(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181673
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】冷却板および飛しょう体
(51)【国際特許分類】
H01L 23/427 20060101AFI20231218BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20231218BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20231218BHJP
F28D 15/06 20060101ALI20231218BHJP
F28D 15/04 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
H01L23/46 A
H05K7/20 M
F28D15/02 L
F28D15/06 Z
F28D15/04 E
F28D15/02 106G
F28D15/02 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094933
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100153176
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 重明
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 崚太
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA06
5E322AA11
5E322DA04
5E322FA01
5F136CC35
5F136DA21
5F136FA02
5F136GA14
5F136GA37
(57)【要約】
【課題】 電子機器の放熱性を向上させる冷却板を得ること。
【解決手段】 冷却板7は、飛しょう体の内部に設けられる電子機器6を冷却する。冷却板7は、電子機器6と接触する金属部71を備える。金属部71の内部には、空孔が連通している多孔質体72を備える。多孔質体72は、金属部71の内壁面に接している。多孔質体72は、空孔径が変化するよう形成されている。多孔質体72の内部には、冷媒8が入れられている。金属部71には、気化した冷媒8を多孔質体72の外部へ放出可能な放出口74が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器と熱的及び機械的に接続される金属部と、
前記金属部の内部に設けられ、連通する複数の空孔が形成された多孔質体と、
を備え、
前記多孔質体の外表面は、前記金属部の内壁面に接しており、
前記多孔質体は、中心部に対して前記金属部の内壁面側の空孔径が小さく、
前記多孔質体の内部には、冷媒が入れられており、
前記金属部には、気化した前記冷媒を前記多孔質体の外部へ放出可能な放出口が形成された冷却板。
【請求項2】
前記多孔質体は、中心部を構成する第一の多孔質体と、前記第一の多孔質体よりも空孔径の小さい第二の多孔質体の2種類の多孔質体で構成され、
前記第二の多孔質体は前記第一の多孔質体の外側にあり、
前記金属部の内壁面に接している請求項1に記載の冷却板。
【請求項3】
前記電子機器が、前記金属部の両面に接している請求項2に記載の冷却板。
【請求項4】
前記金属部の前記放出口が形成された内壁面と前記多孔質体の間に空洞が設けられている請求項3に記載の冷却板。
【請求項5】
前記多孔質体と前記空洞の間に多孔質膜が設けられている請求項4に記載の冷却板。
【請求項6】
前記多孔質膜は、液体状態の前記冷媒を通さずに気体状態の前記冷媒のみを通すフィルタである請求項5に記載の冷却板。
【請求項7】
前記放出口には、前記冷媒を放出させる放出制御部が設置されている請求項6に記載の冷却板。
【請求項8】
前記放出制御部は、気化した前記冷媒により前記空洞の内部の圧力が閾値以上になったときに開く弁である請求項7に記載の冷却板。
【請求項9】
前記冷却板は、ダイカスト成形法、レーザ融解法又はパウダーベッド法により前記金属部と前記多孔質体が一体的に形成された請求項1に記載の冷却板。
【請求項10】
前記多孔質体は、ラティス構造を有する請求項9に記載の冷却板。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の冷却板と、
飛しょう体の内部に設けられる電子機器と、を備える飛しょう体。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載の冷却版と、
飛しょう体内部に設けられる電子機器と、
前記飛しょう体の内部の圧力を調整する圧力調整弁と、
を備える飛しょう体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器を冷却する冷却板および飛しょう体に関する。
【背景技術】
【0002】
飛しょう体の内部には、電子機器が搭載されている。電子機器は、飛しょう体の飛しょう中に自己発熱する。飛しょう体は、所定の運用時間中の電子機器内部の温度を保証温度以下に保つために、電子機器で発生した熱を放出する冷却板を備えている従来の冷却板は、冷媒の相変化による沸騰冷却を利用して電子機器の冷却を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の冷却板は、電子機器と接触する金属部を備える。金属部は電子機器の実装される放熱面下部の内部に複数の冷媒流路が配列される。冷媒流路の一端部は放出口に接続され、気化した冷媒は放出口から冷媒流路の外部へ放出される。冷媒流路は一端部から他端部に向かって断面積が拡大し、他端部側に所在する冷媒が毛細管現象により一端部側に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の冷却板は、金属部の放熱面下部に、所定の間隔を空けて配置された冷媒流路の容積に冷媒の注入量が限定される。また、冷媒流路の他端部側に収容される冷媒の移動が一方向に限定され、かつ移動する冷媒の容積が冷媒流路の断面積に依存するために、冷媒流路の一端部に向けて十分な液状の冷媒が運搬されず、放熱性が低下する、という問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、毛細管現象による液状冷媒の供給能力を高め、単位面積当たりの電子機器の放熱性を向上させる冷却板を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る冷却板は、電子機器と熱的または機械的に接続される金属部と、前記金属部の内部に設けられ、連通する複数の空孔が形成された多孔質体とを備え、前記多孔質体の外表面は、前記金属部の内壁面に接しており、前記多孔質体は、中心部より前記金属部の内壁面側の空孔径が小さく、前記多孔質体の内部には、冷媒が入れられており、前記金属部には、気化した前記冷媒を前記多孔質体の外部へ放出可能な放出口が形成されたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属部内部に液状冷媒をより多く収容可能で、中心部に比べ金属部内壁側は空孔径が小さくなるよう形成された多孔質体を設けることで、継続的に受熱部付近へ液状の冷媒を供給し、単位面積当たりの電子機器の放熱性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1にかかる飛しょう体を示す概略図
【
図2】実施の形態1にかかる電子機器および冷却板を示す図
【
図3】
図2に示されたIII-III線に沿った断面図
【
図4】
図3に示された冷却板の運用状態について説明するための図
【
図5】本発明の実施の形態2にかかる飛しょう体の電子機器および冷却板を示す図であって、
図2に示すIII-III線に沿った断面図に相当する図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態に係る冷却板および飛しょう体を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0011】
***実施の形態1の構成の説明***
図1は、本発明の実施の形態1にかかる飛しょう体1を示す概略図である。
飛しょう体1は、飛しょう体1を目標へ誘導する誘導装置2と、誘導装置2の後部に配置されて飛しょう体1に推進力を与える図示しない推進装置と、を備えている。誘導装置2は、外殻部材3と、アンテナ4と、圧力調整弁5と、を備えている。
【0012】
外殻部材3は、誘導装置2の外殻を形成する金属製部材である。圧力調整弁5は、外殻部材3に固定されている。圧力調整弁5は、外殻部材3に形成された図示しない放出口を開閉可能に覆っている。圧力調整弁5は、飛しょう体1の内部の圧力を調整する機能を有する。
【0013】
アンテナ4は、外殻部材3の内部に設置されている。アンテナ4は、複数の電子機器6と、複数の冷却板7と、を有する。電子機器6は、誘導装置2の内部に設けられた図示しないフレームにボルトなどで固定されている。
【0014】
図2は、実施の形態1にかかる電子機器6および冷却板7を示す図である。冷却板7は、飛しょう体1の内部に設けられる電子機器6を冷却する部材である。冷却板7は、2つの電子機器6の間に挟まれて配置されている。冷却板7と電子機器6は、図示しないボルトおよびナットなどで固定されている。電子機器6は冷却板7に密着もしくは放熱材を介して熱的及び機械的に接続されている。冷却板7は、金属部71を備えている。
【0015】
金属部71は、電子機器6と接触する金属製の部位である。金属部71は、電子機器6で発生した熱11を後述する冷媒8に伝える役割を果たす。金属部71の材料は、特に制限されないが、本実施の形態ではアルミニウム合金である。金属部71は、電子機器6の実装される表面が、滑らかで平坦な放熱面である。
金属部71は内部空間が形成され、多孔質体72が収容される。多孔質体72の外側表面は金属部71の内部空間に接する内壁面に密着している。
図2において、電子機器6は冷却板7の上面側における金属部71と下面側における金属部71に実装される。
【0016】
図3は、
図2に示されたIII-III線に沿った断面図である。多孔質体72の内部は、空孔が連通しており、空孔内に冷媒8が充填されている。多孔質体72の材料は、特に制限されないが、本実施の形態では金属部71と同質のアルミニウム合金である。多孔質体72の内部では、空孔密度に勾配が形成されており、中心部が粗で、外側にいくにつれて密となっている。
図3に示す本実施の形態における多孔質体72は、多孔質体72の中心部を構成する第一の多孔質体72aと、第一の多孔質体72aよりも空孔径が小さい第二の多孔質体72bの2種類の多孔質体で構成されている。第二の多孔質体72bは、第一の多孔質体72aの外側を包絡するように配置され、その外側表面が金属部71の内壁面に接している。
第一の多孔質体72aは直方体塊形状をなしている。第二の多孔質体72bの外側面は直方体形状をなし、内側の中空の空間は第一の多孔質体72aと同形状の直方体塊形状をなしている。
ただし、多孔質体72の構成は特にこの構成に制限されるものではなく、3種類以上の多孔質体で構成されても良く、また空孔径が連続的に変化する構成でも良い。
【0017】
冷却板7の側面には、冷媒8を多孔質体72に注入するための注入口73と、後述するように気化した冷媒8が放出される放出口74が形成されている。注入口73と放出口74の位置及び数は特に制限されないが、
図3に示す本実施の形態における注入口73および放出口74は、互いに向かい合う面に1つずつ形成されている。
注入口73は、運用時間中液状の冷媒8が冷却版7の外に出るのを防ぐため、開閉可能な図示しない蓋体73aを有していてもよい。蓋体73aは、水密的及び気密的に注入口73を塞ぐように取り付けられて、液相状態及び気相状態(蒸気)の冷媒8が注入口73から外部に漏れ出ることを防止する。これにより、運用試験等で蒸発した液状の冷媒8を再度充填することが可能となる。
図3に示すように、第一の多孔質体72aよりも空孔径の小さい第二の多孔質体72bは、第一の多孔質体72aよりも電子機器6に近い位置に配置されている。
【0018】
このように内部で空孔径が変化する冷却板7の製造方法のひとつとして、ダイカスト成形技術が挙げられる。ダイカスト成形技術では、冷媒8を保持する金属部71と内部の多孔質体72を一体に製造することができ、大量生産も可能である。
【0019】
また、金属部71と多孔質体72は、金属3Dプリンタを用いた金属積層造形技術により製造してもよい。金属積層造形技術は、例えば、金属合金の粉末を溶融し固化するレーザ融解法、または電子ビームを用いたパウダーベッド法である。
【0020】
多孔質体72は、例えばポーラス構造から構成される。また、多孔質体72は、中央付近に、例えば複数の格子が周期的に配列されてなるラティス構造を有していても良い。
さらに、第一の多孔質体72aをラティス構造の層で形成し、第二の多孔質体72bをポーラス構造の層で形成しても良い。ラティス構造は格子を形成する隣接する分枝の間隔を例えば1~5mmの大きさで形成することができる。ポーラス構造は細孔半径を0.5以下の大きさで形成すると良く、0.04mm~0.5mmとするのが良い。
【0021】
冷媒8は、金属部71よりも比重が小さく、常温で液体となる物質である。特に制限されないが、冷媒8は、本実施の形態では純水である。冷媒8には、電子機器6で発生した熱11が金属部71を介して伝わる。電子機器6と多孔質体72との間に位置する金属部71が薄いほど、電子機器6から冷媒8へ熱11を伝えやすくなる。
多孔質体72の空孔径および冷媒8の粘度は、毛細管現象を利用して多孔質体72の内部に冷媒8を充填可能なように、かつ、多孔質体72の外部に冷媒8が漏れないように適宜設定すれば良い。また、冷媒8の材料としては、純水以外にエタノール(沸点80℃)などのより低温で気化する液体を適用しても良い。所望温度域に適した液体を適用することで、電子機器6の所望温度に応じた温度上昇抑制が可能となる。
【0022】
本実施の形態の金属部71に用いられるアルミニウム合金は、比熱(J/(g・℃))が0.896J/(g・℃)であり、密度(g/cm3)が2.7g/cm3である。アルミニウム合金の単位体積あたりの熱容量(J/(cm3・℃))は、2.419J/(cm3・℃)である。
本実施の形態の冷媒8に用いられる純水は、比熱(J/(g・℃))が4.217J/(g・℃)であり、密度(g/cm3)が1g/cm3である。純水の単位体積あたりの熱容量(J/(cm3・℃))は、4.217J/(cm3・℃)である。
アルミニウム合金の単位体積あたりの熱容量(J/(cm3・℃))よりも純水の単位体積あたりの熱容量(J/(cm3・℃))の方が大きいため、冷媒8を入れる多孔質体72が金属部71の内部に形成されていない場合に比べて、冷却板7の熱容量を大きくすることができる。
また、冷却板7における冷媒8の割合を金属部71の割合よりも多くする方が冷却板7の熱容量を大きくすることができる。さらに、冷媒8に純水を用いた場合には、液体から気体への気化熱が約2256kJ/kgになるため、例えば200kJの熱量を気化熱で吸収する場合には約90gの純水で足りる。これにより、飛しょう体1の軽量化に寄与することができる。
【0023】
次に、冷却板7の運用状態について説明する。
図4は、
図3に示された冷却板7の運用状態について説明するための図である。
【0024】
図4に示すように、電子機器6で発生した熱11は、金属部71を経て冷媒8に伝わる。このとき、多孔質体72のうち電子機器6に近い部分ほど冷媒8の温度が高くなるため、第二の多孔質体72bの方が、第一の多孔質体72aよりも温度が高い。電子機器6から冷媒8への伝熱により、冷媒8の温度が沸点に達すると、冷媒8が気化して蒸気50となる。
蒸気50は、第二の多孔質体72b内を移動し、放出口74から多孔質体72の外部へ放出される。
蒸気50が放出口74から多孔質体72の外部へ放出されることにより、
図1に示す誘導装置2の内部の圧力が上昇する。
誘導装置2の内部の圧力が閾値以上になると、圧力調整弁5が図示しない放出口を開放して、放出口から誘導装置2の外部へ気体が放出される。
【0025】
一方、
図4に示すように、気化した冷媒8が放出口74から多孔質体72の外部へ放出されるときに、第一の多孔質体72aの内部の冷媒8は、毛細管現象によって第二の多孔質体72bへ流れる。第二の多孔質体72bに到達した冷媒8は、気化して多孔質体72の外部へ放出される。このように多孔質体72の内部の冷媒8は、循環することなく多孔質体72の外部へ放出される。
【0026】
***実施の形態1の効果の説明***
次に、実施の形態1にかかる飛しょう体1の作用効果について説明する。
【0027】
本実施の形態では、電子機器6と接触する金属部71内部の、中心から外側にかけて空孔径の小さくなるよう形成された多孔質体72に冷媒8を封入するとともに、気化した冷媒8を放出する放出口74が形成されている。
電子機器6から冷媒8への伝熱により、冷媒8の温度が沸点に達すると、冷媒8は気化する。冷媒8が純水である場合は、沸点は100℃である。電子機器6の保証温度は、例えば120℃である。このため、電子機器6の温度が保証温度に達する前に冷媒8の温度が沸点に達する。これにより、冷却板7へ伝えることが可能な熱11の伝熱量を多くすることができ、電子機器6の温度上昇を抑制することができる。
【0028】
本実施の形態では、金属部7内部に空孔を有する多孔質体72を設けることにより、金属部7内部の空間容積率が高くなり、より構造の軽量化を図ることができる。また、金属部71よりも比重が小さい冷媒8が金属部71の内部に入れられているため、冷媒8を入れる多孔質体72が金属部71の内部に形成されていない場合に比べて、冷却板7の軽量化を図ることができる。
【0029】
本実施の形態では、気化した冷媒8は、放出口74から多孔質体72の外部へ放出される。このとき、多孔質体72の内部の冷媒8の容積は漸次減少するが、毛細管現象により第一の多孔質体72aから第二の多孔質体72bへ液状の冷媒8が吸い上げられることにより、電子機器6に近い多孔質体72の表層部には常に冷媒8が存在するため、冷媒8の気化により効率良く放熱することができる。
【0030】
本実施の形態では、多孔質体72の内部の冷媒8は、循環することなく多孔質体72の外部へ放出される。これにより、冷却流体を循環させるための循環装置などが不要になるため、飛しょう体1の軽量化を図ることができる。
【0031】
また、気化した冷媒8が放出口74から外部へ放出されることで、冷却板7内、特に第二の多孔質体72b付近の圧力が低くなる。これにより、第一の多孔質体72aから第二の多孔質体72bへの冷媒8の移動が促進される。
【0032】
さらに、気化した冷媒8が放出口74から放出されるため、電子装置6の発熱が大きい場合でも、気化した冷媒8によって冷却版7内が高圧となるのを抑えることができ、冷却板7の損壊を防ぐことができる。
【0033】
本実施の形態では、第一の多孔質体72aの外側に第二の多孔質体72bが設けられているため、多孔質体72の両側に電子機器6を配置することができる。これにより、多孔質体の片面のみで同等の放熱性を実現する場合に比べ、構造の軽量化を両立することが可能となる。
【0034】
本実施の形態では、第一の多孔質体72aより第二の多孔質体72bの方が高密度であるため、第一の多孔質体72aに比べて見かけ上の熱伝導率が高くなる。第一の多孔質体72aおよび第二の多孔質体72bの空孔径を調節することにより、電子機器6で発生した熱11による多孔質体72内部の熱分布を最適化し、放熱性と構造の軽量化を両立することが可能となる。
【0035】
本実施の形態では、気化した冷媒8が放出口74から多孔質体72の外部へ放出されることにより、誘導装置2の内部の圧力が閾値以上になると、圧力調整弁5が図示しない放出口を開放する。これにより、放出口から誘導装置2の外部へ気化した冷媒8が放出されるため、誘導装置2の内部の圧力を一定に保つことができる。
【0036】
***実施の形態2の構成の説明***
図5は、本発明の実施の形態2にかかる飛しょう体1の電子機器6および冷却板7を示す図であって、
図2に示すIII-III線に沿った断面図に相当する図である。実施の形態2では、前記した実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
実施の形態2にかかる飛しょう体1は、バッファタンク75と、多孔質膜76と、安全弁9と、をさらに備える。冷却板7の内部には、金属部71の放出口74が形成された内壁面と多孔質体72の間に空洞のバッファタンク75が設けられ、バッファタンク75と多孔質体72の間は多孔質膜76で区切られている。多孔質膜76は、液状の冷媒8は透過できないが、気化した冷媒8は透過可能な膜である。
【0038】
放出制御部である安全弁9は、放出口74に設置されている。安全弁9は、気化した冷媒8により冷却板7の内部の圧力が閾値以上になったときに、放出口74を開放する。
安全弁9は、例えば弁体がばね等の弾性力によって弁座に付勢されて放出口74を塞いでいる。内部の圧力が閾値以上になり弾性力よりも勝ったときに弁体が弁座から可動し、放出口74が開放する。
【0039】
本実施の形態では、初期状態ではバッファタンク75内の圧力は大気圧以下となっている。電子機器6が発熱し、冷媒8が気化すると、気化した冷媒8は自然対流によりバッファタンク75へ移動する。バッファタンク75に溜まった気体状態の冷媒8は、一定量以上溜まった段階で圧力が閾値以上となり、放出口74が開放され、冷却板7の外部に放出される。
【0040】
***実施の形態2の効果の説明***
本実施の形態でも、実施の形態1と同様に、気化した冷媒8が毛細管現象により金属部71の近傍に供給され、電子機器6の放熱性を向上させる効果がある。さらに、気化した冷媒8が多孔質体72内に気泡として残留した場合、熱伝導を阻害し、放熱性を低下させる可能性がある。バッファタンク75内の圧力を大気圧以下とすることで、多孔質体72とバッファタンク75の間に圧力差が生じ、冷却板7内部に自然対流が生まれて、気化した冷媒8をバッファタンク75に効率良く移動させることができる。これにより、気化した冷媒8が多孔質体72内に気泡として残留し、熱伝導を阻害することを防ぐことができる。
【0041】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 飛しょう体、2 誘導装置、3 外殻部材、4 アンテナ、5 圧力調整弁、6 電子機器、7 冷却板、8 冷媒、9 安全弁、11 熱、71 金属部、72 多孔質体、72a 第一の多孔質体、72b 第二の多孔質体、73 注入口、73a 蓋体、74 放出口、75 バッファタンク、76 多孔質膜。