(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181594
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】クロック動作監視回路
(51)【国際特許分類】
H03K 5/19 20060101AFI20231218BHJP
G06F 1/04 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
H03K5/19 L
G06F1/04 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094805
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英明
【テーマコード(参考)】
5J039
【Fターム(参考)】
5J039HH02
5J039HH04
5J039KK15
5J039MM11
(57)【要約】
【課題】 回路の省スペース化および低コスト化が可能なクロック動作監視回路を提供する。
【解決手段】 本発明のクロック動作監視回路100は、クロック信号CLKを入力する入力ノードCLK_INと、ベースに印加される入力電圧に基づきオンまたはオフするNPNトランジスタU1と、入力ノードCLK_INとベースとの間に接続されたRC食列回路と、供給電圧VCCとトランジスタU1のコレクタとの間に電気的に接続された出力ノードDET_OUTとを有する。出力ノードDET_OUTは、クロック信号CLKの周波数が一定以上のとき、Lレベルの監視信号を出力し、クロック信号が途絶えるとHレベルの監視信号を出力する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されるクロック信号の動作を監視するクロック動作監視回路であって、
矩形状のクロック信号を入力する入力ノードと、
制御端子、供給電圧に電気的に接続された第1の端子、基準電圧に電気的に接続された第2の端子を含み、前記制御端子に印加される入力電圧に基づき第1の端子と第2の端子間のオン/オフをスイッチングするトランジスタと、
前記入力ノードと前記制御端子との間に接続されたRC直列回路と、
前記トランジスタの第1の端子に電気的に接続された出力ノードとを有し、
前記RC直列回路は、入力されたクロック信号の周波数に応じた入力電圧を生成し、
前記出力ノードは、入力されたクロック信号の周波数の異常を表す監視信号を出力する、クロック動作監視回路。
【請求項2】
前記RC直列回路は、前記入力ノードに接続された第1のコンデンサと、当該第1のコンデンサに接続された第1の抵抗とを含み、
前記RC直列回路は、入力されるクロック信号に応答して第1のコンデンサへの電荷の充電または第1のコンデンサからの電荷の放電を行う、請求項1に記載のクロック動作監視回路。
【請求項3】
前記入力電圧は、第1のコンデンサと第1の抵抗のRC時定数に基づき決定される、請求項2に記載のクロック動作監視回路。
【請求項4】
前記出力ノードは、入力されるクロック信号の周波数が一定未満であるとき、当該異常を表す監視信号を出力する、請求項1に記載のクロック動作監視回路。
【請求項5】
前記出力ノードは、クロック信号の周波数が一定以上のとき、第1の論理レベルの監視信号を出力し、クロック信号の入力が途絶えたとき、第2の論理レベルの監視信号を出力する、請求項1に記載のクロック動作監視回路。
【請求項6】
クロック動作監視回路は、抵抗、コンデンサおよびトランジスタのみから構成されるディスクリート回路である、請求項1に記載のクロック動作監視回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロックの動作を監視するクロック動作監視回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置や情報処理装置では、クロック信号に同期してデータを処理することがあり、このような場合、クロック信号の検出や監視が必要となる。例えば、特許文献1は、より少ない部品点数でクロック信号の発振異常を検出するクロック発振停止検出回路を開示している。また、特許文献2は、少ない素子数でクロック信号の入力の有無を判定可能なクロック検出回路を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-196851号公報
【特許文献2】特開2006-311176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車内に搭載される電装システムの規模が大きくなっており、ユニット間の信号同期をクロック信号に依存するケースが増えている。このため、クロック信号を監視することは重要である。
図1は、信号同期にクロック信号を用いる電装システムの一構成例を示す図である。例えば、ユニットAの処理部10が、接続先のユニットBの処理部20から伝送路30を介して受け取るクロック信号CLKに同期して、内部の音声パス40に接続されたスピーカ50から音声を出力する構成において、ユニットBの動作が何らかの原因で異常となりクロック信号CLKが途絶えた場合、ユニットAは正常であってもユニットAの音声出力に異常(例えば、ノイズなど)を生じさせるおそれがある。
【0005】
このような事態を回避するため、ユニットA側にクロック監視機構を持たせたり、その機能を持つICを搭載したりして、システムに冗長性を持たせている。しかし、その構成は、複雑あるいは高コストな場合が多く、汎用性も低いという課題がある。
【0006】
例えば、
図2(A)に示すクロック動作監視回路は、ロジックICの組み合わせによりクロック信号を監視するものであり、クロック信号CLKの入力が途絶えると、出力端子CLK_STOPがHレベルまたはLレベルに遷移することで、クロック信号CLKの異常を知らせる。こうしたクロック動作監視回路は、複数のロジックICを用いるため、規模が大きく、コストが比較的高く、また、SPICEモデルが提供されていないため、設計が困難である。
図2(B)は、
図2(A)のクロック動作監視回路を構成するのに必要な2つのロジックIC60、62の平面サイズを例示している。
【0007】
図3(A)は、ウォッチドッグタイマ内蔵ICの一例を示している。このICは、例えば、タイマー周期内にクロック信号CLKが入力されないと、出力端子DET_OUTがHレベルまたはLレベルに遷移することで、クロック信号CLKの異常を知らせる。
図3(B)は、ウォッチドッグタイマ内蔵IC70の平面サイズを、
図2(B)のロジックIC60、62との比較で表したものであり、
図2(A)に示すロジックICの組み合わせ回路60、62よりは省スペース化を図ることができるが、回路コストが高くなってしまう。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、回路の省スペース化および低コスト化が可能なクロック動作監視回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るクロック動作監視回路は、入力されるクロック信号の動作を監視するものであって、矩形状のクロック信号を入力する入力ノードと、制御端子、供給電圧に電気的に接続された第1の端子、基準電圧に電気的に接続された第2の端子を含み、前記制御端子に印加される入力電圧に基づき第1の端子と第2の端子間のオン/オフをスイッチングするトランジスタと、前記入力ノードと前記制御端子との間に接続されたRC直列回路と、前記トランジスタの第1の端子に電気的に接続された出力ノードとを有し、前記RC直列回路は、入力されたクロック信号の周波数に応じた入力電圧を生成し、前記出力ノードは、入力されたクロック信号の周波数の異常を表す監視信号を出力する。
【0010】
ある態様では、前記RC直列回路は、前記入力ノードに接続された第1のコンデンサと、当該第1のコンデンサに接続された第1の抵抗とを含み、前記RC直列回路は、入力されるクロック信号に応答して第1のコンデンサへの電荷の充電または第1のコンデンサからの電荷の放電を行う。ある態様では、前記入力電圧は、第1のコンデンサと第1の抵抗のRC時定数に基づき決定される。ある態様では、前記出力ノードは、入力されるクロック信号の周波数が一定未満であるとき、当該異常を表す監視信号を出力する。ある態様では、前記出力ノードは、クロック信号の周波数が一定以上のとき、第1の論理レベルの監視信号を出力し、クロック信号の入力が途絶えたとき、第2の論理レベルの監視信号を出力する。ある態様では、クロック動作監視回路は、抵抗、コンデンサおよびトランジスタのみから構成されるディスクリート回路である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、RC直列回路によりクロック信号の周波数に応じた入力電圧をトランジスタの制御端子に印加するようにしたので、回路構成を簡易にすることができ、これにより回路の専有面積を小さくするとともに回路コストを低減することができる。また、コンデンサ、抵抗、トランジスタのSPICEモデルを利用することが可能となり、回路設計を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】信号同期にクロック信号を用いる電装システムの一構成例を示す図である。
【
図2】従来のロジックICの組み合わせ回路によるクロック動作監視回路の構成例を示す図である。
【
図3】従来のウォッチドッグタイマ内蔵ICによるクロック動作監視回路の構成例を示す図である。
【
図4】本発明の実施例によるクロック動作監視回路の構成を示す図である。
【
図5】本発明の実施例によるクロック動作監視回路の各部の電圧波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本発明のクロック動作監視回路は、ロジックICやマイコン(ウォッチドッグタイマ内蔵IC)を用いて構成されるのではなく、トランジスタ、コンデンサ、抵抗などの単体素子を用いて構成されるディスクリート回路であり、これにより、クロック動作監視回路の省スペース化、低コスト化を実現する。また、好ましくは、クロック動作監視回路は、SPICEモデルを有する汎用性のある単体素子から構成され、設計の容易化が図られる。
【0014】
本発明のクロック動作監視回路は、特に限定されないが、例えば、信号同期にクロック信号を用いるような電子装置、情報処理装置、電装システムなどに搭載される。
【実施例0015】
次に、本発明の実施例について詳細に説明する。
図4は、本発明の実施例に係るクロック動作監視回路の構成を示す図である。クロック動作監視回路100は、入力ノードCLK_INから矩形状のクロック信号CLKを受け取り、受け取られたクロック信号CLKの異常の有無を表す監視信号を出力ノードDET_OUTから出力する機能を有する。
【0016】
同図に示すように、入力ノードCLK_INには、コンデンサC1と抵抗R5とからなるRC直列回路110が接続される。RC直列回路110の出力は、ノードN1に接続され、ノードN1は、NPNバイポーラトランジスタU1のベースに接続される。ノードN1はさらに、抵抗R4を介してノードN2に接続され、ノードN2は、トランジスタU1のエミッタをGNDに接地する。トランジスタU1のコレクタと供給電圧VCCとの間には、抵抗R1と抵抗R3とが直列に接続され、抵抗R1と抵抗R3との抵抗分圧したノードN3が出力ノードDET_OUTに接続される。また、出力ノードDET_OUTとGNDとの間にコンデンサC2が接続される。
【0017】
図4(B)は、
図2(B)および
図3(B)に示すICの平面サイズとの相対的な大きさを比較するために、本実施例のクロック動作監視回路100のトランジスタU1の平面サイズ120を模式的に表したものである。
【0018】
矩形状のクロック信号CLKが入力ノードCLK_INに入力されると、これに応答してRC直列回路110は、コンデンサC1への電荷の充電およびコンデンサC1の電荷の放電を行う。つまり、クロック信号CLKの立ち上がると、これに応答してコンデンサC1に電荷が充電され、クロック信号が立下ると、これに応答してコンデンサC1の電荷が抵抗R5、R4を介してGNDに放電される。
【0019】
ノードN1に生成されるトランジスタU1の入力電圧V1は、クロック信号CLKの周波数とRC直列回路110の時定数に応じて生成される。時定数が小さいほど、充放電の応答速度が速くなり、時定数が大きいほど、充放電の応答速度が遅くなる。このため、クロック信号CLKの周波数に比べて時定数が十分に小さいと、ノードN1には、コンデンサC1の充電電圧を、抵抗R5と抵抗R4によって抵抗分割された入力電圧V1が生成され、一方、クロック信号CLKの周波数に比べて時定数が十分に大きいと、コンデンサC1の放電された電圧を、抵抗R5と抵抗R4によって抵抗分割された入力電圧V1が生成される。RC直列回路110の時定数は、異常と判定すべきクロック信号CLKの周波数に
に応じて選択される。
【0020】
ノードN1に生成された入力電圧V1は、トランジスタU1のベースに印加される。つまり、入力電圧V1は、ベース/エミッタ間電圧であり、入力電圧V1がしきい値(例えば、0.6~0.7V)以上であれば、ベース電流が流れ、トランジスタU1がオンし、コレクタ電流が流れる。入力電圧V1がしきい値未満であれば、トランジスタU1がオフし、コレクタ電流が流れない。
【0021】
トランジスタU1がオフのとき、コレクタ電流が流れないので、出力ノードDET_OUTは、抵抗R1によってプルアップされたHレベルの監視信号を出力する。一方、トランジスタU1がオンすると、コレクタ電流がGNDに流れるので、出力ノードDET_OUTは、Lレベルの監視信号を出力する。
【0022】
入力ノードCLK_INに入力されるクロック信号CLKが正常であるとき、つまり、クロック信号CLKの周波数が一定以上であるとき、入力電圧V1は、しきい値以上の電圧を保持し、トランジスタU1がオンを維持し、出力ノードDET_OUTは、Lレベルの監視信号を出力する。
【0023】
一方、クロック信号CLKの入力が途絶えると、入力電圧V1がGND近傍の電位となり、トランジスタU1がオフし、出力ノードDET_OUTは、クロック信号CLKの異常を表すHレベルの監視信号を出力する。また、クロック信号CLKの周波数が一定未満になると、入力電圧V1は、しきい値以上の電圧を維持することができなくなり、トランジスタU1がオンを継続することができなくなり、出力ノードDET_OUTは、Lレベルの監視信号を維持することができなくなる。
【0024】
次に、クロック動作監視回路100の回路素子の具体例を示す。
コンデンサC1:1μF、コンデンサC2:0.1μF
抵抗R1:1KΩ、抵抗R3:10Ω、抵抗R4:100KΩ、抵抗R5:10KΩ
U1:2SC4116(Toshiba製)
VCC:3.3V
図5(A)は、入力されるクロック信号CLKの周波数が一定以上のときの出力ノードDET_OUTの監視信号のシミュレーション結果を示し、
図5(B)は、入力されるクロック信号CLKの周波数が一定未満のときの出力ノードDET_OUTの監視信号のシミュレーション結果を示している。
【0025】
具体的には、クロック信号CLKの周波数が20KHz以上(~100MHz)では、トランジスタU1がオンし、
図5(A)に示すように、出力ノードDET_OUTがLレベルを維持する。このとき、ベースの入力電圧V1は、しきい値以上である。
【0026】
一方、クロック信号CLKの周波数が20KHzよりも幾分小さくなると、入力電圧V1がしきい値以上を維持することができず、トランジスタU1がオン/オフを繰り返し、
図5(B)に示すように、出力ノードDET_OUTがLレベルを維持できなくなり、ノコギリ波のようになる。もし、クロック信号CLKの入力が完全に途絶えれば、トランジスタU1はオフし、出力ノードDET_OUTは完全にHレベルに遷移する。
【0027】
このように、クロック信号CLKが入力されている期間のみ(入力ノードCLK_INの電圧が変動している期間のみ)、トランジスタU1をオンさせて出力ノードDET_OUTからLレベルを出力させ、それ以外の期間にLレベルを維持させないようにすることで、クロック信号の動作を監視することができる。
【0028】
また、クロック動作監視回路を汎用性のある単体素子からなるディスクリート回路で構成し、C1/R5/R4で入力されるクロック信号CLKの周波数とのマッチングを行い、R1/R3/C2でアタック/リリースの調整を行うことにより、回路スペースを削減し、低コストでかつ汎用的なクロック監視機構を構成できる。
【0029】
上記実施例では、入力されるクロック信号に正常なとき、出力ノードDET_OUTからLレベルの監視信号が出力されるようにしたが、これに限らず、正常なときにHレベルの監視信号を出力し、異常のときにLレベルの監視信号を出力するようにしてもよい。
【0030】
上記実施例では、トランジスタU1にNPNバイボーラトランジスタを用いたが、トランジスタU1は、NPNバイポーラトランジスタ以外にも、PNPバイポーラトランジスタやMOS型トランジスタを用いてスイッチングを行うようにしてもよい。また、トランジスタU1は、高速応答である必要が無く、入出力の状況によりR4、R3、C2を省略することができる。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。