IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

特開2023-181659射出成形樹脂部品、射出成形樹脂部品の製造方法、及び射出成形樹脂部品の製造で使用される金型
<>
  • 特開-射出成形樹脂部品、射出成形樹脂部品の製造方法、及び射出成形樹脂部品の製造で使用される金型 図1
  • 特開-射出成形樹脂部品、射出成形樹脂部品の製造方法、及び射出成形樹脂部品の製造で使用される金型 図2
  • 特開-射出成形樹脂部品、射出成形樹脂部品の製造方法、及び射出成形樹脂部品の製造で使用される金型 図3
  • 特開-射出成形樹脂部品、射出成形樹脂部品の製造方法、及び射出成形樹脂部品の製造で使用される金型 図4
  • 特開-射出成形樹脂部品、射出成形樹脂部品の製造方法、及び射出成形樹脂部品の製造で使用される金型 図5
  • 特開-射出成形樹脂部品、射出成形樹脂部品の製造方法、及び射出成形樹脂部品の製造で使用される金型 図6
  • 特開-射出成形樹脂部品、射出成形樹脂部品の製造方法、及び射出成形樹脂部品の製造で使用される金型 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181659
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】射出成形樹脂部品、射出成形樹脂部品の製造方法、及び射出成形樹脂部品の製造で使用される金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/42 20060101AFI20231218BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20231218BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20231218BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B29C33/42
B29C45/26
B29C45/00
B60J5/00 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094916
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】川合 伸治
(72)【発明者】
【氏名】竹下 哲史
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AH23
4F202AH25
4F202AR07
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK01
4F202CK06
4F202CK42
4F202CK54
4F206AH23
4F206AH25
4F206AR07
4F206JA07
4F206JL02
4F206JQ78
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】射出成形樹脂部品において、タブの形成による単純な質量コストの増加を抑制できる射出成形樹脂部品、射出成形樹脂部品の製造方法、及び射出成形樹脂部品の製造で使用される金型を提供すること。
【解決手段】開口101が設けられた取付対象100に取り付けられる射出成形樹脂部品10であって、取付対象100から露出する意匠面S1と、意匠面S1とは反対側に位置する裏面S2と、裏面S2側に設けられており、ゲート痕Gmを有するタブとして区画板部84と、を備えている。取付対象100への取り付けを完了した状態で意匠面S1を見たとき、区画板部84は、取付対象100により覆われている。区画板部84は、取付対象100への取り付け時に開口101を形成する縁100a上をスライド可能である第1縁83aを有している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が設けられた取付対象に取り付けられる射出成形樹脂部品であって、
前記取付対象から露出する意匠面と、
前記意匠面とは反対側に位置する裏面と、
前記裏面側に設けられており、ゲート痕を有するタブと、を備え、
前記取付対象への取り付けを完了した状態で前記意匠面を見たとき、前記タブは、前記取付対象により覆われており、
前記タブは、前記取付対象への取り付け時に前記開口を形成する縁上をスライド可能である縁部を有している
射出成形樹脂部品。
【請求項2】
開口が設けられた取付対象に取り付けられる射出成形樹脂部品であって、前記取付対象から露出する意匠面と、前記意匠面とは反対側に位置する裏面と、前記裏面側に設けられており、ゲート痕を有するタブと、を備え、前記取付対象への取り付けを完了した状態で前記意匠面を見たとき、前記タブは、前記取付対象により覆われており、前記タブは、前記取付対象への取り付け時に前記開口を形成する縁上をスライド可能である縁部を有している前記射出成形樹脂部品の製造方法であって、
ゲートに連続しており、前記タブを形成するためのタブゲートを有する金型のキャビティに対して、前記ゲートから溶融した樹脂材料を充填する充填工程と、
前記充填工程後に実行する工程であって、充填した前記樹脂材料を冷却した後、前記ゲート内で硬化した前記樹脂材料と前記タブゲート内で硬化した前記樹脂材料とを分離することにより前記タブに前記ゲート痕が形成される分離工程と、を有している
射出成形樹脂部品の製造方法。
【請求項3】
開口が設けられた取付対象に取り付けられる射出成形樹脂部品であって、前記取付対象から露出する意匠面と、前記意匠面とは反対側に位置する裏面と、前記裏面側に設けられており、ゲート痕を有するタブと、を備え、前記取付対象への取り付けを完了した状態で前記意匠面を見たとき、前記タブは、前記取付対象により覆われており、前記タブは、前記取付対象への取り付け時に前記開口を形成する縁上をスライド可能である縁部を有している前記射出成形樹脂部品の製造で使用される金型であって、
ゲートに連続しており、前記タブを形成するためのタブゲートを有している
射出成形樹脂部品の製造で使用される金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形樹脂部品、射出成形樹脂部品の製造方法、及び射出成形樹脂部品の製造で使用される金型に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車用ドアトリムが記載されている。
上記のドアトリムは、ドアインナーパネルに設けられている。ドアトリムは、芯材を備えている。芯材は、例えば射出成形により形成される。芯材のウエスト部の裏面には、位置決め用リブが設けられている。ドアインナーパネルには、ロケート孔が設けられている。ロケート孔に位置決め用リブが入り込むことにより、ドアインナーパネルに対するドアトリムの位置決め作業を簡単且つ迅速に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-270679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、芯材のような射出成形樹脂部品には、射出成形用金型のタブゲートに対応したタブが設けられることが知られている。上記タブは、射出成形用金型のタブゲートによって形成される痕跡である。このため、タブは、射出成形樹脂部品の機能に寄与しないうえに、射出成形樹脂部品に使用する樹脂材料の量を単純に増加させている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する射出成形樹脂部品は、開口が設けられた取付対象に取り付けられる射出成形樹脂部品であって、前記取付対象から露出する意匠面と、前記意匠面とは反対側に位置する裏面と、前記裏面側に設けられており、ゲート痕を有するタブと、を備え、前記取付対象への取付が完了した状態で前記意匠面を見たとき、前記タブは、前記取付対象により覆われており、前記タブは、前記取付対象への取り付け時に前記開口を形成する縁上をスライド可能である縁部を有している。
【0006】
上記構成によれば、タブは、金型のタブゲートで形成されるだけでなく、射出成形樹脂部品を取付対象に取り付けるときに、タブの縁部が取付対象の開口を形成する縁にスライド可能である。すなわち、射出成形樹脂部品の取付対象への取り付けを補助する機能を有している。よって、射出成形樹脂部品において、タブの形成による単純な質量コストの増加を抑制できる。
【0007】
上記課題を解決する射出成形樹脂部品の製造方法は、開口が設けられた取付対象に取り付けられる射出成形樹脂部品であって、前記取付対象から露出する意匠面と、前記意匠面とは反対側に位置する裏面と、前記裏面側に設けられており、ゲート痕を有するタブと、を備え、前記取付対象への取り付けを完了した状態で前記意匠面を見たとき、前記タブは、前記取付対象により覆われており、前記タブは、前記取付対象への取り付け時に前記開口を形成する縁上をスライド可能である縁部を有している前記射出成形樹脂部品の製造方法であって、ゲートに連続しており、前記タブを形成するためのタブゲートを有する金型のキャビティに対して、前記ゲートから溶融した樹脂材料を充填する充填工程と、前記充填工程後に実行する工程であって、充填した前記樹脂材料を冷却した後、前記ゲート内で硬化した前記樹脂材料と前記タブゲート内で硬化した前記樹脂材料とを分離することにより前記タブに前記ゲート痕が形成される分離工程と、を有している。
【0008】
上記構成の製造方法により製造された射出成形樹脂部品において、タブは、金型のタブゲートで形成されるだけでなく、射出成形樹脂部品を取付対象に取り付けるときに、タブの縁部が取付対象の開口を形成する縁にスライド可能である。すなわち、射出成形樹脂部品の取付対象への取り付けを補助する機能を有している。よって、射出成形樹脂部品において、タブの形成による単純な質量コストの増加を抑制できる。
【0009】
上記課題を解決する射出成形樹脂部品の製造で使用される金型は、開口が設けられた取付対象に取り付けられる射出成形樹脂部品であって、前記取付対象から露出する意匠面と、前記意匠面とは反対側に位置する裏面と、前記裏面側に設けられており、ゲート痕を有するタブと、を備え、前記取付対象への取り付けを完了した状態で前記意匠面を見たとき、前記タブは、前記取付対象により覆われており、前記タブは、前記取付対象への取り付け時に前記開口を形成する縁上をスライド可能である縁部を有している前記射出成形樹脂部品の製造で使用される金型であって、ゲートに連続しており、前記タブを形成するためのタブゲートを有している。
【0010】
上記構成の金型により製造された射出成形樹脂部品において、タブは、金型のタブゲートで形成されるだけでなく、射出成形樹脂部品を取付対象に取り付けるときに、タブの縁部が取付対象の開口を形成する縁にスライド可能である。すなわち、射出成形樹脂部品の取付対象への取り付けを補助する機能を有している。よって、射出成形樹脂部品において、タブの形成による単純な質量コストの増加を抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、射出成形樹脂部品において、タブの形成による単純な質量コストの増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】射出成形樹脂部品の実施形態の斜視図である。
図2】射出成形樹脂部品の実施形態の斜視図である。
図3】実施形態のタブを拡大した概略図である。
図4】射出成形樹脂部品をインストルメントパネルに取り付けている途中を示した断面図である。
図5】射出成形樹脂部品をインストルメントパネルに取り付けたときの断面図である。
図6】射出成形樹脂部品の製造方法における充填工程、及び金型の構成を示した断面図である。
図7】射出成形樹脂部品の製造方法における分離工程を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、射出成形樹脂部品、射出成形樹脂部品の製造方法、及び金型を具体化した実施形態を図1図7にしたがって説明する。
<射出成形樹脂部品>
図1に示すように、本実施形態の射出成形樹脂部品10は、ヘッドアップディスプレイ用の樹脂部品である。射出成形樹脂部品10は、射出成形により形成された部品である。射出成形樹脂部品10は、筒状の壁部20を有している。射出成形樹脂部品10の第1開口20a及び第2開口20bを貫通する方向を貫通方向Aとする。壁部20は、第1端21と、第2端22とを有している。第1端21は、貫通方向Aにおける壁部20の一方の端であり、第2端22は、貫通方向Aにおける壁部20の他方の端である。
【0014】
第1端21は、貫通方向Aで見たとき、四角環状である。第1端21は、壁部20の第1開口20aを形成している。第1端21は、一対の第1縁31と、一対の第2縁32と、を有している。
【0015】
第2端22は、貫通方向Aで見たとき、四角環状である。第2端22は、壁部20の第2開口20bを形成している。貫通方向Aで見ると、第2開口20bは、第1開口20aよりも小さい。貫通方向Aにおいて第1開口20aを正面視すると、第1開口20aの内側に第2開口20bが位置している。第2端22は、一対の第1縁41と、一対の第2縁42と、を有している。
【0016】
壁部20は、第1壁部51と、第2壁部52と、第3壁部53と、第4壁部54と、を有している。第3壁部53は、第1壁部51及び第2壁部52と連続している。第4壁部54は、第1壁部51及び第2壁部52と連続している。
【0017】
第1壁部51は、第1面51aと、第2面51bと、を有している。第2面51bは、第1壁部51の厚さ方向において第1面51aとは反対側に位置している。第2壁部52は、第1面52aと、第2面52bと、を有している。第2面52bは、第2壁部52の厚さ方向において第1面52aとは反対側に位置している。第3壁部53は、第1面53aと、第2面53bと、を有している。第2面53bは、第3壁部53の厚さ方向において第1面53aとは反対側に位置している。第4壁部54は、第1面54aと、第2面54bと、を有している。第2面54bは、第4壁部54の厚さ方向において第1面54aとは反対側に位置している。
【0018】
各第1面51a,52a,53a,54aは、壁部20の内側面である。各第1面51a,52a,53a,54aは、壁部20の意匠面S1を形成している。各第2面51b,52b,53b,54bは、壁部20の外側面である。各第2面51b,52b,53b,54bは、壁部20の裏面S2を形成している。裏面S2は、壁部20の厚さ方向において意匠面S1とは反対側に位置する面である。意匠面S1は、貫通方向Aにおいて壁部20の第1開口20aを正面視したとき、第1開口20aの内側に目視できる面である。
【0019】
壁部20は、環状のフランジ部60を有している。フランジ部60は、壁部20の第1端21に設けられている。フランジ部60は、第1端21から壁部20の外側に向けて延出している。
【0020】
図2に示すように、射出成形樹脂部品10は、第1取付部71と、第2取付部72と、第3取付部73と、を有している。本実施形態では、第1取付部71は、2つ採用されている。各第1取付部71は、第2壁部52の第2面52bに設けられている。各第1取付部71は、第1縁31,41が延びる方向に間隔を空けて配置されている。
【0021】
本実施形態では、第2取付部72は、図2に1つだけ図示されているが、2つ採用されている。各第2取付部72は、第1壁部51の第2面51bに設けられている。各第2取付部72は、第1縁31,41が延びる方向に間隔を空けて配置されている。第2取付部72は、フランジ部60と対向する対向部72aを有している。フランジ部60と対向部72aとは、所定の間隔をあけて対向している。
【0022】
本実施形態では、第3取付部73は、図2に1つだけ図示されているが、2つ採用されている。1つの第3取付部73は、第4壁部54の第2面54bに設けられている。1つの第3取付部73は、第4壁部54の第2面54bから突出している。1つの第3取付部73は、フランジ部60と対向する対向部73aを有している。フランジ部60と対向部73aとは、所定の間隔をあけて対向している。なお、残りの第3取付部73は、1つの第3取付部73と同じ形状を有している。図示しないが、残りの第3取付部73は、第3壁部53の第2面53bに設けられている。図示しないが、残りの第3取付部73は、対向部73aを有している。
【0023】
<第1取付部及びタブ>
以下、2つの第1取付部71のうちの1つの第1取付部71の構成を説明する。
図3に示すように、第1取付部71は、第1板81と、第2板82と、を有している。第1板81及び第2板82は、第2壁部52の第2面52bから突出している。第1板81及び第2板82は、第2面52bから平行に延びている。
【0024】
第1板81は、接続部81aと、延設部81bと、を有している。接続部81aは、フランジ部60に連続している。延設部81bは、接続部81aと一体形成されている。延設部81bの一部は、フランジ部60と対向している。延設部81bは、第2面52bから離れる方向において、接続部81aから延出している。延設部81bの一部とフランジ部60とは、所定の間隔を空けて対向している。
【0025】
延設部81bは、第1縁81cと、第2縁81dと、を有している。第1縁81cは、第2面52bから離れる方向において、接続部81aから延びている。第2縁81dは、第1縁81cから第2面52bに向けて延びている。第2縁81dは、第2面52bに連続している。
【0026】
第2板82は、接続部82aと、延設部82bと、を有している。接続部82aは、フランジ部60に連続している。接続部82aの形状は、接続部81aと同じである。接続部82aは、各板81,82の厚さ方向において、接続部82aを投影した形状である。延設部82bは、接続部82aと一体形成されている。延設部82bの一部は、フランジ部60と対向している。延設部82bは、接続部82aから第2面52bから離れる方向に延出している。延設部82bの一部とフランジ部60とは、所定の間隔を空けて対向している。
【0027】
各板81,82の厚さ方向において、第1板81の第2縁81dを第2板82に投影した仮想線を第1仮想線VL1とする。延設部82bは、第1仮想線VL1及び第2面52bから突出している突出板部83を有している。
【0028】
各板81,82の厚さ方向において、延設部82bは、第1板81の第1縁81cが投影される部分である第1縁82cを有している。
突出板部83の厚さは、延設部82bの厚さと同じである。突出板部83は、第1縁83aと、第2縁83bと、第3縁83cと、を有している。第1縁83aは、第1板81の第1縁81cと同じ方向に延びている。第2縁83bは、第1縁83aから第2面52bに向けて延びている。第2縁83bは、第2面52bに到達していない。第3縁83cは、第2縁83bから第2面52bに沿って概ね延びた後に第2面52bに連続している。なお、延設部82bの第1縁82cと、突出板部83の第1縁83aとは、説明の都合上、別の符号を用いているが、延設部82bにおいて連続的に延びる1つの縁である。
【0029】
突出板部83において、第3縁83cを第1仮想線VL1に向けて延長した仮想線を第2仮想線VL2とする。突出板部83は、第1仮想線VL1及び第2仮想線VL2により仮想的に区画された区画板部84を有している。
【0030】
区画板部84は、第1縁83a及び第2縁83bを有している。第2縁83bには、ゲート痕Gmが形成されている。ゲート痕Gmは、例えば、第2縁83bの全体のうちで白化した部分である。ゲート痕Gmは、例えば、第2縁83bの全体のうちで表面の粗さが粗くなっている部分である。
【0031】
区画板部84は、ゲート痕Gmを有している。区画板部84は、射出成形樹脂部品10を射出成形する際に後述する金型90のゲートGの位置を示すためのタブである。区画板部84は、壁部20の裏面S2側に設けられている。なお、残りの第1取付部71は、上述した1つの第1取付部71における区画板部84を除いた構成を有している。
【0032】
<射出成形樹脂部品の取付対象に対する取付態様>
図4及び図5に示すように、射出成形樹脂部品10は、取付対象100に取り付けられる部品である。本実施形態において、取付対象100は、車体のインストルメントパネルである。取付対象100には、開口101が設けられている。取付対象100は、開口101を形成する縁100aを有している。縁100aにより開口101が形成されている。本実施形態の射出成形樹脂部品10は、取付対象100に形成された開口101を覆うように取付対象100に取り付けられる。
【0033】
図4に示すように、射出成形樹脂部品10により開口101を覆う場合、壁部20の第2開口20bを取付対象100に向けた状態とする。この状態で、例えば、第2壁部52を第1壁部51よりも先に開口101の内側に挿入する。そして、射出成形樹脂部品10を開口101の内側に入れていく。このとき、1つの第1取付部71の区画板部84の第1縁83aが縁100aに最初に接触する。
【0034】
図4及び図5に示すように、射出成形樹脂部品10を開口101に入れ続けると、区画板部84の第1縁83aが縁100aに沿ってスライドする。第1縁83aが縁100a上をスライドした後、第2板82の延設部82bの第1縁82cが縁100a上をスライドする。すなわち、区画板部84は、取付対象100の開口101を壁部20が覆うときに縁100a上をスライド可能である。具体的には、区画板部84は、射出成形樹脂部品10の取付対象100への取り付け時に縁100a上をスライド可能である縁部である第1縁83aを有している。なお、1つの第1取付部71の延設部82bの第1縁82cが縁100a上をスライドし始めたとき、残りの第1取付部71の延設部82bの第1縁82cも縁100a上をスライドし始める。
【0035】
図5に示すように、第1縁82cが縁100aをスライドすると、縁100aは、フランジ部60と、2つの延設部82bとに挟み込まれる。その後、第2取付部72の対向部72aとフランジ部60との間に縁100aを挟み込む。同様に、図示しないが、第3取付部73の対向部73aとフランジ部60との間に縁100aを挟み込む。これにより、射出成形樹脂部品10の取付対象100への取り付けを完了する。射出成形樹脂部品10の取付対象100への取り付けを完了した状態で意匠面S1を見たとき、意匠面S1は、取付対象100から露出している。開口101を壁部20が覆った状態で意匠面S1を見たとき、区画板部84は、取付対象100により覆われている。なお、上述した所定の間隔は、取付対象100の厚さに設定されることが好ましい。
【0036】
<射出成形樹脂部品の製造で使用される金型>
次に、射出成形樹脂部品10の製造で使用される金型90について説明する。金型90は、射出成形用金型である。
【0037】
図6に示すように、金型90には、射出成形樹脂部品10の形状に倣ったキャビティCaが形成されている。金型90は、キャビティCaを形成するための複数の分割型を有している。
【0038】
複数の分割型は、第1分割型91を有している。第1分割型91は、キャビティCaのうち射出成形樹脂部品10の第2壁部52側の構成の形状に倣った複数の溝部を有している。第1分割型91は、フランジ部用溝部92と、第2板用溝部93とを有している。
【0039】
図6及び図7に示すように、フランジ部用溝部92は、キャビティCaを区画する面のうち第2壁部52に連続するフランジ部60の形状に倣った面を有している。
第2板用溝部93は、キャビティCaを区画する面のうち1つの第1取付部71が有する第2板82の形状に倣った面を有している。第2板用溝部93は、第1面93aと、第2面93bと、第3面93cと、第4面93dと、第5面93eと、を有している。
【0040】
第1面93aは、1つの第1取付部71の接続部82aの縁の形状に倣った面である。第2面93bは、1つの第1取付部71の延設部82bにおける第1縁82cの形状に倣った面である。第2面93bは、第1面93aに連続している。第3面93cは、1つの第1取付部71の延設部82bにおける区画板部84の第1縁83aの形状に倣った面である。第3面93cは、第2面93bと滑らかに連続している。なお、第2面93bと、第3面93cとは、説明の都合上、別の符号を用いているが、第1分割型91において連続的に延びる1つの面である。
【0041】
第4面93dは、区画板部84の第2縁83bの形状に倣った面である。第4面93dは、第3面93cに連続している。第5面93eは、突出板部83の第3縁83cの形状に倣った面である。第5面93eは、第4面93dに連続している。
【0042】
第1分割型91は、ゲートGと、ランナーRと、を有している。ゲートGは、キャビティCaに溶融した樹脂材料95を充填するための充填口である。ゲートGは、第4面93dに設けられている。ランナーRは、第1分割型91の外部とゲートGとを連通している。
【0043】
ゲートGには、タブゲート94が連続している。タブゲート94は、区画板部84を形成する。タブゲート94は、第3面93c及び第4面93dを含んでいる。タブゲート94は、第3面93c及び第4面93dの各々に連続するとともに、区画板部84の厚さ方向の面を形成する面を含んでいる。金型90は、タブゲート94を有している。
【0044】
<射出成形樹脂部品の製造方法>
次に、射出成形樹脂部品10の製造方法を説明する。
図6に示すように、射出成形樹脂部品10の製造方法は、充填工程Pr1を有している。充填工程Pr1は、金型90のキャビティCaに対して、ゲートGから溶融した樹脂材料95を充填する工程である。
【0045】
図7に示すように、射出成形樹脂部品10の製造方法は、分離工程Pr2を有している。分離工程Pr2は、充填工程Pr1の後に実行する工程である。分離工程Pr2は、金型90に充填した樹脂材料95を冷却した後に実行する工程である。分離工程Pr2は、ゲートG内で硬化した樹脂材料95とタブゲート94内で硬化した樹脂材料95とを分離する工程である。分離工程Pr2により区画板部84にはゲート痕Gmが形成される。ゲート痕Gmは、ゲートG内で硬化した樹脂材料95と、タブゲート94内で硬化した樹脂材料95とを分離したときに、白化又は表面の粗さが粗くなることで形成される。
【0046】
射出成形樹脂部品10の製造方法は、分離工程Pr2が完了した時点が完了する。なお、分離工程Pr2の後に射出成形樹脂部品10の表面処理等を行う加工工程を追加してもよい。
【0047】
[本実施形態の作用及び効果]
本実施形態の作用及び効果を説明する。
区画板部84は、金型90のタブゲート94で形成されるだけでなく、射出成形樹脂部品10を取付対象100に取り付けるときに、区画板部84の第1縁83aが取付対象100の縁100aにスライド可能である。すなわち、射出成形樹脂部品10の取付対象100への取り付けを補助する機能を有している。よって、射出成形樹脂部品10において、区画板部84の形成による単純な質量コストの増加を抑制できる。
【0048】
[変更例]
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0049】
○ 1つの第1取付部71の第2板82に区画板部84が形成されていたが、これに限らない。例えば、区画板部84を第2取付部72や第3取付部73に形成してもよい。このように変更する場合、区画板部84には、壁部20により開口101を覆うときに縁100a上をスライド可能な縁部を形成する。
【0050】
○ タブは、第1取付部71とは別構成としてもよい。例えば、タブは、第2面52bから突出する板状をなしていてもよい。タブは、各第2面51b,53b,54bのいずれに設けてもよい。ただし、このように変更する場合、タブには、射出成形樹脂部品10の壁部20により取付対象100の開口101を覆うときに縁100a上をスライド可能である縁部を形成する。
【0051】
○ 区画板部84、及び上記変更例のタブの形状は、適宜変更してもよい。この変更に合わせて金型90のタブゲート94の形状も変更する。
○ 射出成形樹脂部品10は、ヘッドアップディスプレイ用の樹脂部品であったが、これに限らない。例えば、射出成形樹脂部品10は、射出成形により形成されるドアトリムとしてもよい。
【0052】
このように変更する場合、ドアトリムのうち車室内側の面が意匠面である。そして、ドアトリムのうち意匠面とは反対側に位置している面が裏面である。ドアトリムの裏面に、ドアトリムの製造で使用する金型のゲートの位置を示すタブを形成する。当該タブは、ゲート痕を有している。ドアトリムは、車体のインナパネルに取り付けられる。すなわち、インナパネルが取付対象である。インナパネルには、例えば、タブが挿入される孔が形成されている。当該孔は、例えば、インナパネルに対してドアトリムを位置決めするために形成される。当該孔が取付対象に設けられた開口である。ドアトリムの裏面をインナパネルに対向させた状態で、ドアトリムのタブをインナパネルの孔に挿通させる。タブは、孔を形成する縁上をスライドして孔の内部に進入する。すなわち、タブは、ドアトリムをインナパネルへの取り付け時にドアトリムの孔を形成する縁上をスライド可能である縁部を有している。タブがインナパネルの孔に挿通された状態で、孔はインナパネルにより覆われる。ドアトリムのインナパネルへの取り付けを完了した状態で意匠面を見たとき、タブは、インナパネルにより覆われている。
【0053】
○ 射出成形樹脂部品10は、ヘッドアップディスプレイ用の樹脂部品、又はドアトリムでなくてもよい。射出成形樹脂部品10は、一般的に射出成形により形成される樹脂部品であればよい。
【符号の説明】
【0054】
10…射出成形樹脂部品、20…壁部、83a…第1縁、84…区画板部、90…金型、94…タブゲート、95…樹脂材料、100…取付対象、101…開口、100a…縁、Ca…キャビティ、G…ゲート、Gm…ゲート痕、S1…意匠面、S2…裏面、Pr1…充填工程、Pr2…分離工程。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7