(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181660
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】車両用収納ボックス
(51)【国際特許分類】
B60R 7/04 20060101AFI20231218BHJP
B60N 3/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
B60R7/04 C
B60N3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094917
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】政次 美徳
(72)【発明者】
【氏名】小澤 悦雄
(72)【発明者】
【氏名】森本 美里
【テーマコード(参考)】
3B088
3D022
【Fターム(参考)】
3B088CA01
3D022CA07
3D022CB01
3D022CC18
3D022CD02
3D022CD12
3D022CD19
(57)【要約】
【課題】開口部の開放のためのスライドに伴いリッドが邪魔になるのを抑制しつつ、開口部を通じた収納部への物品の出し入れを容易にする。
【解決手段】車両用収納ボックス20は、前領域27f及び後領域27rからなる主開口部27を有する主収納部26と、前リッド41及び後リッド31に分割されたリッドとを備える。前リッド41は、前閉位置では前領域27fを閉塞し、前閉位置の前方に設定された前全開位置では前領域27fを全開にし、両位置の間では、前閉位置から前方へ遠ざかるほど前領域27fを大きく開放するように、前後方向に直線状にスライド可能に配置される。後リッド31は、後閉位置では後領域27rを閉塞し、後閉位置の後方に設定された後全開位置では後領域27rを全開にし、両位置の間では、後閉位置から後方へ遠ざかるほど後領域27rを大きく開放するように、前後方向に直線状にスライド可能に配置される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部を有する収納部と、前記開口部を開放及び閉塞するリッドとを備え、隣り合う車両用シートの間に配置される車両用収納ボックスにおいて、
前記開口部は、前領域と前記前領域の後方に連続する後領域とからなり、
前記リッドは、前リッド及び後リッドに分割され、
前記前リッドは、前閉位置では前記前領域を閉塞し、かつ前記前閉位置の前方に設定された前全開位置では前記前領域を全開にし、さらに前記前閉位置及び前記前全開位置の間では、前記前閉位置から前方へ遠ざかるほど前記前領域を大きく開放するように、車両の前後方向に直線状にスライド可能に配置され、
前記後リッドは、前記前閉位置に対し後方に隣接する後閉位置では前記後領域を閉塞し、かつ前記後閉位置の後方に設定された後全開位置では前記後領域を全開にし、さらに、前記後閉位置及び前記後全開位置の間では、前記後閉位置から後方へ遠ざかるほど前記後領域を大きく開放するように、前記前後方向に直線状にスライド可能に配置されている車両用収納ボックス。
【請求項2】
前記前リッド及び前記後リッドの少なくとも一方の上面には、物品を載置するための載置面が形成されている請求項1に記載の車両用収納ボックス。
【請求項3】
前記開口部を主開口部とし、前記収納部を主収納部とするとともに、前記前リッド及び前記後リッドの少なくとも一方を対象リッドとした場合、
前記対象リッドには、前記対象リッドの上面に開口する副開口部を有する副収納部と、複数のシャッタ構成部材を屈曲可能に連結することにより構成され、かつスライドすることにより前記副開口部を開放及び閉塞するシャッタとが設けられている請求項1又は2に記載の車両用収納ボックス。
【請求項4】
前記前リッド及び前記後リッドの一方のスライドに連動して他方をスライドさせる連動機構をさらに備え、前記連動機構は、
前記前リッドが前記前閉位置に位置し、かつ前記後リッドが前記後閉位置に位置する状態で、前記前リッド及び前記後リッドの一方がスライドされたときには、そのスライドに連動して他方を反対方向へスライドさせ、
前記前リッドが前記前全開位置に位置し、かつ前記後リッドが前記後全開位置に位置する状態で、前記前リッド及び前記後リッドの一方がスライドされたときには、そのスライドに連動して他方を反対方向へスライドさせるように構成されている請求項1に記載の車両用収納ボックス。
【請求項5】
前記車両の車幅方向における少なくとも片側に配置されたアームレストをさらに備え、
前記アームレストは、前記前リッド及び前記後リッドよりも高い箇所に肘載せ部を備えている請求項1に記載の車両用収納ボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣り合う車両用シートの間に配置される車両用収納ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の隣り合う車両用シートの間に配置される車両用収納ボックスとして、例えば、特許文献1には、収納部及びリッドを備えたコンソールボックスが記載されている。収納部は、上部に開口部を有している。リッドは、開口部を閉塞する閉位置と、開口部を全開にする全開位置との間で、車両の前後方向に直線状にスライドする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記車両用収納ボックスでは、開口部の前後方向の開口長が、リッドの前後方向のスライド量に応じて変化する。ここで、リッドが閉位置から全開位置までスライドするとき、又はその逆に、全開位置から閉位置までスライドするときのスライド量を、最大スライド量とする。すると、リッドの最大スライド量が少なく設定されると、リッドを閉位置から最大量スライドさせても、開口部の前後方向の開口長が短く、開口部を通じて収納部へ物品を入れたり、収納部から物品を出したりすることがしづらい。これに対し、リッドの最大スライド量が多く設定されると、リッドを閉位置から最大量スライドさせることで、開口部の前後方向の開口長を長くし、収納部に対する物品の出し入れがしやすくなる。反面、例えば、閉位置のリッドが後方へスライドされることにより開口部が開放されるタイプの車両用収納ボックスでは、後方へスライドされたリッドが、後席乗員の邪魔になりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための車両用収納ボックスの各態様を記載する。
[態様1]上部に開口部を有する収納部と、前記開口部を開放及び閉塞するリッドとを備え、隣り合う車両用シートの間に配置される車両用収納ボックスにおいて、前記開口部は、前領域と前記前領域の後方に連続する後領域とからなり、前記リッドは、前リッド及び後リッドに分割され、前記前リッドは、前閉位置では前記前領域を閉塞し、かつ前記前閉位置の前方に設定された前全開位置では前記前領域を全開にし、さらに前記前閉位置及び前記前全開位置の間では、前記前閉位置から前方へ遠ざかるほど前記前領域を大きく開放するように、車両の前後方向に直線状にスライド可能に配置され、前記後リッドは、前記前閉位置に対し後方に隣接する後閉位置では前記後領域を閉塞し、かつ前記後閉位置の後方に設定された後全開位置では前記後領域を全開にし、さらに、前記後閉位置及び前記後全開位置の間では、前記後閉位置から後方へ遠ざかるほど前記後領域を大きく開放するように、前記前後方向に直線状にスライド可能に配置されている車両用収納ボックス。
【0006】
上記の構成によれば、前リッドが前閉位置に位置するときには、開口部の前領域が閉塞される。前リッドが前全開位置に位置するときには、前領域が全開にされる。前リッドは、前閉位置と前全開位置との間で前後方向へ直線状にスライド可能である。前領域の前後方向の開口長は、前リッドのスライド量に応じて変化する。前リッドの最大スライド量は、1つのリッドによって開口部の全体を開放及び閉塞する場合の最大スライド量よりも少ない。全開にされた前領域の前後方向の開口長は、全開にされた開口部の前後方向の開口長よりも短い。
【0007】
これに対し、後リッドが後閉位置に位置するときには、開口部の後領域が閉塞される。後リッドが後全開位置に位置するときには、後領域が全開にされる。後リッドは、後閉位置と後全開位置との間で前後方向へ直線状にスライド可能である。後領域の前後方向の開口長は、後リッドのスライド量に応じて変化する。後リッドの最大スライド量は、1つのリッドによって開口部の全体を開放及び閉塞する場合の最大スライド量よりも少ない。全開にされた後領域の前後方向の開口長は、全開にされた開口部の前後方向の開口長よりも短い。
【0008】
上記のように前リッドの最大スライド量が少ないことから、前全開位置までスライドされた前リッドは、前リッドの前方に位置するものと干渉しにくい。また、上記のように後リッドの最大スライド量が少ないことから、後全開位置までスライドされた後リッドは、後リッドの後方に位置するものと干渉しにくい。
【0009】
また、上記のように、前リッド及び後リッドの各最大スライド量が少ない。しかし、前リッドを前全開位置までスライドさせ、かつ後リッドを後全開位置までスライドさせると、前領域及び後領域がともに全開にされ、開口部の全体の前後方向の開口長が長くなる。従って、収納部に対する物品の出し入れがしやすくなる。
【0010】
[態様2]前記前リッド及び前記後リッドの少なくとも一方の上面には、物品を載置するための載置面が形成されている[態様1]に記載の車両用収納ボックス。
上記の構成によれば、前リッドの上面に載置面が形成されている場合には、前後方向における前リッドの位置に拘わらず、載置面上に小物類等の物品を載置することが可能である。従って、前リッドを、前領域の少なくとも一部を開放させる位置までスライドさせると、前領域を通じて収納部に物品を出し入れすることと、前リッドの載置面に物品を載置することとが可能となる。
【0011】
また、後リッドの上面に載置面が形成されている場合には、前後方向における後リッドの位置に拘わらず、載置面上に小物類等の物品を載置することが可能である。従って、後リッドを、後領域の少なくとも一部を開放させる位置までスライドさせると、後領域を通じて収納部に物品を出し入れすることと、後リッドの載置面に物品を載置することとが可能となる。
【0012】
[態様3]前記開口部を主開口部とし、前記収納部を主収納部とするとともに、前記前リッド及び前記後リッドの少なくとも一方を対象リッドとした場合、前記対象リッドには、前記対象リッドの上面に開口する副開口部を有する副収納部と、複数のシャッタ構成部材を屈曲可能に連結することにより構成され、かつスライドすることにより前記副開口部を開放及び閉塞するシャッタとが設けられている[態様1]又は[態様2]に記載の車両用収納ボックス。
【0013】
上記の構成によれば、対象リッドでは、シャッタをスライドさせて副開口部を開放させると、副開口部を通じて小物類等の物品の少なくとも下部を副収納部に収納することが可能となる。また、物品が副収納部よりも小さい場合には、その物品の全体が副収納部内に収納された状態で、シャッタをスライドさせて副開口部を閉塞させると、物品が副収納部から出るのを規制することが可能となる。
【0014】
[態様4]前記前リッド及び前記後リッドの一方のスライドに連動して他方をスライドさせる連動機構をさらに備え、前記連動機構は、前記前リッドが前記前閉位置に位置し、かつ前記後リッドが前記後閉位置に位置する状態で、前記前リッド及び前記後リッドの一方がスライドされたときには、そのスライドに連動して他方を反対方向へスライドさせ、前記前リッドが前記前全開位置に位置し、かつ前記後リッドが前記後全開位置に位置する状態で、前記前リッド及び前記後リッドの一方がスライドされたときには、そのスライドに連動して他方を反対方向へスライドさせるように構成されている[態様1]~[態様3]のいずれか1つに記載の車両用収納ボックス。
【0015】
上記の構成によれば、前リッドが前閉位置に位置し、かつ後リッドが後閉位置に位置するときには、開口部の全体が閉塞される。この状態で、前リッドが前方へスライドされると、そのスライドが連動機構により後リッドに伝達され、後リッドが、前リッドとは反対方向である後方へスライドされる。また、開口部の全体が閉塞された状態で、後リッドが後方へスライドされると、そのスライドが連動機構により前リッドに伝達され、前リッドが、後リッドとは反対方向である前方へスライドされる。前領域の前後方向の開口長と、後領域の前後方向の開口長とが連動して長くなる。
【0016】
前リッドが前全開位置に位置し、かつ後リッドが後全開位置に位置するときには、開口部の全体が全開にされる。この状態で、前リッドが後方へスライドされると、そのスライドが連動機構により後リッドに伝達され、後リッドが、前リッドとは反対方向である前方へスライドされる。また、開口部の全体が全開にされた状態で、後リッドが前方へスライドされると、そのスライドが連動機構により前リッドに伝達され、前リッドが、後リッドとは反対方向である後方へスライドされる。前領域の前後方向の開口長と、後領域の前後方向の開口長とが連動して短くなる。
【0017】
[態様5]前記車両の車幅方向における少なくとも片側に配置されたアームレストをさらに備え、前記アームレストは、前記前リッド及び前記後リッドよりも高い箇所に肘載せ部を備えている[態様1]~[態様4]のいずれか1つに記載の車両用収納ボックス。
【0018】
上記の構成によれば、車両用シートに着座している乗員は、前リッド及び後リッドによる開口部の開放状態に拘らず、肘をアームレストの肘載せ部に載せることで、肩が腕を支える負担を軽減することが可能である。
【発明の効果】
【0019】
上記車両用収納ボックスによれば、開口部の開放のためのスライドに伴いリッドが邪魔になるのを抑制しつつ、開口部を通じた収納部への物品の出し入れを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】主開口部が閉塞された車両用収納ボックスの斜視図である。
【
図2】
図1の主開口部が全開にされた車両用収納ボックスの斜視図である。
【
図3】
図3(A)は
図1の車両用収納ボックスの部分平面図であり、
図3(B)は
図2の車両用収納ボックスの部分平面図である。
【
図5】
図3(A)における5-5線部分断面図である。
【
図6】
図3(B)における6-6線部分断面図である。
【
図7】
図3(A)における7-7線部分断面図である。
【
図8】
図8(A)は
図7におけるX部の部分拡大断面図であり、
図8(B)は
図8(A)における前リッドが前方へ、後リッドが後方へそれぞれスライドされた状態を示す部分断面図である。
【
図10】
図4における10-10線部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、車両用収納ボックスの一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両10の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両10の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向であって車両10の前進時の左右方向と一致するものとする。
【0022】
図1及び
図2に示すように、車両10の車室11内には、前部座席として一対の車両用シート12,13が、左右方向に離間した状態で配置されている。右方の車両用シート12は運転席として機能するものであり、ここに乗員(運転者)が着座する。左方の車両用シート13は助手席として機能するものであり、ここに乗員(助手席乗員)が着座する。
【0023】
両車両用シート12,13の間であって、車室11の床上には、車両用収納ボックス20が配置されている。車両用収納ボックス20は、一般に、コンソールボックス、センターコンソール、フロアコンソール等と呼ばれるものに相当する。
【0024】
図1及び
図4に示すように、車両用収納ボックス20は、ボックス本体21及び延長部25を備えている。ボックス本体21は、左右方向に比べ、前後方向及び上下方向にそれぞれ長い箱状をなしている。延長部25は、ボックス本体21よりも高さが低く、かつボックス本体21の下部から前方へ延びている。
【0025】
<主収納部26>
図5及び
図6に示すように、ボックス本体21の前後方向における中間部分には、小物等の物品を収納するための収納部として、主収納部26が設けられている。主収納部26は、上部に開口部として、主開口部27を有している。主収納部26の底部28は、ボックス本体21の底部22(
図4参照)よりも高い箇所に位置している。
図3(B)及び
図6に示すように、主開口部27は、前領域27fと、前領域27fの後方に連続する後領域27rとからなる。
【0026】
図5及び
図7に示すように、車両用収納ボックス20は、さらに、リッド、連動機構65、後付勢機構75、前付勢機構81及びアームレスト61を備えている。リッドは、後リッド31と、後リッド31に対し前方に隣接する前リッド41とに分割されている。
【0027】
<後リッド31>
後リッド31は、ボックス本体21の上部に前後方向に直線状にスライド可能に配置されている。上記スライドは、ボックス本体21上に設定された
図5に示す後閉位置と、後閉位置の後方に設定された
図6に示す後全開位置との間で行なわれる。後リッド31は、後閉位置では後領域27rを閉塞し、後全開位置では後領域27rを全開にする。後リッド31は、後閉位置及び後全開位置の間では、後閉位置から後方へ遠ざかるほど後領域27rを大きく開放する。
【0028】
なお、後領域27rの「全開」とは、後リッド31のスライドにより、後領域27rが採り得る開放状態のうち、最も大きく開放された状態をいうものとする。この点は、前領域27fの「全開」についても同様である。
【0029】
図1に示すように、後リッド31の周縁部32の一部、より詳しくは、後リッド31の前部であり、かつ左右方向における両側縁部には、左右方向のうち、互いに接近する側へ膨出する膨出部32aが形成されている。なお、
図1では、右方の膨出部32aのみが図示されている。
【0030】
後リッド31において、膨出部32aを含む周縁部32によって囲まれた部分には、上端が開口された凹部33が形成されている。凹部33の底面は、周縁部32の上面よりも低い箇所で、前後方向及び左右方向に延びる平坦な面に形成されている。この面は、物品を載置するための載置面33aを構成している。後リッド31の周縁部32における前縁部には、後リッド31を前方へスライド操作する際に力が加えられる操作部34が形成されている。
【0031】
なお、ボックス本体21と後リッド31との間には、後リッド31が後全開位置よりも後方へスライドするのを規制する後全開位置決め機構(図示略)が設けられている。また、ボックス本体21と後リッド31との間には、後リッド31が後閉位置よりも前方へスライドするのを規制する後閉位置決め機構(図示略)が設けられている。さらに、ボックス本体21と後リッド31との間には、前閉位置に位置決めされた後リッド31を、前閉位置に解除可能にロックする後閉ロック機構(図示略)が設けられている。後閉ロック機構によるロック状態の解除は、例えば、後閉ロック機構とは別に設けられた解除ボタン35(
図1参照)によって行なわれる。
【0032】
<前リッド41>
前リッド41は、ボックス本体21の上部であって、上記後リッド31よりも前方において前後方向に直線状にスライド可能に配置されている。前リッド41の上記スライドは、ボックス本体21上に設定された
図5に示す前閉位置と、前閉位置の前方に設定された
図6に示す後全開位置との間で行なわれる。前閉位置は、後リッド31の上記後閉位置に対し前方に隣接する箇所に設定されている。前リッド41は、前閉位置では前領域27fを閉塞し、前全開位置では前領域27fを全開にする。前リッド41は、前閉位置及び前全開位置の間では、前閉位置から前方へ遠ざかるほど前領域27fを大きく開放する。
【0033】
図1及び
図9に示すように、前リッド41の周縁部42の一部、より詳しくは、前リッド41の後部であり、かつ左右方向における両側縁部には、左右方向のうち、互いに接近する側へ膨出する膨出部42aが形成されている。
【0034】
前リッド41において、膨出部42aを含む周縁部42によって囲まれた部分には、上端が開口された凹部43が形成されている。凹部43の底面43aは、周縁部42の上面よりも低い箇所であって、上記載置面33aと同程度の高さとなる箇所に形成されている。
図1及び
図10に示すように、前リッド41の周縁部42における後縁部には、前リッド41を後方へスライド操作する際に力が加えられる操作部44が形成されている。
【0035】
図5に示すように、本実施形態では、前リッド41は、特許請求範囲における対象リッドとされている。前リッド41は、後リッド31とは異なり、副収納部45、シャッタ格納部47及びシャッタ51を備えている。副収納部45は、主収納部26よりも浅く、同主収納部26よりも小さな容積を有している。副収納部45は、飲み物用容器等の物品の少なくとも下部を収容し得る大きさを有しており、例えば、カップホルダとして使用可能である。副収納部45は、前リッド41の上面、より正確には凹部43の底面43aに開口する副開口部46を有している。シャッタ格納部47は、シャッタ51を格納する箇所であり、前リッド41において、副収納部45の外部に設けられており、副開口部46に繋がっている。副収納部45及びシャッタ格納部47は、主収納部26の底部28よりも高い箇所に位置している。
【0036】
副開口部46及びシャッタ格納部47の左右両側には、一対のガイド溝部48が形成されている。各ガイド溝部48は、前リッド41の上部では直線状をなしている。各ガイド溝部48は、前リッド41の上部よりも下方では湾曲されている。
【0037】
シャッタ51は、複数のシャッタ構成部材52を屈曲可能に連結することにより構成されている。左右方向における各シャッタ構成部材52の両端には軸部(図示略)が設けられ、各軸部がガイド溝部48内に摺動可能に挿入されている。シャッタ51は、シャッタ格納部47内に格納されて副開口部46を全開にする全開位置(図示略)と、
図5に示すように、シャッタ格納部47から引き出されて副開口部46を閉塞する閉位置との間でスライド可能である。
【0038】
図1及び
図5に示すように、複数のシャッタ構成部材52のうち一番前に位置するものは、他のシャッタ構成部材52よりも、前後方向に広く形成されている。この一番前のシャッタ構成部材52には、シャッタ51のスライド操作時に指先を掛けるための摘み部53が設けられている。
【0039】
図1、
図3(A)及び
図5に示すように、前リッド41において、副収納部45よりも前方には、スマートフォン等の携帯電子端末55の下部を収納するための端末収納部56が設けられている。各端末収納部56は、上部が開放され、かつ下部ほど後方に位置するように鉛直面に対し傾斜している。携帯電子端末55の下部を端末収納部56に挿入することで、携帯電子端末55を傾斜状態で保持することが可能である。なお、前リッド41内にワイヤレス充電器等の充電器が配置され、収納状態の携帯電子端末55に充電する構成が採用されてもよい。
【0040】
ボックス本体21と前リッド41との間には、前リッド41が前全開位置よりも前方へスライドするのを規制する前全開位置決め機構(図示略)が設けられている。また、ボックス本体21と前リッド41との間には、前リッド41が前閉位置よりも後方へスライドするのを規制する前閉位置決め機構(図示略)が設けられている。さらに、ボックス本体21と前リッド41との間には、前閉位置に位置決めされた前リッド41を、前閉位置に解除可能にロックする前閉ロック機構(図示略)が設けられている。このロックの解除は、例えば、前閉ロック機構とは別に設けられた解除ボタン57(
図1参照)を操作することによって行なわれてもよい。
【0041】
また、本実施形態では、後リッド31のロックを解除するための解除ボタン35と、前リッド41のロックを解除するための解除ボタン57とが、伝達機構(図示略)を介して連結されている。解除ボタン35,57の一方が操作されると、その操作が伝達機構によって他方に伝達されるように構成されている。
【0042】
<アームレスト61>
図1及び
図9に示すように、車両用収納ボックス20は、左右方向における両側に一対のアームレスト61をさらに備えている。各アームレスト61は、縦壁部62及び肘載せ部63を備えている。アームレスト61毎の縦壁部62は、後リッド31及び前リッド41を左右両側から挟み込む箇所で、上下方向及び前後方向に延びている。アームレスト61毎の肘載せ部63は、縦壁部62の上端部から、後リッド31の周縁部32よりも高い箇所と、前リッド41の周縁部42よりも高い箇所とを通って、左右方向のうち、互いに接近する側へ突出している。
【0043】
<連動機構65>
図7、
図8(A)及び
図8(B)に示すように、車両用収納ボックス20は、後リッド31及び前リッド41の一方のスライドに連動して他方をスライドさせる連動機構65をさらに備えている。連動機構65は、次の機能1を有している。
【0044】
機能1:後リッド31が後全開位置に位置し、かつ前リッド41が前全開位置に位置する状態で、後リッド31及び前リッド41の一方が直線状にスライドされたときには、そのスライドに連動して他方を反対方向へ直線状にスライドさせる。
【0045】
図8(A)、
図9及び
図10に示すように、連動機構65の一部は、2組のラックアンドピニオン機構69によって構成されている。ラックアンドピニオン機構69は、車両用収納ボックス20の上部であって、左右方向における両側部に設けられている。より具体的には、各ラックアンドピニオン機構69は、アームレスト61の縦壁部62と、後リッド31の膨出部32aと、前リッド41の膨出部42aとによって囲まれた空間に設けられている。
【0046】
各ラックアンドピニオン機構69は、前後方向へ延びる上ガイド板67と、上ガイド板67の下方で、上ガイド板67に対し平行な状態で前後方向へ延びる下ガイド板68とを備えている。上ガイド板67の下側には、後リッド31に連結され、かつ下部に上ラックギヤ71aを有する上ラック71が、前後方向へ摺動可能に配置されている。下ガイド板68の上側には、前リッド41に連結され、かつ上部に下ラックギヤ72aを有する下ラック72が、前後方向へ摺動可能に配置されている。
【0047】
ボックス本体21には、ピニオン73が回転可能に支持されている。ピニオン73は、上ラックギヤ71a及び下ラックギヤ72aに噛み合わされた状態で、上ラック71及び下ラック72の間に配置されている。
【0048】
上ラックギヤ71a及び下ラックギヤ72aのそれぞれがピニオン73と噛み合う位置は、次の条件を満たすように設定されている。その条件とは、後リッド31が後閉位置に位置し、かつ前リッド41が前閉位置に位置するときには、
図8(A)に示すようにピニオン73が、上ラックギヤ71aの後端部と、下ラックギヤ72aの前端部とに対し噛み合う。後リッド31が後全開位置に位置し、かつ前リッド41が前全開位置に位置するときには、
図8(B)に示すようにピニオン73が、上ラックギヤ71aの前後方向における中央部と、下ラックギヤ72aの前後方向における中央部とに対し噛み合うことである。
【0049】
<後付勢機構75、前付勢機構81>
図5及び
図6に示すように、車両用収納ボックス20は、定荷重ばね76を有する後付勢機構75と、定荷重ばね82を有する前付勢機構81とをさらに備えている。定荷重ばね76は、ボックス本体21内の上部であって、主収納部26よりも後方となる箇所に取り付けられた支軸77と、支軸77の周りに巻かれた帯状の板ばね78とを備えており、定トルクばね、定出力ばね、定張力ばね等とも呼ばれる。後リッド31の下面であって、支軸77よりも前方となる箇所からは、突起36が突出している。定荷重ばね76における板ばね78は、支軸77よりも前方へ引き出されて、突起36に係止されている。定荷重ばね76は、突起36を介して後リッド31に対し、後方へ引っ張る付勢力を常に作用させている。
【0050】
定荷重ばね82は、ボックス本体21内であって、副収納部45の下方となる箇所に取り付けられた支軸83と、支軸83の周りに巻かれた帯状の板ばね84とを備えている。前リッド41の下面であって、支軸83よりも後方となる箇所からは突起49が突出している。定荷重ばね82における板ばね84は、支軸83よりも後方へ引き出されて、突起49に係止されている。定荷重ばね82は、突起49を介して前リッド41に対し、前方へ引っ張る付勢力を常に作用させている。
【0051】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。
図4の実線及び
図5に示すように、後リッド31が後閉位置に位置するときには、主開口部27の後領域27rが後リッド31によって閉塞される。このときには、後リッド31が後閉位置決め機構により後閉位置に位置決めされている。定荷重ばね76の板ばね78は、前方へ最大長さ引き出されている。後リッド31には、これを後方へ引っ張ろうとする定荷重ばね76の付勢力が作用している。しかし、後リッド31は、後閉ロック機構により後閉位置にロックされているため、後閉位置に保持される。
【0052】
図4の二点鎖線及び
図6に示すように、後リッド31が後全開位置に位置するときには、後領域27rが全開にされる。このときには、定荷重ばね76により後方へ付勢された後リッド31が、後全開位置決め機構により後全開位置に位置決めされている。
【0053】
後リッド31は、後閉位置と後全開位置との間で直線状にスライド可能である。後領域27rの前後方向の開口長は、後リッド31のスライド量に応じて変化する。後リッド31の最大スライド量、この場合、後リッド31を後閉位置から後全開位置までスライドさせたときのスライド量は、1つのリッドが主開口部27の全体を開放及び閉塞する場合の最大スライド量よりも少ない。後リッド31を最大量スライドさせたときの後領域27rの前後方向の開口長は、1つのリッドによって主開口部27の全体を開放及び閉塞する場合の主開口部27の前後方向の開口長よりも短い。
【0054】
これに対し、
図4の実線及び
図5に示すように、前リッド41が前閉位置に位置するときには、前領域27fが前リッド41によって閉塞される。このときには、前リッド41が前閉位置決め機構により前閉位置に位置決めされている。定荷重ばね82の板ばね84は、後方へ最大長さ引き出されている。前リッド41には、これを前方へ引っ張ろうとする定荷重ばね82の付勢力が作用している。しかし、前リッド41は、前閉ロック機構により前閉位置にロックされているため、前閉位置に保持される。
【0055】
図4の二点鎖線及び
図6に示すように、前リッド41が前全開位置に位置するときには、前領域27fが全開にされる。このときには、定荷重ばね82により前方へ付勢された前リッド41が、前全開位置決め機構により前全開位置に位置決めされている。
【0056】
前リッド41は、前閉位置と前全開位置との間で直線状にスライド可能である。前領域27fの前後方向の開口長は、前リッド41のスライド量に応じて変化する。前リッド41の最大スライド量、この場合、前リッド41を前閉位置から前全開位置までスライドさせたときのスライド量は、1つのリッドが主開口部27の全体を開放及び閉塞する場合の最大スライド量よりも少ない。前リッド41を最大量スライドさせたときの前領域27fの前後方向の開口長は、1つのリッドによって主開口部27の全体を開放及び閉塞する場合の主開口部27の前後方向の開口長よりも短い。
【0057】
図4の実線及び
図5に示すように、後リッド31が後閉位置に位置し、かつ前リッド41が前閉位置に位置するときには、主開口部27の全体が閉塞される。このときには、ピニオン73が、
図7及び
図8(A)に示すように、上ラックギヤ71aの後端部と、下ラックギヤ72aの前端部とに対し噛み合う。
【0058】
この状態で、主開口部27を開放させる場合には、後閉ロック機構による後リッド31のロックを解除するとともに、前閉ロック機構による前リッド41のロックを解除する。これらのロック解除は、解除ボタン35,57の一方を操作することによって行なわれる。解除ボタン35,57の一方に対する操作は、伝達機構によって他方の解除ボタン57,35に伝達され、その他方の解除ボタン57,35もまた操作された状態になる。すると、蓄えられていた、後方へ引っ張ろうとする定荷重ばね76の付勢力が解放されるとともに、蓄えられていた、前方へ引っ張ろうとする定荷重ばね82の付勢力が解放される。
【0059】
後リッド31が後方へ直線状にスライドし、それに伴い上ラック71が後方へ移動する。前リッド41が後リッド31とは反対方向である前方へ直線状にスライドし、それに伴い下ラック72が前方へ移動する。上ラック71の後方への移動と、下ラック72の前方への移動とにより、ピニオン73が
図8(A)の時計回り方向へ回転する。このように、後リッド31及び前リッド41が、前後方向のうち、互いに遠ざかる側へ同期しながら連動してスライドする。
図6に示すように、後リッド31が後領域27rを開放し、前リッド41が前領域27fを開放する。後領域27rの前後方向の開口長と、前領域27fの前後方向の開口長とが連動して長くなる。これに伴い、主開口部27の前後方向の開口長が長くなる。
【0060】
そして、
図4の二点鎖線及び
図6に示すように、後リッド31が後全開位置までスライドし、前リッド41が前全開位置までスライドすると、主開口部27の全体が全開にされる。
【0061】
この状態から、主開口部27を閉塞する場合には、例えば、後方へ向かう定荷重ばね76の付勢力に抗して操作部34に対し、前方へ向かう力を加える。後リッド31を前方へスライドさせて、上ラック71を前方へ移動させる。すると、上ラックギヤ71aに噛み合っているピニオン73が
図8(B)の反時計周り方向へ回転する。ピニオン73に噛み合っている下ラック72が、前方へ向かう定荷重ばね82の付勢力に抗して後方へ移動する。これに伴い、前リッド41が後方へスライドする。すなわち、後リッド31の前方へのスライドに連動して、前リッド41が後リッド31とは反対方向である後方へスライドする。後領域27rの前後方向の開口長と、前領域27fの前後方向の開口長とが連動して短くなる。
【0062】
全開状態の主開口部27を閉塞するために、上記操作とは逆に、前方へ向かう定荷重ばね82の付勢力に抗して操作部44に対し、後方へ向かう力が加えられてもよい。この力により、前リッド41が後方へスライドし、下ラック72が後方へ移動する。すると、下ラックギヤ72aに噛み合っているピニオン73が
図8(B)の反時計周り方向へ回転する。ピニオン73に噛み合っている上ラック71が、後方へ向かう定荷重ばね82の付勢力に抗して前方へ移動する。これに伴い、後リッド31が前方へスライドする。すなわち、前リッド41の後方へのスライドに連動して、後リッド31が前リッド41とは反対方向である前方へスライドする。前領域27fの前後方向の開口長と、後領域27rの前後方向の開口長とが連動して短くなる。
【0063】
そして、
図4の実線及び
図5に示すように、後リッド31が後閉位置までスライドすると、その後閉位置よりも前方へスライドすることが後閉位置決め機構により規制される。後リッド31は、後閉ロック機構により後閉位置にロックされる。また、前リッド41が前閉位置までスライドすると、その前閉位置よりも後方へスライドすることが前閉位置決め機構により規制される。前リッド41は、前閉ロック機構により前閉位置にロックされる。
【0064】
後リッド31によって後領域27rが閉塞され、かつ前リッド41によって前領域27fが閉塞される。後領域27rの前後方向の開口長と、前領域27fの前後方向の開口長とがともにゼロになる。これに伴い、主開口部27の前後方向の開口長がゼロになる。
【0065】
ところで、副収納部45に対し、飲み物用容器等の物品を出し入れする際には、シャッタ51が、全開位置(図示略)と閉位置(
図5参照)との間でスライド操作される。このとき、シャッタ構成部材52毎の軸部が、対応するガイド溝部48によって案内されながら同ガイド溝部48内を摺動することで、副開口部46が開放及び閉塞される。
【0066】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)
図6に示すように、本実施形態では、リッドを後リッド31及び前リッド41に分割することで、後リッド31及び前リッド41のそれぞれの最大スライド量を少なくしている。そのため、後全開位置までスライドされた後リッド31は、後リッド31の後方に位置するもの(後席乗員を含む)に干渉しにくい。従って、後リッド31を後全開位置までスライドさせても、後席乗員の邪魔になりにくい。
【0067】
また、前リッド41の最大スライド量が少ないことから、前全開位置までスライドされた前リッド41は、前リッド41の前方に位置するものに干渉しにくい。
(2)上記(1)のように、後リッド31及び前リッド41の各最大スライド量が少ない。しかし、後リッド31を後全開位置までスライドさせ、かつ前リッド41を前全開位置までスライドさせると、主開口部27の全体の前後方向の開口長が長くなる。従って、主収納部26に対する物品の出し入れがしやすい。
【0068】
(3)本実施形態では、後リッド31の上面に載置面33aが形成されているため、前後方向における後リッド31の位置に拘わらず、載置面33a上に物品を載置することができる。
【0069】
また、後リッド31が
図6に示す後全開位置に位置するときには、主開口部27の後領域27rが全開にされる。従って、後リッド31の載置面33a上に物品を載置した状態でも、開放された後領域27rを通じて主収納部26に対し、物品を容易に出し入れすることができる。
【0070】
特に、本実施形態では、後リッド31が後全開位置に位置するときには、前リッド41が前全開位置に位置し、前領域27fが全開にされる。主開口部27の全体が全開にされる。そのため、主収納部26に対する物品の出し入れがより一層容易になる。
【0071】
(4)上記(3)に関連するが、本実施形態では、載置面33aが、それよりも高い周縁部32によって囲まれている。そのため、載置面33a上に載置された物品が動いても、後リッド31から脱落するのを周縁部32によって規制することができる。
【0072】
(5)上記(3)に関連するが、本実施形態では、載置面33aが後リッド31に形成されている。そのため、後席乗員は、後リッド31をテーブルとして使用しやすい。後席乗員は、載置面33aに物品を載置しやすく、また、載置面33a上の物品を取りやすい。
【0073】
特に、後リッド31を後全開位置までスライドさせたときには、載置面33aが後席乗員に近づく。そのため、後席乗員は、載置面33aに対する物品の載置及び取り出しがしやすくなる。
【0074】
(6)本実施形態では、前リッド41の前後位置に拘わらず、シャッタ51をスライドさせることで副開口部46を開放させることができる。副開口部46を通じて、飲み物用容器等の物品の少なくとも下部を副収納部45に収納することができる。また、副収納部45よりも小さな物品が副収納部45内に収納された場合には、シャッタ51によって副開口部46を閉塞させることで、物品が副収納部45から出るのを規制できる。
【0075】
(7)本実施形態では、
図5に示すように、後リッド31が後閉ロック機構によって後閉位置にロックされているときには、定荷重ばね76における板ばね78が前方へ多く引き出されている。定荷重ばね76は、後リッド31を後方へ引っ張る付勢力を多く蓄えている。そのため、解除ボタン35,57の操作により、後閉ロック機構のロックを解除することで、定荷重ばね76に蓄えられていた付勢力を解放させることができる。後リッド31の操作部34に対し、後方へ向かう力を加えなくても、解放された定荷重ばね76の付勢力によって、後リッド31を、
図5に示す後閉位置から、
図6に示す後全開位置へスライドさせることができる。
【0076】
同様に、本実施形態では、
図5に示すように、前リッド41が前閉ロック機構によって前閉位置にロックされているときには、定荷重ばね82における板ばね84が後方へ多く引き出されている。定荷重ばね82は、前リッド41を前方へ引っ張る付勢力を多く蓄えている。そのため、解除ボタン35,57の操作により、前閉ロック機構のロックを解除することで、定荷重ばね82に蓄えられていた付勢力を解放させることができる。前リッド41の操作部44に対し、前方へ向かう力を加えなくても、解放された定荷重ばね82の付勢力によって、前リッド41を、
図5に示す前閉位置から、
図6に示す前全開位置へスライドさせることができる。
【0077】
(8)本実施形態では、解除ボタン35,57が伝達機構を介して連結されている。そのため、乗員は、解除ボタン35,57の一方を操作することで、他方も操作された状態にすることができる。後閉位置にロックされている後リッド31、及び前閉位置にロックされている前リッド41の双方のロックを解除することができる。後リッド31を後全開位置へスライドさせ、前リッド41を前全開位置へスライドさせることができる。乗員は、前リッド41及び後リッド31のそれぞれのロックを解除するためのボタン操作を行なわなくてすみ、主開口部27を開放させるための操作がさらに簡単になる。
【0078】
(9)本実施形態では、前リッド41及び後リッド31の一方のスライドに連動して他方をスライドさせる連動機構65が設けられている。
そのため、定荷重ばね76の付勢力に抗して後リッド31を、後全開位置から後閉位置へスライドさせると、連動機構65により、上記スライドに連動して前リッド41を後リッド31のスライド方向とは反対方向へスライドさせることができる。前リッド41を前全開位置から前閉位置へスライドさせることができる。
【0079】
上記とは逆に、定荷重ばね82の付勢力に抗して前リッド41を、前全開位置から前閉位置へスライドさせると、連動機構65により、上記スライドに連動して後リッド31を前リッド41のスライド方向とは反対方向へスライドさせることができる。後リッド31を後全開位置から後閉位置へスライドさせることができる。
【0080】
上記のように、主開口部27を閉塞する際には、後リッド31及び前リッド41の一方をスライドさせるだけですむ。主開口部27を閉塞させるための操作がさらに簡単になる。
【0081】
(10)連動機構65を構成するラックアンドピニオン機構69は、前リッド41及び後リッド31の前後方向のスライドをガイドする機能も発揮する。そのため、上記ガイド機能の実現のために、ガイドレール等、別の部材を新たに設けなくてもすむ。
【0082】
(11)
図1及び
図2に示すように、車両用シート12に着座している乗員(運転者)は、右側のアームレスト61における肘載せ部63に左腕の肘を載せることにより、左肩が腕を支える負担を軽減することができる。また、車両用シート13に着座している乗員(助手席乗員)は、左側のアームレスト61における肘載せ部63に右腕の肘を載せることにより、右肩が腕を支える負担を軽減することができる。運転者及び助手席乗員にとっての上記効果は、前リッド41及び後リッド31による主開口部27の開放状態に拘らず得られる。
【0083】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変更例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0084】
<後リッド31に関する事項>
・前リッド41に代えて後リッド31を対象リッドとする。そして、後リッド31に対し、後リッド31の上面に開口する副開口部を有する副収納部と、複数のシャッタ構成部材を屈曲可能に連結することにより構成され、かつスライドすることにより副開口部を開放及び閉塞するシャッタとが設けられてもよい。この変更例によると、後リッド31でも、上記(6)と同様の効果を得ることができる。
【0085】
なお、前リッド41及び後リッド31の両者を対象リッドとし、副収納部及びシャッタの組み合わせが、これらの前リッド41及び後リッド31のそれぞれに設けられてもよい。この場合には、上記(6)の効果を、前リッド41及び後リッド31のそれぞれにおいて得ることができる。
【0086】
・後リッド31に凹部33が設けられず、後リッド31の全体の上面が平坦に形成され、その上面の高さが、凹部33が設けられた上記実施形態における周縁部32の高さと同一に設定されてもよい。そして、後リッド31の上面が載置面33aとされてもよい。
【0087】
・載置面33aは、必ずしも全体が平坦に形成されていなくてもよく、凹凸状をなしていてもよい。
・後リッド31における載置面33aが省略されてもよい。
【0088】
<前リッド41に関する事項>
・前リッド41における副収納部45、シャッタ格納部47及びシャッタ51が省略されてもよい。そして、前リッド41の上面に、物品を載置するための載置面が形成されてもよい。この場合には、前後方向における前リッド41の位置に拘わらず、載置面上に物品を載置することが可能となる。この効果は、前リッド41が前後方向におけるどこに位置していても得られる。
【0089】
前リッド41を、前領域27fの少なくとも一部を開放させる位置までスライドさせると、前領域27fを通じて主収納部26に対し、物品を出し入れすることと、前リッド41の載置面に物品を載置することとが可能となる。
【0090】
・前リッド41から端末収納部56が省略されてもよい。
<連動機構65に関する事項>
・連動機構65が省略されてもよい。この場合には、前リッド41及び後リッド31を別々にスライドさせることとなる。また、前リッド41及び後リッド31の前後方向のスライドをガイドするための部材、例えば、前後方向へ延びるガイドレール等が別途必要となる。さらに、後閉ロック機構、前閉ロック機構及び解除ボタン35,57を省略可能である。
【0091】
<後付勢機構75及び前付勢機構81に関する事項>
・連動機構65が設けられることを前提に、後リッド31を後方へ付勢する後付勢機構75が省略されてもよい。この場合、前付勢機構81によって前リッド41を前方へ付勢することで、前リッド41を前方へスライドさせることができる。これに加え、前リッド41のスライドを、連動機構65を介して後リッド31に伝達し、後リッド31を後方へスライドさせることができる。
【0092】
同様に、連動機構65が設けられることを前提に、前リッド41を前方へ付勢する前付勢機構81が省略されてもよい。この場合、後付勢機構75によって後リッド31を後方へ付勢することで、後リッド31を後方へスライドさせることができる。これに加え、後リッド31のスライドを、連動機構65を介して前リッド41に伝達し、前リッド41を前方へスライドさせることができる。
【0093】
・後付勢機構75において、定荷重ばね76とは異なる種類のばねが用いられてもよい。同様に、前付勢機構81において、定荷重ばね82とは異なる種類のばねが用いられてもよい。
【0094】
・連動機構65が設けられることを前提に、後付勢機構75及び前付勢機構81の双方が省略されてもよい。この場合、連動機構65は、上記実施形態で説明した機能1に加え、次の機能2も有する。
【0095】
機能2:後リッド31が後閉位置に位置し、かつ前リッド41が前閉位置に位置する状態で、後リッド31及び前リッド41の一方が直線状にスライドされたときには、そのスライドに連動して他方を反対方向へ直線状にスライドさせる。
【0096】
この変更例によると、
図5及び
図8(A)に示す状態から、後リッド31を後方へスライドさせる、又は前リッド41を前方へスライドさせる。すると、スライドさせられた後リッド31及び前リッド41の一方に連動して、
図8(B)に示すように、他方を反対方向へスライドさせることができる。
図6に示すように、後領域27rの前後方向の開口長と前領域27fの前後方向の開口長とを連動して長くすることができる。
【0097】
また、
図6及び
図8(B)に示す状態から、後リッド31を前方へスライドさせる、又は前リッド41を後方へスライドさせる。すると、スライドさせられた後リッド31及び前リッド41の一方に連動して、
図8(A)に示すように、他方を反対方向へスライドさせることができる。
図5に示すように、前領域27fの前後方向の開口長と、後領域27rの前後方向の開口長とを連動させて短くすることができる。
【0098】
乗員は、前リッド41及び後リッド31のいずれか一方のみに対し力を加えることで、両者をスライドさせることができる。そのため、乗員は、操作部34,44のそれぞれに力を加えて、前リッド41及び後リッド31をスライドさせなくてもよい。主開口部27を閉塞及び開放させるための操作が簡単になる。
【0099】
なお、この場合、後閉ロック機構、前閉ロック機構及び解除ボタン35,57を省略可能である。
<アームレスト61に関する事項>
・一対のアームレスト61の一方又は双方が省略されてもよい。
【0100】
・両アームレスト61が、前リッド41及び後リッド31を左右両側から挟み込む箇所に位置していることを利用し、前リッド41及び後リッド31の左右方向の動きを両アームレスト61の縦壁部62によって規制するようにしてもよい。
【0101】
<その他の事項>
・上記実施形態の車両用収納ボックス20から、連動機構65、後付勢機構75及び前付勢機構81の全てが省略されてもよい。この場合、乗員は後リッド31及び前リッド41を別々にスライドさせることになる。
【0102】
後リッド31を、前リッド41から独立させた状態で、後閉位置と後全開位置との中間位置で静止させることができ、後領域27rの前後方向の開口長を調整することができる。また、前リッド41を、後リッド31から独立させた状態で、前閉位置と前全開位置との中間位置で静止させることができ、前領域27fの前後方向の開口長を調整することができる。
【0103】
後領域27rの前後方向の開口長と、前領域27fの前後方向の開口長とを異ならせることができる。
・本発明は、後席において隣り合う車両用シートの間に配置される車両用収納ボックスにも適用可能である。
【0104】
・本発明は、後リッド31にも前リッド41にも載置面33aが設けられていない車両用収納ボックスにも適用可能である。
・本発明は、後リッド31にも前リッド41にも、副収納部45及びシャッタ51が設けられていない車両用収納ボックスにも適用可能である。この場合、上記実施形態における主収納部26及び主開口部27が、特許請求の範囲における収納部及び開口部に相当する。
【符号の説明】
【0105】
10…車両
12,13…車両用シート
20…車両用収納ボックス
26…主収納部(収納部)
27…主開口部(開口部)
27f…前領域
27r…後領域
31…後リッド(リッド)
33a…載置面
41…前リッド(リッド)
45…副収納部
46…副開口部
51…シャッタ
52…シャッタ構成部材
61…アームレスト
63…肘載せ部
65…連動機構