IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 岩谷産業株式会社の特許一覧

特開2023-18161染色繊維物の製造方法及び染料溶液の製造方法
<>
  • 特開-染色繊維物の製造方法及び染料溶液の製造方法 図1
  • 特開-染色繊維物の製造方法及び染料溶液の製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018161
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】染色繊維物の製造方法及び染料溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06P 1/22 20060101AFI20230201BHJP
   D06P 1/34 20060101ALI20230201BHJP
   D06P 1/642 20060101ALI20230201BHJP
   D06P 3/52 20060101ALI20230201BHJP
   D06P 5/00 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
D06P1/22
D06P1/34
D06P1/642
D06P3/52 C
D06P5/00 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019227206
(22)【出願日】2019-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛
【テーマコード(参考)】
4H157
【Fターム(参考)】
4H157AA01
4H157AA02
4H157BA09
4H157BA22
4H157CA03
4H157CA08
4H157CA29
4H157CB34
4H157CC01
4H157DA01
4H157DA17
4H157DA34
4H157GA07
4H157GA21
4H157HA13
(57)【要約】
【課題】 ハイドロサルファイトなどの扱い難い化学品を用いずに、インジゴを溶解させた染料溶液を作製する。
【解決手段】 インジゴを入れた水系溶媒中に水素ガスを供給することにより、前記水系溶媒にインジゴを溶解させた染料溶液を作製する工程、前記染料溶液を用いて繊維物を染色する工程、を有する。前記水系溶媒に前記水素ガスを微細気泡の状態で供給する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジゴを入れた水系溶媒中に水素ガスを供給することにより、前記水系溶媒にインジゴを溶解させた染料溶液を作製する工程、
前記染料溶液を用いて繊維物を染色する工程、を有する、
染色繊維物の製造方法。
【請求項2】
前記水素ガスを微細気泡の状態で前記水系溶媒に供給する、請求項1に記載の染色繊維物の製造方法。
【請求項3】
インジゴを入れた水系溶媒中に水素ガスを供給することにより、前記水系溶媒にインジゴを溶解させる、染料溶液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インジゴを用いて染色した染色繊維物の製造方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
インジゴ(インディゴとも言う)は、青色(藍色)を呈する染料であり、例えば、ジーンズなどを染める染料として用いられている。
インジゴは、常温常圧で固体であり、且つ、水に対して不溶である。一般に、インジゴによる染色は、インジゴを還元してロイコ型に変えて水溶性とし、このロイコ型で繊維物を染色した後に酸化させるという手法が採られている。
この手法は、発酵を利用した手法と、化学品を使用して手法とに大別できる。前者の手法は、伝統的に行なわれているいわゆる藍染めである。後者の手法としては、還元剤であるハイドロサルファイトと強アルカリである水酸化ナトリウムを用いてインジゴをロイコ型に還元し、そのロイコ型を水に溶解させた染料溶液を作製し、この染料溶液に綿糸を浸した後に空気に晒して酸化させ、これを繰り返す手法である。
工業的に量産する場合、化学品を使用する手法が採用されている。
特許文献1には、ハイドロサルファイトなどの還元剤と水酸化ナトリウムなどのアルカリの存在下で、高温で処理して繊維の非結晶部分を膨潤させつつインジゴで染色する合成繊維の染色法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-280286号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、還元剤として用いられるハイドロサルファイトは、アルカリ下で亜硫酸或いは硫化物に分解されるので、ハイドロサルファイトを用いた場合、染色した染色物を十分に洗浄しなければならない。さらに、染色後、ハイドロサルファイトを含む廃液を処理しなければならず、その廃液処理に作業時間及びコストが必要となる。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ハイドロサルファイトなどの扱い難い化学品を用いずに、インジゴを溶解させた染料溶液を作製できる染色繊維物の製造方法及び染料溶液の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の染色繊維物の製造方法は、インジゴを入れた水系溶媒中に水素ガスを供給することにより、前記水系溶媒にインジゴを溶解させた染料溶液を作製する工程、前記染料溶液を用いて繊維物を染色する工程、を有する。好ましくは、前記水素ガスを微細気泡の状態で前記水系溶媒に供給する。
【0007】
本発明の別の局面によれば、染料溶液の製造方法を提供する。
本発明の染料溶液の製造方法は、インジゴを入れた水系溶媒中に水素ガスを供給することにより、前記水系溶媒にインジゴを溶解させる。好ましくは、前記水素ガスを微細気泡の状態で前記水系溶媒に供給する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、水素ガスを水系溶媒に供給するだけで、インジゴを水系溶媒に溶解させた染料溶液を作製できる。本発明の方法によれば、困難な廃液処理もなく、容易にインジゴを含む青色染料溶液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の染料溶液の製造装置の概略参考図。
図2】インジゴを水素ガスで溶解させて染料溶液を作製し、その染料溶液を用いて繊維物を染色する工程を示す概略参考図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[染料溶液の製造装置]
図1は、染料溶液の製造装置1の概略を示す参考図である。
図1において、染料溶液の製造装置1は、インジゴを溶解させる水系溶媒を収容する容器2と、容器2内に配置され且つ前記水系溶媒に水素ガスを供給する供給部3と、前記供給部3に水素ガスを送る水素供給装置4と、前記供給部3と水素供給装置4を繋ぐ配管5と、を有する。
容器2は、例えば、内部に水系溶媒を漏れないように収容できる、上面開口型の有底凹状体である。容器2の材質は、特に限定されず、ステンレスなどの金属、合成樹脂、陶器、ガラスなどが挙げられる。
容器2は、必要に応じて、蓋材(図示せず)を有していてもよい。また、蓋材を有する場合、その蓋材に、前記水系溶媒中に供給した水素ガスを回収する回収装置(図示せず)が具備されていてもよい。例えば、前記容器2の上面開口部を蓋材によって密封状に塞ぎ、その蓋材の一部分に、水素ガスの回収装置に繋がるホースなどを接続してもよい。
容器2に入れるインジゴ及びそれを溶解させる水系溶媒については、後述する。
【0011】
容器2内の水系溶媒中に水素ガスを供給する供給部3は、水素供給装置4から供給された水素ガスを吹き出すことができるものでれば、特に限定されない。好ましくは、供給部3は、水系溶媒中において水素ガスを微細気泡状態で吹き込むことができるものが用いられ、例えば、微細な孔部を無数に有する多孔質体状などを用いることができる。
水素供給装置4は、供給部3に水素ガスを供給できるものであれば特に限定されず、それ自体が水素ガスを生成するものでもよく、或いは、他で製造した水素ガスを貯蔵したものでもよい。前者の水素供給装置4としては、例えば、水を電気分解して水素ガスを発生させる装置などが挙げられる。後者の水素供給装置4としては、水素ガスが充填されたガスボンベなどが挙げられる。
図示例では、水素供給装置4として、水素ガスが充填されたガスボンベが用いられている。
配管5は、例えば、フレキシブルホースを用いることができる。なお、配管5は、柔軟なフレキシブルホースに限られず、容易に曲がらない硬質ホース、硬質ガス管などを用いてもよい。
配管5の途中には、必要に応じて、手動バルブ又は自動バルブなどの開閉栓51が設けられていてもよい。また、配管5の途中には、必要に応じて、減圧弁52などが設けられていてもよい。
なお、容器2内の水系溶媒中に水素ガスを供給する供給部3及び水素供給装置4は、公知の水素マイクロバブル又はナノバブル発生装置を用いてもよい。このような水素マイクロバブル発生装置や水素ナノバブル発生装置は、市販品を用いてもよく、例えば、有限会社ナック販売製のコラムタイプ式などが挙げられる。
【0012】
[染料溶液及び染色繊維物の製造方法]
本発明の染料溶液の製造方法は、インジゴを入れた水系溶媒中に水素ガスを供給することにより、その水系溶媒にインジゴを溶解させる。好ましくは、水系溶媒中に水素ガスを供給する際に、水素ガスを微細気泡の状態で供給する。
本発明の染色繊維物の製造方法は、前記と同様にして水系溶媒にインジゴを溶解させた染料溶液を作製する工程、染料溶液を用いて繊維物を染色する工程、を有する。
【0013】
<染料溶液の作製工程>
インジゴは、青色(藍色)を呈する染料であり、従来公知のものを使用できる。インジゴは、天然物由来のものでもよく、合成物由来のものでもよい。
水系溶媒としては、水、又は、水と親水性溶媒との混合物が挙げられる。
前記水は、水道水、井戸水、イオン交換水、純水などを用いることができ、安価であることから、水道水又は井戸水を用いることが好ましい。
前記親水性溶媒としては、代表的には、水酸基を含有する有機溶媒が挙げられる。水酸基を含有する有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数1乃至4のアルコール類、エチレングリコールなどのグリコールなどが挙げられる。水系溶媒として、水と親水性溶媒との混合物を用いる場合、インジゴの溶解性が高まることから、水と炭素数1乃至4のアルコール(特にメタノール又はエタノール)の混合物を用いることが好ましい。親水性溶媒を含む水系溶媒の親水性溶媒の量は、特に限定されないが、全体を100重量%とした場合に、例えば、1重量%~30重量%であり、好ましくは2重量%~20重量%である。
【0014】
安価で且つ処理し易いことから、水系溶媒として水を用いることが好ましい。
水系溶媒は、中性(pH:6~8)でもよいが、インジゴを短時間で多量に溶解させることができることから、アルカリ性であることが好ましく、特に、弱アルカリ性であることが好ましい。前記弱アルカリ性は、pH:8~12であり、好ましくは、pH:9~12である。
【0015】
水道水などの水は、通常、中性(pHで6~8の範囲)であるため、アルカリ性とするために、水に、アルカリを溶解させる。同様に、水に前記アルコールなどを混合した混合物も、通常、中性(pHで6~8の範囲)であるため、アルカリ性とするために、アルカリを溶解させる。
アルカリとしては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩などを使用でき、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、第三リン酸ナトリウムなどが挙げられる。好ましくは、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩が使用される。
アルカリの量は、適宜設定できる。前述のように弱アルカリ性の水系溶媒が好ましいことから、弱アルカリ性となるようにアルカリの量を調整すればよい。
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、水系溶媒に、他の物質が含まれていてもよい。
【0016】
図2を参照して、容器2に水系溶媒及びインジゴを入れる。水系溶媒及びインジゴを入れる順序は、特に限定されず、両者を同時に容器2に入れてもよく、いずれか一方(例えば水系溶媒)を容器2に入れた後、もう一方を入れてもよい。
また、前記アルカリ性の水系溶媒を使用する場合には、前記アルカリを溶解させた水系溶媒を調製し、それを容器2に入れてもよく、或いは、容器2に水系溶媒及びアルカリを入れ且つ攪拌などすることにより、容器内でアルカリ性の水系溶媒を調製してもよい。
インジゴは常温常圧で水に不溶なので、図2に示すように、インジゴを入れた時点では、インジゴは、液面上に浮いた状態となる。
【0017】
インジゴの量は、特に限定されず、適宜設定できる。インジゴの量が少なすぎると、染料溶液のインジゴ濃度が小さくなる。良好な濃さの染料溶液を得る観点から、インジゴの量は、水系溶媒1リットルに対して0.05g以上であり、好ましくは0.1g以上である。本発明によれば、水系溶媒にインジゴを容易に溶解させることができるが、その溶解度にも自ずと限度があるので、インジゴの量が多すぎると、溶解しないインジゴが液面上に多量に残存するおそれがある。溶解しないインジゴが残っても、特に問題はないが、過剰にインジゴを入れる必要性もないことから、インジゴの量は、水系溶媒1リットルに対して5g以下であり、好ましくは4g以下である。
【0018】
容器2に入れた水系溶媒(好ましくは弱アルカリ性の水系溶媒)の中に水素ガスを供給する。なお、水素ガスの供給は、インジゴを入れた後に行なってもよく、或いは、インジゴを入れる前に行なってもよく、或いは、インジゴを入れると同時に行なってもよい。
水素ガスを水系溶媒中に供給すると、液面上に浮いていたインジゴが徐々に水系溶媒に溶解するようになる。
水系溶媒を加温した状態で水素ガスを供給してもよいが、本発明によれば、常温常圧下で、水素ガスを供給するだけでインジゴを溶解させることができる。
【0019】
水系溶媒中に水素ガスを吹き込むと、水素ガスが水系溶媒中において無数の気泡となり且つ水中を上昇し、液面から外部に出ていく。水系溶媒中における水素ガスの移動距離が大きいほど好ましく、従って、水素ガスは、図示のように、容器の底面近くから供給することが好ましい。
なお、上述のように、水素ガスの回収装置が容器2に接続されている場合には、液面から出る水素ガスを回収し、再利用することもできる。
【0020】
前記水素ガスは、水系溶媒中において微細気泡の状態となるように供給されることが好ましい。ここで、前記微細気泡は、マイクロメートルサイズの気泡又はナノメートルサイズの気泡を含む。
前記水素ガスの微細気泡の大きさは、水素を内部に包含する直径が70μm以下であり、好ましくは、60μm以下であり、より好ましくは、50μm以下であり、さらに好ましくは、30μm以下である。なお、微細気泡の大きさの下限は、特にないが、例えば、1nm以上であり、好ましくは30nm以上であり、より好ましくは100nm以上である。前記水素ガスの微細気泡の直径は、例えば、島津製作所社製の島津ナノ粒子径分布測定装置SALD-7100を使用して測定することができる。
【0021】
水素ガスの供給量は、適宜設定される。水素ガスの供給量が多いと、インジゴが比較的速く水系溶媒に溶解し、水素ガスの供給量が少ないと、インジゴの溶解速度が相対的に遅くなる。好ましい範囲としては、水素ガスの供給量は、水系溶媒1リットルに対して、200ミリリットル/分~1000ミリリットル/分である。
前記範囲であれば、水系溶媒1リットル当たり概ね60分~180分程度の水素ガス供給により、インジゴが溶解するようになる。
インジゴが溶解することにより、染料溶液(青色の液体)を得ることができる。
【0022】
<染色工程>
得られた染料溶液を用いて繊維物を染色し、乾燥することにより、青色(藍色)に染まった染色繊維物を得ることができる。染色繊維物は、染色後の繊維物をいう。
例えば、図2に示すように、水素ガスを供給する容器2から染料溶液を別の容器6に移し、この染料溶液に繊維物を浸すことにより、繊維物を染色できる。なお、繊維物の染色方法は、染料溶液への浸漬に限られず、染料溶液を繊維物に吹き付ける、染料溶液を繊維物に塗布するなどの手法でもよい。
繊維物は、特に限定されず、綿や羊毛などの天然繊維、ポリエステルなどの合成繊維、レーヨンなどの半合成繊維などが挙げられる。特に、本発明の方法は、ジーンズなどで多用されている綿繊維に対する染色に優れている。
また、繊維物の態様は、特に限定されず、紡糸前の態様、糸の態様(紡糸後の状態)、糸を織った織物の態様、糸を編んだ編み物の態様、不織布の態様などのいずれの態様であってもよい。
染料溶液を適用した繊維物を、大気中に晒すことにより、インジゴが繊維物に結合し、青色を呈する染色繊維物が得られる。特に、本発明のように、水素ガスを用いてインジゴを溶解させた染料溶液は、少し暗めの青色に繊維物を染色できる。
【0023】
本発明のように、水素ガスを水系溶媒に供給することにより、インジゴを水系溶媒に溶解させることができる。この理由は明らかではないが、水素ガスを水系溶媒中に入れることにより、水素ガスが液面上に浮いたインジゴに接触し且つインジゴを攪拌して、それによって、インジゴが還元されてロイコ型に変化したためと推定される。特に、微細気泡の状態で水系溶媒中に水素ガスを供給することにより、水系溶媒中の溶存水素量が増すこと、インジゴに対する水素ガス(微細気泡)の接触面積が増すこと、及び、水素ガス(微細気泡)によるインジゴの攪拌作用が増すことなどから、インジゴを比較的短時間で良好に溶解させることができると推定される。水に不溶のインジゴを、水素ガスを用いれば水系溶媒に溶解させることができることは、本発明者らが初めて見出した事項である。
水素ガスを用いる本発明の方法によれば、従来のハイドロサルファイトを使用する方法に比して、廃液処理をする必要がなく、その処理コストを削減できる。また、ハイドロサルファイトを使用しない本発明の方法は、染色作業の環境を悪化させることはなく、環境上も好ましいものである。
【実施例0024】
以下、実施例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0025】
[使用材料]
容器:ガラス製の上面開口型の有底円筒状の容器。容積:500ミリリットル。
炭酸カリウム:富士フィルム和光純薬株式会社製の「炭酸カリウム」。
インジゴ:富士フィルム和光純薬株式会社製の「インジゴ」。
水素バブル供給装置:有限会社ナック販売製「FP-20-70」。
【0026】
[実施例]
室温大気圧下で容器に超純水を200ミリリットル入れ、これに炭酸カリウムを13g入れた後、十分に攪拌して炭酸カリウムを溶解させた。この水を入れた容器の底部に、水素バブル供給装置の供給部(ホースの先端部に設けられたバブル発生部)を配置した後、容器内にインジゴを0.5g入れた。この際、インジゴは、水中に殆ど分散することなく、液面上に浮いていた。
直後に、水素バブル供給装置を作動させ、水中に微細気泡状態の水素ガスを3時間供給し続けた。なお、水素ガスの供給量は、100ミリリットル/分で、微細気泡の大きさは、概ね1μm~50μmとした。
3時間水素ガスを供給した後の状態を観察すると、青色(藍色)の染料溶液が得られた。なお、インジゴは、殆ど全て水に溶解しており、残存していなかった。
【0027】
この染料溶液に、未染色の白色のポリエステル繊維製タオル(縦横=50mm×50mm)を2時間浸漬し、取り出した後、緩やかな風を送るファンが設けられた室中に18時間静置して風乾した。最後に、染色済みのタオルを、超純水の流水で3分程度洗浄し、再び乾燥させることによって、染色繊維物を得た。
この染色繊維物(染色タオル)を目視で観察したところ、落ち着きのある濃い青色(藍色)の外観を呈していた。また、この染色繊維物を実際に使用したところ、染料が手に付着することもなく、さらに、この染色繊維物を再度流水で洗浄しても色落ちはなかった。
【0028】
[参考例]
室温大気圧下で容器に超純水を200ミリリットル入れた後、容器内にインジゴを0.5g入れた。水を攪拌した後、3時間静置した。3時間後、インジゴの状態を確認したところ、インジゴは、殆ど水に溶けず、液面上に浮いたままであった。
【符号の説明】
【0029】
1 染料溶液の製造装置
2,6 容器
3 水素ガスの供給部
4 水素ガスの供給装置
図1
図2