IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社協成の特許一覧

<>
  • 特開-樹脂被覆鋼管 図1
  • 特開-樹脂被覆鋼管 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181633
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】樹脂被覆鋼管
(51)【国際特許分類】
   F16L 58/10 20060101AFI20231218BHJP
   F16L 9/02 20060101ALI20231218BHJP
   F16L 9/133 20060101ALI20231218BHJP
   B32B 15/18 20060101ALI20231218BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
F16L58/10
F16L9/02
F16L9/133
B32B15/18
B32B15/08 L
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094873
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000142078
【氏名又は名称】株式会社協成
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】西 喜浩
(72)【発明者】
【氏名】吉田 憲央
【テーマコード(参考)】
3H024
3H111
4F100
【Fターム(参考)】
3H024EA02
3H024EB02
3H024ED02
3H024EE02
3H111BA02
3H111CB23
3H111DA08
3H111EA15
4F100AB03A
4F100AK01C
4F100BA03
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CB00B
4F100DA11
4F100GB07
4F100JN01B
4F100JN01C
(57)【要約】
【課題】被覆された鋼管本体の使用状態を容易に確認できる樹脂被覆鋼管を提供する。
【解決手段】ショットブラスト処理が施された鋼管本体1の外周面に、固化すると透明となるホットメルト接着剤で形成された接着剤層2を設け、その接着剤層2の外周面に、透明な硬質塩化ビニル樹脂で形成された樹脂被覆層3を設けることにより、樹脂被覆層3および接着剤層2を剥がすことなく、鋼管本体1の使用状態を外側から容易に目視確認できる構成の樹脂被覆鋼管とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管本体の外周面に接着剤層を介して樹脂被覆層が設けられた樹脂被覆鋼管において、前記接着剤層および前記樹脂被覆層がいずれも透明であることを特徴とする樹脂被覆鋼管。
【請求項2】
前記樹脂被覆層は、前記鋼管本体の周方向および長手方向に継目なく連続して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆鋼管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス管や送水管等に利用される、少なくとも外周面が樹脂に被覆された樹脂被覆鋼管に関する。
【背景技術】
【0002】
外周面や内周面に硬質塩化ビニル樹脂等の樹脂被覆層を設けて耐食性を高めた樹脂被覆鋼管は、ガス管、送水管、送油管、プラント用配管等として広く利用されている。
【0003】
上記のような樹脂被覆鋼管は、一般に、鋼管本体の外周面に接着剤層を介して樹脂被覆層が設けられており、その各層を形成する接着剤および樹脂はいずれも有色のものが用いられている。例えば、送水管に用いられる樹脂被覆鋼管では、樹脂被覆層を形成するポリウレタンやポリエチレンに着色顔料(カーボンブラック等)を添加して黒色としたものがある(非特許文献1参照。)。また、樹脂被覆層を塩化ビニル樹脂で形成したものでも、その外観の見栄えを良くするために、着色した塩化ビニル樹脂を用いたものが多い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】JIS G 3443-3「水輸送用塗覆装鋼管-第3部:長寿命形外面プラスチック被覆」、2020年、p.10およびp.17
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のように有色の樹脂で外周の樹脂被覆層を形成した樹脂被覆鋼管では、鋼管本体の使用状態が管の外側からはわからず、鋼管本体の経年による腐食の進行状態等を確認するための検査を行う際に、樹脂被覆層および接着剤層(以下、合わせて単に「被覆層」とも称する。)を剥がす必要がある。
【0006】
このため、管全体を対象として検査を行おうとすれば、被覆層の剥離や復旧に非常に手間がかかり、コストも多大なものとなってしまう。また、管の一部について検査する場合も、被覆層を剥がす際に鋼管本体の外周面が傷ついたり、復旧後の被覆層に隙間が生じたりして、検査作業がその後の腐食発生の原因となるおそれがある。
【0007】
そして、上記のような検査の作業負荷・コストや検査に伴うリスクを考慮すると、あまり頻繁に検査を行うことはできないので、定期検査の間隔が広くなり、その間に鋼管本体の腐食が進んでしまうおそれもある。
【0008】
そこで、本発明は、被覆された鋼管本体の使用状態を容易に確認できる樹脂被覆鋼管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、鋼管本体の外周面に接着剤層を介して樹脂被覆層が設けられた樹脂被覆鋼管において、前記接着剤層および前記樹脂被覆層がいずれも透明である構成を採用した。
【0010】
すなわち、被覆層(樹脂被覆層および接着剤層)を透明とすることにより、被覆層を剥がすことなく、鋼管本体の使用状態を管の外側から目視確認できるようにしたのである。そして、その使用状態の確認には、手間やコストがほとんどかからず、また腐食の起因となるおそれもないので、比較的短い周期で確認(点検)を行い、腐食の進行を早期に発見して対処することができる。また、管の広い範囲を対象とした確認作業も比較的簡単に行えるものとなるので、その確認作業の実施により、鋼管本体の局所的な腐食の進行の見落としを防止することもできる。
【0011】
ここで、前記樹脂被覆層は、前記鋼管本体の周方向および長手方向に継目なく連続して形成されているものとすることが望ましい。このようにすれば、樹脂被覆層に周方向や長手方向で継目があるものに比べて、鋼管本体の腐食が生じにくくなり、より長寿命化することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂被覆鋼管は、上述したように、被覆層(樹脂被覆層および接着剤層)を透明としたものであるから、鋼管本体の使用状態の確認を、被覆層を剥がすことなく、管の外側から目視で容易に行うことができる。したがって、鋼管本体の検査の際に被覆層の剥離・復旧作業が必要となる従来のものに比べて、使用状態の確認を短い周期で、また対象範囲を広くして行い、長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態の樹脂被覆鋼管の断面図
図2図1の樹脂被覆鋼管の被覆方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。この樹脂被覆鋼管は、送水管として用いられるものであり、図1に示すように、鋼管本体1の外周面に透明な接着剤層2が設けられ、その接着剤層2の外周面に透明な樹脂被覆層3が設けられている。また、その樹脂被覆層3は、鋼管本体1の周方向および長手方向に継目なく連続して形成されている。
【0015】
鋼管本体1は、その外周面にショットブラスト処理が施され、接着剤層2が接着しやすくなっている。
【0016】
接着剤層2は、ホットメルト接着剤で形成されている。ホットメルト接着剤は、一般には固化すると白色となるが、本発明では添加剤の配合率の調整により固化すると透明となるものを用いている。
【0017】
樹脂被覆層3は、硬質の塩化ビニル樹脂で形成されている。塩化ビニル樹脂は、本来透明であり、着色も容易であるが、本発明では透明なものを用いている。
【0018】
図2は実施形態の樹脂被覆鋼管の被覆方法を示す。この樹脂被覆鋼管の製造工程においては、鋼管本体1を所定の温度に予熱した後、図2に示す押出成形機10に送って、接着剤層2および樹脂被覆層3の押出し被覆を行っている。
【0019】
押出成形機10は、図2に示すように、本体11、樹脂マンドレル12、メルト樹脂コア13、ダイスプレート14、ダイス15、ノズル16、押えリング17、偏肉調整ボルト18を有する。また、ホットメルト接着剤および塩化ビニル樹脂をそれぞれ別々に本体11に送り込む接着剤供給装置19および樹脂供給装置20と、メルト樹脂コア13の後端側(入口側)に接続される負圧ユニット21とを備えている。
【0020】
この押出成形機10では、本体11の内部に樹脂マンドレル12が組み込まれ、その樹脂マンドレル12の内側にメルト樹脂コア13が挿入されている。
【0021】
本体11の先端側(出口側)にはダイスプレート14を介してダイス15が取り付けられ、ダイス15の内側に、メルト樹脂コア13の先端に取り付けられたノズル16が同心的に配置されている。
【0022】
ダイスプレート14は本体11と押えリング17との間に挟み込まれており、そのダイスプレート14の周囲に、ダイスプレート14の心出しを行う偏肉調整ボルト18が複数配置されている。
【0023】
接着剤供給装置19は、シリンダとその中に組み込まれたスクリューやプランジャ(いずれも図示省略)を用いて、加熱して溶融させたホットメルト接着剤を本体11の内部に供給するものである。
【0024】
樹脂供給装置20は、粉末状態の塩化ビニル樹脂を溶融させる加熱シリンダと、その溶融樹脂を本体11の内部に送り込むスクリュー(いずれも図示省略)を組み合わせたものである。
【0025】
また、本体11および樹脂マンドレル12には、それぞれに接着剤導入口22と樹脂導入口23が設けられている。そして、樹脂マンドレル12の内周面とメルト樹脂コア13の外周面との間には、接着剤導入口22と連通してノズル16の後部外周に至る接着剤通路24が形成され、本体11の内周面と樹脂マンドレル12の外周面との間には、樹脂導入口23と連通してダイス15の後部内周に至る樹脂通路25が形成されている。
【0026】
さらに、ダイス15の内周面とノズル16の外周面との間には、樹脂通路25を通ってきた樹脂と、接着剤通路24を通ってきた接着剤を通す共用通路26が形成されている。なお、接着剤通路24、樹脂通路25および共用通路26を形成する各部材は、いずれも被覆作業中を通して適切な温度に加熱されるようになっている。
【0027】
この押出成形機10における被覆作業は、接着剤供給装置19から接着剤導入口22に供給されて接着剤通路24を通ってきたホットメルト接着剤と、樹脂供給装置20から樹脂導入口23に供給されて樹脂通路25を通ってきた塩化ビニル樹脂とを、共用通路26に通して接着剤層2の外周面に樹脂被覆層3が重なる被覆層とし、その積層状態の被覆層をダイス15から押し出して、メルト樹脂コア13およびノズル16に通された鋼管本体1の外周面に密着させる。
【0028】
ここで、ノズル16から出た鋼管本体1の外周面と接着剤層2との間の空間27は、負圧ユニット21によって真空引きされて負圧状態に維持されているので、鋼管本体1に対する被覆層の付着が界面に空気を巻き込むことなく行われる。
【0029】
上記のようにして被覆層を設けた樹脂被覆鋼管は、その樹脂被覆層3が鋼管本体1の周方向および長手方向に継目なく連続して形成されるので、樹脂被覆層に周方向や長手方向で継目があるものに比べて鋼管本体1の腐食が生じにくい。
【0030】
また、接着剤層2および樹脂被覆層3がいずれも透明であり、しかも鋼管本体1と接着剤層2との間および接着剤層2と樹脂被覆層3との間に気泡がほとんどないものとなるので、管の外側から鋼管本体1の使用状態を目視で容易に確認することができる。
【0031】
したがって、鋼管本体の検査の際に被覆層の剥離・復旧作業が必要となる従来のものに比べて、使用状態の確認を短い周期で、また対象範囲を広くして行い、長寿命化を図ることができる。
【0032】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0033】
例えば、実施形態では、樹脂被覆層を形成する樹脂として硬質の塩化ビニル樹脂を用いているが、これに限らず、ポリアミド樹脂等、耐久性を有し、透明なものであればよい。また、接着剤層を形成する接着剤も、実施形態のようなホットメルト接着剤に限らず、透明なものであればよい。
【0034】
また、本発明の樹脂被覆鋼管は、実施形態のような送水管のほか、腐食の生じやすい環境で使用される鋼管に対して効果的に適用できる。
【0035】
なお、本発明の樹脂被覆鋼管の樹脂被覆方法としては、外周面に接着剤を塗布して予熱した鋼管本体に樹脂チューブを被せ、その樹脂チューブを熱収縮させる方法もあるが、実施形態で説明したような押出し被覆の方が、被覆層に気泡が残りにくく、鋼管本体の使用状態を目視確認しやすくなるので好ましい。
【符号の説明】
【0036】
1 鋼管本体
2 接着剤層
3 樹脂被覆層
10 押出成形機
11 (押出成形機の)本体
12 樹脂マンドレル
13 メルト樹脂コア
14 ダイスプレート
15 ダイス
16 ノズル
17 押えリング
18 偏肉調整ボルト
19 接着剤供給装置
20 樹脂供給装置
21 負圧ユニット
図1
図2