合(S13のNo)、制御部150は上記したステップS15の処理を行って「ウェブ残量判定処理」(
図8参照)に戻る。他方、ウェブ外径が変化している場合(S13のYes)、制御部150は「ニアエンド継続不可」と設定する(S14)。つまり、画像形成装置100の電源オン時に、電源オフ時に出力されていたウェブ外径検出部220の信号値(変数rol_last)と、電源オン時に出力されたウェブ外径検出部220の信号値(変数rol_Now)との差の絶対値が閾値end_thより大きい場合には、「ニアエンド継続不可」と設定して画像形成ジョブの実行を許可しない。他方、信号値(変数rol_last)と信号値(変数rol_Now)との差の絶対値が閾値end_th以下(閾値以下)の場合には、「ニアエンド継続不可」と設定せず画像形成ジョブの実行を許可する。
【0064】
即ち、本実施形態において、「ニアエンド継続不可」と設定された場合、制御部150は操作部180などから画像形成ジョブの開始が入力されても画像形成ジョブの実行を許可しない。これは、電源オフ時にウェブ212の残量が所定残量よりも減少した可能性があり、その後に画像形成ジョブを行うと、ウェブ212の使用によりウェブ212を使い切り、ウェブ212の破れやクリーニング不良を生じさせる虞があるからである。
【0065】
<ニアエンドカウンタ処理>
上記の「ニアエンドカウンタ処理」(
図8のS6)について、
図2を参照しながら
図10を用いて説明する。まず、制御部150は、「ニアエンド状態」になってから「ニアエンドカウンタ処理」が初回の実行であるか否かを判定する(S21)。初回の実行であるか否かを判定するために、制御部150は例えば切り欠きセンサユニット300の検出結果に基づき「ニアエンド状態」と判定したときに、次が初回であることをメモリ152に記憶するなどしておけばよい。
【0066】
「ニアエンドカウンタ処理」が初回の実行でない場合(S21のNo)、制御部150はステップS23の処理へジャンプする。「ニアエンドカウンタ処理」が初回の実行である場合(S21のYes)、制御部150は「ニアエンドカウンタ」をクリアして(S22)、ステップS23の処理へ進む。ここでは、変数endで記した「ニアエンドカウンタ」を「0」にクリアする。
【0067】
ステップS23において、制御部150は前回の「ニアエンドカウンタ処理」実行後、所定枚数の記録材Pにトナー像を形成する毎に所定量のウェブ212を巻き取る巻き取り動作を行ったか否かを判定する。ウェブ212の巻き取り動作を行っていない場合(S23のNo)、制御部150は「ウェブ残量判定処理」(
図8参照)に戻る。ウェブ212の巻き取り動作を行っている場合(S23のYes)、制御部150はウェブ残量を推定するために「ニアエンドカウンタ」をカウントアップする(変数end=変数end+1、S24)。
【0068】
「ニアエンドカウンタ」はウェブ212が所定残量になった以降におけるウェブ212の巻き取り回数を示し、ウェブ212が所定残量になった以降にウェブ212を巻き取る所定量の積算値を示す指標となる。即ち、「ニアエンドカウンタ」と「ウェブ212を巻き取る所定量」とを乗算すれば、ウェブ212が所定残量になった以降のウェブ212の巻き取り量となる。なお、ここでは、ウェブ212の巻き取りを1回行うごとに変数endに「1」加算としたが、これ限らず、例えば記録材Pのサイズや画像サイズが所定以上であれば「2」加算、あるいは更にサイズ比に応じた任意の数値を加算するなどしてよい。
【0069】
制御部150は、「ニアエンドカウンタ」がエンド閾値(所定回数)よりも大きいか否かを判定する(S25)。「ニアエンドカウンタ」がエンド閾値以下である場合(S25のNo)、制御部150は「ウェブ残量判定処理」に戻る。他方、「ニアエンドカウンタ」がエンド閾値より大きい場合(S25のYes)、制御部150は「ニアエンド継続不可」に設定し(S26)、「ウェブ残量判定処理」に戻る。これは、ウェブ212の使用に応じて「ニアエンド状態」から「エンド状態」に移行し、新たに画像形成ジョブを行うとウェブ212を使い切ってしまう虞があるからである。
【0070】
以上のように、本実施形態では、ウェブ212が所定残量に達した以降に、画像形成装置100が電源オフされてから電源オンされた場合に、電源オフ時と電源オン時とにおけるウェブ212の外径変化に基づいて、画像形成ジョブの実行許可の判定を行う。電源オフ時と電源オン時とにおけるウェブ212の外径変化が所定の閾値以下であれば、電源オフ時にウェブ212の巻き直しが行われた可能性がなく、電源オフ時から電源オン時までにウェブ残量が減少していないと看做し、画像形成ジョブの実行を許可する。他方、電源オフ時と電源オン時とにおけるウェブ212の外径変化が所定の閾値より大きければ、電源オフ時にウェブ212の巻き直しが行われた可能性があり、電源オフ時から電源オン時までにウェブ残量が減少したと看做し、画像形成ジョブの実行を許可しない。
【0071】
これにより、ウェブ212が所定残量になった以降に、画像形成装置100が電源オフされてから電源オンされたとしても、ウェブ212に残量があれば画像形成ジョブを実行可能となる。即ち、所定残量に達したウェブ212が張り直された後であっても、電源オフ時から電源オン時までにウェブ残量が減少していないような場合、使用者はウェブ212を交換せずとも画像形成ジョブを実行させることができるので、ウェブに無駄を生じさせることがない。また、ウェブの交換を待たずに画像形成ジョブの実行が可能となるので、画像形成装置100の運用効率を向上させることができる。
【0072】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
画像形成装置であって、
記録材にトナー像を形成する画像形成ユニットと、
回転体と、
前記回転体に摺擦し前記回転体上のトナーを除去するウェブと、前記ウェブを前記回転体との摺擦位置に供給可能な供給部と、前記供給部との間に架け渡された前記ウェブを巻き取る巻き取り部とを有するクリーニングユニットと、
前記巻き取り部を駆動する駆動部と、
前記ウェブが所定残量になったことを検出する検出部と、
前記巻き取り部に巻き取られた前記ウェブの外径に基づく信号を出力する外径信号出力部と、
前記画像形成ユニットを制御して記録材にトナー像を形成する画像形成ジョブを実行可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記検出部により前記ウェブが所定残量になったことを検出した状態で、前記画像形成装置が電源オフされてから電源オンされた場合に、前記画像形成装置の電源オフ時に出力されていた前記外径信号出力部の信号値と、前記画像形成装置の電源オン時に出力された前記外径信号出力部の信号値との差の絶対値が、所定の閾値以下の場合には前記画像形成ジョブの実行を許可し、前記絶対値が前記閾値より大きい場合には前記画像形成ジョブの実行を許可しない、
ことを特徴とする画像形成装置。
(2)
前記ウェブは、前記所定残量を示す位置に切り欠き部が形成されており、
前記検出部は、前記ウェブに当接するように変位可能に配置された当接部と、前記切り欠き部を通過した際の前記当接部の変位を検出可能な検出センサとを有し、前記当接部が前記切り欠き部を通過して変位した場合に前記ウェブが所定残量になったことを検出する、
ことを特徴とする前記(1)に記載の画像形成装置。
(3)
前記制御部は、画像形成ジョブを実行している場合、所定枚数の記録材にトナー像を形成する毎に、前記駆動部を駆動して前記巻き取り部により所定量の前記ウェブを巻き取り、
前記ウェブが所定残量になった以降の前記ウェブの巻き取り回数が所定回数よりも大きくなった場合、実行している画像形成ジョブの終了後は画像形成ジョブの実行を許可しない、
ことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の画像形成装置。
(4)
前記制御部は、1回当たりの前記ウェブの巻き取り量が前記所定量となるように、前記外径信号出力部の信号値に基づいて前記駆動部を制御して前記巻き取り部の回転量を調整する、
ことを特徴とする前記(3)に記載の画像形成装置。
(5)
前記外径信号出力部は、前記巻き取り部に巻き取られた前記ウェブの表面に当接し、前記ウェブの外径の変化に応じて揺動する揺動部と、前記揺動部の揺動に応じて回転する回転部と、前記回転部の回転に応じて抵抗値を変化させて前記揺動部の揺動量を電圧値に変換し前記ウェブの外径に基づく信号として出力する変換部とを有する、
ことを特徴とする前記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の画像形成装置。
(6)
記録材にトナー像を形成する画像形成ユニットと、
第一回転体と、前記第一回転体に当接して記録材を挟持搬送する定着ニップ部を形成する第二回転体とを有し、前記画像形成ユニットにより記録材に形成されたトナー像を記録材に定着する定着ユニットと、
前記ウェブと前記第一回転体との間に配置され、前記第一回転体と当接して前記第一回転体を清掃する中間回転体と、を備え、
前記回転体は、前記中間回転体である、
ことを特徴とする前記(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の画像形成装置。
(7)
前記供給部と前記巻き取り部の間に配置され、前記ウェブを前記中間回転体に向けて押圧する押圧回転体を備える、
ことを特徴とする前記(6)に記載の画像形成装置。
【符号の説明】
【0073】
9…定着ユニット、100…画像形成装置、150…制御部、201…第一回転体(定着ローラ)、202…第二回転体(加圧ローラ)、204…回転体(中間回転体、回収ローラ)、210…クリーニングユニット(ウェブユニット)、211…供給部(ウェブ供給ローラ)、212…ウェブ、212a…切り欠き部、213…押圧回転体(ウェブ押圧ローラ)、214…巻き取り部(ウェブ巻き取りローラ)、220…外径信号出力部(ウェブ外径検出部)、221…揺動部(外径検出レバー)、225…変換部(ロータリー型ボリューム抵抗)、240…駆動部(ウェブ駆動モータ)、301…当接部(フラグ)、302…検出センサ(フラグセンサ)、312…検出部(フラグセンサ)、600…画像形成ユニット、P…記録材