(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181608
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】包装材及び包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20231218BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20231218BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231218BHJP
B32B 29/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/10
B32B27/30 A
B32B29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094827
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】和泉 敦
(72)【発明者】
【氏名】佐井 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】関根 秀和
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB05
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3E086BB51
3E086CA01
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3E086DA08
4F100AJ04B
4F100AJ05B
4F100AK03B
4F100AK04A
4F100AK04C
4F100AK12C
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4F100JK16
4F100JL12A
4F100JM01A
4F100JM01C
4F100JN01
(57)【要約】
【課題】本発明は、全光線透過率、酸素バリア性、耐水摩擦性、耐ブロッキング性、及びヒートシール性に優れた包装材を提供することを目的とする。
【解決手段】ヒートシール層、紙基材(a)、及び表面保護層を順次有する包装材であって、前記紙基材(a)が樹脂を含み、前記表面保護層が、スチレン-アクリル共重合樹脂(A)を含み、前記包装材のJIS K 7361-1によって測定された全光線透過率が、40~100%である包装材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール層、紙基材(a)、及び表面保護層を順次有する包装材であって、
前記紙基材(a)が、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂を含み、
前記表面保護層が、スチレン-アクリル共重合樹脂(A)を含み、
前記包装材のJIS K 7361-1によって測定された全光線透過率が、40%以上である包装材。
【請求項2】
ヒートシール層が、アクリル樹脂、及びエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
ヒートシール層が、アクリル樹脂を含み、前記アクリル樹脂のガラス転移温度が、10~90℃である、請求項2に記載の包装材。
【請求項4】
ヒートシール層が、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含み、前記エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂の最低造膜温度が、60~100℃である、請求項2に記載の包装材。
【請求項5】
紙基材が、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂を含む、請求項1に記載の包装材。
【請求項6】
平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂の含有量が、包装材100質量%中、0.5~50質量%である、請求項5に記載の包装材。
【請求項7】
セルロース系樹脂が、ビスコース由来である、請求項5に記載の包装材。
【請求項8】
表面保護層が、更に、ポリエチレンワックスを含む、請求項1に記載の包装材。
【請求項9】
請求項1に記載の包装材から形成されてなる包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装材及び包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商品パッケージその他の包装物には装飾や表面保護のために印刷が施されているのが一般的である。また、印刷物の意匠性、美粧性、高級感等の印刷品質は、そのでき如何によって、消費者の購入意欲を促進させるものであり、産業上の価値は大きい。
【0003】
一般的に、パッケージの構成には主にプラスチックフィルムが用いられ、透明であるため中身を視認できる使用方法もあり、特にラミネート包装材が用いられることが多かった。例えば、特許文献1においては、基材、印刷層、接着剤層及びシーラント層からなるラミネート包装材であって、印刷層及び接着剤層にバイオマス樹脂が使用された発明が記載されている。しかし、そもそもラミネート型包装材は、石油由来プラスチックフィルムの使用量が多い。そのため、環境対応、カーボンニュートラルであり、更にプラスチックの使用量を削減可能な紙化包装材が望まれており、技術開発がなされている。
【0004】
紙基材を用いた包装材は、紙基材が空隙を有するため酸素等の物質を透過しやすい。また、セルロース繊維と空気の屈折率の差が大きいため、中身を視認できない(全光透過率が低い)ため、使用形態が限られていた。また一般的に紙基材を用いた包装材は耐水性に課題があり、これが用途を限定する要因にもなっていた。
【0005】
例えば、特許文献2には、表面保護層、印刷層、紙基材、樹脂層を順次有する包装材料に関する発明が記載されている。しかしながら、上記紙基材を用いた包装材料は、通常の紙基材が使用されているため、上記構成の包装材は内容物の視認性(全光線透過率)、耐水性及び酸素バリア性に課題があった。
【0006】
従って、全光透過率、耐水性及び酸素バリア性等に優れた包装材として満足できるものは未だ見出されていない。また、紙基材を用いた包装材に実用性を付与するためには、上記課題解決に加え、包装材に求められる耐水摩擦性、耐ブロッキング性、及びヒートシール性を満たす必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-051796号公報
【特許文献2】特開2020-55167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は紙基材を用いた包装材において、全光透過率、酸素バリア性、耐水摩擦性、耐ブロッキング性、及びヒートシール性に優れた包装材を提供することを目的とする。
【0009】
本発明者は前記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の包装材を用いることで上記課題を解決することを見出し、本発明を成すに至った。
【0010】
すなわち本発明は、ヒートシール層、紙基材(a)、及び表面保護層を順次有する包装材であって、
前記紙基材(a)が、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂を含み、
前記表面保護層が、スチレン-アクリル共重合樹脂(A)を含み、
前記包装材のJIS K 7361-1によって測定された全光線透過率が、40%以上である包装材に関する。
【0011】
また、本発明は、ヒートシール層が、アクリル樹脂、及びエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、上記包装材に関する。
【0012】
また、本発明は、ヒートシール層が、アクリル樹脂を含み、前記アクリル樹脂のガラス転移温度が、10~90℃である、上記包装材に関する。
【0013】
また、本発明は、ヒートシール層が、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含み、前記エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂の最低造膜温度が、60~100℃である、上記包装材に関する。
【0014】
また、本発明は、紙基材が、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂を含む、上記包装材に関する。
【0015】
また、本発明は、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂の含有量が、包装材100質量%中、0.5~50質量%である、上記包装材に関する。
【0016】
また、本発明は、セルロース系樹脂が、ビスコース由来である、上記包装材に関する。
【0017】
また、本発明は、表面保護層が、更に、ポリエチレンワックスを含む、上記包装材に関する。
【0018】
また、本発明は、上記包装材から形成されてなる包装袋に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、全光透過率、酸素バリア性、耐水摩擦性、耐ブロッキング性、及びヒートシール性に優れた包装材を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0021】
なお、以下の説明において「部」は特に断らない限り「質量部」、「%」は「質量%」を示す。また、包装材を単に「積層体」と略記する場合があるが同義である。
また、「印刷インキ」とは、印刷層を形成するための顔料その他の着色剤を含有するインキをいう。「オーバーコート剤」とは、表面保護層を形成するための、顔料その他の着色剤を含有しないコート剤をいうが、意図せず混入した僅かな着色剤等を排除するものではない。
【0022】
[包装材]
本発明は、ヒートシール層、紙基材(a)、及び表面保護層を順次有する包装材であって、表面保護層が、スチレン-アクリル共重合樹脂(A)を含み、前記包装材のJIS K 7361-1によって測定された全光線透過率が、40%以上である包装材に関する。
【0023】
<包装材の全光線透過率>
本発明の包装材の全光線透過率は、JIS K 7361-1に準拠し、上記包装材を2cm角に切り出し、日本電色工業社製、Spectral haze meter SH7000を用いて、上記包装材の表面保護層側から光を入射させて測定することができる。上記包装材の全光線透過率は40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70~90%であることが特に好ましい。上記範囲である場合、後述の包装体として利用した際に、内容物の視認性が良好となる。
当該構成において、紙繊維に樹脂を充填した紙基材(a)を用いることが好ましく、光の屈折が減少するため、全光線透過率に優れ、また、酸素透過度も減少するため、酸素バリア性に優れる。さらに表面保護層にスチレン-アクリル(A)共重合樹脂を含むことにより全光線透過率を維持したまま、耐水摩擦性に優れる。
【0024】
[ヒートシール層]
本発明におけるヒートシール層は、紙基材(a)において、表面保護層を具備した面とは反対の面上に位置する。ヒートシール層の膜厚は、1~20μmであることが好ましく、3~10μmであることがより好ましい。上記範囲である場合、耐ブロッキング性が良好となる。
【0025】
ヒートシール層が含む樹脂として、アクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられ、ヒートシール性、バリア性の観点から、アクリル樹脂及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂が好ましい。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ヒートシール層の樹脂の含有量は、ヒートシール層100質量%中、80~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましい。上記範囲である場合、ヒートシール性が良好となる。
【0026】
<アクリル樹脂>
アクリル樹脂とは、アクリルモノマー由来の構成単位を含む樹脂である。アクリル樹脂はカルボキシル基その他の酸性基を有していることが好ましく、その場合の酸価は、20~100mgKOH/gであることが好ましく、30~80mgKOH/gであることがより好ましい。アクリル樹脂のガラス転移温度は、10~90℃であることが好ましく、25~70℃であることがより好ましい。アクリル樹脂の酸価及びガラス転移温度が上記範囲である場合、ヒートシール性が良好となる。また、アクリル樹脂はアクリルモノマーの単独重合体や、アクリルモノマーと酸性モノマーからなる共重合体、エチレンとアクリルモノマーからなる共重合体などが好適に挙げられる。
【0027】
アクリル樹脂は、市販品を用いてもよく、例えば、BASF社製 JONCRYL PDX7356、PDX-7326、PDX-7430、星光PMC社製 PE-1126、JE-1113、KE1148を使用することができる。
【0028】
<エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂>
エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂は、エチレンと酢酸ビニルからなる共重合体である。エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂中の酢酸ビニル含有量は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂100質量%中、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、20~30質量%であることが特に好ましく。エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂の最低造膜温度は、40~120℃であることが好ましく、60~100℃であることがより好ましい。酢酸ビニル含有量、及び最低造膜温度が上記範囲である場合、ヒートシール性が良好となる。
【0029】
上記エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂は例えば、ジャパンコーティングレジン社製 アクアテックスECシリーズ、住友化学工業社製 スミカフレックスS-201HQ、S-305、S-305HQ、S-400HQ、S-401HQ、S-408HQE、S-450HQ、S-455HQ、S-456HQ、S-460HQ、S-467HQ、S-470HQ、S-480HQ、S-510HQ、S-520HQ、S-752、S-755を使用することができる。
【0030】
(酸価の測定)
本願において酸価は、樹脂固形分1g中に含有する酸性基を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JISK0070に準拠して測定される。
【0031】
(ガラス転移温度の測定)
本願においてガラス転移温度は、島津製作所社製DTG-60Aを用いた、熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)により測定した。詳細には、窒素雰囲気下、測定温度範囲-100~200℃、昇温速度1℃/分の条件において、ベースラインシフトにおける変曲点の温度をガラス転移温度とした。
【0032】
(重量平均分子量の測定)
本願において重量平均分子量(Mw)は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定することができ、ポリエチレングリコールを標準物質に用いた換算分子量として求めることが可能である。測定器としてはGPC装置:昭和電工社製 Shodex GPC-401などが挙げられ、カラムとしては、昭和電工社製Shodex OHpak LB-805などが挙げられる。検出器としては例えば、RI(示差屈折計)などが挙げられ、測定温度は、カラム温度が20~50℃であることが好ましい。溶離液としては0.1規定のNaNO3水溶液が挙げられ、流速は0.2~5.0mL/分である。
【0033】
(最低造膜温度の測定)
本願において最低造膜温度は、 JIS K 6828-1:2003に準拠し、テスター産業社製 TP-801MFTテスター等で測定することができる。
【0034】
<ヒートシール層の形成>
ヒートシール層は、例えば、表面保護層と反対側の紙基材(a)面上に、ヒートシール剤を用いて印刷した後、揮発成分を乾燥して除去することによって形成することができる。印刷方法としてはグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式が好適であり、例えば、グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブン等による乾燥によって被膜を定着させることでヒートシール層を得ることができる。
【0035】
(グラビア印刷)
《グラビア版》
グラビア印刷において、グラビア版は金属製の円筒状のものであり、彫刻又は腐蝕・レーザーによって各色の凹部を形成する。彫刻とレーザーの使用に制限はなく、柄に合わせて任意に設定が可能である。線数としては80線~250線のものが適宜使用され、線数の大きいものほど目の細かい印刷が可能である。印刷層の厚みとしては、0.1μm~100μmが好ましい。
【0036】
《グラビア印刷機》
グラビア印刷機においては、一つの印刷ユニットが、上記グラビア版及びドクターブレードを備えている。印刷ユニットは多数あり、有機溶剤系印刷インキ及び絵柄インキに対応する印刷ユニットを設定でき、各ユニットはオーブン乾燥ユニットを有する。印刷は輪転により行われ、巻取印刷方式である。版の種類やドクターブレードの種類は適宜選択され、仕様に応じたものが選定できる。
【0037】
[紙基材(a)]
本発明の紙基材(a)は、紙繊維(平均繊維径10μm以上の植物由来繊維のセルロース繊維)により構成された基材であるが、更に紙繊維以外の、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂を含むことが好ましく、包装材により高い全光透過率の透明性を与える。なお、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂とは、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の繊維・粒子・コロイド又は、有機溶剤及び/又は水に溶解・分散可能な樹脂である。平均繊維径あるいは平均粒子径は5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがなお好ましく、1μm以下であることが更に好ましい。
なお、上記平均繊維径あるいは平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて無作為に10~20点程度の平均を取ることで算出可能である。
また、樹脂が溶解している場合などは、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定不能であるが、GPCなどで、分子量の測定できる樹脂が存在する場合は、明らかに、繊維状あるいは粒子状の形態のものが存在し、その平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂に該当する。さらに、溶解していた樹脂が溶剤揮発により、乾固した場合も、走査型電子顕微鏡(SEM)では、平均繊維径も平均粒子径も、測定不能できないが、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂である樹脂の溶液由来であるので、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂に該当する。このように定義する主旨は、紙繊維とは異なる樹脂であることを文言上区別するためである。
紙基材が平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂を含む一実施形態において、紙基材のセルロース繊維間の空隙に上記樹脂を含む態様の紙基材(a)であることが好ましい。
【0038】
<紙基材(a)の製造に用いられる紙繊維>
紙基材(a)に用いられる紙繊維(以下、単に「紙」ともいう)としては、平均繊維径10μm以上の植物由来繊維(セルロース繊維)により構成されていれば特に制限はなく、例えば、クラフト紙等が挙げられる。なお、紙基材(a)としては、秤量が、50~150g/m2であることが好ましく、60~120g/m2であることがなお好ましく、60~90g/m2であることが更に好ましい。上記範囲である場合、全光線透過率が良好となる。
【0039】
<紙基材(a)に含まれる平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂>
紙基材(a)に含まれる樹脂は、平均繊維径又は平均粒子径10μm未満の繊維・粒子・コロイド・溶液となった樹脂であり、有機溶剤及び/又は水に溶解・分散可能な樹脂である。当該樹脂は、例えば、セルロース系樹脂、パラフィン樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂及びエポキシ樹脂等が挙げられ、屈折率の観点から、セルロース系樹脂が好ましい。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、紙繊維以外の平均繊維径又は平均粒子径10μm以上の樹脂繊維・樹脂粒子を含むことを排除するものではない。
【0040】
紙基材(a)中の樹脂の含有量は、紙基材(a)100質量%中、0.5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、20~35質量%であることが更に好ましい。上記範囲である場合、全光線透過率及び耐ブロッキング性が良好となる。
【0041】
<平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂>
平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満のセルロース系樹脂として、酢酸セルロース樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、ニトロセルロース樹脂、セルロースキサントゲン酸ナトリウム由来(ビスコース由来)のセルロース樹脂、その他のセルロース系樹脂、などが挙げられる。セルロースキサントゲン酸ナトリウム(ビスコース)由来のセルロース樹脂であることが更に好ましい。
本発明で用いられるセルロース系樹脂の重量平均分子量は、20,000~900,000であることが好ましく、50,000~700,000であることがより好ましく、100,000~500,000であることが更に好ましい。また、セルロース系樹脂の平均粒子径は、上記範囲である場合、光透過性と酸素透過性の両立が可能になるため、全光線透過率及び酸素バリア性が良好となる。
【0042】
セルロース系樹脂は、分散性・透明性の観点から、セルロースナノファイバーやビスコース(再生セルロース)を用いることが好ましく、ビスコースからなるセロファンを用いることがより好ましい。
【0043】
セルロースナノファイバーは、粉砕機を用いた解砕や、TEMPO酸化法等の公知の方法でセルロース系樹脂を処理することによって得られる。上記セルロースナノファイバーの繊維幅(繊維径)は、1~200nmであることが好ましく、1~50nmであることがより好ましく、1~20nmであることが特に好ましい。
【0044】
一実施形態として、前記樹脂としてセルロース繊維を水酸化ナトリウム、及び二硫化炭素と反応させて得たセルロースキサントゲン酸ナトリウム(ビスコース)を用いることが好ましい。前記ビスコースは希硫酸に浸漬することで再度セルロース(再生セルロース、セロファンともいう)を得ることができる。前記ビスコースはコロイド分散液のため、塗工性に優れる。そのため、紙に前記樹脂として再生セルロースを含ませる場合は、ビスコースを紙に塗工し、塗工後に再生セルロースへ変化させることが好ましい。あるいは、紙繊維とともにビスコースをスラリー化して塗工乾燥後に再生セルロースとして紙基材(a)を得ることが好ましい。
【0045】
<包装材中の紙繊維の割合>
上記包装材のうち、紙繊維の割合は、リサイクル性、透明性及びバリア性の観点から、包装材100質量%中、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがなお好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
【0046】
<包装材中の平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂の含有量>
包装材中の平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂の含有量は、包装材100質量%中、0.5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、15~35質量%であることが更に好ましい。上記範囲である場合、全光線透過率及び耐ブロッキング性が良好となる。
【0047】
<紙基材(a)の製造方法>
紙に樹脂を含ませる方法は、例えば、<紙基材(a)に含まれる樹脂>に記載の樹脂を含む樹脂液を用い、前記樹脂液を紙に塗工して紙基材(a)を製造する方法、及び前記樹脂液に紙を浸漬させて紙基材(a)を製造する方法、植物繊維と上記樹脂との混合物を膠着させ製紙して紙基材(a)を製造する方法等が挙げられる。樹脂液としては、前記樹脂を媒体に溶解させた樹脂溶液、微細な樹脂粒子を媒体に分散した樹脂分散液等が挙げられる。
【0048】
《樹脂液を紙に塗工して紙基材(a)を製造する方法》
樹脂液を紙に塗工する方法は、例えば、紙面上に、樹脂液を用いて塗工した後、揮発成分を除去する方法が挙げられる。塗工方法としてはグラビア印刷方式、フレキソ印刷方式が好適であり、例えば、フレキソ印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗工される。その後、オーブン等による乾燥によって樹脂を含んだ紙を得ることができる。
【0049】
《樹脂液に紙を浸漬させて紙基材(a)を製造する方法》
樹脂液に紙を浸漬する方法は、例えば、紙を樹脂液中に浸漬させ、ニップロール等によって余分な樹脂液を絞り出した後、オーブン等による乾燥によって揮発成分を除去することで、樹脂を含んだ紙を得ることができる。
【0050】
《植物繊維と上記樹脂との混合物を膠着させ製紙して紙基材(a)を製造する方法》
例えば、紙繊維であるセルロース繊維と上記樹脂のスラリー状混合物を塗工・乾燥してシートを得て、酸・アルカリ処理などで当該樹脂を固体化して透明紙とする方法などが挙げられる。
【0051】
以下の説明において、ヒートシール層、紙基材(a)及び表面保護層を順次有し、表面保護層及びヒートシール層を下記態様とすることで酸素、水蒸気バリア性が向上して、かつ、透明な包装材を得ることができる効果を奏する。
【0052】
[表面保護層]
表面保護層は、スチレン-アクリル共重合樹脂(A)を含むため酸素、水蒸気バリア性が向上する。表面保護層において、スチレン-アクリル共重合樹脂(A)の含有量は、表面保護層の全質量中、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。スチレン-アクリル共重合樹脂(A)の含有量が上記範囲である場合、表面保護層の強靭性が高くなり、耐水摩擦性が良好となる。また、表面保護層の膜厚は0.3~10μmであることが好ましく、は1~7μmであることがより好ましく、3~5μmであることが更に好ましい。
【0053】
表面保護層の光沢値は、20以下であることが好ましく、1~20であることがより好ましく、1~10であることが特に好ましい。上記光沢値は、JIS Z 8741:1997に準拠して測定した60度光沢値(Gs(60))である。光沢値が高いほどバリア性に有利である。なお、上記光沢値は、包装材内側のアルミニウム蒸着層等の金属層に関する光沢度(鏡面の反射)を指すものではなく、最表面の表面保護層の光沢値を指す。
表面保護層がスチレン-アクリル共重合樹脂(A)を含有することにより、表面保護層の光沢値を上記範囲とすることが容易となる。
【0054】
<表面保護層に含まれるスチレン-アクリル樹脂(A)>
スチレン-アクリル共重合樹脂(A)は、水性樹脂であることが好ましく、当該水性樹脂は水溶性樹脂であっても水性エマルジョン樹脂であってもよいが、水性エマルジョン樹脂であることが好ましい。
【0055】
スチレン-アクリル共重合樹脂(A)は、酸基を有することが好ましく、その場合の酸価は、20~200mgKOH/gであることが好ましく、30~150mgKOH/gであることがなお好ましく、80~120mgKOH/gであることが更に好ましい。スチレン-アクリル共重合樹脂(A)が酸基を有し、その酸価が上記範囲である場合、耐水性及び密着力の両立が可能となるため、包装材の耐水摩擦性及び印刷層と表面保護層との密着性が良好となる。スチレン-アクリル共重合樹脂(A)の重量平均分子量は、2000~600000であることが好ましく、50000~600000であることがより好ましく、70000~600000であることが特に好ましい。スチレン-アクリル共重合樹脂(A)のガラス転移温度は、-20~80℃であることが好ましく、-10~60℃であることがなお好ましく、0~40℃であることが更に好ましい。スチレン-アクリル共重合樹脂(A)の重量平均分子量及びガラス転移温度が上記範囲である場合、耐水摩擦性が良好となる。
【0056】
<表面保護層に用いてよいスチレン-アクリル共重合樹脂(A)以外の樹脂>
表面保護層は、さらにスチレン-アクリル共重合樹脂(A)以外の樹脂を含んでよく、例えば、ウレタン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-アクリル系共重合樹脂、ひまし油系樹脂、ロジン系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン-アクリル樹脂、スチレン-アリルアルコール共重合樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ダンマル樹脂、及びこれらの変性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0057】
表面保護層に含まれるスチレン-アクリル共重合樹脂(A)は、市販品を用いてもよく、例えば、BASF社製、ジョンクリル74J、ジョンクリル537E等を使用することができる。
【0058】
<表面保護層に含まれる添加剤>
本発明の表面保護層には、必要に応じて各種添加剤を含有させることができる。例えば、分散剤、ワックス、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、造膜助剤、撥水剤、剥離剤(シリコン)である。
具体的には、耐摩擦性を向上させるために、ポリエチレンワックス等のワックス樹脂微粒子分散体、乾燥性や塗膜隠蔽性を向上させるために、シリカ、硫酸バリウム、樹脂ビーズ、炭酸カルシウム、タルク等の体質顔料、防滑性を付与するために無機系微粒子及び粘着性樹脂(アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂)、レベリング性を向上させるためにレベリング剤、消泡性を付与するために消泡剤、再溶解性を付与するために水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性化合物、造膜助剤等の各種添加剤を添加することができ、耐摩擦性向上の観点から、ポリエチレンワックスを含むことが好ましい。
【0059】
<ポリエチレンワックス>
表面保護層は、ポリエチレンワックスを含むことが好ましい。表面の光沢を向上させて、耐水性を向上させる目的である。なお、ここでいうポリエチレンワックスとは、粒子状であり、フィッシャー・トロプシュ製法で得られたポリエチレンも含む。ポリエチレンワックスの平均粒子径は0.05~10μmであることが好ましく、0.1~8μmであることがなお好ましい。表面保護層中のポリエチレンワックスの含有量は、表面保護層100質量%中、0.1~15質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましく、6~10質量%であることが更に好ましい。
【0060】
<オーバーコート剤>
表面保護層は、オーバーコート剤により形成されることが好ましい。オーバーコート剤は、水性オーバーコート剤であることが好ましい。当該オーバーコート剤はスチレン-アクリル共重合樹脂(A)、及び水性媒体を含み、更に、ポリエチレンワックスを含むことが好ましい。更に、スチレン-アクリル共重合樹脂(A)以外の樹脂、添加剤を含んでもよい。
【0061】
オーバーコート剤におけるスチレン-アクリル共重合樹脂(A)の固形分の含有量は、オーバーコート剤の全質量中、25~100質量%であることが好ましく、25~75質量%であることがより好ましく、25~45質量%であることが特に好ましい。
【0062】
(水性媒体)
オーバーコート剤は、水性媒体を含むことが好ましい。水性媒体の主成分は水であることが好ましいが、水に加えて、水溶性有機溶剤を使用できる。具体的には、印刷条件(スピード、版深、デザイン、乾燥温度)に応じて、アルコール系有機溶剤、グリコール系有機溶剤等を含有させることができる。水性媒体の含有量は、オーバーコート剤全量に対して30質量%以下であることが好ましい。
ここで、本発明において、主成分が水であるとは、水性媒体中、水の含有量が最も多いことをいう。また、水溶性有機溶剤とは、25℃で液体であり、かつ、25℃の水に対する溶解度が1質量%以上であるものを指す。
【0063】
上記アルコール系有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、ノルマルブタノール、ターシャリブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール等が挙げられる。
【0064】
上記グリコール系有機溶剤としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジピロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジブチルグリコール等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
<オーバーコート剤の製造方法>
オーバーコート剤は、攪拌羽根、回転翼等を供えた攪拌機に、樹脂を有機溶剤に溶解又は分散させた樹脂溶液、溶剤を仕込み、混合、攪拌して得ることができる。撹拌速度としては特に制限されることはなく、50~2000rpmで行うことが可能である。オーバーコート剤の取り扱い、塗布性等の向上のために、さらに溶剤を適宜追加することもできる。
オーバーコート剤の粘度は、印刷適性等の観点から、50~300mPa・sであることが好ましい。
【0066】
<表面保護層の形成>
表面保護層は、例えば、基材上に印刷層が設けられた積層体の印刷層上に、オーバーコート剤を用いて印刷した後、揮発成分を除去することによって形成することができる。印刷方法としてはフレキソ印刷方式が挙げられ、例えば、オーバーコート剤がフレキソ印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブン等による乾燥によって被膜を定着させることで表面保護層を得ることができる。
【0067】
(フレキソ印刷)
《フレキソ印刷機》
フレキソ印刷機としてはCI型多色フレキソ印刷機、ユニット型多色フレキソ印刷機等があり、インキ供給方式についてはチャンバー方式、2ロール方式が挙げることができ、任意の印刷機を使用することができる。
【0068】
《フレキソ版》
フレキソ印刷に使用される版としては、UV光源による紫外線硬化を利用する感光性樹脂版、又はダイレクトレーザー彫刻方式を使用するエラストマー素材版が挙げられる。フレキソ版の画像部の形成方法に関わらず、版のスクリーン線数において75lpi以上のものが使用される。版を貼るスリーブやクッションテープについては任意のものを使用することができる。
【0069】
本発明の包装材は、装飾又は美感の付与、内容物、賞味期限、及び、製造者又は販売者の表示等の観点から、更に印刷層を有することが好ましい。また、酸素バリア性の観点から、更に、バリア層を有することが好ましい。
【0070】
[印刷層]
印刷層は、紙基材(a)と表面保護層の間に位置し、着色剤及び水性樹脂を含むことが好ましい。水性樹脂とは水に溶解又は分散可能な樹脂をいい、水溶性樹脂及び水性エマルジョン樹脂が挙げられる。ここで、水性エマルジョン樹脂は、水に不溶又は難溶であるが、界面活性剤等を用いて水中で分散安定化されている樹脂を指す。
【0071】
印刷層が水性エマルジョン樹脂を含む場合、当該水性エマルジョン樹脂の平均粒子径は、10~500nmであることが好ましく、30~200nmであることがより好ましい。上記平均粒子径は、印刷層の形成に印刷インキが用いられる場合は、当該印刷インキ中における平均粒子径である。
【0072】
印刷層の膜厚は0.1~10μmであることが好ましく、0.3~6μmであることがより好ましく、0.5~3μmであることが特に好ましい。本発明では、単一の印刷層だけでなく、複数の印刷層が重なった層も印刷層とし、色相の異なる印刷層を任意に組み合わせることができる。
【0073】
<印刷層に含まれる水性樹脂>
印刷層中の水性樹脂の含有量は、印刷層の全質量中、10~70質量%であることが好ましく、30~50質量%であることがより好ましい。
上記水性樹脂としては、アクリル系樹脂(スチレン-アクリル共重合樹脂である場合を除く)、スチレン-アクリル共重合樹脂(B)、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-アクリル系共重合樹脂、ひまし油系樹脂、ロジン系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン-アリルアルコール共重合樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ダンマル樹脂、及びこれらの変性樹脂が挙げられる。
中でも、印刷層が、スチレン-アクリル共重合樹脂(B)、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、スチレン-アクリル共重合樹脂(B)を含むことがなお好ましい。包装材の耐熱性が向上するためである。
【0074】
なお、水性樹脂は酸基を有することが好ましく、当該酸基が、塩基性化合物で中和されていることが好ましい。酸性基とはヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシ基など等が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。当該塩基性化合物として、例えば、アミン化合物、アルカリ金属化合物が好適に挙げられる。
【0075】
上記アミン化合物としては、例えば、アンモニア;ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等のアルキルアミン;モノエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンが挙げられる。上記アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
(スチレン-アクリル共重合樹脂(B))
スチレン-アクリル共重合樹脂(B)は、水溶性樹脂として用いられる、水溶性スチレン-アクリル共重合樹脂(b1)であってもよいし、水性エマルジョン樹脂として用いられる、スチレン-アクリル共重合樹脂(b2)エマルジョンであってもよい。スチレン-アクリル共重合樹脂(B)は上記スチレン-アクリル共重合樹脂(A)と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0077】
(水溶性スチレン-アクリル共重合樹脂(b1))
水溶性スチレン-アクリル共重合樹脂(b1)は、酸基を有していることが好ましく、その場合の酸価は、150~350mgKOH/gであることが好ましく、200~300mgKOH/gであることがより好ましい。水溶性スチレン-アクリル共重合樹脂(b1)が酸基を有し、その酸価が上記範囲である場合、耐水摩擦性が良好となる。
【0078】
水溶性スチレン-アクリル共重合樹脂(b1)の重量平均分子量は1500~50000であることが好ましく、1500~30000であることがより好ましく、1500~8000であることが特に好ましい。水溶性スチレン-アクリル共重合樹脂(b1)のガラス転移温度は、40~130℃が好ましく、60~100℃がより好ましい。水溶性スチレン-アクリル共重合樹脂(b1)の重量平均分子量及びガラス転移温度が上記範囲である場合、耐水摩擦性が良好になる。水溶性スチレン-アクリル共重合樹脂(b1)は、市販品を用いてもよく、例えば、星光PMC社製 GL-2439、YL-1098が使用できる。
【0079】
(スチレン-アクリル共重合樹脂(b2)エマルジョン)
スチレン-アクリル共重合樹脂(b2)は、酸基を有していることが好ましく、その場合の酸価は、5~80mgKOH/gであることが好ましく、20~60mgKOH/gであることがより好ましい。スチレン-アクリル共重合樹脂(b2)が酸基を有し、その酸価が上記範囲である場合、耐水摩擦性が良好となる。スチレン-アクリル共重合樹脂(b2)の重量平均分子量は、8000~800000であることが好ましく、20000~500000であることがより好ましい。スチレン-アクリル共重合樹脂(b2)のガラス転移温度は、-20~60℃が好ましく、0~40℃がより好ましい。スチレン-アクリル共重合樹脂(b2)の重量平均分子量及びガラス転移温度が上記範囲である場合、耐水摩擦性が良好となる。
【0080】
印刷層は、上記水溶性樹脂および水性エマルジョン由来の樹脂を両方含むことが好ましい。水溶性樹脂および水性エマルジョン樹脂の固形分比率は、水溶性樹脂:水性エマルジョン樹脂=1:99~75:25であることが好ましく、1:99~55:45であることがより好ましく、15:85~35:65であることが特に好ましい。上記比率の場合、耐水摩擦性が良好となる。
【0081】
スチレン-アクリル共重合樹脂(b2)エマルジョンは、市販品を用いてもよく、例えば、BASF社製 ジョンクリル662、669、668、665、667、PDX 7198、633-E、LMV7051、90、HPD396が挙げられる。
【0082】
(スチレン-マレイン酸共重合樹脂)
スチレン-マレイン酸共重合樹脂は、酸基を有していることが好ましく、その場合の酸価は、100~180mgKOH/gであることが好ましく、120~160mgKOH/gであることがより好ましい。スチレン-マレイン酸共重合樹脂が酸基を有し、その酸価が上記範囲である場合、耐水摩擦性が良好となる。スチレン-マレイン酸共重合樹脂の重量平均分子量は1500~50000であることが好ましく、4000~30000であることがより好ましい。スチレン-マレイン酸共重合樹脂のガラス転移温度は、40~120℃が好ましく、60~100℃がより好ましい。スチレン-マレイン酸共重合樹脂の重量平均分子量及びガラス転移温度が上記範囲である場合、耐水摩擦性が良好となる。
【0083】
スチレン-マレイン酸共重合樹脂は、市販品を用いてもよく、例えば、星光PMC社製 M-30、荒川化学社製 アラスターシリーズを使用することができる。
【0084】
(アクリル樹脂(スチレン-アクリル共重合樹脂である場合を除く))
アクリル樹脂は、酸基を有していることが好ましく、その場合の酸価は、20~100mgKOH/gであることが好ましく、40~80mgKOH/gであることがより好ましい。アクリル樹脂が酸基を有し、その酸価が上記範囲である場合、耐水摩擦性が良好となる。アクリル樹脂の重量平均分子量は1500~10000であることが好ましく、4000~30000であることがより好ましい。アクリル樹脂のガラス転移温度は、10~90℃が好ましく、30~70℃がより好ましい。アクリル樹脂の重量平均分子量及びガラス転移温度が上記範囲である場合、耐水摩擦性が良好となる。
【0085】
アクリル樹脂は、市販品を用いてもよく、例えば、星光PMC社製 X-310、VS-1057、GL-2439、TS-1316を使用することができる。
【0086】
<印刷層に含まれる着色剤>
印刷層は、着色剤を含むことが好ましい。前記着色剤の含有量は、印刷層全質量中、1~60質量%であることが好ましく、30~50質量%であることがより好ましい。
【0087】
着色剤としては顔料が好ましく、当該顔料としては、有機顔料、無機顔料いずれでも使用可能である。有機顔料としては、有機化合物、及び/又は有機金属錯体からなる顔料の使用が好ましい。無機顔料としては、酸化チタンを含むものが好ましい。
【0088】
有機顔料として具体的な例をカラーインデックス(Colour Index International、略称C.I.)のC.I.ナンバーで示す。
好ましくは、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントブラック7であり、これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
(無機顔料)
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、酸化チタン、酸化亜鉛が挙げられ、アルミニウムはリーフィングタイプ又はノンリーフィングタイプがあるが、ノンリーフィングタイプが好ましい。
【0090】
<印刷層に含まれる添加剤>
本発明の印刷層には、必要に応じて各種添加剤を含有させることができる。例えば、分散剤、ワックス、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、造膜助剤が挙げられる。
具体的には、耐摩擦性を向上させるために、ポリエチレンワックス等のワックス樹脂微粒子分散体、乾燥性や塗膜隠蔽性を向上させるために、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク等の体質顔料、防滑性を付与するために無機系微粒子及び粘着性樹脂(アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂)、レベリング性を向上させるためにレベリング剤、消泡性を付与するために消泡剤、再溶解性を付与するために水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性化合物、造膜助剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0091】
<印刷インキ>
印刷層は、上記着色剤及び上記バインダー樹脂を含む印刷インキにより形成されることが好ましい。
【0092】
<印刷インキの製造方法>
印刷層の形成に用いられる印刷インキは、例えば、顔料を樹脂等により分散機を用いて有機溶剤中に分散させ、得られた顔料分散体に樹脂、各種添加剤や有機溶剤等を混合して製造できる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルを用いることができる。顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度等を適宜調節することにより、調整することができる。25℃における印刷インキの粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から50mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から300mPa・s以下の範囲であることが好ましい。印刷インキの製造方法は、例えば、特開2018-158986号公報に記載された方法を用いることができる。
【0093】
<印刷層の形成>
印刷層は、例えば、ヒートシール層と反対側の紙基材(a)面上に、印刷インキを用いて印刷した後、揮発成分を除去することによって形成することができる。印刷方法としてはフレキソ印刷方式が好適であり、例えば、フレキソ印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブン等による乾燥によって被膜を定着させることで印刷層を得ることができる。
【0094】
[バリア層]
本発明の包装材は、更に、バリア層を有することが好ましい。包装材がバリア層を有する場合、バリア層は、ヒートシール層と紙基材(a)の間、もしくは紙基材(a)と表面保護層の間に位置することが好ましく、上記包装材が印刷層を含む場合は、紙基材(a)と印刷層の間に位置することも好ましい。バリア層は、真空蒸着法や、スパッタリング法、Tダイキャスト法、バリアコート剤の塗工・乾燥等によって形成することができ、バリア層に含まれる成分として、例えば、シリカ、アルミナ、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、バリアナイロン樹脂(MXD)等が挙げられる。バリア層は、単層構成でも複層構成でもよく、1つの層中に2種以上の化合物を含んでも良い。バリア層の厚さは、酸素バリア性の観点から、10~300nmであることが好ましい。
【0095】
<真空蒸着法>
真空蒸着法は、アルミニウム等の金属を、高周波誘導加熱、直接通電加熱、又はエレクトロンビーム加熱等により、1200~1500℃、10-1~10-2Pa程度の条件下で蒸着させる方法である。被蒸着物は、真空蒸着前に、表面へのコロナ放電処理等による密着性向上処理を行うことができる。
【0096】
<スパッタリング法>
スパッタリング法は、10-1~10-2Pa程度の条件下で、Ar等の不活性ガスを導入し、電圧負荷することで実施される
<バリアコート剤の塗工・乾燥>
バリアコート剤の塗工・乾燥は、例えば、紙基材(a)面上に、バリアコート剤を用いて印刷した後、揮発成分を除去することによって形成することができる。印刷方法としてはグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式が好適であり、例えば、グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブン等による乾燥によって被膜を定着させることでバリア層を得ることができる。
【0097】
上記包装材の積層構成の例として、以下のものを好適に挙げることができる。下記の例において、「/」は各層の境界を意味する。
ヒートシール層/紙基材(a)/表面保護層
ヒートシール層/バリア層/紙基材(a)/表面保護層
ヒートシール層/紙基材(a)/バリア層/表面保護層
ヒートシール層/紙基材(a)/印刷層/表面保護層
ヒートシール層/バリア層/紙基材(a)/印刷層/表面保護層
ヒートシール層/紙基材(a)/バリア層/印刷層/表面保護層
ヒートシール層/紙基材(a)/印刷層/バリア層/表面保護層
【0098】
<包装袋>
本発明における包装材は、所定のサイズにカットされて、ヒートシール層同士を互いに合わせた形で縁部分をヒートシールされて包装袋となる。ヒートシールの温度としては50~250℃であることが好ましく、80~180℃であることがなお好ましい。ヒートシール圧力としては1~5kg/cm2等の条件であればよい。1枚の包装材を折り曲げて縁をヒートシールしたり、2枚以上の包装材をヒートシールしたりすることで包装袋を形成できる。また、包装袋は、中身を包装した後、すべての開口部をヒートシールすることでも包装袋を形成できる。この包装袋は、食品、医薬品等の包装袋として幅広く利用する事ができる。
【実施例0099】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部及び%は、特に注釈の無い場合、質量部及び質量%を表す。また、「NV.」とは不揮発性分の質量%を表す。
【0100】
<調製例1>ウレタン樹脂溶液PU1の調製
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールの縮合物であるポリエステルポリオールを227.0部、PEG(数平均分子量2000のポリエチレングリコール)9.6部、2,2-ジメチロールプロパン酸(DMPA)30.1部、及びメチルエチルケトン(MEK)250部を混合、撹拌しながらイソホロンジイソシアネート(IPDI)90.6部を1時間かけて滴下し、80℃で4時間反応させて末端イソシアネートプレポリマーとし、末端イソシアネートプレポリマー溶液を得た。得られた末端イソシアネートプレポリマー溶液に対し、2-アミノエチルエタノールアミン(AEA)2.7部及びイソプロパノール(IPA)150部を混合したものを室温で徐々に添加して、40℃で2時間反応させ、溶剤型ポリウレタン樹脂溶液を得た。次に、10%アンモニア水38.1部及びイオン交換水801.4部を溶剤型ポリウレタン樹脂溶液に徐々に添加して中和することにより水溶化し、さらに消泡剤0.5部を添加してMEK及びIPAを減圧留去した後、水を加えて固形分調整を行い、固形分50%、重量平均分子量38,000のウレタン樹脂溶液PU1を得た。
【0101】
<調整例2>ポリエチレン樹脂エマルジョンPE1の調整
フローセンUF80(住友精化製、ポリエチレン、密度:0.919、NV.100%) 50部に水/イソプロピルアルコール混合溶剤(質量%比率1:1) 50部を添加、撹拌混合してポリエチレン樹脂エマルジョンPE1を得た。
【0102】
<調整例3>ロジン樹脂溶液R1の調整
マルキードNo1(荒川化学社製、マレイン酸ロジン、酸価:25mgKOH/g、重量平均分子量:300、NV.100%) 50部に酢酸エチル 50部を添加、攪拌混合してロジン樹脂溶液R1を得た。
【0103】
<調整例4>ヒートシール剤HS1の調整
アクリル樹脂エマルジョンAC1(BASF社製 JONCRYL PDX7356、酸価:78mgKOH/g、ガラス転移温度:25℃、NV.50%) 91.7部、水/イソプロピルアルコール混合溶剤(質量比率1:1) 8.2部、BYK-024(BYK社製、消泡剤) 0.1部となるように添加、撹拌混合してヒートシール剤HS1を得た。
<調整例5~11>ヒートシール剤HS2~8の調整
表1に記載した原料及び配合比を使用した以外は調整例4と同様の方法で、ヒートシール剤HS2~8を得た。なお、使用した原料の性状は以下の通りである。
・アクリル樹脂エマルジョンAC2(BASF社製、JONCRYL PDX-7430、酸価:30mgKOH/g、ガラス転移温度:34℃、NV.50%)
・アクリル樹脂エマルジョンAC3(星光PMC社製、PE-1126、酸価:50mgKOH/g、ガラス転移温度:-12℃、NV.50%)
・エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンEVA1(ジャパンコーティングレジン社製、アクアテックスMC3800、最低造膜温度:100℃、NV.50%)
・エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンEVA2(ジャパンコーティングレジン社製、アクアテックスEC1200,最低造膜温度:80℃、NV.50%)
・エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンEVA3(住友化学社製、スミカフレックス305HQ,最低造膜温度:0℃、NV.50%)
・ウレタン樹脂溶液PU1(重量平均分子量:38,000、NV.50%)
・ポリエチレン樹脂エマルジョンPE1(NV.50%)
【0104】
【0105】
<調整例12>オーバーコート剤V1の製造
水4.3部、スチレン-アクリル共重合樹脂エマルジョンSAC1(酸価100mgKOH/g、ガラス転移温度:16℃、NV.40%)を87.6部、ポリエチレンワックス8.1部となるように添加、撹拌混合してオーバーコート剤V1を得た。
【0106】
<調整例13~15>オーバーコート剤V2~4の製造
表2に記載した原料及び配合比を使用した以外は調整例12と同様の方法で、オーバーコート剤V2~4を得た。なお、使用した原料の性状は以下の通りである。
・スチレン-アクリル樹脂エマルジョンSAC2(酸価:40mgKOH/g、ガラス転移温度:49℃、NV.40%)
・スチレン-アクリル樹脂エマルジョンSAC3(ガラス転移温度:22℃、NV.40%)
【0107】
<比較調整例1及び2>オーバーコート剤V5及び6の製造
表2に記載した原料及び配合比を使用した以外は調整例12と同様の方法で、オーバーコート剤V5及び6を得た。なお、使用した原料の性状は以下の通りである。
・ウレタン樹脂エマルジョンPU2(大成ファインケミカル社製 WBR016U、酸価:7mgKOH/g、NV.40%)
・アクリル樹脂エマルジョンAC4(酸価:215mgKOH/g、重量平均分子量:8500、ガラス転移温度:85℃、NV.40%)
【0108】
【0109】
<紙基材の製造>
以下製造例にて紙基材の製造方法を示す。
【0110】
<紙基材中の平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂の含有量の算出>
得られた紙基材について、以下に示す方法で平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂の含有量を算出した。
クラフト紙及び得られた紙基材から、10cm角(100cm2)のサンプルをそれぞれ5枚ずつ切り出して質量測定を行い、5サンプル平均のクラフト紙質量、及び5サンプル平均の紙基材質量をそれぞれ算出し、以下の計算式で平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂の含有量を算出した。前記クラフト紙は、浸漬前のクラフト紙である。
(式2)
平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂の含有量=(5サンプル平均の紙基材質量)-(5サンプル平均のクラフト紙質量)[mg]
【0111】
<製造例1>紙基材(a)S1の製造
ビスコース液B1(セルロース濃度:25%、セルロース重量平均分子量:400,000、媒体:水)にクラフト紙:未漂白のクラフトパルプを使用したクラフト紙(日本製紙社製、両更クラフトK、坪量70g/m2)を1分間浸漬し、ニップロール(テスター産業社製)を用いて100KPaで絞り、次に濃度10質量%の硫酸水溶液に1分浸漬させ、水洗を経て、0.6質量%の水酸化ナトリウムと0.6質量%の硫化ナトリウムとの混合水溶液に1分間浸漬し、最後に水洗、乾燥させることで、紙基材(a)S1を得た。S1から切り出した10cm角サンプル中の平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂の平均含有量は、25mgであった。
<製造例2及び3>紙基材(a)S2及びS3の製造
以下のビスコース液を使用した以外は、製造例1と同様の手順で、紙基材(a)S2及び3をそれぞれ作製した。
・ビスコース液B2(セルロース濃度:25%、セルロース重量平均分子量:200,000、媒体:水)
・ビスコース液B3(セルロース濃度:25%、セルロース重量平均分子量:600,000、媒体:水)
<製造例4>紙基材(a)S4の製造
パラフィン樹脂溶液W1(パラフィン濃度:25質量%、パラフィン融点:50℃、パラフィン重量平均分子量:400、媒体:イソパラフィン)にクラフト紙:未漂白のクラフトパルプを使用したクラフト紙(日本製紙社製、両更クラフトK、坪量70g/m2)を1分間浸漬し、ニップロール(テスター産業社製)を用いて100KPaで絞り、乾燥させることで、紙基材(a)S4を得た。
<製造例5~8>紙基材(a)S5~8の製造
以下のビスコース液を使用した以外は、製造例1と同様の手順で、紙基材(a)S5~8をそれぞれ作製した。
・ロジン樹脂溶液R1(調整例3のロジン樹脂溶液)
・ビスコース液B4(セルロース濃度:5%、セルロース重量平均分子量:400,000、媒体:水)
・ビスコース液B5(セルロース濃度:15%、セルロース重量平均分子量:400,000、媒体:水)
・ビスコース液B6(セルロース濃度:45%、セルロース重量平均分子量:400,000、媒体:水)
【0112】
なお、走査型電子顕微鏡(SEM)では、紙を浸漬する樹脂(ビスコース液B1~B6あるいはパラフィン樹脂溶液W1あるいはロジン樹脂溶液R1由来の樹脂)は、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂である樹脂の溶液由来であるので、平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂に該当する。
【0113】
【0114】
<包装材の製造>
以下実施例にて包装材の製造方法を示す。
【0115】
<包装材中の平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂比率>
得られた包装材から10cm角(100cm2)のサンプルを5枚切り出して、質量測定を行い、5サンプル平均の包装材質量を算出し、以下の以計算式で包装材中の平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂比率を算出した。なお、(紙基材の樹脂の含有量)は上述の<紙基材中の平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂の含有量の算出>で算出した値を用いた。
(式3)
包装材中の平均繊維径あるいは平均粒子径10μm未満の樹脂比率=(紙基材の樹脂の含有量)/(5サンプル平均の包装材質量)[質量%]
【0116】
<実施例1>積層体P1の製造
紙基材(a)S1に対し、250線/インチのアニロックスロール、及び感光性樹脂製のベタ版を備えた小型フレキシプルファー印刷機(フレキソ印刷機)を用いて、印刷速度50m/分の条件下で、印刷インキ(アクワPKバイオ23黄、東洋インキ社製、黄インキ、含有樹脂の詳細は後述)を印刷した後、1200Wドライヤーで10秒間乾燥させ、印刷層を形成した。前記印刷層上に対し、200線/インチのアニロックスロール、及び感光性樹脂製のベタ版を備えた小型フレキシプルファー印刷機(フレキソ印刷機)を用いて、印刷速度50m/分の条件下で、オーバーコート剤V1を印刷した後、25℃、12時間の条件で乾燥させ、紙基材(a)/印刷層/表面保護層の構成である中間積層体p1を得た。
中間積層体p1における、紙基材(a)の印刷層の反対面に対し、版深50μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン70℃の条件下で、ヒートシール剤HS1を2度重ね印刷してヒートシール層を形成し、ヒートシール層/紙基材(a)/印刷層/表面保護層の構成である包装材P1を得た。包装材P1から切り出した10cm角サンプルの平均質量は、83mgであった。
【0117】
上記印刷インキアクワPKバイオ23黄が含む樹脂は以下の通りである。
・スチレン-アクリル共重合樹脂エマルジョンSAC4(酸価:36mgKOH/g、ガラス転移温度:14℃)
・スチレン-アクリル共重合樹脂溶液SAC5(酸価:213mgKOH/g、重量平均分子量:8000、ガラス転移温度:73℃)
なお、上記SAC4とSAC5の固形分比率は、SAC4:SAC5=75:25である。
【0118】
<実施例2~24>包装材P2~24の製造
表4に示したヒートシール剤、紙基材(a)、オーバーコート剤を使用した以外は、実施例1と同様の手順で、同様の構成を有する包装材P2~24をそれぞれ作製した。
<比較例1>包装材P’1の製造
比較例1では、紙基材にクラフト紙:未漂白のクラフトパルプを使用したクラフト紙(日本製紙社製、両更クラフトK、坪量70g/m2)を使用した。前記クラフト紙は樹脂を含まないため、本発明における紙基材(a)の定義に該当しないので、以下紙基材(a’)と表記する。
紙基材(a’)に対し、250線/インチのアニロックスロール、及び感光性樹脂製のベタ版を備えた小型フレキシプルファー印刷機(フレキソ印刷機)を用いて、印刷速度50m/分の条件下で、印刷インキ(アクワPKバイオ23黄東洋インキ社製、黄インキ)を印刷した後、1200Wドライヤーで10秒間乾燥させ、印刷層を形成した。前記印刷層上に対し、200線/インチのアニロックスロール、及び感光性樹脂製のベタ版を備えた小型フレキシプルファー印刷機(フレキソ印刷機)を用いて、印刷速度50m/分の条件下で、オーバーコート剤V1を印刷した後、25℃、12時間の条件で乾燥させ、紙基材(a’)/印刷層/表面保護層の構成である中間積層体p’1を得た。
中間積層体p’1における、紙基材(a’)の印刷層の反対面に対し、版深50μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度50m/分、インラインオーブン70℃の条件下で、ヒートシール剤HS1を印刷してヒートシール層を形成し、ヒートシール層/紙基材(a)/印刷層/表面保護層の構成である包装材P’1を得た。
<比較例2~5>包装材P’2~5の製造
表5に示したヒートシール剤、紙基材(a)、オーバーコート剤を使用した以外は、実施例1と同様の手順で、同様の構成を有する包装材P’2~5をそれぞれ作製した。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
[包装材の評価]
実施例1~24、比較例1~5で得られた包装材P1~24、P’1~5について、以下に記載の評価を行った。結果を表4、表5に示す。なお、すべての実施例、比較例において、JISZ8741:1997に記載された方法で測定した、表面保護層の60度光沢値は20以下であることを確認した。
【0123】
<全光線透過率>
得られた包装材を20mm角に切り出し、JIS K 7361-1に準拠し、日本電色工業社製、Spectral haze meter SH7000を用いて、上記包装材の表面保護層側から光を入射させて測定し、以下基準にて評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《評価基準》
A.全光線透過率が70%以上。
B.全光線透過率が60%以上、70%未満。
C.全光線透過率が40%以上、60%未満。
D.全光線透過率が40%未満。
【0124】
<酸素バリア性評価>
得られた包装材について、JIS K 7126-2:2006に準拠した方法で酸素透過度測定を行い、下記基準にて評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《評価基準》
A.酸素透過度が100g/m2・24h未満である。
B.酸素透過度が100g/m2・24h以上、1000g/m2・24h未満である。
C.酸素透過度が1000g/m2・24h以上、10000g/m2・24h未満である。
D.酸素透過度が10000g/m2・24h以上である。
【0125】
<耐水摩擦性>
得られた包装材を25mm×150mmの大きさに切り出し、テスター産業(株)製学振型摩擦堅牢度試験器を用いて、以下基準にて耐水摩擦性を評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《試験条件》
荷重:200g、往復回数:2回、当紙:カナキン布に水を5滴滴下したもの
《評価基準》
A.印刷層が取られることがなく、原紙の露出面積比率が1%未満であるもの。
B.当紙にわずかにインキが付着。印刷層がわずかに取られて、原紙の露出面積比率が1%以上5%未満であるもの。
C.当紙全面にインキが薄く付着。印刷層がわずかに取られて、原紙の露出面積比率が5%以上10%未満であるもの。
D.当紙全面にインキが薄く付着。印刷層がほとんど取られて、原紙の露出面積比率が10%以上であるもの。
【0126】
<耐ブロッキング性評価>
得られた包装材を40mm角に2枚切り出し、1枚の包装材片のヒートシール層面と、もう1枚の包装材片の表面保護層面を完全に重ね、温度40℃、湿度80%RH、荷重100N/cm2の環境下で圧着した。24時間静置したのち、2枚重ねた包装材同士を剥離し、印刷層の剥離状態を目視で観察し、下記基準にて評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《評価基準》
A.ヒートシール層面への印刷層の転移量が0面積%である。
B.ヒートシール層面への印刷層の転移量が0面積%超、10面積%未満である。
C.ヒートシール層面への印刷層の転移量が10面積%以上、30面積%未満である。
D.ヒートシール層面への印刷層の転移量が30面積%以上である。
【0127】
<ヒートシ-ル性評価>
得られた包装材を15mm×100mmの大きさに切り取り、ヒートシール層面同士が重なるように折り曲げ、以下の装置及び条件でヒートシールし、シールされていない両端部を小型引張試験機に固定し、ヒートシール強度を評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《ヒートシール条件》
装置:テスター産業株式会社製ヒートシールテスター、シール幅:折り曲げ部より
10mm、ヒーター温度:160℃、シール圧力:2kg/cm2、
シール時間:1sec
《ヒートシール強度測定条件》
装置:インテスコ社製 小型引張試験機(モデル;IM-20)、試験片幅:15mm、
剥離モード:90°剥離、引張速度:300mm/min
《評価基準》
A.ヒートシール強度が3.5N以上である。
B.ヒートシール強度が2.5N以上、3.5N未満である。
C.ヒートシール強度が1.0N以上、2.5N未満である。
D.ヒートシール強度が1.0N未満である。
【0128】
上記結果から、比較例1は、紙基材が樹脂を含まないクラフト紙であるため、全光線透過率及び酸素バリア性を満たさなかった。また、比較例2及び3は、表面保護層にそれぞれウレタン樹脂とアクリル樹脂を含むため、耐水摩擦性を満たさなかった。
一方実施例1は、紙基材(a)に樹脂を含み、表面保護層がスチレン-アクリル共重合樹脂を含むため、全光線透過率、酸素バリア性、耐水摩擦性、耐ブロッキング性、及びヒートシール性が良好である。特に、ヒートシール層がアクリル樹脂を含み、ヒートシール層の膜厚が15μmであり、紙基材(a)に含まれる樹脂が、再生セルロース(重量平均分子量:400,000)であり、紙基材(a)100質量%中の再生セルロース含有量が、33質量%であり、表面保護層がスチレン-アクリル共重合樹脂(酸価:40mgKOH/g、ガラス転移温度:49℃)を含み、表面保護層の膜厚が4μmであるとき、優れた全光線透過率、酸素バリア性、耐水摩擦性、耐ブロッキング性、及びヒートシール性を有していた。