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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181642
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/629 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
H01R13/629
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094893
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郎 鵬飛
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FB07
5E021FC09
5E021HA03
5E021HB02
5E021HB05
5E021HB07
5E021HB09
5E021HC11
(57)【要約】
【課題】倍力機能部材を嵌合開始位置に保持する機能の信頼性を高めることができる。
【解決手段】コネクタは、第1ハウジング11に設けられ、第1ハウジング11に対して嵌合開始位置から嵌合完了位置へ相対変位することによって、第1ハウジング11と第2ハウジング61を嵌合させるスライダ30と、スライダ30に形成され、スライダ30が嵌合開始位置から嵌合完了位置へ相対変位するときの変位方向と同方向へ片持ち状に延出したアーム状係止片43を有する保持部42と、第1ハウジング11に形成され、アーム状係止片43の延出端部の突当部45がアーム状係止片43の延出方向と同方向に突き当たることによって、嵌合開始位置のスライダ30が嵌合完了位置へ移動することを規制するストッパ16と、スライダ30に設けられ、アーム状係止片43が座屈することを規制する座屈規制部39と、を備えている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングと嵌合可能な第2ハウジングと、
前記第1ハウジングに設けられ、前記第1ハウジングに対して嵌合開始位置から嵌合完了位置へ相対変位することによって、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングを嵌合させる倍力機能部材と、
前記倍力機能部材と前記第1ハウジングのうち一方の部材に形成され、前記倍力機能部材が前記嵌合開始位置から前記嵌合完了位置へ相対変位するときの前記一方の部材の変位方向と同方向へ片持ち状に延出したアーム状係止片を有する保持部と、
前記倍力機能部材と前記第1ハウジングのうち他方の部材に形成され、前記アーム状係止片の延出端部の突当部が前記アーム状係止片の延出方向と同方向に突き当たることによって、前記嵌合開始位置の前記倍力機能部材が前記嵌合完了位置へ移動することを規制するストッパと、
前記倍力機能部材又は前記第1ハウジングに設けられ、前記アーム状係止片が座屈することを規制する座屈規制部と、を備えているコネクタ。
【請求項2】
前記座屈規制部は、前記突当部を挟んで前記ストッパとは反対側に配置されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記保持部は、前記アーム状係止片の延出方向と直交する方向に延びた軸状をなして、前記アーム状係止片の基端部と前記一方の部材とを繋ぐ支持部を有し、
前記アーム状係止片は、前記支持部を捻れ変形させながら、前記突当部と前記ストッパとの対向面積を増減させる方向へ傾動することが可能である請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記支持部の断面形状が円形である請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記支持部に対して、前記アーム状係止片の延出方向と平行に対向する移動規制面を備えている請求項3又は請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記保持部は、前記アーム状係止片の前記基端部から前記突当部とは反対方向へ延出した解除用延出部を有し、
前記第2ハウジングは、前記第2ハウジングと前記倍力機能部材との嵌合に伴って前記解除用延出部と干渉することが可能な保持解除部を有し、
前記突当部が前記ストッパと対向している状態で前記保持解除部が前記解除用延出部と干渉することにより、前記保持部が傾動して前記突当部が前記ストッパと非対向の位置へ変位する請求項3又は請求項4に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記支持部から前記解除用延出部における前記保持解除部との干渉位置までの離隔寸法は、前記支持部から前記突当部までの離隔寸法よりも小さい請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記他方の部材には、前記突当部に対し、前記保持解除部と前記解除用延出部との干渉による前記突当部の変位方向とは反対側から対向する傾動規制面が形成されている請求項6に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回動するレバーと平行移動するスライド部材をハウジングに設けることによって倍力機能を発揮するレバー式コネクタが開示されている。レバー式コネクタと相手側コネクタを嵌合する際には、スライド部材とレバーを初期位置に保持した状態で、スライド部材のカム溝に、相手側コネクタの鍔付きカム従動子を嵌合させる。次に、レバーを回動させることによってスライド部材を初期位置から嵌合位置までスライドさせ、相手側コネクタをレバー式コネクタに引き寄せて嵌合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-331991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スライド部材とレバーを初期位置に保持しておく手段として、スライド部材に、片持ち状に延出した形状の弾性アームを形成し、弾性アームの延出端部をハウジングの係止凹部に係止させる。特許文献1に記載された弾性アームは、スライド部材が初期位置から嵌合位置へ変位するときの移動方向とは反対の方向へ延出しているが、これとは逆に、弾性アームを、スライド部材の初期位置から嵌合位置への移動方向と同じ方向へ片持ち状に延出する形状にすることができる。この場合、初期位置のスライド部材に対して、嵌合位置に向かう方向の外力が強く作用したときに、弾性アームが座屈することが懸念される。座屈の懸念は、弾性アームをスライド部材に形成した場合に限らず、レバーに弾性アームを形成した場合も、同様である。
【0005】
本開示のレバー式コネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、倍力機能部材を嵌合開始位置に保持する機能の信頼性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングと嵌合可能な第2ハウジングと、
前記第1ハウジングに設けられ、前記第1ハウジングに対して嵌合開始位置から嵌合完了位置へ相対変位することによって、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングを嵌合させる倍力機能部材と、
前記倍力機能部材と前記第1ハウジングのうち一方の部材に形成され、前記倍力機能部材が前記嵌合開始位置から前記嵌合完了位置へ相対変位するときの前記一方の部材の変位方向と同方向へ片持ち状に延出したアーム状係止片を有する保持部と、
前記倍力機能部材と前記第1ハウジングのうち他方の部材に形成され、前記アーム状係止片の延出端部の突当部が前記アーム状係止片の延出方向と同方向に突き当たることによって、前記嵌合開始位置の前記倍力機能部材が前記嵌合完了位置へ移動することを規制するストッパと、
前記倍力機能部材又は前記第1ハウジングに設けられ、前記アーム状係止片が座屈することを規制する座屈規制部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、倍力機能部材を嵌合開始位置に保持する機能の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1のコネクタの嵌合状態をあらわす斜視図である。
図2図2は、第1コネクタの分解状態をあらわす斜視図である。
図3図3は、第2コネクタの斜視図である。
図4図4は、スライダの斜視図である。
図5図5は、スライダの側面図である。
図6図6は、スライダが嵌合開始位置にあり、第1コネクタと第2コネクタが嵌合する前の状態をあらわす側断面図である。
図7図7は、第1コネクタと第2コネクタが嵌合を開始した状態をあらわす側断面図である。
図8図8は、第1コネクタと第2コネクタが嵌合した状態をあらわす側断面図である。
図9図9は、保持部による保持状態をあらわす図6のA-A線拡大平断面図である。
図10図10は、保持部による保持状態において、アーム状係止片の座屈変形が規制されている様子をあらわす図6のA-A線相当平断面図である。
図11図11は、保持部による保持が解除された状態をあらわす図7のB-B線拡大平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)第1ハウジングと、前記第1ハウジングと嵌合可能な第2ハウジングと、前記第1ハウジングに設けられ、前記第1ハウジングに対して嵌合開始位置から嵌合完了位置へ相対変位することによって、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングを嵌合させる倍力機能部材と、前記倍力機能部材と前記第1ハウジングのうち一方の部材に形成され、前記倍力機能部材が前記嵌合開始位置から前記嵌合完了位置へ相対変位するときの前記一方の部材の変位方向と同方向へ片持ち状に延出したアーム状係止片を有する保持部と、前記倍力機能部材と前記第1ハウジングのうち他方の部材に形成され、前記アーム状係止片の延出端部の突当部が前記アーム状係止片の延出方向と同方向に突き当たることによって、前記嵌合開始位置の前記倍力機能部材が前記嵌合完了位置へ移動することを規制するストッパと、前記倍力機能部材又は前記第1ハウジングに設けられ、前記アーム状係止片が座屈することを規制する座屈規制部と、を備えている。本開示の構成によれば、 アーム状係止片の突当部が他方の部材のストッパに突き当たっている状態で、倍力機能部材に対して嵌合完了位置側への外力が作用しても、座屈規制部によって、アーム状係止片の座屈が防止される。アーム状係止片が座屈しないので、倍力機能部材を嵌合開始位置に保持する機能の信頼性に優れている。
【0010】
(2)前記座屈規制部は、前記突当部を挟んで前記ストッパとは反対側に配置されていることが好ましい。この構成によれば、突当部が座屈規制部に当接することによって、アーム状係止片の座屈が防止される。
【0011】
(3)(2)において、前記保持部は、前記アーム状係止片の延出方向と直交する方向に延びた軸状をなして、前記アーム状係止片の基端部と前記一方の部材とを繋ぐ支持部を有し、前記アーム状係止片は、前記支持部を捻れ変形させながら、前記突当部と前記ストッパとの対向面積を増減させる方向へ傾動することが可能であることが好ましい。この構成によれば、アーム状係止片の傾動角度を大きくして突当部とストッパとの対向面積を大きくしても、支持部に生じる応力を低減することができる。
【0012】
(4)(3)において、前記支持部の断面形状が円形であることが好ましい。この構成によれば、支持部が捻れ変形したときに、応力を効果的に分散させることできる。
【0013】
(5)(3)又は(4)において、前記支持部に対して、前記アーム状係止片の延出方向と平行に対向する移動規制面を備えていることが好ましい。この構成によれば、支持部が、その軸線を傾けるように弾性変形したときに、支持部が移動規制面に当接することによって、支持部の変形量を抑えることができる。
【0014】
(6)(3)又は(4)において、前記保持部は、前記アーム状係止片の前記基端部から前記突当部とは反対方向へ延出した解除用延出部を有し、前記第2ハウジングは、前記第2ハウジングと前記倍力機能部材との嵌合に伴って前記解除用延出部と干渉することが可能な保持解除部を有し、前記突当部が前記ストッパと対向している状態で前記保持解除部が前記解除用延出部と干渉することにより、前記保持部が傾動して前記突当部が前記ストッパと非対向の位置へ変位することが好ましい。この構成によれば、保持部によって倍力機能部材を嵌合開始位置に保持している状態で、第2ハウジングと倍力機能部材とを嵌合させると、保持解除部と解除用延出部との干渉によって、保持部による保持が解除される。よって、手動による保持解除の操作が不要である。
【0015】
(7)(6)において、前記支持部から前記解除用延出部における前記保持解除部との干渉位置までの離隔寸法は、前記支持部から前記突当部までの離隔寸法よりも小さいことが好ましい。この構成によれば、保持解除時における突当部の変位量が解除用延出部の変位量よりも大きいので、突当部とストッパとの対向面積を大きく確保することができる。
【0016】
(8)(6)において、前記他方の部材には、前記突当部に対し、前記保持解除部と前記解除用延出部との干渉による前記突当部の変位方向とは反対側から対向する傾動規制面が形成されていることが好ましい。この構成によれば、ストッパに押圧された突当部がストッパに対して滑りを生じても、突当部をストッパに突き当てた状態に保持することができる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示を具体化した実施例1のコネクタを、図1図11を参照して説明する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。本実施例1において、前後の方向については、図1~11におけるX軸の正方向を前方と定義する。左右の方向については、図1~4,9~11におけるY軸の正方向を右方と定義する。左右方向と幅方向を同義で用いる。上下の方向については、図1~8におけるZ軸の正方向を上方と定義する。
【0018】
本実施例1のコネクタは、図1に示すように、互いに嵌合可能な第1コネクタ10と第2コネクタ60とを備えている。第1コネクタ10は、倍力機能部材としてのレバー20とスライダ30とを有している。レバー20とスライダ30は、互いに協動することによって倍力機能を発揮する。レバー20に小さい操作力を付与することによって、第1コネクタ10と第2コネクタ60を嵌合させることができる。
【0019】
第1コネクタ10は、図2に示すように、第1ハウジング11と、左右対称な1つのレバー20と、左右対称な形状の一対のスライダ30とを備えて構成されている。第1ハウジング11は、合成樹脂製のハウジング本体12と、ハウジング本体12の上面に取り付けた合成樹脂製の電線カバー13とから構成されている。ハウジング本体12内には雌形の第1端子金具(図示省略)が挿入されている。第1端子金具に接続された電線(図示省略)は、ハウジング本体12の上方へ導出され、電線カバー13内で屈曲されて第1ハウジング11の後方へ導出されている。
【0020】
ハウジング本体12内には、前後方向に延びる左右一対のガイド空間14が形成されている。一対のガイド空間14は、ハウジング本体12の左右両外壁部15に沿うように位置している。ガイド空間14の前後両端は、ハウジング本体12の前後両端面において上下方向に細長いスリット状に開口している。図9~11に示すように、ガイド空間14の前後両端部には、外壁部15の内面(ガイド空間14に臨む面)を凹ませることによって、ストッパ16と傾動規制面17とが形成されている。ストッパ16は、後方に臨んでいる。傾動規制面17は、ガイド空間14に臨んでいる。傾動規制面17の前端は、ストッパ16に対して直角に連なっている。電線カバー13の左右両外側面には、一対の軸部18が形成されている。
【0021】
レバー20は、左右方向に細長い操作部21と、操作部21の左右両端から延出した左右一対のアーム部22とを有する合成樹脂製の単一部品である。アーム部22に形成した軸受孔23が、第1ハウジング11の軸部18に嵌合されている。操作部21を掴んで操作力をレバー20に付与すると、レバー20が、軸部18を中心として嵌合開始位置(図1,6,7参照)と嵌合完了位置(図8参照)との間で回動する。嵌合開始位置では操作部21が軸部18よりも前方に位置し、嵌合完了位置では操作部21が軸部18よりも後方に位置する。アーム部22の内面には、軸部18と同心の円弧形をなす歯車24が形成されている。
【0022】
スライダ30は、合成樹脂材料からなり、板状本体部31と保持部42とを有する単一部品である。図2,4に示すように、板状本体部31は、長辺を前後方向に向けた長方形の板状をなす部位である。板状本体部31の上端縁部には、前後方向に延びるラック32が形成されている。板状本体部31の左右両面のうち、両板状本体部31同士が対向する面を内面31Nと定義し、両板状本体部31同士が対向しない面を外面31Gと定義する。板状本体部31の内面31Nには、前後方向に間隔を空けた2本のカム溝33が形成されている。カム溝33の入口33Eは、板状本体部31の下面に開口している。
【0023】
一対のスライダ30は、板厚方向を左右方向に向けて一対のガイド空間14内に収容された状態で、ハウジング本体12に取り付けられている。図6~8に示すように、電線カバー13をハウジング本体12に取り付けた状態では、レバー20の歯車24がスライダ30のラック32における適正位置に噛み合わされている。レバー20が嵌合開始位置にある状態では、スライダ30が、ガイド空間14における後端側の嵌合開始位置に配置される(図6,7参照)。レバー20が嵌合完了位置にある状態では、スライダ30が、ガイド空間14における前端側の嵌合完了位置に配置される(図8参照)。レバー20を操作すると、スライダ30が嵌合開始位置と嵌合完了位置との間で前後方向に平行移動する。以下、「前後方向」は、「スライダ30の嵌合開始位置と嵌合完了位置との間における移動方向」と同義で用いる。
【0024】
図4,5に示すように、左右両板状本体部31には、夫々、保持部42を収容するための収容空間35が形成されている。収容空間35は、板状本体部31の内面31Nと外面31Gとに開口している。収容空間35は、1つの第1溝部36と、上下一対の凹部37と、上下一対の第2溝部38とから構成されている。第1溝部36は、前後方向に細長く延びた空間である。凹部37は、第1溝部36の前端部を上下両方向へ拡幅させるように凹んだ空間である。板状本体部31うち、上下両凹部37に対して後側から臨む上下一対の部位は、座屈規制部39として機能する。前後方向において、座屈規制部39は凹部37よりも嵌合開始位置側(後側)に配置されている。第2溝部38は、第1溝部36の前後方向中央よりも後方の位置に配置され、第1溝部36から上下両方向へ延びた空間である。上下両第2溝部38の前後両内壁面は、後述する保持部42の支持部48に対してクリアランスを空けて前後方向に対向する移動規制面40として機能する。
【0025】
保持部42は、スライダ30とレバー20を嵌合開始位置に保持するための機能を発揮する部位である。保持部42は、前後方向に細長く延びた1つのアーム状係止片43と、1つの突当部45と、上下一対の支持部48と、1つの解除用延出部49とを備えて構成されている。アーム状係止片43は、保持部42の基端部44から前方へ片持ち状に延出した形状をなしている。アーム状係止片43の延出方向は、スライダ30が嵌合開始位置から嵌合完了位置へ移動する方向と同方向である。アーム状係止片43の基端部44(後端部)は、保持部42の基端部44と同じ部位である。アーム状係止片43は、第1溝部36内のうち第2溝部38と連通する領域、及び第1溝部36のうち第2溝部38よりも前方の領域に収容されている。
【0026】
突当部45は、アーム状係止片43の延出端部(前端部)と、上下一対の拡幅部46とから構成されており、直方形をなしている。拡幅部46は、アーム状係止片43の前端部から上下方向へ突出した部位である。以下、「上下方向」は、「スライダ30の嵌合開始位置と嵌合完了位置との間における移動方向と直交する方向」と同義で用いる。アーム状係止片43の延出端面(前端面)と拡幅部46の前面は、面一状に連なった係止面として機能する。突当部45のうち拡幅部46は、凹部37内に収容されている。拡幅部46と座屈規制部39は、クリアランスを空けてスライダ30の移動方向と同方向に対向するように配置されている。スライダ30の移動方向において、座屈規制部39は、拡幅部46よりも嵌合開始位置側に配置されている。換言すると、座屈規制部39は、突当部45に対して支持部48側から対向するように配置されている。
【0027】
上下一対の支持部48は、アーム状係止片43の基端部44から上下方向へ延出した部位であり、第2溝部38内に収容されている。支持部48の延出端は、第2溝部38の上端又は下端において板状本体部31に連なっている。保持部42は、一対の支持部48によって板状本体部31に支持されている。支持部48は、軸線を上下方向に向けた棒状をなす。支持部48の断面形状は、円形である。支持部48と移動規制面40は、クリアランスを空けてスライダ30の移動方向と同方向に対向するように配置されている。スライダ30の移動方向において、移動規制面40は、支持部48よりも嵌合開始位置側に配置されている。
【0028】
解除用延出部49は、保持部42の基端部44から、アーム状係止片43とは反対方向である後方へ片持ち状に延出した部位である。図4,5に示すように、解除用延出部49の後端部には、上下方向及び左右方向の両方向に対して傾斜した受圧面50が形成されている。解除用延出部49は、第1溝部36のうち第2溝部38よりも後方の領域に収容されている。
【0029】
板状本体部31の内面31Nには、干渉回避溝51が形成されている。干渉回避溝51は、板状本体部31の下端縁に開口し、カム溝33と同一の形状を有している。干渉回避溝51は、第1溝部36の後端部を通過するように配置されている。干渉回避溝51の途中に、受圧面50が位置している。図9に示すように、前後方向において、支持部48の中心から受圧面50の後端までの離隔寸法Sは、支持部48の中心から突当部45の前端までの離隔寸法Lよりも小さい。
【0030】
保持部42は、常には、支持部48の形状保持性により保持位置(図9,10を参照)において自由状態に保持されている。保持部42が保持位置にある状態では、突当部45のうち幅方向における外側の端部である係止部52が、板状本体部31の外面31Gよりも幅方向外側(図9,10における下方)へ突出している。突当部45は、座屈規制部39に対して嵌合完了位置側(前方)から対向するように位置する。
【0031】
保持部42は、支持部48を支点として、左右方向へ傾動することが可能である。以下、左右方向は、「スライダ30の嵌合開始位置と嵌合完了位置との間における移動方向と直交する方向」と同義で用いる。保持部42は、支持部48を弾性的に捻れ変形させながら、保持位置から保持解除位置(図11参照)へ変位することができる。保持部42が保持解除位置へ変位した状態では、係止部52を含む突当部45の全体が、第1溝部36内及び凹部37内に収容される。
【0032】
第2コネクタ60は、第2ハウジング61と、複数の雄形の第2雄端子金具(図示省略)とを組み付けて構成されている。図3に示すように、第2ハウジング61は、端子本体部62と、端子本体部62の上面外周縁から上方へ立ち上がったフード部63とを有する単一部品である。第2端子金具は、端子本体部62に取り付けられ、フード部63内に突出している。フード部63の左右両外側面には、夫々、前後方向に間隔を空けて配置された一対ずつのカムフォロア64が形成されている。カムフォロア64は、円柱形の突起状をなす。フード部63の左右両外側面の前後両端部には、突起状の保持解除部65が形成されている。
【0033】
次に、第1コネクタ10と第2コネクタ60の嵌合手順を説明する。第1コネクタ10においては、レバー20とスライダ30を嵌合開始位置へ移動させておく。嵌合開始位置にあるスライダ30は、保持部42によって、嵌合完了位置側へ移動することを規制され、嵌合開始位置に保持されている。図9~11は、右側のスライダ30における保持構造を示す。左側のスライダ30における保持構造は、右側のスライダ30と左右対称であるため、説明は省略する。
【0034】
両コネクタ10,60が未嵌合で、スライダ30が嵌合開始位置に有る状態では、図9に示すように、保持部42が保持位置にあり、突当部45の係止部52が、第1ハウジング11のストッパ16に対して後方からクリアランスを空けて対向するように位置する。スライダ30に対して嵌合完了位置側への移動力が付与されると、係止部52がストッパ16に突き当たることによって、スライダ30の移動が規制される。
【0035】
スライダ30に対する嵌合完了位置側への移動力が強い場合は、図10に示すように、突当部45がストッパ16に突き当たったままで、板状本体部31と、支持部48のうちアーム状係止片43からの延出端部とが、突当部45に対して相対的に前方へ移動する。ここで、突当部45は、支持部48から嵌合完了位置側へ片持ち状に延出したアーム状係止片43の延出端部(前端部)に形成されている。そのため、アーム状係止片43が支持部48と突当部45との間で座屈変形することが懸念される。しかし、板状本体部31と支持部48が突当部45に対して僅かに相対移動したところで、座屈規制部39が突当部45の拡幅部46に対して後方から当接するので、これ以上、板状本体部31と支持部48が突当部45に対して前方へ相対移動することはない。したがって、アーム状係止片43が支持部48と突当部45との間で座屈変形することはない。
【0036】
また、係止部52は、支持部48に対して幅方向外方へずれた位置に配置されているので、スライダ30に対して嵌合完了位置側への移動力が作用したときに、突当部45が、幅方向外方(図9,10における下方)へ変位してストッパ16から外れることが懸念される。しかし、ストッパ16に対して幅方向外方に隣接する位置には傾動規制面17が配置されており、この傾動規制面17に対して幅方向内側から突当部45が当接するので、係止部52がストッパ16から外れることはない。
【0037】
次に、レバー20とスライダ30が嵌合開始位置に保持されている状態で、第1コネクタ10のハウジング本体12内に第2コネクタ60のフード部63を下から嵌合する。フード部63は、左右両板状本体部31(左右両スライダ30)の内面31Nに沿うようにハウジング本体12内に嵌入され、図7に示すように、カムフォロア64がカム溝33の入口33Eに進入する。フード部63が進入する過程では、保持解除部65が、干渉回避溝51内を移動して、解除用延出部49の受圧面50を押圧する。この押圧作用によって、図11に示すように、保持部42が、支持部48を支点として保持解除位置へ傾動し、突当部45(係止部52)がストッパ16に対して幅方内側へ外れた位置へ変位する。これにより、スライダ30は、突当部45とストッパ16とによる保持状態から解放され、嵌合完了位置側へ移動し得る状態となる。
【0038】
この後、レバー20の操作部21を掴み、レバー20を嵌合開始位置から嵌合完了位置へ回動させる。レバー20の操作に伴い、スライダ30が嵌合開始位置から嵌合完了位置へ移動し、カム溝33とカムフォロア64との摺動によって、第1コネクタ10と第2コネクタ60が上下に引き寄せられる。図8に示すように、レバー20とスライダ30が嵌合完了位置に到達すると、第1コネクタ10と第2コネクタ60の嵌合が完了する。
【0039】
嵌合状態の第1コネクタ10と第2コネクタ60を離脱する際には、レバー20を嵌合完了位置からライナー嵌合開始位置へ回動させる。この操作により、スライダ30が嵌合完了位置から嵌合開始位置へ移動し、兼ねとカムフォロア64の摺動によって、第1コネクタ10と第2コネクタ60が離脱する。
【0040】
スライダ30を第1ハウジング11から外した状態において、保持部42が幅方向外方へ大きく傾動して拡幅部46が板状本体部31の外面31Gよりも外方へ外れ、更に保持部42に対して前後方向の外力が作用した場合には、支持部48が前後方向へ大きく傾くように変形する。このとき、支持部48が移動規制面40に当接することによって、板状本体部31に対する保持部42の前後方向への相対移動が規制される。これにより、支持部48が塑性変形したり、破断したりすることを防止できる。
【0041】
本実施例1のコネクタは、第1ハウジング11と、第1ハウジング11と嵌合可能な第2ハウジング61と、第1ハウジング11に設けられた倍力機能部材(レバー20とスライダ30)と、座屈規制部39とを有する。レバー20とスライダ30は、第1ハウジング11に対して嵌合開始位置から嵌合完了位置へ相対変位することによって、第1ハウジング11と第2ハウジング61を嵌合させる。
【0042】
倍力機能部材であるスライダ30には、保持部42が形成されている。保持部42は、スライダ30が嵌合開始位置から嵌合完了位置へ相対変位するときのスライダ30の変位方向と同方向へ片持ち状に延出したアーム状係止片43を有する。第1ハウジング11には、ストッパ16が形成されている。アーム状係止片43の延出端部の突当部45が、ストッパ16に対してアーム状係止片43の延出方向と同方向に突き当たると、ストッパ16は、嵌合開始位置のスライダ30が嵌合完了位置へ移動することを規制する。スライダ30には、アーム状係止片43が座屈することを規制する座屈規制部39が設けられている。
【0043】
アーム状係止片43の突当部45が第1ハウジング11のストッパ16に突き当たっている状態で、スライダ30に対して嵌合完了位置側への外力が作用しても、座屈規制部39によって、アーム状係止片43の座屈が防止される。座屈規制部39は、スライダ30の移動方向において、突当部45を挟んでストッパ16とは反対側に配置されている。突当部45が座屈規制部39に当接することによって、アーム状係止片43の座屈が防止される。アーム状係止片43が座屈しないので、スライダ30を嵌合開始位置に保持する機能の信頼性に優れている。
【0044】
保持部42は、上下一対の支持部48を有する。支持部48は、アーム状係止片43の延出方向と直交する上下方向に延びた軸状をなし、アーム状係止片43の基端部44とスライダ30の板状本体部31とを繋ぐ。アーム状係止片43は、支持部48を捻れ変形させながら、突当部45とストッパ16との対向面積を増減させる幅方向へ傾動することが可能である。支持部48が、細長い軸状をなしているので、アーム状係止片43の傾動角度を大きくして突当部45とストッパ16との対向面積を大きくしても、支持部48に生じる応力を低減することができる。支持部48の断面形状は円形であるので、支持部48が捻れ変形したときに、応力を効果的に分散させることできる。
【0045】
スライダ30には、支持部48に対して、アーム状係止片43の延出方向と平行な前後方向に対向する移動規制面40が形成されている。支持部48が、その軸線を前後方向へ傾けるように弾性変形したときには、支持部48が移動規制面40に当接することによって、支持部48の変形量を抑えることができる。
【0046】
保持部42は、アーム状係止片43の基端部44から突当部45とは反対方向(後方)へ延出した解除用延出部49を有している。第2ハウジング61は、保持解除部65を有する。保持解除部65は、第2ハウジング61のカムフォロア64とスライダ30のカム溝33との嵌合に伴って、解除用延出部49と干渉する。突当部45がストッパ16と対向している状態で保持解除部65が解除用延出部49と干渉することにより、保持部42が傾動して突当部45がストッパ16と非対向の位置へ変位する。保持部42によってスライダ30を嵌合開始位置に保持している状態で、第2ハウジング61(カムフォロア64)とスライダ30(カム溝33)とを嵌合させると、保持解除部65と解除用延出部49との干渉によって、保持部42による保持が解除される。よって、手動による保持解除の操作が不要である。
【0047】
前後方向において、支持部48から解除用延出部49における保持解除部65との干渉位置(受圧面50)までの離隔寸法Sは、支持部48から突当部45までの離隔寸法Lよりも小さい。この構成によれば、保持解除時における突当部45の変位量が解除用延出部49の変位量よりも大きいので、突当部45とストッパ16との対向面積を大きく確保することができる。
【0048】
第1ハウジング11には、突当部45に対し、保持解除部65と解除用延出部49との干渉による突当部45の変位方向とは反対側から対向する傾動規制面17が形成されている。この構成によれば、ストッパ16に押圧された突当部45がストッパ16に対して滑りを生じても、突当部45をストッパ16に突き当てた状態に保持することができる。
【0049】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記の実施形態も含まれる。
上記実施例1において、座屈規制部を、アーム状係止片と同じくスライダに形成したが、座屈規制部を第1ハウジング又はレバーに形成してもよい。
上記実施例1では、アーム状係止片をスライダに形成したが、アーム状係止片は、レバーに形成してもよく、第1ハウジングに形成してもよい。アーム状係止片をレバーに形成した場合、座屈規制部は、レバー、第1ハウジング、スライダのいずれに形成してもよい。アーム状係止片を第1ハウジングに形成した場合、座屈規制部は、第1ハウジング、レバー、スライダのいずれに形成してもよい。
上記実施例1では、倍力機能部材がレバーとスライダとの2部品によって構成されているが、倍力機能部材は、レバーのみで構成されていてもよく、スライダのみで構成されていてもよい。
上記実施例1では、座屈規制部が、突当部に対して支持部側から対向するように配置されているが、座屈規制部は、アーム状係止片に対してアーム状係止片の傾動方向に対向するように配置されていてもよい。
上記実施例1では、支持部が軸状をなすが、支持部は軸状以外の形状でもよい。
実施例1では、支持部の断面形状が円形であるが、支持部の断面形状は、楕円形、長円形、三角形、方形などでもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…第1コネクタ
11…第1ハウジング
12…ハウジング本体
13…電線カバー
14…ガイド空間
15…外壁部
16…ストッパ
17…傾動規制面
18…軸部
20…レバー(倍力機能部材)
21…操作部
22…アーム部
23…軸受孔
24…歯車
30…スライダ(倍力機能部材)
31…板状本体部
31G…板状本体部の外面
31N…板状本体部の内面
32…ラック
33…カム溝
33E…カム溝の入口
35…収容空間
36…第1溝部
37…凹部
38…第2溝部
39…座屈規制部
40…移動規制面
42…保持部
43…アーム状係止片
44…基端部
45…突当部
46…拡幅部
48…支持部
49…解除用延出部
50…受圧面(解除用延出部における保持解除部との干渉位置)
51…干渉回避溝
52…係止部
60…第2コネクタ
61…第2ハウジング
62…端子本体部
63…フード部
64…カムフォロア
65…保持解除部
L…支持部から解除用延出部における保持解除部との干渉位置までの離隔寸法
S…支持部から突当部までの離隔寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11