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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181614
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】インパクト工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/02 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
B25B21/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094845
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 一真
(72)【発明者】
【氏名】青山 友郎
(57)【要約】
【課題】狭い場所においても、円滑に作業できるインパクト工具を提供すること。
【解決手段】インパクト工具は、ステータ及び少なくとも一部がステータの内側に配置され回転軸を中心に回転するロータを有するモータと、ステータよりも前方に配置されロータの回転力により回転するスピンドルと、少なくとも一部がスピンドルよりも前方に配置され、ビットが装着されるアンビルと、アンビルを回転方向に打撃するハンマと、モータを収容するモータ収容部を有するハウジングと、を備える。最大締付トルクは、140Nm以上であり、回転軸に平行な前後方向におけるモータ収容部の後端部とアンビルの前端部との距離を示す全長Laは、100mm以下であり、上下方向における回転軸とモータ収容部の上端部との距離を示すセンターハイトHcは、29mm以下である。
【選択図】図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ及び少なくとも一部がステータの内側に配置され回転軸を中心に回転するロータを有するモータと、
前記ステータよりも前方に配置され前記ロータの回転力により回転するスピンドルと、
少なくとも一部が前記スピンドルよりも前方に配置され、ビットが装着されるアンビルと、
前記アンビルを回転方向に打撃するハンマと、
前記モータを収容するモータ収容部を有するハウジングと、を備え、
最大締付トルクは、140Nm以上であり、
前記回転軸に平行な前後方向における前記モータ収容部の後端部と前記アンビルの前端部との距離を示す全長Laは、100mm以下であり、
上下方向における前記回転軸と前記モータ収容部の上端部との距離を示すセンターハイトHcは、29mm以下である、
インパクト工具。
【請求項2】
前後方向における前記モータ収容部の後端部と前記アンビルに装着された前記ビットの前端部との距離を示す総全長Lhは、140mm以下である、
請求項1に記載のインパクト工具。
【請求項3】
床面に直交する壁面において前記床面から10mmだけ上方の位置にあるねじを前記ビットで締付作業するときの前記回転軸と前記床面とがなす角度を示す隅打ち角度θは、12度以下である、
請求項1又は請求項2に記載のインパクト工具。
【請求項4】
左右方向における前記モータ収容部の寸法を示すヘッド部幅Waと全長Laとの比は、0.6以下である、
請求項3に記載のインパクト工具。
【請求項5】
ステータ及び少なくとも一部がステータの内側に配置され回転軸を中心に回転するロータを有するモータと、
前記ステータよりも前方に配置され前記ロータの回転力により回転するスピンドルと、
少なくとも一部が前記スピンドルよりも前方に配置され、ビットが装着されるアンビルと、
前記アンビルを回転方向に打撃するハンマと、
前記モータを収容するモータ収容部を有するハウジングと、を備え、
最大締付トルクは、140Nm以上であり、
前記回転軸に平行な前後方向における前記モータ収容部の後端部と前記アンビルの前端部との距離を示す全長Laは、100mm以下であり、
床面に直交する壁面において前記床面から10mm上方の位置にあるねじを前記ビットで締付作業するときの前記回転軸と前記床面とがなす角度を示す隅打ち角度θは、12度以下である、
インパクト工具。
【請求項6】
ステータ及び少なくとも一部がステータの内側に配置され回転軸を中心に回転するロータを有するモータと、
前記ステータよりも前方に配置され前記ロータの回転力により回転するスピンドルと、
少なくとも一部が前記スピンドルよりも前方に配置され、ビットが装着されるアンビルと、
前記アンビルを回転方向に打撃するハンマと、
前記モータを収容するモータ収容部を有するハウジングと、を備え、
最大締付トルクは、140Nm以上であり、
前記回転軸に平行な前後方向における前記モータ収容部の後端部と前記アンビルに装着された前記ビットの前端部との距離を示す総全長Lhは、140mm以下であり、
床面に直交する壁面において前記床面から10mm上方の位置にあるねじを前記ビットで締付作業するときの前記回転軸と前記床面とがなす角度を示す隅打ち角度θは、12度以下である、
インパクト工具。
【請求項7】
ステータ及び少なくとも一部がステータの内側に配置され回転軸を中心に回転するロータを有するモータと、
前記ステータよりも前方に配置され前記ロータの回転力により回転するスピンドルと、
少なくとも一部が前記スピンドルよりも前方に配置され、ビットが装着されるアンビルと、
前記アンビルを回転方向に打撃するハンマと、
前記モータを収容するモータ収容部を有するハウジングと、を備え、
最大締付トルクは、140Nm以上であり、
前記回転軸に平行な前後方向における前記モータ収容部の後端部と前記アンビルの前端部との距離を示す全長Laは、100mm以下であり、
左右方向における前記モータ収容部の寸法を示すヘッド部幅Waは、65mm以下であり、
ヘッド部幅Waと全長Laとの比は、0.6以下である、
インパクト工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、インパクト工具に関する。
【背景技術】
【0002】
インパクト工具に係る技術分野において、特許文献1に開示されているようなインパクト工具が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案第205651274号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インパクト工具は、ねじ締めする際に、壁に近い狭い場所で使用される場合がある。狭い場所においても、インパクト工具を用いて円滑に作業できる技術が要求される。
【0005】
本明細書で開示する技術は、狭い場所においても、円滑に作業できるインパクト工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、インパクト工具を開示する。インパクト工具は、ステータ及び少なくとも一部がステータの内側に配置され回転軸を中心に回転するロータを有するモータと、ステータよりも前方に配置されロータの回転力により回転するスピンドルと、少なくとも一部がスピンドルよりも前方に配置され、ビットが装着されるアンビルと、アンビルを回転方向に打撃するハンマと、モータを収容するモータ収容部を有するハウジングと、を備えてもよい。最大締付トルクは、140Nm以上でもよい。回転軸に平行な前後方向におけるモータ収容部の後端部とアンビルの前端部との距離を示す全長Laは、100mm以下でもよい。上下方向における回転軸とモータ収容部の上端部との距離を示すセンターハイトHcは、29mm以下でもよい。
【発明の効果】
【0007】
本明細書で開示する技術によれば、狭い場所においても、円滑に作業できるインパクト工具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係るインパクト工具を示す前方からの斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係るインパクト工具を示す後方からの斜視図である。
図3図3は、本実施形態に係るインパクト工具を示す側面図である。
図4図4は、本実施形態に係るインパクト工具を示す正面図である。
図5図5は、本実施形態に係るインパクト工具を示す縦断面図である。
図6図6は、本実施形態に係るインパクト工具の上部を示す縦断面図である。
図7図7は、本実施形態に係るインパクト工具の上部を示す横断面図である。
図8図8は、本実施形態に係るインパクト工具の一部を示す前方からの分解斜視図である。
図9図9は、本実施形態に係るインパクト工具の一部を示す後方からの分解斜視図である。
図10図10は、本実施形態に係るハンマを示す前方からの斜視図である。
図11図11は、本実施形態に係るハンマを前方から見た図である。
図12図12は、本実施形態に係るハンマを示す後方からの斜視図である。
図13図13は、本実施形態に係るハンマを示す縦断面図である。
図14図14は、本実施形態に係るハンマを示す横断面図である。
図15図15は、本実施形態に係るカップワッシャを示す前方からの斜視図である。
図16図16は、実施形態に係るインパクト工具及び比較例に係るインパクト工具の諸元を示す図である。
図17図17は、実施形態に係るインパクト工具及び比較例に係るインパクト工具の隅打ち角度を示す図である。
図18図18は、インパクト工具の隅打ち条件を説明するための図である。
図19図19は、インパクト工具の隅打ち条件を説明するための図である。
図20図20は、インパクト工具の隅打ち条件を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1つ又はそれ以上の実施形態において、インパクト工具は、ステータ及び少なくとも一部がステータの内側に配置され回転軸を中心に回転するロータを有するモータと、ステータよりも前方に配置されロータの回転力により回転するスピンドルと、少なくとも一部がスピンドルよりも前方に配置され、ビットが装着されるアンビルと、アンビルを回転方向に打撃するハンマと、モータを収容するモータ収容部を有するハウジングと、を備えてもよい。
【0010】
最大締付トルクは、140Nm以上でもよい。
【0011】
回転軸に平行な前後方向におけるモータ収容部の後端部とアンビルの前端部との距離を示す全長Laは、100mm以下でもよい。
【0012】
上下方向における回転軸とモータ収容部の上端部との距離を示すセンターハイトHcは、29mm以下でもよい。
【0013】
前後方向におけるモータ収容部の後端部とアンビルに装着されたビットの前端部との距離を示す総全長Lhは、140mm以下でもよい。
【0014】
床面に直交する壁面において床面から10mm上方の位置にあるねじをビットで締付作業するときの回転軸と床面とがなす角度を示す隅打ち角度θは、12度以下でもよい。
【0015】
左右方向におけるモータ収容部の寸法を示すヘッド部幅Waは、65mm以下でもよい。
【0016】
ヘッド部幅Waと全長Laとの比[Wa/La]は、0.6以下でもよい。
【0017】
上記の構成では、狭隘部又は角部においても、作業者は、インパクト工具を用いる作業を円滑に実施することができる。
【0018】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。実施形態においては、左、右、前、後、上、及び下の用語を用いて各部の位置関係について説明する。これらの用語は、インパクト工具1の中心を基準とした相対位置又は方向を示す。インパクト工具1は、動力源としてモータ6を有する。
【0019】
実施形態において、モータ6の回転軸AXと平行な方向を適宜、軸方向、と称し、回転軸AXの周囲を周回する方向を適宜、周方向又は回転方向、と称し、回転軸AXの放射方向を適宜、径方向、と称する。
【0020】
回転軸AXは、前後方向に延伸する。軸方向一方側は、前方であり、軸方向他方側は、後方である。また、径方向において、回転軸AXに近い位置又は接近する方向を適宜、径方向内側、と称し、回転軸AXから遠い位置又は離隔する方向を適宜、径方向外側、と称する。
【0021】
[インパクト工具]
図1は、本実施形態に係るインパクト工具1を示す前方からの斜視図である。図2は、本実施形態に係るインパクト工具1を示す後方からの斜視図である。図3は、本実施形態に係るインパクト工具1を示す側面図である。図4は、本実施形態に係るインパクト工具1を示す正面図である。図5は、本実施形態に係るインパクト工具1を示す縦断面図である。
【0022】
実施形態において、インパクト工具1は、インパクト工具1の一種であるインパクトドライバである。インパクト工具1は、例えばねじの締付作業を実施することができる。インパクト工具1は、ハウジング2と、ハンマケース4と、ハンマケースカバー5Aと、バンパ5Bと、ハウジングカバー5Cと、モータ6と、減速機構7と、スピンドル8と、打撃機構9と、アンビル10と、ビット保持機構11と、ファン12と、バッテリ装着部13と、トリガ14と、正逆転切換スイッチ15と、操作表示部16と、ライト17と、コントローラ18とを備える。
【0023】
ハウジング2は、合成樹脂製である。本実施形態において、ハウジング2は、ナイロン製である。ハウジング2は、左ハウジング2Lと、左ハウジング2Lの右方に配置される右ハウジング2Rとを含む。左ハウジング2Lと右ハウジング2Rとは、複数のねじ2Sにより固定される。ハウジング2は、一対の半割れハウジングにより構成される。
【0024】
ハウジング2は、モータ収容部21と、グリップ部22と、バッテリ保持部23とを有する。
【0025】
モータ収容部21は、モータ6を収容する。モータ収容部21は、筒状部21Aと、筒状部21Aの後端部に一体に接続される後板部21Bとを有する。モータ収容部21は、ハンマケース4の少なくとも一部を収容する。
【0026】
グリップ部22は、作業者に握られる。グリップ部22は、モータ収容部21から下方に延びる。トリガ14は、グリップ部22の上部であって前部に設けられる。
【0027】
バッテリ保持部23は、バッテリ装着部13を介してバッテリパック25を保持する。バッテリ保持部23は、グリップ部22の下端部に接続される。前後方向及び左右方向のそれぞれにおいて、バッテリ保持部23の外形の寸法は、グリップ部22の外形の寸法よりも大きい。
【0028】
モータ収容部21は、吸気口19と、排気口20とを有する。排気口20は、吸気口19よりも後方に設けられる。ハウジング2の外部空間の空気は、吸気口19を介してハウジング2の内部空間に流入する。ハウジング2の内部空間の空気は、排気口20を介してハウジング2の外部空間に流出する。
【0029】
ハンマケース4は、減速機構7、スピンドル8、打撃機構9、及びアンビル10の少なくとも一部を収容する。減速機構7の少なくとも一部は、ベアリングボックス24の内側に配置される。減速機構7は、複数のギヤを含む。
【0030】
ハンマケース4は、金属製である。本実施形態において、ハンマケース4は、アルミニウム製である。ハンマケース4は、筒状である。ハンマケース4は、モータ収容部21の前部に接続される。ハンマケース4の後部にベアリングボックス24が固定される。ベアリングボックス24の外周部に筒状外面が形成される。ハンマケース4の内周部に筒状内面が形成される。ベアリングボックス24は、Oリング24Aを介してハンマケース4の後部に嵌め込まれる。ベアリングボックス24の筒状外面とハンマケース4の筒状内面とがOリング24Aを介して結合されることにより、ベアリングボックス24とハンマケース4とが固定される。ハンマケース4は、左ハウジング2Lと右ハウジング2Rとに挟まれる。ハンマケース4の少なくとも一部は、モータ収容部21に収容される。ベアリングボックス24は、モータ収容部21及びハンマケース4のそれぞれに固定される。
【0031】
ハンマケースカバー5Aは、ハンマケース4の表面の少なくとも一部を覆う。バンパ5Bは、ハンマケース4の前端部に装着される。ハンマケースカバー5A及びバンパ5Bは、ハンマケース4を保護する。ハンマケースカバー5A及びバンパ5Bは、ハンマケース4とハンマケース4の周囲の物体との接触を抑制する。ハウジングカバー5Cは、ハウジング2の表面の少なくとも一部を覆う。
【0032】
モータ6は、インパクト工具1の動力源である。モータ6は、インナロータ型のブラシレスモータである。モータ6は、ステータ26と、ロータ27とを有する。ステータ26は、モータ収容部21に支持される。ロータ27の少なくとも一部は、ステータ26の内側に配置される。ロータ27は、ステータ26に対して回転する。ロータ27は、前後方向に延びる回転軸AXを中心に回転する。
【0033】
減速機構7は、ロータ27とスピンドル8とを連結する。減速機構7は、ロータ27の回転をスピンドル8に伝達する。減速機構7は、ロータ27の回転速度よりも低い回転速度でスピンドル8を回転させる。減速機構7は、モータ6よりも前方に配置される。減速機構7は、遊星歯車機構を含む。減速機構7は、複数のギヤを有する。減速機構7のギヤは、ロータ27により駆動される。
【0034】
スピンドル8は、減速機構7により伝達されたロータ27の回転力により回転する。スピンドル8は、モータ6の少なくとも一部よりも前方に配置される。スピンドル8は、ステータ26よりも前方に配置される。スピンドル8の少なくとも一部は、ロータ27よりも前方に配置される。スピンドル8の少なくとも一部は、減速機構7の前方に配置される。スピンドル8は、アンビル10の後方に配置される。
【0035】
打撃機構9は、モータ6により回転するスピンドル8の回転力に基づいて、アンビル10を回転方向に打撃する。モータ6の回転力は、減速機構7及びスピンドル8を介して打撃機構9に伝達される。
【0036】
アンビル10は、ロータ27の回転力に基づいて回転するインパクト工具1の出力シャフトである。アンビル10は、モータ6よりも前方に配置される。アンビル10の少なくとも一部は、スピンドル8よりも前方に配置される。アンビル10は、ドライバビット(ビット)が挿入される6角ビット孔10Aを有する。6角ビット孔10Aは、アンビル10の前端部に設けられる。ドライバビットは、アンビル10に装着される。
【0037】
ビット保持機構11は、アンビル10の6角ビット孔10Aに挿入されたドライバビットを保持する。ビット保持機構11は、アンビル10の前部の周囲に配置される。ビット保持機構11は、ドライバビットを着脱可能である。
【0038】
ファン12は、モータ6を冷却するための気流を生成する。ファン12は、モータ6のステータ26よりも後方に配置される。ファン12は、ロータ27の少なくとも一部に固定される。ファン12が回転することにより、ハウジング2の外部空間の空気が、吸気口19を介してハウジング2の内部空間に流入する。ハウジング2の内部空間に流入した空気は、ハウジング2の内部空間を流通することにより、モータ6を冷却する。ハウジング2の内部空間を流通した空気は、ファン12が回転することにより、排気口20を介してハウジング2の外部空間に流出する。
【0039】
バッテリ装着部13は、バッテリパック25に接続される。バッテリパック25は、バッテリ装着部13に装着される。バッテリパック25は、バッテリ装着部13に着脱可能である。バッテリ装着部13は、バッテリ保持部23の下部に配置される。バッテリパック25は、バッテリ保持部23の前方からバッテリ装着部13に挿入されることにより、バッテリ装着部13に装着される。バッテリパック25は、ロック解除ボタン25Aが押し下げされた状態でバッテリ装着部13から前方に抜去されることにより、バッテリ装着部13から外される。バッテリパック25は、二次電池を含む。実施形態において、バッテリパック25は、充電式のリチウムイオン電池を含む。バッテリ装着部13に装着されることにより、バッテリパック25は、インパクト工具1に電力を供給することができる。モータ6は、バッテリパック25から供給される電力に基づいて駆動する。
【0040】
トリガ14は、モータ6を起動するために作業者に操作される。トリガ14が操作されることにより、モータ6の駆動と停止とが切り換えられる。トリガ14は、グリップ部22に設けられる。
【0041】
正逆転切換スイッチ15は、作業者に操作される。正逆転切換スイッチ15が左右に操作されることにより、モータ6の回転方向が正転方向及び逆転方向の一方から他方に切り換えられる。モータ6の回転方向が切り換えられることにより、スピンドル8の回転方向が切り換えられる。正逆転切換スイッチ15は、グリップ部22の上部に設けられる。
【0042】
操作表示部16に第1操作ボタン16Aと第2操作ボタン16Bとを有する。作業者により第1操作ボタン16Aが操作されることにより、モータ6の動作モードが切り換えられる。操作表示部16は、バッテリ保持部23に設けられる。操作表示部16は、グリップ部22よりも前方側において、バッテリ保持部23の上面に設けられる。第2操作ボタン16Bが操作されることにより、ライト17が点灯又は消灯される。
【0043】
ライト17は、照明光を射出する。ライト17は、アンビル10及びアンビル10の周辺を照明光で照明する。ライト17は、アンビル10の前方を照明光で照明する。また、ライト17は、アンビル10に装着されたドライバビット及びドライバビットの周辺を照明光で照明する。ライト17は、トリガ14の上方に配置される。
【0044】
コントローラ18は、モータ6を制御する制御信号を出力する。コントローラ18は、複数の電子部品が実装された基板を含む。基板に実装される電子部品として、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ、ROM(Read Only Memory)又はストレージのような不揮発性メモリ、RAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリ、トランジスタ、及び抵抗が例示される。コントローラ18は、バッテリ保持部23に収容される。
【0045】
図6は、本実施形態に係るインパクト工具1の上部を示す縦断面図である。図7は、本実施形態に係るインパクト工具1の上部を示す横断面図である。図8は、本実施形態に係るインパクト工具1の一部を示す前方からの分解斜視図である。図9は、本実施形態に係るインパクト工具1の一部を示す後方からの分解斜視図である。
【0046】
ハンマケース4は、第1筒部401と、第2筒部402と、ケース接続部403とを有する。第1筒部401は、打撃機構9の周囲に配置される。第2筒部402は、第1筒部401よりも前方に配置される。第2筒部402の外径は、第1筒部401の外径よりも小さい。ケース接続部403は、第1筒部401の前端部と第2筒部402の外周面とを繋ぐように配置される。第2筒部402の後端部は、ケース接続部403から後方に突出する。
【0047】
モータ6は、ステータ26と、ロータ27とを有する。ステータ26は、ステータコア28と、前インシュレータ29と、後インシュレータ30と、コイル31とを有する。ロータ27は、回転軸AXを中心に回転する。ロータ27は、ロータコア部32と、ロータシャフト部33と、ロータ磁石34と、センサ用磁石35とを有する。
【0048】
ステータコア28は、ロータ27よりも径方向外側に配置される。ステータコア28は、積層された複数の鋼板を含む。鋼板は、鉄を主成分とする金属製の板である。ステータコア28は、筒状である。ステータコア28は、コイル31を支持する複数のティースを有する。
【0049】
前インシュレータ29は、ステータコア28の前部に設けられる。後インシュレータ30は、ステータコア28の後部に設けられる。前インシュレータ29及び後インシュレータ30のそれぞれは、合成樹脂製の電気絶縁部材である。前インシュレータ29は、ティースの表面の一部を覆うように配置される。後インシュレータ30は、ティースの表面の一部を覆うように配置される。
【0050】
コイル31は、前インシュレータ29及び後インシュレータ30を介してステータコア28に装着される。コイル31は、複数配置される。コイル31は、前インシュレータ29及び後インシュレータ30を介してステータコア28のティースの周囲に配置される。コイル31とステータコア28とは、前インシュレータ29及び後インシュレータ30により電気的に絶縁される。複数のコイル31は、ヒュージング端子38を介して接続される。
【0051】
ロータコア部32及びロータシャフト部33のそれぞれは、鋼製である。ロータシャフト部33は、ロータコア部32の端面から前後方向に突出する。ロータシャフト部33は、ロータコア部32の前端面から前方に突出する前側シャフト部33Fと、ロータコア部32の後端面から後方に突出する後側シャフト部33Rとを含む。
【0052】
ロータ磁石34は、ロータコア部32に固定される。ロータ磁石34は、円筒状である。ロータ磁石34は、ロータコア部32の周囲に配置される。
【0053】
センサ用磁石35は、ロータコア部32に固定される。センサ用磁石35は、円環状である。センサ用磁石35は、ロータコア部32の前端面及びロータ磁石34の前端面に配置される。
【0054】
前インシュレータ29にセンサ基板37が取り付けられる。センサ基板37は、ねじ29Sにより前インシュレータ29に固定される。センサ基板37は、中心に孔が設けられた円板状の回路基板と、回路基板に支持される回転検出素子とを有する。センサ基板37の少なくとも一部は、センサ用磁石35に対向する。回転検出素子は、ロータ27のセンサ用磁石35の位置を検出することにより、ロータ27の回転方向の位置を検出する。
【0055】
ロータシャフト部33は、ロータベアリング39に回転可能に支持される。ロータベアリング39は、前側シャフト部33Fを回転可能に支持する前側ロータベアリング39Fと、後側シャフト部33Rを回転可能に支持する後側ロータベアリング39Rとを含む。
【0056】
前側ロータベアリング39Fは、ベアリングボックス24に保持される。ベアリングボックス24は、ベアリングボックス24の後面から前方に窪む凹部241を有する。前側ロータベアリング39Fは、凹部241に配置される。後側ロータベアリング39Rは、後板部21Bに保持される。ロータシャフト部33の前端部は、ベアリングボックス24の開口を介してハンマケース4の内部空間に配置される。
【0057】
ファン12は、ブッシュ12Aを介して後側シャフト部33Rの後部に固定される。ファン12は、後側ロータベアリング39Rとステータ26との間に配置される。ファン12は、ロータ27の回転により回転する。ロータシャフト部33が回転することにより、ファン12は、ロータシャフト部33と一緒に回転する。
【0058】
ロータシャフト部33の前端部にピニオンギヤ41が形成される。ピニオンギヤ41は、減速機構7の少なくとも一部に連結される。ロータシャフト部33は、ピニオンギヤ41を介して減速機構7に連結される。
【0059】
減速機構7は、ピニオンギヤ41の周囲に配置される複数のプラネタリギヤ42と、複数のプラネタリギヤ42の周囲に配置されるインターナルギヤ43とを有する。ピニオンギヤ41、プラネタリギヤ42、及びインターナルギヤ43のそれぞれは、ハンマケース4に収容される。複数のプラネタリギヤ42のそれぞれは、ピニオンギヤ41に噛み合う。プラネタリギヤ42は、ピン42Pを介してスピンドル8に回転可能に支持される。スピンドル8は、プラネタリギヤ42により回転される。インターナルギヤ43は、プラネタリギヤ42に噛み合う内歯を有する。インターナルギヤ43は、ベアリングボックス24に回転固定される。インターナルギヤ43は、ベアリングボックス24に対して常に回転不可能である。ベアリングボックス24は、左ハウジング2L及び右ハウジング2Rに対して回転固定される。
【0060】
モータ6の駆動によりロータシャフト部33が回転すると、ピニオンギヤ41が回転し、プラネタリギヤ42がピニオンギヤ41の周囲を公転する。プラネタリギヤ42は、インターナルギヤ43の内歯に噛み合いながら公転する。プラネタリギヤ42の公転により、ピン42Pを介してプラネタリギヤ42に接続されているスピンドル8は、ロータシャフト部33の回転速度よりも低い回転速度で回転する。
【0061】
スピンドル8は、モータ6の回転力より回転する。スピンドル8は、モータ6の回転力を、打撃機構9を介してアンビル10に伝達する。スピンドル8は、スピンドルシャフト部801と、スピンドルシャフト部801の後部に設けられるフランジ部802とを有する。プラネタリギヤ42は、ピン42Pを介してフランジ部802に回転可能に支持される。スピンドル8の回転軸とモータ6の回転軸AXとは一致する。スピンドル8は、回転軸AXを中心に回転する。スピンドル8は、スピンドルベアリング44に回転可能に支持される。スピンドル8の後端部に凸部803が設けられる。凸部803は、フランジ部802から後方に突出する。凸部803は、スピンドルベアリング44を囲むように配置される。
【0062】
ベアリングボックス24は、スピンドル8の周囲の少なくとも一部に配置される。スピンドルベアリング44は、ベアリングボックス24に保持される。ベアリングボックス24は、ベアリングボックス24の前面から前方に突出する凸部242を有する。スピンドルベアリング44は、凸部242の周囲に配置される。
【0063】
打撃機構9は、ハンマ47と、ハンマボール48と、コイルスプリング50と、ワッシャ53とを有する。ハンマ47、ハンマボール48、コイルスプリング50、及びワッシャ53を含む打撃機構9は、ハンマケース4の第1筒部401に収容される。第1筒部401は、ハンマ47の周囲に配置される。
【0064】
ハンマ47は、減速機構7よりも前方に配置される。ハンマ47は、スピンドルシャフト部801の周囲に配置される。ハンマ47は、スピンドルシャフト部801に支持される。
【0065】
ハンマ47は、モータ6により回転される。モータ6の回転力は、減速機構7及びスピンドル8を介してハンマ47に伝達される。ハンマ47は、モータ6により回転するスピンドル8の回転力に基づいて、スピンドル8と一緒に回転可能である。ハンマ47の回転軸とスピンドル8の回転軸とモータ6の回転軸AXとは一致する。ハンマ47は、回転軸AXを中心に回転する。ハンマ47は、アンビル10を回転方向に打撃する。
【0066】
図10は、本実施形態に係るハンマ47を示す前方からの斜視図である。図11は、本実施形態に係るハンマ47を前方から見た図である。図12は、本実施形態に係るハンマ47を示す後方からの斜視図である。図13は、本実施形態に係るハンマ47を示す縦断面図である。図14は、本実施形態に係るハンマ47を示す横断面図である。
【0067】
ハンマ47は、ベース部471と、前側リング部472と、後側リング部473と、支持リング部474と、ハンマ突起部475とを有する。
【0068】
ベース部471は、スピンドルシャフト部801の周囲に配置される。ベース部471は、環状である。スピンドルシャフト部801は、ベース部471の内側に配置される。
【0069】
前側リング部472は、ベース部471の外周部から前方に突出する。前側リング部472は、筒状である。前側リング部472の外周面472Aは、前方に向かって径方向内側に傾斜する。
【0070】
後側リング部473は、ベース部471の外周部から後方に突出する。後側リング部473は、筒状である。
【0071】
支持リング部474は、ベース部471の内周部から後方に突出する。支持リング部474は、筒状である。支持リング部474は、スピンドルシャフト部801の周囲に配置される。支持リング部474は、ハンマボール48を介してスピンドルシャフト部801に支持される。
【0072】
ハンマ突起部475は、前側リング部472の内周面から径方向内側に突出する。ハンマ突起部475は、ベース部471の前面から前方に突出する。ハンマ突起部475の前面83は、ベース部471の前面よりも前方に配置される。前側リング部472の前面とハンマ突起部475の前面83とは、同一平面内に配置される。ハンマ突起部475は、周方向に2つ配置される。
【0073】
ベース部471の後面と後側リング部473の内周面と支持リング部474の外周面とにより凹部476が形成される。凹部476は、ハンマ47の後面から前方に窪むように形成される。
【0074】
図13及び図14に示すように、前後方向において、後側リング部473の後端部473Rの位置と、支持リング部474の後端部474Rの位置とは、同じである。
【0075】
ベース部471は、ハンマ突起部475との境界に設けられる溝90を有する。溝90は、径方向に延びるように設けられる。溝90は、ハンマ突起部475の周方向一方側及び周方向他方側のそれぞれに設けられる。
【0076】
ベース部471の前面は、第1前面81と、周方向において第1前面81とは異なる位置に配置される第2前面82とを含む。第2前面82は、第1前面81よりも前方に配置される。
【0077】
第1前面81の周方向一端部は、第1接続面84を介してハンマ突起部475の前面83の周方向他端部に接続される。第2前面82の周方向一端部は、第2接続面85を介して第1前面81の周方向他端部に接続される。ハンマ突起部475の周方向他方側に設けられる溝90は、第1前面81と第1前面81の周方向一端部に接続される第1接続面84と第1前面81の周方向他端部に接続される第2接続面85とにより規定される。
【0078】
ハンマ突起部475の周方向一方側に設けられる溝90は、第1前面81と第1前面81の周方向他端部に接続される第1接続面84と第1前面81の周方向一端部に接続される第2接続面85とにより規定される。
【0079】
第1接続面84は、第1平面84Aと第1曲面84Bとを含む。第1平面84Aは、ハンマ47の回転軸AXに平行である。第1平面84Aは、径方向に延びるように配置される。ハンマ突起部475の周方向他方側に設けられる溝90において、第1曲面84Bは、第1平面84Aの後端部と第1前面81の周方向一端部とを接続するように配置される。ハンマ突起部475の周方向一方側に設けられる溝90において、第1曲面84Bは、第1平面84Aの後端部と第1前面81の周方向他端部とを接続するように配置される。
【0080】
第2接続面85は、第2平面85Aと第2曲面85Bとを含む。第2平面85Aは、ハンマ47の回転軸AXに平行である。第2平面85Aは、径方向に延びるように配置される。1つの溝90において、第2平面85Aは、第1平面84Aに対向するように配置される。ハンマ突起部475の周方向他方側に設けられる溝90において、第2曲面85Bは、第2平面85Aの後端部と第1前面81の周方向他端部とを接続するように配置される。ハンマ突起部475の周方向一方側に設けられる溝90において、第2曲面85Bは、第2平面85Aの後端部と第1前面81の周方向一端部とを接続するように配置される。
【0081】
ハンマボール48は、鉄鋼のような金属製である。ハンマボール48は、スピンドルシャフト部801とハンマ47との間に配置される。スピンドル8は、ハンマボール48の少なくとも一部が配置されるスピンドル溝804を有する。スピンドル溝804は、スピンドルシャフト部801の外周面の一部に設けられる。ハンマ47は、ハンマボール48の少なくとも一部が配置されるハンマ溝477を有する。ハンマ溝477は、支持リング部474の内周面の一部に設けられる。ハンマボール48は、スピンドル溝804とハンマ溝477との間に配置される。ハンマボール48は、スピンドル溝804の内側及びハンマ溝477の内側のそれぞれを転がることができる。ハンマ47は、ハンマボール48に伴って移動可能である。スピンドル8とハンマ47とは、スピンドル溝804及びハンマ溝477により規定される可動範囲において、軸方向及び回転方向のそれぞれに相対移動することができる。
【0082】
コイルスプリング50は、スピンドルシャフト部801の周囲に配置される。本実施形態において、コイルスプリング50は、相互に並列に配置される第1コイルスプリング51及び第2コイルスプリング52を含む。第2コイルスプリング52は、第1コイルスプリング51の径方向内側に配置される。
【0083】
第1コイルスプリング51の後端部及び第2コイルスプリング52の後端部は、フランジ部802に支持される。第1コイルスプリング51の前端部及び第2コイルスプリング52の前端部は、凹部476の内側に配置される。凹部476の内側にワッシャ53が配置される。第1コイルスプリング51の前端部及び第2コイルスプリング52の前端部は、ワッシャ53に支持される。ワッシャ53は、リング状である。第1コイルスプリング51及び第2コイルスプリング52のそれぞれは、ハンマ47を前方に移動させる弾性力を常時発生する。
【0084】
ワッシャ53は、ベース部471の後方に配置される。ワッシャ53は、コイルスプリング50の前端部を支持する。径方向において、ワッシャ53は、後側リング部473と支持リング部474との間に配置される。ワッシャ53は、凹部476の内側に配置される。ワッシャ53は、複数の支持ボール54を介してハンマ47に支持される。ハンマ47の前後方向の可動範囲においてハンマ47が最も前方に配置されている状態で、ワッシャ53は、ハンマボール48の後端部よりも前方に配置される。
【0085】
支持ボール54は、ベース部471の後面に設けられた支持溝478に配置される。支持ボール54は、ワッシャ53の前面を支持する。支持溝478は、回転軸AXを囲むようにリング状に設けられる。
【0086】
径方向及び周方向のそれぞれにおいて、支持溝478の位置と第2前面82の少なくとも一部の位置とは、同じである。ベース部471は、溝90が設けられた薄肉部分と、溝90が設けられていない厚肉部分とを有する。薄肉部分は、第1前面81を含む。厚肉部分は、第2前面82を含む。支持溝478は、ベース部471の厚肉部分に設けられる。
【0087】
アンビル10は、アンビルシャフト部101と、アンビル突起部102と、アンビル凸部103とを有する。
【0088】
アンビルシャフト部101は、スピンドル8及びハンマ47よりも前方に配置される。ドライバビットは、アンビルシャフト部101に装着される。ドライバビットが挿入される6角ビット孔10Aは、アンビルシャフト部101の前端部から後方に延びるように設けられる。
【0089】
図6に示すように、前後方向において、6角ビット孔10Aの後端部10Bは、前側リング部472の少なくとも一部と同じ位置に配置される。なお、6角ビット孔10Aの後端部10Bは、ベース部471の少なくとも一部と同じ位置に配置されてもよい。これにより、前後方向における後板部21Bの後端部とアンビル10の前端部との距離を示す全長(軸長)が短くなる。
【0090】
アンビル突起部102は、アンビルシャフト部101の後部から径方向外側に突出する。アンビル突起部102は、ハンマ突起部475により回転方向に打撃される。アンビル突起部102は、ハンマ突起部475により打撃される被打撃面104を有する。被打撃面104は、アンビル10の回転軸AXに平行である。ハンマ突起部475の第1平面84Aの少なくとも一部は、アンビル突起部102の被打撃面104に対向する。
【0091】
前側リング部472は、アンビル突起部102よりも径方向外側に配置される。軸方向において、前側リング部472の位置とアンビル突起部102の少なくとも一部の位置とは、同じである。アンビル突起部102の外周部と前側リング部472の内周部とは、離れている。
【0092】
ベース部471は、アンビル突起部102よりも後方に配置される。アンビル突起部102の後面とベース部471の前面とは、離れている。
【0093】
アンビル凸部103は、アンビル10の後端部から後方に突出する。アンビル10の後方にスピンドル8が配置される。スピンドルシャフト部801の前端部にスピンドル凹部805が設けられる。アンビル凸部103は、スピンドル凹部805に配置される。
【0094】
図7に示すように、スピンドルシャフト部801の外周面の少なくとも一部は、ハンマ47の支持リング部474が摺動するハンマ摺動面8Aである。スピンドル凹部805の内周面の少なくとも一部は、アンビル10のアンビル凸部103が摺動するアンビル摺動面8Bである。アンビル摺動面8Bは、ハンマ摺動面8Aよりも径方向内側に配置される。前後方向において、ハンマ摺動面8Aとアンビル摺動面8Bの少なくとも一部とは、重複する。前後方向において、ハンマ摺動面8Aの位置とアンビル摺動面8Bの少なくとも一部の位置とが同じなので、前後方向における後板部21Bの後端部とアンビル10の前端部との距離を示す全長(軸長)が短くなる。
【0095】
図7及び図14に示すように、ハンマ47の支持リング部474の内周面の少なくとも一部は、スピンドルシャフト部801のハンマ摺動面8Aが摺動する被摺動面479である。被摺動面479の前端部は、ワッシャ53よりも前方に配置される。被摺動面479がワッシャ53よりも前方に配置されることにより、前後方向におけるハンマ47の寸法が短くなる。
【0096】
アンビル10は、アンビルベアリング46に回転可能に支持される。アンビル10の回転軸とハンマ47の回転軸とスピンドル8の回転軸とモータ6の回転軸AXとは一致する。アンビル10は、回転軸AXを中心に回転する。アンビルベアリング46は、アンビルシャフト部101の周囲に配置される。アンビルベアリング46は、ハンマケース4の第2筒部402の内側に配置される。アンビルベアリング46は、ハンマケース4の第2筒部402に保持される。アンビルベアリング46は、アンビルシャフト部101の前部を回転可能に支持する。アンビルベアリング46とアンビルシャフト部101との間にOリング45が配置される。Oリング45は、アンビルシャフト部101の外周部及びアンビルベアリング46の内周部のそれぞれに接触する。
【0097】
本実施形態において、アンビルベアリング46は、軸方向に2つ配置される。Oリング45は、軸方向に2つ配置される。
【0098】
ハンマ突起部475は、アンビル突起部102に接触可能である。ハンマ47とアンビル突起部102とが接触している状態で、モータ6が駆動することにより、アンビル10は、ハンマ47及びスピンドル8と一緒に回転する。
【0099】
アンビル10は、ハンマ47により回転方向に打撃される。例えば、ねじの締付作業において、アンビル10に作用する負荷が高くなると、コイルスプリング50の荷重だけではアンビル10を回転させることができなくなる状況が発生する場合がある。コイルスプリング50の荷重だけではアンビル10を回転させることができなくなると、アンビル10及びハンマ47の回転が停止する。スピンドル8とハンマ47とは、ハンマボール48を介して軸方向及び周方向のそれぞれに相対移動可能である。ハンマ47の回転が停止しても、スピンドル8の回転は、モータ6が発生する動力により継続される。ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、ハンマボール48がスピンドル溝804及びハンマ溝477のそれぞれにガイドされながら後方に移動する。ハンマ47は、ハンマボール48から力を受け、ハンマボール48に伴って後方に移動する。すなわち、ハンマ47は、アンビル10の回転が停止された状態で、スピンドル8が回転することにより、後方に移動する。ハンマ47が後方に移動することにより、ハンマ47とアンビル突起部102との接触が解除される。
【0100】
上述のように、コイルスプリング50は、ハンマ47を前方に移動させる弾性力を常時発生する。後方に移動したハンマ47は、コイルスプリング50の弾性力により、前方に移動する。ハンマ47は、前方に移動するとき、ハンマボール48から回転方向の力を受ける。すなわち、ハンマ47は、回転しながら前方に移動する。ハンマ47が回転しながら前方に移動すると、ハンマ突起部475は、回転しながらアンビル突起部102に接触する。これにより、アンビル突起部102は、ハンマ突起部475により回転方向に打撃される。アンビル10には、モータ6の動力とハンマ47の慣性力との両方が作用する。したがって、アンビル10は、高いトルクで回転軸AXを中心に回転することができる。
【0101】
ビット保持機構11は、ボール71と、スリーブ73と、コイルスプリング74とを有する。
【0102】
アンビルシャフト部101は、ボール71を支持する支持凹部76を有する。支持凹部76は、アンビルシャフト部101の外面に形成される。本実施形態において、支持凹部76は、アンビルシャフト部101に2つ形成される。
【0103】
ボール71は、アンビル10に移動可能に支持される。ボール71は、支持凹部76に配置される。ボール71は、1つの支持凹部76に1つ配置される。
【0104】
アンビルシャフト部101に、支持凹部76の内面と6角ビット孔10Aの内面とを結ぶ貫通孔が形成される。ボール71の直径は、貫通孔の直径よりも小さい。ボール71が支持凹部76に支持された状態で、ボール71の少なくとも一部を介して、6角ビット孔10Aの内側に配置される。ボール71は、6角ビット孔10Aに挿入されたドライバビットを固定することができる。ボール71は、ドライバビットを固定する係合位置とドライバビットの固定を解除する解除位置とに移動可能である。
【0105】
スリーブ73は、円筒状の部材である。スリーブ73は、アンビルシャフト部101の周囲に配置される。スリーブ73は、アンビルシャフト部101の周囲において、ボール71の径方向外側への移動を阻止する阻止位置と径方向外側への移動を許容する許容位置とに移動可能である。
【0106】
スリーブ73が阻止位置に配置されることにより、ボール71が径方向外側に移動することが抑制される。スリーブ73が阻止位置に配置されることにより、ドライバビットがボール71により固定された状態が維持される。
【0107】
スリーブ73が許容位置に移動されることにより、ボール71が径方向外側に移動することが許容される。スリーブ73が許容位置に配置されることにより、ドライバビットがボール71により固定された状態が解除可能になる。
【0108】
コイルスプリング74は、スリーブ73が阻止位置に移動するように弾性力を発生する。コイルスプリング74は、アンビルシャフト部101の周囲に配置される。阻止位置は、許容位置よりも後方に規定される。コイルスプリング74は、スリーブ73を後方に移動させる弾性力を発生する。
【0109】
本実施形態において、インパクト工具1は、アンビル突起部102とハンマケース4との接触を抑制するためのカップワッシャ61を備える。本実施形態において、カップワッシャ61は、アンビル突起部102の前面と第2筒部402の後端部との接触を抑制する。第2筒部402は、カップワッシャ61を介してアンビル突起部102からの荷重を受ける。
【0110】
カップワッシャ61は、ハンマケース4に支持される。本実施形態において、カップワッシャ61の外周部は、第1筒部401の内周面に設けられた溝部404に配置される。また、インパクト工具1は、カップワッシャ61が溝部404から後方に抜けることを抑制する抑制部材62を備える。
【0111】
図15は、本実施形態に係るカップワッシャ61を示す前方からの斜視図である。カップワッシャ61は、内側リング部611と、外側リング部612と、接続リング部613とを有する。
【0112】
内側リング部611は、アンビル突起部102の前面に対向するように配置される。内側リング部611は、アンビルベアリング46の後端面に接触する。
【0113】
外側リング部612は、アンビルベアリング46の周囲に配置される。外側リング部612は、内側リング部611よりも径方向外側、且つ、内側リング部611よりも前方に配置される。軸方向(前後方向)において、外側リング部612の位置とアンビルベアリング46の少なくとも一部の位置とは、同じである。外側リング部612は、ハンマケース4に支持される。外側リング部612は、第1筒部401の内周面に設けられた溝部404に配置される。
【0114】
ケース接続部403の後面の少なくとも一部は、外側リング部612の前面に対向する。ケース接続部403の後面と外側リング部612の前面とは、間隙を介して対向する。
【0115】
接続リング部613は、内側リング部611の外縁部と外側リング部612の内縁部とを繋ぐように配置される。
【0116】
本実施形態において、アンビルベアリング46は、ボールベアリングである。アンビルベアリング46は、内輪と、ボールと、外輪とを有する。アンビルベアリング46の内輪は、Oリング45に接触する。ボールは、径方向において内輪と外輪との間に配置される。ボールは、内輪及び外輪のそれぞれに接触する。ボールは、周方向に複数配置される。外輪は、内輪及びボールよりも径方向外側に配置される。アンビルベアリング46の外輪は、第2筒部402の内周面に接触する。
【0117】
本実施形態において、内側リング部611は、アンビルベアリング46の外輪の後端面に接触する。内側リング部611は、アンビルベアリング46の内輪には接触しない。
【0118】
抑制部材62は、ハンマケース4及びカップワッシャ61のそれぞれに係合する。抑制部材62は、ハンマケース4に支持される。抑制部材62は、溝部404に配置される。抑制部材62は、カップワッシャが後方に抜けることを抑制する。抑制部材62として、スナップリング又はCリングが例示される。抑制部材62は、外側リング部612の後面に接触するように溝部404に配置される。外側リング部612は、抑制部材62を介してハンマケース4に支持される。
【0119】
カップワッシャ61及び抑制部材62により、アンビルベアリング46が後方に脱落することが阻止される。
【0120】
図8及び図11に示すように、本実施形態において、第1平面84Aと第2平面85Aとの距離Wcは、アンビル突起部102の周方向の寸法Wbよりも小さい。距離Wcは、溝90の幅を示す。また、第1曲面84Bの断面及び第2曲面85Bの断面のそれぞれは、円弧状である。第1平面84Aと第2平面85Aとの距離Wcは、第1曲面84Bの半径と第2曲面85Bの半径との和よりも大きい。
【0121】
[インパクト工具の動作]
次に、インパクト工具1の動作について説明する。例えば、作業対象に対するねじの締付作業を実施するとき、締付作業に使用されるドライバビットが、アンビル10の6角ビット孔10Aに挿入される。6角ビット孔10Aに挿入されたドライバビットは、ビット保持機構11により保持される。ドライバビットがアンビル10に装着された後、作業者は、グリップ部22を例えば右手で握ってトリガ14を右手の人差し指で引き操作する。トリガ14が引き操作されると、バッテリパック25からモータ6に電力が供給され、モータ6が起動し、同時にライト17が点灯する。モータ6の起動により、ロータ27のロータシャフト部33が回転する。ロータシャフト部33が回転すると、ロータシャフト部33の回転力がピニオンギヤ41を介してプラネタリギヤ42に伝達される。プラネタリギヤ42は、インターナルギヤ43の内歯に噛み合った状態で、自転しながらピニオンギヤ41の周囲を公転する。プラネタリギヤ42は、ピン42Pを介してスピンドル8に回転可能に支持される。プラネタリギヤ42の公転により、スピンドル8は、ロータシャフト部33の回転速度よりも低い回転速度で回転する。
【0122】
ハンマ突起部475とアンビル突起部102とが接触している状態で、スピンドル8が回転すると、アンビル10は、ハンマ47及びスピンドル8と一緒に回転する。アンビル10が回転することにより、締付作業が進行する。
【0123】
締付作業の進行により、アンビル10に所定値以上の負荷が作用した場合、アンビル10及びハンマ47の回転が停止する。ハンマ47の回転が停止している状態で、スピンドル8が回転すると、ハンマ47は、後方に移動する。ハンマ47が後方に移動することにより、ハンマ突起部475とアンビル突起部102との接触が解除される。後方に移動したハンマ47は、第1コイルスプリング51及び第2コイルスプリング52の弾性力により、回転しながら前方に移動する。ハンマ47が回転しながら前方に移動することにより、アンビル突起部102は、ハンマ突起部475により回転方向に打撃される。これにより、アンビル10は、高いトルクで回転軸AXを中心に回転する。そのため、ねじは作業対象に高いトルクで締め付けられる。
【0124】
[諸元]
図16は、実施形態に係るインパクト工具及び比較例に係るインパクト工具の諸元を示す図である。図17は、実施形態に係るインパクト工具及び比較例に係るインパクト工具の隅打ち角度を示す図である。
【0125】
実施形態に係るインパクト工具は、図1から図15を参照して説明したインパクト工具1である。
【0126】
比較例1、比較例2、及び比較例3に係るインパクト工具は、既に製造及び販売されているインパクト工具である。
【0127】
実施形態及び比較例1,2,3に係るインパクト工具の電源は、インパクト工具に着脱可能なバッテリパックである。バッテリパックの定格電圧は、18Vである。なお、バッテリパックの定格電圧は、任意である。バッテリパックの定格電圧は、10.8Vでもよいし、14.4Vでもよいし、25.2Vでもよいし、36Vでもよい。
【0128】
実施形態及び比較例1,2,3に係るインパクト工具の最大締付トルクは、140Nm以上である。図16に示すように、実施形態に係るインパクト工具の最大締付トルクは、140Nmである。比較例1,2,3に係るインパクト工具のそれぞれの最大締付トルクは、155Nm、165Nm、206Nmである。なお、実施形態に係るインパクト工具の最大締付トルクは、150Nm以上230Nm以下の任意の値を採り得る。実施形態に係るインパクト工具の最大締付トルクは、150Nm、160Nm、170Nm、180Nm、190Nm、200Nm、210Nm、220Nm、230Nmのいずれか一つの値を採り得るし、これらの値の間の値を採り得る。
【0129】
図3に示すように、モータ6の回転軸AXに平行な前後方向におけるモータ収容部21の後端部とアンビル10の前端部との距離を全長La(軸長)とした場合、実施形態に係るインパクト工具の全長Laは、97mmである。比較例1,2,3に係るインパクト工具のそれぞれの全長Laは、98mm、99mm、100mmである。なお、実施形態に係るインパクト工具の全長Laは、90mm以上98mm以下の任意の値を採り得る。実施形態に係るインパクト工具の全長Laは、98mm、97mm、96mm、95mm、94mm、93mm、92mm、91mm、90mmのいずれか一つの値を採り得るし、これらの値の間の値を採り得る。
【0130】
図4に示すように、左右方向におけるインパクト工具のバッテリパック装着時の寸法、すなわち、左右方向におけるインパクト工具及びバッテリパックの左端部と右端部との距離を最大幅Maとした場合、実施形態に係るインパクト工具の最大幅Maは、81mmであり、比較例1,2,3に係るインパクト工具のそれぞれの最大幅Maは、84mm、79mm、78mmである。最大幅Maは、バッテリパックの幅の場合があるし、バッテリ保持部の幅の場合がある。
【0131】
図3に示すように、上下方向におけるモータ収容部21の上端部とバッテリ装着部13に装着されたバッテリパック25の下端部との距離を高さHaとした場合、実施形態に係るインパクト工具の高さHaは、234mmである。比較例1,2,3に係るインパクト工具のそれぞれの高さHaは、243mm、237mm、256mmである。なお、実施形態に係るインパクト工具の高さHaは、226mm以上234mm以下の任意の値を採り得る。実施形態に係るインパクト工具の高さHaは、234mm、232mm、230mm、228mm、226mmのいずれか一つの値を採り得るし、これらの値の間の値を採り得る。
【0132】
図4及び図7に示すように、左右方向におけるモータ収容部21の寸法、すなわち、左右方向におけるモータ収容部21の左端部と右端部との距離をヘッド部幅Waとした場合、実施形態に係るインパクト工具のヘッド部幅Waは、53.4mmである。比較例1,2,3に係るインパクト工具のそれぞれのヘッド部幅Waは、63.5mm、66.5mm、66mmである。なお、実施形態に係るインパクト工具のヘッド部幅Waは、47mm以上53mm以下の任意の値を採り得る。実施形態に係るインパクト工具のヘッド部幅Waは、53mm、52mm、51mm、50mm、49mm、48mm、47mmのいずれか一つの値を採り得るし、これらの値の間の値を採り得る。
【0133】
図3に示すように、上下方向における回転軸AXとモータ収容部21の上端部との距離をセンターハイトHcとした場合、実施形態に係るインパクト工具のセンターハイトHcは、26.3mmである。比較例1,2,3に係るインパクト工具のそれぞれのセンターハイトHcは、30mm、30mm、35mmである。なお、実施形態に係るインパクト工具のセンターハイトHcは、22mm以上28mm以下の任意の値を採り得る。実施形態に係るインパクト工具のセンターハイトHcは、28mm、27mm、26mm、25mm、24mm、23mm、22mmのいずれか一つの値を採り得るし、これらの値の間の値を採り得る。
【0134】
ヘッド部幅Waと全長Laとの比[Wa/La]は、実施形態に係るインパクト工具では、0.55であり、比較例1,2,3に係るインパクト工具ではそれぞれ、0.65、0.67、0.66である。なお、実施形態に係るインパクト工具の比[Wa/La]は、0.52以上0.64以下の任意の値を採り得る。実施形態に係るインパクト工具の比[Wa/La]は、0.64、0.63、0.62、0.61、0.60、0.59、0.58、0.57、0.56、0.55、0.54、0.53、0.52のいずれか一つの値を採り得るし、これらの値の間の値を採り得る。
【0135】
実施形態及び比較例1,2,3に係るインパクト工具の質量、無負荷回転数、及び打撃数は、図16に示すとおりである。
【0136】
図16に示すように、実施形態に係るインパクト工具は、最大締付トルクが140Nm以上である条件、全長Laが100mm以下である条件、及びセンターハイトHcが29mm以下である条件を満たす。また、実施形態に係るインパクト工具は、ヘッド部幅Waと全長Laとの比[Wa/La]が0.6以下である条件を満たす。実施形態に係るインパクト工具は、ヘッド部幅Waが65mm以下である条件を満たす。
【0137】
図3に示すように、前後方向におけるモータ収容部21の後端部とアンビル10に装着されたドライバビット300の前端部との距離を総全長Lhとした場合、実施形態に係るインパクト工具は、総全長Lhが140mm以下である条件を満たす。
【0138】
図18図19、及び図20のそれぞれは、インパクト工具の隅打ち条件を説明するための図である。図18図19、及び図20に示すように、隅打ちとは、床面FLに直交する壁面WLにおいて床面WLから規定距離Hwだけ上方の位置にあるねじをドライバビット300で締付作業することをいう。隅打ち角度θとは、床面FLに直交する壁面WLにおいて床面WLから規定距離Hwだけ上方の位置にあるねじをドライバビット300で締付作業するときの回転軸AXと床面FLとがなす角度をいう。本明細書で開示する評価試験においては、規定距離Hwを10mmとした。すなわち、本明細書で開示する評価試験に係る隅打ち角度θとは、床面FLに直交する壁面WLにおいて床面FLから10mmだけ上方の位置にあるねじをドライバビット300で締付作業するときの回転軸AXと床面FLとがなす角度をいう。
【0139】
本明細書で開示する評価試験においては、長さが65mmのドライバビット300を使用した。また、真上、真横、及び斜め45度の3つの姿勢で隅打ちを実施した。図18に示すように、真上とは、モータ収容部21に対してバッテリ保持部23が真上に配置されたインパクト工具の姿勢をいう。図19に示すように、真横とは、モータ収容部21に対してバッテリ保持部23が真横に配置されたインパクト工具の姿勢をいう。図20に示すように、斜め45度とは、モータ収容部21に対してバッテリ保持部23が上方斜め45度に配置されたインパクト工具の姿勢をいう。
【0140】
図17に示すように、真上の姿勢において、実施形態に係るインパクト工具の隅打ち角度θは、11.4度である。比較例2,3に係るインパクト工具の隅打ち角度θはそれぞれ、12.2度、12.5度である。真横の姿勢において、実施形態に係るインパクト工具の隅打ち角度θは、11.0度である。比較例2,3に係るインパクト工具の隅打ち角度θはそれぞれ、16.2度、15.7度である。斜め45度の姿勢において、実施形態に係るインパクト工具の隅打ち角度θは、11.9度である。比較例2,3に係るインパクト工具の隅打ち角度θはそれぞれ、13.2度、12.9度である。なお、比較例1に係るインパクト工具は、隅打ちできなかった。このように、実施形態に係るインパクト工具の隅打ち角度θは、12度以下である条件を満たす。
【0141】
[効果]
以上説明したように、本実施形態において、インパクト工具1は、ステータ26及び少なくとも一部がステータ26の内側に配置され回転軸AXを中心に回転するロータ27を有するモータ6と、ステータ26よりも前方に配置されロータ27の回転力により回転するスピンドル8と、少なくとも一部がスピンドル8よりも前方に配置され、ドライバビット300が装着されるアンビル10と、アンビル10を回転方向に打撃するハンマ47と、モータ6を収容するモータ収容部21を有するハウジング2と、を備える。
【0142】
最大締付トルクは、140Nm以上である。
【0143】
回転軸AXに平行な前後方向におけるモータ収容部21の後端部とアンビル10の前端部との距離を示す全長Laは、100mm以下である。
【0144】
上下方向における回転軸AXとモータ収容部21の上端部との距離を示すセンターハイトHcは、29mm以下である。
【0145】
前後方向におけるモータ収容部21の後端部とアンビル10に装着されたドライバビット300の前端部との距離を示す総全長Lhは、140mm以下である。
【0146】
床面FLに直交する壁面WLにおいて床面FLから10mm上方の位置にあるねじをドライバビット300で締付作業するときの回転軸AXと床面FLとがなす角度を示す隅打ち角度θは、12度以下である。
【0147】
左右方向におけるモータ収容部21の寸法を示すヘッド部幅Waは、65mm以下である。
【0148】
ヘッド部幅Waと全長Laとの比[Wa/La]は、0.6以下である。
【0149】
上記の構成では、狭隘部又は角部においても、作業者は、インパクト工具1を用いる作業を円滑に実施することができる。例えば、図18に示したように、床面FLと壁面WLとからなる角部において隅打ちを実施する場合において、実施形態に係るインパクト工具1は、比較例に係るインパクト工具よりも、規定距離Hwが小さい位置(低い位置)において、締付作業を円滑に実施することができる。
【0150】
[その他の実施形態]
上述の実施形態において、インパクト工具1は、インパクトドライバに限定されない。インパクト工具1は、インパクトレンチでもよい。
【0151】
上述の実施形態において、インパクト工具1の電源がバッテリパック25であることとした。インパクト工具1の電源が商用電源(交流電源)でもよい。
【符号の説明】
【0152】
1…インパクト工具、2…ハウジング、2L…左ハウジング、2R…右ハウジング、2S…ねじ、4…ハンマケース、5A…ハンマケースカバー、5B…バンパ、5C…ハウジングカバー、6…モータ、7…減速機構、8…スピンドル、8A…ハンマ摺動面、8B…アンビル摺動面、9…打撃機構、10…アンビル、10A…6角ビット孔、10B…後端部、11…ビット保持機構、12…ファン、12A…ブッシュ、13…バッテリ装着部、14…トリガ、15…正逆転切換スイッチ、16…操作表示部、16A…第1操作ボタン、16B…第2操作ボタン、17…ライト、18…コントローラ、19…吸気口、20…排気口、21…モータ収容部、21A…筒状部、21B…後板部、22…グリップ部、23…バッテリ保持部、24…ベアリングボックス、24A…Oリング、25…バッテリパック、25A…ロック解除ボタン、26…ステータ、27…ロータ、28…ステータコア、29…前インシュレータ、29S…ねじ、30…後インシュレータ、31…コイル、32…ロータコア部、33…ロータシャフト部、33F…前側シャフト部、33R…後側シャフト部、34…ロータ磁石、35…センサ用磁石、37…センサ基板、38…ヒュージング端子、39…ロータベアリング、39F…前側ロータベアリング、39R…後側ロータベアリング、41…ピニオンギヤ、42…プラネタリギヤ、42P…ピン、43…インターナルギヤ、44…スピンドルベアリング、45…Oリング、46…アンビルベアリング、47…ハンマ、48…ハンマボール、50…コイルスプリング、51…第1コイルスプリング、52…第2コイルスプリング、53…ワッシャ、54…支持ボール、61…カップワッシャ、62…抑制部材、71…ボール、73…スリーブ、74…コイルスプリング、76…支持凹部、81…第1前面、82…第2前面、83…前面、84…第1接続面、84A…第1平面、84B…第1曲面、85…第2接続面、85A…第2平面、85B…第2曲面、90…溝、101…アンビルシャフト部、102…アンビル突起部、103…アンビル凸部、104…被打撃面、241…凹部、242…凸部、300…ドライバビット(ビット)、401…第1筒部、402…第2筒部、403…ケース接続部、404…溝部、471…ベース部、472…前側リング部、472A…外周面、473…後側リング部、473R…後端部、474…支持リング部、474R…後端部、475…ハンマ突起部、476…凹部、477…ハンマ溝、478…支持溝、479…被摺動面、611…内側リング部、612…外側リング部、613…接続リング部、801…スピンドルシャフト部、802…フランジ部、803…凸部、804…スピンドル溝、805…スピンドル凹部、AX…回転軸。
図1
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