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特開2023-181606端末モジュールおよびシールドコネクタ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181606
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】端末モジュールおよびシールドコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20231218BHJP
   H01R 13/6581 20110101ALI20231218BHJP
【FI】
H01R13/42 F
H01R13/6581
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094822
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 英央
(72)【発明者】
【氏名】宮本 大智
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA09
5E021FA16
5E021FB07
5E021FC21
5E021FC32
5E021LA04
5E021LA09
5E021LA15
5E021LA21
5E087EE02
5E087EE07
5E087FF08
5E087FF18
5E087GG15
5E087GG25
5E087GG32
5E087HH01
5E087MM05
5E087RR03
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】端子の抜け止め強度が高く且つ組立性に優れる端末モジュールおよびシールドコネクタを提供する。
【解決手段】端末モジュール1が、シールドケーブル10の被覆電線11の端末11eに接続された端子21,22と、樹脂製のインナハウジング3と、シールドシェル4とを含む。端子の端子接続部24が仮係止突起24eおよび本係止突起24fを含む。インナハウジング3は、端子収容孔31,32が形成されたインナハウジング本体30と、内仮係止ランス51と、内本係止ランス52とを含む。シールドシェル4は、インナハウジング本体30を覆う中空ボックス状のシールド部60を含む。シールド部60が、仮係止位置から本係止位置にスライドするのに伴って、シールド部60の押圧突起61a,62aが、内本係止ランス52を押圧して本係止突起24fに撓み係止させる。
【選択図】図17A-17B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドコネクタのアウタハウジングの挿入空間に挿入可能な端末モジュールであって、
内部導体および前記内部導体を覆う内部絶縁被覆を含む被覆電線と、前記被覆電線を覆う外部導体と、前記外部導体を覆う外部絶縁被覆と、を含むシールドケーブルと、
前記被覆電線の端末が接続された電線接続部と、仮係止突起および本係止突起が突出形成された端子接続部と、を含む端子と、
前記端子が前記被覆電線の長手方向に沿う端子挿入方向に挿入された端子収容孔が形成されたインナハウジング本体と、前記インナハウジング本体に弾性支持され、前記端子の前記仮係止突起に係止された内仮係止ランスと、前記インナハウジング本体に弾性支持され、前記端子の前記本係止突起に撓み係止可能な内本係止ランスと、を含む樹脂製のインナハウジングと、
前記端子挿入方向に沿って仮係止位置および本係止位置にスライド可能に前記インナハウジング本体に嵌合され、前記インナハウジング本体を覆う中空ボックス状のシールド部と、前記シールドケーブルの前記外部絶縁被覆に固定可能なバレル部と、を含む、導電性のシールドシェルと、を備え、
前記シールド部が、前記仮係止位置から前記本係止位置にスライドするのに伴って、前記内本係止ランスを押圧して前記本係止突起に撓み係止させる押圧突起を含む、端末モジュール。
【請求項2】
前記インナハウジングが、前記シールド部が前記仮係止位置にあるときに、前記シールド部に設けられた内仮係止部に係止する外仮係止ランスを含む、請求項1に記載の端末モジュール。
【請求項3】
前記インナハウジングが、前記シールド部が前記本係止位置にあるときに、前記シールド部に設けられた内本係止部に係止する外本係止ランスを含む、請求項2に記載の端末モジュール。
【請求項4】
前記シールド部の前記内仮係止部および前記内本係止部が、共通の係止部で構成されている、請求項3に記載の端末モジュール。
【請求項5】
前記インナハウジングが、前記シールド部が本係止位置にあるときに、前記シールドシェルに設けられた被当接部に当接することにより、前記シールド部を本係止位置に位置決めするストッパを含む、請求項3に記載の端末モジュール。
【請求項6】
前記インナハウジング本体が、前記シールド部が前記仮係止位置にあるときに、前記シールド部から露出し、且つ前記シールド部が前記本係止位置にあるときに、前記シールド部によって覆われる端部を含む、請求項1に記載の端末モジュール。
【請求項7】
前記端子は、当該端子が前記インナハウジングの前記端子収容孔に対して半挿入状態にあるときに、前記内本係止ランスの撓みを規制する撓み規制部を含み、
前記内本係止ランスが、前記撓み規制部によって撓みを規制された状態で、前記シールドシェルの前記押圧突起と係合することにより、前記シールド部が前記本係止位置にスライドすることを規制する外向突起を含む、請求項1に記載の端末モジュール。
【請求項8】
前記撓み規制部は、前記本係止突起に設けられる、請求項1に記載の端末モジュール。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の端末モジュールと、
前記端末モジュールが挿入された挿入空間が形成されたアウタハウジングと、を備える、シールドコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末モジュールおよびシールドコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたシールドコネクタは、電線の芯線が接続される端子金具と、前記端子金具を位置決め状態で収容可能な合成樹脂製の誘電体と、前記端子金具を挟むように合体することで前記誘電体を構成する一対の半割体と、を備える。また、前記コネクタは、前記一対の半割体が分割されている状態において、一方の前記半割体に対しその外面を覆うように組み付けられる金属製の第1のシェルと、他方の前記半割体に対しその外面を覆うように組み付けられる金属製の第2のシェルと、を備える。
【0003】
前記一対の半割体が合体及び分割する方向は、前記端子金具と、前記端子金具に接続された前記芯線とが並ぶ方向に対して交差する方向である。端子金具の位置決めは、端子金具に形成された位置決め凸部と、端子金具が収容される、アッパケースの収容凹部内に設けられた位置決め凹部との係合により行われる。前記位置決め凸部と前記位置決め凹部との非弾性的な係止構造を用いることにより、端子金具の抜け止め強度が高くされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6525221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、誘電体およびシェルがそれぞれ2ピース構造であって部品点数が多い。このため、組立工数が多くなり、組立性が低下する。
【0006】
本発明の一実施形態は、端子の抜け止め強度が高く且つ組立性に優れる端末モジュールおよびシールドコネクタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、シールドコネクタ(90)のアウタハウジング(91)の挿入空間(S1)に挿入可能な端末モジュール(1)であって、シールドケーブル(10)と、端子(21,22)と、樹脂製のインナハウジング(3)と、導電性のシールドシェル(40)と、を備える端末モジュールを提供する。前記シールドケーブルは、内部導体(11a)および前記内部導体を覆う内部絶縁被覆(11b)を含む被覆電線(11)と、前記被覆電線を覆う外部導体(12)と、前記外部導体を覆う外部絶縁被覆(13)と、を含む。前記端子は、前記被覆電線の端末(11e)が接続された電線接続部(22)と、仮係止突起(24e)および本係止突起(24f)が突出形成された端子接続部(24)と、を含む。前記インナハウジングは、前記端子が前記被覆電線の長手方向(L1)に沿う端子挿入方向(X1)に挿入された端子収容孔(31,32)が形成されたインナハウジング本体(30)と、前記インナハウジング本体に弾性支持され、前記端子の前記仮係止突起に係止された内仮係止ランス(51)と、前記インナハウジング本体に弾性支持され、前記端子の前記本係止突起に撓み係止可能な内本係止ランス(52)と、を含む。前記シールドシェルは、前記端子挿入方向に沿って仮係止位置および本係止位置にスライド可能に前記インナハウジング本体に嵌合され、前記インナハウジング本体を覆う中空ボックス状のシールド部(60)と、前記シールドケーブルの前記外部絶縁被覆に固定可能なバレル部(42)と、を含む。前記シールド部が、前記仮係止位置から前記本係止位置にスライドするのに伴って、前記内本係止ランスを押圧して前記本係止突起に撓み係止させる押圧突起(61a,62a)を含む。
【0008】
この構成によれば、中空ボックス状のシールド部によって覆われたインナハウジングの端子収容孔に対して、端子が電線の長手方向に沿う端子挿入方向に挿入される構造であるため、組立性に優れる。また、組立時において、シールド部を本係止位置へスライドさせるのに伴って、シールド部の押圧突起が、内本係止ランスを本係止突起に撓み係止させる。このため、樹脂製のインナハウジングのランス(内本係止ランス)を用いる弾性的な係止構造であっても、端子の抜け止め強度を高くすることができる。
【0009】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
【0010】
1つの好ましい実施形態では、前記インナハウジングが、前記シールド部が前記仮係止位置にあるときに、前記シールド部に設けられた内仮係止部(64bK)に係止する外仮係止ランス(53)を含む。この構成によれば、インナハウジングの外仮係止ランスが、シールド部の内仮係止部に係止することにより、シールドシェルのシールド部をインナハウジングに対する仮係止位置に保持することができる。
【0011】
1つの好ましい実施形態では、前記インナハウジングが、前記シールド部が前記本係止位置にあるときに、前記シールド部に設けられた内本係止部(64bH)に係止する外本係止ランス(54)を含む。この構成によれば、インナハウジングの外本係止ランスが、シールド部の内本係止部に係止することにより、シールドシェルのシールド部をインナハウジングに対する本係止位置に保持することができる。
【0012】
1つの好ましい実施形態では、前記シールド部の前記内仮係止部および前記内本係止部が、共通の内係止部(64b)で構成されている。この構成によれば、構造を簡素化することができ、且つ小型化に寄与することができる。
【0013】
1つの好ましい実施形態では、前記インナハウジングが、前記シールド部が本係止位置にあるときに、前記シールドシェルに設けられた被当接部(63a)に当接することにより、前記シールド部を本係止位置に位置決めするストッパを含む。この構成によれば、インナハウジングのストッパが、シールドシェルの被当接部に当接することにより、シールド部を本係止位置に位置決めすることができる。このストッパによる位置決め状態で、インナハウジングの外本係止ランスが、シールド部の内本係止部に係止することにより、シールドシェルのシールド部を係止することができる。
【0014】
1つの好ましい実施形態では、前記インナハウジング本体が、前記シールド部が前記仮係止位置にあるときに、前記シールド部から露出し、且つ前記シールド部が前記本係止位置にあるときに、前記シールド部によって覆われる端部(30e)を含む。この構成によれば、インナハウジング本体の端部が露出しているか否かの視認に基づいて、シールド部が仮係止位置および本係止位置の何れの位置にあるかを容易に確認することができる。
【0015】
1つの好ましい実施形態では、前記端子は、当該端子が前記インナハウジングの前記端子収容孔に対して半挿入状態にあるときに、前記内本係止ランスの撓みを規制する撓み規制部(24g)を含む。前記内本係止ランスが、前記撓み規制部によって撓みを規制された状態で、前記シールドシェルの前記押圧突起と係合することにより、前記シールド部が前記本係止位置にスライドすることを規制する外向突起(55)を含む。
【0016】
この構成によれば、端子が半挿入状態にあるときに、端子の撓み規制部によって、内本係止ランスの撓みが規制される。このため、組立時において、シールドシェルのシールド部を本係止位置へスライドさせようとすると、撓みが規制された内本係止ランスの外向突起が、シールドシェルの押圧突起に係合することにより、シールド部が本係止位置にスライドすることが規制される。これにより、端子の半挿入を検知することができる。
【0017】
1つの好ましい実施形態では、前記撓み規制部は、前記本係止突起に設けられる。この構成によれば、構造の簡素化および小型化に寄与することができる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態は、前記端末モジュールと、前記端末モジュールが挿入された挿入空間が形成されたアウタハウジングと、を備える、シールドコネクタを提供する。この構成によれば、端子の抜け止め強度が高く且つ組立性に優れるシールドコネクタを実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、端子の抜け止め強度が高く且つ組立性に優れる端末モジュールおよびシールドコネクタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る端末モジュールの分解斜視図である。
図2図2は、端末モジュールを含むコネクタおよび相手コネクタの斜視図である。
図3A-3E】図3A図3B図3C図3Dおよび図3Eは、それぞれ、シールドケーブルの平面図、側面図、底面図、断面図および正面図である。図3Dは、図3BのIIID-IIID断面図に相当する。
図4図4は、一対の被覆電線の端末に端子対が圧着されたシールドケーブルの斜視図である。
図5A-5E】図5A図5B図5C図5Dおよび図5Eは、それぞれ、端子が圧着されたシールドケーブルの平面図、一方の側面図、底面図、他方の側面図および正面図である。
図6図6は、インナハウジングに仮係止されたシールドシェルの斜視図である。
図7A-7D】図7A図7B図7Cおよび図7Dは、それぞれ、インナハウジングに仮係止されたシールドシェルの平面図、一方の側面図、底面図および他方の側面図である。
図8図8は、インナハウジングに仮係止されたシールドシェルの後面図である。
図9図9は、インナハウジングに仮係止されたシールドシェルの正面図である。
図10図10は、図9のX-X断面図である。
図11A-11B】図11Aは、シールドシェルが仮係止された状態の端末モジュールの斜視図である。図11Bは、シールドシェルが本係止された状態の端末モジュールの斜視図である。
図12A-12D】図12A図12B図12Cおよび図12Dは、それぞれ、シールドシェルが仮係止された状態の端末モジュールの平面図、一方の側面図、底面図および他方の側面図である。
図13図13は、シールドシェルが仮係止された状態の端末モジュールの断面図であり、図12BのXIII-XIII断面図に相当する。
図14図14は、シールドシェルが仮係止された状態の端末モジュールの正面図である。
図15A-15C】図15A図15Bおよび図15Cは、それぞれ、シールドシェルが本係止された状態の端末モジュールの平面図、一方の側面図および正面図である。
図16A-16B】図16Aおよび図16Bは、それぞれ、シールドシェルが仮係止された状態および本係止された状態の端末モジュールの横断面図である。図16Aは、図12BのXVIA-XVIA断面図であり、図16Bは、図15BのXVIB-XVIB断面図である。
図17A-17B】図17Aおよび図17Bは、それぞれ、シールドシェルが仮係止された状態および本係止された状態の端末モジュールの縦断面図である。図17Aは、図14のXVIIA-XVIIA断面図であり、図17Bは、図15CのXVIIB-XVIIB断面図である。
図18A-18B】図18Aおよび図18Bは、それぞれ、シールドシェルが本係止された状態の端末モジュールの平面図および一方の側面図である。
図19図19は、半挿入状態の端子の周辺の構造の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に従って説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る端末モジュールの斜視図である。図1に示すように、端末モジュール1は、シールドケーブル10と、端子対2(図4を参照)と、樹脂製のインナハウジング3と、導電性のシールドシェル4と、を備える。シールドシェル4は、シールドシェル本体40と、シールドシェルカバー41と、を含む。
【0023】
図2は、端末モジュール1を含むシールドコネクタ90、およびシールドコネクタ90と嵌合される相手コネクタ100の斜視図である。シールドコネクタ90は、絶縁性のアウタハウジング91を備えており、アウタハウジング91は、少なくとも1つの(図示の例では複数の)挿入空間S1を形成している。端末モジュール1は、シールドコネクタ90のアウタハウジング91の対応する挿入空間S1に挿入可能である。
【0024】
まず、シールドケーブル10を説明する。
【0025】
図3A図3B図3C図3Dおよび図3Eは、それぞれ、シールドケーブル10の平面図、側面図、底面図、断面図および正面図である。図3Dは、図3BのIIID-IIID断面図に相当する。図3A図3Eに示すように、シールドケーブル10は、長手方向L1に延びる差動信号伝送用の一対の被覆電線11と、一対の被覆電線11を覆う編組線よりなる外部導体12と、外部導体12を覆う外部絶縁被覆13と、を含む。各被覆電線11は、内部導体11aと、内部導体11aを覆う内部絶縁被覆11bと、を含む。
【0026】
次いで、端子対2を説明する。
【0027】
図4は、一対の被覆電線11の端末11eに端子対2が圧着されたシールドケーブル10の斜視図である。図5A図5B図5C図5Dおよび図5Eは、それぞれ、端子対2が圧着されたシールドケーブル10の平面図、一方の側面図、底面図、他方の側面図および正面図である。
【0028】
図4図5A~5Eに示すように、端子対2は、一対の被覆電線11の一方と接続される導電性の第1端子21と、一対の被覆電線11の他方と接続される導電性の第2端子22と、を含む。第1端子21および第2端子22は、同じ仕様の端子で構成され、互いに向きを代えて配置されている。そこで、第1端子21を中心として説明する。
【0029】
第1端子21は、電線接続部23と、端子接続部24と、架橋部25と、を含む。電線接続部23は、被覆電線11の端末11eに圧着接続される。架橋部25は、電線接続部23と端子接続部24との間を接続する。
【0030】
電線接続部23は、被覆電線11の長手方向L1に沿う端子挿入方向X1に延びる底壁部23aと、芯線圧着部23bと、被覆圧着部23cと、を含む。芯線圧着部23bは、底壁部23aの一部と、該一部の両側に延設される一対のバレル片であって、被覆電線11の内部導体11aに圧着される一対のバレル片を含む。被覆圧着部23cは、底壁部23aの一部と、該一部の両側に延設される一対のバレル片であって、被覆電線11の内部絶縁被覆11bに圧着される一対のバレル片を含む。
【0031】
以下では、直交する3方向を、X方向、Y方向およびZ方向とし、端子挿入方向X1は、X方向の一方の方向に相当することとする。端子接続部24は、中空ボックス状をなす。端子接続部24は、底壁部24aと、頂壁部24bと、一対の側壁部24cと、弾性接触片(図示せず)と、仮係止突起24eと、本係止突起24fと、撓み規制部24gと、を含む。
【0032】
底壁部24aおよび頂壁部24bは、Z方向に対向し、X方向に平行に延びる。一対の側壁部24cは、Y方向に対向し、X方向に平行に延びる。一対の側壁部24cは、底壁部24aと頂壁部24bとを連結する。
【0033】
端子接続部24の底壁部24aは、電線接続部23の底壁部23aと架橋部25を介して連なる。図示しない弾性接触片は、頂壁部24bから端子接続部24の内部に向けて延設されている。端子接続部24内に挿入された相手端子が、弾性接触片と底壁部24aとの間で弾性的に挟持される。
【0034】
仮係止突起24eおよび本係止突起24fは、頂壁部24bの外面に突出形成されている。仮係止突起24eは、本係止突起24fに対してX方向に離間して配置されている。仮係止突起24eおよび本係止突起24fは、頂壁部24bのX方向に沿う一辺の側に偏って配置されている。端子挿入方向X1に見たときに、本係止突起24fが仮係止突起24eを丁度覆い隠す形状をなし、端子挿入方向X1の反対方向X2に見たときに、仮係止突起24eが本係止突起24fを丁度覆い隠す形状をなしている。
【0035】
図4に示すように、架橋部25には、本係止突起24fに対して端子挿入方向X1の反対方向X2に隣接する係止凹部25aが形成されている。撓み規制部24gは、本係止突起24fに設けられている。具体的には、撓み規制部24gは、本係止突起24fの頂面で構成されている。
【0036】
第1端子21および第2端子22が、共通の端子で形成され、且つ第1端子21と第2端子22とが、互いの頂壁部24bがZ方向の反対方向に向くように配置されている。
【0037】
第1端子21および第2端子22は、端子挿入方向X1と直交する断面において、仮係止突起24eおよび本係止突起24fによる非対称な断面の構造を有し、その他は、対称な断面の基本構造を有し、且つ同じ仕様を有する。また、図5Eに示すように、第1端子21および第2端子22は、端子挿入方向X1と直交する断面における配置が点対称となるように、インナハウジング3に保持される(図17Bを参照)。
【0038】
ここで、第1端子21および第2端子22において、X方向と交差する方向(Z方向)に突出する仮係止突起24eおよび本係止突起24fは、ノイズの発生源となる。これに対して、第1端子21および第2端子22における仮係止突起24eおよび本係止突起24fの位置が対称性に近い形になることから、一対の被覆電線11において仮係止突起24eおよび本係止突起24fによるノイズは、同様に表れる。そのため、一対の被覆電線11の電位差を検出する差動信号では、これらのノイズが相殺され易い。
【0039】
したがって、非対称な断面構造を有する第1端子21および第2端子22を対としても、伝送される差動信号の信頼性が担保され易い。また、第1端子21および第2端子22において、X方向に関して、互いの仮係止突起24eの位置が一致し、互いの本係止突起24fの位置が一致している。このため、差動信号において、仮係止突起24eおよび本係止突起24fによるノイズが、相殺され易い。しかも、端子対2を構成する第1端子21および第2端子22が、同じ仕様の端子で構成されるので、製造コストを安価に抑制することができる。
【0040】
次いで、インナハウジング3およびシールドシェル4を順次に説明する。
【0041】
図6は、インナハウジング3に仮係止されたシールドシェル4の斜視図である。図7A図7B図7Cおよび図7Dは、それぞれ、インナハウジング3に仮係止されたシールドシェル4の平面図、一方の側面図、底面図および他方の側面図である。図8は、インナハウジング3に仮係止されたシールドシェル4の後面図である。図9は、インナハウジング3に仮係止されたシールドシェル4の正面図である。図10は、図9のX-X断面図である。
【0042】
図11Aおよび図11Bは、端末モジュール1の斜視図であり、図11Aは、仮係止状態を示し、図11Bは、本係止された状態を示している。図12A図12B図12Cおよび図12Dは、それぞれ、仮係止状態の端末モジュール1の平面図、一方の側面図、底面図および他方の側面図である。図13は、仮係止状態の端末モジュール1の断面図であり、図12BのXIII-XIII断面図に相当する。図14は、仮係止状態の端末モジュールの正面図である。図15A図15Bおよび図15Cは、それぞれ、本係止状態の端末モジュール1の平面図、一方の側面図および正面図である。
【0043】
図16Aおよび図16Bは、端末モジュール1の横断面図であり、図16Aは、仮係止状態を示し、図16Bは、本係止状態を示している。図16Aは、図12BのXVIA-XVIA断面図に相当し、図16Bは、図15BのXVIB-XVIB断面図に相当する。
【0044】
図17Aおよび図17Bは、端末モジュール1の縦断面図であり、図17Aは仮係止状態を示し、図17Bは本係止状態を示している。図17Aは、図14のXVIIA-XVIIA断面図に相当し、図17Bは、図15CのXVIIB-XVIIB断面図に相当する。
【0045】
図6および図10に示すように、インナハウジング3は、直方体形状をなすインナハウジング本体30と、内仮係止ランス51と、内本係止ランス52とを含む。また、図16Aおよび図16Bに示すように、インナハウジング3は、外仮係止ランス53と、外本係止ランス54と、外向突起55と、ストッパ56と、を含む。
【0046】
図6および図10に示すように、インナハウジング本体30には、第1端子21および第2端子22をそれぞれ収容する第1端子収容孔31および第2端子収容孔32が形成されている。インナハウジング本体30は、前壁部33と、天壁部34と、底壁部35と、第1側壁部36と、第2側壁部37と、後壁部38と、仕切り壁39と、を含む。後壁部
38は、前壁部33に対して端子挿入方向X1に配置される。
【0047】
第1端子収容孔31は、天壁部34と仕切り壁39との間に形成される。第2端子収容孔32は、底壁部35と仕切り壁39との間に形成される。第1端子収容孔31および第2端子収容孔32は、インナハウジング本体30の前壁部33に開口を形成している。また、図9および図10に示すように、後壁部38には、相手端子を第1端子収容孔31および第2端子収容孔32内に挿入するための挿入開口38aが形成されている。
【0048】
図10図17Aおよび図17Bに示すように、内仮係止ランス51および内本係止ランス52は、天壁部34および底壁部35のそれぞれに、弾性支持されている。天壁部34に支持された内仮係止ランス51および内本係止ランス52が、第1端子収容孔31内の第1端子21に対向している。底壁部35に支持された内仮係止ランス51および内本係止ランス52が、第2端子収容孔32内の第2端子22に対向している。内仮係止ランス51は、第1端子21の仮係止突起24eに係止されている。内本係止ランス52は、第1端子21の本係止突起24fに撓み係止可能である。
【0049】
図16Aおよび図16Bに示すように、外仮係止ランス53および外本係止ランス54は、第2側壁部37に弾性支持されている。ストッパ56は、第1側壁部36の外面に形成された段部であり、端子挿入方向X1の反対方向X2に向いている。
【0050】
図1に示すように、シールドシェル4は、シールドシェル本体40と、シールドシェル本体40の開放部40kを覆うことのできるシールドシェルカバー41と、で構成される。シールドシェル本体40は、中空ボックス状のシールド部60と、バレル部42と、シールド部60とバレル部42とを接続する架橋部43と、を含む。
【0051】
バレル部42は、ベース部42aと、ベース部42aの両側に延びる一対のバレル片42bと、を含む。シールド部60が仮係止位置(図11Aおよび図12Bを参照)から本係止位置(図11Bおよび図15Bを参照)にスライドされた状態で、バレル部42が、シールドケーブル10の外部絶縁被覆13に圧着されて接続される(図18Bを参照)。具体的には、外部絶縁被覆13上に折り返された編組線(外部導体12)を介して、外部絶縁被覆13に対して圧着される。
【0052】
図6図7A図7Dに示すように、シールド部60は、X方向およびY方向の2方向に延び、Z方向に対向する天壁部61および底壁部62と、X方向およびZ方向の2方向に延び、Y方向に対向する第1側壁部63および第2側壁部64と、を含む。開放部40kは、第2側壁部64の一部(端子挿入方向X1の反対方向X2の端部)を開放する。
【0053】
架橋部43は、シールド部60のベース壁である第1側壁部63、天壁部61および底壁部62をバレル部42のベース部42aに連結している。第1側壁部63は、ベース壁として機能する。
【0054】
図17Aおよび図17Bに示すように、天壁部61には、第1端子収容孔31内に突出する押圧突起61aが形成されている。底壁部62には、第2端子収容孔32内に突出する押圧突起62aが形成されている。各押圧突起61a,62aは、天壁部61および底壁部62の外面にそれぞれ凹入形成された矩形状の凹部の裏側に配置されており、剛性が高くされている。
【0055】
図17Bに示すように、天壁部61の押圧突起61aは、シールド部60の本係止位置において、インナハウジング3の天壁部34の内本係止ランス52の外向突起55を押圧することにより、当該内本係止ランス52を第1端子21の本係止突起24fに撓み係止させる。底壁部62の押圧突起62aは、インナハウジング3の底壁部35の内本係止ランス52の外向突起55を押圧することにより、当該内本係止ランス52を第2端子22の本係止突起24f(図17Bでは紙面手前側に配置されるため示されていない)に撓み係止させる。
【0056】
撓み係止される内本係止ランス52は、本係止突起24fに対して端子挿入方向X1の反対方向X2に隣接する係止凹部25a内に挿入される。
【0057】
図16Aおよび図16Bに示すように、シールド部60の第1側壁部63には、開口の縁部から内向きに切り起こされた舌片の先端部で形成される被当接部63aが設けられている。シールド部60本係止位置において、被当接部63aがインナハウジング3のストッパ56に当接することにより、ストッパ56が、シールド部60を本係止位置に位置決めする。
【0058】
シールド部60の第2側壁部64には、シールド部60の仮係止位置で、インナハウジング3の外仮係止ランス53と係止する内仮係止部64bK(図16Aを参照)と、シールド部60の本係止位置で、インナハウジング3の外本係止ランス54と係止する内本係止部64bH(図16Bを参照)と、を兼用する内係止部64bが形成されている。内係止部64bは、第2側壁部64に形成された矩形開口の縁部から切り起こされた舌片の先端部で構成されている。
【0059】
図1に示すように、シールドシェルカバー41は、溝形部41aと、接続片41bと、架橋部41cと、を含む。架橋部41cは、溝形部41aおよび接続片41bの間を接続する。溝形部41aは、天壁部41dと、底壁部41eと、天壁部41dおよび底壁部41eを連結する側壁部41fと、を含む。
【0060】
溝形部41aの天壁部41dおよび底壁部41eには、シールドシェル本体40のシールド部60の天壁部61および底壁部62の係止孔61b,62b(図6を参照)に対して、それぞれ内側から挿入係止する外向きの係止突起41gが、突出形成されている。
【0061】
接続片41bは、樋状をなしている。接続片41bは、外部絶縁被覆13上に折り返された編組線(外部導体12)に接触する状態で、バレル部42と外部絶縁被覆13とに挟持固定される。
【0062】
次いで、端末モジュール1およびシールドコネクタ90の組立手順を説明する。
【0063】
まず、図4に示すように、シールドケーブル10の一対の被覆電線11の端末11eに、それぞれ、第1端子21および第2端子22を圧着する。
【0064】
次いで、第1端子21および第2端子22を、それぞれ、図6に示されるシールドシェル本体40が仮係止された状態のインナハウジング3の第1端子収容孔31および第2端子収容孔32内へ端子挿入方向X1に挿入する。図17Aに示すように、インナハウジング3の内仮係止ランス51が、第1端子21および第2端子22の仮係止突起24eに係止され、第1端子21および第2端子22がインナハウジング3に対して仮係止状態となる。
【0065】
次いで、シールドシェル4のシールド部60を、図16Aおよび図17Aに示す仮係止位置から、図16Bおよび図17Bに示す本係止位置へ端子挿入方向X1にスライドさせる。そのスライドに伴って、図17Bに示すように、シールド部60の押圧突起61a,62aが、内本係止ランス52を第1および第2端子収容孔31,32の内側へ弾性変形させて本係止突起24fに撓み係止させる。
【0066】
具体的には、撓み係止される内本係止ランス52は、本係止突起24fに対して端子挿入方向X1の反対方向X2に隣接する係止凹部25a内に挿入される。このため、第1端子21および第2端子22に対する内本係止ランス52の係合面積が増大され、高い抜け止め強度が得られる。
【0067】
また、図16Bに示すように、インナハウジング3の外本係止ランス54が、シールドシェル4のシールド部60の内本係止部64bHに係止することにより、シールド部60が、本係止位置に係止される。
【0068】
次いで、シールドシェル本体40にシールドシェルカバー41(図1を参照)を装着した後、シールドシェル本体40のバレル部42でシールドケーブル10の外部絶縁被覆13を固定する(図18Aおよび図18Bを参照)。このとき、シールドシェルカバー41の接続片41bは、外部絶縁被覆13上に折り返された編組線(外部導体12)と接触する状態で、バレル部42と外部絶縁被覆13との間に挟持される。これにより、端末モジュール1が組み立てられる。
【0069】
次いで、組立状態の端末モジュール1をシールドコネクタ90のアウタハウジング91の挿入空間S1(図2を参照)に挿入することにより、シールドコネクタ90が組み立てられる。
【0070】
本実施形態によれば、図17Aおよび図17Bに示すように、中空ボックス状のシールド部60によって覆われたインナハウジング3の端子収容孔(第1および第2端子収容孔31,32)に対して、端子(第1および第2端子21,22)が被覆電線11の長手方向L1に沿う端子挿入方向X1に挿入される構造であるため、組立性に優れる。また、シールド部60を本係止位置へスライドさせるのに伴って、シールド部60の押圧突起61a,62aが、内本係止ランス52を本係止突起24fに撓み係止させる。このため、樹脂製のインナハウジング3のランス(内本係止ランス52)を用いる弾性的な係止構造であっても、端子(第1および第2端子21,22)の抜け止め強度を高くすることができる。
【0071】
また、図16Aに示すように、インナハウジング3の外仮係止ランス53が、シールド部60の内仮係止部64bKに係止することにより、シールドシェル4のシールド部60をインナハウジング3に対する仮係止位置に保持することができる。
【0072】
また、図16Bに示すように、インナハウジングの外本係止ランス54が、シールド部60の内本係止部64bHに係止することにより、シールドシェル4のシールド部60をインナハウジング3に対する本係止位置に保持することができる。
【0073】
また、図16Aおよび図16Bに示すように、シールド部60の内仮係止部64bKおよび内本係止部64bHが、共通の内係止部64bで構成されている。この構成によれば、構造を簡素化することができ、且つ小型化に寄与することができる。
【0074】
また、図16Bに示すように、シールド部60が本係止位置にスライドされると、インナハウジング3のストッパ56が、シールドシェル4の被当接部63aに当接することにより、シールド部60を本係止位置に位置決めすることができる。このストッパ56による位置決め状態で、インナハウジング3の外本係止ランス54が、シールド部60の内本係止部64bHに係止することにより、シールド部60を本係止位置に係止することができる。
【0075】
また、図11Aに示すように、インナハウジング本体30が、シールド部60が仮係止位置にあるときに、シールド部60から露出し、且つ、図11Bに示すように、シールド部60が本係止位置にあるときに、シールド部60によって覆われる端部30eを含む。この構成によれば、インナハウジング本体30の端部30eが露出しているか否かの視認に基づいて、シールド部60が仮係止位置および本係止位置の何れの位置にあるかを容易に確認することができる。
【0076】
また、図19に示すように、第1および第2端子21,22が半挿入状態にあるときに、第1および第2端子21,22の撓み規制部24gによって、内本係止ランス52の撓みが規制される。このため、組立時において、シールドシェル4のシールド部60を本係止位置(端子挿入方向X1)へスライドさせようとすると、撓みが規制された内本係止ランス52に設けられた外向突起55が、シールドシェル4の押圧突起61a,62aに係合することにより、シールド部60が本係止位置にスライドすることが規制される。これにより、第1および第2端子21,22の半挿入を検知することができる。
【0077】
また、撓み規制部24gは、本係止突起24fに設けられる。このため、構造の簡素化および小型化に寄与することができる。
【0078】
また、本発明の一実施形態は、端末モジュール1と、端末モジュール1が挿入された挿入空間S1が形成されたアウタハウジング91と、を備えるシールドコネクタ90(図2を参照)を提供する。この構成によれば、端子(第1および第2端子21,22)の抜け止め強度が高く且つ組立性に優れるシールドコネクタ90を実現することができる。
【0079】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、内仮係止部64bKと内本係止部64bHとが、別々に設けられてもよい。また、撓み規制部24gが、本係止突起24fとは別に設けられてもよい。その他、本発明は、特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0080】
1 端末モジュール
2 端子対
3 インナハウジング
4 シールドシェル
10 シールドケーブル
11 被覆電線
11a 内部導体
11b 内部絶縁被覆
12 外部導体
13 外部絶縁被覆
21 第1端子
22 第2端子
23 電線接続部
24 端子接続部
24e 仮係止突起
24f 本係止突起
24g 撓み規制部
30 インナハウジング本体
30e 端部
31 第1端子収容孔
32 第2端子収容孔
40 シールドシェル本体
40k 開放部
41 シールドシェルカバー
42 バレル部
51 内仮係止ランス
52 内本係止ランス
53 外仮係止ランス
54 外本係止ランス
55 外向突起
56 ストッパ
60 シールド部
61a 押圧突起
62a 押圧突起
63a 被当接部
64b 内係止部
64bK 内仮係止部
64bH 内本係止部
90 シールドコネクタ
91 アウタハウジング
100 相手コネクタ
L1 長手方向
S1 挿入空間
X1 端子挿入方向
図1
図2
図3A-3E】
図4
図5A-5E】
図6
図7A-7D】
図8
図9
図10
図11A-11B】
図12A-12D】
図13
図14
図15A-15C】
図16A-16B】
図17A-17B】
図18A-18B】
図19