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特開2023-181626内燃機関システム、それを備えた乗物、及び、燃料ガス供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181626
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】内燃機関システム、それを備えた乗物、及び、燃料ガス供給方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20231218BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
F02M21/02 301
F02D19/02 B
F02M21/02 G
F02M21/02 F
F02D19/02
F02M21/02 X
F02M21/02 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094861
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 義基
【テーマコード(参考)】
3G092
【Fターム(参考)】
3G092AB06
3G092AB09
3G092DE09
3G092DE10
3G092DE14
3G092DF03
3G092DF04
3G092DF09
3G092DG01
3G092EA11
3G092EA29
3G092HB09
(57)【要約】
【課題】燃料タンクの内圧低下時にも内燃機関を適切に運転できるようにする。
【解決手段】内燃機関システムは、内燃機関と、燃料ガスを圧縮状態で貯留する少なくとも1つの燃料タンクと、前記燃料タンクを前記内燃機関に接続する燃料ガス配管と、前記燃料ガス配管に接続され、前記燃料タンク内又は前記燃料ガス配管内の前記燃料ガスを加圧する加圧ポンプと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
燃料ガスを圧縮状態で貯留する少なくとも1つの燃料タンクと、
前記燃料タンクを前記内燃機関に接続する燃料ガス配管と、
前記燃料タンク内又は前記燃料ガス配管内の前記燃料ガスを加圧する加圧ポンプと、を備える、内燃機関システム。
【請求項2】
前記燃料ガス配管に配置されて、前記燃料ガスの圧力を所定値以下に減圧する減圧弁を更に備え、
前記加圧ポンプは、前記減圧弁の上流側に位置する燃料ガスを加圧する、請求項1に記載の内燃機関システム。
【請求項3】
前記加圧ポンプは、前記内燃機関が発生したエネルギーを利用して駆動される、請求項1又は2に記載の内燃機関システム。
【請求項4】
前記加圧ポンプは、前記内燃機関により機械的に駆動される、請求項3に記載の内燃機関システム。
【請求項5】
前記燃料ガス配管に接続されたアキュムレータを更に備える、請求項1又は2に記載の内燃機関システム。
【請求項6】
前記燃料ガス配管は、前記燃料タンクから前記内燃機関に向かう内燃機関向け流路と、前記燃料タンクから前記加圧ポンプに向かうポンプ向け流路と、を含み、
前記内燃機関システムは、
前記燃料タンクが前記内燃機関向け流路に連通した状態と、前記燃料タンクが前記ポンプ向け流路に連通した状態と、の間で動作可能な弁システムと、
前記弁システムを制御するように構成された処理回路と、
を更に備える、請求項1又は2に記載の内燃機関システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの燃料タンクは、第1燃料タンク及び第2燃料タンクを含み、
前記処理回路は、
前記第1燃料タンク及び前記第2燃料タンクのいずれか内圧が低いかを判定し、
前記第1燃料タンク及び前記第2燃料タンクのうち内圧が低い方のタンクの燃料ガスを前記加圧ポンプに導く状態に前記弁システムを制御するように構成されている、請求項6に記載の内燃機関システム。
【請求項8】
前記処理回路は、
前記燃料タンクの内圧が所定の下限値未満であるか否かを判定し、
前記内圧が所定の下限値未満である前記燃料タンクの燃料ガスを前記加圧ポンプに導く状態に前記弁システムを制御するように構成されている、請求項6に記載の内燃機関システム。
【請求項9】
前記燃料ガスは、水素ガスである、請求項1又は2に記載の内燃機関システム。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の前記内燃機関システムを備え、前記内燃機関システムで発生した駆動力により移動する、乗物。
【請求項11】
前記内燃機関システムは、
前記燃料タンクと前記加圧ポンプと前記燃料ガス配管との間の流路を切り替える弁システムと、
前記弁システムを制御するように構成された第1処理回路と、を更に備え、
前記乗物は、前記弁システムとは異なる装置を制御するように構成された第2処理回路を更に備え、
前記第1処理回路及び前記第2処理回路は、互いに情報通信可能に接続されている、請求項10に記載の乗物。
【請求項12】
2つの流路のうち圧力が高い方の流路の燃料ガスを燃料ガス消費源に供給することと、
前記2つの流路のうち圧力が低い方の流路の燃料ガスを加圧ポンプで加圧することと、
前記加圧された燃料ガスを前記燃料ガス消費源に供給することと、を含む、燃料ガス供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関システム、それを備えた乗物、及び、燃料ガス供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高圧の水素ガスタンクから減圧弁を介して供給される水素ガスを燃料として燃焼して駆動力を発生する内燃機関が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-173182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関の運転により燃料タンク内の燃料ガスが消費され続けると、最終的には燃料タンクの内圧が所定値未満にまで下がることになる。その状態になると、燃料タンク内の燃料ガスを適切に内燃機関に供給できず、燃料切れとして扱われる。
【0005】
そこで本開示の一態様は、内燃機関への燃料ガスの提供量を増やすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る内燃機関システムは、内燃機関と、燃料ガスを圧縮状態で貯留する少なくとも1つの燃料タンクと、前記燃料タンクを前記内燃機関に接続する燃料ガス配管と、前記燃料ガス配管に接続され、前記燃料タンク内又は前記燃料ガス配管内の前記燃料ガスを加圧する加圧ポンプと、を備える。
【0007】
本開示の一態様に係る乗物は、前記内燃機関システムを備え、前記内燃機関システムで発生した駆動力により移動する。
【0008】
本開示の一態様に係る燃料ガス供給方法は、2つの流路のうち圧力が高い方の流路の燃料ガスを燃料ガス消費源に供給することと、前記2つの流路のうち圧力が低い方の流路の燃料ガスを加圧ポンプで加圧することと、前記加圧された燃料ガスを前記燃料ガス消費源に供給することと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、燃料タンクの燃料ガスの圧力が低下しても、その燃料ガスを加圧ポンプにより加圧できる。よって、燃料タンクの内圧低下時にも燃料ガスを消費源に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る乗物の内燃機関システムのブロック図である。
図2図2は、図1のシステムの制御を説明するフローチャートである。
図3図3は、図1の乗物の各ECU等のブロック図である。
図4図4は、第2実施形態に係る内燃機関システムのブロック図である。
図5図5は、図4のシステムの制御を説明するフローチャートである。
図6図6は、第3実施形態に係る内燃機関システムのブロック図である。
図7図7は、第4実施形態に係る内燃機関システムのブロック図である。
図8図8は、第5実施形態に係る内燃機関システムのブロック図である。
図9図9は、第6実施形態に係る内燃機関システムのブロック図である。
図10図10は、第7実施形態に係る内燃機関システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る内燃機関システム10のブロック図である。図1に示すように、内燃機関システム10は、内燃機関E、第1燃料タンク21、第2燃料タンク22、加圧ポンプ23、補助タンク24、燃料ガス配管25、弁システム26、第1燃料タンク圧力センサ27、第2燃料タンク圧力センサ28、補助タンク圧力センサ29、減圧弁47、遮断弁48、燃料ECU50等を備える。燃料ガス配管25及び弁システム26は、燃料協供給回路システムを構成する。燃料ガス配管25及び加圧ポンプ23は、燃料供給装置を構成する。本実施形態では、内燃機関システム10は、乗物1に搭載されている。乗物1は、特に限定されず、例えば、自動二輪車、自動三輪車、オフロード四輪車、船舶、航空機、鉄道車両等を含み得る。乗物1は、内燃機関システム10で発生した駆動力により推進力を出して移動する。
【0013】
内燃機関Eは、燃料ガスを燃焼し、その燃焼エネルギーを回転エネルギーに変換して出力する。本実施形態では、内燃機関は、レシプロエンジンである。この場合、内燃機関は、シリンダ内で燃料ガスを爆発させて、シリンダ内の気体の膨張によってピストンの往復運動を生じさせる。内燃機関は、このピストンの往復運動を、クランク軸の回転運動に変換して出力する。内燃機関Eが燃焼する燃料ガスは、例えば、水素ガスである。即ち、内燃機関Eは、水素ガス消費源である。内燃機関Eには、標準気圧(0.1MPa)よりも高圧となる所定の燃料噴射圧の水素ガスが供給される必要がある。ピストンによってシリンダ内の気体が圧縮状態のときに燃料ガスを供給する直噴エンジンが内燃機関Eとして用いられる場合、内燃機関Eには、例えば10MPa以上に圧縮された水素ガスが供給される必要がある。
【0014】
第1燃料タンク21及び第2燃料タンク22は、互いに同じ構造を有する。第1燃料タンク21及び第2燃料タンク22は、燃料ガスとなる水素ガスを圧縮状態で貯留する。満タン状態の第1燃料タンク21及び第2燃料タンク22の内圧は、標準気圧(0.1MPa)よりも高く、具体的には内燃機関Eで要求される燃料噴射圧よりも十分に高い。満タン状態の第1燃料タンク21及び第2燃料タンク22の内圧は、タンク21,22に設けられたレギュレータの開放圧力よりも高い。たとえば燃料タンクに充填される水素ガスの圧力は、70MPaに設定される。
【0015】
加圧ポンプ23は、第1燃料タンク21又は第2燃料タンク22の出口ポートから配管に流出した水素ガスを加圧可能としている。補助タンク24は、加圧ポンプ23で加圧された水素ガスを貯留する。本実施形態では、補助タンク24は、各燃料タンクに比べて小型に形成される。加圧ポンプ23は、内燃機関Eで要求される燃料噴射圧を超える圧力に加圧可能であれば公知の構造を採用することができる。例えば、加圧ポンプは、ピストンの往復運動を用いたレシプロポンプ、ダイヤフラムポンプ等によって実現しうる。加圧ポンプ23は、シャフトの回転運動を用いたブースターポンプ、ルーツポンプ、プランジャポンプ等によって実現してもよい。
【0016】
本実施形態では、加圧ポンプ23は、内燃機関Eが発生したエネルギーを利用して駆動される。加圧ポンプ23は、内燃機関Eにより機械的に駆動される。本実施形態では、内燃機関の駆動に伴って回転する回転部材の回転動力が加圧ポンプ23の駆動力として与えられる。内燃機関の回転部材は、クランクシャフト、カムシャフト、バランサシャフトなどの回転軸であってもよい。加圧ポンプ23に駆動力を与える回転部材は、内燃機関に接続される変速機の出力軸であってもよい。例えば、加圧ポンプ23は、動力伝達構造38を介して内燃機関Eの回転部材に接続されてもよい。前記動力伝達構造38は、ギヤ機構、ベルト・プーリー機構、又は、チェーン・スプロケット機構を含み得る。加圧ポンプ23は、内燃機関Eのクランク軸に直接的に接続されてもよい。
【0017】
加圧ポンプ23は、ルーツポンプなどの回転動力が駆動力として与えられる場合がある。この場合には、動力伝達構造38または前記回転部材から回転駆動力が与えられることで、吸込口から吸引した水素ガスを加圧して吐出口から吐出する。加圧ポンプ23は、レシプロポンプなどのように往復動力が駆動力として与えられるものでもよい。この場合には、加圧ポンプ23は、カム機構を介して、回転駆動力から変換された往復動力が与えられることで、吸込口から吸引した水素ガスを加圧して吐出口から吐出する。具体的には、クランク軸にカム山を設け、カムの回転を往復動に変換してピストンを往復動させてもよい。
【0018】
本実施形態では、内燃機関Eのクランク軸と加圧ポンプ23との間の動力伝達経路には、アクチュエータによって駆動可能なクラッチ39が介在している。即ち、クラッチ39は、燃料ECU50により制御可能に構成されている。加圧ポンプ23の吐出側には、リリーフ弁99が設けられていてもよい。この場合、リリーフ弁99は、加圧ポンプ23の吐出側の通路内の圧力が予め定めるリリーフ圧を超えると、加圧ポンプ23の吐出側の通路と加圧ポンプ23の吸込み側の通路とを連通させる。これによって、加圧ポンプ23の吐出側の通路の圧力が、リリーフ圧を超えることを防ぐことができる。たとえばリリーフ圧は、内燃機関Eの所定の燃料噴射圧よりも高く、燃料タンク21,22の充填上限圧よりも低く設定される。なお、リリーフ弁99及びクラッチ39の両方が設けられてもよいし、リリーフ弁99及びクラッチ39のいずれか一方のみが設けられてもよい。
【0019】
燃料ガス配管25は、第1燃料タンク21及び第2燃料タンク22を内燃機関Eに接続する。燃料ガス配管25は、主供給配管30、第1副供給配管31、第2副供給配管32、主加圧配管33、第1副加圧配管34、第2副加圧配管35、及び、補助配管36を含む。主供給配管30は、第1接続箇所P1において第1副供給配管34及び第2副供給配管35に接続されている。主供給配管30は、第1接続箇所P1から内燃機関Eの燃料インジェクタ98まで延びている。第1副供給配管31は、第1燃料タンク21を主供給配管30に接続している。言い換えると、第1副供給配管31は、第1燃料タンク21から第1接続箇所P1まで配設されている。第2副供給配管32は、第2燃料タンク22を主供給配管30に接続している。言い換えると、第2副供給配管32は、第2燃料タンク22から第1接続箇所P1まで配設されている。即ち、第1副供給配管31及び第2副供給配管32は、主供給配管30の上流側端となる第1接続箇所P1において、各タンク21,22に向けてそれぞれ分岐している。
【0020】
第1副加圧配管34は、第3接続箇所P3において第1副供給配管31の中間部に接続されている。第2副加圧配管35は、第4接続箇所P4において第2副供給配管32の中間部に接続されている。第1副加圧配管34及び第2副加圧配管35は、第2接続箇所P2において主加圧配管33に接続されている。言い換えると、第1副加圧配管34は、第3接続箇所P3から第2合流点P2まで延び、第2副加圧配管35は、第4接続箇所P4から第2接続箇所P2まで延びている。主加圧配管33は、第2接続箇所Pを補助タンク24の入口ポートに接続している。主加圧配管33の中間部には、加圧ポンプ23が介在している。加圧ポンプ23の吸込口が、主加圧配管33のうち第2接続箇所P2から延びる部分に接続されている。加圧ポンプ23の吐出口は、主加圧配管33のうち補助タンク24に向かう部分に接続されている。第1副加圧配管34及び第2副加圧配管35は、主加圧配管33の上流端となる第2接続箇所P2において、各タンク21,22に向けてそれぞれ分岐している。補助配管36は、補助タンク24を主供給配管30に接続している。補助配管36は、補助タンク24の出口ポートから主供給配管30の合流接続箇所Kまで配設されている。合流接続箇所Kは、第1接続箇所P1より下流側であって、減圧弁47よりも上流側に配置される。
【0021】
第1副供給配管31及び主供給配管30の流路は、第1燃料タンク21から内燃機関Eに向かう第1内燃機関向け流路A1(21,31,P1,30)を構成している。第2副供給配管32及び主供給配管30の流路は、第2燃料タンク22から内燃機関Eに向かう第2内燃機関向け流路A2(22,32,P1,30)を構成している。第1副供給配管31、第1副加圧配管34及び主加圧配管33の流路は、第1燃料タンク21から加圧ポンプ23を経由して内燃機関Eに向かう第1ポンプ向け流路B1(21,31,P3,34,P2,33,36,K,30)を構成している。第2副供給配管32、第2副加圧配管35及び主加圧配管33の流路は、第2燃料タンク22から加圧ポンプ23を経由して内燃機関に向かう第2ポンプ向け流路B2(22,32,P4,34,P2,33,36,K,30)を構成している。
【0022】
弁システム26は、第1燃料タンク開閉弁41、第2燃料タンク開閉弁42、第1切替弁43、第2切替弁44、及び、補助タンク開閉弁45を備える。各弁41~45は、電気的に制御可能な電磁弁である。第1燃料タンク開閉弁41は、第1燃料タンク21に設けられて第1燃料タンク21の出口ポートを開閉する。第2燃料タンク開閉弁42は、第2燃料タンク22に設けられて第2燃料タンク22の出口ポートを開閉する。
【0023】
第1切替弁43は、第1副供給配管31に対する第1副加圧配管34の接続箇所P3に配置された三方弁である。第2切替弁44は、第2副供給配管32に対する第2副加圧配管35の接続箇所P4に配置された三方弁である。補助タンク開閉弁45は、補助タンク24の出口ポートに配置されている。なお、補助タンク開閉弁45の代わりに、補助タンク24から補助配管36を介して主供給配管30に向けた流れを許容し且つその逆の流れを阻止する逆止弁を補助配管36の中間部に設けてもよい。言い換えると、前記逆止弁は、合流接続箇所K側の圧力が、補助タンク24側の圧力よりも小さい場合に補助配管36の通路を開く。他方、前記逆止弁は、合流接続箇所Kの圧力が、補助タンク24の圧力よりも大きい場合に補助配管36の通路を閉じる。
【0024】
弁システム26は、第1切替弁43の動作によって、第1燃料タンク21が第1内燃機関向け流路A1に連通した状態と、第1燃料タンク21が第1ポンプ向け流路B1に連通した状態と、の間で切り替え可能である。弁システム26は、第2切替弁44の動作によって、第2燃料タンク22が第2内燃機関向け流路A2に連通した状態と、第2燃料タンク22が第2ポンプ向け流路B2に連通した状態と、の間で切り替え可能である。このように、弁システム26は、第1燃料タンク21と加圧ポンプ23と燃料ガス配管25との間の流路を切り替えるとともに、第2燃料タンク22と加圧ポンプ23と燃料ガス配管25との間の流路を切り替える。言い換えると、燃料ガス配管25は、燃料タンク21,22から加圧ポンプ23を経由せずに内燃機関Eに導かれる流路A1,A2と、燃料タンク21,22から加圧ポンプ23を経由して内燃機関Eに導かれる流路B1,B2と、をそれぞれ有し、それらの流路は、弁システム26により互いに切り替え可能に構成されている。これらの流路は、部分的に共用される部分を有してもよい。
【0025】
第1燃料タンク圧力センサ27は、第1燃料タンク21が貯留する水素ガスの圧力を検出する。第2燃料タンク圧力センサ28は、第2燃料タンク22が貯留する水素ガスの圧力を検出する。補助タンク圧力センサ29は、補助タンク24が貯留する水素ガスの圧力を検出する。
【0026】
減圧弁47は、主供給配管30において、主供給配管30に対する補助配管36の合流接続箇所Kよりも内燃機関Eに近い側すなわち下流側に配置されている。加圧ポンプ23及び補助タンク24は、減圧弁47の上流側に配置されている。減圧弁47は、主供給配管30のうちで減圧弁47の下流側の圧力を内燃機関Eの所定の燃料噴射圧に維持する。減圧弁47は、その下流側の圧力が当該燃料噴射圧よりも低くなると、上流側と下流側とを連通するバイパス通路を開く。減圧弁47は、当該燃料噴射圧を超えると前記バイパス通路を閉じる。このようにして主供給配管30から内燃機関Eに供給される水素ガスの圧力を所定噴射圧に維持するように、減圧弁47の下流側を流れる水素ガスを減圧弁47の上流側を流れる水素ガスに比べて減圧する。遮断弁48は、緊急時などに主供給配管30から内燃機関Eへの水素ガスの供給を遮断可能なように、主供給配管30のうち減圧弁47の下流側に配置されている。
【0027】
燃料ECU50は、各センサ27~29の検出信号に基づいて、弁システム26及びクラッチ39を制御する。燃料ECU50は、プロセッサ、システムメモリ及びストレージメモリを備える。プロセッサは、例えば、中央演算処理装置(CPU)を含む。システムメモリは、例えば、RAMである。ストレージメモリは、ROMを含み得る。ストレージメモリは、ハードディスク、フラッシュメモリ又はそれらの組合せを含み得る。ストレージメモリは、プログラムを記憶している。システムメモリに読み出されたプログラムをプロセッサが実行する構成は、第1処理回路の一例である。
【0028】
図2は、図1のシステムの制御を説明するフローチャートである。以下、図1の構成を参照しながら図2の流れに沿って説明する。燃料ECU50は、第1燃料タンク21の水素ガスと第2燃料タンク22の水素ガスとが互いに不均等に減るように弁システム26を制御する。例えば、燃料ECU50は、第1燃料タンク21及び第2燃料タンク22のいずれか一方の水素ガスを優先的に消費するように弁システム26を制御する。
【0029】
内燃機関Eの稼働中において、燃料ECU50は、弁システム26を制御し、第1副供給配管31及び第2副供給配管32のうち圧力が高い方の流路を流れる水素ガスを、加圧ポンプ23を経由せずに内燃機関Eに供給する(ステップS1)。ここでは、第1副供給配管31の圧力が第2副供給配管32の圧力よりも高いと仮定する。即ち、第1燃料タンク21の内圧が第2燃料タンク22の内圧よりも高いと仮定する。この場合、燃料ECU50は、第1燃料タンク開閉弁41を開いた状態において、第1副供給配管31から主供給配管30に向けた流路A1を開いて且つ第1副供給配管31から第1副加圧配管34に向けた流路B1を閉じるように第1切替弁43を制御する。
【0030】
これによって第1燃料タンク21の水素ガスが、主供給配管30を通って減圧弁47に達する。水素ガスは、減圧弁47で内燃機関Eへの噴射に適した圧力に減圧されて、内燃機関Eに供給される。なお、ステップS1において、燃料ECU50は、開閉弁41を開く前に、補助タンク開閉弁45を閉じる制御を行うことが好ましい。これによって燃料タンク21からの高圧の水素ガスが、合流接続箇所Kを経由して補助タンク24にむかって逆流することを防ぐことができる。また、燃料ECU50は、開閉弁41を開く前に、開閉弁43の切替制御を行うことが好ましい。これによって第1燃料タンク21からの高圧の水素ガスが、主加圧配管33に流れることを防ぐことができる。同様に、燃料ECU50は、第1燃料タンク21からの高圧の水素ガスが第2燃料タンク22に流れることを防ぐために、開閉弁41を開く前に、第2燃料タンク開閉弁44の切替制御を行ってもよい。
【0031】
燃料ECU50は、第1燃料タンク圧力センサ27及び第2燃料タンク圧力センサ28の検出信号に基づいて、第1燃料タンク21及び第2燃料タンク22のうち内圧が低い方のタンクの内圧が所定の下限値L未満であるか否かを判定する(ステップS2)。ここでは前述のように、第2燃料タンク22の内圧が第1燃料タンク21の内圧よりも低いと仮定する。この場合、燃料ECU50は、第2燃料タンク圧力センサ28の検出信号に基づいて、第2燃料タンク22の内圧が所定の下限値L未満であるか否かを判定する。例えば下限値Lは、内燃機関Eの所定の燃料噴射圧と同じ値又は当該燃料噴射圧より大きい値に設定される。
【0032】
燃料ECU50は、第2燃料タンク22の内圧が下限値L未満でなければ(ステップS2:N)、ステップS1に戻る。第1燃料タンク21及び第2燃料タンク22の内圧が下限値L以上であるときには、燃料ECU50は、第2開閉弁42を閉じた状態を維持して、クラッチ39を切断状態に制御する。他方、第2燃料タンク22の内圧が下限値L未満であれば(ステップS2:Y)、燃料ECU50は、弁システム26及びクラッチ39を制御し、第2燃料タンク22の水素ガスを補助タンク24に向けて加圧する(ステップS3)。
【0033】
具体的には、ステップS3において、燃料ECU50は、第2副供給配管32から主供給配管30に向けた流路A2を閉じて且つ第2副供給配管32から第2副加圧配管35に向けた流路B2を開くように、第2切替弁44を制御する。この際、燃料ECU50は、補助タンク開閉弁45を閉じるとともに、クラッチ39を係合状態にする。なお、ステップS3において、燃料ECU50は、開閉弁42の解放制御の前に、第2燃料タンク開閉弁44の流路切替制御を行うことが好ましい。これによって燃料タンク22からの高圧の水素ガスが、主加圧配管33に流れることを防ぐことができる。ステップS1とステップS2とは逆の順番でもよい。このように流路をそれぞれ設定することで、第1燃料タンク21の水素ガスを燃料として内燃機関が稼働する。
【0034】
この場合、内燃機関Eに駆動される加圧ポンプ23が第2燃料タンク22からの水素ガスを加圧し、その加圧された水素ガスが補助タンク24に充填される。即ち、燃料ECU50は、第1燃料タンク21の水素ガスが内燃機関Eに供給されるように弁システム26を制御して内燃機関Eが稼働しているときに、第2燃料タンク22からの水素ガスを加圧ポンプ23に加圧させる。
【0035】
燃料ECU50は、補助タンク圧力センサ29の検出信号に基づいて、補助タンク24の内圧が所定の閾値T1以上であるか否かを判定する(ステップS4)。閾値T1は、上述する内燃機関Eの所定の燃料噴射圧よりも高い圧力に設定される。たとえば、閾値T1は、燃料タンク21,22の内圧の下限値Lよりも大きい値に設定される。たとえば、閾値T1は、第1燃料タンク圧力センサ27で検出される第1燃料タンク21の内圧よりも高い圧力に設定されてもよい。閾値T2は、燃料ガス配管25や補助タンク24の許容圧力未満に設定されている。補助タンク24の内圧が閾値T1以上でなければ(ステップS4:N)、燃料ECU50は、補助タンク開閉弁45を閉じた状態を維持してステップS3に戻る(ステップS5)。即ち、第2燃料タンク22からの水素ガスが加圧ポンプ23によって補助タンク24に加圧されながら充填され続ける。
【0036】
補助タンク24の内圧が閾値T1以上であれば(ステップS4:Y)、燃料ECU50は、補助タンク開閉弁45を開く(ステップS6)。これにより、補助タンク24の水素ガスが補助配管36を介して主供給配管30に供給され得る。即ち、加圧ポンプ23によって加圧された水素ガスが内燃機関Eに供給され得る。なお、ステップS5では、クラッチ39を切断して加圧ポンプ23の稼働を停止してもよい。
【0037】
燃料ECU50は、第1燃料タンク21及び第2燃料タンク22のうち内圧が高い方のタンクの内圧に応じて閾値T1を変化させてもよい。例えば、燃料ECU50は、第1燃料タンク21及び第2燃料タンク22のうち内圧が高い方のタンクの内圧が減少すると、閾値T1を減少させるようにしてもよい。
【0038】
図3は、図1の乗物1の各ECU50~54等のブロック図である。図3に示すように、乗物1は、燃料ECU50とともに、少なくとも1つの他のECUを備える。前記少なくとも1つの他のECUは、弁システム26とは異なる装置を制御する。前記少なくとも1つの他のECUは、例えば、乗物1の挙動を制御するコントローラであってもよい。前記少なくとも1つの他のECUは、内燃機関Eのコントローラであってもよい。前記少なくとも1つの他のECUは、乗物1を統合的に制御するコントローラであってもよい。
【0039】
前記少なくとも1つの他のECUは、例えば、エンジンECU51、乗物ECU52、ナビゲーションECU53及びメータECU54の少なくとも1つを含む。エンジンECU51は、内燃機関Eを制御するために、スロットル装置61、燃料インジェクタ62及び点火装置63を制御する。乗物ECU52は、ABS又はCBSのためにブレーキ装置64を制御し、運転支援のために操舵装置65を制御する。ナビゲーションECU53は、衛星測位システムと通信してユーザインターフェース66に走行経路の案内などを出力する。メータECU54は、乗物1に搭載されたセンサの検出信号から得られる情報(例えば、車速、エンジン回転数等)をユーザインターフェース67に表示させる。ECU51~54の各々において、システムメモリに読み出されたプログラムをプロセッサが実行する構成は、第2処理回路の一例である。各ECU50~54は、互いに情報通信可能に接続されている。
【0040】
エンジンECU51は、燃料ECU50から与えられる情報に基づいて、エンジン制御を変化させてもよい。たとえば燃料ECU50は、第1燃料タンク21の内圧と第2燃料タンク22の内圧とのいずれもが下限値L未満となったと判定すると、エンジンECU51に出力抑制モード指令を送信してもよい。燃料ECU50は、第1燃料タンク圧力センサ27及び第2燃料タンク圧力センサ28の検出信号に基づいて第1燃料タンク21及び第2燃料タンク22の水素ガスの合計残量が所定値未満になったと判定すると、エンジンECU51に水素ガスの消費を抑えるためのエコモード指令を送信してもよい。
【0041】
逆に、エンジンECU51から与えられる情報に基づいて、燃料ECU50の制御を変化させてもよい。たとえば燃料ECU50は、2つの燃料タンク21,22での水素が十分に充填されている状態において、エンジンECU51から燃料消費が大きいモードでの走行することを受信した場合には、水素ガスの圧力不足による燃料供給不足を補うべく、2つの燃料タンク21,22から両方の水素ガスを内燃機関Eに供給するように弁システム26を制御してもよい。
【0042】
エンジンECU51及び燃料ECU50は、目的地までの残走行距離をナビゲーションECU53から受信し、それに基づいて燃料消費計画を立ててもよい。エンジンECU51は、加圧ポンプ23による水素ガスの加圧を実行している状態では、水素ガスの加圧を実行していない状態に比べて、航続距離を延長すべく消費抑制の度合いを減らすように制御してもよい。また、メータECU54は、加圧ポンプ23による加圧実行中であることを示す情報を運転者に提示すべくユーザインターフェース67に表示させてもよい。
【0043】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係る内燃機関システム110のブロック図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図4に示すように、内燃機関システム110は、第1実施形態の補助タンク24の代わりとして、アキュムレータ124を備える。燃料ガス配管125は、主供給配管30に接続された主加圧配管133を備える。アキュムレータ124は、加圧ポンプで加圧された水素ガスの圧力エネルギーを蓄圧する。
【0044】
主加圧配管133には、加圧ポンプ23が配置されている。アキュムレータ124は、加圧ポンプ23の下流側に接続されている。即ち、アキュムレータ124は、主加圧配管133における加圧ポンプ23の下流側の部分に接続されている。アキュムレータ124には、アキュムレータ124の内圧を検出するアキュムレータ圧力センサ129が設けられている。
【0045】
主加圧配管133には、アキュムレータ124の下流側において逆止弁145が配置されている。逆止弁145は、主加圧配管133から主供給配管30に向かう流れを許容し、その逆の流れを阻止する。主加圧配管133には、加圧ポンプ23の上流側において逆止弁146が配置されている。逆止弁146は、第1燃料タンク開閉弁41又は第1切替弁43から加圧ポンプ23に向かう流れを許容し且つその逆の流れを阻止する。なお、逆止弁146は、省略されてもよい。
【0046】
図5は、図4のシステムの制御を説明するフローチャートである。以下、図4の構成を参照しながら図5の流れに沿って説明する。図5のステップS1,S2は、図2のステップS1,S2と同じであるため説明を省略する。内燃機関システム110では、補助タンク開閉弁45が無いことにより補助タンク開閉弁45の制御は無いが、それ以外について図5のステップS3は図2のステップS3と同じである。
【0047】
燃料ECU150は、アキュムレータ圧力センサ129の検出信号に基づいて、アキュムレータ124の内圧が所定の上限値H以上であるか否かを判定する(ステップS11)。上限値Hは、例えば、アキュムレータ124の耐圧限度又はその近傍の値に設定される。アキュムレータ124の内圧が上限値H未満であれば(ステップS11:N)、燃料ECU150は、ステップS1に戻る。即ち、第2燃料タンク22からの水素ガスが加圧ポンプ23によってアキュムレータ124に蓄圧され続ける。アキュムレータ124の内圧が上限値H以上であれば(ステップS11:Y)、燃料ECU50は、クラッチ39を切断する(ステップS12)。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0048】
アキュムレータ124を用いることで、減圧弁47よりも上流側の水素ガスの圧力変動を抑えやすく、急加速操作時など、水素ガスの急な消費が生じたとしても、圧力不足による燃料供給不足を防ぎやすくできる。また、アキュムレータ124を用いることで、加圧ポンプ23による吐出圧の変動を抑制することができ、選定する加圧ポンプ23の選択肢を増やしやすい。たとえば、アキュムレータ124を用いることで、往復動型の加圧ポンプ23によって生じる圧力脈動を抑えやすい。またアキュムレータ124に圧力エネルギーを蓄積することで、加圧ポンプ23によって単位時間あたりに要する水素加圧量を低減することができ、加圧ポンプ23の小型化を図りやすい。
【0049】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態に係る内燃機関システム210のブロック図である。なお、第1又は第2実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図6に示すように、内燃機関システム210では、内燃機関Eの代わりにアクチュエータMによって加圧ポンプ23が駆動される。アクチュエータMは、例えば、電気モータ又は油圧モータとし得る。
【0050】
主供給配管30において、主供給配管30に対して主加圧配管133の接続箇所よりも上流側には逆止弁245が配置されている。逆止弁245は、第1副供給配管31及び第2副供給配管32から減圧弁47に向かう流れを許容し且つその逆の流れを阻止する。なお、逆止弁245は、省略されてもよい。アキュムレータ224は、主供給配管30における減圧弁47の下流側の部分に接続されている。これにより、減圧弁47と内燃機関Eとの間の流路の脈動が抑制される。なお、逆止弁245と減圧弁47との間にアキュムレータ124が配置されてもよい。
【0051】
燃料ECU250は、第2燃料タンク22の内圧が下限値L未満であると判定すると、アクチュエータMを駆動させて第2燃料タンク22からの水素ガスを加圧ポンプ23に加圧する。燃料ECU250は、第1燃料タンク21の内圧が十分であるときには、アクチュエータMを停止させてもよい。なお、他の構成は前述した第1又は第2実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0052】
本実施形態では、内燃機関Eの駆動とは無関係に加圧ポンプ23を駆動することができる。これによって、たとえば内燃機関Eが駆動停止している間でも、水素の加圧を行うことができる。逆に、十分に水素ガスの圧力が高い場合には、加圧不要として加圧ポンプ23の駆動を停止させることができる。またアキュムレータ224が設けられることで、減圧弁47の上流側の圧力が増減したとしても、下流側への影響を抑えることができる。
【0053】
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態に係る内燃機関システム310のブロック図である。なお、第1~第3実施形態のいずれかと共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図7に示すように、内燃機関システム310では、第1副加圧配管334は、第1副供給配管31から独立して設けられ、第2副加圧配管335は、第2副供給配管32から独立して設けられている。
【0054】
第1副加圧配管334には、第1開閉弁343が配置され、第2副加圧配管335には、第2開閉弁344が配置されている。主供給配管30には、第1燃料タンク21及び第2燃料タンク22から減圧弁47に向けた流れを許容し、その逆の流れを阻止する逆止弁245が配置されている。なお、逆止弁245は省略されてもよい。
【0055】
燃料ECU350は、第1燃料タンク21及び第2燃料タンク22のうち内圧が低い方の第2燃料タンク22の内圧が下限値L未満であると判定すると、第2燃料タンク開閉弁42を閉じて且つ第2開閉弁344を開く。この際、燃料ECU350は、補助タンク開閉弁45を閉じるとともに、クラッチ39を係合状態にする。以上のようにして、内燃機関Eに駆動される加圧ポンプ23が第2燃料タンク22からの水素ガスを加圧し、その加圧された水素ガスが補助タンク24に充填される。なお、他の構成は前述した第1~第3実施形態のいずれかと同様であるため説明を省略する。本実施形態では、三方弁を用いることなく所望の流路を形成することができる。
【0056】
(第5実施形態)
図8は、第5実施形態に係る内燃機関システム410のブロック図である。なお、第1~第4実施形態のいずれかと共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図8に示すように、内燃機関システム410では、加圧ポンプ23が主供給配管30に配置されている。
【0057】
燃料ECU450は、第1燃料タンク21及び第2燃料タンク22の内圧が下限値Lより高いと判定すると、アクチュエータMを駆動せず加圧ポンプ23を空回りさせ、主供給配管30を流れる水素ガスに加圧ポンプ23を素通りさせる。
【0058】
燃料ECU450は、第1燃料タンク21及び第2燃料タンク22のうち内圧が低い方の第2燃料タンク22の内圧が下限値L未満であると判定すると、第1燃料タンク開閉弁41を閉じて且つ第2燃料タンク開閉弁42を開き、アクチュエータMを駆動して主供給配管30を流れる水素ガスを加圧ポンプ23により加圧する。
【0059】
なお、燃料ECU450は、第1燃料タンク開閉弁41及び第2燃料タンク開閉弁42の両方を開いた状態で主供給配管30を流れる水素ガスの圧力が下限値Lよりも低いと判定すると、アクチュエータMを駆動して主供給配管30を流れる水素ガスを加圧ポンプ23により加圧してもよい。主供給配管30を流れる水素ガスの圧力は、主供給配管30に設ける圧力センサにより検出されてもよいし、第1燃料タンク21及び第2燃料タンク22の各圧力と第1燃料タンク開閉弁41及び第2燃料タンク開閉弁42の開度から推定されてもよい。なお、他の構成は前述した第1~第4実施形態のいずれかと同様であるため説明を省略する。
【0060】
(第6実施形態)
図9は、第6実施形態に係る内燃機関システム510のブロック図である。なお、第1~第5実施形態のいずれかと共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図9に示すように、内燃機関システム510では、第1燃料タンク521及び第2燃料タンク522の水素ガス貯留空間の容積を変更可能に構成されている。例えば、第1燃料タンク521及び第2燃料タンク522は、それぞれピストン571,572を有する。
【0061】
第1燃料タンク521のピストン571は、第1燃料タンク521の内部空間を、水素ガス室F1と背圧室G1とに仕切っている。第2燃料タンク522のピストン572は、第2燃料タンク522の内部空間を、水素ガス室F2と背圧室G2とに仕切っている。背圧室G1及び背圧室G2は、流体配管576を介して流体供給源575に接続されている。即ち、ピストン571,572の夫々の変位によって水素ガス室F1,F2のそれぞれの容積が変更される。
【0062】
流体配管576には、加圧ポンプ23が配置されている。流体配管576は、加圧ポンプ23の下流側において背圧室G1及び背圧室G2のそれぞれに向けて分岐している。流体配管576のうち背圧室G1に向けた分岐部分には、第1開閉弁543が配置されている。流体配管576のうち背圧室G2に向けた分岐部分には、第2開閉弁544が配置されている。
【0063】
燃料ECU550は、第1燃料タンク圧力センサ27の検出信号に基づいて、第1燃料タンク521の水素ガス室F1の圧力が下限値L未満であると判定すると、クラッチ39を係合状態にするとともに第1開閉弁543を開く。これにより、加圧ポンプ23で加圧された流体が背圧室G1に流入してピストン571が動き、水素ガス室F1の圧力が高められる。これは、第2燃料タンク522についても同様である。なお、他の構成は前述した第1~第5実施形態のいずれかと同様であるため説明を省略する。
【0064】
(第7実施形態)
図10は、第7実施形態に係る内燃機関システム610のブロック図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図10に示すように、第1燃料タンク21及び第2燃料タンク22は、互いに連通配管677を介して接続されている。
【0065】
燃料ECU650は、第2燃料タンク圧力センサ28の検出信号に基づいて、第2燃料タンク22の内圧が下限値L未満であると判定すると、クラッチ39を係合する。これにより、第2燃料タンク22から連通配管677に流出した水素ガスが加圧され、その加圧された水素ガスが第1燃料タンク21に供給される。なお、他の構成は前述した第1~第6実施形態のいずれかと同様であるため説明を省略する。
【0066】
なお、本開示の技術は、前述した実施形態に限定されるものではない。内燃機関Eは、燃料ガスをシリンダ内に噴射する直噴エンジンであってもよいが、燃料ガスを吸気ポート噴射するポート噴射型エンジンでもよい。内燃機関Eは、過給機によって空気を圧縮してシリンダ内に供給する過給エンジンであってもよい。内燃機関Eは、過給直噴エンジンの場合には、非過給エンジンに比べてさらに高い噴射圧の水素ガスが供給される必要がある。
【0067】
例えば、水素ガス消費源は、内燃機関Eの代わりに、触媒を介した燃料ガスと酸素との化学反応によって電力を発生させる燃料電池であってもよい。水素ガスの代わりに、燃焼可能な他の種類の燃料ガスが用いられてもよい。燃料ガスは、炭化水素燃料ガス、具体的には、メタンガス、プロパンガス、又はアンモニアガスが適用されてもよい。燃焼による二酸化炭素の抑制の観点から、内燃機関E用の燃料ガスとして水素ガスを用いることが好ましい。
【0068】
内燃機関システムは、2つの燃料タンクを備える代わりに、1つのみ又は3つ以上の燃料タンクを備えてもよい。複数のタンクが同じ構造に構成されることで、部品種類を削減することができる。また複数のタンクは、構造が異なるタンクであってもよい。たとえば加圧に適した構造のタンクと、貯留に適した構造のタンクの2種類のタンクが用いられてもよい。
【0069】
実施形態で記載された流体回路は、適宜変更が可能である。例えば補助タンクやアキュムレータが設けられていない実施形態が採用されてもよい。上述した通り、加圧ポンプ23は、内燃機関Eの発生するエネルギーを用いて駆動されてもよい。また加圧ポンプ23は、内燃機関Eとは別の駆動源による動力で駆動する構造であってもよい。たとえば内燃機関Eとは別に、電気モータによって加圧ポンプ23が駆動される実施形態が採用されてもよい。
【0070】
実施形態の構成にかかわらず、加圧された水素ガスの圧力を所定値以下とするために、リリーフ弁99とクラッチ39との両方が設けられもよいし、リリーフ弁99とクラッチ39のいずれか一方のみが設けられてもよい。第1燃料タンク開閉弁41、第2燃料タンク開閉弁42、及び補助タンク開閉弁45は、タンク21,22,24の出口ポートに配置されるとしたが、出口ポートに代えて、タンクの出口ポートよりも下流側の流路に配置されてもよい。たとえば各燃料タンク開閉弁41,42は、対応するタンク21,22の出口ポートと、対応する切替弁43,44との間の位置に設けられてもよい。補助タンク開閉弁45は、補助タンク24の出口ポートと合流接続位置Kとの間の位置に設けられていてもよい。
【0071】
切替弁43,44の各々に替えて、同様の機能を果たすように二つの開閉弁を用いてもよい。出口ポートに補助タンク開閉弁45を設けるのに加えて入口ポートにも開閉弁を設けてもよい。これによって、補助タンク24内の水素ガスの圧力が高圧になった状態で、その入口ポートの通路を閉じることができる。これによって補助タンク24の入口ポート及び出口ポートの両方を閉じることで、補助タンク24からの水素ガスの逆流を防ぐことができる。また逆流を防ぐために、補助タンク開閉弁45に代えて、逆流防止用のチェック弁が設けられてもよい。この場合、チェック弁は、加圧ポンプ23と補助タンク24との間、補助タンク24と合流接続箇所Kとの間、第1接続箇所P1と合流接続箇所Kとの間などに配置可能である。
【0072】
これらの流路は、部分的に共用される部分が形成されてもいなくてもよい。燃料タンク21,22の水素ガスの圧力が下限値未満でなくも当該水素ガスを加圧ポンプによって加圧してもよい。加圧ポンプ23は、内燃機関Eが発生した機械エネルギーにより駆動される代わりに、内燃機関Eが発生した機械エネルギーを変換したエネルギーを使って駆動されてもよい。例えば、アクチュエータMを駆動するエネルギーは、内燃機関Eが発生した機械エネルギーを変換した電気エネルギー又は油圧エネルギーによって駆動されてもよい。すなわち、加圧ポンプ23の駆動源として内燃機関Eによって発電された電気エネルギーによって駆動するモータが用いられてもよい。また加圧ポンプ23は、内燃機関Eによって生成された流体エネルギーによって駆動される流体ポンプであってもよい。加圧ポンプ23の駆動源として内燃機関E又はアクチュエータMを例示したが、前述したいずれの実施形態においても内燃機関E及びアクチュエータMは互いに代替可能である。前述した各内燃機関システムは、乗物に搭載されるものに限られず、工場等に設置される定置式の内燃機関システムであってもよい。
【0073】
クラッチ39を配置することで、加圧が不要な状況であれば、クラッチ39を制御して、回転動力が加圧ポンプ23に伝達されることを遮断することができる。これによって加圧不要な状況での加圧ポンプ23の駆動によるエネルギーロスを抑制することができる。動力伝達構造38によって動力が伝達されることで、加圧ポンプ23と内燃機関Eとを互いに離した位置に配置することができる。これによって加圧ポンプ23は、内燃機関Eの燃焼に起因する熱の影響を受けにくい位置に配置できる。また加圧ポンプ23の配置の自由度を高めることができる。
【0074】
逆に、動力伝達構造38を用いずに、回転部材の動力が直接的に加圧ポンプ23に与えられてもよい。それによれば、部品点数を低減できるとともに、動力伝達にかかるエネルギーロスを低減でき、加圧ポンプ23と内燃機関Eとを集約した構造にすることができる。たとえば内燃機関Eのクランク軸に、加圧ポンプ23の入力軸を直接的に接続してもよい。このように加圧ポンプ23を駆動させることで、内燃機関Eと加圧ポンプ23との間に動力変換構造を設ける場合に比べ、構造を簡易化することができる。また内燃機関Eの吸排気バルブを駆動させるためのカムシャフトに加圧ポンプ23を駆動するためのカムを設けてもよい。このように内燃機関Eに備わる回転運動を往復運動に変換する変換構造を利用してもよい。
【0075】
加圧ポンプ23で加圧された水素ガスを直接的に内燃機関Eに供給する場合、補助タンク24及びアキュムレータ124が設けられることで、加圧ポンプ23による加圧に起因する圧力脈動を低減でき、圧力変動が抑えられた水素ガスを内燃機関Eに供給することができる。補助タンク24は、燃料タンク21,22よりも小型にすることで、加圧ポンプ23に近接した位置に配置しやすい。補助タンク24は、水素ガスを一時的に貯留可能な大きさであればよく、燃料タンク21,22よりも小型にすることで、内燃機関システム全体として大型化を防ぐことができる。補助タンク24は、燃料ガス配管25から着脱可能で、且つ、燃料タンク21,22と交換できる接続インターフェース構造を有してもよい。これによって加圧した水素ガスを補助タンク24に充填した状態で、燃料タンク21,22のいずれかと交換することができる。また補助タンク24は、燃料タンク21,22と同一形状に形成されてもよい。これによって弁システム26として部品点数を低減することができる。
【0076】
前述した構成によれば、低圧の燃料ガスを加圧することで低圧の水素ガスを有効利用でき、水素ガス消費源を長く作動できる。たとえば、高圧の水素ガスを水素ガス消費源に供給する間に、低圧の水素ガスを加圧することで、加圧期間においても水素ガスを消費源に供給することができる。これによって加圧による供給遅れを防いだり、連続して燃料供給できる期間を延長したりしやすい。
【0077】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよく、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【0078】
本明細書で開示する制御要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット若しくは手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、又は、列挙された機能を実行するようにプログラム若しくは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段若しくはユニットは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0079】
[項目1]
内燃機関と、
燃料ガスを圧縮状態で貯留する少なくとも1つの燃料タンクと、
前記燃料タンクを前記内燃機関に接続する燃料ガス配管と、
前記燃料タンク内及び前記燃料ガス配管内の前記燃料ガスを加圧する加圧ポンプと、を備える、内燃機関システム。
【0080】
この構成によれば、燃料タンクの燃料ガスの圧力が低下しても、その燃料ガスを加圧ポンプにより加圧できる。よって、燃料タンクの内圧低下時にも残っている燃料ガスを内燃機関に向けて供給することができる。これによって燃料ガスの供給量を増やすことができる。このように燃料タンク内に貯留される燃料ガスのうちで、内燃機関での燃焼に費やされる燃料ガスを増やすことができる。これによって、たとえば内燃機関の稼働期間を増やしたり、燃料ガスの補給頻度を少なくしたりすることができ、利便性を向上することができる。本実施形態では、燃料噴射圧が高圧となる直噴エンジンや過給エンジンに好適に用いることができる。
【0081】
[項目2]
前記燃料ガス配管に配置されて、前記燃料ガスの圧力を所定値以下に減圧する減圧弁を更に備え、前記加圧ポンプは、前記減圧弁の上流側に位置する燃料ガスを加圧する、項目1に記載の内燃機関システム。
【0082】
この構成によれば、減圧弁を通過した燃料ガスが内燃機関に供給されることで、燃焼に適した圧力の燃料ガスを内燃機関に供給することができる。また、加圧ポンプが減圧弁の上流側に位置する燃料ガスを加圧し、減圧弁が燃料ガスの圧力調整を担う。加圧ポンプは、所定値を超えるように燃料ガスを加圧すればよく、細かな圧力調節を不要とすることができる。したがって、加圧ポンプの制御を簡易にすることができる。
【0083】
[項目3]
前記加圧ポンプは、前記内燃機関が発生したエネルギーを利用して駆動される、項目1又は2に記載の内燃機関システム。
【0084】
この構成によれば、加圧ポンプの駆動には、内燃機関が発生したエネルギーが利用されるので、システムを簡素化できる。たとえば、加圧ポンプする駆動ための駆動源を別に設ける場合に比べて、システムの部品点数を低減することができる。
【0085】
[項目4]
前記加圧ポンプは、前記内燃機関により機械的に駆動される、項目3に記載の内燃機関システム。
【0086】
この構成によれば、簡素な構成でエネルギー効率を高めることができる。具体的には、内燃機関によって直接出力される機械エネルギーによって加圧ポンプが駆動される。これによって、内燃機関によって出力された機械エネルギーを電気エネルギーや流体エネルギーに変換して、加圧ポンプを駆動する場合に比べて、エネルギー変換時に失われるエネルギーがなく効率を高まるとともに、変換装置を不要とすることができる。また例えば、内燃機関の駆動に伴って回転駆動される回転部品から直接的に加圧ポンプに回転動力が入力されることで、さらに簡素な構成を実現できる。
【0087】
[項目5]
前記燃料ガス配管に接続されたアキュムレータを更に備える、項目1乃至4のいずれかに記載の内燃機関システム。
【0088】
この構成によれば、加圧ポンプの大型化を防止することができる。具体的には、加圧ポンプによって加圧された燃料ガスをアキュムレータに蓄えることができる。これによって、内燃機関によって燃料ガスが消費された場合には、アキュムレータに蓄えられた燃料ガスが放出されることで、加圧ポンプの負担を減らすことができる。このようにして加圧ポンプに要求される能力を低くできることで、加圧ポンプの大型化を防ぐことができる。
【0089】
[項目6]
前記燃料ガス配管は、前記燃料タンクから前記内燃機関に向かう内燃機関向け流路と、前記燃料タンクから前記加圧ポンプに向かうポンプ向け流路と、を含み、
前記内燃機関システムは、
前記燃料タンクが前記内燃機関向け流路に連通した状態と、前記燃料タンクが前記ポンプ向け流路に連通した状態と、の間で動作可能な弁システムと、
前記弁システムを制御するように構成された処理回路と、を更に備える、項目1乃至5のいずれかに記載の内燃機関システム。
【0090】
この構成によれば、燃料タンクの燃料ガスが内燃機関に供給される状態と、燃料タンクの燃料ガスが加圧ポンプに供給される状態と、を互いに切り替えできる。これによって、状況に応じて燃料ガスの供給および加圧を行うことができる。たとえば燃料タンクの燃料ガスの圧力が十分高い場合には、加圧ポンプを用いずに、内燃機関向け流路を用いて燃料ガスを内燃機関に供給することができる。また加圧ポンプを用いてポンプ向け流路の燃料ガスを加圧することで、内燃機関への供給に適した圧力の燃料ガスを提供できる。
【0091】
[項目7]
前記少なくとも1つの燃料タンクは、第1燃料タンク及び第2燃料タンクを含み、
前記処理回路は、
前記第1燃料タンク及び前記第2燃料タンクのいずれか内圧が低いかを判定し、
前記第1燃料タンク及び前記第2燃料タンクのうち内圧が低い方のタンクから供給される燃料ガスを前記加圧ポンプに導く状態に前記弁システムを制御するように構成されている、項目6に記載の内燃機関システム。
【0092】
この構成によれば、低圧の燃料タンクの燃料ガスを加圧することで、内燃機関の燃料として有効利用できる。たとえば、内圧が高い燃料タンクを用いて内燃機関への燃料ガスの供給を図りつつ、並列的に、内圧が低い燃料タンクの燃焼ガスの圧力を高めるように構成してもよい。これによって内圧が低い燃料ガスを供給に適した圧力に加圧している中であっても、内燃機関Eに燃料供給することができる。これによって加圧による供給遅れを防いだり、連続して燃料供給できる期間を延長したりしやすい。また、複数の燃料タンクから1つの加圧ポンプに燃料ガスを供給可能であることで、複数の燃料タンクごとに個別に加圧ポンプを設ける場合に比べ、部品点数を削減できる。
【0093】
[項目8]
前記処理回路は、
前記燃料タンクの内圧が所定の下限値未満であるか否かを判定し、
前記内圧が所定の下限値未満である前記燃料タンクの燃料ガスを前記加圧ポンプに導く状態に前記弁システムを制御するように構成されている、項目6又は7に記載の内燃機関システム。
【0094】
この構成によれば、内圧が高い燃料ガスが加圧ポンプによって加圧されることが防がれて、加圧ポンプの動作効率を良好にできる。燃料タンクの燃料ガスを内燃機関での燃焼に効率良く利用できる。
【0095】
[項目9]
前記燃料ガスは、水素ガスである、項目1乃至7のいずれかに記載の内燃機関システム。
【0096】
この構成によれば、炭素系燃料に比べて水素ガスは、内燃機関で同じ出力を得るために必要な燃料量が大きい。言い換えると、水素ガスは、炭素系燃料に比べてタンク内の利用時間当たりの消費量が大きい。上述したシステムによれば、燃料タンク内の燃料を内燃機関に有効に供給できる量を増やすことができる。これによって比較的消費量が多くなりやすい水素ガスの有効利用の効果を顕著にできる。
【0097】
[項目10]
項目1乃至9のいずれかに記載の内燃機関システムを備え、前記内燃機関システムで発生した駆動力により移動する、乗物。
【0098】
この構成によれば、乗物の移動可能距離を増やすことができる。具体的には、燃料タンクに燃料ガスが圧縮充填されてから再充填されるまでの間において、燃料タンク内の燃料ガスを内燃機関に供給できる量を増やすことができる。このように内燃機関への燃料ガスの供給量の増加に伴って、乗物の航続距離を増やすことができる。たとえば燃料ガスを再充填可能な施設が疎らである場合は、当該効果をさらに顕著にできる。
【0099】
[項目11]
前記内燃機関システムは、
前記燃料タンクと前記加圧ポンプと前記燃料ガス配管との間の流路を切り替える弁システムと、
前記弁システムを制御するように構成された第1処理回路と、を更に備え、
前記乗物は、前記弁システムとは異なる装置を制御するように構成された第2処理回路を更に備え、
前記第1処理回路及び前記第2処理回路は、互いに情報通信可能に接続されている、項目10に記載の乗物。
【0100】
この構成によれば、第1及び第2処理回路の一方の情報に基づいて第1及び第2処理回路の他方の処理を変化させることができ、乗物の高度な制御を実現できる。たとえば異なる装置にかかる情報に基づいて、弁システムの流路を制御することで、異なる装置の状況に応じた燃料ガスの圧力制御を行うことができる。これによって例えば燃料ガスの加圧タイミングや加圧量を適切に保ちやすい。また弁システムにかかる情報に基づいて、異なる装置を制御することで、弁システムに応じて乗物の挙動制御を行うことができる。これによって例えば燃料ガスの圧力状態に応じて、乗物の挙動を適切に保ちやすい。
【0101】
[項目12]
2つの流路のうち圧力が高い方の流路の水素ガスを水素ガス消費源に供給することと、
前記2つの流路のうち圧力が低い方の流路の水素ガスを加圧ポンプで加圧することと、
前記加圧された水素ガスを前記水素ガス消費源に供給することと、を含む、水素ガス供給方法。
【0102】
[項目13]
燃料タンクを内燃機関に接続する燃料ガス配管と、
前記燃料タンク内又は前記燃料ガス配管内の前記燃料ガスを加圧する加圧ポンプと、を備える、燃料供給装置。
【0103】
[項目14]
前記燃料タンクを加圧ポンプの吸込口に接続し、前記加圧ポンプの吐出口を前記内燃機関に接続する第1流路と、
前記加圧ポンプを介さずに前記燃料タンクを前記内燃機関に接続する第2流路と、
前記燃料タンクが前記第1流路に連通した状態と、前記燃料タンクが前記第2流路に連通した状態と、を相互に切り替える弁システムと、を備える、燃料供給回路システム。
【符号の説明】
【0104】
1 乗物
10,110,210,310,410,510,610 内燃機関システム
21,521 第1燃料タンク
22,522 第2燃料タンク
23 加圧ポンプ
24 補助タンク
25,125 燃料ガス配管
26 弁システム
47 減圧弁
50,150,250,350,450,550,650 燃料ECU(第1処理回路)
51 エンジンECU(第2処理回路)
52 乗物ECU(第2処理回路)
53 ナビゲーションECU(第2処理回路)
61 スロットル装置(弁システムとは異なる装置)
62 燃料インジェクタ(弁システムとは異なる装置)
63 点火装置(弁システムとは異なる装置)
64 ブレーキ装置(弁システムとは異なる装置)
65 操舵装置(弁システムとは異なる装置)
66 ユーザインターフェース(弁システムとは異なる装置)
124 アキュムレータ
A1 第1内燃機関向け流路
A2 第2内燃機関向け流路
B1 第1ポンプ向け流路
B2 第2ポンプ向け流路
E 内燃機関
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10