(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181609
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置、残留物の除去方法及びコンピュータプログラム並びにコンピュータを記録した記録媒体
(51)【国際特許分類】
F01N 3/18 20060101AFI20231218BHJP
F01N 3/00 20060101ALI20231218BHJP
F01N 11/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
F01N3/18 B
F01N3/00 G
F01N11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094831
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲場 拓巳
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA17
3G091AB03
3G091AB13
3G091BA14
3G091BA15
3G091BA19
3G091BA34
3G091CA22
3G091CB07
3G091DB06
3G091DB10
3G091EA05
3G091EA17
3G091EA30
3G091EA32
3G091EA34
3G091EA35
3G091FA05
3G091FA19
3G091HA15
3G091HA16
3G091HA36
3G091HB07
(57)【要約】
【課題】内燃機関の排気経路に存在する可燃性の残留物を燃焼させ、品質確認検査への影響を低減可能な内燃機関の制御装置、残留物の除去方法及びコンピュータプログラム並びにコンピュータを記録した記録媒体を提供する。
【解決手段】内燃機関の排気経路に付着した可燃性の残留物を除去する制御を行う内燃機関の制御装置は、内燃機関の運転中に排気経路の所定位置での排気温度の情報を取得し、排気温度又は排気温度に基づいて求められる所定の基準温度が所定の閾値を超えたか否かを判定し、排気温度又は基準温度が所定の閾値を超えたときに排気経路への酸素供給量を増大させて残留物を強制的に燃焼させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気経路に付着した可燃性の残留物を除去する制御を行う内燃機関の制御装置において、
前記制御装置は、
一つ又は複数のプロセッサと、前記一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、
前記プロセッサは、
前記内燃機関の運転中に前記排気経路の所定位置での排気温度の情報を取得し、
前記排気温度又は前記排気温度に基づいて求められる所定の基準温度が所定の閾値を超えたか否かを判定し、
前記排気温度又は前記基準温度が前記所定の閾値を超えたときに前記排気経路への酸素供給量を増大させて前記残留物を強制的に燃焼させる、内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記排気経路に付着している可能性のある前記残留物の種類及び残留量の情報を取得し、
前記残留物の種類及び残留量に基づいて残留物判定値を算出し、
前記残留物判定値が所定の残留物基準値を超える場合に前記残留物を強制的に燃焼させる処理を実行する、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記内燃機関及び前記排気経路の組み立て後、前記残留物判定値の確認検査の実行前に前記残留物判定値が所定の残留物基準値を超える場合に前記残留物の燃焼処理を実行し、
前記確認検査の実施後に前記残留物を強制的に燃焼させる処理の実行を禁止し、
その後、前記排気経路の構成部品の交換後に前記残留物判定値が所定の残留物基準値を超える場合に前記残留物を強制的に燃焼させる、請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記排気経路に付着している可能性のある前記残留物の種類の情報を取得し、
前記残留物の種類に応じた燃焼温度に基づいて前記所定の閾値を設定する、請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記排気経路に付着している可能性のある前記残留物の種類の情報は、前記排気経路を構成する部品ごとに、あらかじめ前記メモリに記録されている、請求項4に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記残留物の種類に応じた燃焼温度と併せて前記排気経路内の圧力の情報を用いて前記所定の閾値を設定する、請求項4に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記酸素供給量を増大させた後の前記酸素供給量の積算値が所定の終了閾値に到達したときに、前記残留物を強制的に燃焼させる処理を終了させる、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記内燃機関への燃料供給を停止させる燃料カット状態で前記内燃機関への吸入空気量を増大させることにより前記排気経路への酸素供給量を増大させる、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項9】
内燃機関の排気経路に付着した可燃性の残留物を除去する方法において、
前記内燃機関の運転中に前記排気経路の所定位置での排気温度又は前記排気温度に基づいて求められる所定の基準温度が所定の閾値を超えたときに、前記排気経路への酸素供給量を増大させて前記残留物を強制的に燃焼させる、残留物の除去方法。
【請求項10】
内燃機関の制御装置に適用されるコンピュータプログラムにおいて、
一つ又は複数のプロセッサに、
前記内燃機関の運転中に前記排気経路の所定位置での排気温度の情報を取得することと、
前記排気温度又は前記排気温度に基づいて求められる所定の基準温度が所定の閾値を超えたか否かを判定することと、
前記排気温度又は前記基準温度が前記所定の閾値を超えたときに前記排気経路への酸素供給量を増大させて前記残留物を強制的に燃焼させることと、
を含む処理を実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のコンピュータプログラムを記録した記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の制御装置、残留物の除去方法及びコンピュータプログラム並びにコンピュータを記録した記録媒体
に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関を搭載した車両には、内燃機関から排出される排気ガスを浄化するためのシステムが搭載されている。例えばガソリンエンジンの排気経路には三元触媒やパティキュレートフィルタが設けられ、排気ガス中の特定成分を分解したり粒子状物質を捕集したりすることで排気ガスを浄化し、大気中に放出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、内燃機関を搭載した車両の製造過程において、大気中に放出される排気ガス中の特定成分の濃度が所定の基準以下となっているかを確認する品質確認検査が行われる。上記の排気浄化システムが正常に機能する場合、上記の検査において異常は見られない。しかしながら、車両の製造過程において、内燃機関の排気経路に可燃性の物質が残留する場合がある。例えば排気管を成形加工する場合に使用される加工油や加工時に発生した鉄粉が排気経路に残されたり、本来製造過程において燃焼される部材が燃焼不良により排気経路に残されたりする場合がある。
【0005】
このような残留物が存在する場合、内燃機関及び排気浄化システムに異常がないにもかかわらず、当該残留物が燃焼して排気ガスとともに排出されることによって、上記の検査において異常があると判定されるおそれがある。特に排気を浄化するための触媒やパティキュレートフィルタの下流側に残留物が存在すると、残留物の燃焼により発生した特定成分を除去することができないために、このような特定成分が発生する間に品質確認検査が行われると、内燃機関及び排気浄化システムに異常がないにもかかわらず異常があると判定されるおそれがある。
【0006】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的とするところは、内燃機関の排気経路に存在する可燃性の残留物を燃焼させ、品質確認検査への影響を低減可能な内燃機関の制御装置、残留物の除去方法及びコンピュータプログラム並びにコンピュータを記録した記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある観点によれば、内燃機関の排気経路に付着した可燃性の残留物を除去する制御を行う内燃機関の制御装置であって、制御装置は、一つ又は複数のプロセッサと、一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、プロセッサは、内燃機関の運転中に排気経路の所定位置での排気温度の情報を取得し、排気温度又は排気温度に基づいて求められる所定の基準温度が所定の閾値を超えたか否かを判定し、排気温度又は基準温度が所定の閾値を超えたときに排気経路への酸素供給量を増大させて残留物を強制的に燃焼させる内燃機関の制御装置が提供される。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本開示の別の観点によれば、内燃機関の排気経路に付着した可燃性の残留物を除去する方法であって、内燃機関の運転中に排気経路の所定位置での排気温度又は排気温度に基づいて求められる所定の基準温度が所定の閾値を超えたときに、排気経路への酸素供給量を増大させて残留物を強制的に燃焼させる残留物の除去方法が提供される。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本開示の別の観点によれば、内燃機関の制御装置に適用されるコンピュータプログラムであって、一つ又は複数のプロセッサに、内燃機関の運転中に排気経路の所定位置での排気温度の情報を取得することと、排気温度又は排気温度に基づいて求められる所定の基準温度が所定の閾値を超えたか否かを判定することと、排気温度又は基準温度が所定の閾値を超えたときに排気経路への酸素供給量を増大させて残留物を強制的に燃焼させることと、を含む処理を実行させるコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムを記録した記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本開示によれば、内燃機関の排気経路に存在する可燃性の残留物を燃焼させ、品質確認検査への影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の技術を適用可能な内燃機関の排気系の構成例を示すブロック図である。
【
図2】内燃機関の排気系の構成例を具体的に示す模式図である。
【
図3】本開示の実施の形態に係る内燃機関の制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】同実施形態に係る内燃機関の制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
<1.内燃機関の排気系の構成例>
まず、本開示の一実施の形態に係る内燃機関の制御装置を適用可能な内燃機関の排気系の構成例を説明する。
【0014】
図1は、車両に搭載された内燃機関10の排気系1の構成の一例を示す説明図であり、
図2は、内燃機関10の排気系1を具体的に示した模式図である。内燃機関10の排気系1には、内燃機関10から排出される排気ガスが通過する排気経路31と、当該排気経路31に設けられた三元触媒33、GPF(Gasoline Particulate Filter)35及びマフラー(消音器)37が備えられている。図示した例では、三元触媒33がGPF35よりも上流側に設けられているが、GPF35が三元触媒33よりも上流側に設けられていてもよい。
【0015】
内燃機関10は、シリンダ11、ピストン13、吸気弁21、排気弁23、燃料噴射弁15及び点火プラグ17を備える。ピストン13は、シリンダ11内を上下動する。吸気弁21は、シリンダ11に臨む吸気通路19の開口部に設けられる。排気弁23は、シリンダ11に臨む排気経路31の開口部に設けられる。燃料噴射弁15及び点火プラグ17は、先端がシリンダ11内に臨むように設けられる。燃料噴射弁15及び点火プラグ17の駆動は、制御装置50により制御される。
【0016】
吸気通路19には、エアマスセンサ18及び吸気スロットル弁16が備えられる。吸気スロットル弁16は、制御装置50により駆動され、シリンダ11に供給される吸気の流量を調節する。エアマスセンサ18は、吸気の流量を検出する。エアマスセンサ18のセンサ信号は、制御装置50に送信される。
【0017】
内燃機関10では、ピストン13の下降時に吸気弁21が開かれて吸気通路19からシリンダ11へと吸気が行われるとともに燃料噴射弁15から燃料が噴射されてシリンダ11内に混合気が形成される(吸気行程)。次のピストン13の上昇時には吸気弁21が閉じられ、形成された混合気が圧縮される(圧縮行程)。圧縮された混合気は点火プラグ17により点火されて膨張し、ピストン13を押し下げる(膨張行程)。次のピストン13の上昇時には排気弁23が開かれ、排気経路31に燃焼ガス(排気)が排出される(排気行程)。
【0018】
排気経路31には、三元触媒33及びGPF35が備えられている。三元触媒33は、酸素吸蔵放出性能を有する触媒であり、排気中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOX)を酸化あるいは還元する。例えば三元触媒33は、排気がリッチ状態のときに排気中の酸素を吸着し、排気がリーン状態のときに吸着していた酸素を放出して排気中のHC、CO、NOX等を浄化する。
【0019】
GPF35は、例えばセラミック製のハニカム状のフィルタ担体の表面に触媒成分が担持されて構成される。GPF35は、排気中に含まれる粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集する。GPF35に捕集されたPMは、内燃機関10の運転中、GPF35が所定の高温状態にあり、GPF35に酸素が供給されることにより酸化されて燃焼除去される。本実施形態では、GPF35は、酸素吸蔵放出性能を有するフィルタとして構成され、三元触媒としても機能し、排気中のHC、CO及びNOXを酸化あるいは還元する。三元触媒33だけでなくGPF35に三元触媒の機能を持たせることにより、排気の浄化効率が高められる。
【0020】
マフラー37は、排気音を軽減する装置である。マフラー37の内部には音圧を低下させるための仕切り板が設けられるとともに、グラスウール等の消音材が充填されている。
【0021】
排気経路31には、圧力センサ41及び排気温度センサ47が備えられている。圧力センサ41及び排気温度センサ47は、三元触媒33の上流に備えられている。圧力センサ41は、排気圧力を検出する。排気温度センサ47は、排気温度を検出する。圧力センサ41及び排気温度センサ47のセンサ信号は、制御装置50へ送信される。圧力センサ41及び排気温度センサ47の配置位置は特に限定されるものではない。この他、排気経路31の適宜の位置に、空燃比センサ又は酸素濃度センサが備えられていてもよい。
【0022】
<2.内燃機関の制御装置>
制御装置50は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の一つ又は複数のプロセッサと、当該プロセッサと通信可能に接続されたRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の一つ又は複数のメモリを備えて構成される。制御装置50の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、プロセッサからの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0023】
制御装置50は、一つ又は複数のプロセッサがコンピュータプログラムを実行することで、車両の製造後あるいは排気系1の修理交換後に排気経路31に存在する残留物を除去する装置として機能する。当該コンピュータプログラムは、制御装置50が実行すべき後述する動作をプロセッサに実行させるためのコンピュータプログラムである。プロセッサにより実行されるコンピュータプログラムは、制御装置50に備えられた記憶部(メモリ)59として機能する記録媒体に記録されていてもよく、制御装置50に内蔵された記録媒体又は制御装置50に外付け可能な任意の記録媒体に記録されていてもよい。
【0024】
コンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、ハードディスク、フロッピーディスク及び磁気テープ等の磁気媒体、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)及びBlu-ray(登録商標)等の光記録媒体、フロプティカルディスク等の磁気光媒体、RAM及びROM等の記憶素子、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等のフラッシュメモリ、その他のプログラムを格納可能な媒体であってよい。
【0025】
残留物は、車両の製造後あるいは排気系1の修理交換後において排気経路31内に残留する可燃性の物質であり、内燃機関10の運転時に排出される高温の排気ガスによって燃焼される。このため、車両の製造過程や排気系1の修理交換後に、大気中に放出される排気ガス中の特定成分の濃度が所定の基準以下となっているかを確認する検査(品質確認検査)を実施した際に、当該残留物の燃焼ガスに含まれる成分によって異常と判定されるおそれがある。制御装置50は、品質確認検査の実行前に残留物を強制的に燃焼させて除去した後に、品質確認検査の実行を許可する。
【0026】
図3は、制御装置50の構成のうち、残留物を除去する処理に関連する機能構成を示す説明図である。制御装置50は、処理部51及び記憶部(メモリ)59を備えている。処理部51は、一つ又は複数のプロセッサにより構成される。処理部51は、残留物推定処理部53及び残留物除去処理部55を備えている。残留物推定処理部53及び残留物除去処理部55は、プロセッサによるコンピュータプログラムの実行により実現される機能である。ただし、処理部51の一部が、アナログ回路等のハードウェアにより構成されていてもよい。
【0027】
制御装置50は、専用線、あるいは、CAN(Controller Area Network)又はLIN(Local Inter Net)等の通信手段を介して、エアマスセンサ18、圧力センサ41、排気温度センサ47、燃料噴射弁15、吸気スロットル弁16及び点火プラグ17に接続されている。制御装置50は、エアマスセンサ18、圧力センサ41及び排気温度センサ47それぞれのセンサ信号の他、アクセルセンサ等の種々のセンサ信号あるいは他の制御装置からのメッセージを取得可能に構成されている。また、制御装置50は、燃料噴射弁15、吸気スロットル弁16及び点火プラグ17に対して駆動信号を送信可能に構成されている。
【0028】
(記憶部)
記憶部59は、RAM又はROM等の記憶素子を含む。記憶部59は、HDDやSSD、ストレージ装置等の他の記憶装置を含んでいてもよい。記憶部59は、プロセッサにより実行されるコンピュータプログラム、演算処理に使用される種々のパラメータ、取得したセンサ信号に対応する状態値、あるいは演算処理の結果等を記憶する。
【0029】
(残留物推定処理部)
残留物推定処理部53は、車両の製造後あるいは排気系1の修理交換後に排気経路31に残留する残留物を推定する処理を実行する。本実施形態では、排気系1の製造に用いられるそれぞれの構成要素に付着する可燃物の種類及び量のデータがあらかじめ記憶部59に記録されており、残留物推定処理部53は、記録されたデータを参照して、排気経路31に残留する残留物を推定する。可燃物の種類の情報は、残留物(可燃物)を燃焼させる際の燃焼温度(例えば発火点等)の推定に必要とされる。また、可燃物の量は、残留物を燃焼させる処理の実行の要否の判定、及び、残留物を除去するために必要な時間(つまり燃焼時間)又は酸素量の推定に必要とされる。
【0030】
残留物としては、例えば排気管を成形加工する場合に使用される加工油や、加工時に発生した鉄粉、あるいは、マフラー37内に配置するグラスウールを保持するテープや袋等が例示される。残留する加工油の量は、あらかじめ部品ごとに推定し、あるいは、分析により求めておくことができる。残留する鉄粉の量は、あらかじめ部品ごとに推定し、あるいは、分析により求めておくことができる。また、グラスウールを保持するテープや袋等の量は、あらかじめ把握しておくことができる。したがって、残留物推定処理部53は、あらかじめ記憶部59に記憶されたデータを参照することによって、残留物の種類及び残留量を求めることができる。
【0031】
また、残留物推定処理部53は、車両の製造後あるいは排気系1の修理交換後に排気経路31に残留する残留物の量から、残留物を推定するまでの内燃機関10の運転状態に基づいて推定される残留物の減少量を引いて、残留物の量を推定してもよい。例えば残留物推定処理部53は、車両の製造後あるいは排気系1の修理交換後、排気経路31への酸素供給量を増大させる処理を実行する以前に内燃機関10から排気経路31に供給された酸素量と排気温度とに基づいて、残留物が自然発火して燃焼する状態となっていた時間を推定し、残留物の減少量を推定する。排気温度は、排気温度センサ47により検出される温度であってよいが、内燃機関10の運転状態に基づいて推定した温度であってもよい。そして、残留物推定処理部53は、推定した残留物の減少量を、車両の製造後あるいは排気系1の修理交換後に排気経路31に残留していた残留物の残留量から引くことで、排気経路31に残留する残留物の量を求めることができる。
【0032】
それぞれの残留物の燃焼温度あるいは蒸発燃焼温度は、残留物の種類に応じてあらかじめ把握することができる。例えばプレス加工に用いられる潤滑油の引火点は約120~350℃であり、自然発火点は約250~350℃である。また、鉄粉の自然発火点は約315~320℃であり、テープや袋等の自然発火点はその材質によって定まる。なお、可燃性の残留物は、上記の例に限定されるものではない。
【0033】
(残留物除去処理部)
残留物除去処理部55は、内燃機関10の運転中に排気経路31の所定位置での排気温度の情報を取得し、排気温度又は排気温度に基づいて求められる所定の基準温度が所定の閾値(以下、「燃焼温度閾値」ともいう)を超えたときに排気経路31への酸素供給量を増大させて残留物を強制的に燃焼させる処理(以下、「強制燃焼処理」ともいう)を実行する。残留物除去処理部55は、残留物の強制燃焼処理を実行した後で、品質確認検査の実行を許可する。つまり、排気経路31内に残留物が付着した状態で品質確認検査が実行されないように、あらかじめ残留物の燃焼を促進させる処理を実行する。
【0034】
本実施形態では、残留物除去処理部55は、内燃機関10及び排気系1の組み立て後、つまり車両の製造後に残留物推定処理部53により推定された残留物の種類及び残留量に基づいて残留物判定値を算出する。また、残留物除去処理部55は、残留物判定値が所定の残留物基準値を超える場合に、上記の残留物の強制燃焼処理を実行する。例えば残留物の種類及び残留量から、品質確認検査の確認対象である所定の特定成分の発生量を推定することができる。代表的な特定成分としては、例えばPM(粒子状物質:Particulate Matter)が例示されるが、これ以外の成分であってもよい。残留物が付着する位置がGPF35よりも下流側である場合、発生するPMは排気ガスとともに大気中に放出されることとなる。
【0035】
そして、残留物除去処理部55は、推定される特定成分の発生量を残留物判定値として、残留物判定値が残留物基準値を超える場合に品質確認検査に影響があると判断し、残留物の強制燃焼処理を実行する。残留物基準値は、品質確認検査において排気ガス中の特定成分の濃度が異常な濃度と判定され得る値を考慮して任意に設定されてよい。
【0036】
燃焼温度閾値は、残留物の燃焼温度(発火点等)に基づいて設定される。具体的に、残留物除去処理部55は、残留物の燃焼温度の情報と、圧力センサ41により検出される排気経路31内の排気圧力の情報に基づいて、排気経路31内の状態を考慮した燃焼温度閾値を設定する。例えば大気圧下での残留物の引火点又は自然発火点を基準として、検出される排気経路31内の排気圧力が高くなるほど燃焼温度閾値が引火点又は自然発火点よりも低くなるように設定される。複数の残留物が存在し、残留物ごとに燃焼させて除去する場合、残留物除去処理部55は、それぞれの残留物の燃焼温度に基づいて燃焼温度閾値を設定してもよい。また、複数の残留物が存在し、すべての残留物を同時に燃焼させて除去する場合、残留物除去処理部55は、燃焼温度が最も高い残留物の燃焼温度に基づいて燃焼温度閾値を設定してもよい。
【0037】
図2に示したように、本実施形態では、内燃機関10の排気経路31における三元触媒33の上流側に排気温度センサ47が設けられており、残留物除去処理部55は、当該排気温度センサ47により検出される排気温度(検出温度)又は当該検出温度に基づいて求められる所定の基準温度が燃焼温度閾値を超えるか否かを判定する。例えば内燃機関10を始動してからの経過時間及び運転状態等に応じた三元触媒33及びGPF35の温度上昇を考慮して、排気温度センサ47により検出される検出温度と、残留物が付着している領域の温度との相関関係を推定することができる。このため、残留物除去処理部55は、排気温度センサ47による検出温度から推定される、残留物が付着している領域の温度(基準温度)が、残留物の燃焼温度及び排気経路31内の排気圧力に基づいて設定された燃焼温度閾値を超えるか否かを判定する。あるいは、残留物除去処理部55は、残留物が付着している領域の温度が、燃焼温度閾値を超えることとなる検出温度の値を閾値として、検出温度が当該閾値を超えるか否かを判定してもよい。
【0038】
残留物除去処理部55は、基準温度が燃焼温度閾値を超えた場合、排気経路31への酸素供給量を増大させて残留物を燃焼させる。本実施形態では、残留物除去処理部55は、内燃機関10の運転中に燃料供給が停止された状態となる燃料カット中に吸気スロットル弁16の開度を増大することにより内燃機関10への吸入空気量を増大し、内燃機関10の気筒を介して排気経路31に供給する酸素量を増大させる。例えば車両の品質確認検査前の試験走行中に、アクセルペダルが踏み込まれた状態から急激に開放された状態(いわゆるコースト走行状態)となり、燃料カット状態となったときに、残留物除去処理部55は、吸気スロットル弁16の開度を増大させる。これにより、排気経路31への酸素供給量が増大され、残留物の燃焼が促進されることにより、残留物を速やかに除去することができる。
【0039】
このとき、吸気スロットル弁16の開度を増大させたことで車両の減速度が目標減速度に達しない場合には、ブレーキ制御装置との協調制御によって液圧ブレーキや回生ブレーキを発生させることで、減速度を補うようにしてもよい。
【0040】
ただし、排気経路31への酸素供給量を増大させる方法は、燃料カット中に吸気スロットル弁16の開度を増大させる方法に限られない。例えば排気経路31内へ空気を供給する空気供給装置を設け、検出温度が燃焼温度閾値を超えたときに内燃機関10の運転状態にかかわらず排気経路31へ空気を供給するようにしてもよい。
【0041】
残留物除去処理部55は、未燃の残留物の量が所定値以下となるまで酸素供給量を増大させる処理を行う。当該酸素供給量を増大させる処理は、連続する1回の処理で完了されてもよく、車両がコースト走行状態になるごとに断続的に行われてもよい。残留物除去処理部55は、エアマスセンサ18により検出される吸入空気量に基づいて推定される、排気経路31への酸素供給量の積算値が、推定された残留物を燃焼させるために必要な量として設定された終了閾値に到達したときに強制燃焼処理を終了させる。当該酸素供給量の終了閾値は、あらかじめ設定される固定値であってもよい。あるいは、残留物除去処理部55は、推定された残留物の量に基づいて処理の実行時間の閾値を設定し、酸素供給量を増大させる処理の実行時間の積算値が当該実行時間の閾値に到達したときに強制燃焼処理を終了させてもよく、酸素供給量を増大させる処理の実行時間の積算値があらかじめ設定された基準時間に到達したときに強制燃焼処理を終了させてもよい。
【0042】
残留物除去処理部55は、酸素供給量を増大させて残留物を燃焼させる強制燃焼処理の完了時に、当該強制燃焼処理の実行を禁止するとともに、品質確認検査の実行を許可するフラグを立てる。これにより、品質確認検査を実行可能な状態となって、品質確認検査において残留物に起因して異常と判定されることを防ぐことができる。品質確認検査は、例えばあらかじめ設定されたアクセルパターン及びブレーキパターンで車両を運転したときに内燃機関10から排出されて大気中に放出される排気ガス中の特定成分の濃度が所定の基準以下となっているかを判定することにより行われる。なお、車両の製造後の品質確認検査の前に残留物の強制燃焼処理が実行され、強制燃焼処理の実行が禁止された後、内燃機関10あるいは排気系1の修理交換後に再び残留物判定値が残留物基準値を超えた場合、残留物の強制燃焼処理の実行の禁止が解除され、強制燃焼処理の実行が許可される。
【0043】
<3.動作>
続いて、本実施形態に係る内燃機関10の制御装置50の処理動作を説明する。
【0044】
図4は、制御装置50の処理部51による処理動作を示すフローチャートである。
まず、残留物推定処理部53は、車両の走行が開始されたことを検知した後(ステップS11)、排気経路31に残留する残留物を推定する(ステップS13)。具体的に、残留物推定処理部53は、品質確認検査の完了フラグが立っていない状態で車両の走行が開始されたことを検知したときに、記憶部59に記憶された、排気経路31に付着している可能性のある残留物の種類及び残留量の情報を参照し、排気経路31に残留する残留物の種類及びそれぞれの残留物の量を推定する。残留物推定処理部53は、車両の製造後あるいは排気系1の修理交換後に排気経路31に残留する残留物の量から、残留物を推定するまでの内燃機関10の運転状態に基づいて推定される残留物の減少量を引いて、残留物の量を推定してもよい。
【0045】
例えば残留物推定処理部53は、車両の製造後あるいは排気系1の修理交換後に内燃機関10から排気経路31に供給された酸素量と排気温度とに基づいて、それぞれの残留物が自然発火して燃焼する状態となっていた時間を推定し、それぞれの残留物の減少量を推定する。排気温度は、排気温度センサ47により検出される温度であってよいが、内燃機関10の運転状態に基づいて推定した温度であってもよい。そして、残留物推定処理部53は、推定した残留物の減少量を、車両の製造後あるいは排気系1の修理交換後に排気経路31に残留していた残留物の残留量から引くことで、排気経路31に残留するそれぞれの残留物の量を求める。
【0046】
次いで、残留物除去処理部55は、残留物推定処理部53により求められた残留物による品質確認検査への影響があるか否かを判定する(ステップS15)。具体的に、残留物除去処理部55は、残留物の種類及び残留量から、品質確認検査の確認対象である所定の特定成分の発生量を推定し、残留物判定値とする。そして、残留物除去処理部55は、残留物判定値が、品質確認検査において排気ガス中の特定成分の濃度が異常な濃度と判定され得る値を考慮して設定された残留物基準値を超える場合に、残留物による品質確認検査への影響があると判定する。特定成分が複数ある場合、残留物除去処理部55は、特定成分ごとに残留物判定値を求め、残留物基準値との比較を行う。
【0047】
残留物による品質確認検査への影響があると判定されない場合(S15/No)、残留物除去処理部55は、品質確認検査の実行を許可する(ステップS25)。一方、残留物による品質確認検査への影響があると判定された場合(S15/Yes)、残留物除去処理部55は、排気温度及び排気圧力の情報を取得する(ステップS17)。本実施形態では、残留物除去処理部55は、排気温度センサ47及び圧力センサ41のセンサ信号に基づいて排気温度及び排気圧力をそれぞれ検出する。排気温度センサ47及び圧力センサ41を用いる代わりに、内燃機関10の運転状態に基づいて排気温度及び排気圧力を推定してもよい。
【0048】
次いで、残留物除去処理部55は、酸素供給量を増大させて残留物を燃焼させる強制燃焼処理の実行を開始するか否かを判定するための燃焼温度閾値を設定する(ステップS19)。具体的に、残留物除去処理部55は、推定した排気圧力の情報と、残留物の燃焼温度の情報とに基づいて、排気経路31内の状態を考慮した燃焼温度閾値を設定する。燃焼温度閾値は、大気圧下での残留物の引火点又は自然発火点を基準として、排気圧力が高くなるほど燃焼温度閾値が引火点又は自然発火点よりも低くなるように設定される。例えば残留物の種類ごとに、圧力及び温度に依存する引火点又は自然発火点のマップが記憶部59に記憶され、残留物除去処理部55は、当該マップを参照して燃焼温度閾値を設定してもよい。複数の残留物が存在し、残留物ごとに燃焼させて除去する場合、残留物除去処理部55は、それぞれの残留物の燃焼温度に基づいて燃焼温度閾値を設定してもよい。あるいは、複数の残留物が存在し、すべての残留物を同時に燃焼させて除去する場合、残留物除去処理部55は、燃焼温度が最も高い残留物の燃焼温度に基づいて燃焼温度閾値を設定してもよい。
【0049】
次いで、残留物除去処理部55は、排気温度センサ47により検出される排気温度(検出温度)又は当該検出温度に基づいて求められる所定の基準温度が燃焼温度閾値を超えたか否かを判定する(ステップS21)。ここでは、強制燃焼処理の実行を開始可能か否かの判定が行われる。例えば残留物除去処理部55は、内燃機関10を始動してからの経過時間及び運転状態等に応じた三元触媒33及びGPF35の温度上昇を考慮して、排気温度センサ47により検出される検出温度に基づいて残留物が付着している領域の温度(基準温度)を推定し、当該基準温度が燃焼温度閾値を超えたか否かを判定する。あるいは、残留物除去処理部55は、残留物が付着している領域の温度が、燃焼温度閾値を超えることとなる検出温度の値を閾値として、排気温度(検出温度)が当該閾値を超えるか否かを判定してもよい。
【0050】
上記基準温度が燃焼温度閾値を超えたと判定されない場合(S21/No)、残留物除去処理部55は、ステップS17に戻って、強制燃焼処理の実行を開始可能か否かの判定を繰り返し実行する。一方、上記基準温度が燃焼温度閾値を超えたと判定された場合(S21/Yes)、残留物除去処理部55は、排気経路31への酸素供給量を増大させる処理を実行する(ステップS23)。本実施形態では、残留物除去処理部55は、車両がコースト走行状態となって内燃機関10が燃料カット状態となったときに、吸気スロットル弁16の開度を増大することにより内燃機関10への吸入空気量を増大させ、排気経路31への酸素供給量を増大させる。これにより、残留物の燃焼が促進されて、残留物を速やかに除去することができる。このとき、吸気スロットル弁16の開度を増大させたことで車両の減速度が目標減速度に達しない場合には、ブレーキ制御装置との協調制御によって液圧ブレーキや回生ブレーキを発生させることで、減速度を補うようにしてもよい。
【0051】
次いで、残留物除去処理部55は、強制燃焼処理を終了させる条件が成立したか否かを判定する(ステップS25)。例えば残留物除去処理部55は、エアマスセンサ18により検出される吸入空気量に基づいて推定される、排気経路31への酸素供給量の積算値が、推定された残留物を燃焼させるために必要な量として設定された終了閾値に到達したときに燃焼処理を終了させる。当該酸素供給量の終了閾値は、あらかじめ設定される固定値であってもよい。あるいは、残留物除去処理部55は、推定された残留物の量に基づいて処理の実行時間の閾値を設定し、酸素供給量を増大させる処理の実行時間の積算値が当該実行時間の閾値に到達したときに、処理を終了させてもよく、酸素供給量を増大させる処理の実行時間の積算値があらかじめ設定された基準時間に到達したときに、処理を終了させてもよい。
【0052】
残留物除去処理部55は、強制燃焼処理を終了させる条件が成立したと判定されるまで、ステップS25の判定を繰り返す(S25/No)。そして、強制燃焼処理を終了させる条件が成立したと判定された場合(S25/Yes)、残留物除去処理部55は、強制燃焼処理の完了フラグを立てて強制燃焼処理の実行を禁止するとともに、品質確認検査の実行を許可するフラグを立てる(ステップS27)。これにより、品質確認検査を実行可能な状態となって、品質確認検査において残留物に起因して異常と判定されることを防ぐことができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る内燃機関10の制御装置50によれば、車両の製造後あるいは排気系1の修理交換後、内燃機関10の運転中に、排気経路の所定位置での排気温度又は当該排気温度に基づいて求められる所定の基準温度が燃焼温度閾値を超えたときに、排気経路31への酸素供給量を増大させて残留物を強制的に燃焼させる強制燃焼処理が実行される。このため、品質確認検査の実行前に残留物を低減して、残留物による品質確認検査への影響を低減することができる。これにより、内燃機関10及び排気を浄化するシステムに異常がないにもかかわらず品質確認検査の結果が異常と判定されることを防ぐことができる。
【0054】
また、本実施形態に係る内燃機関10の制御装置50は、排気系1を構成する個々の部品に付着している可能性のある残留物の種類及び残留量の情報に基づいて算出される残留量判定値が、所定の残留量基準値を超える場合に強制燃焼処理を実行する。したがって、残留物の量が少ない場合には強制燃焼処理が実行されることがなく、速やかに品質確認検査の実行が許可される。
【0055】
また、本実施形態に係る内燃機関10の制御装置50は、排気経路31に付着している残留物の種類に応じた引火点又は自然発火点及び排気圧力に基づいて燃焼温度閾値を設定し、排気温度又は基準温度が燃焼温度閾値を超える場合に強制燃焼処理を実行する。したがって、排気経路31への酸素供給量を増大させることによって残留物の燃焼が促進される確実性が向上し、残留物を効率的に除去することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る内燃機関10の制御装置50は、酸素供給量を増大させた後の酸素供給量の積算値が所定の終了閾値に到達したときに強制燃焼処理を終了させる。これにより、強制燃焼処理の完了後においても残留物が所定以上残されて品質確認検査に影響することを防ぐことができるとともに、強制燃焼処理の実行時間が過度に長くなることを防ぐことができる。
【0057】
また、本実施形態に係る内燃機関10の制御装置50は、車両がコースト走行状態となり内燃機関10の燃料カット状態となったときに吸気スロットル弁16の開度を増大することにより内燃機関10への吸入空気量を増大させ、排気経路31への酸素供給量を増大させる。これにより、排気経路31内へ酸素を供給する特別な装置を追加することなく、残留物を強制的に燃焼させることができる。
【0058】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0059】
例えば上記実施形態では、残留物の種類及び残留量から推定される、品質確認検査の確認対象である所定の特定成分の発生量を残留物判定値としていたが、残留物判定値はこの例に限定されない。それぞれの残留物の種類ごとに残留量を残留物判定値とし、品質確認検査において異常と判定され得る特定成分の発生量に対応する残留物の量を残留物基準値として、残留物判定値が残留物基準値を超えているか否かを判定してもよい。このようにした場合であっても、残留物の量が少ない場合には強制燃焼処理が実行されることがなく、速やかに品質確認検査の実行が許可される。
【符号の説明】
【0060】
1:排気系、10:内燃機関、11:シリンダ、15:燃料噴射弁、16:吸気スロットル弁、18:エアマスセンサ、19:吸気通路、23:排気弁、31:排気経路、33:三元触媒、35:GPF、37:マフラー、41:圧力センサ、47:排気温度センサ、50:制御装置、51:処理部、53:残留物推定処理部、55:残留物除去処理部、59:記憶部