(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181631
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】黒色樹脂組成物、および成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20231218BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231218BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
C08L23/00
C08K3/013
B29C45/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094866
(22)【出願日】2022-06-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大橋 竜太
(72)【発明者】
【氏名】草間 大輔
【テーマコード(参考)】
4F206
4J002
【Fターム(参考)】
4F206AA03
4F206AB12
4F206AH57
4F206AR12
4F206JA07
4J002BB031
4J002BB121
4J002EE056
4J002EQ016
4J002EU026
4J002EU086
4J002EU236
4J002FD096
4J002GG01
(57)【要約】
【課題】
すなわち本発明は、ポリオレフィン樹脂を複数の顔料で着色した際、可視光領域の遮蔽性に優れ、明度が低く、意匠性に優れるだけでなく、近赤外領域で高い透過率を示しながら、寸法安定性および開栓トルクの上昇を抑制した成形体を形成可能な黒色樹脂組成物、および黒色樹脂組成物から形成されてなる成形体の提供すること。
【解決手段】
ポリオレフィン樹脂(A)、および顔料(B)を含む黒色樹脂組成物であって、射出成形機により、黒色樹脂組成物から成形してなる縦150mm、横120mm、厚み2mmの成形体は、波長380nm-800nmの平均透過率が1%以下、かつ波長800nm-2500nmの平均透過率が25%以上であり、式(1)で表されるΔMDSが0.35%以下、かつ式(2)で表されるΔTDSが0.35%以下を満たす黒色樹脂組成物により解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂(A)、および顔料(B)を含む黒色樹脂組成物であって、
射出成形機により、黒色樹脂組成物から成形してなる縦150mm、横120mm、厚み2mmの成形体は、波長380nm-800nmの平均透過率が1%以下、かつ波長800nm-2500nmの平均透過率が25%以上であり、
下記式(1)で表されるΔMDSが0.35%以下、かつ下記式(2)で表されるΔTDSが0.35%以下を満たすことを特徴とする黒色樹脂組成物。
式(1) ΔMDS=|X1-X0|
式(2) ΔTDS=|Y1-Y0|
(なお、X1、およびY1はそれぞれ、射出成形機により、黒色樹脂組成物を成形してなる、縦150mm、横120mm、厚み2mmの成形体を、23℃、50%RHに24時間静置した後の、射出方向と同じ方向(MD方向)における収縮率、および射出方向と直角方向(TD方向)における収縮率であり、
X0、およびY0はそれぞれ、射出成形機により、ポリオレフィン樹脂(A)を成形してなる、縦150mm、横120mm、厚み2mmの成形体を、23℃、50%RHに24時間静置した後の、射出方向と同じ方向(MD方向)における収縮率、および射出方向と直角方向(TD方向)における収縮率である。)
【請求項2】
顔料(B)は、青色顔料と、赤色顔料および紫色顔料の少なくともいずれかを含み、
前記赤色顔料および紫色顔料は、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド254、およびC.I.ピグメントバイオレット19からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1記載の黒色樹脂組成物。
【請求項3】
前記赤色顔料および紫色顔料100質量部に対し、青色顔料を100~300質量部含む、請求項2記載の黒色樹脂組成物。
【請求項4】
顔料(B)の総量を基準として、前記赤色顔料および紫色顔料の含有率は、20~40質量%である、請求項2記載の黒色樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項記載の黒色樹脂組成物から形成してなる成形体。
【請求項6】
請求項5記載の成形体であるキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色樹脂組成物、およびそれから形成してなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは成形加工が容易なことから電気・電子機器部品、自動車部品、医療用部品、食品容器などの幅広い分野で使用されており、装飾性を高めるためにプラスチック成形体の着色が盛んに行われている。特に、キャップやボトルにおいては、商品の差別化のための多色化が進んでおり、市場には様々な色や意匠性が施された成形体が流通している。
【0003】
さらに近年、これらの成形体は、資源の有効利用、引いては地球環境の保全の観点から、廃棄されるプラスチックのリサイクルの要請がますます強くなってきている。プラスチックのリサイクルをするために、再生プラスチックの特性低下を避けるため、回収した廃プラスチックに異なる材質の廃プラスチックが混入しないようにポリオレフィンやポリエステルなど樹脂種の分別が求められている。廃プラスチックの分別方法としては、IR(赤外線)を用いた分別方法が知られている。
【0004】
このとき、カーボンブラックで着色された黒色成形体は赤外線を透過しないため、IRを用いた樹脂種の識別が難しい。そのため、IRを透過して機械識別性を有する、カーボンブラックを使用しない黒色樹脂組成物の開発が求められている。
このように、カーボンブラックを使用しないで、複数の有機顔料により黒色樹脂組成物とする方法としては、特許文献1、2等の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-214244号公報
【特許文献2】特開2014-63091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらのような従来の方法では、キャップやボトルなどで使用されるポリオレフィン樹脂への着色の際に、成形体に反りや収縮等が発生してしまうという問題がある。そのため、複数の顔料を用いると、寸法の変化をより厳密に制御し、高い精度での寸法安定性を充分に達成することができない。それにより、例えば飲料用のキャップであると、経時によりキャップが収縮し、開栓時のトルクが上がることで、高齢者や女性などが開けられないという問題が起こる。また、顔料の影響を少なくするために顔料の添加量を少なくしてしまうと、着色力が落ちてしまうため求めている意匠性が得られないという問題がある。
【0007】
すなわち本発明は、ポリオレフィン樹脂を複数の顔料で着色した際、可視光領域の遮蔽性に優れ、明度が低く、意匠性に優れるだけでなく、近赤外領域で高い透過率を示しながら、寸法安定性および開栓トルクの上昇を抑制した成形体を形成可能な黒色樹脂組成物、および黒色樹脂組成物から形成されてなる成形体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の黒色樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(A)、および顔料(B)を含み、射出成形機により、黒色樹脂組成物から成形してなる縦150mm、横120mm、厚み2mmの成形体は、波長380nm-800nmの平均透過率が1%以下、かつ波長800nm-2500nmの平均透過率が25%以上であり、下記式(1)で表されるΔMDSが0.35%以下、かつ下記式(2)で表されるΔTDSが0.35%以下を満たす。
式(1) ΔMDS=|X1-X0|
式(2) ΔTDS=|Y1-Y0|
(なお、X1、およびY1はそれぞれ、射出成形機により、黒色樹脂組成物を成形してなる、縦150mm、横120mm、厚み2mmの成形体を、23℃、50%RHに24時間静置した後の、射出方向と同じ方向(MD方向)における収縮率、および射出方向と直角方向(TD方向)における収縮率であり、
X0、およびY0はそれぞれ、射出成形機により、ポリオレフィン樹脂(A)を成形してなる、縦150mm、横120mm、厚み2mmの成形体を、23℃、50%RHに24時間静置した後の、射出方向と同じ方向(MD方向)における収縮率、および射出方向と直角方向(TD方向)における収縮率である。)
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ポリオレフィン樹脂を複数の顔料で着色した際、近赤外領域で高い透過率を示しながら良好な意匠性を与え、寸法安定性および開栓トルクの上昇が抑制された成形体の形成が可能な黒色樹脂組成物、およびそれにより形成されてなる成形体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
なお、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
本明細書における「C.I.」はカラーインデックスを意味し、「RH」は相対湿度を意味する
【0011】
《黒色樹脂組成物》
本発明の黒色樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(A)、および顔料(B)を含み、射出成形機により、黒色樹脂組成物から成形してなる縦150mm、横120mm、厚み2mmの成形体が、波長380nm-800nmの平均透過率が1%以下、かつ波長800nm-2500nmの平均透過率が25%以上であり、下記式(1)で表されるΔMDSが0.35%以下、かつ下記式(2)で表されるΔTDSが0.35%以下を満たす。
式(1) ΔMDS=|X1-X0|
式(2) ΔTDS=|Y1-Y0|
【0012】
X1は、射出成形機により、黒色樹脂組成物を成形してなる、縦150mm、横120mm、厚み2mmの成形体を、23℃、50%RHに24時間静置した後の、射出方向と同じ方向(MD方向)における収縮率であり、Y1は射出方向と直角方向(TD方向)における収縮率である。
【0013】
X0は、射出成形機により、ポリオレフィン樹脂(A)を成形してなる、縦150mm、横120mm、厚み2mmの成形体を、23℃、50%RHに24時間静置した後の、射出方向と同じ方向(MD方向)における収縮率であり、Y0は射出方向と直角方向(TD方向)における収縮率である。
【0014】
なお、ポリオレフィン樹脂(A)が混合物である場合には、ポリオレフィン樹脂(A)中に含有する樹脂比率が最も多いポリオレフィン樹脂(A)のみの成形体を用いて、X0、Y0を求めることができ、含有する複数の樹脂比率が同じ場合には、最も収縮率が小さいポリオレフィン樹脂(A)を用いた成形体を基準として用いる。
【0015】
収縮率は、縦150mm、横120mm、厚み2mmのプレート状成形体を用いて、精密ノギスにて標線間距離を計測し、その値から、
収縮率[%]=実測長さ[mm]/標線間距離[mm]×100
により求められる。
【0016】
ΔMDS、およびΔTDSが0.35%以下であれば、顔料により着色することによる寸法の変化が制御された、高い精度での寸法安定性を維持した成形体であるといえる。
ΔMDSは、0.3%以下がより好ましく、0.2%以下であることがさらに好ましく、0%に近いほど好ましい。また、ΔTDSは、0.3%以下がより好ましく、0.2%以下であることが好ましく、0%に近いほど好ましい。
この範囲であれば、未着色の樹脂による成形体と同等の水準で収縮差を制御された成形体であるといえる。
【0017】
また、可視光領域である波長380nm-800nmの平均透過率は、1%以下であり、0.07%以下であることがより好ましく、0.06%以下であることがさらに好ましい。下限は実質的に0%が好ましい。
この範囲であると、より明度が低く、意匠性に優れた成形体とできる。
近赤外領域である波長800nm-2500nmの平均透過率は、25%以上であり、27%以上であることがより好ましく、28%以上であることがさらに好ましい。特に制限されないが、好ましくは、80%以下である。
この範囲であると、機械視認性により優れ、廃プラスチックの分別の精度を高くできる。
平均透過率は、射出成形機により、黒色樹脂組成物から成形してなる縦150mm、横120mm、厚み2mmの成形体を、分光光度計により測定することで求められる。
分光光度計としては、例えば、株式会社島津製作所製紫外可視分光光度計UV―3150を用いることができる。
【0018】
黒色樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(A)が溶融する温度で、顔料(B)とポリオレフィン樹脂(A)を混練することで得られる。黒色樹脂組成物の製造方法は、例えば、ポリオレフィン樹脂(A)と、顔料(B)を、更に必要に応じて各種添加剤を加え、ニーダー、ロールミル、スーパーミキサー、ハイスピードミキサー、ボールミル、サンドミル、アトライター、バンバリーミキサーのような回分式混練機、単軸押出機、二軸押出機、ローター型二軸混練機等で混合や溶融混練し、ペレット状、粉体状、顆粒状あるいはビーズ状の樹脂組成物とすることができる。混練力が強く、その後の成形加工が容易なことから、単軸押出機または二軸押出機にてペレット状とすることが好ましい。
【0019】
黒色樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(A)に顔料(B)を必要量配合し、そのまま成形に用いられるコンパウンドであってもよく、一旦高濃度に顔料(B)を含有するマスターバッチであり、希釈樹脂により希釈して、成形に用いてもよい。
【0020】
<ポリオレフィン樹脂(A)>
本発明におけるポリオレフィン樹脂(A)は、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィンモノマーの重合体であり、40~200℃の範囲に融点を示すブロック、またはランダムコポリマーであってもよく、バイポリマー、またはターポリマー等であっても構わない。具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、およびポリプロピレン樹脂(PP)のようなα-オレフィン類の重合体が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂(A)は、本発明による効果が得られやすいことから結晶性の高いHDPEまたはPPであることが好ましい。
なお、本明細書における融点は示差走査熱量計「DSC6200」(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて温度範囲:40~200℃、昇温速度:10℃/分の条件で測定した値である。
【0021】
一旦マスターバッチとする場合、ポリオレフィン樹脂(A)のMFR(メルトフローレート、溶融粘度ともいう)は、5~100g/10分が好ましく、10~60g/10分が更に好ましい。ポリオレフィン樹脂(A)のMFRが5g/10分以上であれば、マスターバッチを希釈樹脂に添加した際にマスターバッチが十分に分配され、成形体に色むら等の外観不良が発生することを、より抑制することができる。一方、MFRが100g/10分以下であれば、成形時に系全体の溶融粘度が下がり成形性に影響することを防止することが可能となる。マスターバッチに用いられるポリオレフィン樹脂(A)と希釈樹脂は、同じ種類のポリオレフィン樹脂であることが好ましい。例えば、希釈樹脂であるポリオレフィン樹脂(A)がHDPEの場合、マスターバッチ中のポリオレフィン樹脂(A)もHDPEであることが好ましい。
【0022】
黒色樹脂組成物がコンパウンドの場合は、ポリオレフィン樹脂(A)が高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)またはポリプロピレン樹脂(PP)であるときには、ポリオレフィン樹脂(A)のMFRは、5g/10分以下が好ましく、0.1~5g/10分が更に好ましい。ポリオレフィン樹脂(A)のMFRが上記範囲にあることによって成形性と寸法安定性を両立できる。
なお、本発明におけるMFRはJIS(日本工業規格)K-7210に従って測定した値である。
【0023】
ポリオレフィン樹脂(A)の具体例としては、ノバテックLL UJ580(LLDPE、MFR:20g/10分、日本ポリエチレン社製)、サンテックLD M2270(LDPE、MFR:7g/10分、旭化成社製)、サンテックHD J240(HDPE、MFR:5g/10分、旭化成社製)、サンテックHD J300(HDPE、MFR:42g/10分)、プライムポリプロJ229E(PP、MFR:50g/10分、プライムポリマー社製)等が挙げられる。
【0024】
樹脂組成物100質量%中、ポリオレフィン樹脂(A)の含有率は60質量%以上100質量%以下であることが好ましく、90質量%以上がより好ましい。ポリオレフィン樹脂(A)の配合量が60質量%以上であれば、成形体の強度を充分に保ちやすい。
【0025】
<顔料(B)>
顔料(B)としては、有機顔料、または無機顔料を特に制限なく用いることができ、青色顔料、赤色顔料、黄色顔料、緑色顔料、紫色顔料等を複数組み合わせることで、黒色顔料組成物とすることができる。
中でも、明度が低く、黒色成形体の意匠性の観点から、好ましくは、青色顔料と、赤色顔料および紫色顔料の少なくともいずれかを含むことが好ましく、さらに黄色顔料を含むことがより好ましい。赤色顔料および紫色顔料では、赤色顔料を含むことがより好ましい。
また、前記赤色顔料および紫色顔料は、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド254、およびC.I.ピグメントバイオレット19からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことが、寸法安定性の観点から好ましい。
【0026】
有機顔料としては、例えば、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ系顔料(例えば、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等)、フタロシアニン系顔料(例えば、銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等)、アントラキノン系顔料(例えば、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等)、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、又は金属錯体系顔料等が挙げられる。
これらのなかでも、寸法安定性の観点から、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、が好ましく、ジケトピロロピロール系顔料、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料、キナクリドン系顔料がより好ましい。
【0027】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、黒色酸化鉄、カーボンブラック、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、モリブデートオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット、又はコバルトバイオレット等が挙げられる。
【0028】
顔料(B)としては、近赤外領域における透過性の観点から、カーボンブラックを含有しないことが好ましく、顔料(B)100質量%中、カーボンブラックの含有率は、0.05質量%以下であることが好ましい。
【0029】
顔料(B)の好ましい組み合わせは、可視光の遮蔽性と、近赤外の透過性から、フタロシアニン系青色顔料またはコバルト系青色顔料と、キナクリドン赤色顔料、ジケトピロロピロール系赤色顔料、およびキナクリドン系紫色顔料の少なくともいずれかを含むことが好ましく、さらにモノアゾ系黄色顔料、またはジスアゾ系黄色顔料を含むことがより好ましい。
【0030】
顔料(B)のより好ましい組み合わせは、モノアゾ系黄色顔料、キナクリドン系赤色顔料、およびフタロシアニン系青色顔料と、モノアゾ系黄色顔料、ジケトピロロピロール系赤色顔料、およびフタロシアニン系青色顔料と、モノアゾ系黄色顔料、キナクリドン系紫色顔料、およびフタロシアニン系青色顔料と、ジスアゾ系黄色顔料、キナクリドン系赤色顔料、およびフタロシアニン系青色顔料と、ジスアゾ系黄色顔料、ジケトピロロピロール系赤色顔料、およびフタロシアニン系青色顔料と、ジスアゾ系黄色顔料、キナクリドン系紫色顔料、およびフタロシアニン系青色顔料と、モノアゾ系黄色顔料、キナクリドン系赤色顔料、およびコバルトブルーと、モノアゾ系黄色顔料、ジケトピロロピロール系赤色顔料、コバルトブルー、モノアゾ系黄色顔料、キナクリドン系紫色顔料、およびコバルトブルーと、ジスアゾ系黄色顔料、キナクリドン系赤色顔料、およびコバルトブルーと、ジスアゾ系黄色顔料、ジケトピロロピロール系赤色顔料、およびコバルトブルーと、ジスアゾ系黄色顔料、キナクリドン系紫色顔料、およびコバルトブルーとの組み合わせが収縮率の点で好ましい。
【0031】
さらに透過率の観点からは、顔料(B)として、モノアゾ系黄色顔料、キナクリドン系赤色顔料、およびフタロシアニン系青色顔料と、モノアゾ系黄色顔料、ジケトピロロピロール系赤色顔料、およびフタロシアニン系青色顔料と、モノアゾ系黄色顔料、キナクリドン系紫色顔料、およびフタロシアニン系青色顔料と、ジスアゾ系黄色顔料、キナクリドン系赤色顔料、およびフタロシアニン系青色顔料と、ジスアゾ系黄色顔料、ジケトピロロピロール系赤色顔料、およびフタロシアニン系青色顔料と、ジスアゾ系黄色顔料、キナクリドン系紫色顔料、およびフタロシアニン系青色顔料との組み合わせがより好ましい。
【0032】
[青色顔料]
青色顔料としては、
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3等のフタロシアニン青色顔料、
C.I.ピグメントブルー28等のコバルト系青色顔料、
C.I.ピグメントブルー29等の群青顔料、
等が挙げられる。
中でも、寸法安定性の観点からフタロシアニン系青色顔料またはコバルト系青色顔料が好ましい。更に近赤外の透過率の観点からフタロシアニン系青色顔料がより好ましい。中でも、C.I.ピグメントブルー15:3が更に好ましい。
【0033】
市販品としては、C.I.ピグメントブルー15では、ファーストゲンブルーAR-7(DIC社製)、ピグメントブルー15:1では、リオノールブルーPOBS(トーヨーカラー社製)、ピグメントブルー15:3では、リオノールブルーFG-7350(トーヨーカラー社製)、C.I.ピグメントブルー28では、シコパールブルーK6210(BASF社製)、C.I.ピグメントブルー29では、グンジョウ1500(レジノカラー社製)等が挙げられる。
【0034】
[赤色顔料]
赤色顔料としては、
C.I.ピグメントレッド122、207、209等のキナクリドン赤色顔料、
C.I.ピグメントレッド254、264等のジケトピロロピロール系赤色顔料、
C.I.ピグメントレッド149、178等のペリレン系赤色顔料、
C.I.ピグメントレッド48:2、144、151、166、208、221等のアゾ系赤色顔料、
C.I.ピグメントレッド177等のアンスラキノン系赤色顔料、
C.I.ピグメントレッド38等のピラゾロン系赤色顔料
等が挙げられる。
中でも寸法安定性の観点からキナクリドン赤色顔料またはジケトピロロピロール系赤色顔料が好ましい。中でも、C.I.ピグメントレッド122、またはC.I.ピグメントレッド254がより好ましい。
【0035】
市販品としては、C.I.ピグメントレッド122では、TCR12203 レッド(トラストケム社製)、C.I.ピグメントレッド207では、シンカシャスカーレットL3080(DIC社製)、C.I.ピグメントレッド209では、ホスタパームレッドEGトランスペアレント(クラリアント社製)、C.I.ピグメントレッド149では、シンカシャスカーレットL3080(DIC社製)、C.I.ピグメントレッド178では、パリオゲンレッドK3911(BASF社製)、C.I.ピグメントレッド48:2では、リオノールレッドDWG(トーヨーカラー社製)、C.I.ピグメントレッド144では、クロモフタルレッドD3635(BASF社製)、C.I.ピグメントレッド151では、レッド202(有本化学工業社製)、C.I.ピグメントレッド166では、クロモフタルスカーレットD3540(BASF社製)、C.I.ピグメントレッド208では、シムラ―ファーストレッド4598(DIC社製)、C.I.ピグメントレッド221では、クロモフタルレッドK3830(BASF社製)、C.I.ピグメントレッド177では、ファーストゲンスーパーレッドATY(クラリアント社製)、C.I.ピグメントレッド38では、グラフトールレッドHFG(クラリアント社製)、C.I.ピグメントレッド254では、クロモフタルレッド2028(BASF社製)、C.I.ピグメントレッド264では、イルガジンDPPルビンTR(BASF社製)等が挙げられる。
【0036】
[紫色顔料]
紫色顔料としては、
C.I.ピグメントバイオレット15等のウルトラマリン系紫色顔料、
C.I.ピグメントバイオレット19等のキナクリドン系紫色顔料、
C.I.ピグメントバイオレット23等のジオキサジン系紫色顔料
等が挙げられる。
中でも寸法安定性の観点から、キナクリドン系紫色顔料が好ましい。中でも、C.I.ピグメントバイオレット19がより好ましい。
【0037】
市販品としては、C.I.ピグメントバイオレット15では、ウルトラマリンバイオレット12(フェロ社製)、C.I.ピグメントバイオレット19では、クロモファインバイオレット6845(大日精化社製)、C.I.ピグメントバイオレット23では、PVファストバイオレットRL(クラリアント社製)等が挙げられる。
【0038】
[黄色顔料]
黄色顔料としては、
C.I.ピグメントイエロー150、151、168、169、181、183等のモノアゾ系黄色顔料、
C.I.ピグメントイエロー83、180、214等のジスアゾ系黄色顔料、
C.I.ピグメントイエロー53等のニッケルチタン系黄色顔料、
C.I.ピグメントイエロー93、95等の縮合アゾ系黄色顔料、
C.I.ピグメントイエロー138等のキノフタロン系黄色顔料、
C.I.ピグメントイエロー109、110、139等のイソインドリノン系黄色顔料、
C.I.ピグメントイエロー184等のビスマス系黄色顔料、
等が挙げられる。
中でも、寸法安定性の観点からモノアゾ系黄色顔料、またはジスアゾ系黄色顔料が好ましい。中でも、C.I.ピグメントイエロー180、または.I.ピグメントイエロー181がより好ましい。
【0039】
市販品としては、C.I.ピグメントイエロー150では、クロモフタルイエローD 1085 J(BASF社製)、C.I.ピグメントイエロー151では、クロモフタルイエローL 1061 HD(BASF社製)、C.I.ピグメントイエロー168では、パリオトールイエローK1070(BASF社製)、C.I.ピグメントイエロー169では、リオノールイエローK2R(トーヨーカラー社製)、C.I.ピグメントイエロー181では、TCY18001Eイエロー(トラストケム社製)、C.I.ピグメントイエロー183では、パリオトールイエロー1700(BASF社製)、C.I.ピグメントイエロー83では、クロモファインイエロー(大日精化社製)、C.I.ピグメントイエロー180では、クロモフタルイエロー K1410(BASF社製)、C.I.ピグメントイエロー214では、P.V.ファーストイエローH9G VP2430(クラリアント社製)、C.I.ピグメントイエロー53では、シコタンイエローK1010(BASF社製)、C.I.ピグメントイエロー93では、クロモファインイエロー5930(大日精化社製)、C.I.ピグメントイエロー95では、クロモファインイエロー5900(大日精化社製)、C.I.ピグメントイエロー138では、パリオトールイエローK0961(BASF社製)、C.I.ピグメントイエロー109では、イルガジンイエローK1170(BASF社製)、C.I.ピグメントイエロー110では、イルガジンイエローK2060(BASF社製)C.I.ピグメントイエロー139では、パリオトールイエローK1841(BASF社製)、C.I.ピグメントイエロー184では、リソパックイエロー6601B(フェロ社製)等が挙げられる。
【0040】
[その他顔料]
その他顔料としては、
C.I.ピグメントグリーン7、36等のフタロシアニン系緑色顔料、
C.I.ピグメントグリーン50等のコバルト系緑色顔料、
C.I.ピグメントオレンジ64等のモノアゾ系橙色顔料、
等が挙げられる。
中でも、寸法安定性の観点からフタロシアニン系緑色顔料が好ましい。中でも、C.I.ピグメントグリーン7が更に好ましい。
【0041】
市販品としては、C.I.ピグメントグリーン7では、ファーストゲングリーンBN(DIC社製)、ピグメントグリーン36では、ファーストゲングリーン2YK(DIC社製)、ピグメントグリーン50では、シコパールグリーンL9715(BASF社製)等が挙げられる。
【0042】
それぞれの顔料の含有率は、射出成形機により、黒色樹脂組成物から成形してなる縦150mm、横120mm、厚み2mmの成形体が、波長380nm-800nmの平均透過率が1%以下、かつ波長800nm-2500nmの平均透過率が25%以上を満たせばとくに制限されないが、青色顔料と、赤色顔料および紫色顔料の少なくともいずれかを含む場合には、顔料(B)の総量100質量%を基準として、意匠性の観点から、青色顔料は、10~60質量%であることが好ましく、20~50質量%であることがより好ましい。赤色顔料または紫色顔料は、20~50質量%であることが好ましく、30~40質量%であることがより好ましい。なお、赤色顔料および紫色顔料の両方を含む場合には、赤色顔料および紫色顔料の合計量が、上記範囲内であることが好ましい。青色顔料、赤色顔料および紫色顔料以外の、その他顔料は、10~30質量%であることが好ましく、15~25質量%であることがより好ましい。
【0043】
また、青色顔料と、赤色顔料および紫色顔料の少なくともいずれかを含む場合には、赤色顔料および紫色顔料の含有量100質量部に対し、青色顔料の含有量が100~300質量部であることが、成形体の可視光領域の遮光性の観点から好ましく、150~250質量部がより好ましい。
【0044】
また、各色の顔料の配合量は、寸法安定性と意匠性を両立できることから、成形体100質量%中に、青色顔料が0.05~0.8質量%配合されていることが好ましく、0.1~0.5質量%であることがより好ましい。赤色顔料は、0.05~0.5質量%であることが好ましく、0.1~0.4質量%がより好ましい。黄色顔料は、0~0.5質量%であることが好ましく、0.05~0.4質量%であることがより好ましい。
【0045】
顔料(B)の含有率は、寸法安定性と意匠性との両立の観点から、成形体100質量%中、0.01質量%以上であることが好ましく0.1質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることがさらに好ましい。また、1質量%以下が好ましく、0.8質量%未満がより好ましい。
【0046】
<任意成分>
本発明の黒色樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、アルカリ金属やアルカリ土類金属または亜鉛の金属石けん、ハイドロタルサイト、ノニオン系界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、帯電防止剤、ハロゲン系、リン系または金属酸化物等の難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤などの添加剤を含有させることができる。
【0047】
《成形体》
成形体は、本発明の黒色樹脂組成物を用いて成形される。
成形方法は特に制限されるものではなく、押出成形、圧縮成形、射出成形、およびブロー成形等によって得ることができる。
成形体は、ポリオレフィン樹脂(A)が溶融する温度で顔料(B)とを混練した黒色樹脂組成物から成形体をそのまま形成してもよく、または、顔料(B)を高濃度に含むマスターバッチとし、その後成形体の成形時に規定の倍率で希釈樹脂であるポリオレフィン樹脂と混練した黒色樹脂組成物から成形体を成形してもよい。
また、このときの希釈樹脂は、マスターバッチを構成するポリオレフィン樹脂(A)と同じ樹脂であっても、異なる樹脂であってもよいが、同じ樹脂であることが好ましい。
【0048】
マスターバッチ100質量%中、ポリオレフィン樹脂(A)の含有率は、20質量%以上であることが好ましく、30~60質量%がより好ましい。ポリオレフィン樹脂(A)の配合量が20質量%以上であるとマスターバッチ生産時の加工性がより良好となる。
また、マスターバッチ100質量%中の顔料(B)の含有率は、黒色樹脂組成物100質量%中、1~60質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましい。
【0049】
成形体100質量%中、ポリオレフィン樹脂(A)の含有率は60質量%以上100質量%未満であることが好ましく、90質量%以上がより好ましい。ポリオレフィン樹脂(A)の配合量が60質量%以上であれば、成形体の強度を充分に保ちやすい。
【0050】
本発明の黒色樹脂組成物から形成してなる成形体は、反りや収縮の抑制に優れ、寸法安定性が良好であるため、圧縮成形(コンプレッション成形)または射出成形(インジェクション成形)にて成形される自動車部品、ノズル、キャップ、パレット、機械部品等ならびにブロー成形(ダイレクトブロー、インジェクションブロー)にて成形されるボトル、ポット、タンク等に好適に用いることができる。
【0051】
このように、意匠性と寸法安定性に優れた成形体であることから、自動車部品、ノズル、キャップ、パレット、機械部品、ボトル、ポット、タンク等のさまざまな用途に用いることができる。なかでもキャップとして用いることが好ましく、さらに、経時によりキャップが収縮し、開栓時のトルクが上がることを抑制できるため、より高い精度での寸法安定性が求められる、飲料用のキャップであっても、好適に用いることができる。
【実施例0052】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例中、「部」および「%」は、特に断りがない場合は、それぞれ、「質量部」および「質量%」を表す。
また、表中の配合量は、質量部であり、空欄は配合していないことを表す。
なお、ポリオレフィン樹脂(A)の溶融粘度の測定方法は以下の通りである。
【0053】
[ポリオレフィン樹脂(A)の溶融粘度]
MFRはJIS(日本工業規格)K-7210に従って測定した。
【0054】
実施例および比較例に使用した材料を以下に列挙する。
<ポリオレフィン樹脂(A)>
A-1:ハイゼックス2200J(プライムポリマー社製、MFR:5g/10分、HDPE)
A-2:NUC-8008(NUC社製、MFR:5g/10分、LDPE)
A-3:エクセレンFX352(住友化学社製、MFR:4g/10分、LLDPE)
A―4:J105G(プライムポリプロ社製、MFR:9g/10分、h―PP)
A―5:J-705UG(プライムポリプロ社製、MFR:9g/10分、b-PP)
A―6:E-333GV(プライムポリプロ社製、MFR:2g/10分、r―PP)
【0055】
<有機顔料(B)>
[青色顔料]
B―1:シコパールブルーK6210(BASF社製、C.I.ピグメントブルー28、コバルトブルー)
B―2:リオノールブルーFG-7350(トーヨーカラー社製、C.I.ピグメントブルー15:3、フタロシアニン系青色顔料)
[赤色顔料]
B―3:パリオゲンレットK3580(BASF社製、C.I.ピグメントレッド149、ペリレン系赤色顔料)
B―4:クロモフタルスカーレッドD3540(BASF社製、C.I.ピグメントレッド166、縮合アゾ系赤色顔料)
B―5:TCR12203レッド(トラストケム社製、C.I.ピグメントレッド122、キナクリドン系赤色顔料)
B―6:クロモフタルレッド2028(BASF社製、C.I.ピグメントレッド254、ジケトピロロピロール系赤色顔料)
[紫色顔料]
B―7:クロモフタルレッド2020(C.I.ピグメントバイオレット19、キナクリドン系紫色顔料)
[黄色顔料]
B-8:、TCY11002イエロー(トラストケム社製、C.I.ピグメントイエロー110、イソインドリノン系黄色顔料)
B-9:パリオトールイエローK0961(BASF社製、C.I.ピグメントイエロー138、キノフタロン系黄色顔料)
B―10:TCY18001E(トラストケム社製、C.I.ピグメントイエロー181、モノアゾ系黄色顔料)
B-11:クロモフタルイエローK1410(BASF社製、C.I.ピグメントイエロー180、ジスアゾ系黄色顔料)
B-12:クロモフタルイエローK1500(BASF社製、C.I.ピグメントイエロー95、縮合アゾ系黄色顔料)
[その他顔料]
B―13:ファーストゲングリーンBN(DIC社製、C.I.ピグメントグリーン7、フタロシアニン系緑色顔料)
B―14:クロモフタルオレンジK2960(BASF社製、C.I.ピグメントオレンジ64、モノアゾ系橙色顔料)
B―15:ハイブラック200B(オリオンエンジニアドカーボンズ社製、C.I.ピグメントブラック7、カーボンブラック)
【0056】
<実施例1>
ポリオレフィン樹脂(A-1)99.4部、青色顔料(B-2)「リオノールブルーFG-7350(トーヨーカラー社製、C.I.ピグメントブルー15:3、フタロシアニン系青色顔料)」0.3部、赤色顔料(B-5)「TCR12203レッドトラストケム社製、C.I.ピグメントレッド122、キナクリドン系赤色顔料)」0.2部、黄色顔料(B-10)「TCY18001E(トラストケム社製、C.I.ピグメントイエロー181、モノアゾ系黄色顔料)」0.1部、を混合し、二軸押出機(日本製鋼所社製)にて200℃で押出し、造粒し、ペレット状の黒色樹脂組成物(C-1)を得た。
【0057】
<実施例2~16、比較例1~5>
表1、2に示す材料と配合量(質量部)にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の方法でペレット状の黒色樹脂組成物(C-2~21)をそれぞれ得た。
【0058】
(樹脂組成物および成形体の物性値および評価)
得られた樹脂組成物および成形体の物性値および評価を下記の方法で行った。
それぞれ、収縮率、可視光透過率、赤外光透過率、反り、明度、機械視認性は、下記に示すプレート状成形体を用いて、測定、評価した。また、開栓トルク評価は、下記に示すキャップ状成形体を用いて、測定、評価した。
結果を表1、2に示す。
【0059】
[成形体(プレート状成形体)の製造]
得られた黒色樹脂組成物を用いて、後述する射出条件により射出成形機(東芝機械社製)にて成形し、23℃、50%RHの恒温室で1日保存してプレート状成形体を得た。
成形体(プレート状成形体)の製造条件は、射出成形機(東芝機械社製)にて、成形時の成形温度220℃、金型温度40℃で、連続で20枚射出成形し、評価用にはこの内、14枚目から19枚目の6枚について、成形後、23℃、50RHの恒温室で1日保存した後のプレート状成形体を使用した。
なお、評価基準としてポリオレフィン樹脂(A)のみを、同じ条件で成形した成形プレート(「ナチュラル」と称することがある)を用いた。
プレート状成形体を作製する金型は、射出方向とその垂直方向に100mmの標線が設けられた縦150mm、横120mm、厚さ2mmのプレートを作製する金型を使用した。
【0060】
[成形体(キャップ状成形体)の製造]
成形体(キャップ状成形体)の製造条件は、射出成形機(東芝機械社製)にて、成形時の成形温度220℃、金型温度20℃で、連続で20個射出成形し、キャップシェル内面にシール材として適当な熱可塑性樹脂をインシェルモールドし、ライナーを賦形し、容器口部に巻締め可能な呼び径28mmのキャップ状成形体を作製した。
評価用にはこの内、14個目から19個目の6個について、成形後、23℃、50RHの恒温室で1日保存した後のキャップ状成形体を使用した。
【0061】
<収縮率の測定>
得られたプレート状成形体6枚を用いて、精密ノギスにて標線間距離を計測し、その値から射出方向とその垂直方向の収縮率の平均値を求めた。なお収縮差率の計算式は以下の通りである。
式(1) ΔMDS=|X1-X0|
式(2) ΔTDS=|Y1-Y0|
(なお、X1、およびY1はそれぞれ、射出成形機により、黒色樹脂組成物を成形してなる、縦150mm、横120mm、厚み2mmの成形体を、23℃、50%RHに24時間静置した後の、射出方向と同じ方向(MD方向)における収縮率、および射出方向と直角方向(TD方向)における収縮率であり、
X0、およびY0はそれぞれ、射出成形機により、ポリオレフィン樹脂(A)を成形してなる、縦150mm、横120mm、厚み2mmの成形体を、23℃、50%RHに24時間静置した後の、射出方向と同じ方向(MD方向)における収縮率、および射出方向と直角方向(TD方向)における収縮率である。)
【0062】
すなわち、例えば実施例1においては、黒色樹脂組成物(C-1)から射出成形機により成形してなる、縦150mm、横120mm、厚さ2mmのプレート状成形体1を、成形後23℃、50%RHに24時間静置した後の、射出方向と同じ方向(MD方向)における収縮率がX1、および射出方向と直角方向(TD方向)の収縮における収縮率X2であり、ポリオレフィン樹脂(A-1)から射出成形機により成形してなる、縦150mm、横120mm、厚さ2mmのプレート状成形体の、23℃、50%RHに24時間静置した後の、射出方向と同じ方向(MD方向)における収縮率がX0、および射出方向と直角方向(TD方向)の収縮における収縮率がY0である。)
【0063】
X1:プレート状成形体1の射出方向の収縮率
=成形後23℃、50%RHに24時間静置後の成形体1のMD方向標線間長さmm/標線間距離100mm×100
Y1:プレート状成形体1の射出方向に直交する方向の収縮率
=成形後23℃、50%RHに24時間静置後の成形体1のTD方向標線間長さmm/標線間距離100mm×100
X0:ポリオレフィン樹脂(A-1)のみを使用した成形体の射出方向の収縮率
=成形後23℃、50%RHに24時間静置後のナチュラルの成形体のMD方向標線間長さmm/標線間距離100mm×100
Y0:ポリオレフィン樹脂(A-1)のみを使用した成形体の射出方向に直交する方向の収縮率
=成形後23℃、50%RHに24時間静置後のナチュラルの成形体のTD方向標線間長さmm/標線間距離100mm×100
【0064】
<可視光平均透過率、及び近赤外平均透過率>
株式会社島津製作所製紫外可視分光光度計UV―3150を用いて、得られたプレート状成形体について、波長380nm-2500nmの領域において1nmピッチで透過率を計測し、当該計測した透過率の平均値を求めた。
波長380nm-800nmの平均透過率を可視光領域の平均透過率、波長800nm-2500nmの平均透過率を近赤外平均透過率として表に記載した。
【0065】
<反り>
得られたプレート状成形体に2kgの重りをゲート部分に乗せ、水平位置から浮き上がった高さを測定した。浮き上がりが無い場合「+++」、高さが1mm以下である場合「++」、高さが2mm以下である場合「+」、高さが2mm超である場合「NG」とした。+以上であれば実用可能である。
【0066】
<明度>
クラボウ社製画像分光測色機AUカラーCOLOR7xを用い、D-65(10)標準光源にて成形体の明度を測定した。明度が低いほど意匠性に優れるといえ、+以上であれば実用可能である。
[評価基準]
+++:明度が1.5未満
++ :明度が1.5以上2.0未満
+ :明度が2.0以上2.5未満
NG :明度が2.5以上
【0067】
<機械視認性評価方法>
得られた成形体プレートについて、株式会社リコー製樹脂判別ハンディセンサー(RICOH HANDY PLASTIC SENSOR B150)を用いて、その樹脂種を識別した。相関係数が1に近いほど、その樹脂である可能性が高く、IR(赤外線)による機械視認性が優れることから、廃プラスチックの分別が、高い精度で達成できることを意味する。+以上であれば実用可能である。
[評価基準]
+++:相関係数が0.98以上
++ :相関係数が0.90以上、0.98未満
+ :相関係数が0.75以上、0.90未満
NG :相関係数が0.75未満
【0068】
<キャップ開栓トルク評価方法>
得られたキャップ状成形体を87℃の温水を充填した東洋製罐株式会社製耐熱用350mlPETボトルへキャッパーにて巻締め、その後75℃-3.5分、55℃-4.5分、40℃-4.0分、30℃-6.0分、25℃-2.5分の冷却シャワー処理を施し、トルク計(日本電産シンポ株式会社TNX-2)を用い、上記で作製された評価用サンプルを常温下にて、キャップを開栓方向に回し、動き始めの開栓トルクT0を測定した。
その後、23℃、50RHの恒温室内で1週間保管したサンプルの開栓トルクT1を測定し、開栓トルクの変化T1-T0を以下のように評価した。開栓トルクの変化が小さいほど、寸法安定性が高いといえ、+以上であれば実用可能である。
[評価基準]
+++:T1-T0が0.2N・m未満
++ :T1-T0が0.2N・m以上、0.4N・m未満
+ :T1-T0が0.4N・m以上、0.6N・m未満
NG :T1-T0が0.6N・m以上
【0069】
【0070】
【0071】
表1、2に示すように、本発明の黒色樹脂組成物は、可視光領域の遮蔽性に優れ、明度が低く、意匠性に優れるだけでなく、成形体の反りを抑え、寸法安定性も良好であった。
また、近赤外領域で高い透過率を示し、IR(赤外線)による機械視認性が優れることから、廃プラスチックの分別が、高い精度で達成できることが確認できた。
さらに、開栓トルクの上昇を抑制できていることから、飲料用キャップにも好適に用いることができるといえる。