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  • 特開-被処理液の膜処理方法および装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181602
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】被処理液の膜処理方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20231218BHJP
   B01D 61/04 20060101ALI20231218BHJP
   B01D 61/08 20060101ALI20231218BHJP
   B01D 61/12 20060101ALI20231218BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C02F1/44 D
B01D61/04
B01D61/08
B01D61/12
B01D61/58
C02F1/44 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094816
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】早水 基頼
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006HA01
4D006HA41
4D006JA53Z
4D006JA58A
4D006JA70Z
4D006KA12
4D006KA17
4D006KA52
4D006KA53
4D006KA54
4D006KA56
4D006KA57
4D006KA63
4D006KA72
4D006KE02P
4D006KE03P
4D006KE07P
4D006KE07Q
4D006KE19P
4D006KE23Q
4D006MA01
4D006MA03
4D006PA01
4D006PA02
4D006PB03
4D006PB05
(57)【要約】
【課題】 被処理液の膜処理を低コストで効率良く行うことができる被処理液の膜処理方法を提供する。
【解決手段】 被処理液をNF膜11に通水するNF膜処理工程と、前記NF膜処理工程によりNF膜11を透過したNF膜透過液をRO膜21に通水するRO膜処理工程とを備える被処理液の膜処理方法であって、RO膜21を透過したRO膜透過液の少なくとも一部を、NF膜11に通水する前の被処理液に希釈液として合流させて希釈する希釈工程と、希釈後の被処理液の電気伝導度が増加すると被処理液に対する希釈液の流量割合を増加させる塩濃度調整工程とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液をNF膜に通水するNF膜処理工程と、
前記NF膜処理工程により前記NF膜を透過したNF膜透過液をRO膜に通水するRO膜処理工程とを備える被処理液の膜処理方法であって、
前記RO膜を透過したRO膜透過液の少なくとも一部を、前記NF膜に通水する前の被処理液に希釈液として合流させて希釈する希釈工程と、
希釈後の被処理液の電気伝導度が増加すると被処理液に対する希釈液の流量割合を増加させる塩濃度調整工程とを備える被処理液の膜処理方法。
【請求項2】
前記RO膜処理工程は、前記RO膜を備えるRO膜ユニットを複数配置して、前段の前記RO膜ユニットのRO膜濃縮液を後段の前記RO膜ユニットに順次通水する工程を備え、
前記希釈工程は、最後段の前記RO膜ユニットのRO膜透過液の少なくとも一部を希釈液として使用する請求項1に記載の被処理液の膜処理方法。
【請求項3】
被処理液をNF膜に通水するNF膜処理装置と、
前記NF膜処理装置の前記NF膜を透過したNF膜透過液をRO膜に通水するRO膜処理装置とを備える被処理液の膜処理装置であって、
前記RO膜を透過したRO膜透過液の少なくとも一部を、前記NF膜に通水する前の被処理液に希釈液として合流させて希釈する希釈流路と、
希釈後の被処理液の電気伝導度を測定する電気伝導度計と、
希釈後の被処理液の電気伝導度が増加すると被処理液に対する希釈液の流量割合を増加させる制御装置とを備える被処理液の膜処理装置。
【請求項4】
希釈後の被処理液を加圧して前記NF膜処理装置に供給する高圧ポンプを更に備え、
前記制御装置は、前記NF膜に通水する被処理液の圧力に基づき前記高圧ポンプの流量をインバータ制御する請求項3に記載の被処理液の膜処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理液の膜処理方法および装置に関し、より詳しくは、NF膜およびRO膜を利用した被処理液の膜処理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の被処理液の膜処理装置として、特許文献1には、NF膜(ナノろ過膜)またはRO膜(逆浸透膜)を有する第1の膜ろ過装置および第2の膜ろ過装置に原水タンクの原水を順次通水して、純水を製造する装置が開示されている。原水タンクには、第2の膜ろ過装置を透過した純水の一部が、第1の膜ろ過装置の濃縮水の一部と共に還流され、濃縮水の還流量を純水の還流量と同じか少なくすることにより、第1の膜ろ過装置のスケールリスクの抑制が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-89018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された装置は、原水タンクに供給される原水の濃度変化には対応できないため、原水の塩濃度が増加した場合には、第1の膜ろ過装置の膜面にスケールが発生し易いだけでなく、高圧での膜処理が必要になるため、エネルギーコストが増加すると共に、膜負荷が増加して耐久性が低下する等の問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、被処理液の膜処理を低コストで効率良く行うことができる被処理液の膜処理方法および装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、被処理液をNF膜に通水するNF膜処理工程と、前記NF膜処理工程により前記NF膜を透過したNF膜透過液をRO膜に通水するRO膜処理工程とを備える被処理液の膜処理方法であって、前記RO膜を透過したRO膜透過液の少なくとも一部を、前記NF膜に通水する前の被処理液に希釈液として合流させて希釈する希釈工程と、希釈後の被処理液の電気伝導度が増加すると被処理液に対する希釈液の流量割合を増加させる塩濃度調整工程とを備える被処理液の膜処理方法により達成される。
【0007】
前記RO膜処理工程は、前記RO膜を備えるRO膜ユニットを複数配置して、前段の前記RO膜ユニットのRO膜濃縮液を後段の前記RO膜ユニットに順次通水する工程を備えることが好ましく、前記希釈工程は、最後段の前記RO膜ユニットのRO膜透過液の少なくとも一部を希釈液として使用することが好ましい。
【0008】
また、本発明の前記目的は、被処理液をNF膜に通水するNF膜処理装置と、前記NF膜処理装置の前記NF膜を透過したNF膜透過液をRO膜に通水するRO膜処理装置とを備える被処理液の膜処理装置であって、前記RO膜を透過したRO膜透過液の少なくとも一部を、前記NF膜に通水する前の被処理液に希釈液として合流させて希釈する希釈流路と、希釈後の被処理液の電気伝導度を測定する電気伝導度計と、希釈後の被処理液の電気伝導度が増加すると被処理液に対する希釈液の流量割合を増加させる制御装置とを備える被処理液の膜処理装置により達成される。
【0009】
この被処理液の膜処理装置は、希釈後の被処理液を加圧して前記NF膜処理装置に供給する高圧ポンプを更に備えることが好ましく、前記制御装置は、前記NF膜に通水する被処理液の圧力に基づき前記高圧ポンプの流量をインバータ制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の被処理液の膜処理方法および装置によれば、被処理液の膜処理を低コストで効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る被処理液の膜処理装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る被処理液の膜処理装置(以下、単に「膜処理装置」という)の概略構成図である。図1に示すように、膜処理装置1は、被処理液をNF膜(ナノろ過膜)に通水するNF膜処理装置10と、NF膜処理装置10のNF膜を透過したNF膜透過液を高圧ポンプ2の作動によりRO膜(逆浸透膜)に通水するRO膜処理装置20と、RO膜処理装置20のRO膜を透過したRO膜透過液の少なくとも一部を被処理液に希釈液として合流させて希釈する希釈流路30とを備えており、希釈液により希釈された被処理液が、高圧ポンプ3の作動によりNF膜処理装置10に供給されるように構成されている。希釈流路30には流量調整弁40が設けられており、流量調整弁40の操作により希釈液の流量を調整することができる。
【0013】
NF膜処理装置10は、ケーシング内にNF膜11が配置された単一のNF膜ユニットを備えており、NF膜11を透過しない非透過液がNF膜濃縮液として排出される。NF膜濃縮液を排出する排出ラインには、流量調整弁41が設けられている。NF膜処理装置10は、2段以上の複数段のNF膜ユニットを備えることも可能であり、前段のNF膜ユニットでNF膜を透過しないNF膜濃縮液を後段のNF膜ユニットのNF膜に通水し、各段のNF膜ユニットのNF膜透過液をRO膜処理装置20に供給するように構成してもよい。
【0014】
RO膜処理装置20は、2段のRO膜ユニット20-1,20-2を備える。各RO膜ユニット20-1,20-2は、それぞれケーシング内にRO膜21-1,21-2を備えており、前段のRO膜ユニット20-1でRO膜21-1を透過しない非透過液を、後段のRO膜ユニット20-2のRO膜21-2に通水し、各段のRO膜ユニット20-1,20-2からRO膜透過液を排出する。後段のRO膜21-2を透過しない非透過液は、RO膜濃縮液として回収される。回収したRO膜濃縮液は、例えば蒸発や膜濃縮等により製塩に利用することができる。RO膜処理装置20は、単一のRO膜ユニットにより構成してもよく、あるいは3段以上のRO膜ユニットにより構成してもよい。
【0015】
NF膜11およびRO膜21-1,21-2の材質は特に限定されるものではなく、公知のものを適宜使用することができる。NF膜11およびRO膜21-1,21-2の形状についても特に限定されず、平膜や中空糸膜等を例示することができる。
【0016】
また、膜処理装置1は、電気伝導度計50,51と、流量計60,61,62,63と、制御装置70とを更に備えている。電気伝導度計50,51は、希釈流路30を通過する希釈液(RO膜透過液)、および、希釈後の被処理液の電気伝導度を、それぞれ計測する。流量計60,61,62,63は、希釈液、希釈後の被処理液、NF膜濃縮液、NF膜透過液の流量を、それぞれ測定する。電気伝導度計50,51および流量計60,61,62,63の測定値は、制御装置70に入力される。制御装置70は、流量調整弁40,41および高圧ポンプ2,3の作動を制御する。
【0017】
次に、上記の構成を備える膜処理装置1を用いた被処理液の膜処理方法を説明する。まず、被処理液を高圧ポンプ3の作動により昇圧してNF膜処理装置10に供給し、NF膜11に通水するNF膜処理工程を行う。高圧ポンプ3は、流量や圧力を省電力で容易に制御することができるインバータ制御が可能なポンプであることが好ましく、NF膜11に通水する被処理液の圧力を高圧ポンプ3の下流側に設けられた圧力計4により検出し、圧力計4の検出圧力が所定値以下に維持されるように制御装置70によりインバータ制御されることで、NF膜処理工程を安全に行うことができる。
【0018】
NF膜11は、主に一価イオンを透過させる一方で、二価以上の多価イオンは透過しない性質を有することから、一価イオンおよび多価イオンを含む被処理液に対してNF膜処理工程を行うことで、一価イオンを含むNF膜透過液を選択的に回収することができる。被処理液としては、海水やかん水を好ましく例示することができるが、その他の無機塩溶液等であってもよい。本実施形態では、取水後の海水を前処理によりろ過したろ過海水を被処理液としている。
【0019】
ついで、上記のNF膜処理工程によりNF膜11を透過したNF膜透過液を高圧ポンプ2の作動により昇圧してRO膜処理装置20に供給し、RO膜21-1,21-2に通水するRO膜処理工程を行う。
【0020】
この後、上記のRO膜処理工程によりRO膜21-1,21-2を透過したRO膜透過液の一部を希釈流路30に通過させて、NF膜11に通水する前の被処理液に希釈液として合流させて希釈する希釈工程を行う。希釈液として使用しないRO膜透過液の残部は、例えば製造水として使用することができる。希釈工程においては、必要に応じて、RO膜処理工程で生成されたRO膜透過液の全部を希釈液として使用してもよい。希釈工程により被処理液の塩濃度が低下するため、上記のNF膜処理工程において、NF膜11でのスケール発生が抑制されるだけでなく、低圧での膜処理を可能にして、エネルギーコストの低減、膜透過性の向上、膜負荷の軽減による長寿命化等を図ることができる。
【0021】
希釈流路30により被処理液に合流させる希釈液は、本実施形態では、2つのRO膜21-1,21-2の透過液を合流させたものとしているが、2つのRO膜21-1,21-2のいずれ一方の透過液であってもよい。通常は、前段のRO膜21-1の透過液の水質よりも後段のRO膜21-2の透過液の水質が悪いことから、希釈液は、少なくとも後段のRO膜21-2の透過液を含むことが好ましい。RO膜処理装置20が3段以上のRO膜ユニットを備える場合には、希釈液は、少なくとも最後段のRO膜ユニットのRO膜透過液を含むことが好ましい。
【0022】
希釈流路30を通過する希釈液の被処理液に対する流量割合は、制御装置70が流量計60,61,62,63の出力から必要な測定値を用いてリアルタイムに演算することにより、常時一定となるように制御することができる。但し、被処理液の塩濃度が上昇した場合には、上記の流量制御によっては、NF膜処理装置10に供給される被処理液の塩濃度を十分低減できないおそれがある。
【0023】
そこで、本実施形態の被処理液の膜処理方法は、希釈液による希釈後の被処理液の電気伝導度が増加すると、被処理液に対する希釈液の流量割合を増加させる塩濃度調整工程を備えており、これによって、被処理液の塩濃度が上昇した場合でも、NF膜処理装置10に供給される被処理液の塩濃度の上昇を抑制することができる。上記の塩濃度調整工程においては、希釈液による希釈後の被処理液の電気伝導度が低下すると、被処理液に対する希釈液の流量割合を減少させることが好ましく、これによって系外でのRO膜透過液の利用率を高めることができる。
【0024】
本実施形態においては、制御装置70が、電気伝導度計51による希釈後の被処理液の電気伝導度の検出に基づいて、流量調整弁40の開度調整を行うことにより、上記の塩濃度調整工程を自動で行うことができる。流量調整弁40の操作による希釈液の流量割合の調整は、希釈後の被処理液の電気伝導度が所望の値になるように、電気伝導度計51の検出に加えて、電気伝導度計50による希釈液の電気伝導度の検出に基づいて行ってもよい。
【0025】
また、制御装置70は、電気伝導度計51により検出された希釈後の被処理液の電気伝導度に基づき、流量調整弁41の開度調整を行ってもよく、流量計62により検出されるNF膜濃縮液の流量が所望の値になるように制御することができる。例えば、希釈後の被処理液の電気伝導度が増加すると、流量調整弁41の開度を大きくしてNF膜透過液の流量を減少させる一方、希釈後の被処理液の電気伝導度が低下すると、流量調整弁41の開度を小さくしてNF膜透過液の流量を増加させることができる。
【0026】
本発明の被処理液の膜処理方法および装置は、海水の淡水化、製塩、濃縮等の用途に好適であるが、必ずしもこの用途に限定されるものではなく、例えば、被処理液からの有価物の回収や、被処理液の減容化等、種々の用途に使用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 膜処理装置
10 NF膜処理装置
11 NF膜
20 RO膜処理装置
21-1,21-2 RO膜
30 希釈流路
50,51 電気伝導度計
60,61,62,63 流量計
70 制御装置
図1