(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181586
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】回転電機の巻線機および回転電機の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/085 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
H02K15/085
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094796
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 勇士
(72)【発明者】
【氏名】中上 匠
(72)【発明者】
【氏名】仲 興起
(72)【発明者】
【氏名】原田 和也
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615PP01
5H615PP13
5H615QQ02
5H615QQ19
5H615SS11
(57)【要約】
【課題】ノズルを動かすノズル駆動方式の巻線機において、高速で巻線でき、かつノズル位置の変更を容易に行える回転電機の巻線機および回転電機の製造方法を提供する。
【解決手段】回転電機を構成するステータ1のコア2に対してノズル3を経由して線材4を巻線する回転電機の巻線機であって、ノズル3をステータ1のコア2の軸方向に沿って移動させる縦方向移動機構12と、縦方向移動機構12とは独立してコア2を周方向に回転かつ揺動する回転揺動機構13とを備える。そして、この回転電機の巻線機を用いて、コア2に線材4を巻線して回転電機を製造する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機を構成するステータのコアに対してノズルを経由して線材を巻線する回転電機の巻線機であって、
前記ノズルを前記コアの軸方向に沿って移動させる縦方向移動機構と、
前記縦方向移動機構とは独立して前記コアを周方向に回転かつ揺動する回転揺動機構と、を備えた回転電機の巻線機。
【請求項2】
前記縦方向移動機構は、リニアサーボモータを備えてなる、請求項1に記載の回転電機の巻線機。
【請求項3】
前記回転揺動機構は、前記コアを把持するコア把持機構、前記コア把持機構に取り付けられた主シャフトに固定された出力側ギヤ、前記出力側ギヤに歯合された入力側ギヤ、前記入力側ギヤを補助シャフトを介して駆動する補助駆動モータ、前記主シャフトおよび前記補助シャフトに共に遊嵌されたリンクバー、前記リンクバーを前記主シャフトを中心として揺動駆動するカム、および前記カムを駆動するカム駆動モータを有する、請求項1または請求項2に記載の回転電機の巻線機。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の回転電機の巻線機を用いて、前記コアに線材を巻線して前記回転電機を製造する回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、回転電機の巻線機および回転電機の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機の巻線機においては、線材を供給するノズルをステータコア(以下、単にコアという)に対して円状に回転させてティースに巻線するのではなくて、コアのティース形状に添ってノズルを動かして巻回する、いわゆるノズル巻き方式のものがある(例えば、下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、コアのティース形状に添ってノズルを動かすためには、ノズルを動かすためのモータの加減速が頻繁に必要となる。すなわち、このノズル巻き方式においては、ノズルをサーボモータで動かしているが、サーボモータの加減速を高速に行うには自ずと限界があり、高速で巻線ができないという課題がある。特に、ノズルをコアの円周方向に沿って揺動するには、サーボモータを正転および逆転を交互に行い、かつ、その切り替の時点で加減速を行う必要があるため、高速での巻線は困難である。
【0005】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、ノズルを動かすノズル駆動方式の巻線機において、高速で巻線でき、かつノズル位置の変更を容易に行える回転電機の巻線機および回転電機の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示される回転電機の巻線機は、
回転電機を構成するステータのコアに対してノズルを経由して線材を巻線する回転電機の巻線機であって、
前記ノズルを前記コアの軸方向に沿って移動させる縦方向移動機構と、
前記縦方向移動機構とは独立して前記コアを周方向に回転かつ揺動する回転揺動機構と、を備えたものである。
また、本願に開示される回転電機の製造方法は、前記回転電機の巻線機を用いて、前記コアに線材を巻線して前記回転電機を製造するものである。
【発明の効果】
【0007】
本願に開示される回転電機の巻線機によれば、ノズルを動かすノズル駆動方式の巻線機において、高速で巻線可能となり、かつノズル位置の変更を容易に行える。
また、本願に開示される回転電機の製造方法によれば、製造費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】回転電機のステータを構成するコアの斜視図である。
【
図2】実施の形態1による回転電機の巻線機の全体構成を示す斜視図である。
【
図3】実施の形態1による巻線機が備える回転揺動機構の詳細な構成を示す正面図である。
【
図4】実施の形態1による巻線機のコアに対するノズルの動きを示す説明図である。
【
図5】実施の形態1による巻線機の動作制御用のコントローラの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は回転電機のステータを構成するコアの斜視図、
図2は実施の形態1による回転電機の巻線機の全体構成を示す斜視図、
図3は実施の形態1による巻線機の駆動部の詳細な構成を示す正面図、
図4は実施の形態1による巻線機のノズルの動きを示す説明図、
図5は、実施の形態1による巻線機の動作制御用のコントローラの概略構成を示すブロック図である。
【0010】
この実施の形態1におけるノズル巻き方式の巻線機は、
図1に示すように、回転電機のステータ1を構成するコア2の各々のスロット2aの間に形成されたティース2bに巻線供給用のノズル3を経由して巻線を施すものである。なお、ここでは、コア2の軸方向に沿った図の上下方向をZ方向、コア2の軸方向(Z方向)と直交する図の左右の方向をX方向、コア2の周方向をθ方向と称するものとする。
【0011】
この実施の形態1のノズル巻き方式の巻線機は、
図2に示すように、ノズル3をコア2のX方向に動かす機構11(以下、横方向移動機構11と呼ぶ)と、ノズル3をコア2のZ方向に動かす機構12(以下、縦方向移動機構12と呼ぶ)と、コア2を周方向に回転かつ揺動する機構13(以下、回転揺動機構13と呼ぶ)とを備える。そして、上記の横方向移動機構11、縦方向移動機構12、回転揺動機構13の動作は、コントローラ100により制御される。
【0012】
縦方向移動機構12の先端部には、銅線などの線材4が通るノズル3が設けられている。すなわち、このノズル3には、線材4を通すための穴が形成されており、この穴を線材4が通過してコア2のティース2bに線材4が巻線される。
【0013】
線材4は、線材供給用のボビン5からテンショナユニット6を経由してノズル3につながっている。この場合のテンショナユニット6としては、サーボテンショナ加圧方式など、様々なテンショナ方式が存在するが、この実施の形態1では特に限定されるものではなく、どの方式のものでもよい。
【0014】
横方向移動機構11は、ノズル3をZ方向に動かす縦方向移動機構12の1/10程度の加減速を行うため、一般的に使われるサーボモータとボールねじの組み合せでも可能である。
【0015】
一方、縦方向移動機構12は、コア2に対してノズル3をZ方向に沿って移動させるものであって、この実施の形態1の場合、高加速が要求されるために、リニアサーボモータが採用されている。なお、一般的に使われるサーボモータとボールねじとを組み合わせた機構では、最大で5G程度の加速度しか発生できない。このため、高速で線材4が通るノズル3の動きを、これに合わせて高速化することができない。
【0016】
この実施の形態1におけるノズル巻き方式の巻線機では、
図1に示すように、ノズル3をX方向に動かす横方向移動機構11に対して、ノズル3をZ方向に動かす縦方向移動機構12が取り付けられている。このような構造とすれば、縦方向移動機構12に加わる慣性力が小さくなるので、ノズル3の高加減速を実現することができ都合が良い。
【0017】
これに対して、縦方向移動機構12に対して横方向移動機構11を取り付け、この横方向移動機構11の先端部にノズル3を取り付ける構成が考えられる。この構成であっても、ノズル方式の巻線機としては設備構造的には成立する。しかし、高加減速を必要とする縦方向移動機構12の慣性力がノズル3を左右に動かす横方向移動機構11の重量分だけ増えてしまうので、ノズル3を高速で動かすには不向きである。
【0018】
図3は、この実施の形態1における巻線機が備える回転揺動機構の詳細な構成を示す正面図である。
【0019】
ステータ1を構成するコア2は、コア把持機構20によって固定されている。このコア把持機構20は、主シャフト21の一端側に一体連結されている。主シャフト21の他端側には、リンクバー22が遊嵌されている。すなわち、このリンクバー22は、主シャフト21との芯合わせができるように、主シャフト21が回る回転方向には固定されておらず、回転自在に設けられている。
【0020】
主シャフト21のコア把持機構20とリンクバー22との間に位置する箇所には、太陽歯車としての出力側ギヤ23が主シャフト21と一体的に固定されている。そして、出力側ギヤ23には遊星歯車としての入力側ギヤ24が歯合されている。これにより、入力側ギヤ24が自転すると出力側ギヤ23が回転し、これに伴い、主シャフト21が回り、コア把持機構20で把持されたコア2が回転する。
【0021】
コア2をθ方向に駆動する駆動源には、カム駆動モータ25、および補助駆動モータ26が存在する。
【0022】
ここに、カム駆動モータ25にはカム27が連結されている。このカム27の外周面は、コア把持機構20に把持されたコア2をθ方向に揺動する働きをするカム曲線が形成されている。そして、カム27は、リンクバー22と当接している。これにより、カム27の位相に沿って、リンクバー22が動き、リンクバー22の芯22aを揺動中心として、入力側ギヤ24が出力側ギヤ23の周りを公転する。これにより、コア2がθ方向に搖動する範囲Lθ(
図4参照)が規定される。
【0023】
従来のノズル巻き方式の巻線機においては、ノズル3の駆動用のサーボモータが主シャフト21に直接連結されており、サーボモータでθ方向の搖動をする必要がある。このため、ノズル3をθ方向の移動端で停止した後は、逆方向に回す必要があり、急激な加減速が必要となる。サーボモータの加減速には限界があるので、一定以上に高速巻線をすると、サーボモータが追従できず、最悪の場合、ノズル3がコア2に接触する恐れがある。
【0024】
これに対して、この実施の形態1では、カム27が搖動の動きをするため、カム駆動モータ25は、一方向に回転するのみでよく、停止および逆方向の回転がないため、加減速を必要としない。そのため、高速でコア2をθ方向に搖動できるので、高速での巻線が可能になる。
【0025】
補助駆動モータ26には、補助入力側ギヤ28が一体連結されており、この補助入力側ギヤ28には、補助出力側ギヤ29が歯合されている。補助出力側ギヤ29は、補助シャフト30の一端部に固定され、この補助シャフト30の他端部に前述の入力側ギヤ24が固定されている。また、補助シャフト30には、補助出力側ギヤ29と入力側ギヤ24との間の中間位置において、前述のリンクバー22が遊嵌されている。すなわち、リンクバー22と補助シャフト30とは、互いに固定されておらず、補助シャフト30は、自在に回転するようになっている。
【0026】
これにより、カム駆動モータ25が停止している場合には、補助駆動モータ26を駆動しても、これに伴ってリンクバー22が回転することはなく、入力側ギヤ24のみが回転することで、コア2がθ方向に回転する。
【0027】
また、補助駆動モータ26が停止している場合には、カム駆動モータ25を駆動すると、リンクバー22がその芯22aを中心に揺動するだけで、入力側ギヤ24自体は自転せず、入力側ギヤ24は、リンクバー22の主シャフト21が貫通する芯22aを中心として出力側ギヤ23の外周に沿ってθ方向の一定の範囲Lθ内で揺動する。
【0028】
カム駆動モータ25と補助駆動モータ26が共に駆動される場合には、入力側ギヤ24は、補助駆動モータ26、補助入力側ギヤ28、および補助出力側ギヤ29により自転されるとともに、カム駆動モータ25、カム27、およびリンクバー22の作用により出力側ギヤ23の外周に沿って一定の範囲Lθ内で公転する。したがって、コントローラ100により、カム駆動モータ25と補助駆動モータ26を同期して駆動制御することで、その合算値でコア16をθ方向の一定の範囲Lθ内において回転かつ揺動させることができる。
【0029】
図4は、この実施の形態1におけるコアに対するノズルの動きを示す説明図である。
縦方向移動機構12は、ノズル3を一定範囲Lz内でZ方向に移動させる動きを担当する。
回転揺動機構13を構成するカム駆動モータ25、カム27、およびリンクバー22は、
図4において、同一巻線内でコア2がθ方向に搖動する範囲Lθを規定する。
また、回転揺動機構13を構成する補助駆動モータ26、補助入力側ギヤ28、および補助出力側ギヤ29は、
図4において、ノズル3による一つティース2bに対する巻線開始位置となる移動端P1の位置の調整、および次のティースへの巻線の移動を担当する。
これにより、高速に巻線可能で、かつ巻線位置を微調整可能なコア2の巻線機が構成される。
【0030】
次に、この実施の形態1におけるノズル方式の巻線機を使用した巻線方法について説明する。
【0031】
最初に線材4をテンショナユニット6を経由してノズル3まで通す。次に、コア2をコア把持機構20にセットする。コア把持機構20によるコア2の把持力は、線材4の巻線時にかかる力以上に設定する必要がある。
【0032】
次に、線材4の巻始めの開始位置を調整する。それには、縦方向移動機構12によりノズル3をZ方向に移動するととともに、カム駆動モータ25および補助駆動モータ26を駆動して、コア2をθ方向に移動させ、ノズル3が
図4の移動端P1に到達するように位置調整する。
【0033】
ここに、ノズル3の移動端P1のZ方向の位置調整については、縦方向移動機構12を構成するリニアサーボモータを制御することで調整可能である。また、ノズル3の移動端P1のθ方向の位置調整については、補助駆動モータ26を駆動して補助出力側ギヤ29、入力側ギヤ24、および出力側ギヤ23を経由してコア2を回転させ、これにより、ノズル3のθ方向の位置が移動端P1に来るように調整する。なお、カム駆動モータ25を単独で駆動しても、カム27の動きにより入力側ギヤ24が出力側ギヤ23の周りを公転するだけであって、ノズル3のθ方向の位置を調整することができない。このようにして、この一つのティース2bについての線材4の巻始めの開始位置である移動端P1の位置をコントローラ100に記憶する。
【0034】
次に、縦方向移動機構12によりノズル3をZ方向に駆動して、ノズル3を次の移動端P2まで移動させる。ノズル3の移動端P2のZ方向の位置は、縦方向移動機構12を構成するリニアサーボモータを制御することで調整可能である。そして、この移動端P2の位置をコントローラ100に記憶する。
【0035】
仮に、ノズル3のZ方向の動きの途中で、ノズル3の移動方向を変更したい場合には、移動方向を変更したい位置で、補助駆動モータ26を駆動し、その変更位置をコントローラ100に記憶させることによって、ノズル3の移動端P2のθ方向の位置を変更することができる。
【0036】
次に、カム駆動モータ25を駆動するとともに、これに同期して補助駆動モータ26を駆動して、ノズル3をθ方向に動かして次の移動端P3まで移動させる。ノズル3の移動端P3のθ方向の位置調整は、補助駆動モータ26の回転駆動量を制御することで調整可能である。そして、この移動端P3の位置をコントローラ100に記憶する。
【0037】
仮に、ノズル3のθ方向の動きの途中で、ノズル3の移動方向を変更したい場合には、移動方向を変更したい位置で、縦方向移動機構12を駆動し、その変更位置をコントローラ100に記憶させることで、ノズル3の移動端P3のZ方向の位置を変更することができる。
【0038】
次に、同様にして、縦方向移動機構12によりノズル3をZ方向に駆動して、ノズル3を次の移動端P4まで移動させる。ノズル3の移動端P4のZ方向の位置調整は、縦方向移動機構12を構成するリニアサーボモータを制御することで調整可能である。そして、この移動端P4の位置をコントローラ100に記憶する。
【0039】
仮に、ノズル3のZ方向の動きの途中で、ノズル3の移動方向を変更したい場合は、移動方向を変更したい位置で、補助駆動モータ26を駆動し、その変更位置をコントローラ100に記憶させることで、ノズル3の移動端P4のθ方向の位置を変更することができる。
【0040】
これにより、線材4を巻線する際、1ターン内で重要なノズル3が方向転換する移動端の位置(以下、方向転換位置という)、すなわち、ノズル3の4つの移動端P1、P2、P3、P4の各位置を、カム27の形状を変更することなく、任意に調整することが可能になる。
【0041】
コア2に対する1ターン分の方向転換位置の調整が終わったら、縦方向移動機構12を駆動してノズル3を上下方向(Z方向)に動かすことで、次のターンに移動させて、その方向転換位置をコントローラ100に記憶させる。
【0042】
次に、上述した方法と同様にして、コア2に対して1ターン分を巻線する際に必要となるノズル3の方向転換位置P1~P4をコントローラ100に記憶させる。これを、一つのティース2bについて巻線するのに必要なターン数だけ繰り返すことで、モータ制御に必要な巻線時の全ターンの方向転換位置をコントローラ100に記憶させる。
【0043】
このようにして、一つのティース2bについて巻線をするのに必要なターン数分の方向転換位置P1~P4をコントローラ100に記憶させたなら、補助駆動モータ26を駆動して、ティース2bの1ピッチ分だけコア2を回転してノズル3をθ方向に移動させる。そして、この次のティース2bについても、巻線するのに必要なターン数だけ繰り返す。
【0044】
このようにして、コア2を構成する全てのティース2bについて、各方向転換位置P1~P4をコントローラ100に記憶させる。なお、コア2を構成する全てのティース2bについての方向転換位置P1~P4の情報をコントローラ100に一度記憶させれば、同じ形状においては、再度記憶させる必要はない。
【0045】
上記作業が完了すると、その情報に基づいてコア2への線材4の巻線を実施してステータ1を完成させる。その後は、コア把持機構20を取り外してステータ1を取り出す。
【0046】
以上のように、この実施の形態1の回転電機の巻線機によれば、コア2を軸方向に沿って移動させる縦方向移動機構12と、この縦方向移動機構12とは独立してコア2を周方向に回転かつ揺動する回転揺動機構13とを備えた構成とし、回転揺動機構13では、カム27とリンクバー22を用いたカム機構を利用してコア2をノズル3に対して周方向に沿って揺動するため、カム駆動モータ25の加減速がなくなる。また、カム機構単独ではコア2に対するノズル3の位置決めが困難であるが、補助駆動モータ26により入力側ギヤ24を自転させることで、ノズル3の位置調整が可能となる。これにより、高速で巻線可能となり、かつ、回転電機の製造費用も低減できる。
【0047】
なお、上記の実施の形態1において、コントローラ100は、例えば
図5に示すように、プロセッサ101と記憶装置102とからなるハードウェアで構成される。記憶装置102は、図示していないが、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスク装置などの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ101は、記憶装置102から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ101にプログラムが入力される。また、プロセッサ101は、演算結果等のデータを記憶装置12の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
【0048】
また、本願は、例示的な実施の形態1が記載されているが、この実施の形態1に記載された様々な特徴、態様、および機能は、特定の実施の形態の適用に限られるものではなく、単独で、または様々な組み合わせにより実施の形態1に適用可能である。
【0049】
したがって、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも一つの構成要素を変形する場合、追加する場合、または省略する場合が含まれものとする。
【0050】
以下には、本開示の諸態様を付記として記載する。
(付記1)
回転電機を構成するステータのコアに対してノズルを経由して線材を巻線する回転電機の巻線機であって、
前記ノズルを前記コアの軸方向に沿って移動させる縦方向移動機構と、
前記縦方向移動機構とは独立して前記コアを周方向に回転かつ揺動する回転揺動機構と、を備えた回転電機の巻線機。
(付記2)
前記縦方向移動機構は、リニアサーボモータを備えてなる、付記1に記載の回転電機の巻線機。
(付記3)
前記回転揺動機構は、前記コアを把持するコア把持機構、前記コア把持機構に取り付けられた主シャフトに固定された出力側ギヤ、前記出力側ギヤに歯合された入力側ギヤ、前記入力側ギヤを補助シャフトを介して駆動する補助駆動モータ、前記主シャフトおよび前記補助シャフトに共に遊嵌されたリンクバー、前記リンクバーを前記主シャフトを中心として揺動駆動するカム、および前記カムを駆動するカム駆動モータを有する、付記1または付記2に記載の回転電機の巻線機。
(付記4)
付記1から付記3のいずれか1項に記載の回転電機の巻線機を用いて、前記コアに線材を巻線して前記回転電機を製造する回転電機の製造方法。
【符号の説明】
【0051】
1 ステータ、2 コア、3 ノズル、4 線材、11 横方向移動機構、
12 縦方向移動機構、13 回転揺動機構、20 コア把持機構、21 主シャフト、22 リンクバー、23 出力側ギヤ、24 入力側ギヤ、25 カム駆動モータ、
26 補助駆動モータ、27 カム、30 補助シャフト。