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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181648
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】車両用の電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20231218BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20231218BHJP
   B60L 53/20 20190101ALI20231218BHJP
   B60L 58/19 20190101ALI20231218BHJP
【FI】
H02J7/00 K
H02J7/00 P
B60L53/14
B60L53/20
B60L58/19
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094901
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】興津 直也
(72)【発明者】
【氏名】森本 亮
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA02
5G503BA02
5G503BA05
5G503BB01
5G503FA06
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC23
5H125BC23
5H125BC30
5H125BE02
5H125DD03
5H125EE61
5H125FF16
(57)【要約】
【課題】既存の規格の準拠に不必要な装置を利用せずに、外部充電器の将来的な規格の変更に対応することが可能な車両用の電源装置を提供する。
【解決手段】複数のバッテリパック11とジャンクションボックス12と受電口13と制御装置14と、を備え、受電口13に既存の急速充電規格を準拠した外部充電器1が接続されて複数のバッテリパック11が充電される車両用の電源装置10において、ジャンクションボックス12により複数のバッテリパック11の全てが直列に接続された状態での充電可能な最大電圧Vmaxは、次世代以降の規格により規格化される予定の電圧のうちでより高い側の電圧Vh以上の電圧であり、制御装置14は、受電口13に外部充電器1が接続された場合に、ジャンクションボックス12により複数のバッテリパック11どうしの接続を切り替えて、充電可能な電圧を外部充電器1の給電可能な最大電圧Vmに近づける制御処理を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用モータの電力源である複数のバッテリパックと、それらの複数のバッテリパックどうしの接続を切り替えるジャンクションボックスと、このジャンクションボックスを介して前記複数のバッテリパックに接続されている受電口と、制御装置と、を備え、前記受電口に複数の既存の急速充電規格のなかのいずれかの規格を準拠した外部充電器が接続されて前記複数のバッテリパックが充電される車両用の電源装置において、
前記ジャンクションボックスにより前記複数のバッテリパックの全てが直列に接続された状態での充電可能な最大電圧は、前記複数の既存の急速充電規格の次世代以降の規格により規格化される予定の電圧のうちでより高い側の電圧以上の電圧であり、
前記制御装置は、前記受電口に前記外部充電器が接続された場合に、前記ジャンクションボックスにより前記複数のバッテリパックどうしの接続を切り替えて、充電可能な電圧を前記外部充電器の給電可能な最大電圧に近づける制御処理を実行することを特徴とする車両用の電源装置。
【請求項2】
前記最大電圧は、前記既存の急速充電規格から前記次世代の規格への推移に基づいて設定される請求項1に記載の車両用の電源装置。
【請求項3】
前記受電口に前記複数の既存の急速充電規格のなかのいずれかの規格を準拠した前記外部充電器が接続された場合に、前記ジャンクションボックスによる前記複数のバッテリパックどうしの接続には少なくとも一つの並列接続が存在する請求項1または2に記載の車両用の電源装置。
【請求項4】
前記ジャンクションボックスにより前記複数のバッテリパックの全てが並列に接続された状態での充電可能な最小電圧は、前記複数の既存の急速充電規格により規格化された電圧に基づいて設定される請求項1または2に記載の車両用の電源装置。
【請求項5】
前記外部充電器による充電中以外に、前記制御装置は、前記ジャンクションボックスにより前記複数のバッテリパックどうしの接続に少なくとも一つの並列接続が存在する接続に切り替える制御処理を実行する請求項1または2に記載の車両用の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の電源装置に関し、より詳細には、車両の走行用モータの電力源として複数のバッテリパックを備える車両用の電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリの直並列を切り替え可能とする直並列切り替えリレーを備えた車両用の電源装置が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の発明は、車両の充電インフラストラクチャの現状の400Vから800Vの移行の過渡期に生じる車両用の電源装置と充電インフラストラクチャとの仕様の異なりへの対処として、外部充電器の給電可能な電圧に基づいて、第一バッテリと第二バッテリの直並列を切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-150618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、現状で普及している車両用の外部充電器は、国際電気標準会議(IEC)や米国自動車技術者協会(SAE)などで承認された複数の既存の急速充電規格に準拠している。よって、車両用の電源装置としては、特許文献1に記載の発明のように、複数の既存の急速充電規格のなかのいずれかの規格を準拠した外部充電器により充電可能な構成であればよい。
【0005】
しかし、脱炭素社会の実現に向けて全世界的に電気車両の普及がより進むと、既存の急速充電規格と異なる規格になる可能性が高い。例えば、外部充電器による充電時に要する時間をより短縮するために、外部充電器の給電可能な電圧が既存の急速充電規格により規格化された電圧よりも高い電圧になる可能性がある。そこで、既存の急速充電規格が変更される度に変更された新しい規格に対応した電源装置に交換することや車両自体を交換することを回避するために、車両用の電源装置には、DC/DCコンバータなどの降圧器が必須になっている。特許文献1に記載の電源装置も例外ではない。
【0006】
しかしながら、DC/DCコンバータなどの降圧器は、将来的な規格の変更に対応するための備えであり、既存の急速充電規格に対応するには不必要となっている。DC/DCコンバータなどの降圧器は、車両への搭載品の増加やそれに伴う重量増の要因となっていることに加えて、既存の急速充電規格に準拠した外部充電器からの充電時に降圧器を介すことによる充電効率の悪化の要因にもなっている。このように、既存の急速充電規格への対応に不必要な装置を利用せずに、外部充電器の将来的な規格の変更に対応するには改善の余地がある。
【0007】
本開示の目的は、既存の急速充電規格への対応に不必要な装置を利用せずに、外部充電器の将来的な規格の変更に対応することが可能な車両用の電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明の一態様の車両用の電源装置は、走行用モータの電力源である複数のバッテリパックと、それらの複数のバッテリパックどうしの接続を切り替えるジャンクションボックスと、このジャンクションボックスを介して前記複数のバッテリパックに接続されている受電口と、制御装置と、を備え、前記受電口に複数の既存の急速充電規格のなかのいずれかの規格を準拠した外部充電器が接続されて前記複数のバッテリパックが充電される車両用の電源装置において、前記ジャンクションボックスにより前記複数のバッテリパックの全てが直列に接続された状態での充電可能な最大電圧は、前記複数の既存の急速充電規格の次世代以降の規格により規格化される予定の電圧のうちでより高い側の電圧以上の電圧であり、前記制御装置は、前記受電口に前記外部充電器が接続された場合に、前記ジャンクションボックスにより前記複数のバッテリパックどうしの接続を切り替えて、充電可能な電圧を前記外部充電器の給電可能な最大電圧に近づける制御処理を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、外部充電器が準拠する規格が、既存の急速充電規格の次世代以降の規格であっても、ジャンクションボックスによる複数のバッテリパックどうしの接続の切り替えで対応することができる。これにより、既存の急速充電規格に対応するためには不必要なDC/DCコンバータなどの降圧器を利用することなく、外部充電器の規格の変更に対応することができる。また、充電可能な電圧を外部充電器の給電可能な最大電圧に近づけることで、充電効率を高めることができる。このように、本発明の一態様によれば、降圧器による重量増や車両への搭載性の悪化を回避しつつ、降圧器による充電効率の悪化も回避する構成でありながら、高い充電効率により充電に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両用の電源装置の実施形態を例示する説明図であり、複数のバッテリパックの全てが直列に接続された状態を示す。
図2】複数の急速充電規格およびそれらの次世代以降の規格により規格化された電圧と、複数のバッテリパックにおける最小電圧と最大電圧とを比較するグラフ図である。
図3】車両用の電源装置の実施形態を例示する説明図であり、複数のバッテリパックの全てが並列に接続された状態を示す。
図4】車両用の電源装置の実施形態を例示する説明図であり、直列に接続された二つのバッテリパックを一組とし、複数組のバッテリパックが並列に接続された状態を示す。
図5】車両用の電源装置の実施形態を例示する説明図であり、複数のバッテリパックの半数が直列に接続されたバッテリパックどうしが並列に接続された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、車両用の電源装置を、図に示す実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図1に例示する車両用の電源装置10の実施形態は、図示しない公知の車両に搭載されていて、複数のバッテリパック11が車両の走行用モータの電力源となっている。電源装置10は、複数のバッテリパック11、ジャンクションボックス12、受電口13、および、制御装置14を備えている。電源装置10は、受電口13が外部充電器1に接続されて、複数のバッテリパック11が充電される。
【0013】
外部充電器1は、公知の充電スタンドなどの急速充電設備に設置されている。外部充電器1は、複数の既存の急速充電規格(急速充電用標準規格、電気自動車急速充電規格)のうちのいずれかの規格を準拠している。複数の急速充電規格としては、国際電気標準会議や米国自動車技術者協会など各団体で承認されたCHAdeMO(登録商標)規格、GB/T(中国推薦性国家標準)規格、CCS(Combined Charging System)規格(欧州CSSと北米CSSとの二つの規格の総称)、テスラ社の専用の規格(以下、テスラ規格)の四つの規格が例示される。なお、複数の急速充電規格は、例示した四つの規格が全世界的に主流となっているが、四つの規格に限定されるものではなく、テスラ規格のように車両製造メーカや急速充電器製造メーカの独自の規格であってもよい。本開示において、既存の規格とは、その規格を準拠した外部充電器1が既に運用されていることを示している。
【0014】
バッテリパック11は、公知のバッテリパックを用いることができる。バッテリパック11は、内部に多数の単電池(バッテリセルやバッテリモジュール)を有していて、それらの多数の単電池の全てが直列に接続されている。複数のバッテリパック11どうしは、ジャンクションボックス12により直並列が切り替え可能に構成されている。複数のバッテリパック11は、全てが直列に接続された状態での充電可能な最大電圧Vmaxが、複数の急速充電規格の次世代以降の規格で規格化される予定の電圧のうちでより高い側の電圧Vh以上の電圧になっている。また、複数のバッテリパック11は、全てが並列に接続された状態での充電可能な最小電圧Vminが、複数の急速充電規格で規格化された電圧のうちでより低い側の電圧Vl以下の電圧になっている。
【0015】
次世代以降の規格とは、既に公知となっている開発中の規格(次世代の規格を含む)を示し、その規格を準拠した外部充電器1が未だ運用されていないことを示している。なお、次世代以降の規格には、開発が進行しているが未発表の規格は含まれないものとする。次世代以降の規格は、将来的に既存の規格の代わりに普及する可能性が高い。それ故、電源装置10は、既存の規格のみではなく、次世代以降の規格にも対応させることが重要となっている。複数の急速充電規格の次世代以降の規格としては、CHAdeMO規格とGB/T規格とを統一する方向で進められている次世代超高出力充電規格(プロジェクトコード:ChaoJi規格)やCSS規格の次世代規格(CSS3.0)が例示される。
【0016】
図2には、複数の急速充電規格およびそれらの次世代以降の規格により規格化された電圧(V1~V7)と、複数のバッテリパック11の全てが並列に接続された状態で充電可能な最小電圧Vminと、複数のバッテリパック11の全てが直列に接続された状態での充電可能な最大電圧Vmaxと、を示す。規格化された電圧は、地域により図に示した電圧に対して多少の高低があるが、本開示では、それぞれの規格のロードマップに従った電圧とする。電圧V1、電圧V2は、CHAdeMO規格により規格化された電圧を示し、電圧V3は、GB/T規格で規格化された電圧を示す。電圧V4は、ChaoJi規格で規格化された電圧を示す。電圧V5は、北米CSS規格で規格化された電圧を示し、電圧V6は、欧州CSS規格で規格化された電圧を示す。電圧V7は、CSS規格の次世代の規格で規格化された電圧を示す。なお、図に示した規格化された電圧は、当業者であれば、各団体での承認の発表や開発発表などに基づいて電源装置10の設計段階で予め把握することが可能になっている。
【0017】
高い側の電圧Vhは、次世代以降の規格により規格化される予定の電圧のうちでより高い側(例えば、電圧V4、電圧V7)の電圧を示している。高い側の電圧Vhは、未だ運用されていないことから規格化される予定の電圧と定義している。高い側の電圧Vhは、次世代以降の規格により規格化される予定の電圧のうちで最も高い電圧でもよいが、場合によっては最も高い電圧でなくてもよい。例えば、既存の急速充電規格の主流は地域により異なっている(例えば、日本ではCHAdeMO規格が主流であり、中国ではGB/T規格が主流であり、米欧州ではCSS規格が主流である)。そこで、高い側の電圧Vhは、電源装置10を搭載した車両が走行する地域で主流となっている既存の急速充電規格の次世代以降の規格で規格化される予定の電圧であってもよい。なお、次世代以降の規格により規格化される予定の電圧は、既存の急速充電規格の推移から分かるとおり、既存の急速充電規格により規格化された電圧よりも高い電圧となることが予想される。
【0018】
最大電圧Vmaxは、高い側の電圧Vhよりも高い電圧であることが望ましい。最大電圧Vmaxがより高い電圧であればその分、未だ発表もされていない次々世代以降の規格により規格される予定の電圧にも対応可能になる。詳述すると、最大電圧Vmaxは、その上限が既存の急速充電規格から次世代の規格への推移に基づいて設定されることが望ましい。つまり、最大電圧Vmaxは、その推移から予想される次々世代以降の規格により規格される予定の電圧に近い電圧に設定されることがより望ましい。例えば、CHAdeMO規格からChaoJi規格の推移(電圧V1、電圧V2、電圧V4の順に推移)では、電圧V2が電圧V1の2倍になっていて、電圧4が電圧V2の1.5倍になっている。GB/T規格からChaoJi規格の推移(電圧V3、電圧V4の順に推移)では、電圧V4が電圧V3の2倍になっている。CSS規格の推移(電圧V5、V6から電圧V7への推移)では、電圧V7が電圧V5の2.5倍、電圧V6の約1.7倍になっている。つまり、本願出願時における既存の急速充電規格から次世代以降の規格への推移では、次世代以降の規格により規格化される予定の電圧が既存の規格により規格化された電圧の1.5倍以上、2.5倍以下となっていることが分かる。そこで、本願出願時における最大電圧Vmaxの上限としては、高い側の電圧Vhの1.5倍以上、2.5倍以下であることが望ましい。最大電圧Vmaxが高い側の電圧Vhの1.5倍未満の場合に、次々世代以降の急速充電規格により規格化される予定の電圧に対応することができなくなる可能性が高い。また、最大電圧Vmaxが高い側の電圧Vhの2.5倍よりも高くなる場合に、複数のバッテリパック11の重量の増加や車両への搭載性の悪化などのデメリットが大きくなる。そこで、最大電圧Vmaxの上限が、既存の急速充電規格から次世代の規格への推移に基づいて設定されることで、将来的な備えには十分で、かつ、複数のバッテリパック11が増えることにより生じるデメリットを最小限に抑えるには有利になる。
【0019】
例えば、最大電圧Vmaxは、高い側の電圧Vhを電圧V4または電圧V7とした場合に、1.5kV以上の電圧になり、より望ましくは2.25kV~3.75kVの範囲内の電圧になる。最大電圧Vmaxがより高い値になるほど、複数のバッテリパック11の総重量が重くなり、車両への搭載性が悪化する。一方で、最大電圧Vmaxがより小さい値になるほど、将来的な規格変更への対応が難しくなる。よって、最大電圧Vmaxは、電源装置10の設計段階で把握できている将来的な規格変更を考慮して、適宜、設定することが望ましい。
【0020】
最大電圧Vmaxは、最小電圧Vminと複数のバッテリパック11の総数Nと、に基づいている。最小電圧Vminは、複数のバッテリパック11の全てが並列に接続された状態での充電可能な電圧であり、一つのバッテリパック11に充電可能な電圧でもある。以下に、最小電圧Vminおよび総数Nについて詳述する。
【0021】
低い側の電圧Vlは、複数の既存の急速充電規格により規格化された電圧のうちでより低い側(例えば、電圧V1、電圧V3、電圧V5)の電圧を示している。低い側の電圧Vlは、複数の既存の急速充電規格により規格化さえた電圧のうちで最も高い電圧でもよいが、場合によっては最も高い電圧でなくてもよい。低い側の電圧Vlは、電源装置10を搭載した車両が走行する地域で主流となっている既存の急速充電規格により規格化された電圧のうちで最も低い電圧であってもよい(例えば、CHAdeMO規格では電圧V1、北米CSS規格では電圧V5、欧州CSS規格では電圧V6)。
【0022】
最小電圧Vminは、複数の既存の急速充電規格により規格化された電圧に基づいて設定されることが望ましい。最小電圧Vminは、ジャンクションボックス12による複数のバッテリパック11どうしの接続を切り替えることで、複数の既存の急速充電規格により規格化された電圧のより低い側の電圧Vlに対応可能な電圧であることがより望ましい。つまり、最小電圧Vminは、既存の複数の急速充電規格により規格化された電圧の最大公約数的な電圧であることが望ましい。なお、最小電圧Vminは、既存の全ての急速充電規格により規格化された電圧に対応する必要はなく、電源装置10を搭載した車両が走行する地域に応じて選択された急速充電規格により規格化された電圧に対応できればよい。例えば、最小電圧VminをCHAdeMO規格の電圧V1相当に設定することで、複数のバッテリパック11どうしの接続によりCHAdeMO規格の電圧V2やCSS規格により規格化された電圧V5やV6に対応可能になる。なお、最小電圧Vminは、規格化された電圧により充電可能な電圧であり、規格化された電圧よりも低い電圧になる。つまり、本願出願時における最小電圧Vminを電圧V1相当に設定することは、例えば、最小電圧Vminを350V~400V程度の電圧に設定することになる。
【0023】
電源装置10におけるバッテリパック11の総数Nは、最小電圧Vminと総数Nとの乗算した値が高電圧Vhよりも大きくなることを条件に、その総数Nの重複も含めた素因数の数が二つ以上であることが望ましい。バッテリパック11の総数Nの重複も含めた素因数の数が二つ以上であれば、ジャンクションボックス12による直並列の切り替えにより、複数のバッテリパック11の全てが直列に接続された状態と全てが並列に接続された状態との他に、直列に接続された状態の一組のバッテリパック11が複数組、並列に接続された状態が存在する。さらに、バッテリパック11の総数Nは、その総数Nの重複も含めた素因数の数が三つ以上、または、その総数Nの相違なる素因数の数が二つ以上かつその総数の重複も含めた素因数の数が二つ以上、であることが望ましい。バッテリパック11の総数Nがそのような条件を満たすと、前述の三つの状態に加えて、複数のバッテリパック11の半数が直列に接続された状態と残りの半数が直列に接続された状態とが互いに並列に接続された状態が存在する。このように、バッテリパック11の総数Nにより、複数のバッテリパック11の接続状態の数が増えることで、複数のバッテリパック11の充電可能な電圧が段階的になり、様々な充電の規格に対応させるには有利になる。
【0024】
ジャンクションボックス12は、複数のバッテリパック11どうしの接続を切り替える装置であり、公知のジャンクションボックスを用いることができる。ジャンクションボックス12は、多数のスイッチ15を有しており、これらの多数のスイッチ15の入り切りが制御装置14により制御されている。ジャンクションボックス12は、複数のバッテリパック11の全てが直列に接続された状態と全てが並列に接続された状態とを切り替えることが可能であればよいが、それらの状態に加えて、直列に接続された状態の一組のバッテリパック11が複数組、並列に接続された状態や、複数のバッテリパック11の半数が直列に接続された状態と残りの半数が直列に接続された状態に切り替えることが可能であることが望ましい。つまり、ジャンクションボックス12は、複数のバッテリパック11どうしの接続の切り替えにより、複数のバッテリパック11の充電可能な電圧が三段階以上の段階に調節可能な構成であることが望ましい。
【0025】
受電口13は、公知の受電口を用いることができる。受電口13は、外部充電器1に接続されるが、既存の規格により形状などが異なる。そのため、受電口13は、既存の規格のうちのいくつかの規格に対応するように、別途、アダプタを取り付けることでそれらの規格に対応可能な構造になっていることが望ましい。
【0026】
制御装置14は、公知の種々のコンピュータを用いることができる。制御装置14は、中央演算処理部、主記憶部、補助記憶部、入出力部を有している。制御装置14は、受電口13を介して、外部充電器1から外部充電器1の給電可能な電圧Vmを含むデータを受信し、そのデータに基づいて、ジャンクションボックス12の多数のスイッチ15の入り切りを制御する。なお、制御装置14は、ジャンクションボックス12の内部に配置されてもよく、車両の制御を行う車両用制御装置であってもよい。
【0027】
制御装置14は、受電口13に外部充電器1が接続された場合に、ジャンクションボックス12により複数のバッテリパック11どうしの接続を切り替えて、充電可能な電圧を外部充電器1の給電可能な電圧Vmに近づける制御処理を実行する。給電可能な電圧Vmは、外部充電器1が準拠する規格で規格化された電圧であり、外部充電器1が準拠する規格ごとに異なる。外部充電器1が準拠する規格が既存の複数の急速充電規格の場合に、給電可能な電圧Vmは、図2の電圧V1~電圧V3、電圧V5、電圧V6のいずれかが例示される。また、外部充電器1が準拠する規格が次世代以降の規格の場合に、給電可能な電圧Vmは、図2の電圧V4、電圧V7のどちらかが例示される。給電可能な電圧Vmに近づけた充電可能な電圧は、給電可能な電圧Vm未満の電圧であることが望ましい。また、給電可能な電圧Vmに近づけた充電可能な電圧は、複数のバッテリパック11どうしの接続により段階的に変化する電圧のうちで、給電可能な電圧Vm未満で、かつ、最も高い電圧であることがより望ましい。
【0028】
制御装置14は、外部充電器1による充電中以外に、ジャンクションボックス12により複数のバッテリパック11どうしの接続に少なくとも一つの並列接続が存在する接続に切り替える制御処理を実行する。外部充電器1による充電中以外に、複数のバッテリパック11どうしは、全てが並列に接続されることが望ましい。これにより、車両の走行中は、走行用モータなどに供給可能な電力量を最大限確保することが可能となり、車両の航続距離を延ばすには有利になる。
【0029】
図1図3図5は、ジャンクションボックス12による複数のバッテリパック11の総数Nを六つ(相違なる素因数の数が二つ、かつ、重複も含めた素因数の数が二つ)とした接続状態の一例を示している。また、一つのバッテリパック11の充電可能な最小電圧Vminは、400Vを一例とする。図1に示す、複数のバッテリパック11の全てが直列に接続された状態では、電源装置10の充電可能な電圧(最大電圧Vmax)が2400Vになる。図3に示す、複数のバッテリパック11の全てが並列に接続された状態では、電源装置10の充電可能な電圧(最小電圧Vmin)が400Vになる。図4に示す、直列に接続された二つのバッテリパック11を一組とし、三組のバッテリパック11が並列に接続された状態では、電源装置10の充電可能な電圧が800Vになる。図5に示す、直列に接続された三つ(総数の半数)のバッテリパック11どうしが並列に接続された状態では、電源装置10の充電可能な電圧が1200Vになる。
【0030】
電源装置10は、既存の複数の急速充電規格やそれらの次世代以降の規格により規格化された電圧であれば、図3図5に示す状態で対応することが可能となっている。つまり、受電口13に既存の複数の急速充電規格のいずれかの規格に準拠した外部充電器1が接続された場合に、ジャンクションボックス12による複数のバッテリパック11どうしの接続には少なくとも一つの並列接続が存在する。例えば、CHAdeMO規格に準ずる外部充電器1による充電時には、制御装置14により、ジャンクションボックス12に複数のバッテリパック11の全てを並列に接続させて、充電可能な電圧を調節する。また、CSS規格に準ずる外部充電器1による充電時には、制御装置14により、ジャンクションボックス12に直列に接続された二つのバッテリパック11を一組とし、三組のバッテリパック11を並列に接続させて、充電可能な電圧を調節する。また、開発中のChaoJi規格に準ずる外部充電器1による充電時には、制御装置14により、ジャンクションボックス12に直列に接続された三つ(総数の半数)のバッテリパック11どうしを並列に接続させて、充電可能な電圧を調節する。さらに、既存の複数の急速充電規格やそれらの次世代以降の規格に準拠しておらず、未だ発表もされていない次々世代以降の規格に準拠した外部充電器1による充電時には、制御装置14により、ジャンクションボックス12に複数のバッテリパック11の全てを直列に接続させて、充電可能な電圧を調節する。
【0031】
以上のように、本実施形態によれば、外部充電器1が準拠する規格が、既存の急速充電規格の次世代以降の規格であっても、ジャンクションボックス12による複数のバッテリパック11どうしの接続の切り替えで対応することができる。このように、複数のバッテリパック11の接続の切り替えのみで充電可能な電圧を調節することで、受電口13からジャンクションボックス12を経由して複数のバッテリパック11までの充電回路には、DC/DCコンバータなどの降圧器を設ける必要がなくなる。それ故、既存の急速充電規格への対応では不必要なDC/DCコンバータなどの降圧器を利用することなく、外部充電器1の規格の変更に対応することができる。
【0032】
また、本実施形態は、ジャンクションボックス12による複数のバッテリパック11どうしの接続の切り替えにより、充電可能な電圧を段階的に変更することが可能である。それ故、充電可能な電圧を外部充電器1の給電可能な電圧Vmに近づけることができる。これにより、充電効率を高めることができる。このように、本実施形態によれば、降圧器による重量増や車両への搭載性の悪化を回避しつつ、降圧器による充電効率の悪化も回避する構成でありながら、高い充電効率により充電に要する時間を短縮することができる。さらに、本実施形態によれば、電力に関する効率を示す指標である電費も向上することができる。
【0033】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の車両用の電源装置は特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0034】
既述した実施形態の説明での高い側の電圧Vh、最大電圧Vmax、および、最小電圧Vminは、一例であり、本開示はその数値が限定されるものではない。それらの電圧は、電源装置10の設計段階で把握されている複数の既存の急速充電規格や次世代以降の規格に応じた適切な値に設定されることが望ましい。つまり、電源装置10の設計段階で、外部充電器1が準拠する急速充電規格が新しい規格に変更されたことや、準拠する急速充電規格の次世代以降の規格の開発が公知になったことを把握した場合に、それらの電圧は、その新しい規格や次世代以降の規格に応じた値に設定される。
【0035】
最小電圧Vmaxは、低い側の電圧Vlよりも低い電圧として、直列接続された二つあるいは三つのバッテリパック11の電圧を低い側の電圧Vlに対応させることもできる。これにより、バッテリパック11の総数がより増えることになるが、一つのバッテリパック11を短小軽量化することが可能となる。これにより、複数のバッテリパック11の配置の自由度が増す。
【符号の説明】
【0036】
1 外部充電器
10 電源装置
11 バッテリパック
12 ジャンクションボックス
13 受電口
14 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5