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特開2023-181597山留壁を利用した液状化対策工の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181597
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】山留壁を利用した液状化対策工の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/34 20060101AFI20231218BHJP
   E02D 5/20 20060101ALI20231218BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
E02D27/34 A
E02D5/20 103
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094809
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】000207621
【氏名又は名称】大日本土木株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592158969
【氏名又は名称】西武建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】鴨川 直昌
(72)【発明者】
【氏名】中村 光男
(72)【発明者】
【氏名】清水 啓義
(72)【発明者】
【氏名】大沼 満
【テーマコード(参考)】
2D040
2D046
2D049
【Fターム(参考)】
2D040AB05
2D040AC02
2D040BD02
2D040BD03
2D040CA01
2D040CB03
2D046DA11
2D049EA02
2D049EA06
2D049GB05
2D049GB10
2D049GC11
2D049GD03
2D049GE03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】山留壁を利用した液状化対策工の施工において、芯材としての補強鋼材3を建て込んだ外周山留壁2と、その内側に施工される壁状地盤改良体4との接続部の施工を効率的に行い、かつ接続部の強度的な連続性および一体性を高める。
【解決手段】ソイルセメント柱列壁に芯材としての補強鋼材3が建て込まれる連続地中壁としての外周山留壁2と、外周山留壁2の内部を複数の区画に仕切る壁状地盤改良体4とからなる液状化対策工の施工において、外周山留壁2の内周面と壁状地盤改良体4の端部との接続部に、外周山留壁2の柱列とオーバーラップするようにソイルセメントによる補助柱列壁部4を造成する。この補助柱列壁部4に対し、壁状地盤改良体4の端部がオーバーラップするように施工する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状化の恐れがある液状化地盤上に構築される建物に対する液状化対策工の施工方法であって、
前記液状化対策工は、ソイルセメント柱列壁に芯材としての補強鋼材が建て込まれる連続地中壁としての外周山留壁と、前記外周山留壁の内部を複数の区画に仕切るソイルセメントによる壁状地盤改良体とからなり、
前記外周山留壁の内周面の前記壁状地盤改良体の端部との接続部に当たる部分に、前記外周山留壁と平行に該外周山留壁の柱列とオーバーラップするようにソイルセメントによる補助柱列壁部を造成し、
前記補助柱列壁部に対し、前記壁状地盤改良体の端部がオーバーラップするように施工することを特徴とする山留壁を利用した液状化対策工の施工方法。
【請求項2】
請求項1記載の山留め壁を利用した液状化対策工の施工方法において、前記外周山留壁と前記補助柱列壁部は多軸オーガーを用いたソイルセメント柱列工法により施工し、少なくとも前記外周山留壁の柱列と前記補助柱列壁部の柱列がオーバーラップする部分については、前記補助柱列壁部の柱列の施工を、前記外周山留壁の柱列の施工または前記外周山留壁への前記補強鋼材の建て込みに先行して行うことを特徴とする山留壁を利用した液状化対策工の施工方法。
【請求項3】
請求項2記載の山留め壁を利用した液状化対策工の施工方法において、前記壁状地盤改良体は、多軸オーガーを用いたソイルセメント柱列工法により施工されるソイルセメント柱列壁からなることを特徴とする山留壁を利用した液状化対策工の施工方法。
【請求項4】
請求項2記載の山留め壁を利用した液状化対策工の施工方法において、前記壁状地盤改良体は、等厚式連続壁地盤改良機によって施工されるソイルセメント連続壁からなることを特徴とする山留壁を利用した液状化対策工の施工方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の山留め壁を利用した液状化対策工の施工方法において、前記建物を支持する複数の支持杭を前記壁状地盤改良体によって仕切られた前記複数の区画に分散させて打設することを特徴とする山留め壁を利用した液状化対策工法。
【請求項6】
請求項1~4の何れかに記載の山留壁を利用した液状化対策工の施工方法において、前記外周山留壁は前記建物の外周部の外側に前記建物の外周部と水平方向に間隔をおいて構築されることを特徴とする山留壁を利用した液状化対策工の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化の恐れがある液状化地盤上に構築される建物に対する山留壁を利用した液状化対策工の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
適切な相互間隔および深さで構築される格子状地盤改良は建物の敷地の液状化対策として有効であることが知られており、一軸柱状地盤改良を連続して施工することにより、現在までに多数の建物において液状化対策として実施されている。
【0003】
一方、山留工法として柱状地盤改良部を多軸地盤改良機で実施するソイルセメント柱列式連続壁工法では、改良体内部にH型鋼を挿入することで止水性を求められる剛性の高い山留壁として実施されている。
【0004】
液状化対策の格子状地盤改良は液状化による地盤の地盤反力係数の低下を低減し、液状化地盤内の杭頭部への地震動の入力を低減することから、液状化地盤内の杭耐力の低減を図ることが可能である。
【0005】
また、液状化地盤は掘削地盤内の水位が高い砂質土系地盤であり、山留工法として上述のソイルセメント柱列式連続壁工法を採用することが多いが、山留壁内部にはH鋼が挿入されており、格子状地盤改良として相応の改良体強度を必要とすることから一軸柱状地盤改良体との接合部の連結は困難を伴う。
【0006】
この接合部の施工に関しては、例えば高圧噴射による地盤改良を適用して、山留壁と格子状地盤改良部を連結する工法がある。
【0007】
この他、特許文献1には、壁状地盤改良体で囲まれた内側領域の地盤の液状化を抑制することができる基礎構造として、液状化層に格子状に形成された格子状地盤改良体と、格子状地盤改良体の外周に形成されるとともに、格子状地盤改良体の上方に構築される地下建物を囲む壁状地盤改良体と、壁状地盤改良体に埋設され壁状地盤改良体に面外剛性を付与する面外剛性付与部材とからなる基礎構造が開示されている。
【0008】
この特許文献1記載の基礎構造は、壁状地盤改良体によって格子状地盤改良体を囲むことにより、壁状地盤改良体で囲まれた内側領域への地下水の浸水が抑制され、また壁状地盤改良体に埋設されている面外剛性付与部材によって、壁状地盤改良体に面外剛性を付与することにより、土圧に対する壁状地盤改良体の抵抗力が増加し、地震時に壁状地盤改良体の外側領域の地盤が液状化しても、壁状地盤改良体の破壊が抑制されるため、遮水性が確保されるとしている。
【0009】
また、具体的な実施形態における施工手順として、まずソイルセメント柱列工法により、液状化層と支持層に渡って壁状地盤改良体を平面視にて枠状に形成し、その際、壁状地盤改良体の内壁面に連接用柱状改良体を連接し、次に壁状地盤改良体を構成する各柱状改良体に芯材を打ち込んで埋設し、次に壁状地盤改良体で囲まれた内側領域の地盤を掘削し、地下建物用の地下スペースを形成し、その際、壁状地盤改良体の上部は、地下スペース周囲の地盤の崩壊を抑制する土留壁として機能するとしている。
【0010】
次に地下スペースの底地盤に、ソイルセメント柱列工法により、液状化層と支持層に渡って格子状地盤改良体を平面視にて格子状に形成し、その際、連接用柱状改良体と柱状改良体とを壁状に連接し、それにより、格子状地盤改良体の端部が壁状地盤改良体の内壁面に連接され、この施工方法では、壁状地盤改良体の施工時に、格子状地盤改良体の端部を構成する連接用柱状改良体を壁状地盤改良体の内壁面に予め連接しておくことにより、壁状地盤改良体から離れた位置において、連接用柱状改良体と柱状改良体とを連接することができ、従って、柱状改良体を施工する掘削オーガー等が、壁状地盤改良体に埋設された芯材に干渉しないため、施工性が向上するとともに芯材の破損、損傷が抑制されるとしている。
【0011】
また、特許文献2には、地下空間または地下構造体の下に、格子状地盤改良体を造成して地盤の液状化を抑制する地盤改良構造において、格子状地盤改良体の外周壁部が上方へ延出して地下空間または地下構造体の周囲に配置されるようにするとともに、その格子状地盤改良体の外周壁部の外面に補強用地盤改良体を造成し、補強用地盤改良体に鋼製芯材を埋設することで、格子状地盤改良体の外周壁部を山留壁として使用できるようにした地盤改良構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2013-002078号公報
【特許文献2】特開2020-176381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述のように、補強鋼材を建て込んだソイルセメント柱列式連続壁工法による山留壁とその内側に構築される格子状地盤改良体の接合部については、施工が困難であるという課題がある。
【0014】
また、引用文献1記載の発明のように、山留壁としての壁状地盤改良体の施工時に、格子状地盤改良体の端部を構成する連接用柱状改良体を壁状地盤改良体の内壁面に予め連接しておくという工法においても、通常、施工効率の高い多軸オーガーが用いられる山留壁部分と連接用柱状改良体の施工とで、施工機械を入れ替える必要があり、接続部の施工効率が悪いといった問題の他、剛性の異なる山留壁と連接用柱状改良体および格子状地盤改良体との間の接続部として強度的な一体性に関し不安が残る。
【0015】
本発明は従来技術における上述のような課題の解決を図ったものであり、芯材としての補強鋼材が建て込まれる外周山留壁と、その内部を複数の区画に仕切るソイルセメントによる壁状地盤改良体との接続部の施工を効率的に行うことができ、かつ接続部の強度的な連続性および一体性を高めることが可能な山留壁を利用した液状化対策工の施工方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、液状化の恐れがある液状化地盤上に構築される建物に対する液状化対策工の施工方法であって、前記液状化対策工は、ソイルセメント柱列壁に芯材としての補強鋼材が建て込まれる連続地中壁としての外周山留壁と、前記外周山留壁の内部を複数の区画に仕切るソイルセメントによる壁状地盤改良体とからなり、前記外周山留壁の内周面の前記壁状地盤改良体の端部との接続部に当たる部分に、前記外周山留壁と平行に該外周山留壁の柱列とオーバーラップするようにソイルセメントによる補助柱列壁部を造成し、前記補助柱列壁部に対し、前記壁状地盤改良体の端部がオーバーラップするように施工することを特徴とする。
【0017】
通常、土留め壁あるいは止水壁としての外周山留壁は、その内側に格子状に、あるいは複数列平行して、構築される壁状地盤改良体より先に施工する必要があり、また外周山留壁と壁状地盤改良体全体の構造的な安定性を考慮した場合、内側の壁状地盤改良体の端部を外周山留壁に接続することが望ましい。
【0018】
しかしながら、外周山留壁に芯材としての補強鋼材が建て込まれた状態では、外周山留壁に接続するための施工が困難となる。また、もともと施工が困難な部分であることに加え、通常、等幅の外周山留壁と等幅の壁状地盤改良体の端部が直角あるいは直角に近い形で突き合わされることから、応力伝達上の弱点となる恐れがある。
【0019】
これに対し、本発明の施工方法においては、外周山留壁と壁状地盤改良体の端部との接続部に、外周山留壁の柱列とオーバーラップするように、ソイルセメントによる補助柱列壁部を介在させることで、上述の施工上の課題と、応力伝達上の課題を解決したものである。
【0020】
すなわち、ソイルセメントによる補助柱列壁部を介在させることで、従来、生じていた外周山留壁と壁状地盤改良体の端部との接続部の角部における応力集中が緩和され、また補助柱列壁部の施工を外周山留壁の補強鋼材の建て込みの前に行うことができるため、掘削時における施工機械と補強鋼材との干渉をなくすことができる。
【0021】
外周山留壁に関しては、通常、ソイルセメント柱列壁の施工と同様、多軸オーガーを用いた多軸式地盤改良機により掘削およびセメント系懸濁液の注入を行いながら、注入したセメント系懸濁液と土砂を攪拌混合し、後から補強鋼材の建て込みを行うことが多いが、補助柱列壁部についても多軸オーガーを用いたソイルセメント柱列工法により施工することとすれば、施工現場において、施工箇所ごと異なる施工機械を用いることなく、同じ多軸オーガーで施工を行うことができる。
【0022】
また、その場合に、外周山留壁の柱列と補助柱列壁部の柱列がオーバーラップする部分については、上述のように補助柱列壁部の柱列の施工を外周山留壁への補強鋼材の建て込みに先行して行うことにより、施工機械としての多軸オーガーと補強鋼材との干渉をなくすことができる。
【0023】
さらに、外周山留壁の内側に位置するソイルセメントによる壁状地盤改良体についても、多軸オーガーを用いたソイルセメント柱列工法により施工することとすれば、例えば3連~5連程度の最小で1種類の多軸オーガーを、外周山留壁と補助柱列壁部および壁状地盤改良体の施工に兼用することができる。
【0024】
なお、必ずしも全て同じ種類の施工機械で施工しなければならないということではなく、例えば、壁状地盤改良体部分を、等厚式連続壁地盤改良機によって施工されるソイルセメント連続壁として構築することもできる。
【0025】
本発明は、液状化の恐れがある液状化地盤上に構築される建物に対する液状化対策工を構築するものであるが、建物の鉛直荷重を受ける複数の支持杭が必要な場合には、各支持杭を上述の壁状地盤改良体によって仕切られた複数の区画に分散させて打設することができる(図1参照)。
【0026】
また、外周山留壁と液状化地盤上に構築される建物との関係では、外周山留壁が建物の外周部の外側に建物の外周部と水平方向に間隔をおいて構築される場合(図1図2参照)と、外周山留壁の内側に建物の外周部が一体化される場合(図示せず)とが考えられる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の施工方法においては、外周山留壁と壁状地盤改良体の端部との接続部に、外周山留壁の柱列とオーバーラップするように、ソイルセメントによる補助柱列壁部を介在させることで、従来の施工方法において生じていた外周山留壁と壁状地盤改良体の端部との接続部の角部における応力集中が緩和され、また補助柱列壁部の施工を外周山留壁の補強鋼材の建て込みの前に行うことができるため、掘削時における施工機械と補強鋼材との干渉をなくすことができる。
【0028】
また、通常、多軸オーガーを用いて施工が行われることが多い外周山留壁の施工に合わせ、補助柱列壁部についても多軸オーガーを用いたソイルセメント柱列工法により施工することとすれば、施工現場において、施工箇所ごと異なる施工機械を用いることなく、同じ施工機械で施工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明が適用される山留壁を利用した液状化対策工の一形態を概念的に示した鉛直断面図である。
図2図1における建物と外周山留壁と壁状地盤改良体との関係を概念的に示した水平断面図である。
図3】本発明の山留壁を利用した液状化対策工の施工方法の一実施形態における外周山留壁と補助柱列壁部および壁状地盤改良体との位置関係および施工手順を説明するための要部の水平断面図である。
図4】本発明の山留壁を利用した液状化対策工の施工方法の他の実施形態における外周山留壁と補助柱列壁部および壁状地盤改良体との位置関係を説明するための要部の水平断面図である。
図5】外周山留壁の内側を根切りした状態の斜視図である。
図6】3連式の多軸オーガーを用いた施工例を示したもので、(a)は補助柱列壁部が1重の場合の水平断面図、(b)は補助柱列壁部が2重の場合の水平断面図である。
図7】5連式の多軸オーガーを用いた施工例を示したもので、(a)は補助柱列壁部が1重の場合の水平断面図、(b)は補助柱列壁部が2重の場合の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0031】
図1および図2は、本発明が適用される山留壁を利用した液状化対策工の一形態を概念的に示したものであり、この例では、液状化の恐れがある液状化地盤L(液状化層)の上に、建物1を構築する際の液状化対策工として、建物1の外周に液状化地盤Lを貫通して非液状化地盤(非液状化層)NLに達する外周山留壁2を構築し、さらに外周山留壁2の内側を壁状地盤改良体4で複数の区画に仕切った形態を想定している。
【0032】
また、この例では、支持地盤Sに達し、建物1の鉛直荷重を直接支持する複数本の支持杭5を壁状地盤改良体4で仕切られた各区画内に配置している。
【0033】
外周山留壁2は、ソイルセメント柱列壁に芯材としてH形鋼などの補強鋼材3を建て込んだ連続地中壁であり、掘削および注入したセメントミルクなどとの混合には多軸オーガー式の施工装置などが用いることが多い。
【0034】
壁状地盤改良体4の施工には、従来、ソイルセメント柱列壁構築用の施工機械あるいは等厚式連続壁地盤改良機などが用いられており、図示した例では、建物1の梁間方向に延びる壁状地盤改良体4で、外周山留壁2を一方向に仕切っているが、建物1の平断面形状や規模によっては、外周山留壁2の内側に、壁状地盤改良体を格子状に配置することもできる。
【0035】
上述のような液状化対策工の施工に関しては、補強鋼材を建て込んだ山留壁とその内側に構築される格子状地盤改良体の接合部において補強鋼材が施工の支障となることと、山留壁と格子状地盤改良体との間の接続部における一体性に関する問題があり、以下に述べる各実施形態はこれらの課題を解決したものである。
【0036】
図3は、本発明の山留壁を利用した液状化対策工の施工方法の一実施形態における外周山留壁2と補助柱列壁部6および壁状地盤改良体4との位置関係および施工手順を示したものである。
【0037】
本発明の施工方法においては、外周山留壁2と壁状地盤改良体4の端部との接続部に、外周山留壁2の柱列とオーバーラップするように、ソイルセメントによる補助柱列壁部6を介在させている。
この場合、補助柱列壁部6の施工を外周山留壁2の補強鋼材3の建て込みの前に行うことができるため、補助柱列壁部6の施工において、多軸オーガーなどの施工機械と補強鋼材3との干渉をなくすことができる。
【0038】
また、ソイルセメントによる補助柱列壁部6を介在させることで、外周山留壁2と壁状地盤改良体6の端部との接続部の断面が拡大され、この部分における応力集中が緩和される。
【0039】
外周山留壁2で囲まれる内側の格子状あるいは一方向の壁状地盤改良体4の施工においては、壁状地盤改良体4の端部を補助柱列壁部6とオーバーラップさせればよいため、同様に外周山留壁2の補強鋼材3との干渉はない。
【0040】
外周山留壁2に関しては、通常、ソイルセメント柱列壁の施工と同様、多軸オーガーを用いた多軸式地盤改良機により、掘削およびセメント系懸濁液の注入を行いながら、注入したセメント系懸濁液と土砂を攪拌混合し、後から補強鋼材3の建て込みを行うが、本発明においては補助柱列壁部6についても多軸オーガーを用いたソイルセメント柱列工法により施工することができるため、外周山留壁2と補助柱列壁部6の施工に同じ多軸オーガーを利用することができ、施工現場における施工機械の入れ替えといった煩雑な作業を回避することができる。
【0041】
また、その場合に、外周山留壁2の柱列と補助柱列壁部6の柱列がオーバーラップする部分については、上述のように補助柱列壁部6の柱列の施工を外周山留壁2への補強鋼材3の建て込みに先行して行うことにより、施工機械としての多軸オーガーと補強鋼材との干渉をなくすことができる。
【0042】
図3における括弧付き数字の(1)~(6)は、外周山留壁2と補助柱列壁部6のオーバーラップ部分を3連式の多軸オーガーを備えた施工装置を用いて、施工する場合の施工手順の一例を示したものである。ただし、必ずしも(1)~(6)の順番とする必要はなく、補助柱列壁部6部分の施工において、外周山留壁2に建て込まれる補強鋼材3との干渉が生じなければ、現場における作業性、施工部分の安定性などを考慮して、任意の施工手順を決定することができる。
【0043】
なお、寸法の一例としては、外周山留壁2、補助柱列壁部6および壁状地盤改良体4の削孔径(多連を構成する1つ1つの削孔径)を900mmとして、削孔ピッチ(各削孔の中心間距離)を600mm、挿入される補強鋼材3としてH-700×300×13×24のH形鋼を用い、補助柱列壁部6と壁状地盤改良体4のオーバーラップする部分(最大部分)を400mmとする設計が挙げられる。なお、この寸法はあくまで一例であり、これに限定されるものではない。
【0044】
図4は、本発明の山留壁を利用した液状化対策工の施工方法の他の実施形態における外周山留壁2と補助柱列壁部6および壁状地盤改良体7との位置関係を示したものである。
【0045】
外周山留壁2と壁状地盤改良体の端部との接続部に、外周山留壁2の柱列とオーバーラップするように、ソイルセメントによる補助柱列壁部6を介在させる点は、上述した図3の実施形態の場合と同様であるが、図4の実施形態は、壁状地盤改良体部7部分の施工を、ソイルセメント柱列工法による施工の代わりに、等厚式連続壁地盤改良機を用いて施工する場合を示したものである。
【0046】
このように、現場の施工条件や、設計条件、施工機械の手配などから、壁状地盤改良体7について等厚式連続壁地盤改良機を用いて施工することができる。
【0047】
この場合も、外周山留壁2と補助柱列壁部6の施工に関しては、共通の多軸式地盤改良機を用いて施工することで、施工現場における合理化を図ることができる。
【0048】
その他、外周山留壁2と補助柱列壁部6の施工に関しては、図3の実施形態の場合と同様である。
【0049】
寸法の一例としては、外周山留壁2、補助柱列壁部6の削孔径を850mmとして、削孔ピッチを600mm、挿入される補強鋼材3としてH-600×200×11×17のH形鋼を用い、壁状地盤改良体7の等厚部の幅を850mm、補助柱列壁部6と壁状地盤改良体7のオーバーラップする部分を500mmとする設計が挙げられる。なお、この寸法はあくまで一例であり、これに限定されるものではない。
【0050】
図5は、本発明において、外周山留壁2の内側を根切りした状態を斜視図として示したものである。なお、外周山留壁2内に建て込まれる補強鋼材は図示を省略している。
【0051】
図6は、本発明において、3連式の多軸オーガーを用いた施工例を示したものである。
図6(a)は、補助柱列壁部が1重の場合であり、上述した図3の実施形態に対応する。
【0052】
図6(b)は、補助柱列壁部を2重とした場合の例である。補助柱列壁部6を2重とすることで、壁状地盤改良体4の端部施工に関し、外周山留壁2の補強鋼材3との距離を大きくとることができるとともに、外周山留壁2と壁状地盤改良体4の端部との接続部における応力集中をより緩和することができる。
【0053】
図7は、5連式の多軸オーガーを用いた施工例を示したもので、(a)は補助柱列壁部が1重の場合、(b)は補助柱列壁部が2重の場合の例である。
外周山留壁2と補助柱列壁部6の施工に関しては、上述した3連式の多軸オーガーに限らず、4連式、5連式といった施工機械を用いることで、施工能率を上げることができるとともに、外周山留壁2とオーバーラップする補助柱列壁部6を一度の施工で広く施工することができる。
【符号の説明】
【0054】
L…液状化地盤
NL…非液状化地盤
S…支持地盤、
1…建物
2…外周山留壁
3…補強鋼材
4…壁状地盤改良体(柱列式)
5…支持杭
6…補助柱列壁部
7…壁状地盤改良体(等厚式)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7